財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年4月16日(火)09:00~10:55
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
こども・高齢化
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
赤澤副大臣 矢倉副大臣 瀬戸大臣政務官 進藤大臣政務官 茶谷事務次官 宇波大臣官房長 新川主計局長 寺岡次長 前田次長 吉野次長 大沢総務課長 木村主計企画官 三原司計課長 西村法規課長 山本給与共済課長 横山調査課長 有利主計官 山岸主計官 小野主計官 佐久間主計官 小澤主計官 端本主計官 松本主計官 漆畑主計官 尾﨑主計官 後藤主計官 小野寺主計監査官 石田予算執行企画室長 西尾主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 伊達美和子 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午前9時00分開会
〔増田分科会長代理〕間もなく会議を始めますが、本日は冒頭、カメラが入りますので、そのままでお待ちいただきたいと思います。それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は冒頭から、赤澤副大臣、矢倉副大臣、瀬戸大臣政務官、進藤大臣政務官にもお越しいただいております。どうもありがとうございます。
本日の議題ですが、「こども・高齢化」を議題としております。
それでは、そろそろ報道関係の方、御退室をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、事務局説明です。端本主計官から説明をお願いします。
〔端本主計官〕それでは、資料に沿って御説明させていただきます。総論、少子化対策、医療、介護、年金の順に御説明いたします。
まず3ページ。これまで団塊の世代が全て後期高齢者になる2025年を念頭に、改革に取り組んできました。今後も高齢者人口の増加、現役世代人口の急激な減少が継続していきます。社会保障の支え手である現役世代の負担を考慮して、全世代型社会保障を構築する観点から改革に取り組んでいく必要があります。
4ページ、社会保障関係予算を過去9年間、いわゆる歳出の目安の下で、社会保障制度を持続可能とするための改革に取り組んできました。この歳出の目安は、実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指すとともに、経済・物価動向等を踏まえるとされています。今後も歳出の目安を継続し、その下でメリハリある予算編成をしていく必要があります。
8ページ、現役世代の負担の観点から保険料負担の水準を考える必要があります。現役世代の可処分所得を増加させるとともに、社会保障制度の持続性を確保する観点から、こども未来戦略に基づき、医療・介護の保険料率の上昇を最大限抑制する必要があります。
9ページ、医療・介護の保険料率の上昇傾向に歯止めをかけるには、医療・介護給付費の伸びを雇用者報酬の伸びと同水準にする必要があります。医療費の伸びと経済成長率の関係を議論する際には、周期的な振幅を考慮に入れた中期的な経済成長率と比較する必要があります。
13ページ、昨年末に閣議決定した改革工程において、2028年度までの実施について検討する取組に掲げられた項目についてしっかりとした検討を行い、着実に実施していく必要があります。
続いて、少子化対策に参ります。16ページ。若年人口が急減する2030年に入るまでに取組を進めていく必要があります。
17ページ、危機感を幅広く共有していく必要があります。
18ページ、諸外国の動向を見ますと、アジア諸国の出生率の低下が著しくなっています。
24ページ、若い世代の所得向上、社会、職場の意識改革、こども・子育て支援政策の強化に、総合的に取り組んでいく必要があります。
29ページ、こども・子育て支援政策の評価に当たっては、KPIを適切に設定し、効果検証をしながら進めていくことが重要になります。
32ページ、社会の意識改革の観点からは、若者の意識変化に対応していくことも重要と考えます。
34ページ、支援金制度、全世代・全経済主体がこども・子育て世帯を支える仕組みとなっております。こうした制度趣旨を粘り強く浸透させていく必要がございます。
35ページ、フューチャーデザインの考え方を活用していくことも考えられます。
続きまして、医療に参ります。39ページ、我が国医療保険制度の特徴といたしまして、公的保険でカバーする範囲が広い・費用対効果の適用は限定的である、現役世代の保険料負担増。医療機関側としては、都市部の開業医が多いなどの医師の偏在、薬剤の適正使用を促す仕組みの欠如等の課題がございます。①、質の高い医療の効率的な提供、②、保険給付範囲の在り方の見直し、③、負担の公平化に掲げられている項目に沿って御説明いたします。
40ページ、医療提供体制の現状についてまとめたものです。病床数の多さ、MRI台数等や1人当たり外来受診回数の多さ、医師一人で開業するケースが多いことによる医療資源の分散、地域偏在が指摘されます。
46ページ、各論の説明に入ります。2024年度診療報酬改定について財政制度等審議会でいただいた建議と対比したものです。診療所の適正化について、改定率マイナス1%程度という建議に対しまして、実際の改定におきましてはマイナス0.25%となっています。これを踏まえまして、今後の検討課題は3点あると考えております。
まず、①、医療機関の経営状況を継続的に把握していくこと。②、生活習慣病や他の疾病の管理の在り方について、医療機関によって大きな差があるとの指摘等を踏まえ、引き続き検討していくこと。③、診療所と病院の医師偏在是正の観点から検討していくことです。
50ページ、疾病管理の評価に関しましては、生活習慣病の診療頻度や使用される薬の価格が医療機関によって大きな差があるとの指摘があることを御紹介させていただきたいと思います。
53ページ、費用対効果評価など経済性の勘案や患者本位の治療の関係について御説明いたします。日本の医療制度は、薬事承認された医薬品は原則として公的保険の対象となるほか、費用対効果評価、追加有用性評価を経ずに、多くの新薬の価格決定調整がなされる点において、医療保険等財源の中心とする他国と異なっております。また、医療現場では医師の判断に基づき自由に使用されております。こうした中で、我が国医薬品市場についての課題の指摘、患者本位の治療確立に向けて一層の努力が必要との指摘がございます。質の高い医療の提供、イノベーションの推進と国民皆保険制度の持続性確保を両立する観点から、諸外国の例も踏まえまして、費用対効果評価など経済性を勘案した患者本位の保険診療が効率的に行える仕組みを構築する必要がございます。
55ページ、公的な医療保険が中心の国におきましては、費用対効果分析や追加的有用性評価を行い、保険収載の有無や償還価格を決めるのが一般的になっております。例えばイギリスでは、新薬の1割強を非推奨とするほか、3割を適用限定つきの推奨としております。フランス、ドイツにおきましては、5割から6割程度の新薬につきまして、追加的有用性なしと判断し、その結果に応じた、メリハリある価格設定をしているところです。
57ページ、これに対しまして、我が国におきましては費用対効果評価の実施対象がかなり限定されているほか、その結果の反映も一部にとどまっております。費用対効果評価を実施する薬剤の範囲や価格調整対象範囲を拡大するとともに、費用対効果評価の結果を保険償還の可否の判断に用いることを検討すべきです。さらに、費用対効果評価の結果については、診療ガイドライン等に反映し、経済性の観点を診療の現場にも徹底させるべきと考えます。
59ページ、我が国医薬品市場につきましては、承認された新薬の製品数は米国と比べて遜色ない一方、ドラッグラグ・ドラッグロスの課題、日本でしか販売されていない新薬、いわゆるカントリードラッグが多いとの指摘があります。諸外国と同様、費用対効果評価を徹底し、薬価配分にメリハリをつけることは、我が国医薬品市場の魅力を高めるとともに、製薬企業の国際競争力を高めることにつながると考えます。
60ページ、我が国の薬価算定におきましては、新規性に乏しい新薬について、後発品が上市された後でも、高い薬価で新薬として収載されることが可能となっており、新規性に乏しい新薬開発のインセンティブを製薬企業に与えている可能性があります。費用対効果評価を本格実施し、薬価にメリハリをつけていくべきと考えます。また、それまでの間においても、現行の類似薬効比較方式において、後発品の価格を勘案して薬価を決める方式に改める予定です。
62ページ、患者本位の良識ある、がん治療研究の確立に向けまして、基本的な考え方等の共有を進めようという動きが、カナダを起点といたしまして、治療研究の専門家により行われております。そこでは新薬の多くは、患者のQOLを改善せず、そうしたものを見極めることも重要などの問題意識が述べられています。我が国におきましても、患者本位の治療の確立に向けて幅広く対策を講じていくことが重要であると考えます。
63ページ、減薬・休薬を含む治療の適正化に関する調査研究につきましては、民間企業による調査研究が活発に行われにくいことも踏まえまして、国として積極的に進めていく必要があります。また、診療のガイドラインにおいて、費用対効果評価の結果に基づく経済性の勘案のほか、減薬・休薬等の治療の適正化に関する事項を考慮したものにしていく必要がございます。
64ページ、ここから医療提供体制の改革に関して御説明します。全体の人口減少に対応した医学部定員の適正化や、医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在是正に向けて強力な対策を、改革工程に基づき、講じていく必要がございます。
71ページ、外来機能につきましては、今申し上げた偏在対策のほか、分散している医療資源の集約化、診療実績等に関する情報提供の強化が必要になります。また、入院機能につきましては、地域医療構想の2025年の目標年度に向けまして、国による積極的な支援を行い、具体的な対応を加速していく必要がございます。
79ページ、保険者機能の発揮の観点からは、国民健康保険の更なる改革に取り組む必要がございます。改革工程に基づき、普通調整交付金の配分方法の見直し、地域差の是正など医療費の適正化に向けた自治体のインセンティブを強化することや、生活保護受給者の加入等の課題について検討を深める必要がございます。
84ページ、医療DXについては、薬剤情報のリアルタイムでの共有等が可能となることを踏まえまして、改革工程に基づき、多剤重複投薬や重複検査等の適正化に向け、更なる実効性ある仕組みを検討する必要があります。
85ページ、保険給付範囲の在り方になります。この点につきましては、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性確保を両立する観点から、自助、共助を適切に組み合わせていくという考え方で取り組んでいく必要がございます。我が国の国民一人当たり外来受診回数が多いこと、診療や調剤に係る医療費を含めた合計の自己負担額で見ますと、通院するよりもOTC薬を購入したほうが安くなるケースもあることを踏まえまして、自助の観点から、軽微な不調は自ら治すセルフメディケーションを推進していく必要がございます。OTC医薬品の選択肢を拡大しつつ、それと整合的な保険給付範囲の在り方を検討する必要があります。また、今後も高額な医薬品の開発が進むと見込まれる中で、費用対効果評価の本格適用に伴い、薬事承認されて、保険収載されない医薬品の範囲が拡大すること等が想定されます。こうしたことと整合的な制度改正として保険外併用療養費制度の活用等を検討する必要がございます。
91ページ、年齢ではなく、能力に応じた負担という観点につきましては、改革工程に基づきまして、金融所得の勘案、金融資産等の取扱い、3割負担の基準となる現役所得の、現役並み所得の適切な判断基準設定等の課題について検討し、詰めていく必要がございます。
続きまして、介護に入ります。97ページ。介護につきましては、今後一人当たり介護給付費が急増する85歳以上人口が増加すること等を踏まえまして、制度の持続性確保のための改革に取り組んでいく必要があります。具体的には、①、保険給付の効率的な提供の観点から、生産性の向上に向けたICT機器を活用した人員配置の効率化、高齢者向け施設等における報酬体系の在り方の見直し、保険外サービスの柔軟な活用、人材紹介会社に対する規制強化、軽度者に対する生活援助サービス等の地域支援事業への更なる移行といった課題。
②、保険給付範囲の在り方の見直しの観点から、ケアマネジメントの利用者負担の導入等の課題、それから、③、負担の公平化の観点から、利用者負担の見直し等の課題に取り組んでいく必要がございます。
102ページ、高齢者向け施設・住まいに関するサービスにつきましては、特養と有料老人ホーム、サ高住の間で機能が重複している面がございます。特定施設入所者生活介護としての指定を受けない有料老人ホーム等を含め、自治体が全体像を把握していく必要がございます。
103ページ、有料老人ホームやサ高住の報酬体系につきましては、包括払いと出来高払の違いが事業展開に影響を与えている可能性がございます。関連法人による外付けで介護サービスを提供できる仕組みが過剰サービスの原因になっているとの指摘等を踏まえまして、こうした場合についても、特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合と同一の利用上限を設定することを検討する必要がございます。
105ページ、保険外サービスに関しましては、高齢者の多様なニーズに効率的に応えるとの観点から、サービスの明確な区分と説明責任の徹底を行うことを前提に、自治体のローカルルールの実態を把握した上で、介護保険外サービスの柔軟な運用を認めるべきと考えます。
107ページ、軽度者に対する生活援助等につきましては、生産年齢人口の減少の下で、人手確保が困難になることに対応する観点からも、自治体が裁量を持って効率的に事業展開できる仕組みに移行すべきです。
109ページ、ケアマネジメントの利用者負担の導入につきましては、ケアマネジメントの質の向上の観点から必要なものというふうに考えます。
110ページ、介護の利用者負担につきましては、公平な負担を実現し、保険料負担の増加を抑制する観点から、フローの収支だけでなく、ストックの金融資産等を考慮して検討を深めていく必要がございます。
最後、年金について御説明いたします。115ページ、年金につきましては、本年は5年に一度の財政検証の年になります。働き方に中立的な制度構築等の観点から制度改正に取り組んでいく必要がございます。
今後の主な改革の方向性として3点ございます。
第1に、勤労者皆保険の実現に向けた取組として、週労働時間20時間以上30時間未満の、いわゆる短時間労働者に対する適用拡大を進めてきておりますが、今回の制度改革においては企業規模要件を撤廃すること。常時5人以上を使用する個人事業者について非適用業種の解消を確実に実現していく必要がございます。また、雇用保険は2028年10月から週10時間以上の労働者に適用拡大することとしております。年金についても週20時間未満の労働者への適用について道筋をつけていく必要がございます。
第2に、いわゆる年収の壁への対応について、今回の年金制度改革におきまして、制度的対応を実現する必要がございます。
第3に、オプション試算におきまして、国庫負担増を伴う施策が議論されていますが、これらの施策の検討に当たっては、財源を確実に確保する方策と併せて議論を行う必要がございます。
以上になります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日御欠席の安永委員、オンラインで御参加の芳野委員から意見書を提出していただいております。各端末に格納しておりますので、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、これより、委員の皆様方から御意見、御質問等を頂戴したいと思います。いつもどおり、会場から5名、続いて、オンラインから5名、こうした形で交互に指名していきますので、合図をしていただければと思います。
初めに会場から、私から見て右側、吉川委員からスタートしたいと思います。吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。御説明ありがとうございました。私から2点、発言させていただきます。
1点目は少子化ですが、たった今も具体的にいろんなことが議論されているわけですが、いわゆる少子化対策というのは、私の理解では、100年ぐらい前でしょうか。スウェーデンから始まって、ミュルダールという大変有名な経済学者、奥さんも学者だったのですが、とにかくミュルダール夫妻のリーダーシップもあり、広まってきたと。考え方は、要するに、子育てというのは、伝統的に人間は家族でやってきたわけですが、これを社会でやらなければいけないと、こうした考え方ですよね。
それが今の日本にも必要になっているということなのですが、目の前ではやはり具体的なことはいろいろあって、特にやらなければいけない負担の問題、どうであると。当然、世代別の問題もありますし、こどもを持つ世帯、持たない世帯の関係とかいろいろあるわけですが、いろいろなことはあるが、現在の日本のようなこうした社会では、子育てを社会でやっていかなければならないのであると。家族も当然、しかるべき役割は果たすのですが、しかし、家族だけでは担いきれないと。社会全体でやっていかなければならないという、この考え方をやはり国民全体が共有しなければ始まらないと思います。この点がまだ少し弱いのではないかなというふうに感じているので、この点をしっかり国がやっていかなければいけない。これが1点目です。
2点目は医療ですが、御説明いただいたような様々な問題、これは長く指摘されてきたと思うのですが、そもそも公的な医療保険が柱になっていますし、税金も投入されているということですから、もう少し改革に関して国が指導力を持ってもよいのではないかと私は思っています。私自身は長年大学にいた人間ですが、大学の場合も、私学であっても私学助成があるということで、文科省がそれなりのリーダーシップを持っているわけです。教育と比べると医療の分野ではそれが弱いところです。率直に言って、医師会の力が強いということだろうというふうに思っていますが、医師会という団体は、それはそれであるのは結構なのですが、しかし、繰り返しになりますが、国がもう少しきちっとやるべきことはやると、国費も投入されているということからすれば、私は当然であると思って、改革に関しては、この点を強く意識すべきではないかなと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。御説明いただいた今回の資料や提言は、非常によくできているので、これから申し上げることは、ある意味でそれを適宜ピックアップし、なぞるような形になるかもしれません。総論と医療に絞って申し上げます。
まず総論です。今や一般歳出の50%以上を占め、今後も増え続ける社会保障関係支出のマネジメントが財政運営の最大の課題ですが、今回、その表題をこども・高齢化としたのは大いに意味があると思います。
それは、経済の停滞と労働市場の変化などによって顕在化した格差や実質所得の伸び悩みと、社会保障制度の持続性に関する懸念が、現役世代、若年層における将来不安を生んでいて、それが少子化の一因となる一方で、高齢化に伴う、医療、介護を含む保険医療費の伸びが社会保障費を押し上げて、それが社会保障制度の持続性を脅かしているという負の連鎖があるからです。
したがって、この問題を解決するためには、そうした要因を的確に認識して、個々の課題に対処するとともに、総合的な政策パッケージを策定し、実施する必要があります。今回、御提示いただいているとおりですが、少子化に関して言えば、25ページに書かれた取組でありますし、全世代型社会保障は、負の連鎖を断ち切って、世代間、世代内の公平性と持続可能性を確保するための政策であると理解しています。
13ページに掲載された改革工程は、皆様に頑張っていただいたおかげで、必要なメニューを総合的に盛り込めた点は評価したいと思います。すなわち、現時点でメニューはほぼ出そろったと思います。
留意すべき点は、まず第1に、少子化対策に関して言うと、長期にわたるということに加えて、実証済みあるいは効果が明らかとは言えない施策が少なからず含まれている点です。各施策並びに総合パッケージ全体が生み出す効果について可能な限りEBPMに努めるべきですし、アウトカムの効果検証を通じた政策の見直しが必要です。
第2に、改革工程に関して言うと、吉川さんも触れられましたが、ステークホルダー間の利害の対立から、実現が遅れる、あるいは骨抜きになる懸念があります。理念、フラッグとして世代間、世代内おける公平性、制度の持続可能性に加えて、反発も予想されますが、医療を含む社会保障サービスの質と効率性を掲げて、国民の理解を求めるべきだと思います。
次に、医療については大きく2点です。
まず1点目、日本の社会保障制度の持続可能性を確保するには、39ページの上段にある現行の医療保険制度が内包する構造的な課題に正面から向き合う必要があると思います。
第1に、国民皆保険についてです。国民皆保険の原則は動かせませんが、二つのことをやるべきです。一つは、公的保険の給付範囲の絞り込みです。OTC類似薬の見直しなどは既に始まっていますが、民間保険の活用を考えるべきだと思います。例えば、高額医療対策として保険外併用療養費制度を拡大して、費用対効果が明らかでないものは民間保険に委ねるといった対応が必要です。もう一つは、社会的公平性の観点からの応能負担の強化です。
第2に、自由開業医制度などについてです。医師の偏在や、都道府県任せではなかなか進まない地域医療構想については、吉川さんも仰っていたように、国による規制的な手法、あるいは67ページの地域別診療報酬の導入などのインセンティブ、ディスインセンティブの導入が必要だと思います。
第3に、出来高払いとフリーアクセスについてです。かかりつけ医制度のあるべき姿は、現在進んでいる報告制度ではなく、認定制度であると思います。この将来的な制度移行に加え、出来高払いから包括払いへのシフトにまで踏み込んでいけば、頻回受診や過剰診療の抑制にもつながると思います。
なお、医療費抑制に向けた諸施策の進捗が十分でない場合には、医療版のマクロ経済スライドを導入して、医療費総額の伸びを自動的に抑制する仕組みを設けるという方針を掲げることで改革の進捗を促すというような手法もあってよいのではないかと思います。
2点目は、データの整備と開示です。これらの改革を進める上ではデータの活用が鍵になります。
第1に、医療の質と効率化に向けた診療情報や医療機関の経営情報の可視化と開示が必要です。昨年の財務省の機動的調査に加えて、デジタル庁がAIを活用して電子カルテを標準化した診療データの共有基盤構築に着手するという画期的な動きが出てきています。収入の4割を公費から得ている保険医療機関がデータの開示を拒む理由はないと思います。国がリーダーシップを発揮すべきです。
第2には、これも申し上げておりますが、マイナンバーの活用です。先ほど申し上げた応能負担を強化するには、マイナンバーの全銀行口座への付番の義務化を通じて、収入と資産、両面から負担能力を公平に評価できる体制を早期に構築すべきです。政治的なハードルが高いのは理解していますが、マイナンバーカードの普及率が8割に達し、健康保険証の搭載や運転免許証との一体化など、利用シーンも増える中で、是非チャレンジしていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、國部委員、どうぞ。お願いします。
〔國部委員〕私からは3点申し上げます。
1点目は、社会保障総論について。資料13ページにお示しいただいたとおり、全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋が取りまとめられ、歳出改革や人口減少を踏まえたサービスの効率化等の観点から、短期、中期、長期で取り組むべきメニューが一覧化されたことは評価します。しかし、一方で、我が国の少子化は、これまでも議論がありましたとおり、直近の将来推計を上回る速度で進行しています。そのような中で、中長期的に持続可能な社会保障制度を構築し、現役世代の将来の安心につなげるためには、まず、これらの取組を着実に進め、今年から始まるこども・子育て加速化プランの財源を確保する必要があります。昨年秋の建議では、改革工程について、「定量的な目標や実施時期を具体的に定め、事後的なフォローアップも行うべき」と書き込まれましたが、フォローアップの際には、改革工程全体の削減効果を検証することも重要と考えます。全体として期待する、1.1兆円という削減効果を実現できない場合には、税制を含めて追加的な施策を検討すべきと考えます。
2点目は、少子化対策についてです。30ページにお示しいただいているとおり、こども・子育て支援政策について適切なKPIを設定し、PDCAを推進していくことの重要性は論を俟ちません。しかしながら、適切なKPIを設定するためには、最終的に目指す姿、ここで言う政策目標が具体的に示される必要があると思います。そのような観点から見ますと、「少子化・人口減少の流れを大きく変える」という政策目標はいささか抽象的ではないかと思います。
17ページで紹介されています人口戦略会議では、一つの選択肢として、8,000万人国家を掲げましたが、政府としても危機感を共有するということに加えて、一定の試算に基づき、人口減を踏まえてどのような未来社会を目指すのかという明確な中長期ビジョンを策定して国民に提示していくべきと考えます。明確な政策目標の下、加速化プランで取り上げられている様々な施策のKPIが具体的な数値目標として設定され、スクラップ・アンド・ビルドを前提に厳格な効果検証が行われることを期待します。
最後、3点目は、年金に関わる論点として、いわゆる年収の壁についてです。年収の壁の最大の問題は、就業調整により労働供給を制約する要因になっていることです。総務省が2022年に実施した就業構造基本調査によれば、配偶者がいる非正規雇用、かつ、年収が50万円から149万円の女性のうち、就業調整をしている人の割合は50%を超えています。今後、日本の再成長を実現するためには、年収の壁を解消し、不本意な働き控えをしている人々が、希望どおり働けるようにすることが最も迅速かつ効果的な対策の一つと考えます。そうした意味で、現行の年収の壁支援強化パッケージを着実に実行いただきながら、その活用状況や効果を踏まえて、2025年の制度改正に向けた検討を進めていただくことが重要です。ただし、制度の見直しに当たりましては、壁を取り除くことに注力するあまり、短時間就労者の負担を高めて、就労意欲を減退させては意味がありません。年収の壁に関係なく短時間の就労を選択している人も含めて、全ての人にとってディスインセンティブにならないよう、新制度を検討すべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕本日は詳細な御説明、ありがとうございました。財審は、予算というか、金目のことでどのぐらいつけるか、要らないかのような話をしているのですが、私は今回の諸外国の動向を見て、やはり少子化対策というのはお金で解決できないことと闘っているのかなと思いました。一つは、20ページのフランスの年齢階層別の出生率の動きということで、フランスも日本も女性の就労の進展とともに、こどもを産む年齢が後ずれしているということなのですが、フランスは、仕事をしてからでもきちんとこどもを産めるので、こどもの生まれる数自体は減っていないのだが、日本は減っているということは、やはり企業文化の中で何とかしないといけないものがあって、そこは何か国が予算をつけてどうするということでもないのかなというのが一つです。もう一つのより深刻な、韓国なのですが、これも男社会とか、何かそうした日本にもまだ言われているようなこともあるのですが、私はやはり過度な競争社会で親として、こんな競争社会に生まれてくるこどもはかわいそうといったようなところが大きいのではないかと思って、翻って日本も、やはり東京一極集中というのはまだまだありますので、その辺が、東京に出張っていかなくても、別に地方でも十分幸せに暮らせて、幸せの価値は同じだというような、やはり価値観ということも、この少子化対策に向けては大事なことかなと思って、これも別に国が予算をつけたら何とかなるということではないのかなという思いを強くしました。
翻って金目のことですね。29ページに、これまでの少子化対策というのがグラフで出てきまして、非常に良いなというか、よくやっているというか、お金はつけていましたという話はよく分かるのですが、今、日銀も20年来の金融政策をレビューしようということもやっているのですが、少子化対策でお金をつけてきた歴史的経緯とそれぞれの諸政策の効果について振り返ってみることも、これからの有効な政策を考える上では必要なのではないかなというのを一つ思いました。
そして最後に支援金制度なのですが、先ほど吉川先生からもありましたが、こどもを持っていない人とか、全世代で支えるということの意味が、やはり腹に落ちるかどうかというのが重要であると思うので、その辺の説明を分かりやすく丁寧にやっていっていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、お願いします。
〔熊谷委員〕御説明ありがとうございました。年末に改革工程の閣議決定が行われまして、我々が議論してきた医療・介護の改革項目も数多く盛り込まれました。ただし、「毎年の予算編成で検討・決定」とされており、実施することが確定したわけではありませんので、財審でも引き続き具体化に向けた議論をしっかりと行う必要がございます。
少子化対策に関しては、今回の3.6兆円の加速化プランについてPDCAをしっかりと回すべきである、意識改革を「車の両輪」として取り組むべきであるといった御説明に強く賛同いたします。今回の3.6兆円の財源、特に支援金制度に対する批判もあるようでございますが、社会保障の歳出改革を前提に導入するものであり、また、社会の参加者全員で、こども・子育て世帯を支えるための仕組みでもございますので、吉川先生からも御指摘がございましたが、国民の間で正しい理解が広がることを望みます。
医療、特に医薬品に関しても非常に充実した資料を提示していただきました。我が国は、GDP比で見た医薬品費が高いのに、ドラッグラグ・ドラッグロスの存在が指摘されているのは、医薬品費が正しく使われていないからにほかなりません。薬事承認イコール保険収載という状況を諸外国の制度などを参考に見直すとともに、保険収載された医薬品も賢く使うことが重要です。ガラパゴス的な日本の薬価に関する仕組みを改め、海外と同じルールで医薬品を評価すべきであり、費用対効果評価を本格適用していくことが肝要です。私はこのことこそが日本の製薬会社の国際競争力を高めることにつながると考えます。
介護に関しては、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅において、併設する関連法人がサービスを提供することの問題点は、これまでも折に触れて指摘されてきました。今回、事業者自らサービスを行う場合よりも併設する法人によるサービス提供のほうが有利になるという問題について御説明がございましたが、この点は早急に改めるべきです。
また、保険外サービスを活用し、例えば送迎の際に買物や医療機関への同行支援を提供すれば、介護の利用者にも利便がございますし、事業者の収益手段も多様化します。こうしたことを推進すべく、ルールの明確化に速やかに取り組むべきであると考えます。
さらに医療でも保険外サービスを活用し、保険適用されない新たな治療薬など、患者の治療の選択肢の幅を広げていくべきです。保険外併用療養費を適用することで、患者の多様なニーズを踏まえつつ、制度の持続可能性も確保することが可能になります。サービスの質を担保する仕組みと民間保険の育成が鍵になりますので、しっかりと検討していただきたいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからオンラインの方、5名に御発言いただきます。芳野委員、それから、小林委員、宮島委員、権丈委員、福田委員、この5名の委員の方に御発言いただきたいと思います。
それでは、芳野委員、どうぞお願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。芳野でございます。意見書も提出をしておりますが、本日は2点だけに絞って意見を申し述べたいと思います。
まず1点目は、社会保障、総論についてです。こども、若者、現役世代から高齢期まで、誰もが生涯を通じて安心して暮らし続けることができる、持続可能で質の高い全世代支援型社会保障の構築が求められます。一方で、これまでの社会保障費用は、各制度の目的、性格によって、社会保険料、税、利用者負担、事業主拠出などで賄われてきましたが、社会保険料については、今後も現役世代の負担増が見込まれています。将来にわたって社会保障の機能と持続可能性を確保するには、それを裏づける財源確保が必要であり、社会保険の各制度が有する目的、性格や社会保険制度そのものに内在する問題点を踏まえ、税や財政を見直すなど、幅広い社会保障財源の確保策を検討すべきと考えます。
2点目は、こども・子育て支援の財源についてです。先日、有識者の講演を聞く機会がありましたが、その中で、「少子化対策に社会保険料を使うことは助け合いの範囲を超えていること」や、「国会で審議されている支援金制度についても、賃金の低い若い世代の負担増となり、ますます少子化が進んでしまうのではないか」との指摘がありました。こどもや子育てを「社会全体で支える」という考えの下、必要な支援を拡充することは重要です。しかし、こども・子育て支援の拡充に必要な財源は、その目的や性格を踏まえ、税や財政の見直しなど幅広い確保策を検討すべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、小林委員、お願いします。
〔小林委員〕充実した資料の説明、ありがとうございました。特に医薬品についての費用対効果、そして、追加的有用性の評価の重要性は大変重要であるということを理解いたしました。大きく三つコメントしたいと思います。少子化と、医療データと、それから、かかりつけ医について。
まず少子化について。社会における意識改革が重要であるということであると思います。資料の35ページには、フューチャーデザインを活用することが掲げられておりますが、こうした、あまりお金を使わずにできる社会の意識改革が非常に重要であると思います。
また、関連して、こどもを持つことに関する科学的な知識を若い世代に共有するということでも出生率は変わるかもしれません。東大の大学院生が行っている研究を少し御紹介しますと、年齢ごとに妊娠ができる確率などについて正確な知識を、10代、20代の若い世代に与えると、その後のキャリアの選択が変化して、出生率が上昇すると、そうしたシミュレーションをした研究があります。このように科学的な知識を正確に伝えるというだけでも、この少子化対策にはなるのではないかというふうに思います。
2点目、医療データについて。正しい医療政策は何かという議論をする際には、正しいデータに基づくことが前提であり、そうした意味でデータ整理は重要ですが、やはりその中の一つは医療機関の経営情報の見える化であると思います。資料の48ページに経営情報データベースの話があります。ここで強調されているように、見える化は重要であり、職員の職種別の給与、または人数について、きちんと提出を義務化すべきであると思います。また、最終的に望ましい姿というのは、これは平野委員もおっしゃっていましたが、健康保険制度の中で指定を受けた全ての保険医療機関が、経営情報報告制度の下で、毎年、事業報告をすると。そして、そのデータは匿名化せずに開示するということを国が義務化していくことが望ましいと思います。
医療データについてもう一つあるのは、統計の問題です。OECDのヘルス・エクスペンディチャーを政府統計にすべきであるということが医療経済学者の中でよく議論されております。これは、ヘルス・エクスペンディチャーは、日本もOECDに提出していますが、これは今、政府統計ではないので、集計の遅れがあったり、あるいは過少に見積もるというような誤差が指摘されています。例えばコロナ禍で、厚労省がまとめている国民医療費は減ってしまったわけですが、これは保険医療給付に限られた集計なので、減っているように見えたと。実際はコロナ対策費として、公的資金が17兆円以上、医療機関に支払われているわけですが、それが入っていない。
一方、OECDのヘルス・エクスペンディチャーで測ればコロナ対策費も集計に入っているという、こうしたことですので、是非国際比較可能なヘルス・エクスペンディチャーを政府統計に格上げして、正しいデータに基づいた医療政策の議論をしていただきたいというふうに思います。
三つ目、かかりつけ医についてです。73ページに、かかりつけ医の、報告制度がありますが、単に医療機関のほうから自発的に都道府県に報告するだけではやはり十分ではなくて、かかりつけ医として一定の研修を受けて、そして、認定制度、認定をかかりつけ医として認定をするという制度に行く行くは行くべきであると思います。そして、認定されたかかりつけ医に地域住民が登録して、病気になる前から健康維持、健康管理をしてもらうと。その健康管理に対して、その対価として人頭払いで健康維持費を支払うというような診療報酬体系に変えていくべきであると思います。そうすることで予防医療に対するインセンティブを高めて、医療費の全般的な削減を図っていくべきではないかというふうに思いました。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕大変な資料をどうもありがとうございました。
まず、子育てですが、これは皆が本当に支えるということが大事で、かつ、産む側、育てる側の人たちがお金でも行動でも支えてもらっているというふうにしっかり感じるということが大事であると思います。そうした意味では、例えば、今回の支援でどのぐらい、額だけではないのですが、額になるかというようなことも示していただいているのは良いかと思います。
一方で、国会で、多くが負担の議論になってしまって、それは一般にも負担の説明が何か途中で変わっているように感じられてしまったこともあって、負担の議論に終始しているように見えるのは残念なことです。全体として、やはりどんどん増やしている支援が、きちんと支えているという気持ちの上での実感、安心感が伝わるということが何よりも大事かと思います。
そうした意味で、期待と実行がずれるというのは非常に残念な結果になりやすいです。例えば今回で言いますと、誰でも保育園に行けるという制度を新たにつくります。ただ、これは実際に保育所では負担感も非常にありますし、どんなペースで進むかということは予断を許さないかなと思っております。これも期待値を上げてしまって、ああ、何だ、行けると思っていたのに全然駄目ではないかということになると、せっかくやったことが不満につながるということになりますので、状況を外に対しても示しながらしっかりと効果的な実施に向かってほしいと思います。
医療の話です。医療はコロナのときでも、お医者さんって大変だなと思う部分と、人によってこんなに違うのだ、機関によってこんなに違うということが一般にも分かったと思います。今の、いわゆる勤務医の働き方では、これでは大学病院を辞めて、開業医になりたくなる気持ちも分からないでもないというような状況も、一般からも見てとれます。今、医療界の中では負担と報酬と人のバランスが望ましい状況ではないと思います。これから若年人口がどんどん減る中で、どこに本当に人が必要なのか。これは医療界の外とのバランスでもですが、そこをしっかりと戦略を立てて、規制とインセンティブで強く誘導していくということが必要ではないかと思います。かかりつけ医の制度ですとか医療の標準化なども使って、実効性を持っていろいろな施策を進めていただきたいと思います。
薬の保険収載に関しましては、まさに各国と違う部分を改善していく必要があると思います。素朴に一般の人にも意識を高めてもらう必要があると思います。それぞれの家庭に残薬が多いということはみんな非常に分かっていますし、一般の人が薬を病院からもらってくるという言い方をします。でも、とてもたくさんお金がかかっているわけで、こうした薬にもちろんたくさんお金がかかっていること、患者の側からはなかなか物が言いにくい部分をバックアップし、それをしっかりと患者の側も見ているということをきちんと伝えて、薬の適正な在り方に結びつけたいと思います。
最後に、年金は大きな財政検証の年です。これはいつもベースのデータによって大分違うのですが、人口予測だけでもだいぶ大きく変わっていますし、基金の運用なども含めて、厳しめにしっかりと現状を見ながら今後のことを考えていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。「少子化対策」についてでございます。本日の資料21ページに私の文章を紹介していただきまして、ありがとうございます。少し説明させていただきたいと思います。
男女雇用機会均等法ができた1985年の頃と比べると、今は女性が働くことに関する世の中のノルム(社会規範、社会通念)は随分と変わってきたと言えます。女性の高学歴化は進み、彼女たちが継続して就業する場合に、勤労期に得る賃金も徐々に高くなってきております。そして、若い人々もキャリア形成の重要性を知るようになってきています。くわえて、男女共に結婚しないでいることへの圧力も弱まってきたように思います。女性たちの人生の選択肢と可能性が広がっているということは言えると思います。そうなりますと、こうした社会で、なぜ人は結婚をして子育てをしようとするのだろうかと考えたくもなります。以前と比べて、どうしても結婚やこどもを持つことへの動機が弱くなっているはずです。
対して、この四半世紀、女性にとって働くこと、ワークの価値が大幅に高まってきました。つまり、ワークに対してライフの相対価値が低くなってきていると言うことができると思います。当人たちは自分たちが意識している人生の可能性の制約条件の下に合理的な選択をしているということになるのでしょうが、そうした若い人たちの選択が、未婚化、少子化という現象として現れているわけです。この現象を問題視しているのは、当人というよりも、社会という面があるようです。ですから、社会は、こども・子育てを支援し、ワークに対するライフの価値を高める社会的支援を行う、そうしたことが今展開されているのであると思います。
私たちが普通に利用している賃金という所得の分配システムは、収入の途絶と支出の膨張というライフサイクルにおける生活リスクに、十分に対応できません。この弱点を克服するために、これまでは、高齢期に向けては医療、介護、年金という賃金のサブシステムが準備されていたのですが、子育て期についての賃金のサブシステムはとても弱かったということを言えるかと思います。医療、介護、年金などの高齢期向けの社会保険の存在が投資財としてのこどもの価値を変化させ、大本のところで少子化の原因となっていると考えられます。そしてまた、それら高齢期向けの社会保険の持続可能性を脅かすのは、少子化でもあります。
このジレンマは、賃金システムの欠点から生まれているわけですので、その解決策として、賃金に関わる労使が賃金比例の折半の財源調達構造を持つ既存の社会保険、しかも、2021年「骨太の方針」にある、「企業を含め、社会・経済の参加者全員が連帯」できる制度として、新設される支援金制度において、医療保険が選択されていると理解できます。
今回のこども・子育て支援政策の充実で、若年期、勤労期、高齢期のための賃金のサブシステムとしての再分配制度が完備され、これにより、今までよりライフの価値は高められることになると思います。そうしたライフの価値を高めるためのワーク・ライフ・バランス施策のアップデートは本日も国会で審議されているのだと思います。
すでに吉川先生をはじめ御指摘がございましたところですけれども、こどもを社会全体で育て、子育て世帯を社会全体で支えるということは、これまでの日本ではあまりなじみのない考え方かもしれません。しかし、資料の31ページで総理も語られておりますように、「社会全体で、こどもや子育て世帯を応援する機運を高める取組」のきっかけとして、協力をお願いする経済界や高齢者等に賃金システムのサブシステムとしての支援金制度の意義を理解してもらい、意識の変革を行っていくことが今とても大切なことであると思っております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。少子化対策、高齢化対策、日本もいよいよラストチャンスになって、非常に加速しなければいけないという時期に来ているという問題意識を私も共有したいと思います。
まず高齢化に関しては、団塊の世代が既に高齢化していますが、団塊ジュニアの人口の多い世代はまだ現役世代で頑張っているわけですが、間もなく高齢化社会に入っていきます。そうするとますます深刻になりますので、その前には是非とも対策をしなければいけないということであると思います。
また、少子化に関してもだんだんこどもを産める人口は減ってはきていますが、まだ団塊ジュニアのこどもたち、その人たちの人口は、団塊ジュニアの人たちよりは少ないですが、それでもその次の世代よりは人口がまだ多い世代が、子育てができる世代でいます。その世代がいる間にやはり少子化対策というのをかなり本格的にやらないと、本当に大変なことになっていくのであると思います。
そうした意味では、出生率をいかに高めるかというのは一つの手段で、それは吉川委員や権丈委員がおっしゃったように、社会的にサポートしていくというような姿は、私も非常に望ましいと思っています。ただ、これは神子田委員もおっしゃったことかもしれませんが、やはりいろいろと地域差なり、個人差なり、いろんな違いもありますので、単に一律的にお金を、言葉は悪いですが、ばらまくようなことではなくて、やはりきめ細かい対策をしていくということはやはり大事であると思いますし、どういう政策がどういう人たち、あるいはどういう地域で効果があったかということを丁寧に効果検証、時間はないが、丁寧にしていく必要はあると思います。それには小林委員がおっしゃったように、やはり関連する統計データをいろいろと充実させていくということは大事で、特に政府統計のレベルでそうしたデータを整えていくということも大事なのだろうと思っています。
2点目は、そうは言っても、人口減は不可避ですので、やはり人口減の中でどう効率的に日本経済を動かしていくかという対策も同時に行っていく必要はあるとは思います。そうした意味では、経済全体の生産性を高めるということは大事なことで、人材の面でも本当に必要な分野に人材をできるだけ配置できるような仕組みづくりというのが大事なのだろうと思います。日本の場合には概して転職すると不利であるというような仕組みが伝統的にはあったし、転職する人というのは賃金が下がるという傾向も、かつては少なくともありました。そうしたような状況を改善していって、本当に必要な分野にどんどん人材が集中できるような仕組みづくりというのが大事なのだろうと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、会場に戻りまして、佐藤委員からお願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。ほかの委員の先生方と重複にならないように3点ほど。
まず第1に、医療費についてです。その適正化には大きくミクロとマクロのアプローチがあると思います。例えば、本日御紹介いただいた費用対効果であるとか、もちろん医療情報の公開、あるいは医療提供体制の効率化というのはいわゆるミクロのアプローチになると思いますが、やはり医療費自体をコントロールするマクロのアプローチがあって良いかと思います。
具体的には、医療費の伸びを、かつてはマクロ管理政策といった言い方をしていたと思いますが、総額管理のような言い方をしていたと思いますが、医療費の伸びを、例えば雇用者報酬の伸び率に合わせるであるとか、少なくとも物価の水準、物価の上昇率を上回らないようにするとか、こうしたことをやって、その上でそれを満たすように、例えば給付の範囲を適宜見直していくといった、そうしたマクロ的なアプローチというのもやはり併せて考えていく必要があるかと思います。
第2に、医療介護における能力に応じた負担についてです。高齢者の自己負担や保険料に金融資産を反映させるべきであるという声が高まっています。日本のような成熟した社会においては、本日の成長の果実であるフロー、つまり所得だけではなく、過去の成長の蓄積であるストック、つまり金融資産といったものを適宜反映していくということは必要であると思います。
ただ、自己負担とか保険料のためだけに、例えば金融口座にマイナンバーを付番して金融資産を捕捉するというのは、かなり至難の業であると思います、管轄も違いますし。なので、やはりこれは税制と一体的に行う、例えば今、金融資産に対する課税強化、金融所得に対する課税強化の議論もありますので、やはり税制改革と一体的に進めていくということが必要かなというふうに考えております。
最後、セルフメディケーションについてです。規制改革推進会議でもスイッチOTC化を進めようとしているのですが、何せ厚労省とか医師会が極めて消極的です。日本の高い外来受診率にあるように、結局日本というのは、病気になったらお医者さんに行くことを前提にした仕組みになっているわけで、これを改めて、やはりセルフメディケーションで完結する仕組みに転換していくということが必要であると思います。自分の健康のことですので、お医者さん任せにするのではなく、やはりスイッチOTC化と併せて、あるいはOTC化の推進と併せて、例えば患者さんや国民の健康医療に対するリテラシーを高めていくということ、これがやはり求められているかと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕充実した資料の御説明をありがとうございます。今回は特に医薬品の費用対効果について詳しく御説明いただき、ありがとうございました。
3点申し上げたいと思います。
1点目は、改革工程についてです。短・中・長期でやるべきことがそろったということ、これは評価できることと思いますが、2028年度までについては、あくまでも「検討する取組」と記載されている状況です。今後、各年度の予算編成過程において、実施すべき施策が決定されるわけですが、できるだけ早期に具体化の検討を始め、着実に実行できるように議論する必要があると考えます。
2点目、少子化についてです。加速化プランが取りまとめられましたが、重要なのはこれからではないかと思います。支え合いは必要な仕組みであると思います。一方で、広く国民に負担を求めている以上、しっかりとエビデンスで政策の効果を検証し、真に必要な施策により重点化していくことが重要で、それが国民の理解や、少子化対策の実効性を高めるものと考えます。
3点目、年収の壁についてです。いわゆる年収の壁を意識せずに働くことが可能になるよう制度の見直しに取り組むという記載がございますが、人手不足がここまで深刻化し、かつ社会的にも共働き世帯が過半を超えている状況に鑑みれば、第3号被保険者制度の見直し自体も議論する時期に来ていると考えます。
これは、前半の少子化対策のところでございました社会の意識改革ともリンクしているように感じます。社会の仕組みがこうした意識の変化に対応できていない場合には、就労調整で人手不足を加速するという側面のみならず、結果的に家計の所得を抑制することにもつながりますので、そうした面からも少子化に影響を及ぼしている可能性があるかもしれません。こうしたことも含めて幅広い議論が行われるべきではないかと考えています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕充実した資料の説明をいただき、誠にありがとうございました。昨年トリプル改定があったのですが、それに比べて今年は目立つ制度改正が少ないように見えますが、実際こうやって資料に挙げられたように、たくさんの改革が必要であるということは分かりますので、こうしたのを着実に取り組んでいただきたいと思います。中でも、この資料で挙げられた医薬品の費用対効果評価の問題です。これは一般的になかなか知られていませんが、日本の薬価制度はガラパゴス的であると、そうした極めて重要な問題が出ていますので、これは是非切り込んでいただきたいと思います。
その上で、少子化対策に関して申し上げたいと思います。既にもうこれは方針が決まった話かもしれませんが、資料の25ページにもありますように、要は、この3.6兆円の加速化プランだけでは少子化の背景にある構造的な課題には対応し切れないという御指摘は、そのとおりであると思います。そこで、この資料にある若い世代の所得向上に向けた取組、こども・子育て支援政策、それから社会の意識改革、この3本柱を同時に進めていくということが大事であると思います。金額を単に積めばよいというわけではなくて、この3本柱をしっかり進めていくということが大事であると思いますが、問題は、この3本柱と政府の施策が必ずしも整合的ではないのではないかということです。
まず、若い世代の所得向上ですが、これはこども未来戦略にも柱の一つで書かれていますし、今年の春闘のように賃上げの動きが広がっているということ自体、経済の好循環に向けた動きとして非常に好ましいことですが、例のこども・子育て支援金、これで実質的な負担がないという、その説明の一つに賃上げを挙げていますが、公的な負担の有無を巡って民間企業が決める賃上げを持ち出すこと自体が、どうも理屈が立たないというのですか、論理矛盾のように見えますし、くわえて、若い世代の所得向上が必要なら、なぜ賃上げで増えた所得を支援金という名の下で、現役世代の負担が重い医療保険料で取り上げるという、そうした説明などが、まだ少し私、理解ができないところがあります。
そもそも18歳以下の家族関係支出のGDP比を人口一人当たりでスウェーデン並みにするという一方で、実質負担増はないと、そうしたうまい話というのはなかなかないと思います。やはり深刻な少子化対策に不可欠であるというのであれば、是非正面から負担が必要であるということは、政治としても理解を求めるべきではないかなというふうに考えます。
もう1点、社会の意識改革です。これも資料にあるように、若者の意識変化への対応が必要であるというのは、そのとおりであると思います。ただ、これ、果たして対応できているのかという気もします。
例えば、選択的夫婦別姓です。これも経済界でもその導入を求める声というのはかなり高まっているように思いますが、それがまだ十分対応できていないと思います。これではいくら次元の異なる少子化対策と唱えても、若い人たちは必ずしも次元は異なっていないというふうに、冷めて見ているのではないかという気がします。新聞各社の世論調査でも、少子化対策にあまり期待できないという回答がやはり多いです。
それから、昨年の婚姻件数です。90年ぶりに50万件を割ったようです。性急な結果を求めているわけではないのですが、政府の少子化対策は昨年の半ばまでに大体大枠が示されていて、こうした少子化対策への期待が高まったのであれば、昨年の後半から婚姻件数が伸びてもおかしくないはずなのですが、なかなか伸びていない、減っていると、さらに今年も横ばいではないかという指摘もあります。そんなところからも、社会の受け止め方、この社会の意識改革というのが、まだ進んでいないような気がします。資料の36ページに、少子化の背景にある構造問題を克服するために、さらに必要な施策はどのようなものかしっかり精査すべきとあります。そのとおりであると思います。今後の施策をより充実させるためにも、是非政策の精査というのをしっかり進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕どうも御説明ありがとうございました。こども、医療、介護について意見を述べさせていただきたいと思います。
こども政策については、こども未来戦略が昨年末に閣議決定されて、そこの中には、少子化対策の財源は、まずは徹底した歳出改革等によって確保することを原則とするということが明記されています。まさに、この少子化対策の財源が現役世代の実質的な負担増にならないように、歳出改革を徹底していただくということが非常に重要なポイントになってくると思います。もちろん支援金の負担というのがあるということではありますが、医療や介護での保険料の負担軽減というもので相殺することが、現役世代の負担増をできるだけ抑えることにつながるということであると思います。
もちろん少子化対策は待ったなしであると思いますが、費用対効果をしっかり考えていただきたい。こども政策のためならば何でもありなのであると、どんな政策でもとにかく講じていくのであるということでは、せっかくこれだけ財源を確保しておきながら、こどものためと、ないしは子育て世帯のためというふうに思っても効果が上がらないでは意味がないということですから、お金をかけるということであっても、その効果がどうなっているかということを、しっかりPDCAサイクルを回しながら確認をし、効果がないものはやめ、効果があるものに重点化させていくということがこども、子育て支援には大切であると思います。
それから、次に医療ですが、地域医療構想が2025年の実現に向けて今取り組まれている、そのラストスパートであると思います。もちろん2025年までの実現というものをしっかり着実なものにしていくことは大事であると思います。ただ、2025年で日本の医療が終わるわけではなくて、その後もあるということは説明資料にもあったとおりでありまして、2026年度以降の新たな地域医療構想についても財審からしっかり発信していくということが大事であると思います。
特に、71ページにありますように、外来と入院というところで、それぞれに課題があるということです。特に今の地域医療構想は、DPCデータなどの活用によって、ビッグデータを用いて行政的に政策を講じていくという意味では、当時としては非常に画期的なものだったと思います。ただ、データが膨大過ぎて、分析するのに時間がかかり過ぎたがゆえに、入院医療のところに焦点が集まり過ぎてしまって、とかく病床機能の分化連携という話が地域医療構想の中心になってしまった。
だが、本日の資料にもありましたように、外来にも大きな問題があって、それは入院と外来両方を見極めていかないといけないものであるということが分かったわけですから、今後の新たな地域医療構想については、入院医療はもちろん改革がさらに必要ですが、外来との連携や、さらには場合によっては医療と介護の連携というところも見渡した中で、この地域医療をそれぞれの地域でどうしていくかということが新たな地域医療構想の中でしっかり盛り込まれていくことが必要ですし、当然その中には、かかりつけ医機能をどういう形で取り込んでいくかということも極めて重要なポイントになってくると思います。
かかりつけ医機能が発揮される制度整備については、昨年末取りまとめられた改革工程の中でも早急に結論を出すということになっていて、まさに令和7年度からのかかりつけ医機能報告の制度をどういう形で魂を込めていくかということが今、重要な課題になっていますので、財審からも、かかりつけ医機能報告、ないしはかかりつけ医機能が発揮される制度整備に関してどうあるべきかというところについてもしっかり意見を発信していくべきであると思いますし、少なくとも患者の選択に資する報告制度にならなければ、誰のための報告制度なのかということになりますから、かかりつけ医機能を発揮したい医療機関が患者の選択に資するような項目をきちんと欠かさず報告するという仕組みを整えていくことが重要であると思います。
それからもう一つ、医療については、年齢でなく、能力に応じた負担というものが重要になってきて、95ページにありますように、現役並み所得の判断基準の見直しはもちろんのことですが、高齢者の遺族年金が賦課ベースに含まれていないという問題も、これは看過できないものです。同じ年金をもらっておきながら、自分の年金権で受給している年金は保険料の賦課ベースに入るが、遺族年金という形でもらっている方はその賦課ベースから外れていて、所得としてカウントされないで保険料が安くなっていると。そうしたことが起こっているという不公平は是正するべきであると思います。
最後に介護ですが、昨年末の改革工程で結論を出す、結論を得ると書いてあるケアマネの利用者負担、それから軽度者への生活援助サービス等の地域支援事業への移行、それから利用者負担の2割負担者の範囲の見直しというのは必ず結論を出す、つまり第10期の計画期間にはこれらが実現するように結論を出すべきであるというふうに思います。まさに本日の資料に盛り込まれているとおりです。
それから、介護事業者の協働化・大規模化を介護報酬で誘導するということも今後きちんと考えていく必要があると思いますし、106ページにあります介護の人材派遣会社の規制強化、これは介護だけに限らないと思いますが、まるでかつての医薬品をめぐる薬価差益を貪る行動と似ていると。公定価格があるがゆえに、その間の隙間を狙って差益を得るという行為にも見まごうものですから、これはしっかり規制をしていただきたいというふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。財政を考えるとき、メリハリをつけること、データを用意すること、これはもう重要であるということが前提であると思っていて、これを除いて3点、お話をしたいと思います。
1点目はこども、子育てです。財源の問題は取りあえず置いておくことにしても、分配をどうするかということについては考えなければいけないと思います。韓国の例を出すまでもなく、分配を出したからといって出生率が上がるわけではないということが分かっているわけですので、お金をかけずにやれることというのはまだまだあるのではないかということを指摘したいと思います。
若い人たちとしゃべったのですが、この人たちは、例えば無痛分娩をただにしてくれたらよいなとか、あるいは、出産応援ギフトというのが出るのですが、そのカタログの中身があまりにもかわいくないと、茶色ばっかりであるとか、また、どこかのお店の売れ残りなのではないかということを言っている人もいて、確かにそうかなという気もしました。なので、そうした小さいことを改善するだけで、わりと違う効果が得られることもあり得る。なので、お金をどうするかということも重要ですが、そればかりにとらわれず、できることを見直すだけでも、こども、子育ての分野、出生率を向上するということには資することがあるのではないかというふうに思います。
また、会計検査院がそうしたレビューを出していますが、ほかの国、ドイツとかフランスが、保育サービスがどれぐらい効率的かということを出しています。これもきちんと見ておく必要があると考えます。PDCAを回すことと考えます。
2番目、医療費についてです。私、家族に患者が出まして、そこで医療費について親身になってみたわけなのですが、やはり無駄が多いと思います。必ずしも必要であると思えないようなチェックやサービスにお金がかかり過ぎている、一方、本当に必要とされるものにお金がいっていない、あるいは人がいっていないというふうに思いました。こうした財源の投入のミスマッチのようなことが私が見た範囲でも出てきているというふうに考えると、ここは何としても修正していく必要があると思います。
たくさんのことを一遍にやるというのは無理なので、例えばかかりつけ医、私がこの財審に入れてもらってから7、8年になりますが、ずっとかかりつけ医と言っているのですが、かかりつけ医が制度になったとは思っていないです。と考えると、やはりここをきちんと制度づけて、まずは外来患者を減らすような取組をやってもらう必要があると思います。いよいよ実践に入っていただきたいと感じました。
最後3点目、薬価についてです。薬価制度というのは、非常によいと思う一方で、特許が切れて経営問題になっていきそうな企業が日本にも散見されてきました。日本の医薬品市場がシュリンクしているように見えるのは、とても憂うべき事態であると思います。
ただし、今回の資料にも明らかになったように、NMEの数が非常に多いということ、何でもかんでも給付に頼り過ぎたという、そうした甘さがあったのであると思うのです。なので、医薬品市場というのをどうやっていくか、結局ドラッグラグ、ドラッグロスが出てくると、迷惑を被るのは国民ですので、この問題を何とか整理してもらいたいと思います。何でもかんでも給付しないということは大前提ですが、一方で、日本の医薬品市場の競争力をどうするかということを観点として残しながら見ていただきたいなというふうに思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからオンラインに移ります。次の2名の方に御発言いただきます。横田委員、それから河村委員、この順番です。
それでは、横田委員から、どうぞお願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田です。私からは医療関係2点、コメント申し上げます。
まず、46ページ目と48ページ目のところです。前々回か、他の先生の、建議と診療報酬改定の結果の状況をまとめてほしいという御要望に対し、資料を御提出いただいてありがとうございました。私もニュースに注目をしていた点なので、しっかりまとめていただいたのはありがたいなというふうに思っています。
結果的に、賃金上昇の環境下にあるので診療報酬改定は下げることができないということで落ち着いたというふうに理解をしております。そうした背景であれば、48ページにありますように、経営情報の見える化の中で、きちんと関係者の方々の賃金が上昇しているということを見せていくことは非常に重要であると考えています。しっかり実際行っていることと結果の関係を検証できるような環境を整えていくというのは、医療提供側にも当然だと思っていただきたいのが1点目です。
2点目は、薬の費用対効果評価の件になります。今回お示しいただいたお話、非常に私、驚きました。日本の現状の仕組みが期せずしていびつな構造を生み出している可能性が高いのではないかという御指摘だったかというふうに思っております。効果が低い、効果が出ない薬に対して補塡をしているということであれば、患者本位でないことはもちろんなのですが、二つ問題があります。
海外企業にとって、効果が低くても商売が成り立つ、成立するおいしい市場であると、日本市場はそうしたところであると考えられているということはもちろんですし、また、日本企業の成長意欲の低下にもつながり得るというふうに考えます。研究開発、商品開発をする上で、海外での競争を考慮した上で行われていかなければいけないような日本は市場の環境にあるというふうな状況でもありますし、もしこうした件が本当なのであれば非常に問題であると思いますので、検証も含めて、改革を行う必要があると思います。
くわえて申し上げると、医療分野でのスタートアップの支援というのも強化がなされているというふうに私は認識しております。新しいスタートアップもきちんと世界市場を見据えて、日本にも効果的な薬を提供できるような成長力ある企業が育っていただきたいということを構造が邪魔するような状況であってはならないと思いますので、是非進めていっていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。私からは、いくつか意見を言わせていただければと思います。
本当に今年、年金の財政検証もありますし、大事な年であると思うのですが、まず39ページのあたりで、我が国の医療保険制度の特徴と課題のところ、ほかの委員の方も言われていますし、この図というのは今までにも何度も使われてきたもので、大変良いと思うのですが、今回、例えば医師の偏在の問題であるとか、それからお薬のところですよね。費用対効果のところ、ずばっと大事な論点を指摘してくださっていることというのもあって、ここのところの整理の仕方というのを、公的保険制度、患者側、医療機関側というよりも、もう少し踏み込んで、一般に分かりやすくという意味で、医療機関のところをもう少しブレークダウンして、お医者様の立場、それから病院の立場、病院も大病院と診療所とあります。それからもう一つ、この世界のプレーヤーとして製薬会社の立場とかいうのも入れてこうした説明の資料も使うと、一般の国民にとってはすごく問題がどこにあるのかとかいうところが分かりやすくなるのではないかなということで、今回はもうこれでよいと思うのですが、今後作られるときについての意見です。
具体的にどういうことを書いたらよいかということで、これは私の意見ですが、例えばお医者さんであれば、ここにも上のところに自由開業医制というのが出ています。自由標榜制というのもあります。それから医師会の問題とかというのは最初に吉川先生もおっしゃいましたが、この世界、正直申し上げて、半分ぐらいは世襲の世界であると思います。何でそれができるかというと、そこはお医者さんになるための高等教育の構造にあります。だって、やはり私立大学の医学部の学費の高さを考えれば、なかなか一般のサラリーマンの家では、こどもがお医者さんになりたいと言っても、そんなに簡単に行かせられるものではなくて、すごく勉強が得意で、成績がよくて国公立の医学部に入れればという、そうした道はもちろんありますが、そうでないところからすれば、やはり半分ぐらい世襲のような世界になっているという話とか、お医者様の立場からすれば、大病院で働くと、苛酷な勤務条件、大変な状況があって、それは今年から是正されようとしていますが、でも自由開業医制とかもあるし、自由標榜制もあるし、世襲のようなお立場でいらっしゃる方も結構いらっしゃるしということで開業医に移ることも楽であるとか、そのような立場のことを書いてもよいかもしれませんし、病院の側でも、今申し上げたような話、大病院の立場、それから診療所の立場は違うと思いますし、また、製薬会社さんのお立場。今、後発薬に移行しろとずっと言われてきていますが、後発薬は恐らく薄利で、製薬会社だって民間企業ですから、収益を上げなければいけませんから、恐らくあまりもうからないのですよね。薄利多売になってしまうとか、そんなような構造があって、やはりもうけられるのは新薬で、でも新薬は莫大な開発費用がかかって、その元を取ろうというか、取り返して収益を上げていこうと思ったら保険に入れてもらわないと少し駄目であると、そうしたような構造があるようなことをお書きいただいたってよいのではないかなと。
この資料、いろいろな世界と、これから骨太に向け、予算編成に向けて闘っていかれる上での資料になると思うのですが、一方で、一般の国民も見ておりますので、是非一般の国民にもそうした辺り分かりやすく書いていただけるとありがたいかなというふうに思います。
今少し申し上げた医師の偏在対策との関係で申し上げますと、64ページから66ページの辺りであると思うのですが、いろいろお書きくださっていて、偏在対策、ここにお書きくださったようなやり方でいろいろやっていく必要、本当にもちろんあると思います。診療報酬だって地域間で格差をつけてもよいし、それから、66ページのあたりですか、18歳人口当たりの医師養成数。やはりこれだって、大学の定員の削減、別に医学部に限らず、少子化に見合った形でやっていかなければいけないと思いますが、医学部についてもここに書かれているとおりで、これは高等教育の世界の問題でもありますが、では定員数をきちんと減らしていかなければいけないとなったときにどうなのですかね。事実上の世襲制の温床みたいになってしまっているような私立大、私立の医学部の部分という、そっちを基本的に残す形にするのかどうなのかとかいったところというのも検討してもよいのではないかなというふうに思います。
それから、費用対効果のところなのですが、これは、戻ってしまいますかね、お薬の話のところをお書きくださっていますが、52ページとか57ページのあたりであると思うのですが、これだけの費用対効果のことが日本で全然検討されずに、わりとすいすいと、新しいお薬が認められればもう保険に入れてもらえるというのは、やはり少し問題というところがあると思います。国全体の厳しい財政事情のなかで、社会保障制度をきちんと持続できるようにしていくためにも、製薬会社のお立場はよく分かるのですが、少しそっちに引っ張られ過ぎていないかなということを申し上げたいと思います。
それから91ページのところで、能力に応じた負担というお話をしてくださっていたと思います。ここですが、年齢でなく能力に応じた負担のところです。これは金融資産、金融所得についても勘案すべきと、当然であると思います。この社会保障の分野というのは、本来であれば、やはり給付を受ける時点であまり大きな負担の差がないように、その時点、その時代に生きている人間が能力に応じて負担してというふうにやってくるべきところが本来あるべき姿だったと思いますが、そこがこの国の場合、崩れていて、負担できないのは、大変だから負担できないというのもあるのですが、実は負担する能力もあったのだが、負担せずにこられてしまったというところもあって、そこのツケはどう回っているかというと、財政運営の中の全体で見れば、毎年の新規の国債発行の大本になっているかなりの部分というのは、やはりお金が今ありませんから、社会保障の部分に回すためという部分が結構あったと思いますので、そうしたふうに後の世代にツケを回す形でやってきてしまった結果が、こうやって、格差の拡大でもありますが、金融資産とか、ほかの資産も含めてもよいと思いますが、多い少ないに出てきてしまっていると。これはある意味、過去、負担できる能力があったのに負担してこないで済んでしまったという、その結果でもありますので、そうしたふうに考えればなおのこと、能力に応じた負担ということで、資産所得の部分、金融所得とかの部分もきちんと勘案していくべきであると思います。
最後に、年収の壁のところについて意見を言わせていただきたいと思います。115ページのところです。これについては年金に限らず、社会保険全体としての問題であると思います。やはり見直していただきたいというふうに本当に思いますし、この点についてはどこに問題があるのかというのが、実は連合の芳野会長が去年の夏、8月5日の毎日新聞なのですが、インタビューでずばっと言ってくださったのがあって、もう私、本当によくぞ言ってくださったというふうに思うのですが、芳野会長、すみません、少し私から言わせていただいて。どういうふうに言ってくださったかというと、「誤解を恐れずに言えば、この問題は、『働く女性VS専業主婦』というような報道をされがちだが、私は、長い組合活動の経験から、実際は、『働く女性VS専業主婦を妻に持つ男性』(という構図)ではないかと思う」と言ってくださったのです。いや、本当にそうではないかなというふうに思います。
ここから先は私の意見なのですが、芳野会長は組合活動の御経験からこうしたふうに言ってくださっていますが、実際本当にもう少し社会全体で広くして見ると、やはりこの国、結婚している人、していない人、しない人生を選んだ人、それから結婚している人の中でも共働きの人だって結構いるわけですし、それから世の中全体見渡せば、ひとり親の家庭だって結構ありますよね。それから働く立場だって、サラリーマンばかりではなくて、自営業の方とかだっていらっしゃる。ところが、一部のカテゴリーに属する方だけが結局、年収の壁の問題に関わってこられる方なのですが、本来、社会保険、能力に応じた負担をして、いずれ自分が受給資格が得られたら年金だったらもらえるようになるというのが本来なのに、負担しないでもらえてしまうということです。そうしたカテゴリーがまだ残ってしまっているということではないかなと思います。
ですから、やはりここはきちんと、不公平な問題でもありますし、正直申し上げると、フリーライダーが残ってしまっていると思うのです。この厳しい財政事情の国でそれはないのではないかなというか、どういう人生を選ぶかというのはもちろん個人の自由ですが、こうした特権までそのまま温存する必要はないのではないか。ですから、ここはきちんと是正をしていただきたいと思いますし、その是正をするときにも、何かそれに対応した企業に対して補助金配るとかやっていますが、必要ないのではないか。そんなことにお金つける必要なんて全くなくて、しかもこの厳しい財政事情で。やはり急な変化はできないから、激変緩和のため、例えば3年かけて、5年かけて、この制度は基本的に撤廃していきますということをきちんと決めて、時間をかけて、少し数年かけて実行して実施に移していくということでよいのではないかなと思います。是非とも今年の年金の問題の検討でも、ここのところに踏み込んでやっていただきたいというふうに思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻ります。続きまして、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。私は社会保障制度改革について、総論的に一言だけ申し上げたいと思います。
社会保障制度改革の意義、目的ですが、一つは我が国の財政健全化、これは当然ですが、あわせまして保険料負担の抑制をすることによって、子育て世代、あるいは若者世代の手取り収入を増やして、将来不安を払拭すると。あるいは中小企業の賃上げ原資を確保することによって、7割を占める中小企業の従業員の賃上げの底上げを図る等々、いろいろあろうかと思いますが、そのためにも給付と負担の在り方を含めた抜本的な改革が不可欠であり、今回示された改革の方向性について、おおむね賛成できるところでございます。
とりわけ応能負担の考え方ですが、窓口負担、それから利用者負担の引上げや保険給付の範囲の見直しについては、早急に手をつける必要があるのではないかと思います。確かに一部痛みを伴うこともありますが、社会保障制度の持続可能性を確かなものとするためには、根源的な問題まで遡って、今回改革を行うべきであるというふうに考えております。
そのときに大切なのは、皆様からもお話がありましたが、やはりきめ細かな情報提供と、それから丁寧な説明、全ての人が納得するというのは無理にしても、なるべく多くの人が理解できるような、そうしたプロセス、努力が、今回のこの厳しい改革には絶対必要なのではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、お願いします。
〔小黒委員〕ありがとうございます。丁寧な御説明ありがとうございました。
財務省側の御提言に基本的に賛成ですが、これだけ財務省が医療に関して制度改革の提言をしなければいけないという状況は、ある意味で異常な状態であると思っております。ですので、今回は特に医療に絞ってコメントを二つさせていただければと思います。
まず1点目ですが、財政改革の本丸は社会保障改革ですが、先ほど佐藤委員もおっしゃっておりましたが、ミクロとマクロの改革で、このうちやはりミクロよりもマクロの改革のほうが重要であるというふうに思います。これは先ほどから現役世代の負担の軽減という話も出ていましたが、その関係も含めて重要ではないかと思われます。
前回や今回の資料にはありませんが、周知のとおり、4月2日開催の経済財政諮問会議で、成長実現ケ―スや現状投影ケースなどの3ケースにつき、内閣府も財政の長期推計を公表しました。このうち、現状投影ケースで、医療の高度化等の「その他要因」の伸びが2%のケースでは、現在(2019年度)で8.2%の医療・介護の給付費(対GDP)が2060年度には約2倍の16.1%に到達するという予測になっています。この推計の妥当性は精査が必要に思いますが、現在、異次元の少子化対策で議論になっている支援金制度で、追加的な保険料負担が上昇し、国民的な議論になっています。
従来から私は医療版のマクロ経済スライドを提言しています。先程、平野委員や佐藤委員も提言しておりましたが、医療・介護費の伸びをP×Q全体でマクロ的に制御しない限り、今後、社会保険料率が大幅に上昇することは概ね明らかに思います。この関係では、昨年11月の財審の建議でも、「報酬改定や医療・介護の制度改革に着実に取り組み、全体として、雇用者報酬の伸びの範囲に医療・介護の給付の伸びを収めていく必要がある」と記載していますが、昨年12月に閣議決定した「こども未来戦略」の脚注にも、やや省略しますが、「若者・子育て世帯の手取り所得を増やすためにも、…保険料率の上昇を最大限抑制する」との記載があります。「最大限抑制する」の「最大限」の意味が何かという問題もありますが、この脚注も閣議決定の一部で、立派に「政府の方針」となったものですから、これに対応するため、財審としても、雇用者報酬の伸びと医療・介護の給付の伸びとの関係につき、さらに踏み込み、具体的な検討や議論を行っていくべきではないかと思います。
例えばですが、後期高齢者医療制度の財政構造を見てみますと、75歳以上(後期高齢者)は1割しか全体の負担をしておらず、残りの9割は支援金と公費ということで現役世代が主に負担していますから、これは賦課方式年金の財政構造と全く同じような仕組みになっていることが分かります。賦課方式年金では現役世代の負担軽減のためにマクロ経済スライドが既に導入されており、後期高齢者医療制度も財政構造が似ていますから、そちらにも導入するということは当然あり得るということではないかと思います。
2点目は、医療・介護の保険料率の推計の重要性です。周知のとおり、当時の小泉政権期では、少子高齢化が進むなか、現役世代の負担増を抑制するため、2004年に年金改革を行い、厚生年金の保険料率の上限を18.3%に定めましたが、その改革のトリガーになったのは、厚生年金保険料率の推計であったと思います。
具体的には、2004年の改正議論が始まる直前に、政府が、仮に保険料の引上げだけで改正前の制度を続けていたとすれば、厚生年金保険料率は25.9%に引き上げなければならないという推計を公表したことが大きいと思います。
この結果、経団連や連合などを巻き込み、大きな議論となり、ご承知のとおり、2004年に年金改革を行い、厚生年金の保険料率の上限を18.3%に定めたわけですが、医療や介護の保険料率では上昇幅の限界に関する議論が進んでおらず、いまも上限が存在しないのが現状です。これは、ご提案ですが、もし可能ならば、今回のケースでも、医療給付費(対GDP)などの予測のみでなく、子育てを担う現役世代の負担増を抑制するため、本日の資料にも「協会けんぽ」の保険料率推計がありますが、内閣府の長期推計、2019年度の8.2%の医療・介護の給付費(対GDP)が2060年度には約2倍の16.1%に到達するという予測が正しい場合、このような水準で収まるとは思えず、政府のどこかの部署でより精緻な形で、いくつかのシナリオに基づき、将来の医療保険料率などの上昇幅に関する試算を早急に行い、公表する検討も進めていただきたいと思います。
私からは以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうも今回も精緻で詳細な資料ありがとうございます。私は、以前から申し上げておりますが、日本国、日本社会、日本経済にとって最大のリスクは少子高齢化と、南海トラフ地震であるとか、東アジアの地政学・地経学的リスク等もありますが、後の二つはなかなか、いつ起きるか予測できません。そうした意味で、一番最も本当に確実な予想で、しかも中長期的ですから事前の準備ができるのは、やはり少子高齢化対策であると思うのです。
特に今年は5年に一度の財政検証があるということで、恐らくこの議論というのは相当、一般の国民の方々の興味を呼ぶと思います。私は、やはり欠けているのは、皆様御指摘あったように、なぜこの少子高齢化が問題なのであると、あと東京一極集中もありますが、そこがなかなか理解できていないと。ネットなどを読むと、人口が8,000万人を切ってくるが、江戸時代の末期は3,400万人であると。では5,000万人ぐらいでもよいのではないのと、日本の国土は狭いから、こうした議論があります。
ただ私は、これで一つ欠けているのは、つまりどういう人口ピラミッドになっていくかということなのです。昔の人口、江戸時代の人口は基本的にピラミッド形です。今はもう既にこれ、厚労省は少し前にひょうたん形と言っていましたが、今は逆ひょうたんで、この後行くと、いわゆるつぼ形、頭でっかちのつぼ形になっていくと。財務省の資料でも、以前は、おみこし形、騎馬戦形、肩車形と記載があったのですが、あまり最近見かけないので、それがやはり問題であると。つまり、担い手がいなくなると、一方で介護医療を享受する人はどんどん増えていくと。これで本当に社会が維持できるのか、経済維持できるのか、ここの問題をもう1回やはり世に問うことによって、少子化対策に対する理解も得られるのではないかと思っています。
また、やはり統計です。緻密なデータが必要でありまして、私は、今いろいろ出ているデータはなかなか不十分であると。本日も少子化のところで一番初めに、出生数が減るというグラフがあったと思うのですが、75万8,631人とあります。既に実は11月分まで日本における日本人の統計が出ていまして、これでいくと、昨年の出生数、日本における日本人は大体72万8,000人、場合によっては少しそれを割るぐらいで、もう恐らくこれは決着つくのです。ですから、これは将来人口推計を相当下回っています。
また、そうした中で、本日の資料の中では欧米の少子化対策の御紹介ございました。ただ、欧米の少子化対策がそのまま日本に使えるのかどうか、やはり私は韓国を参考にすべきであると思っているのです。なぜかというと韓国は、御案内のとおり、相当大きな少子化対策費を使っていますが、昨年の合計特殊出生率は0.72と、一昨年は0.78です。今年、韓国政府は0.7を割る可能性が高いという試算を全て既に示しています。0.7です。日本が1.26です。日本の試算は、去年出た将来推計人口では、コロナ禍後、出生数は増えると、回復するという試算になっているのですが、現実は、先ほど申し上げたように、全然増えていません。
韓国と欧米、あと韓国と日本と比べるといろいろ違いがありまして、やはり欧米と日韓であると、日韓は社会的、文化的、宗教的にも相当似ている。特に大きな違いがあるのは非嫡出子の出生率です。フランスであると大体6割ぐらい、G7の中でも一番低いイタリアであると3割ぐらい、アメリカは4割ぐらいなので、大体G7の平均であると4割から5割ぐらいが非嫡出子なのです。日本と韓国は2%です、これはもう全然違うと。
今月に入ってアメリカで二つのニュースが出てきたのですが、実はアリゾナ州の最高裁判所が、1860年代だったと思いますが、今から200年ぐらい前の法律を復活させるという発表をしています。これは去年のロー対ウェイド連邦最高裁判決を受けてなのですが、これであると、もう基本的に妊娠中絶は原則禁止と。一方で、フロリダ州で間もなく施行されると見られているのが、妊娠中絶は6週間経過後は原則禁止と。これは要は、大統領選に出た知事が推進したもので、これも少し今、住民投票にかかる可能性があるので、1回施行されても、最終的に11月5日に止まる可能性はありますが、そうしたところが相当違うわけです。
ですから、欧米と日本の状況を必ずしも一緒にできないので、その中で韓国の事例を確認しながら、何でこれだけ低いのか、逆に言えばどうやってやっていかなければいけないか。私は、やはり女性の社会的地位を上げるということが、案外実は本質的に重要ではないかと思っています。私が提唱している指数に「しカーブ」がありまして、「し」というのは、平仮名の「し」です。縦軸に合計特殊出生率を取って、右軸に女性の社会進出、私が取っているのはWEF、世界経済フォーラムのグローバル・ジェンダー・ギャップ指数の政治的指標のところを取ると、平仮名の「し」になるのです。つまり、新興国、発展途上国では女性の、働いてはいらっしゃるのですが、政治的地位が低いところは出生率が高いと。だんだん下がってきて、ボトムが韓国であり、ロシアであり、日本なのです。それからだんだんイタリア、ドイツ、フランス、北欧と上がっていくと、こうした形になっていまして、つまり、やはりこれだけ人口が減ってくると、親御さんにいろいろお願いすることもできない、核家族主体ですから。先ほどいろいろ御指摘ありましたように、子育ては社会でやるということをもう1回、先ほどの少子化の問題点を御説明しつつ、納得いただく必要があるのだろうと。
その関係で、実は先週12日に総務省が発表した人口推計、これは昨年10月1日時点ですが、御案内のとおり、人口減っていますよということがあったと思いますが、私が少し今回気になったのは、一つは東京一極集中です。人口は2022年のマイナス0.44%が0.48%と、マイナス幅が全国では拡大している。マイナス0.44がマイナス0.48%。だが東京都はプラス0.2がプラス0.34%、つまり、47都道府県で人口増えているのは東京都だけなのですが、東京都の人口増加率がまた拡大していると、つまりコロナ前に戻ってきているということがあると。
あともう一つは、実は75歳以上の人口が2,000万人を超えたと、これは過去最高。これは実はNHKなどがやっていたのですが、つまりこれは団塊世代の方々が今75歳にちょうど突入していっているので、来年まで増えると。ただし、もう一つあって、65歳以上の人口は、統計開始以来、今回初めて減少に転じました。これはどういうことかというと、高齢医療、高齢介護は、まだ10年、20年徐々に必要数増えますが、もう実はだんだん総数は、ベクトルはピークアウトしてきていると。つまり、人口減少が、高齢者、65歳以上のところに及んできたということなのです。
ということは、何が起きるかというと、今後、介護医療のニーズはあるのだが、地域によっては実は総数のニーズが減る可能性もあるし、一方で担い手はもっと大きな勢いで減っていますから、つまり、この高齢、医療、介護のところも、ある面、規模の利益、規模の経済がもう利かなくなっていると。ここも逆流してくるので、少しいろいろ考えておかないと、本当に人がいない、しかも経営も成り立たないと。だから最近実際、特養なんかが地域で少し減るようなところがありますから、ある面そうした閾値を徐々に超え出したと。人口減少のスピードがということも今回の人口推計で明らかになっているので、やはり従来の考え方、つまり少子化がもっと進んでいると。高齢化も進んでいるのだが、総人口の減少ペースが高まっていますので、あと移民の方、海外の方をどうするかなのですが、今の1ドル153円で来ていただけるのかという問題もあって、ここの問題というのは、本当に日本の経済、あと社会保障にとっても、いろいろな意味で今回のコロナ禍がより悪い面で加速化した可能性があって、今年財政検証ありますから、いろいろ検証をきちんとやるべきと。
また、財政検証についてもう1点申し上げると……。
〔増田分科会長代理〕すみません、手短にお願いできますでしょうか。まだオンラインの委員がおりまして。
〔末澤委員〕すみません、ではもう結構です。終わります。
〔増田分科会長代理〕それでは最後、オンラインで堀委員が希望あるようですので、堀委員、御発言ください。これで最後にしたいと思いますので、お願いします。
〔堀委員〕本日は、こども・高齢化というテーマではありますが、これからの人口動態の変化を考えると共通課題が少なくないかと。先ほどほかの委員からもありましたが、社会保障制度全体としてのマクロとミクロ両方のアプローチの改革も必要になってくるのではないかと思います。ただ、少し時間も限られておりますので、今回資料に挙げられている医療について5点、介護について1点だけコメントさせていただきます。
39ページ、昨年までも医療保険の特徴と課題について記載がされていましたが、先ほど河村委員からもコメントがありましたように、内容が年々少しずつバージョンアップされていて、個人的に大変分かりやすくなっていると感じました。ただ、実際現実に動いている政策との関係を反映しているからであると思いますが、41、42ページとの関係性が少し分かりにくくなっているので、そこがもう少し分かりやすくなるとよいのではないかと思いました。
2点目です。診療報酬のPDCAについてなのですが、45ページから48ページで、令和6年診療報酬改定の総括、指摘への対応関係を示していただき、ありがとうございました。改定率の細かい内訳が明確になっているのはよいと思います。今までどちらかというと診療報酬改定前に焦点が集まっていましたがこれからは、診療報酬改定後、実際意図したとおりに政策が動いているかどうかを検証することも重要かと思います。看護職員、リハビリ専門職の医療関係職種の賃上げ0.61%、40歳未満の勤務医や事務職員等の賃上げ0.28%とありますが、事後で実際どういうふうになったのかというものを見ていく必要もあると思います。EBPM、診療報酬改定そのもののPDCAという意味でも、医療機関の経営情報、そして診療実績等の見える化も進めていただければと思います。
3点目です。疾病管理について、今回非常に細かなデータが挙げられていたと思います。高血圧疾患、糖尿病、脂質異常症など、入院外医療費の主な支出項目について記載がありますが、使用される薬剤や薬の価格の相違についても、状況を見ていく必要があると思いますし、改善の余地があると思います。国際的に通用するエビデンスに基づく医療の実践、疾病管理による医療費の適正化、フォーミュラリーの利用なども使う余地があるのではないかと思いました。
4点目です。費用対効果なども、これまで以上に非常に詳細なデータが出ていたと思います。厚生労働省のガイドラインや学会の診療ガイドラインを踏まえた上でというのは前提ではあります、経済性の観点も重要であると思います。薬剤の種類に応じて費用対効果の在り方を見直す必要もあると思いますし、ミクロレベルの配分の在り方を見るという意味では、保険償還の在り方を検討する余地、メリハリのある給付をさらに検討する余地もあるのではないかと思います。
ただし、ここにも詳細に書かれていますが、費用対効果の具体的な在り方は国の制度事情によってかなり違うところもありますので、そのままそっくり持ってくることはできないと思います。国の状態に合わせた専門的なテクノロジー・アセスメント、費用対効果を検証するような独立機関のようなもの、体制の整備が重要と思います。新薬といっても、国内だけで流通されるような新薬も少なくないですし、これからの日本の医薬品市場の在り方を考えると、産業構造の改革も含めてですが、費用対効果の在り方をもう少し有効に活用できる余地があるのではないかと思いました。
5番目です。医療提供体制の改革について、今回、医師数の適正化と遍在化についても挙げられています。これからの人口動態の在り方を踏まえていきますと、このままで行くと、人口当たり医師過剰となるエリアというものも出てくることが見込まれます。ただし、過剰エリアや診療科における規制等の必要性もあると思いますが、適正化という意味では、診療科の偏在、地域偏在の解消も同時に進めていく必要があると思います。また、働き方改革がこの4月から医療分野にも適用されましたが、エリアによっては医師の不足感を感じているところもあると思います。つまり、もう少し働き方の改革を上手に進めると同時に、地域医療構想など、医療機関の再編も進めていく必要があると思いますが、ただし、長い間言っていますが、地域医療構想の進捗状況が必ずしも芳しくないところもあります。今回初めて国によるアウトリーチ伴走支援というのが記載されていましたが、具体的にどういうものになるのか、期待していきたいと思います。
また、土居委員からコメントがあったと思いますが、入院機能、外来機能も含めて地域医療構想を見ていくというのは非常に重要な視点であると思います。かかりつけ医機能の発揮という意味でも重要であると思いますし、同時に医療DXも含めて、医療提供体制の効率化、セットで進めていく必要があるのではないかと思います。
それから、最後に1点、介護について、これも医療と同じように、改革の方向性が非常に分かりやすく記載されていたと思います。生産性の向上は構造的な課題でもあり環境整備が重要。高齢者向け施設、住まいの違いによって受けられるサービスが異なるというのはおかしい状況ですし105ページの保険外サービスの活用について、詳しく今回挙げられたと思いますが、もちろんエリアによって介護保険の資源の状況も違いますので、国民の利便性を上げる、そして新しい選択の余地を増やすという意味でも考える必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。あとは御発言何かございますか、よろしいでしょうか。
それでは、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。本日の模様は、またこの後整理して、記者会見で私から紹介をさせていただきます。
次回ですが、5月8日9時からの開催を予定しております。そろそろ建議の取りまとめに移っていきますので、また起草委員の先生方にはいろいろとお世話になりますが、よろしくお願いいたします。次回の内容につきましては、事務局から追って御連絡をさせていただきたいと思います。
それでは、本日の議論は以上で終了といたします。どうもありがとうございました。
午前10時55分閉会