財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年11月13日(水)09:00~11:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
社会保障 -
3.閉会
分科会長代理 |
増田寬也 |
渡邊政策立案総括審議官 宇波主計局長 前田次長 中山次長 端本文書課長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 安永竜夫 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村俊之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 |
午前09時00分開会
〔増田分科会長代理〕間もなく会議を始めますが、本日は冒頭カメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。それでは、カメラ、お願いします。
(報道カメラ 入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日の議題は、社会保障です。
それでは、そろそろ御退出をお願いします。
(報道カメラ 退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、議事に入ります。大来主計官、末光主計官から、社会保障について、説明をお願いします。
〔大来主計官〕ありがとうございます。大来でございます。
3ページをご覧ください。社会保障分野の令和7年度予算編成における大きな課題といたしましては、一つ目として、少子化への対応でございます。「こども未来戦略」に基づく加速化プラン3.6兆円を、財源を確保しつつ着実に実施していく必要がございます。二つ目として、全世代型社会保障を構築していく取組を引き続き継続していくことです。次の世代に負担を先送りしないことはもとより、現役世代の保険料負担を抑えていくことも重要であり、改革工程に沿って、医療・介護等の改革を着実に実現していく必要がございます。三つ目として、本年は5年に一度の年金改革の年に当たります。働き方に中立的な制度の実現、老後の基礎的な収入を確保していく等の観点から、必要な改革を実現していく必要がございます。
5ページ。こども予算充実の財源確保の枠組みができたことに伴い、これまでの国費ベースでの社会保障関係費のコントロールのみならず、社会保険料ベースでも社会保障給付の伸びをコントロールしていくことが求められております。年1,600億から1,700億円程度の保険料負担軽減効果を主に医療・介護の分野で生じさせて、子ども・子育て支援金を令和8年度から導入していくことが必要です。
6ページ。そうした枠組みの構築に向けて、昨年末に決定された改革工程に掲げられた項目を着実に実現していく必要があります。
次に、少子化でございます。
14ページ。「こども未来戦略」の加速化プランという大きな枠組みは、施策の中身や財源論を含めて、令和6年通常国会で成立した改正子ども・子育て支援法の中である程度確定いたしました。財源を具体的に出していく営みが今後の各年度の予算編成に委ねられますが、そのような財源出しをしていくのは、どちらかというと医療・介護の公的保険分野になりますので、こども・子育ての分野は、着実に、しかし、科学的目線を持って施策を前に進めていくことが重要です。
続きまして、医療でございます。
20ページが目次となります。
医薬品関係です。令和7年度は、診療報酬本体につきましては、いわゆる裏年に当たり、実施されないことが基本です。一方で、薬価については、令和3年度以降、毎年改定を実施しており、本年も実施していくことになります。その際、我が国の創薬力にも目配りしながら、改革を組み合わせていく必要があります。
医療提供体制については、医師偏在対策のパッケージ策定、次期地域医療構想の土台づくりが年末に向けた課題になっております。厚生労働省は、関連の法案を来年の通常国会に提出予定です。今後ますます希少になっていく医療資源をどう効率的に割り当てていくか、また、患者像も変化していると言われていますので、そうした需要側の行動変容をどう取り込んでいくか、節目の大事な青写真となります。
その他の改革は、既に閣議決定している改革工程に記載された項目等を主には論じております。さらに、改革工程にはない新しいことも芽出し的に提案がございます。いずれにいたしましても、現役世代の保険料負担軽減が重要なテーマとなっております。こうした全世代型社会保障というここ数年の大きな考え方を背景として、しっかりと改革を進めていくことが重要です。
21ページ。近年の薬価制度改革を通じて、革新的な医薬品とそうでないもののメリハリづけが進展しています。また、公的保険の外側でも、日本医療研究開発機構(AMED)を通じた創薬支援などが行われています。ただ、今後の改革の方向性にもあるとおり、公的保険の内外ともにまだまだ政策課題は残っております。
26ページ、公的保険の外での創薬支援に係る課題です。マトリックスにありますように、AMEDの内部、あるいは橋渡しのところ、リスクマネーのところなど、赤字で書いたような課題がありますので、そこに政策が必要ではないかと考えられるところです。
28ページ、薬価改定です。令和3年度以降、奇数年度においても薬価改定を実施しており、令和7年度も、現役世代を含む国民負担軽減の観点から、薬価改定を実施することが重要です。薬価改定においては、革新的新薬の価格は維持され、長期収載品の価格が引き下げられますので、製薬企業にとってもイノベーション促進のインセンティブとなります。薬価改定では、12月頭に結果が出る薬価調査を踏まえて、適正に市場価格を薬価に反映していくことが重要になります。
これまで奇数年度の改定においては、30ページにありますとおり、対象品目が限定されていたり、31ページにありますとおり、算定ルールの中に適用されていないルールがあったりといった問題があり、今回の改定ではこのあたりもしっかりと対応していく必要があると思います。
50ページです。後発医薬品については、供給不安などの問題が数年前に発生し、業界構造に遡った対応が必要となっております。安定供給に向けて、後発品を製造する企業に対するABC評価の完全実施、そうした評価の薬価改定での活用などが課題です。また、高額なバイオ医薬品の後続品、いわゆるバイオシミラーの使用促進策、例えば選定療養の活用なども次なるアジェンダです。
56ページ以降、医師の偏在対策です。医師数については、2020年代後半には過剰になると見込まれているので、医学部定員を適正化していく必要があります。既に医師になっている者の世界に目を向けますと、医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在が存在します。従来のぬるま湯的な取組の延長にとどまらず、規制的手法、経済的手法の双方で偏在対策を強化することが必要です。
62ページ。ドイツなどの事例を参考に、我が国においても、保険医療機関に対する規制など、真に実効性のある医師偏在対策となるよう踏み込んだ対応を行うべきです。
66ページ。経済的手法に関しても、ただ医師少数区域にお金を配るだけではなく、医師多数区域の過剰なサービスに対してディスインセンティブを課すこととセットであることが重要です。しっかりとメリハリの効いた政策誘導を行うという意味でも、少数区域に配分する者の財源を考える意味でも、国民負担の軽減という意味でも重要となります。そうした観点から、ある地域のある診療科クリニックが過剰な場合に、そのうちのきちんとしたアウトカムを出していないようなクリニックは、何らかの減算の対象とすることが必要と考えられます。
68ページ。2040年頃を見込んで新たな地域医療構想を策定することとされていますが、患者増の変化や希少となる医療資源の集約化の必要性などをしっかり踏まえることが重要になると考えられます。
76ページ。国民健康保険については、普通調整交付金の配分の在り方の適正化、高額医療費負担金の在り方の見直しなどが残された課題です。いずれも保険者機能を都道府県が適切に発揮していくための重要な項目ですので、着実に実施していくことが求められます。
82ページ以降、改革工程に掲げられた改革項目を記載してございます。
年齢ではなく能力に応じた負担としていく観点からは、金融所得や金融資産の勘案、後期高齢者医療制度における現役並み所得の判定基準の見直しなどが重要です。
また、公的保険の実効給付率が上昇し過ぎて現役世代の保険料負担等が過重になることを防止する観点からは、87ページの高額療養費制度の自己負担の限度額、あるいは、スライドはございませんが、入院時の食費の基準などを適時見直すことが必要と考えられます。
89ページ。制度の持続可能性を確保していくための更なる医療制度改革について記載しています。保険給付範囲の在り方の見直しとしては、実効給付率に着目した支え手の負担軽減につながる仕組みの導入、負担の公平化としては、時代の変化に即した高齢者医療制度の在り方の見直し、後期高齢者支援金の抑制、コロナ関連債務の返済などを新規の項目として芽出し的に提案しております。
続きまして、介護でございます。
91ページ。介護費用の総額は、高齢化の進展等により急速に伸びています。生産性向上などを通じて、サービスの質は確保しつつ、介護報酬の合理化・適正化や利用者負担の範囲の見直しなどを着実に進めていくことが重要です。
93ページ。改革の柱となる切り口ごとに今後の方向性を記載しております。効率的な介護サービスの提供という観点からは、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への更なる移行などが課題です。保険給付の範囲の在り方の見直しという観点からは、ケアマネジメントの利用者負担の導入、多床室の室料負担の更なる見直しなどが課題です。高齢化・人口減少下での負担の公平化という観点からは、2割負担の範囲の見直しなどが課題となっております。
〔末光主計官〕末光でございます。
続いて、109ページから年金でございます。財政検証に基づく制度改革の議論が進んでおり、今般の改正では、働き方に中立的な制度の構築を目指す、また、高齢期の経済基盤の安定や所得保障・再分配機能の強化を図る、との観点から具体的な事項の検討が行われます。
次のページから2枚は、国民皆年金の下の公的年金制度の概要です。
113ページ。所得代替率は61.2%ですが、スライド調整等により過去30年投影ケースでは2057年度に50.4%となり、特に基礎年金水準の低下が課題です。
117ページ以降、オプション試算の項目ごとの御説明です。これまでも被用者保険の適用拡大が順次行われ、今般の改正でも企業規模要件の撤廃などを確実に実現すべきと考えます。
119ページ。マクロ経済スライドが長期化する結果、将来の基礎年金の給付水準低下が見込まれており、基礎と比例の調整期間一致による水準底上げが議論されています。これを行う場合、現行制度の下での見通しに比べ、国庫負担の大幅な増加が見込まれますので、対応した安定財源を確実に確保する方策と併せて検討を行う必要があります。
122ページ。基礎年金の保険料拠出期間を延長し給付を増額する見直しは、次期改正で取り組む必要性は乏しいとの見解が示されています。引き続き検討を深めるに当たり、これも現行制度の下での見通しに比べ国庫負担の増加が見込まれるため、その増加に対応する安定財源を確実に確保する方策と併せて検討を行う必要があります。
123ページ。在職老齢年金制度について見直す場合は、所得代替率の低下や所得再分配の観点など、低中所得者への影響を踏まえた対応も検討すべきと考えます。
125ページから障害福祉サービスです。利用者に牽制が働きにくい一方、事業者増加に応じて総費用が増えやすい構造のため、特に予算額の伸びの大きい分野です。
126ページから3枚は現状です。事業所は、近年、特にグループホームなどでの営利法人参入が顕著であるほか、利用者負担割合はほかのサービスと比べて僅少となっています。
129ページから2枚。自治体の取組の推進に関しては、自治体が策定する障害福祉計画について、給付適正化の観点等を踏まえたバージョンアップを図るとともに、障害福祉データベースの活用に向けた環境整備を進め、総量規制や意見申出制度の運用にも活用すべきと考えます。
131ページから3枚、就労継続支援関係です。A型、B型それぞれについて、次期報酬改定に向けた適正化などが必要と考えます。
134ページ。グループホームは、支援に関するガイドライン策定や総量規制の対象化が必要と考えます。
136ページからは生活保護です。生活扶助基準は、現在、特例加算と従前額保障が実施されていますが、一般低所得者世帯の消費実態との均衡を図る必要があります。
140ページ以降。前回見直しでは、5年度、6年度の臨時・特例的な対応として、1人当たり月額1,000円を一律加算し、なお減額となる世帯は従前の基準額を保障しました。生活扶助基準は、最低限度の生活保障との制度趣旨や国民の理解を得る観点から、一般低所得者世帯の消費実態との均衡を図るべきですが、特例加算は、一般世帯の消費の伸びを上回る水準であって適切に均衡を図る必要があり、また、従前額保障は、一般世帯との間で大きな不均衡を生じさせ、自立の助長にも反しかねず、合理的な算定根拠のない従前額保障は解消すべきと考えます。
144ページから10枚は、医療扶助の適正化です。受給者側への指導だけでは限界も見られ、今後はデジタル化活用や医療機関への働きかけ強化等も必要です。
145ページ以降、オンライン資格確認や電子カルテ等の情報活用など個別の見直し内容を示していますが、うまずたゆまずこれらの取組を着実に進めるべきと考えます。
最後に、155ページから3枚、雇用関係です。コロナ禍以降悪化した雇用保険財政は、いまだ回復段階にあることなどを踏まえ、失業等給付に係る雇用保険料率については、弾力条項を用いた引下げは慎重に検討すべき、また、雇用保険二事業による失業等給付積立金からの借入れについては確実に返済していくべきと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は、オンラインで御参加いただいております芳野委員から意見書を提出していただいております。PC端末に格納しておりますので、お目通しを頂ければと思います。
それではこれから、ただいまの説明に対して御意見、御質問を頂戴したいと思いますが、本日は実は秋の財審で一番参加者が多くなっておりますので、大変恐れ入りますが、3分ほどで発言をまとめていただきますと皆様方の意見が反映できるかと思いますので、よろしくお願いします。会場から5名、それからオンラインから5名と、そうした形で順次指名をさせていただきたいと思います。
まず、会場から始めたいと思います。中空委員から、それでは御発言をお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。見本となるべく短くやりたいと思います。本日は社会保障なので、相当中身がいっぱいあり、論点もあるのですが、いくつかに絞ります。
そもそも社会保障費の財源が危うくなっていることについて、まず危惧しています。最近は少数与党が出てきて安定財源である消費税を下げようという動きもあって、そうすると社会保障そのものが危うくなるという大問題の中、できるだけ無駄をなくす。もちろんそうした財源が減るかもしれないということまで考える必要はないのだと思いますが、できるだけ無駄をなくし、効率を上げておくということはなお重要だろうと思います。
その中で、絞りに絞って三つ申し上げたいと思います。今回の資料で私がやはり一番センセーショナルに思ったのは、9ページの国民医療費の急上昇です。これだけ医療費が上がっているという事実を目の当たりにして、改めて医療機関の「見える化」が必要だと思いました。12ページで医療機関の情報があまりにも不足していることを紹介していただき、また、医療機関が経費をみなしで一律70%計上できるということも最近聞きました。そうした覆い隠された医療の実態、医療が受けている恩恵のようなもの、規制のようなものがたくさんあるということを考えると、どれだけ「見える化」が必要かということかと思います。引き続き、むしろここをきっかけにもっとやっていただければと考えます。
また、少子化対策については、17ページでEBPMを強化すると言っていただいています。これはそのとおりで、やっていただきたいと思いますが、もう既に使った少子化対策に向けてのお金があると思います。この今までやったものの効果を、EBPMを具体化して見せていただけないかと思います。そうでないと、このまま少子化対策にお金を使えばよいという状況になりかねないと思うので、どれだけ効果があったかを早めに見せていただきたいと思います。
最後一点、創薬についてです。医療費がかさみ過ぎているという問題があるものの、日本の薬価をきちんと正当に持っていく必要がある、と思います。そうは言っても、日本の創薬力が落ちていることについては気になります。AMEDの話をしていただきましたが、事業間で縦割りがきつく、資金がばらまかれている割には効果が出ていないようなことを聞きます。ここもどれだけのお金が効率的に使われているか、そして創薬力の強化にどれだけのお金が向かっているかを見ていただきたいなと思いました。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、國部委員、どうぞお願いします。
〔國部委員〕私からは4点申し上げたいと思います。
1点目は、秋の議論としては少し大枠の論点となりますが、全世代型社会保障の構築に向けた社会保障と税の一体改革の必要性についてです。足もと、毎日報道されていますが、103万円の所得税の壁や、106万円、130万円の社会保険料の壁への対応が国民的な議論となっています。これらの制度には、創設から時間が経過して社会環境が変化し、政策的意義が薄れたばかりか、働き控えなど想定しない影響が生じている側面もあり、早急に見直しが必要です。ただし、制度ごとに個別に改革を進めようとすると、国民の意見はどうしても税控除を増やし、保険料負担を減らす方向に向かってしまいます。したがって、今回の壁の議論においては、社会保障制度と税制の壁を一体的に見直し、世代や所得別にどのような効果が生じるのか、目先の税負担や保険料負担のみならず、将来的な社会保障によるベネフィットも含めて丁寧に示しながら、年代や働き方に左右されない公平な制度設計とすることが必要と考えます。
2点目は、応能負担の推進についてです。年齢ではなく能力に応じた負担は、全世代型社会保障の根幹をなす考え方の一つであり、保有金融資産を勘案する仕組みも併せて、全世代型社会保障の改革工程では2028年度までの検討事項となっています。国民の金融資産の状況をフロー、ストック両面で把握し、保険料を賦課する仕組みの検討には、マイナンバーの活用方法など時間を要すると考えられるため、早期に議論を進めていただければと思います。ただし、資産運用立国、また石破総理が掲げる投資大国など、経済成長に向けて個人の投資を促す足もとの取組に水を差すことのないよう、注意を要します。NISA等の非課税所得は賦課対象にならない、といった重要なポイントは、国民に向けて丁寧に発信すべきと考えます。
3点目は、社会保障給付費全体をコントロールする仕組みについて。1点目と2点目の論点は負担面の課題ですが、並行して給付のコントロールも強化していく必要があります。今年の骨太方針でも、社会保障関係費については、高齢化による増加分に相当する伸びに収めるという歳出の目安が維持されたわけですが、資料7ページ記載のとおり、既に高齢化による増加分すらも現役世代に更なる負担を課さなければ賄えない状況に陥りつつあります。また、先日、厚生労働省から公表された人口動態統計によれば、今年の出生数は初めて70万人を下回る可能性が高まっているなど、我々の想定よりもはるかに速いペースで少子化が進んでいます。マクロ経済スライドが導入されている年金同様、医療・介護・障害福祉でも、給付費の高齢化による増加分を所与とせず、むしろ給付費の伸びを経済成長による保険料収入の増加分に抑えられる仕組みを急ぎ講じる必要があるのではないかと思います。
最後、医薬品の安定供給と薬価制度の在り方について。我が国の創薬力強化の観点から、革新的な新薬を重点的に評価する報酬体系としていくことに異論はありません。ただ気になるのは、近年、薬不足が度々問題になっていること。足もとは品質不正問題の影響も大きい状況ですが、薬価全体が年々引き下げられている中、ニーズの大きい医薬品がもうからなくなることで生産量が減らされ、結果として必要な人に行き届かなくなるという状況は回避すべきと考えます。そうした供給量の調整は、原則として薬価の設定を通じて行われるべきです。すなわち、重要な医薬品には、メーカーが一定規模の生産ラインや安定したサプライチェーンの確保に取り組むインセンティブとなる、相応の価格をつけることが重要と考えます。必要な医薬品の安定供給への貢献に薬価で報いていくことは、国民の健康を守る観点からも意味があると思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
日本は、これからいよいよ本格的な高齢化社会に入ります。いわゆる団塊の世代と言われている方が全て今年75歳以上になりました。日本の高齢化社会はこれからが本番です。これに伴って、これから社会保障に関する財政負担がますます高まっていくということが一つ事実としてあると思います。
一方、日本は皆保険や皆年金などの制度により、安心という簡単には得難いものが実現されており、社会不安がそれほどない安定した社会が維持されております。これはまさに社会保障の大きな意義で、これも無視できない意味があると思います。
そうした前提の上で、これからまさに人口動態の変化によって給付と負担の在り方についても真剣な議論が必要ではないかと。その議論の前提として、今回事務局が示された提案につきましては、基本的には賛成したいと思っております。
特に応能負担の強化、つまり高齢者でも収入の多い方、あるいは資産の多い方については何らかの対応が必要です。また、保険給付の範囲についても、画一的ではなく、ある程度メリハリをつける必要があるのではないかなと思います。さらに、受益者負担という考え方ももう少し反映されてよいと思いますし、コストを下げる、あるいは利便性を上げるためにDXを是非推進していただきたいと思っております。
少子化対策です。「こども未来戦略」の加速化プランをこれからも着実に実施していただきたいと思いますが、この分野は、どこにどのようにお金をつけたら効果があるのかが非常に分かりにくい世界ですから、これからも費用対効果をきちんとフォローして、どのような対策に実効性があるのかについて不断に検証を進めていただきたいと思います。
最後は、今様々な議論がなされております、壁の問題です。一般的に様々な制度をつくるときに何らかの数字的な基準を設けるというのは当たり前で必要なわけですが、今いろいろな議論がされている中で、若干言葉が踊っているように感じます。国民の間に誤解もあるとも言われており、慎重に分析、検討する必要があるのではないかと思っております。年金の問題、あるいは税金の問題等々、いろいろな壁がありますが、是非それらをトータルで整理していただきたいと思います。ただ、一つ言えることは、そうした制度が何らかのブレーキになっており、働きたい人が働けないという状態になっておりますが、これは人手不足の中では非常に問題です。本当にブレーキになっているのだとすれば何らかの対応が必要ということで、慎重な検討をしていただきながら実効性のあるものにするべく是非検討を進めていただきたい。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林委員、どうぞお願いします。
〔小林委員〕御説明ありがとうございました。基本的に事務局の資料に賛成しております。まず感想を一言述べて、その後コメントを三つほどしたいと思います。
この資料を見て、先ほど中空委員もおっしゃいましたが、9ページの医療費のグラフは非常に印象的で、伸びを抑えなければいけないと実感できると思います。特に、成長率に基づく左側のグラフではなくて、レベルが伸びていることを示す右側のグラフを、医療費の診療報酬などについての議論の土台として使えないのだろうかということを感じました。また、関連して、医療機関の経営情報の「見える化」の必要性も非常に重要であると思います。
現在の政治情勢について、今御発言もありましたように、若者の手取りを増やしていこうという議論が非常に強くなっていて、その中で、財政の長期的な健全化への動きというのはなかなか議論しにくくなっていると伺っております。しかし、こうしたときこそ、政策運営の原則を確認しないといけないのではないかと思います。例えば若者の世代の手取りを増やす政策を今やろうとするときには、その同じ若者世代が将来において社会保障や行政サービスを受けられなくなって困窮してしまうというようなことがないように、ライフサイクルを通じた長い時間軸で最適な政策というものを設計すべきである、こうした原則を今一度政治の世界でも確認をしてもらうよう求めていくということも、私たちの役割ではないかと思いました。
手短に三つほどコメントしたいと思います。
一つ目は、医療についてです。御説明にはなかったのですが、タスクシェアリングやタスクシフトというのは非常に重要な課題であると思います。患者さんの利便性を高めて、たまたまその場にお医者さんがいないからという理由で、患者さんの命が危険にさらされるというようなことがないようにするという意味で、看護師や理学療法士が様々な医療行為をできるようにするというのは重要な改善点であると思います。これは強く進めるように言っていただきたいと思います。
二つ目は、介護についてです。これも論点の中にはなかったかもしれませんが、民間の介護保険の普及ということも考えるべきではないかと思います。論点の中には、公的介護保険の保険外サービスについて書かれておりましたが、そうしたものを民間の介護保険の商品でファイナンスするというようなことがもっと普及するように持っていくことが恐らく必要だろうと。公的保険では、この先持続性がないと思いますので、もっと民間に対し、介護サービス事業者だけではなく、介護保険の提供者としての役割を求めていくということが必要なのではないかと思います。
三つ目は、生活保護の医療扶助についてです。今のところ医療機関側に頻回受診や過剰投薬を減らすインセンティブがないというのは、非常に重要な問題であると思います。今の指定の取消しのような規制的な手法だけではなくて、医療機関に対して金銭的なディスインセンティブをうまく設計できないだろうか。例えば同じタイプの受診や投薬が増えるとその増加に応じて医療扶助が減らされるとか、そうしたディスインセンティブを設計できないかと感じました。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
小林委員がおっしゃった政策運営の原則については、私も同じ問題意識を持っています。社会保障制度改革の鍵となる原則は、第1に、多様化する国民の生き方や働き方に中立的であること。第2に、世代内、世代間の公平性、とりわけ将来を担う若年層への配慮と応能負担の強化。第3に、効率化を含む給付自体の質的改善と給付と負担におけるバランスの改善。第4に、就労促進的な制度設計によって国民が持てる力を存分に発揮できる環境をつくり出すことだと思います。そのためには、國部委員もおっしゃったとおり、税と社会保障を一体的に見直す必要があります。これが政策の原則だと思います。
今回の資料では税の話はあまり出ていませんが、今申し上げたような観点に即して具体的な御指摘がされており、高く評価したいと思います。その上で4点申し上げます。
1点目。総論として、6ページにある、全世代型社会保障の改革工程についてです。昨年度の秋の財審とそれに続く財務省の御尽力によって、重要な施策はほぼ網羅されていると思います。今後は、これをいかに実効性の高い形で早期に実現できるかに尽きると思いますが、1点だけ付け加えるとすれば、皆様が御指摘されたとおり、今後、9ページで提起されている医療費の伸びをどう抑えるかという問題に対する適切な対応を考える必要があると思います。マクロコントロールをはじめ、様々な手法があり得ますが、その際には、担い手が減少することも同時に考えなければいけません。また、小林委員も話された12ページの医療機関の経営情報の「見える化」については、昨年、財務局を動員して行った機動的調査を通じた問題提起はかなり影響があったわけですので、是非実現していただきたいと思います。
2点目。少子化、子育てに関しても、御指摘事項に異論はありませんが、特に重要なのは、17ページにまとめられている、EBPMによる効果検証と施策の見直しだと思います。一例を挙げれば、日本はOECD平均に比べて、こどもを持つ一定の低所得者層に対する負担軽減策が不十分というエビデンスがあります。それを踏まえると、詳細は割愛しますが、給付付き税額控除制度を導入するといった対応も考えうると思います。
3点目。医療に関しては、公的給付の範囲と提供体制の見直しがポイントになりますが、四つ申し上げます。
一つ目。給付の範囲に関しては、38ページにあるように、医薬品に関する費用対効果の給付への反映を一層進めるべきですが、そのための鍵となる評価体制の整備を進める必要があります。また、高額療養費の問題に関しては、87ページのエビデンスのとおりです。例えば49ページの御提案のように、既存の保険外併用療養費制度や、民間保険の活用を具体的に検討していただきたいと思います。
二つ目。医療提供体制に関しては、62ページ以降にある、医師と診療科の偏在問題への規制的手法の導入や経済的なディスインセンティブの手法の導入に賛成いたします。保険医資格の取消しや、診療報酬で差異化を図る施策は極めて合理的だと思いますし、国として取り組むことができると思います。
三つ目。新たな地域医療構想に関しては、次期計画の策定をきっかけにこれまでの遅れを取り戻すべきです。痛みを伴う改革が都道府県任せの下で一向に進捗しなかったという反省も踏まえて、新たな地域構想においては、需給見通しに基づく規制を強化して、単なる中止の要請にとどまらず、保険医や保険病床としては指定しないなどの手法を導入すべきですし、知事の権限強化にとどまらず、国が責任を持ってその運用状況を管理すべきです。
四つ目。応能負担に関しては、皆様が御指摘されているとおり、今後、全世代型社会保障改革を進めていく上では、シニア偏重の補償的な支出から、次世代への言わば投資的な支出に改めて、冒頭申し上げた世代間の公平性を確保することが重要です。特に今後、就職氷河期世代がシニア化していくなかで、社会的弱者に対する手当てが必要になることが見込まれており、応能負担へのシフトはより重要になると思います。そのためにも、82ページから86ページにある、金融所得を保険料の賦課ベースに加える、あるいは金融資産を高齢者の負担能力に反映させるという施策を具体化すべきですが、その際に金融所得・資産を捕捉するためのツールであるマイナンバーの全銀行口座への付番の義務化に早急に取り組む必要があります。ネックになっているのは、国民の間に根強く残る、国による情報収集への警戒感です。完全に払しょくすることはできないかもしれませんが、それを軽減するためにも、情報管理の組織的な体制の在り方を検討する必要があると思います。
4点目。詳細な議論は控えますが、年収の壁問題に関しては、その解消の目的は就労促進型の制度に移行するためだということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインに移ります。
まず上村委員、小黒委員、福田委員、この3名の方に御発言いただきますので、初めに、上村委員、どうぞお願いします。
〔上村委員〕御報告ありがとうございます。
こども・子育て支援など何らかの施策を考えるときに、あわせて経常的な財源について手当てをしていくということ、この姿勢はとても大切であると思います。くわえて、EBPMの観点からこうした支援について点検する姿勢、これも重要であると思っています。これは全ての施策について言えることで、徹底する必要があると思います。その上で、私からは国民健康保険と生活保護について2点コメントします。
まず、76ページ、国民健康保険の保険者機能の発揮についてです。後期高齢者医療制度の財政運営主体を都道府県とすることについて、ガバナンスの強化として賛成します。また、79ページに統一保険料の目標年度を定めていない府県があるという記載がありますが、早期に目標年度を決めるべきであると思います。また、統一後は、市町村の国民健康保険運営のガバナンスの在り方がこれまでと全く違う形になりますので、どのようなガバナンスが良いのかということについて検討が必要であると思います。
153ページ、生活保護のうち国保加入についてです。生活保護受給者の国保加入について、都道府県が医療のガバナンスの要ですので、これを考えると、医療扶助の適正化を進めるために、やはりガバナンスを効かせていくということが大切ですので、生活保護受給者の国保加入は重要な施策だと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして、小黒委員、お願いします。
〔小黒委員〕ありがとうございます。簡潔に2点コメントさせていただきます。
1点目は、少子化対策です。少子化対策や子育て支援でEBPMを活用するというのは本当に重要ですので、是非積極的に進めていただきたいと思います。
この関係で一つ重要なのは、複雑な分析を行う前に、基本的なデータもしっかり確認することかと思います。例えば、説明にはなかったのですが、出生率と東京一極集中の関係です。震災や防災などの関係で東京一極集中の是正は当然重要ですが、出生率の関係ではいくつか多角的な視点も重要ではないかと思います。具体的に申し上げますと、合計特殊出生率を都道府県別で比較しますと、確かに東京は最下位なのですが、2020年の国勢調査から都道府県別の平均出生率、つまり未婚を含む出産可能な15歳から49歳の女性1,000人当たりの出生数を計算すると、東京は31.5で、都道府県別で言うと42位になります。しかし、都心3区で千代田区、港区、中央区に限定しますと、平均出生率は41.7で、1位は沖縄の48.9なのですが、2位になるということでございます。
これと似た問題としては、出産や子育てを行うのは若者なわけですが、地方の若者が東京に流入する主な段階は大学などの進学時点であるという誤解もございます。住民基本台帳人口移動報告によりますと、2023年の東京への流入超過は男女合計で5.8万人です。そのうち、年齢階層別で流入超過が9.6万人、流出超過が3.8万人となっています。この東京への流入超過の9.6万人のうち、15歳から19歳が占める割合というのは約14.5%にすぎず、20歳から24歳が占める割合というのは約63%、25歳から29歳が占める割合は約21%で、合計すると20歳以上が実は85%も占めるということです。大学への進学は通常18歳、就職は22歳か23歳が多いということなので、これは結局、若者が東京に来る時点というのは、大学進学時点ではなく就職時点ということになります。地方から東京に来る若者の数をどう抑制するかという課題については、私は少し躊躇しますが、もし本気でやるのであれば、就職段階での対応を考えることが重要ではないかと思います。
2点目は、医療です。財政との関係で、医療財政は非常に厳しい状況になることは明らかです。そのため、これは前から申し上げていることですが、医療版マクロ経済スライドを是非御検討いただきたいです。
また、公的医療保険の範囲を超えて、または拡大して、医療を成長産業として位置付けるという視点も重要ではないかと思います。例えば、かつて安倍政権では、日本の成長戦略の柱の一つとして、健康・医療の海外展開などを推進していました。これは海外の医療関係者と日本の産業とのパートナーシップを形成するというアウトバウンドですが、例えば岸田政権で武見大臣が結構力を入れていた、医療インバウンドもあるのかなと思います。インバウンドとして例えば、東アジア諸国などでは治療や手術が難しい患者を日本に送って、日本で治療や手術をするといったものが挙げられますが、これについて一定のニーズがあることも分かっているということでございます。成長戦略の一環として、アウトバウンドとインバウンドを組み合わせて、財政当局も厚生労働省と連携しながら医療の国際化を図るということも考えてみてはどうかと思います。
なお、御存じかと思いますが、日本の医療インバウンドの実態は非常に寂しい状況でして、2019年に一般的な観光として来る外国人の数は年間3,000万人を既に超えていますが、医療目的の訪日者数は2万人から3万人程度で、シンガポールやほかのアジア諸国と比べても1桁ないし2桁は低い数字になっております。逆に言うと、非常に伸び代がある領域であり、高度医療分野における日本へのニーズは当然ありますので、こうしたところで公的機関と民間が一体となって進めることも御検討いただけないかなと思います。
繰り返しになりますが、日本では医療は公的保険で賄われるべきものという考え方にとらわれ過ぎておりますので、このような医療インバウンドのようなことも成長戦略の一環として位置付けながら、財政と経済成長の両輪で財政健全化を進めていただくということも御検討いただければと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。
既に多くの方が発言されているとおりだと私も思います。政府の政策全体としてEBPMが必要だということはもちろんですが、特にこの社会保障の分野ではEBPMが極めて大事で、データに基づく議論を進めていかないと客観的な議論ができないと思います。
ただ、国民受けするエピソードベースの議論が多いというのは、今回の壁の議論でもよく起こる問題です。国民受けするのはエピソードですが、EBPMはエピソードベースでは議論してはいけないというのが基本的な考え方であり、やはりデータに基づいて積極的な議論を進めていくということは必要であると思いました。エピソードベースというのは、全体ではなく、その場でしか考えないため、そうした意味でも、EBPMは非常に重要であると思います。
ただ、それに先立つものはあくまでもデータであり、客観的なデータをいかにそろえられるかということです。これも既に御説明があったように、医療に関してはデータの「見える化」が進んでいないという非常に深刻な問題がありますので、それを進めていって、客観的な議論を進めるということが大事なのだろうと思います。
経済的なインセンティブを様々な形でつくって、特に地域医療などの問題に取り組むということも非常に重要ですが、それも効果があるものとないものが恐らくあるとは思いますので、「見える化」を進めていくということが大事だと思います。
最後に、こうした社会保障の問題は、狭い意味での社会保障の議論にとどまらず、経済全体、社会の在り方全体を議論するということとも非常に密接に関わっている、最も重要な問題であると思います。そうした意味では、今回は厚生労働行政の問題ではありましたが、他分野の議論も考えながら、全体的に日本全体としてどういう社会であるべきかという議論とセットで議論していくのが重要ではないかと思いました。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻しますが、土居委員が途中で退席されるので、先に土居委員、それから田中委員と、こうした順番で御発言いただきます。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。全体としては、社会保障給付をいかに抑制していくかということが、「こども未来戦略」における財源確保とも関連しているということですので、しっかり改革に取り組んでいただきたいと思います。
まず、創薬についてです。この説明資料にもありますように、保険と保険外をいかにうまくバランスを取っていくかということが重要で、そのメリハリをしっかりしていただきたい。特に保険外でしっかり創薬支援をするということとセットで、きちんと薬価改定を進めて保険内での適正な価格付けをしていただきたいと思います。
次に、後発医薬品については、その産業構造が我が国では大問題であると思います。特に、少量多品目生産や企業数が多いことは安定供給を阻むものですので、まずは業界再編を推進する。さらには、複数の会社で販売している同一品目で少量しか需要がないようなものについては、薬価改定の際にむしろ積極的に薬価を下げて退出を促すというようなこともあってもよいのではないかと思います。
また、医師偏在是正については、外来医師多数区域における規制的手法をもっと強化する必要があるとともに、経済的なディスインセンティブ、つまり何もしないと逆に損をするということでの誘導もセットで行うべきであると思います。
それからもう一つは、最近、「直美」、つまり直接美容整形の医師になる医師が多いという話があります。まさに保険医が足りないと言っている中で、自由診療に行ってしまうことを促すべきではないのですが、なかなかそこに歯止めがかけられないということであるならば、保険医になる者については一定水準以上の保険診療に従事するということを要件とするなど、しっかりと保険医を確保するということも重要であると思います。
介護については、従来から言われている多床室の室料負担の見直し、ケアマネジメントの利用者負担の導入、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への移行、この3点は、第10期の介護保険事業計画期から確実に実現するように議論を積極的に進めるべきであると思います。
年金については、在職老齢年金において給付増の方向で見直しを進めるということであれば、税制において公的年金等控除の上限の引下げとセットにするべきであると思います。
障害については、医療費適正化計画、介護給付適正化計画があるのに、障害福祉計画において適正化に係る事項の記述が求められないということは驚きでしかありません。事業者だけが潤って、利用者のためにならないような障害サービスというものは、きちんと適正化すべきであると思います。
生活保護については、受給者の過半が高齢者になっているということですから、医療扶助の適正化がますます重要であると思います。ただでさえ高齢者は重複投薬、多剤投薬などが多いと言われているわけですから、当然ながら、生活保護受給者に対しても、その是正をしっかり進めていただきたいと思います。
最後に、雇用についてです。雇用保険二事業でコロナ禍で積立金が払底してしまいまして、失業等給付からの借入れがあるということになっているわけですが、やはり雇用保険財政を適正化するためにも、保険料収入によって確実にこの借入金の返済を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、お願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。
まず、6ページにまとめていただきましたように、財審からの提言もきっかけで、医療や介護や子育て支援は新しい取組も始まっているところですが、現状の課題やエビデンスが顕在化しつつも改善が進まない点ということにつきましては、更なる情報共有と、また、国民にとっても広い視野で捉えられるような切替えが必要かと思っております。国民目線で、例えば投じられた予算の効果が実感されるようになるには、DXで縦割りや外部との連携が進み、従来型の業務体制が変わっていくことが必要ではないかと思うところです。例えば介護等につきましては、要介護認定等の業務が増加する中で、大分県が認定の事務全てのデジタル化に挑戦しており、現在は市とも連携をして、利用者の申請から認定の調査や医師との連携、また通知書の発行やケアプラの作成まで、情報開示をしながらデジタル化をしているという流れがあります。東京都等では、保活のワンストップで、施設とも連携をしてユーザーの利便性を図るという取組が出ておりますので、そうしたことの一つ一つの丁寧な理解が進むと良いなと思っております。
もう一点は、皆様御指摘の創薬についてです。創薬エコシステムの確立と構築がやはり重要で、規制、承認、薬価、これらを一緒に考えていく必要があります。これはもう研究段階から事業化、産業化に行くところも、研究者と事業者が医療機関と共に考えていくということがとても有効ではないかなと思っていますし、エコシステムということで捉えることで、この方向性が実現するのかなと思っています。また、国民の多様化する考えの中でも、保険外併用療養費制度の活用や、信頼のできるエビデンスがあれば、患者負担の観点でも理解が進むのではないかと思っております。
以上、よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、お願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。
総論に関しましては、平野委員などがおっしゃった原理原則に全面的に賛成でございまして、EBPMや医療費の総額をコントロールする仕組みの導入等を通じて、一言で言えば入るを量りて出ずるを制する仕組みを構築する、このことが本質的に重要ではないかと思います。
また、税と社会保障の一体改革についても、今こそ推進するタイミングではないかと考えます。
そのことを申し上げた上で、各論について何点かコメントさせていただきます。第1に、最近、現役世代の保険料負担が強く意識されるようになってきております。令和8年度からは子ども・子育て支援金が導入されますので、医療・介護等の保険制度改革を通じて、現役世代の負担軽減を図っていくことが極めて重要です。
第2に、このような観点からは、薬価の毎年度改定は着実に実施していく必要があります。過去2回の奇数年度改定にとらわれることなく、対象品目という面でも広く俎上に載せるべきです。また、特に特許期間が切れた後の薬価引下げに係るルールである新薬創出等加算の累積額の控除や、後発薬への置き換え率に基づく長期収載品の価格引下げなどのルールは、奇数年にもしっかりと適用する必要があります。新薬創出等加算は、イノベーティブな新薬を評価するという看板になっておりますが、要件をつぶさに見てまいりますと、緩和的な項目も散見されます。新薬創出等加算の要件については、不断の見直しを実施する必要があります。
第3に、効率的で質の高い医療提供体制の構築も大きなテーマです。特に医師偏在については、忌憚なく申し上げれば、自由開業制を前提とした手ぬるい対策を重ねてきた歴史の中で深刻化してきた問題であると言えます。都市部への医師の集中は、地方の医師不足だけでなく、過剰な医療サービスの提供による保険財政の悪化も招いています。各委員が御指摘されたとおり、規制的手法や診療報酬による対応などを含む政策手段を総動員して、実効性のある医師偏在対策を練り上げるべきであると考えます。
第4に、改革工程に記載のある給付と負担に関する各種項目は、いずれも極めて重要な項目です。例えば、制度のメンテナンスが長い間実施されていないことで、サービス利用者の実効負担率の低下などを招いている高額療養費制度の在り方などについては、是非ともスピード感を持って改革に取り組んでいただきたいと思います。また、来年以降も見据えれば、年齢での線引きではなく、応能負担の制度に抜本的に転換していくべきです。こうした観点からは、後期高齢者医療の2割負担、3割負担の範囲の見直しなども重要な課題となります。介護については、課題の先送りが続いており、ケアマネジメントへの利用者負担の導入や2割負担の範囲の見直しに向けた検討に今すぐ着手するべきです。
第5に、年金については、働き方に中立的な制度の構築という観点から、企業規模要件の撤廃や非適用業種の解消に取り組んでいただきたいと思います。また、マクロ経済スライドの調整期間の一致等によって将来の高齢者の基礎年金水準をしっかりと確保することは、受給者個々人の所得を確保するだけでなく、将来の日本社会全体の再分配機能に寄与するものであると言えます。着実に実施すべきですが、そのための財源を確保しなければならないというコンセンサスは、法律などで確実に形にしておく必要があります。くわえて、在職老齢年金制度について、高齢者の就労促進という政策目的は理解いたしますが、一定の収入がある方に追加で年金を支給することになるため、低中所得者への影響を踏まえた対応も検討すべきであると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、安永委員、どうぞお願いします。
〔安永委員〕初めに、全世代型社会保障制度の構築については、既に皆様がおっしゃられたとおりなのですが、一つ強調したいのは、現役世代の保険料負担の上昇の抑制はマストであるということ。これがないと、結果的に分配はあっても手取りは減ってしまい、ようやく動き出した成長と分配の好循環が止まってしまい、成長への支障が出てきます。
また、医療提供体制の見直しに関して、少しビジネスの観点を入れてお話をしたいと思います。まず、医師の地域的な偏在の是正のために規制的な手法を入れて、ある程度強制力を持って医師の偏在を解消するということには賛成なのですが、新たな地域医療構想を策定するときに、我が国の人口減少や少子高齢化を見据えた地域社会の在り方を踏まえて高齢者の集住やコンパクトシティを促す方向に進めるべきです。無医村をなくす、あるいは限界集落にまた医者を送るなどという話になると、間違いなく今の医療行為の生産性が下がる。ここはやはり医療資源の集約、有効利用、病院機能の再編統合等についても一歩踏み込むべきであると思います。
それから、診療科の新規開業の抑制、こちらではヨーロッパとの比較をされている一方、我々はアメリカの医療機関の効率性を相当調査しております。もちろん、国民皆保険ではない国ではシステムが違うわけですが、同じような病院を比べると、例えばがんについては、手術数や患者の満足度が違う、結果として病院の収益力が違う、それが医者の報酬につながっている。日本の場合、残念ながら、勤務医が高度医療をしているにもかかわらず、医者の良心や自己犠牲の精神に過度に頼っている側面があり、これがどこかで切れると開業医へ行ってしまう。開業医になった途端に高度医療とは切り離されてしまう。ここをいかにインテグレートするかが重要です。また、高度病院の収益体制を見るためには、医療機関の経営改善が必須で、そのためにはDXと経営情報の「見える化」を通じてエビデンスベースで医療の内容を変えていくことが必要です。
最後に、直接は関係ないのですが、この夏、額賀議長と一緒にインドに行きまして、インドのIT人材をもっと日本に送り込んでほしいというお願いをしました。その際に、最初にインドのIT業界から言われたのが、日本はIT人材が不足していること以上に、IT人材が無駄になっているということが問題であるということです。その理由は、日本の地方自治体も、地方の金融機関も、先ほどの製薬、病院、あらゆる産業にわたって、小型、旧型、分散型、非共通型のシステムが普遍的にあって、これをメンテするためだけにIT人材が取られていて、ここを直さない限り永遠にITのトランスフォーメーションはできない。メンテナンスで人が取られているという状況を変えるという意味では、業界の再編統合、あるいは地域の令和の大合併のようなことが必須ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、どうぞお願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
まず、全体としてキメ細かい提案で、全て賛同いたします。改めて、これだけ是正すべき課題があって、しかも、数年前からあまり動いていないものも多いということに驚きを隠せません。ただ1点、毎年ではあるのですが、社会保障は日程的に厳しいことは承知しているのですが、これから非常に重要な時期にかかってくるため、財審でもこの分野は複数回に分けてもよいのかなと少し思いました。
その上で、いくつか個別の論点をお話しさせていただきます。第1に、これまで動かなかったことをどうやって動かすかということで、インセンティブ付けだけではなくて、ディスインセンティブ付けということは御指摘のとおりであると思います。例えば皆様も御指摘の9ページに我々の医療費増加に対する危機感は醸成されているのですが、国民全体に自分事としての危機感をどうやって醸成するか。金融教育の機構もできましたが、財政教育についても機構をつくるのか、何らかもっと教育、周知をしたほうが良いと思います。
また、医師の偏在のディスインセンティブについて、現場の個別最適の観点から様々な抵抗があっても、全体最適を考えて断行すべきであると思います。リフィルについても、病院に行かないことがどれだけ便益が大きいかということを政府が周知して、国民の行動を促してほしいと思います。
第2に、エビデンスベースについてです。12ページでも御指摘いただいているとおり、データ不足が課題として挙げられていますが、そもそも民間であれば、資金の出し手に対してその使い道や収支の内訳を求められても提供しないということは全く理解できません。これから関係省庁や現場と建設的に議論するためにも、これはお互いのためであると思いますので、データ収集、そしてその分析をもっと進めていくべきであると思っております。
最後に、応能負担については、皆様おっしゃったとおりです。この5年間で1億円以上の預金口座は3割も増えています。資産運用推進との整合性は大切ですが、これも進めていくべき課題であると思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインで御発言をいただきますが、権丈委員、堀委員、横田委員、芳野委員と、この順で御発言いただきます。
初めに、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕権丈です。ありがとうございます。私からは、医療について2点、年金について2点、コメントさせていただきます。
まずは、医療サービスの偏在問題についてです。この問題は、先ほど熊谷委員をはじめ、ほかの委員も話されていたように、極めて重要であると考えております。昨年秋の財審でも話しましたように、そのときの資料にも日本の医療の特徴として掲げられていた自由開業医制、自由標榜制の問題であるとも思っております。自由開業医制、自由標榜制は、国民皆年金が成立する以前であれば理解できるところですが、国民医療費の9割近くが税と社会保険料で賄われている公共政策としての医療保障制度の下では、自由開業医制、自由標榜制を見直すのは当然であると考えております。今年4月に武見大臣がNHKの番組で、地域において医師の数の割当てることを本気で考えなくてはならない時代に入ってきたと、発言されておられました。そうしたことをやらないと、既に人口が本格的に減少してきている地方の医療を守ることはできないと思います。くわえて、地方の医療を考える際には、出来高払いという日本の医療の特徴が、人口減少地域で増患政策を医療関係者に強いることになるという矛盾も視野に入れて、再考していく必要があるのではないかと思っております。
68ページからの地域医療構想についてです。今回の資料では、97ページで社会福祉連携推進法人の仕組みの活用により業務の効率化の好事例が出ており、参考になると思います。他方、今回の資料には地域医療連携推進法人の話が入っていないようです。これからの地域医療構想は、診療所を含めた地域包括ケアとの一体化が重要になってまいります。地域医療構想と地域包括ケアの両方を実現するために準備された地域医療連携推進法人を既につくったところには、医療機関の再編・連携、病床数のダウンサイジングに成功し、同時に医療DXも進め医療と福祉の連携の下での病床管理を一体的に行ったり、医療マンパワーの融通とタスクシフトを通じて働き方改革に成果を上げたり、日本の医療政策が目標としている様々なことに既に取り組んでいるところがあります。そうした医療者自身による自己改革を実現できる連携法人の推奨も、地域医療構想実現の手段として掲げていくと良いのではないかと思います。
次に年金です。119ページ、年金のマクロ経済スライドの調整期間の一致についてです。先ほどの事務局の御説明で、追加的な国庫負担分の安定的な財源を確保する担保なかりせば、調整期間の一致に踏み切るべきではないというコンセンサスを確立することが必要とおっしゃっておりまして、そのとおりであると思います。くわえて、資料の4ページにありますように、現在は社会保障関係費の実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めることを目指す方針となっております。そのように、国庫負担はほかの社会保障支出と競合する関係にあります。広く全員の基礎年金の給付水準を上げることだけを目的とする年金への追加財源が、果たして子育てや介護をはじめとしたほかの用途への財源と比べて本当に優先順位が高いのかの観点も必要かと思います。
123ページの在職老齢年金制度、高在老の見直しに関してです。これはこれまで長く高所得者優遇であるという批判があって実現できてこなかったのですが、このページにありますように、今回の財政検証で標準報酬月額の上限の引上げによる運用益増、それによる調整期間の短縮によって厚生年金被保険者全体の給付が上がるというオプション試算がなされました。この観点からの高在老の見直しは高所得者優遇という批判への対応にもなると思いますので、是非この改革を視野に入れて進めていただければと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして、堀委員、どうぞお願いします。
〔堀委員〕総論について、まず、保険給付費の伸びと現役世代の保険料等の負担をマクロレベルで見たときに、現役世代の保険料を過剰にしないというコンセプトは理解できますし、給付の伸びと保険料負担のバランスの配慮が必要というのもそのとおりだと思います。ただ、これは来年度予算の件で議論すべきことではないかもしれませんが、医療保険の財政負担構造を考えますと、公費負担や保険料の中に、高齢者医療のための支援金や拠出金、あるいは事業主負担というものもあります。より大局的に見ると、費用負担構造や保険者間の保険料負担の算定方法の違いなど構造的なものも見ていく必要があるのではないかと。仕組みが複雑になればなるほど負担と給付の関係性が国民目線で分かりにくくなってしまうので、構造面を含めて、2040年に向けて制度設計を検討していく必要があるのではないかなと思います。今回は、団塊世代が全て後期高齢者となる2025年を目前とした来年度予算についての議論であると思いますので、2040年についての議論は省略されていると思いますが、将来的には必要な課題であるのではないかと思っています。
少子化対策についてです。少子化対策は非常に重要だと思いますが、先ほどほかの委員の方からもお話がありましたように、EBPMを徹底していただきたいと思います。ただ、KPIを何にするかによって、効果がなくてもだらだらとずっと続くということになってしまいかねないので、そのあたりの検証は必要であると思います。18ページにあるように、待機児童問題については、深刻なエリアがある一方、もう利用者が既に少なくて定員充足していないエリアがあるなど、地域性もあると思います。単純に受け皿を量的に増やすというよりは、例えば、今後児童数が非常に減少していくエリア、あるいは人手不足が深刻化しているエリアの保育所は、こどもと高齢者を含めた多世代共生型で利用ができる施設やコミュニティに転換を進めていくなどのほうが重要かと。既にそのような地域コミュニティの例としてはShare金沢をはじめ先進事例もありますが、制度縦割りではなく地域のニーズに合わせた環境整備が重要ではないかなと思っています。
医薬品について。先ほど公的保険と公的保険外を分けて議論すべきという議論があったと思いますが、保険外では、創薬力の強化が、国際的な産業競争力の維持や経済安全保障という意味でも非常に重要であると思いますし、エコシステム構築も重要であると思います。ただ、お金をかければかけるほど良いのか、お金をかければ本当にできるのかというと、そうではないと思います。モダリティの変化と創薬市場環境の変化の両方を踏まえて、構造改革を進めていく必要があると思いますし、カントリードラック、日本でしか流通しないようなものを新薬と言うのかというのは非常に疑問であると思います。
また、公的保険については、財源にも限りがありますし、医薬品に対するメリハリづけは当然であると思っています。収載の経済性や費用対効果を見るのは必要ですし、そもそもどこまでを保険として見るべきか、保険外併用療養費や自己負担もそうですが、医薬品の有用性を含めて給付範囲の在り方を見直していくことも必要であると思います。
それから薬価改定の調整幅については、歴史的な経緯がありますし、過去の商慣行に基づくもの、流通コストや卸業界への配慮などもあると思うのですが、なぜ種類を問わず一律2%なのか。これは国民の納得や共感を得るという観点からも、説明ができるような在り方を検討していく必要があると思います。
次にリフィル処方です。これは三方よしと書かれていて、まさにそのとおりだと思いますが、正直、そのような社会的な認識ができておらず、まだまだ進んでいないのではないかと思います。医療上の医師の判断は尊重するとしても、処方期間の設定など検討課題もあると思いますが、出来高払いが前提の外来診療においては、患者さんが来なくなってしまうことによる、減収への不安を抱えている医療機関もあるのではないかと思います。かかりつけ医療の機能が発揮されて、診療報酬の見直しもサービス内容に合わせて実施できるようになれば、ここに書かれたように医療機関にとっても、患者にとっても、保険にとってもプラスという形でなっていくのではないかと思います。
セルフケア・セルフメディケーションについても、患者の意識や医療提供側の意識改革が必要であると思います。経済的なインセンティブを付けていくという意味では、先ほどお話ししました有用性が低い医薬品についての負担の在り方や、一定額までは自己負担にするといったことも含めて考えていくと、がらりと変わるのではないかと思います。
次に、医師の偏在について。人口が減ってくる中で、医師数だけを増やすことはできない一方、医療サービスを必要とする人はいますし、エリアによっても資源も違うと思います。働き方改革の影響もあると思います。そのため、これからの医師偏在対策とこれまでの医師偏在対策と意味合いが違ってきており、人口動態が変わる中でどのように考えるか。たとえば、自由開業医制度は、皆保険達成時代の人口が増える中では、民間医療機関や医療資源を量的に増やす役割もあったと思います。ただ、人口が減少する時代、つまり人口動態が変わる中で制度が今のままだと、偏在を拡大する要因にもなるかと。制度の見直しも含めた、人口動態の変化に合わせた偏在対策は必要であると思いますし、新しい地域医療構想とセットで検討していく必要があると思います。
それから、地方の保険料水準について。これは国保改革で市町村と都道府県が合同で保険者になったときの経緯にもありますが、保険料水準統一は進めていくべきであると思いますし、保険者機能強化もセットで進めていくものだと思います。
最後に1点、年金についてです。115ページで、給付水準を示す所得代替率は約61%と書かれています。それは事実として、標準モデルが未来においても「標準」かどうか。実は2024年推計を見ますと、50歳時の未婚率、45歳から49歳の未婚率、50歳から54歳の未婚率の平均で見た生涯未婚率が過去最高になっています。つまり、40代、50代の非婚者が多く、もともと一人世帯という方も多くなっている中で、年金の所得代替率の標準モデルに合わせて見ていくのはどうなのかと。下手すると生活保護の水準のほうが高いというような人たちも出てきてしまうので、制度を超えた将来的な検討が必要なのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。4点ほど申し上げたいと思います。
まず、年金です。ここ20年の改革の経緯や今後の対策メニューの全体像が非常に分かりやすくてよかったと思っています。被用者保険の適用を拡大し、対象企業を拡大していくということですが、就業者視点で見ると、まだ一部ではありますが、副業や兼業が広がっている中、企業規模の大小問わず社会保険の適用がなされることになります。ただ、企業側の視点でみると小規模企業の負担はかなり増えてしまう気はするのです。このまま進めることに賛成ではあるのですが、また恐らく過渡期の補助などがなされると思いますが、単純な移行期の補助だけではなくて、小規模企業がこれを機にDXや柔軟な働き方の導入などをセットで進めていくようにフォローをしていくことで、改革を進めていくということにつなげていただきたいと考えております。
その他、3点ほど申し上げたいと思います。
福祉分野についてです。経営の「見える化」と助成の適正化が本当に必須だと思っています。私の周辺でも福祉関係の事業者の経営者が複数いらっしゃって、お話を聞く中で大変恵まれているなと感じる点もあります。例えば、需要に関係なく開所しているだけで助成金が振り込まれるから、事業所は夏休みを取らないという発言があるなど、事業者が急増していることでも裏打ちされているように、営利企業にとって「うま味のある産業」と見られているように思います。長年真面目にこつこつ努められている事業者もあるし、福祉分野はなかなか心情的に厳しい指摘がしづらい分野ではありますが、経営実態や助成内容の「見える化」を進めることで、公正な改定ができる環境を整えることが必須であると思います。
次に、44ページのリフィル処方についてです。堀委員も言及されていた点ですが、個人的に非常に注目している中で、進んでいない、実績が積み上げられていないことを改めて非常に残念に感じております。以前この場で、私自身がリフィル処方を拒否されたことがあるというお話をしましたが、結論、個人的な解決方法として、ほかの医院に移るという選択をしました。都心部に関しては、そうした選択が可能であると思うのですが、やはり医療機関としては、積極的に進めるというマインドがなかなかない分野だと思います。そのため、患者側からの要望を増やしていく、あるいは調剤薬局の協力を得る、また、医療DXを進めることで、データを基に、しっかりと進めるべきところが進んでいるのか否かを確認できるようにしていただきたいと思います。
最後に、99ページの介護分野における人材紹介の点についてです。弊社も人材紹介の免許事業者なのでよく分かるのですが、また離職率の高さが非常に気になるところです。手数料実績の「見える化」も重要なのですが、通常、返金規定というのが人材紹介事業者には設けられていて、例えば一般の人材紹介では6か月未満の退職の場合は30%から80%の返金がなされていたりします。年1回の報告書の中では、返金の規定に対する報告が義務づけられておりますので、返金規定がこの分野でどうなっているのかというのもしっかり見る必要があります。介護分野は、離職もミスマッチも頻繁に発生するというのは重々承知しておりますが、あまりにも離職が多いということであれば、返金状況というのをしっかり公開していくというのも重要なのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、お願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。本日は意見書を提出しておりますが、時間の関係がありますので、総論と年金に絞って申し述べたいと思います。
初めに、総論についてです。広く国民に安定した生活を保障するという社会保障の理念を将来にわたり実現する観点から、こども・子育て支援強化の財源を確保するために医療・介護の給付が抑制され、必要なサービスが行き届かないことがあってはなりません。社会保障サービスを必要とする人がその負担能力に応じた費用で質の高い医療、介護保険サービス等を受けられるようにすべきです。また、2024年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等の同時改定において賃上げに資する対応が行われましたが、他産業との賃金格差や昨今の賃金・物価動向を踏まえますと、現場を担う全ての労働者の継続的な賃上げが可能となるよう、国として更なる施策を実行していく必要があると考えます。
次に、年金について2点申し述べたいと思います。
1点目は、第3号被保険者制度についてです。資料にはありませんが、連合は、第3号被保険者制度について、働き方やライフスタイルが多様化する中で、配偶者の働き方などにより第3号被保険者に該当するかが決まる現行制度は、中立的な社会保険制度とは言えないと考えています。また、制度上の男女差はないものの、第3号被保険者制度は女性のキャリア形成を阻害し、男女間賃金格差を生む要因の一つと指摘されています。社会保険の原理原則や負担と給付の関係性も踏まえれば、第3号被保険者制度は将来的に廃止すべきと考えます。
2点目は、マクロ経済スライドについてです。基礎年金と報酬比例部分のマクロ経済スライド調整期間の一致については、被用者保険の適用拡大に最優先で取り組み、慎重に検討すべきです。また、障害厚生年金受給者や一定期間受給額が低下する可能性がある方への影響などについて丁寧に検証するとともに、拠出者の納得性と合理性を追求すべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻したいと思いますので、宮島委員からどうぞお願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
多くの委員の意見をいただいて、同じことがいろいろありますので、そこに関しては申し上げず、私はあえてとてもミクロの世界から申し上げたいと思います。
医療費に困っているということは、国民も一定程度分かっていると思うのですが、実際にお医者さんに行くと、無駄なのではないかなと感じることもあると思います。例えば、どのお宅にも大量の残薬があると思います。また、入院すると、検査も全部終わりもう帰りたいと思っても、あと1泊して明日退院しましょうなどと言われます。こうしたことに対して、私たちの意識が高まったとして何ができるのか。医療はやはり難しくて、一般の人たちが本日私たちが議論しているようなことを全部納得するのはたやすくなく、それどころか、私たちの若い新人記者が理解するのも相当厳しい世界です。なので、何をすれば私たちの医療費が守られるかというところまで落とし込んで行動を促すということは、必要ではないかと思います。
一つは、リフィル処方箋はやはり期待しておりまして、私も親の診療で、リフィルにしてほしいと言ってみました。そうしたら、珍しいことを言う患者だなという顔はされましたが、私は拒否はされませんでした。お医者さんがみんな嫌がっているわけでもないが、言われないとやらないというような感じがありました。
また、自分の治療が適切なのかどうか、それを一般の人は見ることがなかなかできません。いくつかの診療に関しては、ガイドラインのようなものがつくられていると思うのですが、その対象を拡大するとともに、大体この病気だとこのぐらいのことが普通だよということがもっと知りたいかと思います。さらに、診療報酬的には、これを包括的な医療にする、あるいはかかりつけ医療で指導ができるようにすることは必要であると思います。
くわえて、こうした病状だったらどうすればよいのかということを、ネットなどではなく、政府がバックアップする形で知りたいと思います。一般の人もコロナのときに、具合は悪いが病院に行ったところでどうにもならないという状況があることは理解したと思います。一方、少し具合が悪い程度だが、よく分からないから取りあえず病院に行っておこうということもあると思うのです。例えば、赤ちゃんであればこの症状でもすぐ病院に行かなくてはいけないが、中学生だったらこの程度だったら様子を見ればよいよねとか、そうしたような判断を一般の人が普通にできるように、発信していただきたい。たしか救急車も、相談窓口ができただけで、無駄に呼ぶ人が大分減ったと聞いていますので、体制を整えることで、少しでも意識のある一般の人たちが実際の行動に移せるような形を促せるとよいのではないかと思います。
あとは簡単にいきます。医師に関しては、若い人がこれだけ減っているのに、8分の1の人が医者になっているということになりますと、若い人をほかの産業から奪っている産業ということになってしまいます。ですから、やはり適正な定員が必要ですし、偏在是正については皆様がおっしゃるとおりです。特に大学病院がきつくて開業医になってしまう、このインセンティブは是非薄めなくてはいけないもので、そこは診療報酬で思いっ切り頑張っていただきたい、タスクシェアをもっと進めていただきたいと思います。偏在是正のために、今より強い規制やインセンティブを入れるということは、皆様のおっしゃったとおりです。
それから薬に関しては、一般からは、薬価差益がやはり不透明に見えます。仕組みを改善するのも限界があるのは分かりますが、ありとあらゆる政策が昔よりどんぶり勘定ではなくなり、かなり精緻にその数値を見るようになってきた中で、ここの雑さが気になりますし、一旦保険収載されたらその後のチェックが非常に甘いということも問題であると思います。
最後に、年金に関しましては、今進めている被用者保険の対象者拡大が、昨今の政治情勢の中で本当にうまく進むのか、少し心配な状況になっております。いろいろ難しいところがあると思いますが、被用者保険の拡大は本人のためにも、そして国民全体のためにもよいことであるということをしっかりと示して、プラスの改革に向かって進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうも大部の資料をありがとうございました。
かねがね私が申し上げているのは、日本にとっての最大のリスクは一つ目は少子高齢化、人口減少、二つ目が南海トラフ巨大地震やスーパー台風等の自然災害、三つ目が極東アジアの有事です。この中で一番予見可能性が高いのは、明らかに少子高齢化、人口減少でございまして、私どもエコノミスト、アナリストも様々な予想をしますが、一番当たるのは人口統計です。そうした意味では、今回の社会保障の問題は極めて重要です。ただし、なかなか議論を進めるには厳しいタイミングにあります。
実は、昨日、ドイツのショルツ首相、社会民主党の党首が、最大野党のキリスト教民主同盟と協議して、来年2月23日に前倒し解散、連邦議会選挙をやるということになりました。これで、今年は7月4日にイギリスの下院総選挙、7日にフランス国民議会選挙、10月27日に我が国の衆院総選挙、11月5日にアメリカ大統領選、来年2月23日はドイツと。ドイツは与党が負ける可能性が高いと言われているということで、半年足らずの間にG5全ての与党が負けることになる可能性が極めて高くなった。背景に言われているのは、一つ目がインフレ、二つ目が移民の問題ですね。ただ、例えば今年はインド総選挙でモディ首相が率いるBJPが4分の3を取ると言ったが、実は過半数割れということなので、やはり世界的にインフレの問題が大きい。この1年ずっと株高、一部都市部の不動産高というのが世界的に進んだのですが、やはり低所得者の人たちの今の生活をどうにかしてほしい、こうした不満が本当に鬱積していて、与党への批判票につながったのだろうと思います。
財審としましては、日本の長期的なリスク、特に将来世代への備えとしてこの社会保障の問題を議論するのは当然です。では、どうするのだということなのですが、私はやはり、KPI、適切な目標を設定して、PDCAを回す、政策をチェックする、つまりEBPMを徹底する必要があると思います。実は今年の年末というのは、私は日本の人口問題にとって大きな転機であると思います。どういうことかというと、先ほどもありましたが、団塊の世代の方々が、今年の年末で全員75歳になります。一方で、団塊ジュニアの世代、1971年から1974年生まれの方が年末で全員50歳代になるのですね。この団塊ジュニアの方々は、就職氷河期に遭遇した関係で、今なお非正規の方も多い。結婚もできていない、お子さんもいないということで、彼らはこのまま10年、20年経つと多くの方が生活保護世帯になり得る可能性があるわけです。ですから、やはり本当に残された時間は多くありません。
それでは、具体的に何をするのだということなのですが、私は、この人口問題、特に少子化に関して見ると、ここまでの対応は生ぬるいのではないかと。ちょうど去年の1月、年頭の会見で、岸田前首相が次元の異なる少子化対策を打ち出しました。また、先ほどの資料でも、石破首相も今回の少子化というのは国難、静かな有事であると、国家安全保障に係る課題と認識されているので、認識は一緒だと思います。ただ、今年の6月までの日本における日本人出生数の統計データが先週5日に出まして、これは6か月累計で33万人。私の試算でも、この8月までに出た外国人を含めた人口動態と昨年の傾向を踏まえると、今年1年間の日本における日本人の出生数は大体68万人になると見られます。68万人というのはどのぐらいの規模かというと、間もなく75歳になる団塊世代は年間270万人生まれていました。数年前にこの会議で、出生数が団塊世代の3分の1になったという話をしたと思いますが、68万人だと4分の1です。4分の1になってしまうということなので、これはもう相当厳しいと。
では、どうやってこれから管理していくのかというと、私はやはり出生率。いろいろな議論はあると思うのですが、出生率。次に婚姻出生率。もっと言えば婚姻率。この三つをまずはきちんとチェックしていく。どうすべきかという目標は、これは国民議論にもあると思うのですが、やはり何でそうなっているのかを分析しないことには成績評価できませんので、少子化については、一から、気を改めてもう一回見直すことが必要かと思っています。
また、年金についてです。実は、年金と介護と生活保護、あと医療、これはもう全部リンクしていると思います。なぜか。いずれもこれは高齢者にとって一番給付ないし負担がかかる分野なのです。特に生活保護に関して見ると、私の理解では、欧米に比べると生活保護の受給率が大体1桁少ない。これはどういうことかというと、かつては家庭内介護が相当主流となっておりました。日本の場合、恥の文化もあるので、生活保護を受けていると知られたくないと。ただし、今後は一人しかいないとなると、保護を受けるか死ぬかという話になってしまうわけです。そうすると、今後、少子高齢化に伴って生活保護の受給率も上がります。このうちの半額が先ほどありましたように医療給付です。医療の扶助も増えますし、当然介護費も増えてくる。家庭内介護ができないと、これはアウトソーシング、つまり国に依頼するしかありません。
ちなみに医療費は、2022年度の国民医療費で見ても、65歳以上と65歳未満では大体1人当たり3.7倍、75歳以上と65歳未満では約4.5倍の差があります。以前は5倍あったので、少し減っていますが、その差はまだありますし、しかも、介護について見ると、75歳未満、65歳までと75歳以上では過去大体10倍の差があります。特に先ほどの団塊ジュニアの世代というのは、割と低年金の世帯が増えると見られますので、これから10年経ってみると、年金の問題と介護の問題、生活保護の問題、医療の問題、この四つの問題が一挙に表面化するおそれがあるということで、私は、適正なKPIの下に、EBPMで分析、チェックし、PDCAサイクルを回すことが必要であると思います。
また、年金について1点申し上げます。今回、年金財政検証が5年ぶりに出まして、私の不満を申し上げると、実は、今回、四つのケースが出ているのですが、前回、5年前には6ケースありました。年金財政検証を厚生労働省は何のためにやっているかというと、年金の健康診断と言っているのです。健康診断と言っているのにケースが変わってしまっているのです。なぜ変わっているかというと、内閣府の中長期の経済財政試算のケースが変わっているからなのですが、こっちはどんどん変わっていきますから、毎回変わると、よくなっているのか悪くなっているのか、実際には分からないのです。三つの要因、高齢者・女性の就業率の上昇、外国人の流入、株高などによる運用利回りの改善の三つの要因で年金財政は改善をしていると思いますが、左右の比較ができない。健康診断と言うなら、人間ドックでも最近10年分ぐらいの結果を表で出してくれるわけですから、やはり横比較ができるようなものにしていただきたいということです。
以上でございます。どうもありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕どなたもおっしゃっていることですが、4ページなどにあるとおり、実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めるということ、それを堅持していくことは、何より大事なことであると思っています。
5ページ以降にありますが、報酬水準を上げていこうという議論がこの2、3年ありまして、これ自体は良いことだったと思うのですが、いよいよ手取りの議論が始まったことは大変望ましいと思います。様々な政策を取ったとしても、いくら少子化対策やこども・子育て支援があったとしても、自分のところに入っていくもので生活を考えるところがあり、その将来が描けないと、こどもを持つことを躊躇してしまうということがありますので、社会保険料の上昇を抑えるということは、是非引き続き検討して、実現していただきたいと思います。
また、インフレの局面に入っていますので、11ページにある賃上げや食費の見直しは、適正な水準にしていくという意味で悪いことではないと思っています。一方で、あらゆる組織がそうですが、効率化や適正化については不断の努力を続けていただければと思います。
それから、26ページ、創薬についてです。日本はかなりいろいろなポテンシャルのある技術や研究成果を持っているのではないかと考えています。これがなかなか実際の創薬につながっていかないというのは、どこでエコシステムが切れているのか。大企業は絶対に創薬のもとを求めているわけですし、日本でもそうした方がおられますが、特に海外ではベンチャーをつくって創薬をして非常に成功した方というのもおられます。ポテンシャルもあり、求めているものもあるので、何が回っていないのかというのをもう少し解像度を上げて検証し、対策が取れると良いと思います。資源の少ない国である日本が外貨を求める手段にもなり得るわけですし、また、社会の不具合を先進的に見ている国だということに立ち返りますと、いろいろできることもあるのではないかと思います。
最後に、62ページ以降、医師の偏在についてです。ほかの産業でも誘導というのはとても難しくて、どの国においても、医療に限らず、誘導に成功している例はあまりないと感じています。そう考えますと、ドイツ、フランスの事例は非常に参考になるように思います。日本の実態というのも当然ありますので、そのまま適用するということはできませんが、他国の例の研究をすれば有効な手段になり得るのではないかということも、より深めて議論してみたらどうかと思いました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございます。今回も簡潔にして詳細な資料を作っていただいて、ありがとうございました。
それから、末澤委員、社会保障の問題の所在を鋭きながら簡潔にまとめていただいて、こちら側に厚生労働主計官がもう一人いるような感じで、非常に勉強になりました。
私は細かいことは言いませんが、今話題になっている103万円の壁の問題についてです。よく言われているように、106万円や130万円の壁もあって、それがあれば働き控えも解消されませんので、先ほども意見がありましたが、総合的にやっていただきたいということです。
ただ、厚生労働省は106万円の壁をなくすと言っていますが、これは結局106万円以下の人からも保険料を取るということで、年金財政の将来の安定化に向けては大事なのですが、今、デフレからの完全脱却を図ろうとしている中で、そうした負担を増やす政策をやるのがどうかというのは、もう一度政府全体で考えてもらいたいなということかと思います。
前回の財審で、教職員の給与の問題、財務省から文科省のやり方についていろいろな建設的な意見があったのですが、是非こうした省庁を超えた議論をこの103万、106万、130万の問題についても進めていただきたいなと思っております。
また、年金の保険料の負担という意味では企業側の負担もありますので、特に中小企業などは企業側の負担が増えると賃金も増やせないということになって、これもまた今物価と賃金の好循環ということに逆行するので、そうした点も考えていただきたいと思いました。
最後に、この103万の壁の問題は、若い人に政治に関心を持たせたということで非常に意義があったなと。実は、うちのこどももバイトで103万円以上頂いてしまって、親が所得税の修正申告を迫られるという事態に至って、今年は絶対に103万を超えるなよと言ったら、非常に不満を抱いておりました。だから、今回の国民主党の主張はばっちりと響いて。そうした若者が多いようなので、これが是非若い人たちが財政に対して関心を持っていただく機会になることも大事だなと。減税になるがその分、国の財政収入が減り、最終的には君たちがそのツケを払うことになるかもしれないというところまで、この機会を捉えて若い人の啓蒙ができたらよいのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員です。よろしくお願いします。
〔木村委員〕
御説明ありがとうございます。各委員の先生方、すばらしい意見をおっしゃられて、私、あまり言うこともないのですが、少し違う角度からお話しできればと思っています。
社会保障制度の持続可能性を高めるために全世代型社会保障に移行するということは、これは高齢化の急速な進展に対応するだけではなくて、金利のある世界が復活したということで、ますます重要性が高まっていると思います。ただ、もっとも最近の政治情勢は、こうした社会保障改革を進めるにはやはり逆風になるかもしれません。社会保障改革はどうしても痛みを伴う面があるので、それを実行するにはやはり政治的な安定が必要なのですが、今は少数与党です。ただ、逆の発想をすれば、野党の意見も取り入れて幅広い超党派の合意を得ることもまた可能な環境になったとも言えるのではないかと思います。例えば昔、消費税率10%への引上げを決めたときや、税と社会保障の一体改革を決めたときも、衆参ねじれの状態でした。実際、最近の壁の議論に見られるように、こうした与野党の伯仲が必ずしも建設的ではないような議論になっていることもあるのですが、全世代型社会保障に関しては、これを求める意見というのは与野党問わず多いと思いますので、そうした状況を踏まえて、一歩ずつでも前に進んでいただきたいなと思います。
その上で各論です。まず少子化についてです。「こども未来戦略」が閣議決定されてから1年近く経過しました。ただ、実際資料の14ページでも御指摘されているように、一定の効果が出ている一方で、いまだに多くの方のこどもを産み育てたいという希望の実現には至っていないのが実態であると思います。確かに少子化問題は先進国共通の難しい課題ですし、その効果が出るにしても時間を要するかもしれませんが、次元の異なる少子化対策という触れ込みの割には、やはり国民の評価はまだ高いとは言えないと思います。その要因としては、やはり資料に示されたように、社会全体でこども・子育て世帯を応援するという機運を高めるための社会の構造、意識の変革がまだ十分広がっていないのではないかなという気がします。少子化予算3.6兆円増額という金額ばかり注目されていますが、この規模に寄りかかるのではなくて、資料にもあるように、EBPMの取組強化によるこの政策の適切な見直しを実行して、効果の乏しい政策は見直すなど、機動的に対応していくことがこれから大事になるのではないかなという気がします。
また、簡単に医療についても触れます。資料8ページにもありますように、若者・子育て世帯の手取り所得を増加させるとともに、社会保障制度の持続性を確保する観点から、医療・介護の保険料率の上昇を最大限抑制する必要があるというのは、おっしゃるとおりであると思います。社会保障の効率化というのは、単なる緊縮財政ではなくて、国民の手取りを増やして、最終的に先ほど申し上げたような子育て支援にもつながるので、是非これは積極的に進めていただきたいと思います。その点で言えば、皆様おっしゃっているように、リフィル処方は財務当局の御努力もあってせっかく導入されたのに、実績が低調というのはすごくもったいないと思います。ここは要因などもしっかり分析されて、利用がもっと高まるように積極的に努めていただきたいと思います。
最後に、年金です。おっしゃられたように、被用者保険の適用拡大は大いに進めていただきたいと思います。これと関連して、年収の壁の問題があります。人手不足の観点から取り上げられていますが、突き詰めて言えば、いわゆる第3号被保険者、専業主婦を優遇するというか、それを前提にした昭和のモデルが制度として根強く残っているという問題もあると思います。これは話題になっている103万円の壁の背後にも同様の問題があると思いますが、この昭和型の価値観が先ほど申し上げた少子化の問題でもやはり壁になっていると思います。財政支出に頼ることなく、こうした昭和の価値観から脱却して社会構造や意識を変革していくことは今後欠かせないと思いますので、そうした観点からも取組を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインで、武田委員と遠藤委員、このお二方に御発言をいただいて、ここでおしまいにしたいと思います。
武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕分かりやすい御説明と資料をありがとうございました。
全体について、高齢化と9ページの医療費高騰を踏まえますと、改革を進めるに当たり残された時間は本当に少ないと思います。工程表で作成されている改革メニューは着実に実行する必要があると考えますが、その先の改革の議論も併せて進めるとともに、改革の実効性を高めるためのEBPMとDXの徹底を是非お願いしたいと思います。
個別で3点申し上げます。
1点目、提供体制です。高齢化が進む中、病床の適正化はもちろん進める必要がありますが、くわえて、急性期と回復期やリハビリ、そしてリハビリと介護への連携、それぞれの分断をつなぐ重要性が増していると思います。例えば入院中の高齢者が退院後に自立した生活を可能にするには、医療の間でのリハビリが重要で結果的に医療と介護をトータルで見たときの費用を抑制すること、そして、家族の介護離職がますます社会課題になっていくと思いますので、人手不足が深刻な今、この点も抑える必要があると思います。実効性を高めるための権限をどう持たせていくかという仕組みづくりと医療機関間と介護とのデータ連携が鍵になりますので、DXの更なる加速化をお願いしたいと思います。
2点目、応能負担についてです。以前から申し上げているように、年齢ではなく応能による負担に変えるべきと思います。高齢者の中でも格差は大きくございます。医療の自己負担を一律3割として、その上で、資産や所得を勘案し、低所得、低資産の方に配慮した制度にすることが早急に必要と思います。弊社でも様々なアンケートを行っておりますが、給付と負担のバランスについては、応能負担を求める回答が一番多いことは付け加えさせていただきます。
3点目、働き方に中立な税・社会保障制度の実現です。過去の経緯で様々な制度の形になっていると思いますが、先ほども、昭和の価値観からの脱却というお言葉にあったとおり、共働き世帯が大勢になり、物価や賃金も上昇し始める時代になる中で、社会や経済の構造に合わせて制度を変えていくことは大切と考えます。人手不足が大きな課題になる中で、制度設計面に加え、心理面でも影響が出ない制度にすることは重要と思います。これを機に全体を俯瞰していただき、省庁横断で制度設計全体を見直すきっかけになるとよいと思います。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕事務局の資料、委員の皆様の意見に賛成です。特に第3号被保険者制度の廃止につきましては、積年の課題ですので、強く求め続けたいと思います。また、秋池委員が手取りの議論になったのは良いとおっしゃいましたが、確かに上げやすい社会保険料、電気料金もそうなのですが、そうしたところに向かうのではなくて、税議論に正面から向き合う、これはいずれ消費税につながっていくのだと思います。ただ、政治的な覚悟は必要だろうと思います。
私からは、1点、医療の偏在の点で別の視点から申し上げます。保険外診療と保険診療について、土居委員が先ほど美容医療の話をされたのですが、保険医として先進医療に携わる若手の医師たちと議論すると、むしろ保険外診療において医療技術は改革が進んでいく可能性を強く仰せの方がいらっしゃいます。大病院でも、専門、別院というのでしょうか、そうしたものを持つ医療機関も増えてきていると思います。これを提供できる先というのは保険外診療ですので、資産、収入の高い方に限られてしまって、もちろん特定療養費制度があって混合診療の枠が広がっていることは承知しているのですが、将来の医療に松竹梅ができてしまう可能性があると。これは今の日本の医療制度からすると非常に問題があると思います。土居委員がおっしゃられたように保険制度でやっているから医師に義務として強いるのか、特定医療制度に対する制度をまた加えていくのか、議論が必要になるところだと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。多くの委員の方に御発言いただきましたが、何とか時間ぎりぎりで間に合いました。大分窮屈に御発言いただいたかと思いますが、ありがとうございました。
それでは、本日の議題は以上とさせていただきますが、この後、内容は私から紹介をさせていただきたいと思います。
それから、次回は、11月20日(水)10時から開催しますが、次回は建議の素案について御議論いただくことを予定しております。
それでは、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。
午前11時00分閉会