財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年4月9日(火)09:00~11:05
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
-
1.開会
-
2.議題
成長、人口・地域等
-
3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
進藤大臣政務官 茶谷事務次官 新川主計局長 前田次長 大沢総務課長 木村主計企画官 三原司計課長 西村法規課長 横山調査課長 有利主計官 山岸主計官 小野主計官 佐久間主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 端本主計官 松本主計官 漆畑主計官 尾﨑主計官 後藤主計官 小野寺主計監査官 石田予算執行企画室長 西尾主計企画官 小田切公会計室長 |
||
委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 宮島香澄 芳野友子 |
|||
臨時委員 |
上村敏之 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 角和夫 滝澤美帆 伊達美和子 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午前9時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、本日は冒頭、カメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、進藤大臣政務官にお越しいただいております。どうもありがとうございます。
本日の議題ですが、「成長、人口・地域等」、こちらを議題といたします。
それでは、そろそろ報道の方、お引き取りいただきたいと思います。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕初めに、事務局説明に入ります。横山調査課長から説明をお願いいたします。
〔横山調査課長〕それでは、資料について御説明をいたします。
2ページ、まず、日本の現状と財政の在り方です。3から5ページにつきましては、日本の人口構造の見通しや、潜在成長率の現状について、先週の財審でお示しした資料を再掲しております。
6ページ、我が国の債務残高とGDPの推移を見ると、積極的な財政運営が持続的な成長にはつながっていない面もあります。また、OECD加盟国の政府債務残高対GDP比と実質経済成長率の関係性を見ると、必ずしも正の相関関係が見られないという状況でございます。
7ページ、持続的な成長のためには、メリハリをつけ、成果をあげられる支出に重点化していく必要があります。そのためにはEBPMも活用し、PDCAサイクルを強化することが重要となります。
8ページ、行政事業レビューを活用し、EBPMを実践していくため、予算事業全てについて短期・中期・長期のアウトカムを記載事項とする等の改善をした新たなレビューシートの導入、本年秋からの行政事業レビューシートシステムの公開といった取組を進めています。事業によってアウトカム指標の設定が不十分である事例もあり、今後、指標の適正化等により、行政事業レビューの質の向上を図っていく必要があります。
9ページ、昨年12月の行政改革推進会議において、基金の点検・見直しの横断的な方針を決定し、現在、行革事務局において、全基金の点検・見直しを行っています。本方針では、予算決定と同時に、定量的な成果目標を策定・公表した上で、その達成状況を見て、新たな予算措置を検討することとしています。
1ページ飛びまして11ページ、成長等でございます。
12ページ、生産年齢人口が減少する中にあっては、我が国は諸外国以上に労働生産性を上昇させていくことが不可欠です。一方で、日本の労働生産性は1990年代後半以降、徐々に低下しています。諸外国と比較すると、特にソフトウエア、人的資本など、無形資産の資本装備率の寄与が小さくなっております。
13ページ、2000年代を通じて民間企業の投資は低迷し、日本の企業の純貯蓄は諸外国と比べて高い水準で推移しています。投資の低迷は、資本の平均年齢の上昇につながっているとの指摘もあります。今後は、人への投資を含めて、民間企業による投資を促し、民間主導の経済成長を実現していく必要があります。
14ページ、産業別の就業者数について、労働政策研究・研修機構の推計によると、医療・福祉や情報通信産業などの就業者数は増加する見通しである一方、それ以外の多くの産業では就業者数が減少する見通しとなっています。また、先進国では、労働移動の円滑度が高いほど実質賃金成長率が高い傾向にあるとの結果が内閣府の資料にて示されています。今後、各人がより生産性の高い職場に円滑に移動できるよう、労働移動の円滑化に取り組んでいくことが必要です。
15ページ、各論に入ります。
労働政策についてです。構造的な賃上げを実現するため、「三位一体の労働市場改革」を推進していくこととしています。
16ページ、リ・スキリング支援の強化等のため、「教育訓練給付」の給付率の拡充、「教育訓練中の生活を支えるための給付と融資制度」の創設などを、国会審議中の雇用保険法改正案に盛り込んでいます。
17ページ、雇用調整助成金については、労働者の職業能力の維持・向上や成長分野への円滑な労働移動を阻害する面があったことも否定できないことから、必要な見直しを行っております。
18ページ、産業政策についてです。気候変動問題への対応や、経済安全保障環境の激化等を背景として、各国において経済への国家の関与が高まっています。
1ページ飛んで20ページ、令和5年度補正予算後で見ると、主要先進国と比較して、日本の半導体への支援額はGDP比で最大となっております。
1ページ飛んで22ページ、これまでの日本の産業政策の変遷をたどったものです。昭和後半までは、特定産業の保護・育成等を目的とした産業振興策が見られましたが、現在は、経済安全保障やGX等への対応による補助金措置額が増大しており、産業政策のフェーズが大きく変わってきています。
23ページ、こうした各国の産業政策について、地政学的競争等への対応のために政府主導の産業育成や同志国との連携強化等が求められるとの主張がある一方、市場競争の歪曲、世界経済の分断に繋がるとの指摘もございます。
24ページ、ODAについてです。SDGs達成に向けた資金ギャップが拡大、多様化する中で、先進国全体で民間資金の割合が拡大しています。日本が動員している民間資金額は、諸外国と比較して少なく、民間資金の動員によるODAの効果の最大化について検討していくことが重要です。
25ページ、外務省では有識者会議が開催され、民間資金動員のための触媒としてODAを活用する方策等について議論されています。重要な議論であると同時に、民間資金とのすみわけや、ODAを不要なものにも投入するといったモラルハザードの防止についても考える必要があります。また、既存のODAについても、より効率的な活用がなされるよう、不断の見直しが重要です。
26ページ、労働とODAについては、これまでの説明と重複するので、説明は割愛いたします。
産業政策について、例えば半導体支援について、今後は必要な財源も一体で中期的な戦略を描くことで、民間における予見可能性を高めていくことが必要ではないかと考えます。また、出融資の活用も含め、官民のリスク分担の在り方や産業政策のフェーズの変化を常に意識し、政府の関与の在り方を不断に見直していくことが必要と考えます。
27ページ、続いて「人口・地域」です。
1ページ飛んで29ページ、市区町村別の人口の見通しを見ると、今後の人口構成の変化は市区町村によって大きく異なる見通しです。おのおのの地域の状況に応じて、持続可能なシステムの在り方を検討していくことが必要です。
30ページ、各論に入ります。
社会資本整備です。人口減少が進む中、インフラ整備のB/Cを見ますと、例えば道路の新規事業でB/Cの比較的低い事業が増加傾向にあります。再評価時にB/Cが1.0を切るまで低下する事業も少なくありません。今後の社会資本整備にあたっては、将来世代にも受益が及ぶ事業に一層の重点化を図る必要があります。
31ページ、今後、コンパクトなまちづくりを前提にインフラ整備を進めることが必須です。さらに、マクロな視点での国土のグランドデザインを具体的に描いていくことも検討すべきではないかと考えます。
32ページ、能登半島地震では、様々な公共インフラに甚大な被害が発生しました。今後、機動的に復旧・復興を進めていく必要があります。その上で、今後の復旧・復興にあたっては、被災地の多くが人口減少局面にある中、住民の方々の意向を踏まえつつ、集約的なまちづくりやインフラ整備の在り方も含めて、十分な検討が必要ではないかと考えております。
33ページ、人口減少が進む地域でも、災害リスクの高いエリアで人口が増加するといった状況にあります。防災・減災効果を効率的に高めるためには、ハード整備のみならず、土地利用規制の強化も含めたソフト対策を一体的に進める必要があります。
34ページ、能登半島地震では、災害リスクの高い地域で被害が発生したことから、特に新規立地については、安全な地域への居住を促していく必要があるのではないかと考えています。また、今回の震災では、液状化による被害が広範囲に見られました。他方で、液状化リスクによって土地利用を規制する仕組みは現状ございません。
35ページ、近年、建設業の人手不足が懸念されています。公共事業の予算規模の増大や労務単価の引上げにより、民間工事のクラウディングアウトを引き起こすことのないよう留意が必要です。
36ページ、まとめについては、説明を割愛いたします。
37ページ、自治体のDXについてです。今後、自治体職員の増加が見込みにくい中、行政の合理化、効率化が急務です。情報システム部門について、ガバメントクラウドなど、システムの統一・共通化を図りながらコスト抑制に努めていく必要がありますが、併せて地方も受益に応じた適切な費用分担を行っていくべきと考えています。
38ページ、情報システム関係経費は年々増加傾向にあります。より効率的に行政サービスを提供し続けるためには、これまでの情報システムの投資対効果を検証し、真に効率化に繋がる予算措置を行うことが重要です。
39ページ、昨年12月末に財務省とデジタル庁で交わした合意文書です。新規システムを開発する場合、デジタル庁は、システム予算の投資対効果を可視化する仕組みを検討することとしています。
40ページ、現状、情報システム経費の中には行政事業レビューシートが作成されていないものもあり、PDCAの検証が行われていません。デジタル庁とシステムの担当省庁が連携して、透明性を確保しつつ、効率化努力を進めることが必要です。
41ページ、こちらも、まとめについては説明を割愛いたします。
42ページ、教員の給与についてです。近年、大量採用時の教員が大量退職する中、教員数を維持するため、若年人口が減少する中で大量採用してきた結果、教員の採用倍率が低下しています。また、教員勤務実態調査によると、教員アンケートに基づく「時間外在校等時間」は、給特法における教職調整額が前提としている8時間の「残業時間」と乖離が大きいという指摘があります。
43ページ、こうした背景から、「骨太2023」を踏まえ、令和7年度予算編成過程において、教員の処遇について見直しが行われる見込みです。教職調整額の水準を引き上げるべきとの意見もありますが、4つの視点に立った議論が必要と考えています。
44ページ、一つ目は人材確保との関係です。人材確保のために給与を引き上げるべきとの意見もありますが、新卒の採用試験受験者数は、新卒人口が減少する中でも一定数を維持しています。採用倍率の低下は、「教職の人気低下」によるものではなく、教員の年齢構成による近年の大量退職・大量採用に伴う構造的な現象と言えます。若年人口が大きく減少する中で、中長期的に質の高い人材を大量に採用し続けることは困難であり、「働き方改革」等により教職業務の効率化を徹底しなければ、根本的な解決にはならないと考えています。
45ページ、二つ目は民間等とのバランスです。一定の処遇改善を検討する必要がありますが、教員の給与は、近年の民間の賃上げの影響が反映され大幅に改善していること、時間外勤務手当を含む一般行政職の給与より高いこと等を踏まえる必要があります。
46ページ、三つ目は、メリハリある給与体系です。教職調整額を含む、教員に特有の手当等を合わせると、平均すれば教員1人当たり残業18時間分、給料の9%相当の手当が既に支給されております。教員の勤務時間には大きな幅があること等から、既定の給与予算を最大限に活用し、一律の給与水準の引上げは抑えた上で、負担の軽重に応じた「メリハリある給与体系」とするのが基本と考えます。
47ページ、四つ目は安定財源の確保です。骨太方針では、教員の処遇改善を行う場合、「安定的な財源を確保」することが前提とされており、文科省施策全体の歳出・歳入両面の見直しにより、財源を捻出する必要があります。
まとめについては、こちらも説明を割愛いたします。
49ページ、最後に地方財政についてです。今後、人口減少により、公共サービス需要の総量は減少し、職員の確保も難しくなることが見込まれます。DX化の推進や公共施設の統廃合等を通じて業務の効率化を進めていくことが重要です。これは関連歳出を抑制することにも繋がります。
50ページ、東京への人口・経済の一極集中が続いている中で、東京都の地方税収等は増加傾向にあります。これまで累次の是正措置が講じられてきましたが、全国の地方税収等に占める東京都のシェアはなお高い水準にあります。東京都は地方税収の増加に伴い、過去10年間、他の道府県と比較して、歳出総額を大きく増加させています。
51ページ、東京一極集中による豊かな財政力を背景に、東京都は手厚い行政サービスを実施しており、東京都とそれ以外の自治体の間などで行政サービスの格差が広がっています。各地域の実情に応じたきめ細やかな行政サービスを地方団体が安定的に提供していくための基盤として、偏在性が小さい地方税体系を構築することが重要です。
最後52ページ、こちらも説明を割愛いたします。
私からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は御欠席ですが、安永委員、それからこちらの会場に御出席の芳野委員から意見書を提出していただいております。各端末に格納しておりますので、お目通しいただければと思います。
それでは、これから、委員の皆様方からの御意見、御質問を頂戴したいと思いますが、いつもどおり、会場から5名、そしてその後オンラインから5名という形で、ネームプレートか「挙手する」ボタンで合図をしていただきましたら指名をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、会場で、私から見て右側の土居委員から順次指名していきますので、よろしくお願いします。
では、初めに土居委員、お願いします。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。今回もテーマ別での春の審議ということで、非常に分かりやすくて、よかったと思います。
私から3点申し上げたいと思います。まず、行政事業レビューについてです。
レビューシートをアップデートするということで、この取組も非常によいと思います。これを更に有効に活用していただきたいと思います。特に、まず最初に予算を立てるときに、行政レビューシートを作成し、そして査定を受け、そして予算に盛り込まれて成立して予算を執行すると。そして、決算を踏まえて、またレビューシートにそのことを記録し、そして次の予算へとつなげていくという中で、果たして本当にこの予算、この事業が必要な事業なのか、適正な事業規模なのかというような内容について深く精査することを通じて、緊張感のある予算編成に繋げていただきたい、それをレビューシートも一つの媒介にして成し遂げていただきたいと思います。
それから、基金の見直し、これは確かに大きく進歩したと思います。ただ、やはりまだ、先に決まってしまっていて、なかなか基金の見直しに踏み込み不足の部分も残っているというふうに私は思います。様々な政府の、ないしは与党の文書で先に、10年で幾らとかというふうに書かれてしまったために、それが金科玉条のようになってしまっているものについての精査というのは、私は引き続き必要であると思っております。今回の基金の見直しを第一段階として、更に踏み込んだ見直しに着手していただきたいと思います。
2番目は産業政策です。確かに経済成長を促進するということは極めて重要であると思います。ただ、大企業までもが補助金漬けにならないように、しっかりと産業政策、特に補助金の出し方については工夫をしていただきたいと思います。さらに、経済安全保障ということだからといって、聖域化するようなことのないようにお願いしたいと思います。
3番目に、教員についてです。教職調整額の水準の引上げということが巷間言われているということで、資料の43ページにもそのことが書かれているわけですが、これを実現しようとすると相当な予算が必要であるということが、ここの記載されている金額で分かります。しかもそれは国費だけであって、義務教育費国庫負担は負担割合が3分の1で、3分の2は地方自治体の支出になるが、その3分の2についても地方交付税で手当てされるということになっていると。特に地方財政計画ないしは地方財政対策における給与関係経費が、この教職調整額を引き上げることによって増額すると。さらには基準財政需要額の教員人件費の部分の金額も増額するということを通じて、結局のところ地方交付税でその一部を手当てするということになれば、相当額の金額が国から支出されたことになるということもきちんと踏まえた上で、教職調整額の水準について議論を深めていただきたいと、財源なくして教職調整額の引上げはないということを徹底していただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。まず、資料の中でEBPMをしっかりやっていくことや、リ・スキリングを実際の就労にしっかりと結びつけていくこと、それからDX化や効率化によって生産性を高める方向に労働の移動を促すという、そうした方向性についてはしっかりと進めていくべきであると思います。その上で、春の財審なので、今回のテーマの成長と人口について、少しフレームが広めのところを申し上げたいと思います。
これだけ人口が減ってくると、そもそもそれぞれの業界が、このくらい人が必要です、だから頑張りますということをやっていて、全体のバランスがどうなるのかというところを課題として感じます。つまり、今ももう始めていらっしゃるのかもしれませんが、政府のどこかで、今後の人口に関してきちんと厳しめに見た上で、人材バランスをどうしていくのが全体として良いかということをしっかり議論する必要があるのであろうと思います。
一つは、生産性の良いほうに行くのはよいのですが、自然に任せておくと、安定性や待遇が良いほうのところにどんどん引っ張られて、医師は典型であると思うのですが、高校生の理系人材がかなりそちらのほうに流れがちであるというようなことですとか、あるいは、政策に全体感がないと、少し別の話ですが、国交省予算で道路予算と鉄道予算をそれぞれがどんどんつけた結果として、そこには逆のベクトルが働くというようなことが現実には起こっています。
人材に関しても、それぞれの業界がこのぐらい欲しいということに完全に任せるのではなくて、このような人口推計に基づいて、このぐらいの人がやはりここには必要ではないかという目安を示すことによって、適切なインセンティブが考えられると思います。人がどんどん出ていってしまうところに関しては、単に頑張る、このくらい欲しいです、だから少し給料上げますと言っているだけではもうもたないんだなという、しっかりした危機感を持っていただくことが必要であると思います。
つまり、今回で言うと自治体や教員は、生産性の意味でどうかということではなくて、人数が必要だから欲しいというふうに言って、給料を上げよう、上げてほしいと言っているわけですが、実際にはこのぐらいは効率化や工夫をしても必要だということをしっかりと見せる。つまり、国によって就労を決めるという社会主義的な意味ではなくて、現実はこうなんだよということを最大限の工夫も踏まえてしっかり見せて、危機感とドライブをかける必要があると思います。
また、しっかり人が採れているところに関しては、ではそのままでよいというわけではなくて、全体感を見せることによって、もっとより効率的な工夫、あるいはほかの分野とのバランスというものを考えることも必要なのではないかと思います。実際幾ら必要だからといって、みんなが欲しいと言っているからといって、人口がみんな医療と福祉と教育に行ってしまったら日本は立ち行かないかなと思います。
その中で特に危機感がある自治体に関してですが、こちらは、もう単純に効率化とかいうことを言っているだけではなくて、そもそも一般行政事務に関しては、やり方そのものを根本的に変えていく必要があるのではないかと思って、ここもしっかりした危機感を持ってやってほしいと思います。
最後に教育ですが、これはいつも財審とか予算のところでは教員の数の話からになっていることに関して、少し違和感を持っています。保護者の立場から見ると、もちろん教員がみんな同じ質だったらよいのですが、恐らく質が低い教員2人よりも、質が良い教員1人に見てもらったほうが自分の子が伸びるのではないかというような気持ちも保護者にはあるのではないかと思います。
教育には、いわゆる勉強とされる部分と、本人の社会性や人格形成、気持ちのフォローといった、そうした二つの部分があると思っているのですが、前者に関しては、塾などでも今行われている、よい教師のリモートの授業、そしてそれをフォローしていくことのほうが学力を伸ばすことができるということも分かっています。能力がそれぞればらばらなこどもに対して全く同じ授業をしても、結局のところ、吹きこぼれと落ちこぼれの両方をつくっているということはもう分かっているので、せっかくiPadがこれだけ普及しているわけですから、特に勉強の部分は、それぞれの進度に合わせたデジタル的な手法をより効果的に使うべきであると思います。
その効果的な使い方が、現状、諸外国と比べてもできているように見えないのですが、そうしたところをしっかり活用しないで教員の数の話になっているというのは、非常に違和感を感じます。もちろん教員の長時間労働が問題であるということは本当にそう思っておりまして、働き方改革はしっかりする必要があるのですが、志願者数と質の関係だけでなく、効果的な学習はどうなのかという、しっかりした分析や普及、人の配置ということをしっかりと考えていくことが人材難も救うことになるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、お願いします。
〔小黒委員〕ありがとうございます。私からは、すみません、前回の財政総論で1点申し上げたいと思ったことがありまして、恐縮ですが、この関連1点を含めて、全体で3点コメントさせていただければと思います。
まず最初の1点目ですが、今、宮島委員からもございましたが、人口が非常に今、厳しい状態であるというふうに私も思っております。例えばですが、最近も出生数の速報値が出ましたが、これは2023年で75.8万人という速報値でございました。ですが、過去の確報値と速報値を見ますと3万人ぐらいずれていますので、今回も下振れすると思います。そうしますと、恐らく2023年は72万人ぐらいになる可能性が高いのではないかと見ています。
御承知のとおり、2022年は77万人の出生数でしたので、2023年が72万人なら、そうすると2024年、今年はまだ出てこないですが、場合によっては70万人割れする可能性もあるのではないかと思います。そうすると、国立社会保障・人口問題研究所が、出生率と、それから寿命と含めて中位推計を出していましたが、これは最新の直近の推計でも70万人割れするのは2043年なのです。そう考えると、20年ぐらい前倒しされる可能性があるというような状況が、もう既に出てきているのではないかというふうに思います。ですので、今いろんな話がございましたが、地域の在り方も含めてどういうふうにマネジメントしていくのかというところは、より踏み込んだ形で御議論いただいたほうがよいのかなと思います。
それから2点目、これは前回の話なのですが、日銀のマイナス金利の解除と長期金利の関係でございます。マイナス金利を解除しても、それがすぐに長期金利に影響を与えるものではないということは確かに思います。実際足もとの長期金利は1%を下回っていますが、引き続き円安は進行しており、現在は1ドル151円ぐらいで変動していますが、これは私の推計なのですが、1ドル150円ぐらいの為替を前提に、それから国債が今と同じぐらいのペースで財政赤字が続いていくというような前提で、東京財団の政策研究所のコラムでレビューとして掲載しているものですが、このような前提の下で、日銀がゼロ金利を継続(ほぼゼロ%の短期金利で制御)していき、国債を減らさない状況でやっていったとしても、財政赤字が続いていくと、長期金利は1%少しぐらいに上昇していく可能性があるという試算を出しています。
さらに、いま日銀は国債市場をにらみながら、徐々にですが、フローで見ても日銀の国債の毎年の買入れ額を減少させていくような構えも見せているわけです。そこで同じような前提で計算しますと、その場合、金利は2%を超える可能性もあるというのが私の推計でございます。そうしますと、このような状況の中、海外発のインフレ圧力など、トランプがまた再選するような可能性もあるかもしれませんが、そこで対中関税とか、いろんな話が出てくるというようなショックが加わると、長期金利が3%を超えるような可能性もあるのではないかというふうに見ておりまして、引き続き、身を引き締めて財政健全化の取組を継続していただきたいと思います。
それから3点目ですが、国債発行に依存した財政支出拡大の効果が本当にどうなのかというところ、本日の資料の6ページ目にも分かりやすい形で、プロット点がこうした形で示されておりますが、これは積極的な財政運営が持続的な成長につながっていないということを指摘する資料であると思いますが、もう少し踏み込んだ形で、分かりやすい資料を作っていただけないかなと思います。
そもそも政府支出の拡大を財政赤字で賄って一時的に成長率を底上げしても、財政赤字分を税収増で賄うのは難しいと、当たり前な客観的な事実があると思うのですが、それが一般的な国民になかなかうまく伝わっていないなというふうに私も考えておりまして、いろいろ考えたのですが、これはあり得ないケースですが、例えば乗数を3にするケースを考えてみたいと思います。これは少し極端なケースですが、乗数が3でも財政赤字分を税収増で賄えないというようなことが確認できます。といいますのも、例えばですが、財政赤字で10兆円の財源を捻出して、そうすると乗数が3であると、単純計算でGDPは30兆円増えるというふうに計算できるわけです。10兆円掛ける3で30兆円ですから。一方で、国・地方の税収の合計は大体120兆円ぐらいで、国内総生産(GDP)を600兆円としますと、税収はGDPの概ね2割程度になると思います。そうすると、GDPが30兆円増えたとしても、増加する税収というのは、地方税も含めて大体6兆円程度、税収弾性値が1.1でも7兆円超えないというようなことになると思います。
そうしますと、6~7兆円の税収増では財政赤字の10兆円分を完全に補塡することはできないということになるので、ここから政府債務残高(対GDP)というのは当然累積する、むしろ増えていくという形になると思います。実際の乗数は3よりも恐らくはるかに低いということで、日本で学術的にいろいろ研究されていますが、一致された見解はないと思いますが、乗数は少なくとも3はなく、アメリカでも乗数は0.8から1.5程度というような先行研究が多いと思いますので、こうしたような何かうまい説明をもう少し考えていただけないかなと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、お願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。意見書も提出しておりますが、4点に絞って意見を申し述べたいと思います。
まず1点目は、三位一体の労働市場改革についてです。雇用の質を維持・向上し、構造的な賃上げに繋げるには、労働者の能力発揮を適切に評価し、処遇改善に結びつける「能力開発と処遇改善の好循環」を実現することが不可欠です。中でも成長分野への労働移動にあたっては、労働者本人の意思が尊重されることが重要であり、労働者が希望する処遇や安定した雇用環境を整備していくことで、労働者自らが移動したいと思えるような「魅力ある産業」に発展させることが不可欠であり、こうした環境整備が整わない中で労働移動を推進しても、職場定着や生産性の向上につながらないと考えます。
2点目は、雇用保険法等の一部を改正する法律案について触れたいと思います。雇用保険制度における教育訓練は、労働者が新たな知識や技術などを習得することで、自身の雇用や職業の安定を目的としたものです。一方、本法律案における教育訓練給付等の拡充は、国の政策としてのリ・スキリング支援強化としての性格が強く、また、特定の産業分野の人材を育成する産業政策としての側面もあることから、その費用については、全額を雇用保険会計で担うのではなく、当該産業分野を所轄する業所管省庁の予算から一定割合を支出することが望ましいと考えます。
3点目は、教育における財源確保についてです。教育的配慮の必要なこどもの増加など、学校が抱える様々な教育課題や、教員の負担軽減に向けた教科担任の必要性を踏まえれば、1学級あたりの加配定数は拡充すべきであり、そもそも社会全体でこどもの学びを支える中においては、財源の捻出は文科省の施策に限らず検討すべきと考えます。
最後は、東京一極集中についてです。地域による偏りが少なく、安定的な地方税財政の確立は重要であり、地方財政計画の仕組みを基本的に維持した上で、地域における社会保障などの財源不足へは地方交付税の法定率の引上げを検討すべきと考えます。くわえて、各地域の特性を生かした知識産業集積を促進し、地域における良質な雇用の創出を進めるとともに、政労使産官学によるデジタル田園都市国家構想の議論を加速させ、中長期的に目指す国や国土の在り方に係るグランドデザインを描き、実現を急ぐべきと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕御説明ありがとうございました。私からは、我が国における労働生産性低迷の原因及び必要とされる政策対応について、労働市場改革を中心にコメントさせていただきます。
第1の原因は、産業、企業の新陳代謝の遅れです。米国などでは生産性の高い分野に資金や労働資源が投入されているのに対して、日本では低生産性分野にそれらが張りついています。また、供給過剰の構造が定着していることなどにより、不当に低い価格設定、プライシングが継続するという観点からも、労働生産性の低迷が続いています。具体的には、日本では2000年時点より労働生産性が低い業種に対して、近年は労働資源の35%が投入されています。この比率は、米国では26%、英国では21%、スウェーデンでは僅か13%にすぎません。今後、我が国は適切なペースで産業の新陳代謝を促すとともに、積極的労働市場政策を加速することなどを通じて、失業なき労働移動を促進する必要があります。
第2の原因は、第1の原因とも密接に関連しますが、労働市場の機能不全です。我が国では正規、非正規という、世界でも例を見ない労働市場の極めて不健全な二極化が定着しています。私は、同一労働同一賃金の実現などを通じた正規、非正規の格差是正などを含む抜本的な労働市場改革こそが、我が国の成長戦略のセンターピンであると考えています。
ここで、御参考として、私ども大和総研が行った労働市場改革の効果に関する定量的なシミュレーションを御紹介申し上げます。
まず、三位一体の労働市場改革の効果ですが、労働者の能力開発及び職能給の普及を推進すると、我が国の労働生産性及び潜在GDPは、いずれも中長期的に5%程度上昇いたします。また、労働移動の円滑化は、我が国の生産性及び潜在GDPをいずれも3.1%程度引き上げますので、これらを合算すると、三位一体の労働市場改革による労働生産性及び潜在GDPの押し上げ効果は合計8.1%程度に達します。
これにくわえて、就労の促進策という観点からは、三つの追加的な方策が考えられます。第1に、年金改革を通じた就労の促進による潜在GDPの押し上げ効果が0.5%程度、不本意非正規の解消による押し上げ効果が1.5%程度、女性の「L字カーブ」の解消による押し上げ効果が2.3%程度と試算されますので、最終的に、三位一体の労働市場改革と、これらの三つの就労促進策を講じることによって、我が国の潜在GDPは、驚くべきことに12.3%、70兆円程度押し上げられることになります。私は、こうした試算結果を踏まえて、就労の促進策などの労働市場改革こそが日本経済の宝の山であると確信しています。
我が国の労働生産性が低迷している第3の原因として、成長分野への投資が不足しています。
第4に、ダイバーシティーの欠如などから、イノベーションが起きていません。
第5に、企業経営力やコーポレートガバナンスには、依然として改善の余地が残ります。
以上、労働市場を中心に、日本経済が抱える五つの代表的な問題点を指摘しましたが、いずれも政府が財政支出の量を増やしただけで解決するような単純な問題ではなく、PDCAサイクルの強化やEBPMの推進などを通じた財政支出の質の向上と、規制・制度等の改革を「車の両輪」として解決を図ることが不可欠であると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインのほうで御参加の委員の、次の5名の方にまず御発言いただきます。滝澤委員、福田委員、横田委員、小林委員、上村委員と、この順番で御発言をいただきたいと思いますので、御準備お願いします。
まず滝澤委員、どうぞお願いします。
〔滝澤委員〕御指名ありがとうございます。資料の御説明もありがとうございました。私からは成長等につきまして、2点申し上げます。
1点目ですが、13ページにISバランスと資本のビンテージの図をお示しいただきました。現状は、企業と家計の貯蓄超過が、政府の財政赤字と経常収支の黒字とバランスしていると思いますが、家計の貯蓄超過が高齢化の中でどのような動きになるかが不透明であると思いますし、そうした中で企業が投資を積極化させていくとすると、政府の財政赤字の解消というのがより強く求められる状況かと思います。そのためには、資料でも強調されていましたように、やはりEBPMに基づく予算措置の考え方が重要と思われますが、例えばRIETIのEBPMセンターなどとも協力して、取組を推し進めていただければというふうに思いました。
2点目ですが、12ページ目の労働生産性ですとか、14ページ目の労働移動に関してです。こちらでお示しいただいている労働移動の円滑化も非常に重要と思いますし、参入退出の促進も大事であると思いますが、一方で、日本は企業の参入退出率、景気がよかったときも低かったわけですので、そうした参入退出を促進すると同時に、既存企業の動き、既存企業の生産性の動向というのが経済全体の生産性に大きな影響を及ぼしていると思われますので、既存企業が新しい財やサービスを提供する、プロダクトスイッチング、あるいはプロダクトアディングというような言葉が経済の分野でございますが、そうした既存企業の製品変化とか製品の追加というものを促進していくことが必要であろうと思います。そうした意味では、リ・スキリング等も大事になってくると思いますし、無形資産の一つである組織資本への投資というのも重要になってくるのではないかなというふうに思いました。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは続いて、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございました。事務局の資料、非常にまとまっていてよかったと思います。人口減少あるいは高齢化は、そう簡単には解消することは難しいという中で、経済を成長させるには生産性を高めること以外にはないということであると思います。そして、その生産性を高めるには、やはり技術開発だけではなくて、経済の新陳代謝を高めて、新しい企業を生み出していく、あるいは労働市場の改革をして適切な労働力を維持していくということが大事なのだろうと思います。
日本の場合、転職市場というのはやはりかなりうまくいっていないということがあって、転職したときに給与が上がるのか下がるのかという国際比較とかもあるのですが、日本は概して転職した人は給料が下がっている傾向があって、要するに正規社員よりも、むしろ非正規社員がこれまで働いていた仕事を失って、やむを得ず転職するようなケースも少なからず存在しているということが要因であると思います。むしろ積極的な前向きの転職を促していく、転職すればよいというわけではなくて、もう少し新しい産業、成長産業に前向きに人が移動していくという仕組みをつくっていくことが大事なのだろうと思います。
日本国内には多額の、巨額な余剰資金があるわけですが、これがどう考えても有効に活用されていないということで、企業セクターは非常に資金余剰になっているわけですが、それを解消していかなければいけない。資金余剰だが、企業セクターが使わないから、そのお金が財政や、あるいは海外に行ってしまっているということですので、その問題をともかく解消していくということは大事なのだろうと思います。
それから、最後に財政に関してですが、財政をどういうふうに使うかというのは、需要サイドの問題と供給サイドの問題で分けて考える必要があると思います。需要サイドに関しては、事務局の資料にありますように、現状では巨額な財政支出をする段階ではなくて、やはり危機に備えるための余力を残しておくという視点が極めて重要であると思います。供給サイドに関しては、以前よりは財政の役割は高まってきている、これは経済安全保障とか、あるいは非常に外部性の高い技術が多くなってきて、それを政府セクターが調整することというのは大事なのだろうと思います。
ただ、事務局の資料にありますように、あくまでも我々は資本主義国ですので、民間主導が基本であって、政府はそれをサポートすると、そうした姿勢は大事で、やはり行き過ぎた、幾ら供給サイドの政府支出が大事だからといって、行き過ぎた政府支出をするということは問題であり、やはりそれはきちんとレビューをして、適切かどうかということを議論していく必要はあるのだろうと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続きまして、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田です。
まず、御説明ありがとうございました。今回も横断的なテーマによる議論、歓迎しております。私からは、EBPM、労働政策、デジタルについて意見申し上げます。
まずEBPMですが、レビューシートのシステム、非常に期待しています。検索性が高まって、経年で確認ができ、アウトカムも短期、中期、長期で見られるということで、非常によいと思います。その上で、長期的に実施されている事業や大規模な経済政策など大きな事業、終了した事業も学びがたくさんあると思いますので、きちんと各省に入力していただき分析をしていくということが重要であると考えます。
さらに重要なのが、本審議会同様、横断的に、省庁横断での予算を見ていくことが非常に重要であると思っています。レビューシートのシステムによって透明性の担保がなされるだけではなくて、データベースを横断的に、目的的に十分に活用していけるように、早く慣れていただければと思っております。
次に、労働政策についてです。三位一体の改革というのは非常に重要です。ただ個人的には、労働移動とリ・スキリングの中間のようなものも非常に重要であると思っています。机上で学ぶだけは足りず、突然の転職を促すだけでもリスクが伴う。うまく流動化をさせていくためには実践的な中間の仕組みが必要であると考えておりまして、例えば副業や企業間人材交流などの促進も非常に重要なのではないかと考えております。
3点目のデジタル化についてです。デジタル庁と投資対効果の優先順位づけをして、デジタル投資のメリハリ、優先順位をつけることが重要であるという取り交わしがなされたこと、投資対効果が高いシステムという、投資対効果をどう言語化しているかというのをきちんと明確化し、広く共有する必要があると考えております。多くの人が使っているシステムを優先していくのか、あるいは事務コスト負担が高いものを優先するのか、そうしたところをしっかりと明確化し、共有化していただきたいというふうに思っております。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは続いて、小林委員、お願いします。
〔小林委員〕それでは、発言させていただきます。
資料の説明ありがとうございました。三つコメントしたいと思います。労働と産業政策と、それから社会資本整備についてです。
まず、労働についてです。26ページに成長の論点についてのまとめが書かれていて、全て同意するのですが、特に労働について、成長分野への労働移動が円滑になる仕組みが経済成長を高めるためには非常に重要であるということであると思います。ただ、労働移動の円滑化と、それからリ・スキリングとの間には一種の緊張関係があるということも配慮する必要がある。リ・スキリングをしっかりやっていくためには、職場においての心理的安全性というのが必要であると思いますが、一方で労働移動が円滑な環境というのは、ともすると心理的安全性が損なわれるような可能性があるかもしれないということであると思います。ですので、労働移動を円滑にする環境というのをつくるに当たっては、労働者本人にとって予見可能で納得できる理由で労働移動が発生すると、そうした環境をつくるということが重要であると思います。これが一つ目のコメントです。
二つ目、産業政策について。私自身、通産省にいましたので、90年代などの記憶を思い返すと、例えば、補助金に頼らないからこそ独立した、自立した民間企業なのであって、補助金をもらってしまうともう民間企業とは言えないと、そうした感覚が90年代はあったと思うのですが、今は大分時代が変わったなという感想を持ちます。一方で、産業政策と両輪をなす通商政策においては、日本は多角的な自由貿易体制を推進するんであるということを国是としてきたと思います。ですので、理念として、グローバルな経済自由主義、つまり自由な市場経済を守るという価値観、これはこれからも大事にしていく必要があるのだろうというふうに思います。
ですので、最近の産業政策が経済自由主義の価値観を毀損するようなことにならないようにしなければいけないと思います。具体的には、産業政策というのは特別な理由があってやっているんであるということを内外に表明する、例えば経済安全保障など、そうした特別な理由があるのであるということです。一番よくないのは、日本が不公正な手段を使ってマーケットにおける競争優位を獲得しようとしているというように認識されることであると思います。そうならないようにするということが重要で、むしろ人類共通の課題を解決するための政策をやっていると、例えばGXへの財政支出はまさにそうであると思いますが、人類共通の課題を解決するための政策として産業政策をやっているんであるということを言わなければいけないと思います。ですので、経済自由主義を堅持しつつ、人類共通の課題を解決するための産業政策をやるというのが日本の政策であると言えるようにしていかないといけないと、これが二つ目のコメントです。
三つ目は社会資本整備、36ページにまとめが書かれておりますが、その中で、マクロの視点で国土のグランドデザインを描くということが書かれています。これは全く賛成いたします。ただそのときに、マクロの視点というと、複数の自治体にまたがる調整が必要になってくるということなので、誰が意思決定をするのかというのが問題になると思います。複数の自治体間の意思決定を取りまとめる方法というのを考えなければいけないと思いますが、その中で、先日来言っているフューチャーデザインのような手法で、自治体間で議論を促すということも一つの方法ではないかと思います。
一例だけ挙げますと、京都府が水源を管理する水道事業があって、そこで10の市町村がその水源に関連して事業を行っているという例があります。京都府と10の市町村がフューチャーデザインを使って水道事業の運営について議論したという実験がありますが、そこでは、現在の視点だけで考えると様々なしがらみがあって、市町村の間で意見が割れて合意ができなかったということだったのですが、数十年先の視点に立って議論すると、今こだわっているいろいろなしがらみというのが非常にささいなことに見えてきて、お互いに譲歩しやすくなって合意が形成されたと、そうした例がありますので、参考になるのではないかと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕御指名ありがとうございます。上村です。御説明ありがとうございました。私からは三つあります。
8ページの行政事業レビューの活用と見える化についてですが、レビューシートの見える化の改善がなされるということは非常に喜ばしいことであると思っています。私、レビューの委員ですので、先日、新しいシステムにログインしてみたのですが、レビューシートの検索のしやすさ、あと一覧性が改善されておりました。この点評価したいと思います。
その上で、お願いですが、ある事業がいつの時点でどのような成果を上げると計画段階で想定されていて、そのとおりに成果を実現したかどうかのチェックができるようになるということを期待されますが、仮に成果を上げなかった事業については、廃止をする、スクラップをするということを原則としてもらいたいと思っています。事業期間が長い事業については中間段階で評価して、思うような成果が上げられない事業についてはスクラップするというようなことを原則とすべきであると思います。
今まで、成果が上がらなくても、うやむやになって事業を継続していたり、小さな衣替えとか、あと名称変更がなされて継続したりということがあったと記憶しているのですが、そうならないような手だてが必要であると思います。これは次のページにある基金も同じですが、十分な成果が上がらない基金についても廃止する、スクラップをするというようなことを原則としたいと考えています。
さらには、新規事業を立ち上げるときも、事業の終期、終わる時期を明確にして、スクラップをするということを前提とした事業構築を原則とするということを考えたいと思っています。また、こうしたEBPMの観点からのPDCAサイクルの徹底については、国の事業についてはかなり進んでいると思いますが、地方自治体はまだまだです。地方自治体にどのように浸透させるのかということについては、今後の課題であると思います。
二つ目です。50ページに東京都の地方税収等の推移と全国のシェアということですが、法人関係2税の1人当たり税収額は東京都が突出して大きいというのは、これは東京一極集中によって企業が東京に集まっているからであると思います。法人関係の地方税ですが、非常に大きな偏在性を持っているということを考えると、これまで改革をやってきたわけですが、やはり更なる改革が必要であると思います。
国際的に見ても、地方税として法人課税を持っている国というのはそれほど多くありません。特に今、インターネットの取引が盛んになってきていますが、多くのネット関連企業は、東京都に本社、本店を構えています。ネット取引は東京都以外の方も使うわけです、ネット取引が進むほど、税収についても一極集中が進んでしまいます。なので、地方については法人課税ではなく、例えば地方消費税の拡充といった、偏在性の小さな財源の確保が重要であると思っています。
51ページ、三つ目ですが、これは同じように東京都の行政サービスの充実が人口の一極集中を引き起こしているという話ですが、これもやはり検証が必要であると思います。東京都以外の自治体については、こどもなどに対してしっかり教育をしても、就業時などに東京に移住してしまうというようなことになると、地方はやるせない気持ちになっていると思います。地方自治体ごとで、かつ施策レベルでもよいと思うのですが、やはり住民1人当たりの予算規模を比較して、どのぐらいの住民サービスの格差があるのかを確認していただきたいと思います。特に対人サービスの地方自治体格差が大きくなっているように思っています。それが人口の一極集中をもたらしているならば、それを是正すべきかどうかの議論を行う必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちらの会場に戻ります。中空委員からお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。今回は話がいっぱいで、盛りだくさんで、たくさんコメントしたいところがあるのですが、時間もないので、それでも絞りに絞って4点、お話しさせていただきます。
1点目が成長に関してです。成長力強化のための戦略をしっかり描く必要があるということは言うまでもないことで、かつGX投資というのは、これからの日本が貿易収支をもう1回黒字にすることができるとすると、ここしかないというふうに、そこまで期待をしています。そのためには競争力を確保したいわけですが、そのために国が一部お金を出さなければいけないというのは十分理解できます。
しかし、22ページにあるように、いささか出過ぎているということは確かなのだろうと思います。取りあえずこうしたことをやるためには、GX経済移行債も出ていますが、GX経済移行債の財源だって結構遠くに集めることになっていて、果たして集まるのかどうか、まだ私は自信を持てていない。そんな中で財源確保をきちんとしてもらえるかどうかというのは大きく疑問符を持っているので、しっかりとやっていただきたいなというふうに思います。
補助金も、これは補助金ばかりではなくて、やはり投資とか融資とか、そうした形で民間投資を促せるような形になっていくべき。民間投資というのは、本当にもうかると思えばどんどん出てくるものであり、続けていても民間投資が出ないんだよねということに関して言うのであれば、国がお金を出し過ぎたのか、民間があまり魅力的に思っていない事業なのかという話であると思います。ですので、そうした目で、成長戦略だからといって出してよいという話ではないということは見ていく必要がある、これが1点目です。
2点目は、32ページ、33ページ目にありました能登半島の復旧復興の在り方というところです。ここ自体には全く問題がなく、是非集約的なまちづくり、インフラ整備の在り方も含めて十分な検討をしつつ進めていただきたいと思うのですが、私たち、この財審でもコンパクトシティーの話は死ぬほどやってきたというふうに思うのです。なので、こんな言い方もあれですが、こうしたときこそコンパクトシティーというのをきちんとやってもらいたい。コンパクトシティーというのが、何か駄目な感じ、そこに強制的に集められて嫌な感じというふうに見えているのではないかとも思います。ですので、地震というのは、日本にいる以上、どこにいてもあり得ることであるので、ここはもう少しコンパクトシティーをどういざなっていくか、促していくか、考える必要があるのではないかというふうに思います。
そうした意味でいくと、地震が自分事になっていないとも思うのです。日本はこれだけ地震があっても、地震保険に入っている世帯加入率を見ますと、まだ35%、自分で地震の後に何をしよう、どうしようということを考えていないのであると思います。宮城とか熊本のように、地震が起こった地域は地震保険の加入率が増えていくのですが、そうでないと増えない。ということは、やはりまだモラルハザードが起こっているか、自分事になっていないということであると思うので、是非コンパクトシティーをこの能登に実現させて、ああ、こうした形で地震というのは対応していけばよいのであるということを見せるモデルケースにしてもらいたいなと思います。
3点目は文教についてですが、教職員の賃金が上がっていくことについては、そうなのかなというふうに思います。しかしながら、これをするときには安定財源の確保というのは間違いなくセットにしてもらわなければいけなくて、そこをなくしてやってはいけないのではないかと思います。また、メリハリをきちんとつけること、宮島委員もおっしゃいましたが、やはり質の議論というのが全然出てこないことに関しては、ある程度フラストレーションもたまってくるのではないかと思います。ですので、メリハリをつけて財源を確保する、ここを一里塚にしてもらいたいと思います。
最後もう1点だけ、国が描くグランドデザインに対して、私は、国の経済対策というか、いろんな対策に対して補助金や負担金などお金を配るのですが、価格づけがどうも下手くそなのではないかというふうにいつも思っています。例えばですが、卑近な例でいくと、そこまで単純ではないよと言われると思うのですが、理系人材が欲しいというのであれば、理系出ると1,000万円あげるが、文系であると200万円とやれば、世の中というのは簡単に変わっていき得ると思うのです。コンパクトシティーを進めるのであれば、コンパクトシティーに住んでくれるなら600万円、そうでないとというようなことで差をつけていくということは、やはりインセンティブづけとして重要なのであると思います。お金の使い方ということは十分に考えられたかどうか。ここはグランドデザインに即して、補助金や負担金を考えていくということをもう1回考え直す必要があるのではないかというふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。私のほうから大きく3点申し上げたいと思います。
初めに、6ページ目だったかな。成長の右のグラフですね。ここで、上に、これは「先進国の債務残高と実質経済成長率の関係性を見ると、必ずしも正の相関関係は見られない」と書かれているのですが、私は、これを見る限り、負の相関があるのではないかと。どういうことかというと、やはり潜在成長率が低い国では、財政出動しても乗数効果は低いので、また、呼び水効果も得られないので、なかなか成長率もプラスにつながらない。逆に、潜在成長率が高い国であると、少しやると民間がついてくるということなので、私の観察が正しければ、やはり日本のような、ある意味、国としての、何というのですか、高齢国家については、やはりまずは財政出動と同時に成長戦略をやらないと、この効果は発揮されない。つまり、乗数効果、呼び水効果を高める努力が必要であるというふうに考えています。
二つ目、これは半導体のところなのですが、20だったかな。これと、次のページをお願いします。ちょうど昨日、夕方、テレビを見ていましたら、バイデン大統領が出て、アメリカ、ホワイトハウスが台湾のTSMCに66億ドル、日本に1兆円の補助金を出すと。あと50億ドルの融資を出すという話がありました。これを受けて、TSMCは、アリゾナ州フェニックスに、今、工場を作っていますが、来年に一つ稼働して、二つ目を作って、今度、三つ目を作ると。これの総投資額が650億ドル、これは日本円で約10兆円弱ですね。そうした投資を行うということを発表されています。
これに関して、実はバイデン大統領がステートメントを出しているのですが、これが面白いのは、彼は何て言っているかというと、この半導体というのは、小さいものは指より小さい。だが、これはスマホから車、また、人工衛星、兵器システムにも使われていると。大事なものです。バイデン大統領が言うには、この半導体というのは、実はアメリカが開発したと。当時、アメリカの世界シェアは40%あったと。これは今や10%強になっていると。しかも、最先端の半導体は一切作っていないと。これではもう国家安全保障、経済にとってまた極めて深刻な事態になっていると。だからやるのであるという説明をしています。
よく考えると、実はバイデン大統領が40%と言っていた頃、日本のシェアは50%超だったのですね。今、日本のシェアは10%弱と。実は日本のほうが減っています。ただ、日本の場合は、いわゆる川上がある。これは半導体製造施設、装置、これはまだアメリカのシェアは35、日本は大体3割ですね。半導体の素材材料、これは日本は50%です。アメリカ10%しかないです。この川上はまだあるのです。一番のシェアを持っている。ただ、これは市場規模が小さいのですね。しかも、ニッチな企業が多いので、ある面、技術、ノウハウがブラックボックス化されて、中国であるとか、海外に出なかった。韓国、台湾に出なかった。だからやるのであると、こうした意気込みは分かります。どうしてもこれは国家戦略で極めて重要であると思いますし、これからAI、ロボットという、次の次世代のことを考えると、これは産業のコメ、ないし、産業脳という、ブレインと言う人もいますが、これは重要です。ただ、なかなか各日本の国家プロジェクトは最近成功してないのです。だから、やはりこれはどうやって、なぜ失敗したか。これから成功させるには何が必要かということをもう1回再確認。これは経産省もやっていらっしゃるとは思いますが、なかなか成功事例が最近ないことを考えると、これは重要であると。
私が考えるには、やはりこれだけの国家事業になると、ヒト、モノ、カネですね。これをもう1回、持続可能性のある計画にして、投入していくことが必要であると。一つはリ・スキリングです。日本の場合、技術者が相当減ってしまったと。また、モノというのは、先ほどの素材、製造装置、材料ですね。ここの部分にプラスして、レアメタルですね。これはレアアースを含め、レアメタルの調達ルートの確保が重要です。あとはやはり財源ですよね。前回も半導体で、途中でお金がなくなって、海外に売ってしまったということはありますが、やはりこの産業というのは、このマーケット環境市場では昔から有名なのですが、シリコンサイクルというのがありまして、良いときと悪いときがあるのですね。悪いときにも耐えられるような、そうしたリスクマネー、ペイシェントマネー、耐久力のあるマネー。また、シードマネーですね。種銭を本当に安定調達できる仕組みをつくらないと、恐らくどこかでこれは競争に負けて、また脱落ということになるので、相当これは本腰を入れなければいけないし、財源も中長期的な対応を考える必要があるのだろうというふうに考えております。
三つ目です。人口のところなのですが、これは毎回申し上げているのですが、これはインフラ整備、教育、また、地方、農林水産業、全部一緒なのですが、要は、今、日本の社会というのは、少子高齢化、人口減なのですと。つまり、ざっくり言えば人口ボーナスから人口オーナス、規模の利益、規模の経済がもう今は逆流しているのですね。この中では、普通にやったら駄目です。要は、統廃合、集中するということと、ICT化をするということと、民間等へのアウトソーシングを進めないと、同じ仕事、やり方でやると絶対、効率は落ちます。これが必要です。
例えば教員に関してなのですが、私は実は親族であるとか友人に教員が多くて、よく文句を言われます。聞いていると、本当にすごく働いています。私ども金融マン、昔はサービス残業の極致だったのですが。これは会長はよく御存知ですが。最近よくなってきているのですね。ただ、教員はまだやっているのです。本当に土日も含めて、課外活動なんかをやっていると。人数を増やせという議論が文科省さんから出ているのですが、ただ、今、人が足りないので、人数を増やすのはなかなか難しい。そうすると、やれるのは仕事を減らすしかない。特に仕事を減らすなら課外活動、これはもう民間にやってもらうと。また、報告。苦情処理。そうしたのがすごい多いと。これはもうICT化して、私ども金融機関でも口頭で受付というのがありますが、もう全部ICT化でやっているのです。つまり、教員の方々は授業、また、お子さんの悩み相談。本当にそこの教育に集中していただくことが必要であると思います。
この人口に関して、もう一つ後に申し上げると、よく東京一極集中対策というのをここ数十年、言われているのです。私はなかなか難しいと思っています。実はあした、韓国で、4年に一度の総選挙があります。韓国は御案内のとおり、去年の合計特殊出生率は0.72。今、韓国の人口は、首都圏、大ソウル圏に51%が集中しているのですね。日本はどうかというと、三大都市圏、東京圏、名古屋圏、関西圏に今、53%が集中している。東京圏だけであると約3割。これがどんどん増えています。つまり、何が言いたいかというと、人口が減ると、東京に人が集中します。
実は東京の転出転入で見ると、戦後、東京は転入超過だったのですが、60年代、高度成長期、人口増の中で、転出超に変わって、今度、東京が転入超、東京都ですが、転入超に変わるのはたしか97年。つまり、生産年齢人口が95年にピークアウトしてから転入超に変わります。つまり、東京がどんどんブラックホール化しているのです。つまり、人口が減れば、どんどんそれは続くということなので、これはなかなか抗しがたいトレンドであると思われます。つまり、それに対応した少子化対策であるとか、やはりそうした、なぜそうしたことが起きるのかと。逆に言えば、地方で中核都市をもっと元気にするとかですね。そうした、やはり人口動態についてはもう少し精緻な分析と対策をやっていかないと、先ほどの話で、従前どおりの対策をやっていたのではまた効果がない。効果の薄い使われ方に、あんまりこう、ワイズスペンディングではない使い方になる可能性があるので、ここはもう1回、再考する必要があるのではないかと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。あまり迫力のない話になると思いますが、2点、お話しさせていただきます。
1点目は、人口問題です。先日、三村レポートが出ましたが、大変インパクトのある内容でございました。今後50年を考えると、最大のファクトはやはり人口減少の問題であると思います。不確実なことが多い将来予測の中で、唯一これだけが間違いないファクターかなと思っております。もちろん移民とか外国人労働者とかそうしたこともありますが、これも限定的ですし、あるいは社会的なコストを考えると、これもおのずと限界があるのではないかなというふうに思っています。一日も早く、縮小時代の発想や仕組みに変えていかなければならない。
そのときに大事なのは、画一的な縮小ではなく、メリハリのある縮小を目指していくということかと思います。拡大期は均衡ある国土開発というような発想も許されたわけですが、縮小期はむしろ多様性とか独自性とかそうしたものを重視しながら、縮小期に対応すると、こうした発想が必要ではないかなと思っています。
2点目は、生産性と労働の問題でございます。生産性は、どのような時代でも大事なのですが、特に縮小社会ではより重要になってくると思います。やはり効率的な働き方、今、お話が出ましたが、昔は、みんな残っているから帰れないとか、帰らないとか、今は大分そうしたことはなくて、うちの会社ももうほとんど夜は電気を消しますから、そうしたことはないと思っていますが、まずそうした働き方に伴う意識とか慣習を変えていく必要があるのではないかなと。
それから、やはり決定的なのはDXの導入、拡大、それから、適材適所という面では、労働移動を促進するようなリ・スキリングも大事かと思います。生産性ということでは、特に中小企業の生産性の問題が非常に大きな課題ですが、このDXの導入が非常に遅れております。政府等からいろんな支援をいただいているわけですが、なかなか進まないというのが現状でございまして、やはりもう一歩踏み込んだ、もちろん予算的な、お金的な支援も必要ですが、もう一歩踏み込んだ促進策が必要なのではないかなというふうに思っています。
それから、リ・スキリングも、中小企業は非常に大切なのですが、一方で、若い優秀な社員の流出を懸念するという声が非常に根強いことも事実でございまして、これをどう乗り越えられるかというのが今問われているのかなというふうに思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、國部委員、お願いします。
〔國部委員〕本日の議題である、日本の現状と財政の在り方、それから、成長、人口・地域、それぞれについて1点ずつ申し上げます。
1点目、日本の財政の在り方として、PDCAサイクルを強化し、EBPMを推進すべきという点は、かねてより財審の建議でも指摘してきたところです。今回、行政事業レビューを全ての予算事業について導入し、手当てされた予算に対して期待する、短期、中期、長期の効果や、実際に発現した成果の可視化が図られたことは評価いたします。しかしながら、可視化の本来の目的は、事業の費用対効果を検証し、後年の予算編成に反映させることです。その意味で特に重要となるのは、約5,000のレビューシートを誰が検証し、予算編成へどう反映させるのかという点です。可視化をしても検証が十分行われず、事業の見直しを各省庁の自律性に任せていては、PDCAサイクルはなかなか回らないのではないかと思います。事業の見直しや予算編成への反映に何らかの強制力を持った枠組みが必要ではないかと考えます。また、実際にレビューシートを評価するに当たり、個々の事業を評価するだけでは、同じ政策テーマに属する事業間で整合的でない判断がなされる結果にもなりかねません。政策テーマ別など、包括的、かつ、省庁横断的なレビューを可能にすべきではないかと考えます。
2点目は、成長のうち、産業政策における官民連携の在り方についてです。多額かつ長期的な資金を必要とする産業政策においては、官民が連携し、適切なリスク分担を行うことが重要であり、政府の関与の在り方を含めて、中長期的な財政支援の戦略を描き、民間における予見可能性を高めていく方向性に異論はありません。もっとも、リスク分担の在り方等を見直す際には、民間サイドと十分に議論を重ねることが重要です。
金融機関の立場から見れば、民間で取り切れないリスクがある場合に、プロジェクト推進の観点から財政支援を期待するケースがあることは否めませんが、その際にも適切なリスク分担の観点から具体策を検討していく必要があります。例えば、直接的に財政負担となる補助金などを限定しつつ、リスクが具現化したときにのみ財政負担となる政府保証を拡充する。あるいは、EVなど既に一定の市場が形成されて、社会実装の段階に入っている技術については、政府支援から市場競争に移行するなど、財政負担を抑制しつつ、民間資金を効果的に動員するための施策を検討する必要があるのではないかと思います。
3点目は、人口問題について。ただいま広瀬委員からも御指摘がありましたが、本年1月に、増田分科会長代理や私が参画しております人口戦略会議において、人口ビジョン2100という中間報告書を取りまとめました。そこでは人口を一定数に安定させる定常化戦略と、小さい人口規模でも多様性に富んだ成長力のある社会を構築する強靱化戦略を提言しており、今回の人口に関する社会資本整備、あるいは防災等の論点は、まさに後者の強靱化戦略と同じ考え方と言えます。リソースが限られる中、持続可能な社会を構築し、かつ、将来世代に利益をもたらす事業に予算を投じていくために、集約化を前提とした国土のグランドデザインを描くことは重要と考えますが、一方で、国の政策ではカバーし切れない地域固有の問題にも対処することが必要です。地方自治体と目指す社会の姿を共有し、それぞれの役割を整理した上で、取り残される人がいない形で進めるべきと考えます。
私の意見は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続きまして、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。では、私から、本日のテーマについて一つずつコメントさせていただきます。
まずレビューシートですが、行政事業レビューを個別の事業の評価にとどめないで、子育て支援とか地方創生などの施策ですね。施策、政策評価につなげる工夫が必要であると思います。例えば同じ政策に対する各事業の貢献度を検証するようにして、具体的にどの事業に重点化させるべき、予算を重点化させるか。事業間での優先順位を明らかにするということが肝要です。
また、事業名が違っていても、類似した、あるいは重複した事業というのが存在します。以前、NHKのコロナ予算の検証プロジェクトで、AIを使ってコロナ関連の事業をグループ分けしたことがあります。意外と似たような事業がたくさんあったというのが分かりました。こうした類似事業や重複事業を明らかにして、その効果を比較して、必要のないものは排除していくと、こうしたこともあってよいかと思います。
それから、成長に関してですが、半導体やDXに対する支援は、補助金とか税額控除に偏りがちで、ややもすると財政依存、先ほどから御批判あるとおり、財政依存の産業構造を生みかねないとは思います。であれば、支援の仕方を変えてもよいのではないかと。例えば政府出資にする、出資にする、あるいは、たしかイスラエルなどで使っていると思いますが、コンディショナルローンという形を取って、成功したとき、利益が出たときは配当を受け取る。あるいは売上が生じたときは、その売上の一部を返済してもらうという形で、成功を分かち合う。もちろん失敗したら返済はしなくてよいという、そうした形でリスク分担、企業と国家の間での新たなリスク分担というのがあってよいのではないか。必ずしも補助金ありきである必要はない。形態はいろいろ、支援の仕方はいろいろあってよいのではないかと思います。
最後に、人口・地域関係ですが、自治体のDXなのですが、自治体に任せていてはやはりなかなか進まない。システムの更新の時期が違っていたり、ベンダーが違っていたりしますので、ここはやはり国が指導して一気呵成にやっていくしかないのかなと。こうしたのはあまり漸進主義的なアプローチというのはDXには向かないような気がします。それから、もう一つ、最近、自治体の現場の人と議論すると出てくるのが、公共調達の未達です。例えば公共施設、学校などの公共施設の再編成を行うにしても、入札をかけてもなかなか応札がないというケース。なぜかというと人員が不足している。それから、資材価格が高騰しているので、やはりその入札価格では無理ということになるわけです。なので、この場合、少し無理に、あるいは、入札して事業を始めたはよいのですが、途中で価格が高騰して、結果的には費用が高くつくというケースもあり得ますので、これは、公共施設の再編成は今、喫緊の課題ではあるのですが、今この段階で無理に進めると、かえって後で大変なことになるというのであれば、ある程度先送りをする、当該施設を長寿命化にかかるといった、そうした選択肢もあってよいのかなと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインに移ります。次の5名の方に御発言いただきます。順番は、武田委員、堀委員、伊達委員、河村委員、大槻委員、この順番で指名しますので、御発言お願いします。
まず武田委員からお願いします。
〔武田委員〕御説明どうもありがとうございました。本日、論点が大変多くございますが、2点、意見を述べたいと思います。
1点目は、財政の在り方についてです。成長に資する財政運営が必要であることは、申し上げるまでもないと思いますが、改めてアウトカムの明確化と、国家検証を前提とした政策議論と遂行が重要であると思います。その点では今回、行政事業レビューシートの活用が進んでいくことは大変望ましいと思いますが、レビューシートを形式的に埋めることに意味があるわけではなく、それをきちんと評価し、予算の査定や政策立案において、過去の評価も含めて生かしていくことが重要と思います。
また、結果的に、政府全体において、アウトカム志向や、EBPMマインドが浸透していくこと、さらには人々の意識改革につながっていくこと、ここに大きな意義があると考えますので、行政事業レビューシートの活用そのものに加えて、こうした意義をより浸透させていく取組も重要ではないかと考えます。
2点目は、国土のグランドデザインの重要性に関してです。人口減少社会ではコンパクト化が必要という議論は、この財審でも長年議論されておりましたが、残念ながら、十分には進んでいないと認識しております。人口減少に加えて、近年は災害も激甚化していますし、また、震災も全国でいつ起きてもおかしくない状況にございますので、人口が減少するのでインフラ費用を抑制するという財政視点ではなく、国民の命を守る視点から、住まないエリアを考えていく、指定することも検討していく段階に来ているのではないかと考えます。
また、震災はどこでも起きる可能性がありますので、起きた後のレジリエンス、これを高めるにはどうしたらよいかという議論も重要です。特にデジタル活用による自治体間のデータ連携、これは非常に重要になると思います。この資料でも、グランドデザインの議論の後に、自治体DXの話が掲載されておりますが、自治体ごとのばらばらにDXを進めるのではなく、全体のデータが連携されるような形での、アーキテクチャが必要ではないかと思います。国土のグランドデザインの議論が、そうしたハードの面だけではなく、ソフト面やデータ活用も含めたレジリエンスの向上に資する議論として具体的に進むことを望みます。
以上となります。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、お願いします。
〔堀委員〕はい。成長、人口・地域という横断的なテーマにしていただいたおかげで、人口減少における社会資本整備、成長、地方行政、文教など、共通課題が非常に抽出されていたので、とてもすばらしいと思いました。共通することは、限られた人口で日本の経済社会をどう持続可能にするのか、支えていくのか。また、新しい人口に見合った、人口動態に合った社会をどうつくっていくのか。先ほどから、人口ボーナス社会から人口縮小オーナス社会の展開というお話がございましたが、そのためにどう限られた予算をメリハリをつけて、どう賢く使うのか、ガバナンスをどう保つのかということが共通の課題であったと思います。
それぞれいくつかあるのですが、短めに3点ほど指摘したいと思います。
1番目、現状と財政状況について。8ページの行政事業レビューの活用と見える化、これは大賛成です。EBPMの推進という意味でも、PDCAを進めるという意味でもとても期待しています。事業効果測定に不十分・不適切なアウトカム指標が一定程度あるということですが、是非、そうした指標等をデータベース化しながら、AIの分析をするというお話もありましたが、どうしてそうした不適切な指標が設定されてしまうのか、どのような指標を設定すればよいのかというアウトカム指標の在り方そのものが非常に重要であると思いますので、そこを是非検証していただければと思います。
2点目です。14ページ、産業別の就労状況と労働移動のところで、労働政策研究・研修機構の推計が示されておりますが、これもほかの委員の方がおっしゃったように、リ・スキリングで成長分野への労働移動の円滑化は重要であると思います。ただ、この資料で、各人がより生産性の高い職場に円滑に移動できるような取組と書かれていますが、職場の意味によるのかなと思いました。同じ業界の中でより生産性の高いところへ移動するという意味なのか、生産性の高い業界に移動するのかというので、多少性質が違うのではないかと思います。生産性の低い職場がその業界の大多数を占めているとすると、生産性がよい、トップのところだけに行こうとすると集中してしまうでしょうし、これは業界全体の生産性向上に向けた投資、インセンティブ付与も必要であると思います。ほかの委員の方が新陳代謝の話をされていましたが、生産性が低い職場が、緩やかであっても自然に淘汰されていくような仕組みにしないと変わらない気もしますし、非正規と正規労働の格差がこのままであると、そこも変わらないかと思います。
また、一番重要であると思うのですが、労働生産性について考える際に、特に医療、福祉関係、教育もそうかと思いますが、労働集約産業である場合は、ほかの産業と違って、収入に相当するものが基本的に公的な制度を通じて集められる部分がかなり占めます。医療費や介護費などの単価の設定などもありますが、資源配分そのものがかなり公的な規制によっても関わりますので、生産性向上の議論は必要なのですが、どこまで公的保障の範疇なのか、公的価格の在り方がどうなのかとセットで進めていく必要もあるのではないかと思います。
それから、37ページ、地方自治、DXについて。先ほど出生数について、小黒委員でしたか、非常に深刻なデータがあるという話をされていましたが、8年連続で減少していますし、明治統計史上、最少であると思います。出生数そのものが、これは大体、練馬区の総人口くらいなのではないかなと。一方、人口の自然増減で見たときに、減少は17年連続で減少していますし、自然減の部分がたしか記憶で80万人少し、83万人ぐらいだったと思うので、昔は市町村一つがなくなるなんてよく言われましたが、佐賀県が現在81万人ぐらいであると思いますが、もう1年間で、一つの都道府県がなくなるようなレベルです。ですので、地方自治体のDXを進めるのも、従来の地方行政の在り方とセットで考えるべきかと。そのままデジタル化を進めるのではなく、これからの人口動態の変化、しかも、それは地域によって進むスピードも異なり、時間軸が違うと思いますので、単なるデジタル化ではなくDXにするにはエリアごとにどう変えるかというのを考えていく必要があると思います。
ただ、ベンダーロッキングや、あるいは人材不足などもありますし、この資料でもありましたが、デジタル化以前の課題もあると思います。スピード感を持って進めるのは重要なのですが、一斉に全部やってしまうと、なかなかうまくいかないというところもあると思いますので、グランドデザインを持って、何を国レベルでより優先的に進めていくのか、エリア独自で進めるのは何かを識別する必要があるのではないかと。特にデジタルの情報共通基盤は、公共道路と同じような側面があると思います。道がなければ、人も車も通れないですし、道が他の道とつながらなければ通行ができず意味がない。それぞれがばらばらに進めるのではなくて、国、地方、民間で共同責任分担をしながら、利用できるデジタル基盤をつくっていくということが重要なのではないかと思います。
ただし、単純に予算を増やせばよいというわけではないと思いますし、かつて、10年以上前に、イギリスが政府のIT投資でかなり失敗をして、その後、非常に大きな課題となったこともありますが、投資効果はどのレベルで、どの単位で見るのか。デジタル政府の先進事例などもあるかと思いますが、省庁、地方自治体、民間も含めて共同事業として実施する際に、トータルに見たときにどのような効果があるのかを、共通枠組みで可視化できるような仕組みを検討することも重要になってくるかと。
最後に、人口減少の話、ほかの話でもそうなのですが、人が増えない中で、1人当たりの業務が増えていく。これをこのまま同じようにやろうと思うと、どうしても無理が来るのは当然といえば当然ですので、地方自治で言えば、平成の合併がありましたが、令和の合併ではないですが、ある程度の組織の統廃合も必要であると思いますし、文教においてもそうですし、あるいは社会資本整備においても、危険なエリアに、リスクの高いエリアに人が集まるという話もありましたが、人口動態の変化に見合った自治体、文教、あるいは社会資本整備になるように検討していく必要があるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕あと残り30分で8人残っていますので、一応その時間内で大体収まるぐらいで、できれば発言をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
続きまして、伊達委員です。お願いします。
〔伊達委員〕人口減少の中で、各分野について訴えるよい資料であると思っております。しかし、人口減少についての危機感が社会的に常態化しているように感じます。もう一歩踏み込んで、その危機感を表現できるとよいのではないでしょうか。例えば過去の予測との乖離について明確にすることによって、一歩踏み込んだ、今、状態が違うのであるということを明確にするのがよいと思います。また、財源が不足して、人口が減少化する中で、コンパクトシティの考え方、社会資本整備の配分の在り方を見直す必要があるという意味では、グランドデザインの見直しは必然であると思いますし、このテーマはかなり重要であると思います。これは地方自治体の財源の在り方というものに全て影響してきますので、その意味ではもう少し全体の中で上位に来るテーマになるのではないかと思います。
また、他の委員の方も縮小期ということをおっしゃっていたと思いますが、いわゆるマクロな視点のグランドデザインという言い方よりは、明確に「縮小期におけるグランドデザイン」というテーマで議論するぐらい、縮小を重要なテーマに位置づけたほうがよいのではないかと思います。また、集約型まちづくり、コンパクトシティの考え方は、災害が起きてから議論するのでは、遅いことが多いので、だからこそ、この基本的な考え方を先に定めるべきであると思います。
次に、労働移転の円滑化についてなのですが、参入、退出の妨げとなる制度があり、まずその部分を見直すべきではないかと思っています。長期雇用制度の在り方を変えなければ、本来は転職はしにくいというのが実態であると思いますし、また、補助金により企業の新陳代謝が進まなくなるような保護政策がなされていますが、それに対してM&Aを進みやすくする、円滑にする政策に変換すべきだと思っております。
いわゆる労働移転のテーマではありませんが、14ページの中で、これからの産業の移転の予測の中で、注1に、成長分野、「女性及び高齢者等の労働市場への参加が進展する場合」というキーワードがあります。こちらを進展させることが必然であり、ただし、それをするためには、今の社会保険制度の見直しも必要であるということも伝えるべきではないかと思います。第3号被保険者の在り方も見直していかなければ、これ以上の労働時間が増えることは期待できないのではないかと考えております。
また、労働生産性の部分なのですが、こちらも必要であるということを言われ続けているわけですが、実態としてはなかなか具体化していないまま、もう何年もたっているかと思います。これをどうやって具体化するのか、テーマを絞るべきではないかと思います。例えば、産業別に、指標化する仕組みをつくる。産業別の指標となる目標の目安をつくる、それ自体を、例えば企業の有価証券の記載義務にするなど、企業の成長性というものを評価するものにしていくことで、経済界を動かす。自治体についても、各自治体自体を生産性という指標で評価して、公表していくというような方法も必要なのではないかと思います。
また、DXについては、まさに必要なことなのですが、今、行政サービスというのは、各自治体、基本的には同じテーマを扱いながら、各自治体がDXを推進しシステム投資をするのは合理性がなく、国のほうで、統一したものを、合理的につくり上げてしまうほうが良いと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。私からは、労働市場改革、それから、産業政策、社会資本整備、地方財政と一言ずつ申し上げさせていただきたいと思います。
まず労働市場改革のところですが、15ページの辺りですが、この三位一体の改革メニュー、本当に大事であると思います。ただ、やはり主眼が既存の企業が対象、それから、既存の企業に今、所属している方が、働いている方が対象というところがあって、それだけではなくて、やはり新しく伸びてくる企業というのは大切にしたほうがよいのではないかなというふうに思っております。
というのは、最近の若い方々が就職されているところをいろいろ聞いていると、IT関係とか多いですが、そうした企業、小さいところもありますが、もう全然、もはや終身雇用なんか想定していないですよね。退職金なんかもう最初からない勤務体系、お給料の体系になっていますよとか、そうしたところに入っていく若い人たちも多いわけで、その中で実力を試したいと思ってやっていく。逆説的かもしれませんが、そうしたところの企業がこれから大きく成長していくことが日本経済全体として見たときの、やはり労働市場も変えていくことにつながるのではないかなというふうに思いますので、やはりそうした意味でも、企業の新陳代謝を阻害しない、新しく伸びてくる産業、新しいやり方で人を雇って、従業員に働いてもらって、やっていく企業を伸ばしていくことも考えるべきではないかというふうに思います。
次に、産業政策のところですが、やはりこれはどこの国で見ても、近年、やはり随分、重点を入れてくるようになってきているなというところで、日本も頑張ってというところであるとは思うのですが、やはり日本の場合には、この手の国の支援をだらだらとやってしまって、失敗につながっているという例が、日の丸半導体、国策半導体の失敗云々の話とかもありましたし、そこは十分に気をつける必要があるのではないのかなというふうに思っています。
先週も米国出張の御報告をしましたが、そのときはコロナ対策、なぜ時限で切って反発とか不満が出なかったかと聞いたときですね。訪問先、どこの方も皆様、こうした質問をすると、皆様、なぜそんなことを聞くの? というようなお顔をされたように私には見えました。やはりそれぐらい、期限が来たらもうやめるというのは、効果が出なかったらやめるというのは、ある意味、あの国では、アメリカでは当然なのですね。そうしたところは日本もきちんと見習って、だらだらやるようにならないようにやっていくべきであると思います。
その意味では、行政事業レビュー、何人かの委員の方が言及されましたが、8ページの辺りですが、やはり非常に期待されると思います。これまでであれば、何か一つの事業をやって、うまくいかないと、各府省が、手を替え品を替え、名前を変え、少し新しい要素を入れたりとかして、みんな巧妙に変えてくるのですね。そこをやはり連続して評価することができないので、この予算事業IDというのを付番してくださるというのは、ここは是非実効性を高める形でやっていただければ、大変期待したいというふうに思っております。
次に、社会資本整備ですが、34ページの辺りですが、このところ、数年、やはり災害が起こってから大規模にお金を投入して、元に復旧するのではなくて、もう災害自体に遭わないような形で、リスクを回避するような形でということで、いろいろ重点を移してやってきてくださっていると思います。本当にそれは進めていくべきであると思います。
34ページのところでは液状化の話が出ていますが、私も昨年度まで住宅金融支援機構の仕事をしていた関係で、そこで聞いた話ですが、今回の能登半島地震で、新潟で液状化が起きたと思います。これは実は30年前の新潟地震で、同じ場所で液状化が起きていたそうです。起きていたところにまた家を建ててしまったと。建ててしまったところで、また被害に遭ってしまった。やはりこうしたことが繰り返されることのないようにきちんと行政としてもいろいろ情報を本当に提示しながら、リスクの高いところにはみんなで住まないような形で、思い切ってすみかを移していくことも必要であると思いますし、そうした方向に促していくのが大事ではないかと思います。
最後に地方財政です。50ページ、51ページの辺りですが、本当に御指摘くださったとおりで、これだけ財政事情が厳しい中で、特に東京都に、法人事業税であると思いますが、集中し過ぎてしまっていると思います。それが51ページにお書きくださっているような、都立大学の授業料無償化までついに出てきたかという感じなのですが、その前から、こどもの医療費の無償化であるとか、あとそれから、高校の就学支援とかもそうなのですが、大体お金に余裕のある東京都が始めると、周辺の自治体だって、お金はないが、追随せざるを得なくなってしまうのですよね。そうやって、もう何か、本当に国がどこまで面倒を見るのかという範囲がどんどんずるずる広げるような方向になってきてしまったという現実がやはりあると思いますので、国全体の財政事情が厳しいことを考えれば、この地方税体系にとどまらず、本当に交付税の制度全体も含めて、どの税から例えば交付税に持ってくるのかとか、どの税を各自治体の自主財源に位置づけるのかということを含めて、きちんとした見直しを行っていくべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。御説明ありがとうございました。先ほどどなたかからもありましたが、今までいろいろ言ってきたことの反復、繰り返しというところもあるわけなのですが、建議に向けては是非、金融政策も、それから、リスクの顕在化なども含めて転換期であるということを、今までも転換期という言葉は使っていたのですが、そこに加えて、今やらないでいつやるのかということを強く言うような形、メッセージとして伝えられればと思っています。
その上で、いくつか個別ですが、まず成長について、14ページ目にある労働の円滑化について、実質賃金もそうですが、ユニコーン企業のGDPに対するランキング順位とかを見ると、やはりここでも、左側にあるようなイタリアと日本が突出して悪いということを考えると、やはりイノベーションのためにも労働の円滑化というのが重要であると考えています。
今年、今期、コロナ等の支援もゼロゼロ融資の返済等も含めて、粛々と終わっていきますので、中小企業支援も転換点ということで、メリハリのある支援で、人への補助ということで、企業の適切な新陳代謝を促すということを強調していければと思っています。
それから2点目、31ページ目の国土のグランドデザインなのですが、この作成について、非常に強く賛成するところでございます。期限を決めて、しっかりと進めるべきですし、ここにお示しいただいたような用地規制も踏み込んでやっていく必要があるかもしれませんし、それよりソフトな形で周知をするということであれば、リスクの見える化を、不動産会社、建設会社、保険会社等とタッグを組んでやっていくことが必要ではないかと思います。
そして、最後が教育のところなのですが、44ページ目、給与のメリハリということをいただきました。ただ、何人かの方の御指摘にもあったように、質の向上ということを念頭に置くと、どうしてもこの手当というのは時間当たりだったりとか役職に応じたものであって、努力や成果を上げることについてのインセンティブがなかなか使えないのではないかということで、もう少し質にフォーカスしたような、そうした給与体系も必要なのではないかと思います。
くわえて、少し大胆かもしれませんが、公立教員の方々の兼業、副業を限定的に認めるといったことも、全体としての給与、手取りの給与の充実ということもありますし、それから、視野を広げることにもなるということを考えますと、そうした形の考え方もあってもよいのではないかとも思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちらの会場に戻ります。
秋池委員、お願いします。
〔秋池委員〕3点ございまして、まず一つ目は、労働に関わるところです。生産性を高めていかなければいけないというのは、そのとおりであると思います。何の異論もございません。それぞれがその事業の競争環境にふさわしく、過剰供給があれば、それを適正化し、それに伴って、働く人が移動していくということが生産性に寄与します。また、生産性は、分母だけではなくて分子もございまして、適正な値づけをすることで、適正な価格、利益を得るということが必要ですが、これら、過剰供給を適正化することや、それに伴う労働移動や値付け、これは民でできることであると思います。一方で、例えば農水、農林水産業ですとか、公共サービスのような、どうしても生産性が低く見えてしまう産業という領域もあるわけで、当然ながらこれらの生産性を高めていくことも重要なのですが、「生産性の高い職場に円滑に移動」という、この14ページの表現が誤解を生まないようもう一工夫あってもよろしいのかと思いました。
それから、2点目、産業についてです。90年代まで、日本の半導体は世界市場を席巻するほど強かったものが、今は他国の技術の力を借りないと製造できなくなってしまったというのがございます。この理由は多々あるものの、半導体のサイクルに民間資金の調達がなじまなかったというところもあるのではないかと思います。ある種の産業は、各国ともに、国が支援をした上での競争になっている難しさがあるわけですが、それでも長期的な予見可能性が高まれば、民間の資金の調達もしやすくなりますし、人材もそこに自分の能力をかけようという人が集まってきやすくなります。民間資金を呼び込むためにも、継続的な支援で予見可能性を高めるということが必要になっています。
では、色々な産業ありますので何もかもというわけにはいきませんから、どの産業を、という取捨選択は必要になりますし、支援している中で効果を確認して、成果が出ないということであれば、またありようを考えるということも必要ですが、一年一年の成果によって支援をやめるというのも無駄になるというタイプの産業もありますので、長期的な支援が必要な産業については腰を据えて取り組む必要もあろうかと思っています。一方、そのためには、財源の議論も行う必要があります。
三つ目ですが、ODAについて、日本のODAは対象地域では感謝されていますが、このリターンがあったのかということについての測定は難しいと思います。その金額の適正さについては、今、議論が進んでいるというお話でしたが、当然ながらそこに民間の資金を呼び込む、これも昔からずっと言われていることではありますが、そのことも併せて考えていく必要があります。また、金額的なリターンということではなくて、日本は金額が少ない割には工夫をした取組で、ソリューションを提供しているというようなところがありますので、是非それをソフトパワーにつなげるようなことも併せて考えていただけるとよろしいと思いました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。各項目について手短にコメントします。
まず、財政の在り方についてです。今年、1月26日の閣議決定で、政府は「令和6年度の経済財政運営の基本的態度」として、「経済の再生が最優先である。経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組む」という考え方を示し、それに続けて、「データを活用したEBPMやPDCAの取組を促進し、ワイズスペンディングを徹底する」としています。
問題は、前段の経済再生最優先という掛け声の下に、引き続き安易な財政出動が行われて、従来から財審が指摘してきた、今回の資料では7ページに掲載されているような、優先順位付けやスクラップ・アンド・ビルド、そして、この閣議決定自体が言及しているEBPMやPDCAが後回しになるのではないかということです。
その意味で、今回、改めて、財政の在り方という項目を掲げて、PDCAや基金の見直しなど効果的な財政支出の必要性に言及しているのは、本当に妥当であると思いますが、財審としては、「あるべき財政を実現するための仕組みや枠組みづくりを進める」というところまで踏み込むべきだと思います。具体的には、前回も申し上げた3点です。
1点目は、信頼性が高く、客観、中立的な長期推計の必要性です。皆様から、人口減少によって日本社会や財政が長期的に悪化する可能性への言及がありますが、我々は長期的な先行きを希望的観測や政策目標などから離れて、クールに見据える必要があると思います。
2点目は、政策評価の在り方です。8ページの行政事業レビューシートの改善は多としますが、佐藤さんや横田さんがおっしゃっているように、まず第一には、事業単位の細かな評価もさることながら、むしろ必要なのはアウトカム目標を共有する施策・事業を集合体として、例えば、こども・子育て、成長戦略、感染症対策といった大きな政策ごとに、総合的、かつ、省庁横断的に評価する政策プログラム評価の仕組みをつくることです。実際、この財審の審議自体がそのような方向に向かっているのは望ましいことだと思っています。
第2には、國部さんもおっしゃっていましたが、府省自身による自己評価には限界があるので、客観的、独立的な立場からアウトカムを厳しく問い、必要な場合には政策取りやめを勧告するような機能を持つ機関をつくるべきです。
3点目は、中期財政計画ないしは中期財政フレームの策定ですが、これについては詳しくは触れません。
次に、成長については、2点申し上げます。
1点目、日本の潜在成長率の向上には、痛みを伴うにせよ、新陳代謝が不可欠です。今回、14ページ以降で触れられている三位一体の労働市場政策は、人への投資を通じた新陳代謝の促進につながる施策という意味で評価しますが、それと併せてなすべきことは、まだ多く残っている生産性の低いセクター、企業を保護し、新陳代謝を阻害するような政策をスクラップすることだと思います。補助金の在り方の見直しはその典型例だと思います。
2点目、産業政策に関しては、日本として将来性が見込める、あるいは強みが生かせる分野や産業への選択と集中が不可欠です。先ほどから話題になっていますが、半導体は、フレンドショアリングが進む中で、日本の復権に向けた基盤とチャンスがあると思いますが、例えば、GX経済移行債を財源として国産航空機の開発を行うと最近報道されていますが、本当に勝算があるのかは、厳しく問われるべきだと思います。財源があればやってよいという話ではありません。
また、先ほどから皆様もおっしゃっておりますが、23ページのジャン・ティロールの指摘のとおり、一定段階で市場に委ねるための「政府と市場の役割分担」の判断軸を明確に持つことも重要です。
最後に、地域については1点だけです。人口減少下での地方行政やインフラの維持に向けて、集約化やコンパクト化が求められるわけですが、20年、30年という長い時間軸で、グランドデザインを描いた上で、インセンティブだけではなく、規制的手法も明確に入れる必要があるということを我々としても提言すべきであると思います。これは、被災地についても例外ではないと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、田中委員、お願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。横串を刺すテーマ設定において、議論の論点、明確にいただいて、ありがとうございました。私からも3点、コメントさせてください。
EBPMに関しましては、佐藤委員や平野委員も今お話しされたように、類似の政策アウトカムをしっかり照らしてみるということが必要かなというふうに思っております。その上で、ロジックモデルの構築の研究等、注力されていますが、これを未来志向で、やはり政策の改善をいち早く行えるような体制を整えて多くの、政策が今、官民連携で動くこともありますので、ここには人と予算が投入される中で、政策の実行者それぞれの役割と評価を明確に設定しておくということで、評価がはっきり出せるのではないかと思います。そうしますと、後半にもありました民間と行政、組織がどのような分担と役割を責任を持っているかも見えてきて、今後の給与体系の在り方ですとか、メリハリのつけ方の検討も進むと期待です。
もう1点は、地域の行政デジタルの活用についてですが、このシステムの開発投資に関しては注目が集まっていますので、かなり精査もされていると思うのですが、各地で事業とかプロジェクトが実際に行われるという際のデジタル活用においては、必ずDX、システム構築とかアプリ開発が行われるわけで、これは、金額は大きくはないが、小さくはないというものが結構ありまして、ここも注視しているということが問われるのではないかというふうに思っています。
もう1点は、社会資本整備において、コンパクトなまちづくりに皆様も言及されていましたが、これはどうしても、成功例もありますが、行政の視点であるなということを住民の方々は思い、誰かに、今、全体最適に向けて持っていかれているかなのような感覚もどうしてもあるのかなというふうに思っておりました。ここで、今、流域治水という考えが出てきて、推進されていますが、これは河川中心に動く中で、主体は住民で、少し離れて住む川上の方、川下の方、中流のエリアの方とか、そうしたところの知り合いのことを思い浮かべて考えるということが少し流れとして出てきましたので、民間の組織も一緒になって、この流域治水の考え方で、まち、自分と他者の関係を構築するような主体を住民にということを際立たせて、震災が起きたところ、起きる予見のあるところ、たくさんありますので、そこで議論していくということができれば、これが有効になってくるかなと思います。
以上、よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。今回、成長と人口と地域がテーマということで、こうやって横串で議論するというのは非常に有意義だと思います。つまり、今後のそうした人口減少社会を踏まえて、総理が正念場とおっしゃっている経済の好循環をどう実現していくか。さらに持続可能な財政をどう実現していくか。そのために何が必要かというのを問われていると思いますが、財審の議論はどうしても緊縮財政一辺倒と受け取られがちなのですが、財政が悪くなって不安定になると、経済もやはり不安定になる。それと結局は、その成長も阻害されるということを改めて認識しておく必要があるなというふうに感じました。
各論で、産業政策と社会資本整備、1点ずつ手短に申し上げたいのですが、産業政策、最大の柱は半導体ということでしょうが、もともと日本の半導体産業というのは、かつて、それこそ世界1位だったと。これは別に、特に政府の力を借りなくても、世界首位ということを民間の力だけでやってのけたという実力があったはずなのです。それが日米半導体交渉とかを通じて、アメリカに、はっきり言うと、潰されたような形になって、アメリカは一旦、半導体産業を潰しておきながら、今度、ラピダスでまたIBMが絡んでくる。何かすごく身勝手な国だなと思いますが、そうしたことを言ってもしようがないのですが、いずれ、半導体に限らず、自動車でも、電機でも、日本の産業というのは、政府の力を借りないで、自らの創意工夫を生かして、世界に冠たる産業を築いてきました。民間の力を生かすというのが大事であると思います。もう時代は変わって、半導体も国家的な戦略物資になって、一定の公的支援を継続してやっていくということはやむを得ないのかもしれませんが、基本はやはり民間の力をいかに生かすか。資料でも挙げられていますように、過度な財政支援というのは、自由貿易とか市場競争の歪曲とか、あるいは世界経済の分断に繋がるという指摘が相次いでいるわけで、日本としては自由貿易とか多国間の協調というのは極めて重要なものなので、財政支援も一定の節度が必要であるというのはおっしゃるとおりであると思っていました。
それからまた、社会資本整備で短く1点だけですが、やはり能登半島地震です。これから大きな災害、自然災害は起こるでしょうし、能登の復興というのは、人口減少と高齢化が進む中での一つのモデルケースにもなり得るというふうに思っています。なかなか被災地を前に言いづらい状況にはありますが、全てを元に戻すというのはやはり現実的ではないというような認識を踏まえて、将来のまちづくりを見据えた復興というものを考えていく必要があるのではないかなという気がします。
そこで、資料の32ページですか。住民の方々の復興の在り方に関しては、住民の方々の意向を踏まえつつ、集約的なまちづくりやインフラ整備の在り方を含めて、十分な検討が必要と。これはこのとおりなのでしょうが、ある意味、矛盾する表現でもあるのです。住民の方々の意向を踏まえると、いつまでたっても集約的なまちづくりもインフラ整備もできないかもしれないという、こうした矛盾にもしかしたら直面するかもしれないので、ここの部分、春の建議で本当に盛り込まれるかどうか分かりませんが、ここの記述の仕方というのは、なかなか解のない問題かもしれませんが、十分に考えていく必要があるのかなという気がしました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕御説明ありがとうございます。私は、半導体支援と産業政策についてのみ言及したいと思うのですが、私も令和5年の補正予算で、TSMCに7,000億円余り出して、えっ、また出すの?言い値で出し過ぎじゃないの?というぐらい驚いたので。抑えたいという気持ちは分かるのですが、少し書きぶりを見ると、抑えたい気持ちが先に立ち過ぎて、いろんなことをねじ曲げて抑えようとしているのではないかという気もして、これは少し日本経済をよくしないのではないかなというふうに少し思いましたので、そこを申し上げたいと思います。
一つは、経済規模に対して突出した額であるということに関しては、私は日本にとって半導体の重要性というのは、ほかの国よりも大きいところがあって、一つはやはり製造業が屋台骨の国であるということで、半導体は必要。あとはエネルギー資源が限られていて、エネルギーを効率的に使う必要。温暖化対策も必要。これにはGXにはDXが必要で、半導体が必要。さらに、人口減少もあるし、もともと生産性も低いということで、この効率を高めるためにも、やはり半導体は必要ということで、非常に求められているものであると思うというのが1点です。
それと、熊本の例などを見ますと、半導体産業を誘致するということは地域経済の核になって、支援の規模は大きいのですが、この地域を盛り上げるという意味では、むしろ関連した政策を充実させて、経済効果を大きくするということが必要ではないかと。地方経済は疲弊していますので、日本経済、日本は6ブロックぐらいあるとすると、全国一つ一つに半導体を核とした未来の産業というのを有する重要性はあると思っています。
それと一番納得がいかなかったのは、分断という指摘なのですよね。これはラガルドさんの引用も、これも正しいかどうかは少し疑問なのですが、世界経済をブロック化して、供給不足になったらインフレになるというのは分かるのですが、そもそもブロック化しようと思ってサプライチェーンを強靱化しようとしているわけではなく、もともとはコロナのときに半導体が足りなくて、給湯器も作れないみたいになって困ったわけです。もう一つは中国の存在で、中国が今後、国家的な政策で半導体を安く作るようになって、シェアを高めて、それに対する我々の依存度が高くなったときに、経済的威圧のような手段で半導体が調達できないとなったら困るだろうというところで、経済安全保障として半導体政策というのは始まっているわけで、むしろ分断から、それに対応するために始まったというところを忘れてはいけないのではないかと思います。確かに自由経済、自由貿易を守るというのは、日本の金科玉条で大事なのですが、現状は中国も、また、アメリカも国家ぐるみで半導体を育成しようというときに、日本だけお行儀よくやってよいということでもないのではないかというのも思っています。
最後に、この半導体政策、成功しますかといろんな有識者に聞くと、駄目でしょうという答えが返ってくることもあるのですよ。なぜ駄目かと。それはやはり政府があれでしょう。担当者が2年で変わるでしょう。2年で変わると、政策も変わっていくのですよ。だから、事業予見性もないし、半導体は長年かけて育てないといけないのだが、今年はたまたま、丸々次長が物分かりがよくて、オーケー、予算出すよと言ってくれたが、来年の次長はそうではないかもしれないということでは駄目であると思うのですよね。そこが一番、日本の政策が駄目なところで、今回の書きぶりを読むと、今まで出したが、出し過ぎだから、これからは出さないようにするよというのがもう文面から読み取れて、民間企業も、これこそ事業の予見性がないという話であると思うのですよね。
確かに、私も最初は言いましたが、これは言い値で出しているのではないの?ぐらい、額を出していて、もちろん意味はあると思うのですが、やはりそれに関しては、皆様、おっしゃっているように、出したものがきちんと生かされているかというのは考えていって、かつ最後は、皆様おっしゃるように、民間の力で自立的にお金が出ていくような、そうしたふうな政策に育てていきたいと思いますし、そうしたようなお金の出し方をしていってもらいたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、本日の委員からの御発言は以上とさせていただきまして、時間は若干過ぎましたが、本日の議題は終了とさせていただきます。
この後、記者会見で、私から内容については紹介させていただきます。
次回は4月16日、来週の火曜日9時からの開催を予定しておりますので、よろしくお願いします。それでは、本日はこれで散会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
午前11時05分閉会