財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和6年4月4日(木)14:00~16:15
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
海外調査報告
財政総論
令和4年度国の財務書類(連結)について
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3.閉会
会長 |
十倉雅和 |
矢倉副大臣 瀬戸大臣政務官 進藤大臣政務官 新川主計局長 寺岡次長 前田次長 吉野次長 大沢総務課長 木村主計企画官 三原司計課長 西村法規課長 山本給与共済課長 横山調査課長 有利主計官 山岸主計官 小野主計官 佐久間主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 端本主計官 松本主計官 漆畑主計官 尾﨑主計官 後藤主計官 小野寺主計監査官 石田予算執行企画室長 西尾主計企画官 小田切公会計室長 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 角和夫 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 平野信行 堀真奈美 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午後2時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、全員おそろいですので、これから会議を始めたいと思いますが、冒頭カメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。それではお願いします。
(報道カメラ 入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、矢倉副大臣、そして進藤大臣政務官にお越しいただいております。どうもありがとうございます。また、瀬戸大臣政務官も後ほどお越しいただく予定となっております。
本日は、「海外調査報告」、「財政総論」、「令和4年度の国の財務書類(連結)について」、この三つを議題としております。
それでは、そろそろ報道関係の方、御退出をお願いします。
(報道カメラ 退室)
〔増田分科会長代理〕続きまして、十倉会長より一言御挨拶を頂戴したいと思います。では、よろしくお願いします。
〔十倉分科会長〕ありがとうございます。会長の十倉でございます。
本日も、オンライン出席の方も含めまして、委員の皆様には、御多忙の中、御出席をいただき誠にありがとうございます。
先般の秋の財審では、皆様のおかげをもちまして、令和6年度予算の編成等に関する建議を取りまとめることができました。重ねて御礼申し上げます。
今年の春季労使交渉では、昨年を大きく上回る賃金引上げの動きが見られ、日銀による大規模緩和の見直しがなされるなど、我が国経済は新しい一歩を踏み出しております。一方で、我が国が抱えます人口減少・少子高齢化、そして資源を持たない島国であるといった、この二つの大きな制約の下で、この財審でも議論がございましたように、フューチャーデザイン、我が国の新しい未来社会をどうデザインしていくかということが求められています。
こうした中にありまして、財政の健全化は非常に重要であり、いわゆる金利のある世界が現実のものとなりつつある中、利払費の増大も念頭に置きながら、責任ある財政運営を行うことが重要となります。また、歳出構造の平時化、重要政策に係る安定財源の確保など、歳出・歳入両面での改革に着実に取り組むことの重要性が一層増してきております。この春の財審におきましても、皆様方の活発な御議論を通じまして、意義深い建議につなげていきたいと存じます。
第1回目となる本日は、海外調査報告、財政総論、令和4年度の国の財務書類について、率直な御意見を頂ければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔増田分科会長代理〕会長、どうもありがとうございました。
それでは、まず海外調査報告について、調査に参加された委員の方々から説明をお願いします。調査を実施した英国・EU・ドイツ班、それと米国班、各班7分程度で発表していただきたいと思います。
まず英国・EU・ドイツについて、小黒委員からお願いをいたします。
〔小黒委員〕それでは、英国・EU・ドイツ出張について御報告させていただきます。
まず、資料の2ページ目でございますが、欧州調査総論という形になってございます。我々、1月28日から2月3日にかけまして、ロンドン、ブリュッセル、ベルリンを訪れ、各国政府職員やEU本部職員、民間シンクタンクや市場関係者などと面会を行い、お話を伺ってまいりました。
主な報告は3点ございます。
まず1点目でございますが、先ほど十倉会長からもお話がありましたように、金利の上昇やインフレによって欧州各国でも財政が逼迫している中でも、英国、それからドイツとも、財政健全化に向けた様々な取組が実施されているほか、後述のとおり、財政規律に沿った財政運営が行われているというふうに感じました。
それから、2点目でございますが、財政規律を維持するための枠組みが整備されており、それが財政への信認を確保する上で重要な役割を果たしているということを確認いたしました。例えば英国では、財政目標の達成を前提とした新たな支出計画の策定が求められており、ドイツでは、平時の財政赤字を抑制することで、財政バッファーを再構築するという仕組みが整備されておりました。
それから3点目ですが、EUの財政ルールの見直しの中で、透明性が高い財政ガバナンスの枠組みを構築し、財政規律の確保と成長のための投資を両立させることを目指しているということも確認いたしました。
続きまして、詳細に各国の状況を御報告いたします。
4ページ目を御覧ください。まず、英国についてです。過去3年間、英国は、先進国の中でも物価・金利が大きく上昇し、インフレ連動債などが多いこともあり、利払費対GDP比が大きく上昇しました。こうした状況の中で、計画に沿った歳出の実質的な伸びの抑制、エネルギー補助金の廃止・縮小といった歳出抑制策を着実に実施してきました。
こうした取組の結果、財政赤字は2021年度以降着実に減少しており、5年後までに財政赤字対GDP比3%、純債務残高対GDP比の減少との財政健全化目標が達成される見込みとなってございます。
次に5ページ目です。歳出抑制の取組を行う中で、経済成長に向けた施策も実施しています。戦略分野への投資や、企業向け投資優遇税制のほか、就業支援プログラムの拡充や無料保育の提供により、労働参加率向上のための取組が講じられているということでございました。ヒアリング先からは、予算の規模だけではなく、施策の成果に注目すべき、新たな歳出ニーズは税収で賄うべきといった、財政健全化の必要性についての指摘も聞かれました。
次に6ページ目です。英国では、政府が財政政策を策定する際、独立財政機関である、OBR(予算責任庁)が財政目標の達成可能性を評価しており、この目標達成を前提として新たな支出計画を策定することが、財政への信認を確保する上で重要な役割を果たしております。この点はいわゆるトラス・ショックで明らかになったことは、皆様方御存じのとおりです。
一昨年の9月、前トラス政権は、大規模な減税など、拡張的な財政政策を盛り込んだ成長戦略を公表しましたが、OBRによる財政見通しが示されなかったことが市場から問題視され、金利高、それからポンド安を招きました。一方で、昨年11月に現スナク政権が、同じく財政負担が生じる秋の財政計画を発表しましたが、OBRによる財政目標達成見込みも併せて示されたことで、市場に特段の混乱は生じませんでした。
次にEUですが、8ページになります。
EUでは、2020年から財政ルールの見直し議論が行われてきましたが、昨年12月に見直し案について大筋合意がなされました。財政規律の基本原則である財政収支対GDP比3%以内、債務残高対GDP比60%以下は堅持しつつ、いくつか変更が加えられております。
新たなルールの下では、加盟国が中長期財政構造計画を策定し、この計画に基づいて、加盟国の予算、それから中期財政運営をEUがサーベイランスすることで、加盟国に財政規律を遵守させる仕組みとなっております。このサーベイランスの基本的なベンチマークとして、従来の構造的財政収支に代えて、政府がよりコントロールしやすい指標、いわゆるこれは歳出から利払費を除く純支出が用いられることになります。また、EUの優先課題であるグリーン分野などでの改革や投資を行う際は、より長期の財政調整期間を認めており、財政規律の確保と成長のための投資の両立を目指していることが御確認いただけると思います。
また、一律で適用されていた債務削減ペースを、債務の超過度合いによって2段階のペースで削減する、平時における財政バッファーの構築を目指す、足もとの金利高を踏まえるなどの見直しも行われてございます。
それから、9ページ、10ページ目ですが、これは新たな財政ルールの詳細について記載したものでございますので、適宜御参照いただければと思います。
飛びまして、11ページでございます。こちらでは欧州委員会での主なヒアリング内容を記載してございます。加盟国のオーナーシップを高めることや、強力過ぎて発動できなかった制裁を現実的な内容に変更することなど、今回のルールの見直しにおけるポイントのほか、EU加盟各国間での財政運営スタンスのばらつきが拡大しており、それに対しEUが苦労している点も意見として聞くことができたと思います。
それから13ページ目、これはドイツでございますが、ドイツでは2021年補正予算において、コロナ対策予算を気候変革基金に転用し、使用しておりましたが、この予算編成について昨年11月、連邦裁判所が違憲判決を下したことで、予算に穴があいてしまう大きな問題が生じたこと、これは皆様方御存じのとおりであると思います。
違憲判決の焦点となったのは、いわゆる債務ブレーキと呼ばれるドイツの財政ルールです。ドイツでは憲法により、御承知のとおり、連邦政府は構造的財政赤字対GDP比0.35%の基準までしか公債発行できないということになっております。コロナなどへの対応のため2020年から、非常事態として債務ブレーキを一時停止し、基準を上回る公債を発行し、緊急的な支出の財源としておりましたが、今回の予算の転用が、この緊急的な支出はそれが承認された目的で、当該年度に使用されなければならないという憲法の要請に反するものとして、違憲判決になりました。判決の趣旨を踏まえ、進行中の2023年予算の執行を一部凍結し、23年補正予算を急遽編成し、審議中の24年予算も修正措置を行ったということを確認してございます。
それから、14ページ目です。今回の違憲判決は、ドイツの財政運営に大きな混乱をもたらしたということもヒアリングで確認してございます。連立政権を組む与党の一部や経済諮問委員会から見直しの意見が出てきておりますが、財政規律の要として機能してきたこの債務ブレーキに対しては、その規律の緩和に対して、世論調査で半数以上が否定的な回答をするといったこと、こうしたことなどから、国民からは引き続き根強い支持が見受けられます。
次に15ページ目になります。コロナ禍での危機対応モードから平時モードに戻る中で、ドイツにおいても足もとの金利上昇や債務残高の増大を受けて利払費が急増しており、政府も非常に高い危機感を持って対応しているということも伺いました。
こうした中で、先ほど御紹介した債務ブレーキが平時における財政規律保持に貢献している点を、今回のヒアリングで特に確認したということでございます。債務ブレーキを停止し、公債発行による借入れを増やした場合、その分将来の借入額が削減される仕組みとなっており、2020年から2023年に債務ブレーキを停止した影響で、これは例えばですが、2028年は、本来可能であった借入額から、年間92億ユーロ、日本円に換算しますと大体1.5兆円が削減されるということも聞いております。このように、ドイツでは平時において財政の健全性をいち早く回復し、財政バッファーを再構築する仕組みが備わっている点を確認することができました。
それから16ページ目でございますが、ドイツでは2024年予算で、歳出規模をコロナ期前のトレンドに戻すために、明確な優先順位を設定してございます。また、2024年予算においては、投資が過去最高水準とされておりますが、リントナー財務大臣も補助金を借金で支払うだけの提案には反対しており、民間投資を引き起こし、競争力を高めるようなパッケージが必要と発言するなど、成長に向けた取組にも力を入れているということも聞きました。
まとめでございますが、17ページを御覧いただければ分かりますが、繰り返しになるので説明は割愛させていただきます。
報告は以上になります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、米国について、河村委員から御説明お願いします。
〔河村委員〕それでは、米国出張について御報告いたします。
大槻委員、田中委員、それから私の3名で、2月19日から24日にかけてワシントンD.C.とニューヨークを訪問しまして、政府関係者や議会関係者の方々、民間シンクタンクや市場関係者の方々と面会を行いまして、お話を伺ってまいりました。
主な報告としては3点ございます。2ページのところでございます。
1点目は、米国の財政状況についてでございます。金利上昇等による利払費の拡大や、高齢化に伴う社会保障費の増加により、財政赤字は拡大見通しでありまして、市場関係者からも財政の持続可能性に対する懸念の声が聞かれております。
2点目は、米国の財政規律についてです。ペイ・アズ・ユー・ゴー原則ですとか、それから債務上限といった財政規律は、財政健全化への意識を高める役割を果たしている一方、議会において政治的な対立の交渉材料になっているという課題がありまして、現地の関係者は強い問題意識を持っておられました。こうした中、民間の団体による啓蒙活動などによって、国民ですとか議会における財政健全化に向けた意識を醸成する動きというのも見られたところでございます。
3点目は、新たな財政需要への対応についてです。バイデン政権は、インフラ、それから半導体、気候変動対策への大規模な投資を実施しておりますが、現地の関係者からは、これらの取組が経済ですとか財政に与えた影響を判断するのは時期尚早という見方が示されておりました。
続いて、詳細に米国の状況について御報告をいたします。4ページをお願いいたします。
まず、米国の経済状況です。米国の経済は堅調に推移しておりまして、一部の関係者からは、その一因として、移民の急増を背景とした労働力供給の増加も考えられるといった声も聞かれておりました。失業率は低位で安定していまして、インフレ率も鈍化傾向が続いておりますので、アメリカ経済というのはソフトランディングに向かっているという指摘が多く聞かれたところでございました。
次のページ、5ページをお願いいたします。好調な経済状況とは対照的に、連邦政府の財政状況は悪化をしております。特に政府債務の増大、金利上昇による利払費の増大というのが、もう本当に顕著です。議会予算局が今年の2月に公表した最新の推計では、財政赤字が中長期的に拡大し、債務残高対GDP比も100%を上回って拡大していく見通しが示されておりまして、財政の持続可能性が困難になってきているとか、債務が増加すればクレジットリスクの分、金利が上昇する可能性があるといった懸念も聞かれました。
次の6ページをお願いいたします。これを歳出歳入別に見てみますと、コロナ禍の例外的な支出水準からはもう脱却したものの、今後、中期的に歳出は年々拡大する見通しとなっております。他方で歳入のほうは、過去のトレンド並みの水準で推移する見通しになっていまして、歳出と歳入差が時間の経過につれて年々開いているということを指摘する声が聞かれました。
歳出の項目別で見ますと、国防費ですとか公共事業費といった裁量的な支出、これは対GDP比で低下傾向にございまして、今後10年間で過去最低の水準となる一方、歳出全体の6割以上を占めております義務的な支出や利払費の割合が年々増加していく見通しとなっております。
次の7ページをお願いいたします。年々増加する義務的支出のうち、特に高齢化を背景として社会保障、年金とか、それから高齢者向けの公的医療保険であるメディケアの増加が顕著です。今後も一層増加する見通しとなっております。
また、足もとの金利上昇を背景に、2021年以降、利払費が急増しております。CBO、議会予算局の推計によれば、2024年度、今年度には国防費を上回る見通しということになっておりまして、ヒアリングでも、この点が国民的な関心事項であるとの声が聞かれました。
次の8ページをお願いいたします。米国では新型コロナ対策として、2020年3月から1年間で累次の経済対策を策定しまして、連邦政府の財政赤字も2021年度に大幅に拡大しましたが、22年度には対策を大幅に縮小、それから減少させまして、財政赤字も縮小しました。ヒアリングでは、対策はあらかじめ期限が法定されていて、延期に向けた動きとか政治的な反発というのはなかったという声が聞かれまして、大変印象的でした。
次の9ページをお願いいたします。コロナ対策の縮小後、バイデン政権下では、公共インフラ、半導体、気候変動対策への投資による潜在成長率の拡大、それから不平等の是正等を目的としまして、超党派インフラ法、それからCHIPS・科学法、インフレ抑制法が制定されました。こうした立法措置による財政ですとか経済への影響について、現地の関係者からは、これらの投資による効果ですとか影響というのは長期的に見ていく必要があると、現時点での判断というのは時期尚早という声が多く聞かれておりました。
では、10ページ、お願いいたします。米国では日本と異なって、実際の予算編成権というのは議会にございます。米国の2024会計年度の予算審議が長期にわたって停滞するなど、党派対立が議会の予算編成プロセスに大きな影響を及ぼしているという点への懸念が多く聞かれたところでございました。
11ページ、お願いいたします。こうした中で米国の財政規律に目を向けますと、ペイアズユーゴー原則ですとか債務上限などの財政規律を法律レベルで定めておりまして、関係者からは、こうした規律がなければ財政状況はより悪化していたとか、議会における財政規律の確保に貢献しているとの声が聞かれました。他方で、こうした規律が議会によっては裁量的に運用されておりまして、党派対立の交渉手段として使われているといった課題も聞かれたところでありました。
次の12ページ、お願いいたします。こうした財政ガバナンスの低下ですとか、政治的な対立などを背景に、昨年、大手信用格付機関が米国債の格下げ、それから見通しの引下げを行いました。現地の関係者からは、こうした動きによる財政運営ですとか市場への影響は限定的という見方もあったのですが、その一方で、財政健全化の議論の中で、警笛としての役割を果たすとか、このまま債務増加が続けば転換点がどこで訪れるか分からないと指摘するような声も聞かれたところでありました。
13ページ、お願いいたします。米国では予算編成権が議会にございまして、議会予算局、CBO、コングレショナル・バジェット・オフィスが、財政・予算の詳細な見通しですとか分析を公表いたしております。このCBOの中立的で詳細な推計について、関係者からの信頼は大変厚いです。議会での議論ですとか、市場関係者による独自推計のベースとなっているとか、今日の政治的な分裂の下では、こうした中立的な分析が民主主義の根幹を担っているといった、評価する声も聞かれたところでありました。
次の14ページ、お願いいたします。また、今回のヒアリングでは、米国においては民間のシンクタンクが、経済界のリーダーとか有力議員に対して直接働きかけることを通じて啓蒙活動を行っておりまして、国民ですとか議会における財政健全化への理解を醸成しているという点も明らかになりました。こうした取組などもございまして、一部議員の働きかけによって、超党派で、財政健全化に取り組むための公聴会とか、それから委員会の設置に向けた動きという、この14ページに書いてありますが、こうした動きも見られるところでございます。
では、次に16ページ、IMFのところをお願いいたします。
IMFからは、諸外国における近年の財政運営ですとか財政規律などについてヒアリングを行いました。左上の図、グラフですが、欧米では2022年には既にコロナ対策を縮小しまして、世界の4分の3の国では財政政策と金融政策の両方を引締めに転じている――これは右上の図です――中で、日本の財政政策というのが、客観的に見て緩和的であるというような説明がございました。
17ページ、お願いいたします。日本の今後の財政運営に関しては、財政バッファーを再構築して、債務持続可能性を確保するためには、歳出と歳入双方の措置で下支えされた財政再建が必要であるという点がIMFから強調されたところでございました。
最後に18ページにまとめを掲載しております。繰り返しになりますので、説明は割愛させていただきます。
御報告、以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、せっかくの機会でもありますので、今御報告いただきました両委員以外の参加者からも一言ずつ感想を頂ければと思います。権丈委員、大槻委員、田中委員の順番で御発言いただきますので、まず初めに権丈委員からお願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。私はヨーロッパに行ってまいりました。小黒委員から御説明いただいたとおり、今回訪問したイギリス、ドイツとも、制度化された財政規律が効果的に機能しているという印象を強く持ちました。また、私の関心分野になりますが、例えばイギリスにおいては、無償保育の拡大により、乳幼児を持つ親の就労を促すなど、より中長期的な視点に立った就労促進策を実施しており、一時的なカンフル剤的な財政出動ではなく、持続的な経済成長に向けた実効性のある取組を実施しているという点が印象的でございました。ありがとうございます。
〔大槻委員〕大槻です。
〔増田分科会長代理〕お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。アメリカのほう行かせていただきまして、河村さんおっしゃったとおりなのですが、正直言って、6年前に行ったときよりも、国民の声とか議会の声などで、財政に対する関心が少し下がっているような印象を受けました。恐らくコロナ禍で財政を拡張してしまって、それでも結構大丈夫であるということで、意識が少し低くなってしまったのかなと思った次第です。
一方で、コロナ補助金的なものは、さっき河村さんからも説明があったように、期限だから期限で打ち切るのは当たり前ということで、最初、「延長の声はなかったのか」とかと言っても、英語が悪いのかと思うくらい通じなくて、「なぜ?期限なのだからそこで打ち切るだろう」という感じでございました。それは、やはり日本にそうしたデフォルトで、期限では打ち切るのであるということがない限り、しっかりと我々財審でも、過度な楽観等に対してのアンチテーゼは言っていくべきだなと思った次第です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、どうぞ。
〔田中委員〕田中でございます。まず、米国においてペイアズユーゴー原則や債務上限といった米国の財政規律は、いろいろ課題はあるものの、もしこれがなければ、より財政状況が悪化していたというふうな意見も数々聞かれまして、財政規律のアンカーとして重要な役割を果たしていると改めて認識をしましたし、多様な主体の方が明確に問題意識を持ち続けて働きかけを続けている姿勢や熱意が印象的でございました。
また、重ねてになりますが、コロナ対応における臨時の財政出動は、期限どおりに失効したという説明が複数の方からありまして、こうした日米の状況の違いに私も驚くとともに、やはり臨時の対応の際は、対策を始める前にきちんと終期を設定して周知をしておくことの重要性を改めて実感したことでございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは続きまして、横山調査課長から、財政総論について説明をお願いします。
〔横山調査課長〕資料3、財政総論について御説明いたします。
1ページ、まず人口・経済についてです。
2ページ、我が国の人口は、欧米やアジアの主要国と比較して、かなりのペースで減少していく見通しになっております。日本の人口は世界でおおむね10位前後となっていますが、国連の推計によれば、2070年には26位まで低下する見通しとなっております。
3ページ、高齢者比率については、足もとではやや伸び率が鈍化していますが、社人研の中位推計によれば、2030年前後より再び大きく増加し、その後も増加していく見通しとなっています。一方、生産年齢人口の比率は、足もとでおおむね横ばいとなっていますが、こちらも2030年前後から再び大きく減少し、その後も低下していく見通しとなっております。
4ページ、秋の財審でも示しましたが、就業者数の伸びは、足もとでは横ばいとなっています。潜在成長率において、労働は今後マイナスに寄与することが想定されます。このような今後の人口動態や就業者数の変化を見据えながら、中長期的な経済・財政運営を考えていく必要があると思います。
続きまして、金利・物価、格付等について御説明いたします。
6ページ、御承知のとおり、主要先進国は、コロナ禍以降の物価高に対応するため、政策金利を段階的に引き上げました。こうした対応の結果、主要先進国において一時は8%を超えた物価上昇率は、足もとで3~4%程度で推移しています。
7ページ、いわゆるコアコアの消費者物価の推移を見ますと、消費税率引上げのタイミングを除きますと、物価上昇率が3%を超える水準まで上昇したのは1990年代前半以来となっております。10年債金利は、一昨年頃まではおおむね0%近くで推移していましたが、昨年の夏以降は、1%をやや下回る水準で推移しております。引き続き、金利の動向は注視していく必要がございます。
8ページ、財投債など含めまして、国債発行総額の推移を見たものです。令和6年度の国債発行額は182兆円となっており、コロナ禍直後の水準に比べれば減少していますが、コロナ禍直前の令和元年度と比較しますと、おおむね30兆円程度増加している状況になっております。
9ページ、カレンダーベースの国債の市中発行額を見ますと、コロナ禍直後は短期債の比率が大きく上昇しましたが、その後は短期債の発行額を縮小し、相対的に中長期債・超長期債の割合を増加させたため、国債の平均償還年限はコロナ前の状況に戻りつつあります。
10ページ、国債の保有者別割合の推移を見たものです。2013年の量的・質的金融緩和の導入以降、日本銀行の保有割合が上昇する一方で、銀行等の割合が減少してきました。先月には金融政策決定会合において、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融緩和の見直しを行いました。こうした状況の中で、今後とも国債市場において、借換債を含めて国債を安定的に発行していくために、財政に対する市場の信認を引き続き維持していくことが必要と考えております。
11ページ、日本国債の格付の推移を見たものです。日本国債の格付は、消費税率引上げの延期などを契機に主要格付会社が格下げを行った後、シングルA+からシングルAの水準で維持されています。
12ページ、例えばアジア諸国と日本の国債の格付を比較いたしますと、日本はおおむね中国と同程度、韓国や台湾をやや下回る格付となっているところでございます。
13ページ、格付の評価項目について、各社資料に基づき整理したものです。格付各社は、経済成長率や一人当たりGDPなどの経済の状況、立法・行政の質といったガバナンスの状況、債務残高や利払費の規模などの財政状況などについて、各社の定める手法に基づき評価を行い、これをベースにソブリン格付を決定してございます。
14ページ、主要格付会社の日本に対する見方を見ますと、経済成長や財政健全化が継続的に進展する場合などにおいて格上げの可能性があるとされる一方で、経済の低迷、高齢化への不十分な対応、更なる財政悪化が見込まれる場合などにおいて、格下げの可能性があるとされています。
15ページ、日本に所在する民間企業の格付の推移について、一例としてS&P社のものを見たものです。例えば、2011年に日本国債がダブルAからダブルAマイナスに格下げされましたが、この前後において、ダブルAの会社数が22社から11社に半減しています。2015年の日本国債の格下げの時点でも同様に、ダブルAマイナスの会社数が大きく減少しておりまして、いわゆるソブリンシーリングの状況が確認できます。民間企業の格付が引き下げられると、当該企業の資金調達コストが上昇するおそれがございます。
続きまして、財政の状況と今後の対応について御説明いたします。
17ページ、主な財政健全化指標の推移を見たものでございます。骨太2021においては、2025年度の国・地方のPBの黒字化を目指すこと、同時に、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すこと、それから2022年度から24年度までの3年間について、それまでと同様の歳出改革の取組を継続することが定められております。
18ページ、各国の債務残高対GDP比について、IMFのデータに基づき、1900年以降の推移を見たものです。日本ではバブル崩壊以降、度重なる経済危機や災害などへの対応に加えて、そうした危機後も歳出構造の平時化に時間を要した結果、債務残高対GDP比が一貫して増加をしております。この結果、足もとの債務残高対GDP比は、第2次世界大戦直後のイギリスの水準に匹敵するレベルにまで増加をしております。
19ページ、国・地方のプライマリーバランスは、1992年度以降、一貫して赤字となっています。内閣府の中長期試算によれば、成長実現ケースの場合、歳出改革努力を継続すれば2025年度のPB黒字化が視野に入る状況となっておりますが、その実現は楽観視できる状況にはないと考えております。
20ページ、各国の債務残高対GDP比の伸びを、PB要因と、成長率や金利などPB以外の要因に分解いたしますと、債務残高対GDP比の増減要因のかなりの部分はPBによって説明可能となります。債務残高対GDP比を今後安定的に引き下げていくためには、PBの改善が重要でございます。そのためには、歳出改革の取組を継続するとともに、歳出構造の平時化を図っていく必要があると考えております。
21ページ、先日の財審で御説明した後年度影響試算の考え方に基づきまして、令和7年度以降、金利が1%上昇した場合の利払費の増加幅を機械的に延伸したものでございます。利払費は段階的に増加する姿となってございます。
22ページ、金利と利払費の関係をイメージ化したものでございます。金利が上昇した場合、新たに償還期限が到来した低い金利の国債が、高い金利の国債に順次置き換わっていくため、利払費は段階的に増加することになります。このため、金利が上昇したとしても、当面は平年度化した際の利払費よりも低い水準で済むということになりますが、これはいわば期間のボーナスにすぎないという点は留意しておく必要があると考えております。
23ページ、コロナ前の2020年1月の中長期試算では、公債等残高対GDP比は、成長実現ケースにおいて将来的に安定的に減少し、ベースラインケースにおいても、例えば2020年度には180%台になるという見通しが示されておりました。しかし、実際には新型コロナウイルスの発生等に伴う対応などにより、結果として2022年度に211%を超える水準に達しております。今後も有事が発生することは十分想定され、そうした中にあっても財政に対する信認を確保しながら、躊躇無く財政措置を講じることができるよう、債務残高対GDP比を安定的に引き下げることによって財政余力を確保し、いわば「財政の強靱化」を進めていく必要があります。
24ページ、なお足もとも債務残高対GDP比の水準は、諸外国と比べて突出して高い水準にあるということは留意しておく必要がございます。
25ページ、最後に、EUにおける財政ルールの見直しの方向性について御紹介いたします。先ほども小黒委員から御説明のあったとおり、EUでは2020年より財政ルールの見直しの議論を行い、昨年12月にEU財務相会合で見直し案について合意がなされています。今後、EU理事会と欧州議会の最終承認を経て、新ルールが適用される見通しとなっております。具体的には、従来の財政規律の基本原則は堅持した上で、政府がコントロール可能な純支出の改善を基本的なベンチマークとするものであり、その範囲については、日本の「歳出の目安」の対象であるPB対象経費とおおむね同じようなものになっているところでございます。
私からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕神子田さん、御退出の時間のようですが、ここまでのところで何かございましたら、手短にお願いいたします。
〔神子田委員〕少し勝手を申し上げて申し訳ないのですが、退室しますので。
まず、海外調査の御報告ありがとうございました。行っていないのに、行ったかのように、非常によく分かりました。
大槻委員が期限の話を言われたのですが、なるほどなと思って、そもそも日本は期限を守る前に、期限決めないことが多くて、防衛力強化のための財源にしても所得税のほう、いつからやるというのを決めないままに、これ、いつからなのだろうという。まず決めるということがその前に大事なのかなというのを一つ思いましたし、特にヨーロッパでは、財政健全性を守るという政治的な意思と、それに対する国民の理解というのがあるのだなというのを改めて思いました。
翻って現在のトピック的なことで言いますと、子育て支援のための新たに徴収する支援金が幾らになるかと。500円とか800円とかいう話があって、それに対する実質負担ゼロというのが本当かどうかということが問われていると、そうした記事を目にするのですが、私は、実質負担ゼロというのはあり得るかと思うのですが、問題は、実質負担ゼロというよりも、これは必要だから負担をお願いしますというふうに国民に理解を求めていくことが大事なのではないか。
かつて子育て財源のときにこども保険というのを提唱した若手の有望な政治家がいて、そのときに記者会見とかで、それは税でやったらよいのではないですかというふうに質問が出るわけですが、そうするとその政治家は、いや、あなたたちは政治の現実を知らないと、税を上げるのがいかに難しいかということです。それは私たちも分かっているのですが、国民としては、政治家であるならば言葉を尽くして国民に理解を求めて、その現実を変えてもらいたいというふうに思うのです。
今年、デフレからインフレへと、金利のある世界と、いろいろと転換点を迎えているので、是非財政の観点からも、これまでの縮み志向を脱して、前向き志向で、そのためには給付もするが負担も必要であると、そうしたのを正面から問えるような年にしていっていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、説明がまだ残っていますので、小田切公会計室長から、簡潔に説明をお願いします。
〔小田切公会計室長〕主計局公会計室長の小田切でございます。国の財務状況を表す書類の一つとして、国の財務書類があります。これは毎年度、財政制度分科会法制・公会計部会で御審議いただいておりまして、ここでは連結ベースの国の財務書類の内容を御説明いたします。
1ページを御覧ください。このページでは、国の財務書類がどのようなものかを記載しております。国の財務書類の特色としましては、一般会計、特別会計を合算したものであること、決算数値であること、発生主義ベースの金額であることなどが挙げられます。
主な書類として、貸借対照表、業務費用計算書、資産・負債差額増減計算書が作成されており、これらの書類では、企業会計の考え方や手法に準拠し、引当金の計上、期末評価替えの実施、減価償却費の計上などを行っております。また、国の財務書類に加え、独立行政法人などの連結対象法人を含めた連結単位での財務状況を表す連結財務書類を作成しています。
続いて、2ページを御覧ください。令和4年度の国の財務書類(連結)の概要でございます。令和4年度の財政運営の結果を表す書類が、2ページ下の各書類になります。
まず、フローの状況です。業務費用に関しては、補助金・交付金等について、価格高騰対策に関する費用が増加した一方で、新型コロナウイルス感染症対策に関する費用が減少したことなどにより、業務費用合計は4.5兆円減少しました。財源に関しては、租税等収入が増加した一方、連結対象法人の収益が減少したことなどにより、財源合計は令和3年度と同水準となりました。この結果、財源から業務費用を差し引いて生じた超過費用、企業会計で例えると赤字決算に相当する額は、令和3年度より4.5兆円改善し、マイナス23.8兆円となりました。
次に、ストックの状況です。貸借対照表において、有価証券等が増加したことなどにより、資産合計が19.9兆円増加し、公債残高の増加等により負債合計が30.1兆円増加したため、資産と負債の差額である資産・負債差額、企業会計で例えると債務超過額に相当する額は、令和3年度末より10.2兆円悪化し、マイナス581.8兆円となりました。また、円安の進行により、外貨証券等から18.4兆円の為替換算差額が生じたことなどから、超過費用がマイナス23.8兆円であるのに対して、資産・負債差額の悪化は10.2兆円にとどまっています。
3ページを御覧ください。財務書類の主な項目の増減の説明になります。
まず、資産の主な増減要因としては、有価証券について、年金積立金管理運用独立行政法人、いわゆるGPIFの運用資産が増加したことなどにより、有価証券は全体として9.3兆円増加しました。
次に、負債の主な増減要因ですが、国のフロー、つまり財源引く業務費用は超過費用となっており、費用の超過分は特例国債の発行によって賄っているため、公債残高が29.8兆円増加しています。
資産・負債差額は連結において、連結対象法人の純資産120兆円が加算されることにより、国と比較して資産・負債差額は改善されますが、その残高はマイナス581.8兆円と、依然としてマイナスの状態にあることに変わりありません。
次に、業務費用の主な増減要因ですが、ガソリンや電気、ガス料金などの価格高騰対策にかかる費用が増加した一方で、雇用調整助成金などの新型コロナウイルス感染症対策にかかる費用が減少した結果、業務費用合計は4.5兆円減少しました。
財源の主な増減要因としては、国の租税等収入や社会保険料が増加した一方、GPIFの資産運用益が減少したことなどにより、財源合計は令和3年度と同水準となっております。
4ページ及び5ページは、参考資料として各科目の内容を説明しているものですので、御説明は省略させていただきます。
6ページは、ストックとフローの経年推移を記載しております。左側のストックについて、緑色の資産・負債差額は、過去からマイナスの幅が拡大傾向にあります。右側のフローも、赤色の超過費用が毎年継続して発生している状況でございます。
説明としては以上になります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は、御欠席の広瀬委員、安永委員、そしてオンラインで御参加の芳野委員から意見書を提出していただいております。端末に格納しておりますので、お目通しいただければと思います。
それでは、これ以降、御意見ないし御質問等頂戴いたしますが、いつもどおり、会場から5名、それからオンラインから5名と交互で、そして会場の方はネームプレートを立てて、オンラインの方は「挙手する」ボタンで合図をお願いします。
それでは、まず会場でございますが、土居委員からずっと順番に指名していきますので、御準備をお願いします。
まず、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。それから海外調査、お疲れさまでした。大変勉強になりました。これが日本の財政運営にも良い教訓をもたらすことを期待したいと思います。本日は財政総論ということなので、最初に3点ほど申し上げたいと思います。
特に、これから2025年、そして2025年以降の財政運営をどういうふうにするかということを決めていく重要な時期に入っていくということであると思います。その中でやはり、先ほど資料3でも説明がありましたが、プライマリーバランスの黒字化を、まず目標を堅持するということは言うまでもなくて、かつそれを長期にわたり維持するということが極めて重要であると思います。
残念ながら我が国において、国と地方のプライマリーバランスの黒字化というのは、バブル期に数年実現したが、その後はずっと赤字続きだったと。これがいよいよ黒字化しそうになっていて、政策努力次第では黒字になり、それを維持できるかもしれないと。維持できるということが視野に入っているからこそ、なおさら長きにわたって黒字を維持するように財政運営をしていくということを通じて、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくというところにつなげていくべきであると思います。
確かに金利が低くて成長率が高いという状況があれば、プライマリーバランスの改善を大幅にしなくても済むということはあるかもしれませんが、そのような、ばくちのようなものに頼って債務残高の対GDP比が偶然にも引き下がるというようなことであぐらをかいていてよいのかというふうに思うわけです。我が国の債務残高対GDP比は世界的に見ても、歴史的に見ても極めて高い水準にあるというわけですから、その安定的引下げというのは緩やかに、100年かかって緩やかに下がっていけばよいというようなレベルではなくて、やはり20年、30年である程度、安心でき、かつまさに自然災害にも備えられるような程度の財政余力を残す程度にまで引き下げていくということが必要で、そのためには、やはりプライマリーバランスの黒字を長期にわたり維持するということが欠かせないと思います。その意味で、経済成長を促していくということは、極めて、これはこれで重要なのですが、それとともにプライマリーバランスの黒字を維持するということを目標として堅持、掲げ続けるということは大事であると思います。
プライマリーバランスの黒字なんていうのは別にどうでもよいと、成長さえすればよいというような意見も世の中にはありますが、政府がお金を借りている立場であるということを忘れるべきではないと、お金を借りている側から、お金の返済について私たちはどうでもよいと思っていますと、お金を返すことについて不熱心であるというような姿勢を示せば、それは当然、市場で消化されている国債の安定的な消化にも支障を来すということですから、我々は真面目にお金をこれから返していきますという姿勢を政府がしっかり持ち、それはすなわち財政健全化の旗を下ろさず、そして市場で安定的に国債を消化できるようにしていくということが大事であると思います。
最後に、金利に関してのことですが、やはりこれからは金利がほとんどゼロであるという世界ではなくなるということですから、金利が上がっても十分に、きちんと財政運営できるようにするためには、利払費が増加しても、なお財政運営をきちんとできるような姿勢で臨まなければいけない。特に利払費が増加することを通じて財政収支が悪化して、その財政収支が悪化したことを通じて国債金利が更に上がってしまって、そしてそれがひいては民間企業の資金調達における金利の引上げにもつながってしまうという話になってしまうと、経済あっての財政かもしれないが、財政が経済の足を引っ張るということが起こり得るわけなので、そうしたことのないようにしていくべきであると思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕すみません、ここでオンラインで御参加の芳野委員、間もなく御退出ということですので、芳野委員、ここで御発言いただけますか。
〔芳野委員〕申し訳ありません。御配慮に感謝したいと思います。芳野でございます。
本日は、論点を3点に絞って意見を申し述べたいと思います。
1点目は、来年度、2025年度の予算編成の在り方についてです。2024年度予算案の審議は、山積する構造課題への議論が十分になされないまま成立をしました。本来、予算とは国の在り方や進路を示すものですので、来年度の予算については、これまで予算措置してきた政策の効果検証を行った上で、真に必要な政策と裏づけになる財源が一体として措置されるものでなければなりません。
さらに、達成期限が目前に迫るプライマリーバランスの黒字化も重要です。金融政策を転換する今こそ、中長期的な財政運営の評価・監視を行う独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の抜本的見直しに着手すべきと考えます。
2点目は、国民生活の安心・安定に資する政策についてです。連合は、2024春季生活闘争を、経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へステージ転換を図る正念場とし、先行組合は30年ぶりの高い水準での賃上げ回答を引き出していますが、国民全体の可処分所得を増やしていくには政策面の支えが必要不可欠です。特に、広範に輸入物価が上昇する要因の一つに円安の進行があり、国民生活を守るためにも、G7各国と緊密な連携を取りつつ、実体経済とかけ離れた円安の進行には、機動的かつ強力な為替介入を毅然として実施すべきと考えます。
最後に、こども・子育て支援の財源とされる支援金制度については、今後国会での審議が本格化するものと承知していますが、こども・子育て支援は社会全体で支えることが重要であり、その財源確保に当たっては、歳出全体の見直しや税財源など、幅広い確保策を検討すべきと考えます。
以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、すみません、会場のほうに戻らせていただき、上村委員、どうぞ御発言ください。
〔上村委員〕上村です。海外調査委員の報告、本当にありがとうございました。勉強になりました。
私からは、財政総論で大きく2点です。
19ページのPBと財政収支の推移ですが、来年、PB黒字が目標ですが、この目的達成に対して邁進することはとても重要であると思います。その一方で、黒字になっても気が緩むことがないようにしないといけないと思います。黒字でも財政収支赤字になることがあるということを強調していくことがとても重要で、海外調査の報告にもありましたが、財政収支を指標にしている国もあるわけですから、そうした社会的な情報発信を増やしていくことはとても重要であると思っています。特に金利がある世界であると、利払費の動向がとても重要になりますので、財政収支に気をつけていくということはとても大切であると思います。
過去のプライマリーバランスの推移を見ていましても、アップダウンを繰り返していますので、一旦黒字になっても、また赤字になる確率は非常に高いと思いますので、継続的に黒字化するということがとても重要であると思います。仮に2025年にこれを達成するということがあっても、その達成感から緩むということはあってはならないわけなので、そうしたことがないような手だてをどう考えるのかということについて検討する必要があると思います。
二つ目ですが、23ページです。財政面における有事への備えですが、これは非常に重要であると思います。この有事をどう定義するか、とても難しいですが、過去、大きな有事、近年の有事であるとすると、リーマン・ショック、東日本大震災、そして新型コロナウイルス感染症拡大と三つあったと思いますから、これ、20年ぐらいですよね。この3回というのは、とても頻繁に起こるというものであると思っています。なので、そうした有事がある程度頻繁に起こるという認識は、とても重要であると思っています。
その上で、過去の有事における財政支出の規模が適正だったのかという検証は大切かと思います。そのような検証を基にして、今後の有事の際に、財政支出の規模の決定に役立てていただきたいと考えています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。
せっかくの機会ですので、海外調査について1点、質問させていただきます。今、日本でも海外の情報というのはいろいろ取れると思うのですが、実際に行かれて、生の声を聞かれて、例えば日本で想定していたのと少し違った点であるとか、意外に思った点、新たな気づきですとかサプライズですとか、もしそうした点がございましたら、細かいことでも結構ですので、是非教えていただきたいと思います。
次に、財政総論については、大きく3点申し上げます。
まず第1に、PB黒字化目標を堅持することが極めて重要です。御存じのとおり、我が国のPB黒字化目標は、国際的に見れば極めて緩い財政目標ですので、最低限この程度の目標を堅持することは必要不可欠であると考えます。
第2に、債務残高対GDP比の増加要因については、金利と成長率の関係がよく指摘されますが、20ページを見ると、結局のところは、PB赤字こそが債務残高対GDP比の主たる増加要因であるということが確認できます。したがって、債務残高対GDP比を安定させるためには、まず、水膨れした補正予算の規模をコロナ禍以前の規模に戻し、歳出構造の平時化を図っていくことが重要となります。
また同時に、歳出改革の取組を継続していくことが肝要です。我が国の債務残高対GDP比が主要先進国に例を見ない規模にまで拡大していることを踏まえれば、PB黒字化が視野に入っているからといって、歳出改革の取組を緩めてよいという話にはなりません。PB黒字化目標を堅持するとともに、引き続き、規律ある目安を定め、歳出改革の取組を継続していくことが肝要です。
第3に、有事への対応という点についてコメントさせていただきます。世界においても、日本においても、有事が定期的に発生してしまうことは歴史的な事実であり、今後もいつ有事が発生するか分かりません。23ページにおいて、南海トラフ地震や首都直下地震の経済的損害額が記載されておりますが、これらは日本の供給力を大きく毀損するものであり、これまでの有事以上のインパクトを日本経済にもたらすおそれがあります。
18ページにございますように、既に世界の歴史に類を見ない規模にまで債務残高対GDP比が増加しつつある中で有事が起きたときに、我が国が市場で安定的に国債を発行し、災害対応に必要な資金を調達できるのかという点には大きな疑問が残ります。
テールリスクが発生した場合においても市場の信認を確保し、国債を安定的に発行していくためには、債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、財政のバッファーを確保していくことが大切です。そのためには、PB黒字化目標を堅持することに加えて、その後も継続してPB黒字幅を確保し続ける、あるいは財政収支赤字の縮減を図り続ける必要がございます。日本政府には、有事に備えた国家のリスクマネジメントという発想で、責任のある、また隙のない財政運営を行うことが強く求められているという点を改めて強調したいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、海外調査の御質問は最後にまとめて、どなたかにお願いしたいと思います。
では続きまして、武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。まず、海外調査及びその御報告、詳細にいただきまして、本当にありがとうございます。1点目は海外調査への御質問、2点目は総論に関する意見です。
まず、大変有益な調査で、今回も多くの学びをいただきました。その上で、御質問としては、こうした調査で重要なことは、この調査結果を今後日本の財政運営に生かしていくことではないかと感じております。本日の御発言でもそうした趣旨はございましたが改めて、今回の調査を通じて、日本として学ぶべきこと、取り入れるべきこと、アクションは何かについて、もしございましたら、お考えを伺えればと思います。
2点目は総論についての意見です。
三つの重要なメッセージがあったと受け止めております。格下げの経済影響、金利上昇のインパクト、そして有事の備え、について印象に残っております。御説明はそれぞれ別々にいただきましたが、一番重要で、気にしなければならないことは、これらが複合的に、同時に起きる可能性があるということではないかと思います。
そうした中で、格付会社がまず何を意識しているかといえば、御説明にもあったとおり、債務削減が持続的に進展するか、また経済成長率も持続的に改善するか、そして高齢化に対応できているかということであると思います。財政PB黒字化の達成、これをまずきっちりやるということが重要ですが、その上で、PBの改善につながるような目標が求められているということ。中長期の成長に資する歳出の質的な改革、これは新陳代謝であると思いますが、エビデンスに基づいて、成長に資する歳出の中身に変えていくこと。そして社会保障改革をしっかり進めること、この3点の重要性が改めて確認されると思います。
また、金利については、3月の財審からの変化といえば、日本銀行の正常化です。事前に予想されていたとはいえ、YCCが撤廃されたことで、これまでのように金利がない世界から、ある世界へ変わること、人為的に抑える金利から、中長期の金利は市場で決定される方向になっていくこと。非連続的ではないと総裁はおっしゃっていますが、基本的には市場にゆだねる方向性であると思います。
そうした中で、仮に今後、経済状況次第では次の一手に踏み切る必要性が出てきたときに、1%の金利のシミュレーションに、収まるか収まらないかは市場の環境次第になり、逆にそれを恐れて必要な政策変更ができないことになりますと、今度は物価の安定が損なわれます。その観点からも財政の健全化と経済の持続的な成長の両立が重要であると思います。
最後に、有事への備えで、今回は自然災害、震災等の影響について取り上げていただいておりますが、自然災害への財政出動への備えは大変重要であると思います。同時に、震災で大幅な財政出動が必要になったときには、世界や、金融市場からは日本へのプレミアムが要求される可能性があり、海外がどう動くのかも含めて、三つを別々に想定するのではなく、連動した想定も必要になるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕まず、海外調査、どうもありがとうございました。御報告を伺いながら強く感じるのは、私は、報告にあったのがイギリス、ドイツ、それから米国、3か国、先進国のお話でしたが、やはり日本との落差を感じざるを得ないと思います。つまり、先進各国では、やはり財政規律に関してあるべきアクションを取っているなというふうに感じる一方、よく言われるように、この10年余りの超金融緩和の下で、負の遺産が生まれたと私は思っていますが、多くの人が指摘するように、財政規律が弛緩してしまったと、緩んでしまったという問題があると思うのです。
ここはやはり抜本的に考え方を見直すべきではないかなと。つまり本日、3先進国のお話ありましたが、日本の場合には、御存じのとおり、少し低下したとはいっても、物価の上昇率は2%を超えるような状況、実体経済のほうも、いわゆるGDPギャップの動向、あるいは雇用を見ても、セオリーとしては、やはり財政、アクセルとブレーキということでいえば、どちらかといえばブレーキのほうをすると。
その理由は、日本の場合には、長期的にもうはっきりしている社会保障のニーズというのがある。あるいは、何人かの方が、熊谷委員と武田委員も言われたかと思うのですが、やはり何か起きたときに対するバッファーです。海外調査報告では、たしかドイツでバッファーの議論があるというのを、先ほど小黒委員からお話あったと思うのですが、そうしたことからしても、今はしっかりと財政再建への道を歩むべきであるということで、具体的なターゲットとしてはもちろんPB黒字化ということがあるわけですが、これはややもすると議論の対象になって、その必要があるのかのようなことから日本では議論が始まるのですが、繰り返しになりますが、本日報告があったイギリス、ドイツ、アメリカ、アメリカの場合もたしかあれですよね、若干世論的には緩んでいるかのようなお話もあったのですが、もう一方では、たしかCBOのトップがデット・GDP比のフォーキャストを踏まえて、たしかイギリスのトラス・ショックのようなことにも言及しながら、米国のこのデットのGDP比がこのままであると、たしか第2次世界大戦終結時くらいの水準になってしまうと。
だから、それは日本の水準から比べれば、はるかに低い水準であるわけですから、繰り返しになるかもしれませんが、財政再建への道筋、そうしたことを考えることをやるべきなのか、あるいはそんな必要はないという議論をやっているようなこと、つまり、日本ではそうした議論をまだやっているという認識なのですが、それはもう卒業すべきであると思います。やはり私は、予算に責任を持つ政治の世界で、本日、海外出張の御報告、あるいは事務局からの課長のお話にもありましたが、日本の状況を踏まえて、また、昨日ですか、諮問会議のほうでも、社会保障とデットの関係ということで、たしか2060年ぐらいまで、随分長期のフォーキャストを内閣府のほうでやったと認識しているのですが、そうしたことを全部足し算すれば、基本的な考え方を我々日本人、日本としてコンセンサスを得て、粛々と財政再建への道を、シナリオを描くというのが、私は責任ある態度であると思います。経済は生き物ですから、何か有事ということが本当に起きないとも限らないわけですが、そのためにも、バッファーということは常に頭に入れておくべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それではここで、オンラインで、小林慶一郎委員、御発言をお願いします。
〔小林委員〕三つほどコメントしたいと思います。一つは海外調査への感想と、あと二つは財政総論です。
海外調査について御報告ありがとうございました。この中で、特にイギリスとアメリカの調査結果で印象的だったのが、独立財政機関の役割が非常に重要であるということを言われたというふうに思っています。トラス・ショックと、スナク政権の財政運営との違い、そこには、イギリスの独立財政機関の役割があったというようなお話だったと思いますし、アメリカでは、この独立財政機関が民主主義を支える基盤となっているというような識者のコメントが紹介されていたと思います。
また、今回のこの報告では述べられていませんが、アメリカもイギリスも、その独立財政機関は、30年程度将来の長期推計というものを2年に1回とか数年に1回のペースで公表していると伺っています。こうした情報も非常に重要ではないかと思います。ですので、感想ですが、この財政規律へのコミットメント・デバイスとして、こうした独立財政機関、ないしはそれに類する組織というものはワークしている、重要な役割を果たしているということであると思いますので、日本でも、このような独立財政機関の設立というようなことも、少し積極的に考えていくべきではないかというように思います。
二つ目は、財政総論のほうですが、特にこれは、皆様有事についておっしゃっていたのですが、財政そのものが有事になった場合、つまり財政危機についての対応ということも重要ではないかと思います。この財政総論の参考資料のほうの16ページに財政危機とは何かということが紹介されています。これから先、金利のある世界に戻っていくということが見通せる状況の中で、政府債務の膨張が急激に進んだ場合にどうなるのかということは、真剣に考えておくべきであると思います。この参考資料16ページに書いてあります財政危機というのは、私がかつて編集した本の中の定義が引用されておりますが、日本国債への信認が失われるというようなことが何らかの原因で起きて、その結果、金利やインフレ率が不安定に高騰していく、そしてマクロ経済環境が不安定化するというようなことを財政危機というように呼んでいるわけです。
問題は、このような事態が仮に起きた場合に、どういう対応ができるのかということをあらかじめ計画して、そして準備しておくべきではないかということです。今現在は、日銀の緩和的な金融政策が続くというのは確実な情勢ですから、財政危機が起きるという心配はほとんどないわけです。このような平時においてこそ、財政危機が起きたときにどうするのかという計画を、政府や、あるいは政治の世界で検討しておく必要があるのではないかというように考えます。具体的には、緊急時に国際市場の安定化をどう図るのか、そしてまた、金融機関への流動性の供給、または資本増強のための政策をどうするか。そしてまた、歳出の一時的な凍結をどのような順番で行っていくのかというような、そうしたことを平時にこそ考えておくべきではないかというように思います。これが2点目です。
3点目は、フューチャー・デザインへの取組について一言申し上げたいと思います。これも財政総論の参考資料のほうの18ページのところに、フューチャー・デザインに対する財務省の取組が書かれております。そこでは、予算も今回措置されて、ポータルサイトを開設するという予定があるというようなことが書かれておりますが、そのようにフューチャー・デザインへの取組が発展しているということは大変うれしい限りです。是非このような取組を進めていただきたいですし、将来世代の視点になり切って、現在の政策を振り返って議論するというフューチャー・デザインの方法というのは、政策を議論する際の一つの手法として確立していくことを期待しています。ですので、中央省庁などにおける政策立案の議論も、将来世代の視点に立って議論をするということで、新しい発想が生まれる可能性が高いと思いますので、是非政府内でも、議論の手法として、このフューチャー・デザインを活用していかれることをお願いしたいというように思っております。
私からは以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻りまして、末澤委員から、どうぞお願いします。
〔末澤委員〕どうもお疲れさまでした。
初めに一つお伺いしたいのですが、大槻さん、6年前にアメリカへ行かれたときには、たしかラニーニャ現象が来ていて、アメリカは厳冬で長靴を買ったとおっしゃったのですが、今年はエルニーニョ現象だったのですが、長靴は買われたのでしょうか――買われていない、すみません。
もう一つ、本当にお伺いしたい質問が皆様にございまして、資料1の5ページ目、右下です。ここに、イギリスでは今年選挙が予定されているが、与野党ともに財政健全化についてはコミットしており、党を超えた政治的コンセンサス云々とあります。実は、今年1月4日にスナク首相が、今年後半に総選挙をやると宣言されています。今、足もとのイギリスの調査会社、YouGovの調査であると、支持率は、労働党40%、保守党20%、つまり、もう政権交代必至なのです。その中でもこうした状況が生まれている背景。
また、ドイツです。ドイツも今、政権与党の支持率は相当下がっているのですが、13ページですか、この債務ブレーキについて、与党でも自由民主党は、これは単なる見直しですが、見直しに対しても自由民主党は反対と。野党のCDU/CSUも反対と。あとアメリカも、実は今年、暫定予算というか、歳出継続法が4回策定をされて、本当に本予算が成立したのは23日の朝なのです。実はこれ、事実上は政府機関が閉鎖されているのですが、まあ、そうした措置は取られていませんが、8日期限が9日になって、22日期限が23日、2回実は短時間の閉鎖状態になると。ただ、この背景には、特に共和党がウクライナ予算であるとか社会保障予算のカットを主張して、それでずっとなかなか通らなかったと。つまり、欧米では、割と歳出を減らす方向に政治が向かっているのですが、なぜ日本はなかなかそうした方向にならないのかと。そうした印象を、向こうの背景、これは社会的な背景とか歴史的背景とかいろいろあるのかもしれません。もし何か気づきがあれば、お伺いしたいということです。
もう1点は、これは私の意見なのですが、本日は皆様、財政バッファーが必要であると、有事の備えが必要であるとおっしゃっていて、私もまさにそのとおりなのです。特に日本においては、大きく三つ有事があると思っていまして、一つは、これはもう少子高齢化の進展です。これは本当にすぐには来ないですが、相当長期の有事であると。二つ目は、やはり極東アジアにおける地政学・地形学的な緊張の高まりということであると思います。三つ目がやはりこれは地震だろうと。
御案内のとおり、なぜこの話をするかというと、昨日と本日、大きな地震がございまして、昨日、台湾東部沖でマグニチュード7.7、アメリカのUSGSでは7.4です。台湾の中央気象局は7.2というふうに公表していますが、これだけ25年ぶりの、日本の気象庁が正しければ、もっと前以来の大きな地震がありました。実は本日のお昼も、私もオフィスに行きましたら相当揺れまして、これは福島県沖でM6.0です。これも相当大きな規模の地震があると。南海トラフ地震の発生確率は、30年以内が大体75%、40年以内がおととし――いや去年か、去年更新されまして、90%に跳ね上がったのですが、首都直下型は30年以内の発生確率が70%と。
この話をすると、よく狼少年ではないかと言われるのですが、ただ、私はそうは思わないのです。なぜかというと、日本は相当特殊的な位置にあると。いわゆるプレートテクトニクス理論に基づけば、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレート、この4つが相接している地域というのは、地球上どこを探しても日本しかないのです。ほかに2個というのはあるのですが、4つって日本だけ。だから地震が多いと。昨日の地震も本日の地震も、基本的にはそうした系統の地震なので、やはりこれは起こってしかるべきと。
過去、南海トラフ地震は大体100年から150年の間に平均して起きていまして、私が若い頃は――若い頃って、もう三、四十年前ですが、東海地震に備えなさいとおっしゃっていたのです。なぜかというと、東海地震が発生してからもう既に今年で170年たっているのです。だから昔は、今から二、三十年前は、東南海地震、南海地震は、これは実は戦中・終戦直後に起きているので、今から見ると、78年前と80年前なのです。だから、私が若い頃は、何で東海地震といっていたかというと、東海地震は来るが、東南海と南海はもう来ているので来ませんよと言っていたのですが、どっちも来なかったのです。ですから、数十年前から、南海トラフ地震が来るという評価に変わったわけです。
ですから、この発生確率がそこまで高いということは、まあ30年間来ないかもしれません。ただし、今日来てもあした来てもおかしくないということなので、普通に考えると、これだけの発生確率があれば、ある程度備えをするのは当然と。
ちなみに、少しまた卑近な話で申し訳ないですが、今、ディズニープラスで「SHOGUN」というテレビをやっているのです。真田広之さんが主演の作品です。これを見ていると、これは向こうが作っているのですが、実は地震のシーンが出てきます、割と初めのうちに。だから、やはり欧米人って、日本は地震大国であるとある程度評価しているところがあると。つまり、ある程度備えをやって当然であって、これがなければ、それはそれでよかったと思うぐらいの対応をしておく、そのための財政バッファーをつくっておくというのは、やはり平時には必要なのではないかとは思いました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。今までの意見でもう既に出ました点に関しては短く申します。プライマリーバランスを堅持してその先の目標もきっちりと示すこと、データの比較は、コロナが起こってからよりはましだからよいのではないかというのではなく、しっかりとコロナの前と比べて今の状況がどうなのかということを見る必要があるということ。それから、有事のためのバッファーが必要であること。また会計検査院からも指摘があって対応されていると思いますが、情報の分かりやすい出し方あるいは透明性が必要であること、そのあたりは皆様と同じ意見です。
その上で、今回は、春の建議に向けての議論ですし、来年度予算に向けてのスタートであると思うので、少し細かいですが、気になっているところを申し上げます。
まず、日銀が金融政策の見直しをして、いよいよ金利がある世界になったことに関して、財政当局がどう考えているかということに関しては、いろいろな見方があります。うがった見方としては、財務省はそうは言っても、これ以上金利を引き上げてほしくない。それは予算が組みにくくなるからであると。政府や政権はそれに対してストップをかける考え方であるというような一部の見方もございます。けれど、恐らく私の理解では、経済の体温計としての金利は必要であり、きちんとした金融としての金利は必要であるということが共通の認識ではないかと思います。
ですので、建議を書くときに、これは文章の書き方なのですが、何となくそこに金利がある世界がしようがなく来てしまったから、財政も対応しなくてはいけないというような感じではなくて、この金利がある世界をまともな世界としてしっかりと受け止めるということを前提に、財政をきちんと健全化していくというような、そうした、細かいところですが、市場にしっかりとスタンスが伝わるような感じで書いていただけると良いと思います。
二つ目は、資料を見て、人口減少は本当にすごいですよね。これは、先の危機というよりは、もう目の前の危機であると思っております。予算編成においても、更にもう一段、もしかしたら考える必要があるのかと私は思います。これは、次回に人口の議論もあるので、細かくは言いませんが、それぞれのつかさつかさがよしと思ってやったことでも、これぐらいの人口減があると、むしろマイナスになってしまうことが起こり得ると思います。具体的には、例えば医療や、教育や、デジタルで、人が足りないからここにこれだけつけましょうといっても、結局若い世代は、少ししかいない人たちの取り合いになってしまうので、より弱い分野から必要な人を奪い取ってしまう要素ができてしまうということがあり得ると思います。なので、予算編成の仕方そのものが今後どうなっていくか、より、この人口減少における横串に意識をしながら予算編成をしていく必要が今後あるのではないかと思っています。
また、海外調査の感想で、日本の一般の人たちが、なかなか海外とは違う意識になってしまったのはどうしてなんだろうと、私もメディアの一員なので、ずっと考えております。今いよいよ本当に我々大人、この30年間累積赤字を増やし続けてきた時代に社会人生活を送ってしまった私たちの世代は、自分たちの、この世代の責任というものを感じざるを得ないなと思っているのですが、上の世代にももちろん訴える必要があると思います。あなた方が大変でも、下の世代のために頑張ってほしいということも言う必要はあると思います。気になるのは、若い世代が、財政健全化が自分たちにとってプラスではないかのように誤解している部分があり、増税に、税だけではないですが、反対している。意外と普通に理解すれば分かることでも、若い世代に通じていないことが今物すごく気になっています。さらに言うと、私たちの今までの旧来型のメディアが、彼らに全然通じていないということも日々感じています。
ですので、本当に国民に対する何らかの説得とか、啓蒙する必要があると思うのですが、いよいよ、ありとあらゆる方法、SNSや、何でしょうか、普通の大人が普通に参加してくる今までどおりの方法を超えて若い人たちに訴えていかないと、本当に困る人たちが困るという声も上げることのないまま、国が沈んでしまうのではないかという心配を持っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、どうぞお願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いします。海外調査お疲れさまでした。
今回面白いなと思ったのは、EUの新たな財政計画の中で、純支出に着目しているというのは、確かに、政府としてはコントロールできるものの一つかなとは思います。ただ、日本の場合、この純支出、つまり歳出から利払費とかを引いた、まあでも国債費を引いた部分であると政策的経費のところに当たるんであると思うのですが、これだけコントロールできているかというと、なかなかそうではないというのは、まず第一に社会保障の部分は、公費のところだけではなくて、もちろん社会保険料のところを合わせて給付なのです。その給付がコントロールできていないということになりますと、公費部分もコントロールできないということになってしまうので、もし純支出を新たな目標、ターゲットとするのであれば、それは保険料を含んであるところ、保険料を含んだ給付全体をどうやってコントロールしていくか。ありていに言えば、医療費にどういう上限をかけていくか、介護費の伸びをどう抑えていくかという、この考え方が必要になってくるのかなとは思います。
また、防衛費なんかは特にそうで、後年度負担もそうなのです。後年度負担は今年の予算には表れてこないが、これもある意味コミットした支出になりますので、このあたりもきちんと織り込んだ形で純支出というのを定めていくというのは、一つのやり方かなとは思いました。
それから、今回2025年度、来年度にプライマリーバランスが黒字化できるかどうかということを今議論していますが、よくよく考えると、2025というポイントで財政健全化の目標を掲げるって、本当はおかしな話であって、例えば、これから3年から5年の間で平均して例えばプライマリーバランスは黒字化させます、最悪、最低限のバランスさせますといった形で、ある意味目標を健全化、ロールオーバーさせていくような形にやると。仮に補正予算を組んだ場合には、翌年度のほうで、きちんとそれを帳尻合わせるようにさせるという、こうした形で、常に財政健全化を意識させるような、2025に達成すればよい、それまで寝てればよいとか、そうした話ではなくて、やはり毎年毎年財政健全化を意識させる、そうした工夫が要るのかなと思いました。
それから、先ほど小林委員からも財政破綻の話がありましたが、私は、財政破綻しなければよいというわけでもないと思うのです。つまり、例えばデフレが続けば、金余りが続けば、財政は破綻しないです、金利が低いままでとどまれば。財政は破綻しないが、でもそれは経済が疲弊し続ける、低迷し続けるということになります。だから、求められるのは、やはり強い経済の中でも持続可能な財政をつくっていくということなんであるとは思いますので、やはり金利があっても当然平気な、それだけ強靱な財政というのを構築していくんであるという、これが本来の財政と経済の両立なのかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、どうぞ。
〔中空委員〕ありがとうございます。海外の調査、お疲れさまでした。話をお聞きしていてやはり良いなと思うのは、アメリカも欧州も、それぞれそれなりのルールがあるということだろうと思います。これに関して、日本はと振り返ったときに、日本はないなと。60年償還ルールが一応あると言えばあるのですが、これに関しては、以前格付機関に尋ねたところ、60年償還ルールを格付に反映していますなんていう格付機関はありませんでしたし、かつ、60年償還ルールって何でしたっけという格付機関もあったぐらいでした。なので、日本にとって、これは歯止めであると思っているルールでもあまり響いていないということを考えると、格付を維持するためにも、やはりプライマリーバランスの黒字化あるいは目安をきちんと表に出して言っていく必要があるというふうに思いました。
それから、少し飛ぶのですが、国の財務書類のお話をしていただきました。4ページにあるストックの話です。あの表は、もっと世の中に目につくように出していただきたいなと思います。というのは、私が以前テレビに出たときだったか財政健全化のような話をしたのですが、別にたくさんではないのですが、何通か、おまえは分かってないという文句の手紙が来ます。日本にはたくさんの資産があるのだぞと。なので、資産があるから負債があってもよいのであると、財政再建とは何を言っているのか、という文句が来るのです。でも、この表を見れば、そうした意見にも抗することができるので、是非、この図表がもっともっと知られると良いなと思います。ワニの口の図表は、辛うじてかもしれないけれど結構目につくと思うので、是非次はこの図表を出していただきたいと思いました。
最後にもう一つ、吉川先生から言っていただきましたが、2日前に、十倉会長と一緒に経済財政諮問会議にて、2060年度までの財政収支の長期推計が出されました。そこまで出すということで、中長期でどうやって考えていくかということや、金利上昇期に入ったということで、その新しい世界に入ったということをどういうふうに織り込んでいくのかということを、もう一回ふんどしを締め直すつもりで出したものです。ところがやはり、見通しが甘いとかいう批判があることも、もう既に出てきているようです。それはそうなのかなとも思うのですが、目安なくして目標もないというふうに思いますので、これができなければどう問題になるのかということの目安として、指針としては重要であるというふうに思います。宮島委員がおっしゃったとおりなのですが、金利が初めてついてくるわけです、ここ何十年の間で。数回前の建議から、金利がこれからある世界になるということに懸念を示しては来ましたが、実際につくのは初めてなので、ここは今までと違う建議にしていく必要があるのではないかなと改めて思ったということも申し添えたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、國部委員、どうぞお願いします。
〔國部委員〕まず、海外調査、大変ありがとうございました。御苦労さまでした。
本日は、財政総論について、2点申し上げたいと思います。
1点目は、2025年度以降の財政健全化目標について。この夏に取りまとめられる骨太の方針に来年度以降の中長期的な経済・財政の枠組みが盛り込まれることを見据えますと、今年の春の建議は、例年以上の重要性があると思います。皆様御指摘されていますが、先月日銀がマイナス金利政策を解除して、金利正常化に向けた第一歩が踏み出されました。直ちに金利が上がっていく状況にはありませんが、金利のある世界が目前に迫る中で、今後、利払費の増加によって、歳出の裁量が制約される可能性を視野に入れておく必要があります。資料でも御説明ありましたとおり、歴史的な低金利環境が続く中で、2006年以降、プライマリーバランスの黒字化、それから債務残高対GDP比の安定的な引下げを財政健全化目標として掲げてきましたが、今後は、やはり利払費を含めた財政収支にも目配りが必要であると思います。
一方で、インフレが常態化すれば、インフレ率の範囲内に歳出の伸びをとどめることで、歳出を実質的に抑制することにもなります。利払費は、政府がコントロールできない金利水準にも左右されるため、それが含まれる財政収支は、政府の財政健全化目標にふさわしくないという議論があることも承知していますが、金利上昇やインフレが財政に与える悪い影響とよい影響をしっかり整理した上で、どのような目標を掲げるべきかを重点的に議論して、財審としての意見を取りまとめるべきと考えます。
2点目は、規律ある財政運営を確保する枠組みについて。骨太2023において、「歳出構造を平時に戻していく」という方針が打ち出され、秋の財審の建議でも、「経済が平時化する中にあって、歳出構造を平時に戻し、財政を健全化していくことは当然」と明記されているにもかかわらず、令和6年度の当初予算や国債発行額は、コロナ前を大きく上回っています。次回以降、分野別の議論に入っていくことになると思いますが、こうした個別の議論に加えて、持続可能な予算の規模や、その規模で予算を組むために必要なスクラップ・アンド・ビルド、歳出の増加に見合った歳入の確保など、予算全体を俯瞰した議論を集中して行うべきと考えます。
十倉会長、中空委員がメンバーを務めておられる経済財政諮問会議において、中長期の経済財政運営について議論を開始していることは承知をしていますが、財審としても、規律ある財政運営を確保する枠組みについて経済財政諮問会議に意見を具申して、世界的に政治経済情勢が不透明・不確実な中、有事に備えて財政余力を保持できるよう、規律ある財政運営の実現に力を尽くしていくべきではないかと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ここで、オンラインで横田委員、御発言をお願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。
まず、海外調査報告、ありがとうございました。改めて財政規律の制度化や有事における例外的財政出動の際の事前の期限設定は重要であると感じました。そうでなければ、歯止めをかけるのが非常に難しいと、実際日本もなかなか出口にたどり着けなかったのがようやくというところですので、重要であると思っています。
また、規律の緩和に対してドイツの国民世論が否定的であるという点、非常に印象的に感じました。財政に対する意識が高いというのは非常に重要であると思いますが、一方で、日本はどうなのかというのを思った次第です。参考資料の17ページ目、私とても参考になったのですが、財政赤字に対する問題意識、国民も低いわけではないというのが少し安心、経済学者に比べては低いのですが、65%ぐらいは赤字は問題であるという認識は持っているということです。
一方で、下表で問題は、その解決策が若干ぬるま湯であるという現状が、東京財団さんのアンケート調査で分かります。一番下、歳出と負担増の関係ですが、まず2点非常に感じたところは、経済学者の中では、歳出を増やす一方、負担回避で行けるという、いわゆるMMTなどの理論を推奨する学者の方であると思われますが、その方々が6.4%に対して、国民はそれを20%も受け入れているという、ここの乖離は非常に考えるべきところで、実際の学者さんの考え方を理解して、それが本流にならないように気をつけなければいけないとも思いましたし、そのほかの、負担増を受け入れる層が少ないという点も課題です。このアンケート調査の元を見ると、皆様、中福祉・中負担が良いと言っていて、一方で、日本は今、中福祉・低負担なのだろうという中でいうと、若干現状と今後の見立てや解決策に乖離を感じるというところもあります。その点はフューチャー・デザインという手法も含めて、皆様の理解を深めていくということが改めて重要なのではないかと思います。
若干余談ですが、このアンケート調査は本当に面白いなと思いましたが、経済学者と国民の比較に加えて、世代別も是非見たいなと思いますし、あるいは政治家さん、また、財務省、他省の方々も並べてみると、すごく面白いのではないかなと勝手に思っています。
最後、結論としてまとめると、経済学者の認識と国民の乖離も是非埋めるような情報提供をすべきであると思いますし、問題意識の解決策の乖離を埋めるためのフューチャー・デザインの進化を是非望みます。また、若い人だけが理解をすればよいという話ではなくて、幅広い世代が将来的な観点から見ていくことが重要であると思いますので、フューチャー・デザインのアプローチ先として、若手だけではなく、ほかの機関も含めて巻き込んでいけるような仕掛けを是非お考えいただきたいというふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは会場に戻りまして、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。本日は今年度の財審のキックオフ会合であるということで、今年度のテーマ、一つは金利の上昇にどう備えるか、それからもう一つは、これから議論が本格化していくのでしょうが、2026年度以降の新たな健全化目標をどうするか、この二つが、皆様おっしゃるように大事なポイントであると思います。
金利の上昇でいえば、まずこの楽観論というのをいさめなければならないのではないかなと。要は、つまり、金利が上昇するインフレ時代というのは、名目成長率が高まって、GDPも増えて税収も増えると。だから、プライマリーバランスの目標にこだわらなくても、対GDP比の債務残高は低下していくという、そうした楽観論もあると思いますが、こうした楽観論というのは結局成り立たないことは、資料で示されたとおり、明らかであると思います。プライマリーバランスが赤字だったら、債務残高が積み上がっていって、結局はGDP比の債務残高も発散していくおそれがあるということは変わらないわけで、要は、インフレ時代であっても、財政健全化の指標はストックだけでなくてフローも必要であるということは改めて重要であるということがよく分かるということであると思います。
心配なのは、こうした楽観論と歩調を合わせているのかどうか分からないですが、財源が十分に手当てされないまま歳出拡大が続いていくことです。既に少子化対策、恒常的な支出が安定財源が十分に確保されないまま大幅に増えていくのですが、それから定額減税です。先ほどの海外出張の報告の中でも、金融政策の引締めと財政政策の引締めは、普通一緒にやっていくのが常道というお話がありましたが、今回、マイナス金利を解除するほど経済の好循環が近づいているのなら、なぜその定額減税が必要なのかという、そうした疑問が湧いてくるわけです。
さらに気がかりなのが、デフレに対する最近の政権というのですか、政府の言いぶりです。要は、目標としているデフレ脱却というのを、デフレ完全脱却というふうに言い換えて、しかも、そのデフレ完全脱却は道半ばと繰り返されているわけですが、要は、このデフレ脱却のハードルを高めて道半ばと繰り返すというのは、選挙を意識して、新たな財政出動の余地を探っているのではないかと、そうした勘ぐりすら出てもおかしくないと思います。
そもそも、今のプライマリーバランス自体が、デフレ時代の超低金利政策を前提とした甘い指標なわけですから、新たな健全化目標を考える上では、国債費を含めた財政収支というのが本来国際的なスタンダードになります。新たな健全化目標で一気に財政収支に転換するというのは、金利自体がなかなか当局のコントロールしにくい対象ということもあり、なおかつ、政治的には難しいかもしれませんが、こうした楽観論と相まった野放図な歳出拡大に歯止めをかけるためにも、金利の上昇を十分考慮した新たな健全化目標というのをしっかり検討していくようにしていただきたいなと思います。
あと最後に1点だけ、海外視察の御報告、どうもありがとうございました。海外の、皆様おっしゃるように、現地の雰囲気がよく分かって大変参考になりました。それで、一つだけ教えていただきたいのですが、アメリカでコロナ対策の終了、政治的にも異論がなかったというのは、非常に日本と落差があって、これは参考になるなという御報告だったのですが、一方で、トランプ減税の終了というか、これの失効がなかなか実現しないだろうという市場関係者の声が紹介されました。同じ期限が決まっていても、このコロナとトランプ減税の差はどこから出てくるのかなと。コロナが終わってしまったからそれまでであると言われれば、そうなのですが、もしこうした差がどこから生まれてくるのか、分かれば、日本にも参考になるかもしれませんので、一つ教えていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、どうぞお願いします。
〔遠藤委員〕海外御出張お疲れさまでございました。2点質問がございます。
まずイギリスなのですが、恐らく私の理解では、イギリスの電気料金というのは恐らく、ウクライナ侵略の前と比べて8倍ぐらいに急上昇しているはずなのです。それでこの支援策を打ち切られているというのは、ある種の社会的な混乱とか、そうしたものを招かなかったのか。だらだらと続けていて、そんなに電気料金も上がってない日本との差をどう考えておられるのかというのを教えていただければと思います。
今度はアメリカなのですが、IRAを含めて、この三つの産業政策、極めて多額の補助金がついているのですが、これがまだ財政的に影響を計るのは時期早尚ということは、もう少し分解していただきたいのですが、要するに、サプライサイドにお金を投じて、またさらにそれが収益を生むということで、そのずれがあるからという認識なのかどうなのか。もしくは、何か財源のある程度の見通しが立っているのか、その辺り、これの分解をもう一言二言いただければと思いました。
直接の総論の資料ということではないのですが、宮島委員がおっしゃられたように、今期の財政の議論の中で、いくつか私も気になる点を申し上げたいと思います。
いよいよ金利がつくという正常化のプロセスに入ってきていて、全く違った世の中が実現されるのかなという思いがありますが、昨年の財審で、診療報酬の本体の引上げについて、財審が具体的な数字を用いながら反対の立場を取った際、世論の多くが、珍しく財務省側に賛同しました。財務省は、財政規律の見張り役ということにとどまらず、財務省から見れば、先ほど佐藤先生がおっしゃられたのですが、給付全体、国民サイドから見ると国民負担、それを削減するとか、世代間の不公平の解消に貢献するというのが、財務省の一つの役割なんであるということが極めて重要だなと認識した局面でした。こども支援金を現役世代の社会保険料から徴収する方針が国会で示されると、更に不公平感が醸成されています。高齢者の医療費自己負担率を一律にするだけではなくて、消費税を含む公平な負担の施策が必要なんであるという機運を着実に高めていく必要があると思います。
もう1点、今般の能登半島地震の件に関わるのですが、様々なインフラが壊滅的な打撃を受けました。その再建に際して、元のままの姿に戻すのか、新しい効率的なシステムに再構築していくのか。私は当然後者のほうであると思っています。自社の問題で大変恐縮なのですが、NTTが地震直後に、震災時に非常電話を特設しました。でも、実際はほとんど使われませんでした。なぜなら、記憶している電話番号のほとんどが自宅ぐらいしかみんな分からなくて、携帯電話の中に全部番号が入っているので、電源が落ちてしまうと、もう使えないわけです。だから、実生活というのはワイヤレスに依存した社会にもうなっているのに、もう一度メタルの線を再構築して引くのかという、それは一例なのですが、それはNTTの話なのでよいのですが、実態に伴う効率的な再建というのが必要なのではないかなと。これは前、阪神淡路を経験された角会長のお言葉なのですが、復旧ではなくて復興、財政の面でも新しい再建の目指し方があるのではないかと思います。これから災害はまた発生しますので、そうした点に留意をしていただきたいと思います。
社会保障の点でもう一点なのですが、最近賃上げが極めて積極的に行われています。これまで労働生産の向上があったにもかかわらず、実質賃金がずっと横ばいの状況があって、国際的に見ても、何かもう日本だけという、非常に極めてまれなケースでした。これまでは、労働生産性が上昇したら実質賃金も上回ると想定していた前提が、労働分配率が上昇していないという実態と異なっています。これが今般の賃上げでどうなるのかということを注目したいと思っています。
一方、GPIFとか、国内の主な投資対象になっている法人企業の収益が、純利益とか純資産とかが増加しているので、実質の運用利回りというのは上がってきている状況だったわけです。これが金利がつき始めて、こうやってまた分配率が上がってくると、このバランスがどう変わっていくのかというのが、社会保障の審議の際に是非教えていただきたいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。キックオフなので、状況認識から始めたいと思いますが、少し、皆様とは異なる見方をしているところもあります。
日本経済は明らかに改善基調にあります。好調な企業業績を反映して、税収の伸びも当面期待できます。インフレの影響も純債務者であるわが国にとってはプラスに働きます。確かに、皆様がおっしゃるように金利のある世界に移行しつつあるのですが、支払金利の増加には遅効性があります。今、国債のデュレーションは8年ぐらいですので、金利上昇の影響が完全に顕在化するには8年かかりますし、影響が半分出るのにも4年はかかります。したがって、長期はともかく、当面、公的債務対GDP比率は改善する可能性が高いです。主要格付機関3社もそのように分析していることを先月確認しました。
従来、財審も私自身も、「このままいくと格下げになるかもしれない。そうなると、外貨調達コストは上がるし、アベイラビリティーにも支障が出てくる。」と言ってきましたが、実は状況は変わってきたということです。ただ、それを聞くと、木村さんは楽観論とおっしゃいましたが、「だったら、財政健全化を言う前に必要なお金は使うべきである」という議論が必ず出てくると思います。そうした議論に対して、我々財審がどう応えていくかということが今回問われていると私は思っています。
これに対して、変わった答えがあるとは思っておらず、皆様が仰っている通りだと思いますが、私からは三つ申し上げます。
一つ目は、必要なお金は使うという場合の「必要なお金」とは何かということを真面目に問うことです。必要である理由は、はっきりしていて、日本経済の潜在成長率を上げること、少子高齢化に対応すること、国・社会の安全安心を実現することであって、この点は一部を除けば超党派的な合意ができていると思います。ただ、そうした名目で使われたお金が本当に効果を上げてきたのか、本当に効果を上げるのかをぎりぎりと問わなければいけません。そのためには、我々がさんざん議論してきたEBPMやアウトカム・ベースト・スペンディング、PDCAを回すための総合政策評価が必要です。
二つ目は、人口減少が不可避である中で、世代を超えて長期的な視点に立った政策運営が求められるということです。第1に、負担の先送りをやめて必要な負担を求める。第2に、限られた財政資源の中で戦略的なプライオリティーを明確にして、不要な政策を捨てる、やめることを実行する必要があります。
三つ目は、既に何名かの方もお話しになられていますが、有事を想定した財政力を持つ必要があるということです。これは、従来あまり言ってきませんでしたが、国の信用力を平時に高める努力をすべきであるということを今こそ主張すべきだと思います。ストレステストも含めて、そのためのプランを練って実行する必要があります。そもそも、世界最大の純債権国であって、経済規模も大きく、政治・社会のボラティリティーが低い日本の格付が、シングルA格に甘んじているということ自体、おかしな話だと思いますが、原因は財政だとはっきりわかっています。したがって、経済が好転している今こそ、対応を進める必要があると思います。
ところが、現実は、皆様からご指摘されているとおり、コロナで一旦たがが外れた財政は平時に戻っていません。また、基金が典型的な例ですが、しっかりした計画もないままに予算枠だけが積み上がって、後付けでその枠があるのを奇貨として新たな政策が安易に打ち出されていますし、これは自分自身に対する批判でもあるかもしれませんが、補助金が欲しい民間もそれに便乗するということがあってはならないと思います。
もし、そのように自律的に正常化が進まないのであれば、財政の持続可能性を維持するためのフレームワークが必要だろうと思います。これも先ほどから皆様おっしゃっていることですが、私からは三つ申し上げます。
一つ目、2025年度以降の財政健全化目標についてです。これはPB黒字化、あるいは黒字基調の維持というフローと公的債務残高対GDP比率というストックの二つの目標を堅持すべきであり、片方を外すべきではありません。異常な水準にある債務比率を着実に下げるためには、PB黒字化あるいは黒字基調の維持が有効であるし、格付機関に聞いても、政府がコントロールできるPBの均衡をコミットすることで債務比率が低下するという姿が、中期的な財政健全化に向けたトラジェクトリー、すなわち意志を伴う方向感を見極める上で大事だという見解は共通していました。
二つ目は、歳出の目安についてです。今回、インフレをどう扱うかが非常に難しいわけですが、基本的には今の3点の枠組みを維持して、こども・子育てと防衛財源も、別枠にしないでその枠組みの中に収めていく、という方針で臨むべきだと思います。
三つ目は、中期財政計画、ないし中期財政フレームの策定についてです。これまで何回も申し上げていますが、補正予算、基金も含めた形で財政支出の大枠を定めることで、財政資源の全体最適化を図りながら予算の膨張を抑制する枠組みが必要です。
もちろん、IFIも含めて、制度や枠組みを持っているだけでは不十分であり、実際に財政ルールがいかに遵守されているかが重要です。しかし、政治家や納税者自身に規律という概念が希薄化している日本においては、宮島さんが仰っていた意識を変えていくという文脈で、こうした枠組みの導入は、大いに意味があるのではないかと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、以上にしまして、小黒委員、海外調査の回答ですね。
〔小黒委員〕本当は財政総論についてコメントがあったのですが、そこは次回でも大丈夫です。
〔増田分科会長代理〕少し時間が厳しいものでして。
〔小黒委員〕はい、分かりました。
〔増田分科会長代理〕それでは、財政総論で、オンラインの藤谷委員、御発言あるようですので、お願いします。
〔藤谷委員〕時間が限られておりますところ。国の財務書類について、せっかく御紹介がありましたので、一言だけ申し上げたいと存じます。大変な御苦労を持って作成していただいて、敬意を表したいと存じます。
中空委員からも御言及いただきましたように、大変リッチな情報源になっていると思います。ただ、問題は、こうした豊かな情報が、全体として国民の財政意識を高める上で、十分に活用されているかどうかというところなんだろうと思います。なかなかこの財務書類なんというものは典型的なもので、ある意味、知る人ぞ知るのようなところがありましょうし、また、今ちょうど出ているところ、4ページは、やはり使い方注意といいますか、これは国の財務書類なので、地方は載っていないわけです。そうしたことも注意しながら正確な情報を国民に伝えていくということが必要になってくるわけです。そうしますと、それぞれの目的でつくられている情報、それでいうと、今回の財審で毎年すごく工夫された資料もまた同じなのですが、そうしたものが、ある意味そのときそのときのエフォートで出されたものが、きちんと全体として体系的に国民にアピールできるような体制づくりといいますか、そうした仕掛けというのを考えていただく必要があるのかなと。せっかくエフォートを投入してやっていただいていることなので、そこも併せて戦略的に考えていただいていくのがよいのではないかなというふうに思っております次第です。
お時間が限られているところを大変失礼いたしました。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
そうしましたら、小黒委員に、海外調査の回答をよろしくお願いします。
〔小黒委員〕様々な委員の先生からコメントや感想を頂戴してありがとうございました。権丈先生からも、後で少しまたコメントいただけると思うのですが、簡単に私から回答させていただきます。まず、これは私の感触で、遠藤委員から御質問いただいたものに、直接お答えするのは難しいのですが、やや誤解を恐れずに大ざっぱに申し上げますと、やはり向こうに行った肌感覚としては、御指摘にありましたとおり、まさにウクライナとロシアの戦争の影響もあるような印象を受けました。その中で、私が何人か質問の中でも回答した中であったのが、やはり国力を維持・強化するためにも、経済もしくはその中の重要な基盤である財政の基盤を、安定性を含めて強化していくことが重要であるというような回答も実はありましたし、その辺が関係しているのではないかと思います。これは吉川先生からも、財政規律であるとか財政バッファーの重要性が御指摘ございましたが、その話にもつながるものではないかなと思います。
それからまた、武田委員の、日本として学ぶべきものは何か、あるいは末澤委員から、イギリスの債務削減あるいはドイツの債務ブレーキに対する各政党の認識、これがしっかりしている理由は何かというような話もございました。これは今の話ともつながるのですが、それ以外にも、やはりイギリスの最近のトラス・ショックであるとか、あるいはドイツであると、戦前の、御案内のとおり歴史的な教訓もございますので、その辺なども影響しているのではないかなというふうに思いました。
また、熊谷委員から、海外調査での新たな気づきは何かという御質問がございましたが、資料の6ページ目のところの左側の内容、これはOBR(予算責任庁)の回答ですが、これが結構驚いたものになります。具体的には、ここに掲載しているグラフの内容で、先ほどの説明では申し上げませんでしたが、OBRが出す見通しというものは「「悲観的すぎる」と批判を受けることもあるが、それでも、過去の予測を振り返ってみると、現実には、OBRはGDP成長率を高く、財政赤字を低く見積もる傾向にある」というものです。我が国と異なり、OBRの見通しは慎重で予測と実績が乖離していない印象がありましたが、OBR側からの回答として、現状でも「甘い」というような指摘があったというのは、一つ大きな驚きでございました。
言うなれば、楽観的な見通しではなく、小林委員も独立財政機関の重要性について指摘しておりましたが、堅実かつ慎重な見通しで財政運営を行っていく、そうした重要性を指摘しているというものであると思います。
また、これは最後に、今回は時間の都合などもあって資料にはありませんが、ドイツでも独立財政機関の話を伺っております。そこでは安定化評議会諮問会議と呼ばれる、Advisory Board of Stability Councilというものがありますが、ここも結構重要な役割をしているなと思いました。この機能や役割などについては今後精緻な調査が必要なので、私から確定的なことを申し上げることはできませんが、やはり経済学者などの専門家が委員となっておりまして、まあ数名ですが、成長率や金利、それから失業率、もしくは税収の見積りなど、そうしたものについて、英語でいうならば「endorsement」という言葉になりますが、「承認」する役割を担っているというところで、それが財政規律を維持する大きな役割を担っているということも発見でございました。
以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、アメリカ班を、河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕多くの委員の方々からコメントをいただきまして、ありがとうございました。御質問を熊谷委員、末澤委員、木村委員、遠藤委員から頂戴していると思いますが、順不同でお答えさせていただければと思います。
まず、木村委員から頂戴しましたトランプ減税のところなのですが、これは、米国班の資料で申しますと6ページのところの右下のところに少し括弧で書いていますが、御承知のとおり、おっしゃったとおり、2025年末で期限が切れるのです。これはどこを訪問しましても、やはりこれはすごく経済に影響を与えるのです。ソフトランディングどうのこうのという話を皆様していますが、やはりここが本当に切れたら結構やはり下押しになりますし、大きいというようなことは言っていましたが、でも、ではこれがどうなるかというのは、本当に今後の政治情勢次第というところで、どこでも何か特定の、続くだろうとか続かないだろう的なことをおっしゃるような方はあまりいらっしゃらなかったというか、まあみんな見守っているような状況じゃないかと思います。
それから、遠藤委員から御質問いただいたIRA、インフレ抑制法とかの効果のところ、長い目で見ないと駄目であるということですね、今判断するのは時期尚早でということで御報告を申し上げたのですが、本当にアメリカの政府のバイデン政権のお膝元であるOMB、行政管理予算局であるとか、それから財務省に伺ったとき、こういう話はもっとぐいぐい押してくるのかと正直私は思っていたのですが、そうでもないなという、私の少し個人的な印象ではありました。それで、そこのところを分解してというような御質問でしたが、やはり時間がかかる事業なので、効果が出るまでには1年、2年ではなくて、もう少し何年かかかるだろうということで、現段階でどうのということはなかなか言えないですよねというようなことでお話をくださっていたように思います。逆にこっちから、結構これでお金使いますよね、連邦政府の借金増えますよね的なことをお尋ねすると、それもトレジャリーなんかでも、それは否定できないというか、だからきちんと増税するなりして財源の調達を考えなければいけないと思っているというような答えをいただいたというところもありました。
それから、末澤委員からの御質問がありました歳出を減らすということがアメリカとかで何でできているのかということなのですが、二つあるのではないかなというふうに思います。今回の出張でも本当に思いましたが、一つにはアメリカの財政のルール、ペイゴー原則とかがあって、もちろん一時期、それこそクリントン政権時代とかに財政黒字にできたのも、やはりこれがあったから大きかったというような話は何か所でも聞きましたし、でも、その後、御案内のとおり、少し骨抜きみたいにされてしまっているところがあって、足もとではいろいろ政治的な抗争の材料に使われているようなところもあって、それはもうみんな問題点は百も承知なのですが、一応、でもそうしたルールがあるというのが一つです。
あともう一つは、歳出を一つ一つ減らすなり、政策を変えたときに、幾ら歳出を減らせるかとかという情報が、実はアメリカでは日本とは全く比べ物にならないぐらい数字が出て公表されています。それが、今回訪問もしてきたのですが、CBO、議会予算局が出している資料。あそこはBudget and Economic Outlookというのを出しているだけではなくて、ホームページを開かれるとずらっと出てくるのですが、本当にいろんなものをやっていて、その中でも、Budget Optionsというのが2年に一遍出ています。今一番直近で出ているのは、1年少し前の、だから22年の年末に出ているものなのですが、結構分厚い2分冊で、一つは、大がかりな財政削減ができるオプション集で、もう一冊は、2分冊目はもっと小規模なやつということで、例えば税制改革、日本なんかで言えば、例えば配偶者控除を変えたらどうなるかとか、そうした話、こども手当の財源はどうなるかとか、それから、エネルギーの関係の補助金はどうであるとか、そうしたものが本当に一覧になって出ているのを、それをCBOがきちんと作っています。ですから、アメリカですと、予算の制度がもともと日本とは違っていて、やはり議院内閣制の国ではないですから、大統領制の国で、予算の編成権限は議会が持っていますので、ただ、与党だけでなくて野党も予算をきちんとつくりますよね。それが最後まで成立するかどうかは別にして、今回だってGOPがいろいろつくったりやっていると思いますが、そうしたのができるのも、やはりそうしたデータが出ているし、それから、議会の各議員に対する支援体制が整っています。CBOがマクロのほうからということで支援するのもありますし、もう一つ、Congressional Research Serviceという議会調査局というのがありまして、そこにも行きまして、そこには、議員が例えば自分がこうした政策、法案を出したいと思ったときに、どれぐらいのコストがかかるか、財源が必要かとか、逆に歳出カットできるかとかというのを試算とかしてもらえるそうです。で、そのCongressional Research Serviceの試算結果って、私なんかも前、報道で見かけて、でも調べても出てこないなと思っていたのが最近出るようになったのですが、何でも、この前行って聞きましたら、3年前ぐらいから、公表するようになったと。公表するかどうかというのはリクエストした議員の事務所の側が決めるそうですが、やはりこれは自分たちのところだけの情報にしてしまわないで公表したほうがよいとなれば、公表することになったというので、そうしたものも私なんかも実際見かけることはありますし、だから、やはり議員に対する支援体制というのが、CBOにしろ、CRSにしろ、ノン・パルティザン、別に民主党とか共和党どっちかということはなく、完全に超党派でやるということで、議員に対する支援体制というのが非常に整っていて情報があるということがあると思います。
また、すみません、最後に、熊谷委員から御質問いただいた何か意外な点、サプライズとかですが、そうですね、聞いてくださって、意外と思われるか、やはりと思われるか分からないのですが、二つ御紹介したいと思います。アメリカも今非常に財政運営が厳しい局面で、先ほど御報告しましたとおり、もう本当に利払費をどうするかというのが懸念材料ですよね。今回の資料でも、7ページのところにCBOが出しているグラフがついていますが、この折れ線グラフを御覧いただくとお分かりのとおり、赤い折れ線が利払費、しかも純です、ネットの利払費ですが、コロナ前に比べて、ネットベースで見ても3倍ぐらいにもう既に跳ね上がっていますよね。日本だったら7兆円、8兆円の利払費がもう既に24兆円ぐらいになっている状態というか、アメリカだってやはりこの利払費を工面するのに国債の増発を余儀なくされているという話が聞こえてきます。そうした状況なのですが、さはさりながら、やはり金融政策の影響もあるということで、この局面、コロナ危機でこれだけ財政出動して、中央銀行がこれだけ国債を買ってということをやった局面というのは、もう本当にアメリカ、日本、ヨーロッパと、全部共通する話であると思いますので、その辺、実は少し何か所かで話を聞いております。その中で、トレジャリーで伺った話なのです。こうした局面で、フェデラル・リザーブが、今はだから資産縮小をやっていますよね、やっているということを言って、それが、だって1年間で1兆ドルとか落としているではないですか。日本円で150兆円ぐらい中央銀行が国債を離せば国債の消化に影響がないはずはないと思うのですが、そうした局面での質問ということで、フェデラル・リザーブとの間で何らかのコーディネーションがあるかということを聞いたのです。そしたら、もうきっぱりと、The answer is simple, no.であると。答えはシンプルだ、ノーであると。我々には1951年のアコードがあるということで、我々のところには一切、ノー・インフォメーションであるというふうに言っていました。フェデラル・リザーブからは何のインフォメーションも伝わってこないということを言っていました。
また、併せてトレジャリーが言っていたのは、金利が上がった下がったとか、一喜一憂はしないと。これだけ利払費大変なのですよ、でも一喜一憂はしないと。市場の予見可能性を大事に、この国債発行の財政運営をやっていくということをおっしゃっていましたし、また、本当に私がびっくりしたのは、フェデラル・リザーブから何も情報が入ってこないといったときに、ここまでおっしゃいましたよ、We are one of the market participants.とまで言いました。自分たちは市場参加者の一員にすぎないと。そうしたことだそうです。だからやはり市場メカニズムを尊重するとか、まあ金利が上がったら上がったで、それはある意味、財政に対する評価でもあるわけですから、それに対してやっていくということで、そこら辺のもう何か、アメリカの信念というか、やはりさすがだなというのがあって、それが一つです。
もう一つは……。
〔増田分科会長代理〕すみません、手短にお願いします。
〔河村委員〕すみません、手短に。
シンクタンクに行ったときの話なのですが、これだけ財政状況の悪い国から行って本当に恥ずかしいなというか、どう思われているのかなと思って、それで、でもそこは率直にお話しするしかないなと思って、お話ししたのです。これだけ財政が悪くて、財政再建が必要であると幾ら言っても、どうせ何も起こらないと言われてしまうと言いましたら、何て言われたかというと、自分たちも一緒であると。財政再建がとシンクタンクが訴えても、だって日本を見ろと言われる。日本は何も起こっていないではないかとアメリカでは言われる、そんなふうな話もありました。
でも、とにかくやはり財政再建を達成するには政治を動かさなければ駄目であると。アメリカでも国民に訴えられるのは、政治家の中だけでも一人、大統領だけだ、そうしたお話でした。
また、最後にもう1個だけ、国民にどうやったら理解してもらえるかというのは、そのシンクタンクだけでなくて何か所かで聞いたのですが、なかなか分かってもらえないが、どうしても財政再建しなければいけないと国民が理解できるのは、金利が上がったときであるという話でした。
すみません、長くなって。以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここまでにしたいと思いますので、最後に会長からお願いします。
〔十倉分科会長〕皆様どうも活発な示唆に富む御意見、ありがとうございました。少し前に経済財政諮問会議で中長期の見通しが公表されました。内容については、国が成り立っていくという意味で、財政健全化も含めてですが、現状の延長では、かなり厳しいと思われる前提が置かれていると思っています。まず、出生率を1.65程度に高める。それからTFPを1.1%にする。そして、医療費を含む社会保障費の改革をやる。これは歳出カットを、DXを活用してやる。できるかどうか分かりませんが、やるという前提が置かれています。やはり本日皆様の話をお聞きしていて、吉川先生や何人かの方がおっしゃいましたが、社会保障改革について、本当に医療費等の増加についての負担を考えれば、やはり税収も含めての議論をまずしなければいけないということであると思います。それと、今日本の少子化の一番大きな原因は、やはり世代間とか、稼働世代とそうでない人たちの公正公平な分担になっていないということなのです。これを全部凝縮しているのが社会保障の問題ですので、税を含めた社会保障改革をやっていかないといけないのですが、なぜかそこの議論はあまり起こりません。
是非この財審でそうした議論を活発にやっていただいたらと思います。たきつけているわけではありませんが、よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕会長、どうもありがとうございました。
それでは、会議の模様は、この後、私のほうから記者会見で御紹介をいたします。
次回は4月9日、来週火曜日9時から、この会議を開催いたしますので、御予定のほど、よろしくお願いします。
それでは、以上で本日の会議は閉会といたします。どうもありがとうございました。
午後4時15分閉会