財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年10月28日(月)14:00~15:40
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
- 防衛
- 社会資本整備
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3.閉会
部会長代理 |
土居丈朗 |
進藤大臣政務官 端本文書課長 前田次長 中山次長 吉野次長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
河村小百合 熊谷亮丸 佐藤主光 武田洋子 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 末澤豪謙 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
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オブザーバー |
大槻奈那 芳野友子 平野信行 |
午後2時00分開会
〔土居部会長代理〕それでは、本日は冒頭からカメラが入りますので、そのままお待ちください。
(報道カメラ入室)
〔土居部会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会を開催いたします。
皆様におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
議事進行につきましては、部会長代理の土居が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、冒頭から進藤大臣政務官にお越しいただいております。誠にありがとうございます。
本日の議題は、「防衛」、「社会資本整備」でございます。
それでは、よろしいでしょうか。
それでは、報道関係者の皆様は御退室をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔土居部会長代理〕それでは、議事に移らせていただきます。
まず、横山主計官から、「防衛」につきまして、簡潔に御説明をお願いいたします。
〔横山主計官〕防衛担当主計官の横山です。
資料1について御説明いたします。
3ページ目をお願いします。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。最近では中国・ロシアによる領空侵犯や中国海軍空母による接続水域航行などがございました。同盟国・同志国との協力・連携を強化しつつ、日本の防衛力を強化していくことは喫緊の課題となっております。
4ページ目、一昨年の12月に閣議決定された防衛力整備計画においては、令和5年度から9年度までの5年間の防衛力整備の水準は43兆円程度、契約額は43.5兆円程度とされております。いずれも前回の計画、すなわち2018年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画と比較して大幅に増加しています。
5ページ、防衛力整備計画においては、攻撃されない安全な距離から相手部隊に対処するためのスタンド・オフ防衛能力、ミサイルなどの空からの脅威に対応するための統合防空ミサイル防衛能力、無人装置による情報収集等の能力を強化する無人アセット防衛能力、十分な弾薬の確保あるいは施設の強靱化などの持続性・強靱性といった七つの柱が掲げられており、この方針に沿って各年度の予算編成を進めております。
6ページ目、5年間の計画期間の折り返しとなる令和7年度予算編成においては、引き続き、既定の方針に沿って財源を手当てするとともに、為替や物価の変動がある中でも、防衛力整備の一層の合理化を図りながら、防衛力の抜本強化を図りつつ、計画で定められた経費の総額を堅持していく必要があると考えております。
7ページ目は、参考として、今ほど御説明した既定の方針に関して、主なものを掲載しております。
8ページ目、また、2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略においては、防衛力の抜本的強化とそれを補完する取組を合わせて、令和9年度においてGDPの2%に達するよう、所要の措置を講じることとされております。この方針に沿って、令和9年度には安全保障に関連する経費、具体的には防衛力整備計画対象経費、米軍再編、海保・PKOなどの経費、加えて防衛力の抜本的強化を補完するものとして、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、我が国及び同志国の抑止力の向上等のための国際協力の取組に係る経費を合わせて11兆円程度まで増額していくこととしております。
9ページ、一方で、有事の際、経済面の持続的な対応能力を確保するとともに、想定される大幅な財政需要の拡大に対応していくためには、平時において、経済・財政面の体質強化を図っていくことが不可欠と考えております。
続きまして、自衛官の処遇改善等と人口減少を踏まえた防衛体制の在り方について御説明いたします。
11ページ、まず、自衛官の採用・階級と年齢構成についてでございます。自衛官になるための主なルートとしては、自衛官候補生等を経由して「士」として任用される方と、防衛大学校等を経由して幹部候補生として任用される方がいます。また、自衛官においては、精強さを保つために、若年定年制、すなわち右側の表にございますとおり、一般の公務員と比べて、若い年齢で退職する仕組みが設けられています。あわせて、2から3年という期間を区切って自衛官を任用する任期制という仕組みがございます。
12ページ、自衛官の多くの方は、自衛官候補生または一般曹候補生として採用されていますが、募集対象人口の減少や労働需給の逼迫化などを背景に、こうした自衛官の方々の採用者数が急速に減少しています。この結果、下の表にございますとおり、特に士の充足率が低い状況となっております。
13ページ、こうした状況等を踏まえつつ、防衛力の抜本的強化に不可欠な人的基盤を強化する等の観点から、自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議が設置され、先週金曜日に第一回目の会議が開催されております。今後、この会議の議論を踏まえつつ、自衛官の業務の特殊性などを考慮しながら、処遇や生活・勤務環境の改善、自衛官の経験等を生かした各業界における活用拡大などを通じた新たな生涯設計の確立などについて、総合的に取り組んでいく必要があると考えております。
14ページ、一方で、今後若年人口が減少傾向で推移することを踏まえれば、省人化・無人化やAIの活用等による部隊の高度化、アウトソーシングの推進等を効率的に実施していくことに加えて、人口減少時代を見据えた組織の最適化を不断に行いながら、防衛力を強化していく必要があると考えております。
続きまして、最適な装備品確保と防衛産業の在り方について御説明いたします。
16ページ、防衛装備品の取得方法は、大きく分けて、国内開発、国際共同開発・生産、ライセンス国産、輸入に分類されます。それぞれの取得方法には、下の表に記載のようなメリット・デメリットが存在します。2027年度に向けて防衛力を強化していく上で、どのような取得方法が最適なのかという観点から、それぞれの防衛装備品の取得方法を考えていく必要があると考えております。
17ページ、防衛産業の現状についてです。左下のグラフにございますとおり、我が国の防衛産業は、諸外国と比べて売上げが小さく、かつ、売上げに占める防衛部門の比率が低いという特徴がございます。また、我が国の防衛産業は、日本の防衛省のみを主たる顧客とすることによる市場の限定性や、独自仕様を求められることによる少量多種の開発・生産といった課題に直面している、あるいはレピュテーションリスクが存在するといった指摘が見られます。こうした中、一部には防衛産業から撤退する動きも見られたところでございます。
18ページ、足もとでは防衛関係費の増加に伴い国内防衛市場の規模は拡大しておりますが、こうした状況がいつまでも続くわけではございません。防衛産業の体質強化を図り、防衛力の抜本的強化に資する装備品を国内で調達していく上では、例えば防衛装備品の海外移転の推進などによって市場拡大していく必要があると考えますし、さらには業界自らが防衛産業の今後の在り方について考えていただく必要などもあるのではないかと考えてございます。
19ページ、防衛装備品の多くは、その特殊性に起因して、調達時に「原価計算方式」を採用しています。その仕組み上、「製造原価」は原価を積み上げていく上でのベースであることを踏まえれば、「製造原価」の妥当性の判断が重要と考えております。一方で、本年6月に公表した予算執行調査において、「製造原価」に含まれる加工費を計算するための加工比率の算定根拠の考え方などが各社ばらばらであることが判明しております。
20ページ、プライム企業と防衛装備庁の「情報の非対称性」から、防衛装備庁による原価の適正性の検証は容易ではありません。こうした中、この非対象性を緩和するための取組として、防衛装備庁は「コストデータバンク」の整備を進めていますが、データ移行の遅延等により、運用開始が遅れております。コストデータバンクについて、早急に整備を進めるとともに、これが早期に機能するよう、データベースの充実化などを進め、調達コスト低減に向けた取組を進めていただくことが不可欠と考えております。
私からの説明は以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、菅野主計官から、社会資本整備につきまして、簡潔に御説明をお願いいたします。
〔菅野主計官〕ありがとうございます。社会資本整備について、資料2に基づいて御説明させていただきます。
3ページ、防災・減災、国土強靱化の取組は、直近約10年間続いておりまして、平成30年からは「3か年緊急対策」ということで3年間で7兆円、令和3年度からは「5か年加速化対策」ということで5年間で15兆円程度を目途ということで、今、実施してきているところです。
この夏の骨太の方針の中で、この加速化対策等に続く「国土強靱化実施中期計画」について、今年度、早期に策定に取りかかるということがうたわれております。そうしたことから、今回、財審で取り上げさせていただきました。
4ページ、国土強靱化の予算の関係の推移ですが、5か年加速化対策については、基本的に短いほうの棒が示す補正予算でずっと実施してきております。
5ページ、今後の実施中期計画を策定するに際しては、PDCAサイクルをしっかりと回すことが重要であり、まずは、これまでの取組をしっかり評価・確認していく作業が必要であると思います。ハード整備の関係ですが、着実に取り組んでおり、効果が表れてきていると評価しております。
6ページです。ソフト対策も大きな効果を上げており、例えばダムですと、補償制度を用意し事前放流することによって、貯水量の枠を確保するということができており、八ッ場ダム58個分の枠を確保できております。
7ページでございます。これまでの取組は着実に成果を上げてきておりますが、他方、実際に発生した災害から課題も明らかになってきております。例えば、本年1月に起きた能登半島地震では、避難所の在り方についていろいろな議論がありましたし、8月の日向灘沖で発生した地震後に発出された南海トラフ地震臨時情報でも、情報提供の在り方について様々な議論がありました。こうしたことを踏まえて、実施中期計画を策定する必要があるのではないかということでございます。
8ページでございます。ここからは今申し上げた現行計画のPDCAをしっかり回してほしいということに加えて、次なる計画を定めるのであれば、考慮するべきではないかという要素を述べております。
一つ目は人口減少。財審でも再三触れておりますが、人口、生産年齢人口共に大きく減るということを踏まえてほしいということです。
9ページ、生産年齢人口の減少に応じて、建設業の担い手がこれからさらに減っていくことが見込まれます。したがって、そうした供給制約も考えなければなりません。
10ページです。インフラは整備後、維持管理が必要になりますが、都道府県レベルでも土木部門の職員を減らしている事例が見られ、地方公共団体のインフラ管理能力を踏まえた投資が必要になるのではないかということでございます。
11ページでございます。こうした長期傾向に加えて、さらに足もとでは人手不足感が非常に強いということです。建設業者の手持ち工事量は高止まりをしておりますし、労働者の過不足感はバブル期並みの不足になっております。
12ページです。直近では、やはり能登半島地震からの復旧が最重要課題です。さらに、最近は雨の降り方が随分変わってきておりまして、右下のグラフですが、災害復旧費、従前は年2,000億円程度だったものが、近年は5,000億円弱でございまして、こうしたことの対応も念頭に置きながら、計画を考えていく必要があると思います。
13ページは要点を簡単にまとめているところでございます。3番目の丸、将来における総人口の減少等々を踏まえますと、ハード投資の総量を拡大させるのではなく、緊急に対応すべき事業を確実に実施していくことが求められるのではないかということでございます。
14ページ、その上で、総額を増やさずに実施すべき事業を実施するために、こうしたアイデアがあるのではないかということを並べております。このページにおいては、都心部における市街地再開発事業における国費配分の例を左側に並べさせていただいております。都市の国際競争力の強化の必要性というものは否定されませんが、防災・減災対策の緊急性等々を踏まえれば、さらに緊急性の高い事業に重点化する余地があるのではないかということです。
15ページでございます。住宅の戸数が世帯数の増加に応じて増えてきていますが、これから世帯数が減少することを鑑みますと、住宅の取得を支援する必要があるとしても、新築住宅の取得を支援する必要はあるのか。そうした事業を見直すと、まだ財源が出てくるのではないかと考えております。
16ページです。防災事業として個別に実施されている箇所をよく見ますと、緊急性の高いとは思われない箇所で実施されていると見受けられる箇所があります。さらにメリハリをつける余地があるのではないかということです。
17ページです。道路の事業について、新規に着手している事業の費用対効果は、かつてに比べると低下傾向にあります。また、公共事業全般では不用率はあまり高くないわけですが、個別に見ていくと高い事業があり、さらに見直す余地があるのではないか。
次に18ページ、PPP/PFIについてです。これも財審で再三議論いただいておりますが、事業費の抑制でPPP/PFIを活用することができるのではないか。大阪市などでは、水道の耐震化でもPPP/PFIを使っており、強靱化の文脈でも使えるのではないかということです。
それから19ページ。全てがハード整備で対応できるわけではありません。土地利用の在り方をしっかり見直し、場合によっては規制をかけていただくことで、より本質的な防災・減災対策につながっていくのではないか。そうした意味でも、コンパクトシティ化につながる立地適正化計画との連動をより強化するべきではないかということでございます。
20ページ、様々なソフト事業も効果を上げております。天気の予測精度がさらに上がれば、先ほど申し上げたダムの事前放流の余地も増えるわけでありまして、そうしたソフト事業を組み合わせることで、あるいは情報提供方法をより改善することで、国土強靱化の目的を達成することができるのではないか。
21ページ、民間活力の活用についてです。災害発生時には国だけではなく、インフラを不断に運用している鉄道事業者や、避難物資の管理に生きるノウハウを有する物流事業者など、民間の方々のご協力を活用できるのではないか。
22ページです。建設資材価格の高騰が見られ、足もとでも高止まりしているとはいえ、上昇基調は緩やかになっております。
また、23ページですが、事業の工夫によって、より迅速に、より少ない費用で効果を上げることができるという事例を挙げております。トンネル点検などでは、自動化することで、より効率的に実施できるのではないかということです。
24ページ目、現在建設国債などで公共事業を実施してきているところですが、持続的に事業を実施するということであれば、受益と負担の在り方を考えていく必要があるのではないか。一例として、高速道路の更新事業を挙げており、無料開放の時期を後ろ倒しすることによって財源を確保しておりまして、参考になるのではないかということを申し上げております。
25ページは今申し上げたことをまとめております。
27ページ、整備新幹線についてです。右側の図にありますとおり、整備新幹線は、これまで随時、着工、開通してきており、残る区間は、北陸新幹線の敦賀から新大阪と、西九州新幹線の佐賀県区間の二つになっております。これまで、整備新幹線の着工に際しては、安定的な財源の確保をはじめとした5条件を掲げ、この5条件の確認後に着工してきております。現状、これを変更する事情もないので、今後ともこの着工条件を維持する必要があるのではないかということ、またほかのリスクもしっかり踏まえていかなければならないということを申し上げております。例えば、長大トンネルが非常に多い場合、事前にボーリングなどを通じて地質を把握したとしても、把握し切れない大きな岩が見つかったなどで、工事の完成時期が遅れるといった事例が北海道新幹線で見られております。
また29ページですが、トンネルを掘っていくと、事前に重金属などが含まれる土壌があると分かっていた場合であっても、さらにまた出てくるということで、新たに受入地を確保しなければならない。あるいは陥没事故への対策で、さらに完成時期が後ろ倒しになるリスクがあるということです。
それから30ページですが、鉄道事業の特殊なところとして、長い区間のうち、ごくごく僅かな区間が開通できない、工事ができないといっただけで全体の開業時期が遅れることがあります。そうしたリスクを踏まえて、あらかじめ地方公共団体の完全な同意を取ることが重要であります。
次に31ページです。事業費は、事前に見込まれたものよりも、いずれも結果的には高くなっていますので、物価上昇などをしっかり織り込んで、事業費を見込むべきであるということ、また、そこから更に上がるリスクなどを踏まえて、事業費を議論していただく必要があるということをここで申し上げております。
32ページですが、実際にそうしたリスクが諸々あるにもかかわらず、「見切り発車」をしますと、整備の効果が十分発揮できないということが事例としてありますので、そうしたことにならないようにする必要があります。
33ページから財源の話になります。整備新幹線の整備の主たる財源は、既に開業した整備新幹線の区間から上がってくる貸付料であり、貸付料で賄いきれない残った部分を国と地方で2対1で分けることにしております。したがって、貸付料をしっかり徴収することが、国民負担、住民の皆様の負担を軽減することにつながるわけです。現在30年でJRと契約を結んでおりますが、31年目以降も、しっかり徴収していく必要があるということです。
34ページ。貸付料の算定に当たって、やや保守的に見ているところがありますから、需要の実績をしっかりと反映できるような貸付料の算定方式にしていく必要があるのではないか。あるいは、鉄道料金収入のみならず、最近では周辺的なものによる利益もありますので、そうしたものも貸付料算定の考慮に入れていく必要があるのではないか。
35ページ、現在、整備新幹線の整備に際しては、鉄路に加えて、駅舎も鉄運機構が整備しておりますが、大都市部における、誘客能力の高い、潜在力の高い施設については、民間主体で整備していただくことがコスト低減にも資するのではないかということを申し上げております。
36ページはまとめです。私からの説明は以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
本日は、芳野委員、また、御欠席の安永委員から意見書を提出していただいております。意見書は各PC端末に格納されておりますので、お目通しをお願いしたいと存じます。
それでは、事務局説明に関しまして、委員の皆様から、御意見、御質問を頂戴いたしたいと存じます。会場にいらっしゃる委員の皆様には、御意見、御質問がある場合は、ネームプレートを立てていただければと存じます。オンラインで御参加いただいている委員の皆様は、御意見、御質問がある場合には、「挙手する」ボタンのクリックをお願いいたします。なお、限られた時間内で、できるだけ多くの方に御発言いただくため、御発言はできる限り手短に、3分以内でお願いしたいと存じます。
それでは、会場から5名、オンラインから5名という形で、この後の御発言をお願いすることにいたします。
それでは、私から右側の広瀬委員から順番に、まず5名、会場から御発言をお願いいたします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
私から、社会資本整備について、2点申し上げたいと思います。
1点目は、13ページのまとめの三つ目の丸に関して、最近自然災害が毎年のように発生しているわけですが、くわえまして、今回の能登地域のようにこれまであまり想定されなかった複合災害の発生率が高まっております。能登地域では、インフラの脆弱性が改めてクローズアップされましたが、被害が拡大・長期化しました。珠洲市商工会議所が実施した調査によりますと、質問に回答した企業286社のうち31%にあたる89社がまず地震で被災し、そのうちの59社が9月の豪雨でも被害を受けており、「二重災害」となっていることがわかりました。さらに、二重災害を受けた事業者の中には、土砂崩れによって道路が寸断されて、いまだに事業再開が難しいというケースもございます。そうした状況を踏まえますと、これまで以上に、国民の生活、国民の命あるいは生業を守っていく必要がありますが、その際に、メリハリをつけることはもちろん必要ではありますが、単なる地方の切捨てにならないように。是非将来につながるような、あるいは地域の将来を十分に踏まえながらのインフラ整備が、これから必要になるのではないかなと思っております。
2点目は、25ページのまとめにおいて記載されている、官と民の関係です。当然のことながら、官だけでは難しく、これからも民間活用が必要です。その場合、防災対策は、その土地それぞれの産業政策あるいはまちづくりと一体的に進めていかなければ、その効果も限定されます。是非それぞれの地域の企業が参加できるような形の政策、地域と密着したような防災対策あるいはインフラ政策、そうしたものが必要なのではないか。それが結果的には、最少のお金で最大の効果を得ることにつながるのではないかなと思っております。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
社会資本整備について、2点意見を申し上げます。
1点目は、今後、実施中期計画が策定されるということですが、その際には、グランドデザインを描いた議論を是非お願いしたいと思います。人口減やインフラ管理に加え、国民の命を守るという観点から、人口問題と防災・減災を別々に議論するのではなく、それら相互の関係を踏まえた大局的な国土の在り方に関する議論が求められていると思います。
2点目は、実現していくための実効性を考えますと、時間軸を考慮して早めにグランドデザインを示し、実現に向けた規制とインセンティブの在り方を議論する必要があると思います。
繰り返しになりますが、インフラコストを抑制するというコストの議論だけではなく、日本の国民を守るという視点で、是非大局的な議論をお願いしたいと思います。
防衛に関しても2点申し上げます。1点目は防衛の自給力という観点で、二つのレジリエンスが重要と考えます。一つは御説明いただいた経済・財政のレジリエンスで、明らかに重要性を増しています。昨今の国際情勢を踏まえますと、財政余力の確保や経済の体質改善といった力を備えておく猶予がより短くなっていると思います。もう一つのレジリエンスはサイバーレジリエンスで、サイバー攻撃の備えに対する優先度合いを上げる必要があると考えます。
2点目です。人口減を踏まえた防衛体制の在り方についても御説明いただきました。AI活用、無人化・省人化が決定的に重要であることは御説明いただいたとおりですが、予算においても、上位に据えて考えることが不可欠です。そのために、専門人材を確保しなければ、AI活用、無人化も実現できないと思います。
また、民間との連携も重要な要素になります。人手はどこも限られており、日本全体でDX人材が不足している中で、うまく連携し、最大限活用していくことも重要と思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕では、平野委員、お願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
まず、防衛の総論について2点申し上げます。
1点目。今回の総選挙において自民党の石破総理大臣は国を守る、すなわち安全保障環境の変化と防衛力の強化を第一に掲げましたが、残念ながら議論は深まりませんでした。ただ、基本的な認識は正しいと思っていますし、大きな世の中の流れに対応しようとするものであると理解しています。
しかし、防衛力整備計画の5年間の予算が、なぜ43兆円なのか。戦略、戦術あるいはテクノロジーの変化などに即して、何を変え、どういった姿を実現するのかについて十分な説明がなされてきたとは言い難いと思います。この政策を進めるのであれば、もちろん、負担の議論を先送りすべきではありませんが、今申し上げたような議論をきちんと行う必要があると思います。
もちろん議論を白紙に戻すつもりはないのですが、そもそも16ページでも御説明いただいたとおり、計画策定時から、インフレと円安が進んでいるので、何らかの見直しは必須であると思います。本当に最適な戦略、戦術に基づいて、適切な装備品を購入することになっているのかなど、中身を再点検して、国民に対してしっかりとアカウンタビリティーを果たすべきであると思います。
2点目。武田委員も御指摘されておりましたが、防衛力の基本とは有事への対応力です。そのための財政余力が従来にも増して重要であり、抑止力にもなるという国民的な理解を是非進めていきたいと思います。
次に、各論では、防衛産業の基盤強化について申し上げます。先ほども御指摘がありましたが、日本の防衛産業の高コスト・低生産性体質の原因は二つあります。一つは、対象とする市場が狭隘、すなわち国内にとどまっており、かつ少量多品種の生産を求められてきたこと。もう一つは、それにもかかわらず市場参加者の統合が進んでこなかったことです。
ではどうするかですが、前者については、今後、発注額の増加と移転規制の緩和によって市場は拡大する可能性があります。また、我が国の防衛産業が同盟・同志国のフレンドショアリングの中でサプライチェーンを構成していくことは、安全保障上のメリットに加え、産業基盤の強化にも資すると思います。
しかしながら、日本の装備品は、ガラパゴス化と言われることもあるようですが、自衛隊向けのハイスペックあるいは独自仕様となっている場合が多く、ライセンス生産品以外は汎用性に乏しいのが実態です。そのため、本当に競争力を有していて、輸出できるものは、レーダーなどの一部の製品に限られているとも言われています。
したがって、国は、日本の防衛産業を育成するために、何を目指すのかを明確にした上で、必要に応じてスペックを見直すとともに、装備品の移転に関しては、国が中心となって戦略的なマーケティングを行う必要があると思います。
後者については、市場参加者の統合が必要です。今後、サプライチェーンを維持・強化し、かつコストを下げるためには、競争法上の問題はありますし、また複数の調達、デュアルソーシングの要請があることも承知しておりますが、17ページ、18ページで示唆されたとおり、完成品メーカーあるいは場合によっては部品メーカーの間での、垂直的・水平的な統合を後押しする国の政策が必要になると思われます。
社会資本に関しては、1点だけ、集住化を進める上での規制的な手法について申し上げます。今回のテーマである国土強靱化の費用対効果を高める、あるいは人口減少と高齢化が進展する中で、地方の社会基盤を維持して、地方経済の活力を保つためには、これまでも議論してきたとおり、コンパクト化が不可欠です。
しかし、2014年に立地適正化計画制度が創設されてから10年が経ちますが、対象自治体の約半数で計画がいまだ策定されていない、あるいは計画を策定しても、策定しただけで、あまり何もやっていないという自治体が6割を占めるというデータがあるように、都市機能あるいは居住地の誘導は一向に進んでいないのが実態ではないかと思います。これまでは補助金という、どちらかというとインセンティブをドライバーとして施策の実現を目指してきたわけですが、地方の自主性に委ねるのはもはや限界ではないかと感じます。以前、地域医療構想で病床削減が進まなかったケースについても申し上げたことがありますが、これも同様ではないでしょうか。さらに、都市の人口分布は自然と分散化する傾向を免れないという最近のシミュレーション結果もあるようです。もちろん私権の制約という難しさはありますが、諸外国にも様々な事例があるようですので、19ページでも示唆されているとおり、土地利用制限規制の厳格化など、国による規制的な手法の導入を是非真剣に考えていただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕では、熊谷委員、お願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。
最初に、防衛について3点申し上げます。
第1に、武田委員、平野委員も御指摘されましたが、防衛費は経常的に支出される経費ですから、安定財源を確保することが不可欠です。経済力は国力の源泉です。我が国が安定財源を確保することなく国防費を増やせば、経済・金融・財政の脆弱性が強まり、逆に他国に付け入る隙を与え、国民の安全が脅かされる事態を招きかねません。こうした観点からは、防衛力強化の財源を確保する増税の開始時期に関しては、本年末に確定することが必要不可欠であると考えます。
第2に、防衛費をめぐる最大の問題点の一つは、透明性が低く、ガバナンスが十分に効いていないことであると考えます。プロジェクト管理が十分に機能していないと見られることなどの構造的な要因に対して、徹底的にメスを入れるべきです。国民の血税を使用するわけですから、第三者、外部の目を入れることや、対外的な説明責任の強化などを通じて、実効性のあるガバナンスが働くような仕組みを構築することが喫緊の課題であると考えます。
第3に、釈迦に説法ではございますが、そもそも財政支出に関しては、我が国にとって中長期的に必要不可欠である、もしくは国民が本当に望んでいるなどの観点から、しっかりとプライオリティー付けをして、優先度の高い政策にメリハリのある予算配分を行うべきです。岸田政権下では、政策手段等に関する細かい賛否は当然ございましたが、大筋において、民意にきめ細かく目配りしつつ、我が国にとって中長期的に必要不可欠である政策への重点的、優先的な予算配分が行われてまいりましたが、現在、自衛隊における深刻なハラスメント問題等が露呈する中で、大多数の国民が自衛官の処遇改善を非常に高いプライオリティーで望んでいるかといえば、私には到底そのようには感じられません。この施策の必要性自体を否定するつもりは全くございませんが、この施策のプライオリティー、優先順位が明らかに民意と大きくずれている可能性があるという点だけは、誠に僭越でございますが、忌憚なく指摘しておきたいと思います。
次に、社会資本整備に関しましては、御説明いただいた内容に全面的に賛同いたします。特に、今後予定される実施中期計画の策定に先立ち、これまでの国土強靱化の取組によりどこまでが達成され、さらにどのような課題があるのかについてしっかりとした検証が必要であるという御指摘には強く賛同いたしますので、PDCAサイクルを強化し、EBPMを推進していく中で、今後の大幅な人口減少や人手不足などを視野に入れつつ、社会資本整備に関しても、優先順位付け、プライオリティー付けをより一層強化していただきたいと考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔土居部会長代理〕では、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
私も御提案いただいている面、二つの議論において、全面的に賛同いたします。先ほどから皆様もおっしゃっておりますが、これだけ内外共に、地政学を含め混乱している中だからこそ、財政の健全化をしっかりと保持することが一番の防衛でもあると考えております。
その中で、防衛と社会資本整備についていくつかお話しさせていただければと思います。まず、防衛ですが、処遇改善、これは長年の課題で毎回議論があります。そうした議論の中でも、今年、去年以上に変わってきているのは、生成AI等の技術の進化やロボティクスの活用に加えて、高齢人口の増加です。自衛官は比較的早い年齢での引退となっておりますが、資料でもございますとおり、御高齢の方々にも参画いただく機会を拡大させていくことも一考に値するのではないかと思っております。
また、研究と産業の在り方について、研究者、企業、株式市場等にも、防衛ということについて、少しバイアスがあるように思います。これについては、企業、それから企業を評価する方々とのコミュニケーション等々を行いつつ、ベンチャー支援等も是非とも行っていただきたいと思います。
次に社会資本整備についてです。キーワードは、挙げていただいているとおり、プライオリティー付け、民間活力の活用、ソフト対策であると思います。まず、第一に優先順位付けについて、今皆様からもありましたが、将来世代の安全性にプライオリティーを置いた上で、グランドデザインをつくっていくということでしょうが、費用対効果についてのデータが、マクロレベルではまだまだ十分に取れていないのではないかと思います。費用と効果と時間軸の三つについて、しっかりと検証した上で行っていただきたいと思います。
そして、民間活力の導入について、14ページに東京都の事例が挙げられておりますが、民間の市街地再開発事業等にこれだけお金が入っていることの是非も含めて、やはり、防災と人命に多くの資源が割かれることを重視するとともに、効率化を進め、経済成長に関係する部分については民間に一層委ねる、そうしたことを目指していただきたいと思います。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕それでは続きまして、オンラインで挙手されている方々に、御発言をお願いいたしたいと思います。
福田委員、河村委員、田中委員、神子田委員の順に、御発言をお願いいたします。
それでは福田委員、よろしくお願いいたします。
〔福田委員〕ありがとうございます。
私からは、3点コメントさせていただきたいと思います。
まず防衛についてです。既に平野委員や熊谷委員から御指摘もありましたが、防衛といえどもその中身の再点検は極めて大事であると思いますし、それをチェックするための第三者的なガバナンスを働かせることも大事なのだろうということは、私もそのとおりであると思います。ただ、専門性もさることながら、国家機密に関することがかなりありますので、通常の企業のガバナンスを働かせる場合とかなり質は違うと思います。こうしたもののチェックを一体どうやっているのかという仕組みづくりについて、軍隊なのか、防衛なのかという違いはありますが、諸外国も同じ問題に直面しているはずです。財務省でも諸外国において防衛費あるいは軍事費の無駄遣いが一体どのようにチェックされているのかということを少し調べてみてもらい、日本で適用できるのか、できないのかについてこの財審で議論できるとよいのではないかと思いました。
第2点は人材についてですが、これは極めて厳しい状況にあります。自衛隊だけではなくて、日本全体として人手不足が本当に深刻になっております。その際特に大事なのは、再就職がいかにうまくいくかです。定年まで勤める方はともかくとして、例えば任期制の自衛官で非常に若いときに自衛隊を離れて再就職という方は、数としては恐らく多いのではないかと思いますが、そうした方々がうまく再就職できるような仕組みづくりを整えることは大事なのだろうと思います。
現状でも、自衛隊の中で技能取得の教育をやっているということが自衛隊ホームページに記載されているのを拝見しましたが、やはり自衛隊で何年間か勤めて、その後、そこで身につけた技能を生かして一般企業で働けるような仕組みにすれば、もう少し任官する人も増えるのではないかと思います。規律が正しいという売りに加えて様々な技能を身につけてもらうことで、防衛と直接は関係のない企業に再就職しやすいような仕組みづくりを整えれば、もう少しいろいろな人が集まってくるのではないかと思います。同時にそこで身につけた技能を日本のほかの企業でその後生かしてもらえれば、ほかのセクターでの人手不足の解消にも役立つのではないかなと思います。
3点目は、たまたま防衛と国土強靱化が同じ日にセットされていたのでコメントさせていただきますが、災害復旧に関して言うと、日本では自衛隊が非常に重要な役割を果たしているという特殊な事情がございます。これはどのように評価するかが難しい問題で、自衛隊の本来の業務は日本の国土を守ることであり本来災害の復旧ではないわけですが、必要があれば派遣するということになっています。
ただ私の理解ではその費用は防衛費から払われていて、災害復旧のための国土強靱化の費用ではないのではないかなと思います。また、急遽招集された自衛隊員が、実家に帰っていたら、急遽召集されて戻ってくるのに自費を払うということや、必ずしも災害復旧に適したとは言えないような戦闘用の装備を身に着けているということもあります。実際に復旧で極めて大きな役割を果たしている自衛隊の位置付けをもう少し議論する必要があるのかなとは思います。
それと同じ文脈かもしれないのですが、災害復旧や国土強靱化について縦割りで議論をするのではなく、ほかの事業、問題とのバランスで議論していく必要があると思います。例えば災害の起こりやすい地域だが、ダムや堤防を造るのは難しいという御指摘もありましたが、それはまさにまちづくりや、例えば水力発電をどうするのかというエネルギーの問題とも絡んでくると思います。縦割り行政ではなくて、もう少し横のつながりも考えながら国土強靱化の問題を考えて、必要なものはやるが、効率的なコストを心がけるということは大事なのだろうと思います。
私からは以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御指名ありがとうございます。防衛、社会資本整備の御説明よく分かりました。伺っていまして、やはり人口減少の問題が非常に大きな影響を及ぼしているということを痛感した次第です。それぞれいろいろ考えていかなければいけないところが多くあると思います。
まず防衛についてです。今既に福田委員などからも御指摘いただいていますが、例えば12ページ、採用状況は極めて厳しいものとなっております。計画達成比率が2割から3割となっており、全体のストックベースで見ても、下の表が示す通り、全体の7割弱しか充足できておりません。これで有事に対応できるのか、疑問視せざるを得ません。
安全保障環境が変化している中で我が国は予算を思い切って増額すると言っていますが、お金だけ増やせばできるという話では決してないと思います。財審は予算をどうつけるかということが議論の中心ではありますが、先ほど熊谷委員もおっしゃっていたとおり、人の確保がきちんとできないと何ともなりません。お金だけつけても絵に描いた餅のようなことになってしまうので、そうなってはいけないということを、もっと強く打ち出したほうが良いと思います。
14ページでグラフをつけてくださって、すごくよく分かります。自衛官の必要な数は人口減少に伴って比例して減っていくわけではないのですよね。世の中全体でどこの業界も人手不足の中で、自衛隊が今までと同じぐらい、もしくは今まで以上に人数を確保しなければいけないということは、ほかの職場に比べ魅力を高めることができないと人を集めることが難しいということが現実問題としてあるのではないかなと思います。
自衛隊に対する世論についてのアンケート調査の結果を見たことがありますが、国民からのイメージは特に近年高いです。やはり安全保障環境が厳しい中でよくやってくださっていたり、また災害対応で非常に献身的にやってくださっていたりするのを見て、国民からの評価は高い。職場として非常に尊敬されているのに、人が集まらないのは、処遇の問題に加え、女性の自衛官に対するハラスメントの事案がありましたが、やはりコンプライアンス、ハラスメントに関する問題もございます。そうした問題をきちんと改善していかないと、若い方はなかなかいらしていただけないのではないかというところも、併せて主張したほうが良いのではないかなと思います。
次に社会資本整備についてです。これも人口減少の中で、これだけ災害が頻発する中でどのように対応していくのかということは、財政の面でお金に余裕は全然ないわけですから、御説明くださったとおり、優先度の高いものは何かということをよくよく考えて、選別しながらやっていかなくていけないのではないかなと思っております。
同時に財政余力の確保も重要だと思います。災害対応は絶対に欠かせません。また、14ページで上下水道の耐震適合率についての指摘がございますが、近年の台風などの災害を見ていると、内水氾濫の問題もあります。様々な自治体の対応を見ていると、例えば不交付団体で財政力に余力があって、内水氾濫対策や雨水貯水槽の整備ができている自治体と、同程度の雨が降っている近隣の自治体との間で、被害状況に差がついているという事例もあります。上下水道の耐震適合率もこれだけ差がついているということは、財政余力の差がはっきりと出ているように思われます。これだけ差がついてしまっているということはやはり問題でありますので、基本的に地方の仕事ではありますが、国としてどう促していくのかを考えることも必要なのではないかと思います。
また、次の15ページ、これまで日本が新築住宅の取得ばかりを後押ししてきたことはそのとおりであると思います。本当に政策金融なども使って、新しく住宅を造ってもらえれば景気の押し上げ効果になるという考え方が、基本的に長年にわたってあったと思います。しかしもはやそうした時代ではないと思いますので、財源に余裕がだんだんなくなってきている状況を鑑みれば、新築住宅だけを取り出して取得を財政支援することは、もうやめにすることを考えていく必要があるのではないか思います。
最後に高速道路についてです。高速道路についてやはり受益と負担のことをきちんと考えるべきではないかということも御説明くださっていて、本当にそのとおりであると思います。ただ、誰かが料金払ってくれればまた造ってよいのかというと、そうしたことでもなくて、やはり地方に行くと、ここに一般の国道がきちんと走っているのにわざわざ高速道路も造る必要があるのかなと思うこともあります。また、建設を開始して途中で止まってしまっているところがあったりもしますし、そうしたところをきちんと見極めて、やみくもに増やせばよいというものでもないと思いますので、先々の維持コストの問題もありますし、人口が減る中でどれだけ利用してもらえるのかということもありますし、そうしたところをきちんと考えてやっていくべきではないかなと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは、田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕ありがとうございます。私からは社会資本整備について2点、お話をさせていただきます。
まずハザードマップに関して、一級河川のうち9割近くでは作成が進んでいるところ、中小の河川では十分にできておらず6割程度にとどまるというお話も聞きます。人が暮らす場所で内水氾濫も起きまして、被害も甚大化していますので、流域治水の方針の下でハザードマップの迅速な整備をハード整備と併せて進めていくべきと感じています。それによって、ここにも示していただいたような利水ダムとの連携もさらに有効になって、地元企業や団体の連携も明確になり、地域住民へ示す情報も適切になるかなと思います。
インフラのレイヤーと市民生活のレイヤーと、そして企業が行っている事業BCPのレイヤーからも、ハザードマップの作成と事前復興と言われるような準備を連携して行うことで、非常時における効果の発現性を高める工夫はもっとできるのではないかと思っています。民間企業も、地域防災や、本社や社屋や工場などを拠点にした地域まちづくりに貢献すべく、本当に多くの取組をされているところが各地に目立ちます。それらの力を統合する動きは、効果的な予算活用に効いてくるはずであると思います。
もう1点は人材について、大きな課題でありますが、今例えば社会資本の分野、特に建設等の分野ではi-Constructionが進化していますが、このICTに対応する働き方改革や生産性革命はもちろん追求するとともに、これまで蓄積されてきた日本の土木等の匠の技をAIに徹底してラーニングさせるなどして、担い手人材を主役にしたような取組も同時に検討されますと、成果の実感が共有されるのではないかと思います。よろしくお願いします。
〔土居部会長代理〕それでは、神子田委員、お願いいたします。
〔神子田委員〕よろしくお願いします。私はまず防衛に関して3点申し上げます。今回の選挙でも各党から、防衛に予算を使うぐらいだったら社会保障に使うべきであるという意見もあったのですが、やはり台湾や尖閣などをめぐる安全保障環境を考えると防衛も大事である。ただし有効に使うということは引き続きやってもらいたいと思います。そして、軍事力を高めるというのは戦争をするわけではなく、いかに攻められない体制をつくれるかということであると思います。攻めてこられないようにするためには、経済能力もある国だときちんと認識してもらうことが大事で、その意味で財政余力を持っているということは非常に重要かと思います。
もう一つ。55歳で定年という自衛官の人材の話なのですが、先日NHKで、自衛官は55歳で定年なのだが、55歳はまだまだ体力もあるし活躍もできる、元気もある、そのうえ二種免許も持っている人が多いということで、トラック業界が鵜の目鷹の目で自衛隊員のOBを募集しているという企画がありました。それだけ他業種から求められるということは、自衛隊の中でもまだまだ活躍できる人材なのではないかということで、一律に55歳で定年させるのではなく、今自衛隊にいる、様々なスキルを身につけている人たちを活用していくということは大事なのではないかと思いました。
さらに、今回資料の5ページで少しだけ触れられていたのですが、防衛に関して宇宙の問題もあるということで、新しい日本の宇宙飛行士が月に降り立つかもしれないという話が先日話題になっていました。それはアルテミス計画でということで、文科省の予算だったと思うのですが、宇宙はやはり安全保障に関わってくる分野なので、そうしたものをまとめて安全保障環境の予算として見ていくという視点も大事かなと思っております。
次に社会資本整備についてです。まず、能登の地震について、私は能登半島先端までドライブしたことがあるのですが、現地へ行くと非常に道が細いしそもそもあまり道もなくて、この道が通れなかったらもうあそこへ行けないというところが多くありましたが、そうしたところにも人が住んでいるということでございました。結局そこで災害に遭って住めなくなった人には、仮設住宅を造るということになっているのですが、そうしたアクセスの悪いところに造ると追加で建設費用がかかります。これは予算面にも響いてくるので、以前から申し上げておりますが、そうしたアクセスの悪い地域に住んでいる方々を、アクセスの良い地域に移ってもらう働きかけをしていくことが結局、防災に関する予算、特に事後の対策を減らすことにつながっていくのではないかなと思っております。
また、能登地震の際にも言われて、特に原発は大きな被害を受けなかったわけですが、大きな地震と原発事故の複合災害にも対応していかないといけないという事態も予想されますので、この点について省庁横断的な対策を考えていくことが必要なのではないかと思いました。
最後に、先ほど何人かの委員の方々が新築住宅の話をされていたのですが、まさに今人口減少の中で、新築住宅を建築するよりも、今ある家をどう活用していくかが重要になっていると思われます。一つはリフォームであり、もう一つは各戸の災害に対する強靱化であるのですが、昨今の問題として空き家をどうするかという問題もあるので、この空き家を有効に活用するための金融のようなことが考えられてもよいかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕それでは会場に戻りまして、吉川委員から順にお願いいたします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。社会資本について一つ発言させていただきます。
御説明にあったように、防災・減災、国土強靱化、これは過去の支出の効果をしっかり確認することは当然であると思いますし、ハード面だけではなくてソフト面の工夫も考えると、これは財審でこれまでも言ってきたことですが、全くそのとおりであると思います。防災等を進めても、やがて来ると言われている自然災害、一番はっきりしているのは南海トラフあるいは首都直下地震、こうした災害が発生した際にはやはり非常に大きな財政支出を余儀なくされるということであると思います。
したがって、これにどう対応するかについては、この財審の場では言う必要もないことかもしれませんが、やはりできるときにはできるだけ財政の健全化を進めておくことが重要であると思います。そして、今言いましたような大型災害に対して本当に減災できるのかについては、少しはっきりしないところがありますが、非常に大きな被害が出るということは政府自身の推計でも言われておりますし、あるいは、100年前の関東大震災のときの被害を考えても、本当に大きな財政支出を余儀なくされます。そうしたときに財政上の混乱なく復興をしっかりとやり遂げるためには、できるときにできるだけ財政の健全化を進めておくことが重要だと思います。先ほど神子田委員が防衛との関係で財政余力という表現を使われたと思いますが、それは大変大事なことであると私は思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕佐藤委員、お願いいたします。
〔佐藤委員〕お願いいたします。では、まず防衛で3点、それから社会資本整備で3点申し上げます。
まず防衛費ですが、4ページにあるとおり、後年度負担というのが少し気になるのです。やはり今回の防衛力整備計画でも16兆5,000億円が後年度負担で、これは事実上の債務負担行為なので、本来であればこれは債務として認識したほうが良いと思います。つまり今年度負担があった分だけ支出として計上し、他方で収入面では、要するに公債収入のように計上して、あとそれを履行するところは元利償還金に充てるという、そうした形でやはり防衛費の全体像を見える化するということが必要かなと思いました。
二つ目です。これは各委員がおっしゃっているとおりで、6ページの防衛費の安定財源の確保につきましては、やはり経常的な支出については経常的な財源で賄うということが常識であると思いますので、これは昨今の状況を見ると政治的には難しいのは分かっているのですが、愚直に建議の中ではそれを言い続けるということが必要かと思いました。
三つ目は17ページです。防衛産業の育成という観点から見ると、また特に技術開発に関していうと、デュアルユースをもう少し意識したほうが良いのかなと思います。よく経済学ではバターと大砲と言いますが、要するにバターが民生で、大砲が軍事なのです。だが、この両者があたかもトレードオフであるかのような状況は、やはり日本の経済力を考えるととても耐えられないと思います。軍事と民生をどのように両立させていくかということについては考えていく必要があるかと思いました。
次に社会資本整備についてです。もちろん防災と強靱化を進めていく、また災害が起きる前に安全なところに住んでいただくということはあってしかるべきなのですが、それがなかなか進まないということであれば、やはり事前に復興計画をつくっておくということが肝要かと思います。つまり、もし災害が起きたらその後はこうしたまちづくりにします、災害が起きたときにはここに居住地域を移転させます、あるいは、道路はここまでにします、整備はここまでですといった、そうした復興計画をつくっておくということは、長い目で見れば強靱化につながりますし、また災害が起きてから、さあ復興どうしましょうというと必ずそこでもめますので、あらかじめ青写真があるということは迅速な復興のためには必要かと思います。
次に18ページ、PPP/PFIの普及について、結構なことなのですが、やはりボトルネックをもう一度洗い出す必要があるかと思います。例えばウォーターPPPの紹介がありましたが、水道法の改正もありPPP/PFIは水道事業でもできるようになってきているのですが、なかなか進んでいません。これはもちろん人々の反対、地元の反対もあるのですが、例えば地方債で資金調達するほうが容易である、あるいは自治体に専門人材がいないなど、こうした課題もありますので、本当に普及させるのであればボトルネックの検証はあってもよいかと思いました。
最後に19ページについて、いろいろな規制的な手段の一つとして考えるべきは、例えば火災保険や地震保険などの保険料に、自治体の防災努力、例えば居住誘導区域の設定やハザードマップの公表、避難誘導、また消火栓をきちんと作るや道路を広くするなどをきちんと反映させるような仕組みはあってよいと思うのです。今の地震保険などは建物の強靱性や立地などは捉えていますが、その周りがどうなっているのか、自治体がどのように地震の後の火災に対して措置しているのかなど、このようなことは全く考慮されておりません。また水害についても、安全な場所への誘導があるのか、そうした情報は迅速に伝えられるのか、こうした自治体側の取組は実は反映されていないのです。なので、こうした点もきちんと入れていくということが、速やかな自治体の防災・減災努力につながるかなと思いました。
以上です。
〔土居部会長代理〕遠藤委員、お願いいたします。
〔遠藤委員〕ありがとうございます。恐らく財務省も防衛省もこの点においては一致していると思うのですが、今、佐藤委員もおっしゃられましたが、国防と経済安全保障の重なりが拡大しているということは、米中の対立を契機にして明らかですし、我が国においてもそれが強く認識されたからこそ、この43兆円の予算が仕上がったのだと思っています。ただ、令和5年度予算、不用額が1,300億円程度あったということも伺っております。
今回防衛産業が取り上げられているので申し上げたいのですが、防衛産業政策はこれまで、どちらかというと防衛省による調達政策として語られてきたと思っています。令和5年6月に、防衛生産技術基盤強化に関する法制度が整備されて、製造設備などを国が持つことや資金の貸付け等の制度が盛り込まれたのですが、これは国内調達の基盤を維持するということにとどまっております。防衛産業を維持するという、産業政策的に考えると、当然グローバルの市場に目を向けて、いわゆる従来の防衛産業企業に加えて、新たなイノベーションが創出できるような企業群を広く加えていかなくてはならないと思うのですが、なかなか難しいという現状があると思います。
防衛省側も、以前は各幕に配置されていた研究技術研究職が装備庁に結集されているのですが、その人員数は冷戦のときから比べると激減していて、技術の見極め能力の維持が、本日御説明にあった普通の人員に加えて、かなり問題になってきていると思います。
アメリカの例を見てもそうであり、米国防衛産業レポートというレポートが出たのですが、鍛造や鋳造などといった製造技術が危機的であるとされております。また、経済安保で重要物質とされている半導体や磁石、航空部品等、くわえて今後、戦闘機、戦艦などの性能を支配するAIの能力、AIやレーザーなどが多く消費する電力の確保や通信インフラの構築が重要とされております。そうなると、幅広く民間のニーズを組み込んでいかなくてはいけない。もっともそれは民間から防衛省が取るだけではなくて、今度は防衛省で培ったノウハウをまた民間に還元するという良い循環、双方向の循環がないと、ある意味でせっかく予算をかけて防衛につぎ込む効果が限定的になってしまうと思います。
その点において、財源を考えたときは、従来の43兆円の中からそうした経済安全保障の分野に投入するのか、または装備庁が元から持っている安全研究、技術研究推進制度、ブレークスルー研究、また規模は少ないのですが、経産省やJST、NEDOが持っている5,000億、これらもいわゆる国防には使われていないのですが、こうした幅広い予算の統合的な活用が必要なのではないかと思っています。
その際に付言したいのは、企業や大学が国防技術に関わることがレピュテーションリスクにつながるという政策議論にならないように、これは財政においてもそうなのですが、いわゆる、良い双方向のデュアルを続けていく、整えていくということが重要なのだろうと思っています。
以上です。
〔土居部会長代理〕木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。本日の議題に入る前に、昨日投開票のあった衆議院選挙と今後の財政運営について短く申し上げたいのですが、与党が過半数を割って、石破政権としてどうなるか分かりませんが、野党の一部に協力を求める考えとも伝えられています。政治的な動きにコメントする立場ではないのですが、仮に野党と協力した場合、今後の財政支出が一段と膨張する可能性もあるということも言われています。日本経済には様々な課題があって、一定の財政支出は必要かもしれませんが、財政の健全化は安定的な経済成長の基盤であるという認識は、党派問わずに重要であると言えると思います。この点に留意して今後の経済対策や予算の策定に当たっていただきたいということを一言申し上げたいと思います。
その上で、防衛と社会資本についてのコメントですが、防衛に関しては、東アジアの厳しい安全保障環境を踏まえると、一定の防衛力強化は必要であると思います。ただ基本的には、資料でありましたように、安定的かつ持続可能な防衛力整備を進めるということが重要であると思います。この点からすると、自衛隊の人的基盤、確かに隊員の士気やモラルに関わるような処遇は改める必要あると思いますが、他方で、資料の14ページにありますように、日本全体の人口が減っていく中で、組織の最適化を不断に行いながら防衛力を強化していく必要があると思います。要は、隊員が担うべき業務と、省人化・無人化、AIを活用すべき業務とをきちんと整理しなければ、いくら防衛装備品を増やす、あるいは装備品を高度化したとしても効率的な運用はできないのではないか、そうしたおそれがあるということで、資料に書いてあるとおりであると思います。
さらに付言すれば、自衛隊で手当の不正受給、あるいはパワハラの問題も起きています。不祥事が続けば処遇改善への国民の理解が得られなくなりますし、あるいはパワハラが起こる組織には入隊を志願する人も少なくなります。防衛省も改善に努める方針と伺っていますが、ここは早急に襟を正すように求めていっていただきたいと思っております。
また社会資本に関しても、御説明、資料の内容にあるのはどれも御指摘のとおりであると思います。国土強靱化はこれまで2回の対策が行われて、資料にもあるように一定の効果は出ているとは思いますが、問題は計8年間で総額22兆円というかなりの額を投じて、さらに新たな強靱化計画対策を近く策定する予定ということです。要は災害大国の日本で命を守る対策に予算を惜しんではならないと思いますが、ではどれだけの金額をつぎ込めばよいのかというめどが見えてきません。今後5年間でさらに20兆円投入する意見もあると伺っていますが、新たな強靱化計画をつくるならば、これまでの対策の成果と課題をきちんと検証した上で、ハードの投資の総量を拡大するのではなくて、緊急を要する事業に優先的に取り組むべきであると思います。
特に資料で示された適切な優先順位付けは是非徹底していただきたいと思います。資料の14ページ、いわゆる都心の一等地で採算も十分見込める事業に、足すと300億円を超す国費を投入するというのが果たして必要だったのかどうかということです。同じ14ページの、水道の耐震化などの緊急性の高い事業に優先的に配分すべきではなかったのかと。こうした事業の洗い直しは大事であると思いますので、これは徹底的に進めていただきたいと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕末澤委員、お願いいたします。
〔末澤委員〕ありがとうございます。私からは、全体の総論的な話が1点と、あと私が最近気になっている各論について3点、御説明したいと思います。
まず、皆様おっしゃっているように、財政バッファーの問題です。よく災害は忘れた頃にやって来ると言われますが、過去見ると、1回来ると、どんどん来ていることが多いのです。例えば富士山の噴火の後に大きな地震が続く、また80年前も東南海地震、南海地震が続いています。最近ではスーパー台風も1個起きるとどんどん来て、アメリカでも実は今年5個上陸しているのですが、そのうち3個がフロリダに上陸しました。つまり今後、災害が起きるとどんどん続く可能性があります。戦争も同じで、例えば台湾有事が起これば、それこそ東アジア全体の有事に結びつく可能性もあります。なので、何が起きるか分かりませんが、起きるときは相当大きな被害が発生するので、バッファーを持っておくことは必要であります。
各論について、私が最近防衛について少し気になっているのは、一つは調達コストの問題です。御案内のとおり、今回の防衛力整備計画は基本的に、2023年度は1ドル137円ですが、今年度含めて、それ以外の年度は108円で設定されています。本日、1ドルが153円後半まで、また円安が進んでいまして、私は今回の計画中に108円まで戻る可能性は低いのではないかと、仮に戻れば本当に経済面で大きな被害が出るので、ここは本当に調達改革をしていかなければいけないなと思っています。
調達改革に関してもう1点ですが、日本が今、イギリスとイタリアと進めているGCAP、いわゆるテンペスト計画ですが、これについて、実は今、第6世代戦闘機の計画が西側で四つあります。テンペストというGCAP、ドイツ、フランス、スペインとベルギーでやっているFCAS、フューチャー・コンバット・エアシステムと、あとアメリカの空軍のネクスト・ジェネレーション・エア・ドミナンス、次世代制空です。あとその海軍版、これはNGADないしF/A-XXと言いますが、最近の計画を少し調べてみると、実はどれも止まってきています。
FCASを見ると、2030年代に予定されていた実戦配備が2040年代に先送りされました。一方、本来これは親機なのですが、子機の部分の無人機の開発を先にやってほかの戦闘機に随伴させるというような志向を考えていると。アメリカでもNGADは実は開発が3か月間ストップしていまして、見直しをしていると言われています。これはアメリカで来年政権がバイデンからハリスないしトランプに替わるということもあるのですが、アメリカは核戦力を相当今やっていまして、空軍はB-21「レイダー」という次期戦略爆撃機が来年度以降、実戦配備がスタートすることも関係しています。海軍はコロンビア級の戦略原子力潜水艦の開発をやっていまして、恐らくそちらに充当しているのだろうと思うのですが、実はそうした意味で、要は有人機の開発が少し今ペースダウンする動きがあって、その動向は見ていく必要があると、これはやはりコストアップが背景にあるわけです。全体的に防衛装備品の値段が上がっておりさらに円安であるとダブルなので、ここはやはり見ておく必要があると思います。
また、人口の減少と自衛隊の充足率の問題についてです。アメリカでは徴兵制が法律上は残っているのですが、今は停止されています。これがベトナム戦争後です。52年ほど前ですがそれ以降見ると、失業率と充足率が大体比例しているのです。つまり、景気が悪いと充足率が上がる、つまり軍に入る一方、景気が良いと入らないという関係になっております。ただ日本の場合は、先ほど御覧いただいたように、最近の人手不足により、もう景気変動とは関係ないのです。少子化で人手が全然足りず、そうすると、やはり従来の対策では恐らく困難で、例えば先ほどありましたように定年を延長する、一部は民間にシフトする、あとAIや無人機などにシフトしていくなどしなければならないだろうと思います。
最後にもう1点で、国土についてです。最近少し気になっているのが闇バイトや詐欺です。例えば、屋根に上ってチェックしてあげますよとだまし、それが詐欺や闇バイトで強盗が入るということです。あのようなことが続くとなかなか皆様は修理などをやらなくなってしまうと思うのです。ただ一方で、台風や地震の被害も増えていくことが予想され、また日本の家屋はあまりにも風通しがよくて夏の冷房効率が非常に悪いという事情もあります。私はやはりこの点については、耐震化、台風対策、断熱対策も含めたセットないしパックについて国が支援することで、もう少し安心して地方自治体が減災・防災の取組を進めていただくような今後の対策・システムが必要なのではないかと最近思っているということでございます。
以上でございます。
〔土居部会長代理〕中空委員、お願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。私は様々なことを話すときに、日本の何が一番駄目なのだろうと思うと、一つは経済成長であるということが多いのですが、その前提にあるのは安心安全な暮らしがあると思っていて、本日の話題というのは両方ともそれに関わることなのだろうと思います。
防衛に関しては、この何十年と言ったら大げさですが、私が参加しているこの8年、9年の間同じことを議論しているのではないかという気がしているのです。その意味では、誤解を恐れずに申し上げれば、木を見て森を見ずになっていないかと危惧しています。例えば私たちの国にはどれぐらいの防衛産業が必要なのかということを、私たちは真剣に討議したことがないのではないかと思います。不穏な動きが多いのでやはり防衛費は増やす必要があると思っている一方、果たしてそれでよいのかなという気はしています。様々なことを開示するのは難しいということもあろうと思うのですが、もう少し全体像としての防衛産業の意義・市場などは考える必要があると思います。
17ページです。もう一つの議論として、今の日本が求めている防衛力強化が今のやり方で正しいかというのを見たときに、世界の防衛産業の売上高を見ると、日本の企業では太刀打ちできないことは明らかかと思います。これはもちろん防衛産業に従事しているというレピュテーションリスクもあるということなのですが、私のようにクレジットを見ている観点でいくと、防衛をやっているので、最後は国が面倒見るに違いないという見方をする人たちもいるのです。レピュテーションリスクがある事業をどう民間企業にやらせるのかということについて、日本はやりなさいよと言っている割には責任を取ってくれないようにも思えます。また、国が面倒見るからといって強みをどこで発揮するかということもよく分からなくて、これでは少しやっているし、お金も払っているのだが競争力はないという防衛産業の状態をずっと私は見てしまっているように思えます。なので、ここはどういうものをどういう戦略でやっていくのか、例えば原子力発電を真剣にやることで、日本は抑止力もつくわけですから、もっと総合的に考える必要があるのではないかと思います。
次に国土強靱化についてです。まず一つ目は、複数の委員の方々がおっしゃいましたが、平時にこそコンパクト化の話を持ち出す必要があると思います。有事になってそれを言っても少しも動かないということを、私たちは何回も目の当たりにしているわけです。ですから、平時にどうやったらコンパクトシティということを持ち出せるか、リスクの低減もさることながら、地方創生で人が住むということを大前提にした上でのコンパクトシティ化はどうあるべきかということを、もっと提案していく必要があると思います。
また、関東大震災や直下型、南海トラフ、こうした大地震が来たときへの適切な恐れを私たちはできていないのではないかと思います。やはりこうした問題は、いざ起きないと自分事にならないということがよく分かる問題であると思います。例えば東京都の人たちは地震の自賠責保険に強制的に入らせるなど、そうした話が出てきてもおかしくないように思うのですが、実際にこれを損害保険会社の人たちに話すと、それは儲からないから是非言わないでくれとよく言われます。そうしたことも考えなければいけない、私たちは恐れを出せていないのではないかと思っています。
二つ目、最後なのですが、新幹線の話がありました。つい先般北陸新幹線に乗ったところ、やはりとてもとても快適なのです。なので、それぞれの地域に必要であると言われてしまうと、そうなってしまう可能性はゼロではないと思いました。地方創生とそこに住む人たちの意義、インバウンド、日本のこれからのグランドデザインを考えた上で、どこに何が必要かという発想で整備新幹線も考えなければいけない、つまり包括的な視点が少し足りないのではないかと思います。必要なものは必要であると思いますので、どれが必要でどれが必要ではないかということを、もう少し取捨選択することが肝要かと思います。
以上です。
〔土居部会長代理〕芳野委員、お願いいたします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。意見書も提出しておりますので、特に御検討いただきたい点に絞って意見を申し述べたいと思います。
初めに防衛についてです。防衛は、変化を続ける安全保障環境の中で、いかに国民の命と財産を守っていくべきか、財源の在り方とともに、国民的な議論が求められていると考えます。その上で、自衛官については、自衛官が誇りと使命感を持って任務を遂行できるよう、適切な処遇と勤務環境の改善、継続的なハラスメント防止対策を行っていく必要があります。くわえて、装備品の確保に関して、国内産業、雇用の持続可能性の観点から、防衛装備品の取引適正化ガイドラインを策定し、関係省庁の連携の下、実効性確保に努めていただきたいと思います。
次に、社会資本整備について触れたいと思います。甚大な自然災害が相次ぐ中、まさに命と暮らしに関わる施策として社会資本整備の重要性が増しています。連合はこの間、能登半島に延べ2,700名を超えるボランティアを派遣してきましたが、復旧復興に遅れが見られる中、9月の豪雨災害もあり、支援の拡充が不可欠な状況と認識をしています。政府裁量による予備費の充当ではなく、本予算を措置し、早期の復旧復興に取り組むべきと考えます。
その上で、今後の防災・減災対策として3点申し述べたいと思います。
1点目は、生活インフラの災害対策です。想定を超える自然災害が相次ぐ中、ハザードマップを再点検し、生活インフラの防災・減災対策に必要な財源を手当てすべきです。
2点目は避難所の在り方についてです。諸外国と比べて課題が多く指摘される避難所の生活環境の改善はもちろんのこと、避難所での性暴力被害防止や防犯対策強化が必要です。能登半島では避難所の運営が男性中心であったため、女性やこどものニーズが十分酌み取られず、支援や配慮が不十分な状態が長く続いたと認識をしています。各自治体における防災、復旧復興に関するあらゆる意思決定の場に女性の参画を進めるとともに、プライバシーが守られ、ハラスメントや犯罪を未然に防止するために、必要な機材の確保と財源支援が必要と考えます。
3点目は住宅支援です。住宅は生活、就労の基盤です。空き家の積極的活用はもちろんのこと、公営住宅などの整備により、災害時のみならず、誰もが住居を確保できるよう、国として住居費支援などを検討すべきと考えます。
以上です。
〔土居部会長代理〕ありがとうございました。
それでは、皆様の運営に対する御協力のおかげをもちまして、まだ時間に余裕がございますが、皆様からの御意見はこのぐらいということで、本日の議題はこれにて終了させていただきたいと思います。
次回は11月1日金曜日9時から財政制度分科会を開催いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、本日はこれにて閉会させていただきます。御多用中のところ、御出席いただきましてありがとうございました。
午後3時40分閉会