財政制度等審議会 財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会 財政制度分科会 議事次第
平成31年4月23日(火)10:00~12:15
第3特別会議室(本庁舎4階 中-412)
1.開会
2.社会保障について
3.閉会
分科会長代理 | 増田寛也 | うえの副大臣 鈴木副大臣 宮島大臣政務官 太田主計局長 神田次長 阪田次長 宇波次長 奥総務課長 安出司計課長 阿久澤法規課長 中澤給与共済課長 一松調査課長 西山官房参事官 寺岡主計官 日室主計官 北尾主計官 斎須主計官 前田主計官 中島主計官 吉野主計官 関口主計官 森田主計官 岩佐主計官 内野主計官 渡邉主計企画官 佐藤主計企画官 | ||
委員 | 赤井伸郎 大槻奈那 黒川行治 神 津 里季生 佐藤主光 十 河 ひろ美 武田洋子 中空麻奈 南場智子 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 秋池玲子 上村敏之 河 村 小百合 喜多恒雄 木村 旬 権丈英子 小 林 慶一郎 進藤孝生 末澤豪謙 田近栄治 伊 達 美和子 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 広瀬道明 堀真奈美 神子田 章 博 横田響子 吉川 洋 |
午前10時00分開会
〔 増田分科会長代理 〕 時間になりましたので、会議を始めたいと思います。冒頭でカメラが入りますので、このままでしばらくお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔 増田分科会長代理 〕 ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催します。
皆様方には、御多用中のところ、御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、社会保障を議題としております。
本日は冒頭から、うえの副大臣、鈴木副大臣、そして4月8日より新たに御就任されました宮島政務官にも御出席をいただいております。ありがとうございます。
それでは、ここで報道関係の方は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、社会保障の審議に入ります。冒頭、吉野主計官、関口主計官から説明をそれぞれお願いします。
〔 吉野主計官 〕 吉野でございます。御説明させていただきます。
3ページ目、社会保障関係費は、34兆円でございます。
4ページ目、平成の時代に社会保障給付費は47兆円から121兆円ということで、2.6倍になっております。
5ページ目、社会保障の財源は、保険料、公費で、様々異なる形の財源構成となっております。
6ページ、20歳から64歳人口と65歳以上人口の比率が、1965年は9対1、2017年は2対1、2050年は1.3対1となってきてございます。
人口ピラミッドでございますが、2022年から団塊の世代が75歳を超え始め、2025年には全ての団塊の世代の方々が75歳以上となる状況になっております。
8ページ目、65歳以上人口は2040年ごろにかけてピークを迎えまして、65歳未満の若年世代におきましては、今後、一貫して大幅に減少していきます。
9ページでございます。人数の規模感をお示ししております。
10ページ目、75歳以上の後期高齢者と65歳から74歳までを比較いたしますと、医療費におきまして1.6倍、国庫負担にして5倍ということで、75歳を境に医療費、介護費がかかることが見てとれると思います。
11ページ目、75歳以上になりますと、後期高齢者の医療、介護に係る公費負担が大きいため、1人当たりの国庫負担が急増することが見てとれると思います。
12ページ目、保険料の負担は、平成の時代に約1.7倍、公費は3.0倍、年率4.3%伸びております。保険料は年率2.2%でございます。給付費は、プラス3.5%の年率でございまして、2.5倍に増えているところでございます。これは、まさに後期高齢者医療制度、介護保険制度に対して相対的に多くの公費負担が入っておりますので、高齢化の財政的なインパクトは公費に偏って大きいということを示しているところでございます。高齢化によって、公費負担のウエイトが更に増加しまして、実効給付率が上昇するため、様々な取組によって、これを抑制していくという取組が必要なわけですが、忘れてならないのは、国庫負担の一部は赤字公債によって賄われているということでございます。
13ページ目、社会保障関係費以外の政策経費は、平成の時代、名目で横ばい、社会保障関係費は約3倍、国債の増発に伴う国債費が増加しておりますけれども、債務残高が6倍に増えたにもかかわらず、低金利のため約2.5倍にとどまっているということでございます。
今後とも高齢化の進展により医療費、介護費の伸びは増加が見込まれるのに対しまして、生産年齢人口の減少により、雇用者報酬の大幅な増加は見込めないと考えられます。医療費、介護費の伸びを放置した場合には、今後ともこのように1人当たりの保険料負担の上昇は避けられないのではないか。よって、雇用者の実質賃金の伸びは抑制されてしまうのではないかといった視点でございます。
15ページ、マクロの給付費の伸びでございます。2018年、25年、40年ということで、年金1.1倍・1.2倍、医療1.2倍・1.4倍、介護1.4倍・1.7倍ということで、GDPの伸び1.14・1.22を超えて伸びていることが、特に医療、介護について見てとれると思います。
次に、いわゆる天の川のような社会保障支出と国民負担率をGDP比であらわしたグラフがございます。給付と負担のバランスがとれていれば、このベルト、天の川の上に乗っているわけですが、日本は時代とともにこの天の川の上から離れていっております。放置いたしますと、2060年には上方のほうに更に発散してしまいます。
経済成長を下回る給付の伸びの抑制がきいていれば、もしくは給付の伸びを上回る経済成長をしていれば、天の川の下のほうに下ってまいります。国民負担を引き上げて負担をお願いするということであれば、右のほうに流れてまいります。この両者を組み合わせるような形で天の川のところに戻ってまいりますように、給付と負担のバランスをとること、そのための改革が急務であると考えているところでございます。
それを言葉に表したのが17ページでございます。潜在成長力を高める構造改革・支え手減少への対応等、これは経済成長でございます。2)税財源の確保、負担のお話でございます。社会保障の伸びの抑制、これは給付の伸びの抑制のお話でございますが、あわせまして3つの改革をバランスよく実施していくということが今後の改革の視点になろうかと思います。
18ページ以降は、2019年度予算でございます。
今後の社会保障改革のお話でございます。実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針、経済、物価動向等を踏まえ、2019年度以降、その方針を2021年度まで継続するということが、昨年の夏、「骨太の方針」で閣議決定されておるところでございます。高齢化による増加分の中に予算の伸びを抑えてくるということで、この3年間、臨むことになっておりますが、ちなみに31年度予算ベースで申し上げれば、自然増が6,000億円、高齢化による増加分が4,800億円ということで、様々な改革努力の積み上げによりまして、4,800億円と6,000億円のすきま、1,200億円を予算上、圧縮することをもって目標を達成したところでございます。
30ページに飛んでいただきます。高齢者の人口の伸び率でございますが、2019年度、2021年度までは75歳以上の人口の伸び率が一旦落ちつきますが、2022年度以降、伸び率が急増いたします。これは、まさに第2次世界大戦末期に出産率が低下した後、団塊の世代の方々がお生まれになりまして、その方々が75歳になるのが2022年以降ということでございます。この人口増加、高齢者人口の伸びを踏まえた上で、改革に着手しなければいけない時期に来ているということでございます。
その改革の視点が、31ページでございます。
保険給付の範囲の在り方の見直し、大きなリスクは共助、小さなリスクは自助ということで、高額な医薬品について公的な保険とのかかわりをどう考えるか、という議論でございます。小さなリスクというのは、例えば、OTC医薬品のようなものにつきまして公的保険との関係をどう考えるかというお話でございます。
次に、保険給付の効率的な提供、供給サイドへのコントロールということで、地域医療構想をはじめとした病床のダウンサイジングのお話、それから公定価格、報酬改定、薬価改定のお話でございます。
さらに、高齢化・人口減少下での負担の公平化ということで、年齢で輪切りにすることなく、能力に応じた負担をお願いするといった観点の改革になろうかと思います。
この3つの視点に添いまして、私の方からは医療、介護と御説明してまいりたいと思います。
内容に入る前に、33ページでございます。スケジュールをつけております。年央から社会保障改革の議論が本格化するような報道もあるところでございますけれども、実は年金と介護につきましては議論が開始されているところでございます。
年金でございますが、年金財政検証、既に検討が始まっておりまして、年央にはオプション試算が公表されまして、年末には一定の結論を得て、来年の通常国会に法案が出ることが想定されております。
介護でございますが、介護報酬改定が2021年度にございます。第8期介護保険事業計画が開始されるに当たりまして、制度改革を2020年度に実施する必要がございますので、来年の通常国会に法案を提出する必要がございます。厚生労働省では既に介護保険制度改革の議論が始まっているところでございます。
医療についてでございますが、これについては今後、議論を深めていただきまして、来年の「骨太2020」に向けて一定の結論を得るとともに、この年末には報酬改定がございますので、その関連の改革もあわせて実施することで、2021年の年初の通常国会に法案を提出し、2022年度から暫時、改革を実施していくということになろうかと思います。これが、まさに先ほど申し上げました、団塊の世代の方々が後期高齢者になられる2022年にターゲットを当てまして、待ったなしの改革のタイミングになっているということであろうかと思います。
続きまして、個別の分野にまいります。医療でございます。これまで、個別の分野を細かく御説明してくるフェーズもございましたけれども、いざ改革を実施するに当たりまして、少し的を絞りまして、概要紙を中心に御説明してまいりたいと思います。
37ページを見ていただきますと、タイトルのところに総括と書いてございまして、右上に給付の範囲とございます。保険給付の範囲に関する議論につきましては、この1枚であらかた議論が尽くされるように作っているところでございますので、御覧いただければと思います。
37ページでございますが、左側のグラフでございます。横軸がリスク、縦軸が医療費を示しております。大きなリスクになれば、当然、医療費がかさむということでございますが、その負担の構成は自己負担と保険給付に分かれておりますが、自己負担につきましては一定程度大きなリスクで高額になりますと頭打ちがございます。高額療養費制度でございます。70歳以上の住民税非課税の方であれば月額8,000円、年収730万円程度の方が月額100万円の治療を受けた場合には、大体8万7,000円制度の自己負担で済むという制度でございます。これによりまして、黄色の厚みは頭打ちがございます。したがいまして大きなリスクのところは、青い保険給付の範囲のところが分厚くなっているということが見てとれると思います。小さなリスクにつきましては定率の負担、現役世代であれば3割負担でございますので、それ相応の水色と黄色の役割分担ということになっております。
これまで取り組んできた主な事項につきましては、ビタミン剤、うがい薬、70枚以上の湿布薬を保険算定の対象外としてまいりました。
今後の主な改革の方向性につきましては、高額医薬品や医療技術が登場し、さらなる医療費の増加が見込まれる中で、国民の皆様方の受け止め方、それから裾野の広さ等を勘案いたしまして、高額医薬品や医療技術が引き続き収載されていく場合には、小さいリスクについては、薬剤の自己負担の引上げ、少額受診時の一定の追加負担ということでございます。
39ページを見ていただきますと、医薬品の有用性に応じた保険給付率の設定を記載しております。ドイツは定率、スウェーデンは定額、フランスは異なる工夫をしておりますが、フランスなども念頭に置いたことを表記しているつもりでございます。薬剤の種類に応じた自己負担の割合を設定ということで、具体例で申し上げると右側下の表でございます。医薬品の有用性に応じまして自己負担割合、裏を申し上げれば保険給付率を設定するという一つの工夫でございます。これが、先ほどの有用性に応じた保険給付率の設定。
もう1つ、OTC医薬品と同一の有効成分を含む医薬品の保険給付の在り方についてでございます。仮にOTC化済み医薬品と技術料につきまして、いわゆるOTC化済み医薬品だけを自己負担にしようということになりますと、技術料も含めまして、ほかのお薬も含めまして全て自己負担になってしまう、混合診療として扱われてしまうということがございました。なので、OTC化済み医薬品を基本的に自己負担としていくということであれば、保険外併用療養費制度の枠組みを一つ拡充いただきまして、OTC化済み医薬品のみ自己負担、ほかの技術料、薬剤につきましては3割負担といった組み合わせが可能になる仕組みの見直しとあわせまして、やっていく必要があると考えているところでございます。
37ページでございます。少額受診時の一定の追加負担でございます。これにつきましても、40ページに飛んでいただきまして、受診時定額負担の絵がついてございます。見ていただきますと、1人当たりの年間外来受診回数、日本人は非常に回数が多く、国民1人当たり年間12.8回、国民全体では16億回ということでございます。フランスにおきましては、1ユーロを受診時に定額で取っているということで、2005年から定着している制度でございます。仮に、ワンコインなりの受診時の定額負担をお願いいたしますと、右下のグラフのように、保険範囲の厚みを一部減殺するという効果が期待されるところでございます。
もう一度、37ページに戻っていただきまして、もう1つ、一定の追加負担のところでございます。かかりつけ医、かかりつけ薬局等への誘導策として負担に差を設けることを検討ということでございます。こうしたことのほか、現在、400床以上の比較的大きな病院に、かかりつけ医等の紹介状なしに直接おかかりになった場合には5,000円を自己負担いただくということでございますけれども、これにつきまして範囲を広げていくとか、金額を上げていくとか、そういったことも考えていくべきではないかといったこともございます。以上が、この保険給付の範囲の在り方の見直しのメニューと考えているところでございます。
続きまして、保険給付の効率的な提供ということで、42ページまで飛んでいただきます。国民健康保険のさらなる改革ということで、主に提供体制のコントロールにつきましては2点、申し上げようと思います。
国保の改革が42ページでございまして、2018年度から保険財政、国保の財政と医療計画等々が県単位化、一元化されているところでございます。これによりまして、本来、県単位で保険者機能を十分に発揮していただくことが期待されるところでございますが、いま一つ保険者機能が十分発揮されない構造にあるかと考えております。
見ていただきますと、県内の医療費を賄うときに定率の国庫負担がはまっております。それ以外の不足分のところにつきましては、基本は緑色の保険料のところで賄っていただく必要があるわけですけれども、これにつきまして2つの問題がございます。法定外繰入、赤字で塗りましたけれども、これがいわゆる財政に余力がある、もしくは保険料の前借りというか、繰上充用をもちまして、県財政の中で保険料を引き上げることなく保険財政に充てられるという構造が一つ。
それから、普通調整交付金、もう1つ赤く塗ったところですが、これにつきましては実際の医療費と徴収すべき保険料の差額を国庫から補塡しているということでございます。前者の法定外繰入につきましては、市町村は保険料がバラバラでございますので、基本、バラバラのところが多く、基本的に県の中で負担の不公平が生じている。普通調整交付金につきましては、県単位で、国レベル全体の県ごとに負担の不公平が生じている。医療費の高い県には、それなりに補塡が行ってしまうという構造でございます。
こうした中で、保険者機能を十分に発揮していただくための今後の改革の方向性でございます。右下の四角でございまして、法定外繰入の速やかな解消。ちなみに、右上段にございますとおり、国から年間3,400億円、目的は様々でございますが、公費を投入しておりまして、結果として保険の財政に補塡をするということが可能になっておりますが、いまだ法定外繰入はございますので、この公費を十分に活用いただく工夫をいただきまして、法定外繰入を速やかに解消していただきたい。年間1,800億円あります法定外繰入を解消していただきたいというのが1点。
2点目は、普通調整交付金でございます。実際の医療費ではなく、年齢構成のみを勘案した標準的な医療費を算出いたしまして、それをベースに交付額を決定するという仕組みにいたしまして、基本的に不足分が国庫から全部補塡されるという仕組みを見直すことによりまして、保険者機能を十分発揮していただく環境を整えたいと考えております。そのてこ入れのために、現在、保険者努力支援制度というもの、インセンティブの交付金を持っておりますが、基本的に年間1,000億円程度、現在、国で用意しております。これについても、今は健康ポイントをやりますとか、取組に応じた交付金の交付の形になっておりますが、結果、医療費がどれだけ適正化されたとか、アウトカムの指標に基づいて交付ができるようなインセンティブ付けをしてまいりたいと考えているところでございます。
これが国保の改革でございます。
続きまして、43ページでございます。これは、病床のダウンサイジング、病院に向けての改革でございます。日本は1,000人当たりのベッド数13、独仏米英につきましては2から8程度のベッド数になっておりまして、開きがございます。日本の中で、都道府県ごとの差を見ますと、高知県と神奈川県で3倍違うということでございます。
44ページに飛んでいただきまして、下段を見ていただきますと、入院医療費と病床数は比較的強い正の相関がありまして、ベッド数が多いほど、医療費が多いということが推定されます。この病床数を何とか削減していきたいと考えているところでございます。
さらに、「病院勤務医の働き方改革も妨げている」と書いてございます。勤務医について、お医者様の数について見ていただきますと、人口1,000人当たりのお医者様の数は2.4、病床100床当たりの臨床医師数は18.5ということで、諸外国と比べていただきますと、人口当たりですと医者は足りなくないのですけれども、病床当たりにしますと医者が圧倒的に足りないということが見てとれると思います。
よってもちまして、病院勤務医の働き方改革を進めていくに当たりまして、病床のダウンサイジングが図られないまま、働き方改革を成し遂げることはほとんど不可能と考えておりますので、働き方改革と病床のダウンサイジングをあわせて実施していく必要があるだろう。
これに向けまして、地域医療構想ということでございます。2017年、132万床あるところ、2025年に必要な量を、ナショナルデータベースに基づきまして、地域の疾病構造等を踏まえた合理的な数字を算出した結果、119万床に向けて機能分化を図りつつ、病床をダウンサイジングするということが決まっているところでございますが、KPIが設定されております。公立・公的病院、2018年度末までに100%、2019年度末までに民間病院も含めて50%ということでございますが、この公立病院、2018年度末、先月ですけれども、先月末までに100%合意をすることになっているはずでございます。徐々に内容が公表されておりますので、一旦、御紹介します。
49ページに飛んでいただきたいと思います。全ての非稼働病床を減少させるべき急性期病床に振替えということで、非稼働病床は本来、減少させるべき病床の外に管理されていたものでございますが、これを214病床減らし、急性期病床に付け替えたということで、合意として公表している区域がございます。1,243床を減らすべきところ、ほぼ現状どおりの横置きの病床数で合意して、公表してきている区域もございます。私どもとしましては、合意につきましては、2025年の必要量に沿った合意がなされるべきと認識しておったところでございますが、必ずしもそうなっていないということが見てとれると思います。
戻っていただきまして、43ページでございます。これに向けた取組でございますが、具体的な対応方針につきまして、2025年における病床の必要量と整合的な合意になっているかを検証いたしまして、なっていなければ再検討をお願いしなければならない。さらに、自主的な取組が進まなければ、都道府県知事にさらなる権限付与、例えば保険医療機関の指定等に当たっての転換命令ですとか、更に進まなければ、保険医療機関の指定の取り消しなども含めまして、やはり議論していくべきだろうと考えております。さらに、地域医療構想の取組の進捗に応じまして、公費を投じまして地域医療介護総合確保基金を1,000億円程度用意しております。これにつきましても、現在、病床のダウンサイジングに改修ですとか、設備投資をしたところに補助金が行くようになっておりますが、これについてさらなる強化。場合によっては、病床を減らすのであれば、減反補助金のような形で強化していく必要もあるのではないかと考えているところでございます。
これがサプライサイドへのコントロールでございます。
引き続き飛びまして、56ページ、公定価格の適正化のお話でございます。この年末には報酬改定等ございますので、今回、基礎的な資料をつけさせていただいております。56ページを見ていただきますと、国民医療費は診療報酬総額そのものでございまして、年間約46兆円、財政構造は税金、保険料負担、患者負担でございまして、年率2.4%伸びているところでございます。これは、金額に引き直しますと、高齢化による国民負担が年間で1.1兆円増加していることになりますので、仮に診療報酬を1%適正化いたしますと、国民負担が4,600億円軽減されるということでございます。
右下の括弧書きを見ていただきますと、診療報酬の合理化・適正化に当たっては、国民負担の増加を抑制する観点というのを忘れずに、報酬改定に臨む必要があるだろうということでございます。
その下に、薬価改定と調剤報酬がございます。薬価改定につきましては、2021年度から毎年改定、本年は通常改定でございますので、本日は比較的説明を割愛させていただくことといたしまして、調剤報酬については後ほど触れますので、ここは割愛させていただきます。
飛びまして、報酬本体の改定につきまして、60ページを御覧いただきたいと思います。医療費、薬剤費を除きますけれども、この伸びが10年平均で約2.2%でございまして、医療費の単価の伸びと患者数の人口要因の伸びで構成されるということになろうかと思います。全体といたしまして、医療機関の収入増となりまして、人件費や物件費を賄っているということになろうかと思います。かつ、医療費の単価の伸びのうち、医療技術の高度化による伸びを除きました診療報酬本体改定部分につきましては、10年平均でプラス0.6%伸びておりまして、医療機関と同じ費用構造にあります一般企業、民間企業のコストに当たります人件費や物件費の伸びを示すところ、賃金、物価の伸びの加重平均を下段のオレンジの四角書きに書いてございますが、近年は10年でプラス0.02%の伸びにとどまっておりまして、この大きさを比較いたしますと、水色のほうがオレンジよりも大きいということが言えるかと思います。さらに、その他の伸び、患者数の人口要因の伸びを加えました医療機関の収入全体の伸び、戻りまして赤い上段でございますが、やはり10年平均で2.2%伸びておりますので、更にこれらの伸びを大きく上回っているということでございまして、今後も診療報酬の改定の議論に当たりましては、賃金や物価の伸びといった単価の伸びならず、患者数等の人口要因の伸びを含めた医療費全体、ひいては医療機関の収入全体の伸びの現状も踏まえて、議論に臨むべきではなかろうかと考えているところでございます。
調剤報酬に触れさせていただきます。64ページでございます。グラフを見ていただきますと、処方箋1枚当たりの技術料が増加しております。これによりまして調剤医療費のうち薬剤料等を除きました技術部分の伸びは、入院医療費や外来医療費より比較的大きなものになっております。
大型門前薬局等に対する近年の調剤報酬改定の現状も記載しております。ここで一つ申し上げておきますのは、今後も調剤報酬の改革に当たりましては、PTP包装の一般化でありますとか、全自動錠剤分包機の普及などによりまして調剤業務の機械化が大きく進んでおります。本日の調剤薬局における業務の実態や技術進歩を踏まえまして、薬剤師の業務のうち、薬をつくる、出すといった対物業務から、地域医療の中で一定の役割を果たすなど、かかりつけ的な機能が何かということを厳しく問うた上で、こうした対人業務に誘導していく、こちらについては適切に評価する、対物業務については適正化を行うといった形で臨んでいくべきだと考えているところでございます。
65ページを見ていただきますが、一言で申し上げますと、PTP包装などが一般化し、全自動錠剤分包機が普及してきているにもかかわらず、いまだに薬を手でこねていた時代と同じように、錠数なり、投与の日数に比例して単価が設定されているというのが現状でございます。このようなものにつきましても、業務の機械化等を踏まえまして、圧縮をかけていくべきだろうと考えております。
調剤業務の在り方でございますが、本年4月に厚生労働省から通知が出ております。下線のところを見ていただければと思いますが、処方箋に記載された医薬品の必要量を取り揃える行為ですとか、一包化した薬剤の数量の確認行為について、薬剤師以外の者が実施できると明示しております。これは、逆に薬剤師以外の者が行える行為を明確にすることを通じまして、薬局における対物業務を効率化して、対人業務を充実させていくといった調剤業務の在り方の議論の前提となる整理、という位置付けが可能だと思っております。
よってもちまして、薬局の多様な在り方や経営環境を踏まえた調剤報酬の評価を行う観点から、かかりつけ機能を改めて検討、見直しをして、地域におけるかかりつけ機能を担っている薬局を適正に評価する一方で、こうした機能を果たしていない薬局の報酬水準は適正化が必要だろうと考えております。
さらに、対物業務に関しまして、近年の技術進歩を踏まえた投与日数、剤数に比例する調剤報酬の妥当性を検討するともに、調剤業務の在り方の見直しによる業務効率化といった状況への対応を踏まえて、調剤報酬の適正化を図っていくべきだと考えているところでございます。
以上が、調剤報酬でございます。
68ページ、給付と負担のバランスでございます。前回の財審での委員皆様の御議論で、単位が大きいと分かりづらいという御指摘があったので、今回は単位を小さくしております。1人当たり医療費で割り算をしておりまして、75歳以上の方々の医療費・年間91万円、74歳以下の方々、いわゆる現役の方々の医療費・年間24万円、プラス後期高齢者の仕送りを5万円負担いただいているということでございます。
この負担の中身を見ていただきますと、75歳以上の方々は、85%をよそ様に負担いただきまして、15%を自分で払っている。74歳以下につきましては、現役の方々は82%を自分で御負担いただいている。あわせまして、支援金を5万円払っていただいている。結果といたしまして、高齢者支援金35万円を、現役世代5万円×7人でお支えしているということになっています。
これは、人口構成がこのような構造ですから可能でございますが、2025年になりますと人口比が1対5になりますので、35万円が一定といたしますと、おそらく1人当たり5万円では済まなくて、7万円×5人でお支えしなければならなくなる。医療費はいろいろな要因でやはり伸びていってしまいますので、91万円がそのままであるということは想定されませんので、後期高齢者支援金が若干伸びていくことが当然、想定されます。そうしますと、1人当たりの負担が5万円から7万円、7万円では済まなくて、更に上がっていくということが想定されます。
よってもちまして、年齢ではなく能力に応じた負担ということで、75歳以上の後期高齢者の自己負担の引上げ、1割から2割と書かせていただいているところでございます。
これにつきまして、69ページを見ていただきたいと思います。70歳から74歳について段階的に実施してきた自己負担割合の2割への引上げと同様に、75歳に到達した後も自己負担割合を2割のままとすることに加えまして、既に後期高齢者となっている者についても、数年かけて段階的に2割負担に引き上げていくべきではないかということを、改革の方向性としてお示しさせていただいているところでございます。
医療はこの程度にさせていただきまして、介護にまいります。74ページでございます。歴史をつけてございます。見ていただきますと、医療とは異なりまして、介護保険制度においては、法定外繰入等、横からお金が差し込まれる仕組みがない関係もありまして、給付と負担、保険料のバランスが比較的見えやすい制度でございます。制度発足から20年経ちまして、このような状況になっております。
介護給付費は、左3.6兆円から、右11.7兆円に地域支援事業に移しました0.6兆円を足しますと12.3兆円でございますので、約4倍伸びているということでございます。
これに対しまして、高齢者の方々の1号保険料が2,911円から5,869円に引き上がっておりまして、2025年までこれを放置いたしますと7,200円まで引き上がってしまうということでございます。これを踏まえまして、この年末まで介護保険制度改革に臨むに当たりまして、介護保険料をできる限り下げる、7,200円に到達しないようにするための改革に、どれだけ取り組むことができるかといった視点で、これから議論してまいりたいと思います。
76ページに飛んでいただきます。介護保険につきましても、医療と同様に保険給付の範囲、提供体制へのコントロール、それから年齢でなく能力に応じた負担と、この3点の視点で御説明してまいりますが、まず給付の範囲でございます。
制度的な背景も含めて御説明する必要がございます。2015年度から2018年度末までにかけまして、訪問・通所介護サービスの要支援者、要介護よりも更に軽い方々の介護予防給付につきまして、介護保険給付でありながら、国による一律によるサービスの提供ではなくて、緑の中にも書きましたけれども、一定の予算制約のもとで、各自治体の創意工夫で、多様な主体による地域の実情に応じたサービスの提供を可能とする地域支援事業に移行してまいりました。
結果といたしまして、予防給付から地域支援事業に移行が進むことによって、介護給付費の伸びが一定程度抑制されることが期待されておりまして、かつ厚生労働省の最近の調べによりますと、利用者のサービス利用日数が維持されつつ、次第に従前より人員配置などの基準を緩和したサービスの提供が拡大、普及しつつあるというアンケート結果も出ているところでございます。
そうした中で、これまでの取組をずっと書いてございますが、要介護1、2の方々につきましても、通所介護や訪問介護が3割を占めておりますし、訪問介護の中の約4割から5割につきましては生活援助中心型のサービスが多くございます。これにつきましては要支援1、2と同様に取組を進めていく必要があるだろうと考えておりまして、右下段、四角括弧書きで書いてございますが、要介護1、2の生活援助サービス等の地域支援事業への移行、利用者負担の見直しということで、第8期介護保険事業計画が始まります。それに当たりまして、さらなる地域支援事業への移行、ないしは生活援助サービスを対象とした支給限度額の設定、または利用者負担の引上げなどが改革のメニューとして想定されるところでございます。これが保険給付の範囲の話でございます。
飛びまして、79ページでございます。介護も非常に地域差が大きくなってございます。認定率につきましては、市町村ベース、低位20保険者と高位20保険者を比較いたしますと、認定率の甘さが2.4倍違います。被保険者1人当たりの給付月額も、下位20保険者と高位20保険者で2.2倍違うところでございます。ここには記載してございませんが、事業者数、事業所数につきましても、やはり地域差が非常に大きい状況でございます。
このような地域差を縮減することで、介護給付費の適正化を図ってまいりたいところですが、今のところ、大きな、これをやればという解があるわけではございませんが、インセンティブ交付金、合計200億円を国のほうで用意いたしまして、これをインセンティブ付けに使うということを昨年から始めております。始まったばかりですので、これが全てうまく回っているかの検証は不十分でありますが、ちなみに2018年度評価結果の実績が左下にございまして、1人当たり給付月額が高位5団体と低位5団体で4,000円ほど違います。にもかかわらず、得点を見ていただきますと、インセンティブ交付金でいろいろな取組をやりますと手を挙げていただいた結果、高位5団体のポイント数も非常に高いということです。
制度が始まったばかりですので、介護費の高いところが取組をすることでポイントを重ねているという結果であればよろしいのですが、1年、2年とたっていましてもこのままであるとすれば、これはインセンティブ交付金としての役割を果たしていないということになりますので、介護給付費の地域差縮減に向けたPDCAサイクルの確立が必要だということになろうかと思います。
さらに、これだけでは不十分と考えております。調整交付金や第2号保険料の活用についても考えてまいりたいと思っておりまして、飛んでいただきまして82ページでございます。
右に、保険料の財源構成が書いてございまして、右半分が公費、左半分が保険料でございまして、「国庫負担金【調整交付金】5%(0.5兆円)」と小さく書いてございます。ここの調整交付金につきまして、現在は地域の所得や年齢構成に応じて財政調整的に配付しているところでございますが、これにつきまして、介護費の適正化努力、重症化予防に取組に応じまして交付金を多く、取り組まないところに少なく配るということを提案しているところでございますが、なかなか制度の議論が着地しておりません。
こうした状況ではございますが、今回、新たな御提案といたしまして、2号保険料、これは、現役の方々に払っていただいている保険料でございまして、この方々は、自分の親が介護になっていればありがたみを当然感じるところでございますが、そうでない方々もたくさんおられ、また、基本的には給与から天引きされているということでございますので、あまり声を上げるということがなかなかない被保険者でございます。この方々の代表という意味も込めまして、2号保険料を重症化予防、適正化努力をしている自治体により多く、そうでない自治体により少なく配分するということが考えられないか。
そうしますと、自治体によってはどうするかということでございますが、選択肢といたしましては、1号保険料を引き上げるか、市町村の負担金を引き上げるかといった対応に迫られることになりますので、保険者機能の発揮に取り組んでいただけるのではないかと考えるところでございます。
飛びまして、87ページ以降、介護報酬改定について記載しておりますけれども、本年、介護報酬改定はございません。来年になりますので、88ページだけ御覧いただこうと思います。
介護保険制度の創設以来、民間企業の自由な参入は可能とされておりますが、基本的に事業者は介護報酬を下回る価格を設定することが可能になっております。価格競争が可能になっておりますが、事業者が非常に増えておりますけれども、介護報酬を下回る価格を設定いただいている事業者は、今のところ確認されておりません。
他方、ケアマネージャーも少し絡んでまいりますけれども、制度発足当初以来、独立して活動するケアマネージャーの増加が期待されておりますが、サービス事業所に属するケアマネージャーが多数を占めております。ケアマネージャーの事業所がケアプランを作成するに当たりましては、特定のサービス事業所への集中割合が相当高まっておりますので、80%を超えたら減算せよという仕組みまで導入されているところでございます。
そうした中にありまして、ケアマネージャーの利用者に対する説明責任につきまして、2018年度から、あらかじめ利用者に複数の事業所の紹介を求めることが可能でありますとか、ケアプランに位置付けた事業所につきまして、その理由の説明を求めることが可能といった点が加えられているところでございますが、その程度にとどまっているところでございます。よってもちまして、利用者側の求めによらずとも価格の自由競争を促す観点も含めまして、ケアマネージャーに複数の事業所のサービス内容と利用者負担、価格について説明することを義務付けるなど、サービス価格の透明性を図っていくべきではないかと考えているところでございます。
続きまして、給付と負担のバランスについて、90ページまで飛んでいただきます。介護につきましても、やはり公平な負担を実現する必要があると考えております。左の絵を見ていただきますと、介護保険費用は年間で11.7兆円、高齢化による増加分が4.7%伸びておりまして、利用者負担が0.9兆円、7.6%に留まる中にあって、1割負担の方が9割ということになっております。
左下のグラフは、GDPの伸びを超える介護給付費の伸びでございますが、2号保険料も加えて記載しております。2号保険料、1号保険料とも相当な伸びを示しておりまして、2号被保険者の方々は基本的に天引きをされている方々で、大きな声を上げることのできる立場でもございませんけれども、そういった方々のためにも、利用者負担を原則2割とすることや、利用者負担の2割に向けてその対象範囲を拡大するなど、段階的な引上げをしていきたいと考えているところでございます。
これに付け加えまして、ケアマネージャーのサービスは、現在、施設のサービスについて定額のサービスが入っておりますが、在宅サービスについては無料になっております。そういったものにつきまして、ケアマネジメントの利用者負担の導入等を図ってまいりたいと考えているところでございます。
続きまして、子育てにまいります。100ページまで飛んでいただこうと思います。幼児教育無償化が、本年10月から始まります。保育の無償化、それから保育施設の充実等々を進めてまいりますけれども、そういった中で、やはり公定単価の適正化というのも忘れてはならない論点ではないかと考えております。
子ども・子育て支援制度につきましては、新制度施行後5年の見直しを迎えるに当たって、公定価格の適正化が必要だと考えております。公定価格は、地域区分別、利用者定員別に応じて積み上げされた基本額に、事業の実施体制等に応じました加算を加えたもので、そこから利用者負担を控除した金額を保育所にお配りしているということでございますが、左上の図1のとおり、保育士不足で加配ぎみにもかかわらず、収支差が非常に大きくなっておりまして、中小企業の平均を上回るものになっております。
公定価格の内訳につきましても利用実態を反映した適正化が必要と考えておりまして、例えば図2のとおり、保育所は原則、土曜日開所が必要でございます。土曜日の利用者の希望がない場合には常態的に土曜日を閉所することが可能ですが、この場合、公定価格における土曜開所に係る費用を定率で調整して減額するという仕組みになっております。しかしながら、実際の運営状況を見ますと、開所していても利用児童数や職員日数は平日の半分以下ということでございまして、複数の保育所による共同保育所を実施した場合には、その週に閉所している施設も開所しているものと扱われまして、公定単価が算定・給付されているところでございます。
よってもちまして、例えば常態的に土曜日を閉所する場合、減算の調整をすることになっておりますが、利用実態、運営実態に応じてきめ細やかな減算の仕組みを導入する必要があると考えておりますし、こういう細かな積み上げが非常に困難であるということでございますれば、積み上げ方式から、実態調査に基づきまして人件費、事業費、管理費等を包括的に評価して、包括的にお渡しして、その中で工夫してやっていただくという包括方式への移行も検討すべきではないかと考えているところでございます。
私からは以上です。
〔 関口主計官 〕 続きまして、厚労第二担当の関口でございます。私のほうからは、年金について発言をさせていただきたいと思っています。資料は、年金については全部で7枚でございまして、最初の2枚が総論について、次の5枚が個別の論点でございます。
まず、総論の1枚目でございますけれども、102ページを御覧いただければと思います。書かれておりますとおり、本年2019年はいわゆる財政検証が行われる年でございます。その意義が、記載されているところでございます。
年金制度は、2004年に抜本的な改革が行われました。2004年以前は予定した給付を賄うために保険料を引き上げていくという枠組みになってございました。その後、年金制度の持続可能性を確保するという観点から、年金制度の抜本的な改革を2004年に行いまして、負担を固定する一方で、その財源の範囲内に給付を抑制するという枠組みに作り変えたところでございます。
その結果もございまして、平成時代を通じてGDP比で見た年金給付費の割合がずっと上がってまいりましたけれども、今後、その伸びが抑えられて、9%程度で推移すると見込まれているところでございます。
5年ごとに、この枠組みが適切に機能しているかどうかを点検する枠組みが財政検証でございまして、財政検証はこの給付水準の調整期間を定めることが目的でございます。調整の結果、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ることが見込まれる場合には、給付及び負担の在り方について検討を行うということにされているところでございます。
前回、2014年の財政検証では、年金制度改革の検討に資するようにということで、一定の制度改正を行った場合に年金財政にどのような影響が及ぶかという、いわゆるオプション試算というものが初めて行われてございまして、今回もそのようなものが行われることになっているところでございます。103ページを御覧いただければと思います。先ほど申し上げた2004年の改定をもちまして、おおむね仕組みとしては出来上がった訳でございますが、デフレの長期化によりまして給付水準の調整期間が長期化してございまして、将来世代の基礎年金の給付水準が、2004年の改正時に想定されていた水準よりも低くなることが見込まれているところでございます。さらに、女性や高齢者の就労が進展しているといったことを背景として、パート、アルバイトといった短時間労働者が増加しておりまして、働き方が多様化しているところでございます。
こうした中で、将来の基礎年金の給付水準の維持・向上を図り、働き方を巡る変化に対応した年金制度としていく必要がございまして、その際には再分配機能を適切に確保していくことなどが重要であると考えてございます。こうした観点から、6つの課題が指摘できまして、104ページ以降でそれぞれの課題について改革の方向性をお示ししたいところでございます。
104ページでございますけれども、これは年金額の改定の在り方でございます。2016年の年金改革法によりまして、経済の状況に合わせて給付水準の調整をしっかりと行うという観点から、幾つか改革が行われてございまして、既に施行されている改革もございますれば、まだ施行されていない改革もございますため、その効果を注視していく必要があると考えているところでございます。
次に、105ページでございます。こちらは、被用者保険の適用拡大と言われるものでございます。公的年金保険は、1号と2号と3号と大きく3つに分かれてございまして、1号が主に自営業者ですとか、無職の方々、2号が被用者、3号が被用者の配偶者と大体なっていますけれども、被用者であるにもかかわらず、働く時間が短いといったような理由で、1号の被保険者となっている方々の割合がどんどん増えているという実態がございまして、かつての状況とは大きく変わってきているところでございます。
被用者の立場からいたしますと、1号の国民年金から2号の厚生年金に移行した場合、保険料の支払いは全額個人負担であったものが会社との折半になる。そして、受給額も、基礎年金に加えて報酬比例部分も受給できるようになるということで、将来の所得保障の充実が図られるということでございます。
さらに、適用拡大が制度全体に与える影響として、基礎年金の給付水準の改善が図られるといった効果もあるところでございます。これまでも、適用拡大というのは事業主の保険料の負担能力という問題もございますので、そういったことも踏まえて、企業規模要件ですとか、賃金要件を設定しながら進められてきたところでございますけれども、適用拡大が持つ意義ということに鑑みて、引き続きその拡大に努力していく必要があると考えているところでございます。
次に、106ページでございます。これは、保険料の拠出期間の延長でございます。前回の財政検証で行われたオプション試算の中で、国民年金の60歳までの保険料拠出期間を65歳まで5年間延長した場合の試算が行われました。その結果を見ますと、所得代替率が4%上昇する一方で、国庫負担が将来的に年間1兆円前後増加するという結果が示されているところでございます。仮に、国庫負担に見合う財源を確保しないで制度改正を行う場合には、将来世代に対して過重な付け回しをするということになりますので、問題ではないのかと考えているところでございます。
次に、107ページを御覧いただければと思います。こちらは、在職老齢年金制度と高所得者への年金給付等の在り方の見直しということでございます。在職老齢年金制度とは、65歳以上の方々、高在老ということでございますけれども、年金額を10万円と仮定した場合、賃金と年金の合計額が47万円になるまでは年金は10万円受給できるということでございますが、47万円を超えますと徐々に年金額が減額され、この例であれば賃金が57万円以上になった場合、年金額はゼロになるという話でございます。
そして、在老による支給停止で生じた財源というのは、受給者全体の将来の給付に充てられるという制度になっているところでございます。昨年の「骨太の方針2018」におきまして、在老の見直しなどによって高齢期の就労に中立的な公的年金制度を整備するとされているところでございますけれども、論点としては、緑の枠の白い丸の2つ目のところでございますけれども、特に65歳以上の在老、いわゆる高在老につきましては、年金の支給が停止されるのは賃金と年金の合計で月47万円を超える収入がある受給者の方々で、受給者全体の1.4%に限られているということでございます。
高在老による支給停止で生じた財源というのは受給者全体の将来の給付に充てられているので、在老の縮小や廃止を行う場合、高収入の受給者に追加的な給付を行う一方で、現行制度が維持されても在老の対象にならないような、相対的に収入が少ない将来の受給者の給付水準は低下するということになるところでございます。
したがって、この在老の見直しは政策的意義を持つと考えられるものの、見直しの際には不公平感が生じないような工夫が必要だと思ってございまして、高所得者に係る基礎年金の国庫負担部分の支給停止、いわゆるクローバックと言われるものについて検討するとともに、今後の年金課税の見直しに当たっては、再分配の観点からも検討する必要があるのではないかと考えているところでございます。
最後に、108ページ目でございますけれども、これは繰下げ受給の柔軟化でございます。現在、公的年金の受給開始時期は、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができることになってございます。70歳を超えて受給開始年齢を繰り下げて、更に給付水準を高めるという選択をすることはできないことになってございますけれども、70歳以上の雇用者数が増加傾向にある、あるいは70歳を超えても働くことを希望する高齢者の方も4割に上るという中で、現在、70歳までとされている繰下げ受給の上限年齢を引き上げることは重要ではないかと考えているところでございます。
私からの発言は以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、これから質疑に移りますが、各委員のお手元に、本日、欠席の村岡委員の意見書が配付されております。こちらのほうにもお目通しをいただきたいと思います。
総論、それから医療、介護、子育て、年金と多岐にわたりますけれども、1時間ぐらいの時間がありますので、各委員に手短にお願いしたいと思いますが、御意見がある場合はネームプレートを立ててお願いをいたしたいと思います。
そうしましたら、一番向こう側の土居委員のほうからお願いします。
〔 土居委員 〕 御説明、どうもありがとうございました。
実際に具体的な制度改正を行うのは秋以降の議論だと思いますので、国民に広く、どのようなところが社会保障の改革の論点になっているかということを、本日こういう形で表に出していただいたということは大変重要なことだと思います。特に、これまでの議論の中でも、年金については5年に1回の財政検証にあわせての制度改正ということになるので、なかなか財審でもきちんと議論をする機会があまりなかったですけれども、今回は是非、春、秋、それぞれしっかり議論をしていただく必要があると思います。
その上で、医療、介護、年金と3点、申し上げたいと思います。
まず、資料の48ページの地域医療構想ですけれども、これはレセプトデータに基づいて、人口推計に添いながら、客観的に入院医療の需要予測をした上で求められているベッド数でありますから、これを客観的な数字だということを現場の医療機関の方々にもしっかり御理解いただいた上で、患者が減るということだったらベッドを減らすということを、病院としてもしたほうがいいとお勧めするということで促していくことが大事だと思います。
それから、介護の点については、46ページに地域支援事業があって、これが必ずしも利用抑制という話にはなっていないということが確認できたならば、要介護1、要介護2の人にも地域支援事業へ移行するということを積極的に第8期介護保険事業計画ではやっていただきたい。
それから、80ページの要介護認定ですが、コンピューター判定でやっているわりに、何でこんなに都道府県で要介護認定率が違うのか、やはりきちんと厚生労働省には理由を突き詰めていただくということをもって、要介護認定で地域差があからさまに生じないような形にしていただく必要があると思います。
92ページのケアマネジメントですけれども、私も介護保険の議論に関わらせていただきながら、議事録を振り返ってみますと、2010年からケアマネジメントの質的向上とか、毎回、3年に一度、制度改正しているのに、2019年になっていまだに質的向上が必要だと言われているというのは、この10年、一体、ケアマネジメントは質的向上をどうやって図ってきたんだと、こういうことを言わざるを得ないと思います。しっかり利用者負担を入れて、ピアプレッシャーのもとで、利用者との間できちんとケアマネジメントを改善していく手だてを講じる必要があると思います。
最後に、年金ですけれども、在職老齢年金の話が107ページにありますけれども、果たして在職老齢年金制度が高齢者就労の阻害要因に本当になっているのか、やはりエビデンスが必要だと思います。減額されているから就労を阻んでいるのではないかと言っているけれども、別に手取りが減るわけではない、手取りの逆転現象がこれで起こっているわけではないということだと思います。本当に高齢者就労を阻んでいるならば、廃止するなり、改正が必要ですけれども、その際には年金課税の強化、ないしはクローバックを同時に行う必要があると思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
中空委員、お願いします。
〔 中空委員 〕 吉野主計官と関口主計官、本当に御苦労様でした。
春と秋に建議をまとめるに当たり、やはり毎回毎回、何を主にしているのかというメリハリは必要かと思います。そう考えると、いつも同じことがきちんと書かれているというものよりは、今期はこれに力を入れたというのが分かってもいいのではないか、と思っていて、そういう意味では、ページ数からいっても、今期は医療に力を入れていますと解釈したのですが、それでいいですかというのが1つ目、質問です。
2つ目は、アウトカムに基づいてインセンティブを付けていきましょうという良いお話がありました。それはそうだと思いますが、この財政再建を考えていく中でも、もう少し定量的なものが欲しいかなと思います。例えば、37ページに自己負担の医療の支払いの部分がありました。この部分をどう引き上げていくと、幾ら医療の財政が変わっていくのか、というようなことを出していけないのか、ということです。実際にこうすべきという方向性については大筋賛同できるということだと思いますので、これからはHowの部分に焦点を当てて、何を、どうすれば、幾ら節約できる、効率化できるということを打ち出していく工夫が必要ではないかと思っています。これは2つ目、どちらかというとお願いです。
3つ目は、例えば地方自治体にインセンティブを与えますという話があります。それをして地方自治体にお金を渡すわけですが、でも、予防して頑張っているのは実は国民一人一人であり、ということになります。そうすると地方自治体からも国民個人にインセンティブを還元するべきではないのか、それはどう行うべきで何ができるのか。そこまで考えると、地方自治体も巻き込んだ一体の施策になっていかないと形骸化するのではないかと考えて聞いていました。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 広瀬委員、お願いします。
〔 広瀬委員 〕 財政再建するためには、経済成長、それから財源確保、歳出削減ということ、3つやっていくわけですけれども、特に歳出削減の中では、何といっても突出して大きな塊である社会保障、これに正面から立ち向かっていかなければいけないということは、全く異論のないところだと思います。
ただ、非常に厳しいのは、まさにここは本当に痛みを一番伴うところですから、何となくこちらも気が咎めるという感じになってしまうわけです。そうなると、やはり確信を持ってこれに立ち向かっていくためには、バックボーンとなるような、理念、コンセプトみたいなものがまずあって、その上で具体的な政策が出てくると、こういうことになるのではないか。
例えば、世代間のバランス、これからはお年寄り、高齢者から、もう少し若い人にシフトできないか、お年寄りに頑張っていただけないか。あるいは、受益と負担の問題にしても、恩恵を被る方、あるいは能力のある方については、もう少し頑張っていただけないか。そういうようなコンセプトのもとに、例えば75歳以上の2割負担の問題、あるいは医療費1回100円でも増やせば大変な金額になるわけですから、そういった具体的な施策につなげていただければと思います。
それから、最後に1つ、前回、若い人にもう少し声を上げてもらうという意見が多かったと思いますけれども、もちろんそれも大切ですけれども、私は、むしろ高齢者の方にもう少し声を上げていただくようなことを少し工夫したらどうかと考えています。例えば、社会保障を考える高齢者の会をつくるとか、あるいは高齢者頑張ろうとか、高齢者の方から声を出していただけるような仕組み、そういったものを、非常に難しいと思いますけれども、作っていったらどうかと考えております。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
堀委員、お願いします。
〔 堀委員 〕 包括的な説明をありがとうございました。16ページの天の川のベルトのところから、給付と負担、受益と負担の説明というのは非常に分かりやすかったですし、国民の皆様にもそれが是非伝わればいいと思います。
今回、こちらで示された視点と方法について、大枠についてはいいとは思いますが、細かく見ると、例えば保険給付の見直しのところにあります大きなリスク、小さなリスクというのは、金額だけなのかどうかというところはやはりあると思います。家計が破綻するかもしれないための小さな金額のリスク、大きなリスクということを言っているのかもしれないです。あるいは、国家財政にとっての大きなリスク、小さなリスクと言っているのかもしれません。医療保険は、そもそも何のためにあるのかというと、疾病という社会的リスクをどういうようにカバーするかということですので、給付の内容、本当に命にかかわるような重大な病気なのか、そうではないのか、軽症なのか、そういうところも伝えていったほうが、ここは財審なので単純にお金がメインだと言うかもしれないですけれども、制度の持続可能性というところでは、単純にお金のことだけではなくて、違う表現の仕方の工夫が必要なのではないかと思いました。基本的に保険給付の見直しというのは大賛成ですし、必要かつ有効なものは残すべきだと思いますが、一度、保険に収載されてしまうとそのまま、というような仕組みがありますので、そこを見直していくというのは非常に重要な視点だと思いました。
それから、地域医療構想についても、インセンティブの話と、補助金をどう設定するか、それから一般会計繰入をさせないという視点は非常に重要な視点だと思いますし、地域差を解消するという視点もあると思いますが、地域差の中には地域が自ら選んでいるものもあると思いますので、そういうものに関しては、地方が主体的に診療報酬であるとか、保険について意見を言えるような仕組みがあってもいいと思いますので、そういう意味では賛成です。
また、高齢者の自己負担についても、負担増というのではなくて、先ほど広瀬委員が言いましたけれども、高齢者自身が考えることによって、これは負担増ではなくて高齢者の社会貢献という視点もあると思いますので、そこを全国民で議論できるようにすると、負担増ではなくて、これは自分たちが生き残るためにも必要な貢献なのではないかという流れに持っていくことによって、単なる痛みではなくて、痛みにもいろいろな種類があるという部分をきちんと議論していく必要があるのではないかと思います。
ただし、医療供給側のコントロールについては、飴と鞭という視点があっていいもとは思うのですが、どのようにすれば動くのかという部分をもう少し工夫してもいいのかなと思いました。
介護に関しても基本的には賛成ですが、現状ですと、要介護が低い、あるいは自立度が低いことによる個人的なインセンティブがあまりないと思いますので、ケアマネージャーに関しても、ケアプランをつくるときに、単純に数字を低くするのではなくて、どうすれば低くなるかというところを標準化できるようなケアプラン、すなわちケアプランの標準化というところで、お金の面だけではなくて、要介護度が低い状態でいられる生活にするにはどうすればいいかという視点も必要ではないかと思います。給付の見直しで総合支援事業に移行するというのは、それはそれでいいかと思います。
最後に、年金の被用者保険の拡大のところですが、これは年金だけではなく、医療も、介護も被用者保険を拡大するという全体的な方向性はいいと思うのですが、1号から2号に行くのか、3号から2号に行くかによって、国庫負担に与える影響はかなり違うのではないかと思いました。被用者保険全体で3号の保険料、基礎年金の部分は負担していますので、それが変わるとどうなるのかというところはあるかなと。あとは、医療の場合だと任意継続とか、ほかの保険に対する影響もありますので、全体的方向性としてはいいと思いますが、タイミングを見なければいけないのではないかと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 宮島委員、お願いします。
〔 宮島委員 〕 ありがとうございます。
病気を予防さえすれば医療費が減るという見方が与える印象については前回の建議の際も議論がありました。これについては、私の理解は、その議論をしている人たちも、別に予防をやれば医療費の削減努力をしなくていいと言っているわけではないので、そこを明確にアウトプットしてもらうとともに、補助金を使わないで、少しのインセンティブなどで健康な高齢者を増やすのは、それそのものは良いことだと思います。
更に言えば、実は負担増というのはどうしても暗い話で、それだけをやると、やはりなかなか受け入れてもらえないので、何とか明るい部分を前面に出しながら、歳出削減や負担増はきちんと進めていくという形を工夫するのがいいと思います。
その中で、特に負担が過剰に国民に伝わりやすいというケースを私は感じております。例えば、ニュースで私たちが出すときに、75歳からの医療費負担を2割にするという項目で出します。そうすると、放送が終わった後に高齢者の方から、それは困るというような電話やメールがいろいろ来るわけです。
その場合に、説明の仕方として、75歳の人は皆2割になるぞと言うと、残念ながらかなり多くの人から、表向きはいいと言っても内心は嫌だというような反発が出ます。でも、これを、まずは団塊の世代の人たちに、75歳になっても今と同じように2割負担してくれませんかと、2割負担をお願いするというところからスタートすると何とかできるのではないか。
今75歳以上の人に不要な心配を与えずに、人数の多い団塊の世代にまず呼びかけるのがいいのではないか。
それから、制度の間の無駄に関しては、やはり実態の明確な効果の調査と、インセンティブのコントロールというのがいろいろな意味で大事だと思います。地域医療構想は、構想としてすごくいいけれども、自治体で上手くいっていない部分もあるとありましたけれども、やはり気になっているのは介護で、要介護度を軽減するためのインセンティブの交付金に関しては、まさにどのように効いているかを非常に気にしております。一部の人は頑張るけれども、他の人はあまりやっていなくても、そのまま何とかなるというのではなくて、むしろやるしかないほど明確なインセンティブは何かといったことをきちんと実態を確認しながら進めていくということが大事だと思います。
医療に関しては、医者の数というのも気になりまして、医学部の枠は働き方改革の中でいろいろな議論がありますが、とにかく地域枠というものがきちんと機能しているのかどうか。今、実態としては、結局、地方の国立大学まで首都圏の優秀な学生を吸い上げて、全体の偏差値が上がって、その人たちが本当にずっと地方に残ってくれるかどうか分からないというような状況があるわけです。なので、地域枠の中にも幾つか抜け穴があると聞いておりますけれども、そこをちゃんと押さえた上で、日本全体として一番優秀な人たちが、理系の優秀な学生のかなり多くが医学部に行くような現状を放置して、日本のこの先は大丈夫かという視点も考えたいと思います。特に、医学部に行くと他の職種よりメリットがあると親たちが考えるから医学部に吸収されていくと思いますので、これは日本全体の未来を考える上でも課題だと思います。
自治体に関しましては、いろいろな入りと出の明確化が必要だと思います。特に、子供の医療費の無料については、私は、子育て支援をしつつも、子供が医療費はタダと思って育つというのは精神的な意味も含めてよくないと考えているわけですけれども、やっと無料を考え直す自治体も出てきましたところで、このお金はどこから出てくるのか、誰が負担しているかということを明確にして、自治体の支出も含めて、より自分事に考えられるような実態調査と、そのインセンティブの付け方というのが大事かと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 吉川委員、お願いします。
〔 吉川委員 〕 まずは、御説明にあった改革の方向というのは、私は全体として正しいと思います。支持したいと思います。
社会保障の改革というのは、しばしば暗いと捉えられるというのが誤解に基づくと、私は思っています。改革をしなければ持続可能でなくなるわけですから、暗い話ではないということをやはり理解してもらう必要があると思います。その上で、医療保険については、私は、やはり保険ですから、高額療養費制度であって、大きなリスクは共助、小さなリスクはできるだけ自助努力、もちろん低所得世帯等にはきちんと配慮する、この理念は正しいと思いますし、改革の方向はこうであると考えます。
県単位での計画、医療の提供体制ですが、これが必ずしも進捗していないということのようなので、私は、政府がもう少し強い指導を県に与えるべきだと思います。政府部内では、健康増進、予防医療等に関する議論が進んでいるということのようですが、もとよりこれは正しいのでしょうが、これで社会保障が持続可能になるとは考えられない。これは、やはり健康寿命増進という面での話であって、いわゆる社会保障の改革とは少し別の問題だと考えるべきではないでしょうか。
年金については、公的年金というのは、確かに一方では強制貯蓄、若い時代に保険料を払って、年をとってからきちんと契約どおりにもらうという面がありますが、もう一方では、明らかに長寿に関する、それは不確実なわけですから、長寿のリスクに対する保険としての面もあると私は思います。この場合に、年をとってからある程度の所得があるという人は、火災保険に例えれば家が焼けなかった人とも考えられる。こうした側面から、現在、基礎年金の半分は公費になっているわけですから、将来的には、ある程度以上の所得の人は基礎年金の半額が減額されるというようなことは、私はリーズナブルなことだと思います。公的年金には2つの側面があるわけですから、保険としての側面からすれば、ある年になってからも一定以上の所得があるということは、それはおめでたいことであって、火災保険で家が燃えなかった人間だという側面もあると考えます。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 神津委員、どうぞ。
〔 神津委員 〕 総論に絞って申し上げます。御説明のあった中で、社会保障を巡る状況の認識を共有するものです。つまりは、我が国の社会保障における最大の問題は、そもそもの税、財政構造が、制度の持続性、包摂性を損ねるものとなっているということだと思います。その上で、個々の支出削減策だけに頼り、それが積み重ねられるということで、社会保障の理念、広く国民に健やかで安心できる生活を保障するという理念そのものに揺らぎが生じているということだと思っています。
そして、個々の支出削減策の積み重ねは、結果として、低所得者など社会的弱者に限定した救済を目的とする仕組みを相対的に増加させることになります。目下、自己責任論が横行する風潮とも相まって、財源の使途が偏っていくことは、中間層が持つ重税感や痛税感を更に助長してしまうのではないかという懸念を持ちます。
もともと我が国は、実際の消費税率が欧州の先進国と比べて格段に低いにもかかわらず、重税感や痛税感が反比例して高いのが実情だと思います。このようなことが、国民負担のあるべき姿に向けた改革を更に遅らせることを懸念いたします。高齢化、過疎化、単身化などで、地域や家族の支える機能が低下している中で、緊急避難的な対策では、今、申し述べた観点を含めて、かえって禍根を残すのではないのかと思います。
具体的な施策については、もう徹底的に合理性の追求、これは重点を置く必要があると思います。その上で、広く国民全体が納得できるアカウンタビリティを伴うものとすべきだと思います。今後、どうなるか分からないとか、あるいは社会保障制度を当てにできないという疑念を広げてしまって、実際の効果が一部の限定的な部分にとどまるようなものは避けるべきではないかと思います。全世代支援型の社会保障への改革は道半ばであり、改革をさらに進めていくには、財政だけでなく、まちづくり、住まいといった幅広い視点で、各政党、労使、国民各層の参加の横断的な協議による検討体制も不可欠ではないかと思います。そういった国民的な合意形成が必要だと思います。
最後に一言ですが、このままでは財政も、社会保障も破綻を覚悟せざるを得ないのが現実ではないかと思います。遅きに失していると思いますが、そうとはいえ、実効性のある納税者教育を進めつつ、真の税制改革とともに、国民全てが等しくメリットを享受、納得、実感し得る社会保障制度を志向すべきだと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 秋池委員、お願いします。
〔 秋池委員 〕 企業は、同じ効用をより安く提供するか、あるいは価格を変えずに効用を上げるかということを考えて行動します。そして、そこで作られたものやサービスにどういう価格をつけるのか。また、生み出された収益を自社、あるいは利用者である顧客、そして、その他のステークホルダーとどのように分配するのかということを考えて行動します。今回、議論になっている領域で、このような行動が引き出されるような制度になっていけば社会保障領域の進化につながると思いますし、制度を作っても、もしそのように動かないのであれば、その理由を探しに行くということかと思っております。
〔 増田分科会長代理 〕 大槻委員、お願いします。
〔 大槻委員 〕 ありがとうございます。
今回、広い議論をしていただき、これをいかに伝えるかという問題のところで1点だけなんですけれども、国民は、苦しさは恐らく分かっている。ただ、それがなぜなのかは、なかなか腑に落ちない、ということだと思います。どうやって同意が得られないかとすれば、不公平感がある場合と、これをやったらポジティブな面が出るといったようなプラス思考の考え方ができるかどうか、この2つが重要だと思っております。
1点目については、もう様々工夫されているところですが、金融機関に勤める者として気になるところは、これからの金融資産に対しての基準についてですが、せっかく公平感を増すためにやるのに、そこで不公平感が何らかの形で出るようなものにならないような、例えば有価証券、預金、それらをどこまで、どういった形で捕捉するのか。テクニカルには非常に難しいと思いますが、不公平がないようにということが1点。
ポジティブなところでは、37ページ目にありましたような、先ほど来御説明、御指摘もある大きなリスクについて、自己負担なく高度な医療が得られるというポジティブな側面、補足資料の19ページ目などで、がんの将来的な高度医療についても資料をいただいていますが、そういった形で、より良い医療を受けられるためにある、といったようなポジティブな伝え方ができればと考えております。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 黒川委員、お願いします。
〔 黒川委員 〕 ありがとうございます。大変素晴らしい資料で、また、工夫がされていたと思います。分かりやすかったと思います。
本日は1つだけ、調剤薬局のお話で、66ページには調剤薬局はコンビニより多いという驚きの表ですけれども、65ページに戻って、方向性として、対物というよりも対人関係の専門性を薬剤師の方々に求めていったらどうかということで、例を一つだけ挙げたいと思います。
私も、御近所のかかりつけのお医者さんと、かかりつけの薬局に行きますけれども、そこで薬局の人が、今度、新しい薬ですねと言われたことから、少し話をすることになったのです。そうしましたら、その薬は1日1回投与ということなのですけれども、その薬を飲んだときに、一体、何時間後に効いてきて、何時間ぐらい経つと1日の間で効果が薄れるのかという臨床のデータをグラフ化したものを出してくれて、1日1回だけれども、私の症状に応じて飲むタイミングはどの辺がいいですよということを教えてくれたのです。さらに、この薬については、最新の、もうちょっと改良された薬もあるから、あまり効かないようであれば、かかりつけ医の先生と相談をされたらどうかというようなことをおっしゃった。これは、とても素晴らしいことで、まさに薬剤師もプロフェッショナルで、プロフェッションとしての仕事だと思った次第です。
最後にお聞きしたいのは、私の関係する会計のほうのプロフェッション、公認会計士などは、そのプロフェッションとしての能力を維持するために、毎年、研修を受けなくてはいけません。また、場合によっては学会に出てきても、そのポイントをもらえるという制度もあります。ですから、私のディスクロージャーとか、経営分析関係の学会では、比較的、公認会計士の方も学会に来られるのです。薬剤師の方々は、その能力を維持するために毎年、研修を受けるとか、そういうような制度になっているのかどうか、お調べ、あるいは教えていただきたい。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 佐藤委員、お願いします。
〔 佐藤委員 〕 ありがとうございます。
39ページに基づいた話として、今の日本の診療報酬というのは、要するにいろいろな診療行為の点数を全部合算して、それに10円を掛けて、そのうちの30%が自己負担、残りの70%が保険給付という形で、いわゆる合算されていますけれども、もう少し区分経理という考え方を入れたらどうかと。例えば、これは後発薬品なので30%です、これは長期収載品ですから50%ですとか、OTCに対応する薬がありますので、この薬については60%なり、70%ですという形で、区分経理という考え方を入れると、フランスのような薬剤の自己負担の差別化というのは比較的可能になりますし、保険外併用療養費制度も使いやすくなると思うのです。
似たような話が、去年、結構話題になった妊婦加算がそうで、親切心で点数を上げてあげたら30%の自己負担も上がってしまって、非常に不評だったわけです。でも、よく考えたら、妊婦加算のところは100%保険で、自己負担はゼロですというのは、区分経理をやればできるということになりますので、その辺は一工夫あっていいのかなと思います。
先ほどの調剤の話で、投与日数に応じて調剤料が上がるというのもやはり昔の仕組みを前提にしている。今の仕組みに応じて、経理システムに応じた形で、こういう区分経理ができればいいのではないかと思います。
最後に1点だけ。年金についての適用拡大ですけれども、少し注意しなければいけないのはフリーランスの存在で、複数事業所に勤めている人がいますので、その場合、適用拡大というときにどうするのか。彼らの所得を合算して適用しないといけないので、この辺りは工夫が要るかなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員 〕 ありがとうございます。私からは、2点申し上げます。
まず、今年度につきましては、有権者、国民の皆様に広く情報開示をするということが一つの主眼でございますので、16ページ、これを使って、私が普段、どういうように御説明しているかと申し上げますと、このグラフを見ると、一見、フランス、デンマークがよさそうに見えますけれども、実はこれは一緒ですと。フランス、デンマークは、銀座のレストランでフレンチのフルコースを食べている、ただし自分のお金だと。韓国は、新橋の牛丼屋で、自前で食べている。一方で、日本はどうかというと、多分、和食の定食を日本橋か、人形町辺りで食べているけれども、実はこれ、何割かはツケで食べている。そのツケは誰が払うんですか。それは、お子様、ないし孫世代です、こんな国は日本だけですと、こういう話をしています。良い例えかどうか分かりませんけれども、やはり分かりやすい例えが必要だということ。
もう1つ、102ページですが、今年は年金の財政検証がありますので、これに関して申し上げますと、年金給付が最近実質的に減っております。私の理解では、多分、2013年度以降、年金の給付額は物価対比では約6%減っています。なぜかというと、半分弱の2.5%は99年以降の年金の特例給付の見直し分です。4分の1ぐらいがマクロ経済スライド、これが2年間で1.4%です。もう1つは、実質賃金が伸び悩んだこと。年金というのは賃金にスライドしますから、物価対比で見ると減ってしまっている。
要は、急に制度変更するとこういうことが起きてしまって、経済にも影響がある、あと、ギャップができてしまう。だから、やはりこういう制度変更というのは、早く始めて、ゆっくりと進めたほうが経済への影響も小さいし、世代間の不公平も是正されるので、よいと思われる点はなるべく早く実現していったほうがいいということでございます。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 武田委員、お願いします。
〔 武田委員 〕 大変詳しい御説明を、本日はありがとうございました。2点、申し上げたいと思います。
まず、1点目ですけれども、今後の主な改革の方向性には基本的に賛成でございますが、これまでも申し上げてきましたとおり、時間軸とメニューは皆様、賛成だと思いますので、Howの部分の議論を是非お願いしたいと思います。特に、優先順位を考えますと、75歳以上の後期高齢者の自己負担の見直しは、2022年までに必ず間に合うように進めていただきたいというのが1つ目でございます。
2つ目は、何名かの委員からも出ておりましたけれども、私も改革の後の姿として、健全で、持続的な社会の姿のイメージが持てる、俯瞰的な議論が必要と思っております。その際にポイントとなるのは、改革とあわせて技術をうまく活用していくこと、地域での技術の活用、地域の在り方といった組み合わせが必要なのではないかと考えます。
例えば、介護に関して、先ほど生活支援について見直しが必要というお話がありましたけれども、生活支援がなぜ使われているかといえば、介護離職の問題であったり、75歳以上のひとり暮らしの世帯が多いなど、社会構造の変化も背景にあるように思います。どうすれば技術で自立した生活を支援することができるのか、これを民間ビジネスで回していくにはどうしたらいいのか、あるいは、介護の支え手として高齢者の就労をもっと地域でうまく活用できないのか、といった視点も必要になってくると思います。
つまり、分野横断的で、将来の社会の姿を見据えた俯瞰的な議論が必要ではないかと考えます。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 伊達委員、お願いします。
〔 伊達委員 〕 ありがとうございます。
制度論に関して、病床なり、インセンティブなり、負担の在り方を変えていくなり、その辺りについては、いずれも賛成です。早くやっていくことが重要だと思いました。一方で、骨太のものを作るにあたっては、今回のテーマとは違うのかもしれませんけれども、ITの導入であるとか、AIの活用といったことを考えながら、生産性向上も考えていく必要があるのではないか。そのために、例えば年3%、必ず落としていくとか、そういった目標も設けたほうがいいのではないかと思いました。
また、これらを導入することによってデータが集まるはずですし、また、46兆円という医療費がかかっているわけですけれども、その7割以上を国が負担しているということを考えますと、そのデータというのは、個人のデータである一方で、国のデータとして扱ってもよいのではないでしょうか。データ自体が活用できれば開発研究が進みますし、有料で研究機関に販売していくことによって運用コストを下げていくなど、民間的メカニズムを考えていくことが合理的なのではないか。そういう形で、将来にわたって社会保障制度が持続する新しい仕組みを作っていただきたいと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 田中里沙委員、お願いします。
〔 田中(里)委員 〕 これだけの問題をきめ細かくリサーチしていただいて、顕在化いただいて、改善の方向や対策を見通されていますので、大変参考になりました。
注目点の一つとしまして、医療・介護制度については、これから年齢でなく能力に応じた負担でいくということで、これは社会を大きく捉えて現実と向き合えば、誰もが大体分かるはずだと思いますけれども、それにはやはり心の準備が必要です。そこで、これからの医療支援は変わりますというようなことを、今回の建議の際に同時に意義と理由を伝えるということが有効ではないかと思います。
そして、主要な対象者は、やはり多様性の時代に生きてきた40代、50代というこれからの当事者予備軍の方々に、第1対象としてメッセージを発信していくのが有効な策ではないかと思います。やはり仕切り直してスタートを切ることが必要で、そうすれば、大きなリスクは公費で、また、小さなリスクは自ら何とかしようというような、そういう世論も醸成できるのではないかと考えます。
もう1つ、事業者側については、病床を減らすことへの支援というお話がありましたけれども、これも減らした後の医療体制ですとか、その結果、成果を見通してほしいという観点から、ケアマネージャーの組織や調剤薬局、保育所等におきましても、制度を活用して運用しながら工夫して、より改善をするというような事業者に、インセンティブのみならず、有効なベースの公費が入るということは重要かと思います。そこで、単独では困難でも、今、医療ですとか、ヘルスケア系のベンチャー企業がどんどん生まれていますので、経済成長をパッケージでセット化するということもできるのではないかと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 冨田委員、お願いします。
〔 冨田委員 〕 2点、申し上げたいと思います。
第1点は、17ページで御説明ありました社会保障制度の持続可能性にかかわるところです。主計官からは、3つの改革をバランスよく実施することが大事だと御指摘がありました。3つのうちの1番目は、潜在成長力を高める構造改革、そして高齢者の増加に対する対応、高齢者の支え手に向けての対策ということだと思いますが、これも前回、総論のところで議論いたしましたけれども、生産性を高めるということは、まさに重要ではありますけれども、それを前提に様々な改革を行うということでは、本論である2番、3番、すなわち負担構造の改革、そして給付の効率化抑制といったところが先送りされる懸念があります。これも、宮島委員から御指摘あったように、正しいことを対立なく、明るいところも入れて説明するということが大事だといたしますと、やはり過度に高齢就労者の増加に期待を置いた考えというのはいかがなものかということで、バランスで大事なことは給付と負担であって、ここにある3つの改革案のバランスということではないように思います。
2点目は、42ページのところでお話ございました。これで私、問題だと思いますのは、右側にありますように、財政基盤強化のための公費の投入とか、あるいは一番下、右の下にありますように、保険者努力支援制度におけるインセンティブ強化のために公費が投入されるといった公費投入の話はどんどん進んでいるわけですけれども、これまで長い間、議論してきました、医療の供給体制の一丁目一番地の病床のダウンサイジングというところは何か全然進んでいないわけです。
これがございませんと、様々なインセンティブを付けたり、あるいは先ほど主計官が御説明のように、また、これまでも議論してきましたような、保険者機能を都道府県が発揮するための施策であります普通調整交付金の配分の透明化、明確化といったことや、それから法定外繰入を保険特別会計に対して行うことを禁ずるといたしましても、それが前提になったとしても、やはり供給体制がきっちりと改革されませんと、結局は供給体制の改革が進まないと、1人当たり医療費が、保険料が大きく上がるか、あるいは、ここでも議論していますように、診療報酬の引下げといったことにもつながるわけであります。そこらを、44ページにあるようなグラフを使って地域間格差を是正するというのは、やはり国民にとって一番分かりやすいと思うのです。これが将来の明るい医療改革につながるのだというようなプレゼンテーションが必要ではないかと思います。
大事なことは、都道府県に保険者としての問題意識、当事者意識をお持ちいただけるようなことを、どういうように進めていくかということだろうと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 南場委員、お願いします。
〔 南場委員 〕 ありがとうございます。
皆様もおっしゃっているとおり、大きなリスクは共助、小さなリスクは自助という考え方は、医療に限らず保険として重要だと思います。
その医療についてちょっと申し上げたいのですけれども、ちょっと気になったのは37ページの主計官の説明が、高額医薬品や医療技術を引き続き収載していく場合にはとおっしゃっていて、トレードオフ感が出ているところが少し気になりました。大きなリスクの部分の保険収載にかかわらず、小さなリスクについて手を打っていく、つまり自己負担の引上げ等を行っていくという考え方が重要ではないでしょうか。
中空委員もおっしゃっていましたけれども、左側の図の、小さなリスクと大きなリスクの図の見え方ですけれども、これは個人にとっての負担の見え方ですが、全体で捉えたときには、小さなリスクを自助でという施策を大胆に進めたときのインパクトと、それから大きなリスクの部分の賄いでどれぐらいかかっているのか、全体の数字で確認したいです。軽重というか、マグニチュードは、ミクロで見たときとマクロで見たときは全く違いますので、そこが明示されるといいなと思いました。
いずれにしても、小さなリスクは自助、大きなリスクは共助という考え方は重要な考え方ですので、その理念に則って推進していくべきだと思います。
しかしながら、大きなリスクについて何も手を打たなくていいのかというところで、数年前、オプジーボの議論をこのテーブルで行いました。たまたまそのとき、オプジーボについては、患者の家族として議論全体のトーンを少し複雑な気持ちで聞いておりました。やはり患者一人一人にとっては重大な問題であります。共助の枠組みの中で、医療現場での適正な使用をどのように行っていくのか。バイオマーカーの利用などにより、効用に応じて高額薬剤を投与すべき対象をどう限定していくのかということについて、現場も含め、皆で知恵を出していくべき部分だと思います。こちらについては、血の通った議論を進めてもらいたいと思います。
一方で、本日は応能負担について説明が割愛されていましたけれども、トータルの施策のマグニチュードとしては小さいかもしれませんが、非常に理にかなった話です。かつ、フローだけではなく、ストックに応じて、金融資産を勘案して応能負担を実現していくという考え方は大賛成ですので、そちらについても実現していただければと思います。
最後に、予防、健康づくり、医療費適正化の取組に当たっては、アウトカムを中心とした指標に抜本的に組み替えるべきであると考えていまして、こちらの資料にもありましたし、御説明もいただきましたが、特に健保に比べインセンティブが弱い国保のインセンティブ強化に当たっての制度設計や、アウトカムを指標とするソーシャル・インパクト・ボンドの導入促進について、引き続き注力して、検討を進めていっていただきたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 先ほどの質問に係る分は、後でまた、まとめてお願いします。
藤谷委員、お願いします。
〔 藤谷委員 〕 ありがとうございます。私も、全体のトーンには全く賛成でございまして、質問は専ら、この資料をより隙のないものにしていくという観点からだとお考えください。
12ページ、要するにここで社会保障に必要な給付費が税財源も含めて埋められていない、隙間があるということが書かれています。強調される形で、国債発行で埋めているということですが、ここに金額が入っていないのはどうしてなのでしょうかということであります。13ページ、次のスライドです。赤丸で対比しているわけですけれども、これを率然と見ると、特例公債の増えている分と社会保障が増えている分、要するにそこに責任があると読めてしまいますけれども、そこに金額が入っていないのは、おそらくいろいろ深い慮りがあってのことと思いますけれども、社会保障だけが悪いみたいに話を持っていくと、いろいろな反発を招いてしまうのではないか。それは、16ページ、これも非常にきれいな図だと思いますけれども、マッピングされているものの説得力にもかかわってくると思います。私も明確な対案があるわけではないですけれども、国債の発行額を入れていないことについてのお考えをお聞かせいただければ幸いです。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 神子田委員、お願いします。
〔 神子田委員 〕 では、手短に3点。
1つ目は、皆様が指摘されている小さなリスクは自助でという話の37ページのところですけれども、南場委員からも指摘ありましたが、個人的に見れば、例えば湿布6枚入り3パック、自分で買うと2,000円、医者に行くと500円という1,500円の差ですけれども、これ、マクロ的に見るとどのぐらいのインパクトがあるかを示されると、より重要性が分かるかなと一つ思いました。
本日、私の心に響いた数字、年間受診回数16億回、これ、何かすごい数字だなと。16億というだけでもインパクトがあるなと思いました。フランスでは1ユーロという話がありましたけれども、日本だと100円で1,600億円ですか、大した額だなと思って、是非やったらいいと思いますけれども、私、報道の立場で歳出圧力を抑制せよというようなことを言うと、視聴者から抑制してはいけないのではないかと。その心は、必要なものはやはり歳出しないとだめでしょうという意味だと思うのです。ですから、16億回の中にもいろいろあると思うので、その辺は反発が起こらないような進め方が必要かなと思いました。
最後に、107ページの在職老齢年金制度の見直しです。7,000億円、4,000億円と非常に大きな数字で、これは大事にしたい数字だと思っています。片や、高齢になったから、働くインセンティブを阻害するようにならないようにと言いますけれども、私、まだその歳になっていないので、想像もつかないのですが、例えば若いうちは自分の将来のために稼ぐとか、中高年で家族のために稼ぐとかありますけれども、超高齢になってまだ働くというのはお金のためなんだろうか、というような気がします。確かに、働くことによって実入りがものすごく減ってしまったら、ばかばかしくて働かないということもあるのですけれども、もらえるはずの年金が少し減る程度だったら、じゃあ働かないとかいうことにはならないのではないかと思いますので、既存の制度を大事にしながら、根幹は変えずに、かつインセンティブを阻害することのないような見直しを求めたいと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 横田委員、お願いします。
〔 横田委員 〕 コラボラボ、横田でございます。
前回、途中退出した為、前回の件も含めてお話しします。まず、社会保障、今回御説明いただきまして、ありがとうございました。細かにできることを、モグラ叩きのように丁寧に積み重ねて対応しようとされているというのは分かったのですが、一方で、それぞれのインパクトがどれぐらいあって、目下の自然増に対する対応という観点では十分でも、2040年に高齢者が急増したとき、どれぐらい寄与するのか見ると、おそらく非常に小さいのだろうなと。それでも、やらなければいけないことをやっているというところは認識しています。
そんな中で、ハレーションが大きい、反対勢力が大きいところを、進めやすいこと、闘うところを使い分けてやっていらっしゃるという印象も持ちました。事業者、サプライサイドに関しては、もうデータと背景を含めて交渉していくしかありませんが、一般国民となると感情論というところが出てきますので、これは前回の財政総論同様、誰が、どう見せて、どういうように情報を届けるかというところになってくるかと思います。
前回、財務省がMMTへの反論を説明され、次の日の新聞を拝見すると財務省が反論したという記事が並んだ。実際に反論したんだけれども、反論でとどまっていいのか。要は、一般国民から見たときに、反論するのは非常に大事だけれども、それがサイズ的に小さいものなのかとか、実際の理論の中での分布図、エコノミストたちはどれくらいの分量をここに載せるのかをあわせて見せないと、財務省がただ反論しただけであると見られてしまってはどうしようもない、もったいないと感じた次第です。私も、この審議会に参加させていただくことで、これから自分が言っても、わあわあ叫んでも、半分ぐらいにしか聞いてもらえないようになるかなと思っているので、誰が、どういう資料で見せることで説得、理解をしていただくのかというところを、かなりケアすべきだと思っています。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 赤井委員、お願いします。
〔 赤井委員 〕 ありがとうございます。大部の資料、ありがとうございます。細かいところ、論点はたくさんあるかと思いますけれども、簡単に2点だけ。
社会保障を放置していると、財政破綻につながっていくということはもう明らかですから、財政再建は急務ということで、まず1つ目が天の川の議論です。財政が持続可能のためには、国民負担は必ずこれだけ必要なのだということです。適切な社会保障ですけれども、サイズ、どこを目指すのか。右を目指すのか、下を目指すのか。そこを徹底的に国民が議論するとともに、年金などは規模の議論とともに、民間をどのように活用していくのか。税調などでも議論されていますけれども、税制によって資産蓄積を支援していくという話で、最終的には国民全体の負担を国民で上げていくしかないというところを認識するということです。
中身に関しては、効率性と公平性というのは重要キーワードだと思いますけれども、時々は、通常はトレードオフになるという議論があるのですけれども、実際、無駄をなくしていけば両者を両立できるかなと思っています。つまり、効率性も上げながら公平性も上げていくということで、例えば自己負担を課すことで健康管理が進んで、インセンティブ向上につながっていく。あとは、再分配を強化して、垂直的な公平性を高めていくようにすれば、両者とも達成可能なのかなと思います。
以上でございます。
〔 増田分科会長代理 〕 上村委員、お願いします。
〔 上村委員 〕 関西学院の上村です。
御報告、ありがとうございました。基本的な方向性に賛成いたします。大切なことは、社会保障の現状を一人一人が自分事として考えることだと思っています。私がかかわっている国保の運営について話をさせていただきたいです。資料の42ページです。
国保の財政上の問題は法定外繰入、あと繰上充用金という仕組みです。これが制度の持続可能性を非常に低下させていて、特に法定外繰入金は自治体の一般財源を使いますので、一般納税者の負担ですので、国保加入者との受益と負担のバランスを悪くします。
私、兵庫県伊丹市の国保運営協議会に4年前から入っていますけれども、委員になるに当たって、一つだけ私からお願いをしました。中長期的な国保特別会計の収支予測を行ってくださいと言ったのです。それを運営協議会の資料にしていただきました。それまでの協議会は収支予測なしに、アドホックに保険税率を決めていたということです。収支予測を出すことで変わったことは、運営協議会が中長期的な視野を持てたということです。委員の中には国保の制度が複雑過ぎてよく分からなかった委員もたくさんいて、収支予測があることでようやく理解が進んだということもあります。
あと、予期していなかったことですが、市議会への説明力が強くなったということが非常に大きい。政党によっては、法定外繰入金をもっと入れて保険税率を下げようという圧力があるということなので、そういうことをすると財政的にもたないということが明示できるので、これは非常によかったです。私が委員になって当初は、多額の法定外繰入金が入って常態化していましたけれども、これ、ほぼ数年間でゼロにしました。
これは一つの事例ですけれども、やはり社会保障の現状と将来については共有していく、自分事化していくことが大切かなと思いました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 河村委員、お願いします。
〔 河村委員 〕 いろいろ御説明いただいて、改革の方向性、おおむね賛成です。3点、意見を申し上げさせていただきます。
1つ目は、37ページの辺り、先ほどから出ていますが、小さいリスクは自助で、大きいリスクは共助でという話で、この原則を聞いたときに、国民は、まあそうだなとは思うんですけれども、では自分に置き換えてみたらどうかというと、やはりまだ議論がし尽くされていないようなところがあると思います。財審として世間にいろいろ打ち出していくのに際しては、国民がなかなか腑に落ちないが、本当にそうかなと思うのが、ある意味もっともなところもありますから、そういうところにもう少し働きかけて、より世間での議論を活性化するような取組もあってもいいのではないかと思います。先ほどの小さなリスク、大きなリスクであれば、いろいろ置き換えてみたときにどうなのか。先ほど南場委員からもお話ありましたけれども、それは御家族、実際にどういう家族を抱えているかによっても少し考え方が違ってくるところもあるかもしれませんし、これから自分なり、自分の家族が直面するかもしれない病気にはどういうものがあって、そういうときにこういう制度があると、どれだけ利益が得られるのかということをやはり理解してもらう必要もありますし、一方で、37ページにも書いていらっしゃいますけれども、高額医薬品とか、医療技術の発展でということで、大きなリスクのところ、高額のところがどんどん増えてきてしまって、本当にもつのか。そういうところの議論がし尽くされているのかという気はいたします。
もう1つ、国民がちょっと疑問に感じるのは、例の調剤報酬とか、診療報酬のところで、この国の点数をつけて報酬の制度でということですと、例えばかかりつけ薬局とか誘導しようとすると、この資料の40ページにもはっきり、今のやり方ではディスインセンティブになってしまうと。かかりつけ薬局の機能を果たしたところには、点数を厚目に与えればということにすると、結局、私たち国民の側からは払うお金が増えてしまって、ディスインセンティブだ、おかしいなと、やはり皆思っていると思うのです。ですので、今回、いろいろ定額負担の方向性とか出してくださって、こういうところで更に定額負担にも差をつけてということで、良い方向性だと思いますが、皆がやはりあれっと思っているところに働きかけるというか、だからこそ現状の制度のもとでやっている、いろいろ改革の方向性を考えているということを言ってもいいのではないかと思いました。
もう1つ、子供の医療費の無料化のところ、今、全国ほとんどの自治体、市町村でやっている。小学校までか、中学校までか、もっとか、入院も入れるかとか、少し差はありますけれども、こういう状況になってしまったのはなぜかというと、本日の社会保障の議論の場ですけれども、やはり地方財政にいろいろな問題点があって、最初にやったのは東京です。財源が余り過ぎというか、そういうところから始めると、隣がやれば、うちもやらなければいけないということで広がっていったのが今の結果ですので、やはりそういう国の財政運営全体の視点からも、財源のアンバランスがどういう結果を生むか。やはり医療費の抑制を進めていくべきときに、どういうことをやっていくべきなのか。少しでも自己負担を求めるべきなのではないかとかいった改革についても検討すべきだと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 小林慶一郎委員、お願いします。
〔 小林(慶)委員 〕 包括的な御説明と、それから委員の皆様の包括的な議論で大変勉強になりました。
88ページで介護事業者の公定価格の話があって、吉野主計官からの御説明で、本当は公定価格よりも低い価格を頑張ってつけてもいいけれども、そういうことをやろうとする介護事業者は一つもないという話があったのですけれども、インセンティブの問題が端的に表れているなと思ったんです。公定価格より頑張って経費を削減して、低い価格を提示したとしても、介護事業者自体は儲からないわけです。要するに、国が儲かるだけで、介護事業者には全く実入りがない。そういう制度設計だと、経費削減に頑張ろうという介護事業者のインセンティブを避けてしまうという状況が生まれているのだろうと思います。ですから、節約できた分の国費のうちの3分の1とか、半分ぐらいは、利潤として介護事業者の経営者に回るという構造ができれば、それだけでも相当、話が進んでいくのではないか。保育所についても、同じような論点があるのではないか。
48ページで議論されていた病床の削減についても、同じような構造があるのではないかと思っていまして、頑張って病床削減に合意した病院本体がそのことによって報酬を得るという構造になっていないと、幾らKPIがあったとしても、当然、病床削減に協力する気はあまり起きないわけです。ですから、頑張るべき人というか、頑張るアクションをする人と、報酬をもらう人が一致していなければいけないというのがインセンティブ設計の基本的な構造だと思いますけれども、それができていないのではないか。細かいことですけれども、そこを直すだけで相当、支出の削減は改善するのではないかというような印象を持ちました。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 進藤委員、お願いします。
〔 進藤委員 〕 基本的なスタンスのところだけ、3点、お話し申し上げます。
1点目は、社会保障制度の持続性の確保、それから現役世代を中心とした保険料負担の増加抑制、こうした観点を踏まえれば、今、言われている健康増進、疾病予防に向けた各種のインセンティブ施策は当然の話でありまして、それ以上に、ベースとしての給付と負担の適正化に向けた議論を本格化することが不可欠であると思っています。その際、診療報酬本体と薬価について、薬価の見直しへ過度に依存したり、公的負担と保険料について、保険料増加にたよるといった、現役世代や企業の負担増につながる安易な財源調整、これは避けるべきであると私は思います。
2点目は、私も団塊世代でありますけれども、団塊世代が後期高齢者となり始める2022年は大事な年でありまして、その前に、後期高齢者の窓口負担割合をしっかり2割に引き上げる、これをはっきりさせるべきだと思います。給付と負担に関する各改革項目について、高齢者は、年齢ではなくて能力に応じた負担、やはり負担能力のある人にはそれ相応の負担をしてもらうということを、きちんと軸として出していくということだと思います。その際、本当に困っている人はおられるわけで、そういう方については別の制度でしっかり救済策を打つということだと思います。
3点目は、各地域における医療、介護提供体制をもう少し効率化する必要があるだろう。1人当たりの医療費の地域差、1人当たりの介護費の地域差が説明されていますけれども、一言で言うと西高東低ということになっております。地方の自治を尊重するという考えは分かるのですが、国のリーダーシップがもう少し強くあってもいいのかなということであります。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 十河委員、お願いします。
〔 十河委員 〕 本日もありがとうございました。
大きな議題をたくさん抱えておりますので、一つにはまとめられないのですが、来年の骨太2020、これがいよいよ、より重要性を帯びてきているということを、当然のことながらひしひしと感じております。団塊の世代が2022年に75歳、すなわち後期高齢者を迎えるということで、あらゆる物事が大きく変化し、歳出への悪影響が懸念されます。そうした中で私が気になっておりました1つに、地域医療構想がなかなか進んでいないという点がございます。日本においては一般に大病院を頼る傾向があるということ、それから首都圏や大都市に病院が多い一方で、全国的に見れば、医師不足の地域もあるわけですので、ここを何とか改善していくことができないかと思っております。先ほど小林委員も言及されておりましたインセンティブにつきましては、地域医療構想でも十分に発揮されていないということがこの資料に表れております。全体的にインセンティブの強化ならびにその効果をもう一度検証した上で進めていくことが、必要なときに来ていると思いました。
もう一点、高齢者の方々の理解を促す重要性が、先ほど来、述べられておりますが、2022年に向けて、75歳以上の自己負担を1割から2割に引き上げざるを得ない状況でありますし、一方で月収47万円超えに対する年金を見直し、高齢者の方々の選択肢を広げ、働きやすい環境を作っていくことが必要だと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 それでは、田近委員。
〔 田近委員 〕 1つは、これまで出ている財審の議論を国民にどう伝えていくかということと、それから高齢者の就労を阻害する原因を取り除くことは日本の最も重要な課題です。その中で年金が取り上げられていたというのは斬新だということで、あわせて在職老齢年金のところで、108ページで議論したいのですけれども、私、惜しいなと思ったのは、就労希望年齢というのは、この表だと、60歳以上の日本の人に聞いたら、60歳ぐらいまで働くという人は10%しかいなくて、65歳ぐらいまでが21%ということは、70歳を超えて働こうという人が7割いるわけです。にもかかわらず、就労が増えてきたとはいえ、まだ上の図だということで、プレゼンテーションとしては、日本の人というのはこうやって働こうとしている。まだ就労の率は低いので、何とか働きやすい環境にしていくというメッセージをもっとストレートに出すべきだと。
在職老齢年金については、ポイントを2つ言います。制度についての説明は省略させていただくと、仮に厚生年金を10万円もらっている人が給与所得37万円を超えると減額される。これ、年金減額と言うけれども、本人にとっては所得税と同じですよね。つまり、給料が2万円増えると年金が1万円減るということは、その時点で限界税率が50%になることと同じだ。一方、税金は累進になる、社会保険料も払うということで、実は37万円ぐらいを超えると限界税率が100%を超えます。そういうことを考えてくると、やはり働き方には大きな影響がある。
その次に、実はそうはいっても65歳以上で在職老齢年金にかかる人は1.4%ではないかと。私は、ここもポイントだと思いますけれども、37万円を12カ月で掛けると444万円、57万円のところで消失するわけですけれども、そこが684万円。だから、今、日本が働いてもらいたい高齢者というのは、ある程度生産性が高くて、まさにこの層なのではないか。400万円以上稼ぐ高齢者に、きちんともっと働いてもらいたい。そういうことで言えば、在職老齢年金は抜本的に変えなければいけない。御懸念の、それで4,000億円を失うではないかと。それは、他の制度、例えば公的年金等控除の見直しでやれるのではないか。
最後に、これから老後を迎える皆様へのメッセージですけれども、在職老齢年金で65歳から働くと年金は下がります、では70歳まで支給を繰り下げましょうと。そうすると、42%増えますから、10万円の厚生年金が14万2,000円になるわけです。よかった、では70歳まで働きましょうかとお思いですよね。実は、そうではないのです。57万円まで働くと、在職老齢年金で年金はゼロということになります。在職老齢年金がカットされた年金でゼロですから、ゼロに幾ら割り増しを掛けてもゼロです。つまり、57万円以上稼いだ人は、70歳からもらえる年金は10万円になります。だから、在職老齢年金というのは、ダブルで、単に給付がカットされるだけではなくて、就労年齢を後にする意味でも、繰り下げでも問題だということで抜本的に改革すべきだと、これは私の意見です。
そういう意見も含めて、高齢になってもしっかり働いてくださいというメッセージを国民の皆様にどう送るのかというのは、財審で議論を深めていくべきと思います。
以上です。
〔 増田分科会長代理 〕 ありがとうございました。
それでは、主計官のほうから、今の御意見等にバックをお願いします。
〔 吉野主計官 〕 質問の項目を中心にお答えいたします。
まず、中空委員から、この資料で注力したのはどこかという御指摘いただきましたが、介護と年金については議論が既に始まっており、医療のほうはこれからということもございますので、ボリューム的に医療に力が入っていたという理解でよろしいかと思います。
それから、黒川委員のほうから薬剤師の研修のお話をいただきました。薬剤師は、法律に一律に義務付けられた研修制度はないと承知しておりますけれども、任意で研鑽を続けておられる方を証する認定制度があると聞いております。その他、かかりつけ薬剤師として指導料を算定する際に、一定の研修を修了することが必要であるといった仕組みがございますので、報酬制度の中で質の向上を促す仕組みがビルトインされているということでございますが、今後、どのようなものがあって、どのような効果があるのか、不断の議論をしていくべきだと考えております。
それからいわゆる小さなリスク、大きなリスクのインパクト、財政インパクトのお話ですが、非常に難しい面がございます。これは、小さなリスク、大きなリスクに限らないのですが、見直し項目の財政影響について、いざ具体的な制度設計をしたときにどういう内容になるのか、その周辺の制度も含めてどうセットするのか、それによって行動変容はどうなるのかということもあって、効果を私どものほうから一律にお示しすることはなかなか難しいのですが、客観的に世の中に示された数字を現時点でかき集めた御報告しておきます。
例えば、ビタミン剤ですが、医薬品の薬剤料実績が約900億円、それから、鎮痛、消炎剤等々、いわゆる湿布類の薬剤料実績が、公表数値で約1,000億円でございます。3年前の財政制度分科会でオプジーボが議論になった際の試算として、当時の薬価での年間薬剤費が3,500万円、対象者5万人、1年間使用という前提で計算いたしますと、当時の数字ですが、少なくとも約1兆7,500億円でございます。2018年の同製品の売り上げにつきましては、約1,100億円ということでございます。
これをもって何かお示ししていることにはならないですし、お示ししたつもりにもならないですけれども、南場委員から御指摘ありましたように、小さなリスクと大きなリスクのトレードオフ感が出て、表現上、仮にもそうなっているようにお読みになられたと思いますけれども、今回は小さなリスクを重点的に御説明しましたが、38ページにございますとおり、大きなリスクについても引き続き議論させていただきたいと思いますし、何か血の通わない対応をするつもりではなく、大きなリスクについても血の通った対応をしてまいりたいと考えております。
それから、藤谷委員のほうから、12ページの国債で賄っている国費投入の白抜きのところですが、そこに数字がなぜ入っていないのかという御指摘がありました。厳密には、どれがどれだけ国債発行で当たっているかということを、明定してお示しするのは非常に難しく、むしろ誤解を招くということもあって数字を入れておりません。いわゆる円グラフの中で、歳入の中で3分の1程度が公債発行ということを考えれば、御計算いただくとすれば、国庫負担33兆円のうちの3分の1ぐらいは、国債によって賄われていると考えることも可能というところではないかと思います。
以上、御指摘をたくさんいただきましたけれども、それを踏まえまして、今後も建議、ないしは制度改革に当たってまいりたいと思います。ありがとうございました。
〔 増田分科会長代理 〕 もう少し議論したいところでありますが、時間が過ぎていますので、本日の議題はここまでとします。
次回は、5月16日13時から、歳出改革部会になります。そして、5月22日15時から財政制度分科会になります。ただし、歳出改革部会については、部会委員に属していないこの分科会のメンバーの方も、希望があればオブザーバーとして参加いただけますので、その場合は事務局まで申し出ていただきたいと思います。
それでは、本日はこれにて散会いたします。どうもありがとうございました。
午後0時15分閉会