財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年11月1日(金)09:00~11:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
- 国内投資・中小企業等
- 外交・デジタル
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寬也 |
瀬戸大臣政務官 渡邊政策立案総括審議官 前田次長 中山次長 吉野次長 端本文書課長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村俊之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 末澤豪謙 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 神子田章博 吉川洋 |
午前09時00分開会
〔増田分科会長代理〕時間になりましたので、これから会議を始めたいと思いますが、本日はカメラが入りますので、このままでお待ちいただきたいと思います。それでは、お願いします。
(報道カメラ 入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には、御多用中のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議題は、国内投資・中小企業等及び外交・デジタルでございます。
間もなく瀬戸政務官もこちらにお越しいただけると、このようにお聞きしているところでございます。
それでは、そろそろ報道の方は、御退出をお願いしたいと思います。
(報道カメラ 退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、議事に入ります。まず寺﨑主計官から、国内投資・中小企業等について、説明をお願いいたします。
〔寺﨑主計官〕よろしくお願いします。経産担当主計官の寺﨑でございます。
では、早速でございますが、国内投資・中小企業等という資料に沿って御説明差し上げたいと思います。今回、大きく分けて半導体支援についてと中小企業等について、御説明したいと思います。
まず半導体支援についてでございます。
1ページでございます。これまでの産業政策につきましては、出融資による支援、規制緩和、それから特に大企業については、下に書いていますが、税制措置を中心に講じられてきております。ただ、下の棒グラフにありますとおり、コロナの影響もありまして、補助金が増大する中で、近年は経済安全保障やGXの対応といった産業政策のフェーズに変化が見られております。下のグラフで申し上げますと、黄色い部分になりますが、半導体支援もそのうちの一つと考えられております。
2ページ、半導体支援についての背景を申し上げたいと思います。半導体支援の背景といたしましては、左側にいくつか写真が貼られておりますが、半導体の用途や種類は多岐にわたりまして、デジタル社会における基盤となってございます。また、右の表にございますとおり、これがよいことか悪いことかは別にして、諸外国においても半導体については産業支援という形で様々な支援が行われており、国際競争上日本も支援が必要になってございます。
3ページ、世界の半導体市場が拡大し続ける中で、日本の半導体産業は1990年代以降徐々に地位が低下しており、その巻き返しが求められております。
4ページです。半導体政策、半導体の機能向上はGXにも役立つということでございます。左上にありますとおり、デジタル技術の進化によって世界における電力需要の増加が見込まれているという中で、半導体の高性能化が重要でございます。高集積化、デザイン、設計の最適化、また、素材の進化などの半導体の高性能化を進めることで、機能向上によってエネルギー効率が改善します。
5ページです。これからが本題で、半導体支援の今後の課題をいくつか申し上げたいと思っております。下の表にございますとおり、これまでの半導体支援につきましては、令和3年度補正予算、令和4年度第2次補正予算、令和5年度第1次補正予算において、累計3.9兆円の支援を行ってきております。毎年度の補正予算を編成する過程で、支援の必要性や支援額を都度議論で決定しておりまして、必ずしも中期的な戦略に立った議論がなされてきたとは言えません。この点、民間部門における予見可能性を高めるためにも、必要な財源を確保しながら、複数年度の支援戦略を策定すべきと考えております。骨太2024では、必要な財源を確保しながら、複数年度にわたり計画的に支援を行うということ、そしてその際には、必要な出融資の活用拡大等、支援手法の多様化の検討を進めることとされておりまして、この方針に沿って検討を進めております。
次の6ページです。複数年度にわたる支援を検討するに当たって参考になる例としては、GXの例があると考えております。GX支援においては、複数年度にわたる戦略を策定して、GX推進法に基づく投資促進策の基本原則に基づいて、今後10年間で20兆円規模の政府支援を行うとされておりますし、またGX機構を設立し、補助金だけでなく出資や保証も活用しつつ、支援を行っているというところでございます。
7ページです。アメリカの例を見ますと、財政支援の総額を法律上で明示しており、また、融資、政府保証についても、補助金と合わせてプロジェクト総額の35%を上限として実施できるという旨を規定しておりまして、金融支援の位置付けが明確化されてございます。
8ページです。支援基準をしっかり策定しなくてはならないということでございます。これまでの支援は、左側にありますとおり、3つございます。まず、特定半導体基金、これは最先端の半導体の量産支援です。次に、経済安全保障基金、これはパワー半導体やレガシー半導体などやや古い半導体を支援するもの。最後に、ポスト5G基金、こちらはいわゆる次世代の半導体の研究開発を支援するものです。この三つの基金を通じまして、異なる政策目標、基準の下で支援を行っているところでございます。
一方で、右側を御覧いただきますと、GXについては、民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業を対象とする、また、産業競争力強化・経済成長及び排出削減のいずれの実現にも貢献するものを優先順位の高いものから支援するため、支援の基準や対象となる事業の優先順位を明確化して支援するということが定められているということでございます。
半導体支援につきましても、例えば我が国の産業競争力の強化、経済安全保障及びエネルギー政策上の観点から必要不可欠か、また、開発に伴う不確実性や巨大な投資規模に鑑みて、民間のみでリスクを負い切れないかといった観点から、基準を定めるべきではないかと考えております。
9ページです。進捗管理とPDCAが必要であると考えております。特に個別の支援策についてです。特定個社の話ですので申し上げられないですが、現在研究開発段階にある事業が量産体制整備の段階になりますと、現在の仕組みでは、下の表にありますポスト5G基金による支援から特定半導体基金による支援となりまして、事業計画の認定や事業進捗の確認が不十分なことになってしまいます。今後の支援に際しては、第三者によるチェックの下で適切なマイルストーンを設定して、その達成状況を確認しながら事業計画の見直しなどを判断する枠組み、こうしたものが必要ではないかと考えております。
10ページです。複数年度の支援の在り方についてですが、これまで半導体の支援については、基金へ予算措置を行った上で、各々の企業に対して複数年度の支援を実施しております。原資の大宗を国債で調達し、一度に多額の資金を基金に積み増すという手法になりますので、基金に資金が滞留する一方で金利負担が発生しているということでございます。今後、「金利のある世界」になる中で金利負担を抑制する観点からも、今後の支援に当たっては、国庫債務負担行為の活用などにより資金効率性を高めていくべきであろうと考えております。
11ページです。支援手法を多様化させるべきと考えております。半導体事業者につきましては、下に図をつくらせていただいておりますが、シード段階、製品開発、実証段階、そして、量産体制を構築するアーリーステージ、それから、黒字化への道筋などが見えてくるミドルからレイターステージ、最後に、十分な収益が確保される段階というように、ステージごとに進捗していくと考えております。
シード段階につきましては、民間ではリスクを負い切れないということもありますので、政府による補助金や委託事業、いわゆるグラントによる支援が必要であろうかと考えております。しかし、アーリーステージ、それから、ミドル、レイターステージと進むに従って、例えば政府の出資、債務保証、さらには民間からの出資を募り、最終的には十分な収益が確保されれば、民間の融資によってフライしてもらうということを念頭に行わなければいけないと考えております。
次に中小企業についてでございます。13ページです。中小企業につきましては、全事業者の99%超、全従業員数の約70%、全付加価値の50%超を占めており、日本経済にとって重要な存在であるということが言えると思います。一方、中小企業対策費はコロナ禍において未曽有の水準まで増加しておりまして、令和5年度においてもコロナ禍前の平時と比較すると依然として高い水準になっております。
14ページです。左上にありますとおり、中小企業一者当たりの中小企業対策費は、近年中小企業の数が減少していることもありまして、当初予算ベースで見てもリーマンショック以前から増加傾向にございます。また、右上の表にございますとおり、生産性向上を目的とした多額の補助金により相当程度の支援が行われているところでございますが、左下のグラフにございますとおり、中小企業の生産性は横ばいで推移しておりまして、大企業との差が拡大するという状況にございます。一方、右下のグラフですが、企業の倒産件数は、特にコロナ禍において減少しておりまして、これまでの補助金による支援が事業の継続にはつながったものの、かえって経済活動における資源の効率的再配分を抑制している可能性にも留意しなければいけないと考えております。
16ページです。中小企業への支援の在り方として、左に書いてある分析を御紹介したいと思います。小規模事業者支援目的の補助金につきまして、申請して実際に受給した事業者と、申請したが非受給だった事業者の間では業績に有意差は認められなかったという研究成果です。一方、申請事業者は非申請事業者と比べてアウトカムが高かったということで、申請自体に効果があって、申請過程が課題の棚卸しの機会となって、課題解決につながったと推測されます。これからの中小企業の支援につきましては、単に補助金などの直接的な手段によるのではなくて、自主的な経営改善に取り組むための支援体制の整備、価格転嫁対策のような中小企業が自ら収益を上げられるような体制の整備に、軸足を置いていくべきであろうと考えております。
次に17ページです。コロナ関係の資金繰り支援につきましては、左下にございますとおり、既に終了しているものもございますが、いくつかまだ残されており、残る特例についても正常化が必要であると考えております。
18ページです。最後2枚ほど個別事業についての資料をつけさせていただいております。グローバルサウス事業と言われる支援でございますが、これはグローバルサウスと言われる国々に対して、企業のフィージビリティースタディーや実証事業を実施する場合にそれを支援する事業でございます。令和5年度補正予算において1,400億円を措置しております。
こうした事業につきましては、本来、自己調達によって必要十分な投資が見込めないような中小企業やスタートアップの取組を後押しするべきものであると考えますが、左下のリストにございますとおり、支援対象はほとんど大企業になってきてしまっております。企業の海外展開は、従来、右の図にありますとおり、自律的な取組によって行われておりまして、政府としては、JBIC、JICAなどの金融支援を通じて役割を果たしてきたところでございます。大型の補助金の導入が既存の公的支援の機能、ガバナンスを損なわないように気をつけていくべきだろうと考えます。
本事業につきましては、本年度も大幅な事業規模の拡大の要望が出されておりますが、まずは政策目的に鑑みて、成果がきちんと上がっているかどうか、これを検証するべきであろうと考えます。
最後に19ページです。このグローバルサウス事業につきましては、補助事業でございますので、当該補助金がなければ実施できなかった事業に追加的な効果が見込まれるようなものでなければならないと考えております。この点、右に個社名を伏せる関係でA社として関連報道等を載せさせていただいております。このA社はインド、ベトナム、モンゴルに健診センターを置くという事業を既に展開していたところでございますが、このグローバルサウス事業を活用して、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシアに同様の事業を展開しているということでございます。企業にとっては、海外進出のためのコストを抑制するために補助金を活用するのは当然のことでございますので、このA社の判断が不公正であるということはございませんが、大企業を含めて補助金を活用できるスキームとした結果として、真に必要とは言い難い公的支援、言わば、追金になってしまっているのではないかと考えております。
説明は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続きまして、松本主計官から外交・デジタルについて説明をお願いします。
〔松本(千)主計官〕外交とデジタルを担当しております主計官の松本です。よろしくお願いいたします。それでは、順番に御説明を差し上げたいと思います。
まず外交から。2ページです。国際情勢につきましては、まさに、この地図にお示ししているとおり、近年、ロシアによるウクライナ侵攻や、中国による力での一方的な現状変更の試み、中露による領空侵犯、また、北朝鮮の問題等々、我が国を取り巻く国際情勢は厳しさと複雑さを増しております。
3ページです。予算面の話に移りますが、こうした安全保障環境の中、外務省の予算面では、OSA、偽情報の拡散などの情報戦への対応、また、情報セキュリティの強化などの優先度が増しております。OSAについて補足いたしますと、資料の右側にございますとおり、“Official Security Assistance”の略であり、これは同志国の抑止力向上を図るため、同志国の軍等に行う新たな無償による資金協力の枠組みです。令和5年度予算に20億円でスタートし、こちらの数字にございますように、予算額は増加傾向にあります。
ここで外務省予算全体を見ますと、こちらの資料の左側にあるとおり、無償資金やJICA運営費交付金といったODA、国際機関への分担金・拠出金、人件費の割合が高く、柔軟に使える政策的な経費は僅か2割程度となっております。したがいまして、現下の国際環境での優先事項に対応するためには、予算の一層のメリハリ付けが必要と考えております。
ただ今申し上げたような問題意識の下で、4ページにて、ODAについて申し上げたいと思います。まず、最初の丸にありますとおり、ODA自体については、気候変動等のグローバルな課題解決への貢献、グローバルサウス諸国との関係強化等の観点から、引き続き重要な外交ツールであるとは考えております。
一方、下の左側のチャートにお示ししているとおり、世界経済に占める我が国のシェアは、この青い点線のとおり、これまで大きく縮小しており、また、我が国の長年の支援も背景に、特にアジアの主要なODA受益国は急成長を遂げ、インドネシアやタイに至っては、いわゆる先進国グループとも言われるOECDへの加盟を申請するまでに至っております。
くわえて、右側の表でお示ししているとおり、我が国の財政状況が世界最悪の水準にある中で、日本のODAの水準は、対GNI比で0.44%と、DACという先進国の平均0.37%よりも若干高く、国際的な水準に比して何ら遜色はないという状況でございます。こうしたことを踏まえますと、ODAについては、量的拡充を図るのではなく、日本経済への裨益や外交上の重要性を吟味の上、一層戦略的かつ効率的に活用していくことが必要と考えております。
5ページです。どのようにして効率的にODAを実施していくかという観点から、民間資金の動員について申し上げます。近年、途上国に対しては、ODAを大きく上回る量の民間資金が流入しており、開発における民間資金動員の重要性が高まっております。こうした中、外務省の有識者会議が本年7月に公表した報告書では、民間資金を一層動員できるよう、JICAの機能を拡充してプロジェクトに対する信用保証やファンドの劣後階層への出資等を可能とすることなどが提言されております。右側の二つのチャートでお示ししているとおり、世界銀行やアメリカの援助機関では、既に信用保証等の取組を近年拡大しており、限定的な財政コストで民間資金を動員しております。こうした国外の事例も参考にしつつ、我が国においても支援手法を多様化し民間資金の動員を強化すれば、財政負担を抑えつつODA事業の実質的な規模拡大を図ることができるのではないかと考えております。
6ページです。引き続きODAの効率的な実施という文脈で、無償資金協力における滞留資金の活用について申し上げます。これは従来から財審でも御指摘いただいている点ではありますが、無償資金協力に関しましては、支払前資金という、国からJICAに交付済みだが、いまだ執行されていない資金が一定額存在しております。足もとでは、左のグラフにございますように、若干減少はしておりますが1,561億円となっており、引き続き年間の無償資金予算額に匹敵するぐらいの高水準でございますし、3年超にわたり滞留している金額については増加傾向にあります。こうした状況を踏まえますと、進捗の見通しが立たない案件に係る資金については、JICAで滞留したままにするのではなく、国庫返納や他の案件への有効活用ができるよう、柔軟性のある制度に見直していくことが必要ではないかと考えております。柔軟性のある制度と申し上げましたが、資料右側にございますとおり、現行のJICA法では、国庫返納や他の案件への転用ができるのは、事業が完了した場合に限定されており、このため、長年にわたって停滞し進捗の見通しが立たないような案件に係る資金については現行法上では国庫返納等はできないことから、こうした問題を解決するためには法改正が必要となっております。
7ページ、国際機関に対する評価結果の活用です。外務省では、国際機関の任意拠出金について、毎年、評価を実施しておりますが、下のグラフでも示しているように、評価結果を見ると、C以下の低評価となっている国際機関が1件のみであり、また、予算額ベースで見ると9割超がAマイナス以上の高評価となっております。このため、この評価結果を使って予算のメリハリ付けをするということは、なかなか限界がございます。また、下にありますとおり、平均以下の評価であるB以下について見ると、30件のうち23件は3年連続B評価となっていますが、右下にございますとおり、ここ2年間でこれらの機関への拠出総額は増加しております。このように、評価結果を予算編成へ反映させるという点については、引き続き課題があると考えております。
次に8ページ、広報文化関係です。広報文化外交については、親日派・知日派の育成等の観点から行われていますが、交流事業・招聘事業などの事業が乱立しております。資料にいくつか事例を紹介しておりますが、政策目標が類似すると思われる事業が見受けられるほか、右側の直近の予算執行調査の結果の抜粋にございますとおり、事業の目標設定や事業参加者との関係継続に課題がある事業も見受けられます。したがいまして、類似する事業を整理・統合することや、事業の効果を可能な限り定量的かつ適切に設定すること、事業参加者との関係を長期的に継続していくことなどを通じて、こうした交流事業の効果を向上させていく余地が大きいのではないかと考えております。
次にデジタル関係の予算について申し上げます。10ページを御覧ください。政府の情報システムは、マイナンバー関係システムのようにデジタル庁自身が整備・運用するシステムと、各府省が整備・運用するシステムに大別されます。デジタル庁ができる以前、情報システム予算は各府省がばらばらに予算要求をし、各府省に予算計上されておりましたが、現在ではデジタル庁が一元的にプロジェクト監理を行う観点から、各府省のシステムを含め、情報システム予算をデジタル庁に一括計上されております。右に予算の推移のグラフがございますが、デジタル庁設置以降、各業務での一層のデジタル化進展を背景に、政府の情報システム予算は増加傾向にあります。
12ページに飛びまして、情報システム予算の課題について申し上げます。政府としては、既存の情報システムに係る運用等経費の3割削減を掲げて取り組んでおりますが、先ほど申し上げたように、新規システムへの投資等の影響により、情報システム予算の総額は増加しております。デジタル化が今後とも進展していく中で、新規のシステム投資は継続的に発生すると思われますが、厳しい財政状況を踏まえれば、次のような取組を行いながら情報システム経費の総額を管理すべきではないかと考えております。
第1に、デジタル庁において、一括計上を導入した際に期待された役割を最大限発揮して、ライフサイクルを通じたコストの最適化を図るということです。一括計上導入時の期待と今申し上げましたが、これについては、下の右側に2020年当時の期待が書かれております。情報システム予算には、重複投資や曖昧な作業発注、いわゆるベンダーロックイン等々の課題や特殊性があることから、専門性を持つ体制を整備して対応する、これがそもそもの一括計上の趣旨ということです。
第2に、行政事業レビューシートなどを活用の上、必要性の低下した情報システムについて、その運用の中止も含め見直しを検討するとともに、システム化を通じた行政の効率化を図るということでございます。次のページ以降で、それぞれについてもう少し詳しく申し上げたいと思います。
13ページ、ライフサイクルを通じたコストの最適化についてです。下の表で、ライフサイクル各段階の課題が整理されておりますが、システムの運用・整備については、例えば、準備時にシステムの要件が曖昧であるため正確な見積りが得られないという課題がございます。また、調達時に複数者の競争が生じず一者入札となり、契約額が高止まるという課題もございます。下のグラフのとおり、今でも39%が一者入札となっております。あとはシステムの運用時に利用状況を反映した見直しが行われないという課題もございます。例えばガバメントクラウドを活用したシステムについて、利用状況を勘案せず想定したピークのまま、支払いを続けているような事例もあります。デジタル庁におかれては、まさに一括計上導入時の期待を踏まえて、ライフサイクルの各段階でシステムの見直し等に取り組む必要があると考えております。
最後に、14ページにて「見える化」を通じたシステムの見直しについて申し上げます。
デジタル庁や各府省は、今年の夏から各府省の情報システムについても、行政事業レビューシートの作成・公表を開始しました。昨年までは、一括計上した各府省システムについて、個別の行政事業レビューシートを作成してこなかったところ、これによって費用の見える化については一歩前進があったと評価できると思います。
他方、左側に具体例を載せておりますが、公表されたレビューシートでは、成果目標が適切に設定されていない事例も見受けられます。今後は、行政事業レビューシートの記載を充実させるとともに、レビューシートをつくって終わりではなく、予算要求段階や査定段階でも積極的に活用して、実績の乏しいシステムや必要性が低下した機能等については、運用の中止や廃止の判断等につなげていくべきと考えております。
また、レビューシートについては、システム導入により、どの程度、事務が効率化されるのかといった情報もありますので、こうした情報を活用しつつ、システム化に伴って、組織の人員削減も含めた行政の効率化を図ることも重要であると考えております。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は御欠席の安永委員から意見書が提出されております。各PC端末に格納しておりますので、お目通しいただければと思います。
それでは、これから御意見、御質問等を頂戴します。いつものとおり、会場から5人、オンラインから5人と、こうした形で進めていきます。可能な限り、御発言はおおよそのめど3分以内でまとめていただければと思います。よろしくお願いします。
それでは、まず会場から、広瀬委員から順次御発言いただきたいと思います。初めに広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。基本的な方向性は特に違和感はありませんが、その上でそれぞれ1点ずつ申し上げたいと思います。
まず中小企業です。資料の13ページに、中小企業は我が国の雇用の7割を占めるというグラフがあります。三大都市圏を除く地方に限りますと、実はこれが9割を占めるということになります。そうなりますと、今後、我が国の経済が安定成長の軌道に乗るかどうか、あるいは、地方が元気を取り戻せるかどうかは、この7割、あるいは9割を占める中小企業が持続的に賃上げをできるかどうかにかかっているのではないかと思っております。その賃上げの原資ですが、まずは価格転嫁が適切に行われるかどうかです。これは大企業と親会社のリーダーシップが必要ですが、これをバックアップするような対策が求められるのではないかなと思います。その一方で、中小企業自身の不断の経営改革も必要で、そのための設備投資、人材投資、特にDX、GX分野を中心に、メリハリのある支援策が求められているのではないかと考えております。
次に外交ですが、地政学的リスクの高まりに伴って、安全保障の重要性がますます高まっておりますが、日本の置かれた状況からすると、防衛力の強化と外交力の強化はバランス良く効果的・効率的に進めていかなければならないと考えております。特にグローバルサウスとの関係強化が重要になりますし、ソフトパワーとしてのODAも一層重要になるのではないかなと思っております。ODAにつきましては、地域や分野の重点化が我が国からの視点でもちろん大切ですが、やはり相手国のニーズが何より重要かと思います。
そこで、官民の連携協力が重要になるわけですが、先ほどの資料にありましたとおり、大企業だけではなく、スタートアップを含む中小企業が持つ技術・ノウハウが有効であるというケースもあると思います。ODAもこれから予算が限られていくため、工夫をしながらウイングを広げていかなければいけないと考えております。
最後はデジタル化です。その基盤インフラであるマイナンバーカードの利用、活用が不可欠なのですが、今回マイナ保険証が導入されますし、来年からは運転免許証との一体化も導入されますから、相当進むと期待しております。引き続き粘り強く取り組んでいただきたいと思います。行政のデジタル化については、国、自治体はもちろんのこと、国民や事業者のコスト削減あるいは利便性向上にも資するものであり、思い切って加速するような策を講じるべきではないかと思います。
一方で、デジタル化になじめない高齢者、小規模事業者への配慮も必要で、それが結果として、よりスムーズに、よりスピーディーにデジタル化を進めることにもつながりますので、そのあたりの配慮もよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕ありがとうございます。私から4点です。
まず投資です。今年は世界的な選挙イヤーであり、来週火曜日にはアメリカ大統領選がございます。イギリスの選挙は7月4日に行われまして、今年は14年ぶりに政権交代がありました。労働党が掲げていた今年のスローガンは投資、投資、投資でした。1に投資、2に投資、3に投資。財源はどうするのかということだったのですが、一方今週30日、来年度予算が出まして、ここでは700億ポンドぐらいの投資をやると。NHS、つまり国民保健サービス、また国防費を相当大幅アップさせるとともに、成長戦略を進めるとのことです。財源については、400億ポンド、8兆円の増税策が打ち出されております。これは主に企業向けなのですが、ただ、OBR、予算責任局に言わせると、これは企業向けと言っても、労働者には賃金低下、消費者には価格上昇という形で転嫁されるだろうということなので、実は相当、消費者にも負担が来るだろうと考えられます。
今回選挙で大勝したので、恐らく予算は通るのですが、ただスターマー政権の支持率はどんどん下がっていまして、仮に今回の投資が失敗すれば、次の選挙ではまた議論することになるだろうと思います。つまり、投資は成果が求められるわけなので、やはり財源とともに、実現可能性はフォローアップしていくことが必要であると思います。これが2番目の半導体にかかります。3ページに半導体のシェアが出ています。これは以前も申し上げましたが、かつては日本がトップで世界のマーケットの5割を持っていましたが、現在は半導体製造装置や素材ではまだシェアはあるのですが、全体では落ちております。
では、この間民間企業は何もやらなかったかというと、そうではございません。投資して、結果的には失敗してこうなっているわけです。ですから、今回、政府の資金をつぎ込んだから勝てるという保証は必ずしもないのです。やはりフォローアップが重要です。特にこのグラフを見て私が少し残念なのは、グラフの最新年が2019年、4年前なのですよ。このペースで今後フォローアップすると、分かったときにはもう手後れだったということになりかねないので、こうしたところの情報収集はぜひ進めていただきたいと思います。
三つ目が中小企業です。中小企業については、かつて御指摘させていただいたのですが、14ページの左下のグラフのとおり、労働生産性がほとんど上がっていません。大企業は、例えばリーマンショックやコロナショックのときに生産性は落ちていますが、その後の景気回復ではぐっと上がっております。つまりもう一つの特徴は、大企業は世界経済と極めて連動している一方、中小企業はずっと横ばいなのです。これは日本の潜在成長率が低くなっている大きな要因であると思うのです。
15ページを御覧いただくと、開業率・廃業率も日本はG7で最低クラス、しかも、これらは落ちてきていると示されております。中小企業対策についても、社会政策としてやる分は当然必要なのですが、新陳代謝を促進して、日本の潜在成長率の引上げにつながるような施策にもっと注力すべきではないかと思います。これはM&Aもそうです。M&Aも最近いろいろな詐欺が出て、先般政府から処分が出ましたが、もっと力を入れていくべきではないかと私は思っています。
四つ目がデジタルです。12ページで既存経費については3割減という話がございますが、10ページのグラフを見るとこれは減少どころか、どんどん増えております。その上補正予算で積み増しされているのです。補正予算で積み増すということは恐らく新規分なのでしょうが、補正で積んでいるということは、本当にこれは何に使われているかよく分からないという問題がございます。以前申し上げましたが、私はこれだけ予算を増やすのであれば、一つは行政経費がどれだけ減ったか、つまりどれだけ行政の効率化につながったか、例えば人件費は減ったのか。もう一つは国民の生活が豊かになっているか、つまり行政サービスの向上につながっているか。二つの観点で、この経費を検証するべきであると思います。行政事業レビューも始まりましたが、やはりもっと改善していく余地があるのではないかと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、お願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。本日は、中小企業、外交・デジタルについて意見を申し述べたいと思います。
初めに中小企業への支援の在り方についてです。中小企業の持続的な賃上げに向けた、価格転嫁を含む取引適正化の取組は、いまだ不十分であると考えております。労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針は、大企業を含めて、周知と浸透を広げていくことが不可欠であり、指針を反映したパートナーシップ構築宣言、参加企業の更なる拡大と実効性強化が必要です。また、補助金などの各種支援制度は、手続きを簡便化するなど、中小企業が使いやすい仕組みとする必要があります。
なお、補助金などによって、企業の事業再構築を支援するに当たっては、その企業を支える労働者の雇用や処遇に影響を及ぼさないという視点も含めて検討することが必要であると考えております。
2点目は、ODAの在り方について触れたいと思います。日本のODAは、GNI比0.44%にとどまり、OECDが求めているGNI比0.7%の半分強に過ぎません。ODAは日本外交の重要なツールであると同時に、人間の安全保障の実現などの観点からも必要不可欠なものであると認識しています。戦略的・効果的な活用を前提に、予算拡充に取り組む必要があると考えます。
3点目ですが、デジタルインフラの整備の在り方について触れたいと思います。現在のガバメントクラウドは、いずれも米国の大手ベンダーが提供するクラウドサービスです。政府の情報システムの安全性を強化する観点からも、コストありきではなく、特に機密性の高い情報から国産クラウドサービスの採用を進める必要があります。また、地方公共団体にもガバメントクラウドへの移行を促しておりますが、一部自治体では、システム移行の困難さや事業者の人手不足が指摘されています。データ主権、システム主権、運用主権など、経済安全保障の観点からも、これまで以上に人材を含めて、国内IT産業育成に尽力する必要があると考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕御説明、どうもありがとうございました。
まず、国内投資、中小企業等に関しては、産業政策が必要なところには必要なのですが、まるで、はやり言葉に乗って予算要求をしているようなことがこれまで繰り返されてきたなと思います。第4次産業革命、クールジャパン、そのような言葉が以前あったと思うのですが、はやり言葉のもと予算要求して、5年や10年たつとその言葉はすっかり忘れている。このような形で予算要求をして産業政策を行うということは、厳に慎んでいただきたいと申し上げます。半導体がそうでないことを願うのみなのですが、単に時流に乗ったものに予算を要求するということでなく、もっと長期的な戦略を立てて、それに基づいた予算要求、産業政策を講じていただきたいと思います。
また、長期的な視点という観点で申し上げます。10ページの、複数年度の支援の在り方について、確かに単年度で終わらないということは分かりますが、やはり基金の乱立が目に余ると思います。ここで提案されている国庫債務負担行為など、無駄な資金滞留が起こらない形での長期的な支援を考えていただく必要があるのではないかと思います。基金をあまりにも乱立させてしまったということで、経済産業省だけではなくて、ほかの省にも悪いしきたりが伝播しているというところは、私は大変憂慮しております。
そのため、産業政策だけではなくて、ほかの分野の基金の在り方も含めて、複数年度にわたる支援を基金で行うということが、今後不必要に起こらないようにしていただきたいと思います。その意味では、むしろ11ページに御提案がありますように、産業投資を活用するということが考えられます。政府による出資で受益者負担を求める、その出資を受けて成功すれば配当などの形で国庫に還元される、そして納税者に負担を転嫁することにならないようにするという形の受益者負担を徹底する意味でも、出資という政策手段を今後活用することが期待されると思います。
次に、外交についてです。まず、JICAの支払前資金についてですが、これもまた基金の問題と同じように見えてきます。JICAは独立行政法人であるため、運営費交付金に基づいて運営されておりますが、無償資金協力の複数年にわたる支援を一度留め置いて、そこから少しずつ出していくという話は、先ほどの国内投資の話と酷似しております。これが別の意味の基金の問題と同じようにならないよう、しっかり運営を効率化していただきたいと思います。
また、7ページの任意拠出金の評価について、非常にお手盛りの評価と言わざるを得ない結果になっていると思います。外務省の自己評価であり、確かに評価基準1を見ると、当然貢献しているということにしたくなるという気持ちは分かります。ただ、この拠出金の活用が果たして効果的に行われているのかという点を考えると、自己評価で貢献度が高いということに寄り過ぎてしまうと、まともに評価していないのも同然のような結果になってしまいますので、もう少し第三者的な視点で評価できる仕組みにしていただきたいと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。おっしゃっていることはどれもそのとおりであると思いました。その上でコメントさせていただきたいと思います。
まず半導体についてです。業界首位のインテルが最近、深刻な経営不振に陥っていることに代表されるように、半導体は極めて変化が激しくて、厳しい業界であると思います。それだけに、国が支援するならば、御説明にあったように、支援の基本原則の策定及び事業の進捗状況の定期的な管理、さらに財源の確保、これらはいずれも不可欠であると思います。これまで補正ごとに都度の議論をして、ばらばらな基金を通じて累計3.9兆円もの予算を投じてきたということは、言葉は厳しいかもしれませんが、場当たり的な対応だったと言われても仕方がないのかなという気もします。
今回、きちんとした枠組みを提示される考えを示されたということは、極めて重要なことであると思いますし、これをしっかり進めていただきたいと思います。国のこれまでの半導体支援は失敗の連続だったとも言われていますが、そうしたことを繰り返さないように過去のケースをきちんと検証した上で、民間企業の投資を最大限引き出すような手法や明確な出口戦略の設計などに努めていただきたいと思います。
次に中小企業です。中小企業は、私も仕事柄、時々取材することがありますが、いわゆる町工場には有望な技術があって、ユニークな製品を作っているところも少なくないです。そうした町工場に共通しているのは、経営者が自主的に明確な目標を持って、下請には甘んじないで自社製品も開発して、従業員のやる気を引き出しているという点です。13ページにもあるとおり、日本の製造業が生み出す付加価値の半分以上は中小企業ですから、この力をできるだけ生かしていくということが日本経済の再生にもつながっていくと思います。その意味で、生産性向上を名目に、これまで過去5年で合計4兆円以上の補助金を投入したにもかかわらず、生産性が横ばいというのは極めて残念なことです。
先ほど申し上げたように、単に補助金などの直接的な支援に頼るのではなくて、自主的な経営改善に取り組むというのが一番重要であると思いますので、そうした支援体制をこれから整えていただきたいと思います。
最後に、デジタルについてです。従来は各省庁がばらばらに予算を要求、計上してきたので、情報システム予算を一元的に管理することで予算を効率化することが、デジタル庁を設置した目的の一つだったはずです。確かに新規のシステムの投資などに費用がかかるという事情はあるのでしょうが、デジタル庁が発足して丸3年たっても、政府の情報システム予算の増加に歯止めがかかっていないというのはどういうことなのかなと思ってしまいます。
13ページにもありますように、デジタル庁には専門人材が豊富にいらっしゃるにもかかわらず、最も期待されるコストの最適化についてまだ課題が残っているということは極めて残念なことです。デジタル庁発足時に指摘された官民混成部隊で組織の風通しにまだ課題が残っているのかどうか、そのあたりが影響したのかどうかは分かりませんが、デジタル行財政改革は政府の大きな目標ですので、この改革に資する効率化を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ここで、途中退席のお申出をいただいているので、神子田委員に御発言いただいて、そしてオンラインに移りたいと思います。
それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕御配慮ありがとうございます。要旨、経過の御説明ありがとうございました。おおむね趣旨には賛同いたします。
個別に3点あります。まず半導体に関しては、5ページの二つ目の丸のところです。出口も含めた複数年度の支援戦略を策定すべきではないかということに関して、これは半年前の財審でもこの話をされていて、そのとき私は、一方では政府が後押しをする姿勢を示し、他方では予算は限定的に使えというようなことを言うと、企業も混乱してそれこそ予見可能性がないのではないかと思いました。しかし、今回の御説明では、むしろ複数年にわたって支援していくことで、予見性を高めるということはよく分かりました。
一方で、先ほどから出ていますが、企業ですから、自分たちのお金で何とかするのが当然であるとも思います。TSMCも発足の頃は政府の支援で誕生し、それから、あれだけ大きくなったということがありますので、政府の支援が必要なことはあると思います。ただ、何年後にどういう姿になるのか、年ごとにどのような支援が必要になって、どのように減っていくのか、そうした青写真が欲しいなと思います。また、TSMCも今は九州だけですが、各地に半導体産業の核として誘致できないかという話がございます。いろいろな産業が集まって、若い技術者も育っていくという理想的な環境を九州だけでなく、日本全土で進めていきたいということです。要は、半導体の全体像をどのように描いて、政策として何を後押ししようとしているのか、青写真を描いて、そこにお金はどのぐらい年ごとに必要になるのかというシナリオも描いて、国民にも理解してもらうということが、これから大事なのではないかなと思いました。
また、中小企業政策に関してです。中小企業庁などを取材して、いろいろな補助金政策が、本当にその趣旨で使われているかどうかが不透明だと感じています。特に地方の中小企業は、働いている人が生きるか死ぬかのようなところでやっています。ただでさえ貴重な補助金なので、補助金が有効に使われるということは重要であると思うのですよね。ですから、年一度などではなく、四半期に一度ぐらいで補助金が有効に使われたかをチェックする必要があると思います。昨今、経済産業省が価格転嫁で下請Gメンのようなものをやっているのですが、同じように補助金Gメンのようなものをつくって、無作為抽出でもよいので補助金がどう使われているのかを追跡していく。もちろんお金が有効に使われているかもそうなのですが、そもそも制度自体が有効な仕組みだったかもチェックしていく体制を、政府としては整えてもらいたいなと思います。
最後にODAについてです。私は、1998年ぐらいに、経済部の記者として財務省を取材しておりまして、記者会見の際、この国はこんなに赤字なのに他の国に支援している余裕はあるのでしょうかと質問したところ、当時の宮澤大臣は、やはり日本というこれだけ大きな国になると、国の格というものがあるため、そうしたことが必要なのであるというお答えでした。
ただ、その後何十年も経って、GDPは世界で3位か4位とはいえ、1人当たりのGDPはどんどん低くなっていますし、円安もあってお金もなくなってくるという中で、格はあっても金はないという状況であるため、いろいろ意見はあっても、私は、やはり国の財政は基本的には汗水垂らしている国民や独り親で苦しんでいる国民の福祉に使われるのがまず優先であり、次に海外という順番はあると思います。もちろん一定の規模は保ちながらも、これ以上増やさないという中で、どのように有効に使っていくかを考えていくようにしてもらえたらと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインに移ります。御発言の順序ですが、秋池委員、上村委員、大槻委員、河村委員、小林委員と、この順番で指名しますので、御発言をお願いします。
まず、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕ありがとうございます。全体の御説明について異論はございません。その上で3点申し上げたく思います。
まず半導体についてです。この事業は初期的な投資が非常に大きく、また研究開発や設備も含めてその大きな投資をやり続けなければいけないという非常に難しい事業であります。この事業が持続されるものであるということが実感できないと、民間事業者も金融機関も参加しにくくなるということがあると思います。
また、半導体事業者も、発注者や金融機関だけではなくて、この半導体を使おうという需要が将来見込めないと、本当にこれを期待して自分たちが製造の計画を立ててよいのだろうかということにもなります。ほかの方もおっしゃっておられますが、補正予算を使って、毎年どうなるか分からないということではなくて、予見可能性が高くなるような政策の検討が必要であると思います。
支援基準やPDCAについては、これを見直して、適切な予算の使われ方になるような規律付けがされるようにしていく必要も大きいと思います。ステージごとの支援というお話もありましたが、資金調達の方法をそのステージごとに考えていくという必要もあると思っていまして、例えば収支が見込めるようになったら民間資金も活用していくということなどもあると思います。
同時に半導体は、先ほども申し上げましたように、歴史的に製品市場のボラティリティが非常に高いという側面がありますので、安定的に長期的な供給が行われるように、官民を挙げて努力していく必要があると思います。繰り返しになりますが、予見可能性が高ければ、使う側も使いやすくなって、市場が大きくなっていくということもありますので、そのよい循環に入っていければと思います。
次に、中小企業について、政府の支援についてです。中小企業は数がとにかく多いものですから、その企業が持っている存在意義や地域性を踏まえて、同一の基準で測れないような部分もあると思いますので、カテゴリーに分けた議論も必要なのではないかと思います。
そうした上で、中小企業の生産性についてしばしば言われますが、やはり当然ながら事業者自体の経営改善努力が必要な場合もあると思います。同時に、もしも取引先が適正な価格を支払っていないのであれば、中小企業に発注する側の事業者が適正な価格を支払うことで、中小企業を持続させていくということも大事であると思います。また、例えばですが、中小企業に対する発注を長期契約にすることなどによって、中小企業にとって事業の予見性が高まり、設備投資や技術開発ができるということもございます。互いに協力し合いながら、発注する側も中小企業を利用していくだけではなくて、生かしていくという努力も必要であると思います。
ベンダーファイナンスというものがありますが、自社のサプライチェーンにとって必要不可欠な企業に対しては、支援しながらサプライチェーンを強固にするという方法もありますので、こちらも、政府の御協力をいただきながら、一方、民間もできる努力をしていくという必要もあると思っています。繰り返しになりますが、やはり中小企業についてはカテゴリーに分けた議論が起こると、より良いのではないかと思います。
最後に、グローバルサウスについてです。様々な成果もきっと上げてきているのであると思いますが、少し時間もたったところですので、つくられたときの目的に鑑みて、検証をしていく必要もあるのではないかと感じました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続いて、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕御説明ありがとうございます。私からは中小企業についてコメントします。
中小企業に対する補助金ですが、コロナ禍で規模が大きくなりましたが、その中身に問題が多いのではないかという印象を持っています。最近、会計検査院が指摘した不正受給もありました。これは氷山の一角であると思いますが、補助金が生産性を高めるものになっているのか、中小企業の成長につながるものになっているのか、疑問に思うところもあります。確かに社会政策的な意義もあると思うのですが、その一方で中堅企業の成長を妨げるおそれもあるのではないかと思っています。
例えば中小企業の定義は、制度によって様々ですが、基本的に資本金と従業者数、従業員数で決められています。ところが、近年、ほとんど従業員がいなくても、これは物流が典型例ですが、資本ストックを活用して、大規模な事業を展開している企業が出てきています。中には、大企業に引けを取らない売上げを上げている中小企業もあります。この定義が今の時代に合わなくなっているのではないか、その状況で資本金や従業員数で中小企業という枠をはめて、補助金や税制上の優遇措置で支援するということの意義があるのか、検討する必要はあるかなと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。私からは、半導体、中小企業支援についてでございます。御指摘の点全てについて同意しますが、改めまして、この部分について課題が多いということを認識しました。その中で大きく2点、半導体、中小企業共通の課題、それに関連する点についてコメントさせていただければと思います。
第1に、支援先の選別と、そのための振り返りに関する課題です。半導体について基準づくりは当然であり、それについては同意いたしますが、そのためにはこれまでの支援をもっとマクロベースで振り返る必要があるのではないかと思います。何人かの委員の方もおっしゃったとおり、どのような支援が有効だったのかということと、また、失敗の歴史というお言葉もありましたが、そうした失敗した点についても真摯な振り返りと、かつて日本に強みがあった分野の衰退の主因分析も必要ではないかと思います。
また、今回は半導体に絞っていらっしゃいますが、ほかにも今の時点で振り返ると、早めに後押しすべきだったのではないかという分野もあるのかもしれないと思われますので、それらを、はやりに流されずに選別できるような、そうした仕組みづくりが必要かと思います。
一方、中小企業支援について、いろいろな分析データを今回御提示いただいています。支援の有無に関して、単にそれぞれの企業が収益をどういった形で還元したかということではなくて、日本のマクロ全体としてどういったベネフィット、または負の影響があったのか。収益が低い企業の体質や業態の変革が起こらなかったというマイナス面についても検証すべきではないかと思います。
また、今回、資金提供ではなくて、計画を策定すること自体が健全化につながった可能性があるというこのデータは、非常に興味深いと思います。これは背景がよく分からないので、更なる分析が必要になるかもしれません。いずれにしても、民間金融機関や、経済産業省の各地の支援センター等の支援が重要であると思われますが、まだ支援センターについては体制のばらつきも大きいと聞きますので、その底上げを図って、お金ありきではなく、戦略やガバナンスの支援体制に一層注力することが、むしろ国益に資すると思っています。
第2に、民間との連携という点も二つに共通する課題かと思っています。民間が苦手な長期目線で、当初は利益が上がりづらいものについての支援は必要であると思いますが、官の分野と民の分野、その分担をはっきりさせて、モメンタムがついた時点で、民間のベストリスクテイクに任せるべきであると思っております。
例えば、2月に米国に行かせていただきましたが、そのときもコロナ支援は期限限定であるとはっきり言っておりました。それが当然であるという声もあったことを思い出しました。日本でもこうした原則を徹底し、官から民へ、そうしたシームレスな形での支援を、成長も感じた上でやっていただければと思います。
以上となります。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕続いて、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御指名くださってありがとうございます。御説明ありがとうございました。
全体として、御説明くださった内容、主張してくださった内容に同意いたします。本当にこの方針で強く打ち出していければと思います。私からは、国内投資についてと外交について、いくつか意見を言わせていただければと思います。
まず国内投資についてです。半導体が最たる例ですが、日本だけでなくて、どこの国も補助をつけて、ものすごく強く後押しするような流れになってきている中で、11ページにあるように、支援手法をきちんと整理してお示しいただいたのは、大変良かったと思います。とにかく何でもかんでも政府がお金をつければよいのだ、政府からお金をもらえればよいのだということでは決してないのであり、どのようなときに支援するのが正当化されるのかということを、しっかり整理していただいたことはよかったのではないかなと思います。
ただ、一方で、本日は御説明されていませんが、次の12ページで、海外の学者の御説明が書いてあります。何でも政府が支援すればよいのではなくて、「市場の失敗」を是正するときに限定されるべきである。やり方を間違えると下手すると「政府の失敗」になってしまい、結局その国の経済全体にとってもマイナスの影響のほうが大きくなってしまう、とあります。やはりそこも、財審としてもう少し強調して押し出してもよいのではないのかと思います。
その例として、冒頭2ページで、海外がどのように半導体産業への支援を行っているかという例を出してくださったのですが、このように説明すると、他国もやっているので日本もとなってしまいます。しかし、もう今の時期になるとそのようなことはない、失敗ではないの?おかしいのではないの?という話が出てきておりますので、ぜひそのあたりも併せて打ち出したほうが良いのではないかと思います。
半導体、EVの普及がこれからどれだけ進むかによるところは大きいと思いますが、先ほどもほかの委員の方もおっしゃっていましたが、アメリカではEVは頭打ちのところもあります。インテルが大きく人員をカットして大騒ぎになっており、温暖化対策で一番最先端を走っているはずのヨーロッパでも同じような状況が発生しております。ドイツも巨額の補助金を出しておりましたが、もう今は少しまずい状況になってきてしまっているのではないでしょうか。連立に入っていないCDUから、補助金バブルになっていたのではないのかと疑問が出されております。インテルがドイツでの工場を建設する計画を先延ばしにする、アメリカ系の半導体の企業であるウルフスピードも計画を大幅に縮小するという話が出てきていて、ショルツ政権はもう既にはしごを外されかかっている状態です。しかし、1回乗りかかった船だからこのままでよいと、ショルツ首相は強弁しているようにも思えます。日本はドイツの例を他山の石とすることができますので、先々がなかなか危ない例が海外でも実際に出てきているということも、併せて言ってくださってもよいのではないのかなと思います。
また、10ページ、基金を使った支援の手法の在り方の問題点については、もうここにお書きくださったとおりだと思います。基金を造成するためにお金が必要ですよね。全額税収でやっているのだったらまだしも、そうではないですよね。これだけ国債を発行して借金に頼っており、金利負担があるということを、もっと強調したほうが良いのではないかなと思います。
次に外交についてです。まず、ODAについてです。4ページの2つのグラフは、日本の置かれている現状や、これからどのぐらいの水準でODAを行っていくべきかを適切に示していると思います。左側の日本経済の占めるシェアについては、もう愕然としますが、これが現実ですよね。やはり、こうした下で、今までの水準をすぐに落とせということには決してならないとは思いますが、右側のグラフでお示しくださっているとおり、政府の財政の悪さも踏まえ、出し方をよく考えるべきではないかと思います。
また、6ページ、JICAの滞留資金の問題です。お仕事の性質上、予算が付けられた年にすぐに動くというものではないことは理解できなくはないのですが、これもやはりグラフが印象的であり、支払前資金がこれだけ積み上がっております。数年前の財審でも指摘し、それを受けて下がってきてはいますが、先ほどの国内投資の基金の問題と同じであり、金利負担もあることから、本当に法改正しないといけないと思います。プロジェクトが完了しないと国庫納付できないということかもしれませんが、やはり法改正も必要であると主張していくのが良いのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林委員、お願いします。
〔小林委員〕では、半導体について2点ほど、中小企業とデジタルについて一言ずつ話したいと思います。
御説明ありがとうございました。半導体支援については、世界各国が行っているということもあって、確かに一定の公共的な意義はあるのだろうと私も思うのですが、ただ、理解と納得を広めるために二つほど課題があるかと思っています。
一つは、そもそも標準的な経済学の用語で、政策の意義が概念化される必要があるのではないかということです。先ほど河村委員が紹介されたページでもありましたが、現在の産業政策の新機軸と言われる概念が必ずしも経済学的にはっきりした説明ができていない面もあるかと思います。どのような市場の失敗に対応するために、どのような政策手段で政策を行うのかということを経済学的に説明することで、広く国民の理解を得るということが必要であると思います。
例えば半導体の産業では、規模の経済性があるのか、あるいはリスクが高過ぎて、投資が民間だけで負い切れないのか。もしリスクが問題であるということならば、最初から補助金ではなくてエクイティの株式、あるいはエクイティの形の投資を政府のお金でやる、そうした方法もあります。必ずしもシードの段階から補助金が必要であるということにはならず、最初からエクイティでもよいということも言えるのではないかと思いました。
半導体の二つ目は、政策のコストとベネフィットの財政的なバランスをあらかじめ考慮しておく必要があると思います。半導体支援をはじめとする産業政策の目標は、経済全体のTFPを持続的に向上させて、持続的な経済成長を実現することであると思いますが、そのような政策が正当化されるのは、政策の財政コストよりも政策の財政的な利益が大きくなるという場合であると思います。そうでないと持続的な政策にはならないと思います。
しかし、半導体の支援のための財政支出よりも、政策効果によって生まれる税収の増加が本当に大きくなるのだろうかというと、なかなか懸念を感じるところです。もしも政策効果による税収の増加よりも財政的なコストが大きいとすると、そのギャップをどうやって埋めるのか、その財源をどこから持ってくるのかという議論もあらかじめ考えて、国民に説明しておくことが必要なのではないかという気がします。定量的な議論はできないにしても、概念的にそうした財政のギャップが生まれたとしたらどうするのか考えておく必要があるのではないか、説明する必要があるのではないかと思います。
あと一言ずつ。中小企業について。過剰債務を抱えた中小企業の債務整理の問題は、マクロ的なインパクトは小さいかもしれないですが、地域経済にとっては大きな影響があると思います。中小企業の債務整理の問題に関して、現在検討されている債権者の多数決及び裁判所の認可による私的整理に関する法制というものがありますが、これは早期に実現することが望ましいと思いますので、この点、指摘しておきたいと思います。これは金融機関の多数決によって私的整理ができるという画期的な制度で、我が国では何年も前から導入が検討されていますが、導入には至っておりません。
最後に、デジタル予算について一言。マイナンバーの活用のお話が広瀬委員などからあり、平野委員もかつておっしゃっていたと思いますが、マイナンバーを個人の銀行口座に、全ての銀行口座に付番することによって、個人の所得や金融資産について公的に把握できるようになれば、様々な社会保障給付の在り方の改革が実現できると思いますので、そうした方向についても一層議論を進めていくべきではないかと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻したいと思います。
続いて、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕どうもありがとうございます。重なるところもありますので、簡単にお話ししたいと思います。
まずは半導体です。とても大事であるということは分かる。その上、リスクがとても高い分野であることは分かるのですが、だからということで、よく分からない状態で補正予算でお金がつくという印象を持っています。少なくとも、補助金を受けた側からしっかりとした覚悟、あるいは責任が示されないと、国民やほかの企業の納得感もないのではないかと思います。どうしてそう思ったかというと、後輩たちが現場の取材などをして、もちろんどの会社もしっかりやっているとは思うのですが、社員の一人一人までこれだけの巨額の補助金を受けているということを意識してやっていただいているかに対しては、疑問を感じた部分もありました。
私は、産業構造審議会のGXの基金を配分するときの基本方針の議論に加わっていたのですが、まさに先が見えない。もしかしたら大失敗になるかもしれないということにお金をつけるということで、もちろん会社にしっかりとその責任を示していただく、あるいは一つ一つ途中のステージゲートを設けて、チェックをしっかりする、それから、どうなったら自立するのかという枠組み、失敗したことまで踏まえて全体的な計画を示して、それで腹をくくってみんなでお金を使うぞというようなことになったと思います。今の半導体は、大事であるということに引っ張られていて、そこまでの覚悟を国民に見せられていないような気がしますので、そうした枠組みをしっかりとつくっていただきたいと思います。
次に、デジタル庁です。これは国民から見ても効率化に非常に期待がありまして、今一生懸命やっていらっしゃることであると思います。自治体はまだまだついてきていないという状況で、人材も必要であると思います。行政がやっていく中では、どうしても最先端のものはどんどん古くなっていきます。同じ人がやっていても数年で変わってしまうという中で、どうやって人材を活かしていくかというのは非常に難しい問題であると思います。
外部人材を入れることももちろん必要です。デジタル庁はかなり特異的な人事政策をされているのですが、職員の能力を生かして時代にフィットしていくという状態をつくることも大事であると思います。逆にしっかり育ったらどこかに出ていってしまうと、そして戻ってこないということではなくて、官と民、両方の力がしっかりと結果に結びつくような人事政策も含め、対応をお願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、吉川委員、お願いします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。私からは、半導体と中小企業について1点ずつです。
御説明いただいた資料の9ページ。半導体については、皆様がおっしゃっているとおり、大きな補助金を出すわけですから、PDCAサイクルによりしっかりと評価をするべきということは、全くそのとおりであると思います。ただ、9ページの二つ目の丸に「今後の支援に際しては、第三者によるチェックの下で」とあるのですが、この第三者とは委員会のようなものかもしれませんが、その人選や組織の在り方、権限について政府として議論は始まって、詰めているのかどうかが少し気にかかりましたので、ご教示いただければと思います。
2点目は中小企業です。14ページ。中小企業基本法が今世紀に入ってから変わりました。昔は中小企業はすべからく弱者であるから、様々な支援を行うという理念だったと思うのですが、現在では中小企業にもいろいろな中小企業がある、つまり俗な言葉で言えば、頑張っている中小企業を国が応援するべきであるという形に、基本理念が変わったと思います。
そうであるべき思うのですが、補助金あるいは金融的な支援、いわゆるゼロゼロ融資等では、この新しい中小企業に関する理念は必ずしも尊重されていないのではないかと思います。新しい基本理念が尊重されるべきであるということなのですが、それに関して、具体的に14ページの左下に生産性のグラフがあり、中小企業の労働生産性は大企業の半分以下であると示されております。これは平均だと思うのですが、分散も調べる必要があると思います。分散とは、御存じのとおり、ばらつきであり、その分散のルートが標準偏差で、その標準偏差を平均で除したものが変動係数というものであり、平均と比べて標準偏差がどれくらいの大きさであるかを表したものです。恐らく中小企業の変動係数を取ると、大企業よりも大きいのではないかと思います。つまり、平均との相対においてばらつきが大きいのではないかと思うのです。これは俗な例えをすると受験業界での偏差値と似ており、私は受験業界のそれがよいとは思わないですが、受験でおなじみの偏差値と同じような考え方で、労働生産性、あるいは収益率の変動係数のような客観的な指標に基づいて、頑張っている中小企業を国が応援するということが必要なのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕御質問等は最後にまとめて事務局からお答えいただきます。
それでは、続いて中空委員、どうぞお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。多くの方がおっしゃったことに賛成いたしますが、一つずつコメントさせていただきたいと思います。
まず半導体・GXについて。重要な産業政策であると思いますし、また、日本は意外と金額が決まっても少しずつ分けてしまうところがあるので、大きくドカッとお金を入れて効果を狙うという方法は、それはそれで正しいのだろうと思います。さはさりながら、産業政策と経済安全保障及び地方創生をどうしていくかということについては総合的に考える必要があると思います。
特にTSMCが例えば成功していて、ラピダスはそううまくいっていないとすると、令和3年など、データがたまっている部分もあると思うので、そろそろ具体的に出てきた効果を見せていただきたいと思います。いつもこうしたことをやっていますというのを聞くのですが、それがどんな効果が出ているのか、この時点で分かることも大分あろうかと思います。不動産価格が上がっているなど、いろいろなことの効果を見て、成功例はほかの地方への横展開ができるのではないかと思うので、地方に横展開していくためにも、省庁に横連携を取ってもらわなくてはいけないと思います。
GXについては、GX推進機構ができてきましたが、これまでもグリーンイノベーション基金ができているはずで、ここから出したお金がどれぐらい回って、どういう効果を出しているのか、ぜひ示していただきたいと思っています。
二つ目が中小企業になります。秋池委員がおっしゃったとおり、中小企業と一口に言っても数が多いので、中身はよく見る必要があります。存在意義の大小ということもありますし、今、吉川委員がおっしゃったように、そもそも頑張っている企業と頑張っていない企業、生産性が上がっている企業と上がっていない企業、また企業の大きさも相当違いがあります。一緒くたに扱うことについての恐怖があるので、きめ細やかな対応が必要になってくるのではないかと思っています。
最後は外交です。資金は限られているため、できることは限られると思うのですが、私は、例えば、アジアに特化し、日本がお金を出していってアジアのリーダーになろうという目的を持っているのか、それとも、小さくても満遍なくみんなにお金を出そうとしているのか、その姿すら分かりません。つまり、日本としてお金を使う以上、どういう外交をしていきたいのかということがもう少し明確にならなければいけないのではないかと思います。
その意味で、ポートフォリオがどうあるべきかということを考えなければいけないのですが、お金がない中で、不用率と言ってはいけないですが、滞留していて資金が残ってしまっていることは相当程度大きな問題だろうと思います。お金をどう上手く使うか、そして、日本をどう見られたいかということも考えていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、お願いします。
〔小黒委員〕ありがとうございます。私も何人もの委員の先生がおっしゃられているのであまり付け加えることはないのですが、まず過去30年にわたって停滞を続けてきた日本にとって、潜在的な成長率を引き上げるために、半導体投資やデジタル化などで戦略的な国内投資をしていくという視点は、ある程度重要なので、本日御説明いただいた内容にはおおむね賛成いたします。
しかし、何人もの委員の先生からご指摘がありましたとおり、厳しい財政事情でもありますので、今後の成長の底上げについて、新陳代謝も含めてどうしていくのかということは考えていかなければならないと思います。
最初に国内投資についてです。後のODAとも関係するのですが、予算には消費的なものと投資的なものと2種類あると思います。国内投資の半導体などで言えば、先ほど中小企業の話もありましたが、新陳代謝を促す予算と、そうでない予算との区別をはっきりしていただく必要があるのかなと思います。特に今後、日本の経済成長との関係で重要になってくるのは、新陳代謝を促して将来の成長率を引き上げるところで、そうでない予算を縮小して、なるべく新陳代謝を促して、将来の成長を伸ばすような戦略的な投資予算を増やしていくということが重要なのではないかと思います。
そのときに、青写真を描くことが重要という話もございましたが、期限、あるいは規模感が大事ですよね。この将来的な予見性が民間企業の投資を促進する意味でも重要なので、このフレームをきちんとしていただく必要があると思います。特に効果の見られないものについては、少し厳しい視点ですが、先ほど吉川委員からもありましたとおり、きちんとしたチェックをして、徹底的にカットしていただくという視点も併せて御検討いただけないかと思います。
全体の予算として戦略的な投資を促すためにも、予算のスクラップ・アンド・ビルドといいますか、メリハリを徹底していただくということも必要なのかなと思います。先ほど上村委員からもありましたが、経済産業省のIT補助金などで不正受給の報道もあり、こうした予算は、はっきり言って見直していただくということが必要ではないかと思います。中小企業の一人当たりの補助金の在り方についてもやはり徹底的に効果検証を行っていただいて、それらを財源にして有効な領域に予算を振り向けるという努力をぜひ継続していただきたいと思います。
2点目は、外交安全保障についてです。いろいろな議論がありますが、中国やインドの台頭がある中で、グローバルサウスとの関係や日本の今後の安全保障も含めて、環境が変わってきていますので、ここである程度の役割を果たしていくことが重要であるということは否定できないのかなと思います。
ただ、この点でも、やはり厳しい財政事情の下では予算規模の拡大には限界がありますから、限られた予算を効率的かつ効果的に活用する視点もぜひ徹底していただければと思います。具体的には、ODAでも消費的な予算と投資的な予算の2種類があると思います。半導体などのところでも議論がありましたが、やはり消費的な予算より投資的な予算を優先し、それから、日本の今後の経済成長や国益、また、東アジア各国の安全保障や経済発展に寄与するようなところに民間資金の増員や拡大を促すような形で、もう一段階、徹底してメリハリを付けながら予算を投下していくということをしていただけないかと思います。
具体的には、昔、資料としては提出したことがありますが、ODAのコンディショナリティをもう少し積極的に活用いただきたいと思います。例えば、企業会計基準などを相手の国に要求していくことを通じて、データなどの無形資産が開示されるようにすることです。東アジア各国の医療や医薬品、観光、地域交通などのビックデータを可視化するなどによって、東アジア各国や日本の企業が投資しやすいような環境を整備するといったことも、きちんと戦略の一つに位置付ける形で、御議論いただけないかと思います。
簡潔ですが、私からは以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、國部委員、お願いします。
〔國部委員〕ありがとうございます。私からは3点申し上げたいと思います。
1点目は、テーマ横断的なトピックになりますが、民間資金の導入についてです。財政規律を維持しながら、日本経済の持続的な成長や安全保障の確保に必要な投資を行う観点から、一定の財政支援を呼び水に、民間資金の導入を図る方針には賛同いたします。その上で、GX、半導体、ODA、インフラ整備など、民間資金を必要とする分野は多数あり、総額で見ればかなりの規模になります。今後、各分野に円滑に民間資金を導入していくためには、必要額の全体像を捉えて優先順位付けを行い、インセンティブを含めた制度設計を検討することが重要と考えます。
近年は、社会的インパクト投資への注目が高まっているものの、資金供給サイドから見れば、円滑に資金供給を行うためには、政策的、社会的意義に加えて、リスクがある程度抑制され、リスクに見合ったリターンを確保できる、いわゆるバンカブルな案件であることは前提条件です。リスク抑制の観点で言えば、政府保証の付与は一つの方策です。また、長期の案件では、政治情勢などに左右されない、政府の継続した関与を担保する仕組みとすることも重要です。リターンの確保については、案件そのものに相応の収益性が見込まれることを前提としつつ、例えば民間資金を供与した場合に、税制優遇等のインセンティブを設けることも一案と考えます。
2点目は、国内投資に関連して、半導体産業に対する中期的な支援戦略の在り方についてです。半導体産業は、我が国の持続的な経済成長や経済安全保障の観点からも、重点的に支援を行い、十分な生産力や国際競争力の確保に取り組むべき分野であると認識しています。その上で、資料でも必要性が指摘されている中期的な支援戦略の在り方について、1点申し上げたいと思います。中期的な支援を検討するにあたっては、資料9ページに記載のとおり、プロジェクトの進捗を管理する枠組みを整え、進捗が思わしくないときには事業計画の見直し等を判断できるようにしていくことは必要です。ただし、半導体は、1件当たりの投資額が大きい一方で、研究開発面で不確実性が高く、また競争も激しい領域です。そのため、進捗管理の枠組みを検討する際には、事前に設定したマイルストーンだけではなく、その時々の需給あるいは国際競争力なども総合的に判断し、早期かつ柔軟にプロジェクトを見直すことができる枠組みとすべきと考えます。これは財政規律の確保という観点だけではなく、重要分野である半導体産業の中で、特に勝てる見込みのあるプロジェクトへ重点的に資金を投入するためにも重要と考えます。
最後に、中小企業の成長に向けた支援の在り方についてです。金利上昇局面にあり、人手不足も深刻化する中で、我が国経済の再成長を実現するためには、中小企業に対する継続的な支援が不可欠です。ただし、全ての企業に対して補助金をつける支援方法は、コロナ禍等の有事においては一定程度機能したと思いますが、財政の活用方法としては、効率的とは言えず、平時においては縮小していくべきです。我が国には世界で戦える高い技術力を有する中小企業が数多くあります。今後は、リスキリング支援や雇用保険制度等のセーフティーネットを確保することを前提に、彼らのようなポテンシャルのあるプレーヤーが、成長分野への参入や生産性向上・価格転嫁を通じて、稼ぐ力を高めていくための支援に予算を配分していくことが重要と考えます。もちろん我々、民間金融機関も資金的支援だけではなく、経営計画の見直しや各種知見の提供等、顧客ニーズに応じてしっかり役割を果たしていきたいと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで、オンラインに移ります。
滝澤委員、福田委員、武田委員、この3人に御発言いただきます。滝澤委員、どうぞお願いします。
〔滝澤委員〕ありがとうございます。私からは、投資と中小企業に関連して申し上げます。半導体に関連する投資につきましては、私自身は、初期の投資規模が非常に大きなもので、参入の障壁がある中で、当初の政府の支援の必要性は理解できますし、人手不足、デジタル赤字などの社会課題、安全保障上の課題の解決、そして、生産性の向上のために有用な投資と思われますので、引き続き長期的な支援の体制を整える必要があると思います。
例えば2ナノメートルの半導体の量産を目指しているラピダスにも巨額の国費を投入しておりますが、毎年、ステージゲートを設定していて、外部有識者を交えて審査して、金額が適切なものであるかをチェックしていると伺っております。中立性が担保された審査が行われる努力は引き続き取られるべきと思います。
それに加えまして、将来的には民間からの調達も検討していく必要があろうと思います。同時に、そうした先端的投資を支えるような優秀な人材の育成にも支援が行き渡るように、単に物量を増やすのではなくて、資本の質や労働の質を上げるような投資の拡大を支援できるように、支援の仕方を今後も柔軟に変更できるような体制を整えるべきと思います。
2点目は、中小企業の支援についてですが、御紹介にもありましたように、近年、中小企業関連の支援の効果検証が因果関係の識別に気を配られた手段で進められているように感じまして、望ましい方向に進んでいると思います。
それから、倒産件数は増えつつも失業率はそれに比して上昇していないという状況を鑑みますと、人手不足でもあり、雇用の再配分も従前よりはスムーズに進んでいるようにも思います。
それから、吉川委員が御指摘されましたが、中小企業の生産性の平均は、大企業と格差がありますが、中小企業の中でも分布を確認しますと、生産性が高い中小企業も存在します。特に同一産業同一企業規模の中でも生産性の高低が存在しています。産業によって、例えば対個人サービス業などは、企業規模による生産性格差が小さかったり、あるいは規模による資本装備率の差が大きい製造業ではやはり格差が大きかったりしています。それから、産業、企業規模ごとに生産性が高い企業がどのような工夫をしているのか、成長の要因を探って、それが横展開できる方策ならば、そこに支援を集中させていくという、そうした必要があろうと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。私からは、主として国内投資、一部、中小企業に関してお話しさせていただきたいと思います。多くの方がおっしゃっているように、経済安全保障の観点、あるいは規模の経済が非常に大きいことによって、一定の政府の支援が必要であるというのはそのとおりなのだろうとは思います。ただ、多くの委員もおっしゃっているように、それはあくまでも民間資金の呼び水という意味合いで行うべきで、最終的には民間の資金でそれが立ち上がっていくということが大事であると思います。
特に半導体事業は栄枯盛衰が激しい産業であり、リスクが非常に大きい産業であると思います。資料の3ページに半導体の企業のランキングリストがあり、事務局からは日本企業が姿を消したという説明がございましたが、例えば1992年にランキングされている企業で日本企業以外でも、例えばモトローラやフィリップスはもう半導体を作っていないと思います。そうした意味ではもう撤退しているわけで、日本企業に限らず、姿を消している企業は世界でもあって、非常に入れ替わりが激しいということです。また、ここでは、2019年までランキングが書かれていますが、恐らく直近のランキングを見たら、トップ3には、計算の方法にもよりますが、エヌビディアが恐らく入ってくると思います。2019年にトップ10入りすらしていないような企業が一気にランキングに入ってくるのです。
では、エヌビディアは政府の支援を受けて伸びてきたのかというと、そうしたわけではございません。御存じのとおり、エヌビディアは、AI関連のGPUというものをほぼ独占的に開発、設計しておりますが、もともとAIのためにやっていたわけではなくて、別の用途のためにGPUに特化してきました。それから、足もとでは、ずっとトップを走ってきたインテルの業績が急速に悪化しております。つまり、極めて不確実性が強いうえ、巨額の投資は必要だが、成功者と敗者がはっきり出てくるような産業であると思います。そうしたときに、これは小林委員がおっしゃったことと共通しますが、リスクの極めて高い産業への資金は、融資ではなくて、やはりリスクマネーという形で提供していくというのが適切であると思います。
日本は、かつては高度成長期、通産省の産業政策があって、この産業は必ず成長するのでこれをサポートしましょうという時代だったわけですが、それは日本が当時キャッチアップのフェーズにあったからで、欧米の企業のうちどういう企業が伸びたかを調べれば、大体この企業をサポートすれば大丈夫であるという時代だったわけです。しかし現在、もうそうした時代ではありません。どういう企業が伸びて、どういうことが伸びていくかというのは、政府は当然分かりませんし、民間の人たちも分かってやっているわけではない。ただし、いろいろな可能性を追求して、巨額な投資をし、多くは失敗するのだが、その一部でものすごい成功者が現れて、経済を引っ張っていくという時代です。なので、政府の支援もそうした観点を十分意識してやっていく必要があって、特定の企業を政府がともかく一方的にサポートするという時代ではないという問題意識は重要なのだろうと思います。
それから、中小企業に関しては、吉川委員あるいは中空委員、ほかの方もおっしゃったように、本当に多様ですので、頑張っている中小企業はサポートする。そして、そうでない中小企業に関しては、退出をスムーズに行えるような支援等をしていって、全体としてやはり中小企業といえども新陳代謝を活発化させる。生産性の高い中小企業を伸ばし、そうでない中小企業の退出は促していくというような支援策が望まれると思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕3点、申し上げます。
1点目、投資です。半導体もGXと同様に、世界の競争に勝ち切れるかという点が重要と考えます。中長期的な全体戦略に基づきPDCAを回し、勝ち切るための戦略を定期的に見直しながら進めていただきたいと思います。
2点目、中小企業です。他の委員の方々がおっしゃったとおり、14ページの図、中小企業の生産性の格差については同意見です。平均で横ばいということは、生産性が高い企業がいる一方、生産性が非常に低い企業も残存していることを示唆しています。適正な市場メカニズムが働くように一律的な補助金は見直していただき、生産性を高めるためのDX支援やDX推進のためのスキル支援に重点を置くべきと思います。また、補助金は、デジタルデータの提出も条件としていただき、効果検証とアウトカムを追求する姿勢を、申請時に示していただくことも併せて御検討いただければと思います。
3点目、外交です。国際情勢は、資料にもございますとおり、非常に厳しさを増していると認識しており、情報セキュリティの優先度は明らかに上がっていると思います。前回、防衛の予算について議論いたしましたが、インテリジェンスの強化や情報セキュリティについては双方で共通の課題になっていますので、ぜひ省庁横断で連携し、強化いただきたいと思います。
また、我が国の経済力が低下する中、外交面でプレゼンスを維持することは、拠出金では非常に難しくなっていると思います。戦略的な場所、例えば国際機関での重要なポストを日本としてしっかり確保し続けることができるか、発言力を維持することができるかという点を考えると、人材戦略が中長期的により大事になると思います。本日は拠出金が中心でしたが、人材戦略についてもぜひ政府として力を入れていただくようお願いできればと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻します。
平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。とても白熱した議論で興味深く聞いておりましたが、私からは三点申し上げたいと思います。
一点目は、半導体についてです。皆様がおっしゃっているとおり、消長が激しく、かつ、生き残るためには巨額な投資が必要な、本当に難しい分野だと思います。過去、我々がなぜ上手くいかなかったのかという反省も非常に大事ですが、現在の世界を眺めてみると、経済安全保障の文脈で、フレンドショアリングの機運が高まる中において、日本の半導体産業にチャンスが訪れていると言えます。
最近よく言われる、戦略的自律性と不可欠性の確保という意味では、前者は先端半導体、後者はラピダスなどの次世代半導体に取り組むことが求められているわけですが、今回の戦略は、かつてのように、日本に閉じたモデルから抜け出して、国際協調あるいは国際協力の下で製造するという骨格になっており、正しいと思います。アメリカの企業群がR&Dに巨額の資金を投じる余力を持っている一方で、日本では半導体事業にリスクマネーを投じられる産業資本が乏しくなっていることに加えて、国家間の競争が引き続き苛烈に繰り広げられている現状を踏まえると、日本がこの戦いを勝ち抜くためには、民間で取れない初期的な段階のリスクへのまとまった額の政府支援が必要であると思います。
支援の形態については、先ほどからも触れられておりますが、補助金だけでなく、政府保証や、土居委員もおっしゃっていたように、出資に踏み込むことも考えるべきであると思います。それを前提に留意すべきことを三つ申し上げたいと思います。
一つ目は、資料でも御指摘されており、他の委員もおっしゃったとおりですが、支援基準やマイルストーンを明確にするなど、指定事業等への支援の在り方を考える必要があります。つまりPDCAの枠組みを構築すべきということですが、これは当然だと思います。
一方で、二つ目ですが、足の速い半導体事業においては、経営判断の迅速性は欠かせません。それができなかったことが、かつての失敗の大きな要因だったということを踏まえると、柔軟性を確保するためのルールを整備する必要があると思います。これらを踏まえると、一定の大きな枠組みを設けた上で、その中で裁量権を与えるというような運用が必要になるのではないかと考えています。
三つ目は、官民連携の在り方についてです。研究段階での国際協力の推進やユーザーの開拓などで、日本の半導体産業を国際的なサプライチェーンの中にしっかりと位置付けるために、政府と民間が協力することが大事だと思います。また、半導体市況の動きは速いので、情報やニーズをいち早くキャッチして、必要に応じて政策を修正していくという意味での官民連携も必要になると思います。事業の予見可能性を高めて、投資リスクを低減させるだけでなく、事業を成功させるためにも官民での協力は不可欠だと考えます。
2点目の中小企業については、先ほどから皆様がおっしゃっているとおりです。本日の吉川委員のご意見を興味深くお伺いしておりましたが、本当におっしゃるとおりです。我々金融機関も反省しなければいけないのですが、漫然とゼロゼロ融資を続けていたのはよくないと思いました。我々も、生産性が高い中小企業、あるいは、伸び代がある企業や生産性の改善に向けて努力されている企業を見つけだして支援することが重要だと思います。ただお金を出すというのではなく、こうした考え方を政策の主軸にすべきだと思いました。
3点目のデジタルについては1点だけ申し上げます。既に御指摘がありましたとおり、デジタルガバメントはもともと、中央政府の効率化と行政能力の向上の両方を目指す施策ですが、これに加えてもう一つ申し上げたいのは、労働人口が減少する中で人的なリソースを捻出して、そこで生まれた人たちをリスキルすることで、社会的に必要とされる、あるいは生産性が高い行政府内外の業務に再配置することが重要だと思います。
したがって、14ページで御紹介された行政事業レビューシートにおける費用対効果の検証では、単なるシステム経費の削減だけでなく、国民の利便性、すなわち行政サービスレベルの向上に加えて、人的リソースの捻出状況を把握し、評価すべきだと思います。御参考情報として、私共の銀行の事例を申し上げますと、2018年以来、IT化と業務の統廃合を進めましたが、当時の従業員数が4万人程度だったところ、9,000人相当以上の業務量を削減して、そこで捻出された人たちの一部を再配置することで、コストと生産性の両面で一定の効果を上げられたと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕ありがとうございます。半導体についてです。まず、地政学リスクが高まっていることを背景に、経済安全保障の外縁が拡大しているという現状があると思います。機微技術の流出防止という輸出管理の問題から、産業基盤の自立性、そして技術優位性や不可欠性の確保まで、産業政策との重複が顕著になってきています。先端の安全保障技術は、軍ではなくて民が創出していて、自国産業に財政資金を投入する西側諸国が相次いでいて、その規模を拡大しているということも、本日、資料で確認させていただいていると思います。その中心が半導体であって、政府資金を投入する合理性というのは一定程度あると思います。
我が国においても4兆円の資金支援ということを御紹介いただいたのですが、今後も支援を続ける場合は、国の支援手法を多様化していくべきであるという財務省の問題提起に賛同します。近年では、設備投資支援などについて、渡し切りの補助金による支援が増える傾向にありますが、補助金の収益納付の在り方を見直し、出融資等をうまく組み合わせることで、民間企業からの投資や金融機関からの資金供給を促す。官民リスクの分担の在り方を不断に見直していく必要がある、これはあらゆる委員がおっしゃったことであると思います。また、政府支援の有効性、妥当性を図るために、EBPMに基づいて支援ルールを明確化していくことも重要です。
9ページで御紹介されたように、研究開発・実証についてはある種のモニタリングがされているのですが、今後、量産体制に入るフェーズにおいては歩留りを向上させていくなど、難易度が上がり、投資資金の額もまた跳ね上がると思います。また、これが民間事業としてフライしなければ、継続的に巨額の投資が必要とされる事業は継続できないと考えます。民間企業の積極的な投資の呼び水となるように、政府が国内投資支援として、足もとでは補正予算を組んでいるわけですが、民間企業は中長期的に人材確保や投資計画を立てていかなければなりません。まずは既存基金の取崩しや精査などを行い、支援の重複がある場合は排除するなど、政府のガバナンスが発揮できる仕組みを整えた上で、安定的な財源の確保を前提として、長期的な政府の関わりのあり方を検討することが不可欠なのだろうと思います。
そもそも、かつての日本の半導体が隆盛を極めたのは、国内に家電メーカーと優良顧客が存在していたことが大きな要因であると思います。近年、ラピダスが目指しているようなカスタム半導体の顧客の中心は海外であって、マーケティングはもちろん、経営体制もグローバルを視野に再構築しなければならないと思います。今後、政府が出融資にさらに踏み込んでいくには、こうした課題を含めて経営の根幹に関わる課題を克服しなければなりません。それが可能かどうかという不確実性は大いに残ると思います。
小林委員もおっしゃられましたが、政府資金の投入で税収効果が下回り続けるケースも想定されると思います。その場合の不確実性の担保も含めて、当該官庁である経済産業省が果たさなければならない責務は極めて重いと考えます。
中小企業の在り方については、小林委員がおっしゃられたように、私的整理を柔軟に導入していくということが重要であると思います。新陳代謝が起きないことが生産性を下げている一つの大きな要因であると考えます。
また、具体的な事業の中でグローバルサウス事業がありましたが、中国の覇権を鑑みれば、この地域の重要性は非常に分かるのですが、日本には、政府系銀行に加えて、日本貿易保険、NEXIがあります。先般、リスク事業を長期に発動させることができる、企業にとっては利用しやすい制度に改めようという議論を経済産業省でしたばかりですので、こうした保険の利用を優先していただきたいと思います。
また、芳野委員がおっしゃられたデジタルガバメントにつきまして、これは大変賛同したいのですが、AWS等にガバメントクラウドをあずけてよいものかということは大いに議論が必要であると思っています。ドイツは、AWS等に頼らず、自国のデジタルガバメントの構築を懸命にやっています。予算も含め、もう一度精査していただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、これで最後にしたいと思いますが、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕どうもありがとうございます。まず、半導体などの特定産業への支援策は、資本主義経済国たる日本においては、あくまで例外的な措置であり、極めて厳しい条件の下でのみ実施するべきです。国民のチェックが甘くなりがちな補正予算で、なし崩し的に巨額の支援を行うのではなく、民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業を対象とするといった明確な基本原則の下で、出口戦略も含めた複数年度にわたる中長期的な支援戦略を策定して、最大限、民間部門の投資を引き出す必要があります。さらに、各委員から御指摘がございましたが、必要な財源を確保することに加えて、第三者によるチェックの下で、適切なマイルストーンを設定して、事業計画の見直し等を判断する仕組みを設けること、また、補助金一辺倒ではなく、事業者のステージに応じて、出融資や債務保証などもきめ細かく活用して、ガバナンスを強めることなども必要不可欠となります。
次に、中小企業政策に関しては、競争力や労働生産性の向上などを目的とした経済政策としての側面と、弱者保護などを目的とした社会政策としての側面とが混在している印象を受けます。今後に関しては、経済政策としての側面により一層ウエートを置くべきであり、一律の資金援助等を行うのではなく、価格転嫁対策や経営改善支援などへの徹底的な重点化を行うことがポイントであると考えます。
また、弱者保護などを目的とした社会政策という観点からは、将来的には企業を一律に保護するのではなく、弱い立場の個人により一層焦点を当てて、産業と企業の新陳代謝を前提としながら、失業なき労働移動を加速し、働く人々の命と暮らしを守るというインクルーシブな政策へと移行する必要があります。
外交分野に関しても、国民の血税を使うわけですから、量ありきではなく、費用対効果等を踏まえた質的な改善が不可欠です。中長期的に我が国の国益を最大化するような質の高い総合的な外交戦略に基づいて、必要に応じて中立的な第三者の目も入れつつ、個別プロジェクトのアウトカムをデータで丁寧に検証することなどを通じて、ODAや国際機関等への拠出などのプライオリティ付けや、スクラップ・アンド・ビルドをしっかりと行っていただきたいと思います。
最後に、デジタル分野に関しては、行政事業レビューシートを有効に活用することなどを通じて、情報システム予算の総額をコントロールする目標を設定するべきであると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕先ほど最後と言いましたが、オンラインで田中委員の御発言の希望があるようですので、田中委員の御発言で最後にします。お願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。感謝申し上げます。私も短くコメントさせてください。
まず、中小企業の労働生産性が低いという14ページの図、皆様もお話しされていましたが、IT導入やGX支援は、人手不足を補う対策として、生産性の向上も目的にしてきたところですから、やはり中小企業の支援の在り方は、臨時的な運転資金の補助という形にとどまらずに、事業計画、経営改革、人事戦略、これらの支援と指導とセットで対応していくことが肝要と考えます。また、支援の特例等が長く残っているのはなぜなのかの検証は引き続き必要であると思っております。
また、デジタル分野について、行政レビューシートもやはりデジタル領域の時間軸においてタイムリーにすべきですし、運用の中止や廃止の判断も迅速であるべきかと思います。ベンダーのこともありましたが、経営や財務の担当も導入まではよくチェックをされると思うのですが、導入後の成果や活用が十分になされているかどうかのチェックは少し甘いところもあるのかなという事例が散見されます。そこでサポートを入れるのか、あるいは投入してきた予算が有効になるよう道筋で知見を入れることができるように、仕組みを強化していただきたいと思います。
また、最後1点、外交については、ODAについて時折目にする生活者アンケートの調査結果を見ますと、国内でも十分な理解や賛同が得られていない部分もあるかと思います。外交戦略として重要な活動と承知していますが、対象国や地域において、民間との連携により、国内外の両方から納得感が得られる支援の在り方と情報発信が待たれていると思います。
また、グローバルサウス支援は大手企業にも入っている中で、ここは投資の戦略要素も大きいでしょうから、その結果や経済効果の発現状況をぜひ共有いただきたいと思います。
以上、よろしくお願いいたします。お時間ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、事務局から、先ほどの吉川先生の第三者チェックに関するご質問についてご回答をお願いいたします。
〔寺﨑主計官〕吉川先生から、第三者による評価の方法、人選の検討は始まっているのかという御質問ございました。事務的には、主に半導体政策全体という意味では内閣府と、それから、個別事業のPDCAという意味では経済産業省に議論させていただいております。まずは支援に当たってマイルストーンを設定すること、そして、第三者が中立的な立場で評価すること、それから、その評価に基づいて事業計画を見直していくことを、まず大枠で決めることが重要であると思っています。
〔増田分科会長代理〕よろしいでしょうか。
それでは、本日の議題は以上とさせていただきます。
この後、本日の内容は私から記者会見で御紹介させていただきます。
次回は、11月11日月曜日15時から歳出改革部会を開催いたします。議題は、農林水産、文教・科学技術を予定しておりますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは、本日これにて散会いたしたいと思います。どうもありがとうございました。
午前11時00分閉会