財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和7年4月23日(水)14:00~16:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
-
1.開会
-
2.議題
- 持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)
-
3.閉会
分科会長代理 |
増田寬也 |
横山副大臣 東大臣政務官 宇波主計局長 中山次長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
||
委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 田中里沙 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 山口明夫 芳野友子 |
|||
臨時委員 |
遠藤典子 木村旬 國部毅 小林充佳 滝澤美帆 中空麻奈 平野信行 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午後02時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは始めます。本日、冒頭カメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様方、御出席いただきましてありがとうございます。
本日の議題は、持続可能な社会保障制度の構築でございます。
また、本日は、冒頭から横山副大臣、そして、東政務官は間もなく会場に到着の予定となっております。本日はどうもありがとうございます。
それでは、カメラの方、そろそろ御退出をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、本日の議題に入ります。
まず、大来主計官、末光主計官から、簡潔に説明をお願いします。よろしくお願いします。
〔大来主計官〕増田会長代理、ありがとうございます。厚労主計官をしております大来でございます。末光と共に、本日の資料を簡単に御説明させていただきます。
3ページでございます。社会保障関係費の総論でございますが。骨太2024において、これまでの歳出改革努力を継続するということと、経済・物価動向等に配慮するという枠組みが3年間定められているところでございます。
4ページでございます。それに加えまして、こども・子育ての支援金の財源を出すために、社会保険料についても6年間で1兆円の歳出削減効果を主に医療・介護の分野で生み出すことによって、こども・子育て支援金を入れていく、そのスペースをつくるということになっておりまして、公費の面、そして社会保険料の面、双方で歳出改革努力を継続していくことが求められているところでございます。
6ページでございます。令和7年度予算について、※2にありますように、機械的に計算した「高齢化による増」の水準から300億円ほど高い水準の青い線のところ、前年度から5,600億円伸びた姿で決着をしておりまして、高齢化による増というのを一つの目安にしながら、歳出改革努力はするものの、それを上回る歳出水準を骨太2024を踏まえて実現しているところでございます。
13ページでございます。そうした歳出改革努力を続けていくわけですが、足もとでは人件費、光熱水費、各種委託費などのコスト増が、医療機関、介護施設の経営を圧迫しているという声が強くなっておりまして、その点についてはしっかりと配慮をしていく必要があると考えております。
一方で、左側にありますように、改革に取り組む余地を温存したまま、そのコスト増をそのままスライドさせて伸ばしてしまいますと、現役世代を中心とした保険料が一層増えてしまうということでございます。なので、右側にありますように、コストに関する効率化の努力、保険給付の範囲に関する努力などをする中で、一時的なコスト増と恒常的なコスト増をしっかりと分析して、一時的なものについては臨時的な公費で対応しつつ、恒常的なものについて、高齢化による増で賄えず、なお残るところについて保険給付の中で面倒を見ていく、こうした精緻なアプローチが必要になってくるのだろうと考えております。
16ページ以降、医療・介護の理想像について3ページほどお示しをしております。今後さらに深めていきたいと思いますが、こうした近未来の理想像から、バックキャストをして制度設計を考えていくということが重要だと思ってございます。
20ページ以降が医療の各論でございます。22ページ、いつも申し上げているとおり、黄色いところ、効率的な医療提供、それから青いところ、保険給付の範囲の見直し、赤いところ、負担の公平化、こうしたものにバランスよく取り組んでいく必要があると考えております。
24ページ、効率的な医療提供体制の構築の総論紙でございます。新たな地域医療構想あるいは偏在対策、今国会で議論されている医療法が通れば、その中身に魂を入れていくというプロセスが非常に大事になってきます。過不足のない、地域医療のニーズに合った地域医療構想をしっかりと策定していく。偏在対策については、経済的なディスインセンティブも含めて、しっかりとインセンティブ構造をメリハリのあるものにすることによって、しっかり財源を確保しながら進めていく。こうしたことが大事になってくると考えております。
34ページ、診療報酬改定でございます。総括紙でございます。高齢化やコロナ後の受診行動の変化を踏まえた、今後のあるべき医療提供体制の構築に向けた診療報酬改定としていく必要があると考えております。令和8年度は報酬改定の表年に当たりますので、この後、夏、秋、冬と議論が行われていくことになると思いますが、病院と診療所では経営状況や費用構造が異なることを踏まえて、メリハリある改定を実施する必要がありますし、地域で全人的なケア、かかりつけ医のそうした機能をしっかりと実現することに資する報酬体系に見直していくことが重要ではないかと考えております。
47ページ、調剤報酬も改定がございます。右下にございますように、対人業務を評価する調剤報酬体系に一層シフトしていく必要がありますし、薬局の経営状況を踏まえた更なる調剤基本料等の適正化といったものがまだまだ課題であろうと思っております。
53ページでございます。費用対効果評価の活用や、患者本位の治療でございます。右下にありますように、費用対効果評価の一層の活用に向けた検討、それから、しばらく前の財審で取り上げて、しばらく論点としてはお休みしておりましたが、地域フォーミュラリの普及・促進のようなことにもう一度ギアを上げて取り組んで、治療あるいは投薬の標準化を強力に進めていく必要があるのではないか。そのほか医療品の適正使用に関するガイドラインの問題、減薬・休薬を含む治療の最適化、こうしたものが引き続きアジェンダであると考えております。
66ページでございます。保険者機能の発揮に向けまして、右下でございますが、国保の普通調整交付金の配分方法の見直し、それから一つ飛びまして、国保の保険料水準の統一に向けた取組の加速化、後期高齢者医療制度におけるガバナンス機能の発揮、こうしたものが大事になってくると考えております。
72ページでございまして、ここから青い世界、保険給付の範囲の在り方の見直しの世界に入ってまいります。右下、セルフケア・セルフメディケーションの推進を支える制度改革として、OTC医薬品の対象拡大と、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し、それから、薬剤の自己負担の更なる見直し、高額薬剤への対応、入院時の食事・部屋代、こうしたものが課題になってくると考えております。
82ページ、赤い世界、負担の公平化の世界になりますが、年齢ではなく能力に応じた負担ということで、長寿社会にふさわしい高齢者医療制度の在り方の検討でございますとか、金融所得の勘案、あるいは後期高齢者医療制度における「現役並み所得」の判定基準の見直し、こうしたものに早急に取り組んでいくことが重要と考えております。
90ページ以降、介護でございます。92ページ、介護保険給付の効率的な提供でございます。生産性を向上するために、ICT機器等を活用して人員配置を効率化する、経営の協働化・大規模化を図っていくといったことが大事になってまいります。また、高齢者向け住まい等の報酬体系について、見直すべきところは見直していく。それから、人材紹介会社がかなり手数料を取って、かつ離職率も高いといったような指摘もございますので、規制強化を絡めながらしっかりと対応していく必要がある、こうしたような論点を提示させていただいているところでございます。
続きまして、保険給付の範囲の在り方の見直し、104ページでございます。軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への更なる移行、あるいは福祉用具の貸与と販売の選択制導入等の効果検証、それから保険外サービスの活用、こうしたようなものがアジェンダであると考えております。
108ページ、負担の公平化でございます。利用者負担の更なる見直しということで、2割負担の範囲の見直し、あるいは、医療並びでございますが、金融所得の勘案、それからケアマネジメントの利用者負担の導入、多床室の室料負担の更なる見直し、こうしたようなものについては改革工程も含めて従来指摘されている論点でありまして、来年の通常国会には介護の制度改正を出していくべき表年に当たりますので、年末に向けてしっかりと議論を加速させていくことが重要であると考えております。
〔末光主計官〕続きまして、障害福祉です。114ページ以降になります。
114ページ。左の図にございますとおり、予算額等が増加する中で、障害福祉サービスの持続可能性を確保し、サービスの質を確保・向上するため、右の太字のように、事業所の経営段階に応じて、最初の指定の在り方、運営中の実地指導、さらには不正への対応といったことに適切に対処する必要がございます。
116ページ、事業所の増加と同時に、不正事案も増えております。報酬の適正化やサービスの質の評価が重要であるほか、右下のように、経営段階に応じた適正化を進めることが重要です。
117ページ、118ページは指定段階になります。まず、指定段階では、適正量確保のため、サービス見込量の精緻化が必要です。次期障害福祉計画では、実情に応じた見込量の計上、総量規制等の活用を進めるべきです。また、指定の際、懸念がある事業所が安易に指定されないよう、必要なプロセスの見直しを行うこと、昨年施行された意見申出制度の実効性を高めることが必要と考えております。
119ページは運営段階になります。自治体による指導の実態は、3年に1度の基準を下回る例も多く、類型に応じた重点化など、運営指導・監査の強化を着実に図るべきと考えます。
120ページ、121ページは、不正行為等に対する取組強化です。国税の重加算税に係る近年の改正を参考にした加算金制度の見直しや、事業者の紹介・選択の中立性確保に向けた実態把握と必要な対応を行うことが必要と考えます。
以下、生活保護等になります。
123ページ、生活扶助基準は、足もとで特例加算等を講じておりますが、データに基づき、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図ることが重要です。124ページから3枚、従前から御指摘いただいている事項でもありますが、医療扶助の適正化には不断の取組が必要でございます。特にデータ活用には更なる余地があると考えておりまして、福祉事務所の事務負担や専門性不足に対応するため、国保の取組を参考とした医療情報のデータベースの構築や、オンライン資格確認の導入促進、電子カルテ等の活用等を通じて、頻回受診や多剤・重複投薬等への対応を着実に進めることが必要です。
最後、127ページから2枚、生活保護以外の福祉関係です。重層的支援体制整備事業の検証、今後の効果的な制度の在り方の検討、また、身寄りのない高齢者等への持続可能な支援の検討が必要と考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
本日は、御出席の芳野委員、また、御欠席の長澤委員、小黒委員、広瀬委員より、意見書を提出いただいております。意見書は各PC端末に格納しておりますので、お目通しいただければと思います。
それでは、これから委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴していきたいと思います。それでは、初めに佐藤委員から、どうぞお願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。では、まず私から端的に3点ほど。
まず一つは、87ページに紹介いただきました金融所得の勘案についてです。保険料における金融所得の勘案ですが、これは喫緊の課題だという気がします。これは公平感の促進だけでなく、現役世代の負担の軽減にもつながるのかなと思います。特に高齢者の中には金融資産をお持ちの方もいらっしゃいますので、それらを適切に保険料に反映させていくということはあってしかるべきかと思います。
また今回、介護でICT化や人材派遣会社の問題を取り上げていただきましたが、いずれにも共通するのは、零細が多いということだと思います。零細が多いからなかなかICT投資も進まないし、零細なので一人が辞めると本当に人手不足になってしまいます。ここはどれだけ大規模化を図ることができるかが重要だと思います。必ずしも合併する必要はないかもしれませんが、社会福祉連携推進法人もありますので、そうしたものの活用ということがあってしかるべきで、そこで共通で人材を育成したり、ICT機器を購入したり、という連携があってよいのかなと思います。この介護事業者の大規模化というのは喫緊で必要だと思います。
また、全体を通じての話になりますが、大きなリスクと小さなリスクを分けて、大きなリスクは公助、小さなリスクは自助という観点は再度確認するべきかと思います。昨今、高額療養費制度でいろいろとありましたが、本来公費を投入するべきは大きなリスクであり、小さなリスクについては保険の給付の範囲を見直し、これをもって、再び現役世代の負担を軽減していくことが重要だと思います。最近、若い人たちを中心に消費税減税の要求がありますが、裏には彼らの負担が大きいことがあります。しかし、その負担のうち大きいのは消費税ではなく社会保険料であり、これらをどれくらい軽減できるかということ、ここにかかっているのかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございました。私もこのたびの高額療養費制度をめぐる議論については思うことがあります。まず、佐藤委員がおっしゃったように、大きなリスクは公助、小さなリスクは自助という原則はありますが、今回やろうとしたことはその原則に反するのではないかと。がん患者などが生活も苦しい中で大きな負担を迫られるということはどうなのかという議論になってしまったというのがあるので、この小さなリスクは自助で大きなリスクは公助という原則は、大事にしていくべきなのかなというのを改めて思いました。
その一方で、高額療養費制度に関しては、年収の水準に応じて負担額をある程度増やすという応能負担の考え方は、非常に大事な原則だと思うのですが、いざ個人の年収がいくらの人の負担がどのぐらい増えるということになったときに、こどもを塾にも通わせることができるか否かの生活レベルの話になって、少し反対を浴びてしまいました。応能負担という考え方も、この原則は非常に大事なので、この打ち出し方をまた考えていかないといけないというのは一つ思いました。
そして、小さなリスクに関しては、軽度の病気、体の不調で医者にかからないようにするにはどうしたらよいかというのがあります。これも医者の側からは受診控えでかえって大きな病気につながり得るという主張がありますが、以前から言われているような、医療機関を利用するときには毎回ワンコインを置くというような考え方に変えていかないといけないと思います。何でも医者へ行けばよいという人々の意識が変わっていかないと、これからますます負担が大きくなってしまいます。これを変えるために、軽度で何度も医者に行くような人は負担が増えるような仕組みを考えていく必要があると思います。一方で、自分が医者にかからないようにするためにも、日頃から健康に留意する習慣や軽度の病気であれば薬局に行って薬をもらって治すようなという意識をもっと広めていく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林慶一郎委員、どうぞ。
〔小林(慶)委員〕ありがとうございます。私も端的に4点、医療について2点と介護について2点、お話をしたいと思います。
個別の話をする前に、資料の中で、将来のあるべき姿をまず提示されて、そこからバックキャストで現在の政策課題を見るという書き方をされたというのは、フューチャーデザインのような考え方だと思うのですが、大変良い取組であると思いますので、是非今後も続けていっていただければと思います。
医療について、公的保険の適用範囲の見直しの推進という論点は非常に重要だと思います。その中で、医療が産業として強靱になっていくためにも、保険適用の診療と適用外の診療を併用する保険外併用療養費制度、さらには混合診療を、もっと拡大していく方向で進むべきだと思います。この点は介護保険では認められているということなのですが、医療ではなかなか進まないという現状があると思います。
ただ、公的保険の適用範囲の見直し、あるいは混合診療や保険外併用療養費制度などを提起すると、命の平等をどう考えるのかという、あまり経済的な数字では語れないような話題が出てくると思います。しかし、この論点を避けて通ろうとすると、どうしても議論が収まらないと思うので、是非財務省の皆様に、哲学や倫理学の専門家にもお話を聞いていただいて、この命の平等についてどう考えるのかを議論していただきたいと思います。例えばヨーロッパでは、年齢等によって公的保険の範囲を制限するということはやっているので、そうした国における議論を御紹介いただいて、日本で経済的な数字を超えた議論を提起していただけないかというのが1点目です。
2点目は応能負担です。これは他の委員もずっとおっしゃっていますが、私も賛成で、銀行口座の全てにマイナンバーを付番して、個人の金融資産を把握して、資産に応じた応能負担を求めるというやり方に是非考えていくべきではないか。ただ、応能負担という考え方は、リスクシェアリングという保険の考え方と少し異なっているので、特に高齢者医療はそもそもリスクなのか、あるいはみんなが通る道ということで保険でカバーされるべきなのかということも、大きな議論として考えていけないかと思います。
3点目と4点目は介護です。もう少しプラクティカルな話として、介護で公的保険と自費のサービス、あるいは保険適用外のサービスの併用というのは認められているわけですが、なかなか進まない。一つの理由にはケアマネジャーの報酬の体系がある。ケアマネジャーは、公的介護保険を使ったサービスをケアプランに入れれば、その分報酬がもらえるのですが、実態をみると、保険適用外のサービスをケアプランに入れることはできるのですが、その場合は事実上報酬が増えないという仕組みに今はなっている。だからケアプランの中に保険適用外のサービスを入れるインセンティブが全くなくて、結局併用が進まないという話を聞いたことがあります。これはニッセイ基礎研究所の三原岳氏などの専門家がおっしゃっていることです。このケアマネジャーの報酬体系を見直すことで、介護保険と保険外の両方を合わせたシステムが健全に発展するのではないかというのが3点目。
4点目は、民間の介護保険の普及です。特に軽度な要介護者や要支援者に対する生活支援サービスは、公的保険から外して民間で見るべき、いや人材が足りないので民間で見る方向に行かざるを得ないと思います。しかし、民間の介護保険が存在はしているのですが、ほとんど普及していない。
1月29日に開催されたキヤノングローバル戦略研究所のシンポジウムにおいて出されたアイデアとして、事業会社の企業年金のプランに介護保険の特約付きの個人年金商品のようなものを組み込むことができれば、若いときから民間の介護保険に加入するという人が増えるのではないか、あるいはiDeCoやNISAの対象商品に介護特約つきの金融商品を認めることにすれば、それも普及に資するのではないかというものがございました。これは非常に有望な政策のアイデアだと思いますので、是非金融庁や厚労省と御検討いただければと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕武田委員、お願いします。
〔武田委員〕包括的な御説明をどうもありがとうございました。2点、意見を申し上げます。
1点目は総論の理想の姿です。小林委員もおっしゃったとおり、あるべき姿に基づきバックキャストで議論を展開していくアプローチは大変良いと思います。ただし、一番大切なことは、これにより国民にどのようなメリットがあるかという点だと思います。
重要な点は三つあると考えます。一つ目は、社会保障制度の改革は制度を持続可能にするために行うという点です。人生100年の中でライフステージに応じて、様々なリスクに対してセーフティーネットが存在し続けるという安心感につながります。二つ目は、DXが普及する中で、予防医療、リハビリ、介護がシームレスに連携することで、人々が大きなけがや病気を負ったときに情報共有や治療から回復への連携がされている体制。三つ目は、こうした救急からリハビリへ連携することにより、完治が早まり介護や入院が短くなることを通じて、人々のQOLが向上する点。全世代型社会保障はどういう姿が最終形なのか、なぜこうした改革を進めるのか、改革を進めた先にどのようなメリットがあるのか、伝える努力をさらにブラッシュアップいただきたいと思います。
2点目は、原理原則の重要性です。先ほども御意見がございましたが、大きなリスクは共助、小さなリスクは自助という原則の重要性は改めて確認が必要だと思います。また、年齢ではなく能力に応じた負担の重要性については、これまでも申し上げてきました。医療費の窓口自己負担は、年齢に関係なく一律3割でそろえ、高齢者であっても若者であっても、生活が非常に苦しい方々については応能負担で配慮するという、年齢ではなく能力に応じて負担を求める考え方も改革を進める上で重要だと思います。特に2割負担については、段階的に進めてきた中で、ようやく進展していますので、次の改革を考える時期に来ていると思います。是非御検討をお願いいたします。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞ。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。社会保障については、入るを量りて出ずるを制することが基本だと思いますので、受益と負担のバランスの確保に向けて、医療・介護を中心に、不断の改革努力が求められます。足もとの賃上げや物価高騰を背景に、高齢化の伸びに収めるとの方針を撤廃し、賃金、物価に合わせて社会保障費を増加させるべきとの主張がございます。しかし、現場で働く方々の賃上げを図っていくことは重要ですが、同時に、社会保障給付の増加が若者を中心とする保険料負担の増加に直結することに細心の注意を払うべきであり、コスト削減の取組や保険給付範囲の見直しなどの改革を推進することで、保険料負担の増加を最大限抑制することが肝要です。
医療分野においては、まず、人口減少が進む中で、貴重な医療資源を最大限効率的に活用することにより、持続可能な医療提供体制を構築していくことが重要です。病院機能の再編や分化・連携等の推進、外来機能の集約化を進めることと合わせて、医師偏在対策についてはディスインセンティブ措置を有効に活用することで、実効性のある形で進めていく必要があります。今年は年末にかけて診療報酬改定に向けた議論が行われますが、そもそも日本経済が長らくデフレに直面する中で、医療費は増加を続け、そのことが現役世代の社会保険料負担にも大きな影響を与えていることを肝に銘じるべきです。医療機関の経営状況について、データに基づいて冷静に精緻に分析した上で、メリハリのある診療報酬改定を行って、国民負担の軽減につなげる必要があります。また、そうしたエビデンスに基づく議論の前提として、さらには多額の公費が投入されていることに対する説明責任を果たすという意味でも、経営情報の見える化が極めて重要です。職種別給与など、現在任意になっている項目の義務化も含めた、徹底的な見える化を断行するべきです。
医薬品等に対する費用対効果評価の活用は不十分であり、価格調整範囲の拡大や保険償還可否への活用といった、現行制度にとらわれない改革が必要です。くわえて、高齢者の活躍が進む中で、後期高齢者医療制度が導入されて15年が経過したことに鑑み、年齢ではなく能力に応じた負担を徹底する観点から、高齢者に係る自己負担は原則3割として、所得水準等が低い方には負担を軽減するといった対応が必要ではないでしょうか。
介護についても、改革工程に掲げられたケアマネジメントへの利用者負担の導入や、2割負担の範囲の見直しを今回こそ確実に実施すべきです。介護職員の処遇改善も必要なことではありますが、人手不足の中で限られた人的資源を有効に活用するという観点から、ICTの活用や配置基準の緩和など、生産性向上に向けた取組が必須だと考えます。
最後に、88ページの金融所得の勘案について、小林委員から預金の付番という御意見がございましたが、私もこれには賛成でございます。金利のある世界に戻ってきた現在において、預貯金の利子は保険料の対象外としたままで、上場株式の譲渡益や配当などを確定申告の有無に関わらず保険料の対象とすると、金融商品の選択に中立的ではなく、高齢者の資産所得獲得に悪影響をもたらすことが懸念されます。
私からは以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、國部委員、どうぞ御発言ください。
〔國部委員〕今回の資料は、社会保障のうち、特に医療・介護分野に焦点を当てて、制度の持続可能性を確保する観点から、具体的な医療制度改革のメニューが網羅的に掲げられています。これまでより分かりやすい構成になっていると感じました。さらに重要なことは、今回掲げられた医療制度改革のメニューを実現していくことです。その観点から2点申し上げます。
1点目は、持続的な社会保障制度の構築に向けて、国民理解を醸成する必要性についてです。限られた財源の中で社会保障改革を進める観点から、資料で示された各種施策はいずれも理にかなっていると考えますが、高額療養費制度改定に係る議論も踏まえますと、こうした施策を今後遅滞なく推進していくための進め方の一つとして、国民負担の増加や給付の縮小などの「痛み」が伴うことについて、国民に前広に周知していく必要があると考えます。今回の資料22ページでは医療制度改革の方向感をお示しいただいていますし、あるべき医療・介護分野の理想像が掲げられるなど、国民の共通認識の醸成に向けて社会保障改革の全体像が示されたことは評価いたします。
一方で、先ほど武田委員も言われましたが、こうした大方針に基づく各施策が実現した場合に、国の財政と国民の受益負担に具体的にどのような影響が生じるのか、特に負担面の議論は、まだ大部分が各論の中にとどまっており、全体像に表れていないように見受けられます。人口減少が急速に進む我が国では、持続的な社会保障制度の構築に向けた改革が不可欠であることは論を俟ちません。財政健全化の流れを後戻りさせることなく、こうした取組を推進していくために、改革の全体像の中に負担の議論も避けることなく示して国民の議論を喚起し、それらにも正々堂々と改革の必要性を説くことで、最大限の理解を得ていくことが政府の責任であると考えます。
2点目は、1点目と関連しますが、歳出改革のメニューを示した改革工程のPDCAを回す必要性についてです。今回の資料には記載されていませんが、改革工程のメニューの中には2024年度に実施することとなっていた取組があります。まずは、これらの進捗状況と実現した歳出改革効果を明示していただければと思います。その上で、進捗が芳しくない取組において何が阻害要因になっているかを分析し、今後、2028年度をめどとする取組を実行に移していく際に、その反省を生かすべきと考えます。足もとではトランプ関税の影響から景気減速懸念が高まっており、財政による支援や経済対策の必要性も指摘されています。こうした財政拡張圧力が高まるときだからこそ、改革工程を実効性あるものにしていくことが重要であり、そのためにもしっかりとPDCAサイクルを回すべきと考えます。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして、山口委員、お願いします。
〔山口委員〕山口でございます。私からは2点、予防医療の推進と自由診療の拡大です。
まず、事務局から御説明いただいた資料にありました、社会保障の効率化、保険給付範囲の適正化、応能負担の徹底による持続可能性の維持という方針については、そのとおりだと考えます。中でも特に、セルフメディケーションの推進は極めて重要だと考えます。スイッチOTC化の推進など、具体的な策も非常に重要なのですが、何より、自分の健康は自分で守るという意識を政府がより強く発信していくべきだと考えております。
2点目は国民皆保険制度についてです。世界最高水準の平均寿命、それから健康寿命を支えた制度であることは間違いなく、今後も原則として維持していくべきだと思います。一方で、自由診療市場を公的医療の補完として戦略的に拡大することが、今ますます重要になってきているのではないかなと思います。医療費の増大は深刻ですが、財源の配分を考えていくだけではなく、医療分野から生まれるキャッシュフローを市場原理を活用して増やしていく方針を政府として明確に打ち出すべきであり、そうした時期に来ていると考えております。
例えば、現在医療ツーリズムなどの保険外医療市場がどんどん成長しております。この流れを生かして、医療保険と民間保険の役割の整理や、例えば全国医療情報プラットフォームを生かした新しいサービスの育成など、戦略的な医療市場の拡大は十分に効果が期待できると考えます。その上でまずは、生命に直結しない分野や富裕層向けサービスから段階的に拡大していくなど、国民の理解を得やすい形で検討を進めていく事がより適切と考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、どうぞお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。高齢化と人口減少が進むことが分かっている中で社会保障制度をどのくらい持続可能なものにするかということは、とても大事だと思います。大部にわたる資料、本当にありがとうございました。その中で3点申し上げたいと思います。
1点目は、データ整備についてです。病院や診療所の経営状況の話がありましたが、そこが明らかになっていないということは大変ゆゆしき事態だと思います。さらに、これは他の委員の方もおっしゃっていましたが、応能負担や生活保護もどの程度までということを考えたとき、マイナンバーとの紐づけは大変重要になってくると思います。そのためにマイナンバーを作ったのではないかといつも思うのですが、ガバメント・データ・ハブのような形できちんとデータ整備を進めることがまず大事だと思いました。
2点目が製薬、創薬についてです。一つ一つ確認してやっていきましょうという説明自体はとても理解できるのですが、日本の製薬セクターの市場が長らく拡大していないということを私は気にしています。この状態で本当にイノベーションが促進できるのかということです。製薬セクターの一つがデフォルトするかもしれないというような話もあった状況の中で、イノベーションというのはどう捉えたらよいのか。ここは薬価との関わりも大きい部分ですので、真剣に考えていく必要があると思いました。また、アメリカの製薬団体のPhRMAによる、今のままではドラッグラグ、ドラッグロスがもっと進むという話もありました。今回あまり焦点になっていなかったですが、そちらも真剣にやらなければいけないのではないかと思いました。
3点目、介護です。自分で親などの介護をしてますます思ったところなのですが、従前もお話ししたとおり、医療の分野と同様に、質の議論がほとんど出てこないため、どうやって入れていくか、これから考えるべきではないかと思います。総論として高い質や底上げという話はよく出るのですが、介護の実態をみると実力差が大きいと思っていて、これを価格に反映しなければ、それぞれの不満が現場で出るのではないかなと思っています。質の評価というのをどのように考えていくかというのは、今後、課題として入れるべきではないかと思いました。
ありがとうございます。私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、福田委員、どうぞお願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。私は2点、もう既に皆様がおっしゃったことの繰り返しになってしまいますが、述べさせていただきます。
まず、後期高齢者を中心に、金融所得をしっかり把握して、応能負担をしてもらうというのは私も大賛成です。高齢者の方々の一部には非常に高い資産を持っていながら住民税非課税という方も少なからずいて、そうするとむしろ負担どころか恩恵が我々よりも多いという方も散見されると私は理解しています。しかしながら、そのときに難しいのは、総論賛成、各論反対が起こりやすい分野であることです。所得のある人はきちんと負担してください、それは総論賛成なのですが、では具体的にどういう形で負担してもらうかという話になったときに、なかなか難しい問題が起こってくると思います。
今回の提案は所得、つまりフローに注目した議論で、それは取りやすい考え方の一つだとは思います。ただ、例えば預金に関して、フローで金利だけに課税するということになると、これは大した金額にはならないと思います。いくら日銀が利上げしたからといって、預金金利は依然として低いので、非常に低い利子率だけの収入だけを勘案するのがよいのか。でも実はそれを生み出す預金はかなり高額なものをお持ちの方もいらっしゃるときに、そうしたのをどう考えるのかということも含めて、幅広い議論をしていく必要があると思います。いずれにしても、現在の後期高齢者の中で負担できる方にはしっかりと負担していただくことが大事であることはもはや言うまでもないと思います。
それから、そうしたことも含めて幅広い議論をしていくためには、データは極めて大事です。多くの委員がおっしゃったように、社会保障の分野、特に医療の分野に関してデータが十分ではないということは、EBPMあるいはPDCAサイクルを回していく上でいろいろな障害になっていると思います。エビデンスがあれば、不公平感もある意味で解消されてくることになるし、幅広い国民的なコンセンサスを得やすいということもあります。そうした意味ではデータの整備を進め、こうしたエビデンスがあるということをきちんと示しながら国民的なコンセンサスを得て、負担できる人には負担してもらうという仕組みをつくっていくということが大事だと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。よろしくお願いいたします。私からは3点になります。
まず、地域医療構想についてです。小林委員からもありましたが、バックキャスト思考でしっかり計画を立てていくということが非常に重要かと思います。以前、総務省の自治体戦略2040構想研究会でも、2040年の高齢者人口の増加がピークになるということで議論をしていたのですが、そのとき特に議論になっていたのが首都圏の高齢者増加による病院のパンクということでした。広域的調整が首都圏については必須だと考えております。また、地方部でも、県境をまたがるところもありますから、隣接自治体、また広域自治体間同士のコミュニケーションも非常に重要かと考えております。
次に、リフィル処方についてです。私は毎回コメントさせていただいているのですが、対応の方向性については強く賛同しております。リフィル処方の利用率が昨年の0.05%から直近で0.07%と、僅かに進捗しているところ。テレビでも何度かリフィル処方の解説がなされているのを最近見たところなので、少しずつ国民側でもリフィル処方という言葉が知られ始めたところなのではないかと思います。
一方、医療現場ではポスターの掲示がされているわけでもありませんので、国民への周知を徹底していく必要があります。医療機関側ではどうしても消極的になりやすい案件だと思いますので、もし拒否をしなければいけない場合には説明責任を果たすことは必須だと思いますし、そうしたガイドラインの充実、インセンティブ、ディスインセンティブの設計も含めて考えていく必要があるのではないかと思います。データを整備して薬局側からアプローチができるようにするというのは非常に重要なことだと思いますので、是非検討を進めていただきたいところです。
最後に、身寄りのない高齢者の増加に関する話を今回いただきました。厚労省で検討会が立ち上がっているということで、非常に重要なことだと思っておりますし、財務省からお示しいただいた案も方向性として非常に重要だと考えております。資力に応じた対応の明確化、公的支援をどこまでやるのか、民間にどこまで頼るのかのすみ分けは重要だと思います。未婚率が四、五十代でかなり高まっているということもありますから、身寄りのない高齢者というのは今後増加していくばかりだと予測されます。現状の把握はもちろん、きちんと将来を予測、可視化して、地域で何の問題点があるのかをいち早く明確化する必要があります。また、急なときはどうしても、資力の有無に関わらず代行するケースも出てきたりすると思いますので、後日費用を回収する、そうした対応も出てくると思います。成年後見制度などの制度との連携をしっかりと図りながら整備をしていく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは続きまして、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。今年は団塊の世代全員が後期高齢者になるという節目の年に当たっていまして、社会保障費が今後一段と膨らむということは避けられないということです。くわえて、最近の金利上昇、あるいは自然災害など様々な有事に対する備えも欠かせないので、この社会保障の質を保ちながら制度をより効率化していくということには、より切迫感を持って取り組む必要があると思います。
そこで重要になるのは、大枠として医療・介護費の伸びをどうコントロールしていくかということにあると思います。医療・介護費の抑制というのは、単なる緊縮財政で、社会保障のサービスの低下だけをもたらすのではないかという悪い印象を持たれがちですが、決してそうではなくて、質を保ちながら効率化していけば現役世代の社会保険料の負担の抑制につながり、ひいては手取りの収入が確保されて、物価高が進む経済情勢に対応するためにも必要な施策であるということを、国民の方々に理解してもらうということが大事だと思います。
その点で大事なのは、今年の診療報酬改定だと思います。資料34ページで試算されているように、診療報酬を1%下げれば5,000億円の医療費抑制になります。それが税金や保険料などを通じて患者負担の軽減につながります。この5,000億円の医療費抑制は、恐らく国民の多くの方々に十分理解されていないと思います。例えば、国民1人当たりでどのくらいの負担軽減になるのかなど、試算は難しいと思いますが、具体的な額を目安として示してくだされば、より国民に分かりやすくなるのではないかなと感じました。いずれにしても、今年の診療報酬改定も、病院と診療所では経営状況が異なるということを踏まえた、メリハリのある改定をお願いしたいと思います。
また、保険給付範囲の見直しでは、セルフケアやセルフメディケーションの推進を支える改革として、OTC医薬品の対象拡大が必要だということはおっしゃる通りであると思います。その際に大きな前提として、国民の健康リテラシーというのが大事ですが、資料77ページでは、国民の健康リテラシーが低いという調査結果もあると紹介されています、本当に途上国よりも日本のリテラシーが低いのか、にわかには信じ難いのですが、国民の理解が進むことが大切だと思います。例えば、OTC医薬品のOTCとはオーバー・ザ・カウンターの略ですが、そもそも一般の人にとってはこれ自体がなじみにくいと思います。国や医療機関は専門用語をできるだけ使わずに、分かりやすい言葉で正確な知識の普及に努めていただくことが大切だと思います。
最後に、スイッチOTC化について、日本維新の会が推進を唱えて、与党と協議を進められていると伺っています。少数与党の下で、財政は悪化するばかりではないということを示すためにも着実に取組を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、大槻委員、どうぞ。
〔大槻委員〕ありがとうございます。私も3点お願いします。
1点目は、財政リテラシーの向上についてでございます。16~18ページの理想像について、17ページ目のヘッドラインで議論が重要とあります。これは関係者の議論という御趣旨で書いていただいているのかもしれませんが、本当に議論していただきたいのは国民全体だと思います。あるべき姿と今のギャップを、できれば定性的だけでなく、定量的にも示していただくことで、ここをこうすればこうした削減ができる。そこに対して自分たちは、もしかしたらこうしたマイナスがあるかもしれないが、こっちでプラスがある。そうしたメニューを見せて、国民の方々に議論していただき、そして、優先順位を付けていただく。
2点目、規制制度改革との両輪ということです。この点についてもいろいろと出していただいていて、タスクシェア、タスクシフト、オンライン診療の拡充、スイッチOTC化、人材斡旋等々、これらは非常に重要だと思っています。また、介護の人手不足も深刻であるため、DXに加えて海外からも人に来ていただくことが重要なのではないかと思っています。ただ、資格試験は、日本語かつ極めて特殊で難しいということもあり、合格は、年間数百人にとどまっていると聞いております。ここへの改革ともセットで行っていくことが重要ではないかと思います。
3点目は、過不足のない、かつ、公平な医療制度という観点で申し上げます。今回、地域フォーミュラリを出していただきましたが、地域や施設に依らず中立的な医療が受けられることや過剰な処方の圧縮などは重要だと思います。同時に、ここであまり触れられていないですが、以前話題になった薬の不足についても、こうした適正化で圧縮、解消が図っていけるのではと思います。
それと同じく、この公平性という観点では、金融資産の勘案について、他の委員の方も触れていただいていますが、もちろんこれを議論することが非常に重要である一方、アービトラリーな面も大きいのではと思っております。預金や株に加え、金融資産に当たらないような不動産、また最近のはやりであるゴールド、そうしたところまで入れるのかどうか。そうしたところも含めて、公平、公正、過不足のない医療制度ということをお願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今回、様々なメニューを御提示いただきましたが、それらについては異論ございません。総論的な考え方についても、既に何名かの委員もおっしゃったとおり、基本的にはそのとおりだと思っています。
その上で、医療に関して、各論的に3点申し上げたいと思います。
1点目は、医療提供体制について三つ申し上げます。
一つ目。新たな地域医療構想についてです。地域医療構想というのはこれまでも長く論じられてきたわけですが、言わば都道府県任せであまり進んでこなかったことを踏まえると、いかに実効性を高めていくかということが非常に重要です。29ページに書いていただいているように、国がガイドラインを設定するとともに、将来推計に基づく厳しい実態を関係者に突きつけて行動を促すという作戦はとてもよいと思いますが、これに取り組んでも動かない可能性もあると思います。一定期間で成果が出ないときには、医療提供体制の適正化に向けて、規制的な対応に踏み切るべきだと思います。
二つ目。かかりつけ医についてです。本日はあまり話題になっていませんが、かかりつけ医は地域医療構想のコアになるべきものだと考えていますが、これを実際に機能させるのは意外と難しいと思います。具体的には多診療科型の診療機関グループをどうつくるかという点です。地方でいえば、単科クリニックが徐々に中小の病院に集約されていき、都市部でいえば、同じ地域内で多診療科型の医療機関グループが形成され、それを競い合わせるということだと思いますが、それをどう進めるのか。結局、医療の質に関する情報開示や、出来高払いへのシフトなどといった報酬制度の見直しなど、かなり根本的な対応を講じて進めていく必要があるのではないかと考えます。
三つ目。調剤薬局の数の問題についてです。コンビニより多いというのは衝撃的です。もちろん、今回お示しいただいている、調剤薬局の対人機能を評価した調剤報酬制度体系へのシフトを進めるというのは、正論ではありますが、結果的にそれが薬剤師と医師との機能の重複、あるいは逆に調剤報酬の増嵩を招くことがないようにする必要があります。より根本的には、先ほど申し上げた、どう見ても数が多過ぎる調剤薬局を含む調剤サービスの提供体制の効率化に向けて施策、簡単に言えば調剤基本料の適正化を進める必要があると考えます。
2点目は、給付と費用対効果についてです。先ほどから議論があるとおり、給付と負担の適正化に関しては、大きいリスクは共助・小さなリスクは自助、あるいは応能負担の考え方はもちろん大事なのですが、同時に、今回お示しいただいた費用対効果の考え方を徹底することが重要だと思います。二つ申し上げます。
一つ目。57、58ページにもありますが、費用対効果評価制度は実は公的保険が中心の国ではもう既に広く導入され、成果を上げています。ただ、我が国は、制度が発足してから既に5年たっていますが、評価対象が43品目というのは衝撃的な数字であると思います。もちろん体制を整えなければいけませんが、専門的な評価体制を拡充するなど一定のリソースを投入した上で、スピーディーに評価対象を拡充していくべきだと思います。
二つ目。国としての有効な治療の標準化についてです。今回、地域フォーミュラリの考え方が初登場しました。これはよいと思うのですが、単に地域ではなく、国全体としての最適化を図るために、国がリーダーシップを取って、全国展開すべきだと思います。特に人口減少の影響を大きく受ける地域の行政には、こうした機能を担う力は恐らくないし、日本人の治療に大きな地域特性があるとは思いません。
3点目は、先ほどからも何名かの委員がおっしゃっていますが、こうした改革を進める上でのデータ基盤の整備についてです。37ページで医療機関の経営情報の更なる見える化に関して言及されていますが、先ほども申し上げた費用対効果評価の高度化には診療データの整備と利活用が必要だということも付け加えたいと思います。
また、現在、介護保険等で一部ありますが、応能負担への資産の反映もより有意なレベルで進めるべきだと思います。難しいのは具体的にどのように進めるかということだと思います。例えば、武田委員のお話を伺いながら、原則3割というルールを入れた上で、資産を勘案して減免するという方法、すなわち資産比例で負担を増やすというやり方ではなく、資産がない、あるいは所得が少ない人については例外的に負担を減らすというやり方があるのかもしれないと考えていました。
このデータの問題について言えば、医療・介護に限らず、今後、税と社会保障の一体改革を進めていかなければならない中では、先ほど中空委員も少し触れられていましたが、国や地方の行政機関に、散在している家計や個人の負担と給付に関する情報を集約して、相互に利用可能にするような行政上の情報共有基盤を構築する必要があるのではないかと思います。技術的にはデジタル庁がやればよいのでしょうが、実際にどこがやるのかという点も含めて、本格的に御検討いただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。総論、医療・介護について述べたいと思います。他の委員のおっしゃっている意見で、私も賛同するところがたくさんあるのですが、違う部分、まだ触れられていない部分だけ述べたいと思います。
まず総論部分、10ページに社会保険料負担の話があります。2025年には被保険者負担分が15%ということで、課税前収入の15%が社会保険料で取られているということについて、これはそれなりに有名ではありますが、では、消費税負担と比べてどれぐらい重いのかということについて国民はあまり実感していないのではないかと思います。実は、社会保険料15%に加えて、所得税と住民税が合わせて平均約5%天引きされて、課税前収入の80%ぐらいが手取りになるのですが、それを仮に全部消費に回して消費税が10%取られたとしても、たかだか8%の負担率にしかならないわけですね。15%と比較してすると消費税負担は低く、手取りを増やすという観点では社会保険料負担をいかに軽減するかということのほうが消費減税よりもインパクトが大きいということを、もっとしっかり訴えていくべきではないかと思います。
次は医療です。37ページに機動的調査の話があります。次期診療報酬改定に向けては、令和5年度に行われた機動的調査のように経営状況の実態を的確に把握して、それを反映していく必要があるのではないかと思います。
また、89ページの「現役並み所得」の判定基準の見直しについて、課税所得で判定するというのは早急にやめるべきであると思います。これは高齢者にだけ適用される給与所得控除と公的年金等控除の併用という仕組みを悪用した計算方法ですので、早急にやめて、真の「現役並みの所得」で判定するべきではないかと思います。
また、参考資料17ページにより詳細がありますが、今年度から始まった、かかりつけ医機能報告制度について、着実に進めていただきたいとは思いますが、国民や患者に役立つ情報提供に資する制度にしないと単に税金の無駄遣いだと後ろ指を指されかねません。更なる情報開示の充実を、診療報酬改定と同じように2年に1回バージョンアップしていくというぐらいの気構えで進めていただきたいなと思います。
最後に、必ずしも資料で触れられていない点なのですが、高額療養費制度の話が一部の委員から出ていたと思います。所得税の基礎控除を物価連動で上げると言っているのに、高額療養費の上限を物価連動で上げるという話にならないというのは平仄が合っていないと思うのです。高額療養費の上限も確かにリスクの度合いに応じてという観点は極めて重要ですが、物価連動にならないで据え置かれているということについては改めるべきではないかと思います。
次に介護です。91ページに介護全体の話がありますが、改革工程にありますように、ケアプランの利用者負担、軽度者に対する生活援助等の地域支援事業への更なる移行、多床室の必要負担については、結論を出すと書かれている以上、しっかりと適切な結論を今年中に出していただきたいと思います。
最後に、94ページに介護従事者の処遇改善の話があります。これは医療も介護もということで申し上げると、確かに診療報酬、介護報酬を上げないとなかなか処遇改善できないという面はあるかもしれませんが、医療界や介護界に厳然として存在する所得格差をしっかりと是正していただく必要があります。高所得者と低所得者が共存しているというような状況が医療界や介護界にあるわけですので、診療報酬、介護報酬を上げる前に、まず所得格差を的確に是正することから始めていただかなければならないのではないかと思います。
私から以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕3点ございます。1点目は、土居先生もおっしゃったところですが、給与、報酬水準を一生懸命、社会全体で上げていこうとしている中で、手取りが減るということへの不満は非常によくないと思いますので、これは何らか早急に対処していく必要があると思います。
2点目、あるべき医療と介護分野の理想像というものが書かれて、これはとても良かったと思うのですが、ここに質の観点が含まれるということと、また医療の側面からだけではなく、地域の観点も入っていることが特によろしいのではないかと思いました。医療の質が高いところ、教育の質が高いところに行きたいとなってしまうとどうしても東京一極集中になってしまいますが、国土の在り方の観点から地域に優れた医療、例えば小児科医とか産婦人科医がいれば、少子化の対策にもなっていくというのもございます。
それからもう1点。世界的に見れば非常に恵まれた社会保障の制度がある中で、健康がより維持されるからこそ長寿になっているということもあります。健康な方がより働きやすくなれば、税収が増えるというようなこともございますので、そうした連関も念頭に置いて議論が進められればと思います。
最後に、データの整備の話がたくさん出ておりますが、何のために何のデータを集めるのかということはあらかじめよく設計しておく必要があります。データを集めても、後にそれを比較検討しようと思ったときに比較がしにくいものになっていたりすると、そこを合わせに行くためにまたコストがかかるというようなこともございます。そうしたところはあらかじめよく考えておく必要があろうかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞお願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。他の委員からもありました、年末の高額療養費制度の話は伝わり方がとても残念になってしまったと思っております。政策プロセスとともにメディアの側の責任もあると思っております。政府は一生懸命、子育て支援も若い人たちの支援もしようとしていたにもかかわらず、年末の伝わり方は、まるで政府が現役世代の重いリスクに対して冷たいように伝わってしまって、政府がやりたいことがうまく全く伝わらなかったのはとてももったいなかったなと思っております。今の状況は、長期的に見て、とにかく負担可能な範囲にしっかり抑えていくということが非常に重要だと思います。これは若い人たちのためにやろうとしている改革なのだということをしっかりとまず伝えながら、それぞれのディテールを伝える必要があるかなと思っております。
春なので全体のことを言いますと、少しずつ改革は進んでいるものの、医療費の膨らみなどを見ますと、この延長で大丈夫なのかという気持ちにならざるを得ません。さらに言うと、今、人口も縮小していますが、お金も人も医療に行き過ぎではないかと感じます。これだけ若い人たちの人口が減っていくならば、その人たちの労働力がどの産業にどのぐらいいくのかという全体感も必要だと思うのですが、取りあえず医療は皆が必要だと思うものだから、もっと寄越せということを続けていく。でも、そうすると、全体的にはバランスが悪くなる。さらに言うと、医師は安定的な収入があるということで、高校生の親などに大変人気があるので、結果的には、優秀な人たちが本来の社会のニーズを超えて、医師になりがちになっている。さらに言うと、高度医療を担う病院よりも開業した方が、実入りがよくなると世の中が思っているので、必ずしもイノベーティブでないところに人材が流れ、少しいびつな状態になっているということがずっと気になっております。
医療を超えて、横断的に人口減少時代における人の配置のバランスをどうするのかについて政府に考えていただきたいというのはありますが、現状本日の資料の30ページにあるとおり、医学部の定員は一旦膨らんで維持されているわけです。ただ、若い人たちは明らかに減っているので、定員が維持されているということは、医者になる人の割合は増えています。たしか以前、若者八十何人かに一人が医者になるという話がありましたが、総体的には、医師は過剰になる可能性が高いと思います。そこはすぐにも是正が必要だと思いますし、また何よりも今は偏在対策を相当強力に進める必要があると思います。特に今、医学部定員を増やした世代の人たちが40歳ぐらいになるということで、開業医が増えると言われています。例えば、その人たちが都市部に集中的に開業をしたとすると、いずれ余ってくるかもしれない。そうすると、今度は余ってしまった開業医を破綻させないために、本来必要な改革が進まず、よくない状態が維持されるということが今の段階で容易に想像できます。偏在対策と医師の数の適正化について、全体のフレームをつくるという作業を、今から始める必要があるのではないかと思います。
また、薬剤師も増えているので、どこまでを担っていただくのかという視点も大事だと思います。医療の中でのタスクシフト、具体的にはお医者さんにかからなくても、薬に関しては一定の薬剤師が担うというような形に変えることができると思っております。
またお薬について、費用対効果や有用性が低い薬が保険収載し続けるという問題は、一般の人の立場ではどうしてなのだろうと思います。それは国民にとっても、患者にとってもハッピーなことではない。海外との違いも含めて、そこは理由をきちんと伝えたり変えていく必要があると思います。
いずれにしろ、これはまさにメディアの反省もあるのですが、年末の議論だけが報道されると、どうしてもピンポイントで改革される部分だけのニュースになってしまうので、まるで国民に対するいじめのように伝わってしまうというところがあります。もっと早い段階から、全体としてやりたいということをしっかりと打ち出し、その打ち出しが報道されるチャンスを意識的につくって、年末だけのような報道にならないようにするということが必要ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、お願いします。
〔田中委員〕田中です。御説明ありがとうございました。まず国の最も大切な財産というのは国民の健康ですので、一人一人が健康な暮らしを志向するのだという決意を常に意識できるように、今考える必要があります。常に少子高齢化と言いますが、自分にとってどうなのかということを意識できることが重要です。また、予防医療や健康寿命の延伸、ウェルビーイングに資する事業やサービス、商品の開発など、これらの健康づくりを支える企業の新規事業やスタートアップにも、さらに注目が集まるようにすべきだなと思います。そのためにも、エビデンスや実証を示しながら、産官学の取組を活発させていくということが大前提としてあるのだと理解させていただきました。
また、応能負担も社会のウェルビーイングや個人の心身の健康の基盤になると言えるかと思いますし、その精神で、金融資産の保有と負担の在り方などが具体的なシミュレーションとしてこれから出てくると意識が変わるかなと思います。
医療については、今、地域の偏在があって、医師不足が解消されないままというところもありますが、診療科の偏在という問題もあります。各地域の国公立の大学病院などでは高度かつゼネラルが求められても、診療科は結構偏在ということもあります。地域医療構想もかなり長く手がけてもらっているので、あるべき姿と課題を顕在化して、進めるべきです。薬のことも含めた地域フォーミュラリも成功事例が少し出始めているようで、よくリリースなども拝見しますので、スピード感のある改革を期待したいと思います。
最後、介護事業においては、利益率の改善が見込まれないと言われるのですが、前半でも委員の皆様がおっしゃっていた、グループ経営や連携体制の工夫というのは地域の生活圏の中で検討ができると思います。また、医療の分野であるパラメディカルのような補助的人材が介護分野の中においても育成されて、介護に従事される方々の待遇改善や生産性の向上につながる工夫は必要かなと思っています。
また、デジタル化する部分やDXの活用法にもまだ余地があり、例えば介護分野では、ベッドや一人一人が着用される靴にもセンサーがついており、これらのデータを生かした設計を行えば、人材配置や勤務時間の改革、連絡体制の効率化が進み、生産性向上につながると思います。
大槻委員からも、いろいろなことを業界の関係者だけで語らずに、というご指摘がありました。医療や介護の分野も業界内で専門家がいらっしゃって、大変な知見があると思うのですが、今こそ地域住民の視点で、視点を変えて取り組む必要というのに気づいていくとよいかと思います。よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、どうぞお願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。芳野でございます。本日は意見書を提出しておりますが、大きく4点にポイントを絞って申し述べたいと思います。
1点目は、医療と介護の理想像としての制度の在り方です。医療保険及び介護保険制度は負担能力に応じた保険料を負担する一方で、受けられる医療・介護は、所得の多寡にかかわらず同じという仕組みです。このような仕組みの中で、患者、利用者の窓口自己負担を強めることが社会保険に強制加入することへの納得感をそぐことにつながらないよう留意が必要と考えております。特に医療保険制度は、被用者保険から高齢者医療への拠出金が増加していく見通しとなっており、年齢で区切っている現行の高齢者医療制度は廃止し、退職者を被用者保険全体で支える仕組みの創設が必要と考えます。
2点目は、医療・介護サービスを担う人材確保策についてです。医療・介護ニーズが増大していく中、医療・介護現場で働く全ての人が安心して働き続けられるよう、賃金の引上げをはじめとする処遇改善と労働環境の改善が必要不可欠です。今次春季生活闘争では高水準の回答が引き出されていますが、医療・介護分野の賃上げは決して十分とは言えません。現場を担う全ての労働者の持続的な賃上げが可能となるよう、国として更なる施策を実行していく必要があると考えます。
3点目は、ハラスメント対策です。利用者や家族からのハラスメントから介護従事者を守り、心理的安全性を確保するという観点で、各事業所でのハラスメントマニュアル作成を支援するとともに、訪問介護の重度訪問介護加算や、新人ヘルパー同行支援の補助金と同様に、2名体制でのサービス提供を可能とする補助金等の仕組みの検討が必要と考えます。
4点目は、公的年金制度についてです。資料にはありませんが、働き方などに中立的な社会保険制度とするためにも、被用者保険の適用拡大を早期に進めるとともに、第3号被保険者制度は段階的に廃止すべきと考えます。また、基礎年金の給付水準の引上げは、適用拡大や保険料拠出期間の延長に取り組むとともに、資産課税の強化を含めた税制改革や高所得者に対する国庫負担分のクローバック方式の導入などにより、財源を確保し、国庫負担割合を段階的に引き上げるべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、どうぞお願いします。
〔遠藤委員〕資料で示されました、現役世代の社会保険料負担15%について、協会けんぽの場合ということだったのですが、報道で見ましたところによると、大企業の従業員の方々の社会保険料率というのは、同年で9.34%ということでした。これは賃上げの効果が薄れてしまっており、成長と分配の好循環と言っているわけなのですが、消費の拡大にも抑制がかかるということになっていると思います。
宮島委員もおっしゃったのですが、これまでの延長線上にある改革ではなくて、抜本的な社会保障と税の一体改革が必要なのだろうということも、毎年の財審で確認していることだと思います。
土居委員もおっしゃったのですが、現役世代の社会保険料負担が重いから消費減税すべし、財源は国の借金でよいというのは、ゼロ金利時代ではないわけですから、大いなる誤解があります。ここは本当にしっかりと説いていかなければならないと思っていますし、そもそも負担と給付の関係が明確になっていないからこうした誤解が生じてくるのだと思います。また、制度の複雑さもあると思います。不公平であるという誤解や疑念が社会に蔓延していると感じます。
公平性の点について申し上げます。これは皆様と違って、私はマイノリティーだと思うのですが、金融資産を賦課対象にする点については、私は反対です。それは今後、若者たちの勤労意欲や貯蓄意欲を阻害する面もありますし、NISAが除外されるとしても、金融投資を促進していく政策と矛盾していると感じます。また、現在の資産家の高齢者たちに対する諸策立てであるとすると、対症療法的だなと思います。
OTC拡大はもちろん、一律3割負担を実現して、さらには小林委員もご指摘されたとおり、混合診療を導入するなど、医師会としては避けたいような改革にも踏み込んでいただくとともに、取りやすい保険料ではなくて、消費税に社会保障の財源を求めるという従来の姿勢を崩していただきたくないと思います。
また、負担の公平性の問題は年金制度でも目立ちまして、これは河野議員がよくおっしゃっておられることなのですが、公務員や会社員と結婚している専業主婦は、第3号被保険者として保険料を払うことなく満額の年金がもらえるわけなのですが、それを一生懸命働いているシングルマザーの保険料で賄っているという現象も起きています。こうしたことを放置していてよいのかというのは、先ほど申し上げたように働くインセンティブを削いでいくのではないかなと。これは経済成長、国力にもつながっていく問題だと思います。
今回指摘されていないのですが、1点、厚労省が22日に発表したデータで、外国人の国民健康保険の納付率が63%だったという調査結果が明らかになりました。これは世帯主が外国人の割合を抜き出して集計できる150市区町村の集計であるので、もっと広げていけば、もっとシビアな数字になるかもしれないと思いました。これは日本人も含めた納付率は93%だったことを考慮すると非常に低い数字だと思います。年金保険料の納付率についても調べる必要があるのではないかなと思っています。負担の公平性の点からも、地方自治体の手間がかかる問題でもありますが、徴収しなければならないと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕私から2点、お話ししたいと思います。皆様、既に言われたとおり、特に医療の大きなリスクと小さなリスク。大きなリスクは共助、小さなリスクは自助。大きなリスクの場合、共助だけではなくて、実際には税金等公費も入っていますが、そうした原則を抑えるというのはもちろんです。その上で、改めて言うまでもなく、財源が厳しいという問題があるわけですが、私はまだまだ日本全体としてやるべきことはあるのではないかと思います。例えば、もう既におっしゃった方もありますが、ワンコインですね。つまり、病院、診療所問わず、医療機関を利用したときには毎回通行料としてワンコインを置く。これは保険の適用外の負担とする。「医療従事者の皆様ありがとう」のワンコインはかなりの財源になります。
また、金融所得が問題になっていました。私も反対ではないのですが、他にもあると思っています。むしろ、20年以上前に私も参加して内閣府で検討したのですが、亡くなった方が残す全ての金融資産に一律10%の課税。これは相続税のようなものなのですが、相続税ではない。相続税は、資産を相続した生きている人が払うのですが、亡くなった人が「これまで社会保障ありがとう」と言って、亡くなった後に払う。
これには大いに大義名分があると思います。様々なアンケート調査をやると、例えば家を売って、自分で金融資産に変えて使っていこうという日本の高齢者は少ない。そのため、リバースモーゲージというのがありますが、意外と広がらない。世話になった子供に、土地くらい残していこうかと。ただ、金融資産まで残そうという人は意外と少なくて、大部分の高齢者はなぜ金融資産を持っているかというと、何歳になっても自分の老後が心配だからです。社会保障のお世話になるのだが、それが心配だから、金融資産も持っていたい。ただ、人間、どこかで亡くなるわけで、それで残すことになります。そのため、そうして高齢者が持っていた金融資産には、実は生きていて相続する人たちにはあまり権利はないかもしれない。せめてその1割を、亡くなった人が死後に、「社会保障、今までありがとう」と言って、社会保障の基金に拠出するというのは大いに大義名分がある。徴税コストもゼロと、こうしたことですから、議論の余地があると思うのです。
長くなるかもしれませんが、もう1点です。こうしたことも踏まえて、社会保障の大原則については、もう1回ねじを巻き直す必要があると私は思っています。特に昨年あたりから、手取りを増やせという中で大混乱になっているのではないかと思います。つまり、社会保障制度が軽減しようとするリスクは、個々人の手取りを増やしても対処し得ないようなリスクであります。非常に深刻な病気になった。あるいは、社会保障ではないですが、道が陥没した。これは個々人の手取りが少しくらい増えても対処できない問題です。災害の復興ももちろんそうですが。この点は自明という前提で、少し前まで世の中が回っていたかと思うのですが、手取りを増やせの大号令の下で、こうした基本的問題がグラグラになっているのが現状ではないか。そうした中で、この財審としても、特に社会保障との関連では、少し初歩的ではあっても、本来の社会保障の意義や大原則、社会保障が軽減しようとしているリスクの中身や大小を骨太に情報発信する必要があるのではないかと思います。
今回御説明いただいた資料は大変大部のもので、こうしたものが必要であることは言うまでもなくて、こうした資料は、それはそれで良いのですが、この資料の頭に少し数枚でもそうした大原則、大きな情報発信をする必要があると思います。繰り返しになっていますが、現在は社会保障の大原則自体が揺らいでいる時代であると思いますから、情報発信で少し工夫できるのではないかと、こう思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕小林充佳委員、どうぞ御発言ください。
〔小林(充)委員〕小林でございます。私から負担の公平性について申し上げます。年齢ではなくて能力に応じて負担していくのだという大原則については賛同いたしますし、それをベースにして、いろいろな施策を進めるということについては結構ではないかなと思います。ただ、一人一人の負担、社会保障費の負担は、日本の人口構成などを考えると、これから増やさざるを得ない状況ではないかなと思います。その中で特に現役世代を含めた所得の低い方の負担感がより一層強まるというような傾向が危惧されるのではないかなと思います。
一方で、経済を発展させる、成長させるという意味合いでいうと、個人の消費をいかに喚起していくかということが非常に重要だと思います。社会保険料と税金が可処分所得に影響し、それが消費に回る。いかに所得と消費の好循環をつくっていくかということも一方で重要なのではないかと思います。そうした観点で、社会保険料をどうするかということだけではなくて、消費税を含めた税も一体的に捉えて、全体としてどのように組み立てていくかが非常に重要なのではないかと思います。
諸外国に目を向けてみますと、オランダでは、社会保険料に対する給付付き税額控除のような話も導入されていると聞いております。繰り返しになりますが、中間層や低所得者層など、社会保険料の負担額が大きい層の消費を拡大させて、経済成長の好循環をつくっていくために、税と社会保障料というのはもっと一体的に議論あるいは制度づくりをしていく必要があるのではないかなと思います。
マイナンバー制度の普及により、環境が整ってきているのではないかなと思いますので、実現に向けて是非検討していくべきだと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
せっかく社会保障と大きな話なので、両主計官から一言ずつ何かご発言いただき、それで終わりたいと思います。
では、どうぞ。大来主計官。
〔大来主計官〕ありがとうございます。非常に高い見地からの意見を多くいただきまして、我々の行政に今後生かしていく必要があると思いました。一つ一つは、個別に繰り返すわけにはいきませんが、大別すると、1点目として、スピード感。特に介護の分野などはずっと言われているのになかなか改革が進んでいないという御指摘をいただいたものと思っております。負担を求めたり、給付を減らしたりという改革を進めていくには、時宜を得てやっていく必要があって、タイミングも非常に大事になっていきます。そこを見計らうということも大事ですが、御指摘いただいたスピード感も常に念頭に置く必要があるだろうと思っております。
2点目として、多くの委員から、大きな哲学やグランドデザイン、また根本に立ち戻って、具体的には社会保障とは何なのか、受益と負担の関係はどう捉えるべきなのかといったようなところを考えたり、プレゼンしたりするべきという御指摘をいただいて、まさにそうだなと思いました。今回の将来像もそうした思いを持ってトライしてみたのですが、掘り下げの余地がまだあるのだろうと本日思いましたので、さらに肉づけをしたり、新たな視点を加えたりしながら、そうした大きな哲学と各論の橋渡しのようなことをしっかりとやっていく必要があると思いました。
3点目として、国民への伝え方、プレゼンテーションについての御示唆、アドバイスをいただきました。高額療養費の問題もあったところでございますので、ここも含めて、我々、コミュニケーション能力は常に磨いていかなければいけないと思っております。
4点目として、大きなリスクと小さなリスクをしっかりと頭の中で整理して、それぞれに対するアプローチを考えていくべきであるという御指摘をいただきました。ここの点については、委員によって、小さいリスクのところに重点的にというお立場と、大きなリスクのところであっても、それはその論点なりに改革をしないでよいというわけではないのではないかという御視点と矛盾するものではないと思っております。リスクの大小に応じてどういう制度設計をしていくのかという視点は引き続き非常に大事だと思いますので、拳々服膺しながら制度設計に活かしていきたいと考えております。
やや雑駁で感想めいたお話になりますが、私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、末光主計官、どうぞ。
〔末光主計官〕貴重な御指摘の数々、ありがとうございました。私といたしましても個々のいただいた御指摘についてはそれぞれ研究させていただきたいと思っておりますが、大きな視点のほうから申しますと、私の担当しております年金や福祉についても御指摘がございました。具体的には、公平性の問題や今後の人口動態の変化の中でどのような政策が適切なのかというお話をいただきました。
吉川先生から大きな視座でのお話もいただきましたが、まさに社会保障につきましては、マクロでの何が最適なのかという観点と、ミクロでの受益と負担という観点の両者をあわせもつことが重要であります。くわえて、今この瞬間は日本の社会自体が、人口動態が変わっていく、また賃金と物価の好循環という中で経済も転換していく分岐点だと認識しております。そうした社会の変化の中で、いかに納得を得られて、信頼を寄せられる社会保障というものを築けるかということをよく考えながら、個々の政策に取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、本日の議論はここまでとさせていただきまして、会議の内容はこの後、記者会見で私から紹介させていただきます。
それから、次回なのですが、次回は連休明けの5月9日金曜日9時半から、財政制度分科会開催ですが、次回は建議の素案を議論していただきます。
それでは、本日はこれで閉会させていただきます。どうも皆様、御苦労さまでした。ありがとうございました。
午後04時00分閉会