財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年11月11日(月)15:00~17:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
- 農林水産
- 文教・科学技術
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3.閉会
部会長代理 |
土居丈朗 |
進藤大臣政務官 宇波主計局長 前田次長 中山次長 渡邉政策立案総括審議官 端本文書課長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 河村小百合 熊谷亮丸 佐藤主光 武田洋子 宮島香澄 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 権丈英子 末澤豪謙 滝澤美帆 中空麻奈 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 |
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オブザーバー |
大槻奈那 芳野友子 平野信行 |
午後3時00分開会
〔土居部会長代理〕それでは、これから始めさせていただきたいと思いますが、本日は冒頭からカメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔土居部会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会を開催いたします。
皆様、御多用中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
議事進行につきましては、部会長代理の土居が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、進藤政務官が後ほどお越しいただく予定です。
また、本日の議題は、「農林水産」、「文教・科学技術」となっております。
それでは、報道関係者の方は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔土居部会長代理〕それでは、議事に移らせていただきます。
まず、山川主計官から、「農林水産」につきまして、簡潔に御説明をお願いいたします。
〔山川主計官〕農林水産担当の山川と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。早速始めさせていただきます。
5ページです。一番下に骨太2024の記述の引用がございますが、食料・農業・農村基本法が25年ぶりに改正をされたことを受け、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるとなっています。どのような構造になるのかが重要であると思います。
6ページです。そこでそもそも日本の農業保護の程度は弱いのかということを、OECD各国と比べてみました。PSEという指標を比べてみますと、御覧のとおり日本の農業保護の度合いは相対的に高いという状況にございます。なので、予算を増やして保護を増やす、補助金を増やして農業保護を増やすというような方向ではなくて、むしろ法人経営や大規模化、輸出の推進などを進め、どちらかといえば日本の農業をより自立した産業にするという方向に持っていくということ、そうした構造に転換していくことが重要であると考えています。
7ページです。そうはいっても農業の予算はどんどん減らされてきたという声が、一部で聞こえてきます。確かに平成12年と比べると1兆円程度減っていますが、二つ目の丸にございますとおり、平成12年当時は、大規模ダム、集落排水、農道、橋・トンネルといったインフラの新設をまだしておりました。よって、インフラを盛んに新設していた時期と現在のように修繕を主にしている時期の金額のみを比べて、予算が減っているというご主張は現状と少しずれているかと思いますし、またこの棒グラフ青の部分、公共事業以外の部分は実質的に同水準で維持されているという事実がございます。
8ページです。次は農業生産の移り変わりでございます。一番右が足もとの令和4年、真ん中が10年前の平成24年、一番左が農業予算が現在より1兆円多かった平成12年ですが、2点ございます。1点目は内訳について、平成12年から令和4年にかけて、ざっと下のグラフを御覧いただきますと、平成12年は米が野菜よりも多く、麦や大豆についても今より産出額が多くなっておりました。実は真ん中の平成24年には、米は野菜に抜かれて、足もとでは野菜に更に大きい差をつけられております。要するに、後ほどご説明いたしますが、米、麦、大豆は減ってきている一方、野菜、そして豚や牛や鶏といった畜産は増えています。つまり、内訳が変わっております。2点目は、特に平成24年は若干少なくなっておりますが、産出総額に大きな違いはないということです。
11ページ、ここからは各論でございます。さきほど米や麦、大豆の産出額が減ってきたと申し上げましたが、予算規模は、この棒グラフが示すとおり、時には6,000億円を超えるような非常に高いオーダーで続いてきております。なので、支出の在り方等については常に検証が必要であると考えております。一方ページ下部に、野菜についての注記があります。先ほど、現在は野菜の産出額が一番多いということを御覧いただきましたが、野菜についての補助金は毎年度100億から200億円で、桁が随分違います。
13ページです。現在の主な補助金の中で、一番大きな課題があると私が最近思っておりますのが、この、いわゆる米の需給の調整、米の生産調整とそれを成り立たせるための転作を支援する補助金でございます。「水田活用の直接支払交付金」という名前で、これは米をつくらずに転作をするように促すという補助金でございますので、米をつくったときの所得をターゲットに補助金の単価をつくるのですが、それがやや行き過ぎているように思います。真ん中のグラフを御覧いただきますと、例えば飼料用米(多収)については、2万円で販売するものに実に11万3,000円の補助金がのっており、過剰な補助金が投入されているのではないかと指摘させていただきたいと思います。
14ページです。そうはいっても、今申し上げた米・麦・大豆は自給率の観点、食料安全保障の観点から非常に重要な穀物であるという御意見もあるかと思います。しかし、上の箱の説明のとおり、新基本法においては、食料安全保障の観点では、①国内の農業生産の増大を基本とする、と確かに書いておりますが、続きももちろんございまして、②安定的な輸入、③備蓄の確保を図るということがきちんと記載されてございます。また、今回の改正で④として新しい視点も追加されておりまして、冒頭、産業としての自立化という方向に進めると申し上げましたが、普段輸出できるような強い農業であれば、有事のときには輸出していた部分を国内に振り向けられるという新しい視点も加わってございます。よい改正であると思います。
15ページです。今申し上げた、輸入と備蓄をセットで考えるという点についてです。確かに赤色の部分、我が国の自給率は38%で止まっていて、青色の部分、輸入は62%に上っていますが、円グラフに示されているとおり輸入相手国はアメリカ、オーストラリア、カナダ、ブラジル、マレーシアなど、多くは政治経済的に良好な関係の国でございます。それならば、輸入可能なものは輸入をして、他の課題に財政余力を振り分けるという視点が重要かと思います。
18ページです。一方、輸入や備蓄を除いて、自給率自体をどう考えたらよいのかについてです。自給率はもちろん参考になる指標であると思いますが、それに過度にこだわるべきではないという考え方の一例がこの図表でございます。例えば食料自給率を1%引き上げるのに必要な量の小麦を国内でつくるとすると、畑でつくると440億円、水田でつくると約800億円もかかるということですが、その横の青色の表にございますように、これは実際にやっておりますが、同じ量を備蓄で賄うための倉庫の補助金として払うということであれば25億円で済むという推計がございます。要するに、三つ目の丸でまとめてございますが、食料安全保障の観点からは常に輸入と備蓄の活用という視点を欠いてはならないと思います。また、ここに記載はございませんが、自給率それ自体を追求するというよりは、農業技術をどうやって継承していくのか、あるいは必要な農地をどうやって維持していくのかが、食料安全保障の観点からは重要だと思います。
20ページです。先ほど備蓄の方がよいと思われる事例を御覧いただきましたが、備蓄のやり方についても、常に検証が必要であると考えております。今御覧いただいているのは米の備蓄です。適正水準が100万トンで、毎年度400億円から600億円に上る財政負担が発生するとされておりますが、この100万トンという水準は、実は我々の国内の需要が900万トンもあった平成13年に定められたものです。現在、需要量は700万トンに落ちていますので、一つの見直しとして、二つ目の丸に記載されているとおり、そもそも100万トンという備蓄の水準自体を考えないといけないのではないかと思います。
21ページも備蓄についてです。いわゆるガット・ウルグアイ・ラウンド交渉でミニマム・アクセス米を輸入することになっております。ミニマム・アクセス米は76.7万トンに上っておりますが、先ほどの備蓄と同じように主食用として買って、餌用として売るということで、時には700億に上るような多額の差損を出しております。これについても例えば、現在のように買ってきたものをそのまま餌用として売るということではなくて、備蓄の一部として活用することで先ほど御覧いただいた備蓄の水準を下げるという方向の議論も、できると考えております。
22ページです。農業構造についてです。農水省が危機感を持っているのは、いわゆる基幹的農業従事者が足もとの116万人から、今後20年間で実に4分の1、30万人にまで減る可能性があることでございます。これだけ見ると非常に驚く数字ですが、一つ目の丸のただし書きが重要で、大きく減るのは大規模専業農家の方ではなくて、いわゆる兼業農家の方が大部分を占めております。ということで、二つ目の丸ですが、そうした内容を鑑みると、これをピンチだと言うだけではなくて、ピンチをチャンスに変えるというような視点が重要かと思います。人数が減るということでございますので、農地の最大限の集約化を進めるチャンスですし、法人経営や株式会社の参入も進めていかねばならないと考えております。
今申し上げたのは、冒頭に申し上げた自立した産業にという方向性での一つの観点ですが、この観点は実は経済面のみならず、食料安全保障の面からも重要であると思っております。産業化することによって、より多くの若い人が入ってきて農業技術が継承される、大規模・効率的な経営によって人口減少のもと、少ない人数においても広い農地が維持できるという点で、食料安全保障の面からも自立した産業は重要だと思っております。
23ページ、最後にまとめでございます。水田政策の見直しとあります。真ん中に官邸の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の決定事項を引用していますが、「将来にわたって安定運営できる水田政策の在り方を示す」となっており、一つ目の丸のとおり、今後米政策の在り方について検討を行って、令和9年度以降に新しい政策を実施していくということが決まっております。
その際における我々の視点が二つ目の丸と三つ目の丸にございます。まず二つ目の丸についてです。先ほど御覧いただいたとおり、補助金の単価が高過ぎるので、令和9年度と言わず、是非来年度予算から見直しをやらせていただきたいと思いますし、また先ほど申し上げた令和9年度以降の新しい水田政策の中においては、飼料用米は補助対象から除外するということも検討するべきだと考えております。三つ目の丸は先ほど申し上げたピンチをチャンスにという構造改革の視点でございます。そもそも我々としても、今の需給の調整とそれに伴う転作の支援は当面必要であるとは思っておりますが、そもそもそうしたものに頼らない強い農業というものをつくっていくべきではないかと考えております。要するに、徹底的に低コスト化を進めて、最終的には輸出もきちんと見据えていくこと、高い米価に頼らない構造への転換を進めていくべきであるということを、中長期的な政策としてきちんと盛り込んでいきたいと考えております。
最後の4点目は、輸出についてです。なかんずく米の輸出については我々としても相当期待していますが、日本の米はうまいから売れるだろうという発想では恐らくうまくいかないと思いますので、生産面においても需要面においても相当な努力が必要であるということを留意点として記載しております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、河本主計官から、文教・科学技術につきまして、簡潔に御説明をお願いいたします。
〔河本主計官〕主計官の河本です。よろしくお願いします。
文教・科学技術予算でございます。
1ページ、教育予算のデータです。これまで既に出しているデータでございますが、教育予算の議論ではとかく日本の公財政支出のGDP比がOECD平均の7割であると言われます。しかし、これも毎年申し上げていることですが、人口に占める在学者の数も7割ですので、1人当たりに換算しますと日本の公財政支出は21.8%で、OECD平均の22.3%と比べても遜色がない状況になっております。特に日本の場合は、歳入の約30%を借金に依存し将来世代へ負担を先送りにしている状態にございますので、こどものためという名目で新たな財政措置を行うのであれば、既存の予算の見直しをぎりぎりまで行って財源を確保するということも大人として重要な責務ではないかと考えています。
そうした観点から義務教育、高等教育、そして科学技術について御説明させていただきたいと思います。
まず義務教育です。足もとでは、教員不足という問題が大きいと思っています。教員不足の背景にある、教育現場の教師の方々が持っている不満を簡単に図解したものが3ページで、不満の原因は学校業務と学校のリソースのアンバランスにあるのではないかと思います。学校の業務にも当然教師の方から見てやりがいが小さいものから大きいもの、それぞれあると思いますが、このようにかなり重くなっている学校業務に対してリソースが足りておりません。この問題は、人材、つまりヒューマンリソースを増やす、あるいは給料を増やすということで本当に解決するのか。むしろやりがいの小さい業務を中心に業務を削っていき、リソースとバランスさせることの方が本筋ではないのかということが、この絵で示したことでございます。
4ページです。では、何のやりがいが小さくて負担感が大きいのかといいますと、ワーク・エンゲージメントが低く負担感が高いという業務は、小学校では保護者・PTA対応や親のクレーム対応、そして文科省や教育委員会からやってくる様々な調査への回答、中学校ではこれらに部活が加わるという構成になっています。
5ページです。文科省もこの状況に対して何もしてこなかったわけではなくて、平成31年、令和元年にいわゆる3分類というものを出し、これを事務次官通達として通知しております。3分類とは、左の下にありますとおり、まず例えば登校に関する業務や学校徴収金の徴収などの「基本的には学校以外が担うべき業務」、次に調査・統計への回答などの「学校の業務だが必ずしも教師が担う必要がない業務」、そして最後に授業準備や成績処理などの「教師の業務だが負担軽減が可能な業務」と、学校・教師が担う業務を3分類しております。赤字が令和4年度における実態なのですが、御覧いただくと分かるとおり、あまり進捗がよくありません。いろいろな原因があるとは思いますが、「基本的には担うべき」あるいは「必ずしも担う必要がない」など、「基本的には」や「必ずしも」という言葉がついた分類ですと、親や教育委員会と対峙したときに現場の裁量に任されてしまっている部分があり、なかなかきれいに分けられないという状況かと推察されます。
右側の赤枠は、1997年にトニー・ブレア首相の労働党政権が出したイギリスの通知です。それまでのイギリスは教師がかなり福祉的な業務をやっていたものですが、教師が担うべきではないというネガティブリストを出して、事務職員に業務を移し、イギリスの教師は事務負担からかなり解放されたという事例があります。中身を見ると確かに日本の教育現場において教員が担っている業務が入っていることは事実であり、実態にそぐわない部分もあるかもしれませんが、このように少し強引に仕事のより分けをしないと現場ではなかなか判断がつかない部分もあるのかなと思っています。
また、右下にありますとおり、標準授業時数というものがございますが、コロナでなかなか授業ができなかったこともあり、現在標準授業時数を超えてカリキュラムを組んでいる学校が多くございます。こうしたところを見直して、標準授業時数までコマ数を削減していっても負担軽減につながるのではないかと考えています。
6ページです。ここからが学校の人材についてでございます。人材を増やしたら負担は軽減されるのかという問題でございますが、35年前の平成元年には、こどもは1,500万人おりました。これが現在900万人ですから、600万人、つまり40%減少しております。それに対して教師の数は76万人から69万人と7万人の減にとどまっております。平成元年には児童生徒40人当たり2人という比率でございました。仮に現在のこどもの数にその比率を当てはめると、その水準に比べて23万人も多く教員が配置されている計算になります。
7ページです。その結果として、現在日本の教員1人当たりの児童生徒数の国際比較で見ても、決して欧米に比べて遜色のない数字となってきております。
8ページです。では、教員の数を増やして負担が軽減されたのかということでございます。平成18年度に初めて教員実態調査を実施したときから比べますと、教員の数は児童生徒40人当たり16%増えているにもかかわらず、時間外在校等時間、これはいわゆる教員の世界で言う残業時間ですが、これは小学校で8時間、中学校で3時間、むしろ増えているという実態でございます。部活動の時間も減っていないという実態がございます。
9ページです。これは文部科学省の実態調査について計量分析をした結果でございます。EBPMの観点からこうした結果を見てみますと、来年度に小学校1年生から6年生まででの35人学級が実現しますが、教員増によって学級規模を5人減少させたときに教師の負担がどのくらい減るのかを見てみますと、小学校で1日2.4分、中学校で4.2分という減少幅にとどまっております。中央教育審議会の主張する、長時間勤務の是正を図ることで教師のウェルビーイングを向上させることが重要、教師が疲弊していればそれは結果としてこどものためにならない、そうしたことによる教育の質の低下があれば、これほど悲しいことはないという思いは、我々財政当局も全く同じ思いでございます。教員の負担を減らすため、より実効的な方法は何かを考えていくのが、我々のすべきことだと思っています。
10ページ、次は外部人材でございます。では外部人材、例えばスクールカウンセラー、ソーシャルワーカー、教員業務支援員を増やせば、教員の負担は減るのかどうかについても、また計量分析されています。「*」がついているのが統計的に有意な数字でございまして、結論から申し上げますと、外部人材を雇った場合の教員の在校時間については、統計的に有意にプラスともマイナスとも言えない結果になっております。
11ページです。その要因はいくつかあると考えられるのですが、一つあり得るとすれば、市町村が費用を負担する事務職員や用務員が十分に配置されていないという問題があります。国は外部人材の要員を増やしていますが、その一方で市町村が外部人材の確保を減らしているという実態がございます。左側が減らしている実態でございまして、右側にあるとおり交付税算定数よりもはるかに低いレベルで配置をしております。つまり、国が外部人材を配置すると、その分地方が事務職員や用務員を減らしているという実態があるかもしれません。学校の設置主体はあくまで市町村でございますので、市町村に外部人材を配置する必要性を認識していただいて、国が外部人材を配置するときの一つの要件として地方の努力ということも入れてもよいのかなと思っています。
12ページ、今度は少し違う視点でございます。教員の採用試験は年に一度ありますが、現在若い先生が多くなっており、産休・育休でお休みをされる先生も多くなっています。その代替の教員を確保するということが非常に難しくて、これが教員不足の一つの要因になっております。産休・育休代替の教職員を臨時で雇う場合には、制度上、国費の補助がありますが、これだけ若い教師が増えてきますと、恐らく産休・育休取得者が1年で一定数必ず出るという前提で配置をすることは可能かと思っています。もし、臨時講師等の場合だけ国庫で負担するという現状の制度が、代替職員の確保に対し何らかの制約になっているのであるとすれば、これからは正規で雇う場合も含めて国費負担を出してはどうかと考えてございます。
13ページです。ここからが給与についてです。教員の給与は基本給の4%が調整額で、時間にすると約8時間分でございます。残業を8時間したのと同等の金額を調整額として出しており、これは本給であり期末手当に反映されるので、4%で合計で480億円、つまり1%で120億円が国費負担になります。義務教育国庫負担金は3分の1が国負担なので、この2倍、つまり240億円が地方の負担、さらに地方は高校等退職手当の負担が270億円あります。国と地方、全て合わせると1%で約630億円でございます。それがこの調整額に費やされているお金でございます。現在、4%は8時間分と換算できますが、13%、時間にすると26時間分にしてほしいという要求が文科省から出ており、これは所要額にすると今申し上げた630億円の9倍、5,600億円の公費負担増となります。財源を確保しながらこれをやっていくというのが骨太の方針で書かれています。
14ページです。では、給与を改善すると人手不足は本当に解消するのかどうかということでございます。教員の給与に関する不満は、教員の3割が不満を持っておりますが、一般職員であれ、公務員であれ、同じぐらいの割合で給与に不満を持っており、特段教員の不満が大きいというわけではございません。一方で、仕事と生活のバランス、ワークライフバランスに関しては教員の5割が不満を持っているという実態がございます。
15ページです。参考として、就職のときに大学生が何を求めているかということでございます。今の大学生はやはり楽しく働くこと、あるいはワークライフバランスにかなり重きを置いております。収入は5番目に来ていますが、恐らく高校で大学を選ぶ段階から教職を選んでいるような学生にとっては、やりがいや、こどもと触れ合いたいといった要望が強いのだと思っています。仕事と生活のバランスをとりながら、学生の要望をかなえる環境整備が求められているのではないかと思っています。
16ページです。給与の引上げで本当に教員が増えるのかについて、左下にお名前をあげさせていただいている先生方に御協力をいただきながら、教育予算のEBPMに関する勉強会を主計局で立ち上げて、研究いたしました。これは、教員の受験者、つまり教員の志望者を被説明変数に置きまして、大卒の数や民間初任給、教員初任給、新聞報道、景気などを説明変数に置き、一体何が教員の志望者に影響しているのかということを時系列データで計量分析したものでございます。いろいろなパターンを試しましたが、結果を申し上げますと、民間初任給が統計的に有意なマイナスの影響がありました。つまり、民間初任給が上がれば教員の志望者は減っていく。新聞報道も明らかに有意なマイナスの影響があるのですが、新聞報道と申しますのは「教員」、「長時間」、「ブラック」などそうしたキーワードでヒットした記事の数でございます。やはりこうしたイメージにかなり影響されるということが分かりました。特に右下の折れ線グラフを見ていただくとX(旧ツイッター)で「ブラック」、「長時間労働」といった単語を含む投稿があると有意に教員の受験者数が減っていく。一方で、行政改革推進法による給料引下げ、すなわち給料を一般公務員と変わらないぐらいに引き下げていた時代には受験者数は増えています。教員の初任給はあまり有意に働かない一方で、民間の初任給とイメージがかなり影響するということが示唆されると思います。我々公務員もそうですが、イメージが変わるとかなり受験者数が減るというのは事実であると思っています。しかし、現場のリアルを変えないとイメージは変わらないものですから、リアルな働き方の環境を変えていくということがまず必要だと思っています。
17ページです。左側のグラフは、人材確保法で給与を上げたときに地方公務員の倍率ほど教員の倍率は上がらなかったことを表しております。右側も今申し上げたことのおさらいですが、民間の求人倍率が高いときには教員受験者数が明らかに少ないという、逆の相関の関係が見て取れるものでございます。
18ページです。もう一つ別の、持続的な賃上げをしていかなくてはならないという観点からです。民間企業は、競争倍率が0.86倍と人手不足の状況で、3.56%のベースアップをしております。国家公務員や教員は、倍率で言いますとまだ1を超えている段階ではありますが、人事院勧告で公務員は3.2%、教員は3.7%改善することになっています。当然、医療・介護の世界でも2.5%、2.0%というベースアップをしていくということになっているのですが、ここで教員について、3.7%のベースアップに13%の調整額を加え、合計約13%の賃上げをたった1年でやるということが、社会全体でみて本当にバランスとしてよいのかという観点もあろうかと思っております。むしろ持続的な賃上げという観点から、長く続く賃上げに結びつく方策が必要なのではないかと考えています。
19ページです。18ページの内容を勘案しまして、教職調整額13%の問題点として指摘させていただきたいのは、まず一つ目は働き方改革でございます。実効性のある学校業務の縮減と連動していないということです。13%に引き上げることは月26時間分の時間外労働に相当するものですが、それは年間312時間にのぼり、労基法の上限360時間にも迫るものです。中央教育審議会は月の残業時間の目標を月20時間としておりますので、26時間分を全員に払うというのは、それとの整合性にも欠けるものでございます。
二つ目は、メリハリです。現在は、時間外在校等時間すなわち残業時間が一律に支給される制度になっていますので、それこそ0時間の場合でも、今8時間分もらっているのが26時間分もらう。一方で26時間以上働いている人はそれ以上もらえないということになりますので、メリハリがない制度になっています。
三つ目は、教師の人材確保という観点からです。若手教員に対して魅力を増さなくてはいけないというときに、一律の支給になっているので、当然若手よりも給料が高い中堅・ベテランのほうがより優遇されてしまい、ちぐはぐ感があるということです。
そうしたことを考えますと、5,600億円もの公費を払う割に、教師の人材確保に対してそれほど費用対効果がないのではないかと思われます。
20ページです。そうしたことを踏まえ、13%を単に引き上げることに対する財務省の対案として考えているものがこちらでございます。本来、業務を所定内の勤務時間に収めていくことを目指すべきなのですが、現在の教員の勤務実態、それから働き方改革、メリハリ、効果といった観点からは、一定の集中改革期間、例えば5年間の期間を設けまして、学校業務の抜本的な縮減を進める仕組みを講じる。その上で集中改革期間の後には、労働基準法の原則どおり、やむを得ない所定外の勤務時間に見合う手当を支給することが本来の魅力の向上につながるのではないかと考えています。
ただ、他の公的部門の状況も踏まえた持続的な賃上げを後押しするという観点も踏まえると、集中改革期間において財源の確保を前提に経過措置的に教職調整額の引上げをするということもあります。その場合には、10%を目指して段階的に引上げつつ、10%に到達する段階、要するに残業時間が20時間になって10%を支給できるとなった場合に、所定外の勤務時間に見合う手当に移行することも検討することが考えられます。一方で、移行による影響に留意する観点から、業務負担に応じたメリハリのある新たな調整手当の枠組みもあわせて検討することにしています。
その際、ただ引き上げるのではなくて、以下のように働き方改革の進捗を確認した上で引上げの決定を行う仕組みを付与して、インセンティブ付けとしてはどうかと思っています。そこは下の枠の①から④ですが、先ほど申し上げたいわゆる3分類の厳格化、外部対応・事務作業・福祉的な対応・部活動の更なる縮減や首長部局や地方への移行によって授業以外の時間を抜本的に削減すること、勤務時間管理を徹底すること、校務DXの加速化をすること、それから夏・冬・春の長期休暇を完全に取得できるような環境を整備すること、こうしたことによって時間外在校等時間、いわゆる残業時間を縮減していくということを確認しながら引上げをしていくということが考えられるかと思っています。
仮にこうした改革が進まずに、途中で引上げが止まるといった場合にどうするのかについては、三つ目の丸の後段に書いていますが、その時点で原因を検証して、外部人材の配置など、その他より有効な手段に財源を振り向けることとしてはどうかと思っています。
下の注でございますが、所定外の勤務時間に見合う手当に対する国庫負担は、中央教育審議会答申と整合的に月20時間を上限としてはどうかと思っています。財源は各年度の予算の見直しで確保することにしてはどうかと思っています。
21ページが今申し上げたことのイメージでございます。下の絵の中で、薄い青が実際の働いている時間であると思ってください。濃い青部分が調整額で支給している部分です。実際の業務時間は教師によってまちまちでございます。いっぱい働いている人もいれば、そうでもない人もいます。今、平均の残業時間が47時間である一方、調整額が4%、つまり8時間分でございます。ここには大きな乖離があります。この乖離を下の調整額を上げていくということによって埋めていくという考え方もあります。これが文科省の要求です。4%を13%にしていくと。これでももちろん全部は埋まらないですし、下を上げていくことが上を下げることに必ずつながるとは限りません。働き方改革も関係ありません。4%働かせ放題が13%働かせ放題になるという非難もあるということでございます。
一方、従来財務省が言ってきたように、上を下げるつまり残業を減らすことも、今の教育実態からすると、残業時間を月8時間まで減らすのは現実的ではないと思っています。そこまで減らすのはまだ夢のような話であると思っていまして、両面からのアプローチでこの隙間を埋める必要があると思っています。つまり残業時間を減らしながら調整額も上げていき、両方からこの隙間を埋めていくという取組のほうがより早く、より確実に隙間が埋まると思っています。
財務省の案はまさにそうしたものでございまして、残業時間を減らしていく、働き方改革をしていくことと同時に、調整額を押し上げていくことによって、どこかで必ず一致すると思います。それは今、一応令和12年にしておりますが、残業時間は20時間まで減っていき、そして調整額は10%になっていく。調整額10%というのは残業時間20時間相当ですから、ちょうどこの時点で、全ての残業時間に対して残業代がついている状態になるわけです。そのときには、調整額でそれを支給するよりも、よりメリハリがつく形で、例えば残業代の支給、あるいはよりメリハリがついた新たな調整額かもしれませんが、より働いた人には20時間以上の金額が渡せて、働いていない人にはそれ相応の金額を渡すといった制度に移行してもよいのではないかというのが、財務省からの提案でございます。
22ページ、高等教育でございます。まず18歳人口と大学の規模でございますが、18歳人口が90万人に減っている中で大学数が300校増えているという状態にございまして、学生10万人当たりの高等教育機関の国際比較を見ていただきますと、アメリカの2.3倍、ドイツの3倍、フランスの6倍になっている。先進国の中で最も大学に入りやすい国になっているという実態がございます。
24ページ、国立大学についてです。運営費交付金が国立大学法人化された平成16年以降、1,630億円減ったと言われておりますが、実際には左側から見ていただきますと、病院の赤字補填がなくなり、退職手当は退職者が少なくなったことで少なくなり、授業料の減免が消費税財源による修学支援新制度に移行しただけでございまして、こうした特殊要因を除きますと479億円の減になります。これに対して国立大学の補助金は1,990億円増えているので、結果としては1,330億円の増になっているということでございます。
25ページです。その結果として、国立大学の学生1人当たりの公的支援は先進国の中で最も多いレベルになっているということでございます。
26ページです。国立大学の収入を見てみますと、運営費交付金の依存度がかなり高いのが日本の特徴になっております。ほかの国で見ますと、やはり寄付金も多いですし、その寄付金を資産運用に回して得られる資産運用益もかなり大きくて、また研究受託収入もすごく多くなっております。
27ページです。国立大学運営費交付金は、一定額を前年同額の配分額から捻出し、各大学が行う特有のミッションに応じて再配分する仕組みとなってございますが、右側の45度線を見ていただきますと、配分前と配分後にほとんど変化がありません。もう少し配分割合を増やしてメリハリのある配分にするということもあり得るのかなと思っています。
28ページです。私立大学も私学助成をずっと減らされてきていると言われますが、授業料減免分が消費税財源による修学支援新制度に移行したことを考慮すれば、私立大学の学生の教育研究に対する支援はかなり増えております。
29ページです。一方で、私立大学は全体として定員充足率100%を下回って98.2%になっておりますし、大体59.2%、6割の私立大学が定員割れになってございます。定員割れになっているのですが、定員割れの学校ほど学生1人当たりに対する補助額が大きいという、ちぐはぐなことになっています。
30ページです。なぜかと言いますと、私学助成の計算方法がやや定員割れの大学に有利になるようになっているということでございます。例えば③の部分で、学生納付金収入分の支出、すなわち研究支出にどれだけ出しているかという割り算を見ていただきますと、定員割れであると学生納付金は当然少ないものですから割合が相対的に高くなってしまい、研究にお金をより費やしているということになってしまって、むしろ補助金が加算されてしまうということになっています。こうした計算式を見直していくことも一つの方策かと思っています。
31ページ、結論といたしましては、今申し上げたとおりメリハリのある国立大学運営費交付金の配分と、国立大学自身も多様な財源の確保に努めるべき。私立大学に関してもメリハリのある配分を目指していくべき。そして東京科学大学のような、より戦略的な統合・規模縮小・撤退等によって構造改革が進むインセンティブを生じるようにしていくことが必要であるということでございます。
次、科学技術でございます。33ページ。科学技術は予算を増やしておりますが、現在、先進国の中でも非常に多い配分になっております。
34ページです。一方、Top10%論文の割合が非常に少なくなっていて、右下を見ていただくと、研究開発に投じた金額当たりのTop10%論文数が非常に少ない、つまり生産性が低いとなってございます。アメリカは日本の2倍、イギリスは日本の4倍ぐらいの生産性があるということになってございます。
35ページです。その原因として、若手への配分が足りないということ、国際性が少ないということ、それから研究分野が硬直的ということの三つがあると思います。一つ目が若手です。トップリサーチャーの年齢は大体40歳未満でございますが、日本の国立大学の本務教員は78%が40歳以上であるということがございます。
36ページです。研究分野もAI、燃料電池といった学際的・分野融合的領域への参画数が非常に少なくなっています。
37ページです。国際的な共著論文も日本は非常に少ない傾向にありまして、研究者の国際移動も41カ国で比べてみますと39位と非常に低い状況になっています。「Nature」でもそうした国際性の乏しさが日本のパフォーマンスの妨げになっているということが指摘されております。
38ページです。これは科研費の分野別配分額ですが、この4年間ぐらいは配分に全く変化がないということで、言ってみれば教授を頂点としたピラミッド型の講座制の中で、なかなか新しい研究分野が生まれてこないという現状にあると思います。
39ページです。もう一つ、総合科学技術会議の中でメリハリづけ、昔はS A B Cと言っていましたが、現在はハリの部分しか強調しない仕組みになっておりまして、なかなか公費のメリハリづけもできていないというものでございます。
40ページです。もう一つ、最近の大型の補正予算の中で多額の基金が積み上がっておりまして、科学技術分野における基金が非常に増加しているという現状がございます。
しかし、41ページにありますように基金についてはルールを決めておりまして、定量的な目標を策定すること、3年程度でその成果目標の達成状況を見てから次の予算措置を決めることがございます。
42ページ。結論としましては、論文の生産性を向上させないと予算を投入し続けても効率性が低いということ、ベテランから若手へのシフト、国際化、分野配分の流動性を重視するべきであるということ、それから科学技術関係の基金が乱立している現状を踏まえて、執行ベースで捉えた上で規模を正常化する、基金ルールを適用するということが課題かと思っています。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕御説明どうもありがとうございました。
本日は、御欠席の安永委員より意見書の御提出がございます。意見書につきましては各PC端末に格納しておりますので、お目通しいただければと存じます。
それでは、事務局の説明に関しまして、委員の皆様から、御意見、御質問を頂戴したく存じます。会場におられる方は、御意見、御質問のある場合は、ネームプレートを立てていただければ幸いです。なお、限られた時間の中で、できるだけ多くの方に御発言いただきたく思いますので、御発言につきましては可能な限り手短に、3分以内でお願いいたします。
それでは、会場から5名程度、オンラインから5名程度、またその後、会場から5名程度という順に指名をさせていただきたいと思います。
それでは、右側から参りたく存じます。宮島委員から順に御発言をお願いいたします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。いろいろ言いたくなる分野ですが、できるだけポイントを絞りたいと思います。
まず農業分野です。まさに今改訂の議論をしている農業基本計画、この5年間に農業をどのぐらい変えられるか、構造改革ができるかはこの先最も重要なところであると思います。その中で、今地域計画の策定が進んでいるのですが、実際は土地の有効利用にうまく向かっている計画がすごく少なくて、必ずしも効率的な計画になっていないところもある、と理解しています。そこは地域計画をつくる仕組みも一因となっていて、検討体制が弱くなっている地域では、きちんとした地域計画をつくることすら難しいところもあると聞いております。そこに関しては、地域計画の策定を、土地の有効利用や効率化を進めるうえで必要なアドバイスをするということも含めて、国としても頑張って進める必要があると思います。もちろん農業人口は恐らくどうやっても急激に増えることはないので、人数が減ってもしっかりとしたことができるということが必要で、例えばお米であれば、直まきでも一定の収量がとれるかなど、そうしたトライが進んでいますので、農業人口が少ないから困るということではなくて、少ない人数で効果を上げることを目指して頑張っていただきたいです。やはり農業法人が肝になると思いますし、企業がもう少し参入しやすくなったほうが良いと思います。さらに言うと農業法人に入ろうとする若い人たちが、サラリーマンになるのと同じぐらいの感覚で農業に参入できることが必要であると思っています。そのためには、普通のサラリーマンにはなかなかないリスクを、サラリーマンになるのと似たようなところまで引き下げていけるかということが、重要かと思っております。
次に、自給率についてです。もちろん飼料米などの補助は減らすべきであると思いますし、自給率を上げるために何でもやるという考え方はまず違うなと思います。自給率でも、どうしてもいまだにカロリーベースで話題になるのですが、数年前から生産額ベースでも見ようという話になっています。生産額ベースであれば、輸出で好まれるような質のよい食べ物は、自給率にしっかりカウントされます。カロリーのみを見て、例えば米と油を食べていれば、それで大丈夫と思っている人はいないと思いますので、本質的に今の日本の食生活が国内でもきちんと守られる、輸出入含めて守られるために、努力していただきたいと思います。
また、備蓄米に関しましては、資料にも指摘がございますが、今でも数値ではなくて需要に応じた備蓄にしていこうという方向にはなっています。今年は米騒動もありましたし、備蓄米をどのように活用していくかということは国民からも注目された部分ですので、できるだけ国費を使わない形での備蓄米のルールを定めていく必要があるのではないかと思います。
次に教育です。今までは、文科省側はとにかく教員が増えれば教育はよくなるという話だったのですが、現場レベルからも、教員が2倍になるのであれば楽かもしれないが、少し増えたところでそうでもない、というお話を聞いていました。実際に負担が大きいというのは、それが若い人の教員離れを招いているというのも本当にそうであると思います。一方で、残業を減らそうとすると、現場では今までどおりにやりたい人が結構多く、一部の人がこれはこうやろうよと提案しても、なかなか動かないという課題もございます。それについてどうインセンティブを付ければよいのか分からないという声を現場から聞いておりましたので、今回の財務省案のように、給与、報酬に働き方改革への取組状況が関わるというインセンティブの付け方は非常に良いのではないかと思います。実際、私も知り合いの教育関係の人に今回の財務省案、一部報道された案の感想を聞いたら、よいのではないかというような意見でした。しっかりと残業を減らすことにインセンティブを付けるという形で、進めていただきたいと思います。
また、文科省が進めてきた3分類ももちろんでして、今よりも、教員でなければできないこと、地域でできること、あるいは機械でもできることなども含めて、よりしっかりと分けていただきたいと思います。そのような中で、EdTech、つまりタブレットを使った教育には期待を持っていましたが、現場ではなかなか進んでいないと理解しております。それは効果を感じてきちんと進められる人が比較的少ないこと、学校のネット環境がかなり悪くてやろうと思ってもできないこと、生徒が家で持ち帰って使用することに対する親の抵抗感など、いくつかのハードルがあると感じています。しかし、今はこどもたちがChatGPTでいろいろ相談をしながら考えるというのは世界的に進んでおり、日本だけがそれに取り残されるわけにはいかないと思うので、この点に関してしっかり進めていただきたいと思います。
高等教育に関しては、再編が必要であると思っていて、定員に満たない学校を維持させてどうするのだというのは、ほとんどの人の意見であると思います。とにかく再編をしっかりする。また社会人になるためにどういう教育が必要なのか。例えば、言い方が難しいですが、教育効果があまり高くない大学よりも、しっかりとした技術などの教育が受けられる高等専門学校などに行ったほうが、より社会で活躍できるかもしれないというようなこともありますので、学校が生み出している効果をしっかり図って再編していただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
文教・科学技術につきまして、マクロの視点で1点だけ申し上げたいと思います。
今後、少子高齢化が進む中で日本が国際的な地位を維持していくためには、まずは一人一人の人材力を高めていく必要があると思います。その延長線上で科学技術力を高めていくことが極めて大事であると思っております。人材力という面では、全ての国民の共通基盤として、昔で言う読み書きそろばん、あるいは道徳、基礎的能力を養う義務教育がまずあって、その上で多様性に立脚した専門性を育む高等教育があるべきなのではないかと思っております。これはどちらにも、私はあまり極端に振れないほうが良いと思います。そのバランスを十分にとっていただきたいと思います。
義務教育についてです。キーワードは共通性ですから、今後教員不足が深刻化する中で、デジタル化、あるいは広域化がますます求められていくのではないかと思っております。一方、高等教育につきましては、これは専門性がキーですから、それぞれの地域が特色ある教育機関を誘致する、あるいは育成するということがあってもよいのではないかと思っております。これは産業政策とも通じるものがありますが、競争原理を働かせて進めていくと、ひいては地方の活性化、地方分散にもつながるものではないかと考えております。
そうした観点から、今政府が進めているイノベーション・コモンズという構想があります。これは大学が地方自治体や産業界と一緒になって進めていくということですが、是非もう少し有効性・実効性が伴うような形で推進していただければと思っております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕では、佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いします。
今回の農林水産、文教に共通するのは人手不足への対応であると思います。私は今規制改革の仕事をしているのですが、そこでも議論になるのはタスクシェアです。つまり、これまでその分野に関わってこなかった人をどうやってその分野に引き入れていくかということであり、農業であれば新規の参入が必要、具体的には農業法人の活用が絶対必要だが、今、農業法人は土地を所有するにしても、営農するにしても、様々な規制があります。実はムラ社会で、農業委員会などの許可が要るなど、郷に入れば郷に従えのようなスタイルになってしまっているという実態もあります。皮肉なことに学校もそうで、結果的に職員、教員以外の人たちを活用するといっても、学校のルールはムラ社会のようになっていて、なかなか外部の人たちが入りにくいという状況がございます。大学にいてこのようなことを言ってはいけないのですが、自分たちでムラ社会をつくっておいて、逆に人手不足で自分たちの首を絞めているという状況があり、これは徐々に衰退につながっていくので、この壁をどうやって取っ払うかということが問われると思います。これは恐らく財政的な問題以上に規制改革の問題であって、農業に関しては分かりやすいと思います。特に農業法人に関しては、撤廃するべき規制はあると思います。
次に教員についてです。イギリスのネガティブリストはよいアイデアであると思います。自治体は現場に近い分、恐らくいろいろと忖度するところもあるので、自治体任せにするべきではなく、国が中心になって、これは教員がやるべき仕事ではないということのリストをつくって、この枠の中でやってくださいと現場に言ったほうが良いと思います。自治体に任せると、現場にとっては目の前に親がいるわけですから、逆にいろいろやらなくてはいけないというプレッシャーがあります。なので、そこはむしろ国がイニシアティブをとるべきことかなと思います。
今回御紹介にならなかった点で、2点ほど申し上げます。一つは農業に関してで、所有者不明土地の問題です。これから恐らく耕作放棄地も増えていくことを考えると、どうやって所有者不明土地の利活用を進めていくかについても、考えなくてはいけないと思います。究極的には自給率を損なうことになりますので、所有者不明土地に対してはかなり強い対応がこれから求められることとなります。これも財政的な問題というよりはむしろ規制の問題なのかもしれませんが、それが一つあると思いました。
もう一つは学校に関してで、国立大学の人間が言ってはいけないのですが、退出支援があってもよいと思います。つまり私学に関して、再編成の必要性があると言われていましたが、再編成するには誰かが辞めるわけです。現状、新規の学部の開校などについてはいろいろな手続ルールがあるのに、辞めることについてのルールがございません。大学が退出していくということ、あるいは学部を辞めていくということ、これについてきちんとしたルールと、必要に応じては教職員、学生に対する手当てがあってよいのかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕農業については2点です。今年はいわゆる令和の米騒動ということが言われました。ちなみに平成の米騒動というのは1993年に起きていまして、エルニーニョ現象と1991年のフィリピンのピナツボ火山噴火による噴煙の影響で、冷夏になったことが主な要因と言われております。しかし、今後はむしろ地球温暖化の影響が問題になります。去年は米が相当不作になりました。これは気温の上昇とともに、干ばつが起きたことによります。今年は割と雨が多かったので、新潟では品質が向上していますが、世界的に見て大雨と干ばつの二極化が起きているので、来年また干ばつが起きてもおかしくないと思います。その上スーパー台風の発生も増えています。つまり今後は災害に強い農業をどのように作るかが課題になります。これにはやはり先ほどあったように、法人化、集約化、あるいは特に野菜は工場でつくるといった対策が必要なのだろうと思います。
二つ目は、食料安全保障についてです。最近よく、食料安全保障のために補助金を出して農業生産を増やさなくてはいけないという議論があるのですが、安全保障とはどういうタイミングで脅かされるのかということを考える必要があると思います。まず今年の米ないし野菜のように、日本国内が不作になったとき、もしくは世界的に不作になるときです。どちらの場合でも値段が上がりますが、国がお金を出すことで乗り切ることができます。次に地政学的リスクによるものです。ただ、先ほどの御説明にありましたように日本の輸入の大半が友好国からなので、地政学的リスクで急に禁輸ということはないと思います。ただし、シーレーンが止まってしまう、つまりアメリカからもオーストラリアからも輸入できないとなると、これはどうしようもないのです。それを考えると、最終的な食料安全保障のためには、備蓄が必要で、私は本日御説明がありましたミニマム・アクセス米(MA米)、これは全部備蓄してしまう。それが一番コストを低減できて、しかも最低限の食料安全保障を守れる方法だと思います。一番良いのは、おいしいものをつくりつつ、輸出ができて、場合によって輸出を減らすことがあることですが、まだ非現実的です。その途中段階として、日本の皆様が、観光客も含めて、おいしいご飯、お米、野菜を食べていくのと食料安全保障政策は少し分けてもよいのかなと思っています。
次に教育についてです。6ページで児童生徒数は減っているが教職員の定数は減っていないとございましたが、かねがね申し上げているとおり、当然のことだと思います。人口が増えている、児童生徒数が増えているときは学校の規模が大きくなっていきますから、そんなに人数は要らないのですよ。校長が一人、教頭も一人か二人でよいのです。しかし、児童生徒数が減ってくれば学校の規模が小さくなります。今、日本の児童生徒数の規模は欧米諸国と大体同一になってきました。それでも、例えば校長の数は一人ずつ、用務員さんも一定数必要であることには変わりません。つまり総務的、管理的な仕事の量が減らず、実業の方々の負担が増えるという構造になります。つまり、農林水産業、建設業も同じですが、規模の経済が規模の不経済、規模の利益が不利益になっている中では、何をやるかというと三つしかございません。一つは統廃合で、スクールバスを使った学校の集約です。二つ目がICT化です。先ほどDXの話がありましたが、DXをよりやっていただいたところに補助金を少し増やす、あるいはDXの普及のために、家庭に対しても通信インフラを整備することが重要です。三つ目がアウトソーシングです。アウトソーシングに関して、民間に委託しているが、市町村が出している用務員の数を減らしていて、全然アウトソーシングが進んでいないという話がありました。これは相当問題だと思います。実際、私の親族も教員の免許を取って教育実習に行ったところ、教職員の皆様、大変遅くまで仕事されており、これは無理であるということで民間に就職しましたが、これはリアルな世界です。私は賃金体系も、働かせ放題のままで金額を上げるというよりは最終的には全て残業代をつけるべきであると思います。かつて私が勤めていた都市銀行では40年前はサービス残業の嵐でしたが、最近は変わってきております。時代が変わり、ワークライフバランスの中では、むしろ残業代にはきちんとコストをかけることとなっております。それによって残業は減ります。個人情報保護法の世界では持ち帰りもすべきではないです。それによってどうやって減らすのか。先ほどの統廃合、ICT化、アウトソーシングによって減らすインセンティブというか、逆に言えばインパクトも出てくるのではないかと思います。私はこの段階ではまだ中途半端に過ぎると考えております。
以上です。
〔土居部会長代理〕では、芳野委員、お願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。
本日は教育と農林水産について、4点、意見を申し述べたいと思います。
初めは、教職調整額の引上げについてです。資料では引上げに対する問題点が指摘されていますが、本件は連合も委員として参画した文科省の審議会答申によるものであり、これを正面から否定する指摘は誠に遺憾と言わざるを得ません。教職調整額は人材確保法の趣旨と教師の職務と勤務態様を踏まえ、勤務時間の内外を包括して評価し、その処遇として支給されるものであり、時間外在校等時間だけをもって問題とするのは遺憾です。教職調整額については答申を尊重し、10%以上に引き上げていくべきと考えております。
2点目は教員数についてです。例年の繰り返しとなりますが、教員数の国際比較は特別支援学級を含めた学級規模で比較するのではなく、通常学級の規模で比較しなければ教員1人当たりの業務負荷を正しく比較することはできません。なお、2022年度の教員勤務実態調査では、今なお小学校教諭の14.2%、中学校教諭の36.6%が過労死ラインに相当する1週間の総在校等時間60時間以上の実態にあります。働き方改革の推進には一定の時間が必要ですので、まずは教師の健康を確保するためにも加配定数を増やし、教師の業務負荷を軽減すべきと考えます。
3点目は農業の担い手の確保について触れたいと思います。農業者の急激な減少の対策として農地集約化や法人の参入が挙げられますが、雇用も含めた就農者数を増やすには、労働条件や就業環境の改善などにより、労働者にとって魅力的な産業にしていくことが不可欠です。労働条件については持続可能な農業に向けて再生産可能な所得が確保できるか検証し、不足している場合は必要な支援を確実に行う。就業環境については、農業従事者や水産業従事者が適用除外とされる労働基準法や雇用保険法の適用に向けて積極的に検討していくことも必要であると考えます。
4点目は備蓄の在り方について触れたいと思います。国民生活の安定には食料安全保障の確保が不可欠であり、不足時に強い体制の構築と安定的で効率的な備蓄輸入の確保を着実に進める必要があります。特に大半を輸入に依存する肥料、飼育料など、生産資材については国産化を後押しする施策も講じるべきと考えます。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは、ここでオンラインの委員の皆様に御発言をお願いしたいと思います。河村委員、神子田委員、横田委員の順に御発言をお願いいたします。
それでは、河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。
今回、農林水産、文教の両方とも力のこもった提言を打ち出されていて、本当に力強く思いました。全体として打ち出された方向に大いに賛同するところです。細かいところで少し意見と御質問を言わせていただければと思います。
まず農林水産についてです。今回いろいろ見せていただいて、分析がすばらしいなと、特に18ページの試算は本当にすごいなと思いました。説得力が非常にあると思います。私から農林水産について、二つ御質問があります。第1に、山川主計官もいろいろ高価格米に頼らないような形で改革を進めていくべきとおっしゃっていて、そこでにおわせてくださっているとは思うのですが、最近の米の値段はどのように決まっているのかというところが国民の目からすると非常に疑問に思うところがありまして、そこを財務省としてどう見ていらっしゃるのかをお尋ねしたいです。
第2に、昨今の令和の米騒動への対応についてです。ちょうど端境期のところもあって、新米が出てくれば徐々に落ち着く、作況は悪くないというようなことを農水省は説明していたと思うのですが、今実際店頭で見ると、東京では、5キロ入りのお米、つい1~2年ぐらい前までは普通1,700円、よほど高い銘柄でなければ1,700円、1,800円ぐらいで買えて、特売だったらもっと安いのがあったりしたところが、今は5キロで3,000円を下回るものは特売でもなかなかないような状況です。コロナ危機が明けて物価高が始まったところで、小麦などが輸入の影響もあってぐいぐい値段が上がっている中で、お米の価格は安定しており助かるという話があったのが、一変してしまいました。足もとの消費者物価で見ても、お米の値段は急激に上昇しています。それがなぜこのように平然と放置されているのかと本当に疑問に思います。有事に備えた備蓄と言いますが、なぜそれを使わなかったのか。また、13ページ水田活用の直接支払交付金のグラフがございますが、今のような単価が上がる状況だと、グラフの一番左側にある主食用米の販売収入がぐっと上がることになると思います。そのときに右側の飼料用米などの補助金の額も連動して上げなくてはいけなくなるのですか。お米の値段がこんなに高くなって、本当に国民はみんな困っているのに、農水省は何しているのか、どういうことを考えているのか。また財務省としてこうした政策運営をどう見ていらっしゃるのか。くわえて、この補助金のメカニズムをお教えいただければと思います。
また、文教について、全面的に打ち出された方向性に賛同いたします。教育の世界の方は、既存の仕組みの改革を十分に行わずに、お金が足りていないことがいけないと主張されることが多いように思います。今回の小中学校の先生方のお給料の話にしてもそうですし、前々から議論している大学向けの支援の在り方についてもそうですし、このような姿勢には疑問を抱かざるを得ません。教員の給与についても、お給料を上げるということが先ではなくて、ほかにもっとやるべき改革があるだろうということは大いに賛成いたします。是非強く打ち出していっていただきたいと思います。
ただ、言葉遣いが気になる箇所が一つありました。3ページにおいて、教員の不満の原因が、負担感が大きくて重要性が小さい業務が多過ぎるということにあると書かれており、この表現は正しいと思いますが、そこを「やりがい」という言葉で置き換えていらっしゃいますよね。やりがいが小さいと言ってしまうと、少しリスクがあるように思います。やりがいがあるかないかは働き手自身の主観で決まってくるので、こどもたちにとって、教育の世界全体にとって大事かどうかということではなく、個々の先生たちがどう感じているかという主観を容認してしまうようなところがありますので、ワーディングとしては少しリスクがあると思います。ですから括弧書きの中で書いてくださっている「負担感大・重要性小」という表現を打ち出していっていただいたほうが良いのではないのかなと感じました。
19ページに書いてあるとおり、まず働き方改革などをきちんと進めて行くことが重要であると思います。しかし、働き方改革をして、いろいろな対応をしないで済むようにすることが大事と外から言うのは簡単なのですが、実態は必ずしもそうではありません。私も、自分のこどもが小中学校に通っているときに感じましたが、こどもの世界はすごく変わってきていますよね。私たちの時代にはなかったような学級崩壊や不登校が増えてしまっています。こどもの質がすごく変わってきている。こどもの親からのクレームはすごいものもあります。先生方からすれば、こうした仕事をやらなくてよい、やらないで割り切れと言われても、目の前には生身のこどもがいるのですよね。本当につらい思いをしているこどもが目の前にいる中でそれができるかというところもあるので、そこを単にカットしろというだけではない。これは教育界、学校の閉鎖的な環境、閉鎖的な価値観がすごく影響している部分ですので、もっとオープンにやっていくべきである、仕組みを変えていくべきであるということを併せて要求していく、打ち出していくことが大事なのではないのかと思います。実際私はPTAとして学校の仕事を手伝ったことがありますが、唖然とすることが多くありました。さまざまな職場の親と一緒にやりましたが、学校ではどこの職場でもあり得ないことをやっていて、デジタル化もそうですが、何でこんな合理化もできないのかと、みんな少し関わると唖然としておりました。そうした閉鎖的な世界を変えていかなくてはいけないということも、是非あわせて打ち出していただければと思います。
また、高等教育も問題の根っこは同じようなところにあるのではないのかなと思います。31ページでまとめて打ち出してくださっていますが、全てそのとおりであると思います。特に私立大学の定員割れが急速に深刻化しているような状況で、二つ目の丸で「教育研究の質の向上努力に応じたメリハリある配分」とあり、これはそのとおりなのですが、教育研究の質の向上というところを当事者任せにしてしまわないで、やはり客観的な目を入れて評価していくということが大事なのではないかと思います。
〔土居部会長代理〕それでは、神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕神子田です。よろしくお願いします。
給料の上乗せ分を一律に引き上げるのではなく、働き方改革に応じて段階的に引き上げていく案に、基本的に賛成したいと思います。本日も企業経営的なセンスから学校経営の効率化を見る、あるいは労働者としての教員の権利を守るといった立場から様々な発言があったのですが、私は短期間ですが教育実習をした経験がありまして、そのつたない経験からお話しいたします。河村委員もおっしゃっていましたが、教員という職業は生身の人間を相手にする、非常に大変な仕事であると思います。今、学校でいじめや自殺など、様々な問題が続いているわけですが、こどもというのは日々の学校生活で様々なサインを発していると思っていて、先生がこどもに向き合う以外の仕事に忙殺されていると結局そうしたサインにも気づけません。先生たちが、いろいろなことを教えたい、人を育てたいと思って教職に就いて、やりがいを感じながら働くというのが理想なのですが、結局やりがいが感じられないのは、それだけこどもに向き合う時間が少ないからということになります。最悪の場合はこどもが自殺して、貴重な命を落としてしまう事態などとなり、一人も取り残さずに人を育てていくという学校教育の目的が達せられないことは問題ではないかと思います。
その意味で、先ほどのネガティブリストを作成しこれはやってはいけないと決めたらどうだろうかという提案には非常に賛成なのですが、現状学校の先生がやっている仕事の中でも必要性のあるものはあると思いますので、先生がやらなかったら誰もやらないとなってはいけません。外部から連れてきたり、アウトソースしたりするにしても、それにはやはりお金がかかり、学校の先生は、給料を上げることが必ずしもやりがいとか教育の質の向上につながらないということで、野放図に予算が増えることは防げると思うのですが、一方で、学校の先生が今やっている部分でやらなくなった部分をどうやって予算手当するかというところが必然的に生じてくると思うので、それについての考察も必要かと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、横田委員、お願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。農水、文科、それぞれ全般的に納得のいく御提示、御説明で、私は賛同しております。その上でいくつか意見を申し上げたいと思います。
まず農水の備蓄米についてです。この件に限らず、環境変化に合わせて予算を縮減するということが本当に苦手なのだなと改めて感じたのですが、需要量に応じて備蓄の量をきちんと算出し直していくということは非常に重要なことであると思います。今回の米不足に関連してかもしれませんが、備蓄に関連した話題も非常に盛り上がっている中、参考資料も含めて政府備蓄米の在り方など、タイムリーに御検討いただいたこと、非常にありがたく感じております。
文教は、まず義務教育についてです。教員の負担、働き方の負担減を進めることが最重要であるということ、私は大いに賛同しております。今回イギリスの例があって、国からの通知によって業務の削減をするというのも一例としてもちろんよいと思いますし、要は現場に頼っていても業務を減らし切れないのは重要な視点であると思います。49ページ、教育委員会からの文書の送付をやめる、あるいはデジタル化するだけでも業務時間数が減っていくということを踏まえると、国からも教育委員会からも、ブロックでそうした削減はしっかりと進めた上で人材の追加投入などをすることが重要であると思います。
一方で、外部人材の支援員の補助金について、今年の行革の秋のレビューでも取り上げられるところではあるのですが、執行率はかなり高い状況である一方、交付税は定員分もほとんど使い切っていないという点は非常に問題であると思っています。本当に学校現場で教員を支援する人材を増やしていこうと思っているのであれば、きっちりとこうした予算も使いながらやっていく必要があると思います。
最後に、大学の再編についてです。奨学金をもらって大学に行ける方が増えるということは非常に重要ではあると思いますが、それが大学の延命につながるということは、学生側にとってもよいことではないと思います。最近既に少子化で出生数70万人割れの話も出てきていて、向こう10年、20年を考えたときに大学の再編は致し方ないというのが見えてきております。ほかの方策で補っていくということはありますが、お金をもって延命をするというのは少し違うのかなと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは会場に戻りまして、中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。農業分野も文教・科学技術もものすごく力の入った資料で、説明もよく、大変勉強になりました。ありがとうございました。その上で、両分野についていくつか質問も含めてコメントしたいと思います。
今の農業政策は、基本的には現状維持のバイアスがものすごくかかっているのだなと思います。本来はもう少し競争力の観点でいろいろなことをしていただきたいのに、現状維持バイアスが強過ぎると思いました。今回は説明がなかったですが、漁業や林業も含めて高付加価値経済にどうやって適応していくのかということを、もう少し進めていただきたいと思います。補助金などは食料安全保障の部分だけに限るというような大胆なことができればよいと願っています。
といいますのも、私はESGストラテジストをやっているのですが、世界の農業はかなり進んでいて、TCFDやTNFDなど、環境破壊や生物多様性への影響を評価する仕組みにおいて最も悪いパフォーマンスを出しているのが農業であるということがよく言われています。それをどうやって数値化するか、あるいはどうやって産業化するか、そこまで進んでいるものに比べると、隔世の感があるのではないか思いました。なので、第一次産業をどうやって高付加価値化するか、もう少し進んだ御提案も頂きたいと思います。
その意味で、農地バンクの話が本日はなかったですが、これがどう進捗しているのか、進捗していないのであれば、どう進捗していくのか、ここも教えていただきたいと思いました。これは質問です。
文教について、面白い解析が数多くあったと思います。5ページにあったネガティブリスト、これは非常に良いことであると思う一方、これによりイギリスはどうなったかということも教えていただきたいと思います。例えば先生たちが大満足になったのか、またそれによってこどもたちの教育がよくなったのかなどについて教えていただきたいです。
次に8ページ。これも面白いなと思いました。先生の数が増えていて、さらに残業数が増えているので、掛け算するとこどもを教育してくれる時間は増えているはずで、その結果としてこどもたちのウェルビーイングは大変上がったのでしょうか。ここまで教えていただけたらなと思います。アウトカムとして成績が上がったなどのデータがあれば、もっと面白いと思います。
それから10ページです。ここもいろいろなことがあって、外部人材が増えたとて教員の在校等時間にはあまり効いてこないのであるという説明があったと思います。ここに質のばらつきの影響が大きいのではないかと思ったのですが、質の議論というのはこうした話にどうやって組み込んでいくのか、何か御私見があったら教えていただきたいなと思いました。
いずれにしましても、一律というのが間違っているのではないかと思います。先生による差、それから貢献の差をもっとつけていってよいと思いました。なので、先生たちが給料をもらってもらうのは全く異論がないし、賛成なのですが、差をつけていくということをやっていただきたいなと思います。
また、Top10%論文の話は、もう聞き飽きるぐらい毎度聞いてきているのですが、その割にはEBPMやPDCAが回って、これがどうなったのかという話はあまり聞いたことがないと思います。なので、Top10%論文が少な過ぎる、生産性を上げなくてはいけないというのは本当にそうであると思うのですが、これがどう変わっていくのか、なぜ効いてこないのか、ここについても教えていただけたらうれしいと思いました。
大変チャレンジングな解説を頂きましたが、一歩進めていただけると、なおうれしいということで、厚かましい要求をさせていただきます。以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。河村委員の御質問もありましたので、まとめて後ほど御回答いただくということにさせていただきたいと思います。
それでは、熊谷委員、お願いいたします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。
まず農林水産に関しては、食料の安定供給や農業者の経営安定化といった、いわば守りの政策と、労働生産性を向上させて農業を成長産業に変貌させるという、いわば攻めの政策との間のバランスを回復することが喫緊の課題となります。現状の農業政策が前者の守りの政策を過度に重視した結果、後者の攻めの政策が極めておろそかになってきたことは疑う余地がありません。私は米不足で米価が高止まりしている今こそが、抜本的な農業改革を行う千載一遇のチャンスであると考えています。
最も重要なポイントは、補助金を飼料米につぎ込むような形で事実上継続しているとも見られている減反政策を名実ともにやめることです。あえて誤解を恐れずに申し上げれば、専門家の間では減反政策はある種の不健全なカルテルであると言っても過言ではないという見方すらあります。減反政策をやめれば米価は下落して消費者に多大なメリットが及ぶとともに、輸出競争力が増すことが期待できます。以前から申し上げているとおり、農業の産業としての競争力強化と食料安全保障をバランスよく両立する解の一つが輸出であると思いますので、農地の集約化、大規模化や効率的な法人経営、株式会社の参入などを積極的に進めつつ、マーケットインの発想で農産品の輸出を促進するべきであると考えます。
文教・科学技術に関しては、河本主計官らしい定量的なEBPMの好事例をいくつか提示していただきまして非常に参考になりました。これらを踏まえて資料の20ページ、31ページ、42ページなどで御提案された内容に関しては全面的に賛同いたします。義務教育については闇雲に給与水準を引き上げるのではなく、実効性のある働き方改革を推進して、教員のやりがいを高めることこそが最大のポイントであると思いますし、義務教育・高等教育の両分野においてメリハリづけを徹底的に強化することが肝要です。
科学技術に関しては、厳格に基金ルールを適用するとともに、御提案された方向で論文の生産性を是非とも向上させていただきたいと考えます。
私からは以上です。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕では、遠藤委員、お願いいたします。
〔遠藤委員〕佐藤委員が仰せだったのですが、今回の両問題はムラ社会における人材不足の問題なのだと同意します。財務省がこれまでずっと考え続けてきたソリューションの根幹は普遍であると思うのですが、両主計官の多角的な実証分析、これは非常に新しくて熱の入ったもので、大いに敬意を表し、同意したいと思います。
農業においては、ITや無人化によって効率化がさらに進む可能性があるものの、教育においては限りがあり、難しい問題だと思っています。常々財審の議論で、投資的な資金と費用を分けて考えるべきという御発言が多くの委員から聞かれます。教育は国力の源泉という視点に重きを置いて、必要費用と考えれば致し方ないのかもしれないのですが、投資とみなせば、かけた費用の多寡だけでこどもの能力が変わるわけでもないので、投資リターンの不確実性が極めて高い分野であると思います。難易度が高い問題ですが、私は解を持ち合わせているわけではありません。
ただ、高等教育機関について1点申し上げたいのは、当然合従連衡、再編が進むべきという皆様の御意見に賛同します。特に定員割れしているような大学について、高専に近いような、技術の学び直しの再教育機関に転換し、それでも収益が上がらないようだったら、それはもう撤退の選択肢を検討するほかないのだろうと思っています。
こうした議論がある中で、教育の無償化を掲げている政党がたくさんありますが、これは極めて悪手で、奨学金の制度の改良によって向学心の高いこどもたちを支援するという制度であるべきと考えていますので、本日のテーマではないですが、付言したいと思います。
投資リターンの不確実性でいけば、科学技術も同じです。しかもその分配先は省庁と一部の専門家によって決められて、また、本日も資料に出ておりますが、基金として長期化して、執行が進んでいないものもたくさんあります。科学技術の特性上、資金の有効性を早期に判断することは難しい上、科学技術に関与する省庁も増えていて、安全保障との重複もあることから、こちらも難易度が高いのですが、縦割りの予算管理では全体像が見えにくいと思いますので、財務省におかれましても包括的な管理を進めていただきたいと思います。
農業については1点だけ申し上げます。先ほど佐藤委員もおっしゃられたのですが、所有者不明の土地、これは農業政策としても利用していただきたいですし、安全保障政策としても非常に重要な点であると思いますので、見直しをして頂きたいと思います。
また、食料自給率にもかかわる長期的な課題であり、農業の工業化が進んだ行き着く先かもしれないのですが、合成たんぱく質は国際競争が激化していて、安全保障の面でも非常に重要な物質となっています。こうしたイノベーションも視野に入れておく必要があるのだろうと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕では、大槻委員、お願いいたします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。本日の二つのテーマは、共通して、財政と規制制度改革の両輪で進めるべき点が多いと思っています。
まず農業についてです。従事者の減少という点につきまして、私もアグリテックの方々にお目にかかることもあるのですが、海外でのビジネスを考えている方が多いという実情がございます。それ自体もちろん悪いことではないのですが、その理由が日本の硬直的な制度やローカルな規制だったりします。ここでも御提案いただいているとおり、自立した産業でなければイノベーションは生まれづらいですし、例えば上場の制約等々もございますので、こうした人手不足の今こそ、これまで抵抗があったイノベーションが導入しやすくなるはずですし、規制も改革しやすいと思いますので、財政の問題と両輪でやっていただければと思います。
文教について、まず教員不足ですが、佐藤委員からもありましたとおり、やはり鍵はタスクシフトということで、御提案いただいた3分類の徹底、これによる業務の大規模なタスクシフトが必要であると思います。カットするということではなくて、ネガティブリスト、そしてタスクシフトを促すようなインセンティブ、もしかしたらディスインセンティブも、必要であると思います。そして改革に向けて、地方の教育委員会のローカルルールの抜本的な適正化も併せて考えるべきであると思います。
次に、給与についてです。20ページ目の提案はサポートするのですが、これは労働時間というインプットベースであって、もう少し将来的には一定程度アウトカムベースにシフトすることが必要ではないかと思います。かつてビジネススクールの学生に報酬を一律5%上げたらうれしいですかときいたら、そんなにうれしくないと言っていまして、報酬というのは生活レベルの向上ということとともに、自分の労働に対する明確なフィードバックでもあるということで考えると、成果主義ということを一定程度考えるようなことも必要なのではないかなと思います。
それから高等教育について、やはりメリハリが効いていない印象です。私学助成金の見直しは賛成でございまして、そこで何人かの委員からもあったような、既存の大学の統廃合のインセンティブ付けが必要であると思いますが、それと同時に新設校の厳格化も必要であると思います。最近のニュースでも、新設大学の応募が1桁というような状況も報じられているところでございます。
それから定員割れの私立大学についてですが、むしろ人員を整理するインセンティブを付けるべきで、今のように定員の充足率向上を目指すような制度ですと、より易しい入試で誰でも卒業できるような大学を増やすことになって、結果的に大学生の質の低下を助長することを懸念しております。
最後、研究について一言だけ申し上げます。皆様トップクラスの専門家で研究をやっているのですが、多くの時間を全くエクスパティーズがない入試管理や各種会議に割かれていると認識していますので、アウトソーシングにインセンティブを付けるような形で時間をつくってあげる、そうしたことも考えるべきではないかと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、平野委員、お願いいたします。
〔平野委員〕今回の資料はいずれも大変な力作でした。
まずは文教・科学技術から始めます。御指摘されている点や、論点の立て方、エビデンスのつけ方のどれもが秀逸だと思いますし、おおむね賛成いたします。その上で、何点か申し上げます。
まず、文教・科学技術を議論する上で重要な点は二つあります。第一に、今後日本が国際競争を生き抜くための鍵は、科学技術力とその担い手である人材です。第二に、これも非常に重要な点ですが、今や日本は多くの分野において世界をリードする立場にはなく、チャレンジャーである、つまり遅れているということです。財審の場では、資料1ページのとおり、GDP対比を標準的な指標として用いて、財政支出の多寡を論ずるわけですが、この分野に関しては、そのような論法は当を得ていないのではないかと考えています。先ほど遠藤委員から、教育投資は、投資に対するリターン、すなわちアウトカムの不確実性が高いという御指摘がありました。その御指摘自体はそのとおりだと思いますが、今の日本において、教育分野で他国に勝る投資的な支出を極めて戦略的に行わなければ、優位に立つことはおろか、キャッチアップもできないというところまで来てしまっているという意識を強く持っています。この場は、政策ごとに議論しているので、何の予算を削って、何につけるという話はやりにくいですが、教育分野においては、こういった考え方を立脚の原点にすべきであると思います。
その上で、科学技術についてですが、ここに来て、科学技術研究費が顕著に伸びていることは歓迎すべきことですし、大学ファンドが大規模な資金を集中的に投入するというこれまで全く無かった施策も高く評価しています。また、論文の生産性や国際性の問題に関する御指摘も全くそのとおりであり、改善に向けた施策に着手すべきだと思います。そのような中、1点気になっていることがあります。それは国立大学のケースにおいて、競争的資金の重視と運営費交付金の毎年1%程度の抑制という方針がここ十数年続いている中で、基礎研究への予算配分が軽視されていないかという指摘が、現場から聞こえてきているということです。もちろん、カレントな研究テーマに取り組むことは短期的な成果を収める上では有効ですが、あまりにも選択と集中一辺倒になって本当に良いのでしょうか。長期的な視点に立って息の長い研究を可能にするような仕組みを、大学の声もよく聞いていただきながら検討しなければ、数十年先、日本でノーベル賞を受賞できる学者はいなくなってしまう可能性があるということもあえて申し上げておきたいと思います。
次に、教育についてです。義務教育に対する今回の問題提起は、タスクシフトの問題も含めて賛同いたします。特に何名かの委員が言及された、20ページ、21ページの調整枠の段階的な引上げは非常にすぐれた施策であると思います。具体的に着手するとなると難しさはあるとは思いますが、働き方改革を進める中で、残業時間を減らしながら調整枠を引き上げて、10%に達したら残業代にきちんと移行するというアイデアは素晴らしいと思います。これを進める中で、働き方改革の進捗度を引上げの条件にするという点は、今後の議論の焦点になると思いますが、大槻委員が御指摘されていたとおり、何らかのインセンティブ、ディスインセンティブをセットにしなければ進まないと思います。したがって、打出しとしては今回のような革新的な内容を主張しても良いと思いました。ただし、その場合にも、残業時間の見える化を一丁目一番地として取り組む必要があります。その後、目標を設定した上で、施策を打ち出すべきだと思います。
もう一つは、こちらも大槻委員が御発言されておりましたが、成果連動の仕組みを入れるべきです。教員もその例外であるわけがないし、それが働き方改革にもつながると思います。以上が教育です。
農業については一言申し上げます。これも非常に良い御指摘が多く見られ、全面的に賛同したいです。特に自立した産業へというアプローチを支持します。米の単位当たりの収穫量が、この半世紀で世界3位から今16位にまで後退したことは、深刻な問題だと思います。食料安全保障を進める上でも輸出競争力をつける必要があり、農業の生産性を大幅に引き上げる必要があります。農地の集約や企業の参入を是非積極的に進めていただきたいです。
その意味で、本年5月の基本法の改正で食料安全保障の確保などが盛り込まれたのは極めてタイムリーだったと思います。これから、基本方針や基本計画が策定されることになりますが、申し上げておきたいのは、農業は5年や10年単位ではなかなか変わらないということです。確かに計画は5年でつくるものですが、ゴールを少し長いレンジで定めた上で、そこに向けたトランジションにどう取り組んでいくかが大事だと思います。すなわち長期的な視点に立って、何を目指して、何をどう変えるのか。例えば、食料安全保障に関していえば、最適な農産物の構成をどうするのか、国内生産、輸入、備蓄、輸出の比率をどうするのかといった計画を策定した上で、国民の合意を形成することが重要です。これは、トランジションの問題という観点で環境問題と似ていると思います。一気に理想的な姿にはならないし、相当難しい問題ですから、例えば2050年を見据えた長期計画を策定すべきではないかと考えています。
以上です。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕それでは、木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。御指摘された内容は基本的におっしゃられたとおりであると思います。その上で、農林水産と文教について、それぞれ1点ずつコメントさせていただきたいと思います。
まず農林水産ですが、今年皆様御指摘されたように米高騰が話題になりました。原因としてはインバウンドの増加や南海トラフの臨時情報による買いだめなどが指摘されたのですが、その根底には日本の農政の構造的な問題があったのではないかという気がします。要は米価の維持を優先するあまりに多額の財政資金を投入して減反や生産調整を実施して、その結果、日本農業の足腰が弱まって、結局生産力が脆弱になってしまったということがあるのではないかなという気がします。むしろ関税を低くして、補助金行政を改めて、農家の大規模化、集約化を図って農業の足腰を強めて、日本食の拡大が見込める海外市場に重点を置いて輸出の拡大に努める、そうしたような農政の転換を意識した動きの一つがTPPだったと思います。ところが、減反廃止も名ばかりで、結局生産調整が続いて、農家の大規模化や集約化も進まず、零細農家が温存されてしまっていることが今回のような農政の脆弱、生産力の脆弱な結果を生み出してしまったという気がします。
アメリカをはじめとした最近の保護主義的な動き、あるいは経済安全保障を理由にして、過去TPPで目指したような流れが逆回転しているような気がしますが、それが果たして妥当なのでしょうか。農業の効率化や集約化を進めていくことが最終的に消費者にとってもメリットとなり、国益となるのではないかという気がします。政治的な難しさがいろいろあるということは十分承知していますが、今年の米の高騰問題を教訓に農業の構造改革を是非進めていただきたいなと思います。
次に、文教についてです。今話題になっています、文科省の給与の増額方針に関して、財務省案として業務の削減などを条件につけたという案ですが、財務省がこうした独自の案を示されるというのは異例であると思います。しかし、こうしたこと自体が議論をこれから建設的な内容にしていくものであると思いますので、もっと積極的にやっていただいてよいのではないかと思います。
その上で、文科省の案は、給与を増やせば教職の魅力が高まってすぐれた人材が確保できるという論法になっていますが、財務省案で指摘されているとおり、給与を上げても業務が減らなければ結局は教員の不満は解消せず、なり手不足と言われる問題も改善されないのではないかという気がします。その業務削減ですが、自主的な取組に任せておいてもなかなか進まないというのは資料でも示されたとおりで、特に資料の8ページで例示されていましたように、児童生徒1人当たりの教員数が増えたのに時間外の在校時間、いわゆる残業が減るどころか、逆に増えている。しかも15年以上かけても改善しないというのは驚きですね。まして給与が先に上がってしまえば、業務を減らすインセンティブがますます働かなくなるのではないかということは論を待ちません。お金を出すのに条件をつけるというのは少し強引なイメージを持たれるかもしれませんが、ここまで来たら思い切った手を打つというのも必要であると思います。今後の予算編成では、単に給与を上げるというのではなくて、業務削減とパッケージで議論して、最終的に教員という仕事の魅力を高めて、こどもたちが通いたくなる学校づくりという大きな目標に向かって、そうした方向性を示せるような内容にしていただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕つづいて堀委員、どうぞお願いいたします。
〔堀委員〕ありがとうございます。
義務教育と高等教育、科学技術について、1点ずつお話ししたいと思います。
まずは義務教育についてです。業務とリソースのアンバランスに着目して、いわゆる3分類を適用するというのは理解できますし、ワーク・エンゲージメントの低い業務を減らしていくのは教員の疲弊を減らして教育の質を確保することに、一定の貢献をするのではないかと思っています。タスクシフト、タスクシェアという観点からも教師が担うべきでないものをほかに移していくというのも理解できます。
ただ、先ほどワーディングの件でほかの委員からもご指摘がありましたが、「やりがいの小さい業務」という表現がありました。やりがいの小さい業務であっても必要なものはあると思います。それを誰がするのか。あるいは、やりがいの小さいものをほかの職の方に押しつけてよいのか、ほかの職の方であればそれは対応できるのかというと、人口減少が進んでいる中で、義務教育現場に公務員の方がいらっしゃると思いますが、その職員数そのものも減っていますので、業務の在り方そのものを見直していくという視点も必要かと思っています。児童を取り巻く環境そのものも変わっていますし、これまで家族が担っていたことが学校に求められるようになっていたり、あるいは特別なニーズのある教育を受けるこどもの割合が国際比較を見ても日本は特徴的なものになっていたりすると思いますが、そもそも教育の在り方を考えていく必要があると思います。もちろん給与の見直しや働き方改革は非常に重要なのですが、DXを進めるということも同時に進めていく必要があると思います。
また、学校単位で必要な業務というのはあると思いますので、人口動態に合わせて学校数そのものを減らしていかないとうまくいかないところもあると思います。そこを見ないで通常の今までと同じやり方だけでは難しいところがあるのではないかなと思いました。
高等教育についてです。18歳人口が減少しているのは、私も大学の教員をしておりますので理解していますし、当然大学の統合・縮小・撤退を促進していくことも必要になってくると思います。先ほど大学全体としての規模の適正化を図っていくことが課題という議論もありましたが、佐藤委員のおっしゃるとおりであると思います。学部設置の規制はかなり敷かれていますが、撤退のルールはなかったと思いますので、廃止・撤退を進めるならば、進めやすいようなルールをつくっていくことが必要かなと思います。
最後に科学技術についてです。研究活動の国際性が低く乗り遅れている、あるいは生産性が低いということが指摘されていますが、昨今の文科省の政策によって科研費など、研究助成で国際性を要件にしたり、あるいは国際化の取組を政策的に誘導したりしていることはすばらしいとは思います。大学ファンドの創設などの取り組みも整備されてきていると思います。ただ、正直それだけでは全く足りないというか、お金の問題ではなくて、研究体制、研究スタッフ、研究環境体制が海外と比べて日本は圧倒的に劣っていると思います。日本の経済そのものが低迷しているということもあると思いますが、日本は研究分野においても後進的になっているという危機意識を持っておりますが、PDCAという視点からどのように科学技術政策を進めていくのかを検討していく必要があると思います。論文の生産性のKPIでTop10%論文を挙げられていますが、これだけでは被引用数を伸ばしていくことがメインになってしまうと思います。そもそもハゲタカジャーナルというものもありますが、指標を解釈するには、どこの国、雑誌から引用されているのかも含め注意深くて見ていく必要があるでしょう。このKPIの数字だけが一人歩きしてしまっても何が達成されたのか分からなくなる気がしますので、研究の生産性という場合、評価指標、方法で結果は変動しますので、どのように日本が向かっていくべきかというところも含めて将来的にはKPIを考えていく必要があるのではないかなと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、秋池委員、お願いいたします。
〔秋池委員〕全体に事実に基づいた分析をしていただいて、大変勉強になる全体像だったと思います。
二つございます。一つは義務教育についてです。教員の報酬水準について、もちろん働く人に対してその時代にふさわしい報酬の水準であることは非常に重要であると思っているのですが、4ページを見ますとほとんどの業務のエンゲージメントが低くなっています。結局、自分のクラスを教えたり、授業をしたり、それから部活を指導したりするというようなものは、教職に就く前からイメージしている業務であり、エンゲージメントが高いのですが、それ以外はみんな低いという結果になっている。どのように教員が育成されているかということを私は存じ上げないのですが、これはエンゲージメントが低い業務をやるべきか否かではなくて、こういった仕事もあるということを教育課程の中などで理解しておくことが大事なのではないかと思いました。
この中で、教員の忙しさというのはよく言われるのですが、事務職員の方々がどのぐらいお忙しいのかなと思うところもございまして、もし本当にこれらの業務が教員がすべきことではないのであれば、むしろ専門家に依頼する、あるいは教員よりも事務職員の方を増やすほうが、より教員も落ち着いて自分の仕事に集中できるのではないか、なども考え得るのではないかと思いました。
もう一つは、科学技術についてです。研究の生産性が低いということで、例えばTop10%論文が少ないということがありますが、もちろんKPIはすごく難しくて、変な設定をするとそこにばかり走ってしまって、全体としてよい方向に行かないということもあります。しかし、ある程度の規模を持った研究機関であれば、例えば何年かに一度はTop10%論文をどのくらい出すというような目標を掲げて、そこに向かって研究機関のトップの方が、研究開発費をメリハリつけて配分するという形にしていかないといけないのではないかと思います。そうでないと研究開発費を増やしたとしても、やはり薄く広く使われるだけになってしまうと思うのですが、そうした目標を持っていれば、その運営をする方が、今Top10%に行けそうな人、それから5年後、10年後に行きそうな人、それを支えるための基礎研究というような形で、より良い研究費の配分について考えるようになるのではないかということを考えました。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問を頂いておりますので、御質問の御回答につきまして各主計官からそれぞれお答えを頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
〔山川主計官〕いろいろな御意見ありがとうございました。農林水産についてです。
まず河村委員から現在の米の値段というものをどう見ているかということと、補助金のつくり方について御質問があったと思います。
今の米の値段については、プレゼンでも申し上げましたとおり、米の分野はほかの分野と違って、いわゆる需給の調整や生産調整があることにはあるのですが、基本的には価格自体はマーケットで決まっておりますので、その価格について私どもから申し上げることは基本的にはありません。そうした意味では直接的なお答えにはなっていないのかもしれませんが、歴史を見てみるのがやはりよいと思いまして、値段は高いときもあれば安いときもある、高騰するときもあれば暴落するときもあるということで、安いものが長く続くとか、高いものが長く続くとか、少なくともこれまでの歴史を見る限り、そうしたことではないだろうなと思っています。
もう一つ、補助金のつくり方についてでございます。今の高い米価につられて補助金の単価もより高くなるのではないかという御懸念であるかと思いますが、当然そうした制度にするつもりはございません。今も申し上げましたとおり、価格が高いときも低いときもありますので、ほかにもいろいろな要素を加味して補助金の高さというものは考えていきたいと思います。ありがとうございました。
もう1点、中空委員から農地バンクはどうなっているのかという質問がございました。参考資料の15ページが農地中間管理機構の資料です。一つ目の丸を御覧いただければと思いますが、委員が懸念されるとおり、目標の集積率8割に対して現状は6割にとどまっています。さらに今後より改革が必要だなと思われるのが一つ目の丸の最後の部分です。集積は目標があるもののそれが達成されていないのですが、集めるだけではもちろん不十分で、それを利用する人にうまく分配していかないといけません。そうした意味での集約率の定義や測定方法、目標水準等がないものですから、そうしたことはきちんと確立していく必要があると思います。
ただ、これを推し進める力が少なくとも二つあると思っています。一つは先ほど宮島委員の話にもありましたが、この丸の中にあるとおり10年後のこの地域の農地利用や担い手の在り方について、これは短期の話ですが、地域計画というものを早々につくることになっていますので、ここで大体どの人がどこをどうするというのが結構見えてくるのであると思います。
もう一つが本体資料の22ページ。これも先ほどの宮島委員の言葉を借りれば、地域計画を今つくることになっていますが、地域によっては検討体制が弱っていて、計画の策定すらもできなくなっているという声もあります。こうした急激な減少自体はピンチなのですが、逆にそれを経ることによって農地の集積・集約が進めやすくなるという側面があります。これは先ほどの地域計画と違って20年という中長期のスパンですが、まずはその二つがあるので、それなりに進むだろうと思います。また、進まないところは我々がしっかり検証していかないといけないと思っております。
以上です。
〔河本主計官〕まず芳野委員に頂きました御発言の中で、これは確かに先々週の日曜日ぐらいに突然、全て残業代にすぐ移行するという報道が出たのですが、あの報道は全く事実ではなくて、あくまで財務省としては調整額を10%水準まで着実に上げていくということを提案しています。ですから、財務省案は、中央教育審議会の中で描かれたように、10%以上に引き上げていくということをしっかり加味したものになってございますし、そこは誤解のないようにしていただきたいと思っています。
先ほどクラス規模について、特別支援学級を含めるかどうかという問題がございました。7ページを見ていただきますと、ほかの国がインクルーシブ教育といって普通の学級でいわゆる障害のある子たちを教えているというのに比べますと、日本は特別支援学級として、クラスを分けてそこに手厚い教員の配置をしております。そこをあえて排除して比べるべきとは我々はあまり考えておらず、上に書いてある点線のように、しっかりと含めて比べるべきであると思ってございます。
それから、芳野委員の過労死ラインについての御指摘は本当にそのとおりであると思います。20時間や47時間というのはあくまで平均で、採点をしながらコメントを書いて、いろいろなことを一生懸命頑張っている教師の方々が数えきれないほどいらっしゃると思います。だからこそ過労死ラインをオーバーしている状況をいかに改善していくか、いかに働き方をしっかり戻していくかということが一番大事であると思っています。恐らく我々の考えは、連合の方々が普段おっしゃっていることとそれほど違わないのではないかと思っておりますので、また御検討いただければと思っております。
何人かの委員から頂きましたとおり、これをしなければ予算をあげないというような捉えられ方もされるかもしれませんが、あくまで先ほど申し上げたとおり、これは隙間を埋めていくために上と下の両方から努力し、進捗管理を財務省と文科省で一緒にやりましょうというものです。お金をあげないということではなくて、もし途中で進まない場合には、その財源を使ってもっと別のことに使いましょうということですので、我々財務省がお金をケチりたいから言っているわけではないということを御理解いただければと思っています。
それから、中空委員から頂きましたネガティブリストを採用したイギリスがどうなったかということでございますが、イギリスは結果として教師と事務員の割合が大体半々になっています。学校職員の半分が事務員で半分が教師となり、教師はより授業に専念することになっていますが、ただ、イギリスが日本と少し違うのはナショナルカリキュラムで決められている部分が教育全体の50%になっています。ですから残り50%は教師が比較的自由に裁量で授業内容を決めています。ナショナルカリキュラムの不足部分を埋めるのが教師であるからこそ、イギリスでは教師の自由度が高くなったがゆえに、地域によって、あるいは所得によって教育に大きな差が生じてしまっているという実態もございます。
また、人が増えて残業が増えて、成績が上がったのかどうかというアウトカムについて御質問いただきました。なかなか難しくて、確かに人が増えて残業も増えている一方で、先ほど何人かの委員からご指摘を頂きました不登校やいじめも増えていて、また外国人も増えているという状況への対処もあります。また、これから我々も少し考え直さなければいけないかもしれませんが、道徳、プログラミング教育、がん教育、ゲノム教育、また金融経済教育など様々なものを学校に押しつけている部分もあり、教育現場に負荷がかかっていることも事実です。なかなか人を増やしても時間を増やしても仕事が減っていかないというのは今の学校現場の偽らざる実態かと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕以上で本日の議題は終了させていただきたいと存じます。
本日の会議の内容につきましては、会議後の記者会見で御紹介させていただくということにさせていただきます。詳細につきましては、後日、委員の皆様に御確認の上、議事録を公開させていただきます。
次回は11月13日(水)9時から財政制度分科会を開催いたしまして、議題は「社会保障」という予定になっております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、本日はこれにて閉会いたします。御多用中のところ、ありがとうございました。
午後5時00分閉会