財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年10月16日(水)09:00~11:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
財政総論
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3.閉会
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分科会長 |
十倉雅和 |
横山副大臣 新川事務次官 渡邊政策立案総括審議官 端本文書課長 宇波主計局長 前田次長 中山次長 吉野次長 有利総務課長 馬場主計企画官 山岸司計課長 小澤法規課長 山本給与共済課長 片山調査課長 松本(圭)主計官 石田主計官 松本(千)主計官 寺﨑主計官 今野主計官 河本主計官 八木参事官 大来主計官 末光主計官 山川主計官 菅野主計官 横山主計官 副島主計監査官 山本予算執行企画室長 黒坂主計企画官 小田切公会計室長 |
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分科会長代理 |
増田寬也 |
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委員 |
秋池玲子 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 末澤豪謙 角和夫 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午前09時00分開会
〔増田分科会長代理〕間もなく会議を始めますが、本日は冒頭カメラが入りますので、そのままでお待ちいただきたいと思います。それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は冒頭、横山副大臣にお越しいただいております。どうもありがとうございます。
今回は、秋の財審の初回となりますので、横山副大臣から一言御挨拶を頂戴したいと思います。
それでは、横山副大臣、どうぞよろしくお願いします。
〔横山副大臣〕このたび財務副大臣を拝命いたしました横山信一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
では、着座にて御挨拶させていただきます。
十倉会長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、日頃から幅広く、かつ熱心に御議論いただき、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
10月1日に石破内閣が発足いたしました。総理からも御指示をいただいているところですが、まずは「経済あっての財政」との考え方に立ち、デフレ脱却最優先で経済・財政運営を行ってまいりたいと考えております。
その下で、財政健全化の旗を下ろさず、これまでの歳出改革努力を継続し、真に必要な事業への予算の重点化など、メリハリの効いた予算編成を行うことや、政策の効果・効率を高めるため、EBPMの推進など、ワイズスペンディングを徹底することといった取組を進めてまいりたいと考えております。こうした取組を進めることにより、デフレ脱却を確実なものとし、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を実現しながら、引き続き、経済再生と財政健全化の両立を図っていくことが重要であると考えております。
こうした中、委員の皆様におかれましては、引き続き、その豊富な御経験と深い御見識に基づきまして、活発に御議論いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。それでは、報道関係の皆様方はここで御退出をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕続きまして、ここで十倉会長から御挨拶を頂戴したいと思います。会長、よろしくお願いします。
〔十倉分科会長〕皆様、おはようございます。委員の皆様におかれましては、オンライン出席の方々も含め、大変御多忙の中、御出席いただき誠にありがとうございます。
先般の春の財審では、大変密度の濃い議論を行っていただき、建議を取りまとめることができました。
10月1日に石破内閣が発足し、令和7年度予算は、石破内閣の下での初めての予算編成となります。デフレからの完全脱却に向けて、「経済あっての財政」の考え方の下、官民連携による投資を推進し、潜在成長率の引上げに取り組むと同時に、財政の持続可能性を確保し、成長力の強化と財政健全化の両立に取り組む必要があると考えております。また、社会保障制度をはじめとする我が国の経済・社会システムについて、未来を見据えて見直すには、この財審で議論されたフューチャー・デザインの考え方が重要です。こうした考え方も参考に、全世代型社会保障の構築に向けて、税と社会保障の一体改革に取り組むことが求められます。
この秋の財審では、令和7年度予算編成の課題について、引き続き活発な御議論を行っていただきまして、建議につなげてまいりたいと存じます。第1回目となる本日の議題は、財政総論です。率直な御意見をどうぞよろしくお願い申し上げます。
私からは以上になります。
〔増田分科会長代理〕会長、どうもありがとうございました。
続きまして、財務省の事務方幹部及び各主計官等については、お手元のPC端末に格納している座席表に記載しておりますので、御確認いただきたいと思います。
それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず財政総論ですが、こちらにつきまして、片山調査課長から説明お願いします。
〔片山調査課長〕ありがとうございます。それでは、資料について御説明申し上げます。
お手元の端末あるいはスクリーンに映し出しております。全部で三つ、パーツがございまして、最初は現在の経済情勢ということでございまして、大きく分けて二つのメッセージ、一つは、コロナ禍から回復して新たなステージに移行しつつあるということ。他方で、中期的な持続的な成長のためには潜在成長率を高めていく必要は引き続きあるということ。この二つが、最初のパーツのメインのメッセージでございます。
2ページ、個人消費。左側ですが、コロナの影響による落ち込みから持ち直してきているということが見てとれます。一番右、少し小さいですが、消費者マインド、物価上昇率がピークの時点から比べますと改善傾向にございます。
3ページ、賃金でございます。左、2024年の春闘における賃上げ率は5.1%と、過去30年で最大。左下、大企業だけでなく、中小企業につきましてもベースアップも高水準。右側、実質賃金はプラス基調になっておりまして、今後、賃金上昇による消費の増加が期待されます。
4ページ、企業収益。左側それから右上、現預金、内部留保は、過去最高を更新し、歴史的な高水準で推移しております。右下、設備投資も拡大傾向でございますが、更なる投資が経済の好循環につながると考えております。
5ページ、雇用。左側、右側、コロナ禍からの経済再開に伴いまして労働市場はタイトということで、右側、全業界人手不足の状況になってございます。
6ページ、物価でございます。左側、消費者物価は2%を上回って推移しております。内訳を見ますと、外生的なコストプッシュ要因ということで、食料品、それから財といったモノの価格上昇率はピークアウトしております。代わりにサービス価格が上昇しておりまして、いわゆるコストプッシュ型の物価上昇から、基調的な物価上昇に変化しつつあるということが見てとれます。
7ページ、名目・実質GDPともに、2023は過去最高水準、2024は名目で600兆円に達する見込みでございます。
8ページ、GDPギャップ。左側、ゼロ近傍まで改善しております。表のところですが、IMFは2024年以降、GDPギャップがプラスで推移するという見通しを示しております。
一方で9ページ、中長期の観点ですが、左側、生産年齢人口の減少が見込まれます。デフレ脱却を確実なものにするため、右側、潜在成長率をどう引き上げていくかということが重要でございまして、労働生産性、それから資本ストックの増加というのが鍵になります。
10ページ、労働についてでございますが、左側、2040年にかけまして、例えば医療・福祉分野などでは、必要となる就業者が今よりも増加する見通しになっております。他方、今よりも減少していく見通しの分野もございます。右側、少し見にくいのですが、労働移動の円滑さと実質賃金上昇率は実は相関しているということもございますので、産業間の円滑な労働移動が可能となるように、労働市場の深化を今後目指していく必要がございます。
11ページ、今度は投資、資本でございますが、左上の日本、青の企業部門の貯蓄・投資を見ますと、実は我が国は過去15年、ほぼ一貫して貯蓄超過、ゼロより上の状況になってございます。他方、ほかの3カ国を御覧いただきますと、企業部門は投資超過、ゼロより下に行っている年も多く、日本も今後、企業部門が投資超過になるということも期待しているところでございます。
以上が最初のパーツになります。
続きまして、こうした新しい経済の兆候が見られる中で、政策運営上どのような課題があるのか、4点ございます。
13ページ、コロナへの対応などのため、令和2年度以降、従来と比べて高い水準の補正予算を計上しております。結果的に、右上の繰越、右下の不用は、過去最高額を計上してございます。
14ページ、その裏側ですが、国債発行額。令和6年度の国債発行額は180兆円でございますが、コロナ禍以前と比べて30兆円程度増加している状況でございます。
15ページ、各国比較でございますが、主要先進国、日本も含めまして、コロナ対応で大規模な財政出動を行っております。左側の表の一番右の列でございますが、欧米各国は2020年に比べますと、政府支出対GDP比を相当程度減少させております一方、日本の減少幅は緩やかな状況でマイナス4.9%ということでございます。
続きまして、物価上昇局面に対する対応ということで17ページ、社会保障でございますが、一般的に物価上昇局面では当然、政府支出においても物価高、それから資材高騰への対応というのを求める声が増加いたします。特に社会保障、左側、医療費は、そもそも高齢化の伸びも反映いたしまして、過去、物価以上に増加しております。ところが、右側ですが、さらに物価高を反映して賃金以上に伸ばすというような構造になった場合には、結果的にどこで埋めるかと申しますと、右上のブロック、保険料率の上昇で埋めるということになりますので、現役世代の負担が増加するという、そうした構造になってございます。したがいまして、右上の保険料率の上昇を避けるためには制度改革というものが求められる状況になっていると、こうしたことになっております。
18ページ、足もとの物価上昇局面で、各国あるいはIMF、OECDはどうしたと申しますと、基本的には金融政策の引締めということで対応しておりますが、財政につきましても、そうした金融政策と整合的にタイトな運営をすべきということを各国強調してございます。
19ページ、例えばアメリカ、一番上の列ですが、2022年8月にインフレ抑制法、これは歳出も増やしているのですが、実は10年間で3,000億ドルの財政赤字を削減するということも同時に明記してございます。
続きまして、金利の関係です。21ページ左側、欧米主要先進国では物価上昇が非常に継続する中、政策金利を累次上げました。右側、おおむね4%から5%程度の水準になってございます。日本につきましても、今年3月、7月に相次いで利上げを行いました。
22ページ、植田総裁の7月の会見です。経済・物価情勢次第ではございますが、今後も金融政策の更なる調整を進めていくということを表明されております。
23ページ、そうした中で国債の保有者割合の推移ですが、上の二つのパイチャート、日本銀行の割合が非常に大きく増えているということと同時に、海外の保有者割合も増加しております。特にT-Billを御覧いただきますと、下側ですが、6割が海外保有となっております。
そうした中、24ページ、日銀が7月に長期国債買入れの減額計画を決定いたしました。左側ですが、民間のシンクタンクによりますと、2040年現在での日銀の保有残高は、今から320~460兆円程度減少するという見通しを示されています。一方で、右側、実は銀行等というセクターにつきましては、バーゼル規制がございますので、追加的に今後国債を吸収する、あるいは購入する余力は150~200兆円程度にとどまるという分析もございます。したがいまして、日銀が保有を減少させていく中で、銀行セクターが一部しか吸収できないということになりますと、海外保有に依存するという可能性が示唆されるところでございます。
25ページ、そうした海外保有が多い国の一つ、イギリスがございますが、御存じのように、2022年、トラス内閣におきましては、財源の裏付けがない成長戦略というのを公表した直後、僅か5日間で国債金利が1%急騰するという事態になりました。
26ページ、こうした金利上昇局面におきましては、すなわち資金調達コストが上昇するということでございますので、社会全体として、逆にリターン、投資効率というのを高めることが求められます。企業部門に目を向けますと、上側、ROEにつきましては、日本はやや低水準、それから、生産性にも関連すると言われる開廃業率、下側の二つですが、こちらにつきましても欧米と比較して低い状況ということで、もちろんセーフティーネットを整備しながら、社会全体の生産性を高めるという取組が求められます。
27ページ、今度は政府部門に目を向けますと、我が国の普通国債残高は1,000兆円を超えております。これは金利が上昇いたしますと、利払費が大幅に増えるということでございます。
28ページ、これは試算でございますが、2025年度以降、金利がいわゆるベースラインから1%程度上昇した場合の利払費の増加幅につきましては、償還期限が来たものから順に置き換わりますが、2033年度にはプラス8.7兆円の利払費の増となる試算がございます。
こうした中、29ページ、諸外国の有識者ということで、実はコロナ禍の前のアメリカは特に低金利の状況でしたので、サマーズ氏、それからブランシャール氏は、拡張的な財政政策を取るべきというふうにおっしゃっていましたが、足もとの金利上昇局面を踏まえまして、当時の意見を修正されて、むしろブランシャール氏はPB赤字の解消を目指すべきということを積極的に提言されておられます。
30ページ、こうした金融環境が変化する中で、国債の格付につきましても注視する必要がございます。現在、日本はAのところにございます。これは各国比較いたしますと、31ページ、G7で見ますと、日本の下にありますイタリアはユーロの傘の下におりますので、イタリアを除けば最低、アジアで見ますと、中国と同程度、それから韓国、台湾の少し下というAの中にございます。
32ページ、実はこの国債格付、御案内のように、ソブリン・シーリングということで、民間企業の資金調達コストにも影響を与えます。前回格下げ時には、実は日本企業も同時に格下げをされております。こうした企業にも影響を与えるという点、それから有事の状況で格下げされても投資適格Aを保てるという観点では、国債格付につきまして、G7諸国並みのAAを目指して向上させていくということも必要と考えられます。
続きまして、課題の4点目、有事に関する備えでございます。
34ページ、公債等残高対GDP比は、コロナ禍を経て、見通しに比べて約20%非連続的に上方シフトいたしましたが、過去を見ますと、90年代後半のアジア、それからリーマン・ショック、東日本大震災と、実は何十年に1回ではなくて、5、6年に1回、20%程度の非連続的なジャンプということが起きる有事が起きているという事実がございます。
35ページ、震災関係で南海トラフ地震、下の表の右側を御覧いただきますと、経済的被害額につきましては140兆円、場合によっては230兆円ということで、非常に甚大な被害が予想されてございます。
それから36ページ、感染症につきましても、コロナがございましたが、一定の周期で今後発生すると言われている一方で、発生時期を正確に予知することは困難、また、発生そのものを阻止することも不可能。そうした中で、コロナにつきましては、アジアで180兆円の経済被害と言われてございます。
そうした中、37ページ、IMF、G7、G20、いずれもコロナ後は、平時では、有事対応を含めまして財政余力を再構築すべきということを言っておりまして、古今東西ということで、1866年、昔、イギリスにつきましても、やはり豊作の年にはきちんと貯めなければいけませんよということを財政演説でおっしゃっております。
続きまして、大きい三つ目のブロックということで、今後の財政運営の方向につきまして申し上げます。
まず一つ目、財政健全化目標でございますが、39ページ、骨太の方針、左上、我が国は財政健全化目標といたしまして、御存じのように、2025年度に国・地方を合わせましたPBの黒字化、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すということが6月の骨太で掲げられてございます。
40ページ、これも復習で恐縮でございますが、債務残高対GDP比を増加させる要素といたしまして、実は上側のPBを御覧いただきますと、赤い部分、PB赤字というのが一つの増加要因になります。それから右側、利払費はPBの外にございますが、それにつきましては、金利と成長率の大小関係によりまして債務残高の増減に影響するというところでございます。この金利と成長率につきましては、いずれも政府が直接コントロールしにくいということで、債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという観点では、この赤のPBの改善というのが重要になってまいります。
41ページ、実際に金利と成長率につきまして御覧いただきますと、1990年から2010年までの20年間は一貫してrが上回っている状況で、それ以降は行ったり来たりしているという状況でございます。
42ページ、各国のこれまでの債務残高対GDP比の伸びを要因分解いたしますと、我が国も、ほかの主要先進国も、多くはPB赤字が債務残高対GDP比の伸びる要因になっているというところでございます。
43ページ、我が国のPBの推移でございます。PB黒字化目標というのは、実は2002年に掲げられました。現在まで一度も達成はされておりませんで、目標年限が累次後ろ倒されてきております。もちろん裏側にありますストック、債務残高も累増しております。なお、今年7月の内閣府の中長期試算では、一定の前提の下で2025年のPBが黒字化されるという姿が示されましたが、これにつきましては、この秋に議論されます補正等々というのは織り込まれておりませんので、引き続き目標達成というのは容易な状況ではございません。こうした中で我々といたしましては、歳出の目安をしっかり達成するという観点で、歳出改革を継続するということをしっかり続けてまいりたいと考えてございます。
44ページ、裏側にありますストックの推移について、100年間取っておりますが、度重なる経済危機、災害等々ございまして、債務残高対GDP比は一貫して増加して、歴史的に見ても第2次世界大戦後を超えた水準で推移しております。
これを横で比較したのが45ページの左側、我が国の債務残高対GDP比でございますが、グロスで見ても世界で最悪の水準でございます。政府が保有する金融資産を差し引きましたネット、右側でございますが、これにつきましても、G7諸国のみならず、ほかの諸外国と比べても最悪の水準にございます。
46ページ、諸外国の財政規律、主に日本は閣議決定クラスですが、ほかの国は法律、憲法、条約などに基づいて決められております。
47ページ、もう少し具体的に見てみますと、左側にありますIMFの調査でございますが、フローの収支の規律が上側の丸、右下がストック、債務の規律でございますが、実は7割を超える78カ国が、フローとストック両方の規律を組み合わせているとなっております。日本につきましては、ストックにつきましてはあるというふうにはカウントされておりませんので、上側の8のうちの一つが日本になっております。また、右下の債務ルール85カ国あるという中で、実は右側の棒グラフ、81カ国が具体的な数値目標を設けているということになってございます。
それから48ページ、IMFによりますと、先進国32カ国のうち25カ国が、財政ルールを定めるだけではなくて、実際に目標をどう達成するかという、例えば事後的に政府に履行させる責任を持たせる等々、実効性を高めるためのメカニズムを備えております。このようなメカニズムがないのは日本を含めて7カ国ですが、右側、その中で我が国は突出して悪い財政状況にございます。
続きまして、予算編成上、二つ目の観点ということで、先ほど申し上げましたように、金利上昇していく中でどのように投資効率を上げていくのかというのが非常に重要な課題になるということを御説明申し上げました。
50ページ、再掲ですが、民間部門の状況の御紹介です。51ページ、政府部門について、2012年以降、政府支出の効果を見ますと、左側、1人当たり実質GDPとの相関はあまりない、右側のTFP、これは生産性でございますが、それとの相関関係もなかなか見られないということで、今後、潜在成長率、それから社会課題解決という意味では、投資効果も見据えた政策運営が求められるところでございます。
そのためにどうするのかというのが52ページでございまして、EBPM推進がございます。EBPMによりまして、予算の中身の重点化、それから施策の優先順位付けなどを徹底して予算の質を向上していくということで、データに基づく政策分析などを今後進めて予算編成に生かしていくということが一つ考えられるところでございます。
財政関係の最後のブロック、国民的議論の推進でございます。財政健全化に取り組むためには、国民的議論が不可欠でございます。
54ページ、アメリカでございますが、民間のシンクタンクが財政健全化の啓蒙活動を行っております。結果、実は、この1月でございますが、議会では超党派で財政健全化に取り組むための委員会を設置するという法案が提出されまして、審議中ということで、これは2039年度までに公的債務をGDP比率で100%以下にするための提案を議論する委員会となっております。
55ページ、最後でございますが、財政も含めた世代間倫理のようなものを課題解決するためには、先ほど十倉会長もおっしゃっていただきましたが、将来世代の視点に立って、現時点で何が必要かを議論すると、これはフューチャー・デザインと呼びますが、そうした国民的議論ということを涵養していくことが必要でありまして、財務省としても左下にありますような取組を進めております。
なお、これは余談でございますが、右側、ドイツ、韓国につきまして、これは気候変動ではございますが、政府が2031年以降のCO2削減目標を設定しないことは違憲であると、なぜならば将来世代に対する義務を果たしていないというような判決が出たところでございます。我々といたしましても、将来世代に対する責務をいかに果たしているかということを常に立ち戻る必要があると考えております。
説明は以上になります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は、御欠席の安永委員、國部委員より意見書を提出していただいております。意見書は各端末に格納しておりますので、お目通しを頂ければと思います。
それでは、これから、委員の皆様方から御意見ないしは御質問いただくことにいたしたいと思いますが、いつもどおり、会場から5名、それからオンラインから5名ということで指名をいたします。恐縮ですが、できるだけ御発言内容は手短にお願いをできればというふうに思います。
それでは早速、会場から指名をいたしたいと思いますが、私から見て右側から、土居委員からお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。これから令和7年度予算に向けての審議が始まるということで、活発な議論を私としても期待したいと思います。
令和7年度、2025年度といいますと、当然ながら国と地方の基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化という目標を達成する年次になっているということですので、令和7年度予算案においては、この目標が確実に達成できるような、手応えのある予算編成をしていただきたいというふうに思っております。
そうした意味でいいますと、この資料の13ページに、先ほど説明があったように、コロナ禍で補正予算の規模が相当拡大した。だが、実はその裏側で繰越と不用が増えていたということです。令和5年度から6年度にかけて繰り越されている額が、右上にあるように11兆円もあるということですので、まだ令和6年度中に使えるお金として11兆円も存在するということは、今後の令和6年度中の予算の執行においてもしかと受け止めていただいた上で、適切な規模での補正予算の編成を心がけていただきたいと思います。11兆円あるということを踏まえた上で、さらに新たに補正予算を組まなければならない金額がどれほど大きなものなのかというのは、私はそれほど桁が大きくならないと期待したいわけでありまして、適正な規模での補正予算の編成をお願いしたいと思います。
それから、今、衆議院選挙が始まっていて、いろいろな政党が若年世代の社会保険料負担の軽減に指摘が及んでおります。私もこれは非常に大事なことであると思います。資料17ページにありますように、やはりその裏側で社会保険料の軽減を実行たらしめるためには、昨年末の改革工程、これをしっかり実行に移していただくと。医療介護での給付の改革、これをしっかり進めていただくことも令和7年度予算の中でも重要ですし、さらには、高齢世代で御負担ができる経済力のある方にも保険料負担なり自己負担なりをしていただくということを通じて、若年世代の方々の保険料負担が軽減できるという、そうした対応関係があるということも国民に広く周知していただくことが必要かと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続いて、小林委員、お願いします。
〔小林委員〕御説明ありがとうございました。大変納得しております。
それで、財審としては超長期の視点で見た上で今年の予算を考えるという、そうした姿勢を保っていただきたいというふうに思います。超長期の視点で考えると、先ほど少し資料の中でもありましたが、人口の減少ということは重要であると思います。社人研の試算ですと、2100年までの長期を見てしまうと、人口が6,000万人台になるという推計です。恐らくそこから大きく外れることはないわけで、それを前提にして、これからの30年、50年というパスを考えていかないといけないと、そうした局面であると思いますので、どんなシナリオが書ける、財源の議論がどこまで必要なのか、あるいは財源の議論なしでどこまでいけるのかというようなことを超長期の視点で議論するということが必要ではないかと思います。
関連して、内閣府の2060年までの試算が今年の春に出ましたが、先日、内閣府のシンポジウムで少し話を聞いたのですが、彼らの試算で成長移行ケースという、生産性がある程度回復するというケースにおいても、社会保障の改革によって、年間1、2%で伸びると思われている医療高度化による医療費の伸び、その分を完全に抑えてしまうというぐらいの改革ができないと、債務残高対GDP比は長期的に発散していくと、そうした試算になっているのです。もちろん、その上にさらに金利が上がればさらに上がっていくということになるので、金利の問題も重要ですが、やはり医療を中心とした社会保障の改革というのは、これはクルーシャルに重要であると思います。
資料の最後、55ページに書いてあった将来世代の視点、これは本当に重要であると思います。将来世代の代弁者であるということは、財務省とか、あるいは財審の一つのアイデンティティーとして重要な要素であると思います。ですので、フューチャー・デザインであるとか、あるいは先ほど御紹介にあったクライメートリティゲーションは重要です。憲法や基本法のような法制の中に将来世代への配慮をきちんと義務として書くということがドイツの憲法などにはあるわけですが、日本の憲法にはそこまで書かれていない。そうした中で将来世代への配慮をどれだけ憲法上の義務と考えるかというようなことは、これからの課題であると思います。
また、最後に1点だけ御紹介すると、将来世代と現在世代のトレードオフというふうに常に我々考えてしまうわけですが、そこで克服する議論になり得ると思う、アメリカの哲学者でサミュエル・シェフラーという人の「世代間の議論」というのがあります。これは財務省の廣光俊昭さん、論客の一人であると思いますが、彼から教えていただいた方ですが、シェフラーの議論によると、もし将来世代がいなくなったということを考えると、私たちが消費したり仕事をやったりしている今現在の日常の楽しみというのも色あせてしまうというか、意味が感じられなくなってしまうということを主張していて、要するに、私たち現在世代の消費とか楽しみというのは、結局その価値は将来世代のウェルビーイングというか、将来世代の存続によって支えられていると。だからそこはトレードオフだけでなくて、将来世代がいるからこそ、私たち現在の人生の価値というのが支えられているのであると、そうした議論があるわけですが、そうしたことも少し深掘りして論じていけるとよいのではないかというふうに思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。まず、選挙戦の中で補正予算の額の話が早速出てきています。やはり補正予算は必要なものの積み上げであって、額ありきではないということは強く申し上げたいと思います。金利が上がっている中で、よりコスト意識を持って財政運営をしなければ全く立ち行かないので、ここはしっかりと押さえていただきたいと思います。
特に補正予算に入りそうなガソリンやエネルギーの補助金はもともと激変緩和だったはずですが、この先、何を財源に、どこまでやったら止めるのか、何を歯止めにするのか、少なくとも仮にやるにしてもそこを明確にしない限り、世の中は、まずガソリンはこの程度の値段なのだなと思ってしまいます。また、これはそもそも気候変動の脱炭素、あるいは日銀の物価目標とも逆方向なのではないかと思いますので、このイレギュラーな対策をどうしていくかということに関しては、相当厳しく取り組んでいただきたいと思います。
社会保障に関しては、また次もありますので、簡単に申し上げますが、こどもの財源はやはり必ず必要なので、現役の負担を過剰に増やすことなく、しっかりと生み出していただきたいと思います。特に医療の分野でEBPMをしっかりしていただきたいのですが、データの取り方などがしっかりしていない部分がすごくあると思うので、しっかりデータを揃えて、国民や医療に関わる人たちが納得のいく形で進めていただきたいと思います。
最後に、財政をめぐる国民とのコミュニケーションに関してです。ここでいろいろいつも話し合っていても、みんなに財政教育や広報をしようということになると思うのですが、肌感覚で言って、日本の財政が厳しいということは誰でももはや知っているのです。知っているというところからの次がどうやって踏み出せるか。例えば岸田政権のときの減税への批判は、減税ではなくて一時金のほうが良かったという意見のほかに、今減税している場合かというような思いを持つ人も結構多かったのではないかと思います。
そう思った人たちに対して、では財政のために私たちに何ができるのかという、行動に移すような提示がいま一つできていないのではないかと思います。つまり、財政再建のために私に何ができるのですかと言われたときに、増税言われても反対しないとか、世論調査でこう答えるとか、そうしたのもあるかもしれませんが、例えば省エネであれば、こんな工夫ができますという具体的な行動があるわけですが、財政再建したい私が何をできるのかということに対して答えがいま一つはっきりしていません。もう少し工夫してメッセージが出せるのではないかと思います。
例えば、病院に行って薬をたくさんくれるお医者さんというのは、必ずしもよいお医者さんではないですよねということを根拠とともに示すとか、念のため検査しましょうかとか、もう1日入院しましょうという姿勢は、実は良いアドバイスとは限らないということとか、日常の中で、教育とかだけではなく、財政のためにもう少し具体的に行動できることを工夫して発信ができる余地があるのではないかと思います。
そうでなくても財政教育も、メディアの発信もすごく今難しくなってきていますし、SNSなど形もすごく工夫が必要であると思いますが、発信の中身に関しても、財政が心配な国民が何か一歩踏み出せるような具体的なことをもって発信やコミュニケーションが取れるとよいかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕財政の中長期の課題、それから短期の課題、バランスよく御説明くださってありがとうございます。今の局面ですが、やはり、中長期どうやっていくべきかということと目先のことと、いつもそれは両方考えなければいけないと思うのですが、今のこの局面ではとりわけ、もう、そんなこと言っていられないというか、短期のところ、目先のところを本当に真剣に考えていかないと大変なことになるのではないかなというふうに思っております。
24ページのところで日銀が国債の買入れを減らしていくという話をお書きくださって、御説明くださっています。それから成長率と金利のところも、41ページにしっかりお示しくださって、異次元緩和をやっている間というのは、ある意味、中央銀行が無理やり金利を抑えつけた、金融抑圧をやっていたような状況ですので、そこに至る前のところを振り返れば、やはり金利のほうが長い目で見れば成長率より上に行っていることが多いと。これは日本だけでなくて、国内外で共有されている経験であって、市場メカニズムが普通に機能している国であれば、そうしたふうになるのが大体普通であり、そうしたことを考えると、やはり目先何をしていかなければいけないのかというところを本当に今まさに考えなければいけないところであるということで、そこを重点的に秋の財審建議でも打ち出していく必要があるのではないのかなというふうに思います。
財政の運営の目標について、どういう拘束力のある形にするかというところも御説明くださっていて、本当にそのとおりなのです。目先はやはりプライマリーバランスを目標にやってきて、均衡とか黒字化を目標にやってきて、でも補正の話を聞いているとそれも危ういなと思っていますが、そんなこと言っていられるような状況ではないでしょうと。やはりこれだけ金利が上がってくる中で、利払費も入っている財政収支のほうを目標に据えて、そこを均衡に何とかして持っていって、それを続けるというようなことを目標に変えていくべきなのではないかということをしっかりと打ち出していったほうが良いのではないのかなと思いますし、本日は触れてはいらっしゃいませんが、もう一つ、目先の財政運営のことを考えるときに大事な数字があって、かつて財審でも御紹介くださったことありましたが、IMFが出しているグロス・ファイナンシング・ニーズです。毎年度いくら国債を出さなければ財政運営を回していけないかという、その金額のところ、これは長期国債で調達すればするほど借換えが減りますから、減らすことができますし、短期が多くなってしまうとそれだけ増えてしまうというものですが、日本はここは結構、もう飛び抜けて大きいですので、いかに先行きのリスクを抑えていくのかということを、しっかりとやはり前面に打ち出して議論していった方が良いと思います。
金利が今、上昇局面に入っているということもありますし、それから自然災害も日本が多いということで、そのあたりも34ページ、35ページで御説明くださいました。私、首都直下地震の対策の検討ワーキングも入って、いろいろ議論もしているのですが、経済的被害全額を国がということにはもちろんならないでしょうが、日本の場合これだけ自然災害が多いのだから、これだけ大きなショックが急に来ることもあり得る。やはりそのためのフィスカルスペース、財政余地というのを今のような局面でしっかり確保しなければならない。34ページで、もう債務残高が増え続けていますよね。危機が来るたびにぽんと上がり、それでまた上がりということで、これはやはり経済が安定しているときに、きちんとそこを抑えていく、減らしていくという努力をしないと、とてもそうした危機にも対応できない、そうしたあたりのところもしっかり議論して打ち出していくのがよいのではないかなというふうに思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。資料に盛り込まれた内容、どれもうなずける内容が多かったので、私としてもこれは賛成です。
本日は秋の財審のキックオフ会合ということで、春の財審からいくつか財政をめぐる局面で変わったことがあります。一つは、プライマリーバランスの2025年度黒字化の達成が初めて中長期試算で示されたということです。二つ目は、日銀がマイナス金利政策を解除して、金利がある世界が復活して初めて迎える2025年度の予算編成であるということ。三つ目は、石破新政権が発足して、新しい経済財政政策が展開されるということで、この3点を踏まえて、財審として、将来世代に責任ある財政運営に向けた建議をどうやってまとめるかということが、この秋の財審で問われていると思います。
その上で、プライマリーバランスの黒字化というのは、目標が設定されて20年が経って、初めてようやくたどり着くかもしれないということで、非常にこれは達成できれば良いニュースであると思います。これは予算の効率化に地道に取り組まれてきた財政当局の方々の御努力の賜物ではあると思いますが、同時に税収の伸びが結構大きいということもあると思います。そうなると、あまり手放しで喜んでいるわけにもいかないというか、税収が伸びるということは、結局物価が上がって、金利も必然的に上がるということで、先ほど申し上げた二つ目のいわゆる金利のある世界では、これまで抑えられてきた国債の利払費というのが、資料にもあるように、2033年度にさらに8.7兆円も増額するということで、結構財政運営にとっては厳しい事態になるということが予測されるわけで、しかもPBは利払費は含まれていないわけですから、健全化の取組の手はいっときも緩められないということが事実としてあると思います。
そこで注意しなければならないのは、政治的な動向というのですか、税収が伸びて、PB黒字化になるかもしれないということになれば、政治的に歳出抑制の機運がどうしても緩んでしまうのではないかということです。2025年にPB黒字化になるといっても、黒字幅は僅か8,000億円しかないので、簡単に吹き飛びかねないし、なおかつ補正予算の編成というのはPBの予測には入っていないので、これは心配だなと思っていたところに、昨日、総理が、補正は昨年度を上回るような規模、13兆円を超すような規模ということをおっしゃって、これも今後の税収とか補正の制度設計によるかもしれませんが、これだけ大きな補正を仮に編成されると、先ほど申し上げたように、PBの黒字化というのはかなり危うい状況になってしまうのではないかというような心配があるわけです。
それで、その中身もガソリン代とか、電気、ガスの補助の延長とか、これは高所得者、いわゆる高級車に乗っている人も対象になるとか、あるいは脱炭素に逆行するのではないか、様々な問題点があるので、これは安易に延長して、復活させてよいものかということもあります。また、地方創生を総理は考えられているということで、それ自体はよいのでしょうが、地方自治体の臨時交付金などですが、これも物価高対応という名目で増額されているのかもしれませんが、果たしてコロナのときのように、便乗したものがこれに紛れ込むおそれがないのかとか、いろいろ考えていくと、その13兆円を超す補正というのは、それら大きな問題が出てくる可能性があるわけです。選挙を行っていますが、支援対象を限定しない政策を主張し合うことは避けていただきたいということはこの場で申し上げておきます。
金利のある世界が復活すると申し上げましたが、金融政策は正常化、引締めの方向には向かっているのですが、すると財政も健全化の方向、平時に戻る方向に向かっていかないと本来つじつまが合わない。金融と財政があべこべの方向に向いているというのは、この経済状況を考えてもおかしいわけで、総理は以前から、財政健全化を本来志向されている方と伺っていました。是非、ぶれないように健全化の方向に向いてやっていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ここでオンラインに移りたいと思います。オンラインは、このような順番でお願いします。芳野委員、佐藤委員、それから上村委員、福田委員、横田委員です。
初めに芳野委員に御発言をお願いします。よろしくお願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。連合の芳野でございます。本日は論点を3点に絞って申し述べたいと思います。
1点目は、国民の命と暮らしを守るための対応です。能登半島地震からの復旧復興は、解体作業が進まず、遅れが見られている中、先月の豪雨災害で被害が拡大をしており、被災者の生活基盤の再建と能登半島の復興が急務です。くわえて、近年多発する自然災害への防災・減災対策の充実も必要です。国民の命と暮らしを守るためにも、予備費でなく、本予算での対応が必要と考えます。
2点目は、デフレからの完全脱却に向けた対策です。ようやく回り始めた経済の好循環を確かなものにしていくには、賃上げの継続と、GDPの6割を占める個人消費の拡大が不可欠です。働く者、生活者の将来不安を払拭するためにも、所得再分配機能の強化による格差是正と、社会保障と税の一体改革による重層的なセーフティーネットの構築が必要です。あわせて、継続して賃上げできる環境整備と、雇用の安定と公正な労働条件の確保の下、今後の経済成長の礎となるDX、GXなどへの積極的な投資と公正な移行の実現に向けた予算措置も必要です。
3点目は、財政規律の強化と歳出構造の見直しについてです。社会経済活動が平時に戻りつつある中、次年度予算の概算要求は過去最大を更新しており、平時の歳出構造とは程遠い状況です。昨今の経済環境を踏まえますと、ひとたび財政懸念による金利上昇が起きれば、国債の安定的な消化が困難になる可能性もあります。また、自然災害や感染症など有事への備えの重要性が広く認識される中、財政余力の確保も必要ですので、中長期的な財政運営の評価、監視を行う独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の不断の見直しに着手すべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは続きまして、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。よろしくお願いいたします。私からは端的に3点ほど。
1点目ですが、先ほど御説明あったとおり、今、日本ではインフレが進んでおり、そのインフレの中での財政運営の在り方を考える必要があります。インフレというのはもちろん税収を増やしますが、日本の場合は歳出自体が別に物価と連動しているわけでは必ずしもないので、歳出の伸びを抑えることができれば、実質ベースで見ると財政収支を改善することはできるわけです。なので、ある意味、もちろん介護や医療の現場における処遇の改善とか人件費の拡充といった要請はありますが、子育て支援も含め、こうした新たな財政ニーズに対しては、やはり基本的にはEBPMに基づくワイズスペンディングで対応するべきであって、安易に歳出を名目ベースで拡大させるべきではないです。名目ベースで歳出を拡大させなければ、実質ベースで財政収支を改善させることができるということになります。税収も伸びますので、これ自体がプライマリーバランスの改善に寄与していくだろうということが期待できるはずです。そうした意味では、インフレというのは財政再建の余地を広げるという効果を持つと思います。
他方で、もちろん、先ほどから何人かの委員から御指摘のある補正予算が今議論されているところになります。こうした形で歳出拡大への政治的なプレッシャーが起きてくると、やはり財政再建もままならないということになるのかなと思います。さっき最後のほうで御紹介ありましたが、何らかの形での財政ルール的なものを我々は本気で考えていく必要があるかもしれませんし、それから来年度、プライマリーバランスの黒字化を視野に入れるのであれば、補正予算も含めて、決算ベースできちんと達成しなければいけないので、この財審、どうしても当初予算に注目しがちですが、繰り返し何度も議論されていることですが、やはり補正予算も俎上にのせて議論するということが肝要かと思います。それが1点目です。
2点目ですが、やはりここに来て潮目が変わった大きなポイントが、外国人投資家の保有額が徐々に増えているということ。よく言うのは、日本の国債が安全であるというのは、国内で安定的に消化されてきたということがあったと思うのです。日本は、アルゼンチンやギリシャ、イタリアとは違う、先ほど御紹介あったイギリスとも違うというのは、やはり外国人投資家の保有率が低くて、大部分が国内で安定的に消化されているという、それが前提だったと。しかし、その前提条件が今変わろうとしているということになるわけです。
かつて星先生や伊藤隆敏先生たちが書かれた論文で、アゲインスト・グラビティーというのがあって、日本の国債が増えても金利が上がらないのは、やはり国内で消化されているからであるとあります。しかし、裏を返すと、国内消化が困難になると、金利の上昇を含め、日本は財政的に苦しい立場に追い込まれるだろうと、そうしたことを書かれた論文があります。まさに予言書ではありませんが、それに近い状況が今起きようとしているのかもしれないということ、ここはやはり留意が必要かと思いました。
3番目ですが、冒頭で副大臣から御紹介があった、あるいは十倉会長からもお話があったとおり、経済あっての財政ではありますが、しかし財政は経済の基盤です。まずは有事のときは、この財政が強靱でなければ、迅速な災害からの復興あるいは有事への対応というのは難しいということになりますので、ある意味、経済あっての財政というよりは、経済と財政は車の両輪というふうに捉えていく必要があるかと思うのです。
そうした中でいうと、やはり財政健全化というのは、こうした平時においては進めるべきなのですが、なかなかそれが進まないということで、最後、事務局から国民的議論が必要であるというお話があったと思うのですが、国民的議論を進めるに当たっては、受益の見える化というのがあってしかるべきです。やはり国民の多くは、税金は取られるもの、公共サービスは空から降ってくるものというか、タダ飯のようなイメージがあって、なかなか財政を通じて皆様の税金が社会保障を含めた受益となって国民に還元されているという姿が見えていない。
これは次の議題になるのですが、私が思うには地方財政がこれに関わっていて、要するに、国は税金を取って、あるいは財政赤字を出して、地方に補助金を配って、地方自治体が行政サービスを提供していると、社会保障を含めてです。なので、国民からすると、国の財政と自分たちの受益がつながらないところがあると思いますので、やはりここは国の財政が地方自治体に回る、国の財源が地方自治体に回って、それが住民の行政サービスにつながるという、この流れを見える化させることによって、より財政を身近な問題にできるのではないかと思います。そうした形の見える化という工夫も必要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて上村委員、お願いします。
〔上村委員〕御説明ありがとうございます。来年のPB黒字化に向けて、非常に重要な局面に来ていると認識しています。大きな方針として賛成します。いくつかあります。
一つ目ですが、3ページ、賃上げが過去最高で、喜ぶべきことではありますが、賃上げ促進税制による税額控除の金額も過去最高額になっていまして、所得が寄与した部分もあるかなと思います。そのような政策税制に頼らずに賃上げができるような経済にしていくことが重要でないかと思います。9ページとかにあるのですが、デフレからの脱却という言葉がいくつか出ています。まだ脱デフレ宣言が出ていない中では仕方がないと思いますが、その一方でインフレになっているので物価上昇対策を行うということで、インフレ下でデフレ脱却というのはなかなか分かりにくいなと思っています。これは感想です。
13ページで、一般会計の繰越額と不用額についてです。コロナ禍の間は仕方がなかったかなと思いますが、いまだにこれだけの規模になっているということは非常に問題が多いので、補正予算に関して、これらの縮小に向けた取組が必要であると思います。
最後ですが、全体的に思うことです。金利上昇局面に入りつつあり、インフレの懸念があるというときに、財政支出はやはり抑制してワイズスペンディングを徹底すること、これをコンセンサスとしてきっちり取っていくということが必要であると思いますし、また、PB黒字化は来年だけではなくて、それを持続させることが重要であるということも確認しておくことが大事かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。私からは、簡単に3点申し上げたいと思います。
今回の総論で有事への備えというのがかなり強調されていたということは、私も非常に重要なことではないかと思います。日本の財政赤字、極めて深刻ですが、ただ、すぐ財政破綻が起こってということでも必ずしもないので、ついつい財政は緩みがちです。ただ、極めて社会的なリスク、地政学的なリスク、あるいは災害リスク、あるいは金融的なリスクが高まっている時代の中で、やはり有事に備えて財政の余裕を持っておく。そうした意味では、財政出動しないわけではないが、それはあくまでも有事に大規模にやれるような余裕を持っておくということを強調されていたというのは、非常に良いことなのではないかと思います。
43ページに過去のプライマリーバランスのグラフが書いてあって、私は非常に良い図でないかと思うのですが、足もと非常に楽観的に、成長ケースとかでプラスになっていますが、過去を見ると、かなりアップダウンをしているわけです。恐らくこの平均値がゼロであるというのが望ましくて、プラスになったりマイナスになったりする必要があります。危機のときにはマイナスになり、平時にはプラスになる、そうしたようなイメージが非常に良いわけですが、この図の平均値、きちんと計算したわけではないですが、大体マイナス4%ぐらいになっていて、これは非常によくない状況です。やはりこのマイナス4%ぐらいの平均をゼロにするようなイメージで財政運営をしていかなければいけないということなのではないかなというふうには思います。
それから、支出の効率化の問題ですが、支出をワイズスペンディングにするためのEBPMが必要であるというのは私もそのとおりで、それも御紹介されていたというのは非常に良いことなのではないかと思います。いろいろな研究が経済学でも最近進んでいますので、そうしたことを使っていただくのは非常に大事であると思います。
ただ、1点だけ注意しなければいけないのは、そうした人たちはミクロの人たちなので、あまり財源の問題を議論するケースが少ないということはあります。もちろん小規模な支出であれば、そうしたことを気にすることはないのですが、ものによっては、非常に大規模に実施する場合には、その財源をどうするのかという議論と同時にEBPMを議論していただくということが大事なのではないかと思います。
最後に、外国人投資家の国債保有率が高まっているということは非常に大事な問題です。ただ、少し慎重に議論したほうが良いのは、短期の国債に非常に集中して外国人の保有比率が高まっているという点です。これは円ドルスワップで外国人投資家が円の国債を持っているということから起因していますので、それが財政破綻とかにどのように関わってくるかという議論は必ずしも明確ではありません。単純にその数字だけを出してというより、もう少し慎重な議論をして載せる必要があると思いました。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕横田です。御説明ありがとうございました。
まず予算の件について、いまだコロナ以前の平時予算に戻すことができておらず、残念に感じておるところですが、さらに不用額が生じている点はしっかり発信をすべきであると考えています。不用額が発生する現状は、単に予算を拡充することが最善策でないことを示しており、今後の有事を見据えて通常予算への早期の回復が必要であると考えています。さらには、コロナ前においても膨張予算が問題視されていたということも忘れてはならないと考えております。
続いて補正予算に関してですが、ある事案で補正予算の消化に苦労する現場を見かけたことがあります。民間企業においても年度末に追加投資を行う機会が多々ありまして、短期間での企画立案や予算執行は、正直、現場に大きな負担を強いていると感じることもあります。補正予算の常態化は避けるべきであり、不要な緊急予算の配分は特に慎重に扱う必要があると考えます。
ほかの委員もおっしゃっておられましたが、地方へのコロナの臨時交付金についても効果が疑問視される事案も存在しておりましたし、さらに会計検査院によると、多くの地域で事後の検証が不十分であったと指摘されています。政策立案においてEBPMの徹底が不可欠であり、効果検証が不十分な際は、次回以降の交付金申請を制限することなども考えられると思います。また、広域的な申請を促進するなど、人口減少下における資源配分の工夫が求められると感じます。
最後に、米国における超党派の財政再建に向けた委員会設置の動き、非常に興味深く拝見いたしました。日本においても同様の動きが展開されることを願っておりますし、また、その際にはフューチャー・デザインの手法などを踏まえて、将来世代の視点を持つ取組が進むことを期待しております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ここで、こちらの会場に戻りたいと思います。
それでは、続きまして平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今回、秋の財審のキックオフということで、私の問題意識を申し上げたいと思います。
まず政策論ですが、コロナ禍からの回復が進む中で、岸田政権下での新しい資本主義の取組が、賃上げや設備投資の増加につながっていること自体は、間違いないです。支持率とは関係なく、日本経済はよい方向に向かっていると思います。今回、石破首相もこれまでの経済政策を引き継いで、成長型の経済の実現を図っていく、すなわち生産性と潜在成長力の向上に向けた投資を加速させて長期停滞からの脱却を図るという方針を示しておられるのは、誠に妥当であると思っています。
また、それとあわせて、十倉会長もおっしゃっている、日本の社会・経済がダイナミズムを取り戻すためには、国民の間に引き続き根強く残る将来への不安を解消して、公正で、かつ誰もがチャレンジできる社会を実現するための制度改革、とりわけ給付と負担の問題を含む税と社会保障の一体改革を断行する必要があると思います。これは、冒頭、横山副大臣や十倉会長がおっしゃったとおりです。
その中で、財政運営をどうしていくかという点について、総論的には、今回の資料で掲げられた方針に異存はありません。経済成長と財政健全化の両立が必要ということは間違いないですし、金利のある世界が戻ってきた中で、平時への移行を進める必要があります。すなわちゼロ金利下で弛緩した財政規律を回復させ、政策の優先順位を明確にした上で、エビデンスに基づく生産性の高い支出に徹するということであると思います。
その上で、各論的に二つ申し上げたいと思います。
第1に、財政健全化という場合に、どこを目指すかということです。今回、資料30ページ以降で格付に触れておられますが、私は、平時において格付を少なくともワンノッチアップし、AAゾーンに引き上げておくべきだと考えます。
既に何名かの委員が御指摘されているように、近年、頻発する自然災害と高まる地政学的なリスクを考えると、国民も、政治家も、巨大災害や有事への備えが必要であるということがかなり広く理解されるようになってきました。財政の文脈では、いざというときに、国が資金調達を支障なく行うためのバッファーを持っておくことが、国、あるいは財政を預かる者の責務ではないかと思います。
これまでの財審の議論は、このままでは格下げになりかねないとして警鐘を鳴らすのが常でありました。しかし、意外と思われるかもしれませんが、格付機関と直接話してみると、彼らは、今後数年の努力次第では格上げが可能であるという認識を持っているということが分かりました。本日詳しくお話しする時間はないのですが、そもそも31ページにもあるとおり、日本の格付が低すぎるということです。日本経済の回復とそれに伴う税収増によって債務残高対GDP比が改善するということが、彼らの認識の背景にあるようです。
ただし、忘れてはいけないのは、彼らはよくトラジェクトリーという言葉を使っていますが、改善に向けての方向感が明確であって、かつ持続可能性があると彼らが信じるに足るエビデンス、すなわち、我々のコミットメント、あるいは具体的な政策の積み重ねを示す必要があるということは申し添えておきたいと思います。
第2は財政ルールの確立です。これも既に何名かの委員が御指摘されていますが、現在、財政健全化目標と歳出の目安があります。これはデフレを所与とした過去の枠組を何とか引き継いできたものです。しかし、インフレ基調に移行する中、物価高による歳出増も考慮した上で、財政運営の規律や規範をもう一度ルールとしてしっかりと位置付けておく必要があると思います。それが先ほど述べた格付評価にもつながると考えています。
選挙戦の中で聞こえてくる、税収増の分だけ使ったらよいのではないかという議論にくぎを刺すためには、今回の資料47ページに示されているように、収支ルールと債務ルールだけではなく、歳出ルールも組み合わせることで、規律の実効性を有効的に高めることができると思います。具体的には、我々も絶えず指摘している、現行制度の抜け穴となっている補正予算の膨張を抑え、予算の優先順位付けに基づいて、財政資源の全体最適化を図る制度として、複数年度にわたる歳出の大枠などを規定する中期財政フレームの導入を検討すべきであると思っています。
今回の秋の財審では、制度論に踏み込むことは想定していないかもしれません。くわえて、総選挙戦中に、こうした議論を進めるためには、かなり知恵を絞る必要があると思います。単純に反発を招くだけでは意味がありません。しかし、そうしたリスクが確かにある一方で、経済の好転を含め、いくつかの客観情勢の変化によってもたらされた正常化へのチャンスをどう捉えるかということを、我々として、真剣に考える必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ここで、横山副大臣、公務がございますので、退室されます。
(横山副大臣 退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。毎回、財審のスタートに当たっては、この総論というのがあるわけですが、いつものことながら非常に現状と課題についてまとめていただいてありがたく、特に今回は非常にコンパクトで分かりやすくなっているのではないかなと感じております。これを見ると、何か変化の兆しというか、いろいろな意味で、転換点を迎えているというような感じがしております。新たなステージという表現を使われておりますが、ある面ではチャンスということかもしれません。
時間軸ということで、3点述べたいと思っております。
1点目は、長期というか、超長期。これは小林委員からもお話がありましたが、人口減少の時代に入っていく。今の平野委員からのお話であると、いわゆる方向感、これは相当長い期間続き、戦後ずっと続いた、いわゆる人口が増えた時代から急激に変わっていくわけです。いろいろな考え方とか、あるいは制度、これは社会保障もそうですし、社会政策、それから、インフラあるいは地方政策、そうしたものを大きく変えていかないとなかなかいろいろな意味で矛盾が出てくるのではないかなと思います。もちろん少子化対策はやるのですが、それが成功するとしても50年、あるいは3世代、4世代ということになると100年ぐらいかかり、一方で少子化対策をやりながら、いろいろな考え方・制度を、いわゆる人口減少時代に入ったということを前提にもう1回見直していくべきではないかと思っています。
それから、中期的には、これも何点か出ておりますが、いわゆる金利のある世界に入っています。20年間、低金利あるいはゼロ金利が続いて、金利という概念があまりなく育ってきた方も多いわけです。いずれにしても、金利というメカニズムが機能する本来の資本主義に戻ったということですので、企業経営もそうですが、そのような思考とか行動に変えていくチャンスではないかということです。
それから、三つ目は、短期的、これはどちらかというとリスク管理です。いろいろなリスクが想定されますが、二つ挙げるとすると、一つは倒産の問題です。コロナ融資が返済に入るので、倒産です。それからもう一つは、中東情勢に伴うエネルギー価格の高騰というか、急騰です。これは非常に注意して見ていかなくてはいけないのではないかなと。中小企業の倒産については、何らかの対応はしなくてはいけないと思いますが、従来のような対症療法的な対応よりも、むしろ将来につながる前向きな対応が求められてくるのではないかと思っています。
それから、エネルギーは、これはなかなか他律的なことで、それ自体を防ぐことはできないのですが、それに対する対応として、去年からやっているいろいろな対策は、何となくリーズナブルだったと思うのですが、今年の夏に打ち出した対策については、正直、どのような方向感なのか分かりづらく、いずれにしても、いろいろな中東情勢でエネルギーが相当大幅に変わるということも想定しながら、いろいろなシミュレーション、頭の整理をしておかなくてはいけないのではないかと思います。
最後にPBですが、これはもう25年度はチャンスですから、何としてもこれは実現しなくてはいけない。二十数年間、実現しない目標というのは、もうこれは有名無実ですから、とにかく一回でもよいから、一度でもよいから実現するということが非常に大事で、実現できるのであるという実績をつくる意味で、今年ほどよいチャンスはないので、何としても、これは今回、実現して、実績を作っていただきたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続いて、吉川委員、お願いします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。私から2点お話ししたいと思います。
1点目は、経済の現状とマクロ政策ですが、私は個人的に経済学者として、デフレ脱却というフレーズには、実は違和感を持っております。というのは、デフレというのは物価の下落ということですが、御存じのとおり、CPIは、3年間、一言で言えば、インフレです。日銀が目標とする2%超えというものも、もう2年半くらいでしょうか。プラスという意味では3年間、インフレということですから、そこでデフレ脱却というのはどういうことかという気がしています。必ず本格的なデフレ脱却、あるいは完全にデフレ脱却といった修飾句がつくのですが、大変雑駁な例えですが、副作用の非常に強い解熱剤、熱が下がれば普通はやめるということであると思うのですが、完全に熱が下がる、本格的な平熱になるまでと言って、副作用の非常に強い解熱剤を飲み続けるのかと、私はそんなような気がしております。
先ほど事務局の資料で御説明いただきましたが、実体経済、GDPあるいはGDPギャップ、雇用、物価は今申し上げましたが、今の状況で、財政金融政策、アクセルを踏むという、そうしたオプションというのは私はあり得ないと思っています。
結局どういうことかと言うと、財政で言えば、今回の選挙戦を見ていても、一言で言うと、残念ながら、やはりポピュリズムということかと思っています。先ほど平野委員が格付との関係で、トラジェクトリー次第では格上げをというお話があったと思うのですが、そのトラジェクトリーが逆コースをたどっているのではないかという気がしております。
結局は、財政で言えば、政策を考える視点が短期的といいますか、目先になっており、長期的な視点を欠いているということに尽きると思っています。頂いた資料の最後のページに将来世代の視点を充実せよとありますが、全くそのとおりであると思います。財審としては、財政健全化の重要性を愚直に言い続けるということには、私は社会的な意義があると思っています。
2点目は短くしますが、パブリックセクターの役割というのはいろいろな意味で非常に大きいということです。皆様、御認識のとおり、代表は例えば社会保障ということになると思うのですが、本日も医療について御説明があったと思いますが、やはり予算編成であると、どうしても年金、医療、介護、子育て、生活保護など、それぞれのパーツの議論となってしまいます。具体論を詰めなくてはというのはよく分かるのですが、やはり全体像の議論というのは、負担も含めて、やる必要があるのではないでしょうか。全体像の中から、個々のパーツについても、パーツだけで議論しているとそこまでの議論はなかなか出ないということについても、踏み込んだ方向性というのが見えてくるのではないかと思います。選挙の後ということでしょうが、希望としては、政府として社会保障全体に関する議論を、官邸なのかもしれませんが、是非本格的に進めてもらいたい、進める必要があるという考えです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕今回も大部で、特によくまとめられた資料をどうもありがとうございました。今回、後半で、特に有事への備え、財政バッファーの構築が必要ということが論点になっているのですが、この点につきましては、昨年度も私も何回か申し上げております。IMF等、欧米の機関が、最近、コロナ、パンデミックの影響でこう言っているのは、これは私の個人的な見解では、やはり欧米というのはかつてから、ペスト、天然痘、スペイン風邪と、これらの感染症に対する警戒感が大きく、コロナでより強くなったと思います。ただ、我が国に関して見ると、この感染症の問題以外に、大きなリスクがいくつか控えております。
私は、日本国、日本経済、日本の財政にとって最大のリスクは、やはり少子高齢化、人口減少であると思いますが、二つ目には自然災害、これは二つあって、一つは南海トラフ巨大地震等の地震と、地球温暖化等に伴うスーパー台風等のもの、従来型の自然災害です。三つ目が極東有事、極東アジアの有事等、やはり地政学的リスクの拡大ということですが、実は半年前の最後の分科会から見ても、この三つのリスクがより高まっています。昨年の日本における日本人の出生数は72万7,000人ということで、今年は70万人を割ってくるのは相当確実な状況になっています。出生率も1.2ということなので、今年はもう1.1台になる可能性がある。
二つ目の自然災害につきましても、先般、お盆のときに巨大地震注意という情報が気象庁から出ましたが、前回の南海トラフ地震の一つを占める南海地震というのは1946年ですね。その前に東南海が1944年、安政東海地震が1854年ですから、これはやはり三つ一緒に来てもおかしくないという状況が迫っている。先ほど35ページでありましたが、南海トラフ地震の発生確率は70%から80%。ただ、これは30年以内なのですね。20年であると、これは60%ですから、実は本当にだんだん迫っていると。経年効果ではありますが、このリスクはやはり高まっていると見るべきと思います。
三つ目の極東有事についても、特にこれは台湾有事の問題ですが、実はこの話が出始めたのは3年ほど前からで、米軍の現役及びOBが一斉に言い出しました。なぜかというと、これは2022年の中国の全国人民代表大会で習近平氏が総書記3期目に就任して、次、2027年に4期目に就任するのか中央委員会主席という新たなポストをつくって自ら就くのか。これは毛沢東氏が就いていましたね。2027年というのは、また人民解放軍の建軍100年でもあるということで、いつからそのリスクが高まるかと彼らが言っていたかというと、実は今年の11月5日からなのです。つまり、アメリカの大統領選、今、本当にトランプ氏とハリス氏、拮抗しています。RCP、RealClearPoliticsの予想であると、トランプ優位と、FiveThirtyEightの予想であると、ハリス氏優位と、本当にどちらになるか分からない。過去、大体、特に株式市場などで言われるのですが、大統領選は株買いであると言っているのですね。
ただ、これはすぐ決まった場合なのですよ。実は決まらなかったことがあります。2000年のブッシュ氏対ゴア副大統領、これは12月まで決まらなくて、株式市場でも相当軟調な状況が続いたのですが、私は、今年最大のリスクは、決まらないこと、どっちも負けを認めない、ないし開票作業が混乱すること、そうした米国の中の混乱時に有事が高まるのではないかというのが米軍の高官OBの過去の主張なのです。
つまり、何が申し上げたいかというと、これから2027年にかけてやはり自然災害のリスクも高まってくると思います。地球温暖化、これは昨年の世界平均気温は過去最高でしたが、今年も最高を更新する可能性は、コペルニクス気候変動サービスによるとほぼ確実です。ちなみに、NOAA、米海洋大気庁は8月に97%という確率を出したのですが、9月には出していません。なぜかというと、ハリケーンのヘリーンでNOAAのノースカロライナ州アッシュビルにある施設が被災してしまったのですね。つまり、米国のそうした専門機関においても想定外の事態が起きるということです。そうした状況の中ではやはり我が国の財政、こうした厳しい状況においては、少なくとも、財政バランスは先進国では最悪の状況ですので、やはりこれ以上の財政赤字の拡大をより最小化する努力が必要と考えております。
ただ、一方で、稼ぐことも必要ですから、やはりEBPM、ワイズスペンディングに基づいて、日本の潜在成長率を引き上げるところに、歳出を選択と集中で、集中投入していくということが必要だろうと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕総論の御説明、ありがとうございました。何年も財審をやっていると、財務省側の説明が年々コンパクト、かつ分かりやすくなっているというのは非常に良いなと思って聞いておりました。経済あっての財政というのはそのとおりですが、経済を回していくためにも財政は基本として必要であると考えております。
それで、岸田政権のよかったところは、何か歳出増の政策を取るときに必ず財源というのを考えていたということではないかと思って、実現していないところもあるのですが、その発想というのはやはりまず国民に定着させたいなというふうに思っております。昨日、石破総理がNHKの『ニュース7』に出ていて、うちの記者が、防衛費のための増税をどうしますかという意見を聞いたときに、税のことを直接はおっしゃらなかったのですが、やはりそうした大事な政策、特に防衛、国の安全に関わるものに対して財源があやふやであってはならないというようなことをおっしゃっていたので、是非その路線は今後の政権でも継続してもらいたいと思っております。
一方で、経済、よく経世済民と言われるのですが、民を救うという意味では、やはり格差の問題にどう対応するかということもこれから必要なテーマです。最近、アメリカの政治に関して読んだ本で、アメリカの方が格差はよほど大きいのですが、何で解消されないのかという理由として財政の問題を挙げていて、アメリカの財政は、医療費の増大や軍事費、あるいは過去の国債の利払いなどにより、貧しい人を救うため格差解消のための予算が取れないということを指摘していて、日本より軽度かどうかは分かりませんが日本と同じような問題が恐らくあり、ああ、なるほど、でも、アメリカはそうなのかな、では日本であればどうなのだろうということを考えました。そうした意味でも財政の余力というのを大切にしていかなければならないと思いました。
それで、いろいろお金がかかるのは事実であると思うのです。教育も介護も防衛も全部お金がかかるということで、それを歳出しながら財政健全化というのは、やはり成長によって税収を拡大していくということが大事です。先ほど印象に残ったのは、労働移動の円滑度と実質賃金の上昇率が連動しているということで、やはりこれから新しいビジネスが起きていくときに、産業の新陳代謝というのがあるべきで、そのときに労働力が柔軟に移動できるということが大事なのですが、やはり怖いのは、特に日本人が慣れていないのは、失業を一旦、短期間でもしたときにセーフティーネットがあるかどうかというところなので、今年はそこに取り組めたらよいかと思います。
最後に、もう財審も何年もやっていると、この秋の財審は、来年度当初予算に向けて話し合うところなのですが、先ほどから何度も出ましたが、補正予算というのがあるわけです。だから、当初だけ話していても仕方がないなというところがあって、ただ、補正予算も必要としている人がいます。例えば私が現場で会った人は、北関東の建設事務所の人なのですが、災害工事、復旧現場がやはり何年もかかるため、何年分もの予算が要るのだが、大体補正で組まれていると言う人がいました。これは、要は、当初だけではこの国のいろいろなことをやるのに予算が足りないのではないかということなので、もちろん補正予算ですから、建前としては、その年度になってみないと必要かどうか分からないと思います。将来に向けたプロジェクションとかなかなか出せないとは思うのですが、少なくとも、過去1年間の決算の状態がどういう状況で、どういうところにお金を使って、必要だったかどうか、これからも必要なのかとか、何かそうした検証を毎年やっていったらよいのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ここでオンラインに戻しますが、角委員、それから、滝澤委員に御発言をお願いします。
初めに、角委員からどうぞお願いします。
〔角委員〕ありがとうございます。私も長年、この委員会に参加させていただいておりますが、何におきましても、ついにPB黒字化が見えてきたということにつきまして、財務省の長年の努力に対し、心より感謝を申し上げます。
2点目は、資料2ページですが、個人消費の我々の肌感覚といたしまして、確実にホテルのADRが上昇しており、以前は日本のホテルのADR(客室平均単価)は、欧米に比べてはもちろんのこと、ASEAN等でも一部には負けるという非常に残念な時代が長く続いたのですが、ようやくADRも適切な水準とまではいきませんが、かなり改善をいたしました。以前は、例えば一旦何かがあって落ちて、だがその後回復した、この繰り返しだったのですが、リーマンやコロナがあれば多少影響を受けるかも分かりませんが、今回は恐らくこの水準は、多少のことがあっても、ホテルが普通にまともにやっていれば赤字にならない運営ができていくような感じがしており、このあたりについては非常にありがたく思っております。
そして、次に、国債の格付の問題です。30ページにありますように、韓国や台湾をやや下回る格付、要するに、2ノッチ下なのですよね。日本の、いわゆる技術力であるとか、勤勉性を考えますと、韓国より下回っている現在の格付は不相応であると私は思っておりまして、何とかこれを回復すべく、我々ももちろん努力いたしますので、国を挙げて取り組んでいただきたいと思います。要するに、言いたいことは、財政規律が来年、一旦達成されますので、その財政規律を守りながら、安定的な経済成長を可能にする予算と規制改革ということをお願いしたいと思います。
例えば私どもの事業で言いますと、長年、JR大阪駅の北側の元の操車場があったところ、24万平米のこの土地を、我が社1社だけではなく、ほかの大手ゼネコンやハウスメーカーとかが一緒に取り組んでおり、このうめきた1期が終わり、いよいよ2期に取りかかっております。来年、大阪・関西万博が開催されるまでに、何とかこのうめきたの2期についてもできるだけ、完成とまではいきませんが、できるだけ必要な施設は整備していきたいというふうに考えております。
24ヘクタールのうちの、今回、17ヘクタールをやるのですが、そのうちの約半分の8ヘクタールに緑ができます。公園としては、我々の、いわゆるデベが4.5ヘクタールの恒久公園を造ります。そうしたことができるのは、まさにこのうめきたに対して大胆な規制改革をやっていただいたからであり、1期については、今まではできなかった床面積のビルを建てることができました。いろいろな意味の地元の協力も、あるいは国の協力もあったのですが、要するに、規制改革と我々の力が一緒になって、すばらしいまちづくりができて、そこへ、世界から来られる、あるいは、関西を訪れたことのない日本の皆様も来ていただくという中で、よい形でお迎えができるのではないかなということがございます。
何が言いたいかといいますと、まずはプライマリーバランス黒字化が見えてきたことを心からよかったということと、これをさらに、43ページで、成長移行ケースと、薄くグレーで書いてありますが、少しでも、過去投影ケースではなくて、成長移行ケースに近づいていけるような施策をお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、滝澤委員、お願いします。
〔滝澤委員〕御指名ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私からは2点申し上げたいと思います。
1点目は、実質賃金と消費についてです。2ページ目に消費のデータがありますが、労働力調査の事業所規模5人以上の現金給与総額に関する実質賃金指数を確認すると、令和3年度から令和5年度にかけて2年連続で減少していたかと思います。結果として、やはり消費者マインドの指数も50を下回る状態が続いていて、実質の民間消費もまだまだと思いますので、この点は、今後もどのように、どちらのトレンドがあるのかなど、データとして注視すべき点と思いました。
2点目は、持続的な賃上げにも寄与します生産性の向上についてです。中長期の試算においても生産性成長率をどのように見積もるかということがポイントになろうかと思います。ただ、過去数十年、大企業と中小企業の生産性格差を縮小させることや中小企業の生産性を向上させることがなかなか実現できていない状況であると思いますが、それを実現するためには、例えば補助金とか資金調達方法に焦点を当てた政策的な工夫で乗り切るというだけではなく、やはり中小企業自身がM&Aとかデジタル化などを通じて製品を差別化するなど、そうした努力で製造能力、生産性の向上を高めるということがより重要であると考えます。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻します。
続いて、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕コロナ禍から平時への移行、非常に重要であると思っております。この平時への移行のところで、私たちがコロナ禍で、非常に大きな予算額を聞くということに慣れてしまったようなところもあり、ここから感覚を回復させるということも平時になるということの一つなのではないかと思います。
そうした中で、うまく予算を配分しながら、ほかの委員の皆様もおっしゃるところですが、災害や感染症に備えて、いざというときには躊躇なく手を打てるような財政であることが非常に重要であると思います。
それから、2点目ですが、事業をつくっていくということでありまして、もちろん民間でやれることは民間でやればよいことなのですが、予見性がないものにはなかなか民間の資金がつかないということもある。一方で、予見性がないもので、国家にとって非常に重要な事業というのもあります。そうしたものに対しては、やはり長期の予見性というものを示すことによって、成り立たせることの出来るものもあります。設備投資などにつきましては、国の補助その他もあってできるところもありますが、今、より難しいのは人材の確保であると思います。この人材の確保と育成というのも、その組織にとっては投資でありまして、その投資をその先何十年かやろうと思ったときには、やはりこの事業の予見性があるということが重要で、特に専門性のある人材をつくるということは、一朝一夕にはいかず、何年もかかって人を育てることになりますので、こうしたものが必要かと思います。
その職業を選ぶ個々人にしましても、この事業に将来性があると思えば、自分の人生をそこにかけるということができるわけですので、このあたりは過剰な民間の事業への介入ということではなくて、とりわけボラティリティーが高いような類いのものについては検討が継続的に必要かと思います。
それから最後に、中小企業の生産性についてですが、中堅中小でも非常に努力していて、すばらしい製品やサービスを生み出しているところはあると思います。一方で、適正な価格転嫁が行われていないと、一見、生産性が低いかのように見えてしまうというところもあります。中堅中小企業の状況はカテゴリーごとに非常に異なっていますので、一律にはできないところがあるということを理解して取り組む必要があります。デジタル化する中で細やかに見ることができる、そのことによるEBPMでより良い政策を講じることができていくのではないかと思いますので、そうしたあたりにも期待したく思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。御説明いただいた内容に関しましては、全面的に賛同いたします。特に我が国では、財政規律が緩く、財政ルールの履行確保メカニズムがないという点は、極めて深刻な問題であり、早急に是正するべきであると考えます。そのことを申し上げた上で、私からは大きく3点コメントさせていただきます。
第1に、日本経済がコロナ禍から平時へと移行する中で、我が国では、デフレ圧力が大幅に後退しております。例えばIMFの分析を参考に大和総研が推計したデフレリスク指数は、0.5を超えるとデフレリスクが高く、0.3から0.5では中程度、0.2から0.3ではデフレリスクが低く、0.2未満では極めて低いことを意味しますが、2023年時点の我が国のデフレリスク指数は0.23と、米国など主要国と比べてもデフレリスクが低いと見ることも可能な水準にまで低下しております。
第2に、我が国では先行きの金利上昇が見込まれることから、英国の失敗を他山の石として健全な財政運営を行う必要があります。
24ページでは、大和総研の分析を御紹介いただきまして、誠にありがとうございました。当社の試算によれば、最悪のケースでは、2040年時点で、外国人による国債保有比率が急上昇する中、我が国の長期金利は7%程度まで上昇し、実質GDPも7%近く下振れすることが懸念されます。現状、我が国を取り巻く経済環境には激変する可能性が生じています。従来は、①マクロ的な貯蓄超過(金余り)、②経常黒字、③円高、④デフレ、⑤低金利という5点セットで、経済体質がじりじりと悪化していく「茹でガエル」とでもいうべき状態にありました。しかし、今後はこれらが、①高齢化による貯蓄の取り崩し(資金不足)、②経常赤字、③円安、④インフレもしくはスタグフレーション、⑤金利上昇という新たな5点セットへと激変する可能性が生じています。こうしたグローバルな環境変化を踏まえた上で、健全な財政運営を行うことが喫緊の課題であると考えます。
第3に、我が国の財政を健全化するためには、水膨れした補正予算の規模をコロナ禍以前の規模に戻し、歳出構造の平準化を図っていくことが不可欠となります。現在、社会経済活動は平時に移行したわけですが、コロナ禍以前の経済対策における国費ベースの財政支出の規模を検証いたしますと、GDPギャップがゼロのときには、おおむね3.5兆円程度で、そこを発射台として、GDPギャップがマイナス方向に1%ポイント動くにつれて、1.5兆円程度増加するという大まかな傾向が見られます。
こうした過去の傾向を現在の状況に当てはめますと、直近、2024年4-6月期のGDPギャップはマイナス0.6%ですから、現状は発射台、切片である3.5兆円よりも若干多い、すなわち4兆円強程度の財政支出額が適当であり、大型の補正予算を組む必要性は低いということが示唆されます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、お願いします。
〔田中委員〕総論の御説明、大変ありがとうございました。冒頭に消費データをお示しいただきましたが、個人消費というのは、実際には大変多様化しているのですが、概して若い世代というのは、個人消費、自分自身の消費自体がワイズスペンディングになっていて、人生設計も中長期で考えて投資をして、消費をしていくという傾向が見えますし、やはり社会や環境に配慮している企業を支持するという傾向もうかがえるかと思っております。
また同時に、企業や大学も、組織の大宗は、持続可能性やガバナンスの強化をベースにして、中期計画を策定して、自己点検を行ってPDCAを回しているという、その中で、投資家にもどのように評価されるかということに向き合っているということがあります。本日も全体説明と皆様のお話を伺っていて、やはり財政だけが少し別次元で動くというのは、本来不本意で不思議なことであり、財源とか財政規律という言葉が一般的に広く意識されたり、共感されるというのは難しいことかもしれないのですが、やはり健全な財政のためのルールがあって、関係者は非常に奮闘しているという現実を知ってもらうということが、この2025年という大切な年に向けても非常に重要なことなのだろうなということを改めて認識しました。
このことがやはりビジョンとして共有されないときついなという中で、財政のルールを作って、守って、行動して、確認するという、このメカニズムが回っていって、そこに各分野、各人も参加できるということが肝要だなと改めて思うところです。
また、国民的議論のところにおきましては、将来世代のことも重視していただいていますが、そちらのみならず、やはり従来型の考え方や思い込みですとか、これまでの世論もきめ細かく見ていく必要があるのかなと思っています。
例えば、SDGsというのは2030年までにゴールを決めて、17の目標でということで、いろいろ多様な主体が参加して、役割分担をしてきて、これが実際どこまで行けるかどうかはまだうかがえないところもありますが、実際そこに参加するという文脈はすごく大きかったと思っております。
秋の財審では、個別テーマの意見や工夫というのも出されますので、具体的な予算の制度設計と、そこへの参加を誘えるような、そうした体制ができればと思っております。
また、本日お示しいただいた51ページはなかなかショックで、やはりEBPMを回しながら政策の改善につなげていけるか、この自己点検ができるのかというのは、本当に国民及び政治も連動して、アメリカの事例をいただいたように、超党派を含め皆で考えて、例えばGDP比率の目標数値など、そうしたものも皆で出していき、全体のビジョンに乗って役割を果たすという、そうしたコミュニケーション・設計ができると、これからの議論が実をなすかなと思うところでございます。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、どうぞお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。大きく3点申し上げたいと思います。
1点目、多くの方から格付についてお話をいただきました。片山調査課長や平野委員から格付を上げようという話があって、それは本当に頼もしく思います。一方、最低限でも格付の維持、決して下げないことというのも重要であると思っております。今の数値を見ると、これから金利が上がって利払費が増え、割と格付がまだ下がる要素が大変多く残っているので、少なくとも格付を下げないということは国民の意思として持っていく必要があります。いくつもの国が一旦格付を下げ始めると、とても早く下がり、1年間で7ノッチ下がるというのは全然あり得ることなので、ここは注意していきたいなというふうに改めて感じた次第です。これが1点目。
2点目は、またこれも多くの方が指摘されました基金、補正、予備費等々についてです。解析をするべきであるというふうにも思いますが、不用額、繰越額が大変高くなっていることを考えると、やはり要らないものが多いと思うのです。これに対して政治的なポピュリズムがどんどん強くなっていて、まあ、補正も仕方なかろうのようなことになりがちなことは、私たちがもう既に知っていることでして、そうさせないためのルールが必要だと思います。
本日御指摘いただいた48ページ、財政ルールの履行確保メカニズム、これは大変羨ましいとさえ思います。独立財政機関に発展していくことも必要であると思いますが、もう一つ必要なのは、54ページで御紹介いただいた超党派での財政委員会の設置などに対する動きです。アメリカの大統領選挙でも、例えば超党派で責任ある連邦予算委員会なるものができて、トランプ氏が言っているこうした経済政策であるといくらぐらいの財政の膨張があるとか、カマラ・ハリス氏でもこれぐらいあるとか、きちんと超党派で数字が出てきます。ポピュリズムでいくら払いますとか、これぐらいみんなに配っていきますということがどれぐらいの財政の負担になるのかが出てくること、これが必要なのではないかと思います。財政ルールをつくっていこうということをこの会議でも言っていく必要があるのではないかと思いました。
最後3点目ですが、国民にいかに訴求するかです。今回あった資料の中でいくつもよい絵があると思うのですね。特に17ページにあるような、国民医療費はこんなにかかっているというふうに見せることができるのではないかと。雇用者報酬とか消費者物価に比べて、うんと上がっていることが明らかかと思います。また私も、自分の資料として、44ページに掲げていただいたような債務残高対GDP比の発散している様子を、よく使わせていただくのですが、これは割と訴求力が高い絵になっています。今まではワニ口ばかりを使ってきた気がするのですが、こうしたよい絵がいっぱいありますので、こうした明らかに悪いよなと思うようなものを使って、国民の方々に、いかに日本の状況が悪いかということを見せていくことも肝要かと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、どうぞお願いします。
〔小黒委員〕御説明ありがとうございました。本日、財政総論ということですので、最初に3点ほど申し上げさせていただければと思います。
第1は、何人もの委員の先生から御発言ありましたが、やはり金融政策の正常化と、長期金利の関係です。本日の参考資料2ページ目にも試算がありますが、これは上のところを見ますと、2040年での長期金利に関するものが掲載されています。かなり深刻な試算ですが、実は私も東京財団の政策研究所のレビューで、これから数年以内で長期金利が何%まで上昇する可能性があるのか、日銀の保有国債残高の減少との関係を含めて、簡易試算を行っています。詳細は省きますが、そこでは2040年にならずとも長期金利の理論値は2%を超える可能性が十分あるということを示しております。
また、2024年4月の日銀の展望レポートのBOX6でも大規模な国債買入れのストック効果を中心に、均してみれば概ねマイナス1%程度の長期金利押し下げ効果が見られたことが示唆されたという記載があります。これは逆に言うと、その分だけ、逆に開放すると金利が上がってくるということですので、国債の利払費の影響も視野に、しっかり財政健全化を進めていただきたいと思います。
それから2点目は、震災などの有事に備えた財政余力の確保や再構築の重要性です。このような巨大地震が発生すれば、例えば首都直下地震は30年以内に70%の確率で発生するということですが、その場合、長期金利が上昇する可能性というのはやはりあると思います。
実は、同じ財審メンバーの佐藤主光一橋大学大学院教授と、2011年に執筆した共著論文があり、最近、そこで利用した簡易なマクロ経済モデルのリニューアルを私が行いまして、防災会議の被害想定を基に長期金利のシナリオを試算してございます。2035年や2040年に首都直下地震が起こるシナリオでは、震災がなかった場合の金利上昇のシナリオと比較して、その数年後に長期金利は約1%ポイントも上方シフトする可能性があるということが明らかになっています。
巨大な震災の発生時には、当然、国債を大規模に発行してでも、震災地を復興することが求められる可能性というのがありますので、有事にも対応できる財政基盤を持つために、今のうちに財政的な余力(フィスカルスペース)を高めておくという努力をすべきと私も思います。
それから、第3番目です。これまた何人かの委員の先生からございましたが、医療などの社会保障改革の重要性です。今、御臨席の十倉会長も、こども未来戦略会議で、昨年だったと思いますが、社会保険料率の上昇の問題について発言されています。本日の本体資料の17ページあるいは参考資料17ページでも若干記載がありますが、この関係で、やはり2023年の12月に閣議決定しました、こども未来戦略の脚注27がとても重要ではないかというふうに思います。この脚注では、「高齢化等に伴い、医療・介護の給付の伸びが保険料の賦課ベースとなる雇用者報酬の伸びを上回っており、このギャップにより、保険料率は上昇している」ということが書かれていて、若者、子育て世帯の手取り所得を増やすためにも、保険料率の上昇を最大限抑制するというふうに記載されています。
成長戦略の観点から医療費を投資とみなして、中長期的な名目GDPに沿って伸ばす発想もあってよいと思うのですが、やはり重要なのは、GDP以上に伸ばすということが国民の負担増になることが明らかであることです。ですので、2004年の年金改革によって、厚生年金保険料率は18.3%に固定され、マクロ経済スライドで年金給付の対GDP比は安定的に推移するという仕組みが設けられています。こうした制度改革に倣い、以前から、このメンバーである三菱UFJ銀行特別顧問の平野委員も、また私も何回か申し上げていますが、財審のメンバー数名からも、医療版マクロ経済スライドの検討に関する提案があります。その先駆けや、あるいは、その脚注の活用として、例えば令和4年4月13日の財審でも取り上げられた薬剤費マクロ経済スライドの検討も含めて、是非積極的に御検討いただき、もう一段の財政再建を進めていただきたく思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、どうぞお願いします。
〔遠藤委員〕ありがとうございます。経済の新たなステージという言葉が極めて新しく、コロナ禍から平時へ、物価が上がっている、金利も付いてくるという環境変化が挙げられています。一つ付け加えさせていただきたく思ったのが、19ページの資料で、主要先進国の財政をめぐる動きが示されており、IRAがよい例なのですが、昨今の趨勢を見ていると、やはり経済安全保障であるとか産業政策であるということを謳いながら、自国の産業と雇用を守るために財政支出を積極的に行っている国も、欧米主要国を中心に増えていると見ています。こうした状況を横目で見ながら、例えば半導体工場の誘致合戦もそうですが、日本は、財政支出に歯止めを効かせるメカニズムがないまま、経済安全保障や産業政策の名の下に、積極的な補助金の支出や基金の創設等々が行われています。昨今の地政学リスクを鑑みれば、財政支出において社会保障から安全保障へのシフトというものも考えていかなければならない重要な点であると思うのですが、これはかねてから発言してきました。
もちろん、安全保障に関わる支出というのはやむを得ないものも多いのですが、また、その産業政策であるとか、科学技術政策と安全保障の重なりも増えてはきたのですが、闇雲にターゲティングポリシーなるものを拡大していくということは、財政規律を歪めることにもつながっていくということに注意を払う必要があると思っています。
資料で、EBPMに触れられていましたが、将来こうなるのではないかという各省の見立てや見通しだけではなく、足もとの競争戦略であるとか、グローバルな競合の動向であるとか、そうしたものを丹念に分析して、その支援のリターンが大きいと判断した理由を国民にきちんと明らかにして、それで財政支出の正当性を強く担保していただきたいと思った次第です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
一通り、委員の皆様方から御発言を頂戴しましたので、御発言等はここまでとさせていただきたいと思います。
それで、事務局から何かありますか。よろしいですかね。
〔片山調査課長〕はい。
〔増田分科会長代理〕会長もよろしいですか。
〔十倉分科会長 〕はい。
〔増田分科会長代理〕それでは、本日、キックオフということになりますので、次回から、テーマとして、今後の進め方ですが、地方財政、それから、社会保障や社会資本整備などの各歳出分野について、歳出改革部会を活用しながら御議論いただきたい。そして、令和7年度、来年度予算の編成に関する考え方を建議として取りまとめる。今後、そうした形で進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
それから、本日の会議の模様については、この後、記者会見で私から説明させていただきます。詳細、後日の委員の皆様の発言を確認した上で、議事録として公開する予定でございます。
次回は、10月22日、本日と同じく午前9時から開催を予定いたしております。よろしくお願いします。
それでは、本日は以上で閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
午前11時00分閉会