財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年10月22日(火)09:00~10:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
地方財政
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寬也 |
渡邊政策立案総括審議官 宇波主計局長 前田次長 中山次長 吉野次長 端本文書課長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 滝澤美帆 伊達美和子 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 吉川洋 |
午前9時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、間もなく会議を始めますが、初めにカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。それでは、お願いします。
(報道カメラ 入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。御多用中のところ御出席いただきましてありがとうございます。
本日の議題は、地方財政でございます。
それでは、報道関係の方、御退出をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔増田分科会長代理〕それでは議事に入ります。地方財政について、今野主計官から御説明お願いします。
〔今野主計官〕地方財政を担当しています、主計官の今野と申します。本日はよろしくお願いいたします。
それでは早速、資料の説明をいたします。
1枚おめくりいただきまして、目次となってございますが、地方財政の現状と地方財政の課題という大きな2本柱で御説明させていただきたいと思います。
1枚おめくりください。地方財政の現状の一つ目として、令和6年度予算における地方交付税交付金等につきましては、国の政策的経費の中で社会保障に次いで2番目に大きい17.8兆円となっています。円グラフ左下の赤囲みでございます。
1枚おめくりください。地方交付税の仕組みでございますが、地方交付税は、地方財政計画の歳入・歳出及び地方交付税総額がマクロベースで決定された後に、これを前提として、ミクロの地方公共団体に対する地方交付税交付金の配分額が決定される仕組みとなってございます。
1枚おめくりください。地方交付税総額につきましては、財源不足に関する国・地方の折半ルールと、一般財源総額実質同水準ルールに基づいて算定が行われております。折半ルールにつきましては、地方交付税の法定率分等で賄えない財源不足が生じた場合に、国・地方が折半して補塡をするという形になっています。令和6年度につきましては、令和4年度、5年度に引き続き、3年連続で折半対象財源不足が発生しないという状況になっております。
1枚おめくりください。一般財源総額実質同水準ルールにつきましては、平成23年度以降、地方財政の健全化のための規律として堅持されてきたものでありまして、骨太2024におきましても同ルールを令和9年度まで継続する旨が規定されています。このルールに基づく予算編成の結果、地方の一般財源総額は、実質的に同水準で維持されている状況でございます。このルールを堅持して地方財政が規律されている状況下において、近年は折半対象財源不足がほぼ存在しない状態が継続しています。
1枚おめくりください。これは国・地方の財政状況、フローでございますが、地方のPBは近年一貫して黒字となってございますが、下の折れ線グラフ、国のPBは一貫して赤字となっています。2025年度のPB黒字化目標は国・地方合わせた目標ですが、仮に中長期試算の成長移行ケースどおりに国・地方合わせたPBが黒字化したとしても、国はPB赤字が続く見通しとなっています。
1枚おめくりください。国と地方の財政状況、ストックベースのものでございますが、国の普通国債残高は累増の一途をたどっている一方で、地方の債務残高は過去20年間でほぼ横ばいとなっており、近年では減少傾向となっています。
1枚おめくりください。地方の債務残高を種類別に見ますと、ブルーの部分、建設地方債等の残高は足もとで50兆円程度減少してきております。臨時財政対策債あるいは交付税特会の借入金につきましても、令和6年度において、交付税特会の借入金はストックベースでマイナス0.5兆円、臨時財政対策債はストックベースでマイナス3.2兆円と、どちらも健全化が進んできております。
1枚おめくりください。交付税特会の借入金の償還です。これまで交付税特会の償還計画は、時々の財政状況に応じて何度か後ろ倒しされてきております。そうしたことを踏まえますと、近年の好調な税収により折半対象財源不足が解消されている中では、状況に応じて償還計画を前倒しするといった取組が必要になろうかと考えております。
1枚おめくりください。令和7年度総務省要求の概要でございます。昨年度に続きまして折半対象財源不足は生じず、特例加算の要求はないものの、給与関係経費や社会保障費の増加等による歳出増を要因として、一般財源総額が対前年度で1.2兆円増加し、地方税が増えている中においても臨時財政対策債の発行額が増加する姿となっています。今後、総務省との調整の中で、一般財源総額実質同水準ルールの下で臨時財政対策債の発行額の縮減を図るなど、地方財政の健全化を更に推進していく必要があろうかと考えています。
1枚おめくりください。続きまして、地方財政の課題となってございますが、大きな項目を二つ立てております。自治体行政の効率化と広域的なインフラマネジメントの推進です。
一つ目、自治体行政の効率化でございますが、生産年齢人口がこの30年間で約15%減少し、地方公務員数も同程度で減少してきました。今後30年間で生産年齢人口は25%減少する見込みですので、それにあわせて地方行政の効率化が必要となっています。直近10年間では、一部減少している職種もございますが、一般行政職員数は増加傾向にありまして、人件費も増加傾向にございます。こうした中、より少ない職員数で質の高い行政サービスを安定的に供給していくためには、徹底した行政の合理化・効率化が必要となっていると考えています。
1枚おめくりください。自治体DXの推進①でございます。より少ない職員数で質の高い行政サービスを提供していくためには、デジタル技術やAI、RPA等の活用が必要となります。左下、RPAの導入による業務時間削減効果として長野県塩尻市の保育園受付窓口業務の事例を記載しておりますが、こうした好事例を横展開した上で、その業務効率化の全国的な効果を定量的に把握・推計し、地方財政計画に適切に反映させていくことが必要かと考えております。
1枚おめくりください。自治体のDX推進②でございますが、自治体情報システムにつきましては、令和7年度末までの基幹20業務のシステムの標準化・共通化に向けて、累計で国費6,989億円を予算計上しております。いわゆるガバメントクラウドでございます。これら情報システムの標準化は、システムの運用経費削減のみならず、各自治体における業務の効率化にも資するものです。こうした情報システム標準化に伴う全国的な業務効率化の効果について、その進捗も踏まえながら定量的に把握・推計し、地方財政計画に反映させていくことが必要かと考えております。
1枚おめくりください。手数料・使用料の金額につきましては、全国的に統一して標準額が定められているものもございまして、当該標準額につきましては、人件費単価や物価水準の変動などの状況を勘案して定期的に見直しが行われております。足もとにおける給与改善による人件費単価の変動や物価水準の変動の状況を踏まえ、手数料の標準額を見直した上で、地方財政計画に反映していく必要があろうかと思っています。いわゆる価格の転嫁といったことかと思います。手数料・使用料につきましては、例年、決算額との乖離が生じておりまして、地方公共団体における独自財源の確保に向けたインセンティブにも配慮は必要とは思いますが、手数料・使用料の地方財政計画における計上額を適正化し、決算額と の乖離の是正を図っていく必要があろうかと考えております。
1枚おめくりください。教員の処遇改善と地方財政でございます。義務教育に係る教職員の給与費につきましては、その3分の1が国の負担となっておりますが、残り3分の2や一部の手当については地方負担となっております。仮に教職調整額が4%から10%まで引き上げられた場合には、3,000億円程度の地方負担の増加が見込まれているところです。
令和6年に始まりましたこども・子育て支援加速化プランの3.6兆円に係る財源につきましては、地方負担も含めて必要な財源が確保することとされております。なお、令和6年度の地方負担は0.2兆円でございます。同様に、仮に今後、教職調整額の水準の見直しなど教員の処遇改善の検討を行っていくに当たっては、まずは働き方改革の取組を進めるとともに、地方負担の財源の確保も併せて検討していく必要があろうかと思います。
1枚おめくりください。次に、インフラの関係でございます。人口減少やインフラの老朽化に伴い、人口一人当たりのインフラコストは増加していく見込みでございます。既存の行政区域にこだわらない、広域的な視点でインフラのマネジメントを行っていくことが重要と考えております。具体的には、複数の地方公共団体・エリアにおいて、包括的民間委託等による広域的・分野横断的な維持管理の導入等により、発注業務の効率化や維持管理に係るコストの効率化などを推進していくことが重要と考えております。
1枚おめくりください。公共施設の適正管理です。人口減少により公共施設等の利用需要も減少していくことが見込まれる中、各地方公共団体においては長期的な視点をもって更新・統廃合・長寿命化等を計画的に実施していく必要があります。自らの団体のみならず、隣接する団体を含む広域的な視野をもって公共施設の統廃合等に取り組んでいくことも重要かと思っております。左下、複数の自治体が連携した公共施設の集約化の例などが記載されてございますが、こうした事例の横展開が必要かと考えております。
1枚おめくりください。下水道事業の広域化・共同化でございます。公営企業繰出金の中で最もシェアが大きい下水道事業、これは令和6年度の地方財政計画上は1.3兆円となってございますが、「汚水処理は使用料収入で賄う」との原則が掲げられております。しかし足もとにおいて、汚水処理に要する費用を使用料だけで賄えている割合につき、これを経費回収率と言いますが、特に処理区域内の人口規模の小さい事業者では低い水準となっており、大部分が各自治体の公費により賄われている状況でございます。汚水1単位当たりの処理費用は、処理区域内の人口が多いほど低下する傾向であることを踏まえ、広域化・共同化の取組を着実に進め、施設更新費や維持管理費の効率化を図っていくことが必要と考えております。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は、御欠席の安永委員から意見書が提出されております。PC端末に格納しておりますので、お目通しを頂ければと思います。
それでは、これ以降、会場から5名、それからオンラインの方から5名という形で指名をさせていただきます。
まず会場から、國部委員から順に5名ほど指名いたします。國部委員、どうぞお願いします。
〔國部委員〕ありがとうございます。私からは1点のみ申し上げたいと思います。
新政権が誕生しました。石破新総理は、初代地方創生担当大臣を務められるなど、長らく地方創生関連政策に携わってこられました。その御経験を生かして、今般、地方創生2.0を掲げ、交付金を当初予算ベースで倍増させるなど、地方創生を一層推進していく方針を示されています。足もとでは、資料6ページにお示しいただいているとおり、税収増によって地方のPBの改善が進む一方で、国のPBは赤字が継続しています。これは、国の財政が厳しい状況下においても国から地方への手厚い財政移転が実施されてきたことの表れであり、地方の歳出効率化は引き続き課題である点には留意が必要かと思います。地方財政運営においても、国に対してよく指摘されるEBPMの推進やワイズスペンディングの徹底といった考え方が十分意識されるべきと考えます。
政府においては、先般、デジタル田園都市国家構想実現会議の発展形となる、新しい地方経済・生活環境創生本部が立ち上げられており、地方創生に向けた基本構想や施策が取りまとめられるものと認識しています。今後はそうした国の方針に沿って交付金が増額されることも考えられますが、真に地方の活性化に資する取組が効果的に推進されるよう、例えばデジタル田園都市国家構想交付金がそうであったように、交付金の使途をある程度特定し、個別施策のEBPMをしっかりと行うとともに、地方財政計画や決算情報の「見える化」を引き続き推進していただきたいと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。人口減少を踏まえて地方財政も様々な効率化を図る必要性があるというのは、御指摘のとおりであると思いました。大事なのは、効率化イコール緊縮財政とか縮小均衡ということではなくて、効率化を通じて、より重点を置くべき分野に資源を再配分して、最終的に地方の活性化を図ることにつなげるということかと感じました。例えば資料の18ページで示された公共施設等の適正管理、様々な効果額の事例などを御紹介いただきましたが、大変参考になると思います。こうした効果額が捻出、確保できるのであれば、その額を利用して新たな重点分野に活用するということも可能であると思いますので、こうした取組をもっと進めてよいのではないかと思います。
なかなかこれまで進まなかった背景としては、都道府県庁と県庁所在地の市役所の間で役割の線引きが曖昧だったことがあるのでしょうか。こうした二重行政は解消して、住民本位の行政を展開することがこれから必要であると思います。適正管理を進めるための仕組みとしてインセンティブやディスインセンティブも含めて、今後、広域行政化の推進などを考えていく必要があるのではないかと思ったのが1点でございます。
あともう1点、國部委員も言及され、今回の資料では直接言及されていませんが、石破総理が打ち出された地方創生2.0というのは、来年度にかけての焦点になるのではないかと思います。人口減少に歯止めをかけるために、地方創生というのは極めて大事なこと、日本経済を底上げするためにも重要なことであると思います。
ただ、必要なのは、これまで取り組まれてきた地方創生の政策の検証です。10年前に安倍政権が地方創生を打ち出されて、実施してきましたが、地方の人口減少や東京への一極集中はなかなか十分に歯止めがかかっておりません。これまでの地方創生、どこまで成果が上がったのかということ、あるいは不十分であるとすれば何が足りなかったのかということをきちんと総括しなければ、2.0には進めないのではないかと思います。総理は地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増されるということをおっしゃっていて、倍増というのは当初予算額を1,000億から2,000億に倍増するということのようです。総理の目玉政策としては控え目な額であると思いますが、倍増の根拠は何なのか、倍増すれば果たして地方創生は進むのか、地方の補助金への依存を助長してしまわないのかと、様々な課題や問題点があると思います。
資料でもあったように、地方はフローでもストックでも黒字を確保したり、基金を倍増したりしているということで、これは地方の努力もあるでしょうが、こうした地方の財政状況をどう考えるのか。あるいは、地方は今、インバウンドなどにより活況を呈しているところもあり、そうした外国人を呼び込むための地方の創意工夫なども見られていると伺っていますので、そうした地方の自主的な取組をどうやって後押しするのか、様々な観点があると思います。総理も所信表明で、これまでの成果と反省を活かすとおっしゃっているので、きちんと総括した上で、この交付金の在り方について考えていく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、お願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。本日は、地方公務員数の推移と自治体行政の効率化に絞って、2点申し述べたいと思います。
まず1点目は、地方自治体行政の効率化についてです。生産年齢人口の減少にあわせて、更なる職員削減が必要としていますが、令和5年の地方公共団体定員管理調査結果によれば、対前年比で増加した一般行政職員はデジタル化対応や防災・減災対策などと、まさに火急への対応に必要な人材であると思っております。また、自治体におけるサービスの質的低下を防ぐため、相談支援窓口業務を担っている臨時職員、非常勤職員の雇用の安定と処遇改善を図ることも必要です。さらに、自治体DXの要であるガバメントクラウドへのシステム移行は、自治体によっては困難な状況が見られる中、運用面でのコストメリットを前提とした地方財政を検討するのは時期尚早ではないかと考えます。くわえて、戸籍法改正に伴う氏名の振り仮名収集業務など、各省庁が独自に求めるデジタル化施策は過大な負担となっており、システム改修の業務委託や作業人員の増員に必要な経費など、国の責任において十分な予算措置を講じていただきたいと存じます。
2点目は、教育の処遇改善についてです。教職の特殊性や人員確保法の趣旨、教職員不足解消の必要性などに鑑みて、教職調整額の水準を少なくとも10%以上に引き上げることが必要とした中央教育審議会の答申を踏まえ、これを実現するための確実な財源確保が必要です。なお、義務教育における地域差を是正するためにも、義務教育費国庫負担制度における国と地方の負担割合について、今後見直しが必要と考えます。くわえて、義務教育における教職員の長時間労働是正は急務であり、教職員定数の改善や支援スタッフの配置拡充など、人員増に対する予算措置も必要と考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、どうぞ。
〔中空委員〕ありがとうございます。私は、地方自治体の競争力確保についてお話をしたいと思います。
主計官がお話しになった効率化を図ることと財源を確保していこうという話については全くそのとおりで、正しいと思います。ただ、國部委員や木村委員もおっしゃったように、石破政権にとって地方創生は重要な柱になるのだろうと思います。岸田政権の経済財政政策は引き継いでいくということになると、石破政権の特色は地方創生で出すことになると思うからです。
「ひと・まち・しごと」ということでずっと言っておられましたが、地方自治体に対して、ないのは仕事であると思うのです。今、芳野委員が御指摘になった地方公務員の数が増えていることについても、その数が増えていることを指摘するだけではなくて、やはり中身を見るべきとのお話がありましたが、地方に仕事がないことが地方公務員の数を増やしていることもあると思うので、競争力をいかに高めていくかということが大事かと思います。
地方自治体のサービスの手数料が同じであるといった御説明がありましたが、独自財源を取って差別化するといった行動を生まない仕組みが、そうしたところからも出ているのかと思います。どう競争してもらうかという観点では、例えば国が推進するコンパクトシティー化やDXなど、これを活用したところにウエイトをつけてお金を配れないかなど、お金を配ること自体をやめることが困難なのであれば、競争力に資するような配分の仕方を考えていくことが必要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いします。では、私からは、できる限り手短に3点ほど。
まず、伝統的な財政制度等審議会のこれまで議論されてきたこととして、やはり地方財政のPDCAをきちんと回していくということ、地方財政計画から地方自治体の決算まで一体どのようにお金が流れていくのかということ、国の財政的な支援、補助金や交付税がどのように地方行政サービスに活用されているのかということについて、その効果を含めて「見える化」していくことが求められていると思います。しかしここにきて、地方創生臨時交付金やデジタル田園都市国家構想交付金などの交付金が出てきて、ますます見えなくなってきていると思います。これまでは一般補助金である交付税が「見える化」の対象だったと思うのですが、これからはやはり交付金、臨時交付金も含めて、これらについて実際どのような使途に充てられたかも含めて効果検証が求められるかなと思います。
この点、非常に重要であると思うのは、前の財審で私が申し上げたとおり、やはり国が税金を取って、財政移転として地方にお金が回っているというのがこの国の状況ですので、逆に考えると、一般国民からすると、自分たちの払った税金がどのように使われているのか、あるいは国の財政赤字が実は自分たちの行政サービスとどう関わっているのかということがなかなか見えにくい構造になっていることであると思うのです。このあたりを「見える化」させるということも財政再建の合意形成の上でも重要かと思いますので、改めて国と地方が一体となった財政再建がやはり必要だと思います。
残り二つは手短に申し上げますが、一つは自治体の業務の標準化。人手不足を解消していくに当たって、やはりデジタル化、IT化は急務であると思うのですが、そのためには、今ガラパゴス化した地方の業務をどのように標準化していくかということ、どのようにシステムの統一を図っていくかということが必要です。これについては、やはりデジタル庁がもう少し音頭を取らないといけなくて、自治体がやってくれるでしょうと待っていても恐らく彼らはやらないというかできないので、やはりここは国が主導的に標準化を進めていくということ、デジタル化を含めて業務の標準化を進めていくということが必要かと思います。
あと最後に1点。これから人口減少を踏まえると、全ての自治体が同じ業務をする、同じ政策に責任を持つということは、まず難しいと思います。やはり大都市と小都市あるいは町村では、財政力あるいは企画力、要は政策能力が全く違いますので、自治体の規模や財政力に応じた形での地方分権があってしかるべきであり、これは既に言われている2層構造の見直しを含めて、やはり県にある程度権限を集約させていく、あるいは逆に、むしろ横浜を含めた大都市に積極的に権限を移譲していくなど、一律の地方分権から多様な地方分権への転換がやはり必要かと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここでオンラインに移ります。次の4名の方に、この順番で発言いただきますが、上村委員、大槻委員、河村委員、伊達委員、この4名の方でございます。
初めに上村委員、どうぞお願いします。
〔上村委員〕御報告ありがとうございます。5点あります。
第1に、7ページの国と地方の財政状況について、マクロで見ると確かに国より地方は財政状況がかなり良いですが、地域差はあります。東京の財政は他の自治体とかなり違いがあるので、地方をマクロで見るときに、特に税収格差の存在について気をつける必要があると思います。
第2に、13ページの自治体フロントヤード改革についてですが、民間委託できる窓口業務の範囲は、所轄官庁からの通知によって限定されています。特に小規模自治体にとってあまり使い勝手がよくないと聞きますので、委託できる範囲については自治体の規模に応じた対応も必要かと思います。
第3に、15ページの手数料・使用料ですが、特に使用料について、持続可能な公共施設の運営のために利用者が負担するという受益者負担ですので、コストを回収する水準に適正化しないといけないと思います。その適正化した受益者負担について地方財政計画に落としていくということが必要になるかと思います。
第4に、19ページに下水道事業の資料がありますが、人口減少ですので、下水管の口径を小さくするなど、将来の更新費や維持管理費を低下させる取組は重要であると思います。これは上水道も同じです。こうしたダウンサイジングについて横展開していくことが大切であると思います。
最後に地方創生の交付金ですが、自治体が地方創生総合戦略を策定して、そこに交付していますが、それがワイズスペンディングになっているのか、EBPMに沿ったものになっているのか、PDCAサイクルが確立しているのかの検証は不可欠であると思います。額ありきではなくて、そのクオリティーを見ていくということが重要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。今回御提案いただいている御意見については、全て基本、同意させていただきます。
その上で2点ほどですが、一つ目はDX。活用が重要であることは言うまでもないですが、計画ができた数年前に比べて、やはり生成AIやノーコード化が進んでいることを考えると、政府が音頭を取るような形で、かつての計画の中で安価かつ容易にできるようになっている部分については、柔軟に計画を見直し、一刻も早く住民目線で最適化を図ることが重要であると思います。
第2に、広域化・共同化についてですが、拝見すると様々な好事例もあって、それで横展開するということもあるのですが、ただ、やはり見ている限り、各地方自治体で部分最適を図っているように見えるところもあります。やりやすいところがやりやすいように一緒にやっていくというように見えてしまいますので、これは総務省等が音頭を取るなどして全体最適を目指せないかということです。
そして関連で、先ほども中空委員からインセンティブ付けという話がありましたが、これについても、交付金等でお金を使うということ以外のところで何かできないかということを考えるべきではないかと思います。今、国家戦略特区の設置などがされていますが、先般ある地方自治体に行ったときに、その自治体では、「ようこそ特区の町へ」という横断幕がありまして、ある意味、改革を進めることを住民に対してアピールし、それ以外のところにもアピールをするような材料に使っていて、それがインセンティブになっているということを考えると、例えば表彰方式など、お金以外のところでインセンティブをつけるような方法も考え得るのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御指名ありがとうございます。本日は主計官から、前半は地方財政のマクロの制度の仕組みや最近の改善ぶりに関する御説明があって、後段はミクロのところで、今まで扱ってきたような論点を中心に様々な御提言があったと思います。全ておっしゃるとおりであると思います。私からは、前半の地方財政のマクロの制度について、少し意見を言わせていただきたいと思います。
国としては、金利上昇局面に入ってきて、これからだんだん利払費が増えていくことが非常に心配であります。国全体として財政健全化をしていかなくてはいけない、財審としては、なかなか表立ってはっきり言いにくいところがありますが、PBの黒字化で足りるかどうか、やはり財政収支を視野に入れて、財政収支の赤字幅をできるだけ縮小していかなければならないということでやってきていると思うのですが、そのときに重要なのが、主計官から御説明くださった、地方財政です。地方交付税交付金、これはやはり社会保障に次ぐ、第2の大きな一般会計の歳出項目ですので、これを放置して国全体の財政健全化ができるはずはなくて、その意味で、やはり今の時点でもう少し見直しを打ち出していったほうが良いのではないかと思います。
今までやってきたルールということで、一つ目、財源不足に関する国と地方の折半ルールで、2番目は一般財源総額実質同水準ルールがあるということで御説明くださいましたが、どちらも今までのやり方を踏襲することが前提になっていると思います。財源不足が生じることが前提ということは、今やっている基準財政需要額の決め方などの総務省がやっていることはブラックボックスではっきりしないというところがあると思いますが、そうしたところを本当に見直さなくてよいのかどうか疑問に思います。
それから、一般財源総額実質同水準といっても、これだけ人口が減っている中で、実質同水準を維持すればそれで足りるのかどうか。地方の行財政需要はやはり人口や単純化すれば面積で決まってくるところがあると思いますが、面積にかかってくるような部分の需要、例えば道路の整備などは簡単に減らせないのは理解できなくもないのですが、人口に応じて決まってくる部分は、やはり人口が減るならそれに見合って減らしていかなくてはいけないはずです。しかしそのための検討ができているのかというと、全然最近できていないのではないかなという気がしますので、これからやはり本格的な金利上昇局面にだんだんなっていくときに、地方財政だけは別ということでは、とてもではないが国全体の財政健全化は進めていけないと思います。これからはやはりそうしたところもよく考えて、新しいやり方、工夫の仕方、国全体としてみんなが納得できるような形で財政健全化を進めて、人口減少にも見合うような形でやっていける仕組みがないかどうか、そうしたところを検討して提言していくことも必要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、伊達委員、お願いします。
〔伊達委員〕ありがとうございます。地方のインフラ整備についてコメントします。
今後、全国でインフラの維持管理、更新時期を迎え、予算が大きくなってくると思うのですが、一方で、これまでの地域の生活維持という側面が強くなる傾向にあるように思います。しかしながら、石破総理のおっしゃる地方創生2.0のためには日本経済の底上げが必要であり、それはつまり国及び地方の稼ぐ力をつけるということが必要になります。したがって、このインフラ整備についても投資という視点を強める必要があると感じます。
例えば、コロナ禍が終わり、インバウンドが再び伸びている状況にあるわけですが、成長産業と言えるので、観光産業が強い地域、またはポテンシャルが高い地域において観光インフラの整備をより進めていくといった視点も必要であると考えます。一方で、受益者負担という視点も重要であると思っています。観光客の受益者負担となるような宿泊税を地方税として導入するということが一つの手法としてあると思いますし、地方の独自財源にもなってくると考えます。
もう1点、行政システムのDXについてコメントします。今のやり方では、国が予算をつけて各自治体が実行していくというイメージがありますが、ほかの委員もおっしゃっていたように、それ自体、部分最適、横展開という形を促しているように思います。そうではなく、基本的には行政のサービスというのはどこも同じはずですから、全国共通の基盤をつくっていくほうが、より効率的であると思います。また、期限を定めていかなければいつまでも進まないと思いますので、時限性を持った国主導の予算をつけていくという形でDXは早急に進めていくべきではないかと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちらの会場にもう一度戻したいと思います。
続いて、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕資料の御説明、どうもありがとうございました。
私は3点ほど申し上げたいのですが、まず6ページの国と地方の財政状況につきましては、国と地方を合わせたプライマリーバランスを黒字化させるということを図って、まずは2025年度に成功体験を積むということが大事で、その意味では地方財政全体としてもPBを悪化させないように努めていただきたい。しかも、それは国からの財政移転によって悪化させないのではなくて、地方の財政運営を効率化することを通じて改善するということもあわせてしていただきたいと思います。そうした意味では、地方のPBが黒字であることを過度に強調すると、7ページにあるような、基金を取り崩すというようなことになりかねないので、そうしたことにならないような形で、国と地方、歩調を合わせて財政収支の改善に努めていくことが求められると思います。
2点目は、9ページの交付税特別会計の借入金の償還です。最近の税収が好調であるという状況を踏まえると、やはりここの借入金の返済を早急に行っていく必要があると思います。今までは後ろ倒しにしていたということですから、前倒しに償還するということがあってもよいと思います。実際、税収が悪化すると、5ページの折半対象財源不足額の推移というのがありますが、令和3年のように、せっかくこれらがなくなっていたにもかかわらず、税収が足りなくなったために途端にまた復活するということが起こることがあります。むしろ、本来は特例減算ができればよいのでしょうが、以前も財審でこうした話がありましたが、それが容易にできないということであれば、やはり交付税特会の借入金の前倒し償還をやっていただくことで、財源を確保する必要もあると思います。
最後に、必ずしも本日の資料には載っていないのですが、最近いろいろなものに対して地方行政サービスの無料化、無償化という話が横行しております。必要なものはよいのですが、それを独自の財源でやろうとすると、東京都はできるが、ほかの自治体はできないという話になる、今そうした話題の広がり方をしております。それを全国展開で無償化せよという話になって、国政レベルに上がってきますと、これは東京都の部分も含めて国費で全部持たなければいけないというようなことになりかねません。
東京都の税収が豊かであるということに端を発して東京都で無償化が始まり、ほかの自治体も無償化をしたらよいとなれば、お金がないから国がやるべきという話になって、結局は国費で持たされることになるかもしれません。ところが東京都は、国費で持たされた分は自前の収入として残っているわけなので、更なる別の行政サービスの拡充に充ててしまうというような形で、いつまでたっても偏在是正ができないことになってしまいますので、無償化がいけないというよりは、むしろ東京都に税収が偏在しているということが発端になって国に負担を転嫁する形になっているという構図は根本的に改めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕ありがとうございます。私からは簡単に3点です。
まず第1点ですが、国の一般会計税収について、7月に出ました2023年度の決算では法人税、所得税主体に約2.5兆円、上振れしました。地方税収は一般に、国の税収に1年遅行します。つまり、今年度の地方税収は地方財政計画を上回る可能性が高いことが予想されます。このように財政が良好なときに、先ほど土居委員からもお話ありましたが、やはり交付税特会借入金の前倒し償還、これをやって将来に備えると、こうしたことが必要であると思います。
二つ目が12ページの地方公務員の最近の総職員数の増加です。また、最後の19ページ、要は下水道の採算が、結局人口が少ないところは悪いという話です。これはやはり少子高齢化、人口減が進む中、かつての規模の利益が規模の不利益、ないし規模の経済が不経済になっている、つまり規模が縮小することで効率が悪化していると、こうした現象が本当に如実に発現しているのではないかと思います。
私はかねて申し上げているのですが、こうした状況への対処としてはDXが一つです。二つ目が民間等へのアウトソーシングで、三つ目が統廃合、集約です。かつて「平成の大合併」で地方公共団体数は3,200から1,800に減りましたが、今のような少子高齢化、人口減が続くのであれば、やはり「令和の大合併」というものをどこかで考えるタイミングが来るのではないかと思っております。
三つ目が、これは地方創生に関連してですが、東京都への人口集中がまた進展しているという話です。昨年は全国から東京都への転入超過が約7万に達しました。2021年はほぼゼロだったのですが、また増えてきております。ただ私は、この問題は深刻というか、ある面、自然の摂理に従っているところもあると思うのです。どういうことかというと、東京都の転入超過というのは、実は1966年まで続いていました。1967年に転出超過に転じて、ずっと高度成長期の終盤、またバブル期までは転出超過です。これはいわゆるドーナツ化現象と言われました。これが今度転入超過に転じるのが1997年なのです。これはちょうど生産年齢人口が1995年にピークアウトしますから、つまり東京都の生産年齢人口の需要が過多で足りないと、足りないことで地方から集まってきていると。つまり、水は高きから低きに流れるように、需要のあるところにどんどん人が流れたわけで、これは単に都会が好きというだけでなくて、やはりそうした需要があるからなのです。
過去は人口がここまで減っていませんでしたから、もっと一極集中を改めるべきであるという議論は私もそのとおりであると思うのですが、地方創生の取組が本格的に始まってから10年が経過したわけですが、足もとは少子化が一段と進展しております。この状況において、今後の少子高齢化、人口減少を見据えて、やはり人口政策、産業政策、社会保障政策を勘案して、地方創生の在り方をもう一回、抜本的に再検討すべきではないか。つまり、なぜ今東京に集中しているのかという要因分析と、これが本当によいことなのか悪いことなのかを、私は一回冷静に分析するタイミングではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。2点、意見を申し上げます。
1点目はDXによる付加価値の創出についてです。地方創生2.0については、皆様がおっしゃったとおり、これまでの施策の効果検証を行っていただくとともに、今後予見されている課題に対処し、いかに地方経済をサステナブルにするかという点に力点を置くべきかと思います。今後生産年齢人口の25%の減少が見込まれる中、従来の延長線上で住民サービスを維持することは、非常に困難であると思います。住民サービスを維持するには、DXの推進が欠かせないという認識を持つ必要があります。同時に、DX、AIの活用においては、効率化の視点のみならず、地方の創意工夫でいかに価値創出を促していくかという点も今後重要になると思います。
2点目は、広域的なインフラマネジメントについてです。本日御説明いただきましたが、社会資本整備の予算とも通じるものがあるかと思います。インフラだけではなく地方全体として、従来からいかにサステナブルにコンパクト化をしていくかが求められており、昨今の自然災害等に対しレジリエントな地方という観点でも、こうした視点が必要であると思います。予算策定においても、是非省庁縦割りや部分最適にならないように、予算も広域的にマネジメントしていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕詳細な御説明ありがとうございました。「経済あっての財政」と言いますが、やはり地方財政においても地元の経済活力を取り戻すということが一番良いのではないかということで、そのためには人を減らさない、増やすということが大事であると思います。最近気になった政策で、東京に在住、通勤する女性が結婚を機に地方に移住すれば60万円支給というのが、浮かんですぐ消えましたが、効果的な政策とは言えないと思いました。というのは、女性はそもそも地方の固定的な性的役割分担意識などが嫌で東京に来ているという人も多いのに、そうした何でも金で解決しようとするのはやめたほうが良いというのが一つあります。一方で、地方創生でお金を増やすという、創生とは何だろうと改めて考えると、そのまちに住む魅力をつくり出す、具体的にはやりがいのある仕事、賃金も上がるということであると思うのですが、ある程度お金を中央から地方に交付するときに、過去の例で、結局何のためのお金かという趣旨が、地方の特に小さな市町村までいくと趣旨がよく理解されていなくて、別に悪気があるわけではないのですが、何か別のことに使われてしまっているという例が非常に多かったのではないかと思います。
私は、予算のマネジメント、つまり予算がきちんと使われるかどうかというのは、中央政府の政策の意思がきちんと地方自治体まで伝わっていくかどうかということが重要だと思いますが、予算をつけただけで、その後フォローしていないのです。決算でフォローするということではなく、使われる過程できちんとモニターしていかないといけないのですが、そのあたりを地方の出先などと連携して財務省もきちんとやってもらいたいし、財務省だけではなく、もちろんもともとの担当官庁がきちんとやっているかどうかを財務省には監督してほしいなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、どうぞお願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。まち・ひと・しごと創生本部から10年が経過して、岸田政権でデジ田が始まり、地方DXが進んで、観光や交流人口、インバウンドなど、可能性を探りつつも、やはり人口減少下で地域の経営環境をどのように整えていくかということをしっかりと考えていくタイミングなのだと思っております。デジ田で交付金も随分投入されて、地域の活性化が進むような好事例も出ているのですが、本日、例えば13ページにお示しいただいたような、行政において業務時間が短縮されたという事例もありますが、これがどのぐらい生産性向上につながったかや、今、公民連携等で公務員の方の仕事量も増えている部分も一つあると思いますが、これが本当に効率的か、持続可能かという検証も必要なのだろうということを思っております。
そして今後、石破政権で、本格的な新しい体制で取り組むに当たって、やはり効率化を追求する際には、シームレスで、本当に最も効率的な広域化の規模というのがどういうものなのかということの追求も必要かと思っております。デジタル田園都市構想の交付金は町単位、市単位、県単位で交付されております。本当の住民の視点での連携などの有効な形をどう考えていくか、整えていくかについては、これまでも事例や経験が積み重なってきていると思いますので、実践に移せるとよいと思います。また、DX、AIの活用もそれによって変化するかと思います。
また、様々な予算が投入されて地域が活性化していくことは有効なことですが、そこで何を生み出していくのかということに集中して、先ほどお話が出ましたが、雇用をつくる、事業をつくる、またその場所で新たなものが生み出されるようになって初めて理想とされる特色のある地域の姿になると思いますので、これまでの地方創生関連で蓄積してきたことを実証する際には、そうした点に絞って集中して行うことが今回お示しいただいた資料の趣旨になるかと思っております。よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。前回も申し上げましたが、日本は今後、長期にわたる人口減少の時代に入るわけですから、これまでのような形の行政サービスを続けることは非常に困難であり、現実的ではないと思います。そのために、一つはリアルな世界ですが、コンパクトシティ化をさらに加速、推進していくことが重要かと思います。そのためのインセンティブ、あるいはその逆もあるかもしれませんが、そろそろインパクトのあるコンパクト政策を検討する時期に来ているのではないかなと思います。
それから、もう一つはデジタルの世界ですが、特にマイナンバーは我が国のDX化の基本インフラ、情報インフラで、必要不可欠なものです。なかなか国民の理解、利用が促進されておらず、これを促進するというのは本当に並大抵のことでないと思うのですが、是非めげずにやり続けていただきたいと思います。
このリアルな世界とデジタルの世界、この二つの取組をあわせてやっていかなければいけないわけですが、そのときに大事なのは、日本は世界で最も自然災害の多い国であるということだと思います。防災・減災も大事なのですが、あらかじめ復旧・復興、あるいはまちづくりを想定したインフラ整備をするという発想、今もあると思いますが、そうした発想が必要なのではないかと思います。これは平時と有事をてんびんにかけるような話ですから、非常に困難なことですが、国民的コンセンサスを得るような議論を惹起するような働きかけが必要なのではないかと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今回事務局から御提案いただいたデジタル化や広域化、共同化については全く異存がありませんし、皆様がおっしゃったとおりだと思います。私からは、地方財政を考える上での基盤的な課題について、2点申し上げます。
1点目は、先ほど佐藤さんも御指摘された、地方財政の「見える化」です。今回の御説明を聞いて、医療支出のことを思い起こしました。昨年秋の財審で、これまでよく分からなかった医療機関の経営実態が機動的な調査によって明らかになり、課題が浮き彫りになって、我々としても説得力のある議論ができるようになりました。地方財政に関していうと、これまでの財審の場で、枠計上経費やコロナ交付金事業など、様々な事例を目の当たりにしてきましたが、隔靴掻痒の感を免れません。
地方財政の場合は地方自治の壁とよく言われますが、そもそも渡したお金がどう使われているのかというデータがなければEBPMは成り立ちません。交付税交付金は一般財源に溶け込むのでその先は特定できないとも言われますが、フローで割り切って見ても構わないのではないかと思います。
目指すべきは、データの集積とその分析を通じた「見える化」によって課題とグッドプラクティスを共有して地方行政の質の改善、すなわち行政規律を高めつつ、行政サービスの向上を図るためのソリューションを提示することです。これも、医療データの活用を通じて医療改革を進める議論と似ています。
2点目、地方自治、地方行政を支える人材投資の強化についてです。人への投資は前政権が掲げた新しい資本主義での大きなテーマでしたし、これからも同様に重要ですが、地方行政も同じだと思います。これまで地方では、人材育成や人材教育にあまりお金を投じてこなかった結果として、例えばまちづくりを行う際に、業者に丸投げとなってしまい、あまり成果が上がらず、予算が無駄遣いされるというケースが多くなっていると感じています。デジタル化も随分遅れていますが、担い手の問題でもあると思います。
民間企業はデジタル化をてこに業務効率化を進めて、そこで捻出された要員をリスキルすることで新たなビジネスを生み出すなど、生産性を高める努力をしています。同様に地方自治体は、ガバメントクラウドの活用を進めることでリソースを捻出する一方、恐らく地方自治体がそれぞれ単独で取り組むことは難しいと思いますので、一定程度、国が関与してリスキルの態勢を共通基盤として整えることで、行政の担い手としての地方の能力を高めることを提案します。
現状を放置すると、今後人口減少下で地方が徐々に荒廃していくことで、地方自治体が自らで問題を解決する力が失われてしまい、地方自治の維持自体が危ぶまれることを危惧しています。そうした事態を避けるためにも、今申し上げた点は、我々としても是非議論していくべきだと考えています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ここで各委員からの御意見は打ち切らせていただきたいと思います。
最後に私から申し上げますと、実は私は2007年から2008年まで総務大臣を務めておりました。当時の地方税収は約35兆円、現在は約45兆円で、あの当時の景色から見ると、大変羨ましいと思うのですが、一方で自治体サイドからは、税収が厳しくなった、厳しくなったという声が聞かれており、税収が増えたという実感は全然伝わってこないのです。先ほど土居委員からお話がございましたが、税の偏在是正、これは主として税調の話にもかかってくるかと思いますが、東京都が高校の授業料無償化等を進めると、周辺はついていけなくて、そもそも教育は無償であるべきとの主張がなされ、国がお金を出すことになる。それを繰り返していくと、東京都は財源が豊富にあるので、次から次に様々なことを無償化するということになっていきます。
ですから、この大きな姿というのをきちんと改善していかないと、地方の様々な行政需要に対応できないのではないかということを私も大変気にしていまして、私のときは、良い悪いはいろいろありますが、偏在是正で今まで3回ぐらい大きなことをやってきたと思います。最初は少し乱暴と言われましたが、東京都に入っていました法人事業税を一部国税化して、それを国が再配分するというやり方をしました。一部の自治体からは、税収はそれによって増えるのですが、毒まんじゅうのようだなどいろいろ言われたのですが、自治体間で自主的に配れればよいのですが、なかなか利害が対立するところが多くて、やはりそれは一定のルールで国が配ったほうが良いだろうと思って、あえて国税化にしました。方法は様々あるかと思いますが、申し上げたいのは、税収が約45兆円もあって非常に潤沢である一方で、行政ニーズはいろいろあるのですが、こうしたときでないと地方財政の大きな見直しというのはなかなかできかねるということですので、こうした時期こそ、この財審として様々な提言をしていくことが必要ではないかということでございます。
それでは、以上で終わりにさせていただきます。
次回は10月28日、来週月曜日の14時からで、こちらは歳出改革部会の開催ということで予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日これにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。
午前10時00分閉会