財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和5年10月19日(木)14:00~16:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
社会資本整備
農林水産
3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
神田副大臣 矢倉副大臣 瀬戸大臣政務官 佐藤大臣政務官 寺岡次長 前田次長 大沢総務課長 木村主計企画官 三原司計課長 西村法規課長 山本給与共済課長 横山調査課長 有利主計官 山岸主計官 小野主計官 佐久間主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 端本主計官 松本主計官 漆畑主計官 尾﨑主計官 後藤主計官 小野寺主計監査官 西尾主計企画官 小田切公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 宮島香澄 |
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臨時委員 |
上村敏之 小黒一正 木村旬 末澤豪謙 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 吉川洋 |
午後2時00分開会
〔増田分科会長代理〕間もなく開始しますが、本日はマスコミが入りますので、まず冒頭のカメラを入れたいと思います。それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、冒頭から神田副大臣、矢倉副大臣にお越しいただいております。ありがとうございます。また、佐藤大臣政務官にはオンラインで御参加をいただいております。瀬戸大臣政務官も後ほどお越しいただく予定となっております。
本日の議題ですが、二つありまして、「社会資本整備」「農林水産」でございます。
それでは、報道関係者はそろそろ御退室ください。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、以降、事務局説明を行います。
まず尾﨑主計官から「社会資本整備」について、簡潔に説明をお願いします。
〔尾﨑主計官〕それでは、私から「社会資本整備」について御説明をさせていただきます。
次のページにある3点について、本日は御説明をさせていただきたく存じます。
まず、1番目の「公共投資をめぐる現状と課題」でございます。
3ページになります。公共投資は長期にわたって国際的に比較しても高い水準で行われてきた結果、右の表にありますように資本ストックが極めて高い水準にあります。
4ページです。社会インフラは概成しつつあります。1988年と比較いたしますと、真ん中の「直近の整備状況」というところにありますように、例えば高規格幹線道路が事業中区間も含めて2.8倍、滑走路2,000メートル以上の空港が2.0倍に増えているという状況になります。
5ページです。公共事業関係費は、平成26年度以降、当初予算では6兆円程度でございますが、国土強靱化3か年緊急対策、5か年加速化対策などにより近年予算規模は増加しておりまして、令和4年度では全体で8兆円規模となっております。
6ページでございます。棒グラフは民間と公共を足した建設投資額でございます。真ん中あたりにあります平成22年度と比較いたしますと、直近の令和5年度の見込みとして70.3兆円ということになりまして、7割増の規模となっております。他方、紫の折れ線が建設技能者、現場で作業に従事していただいている方でございますが、その数は同じ期間で1割減少しておりまして、工事額は増えるが人は減っているということになっているところでございます。
7ページです。足もとの労働需給環境でございますが、左の表は令和4年度平均の職業別の有効求人倍率でございます。一番左の黒が全業種平均1.19倍となっておりますが、赤が建設業関係、軒並み高い水準となっておりまして、総じて見れば労働需給はタイトな方向ではないかとみられます。右の表は大手建設業者の手持ち工事量でございまして、目安とされる12か月より、足もとは高い水準の手持ち工事量となっております。こうした状況も踏まえまして、今後の公共投資の適切な規模を見極める必要があるというふうに考えております。
次に11ページ、2番目の「防災・減災、国土強靱化の進捗と課題」でございます。
12ページ、防災・減災、国土強靱化につきましては、3か年、5か年の対策により取り組んできたところです。
13ページでございます。防災・減災、国土強靱化はハード整備のみならず、様々なソフト対策にも取り組んできました。ここでは事前放流の取組が進んでいる例と、線状降水帯の事前予測が精度を上げているという例を示しているところでございます。
14ページです。ハードとソフトを組み合わせた結果といたしまして、防災・減災、国土強靱化の取組は一定の成果が出ています。左側の絵は、ほぼ降水量が同じ量の令和元年の台風と今年の大雨を比較いたしましたが、下にありますとおり、氾濫した河川や公共土木施設の被害額などが大幅に減っております。
ただし、今後の防災・減災、国土強靱化の取組においては、様々な要素を勘案しながらやっていかなければいけないと考えておりまして、その重要な要素の一つが人口減少です。
15ページでございます。我が国は御承知のとおり人口減少が進んでいます。左下の横の帯グラフを御覧いただければと存じますが、こちらは2015年に人が住んでいる地域について、2050年に人口がどうなっているのかということを示したものです。御覧のとおり誰も住まなくなる地域が18.7%、加えて、それを含めまして全国の約8割の地域で人口が30%以上減少するという推計になっております。このような人口減少を踏まえまして、将来世代にも確実に受益が及ぶ事業に一層の重点化を図るべきと考えます。
16ページです。ハード事業においては費用便益分析、すなわちB/C分析を行っております。左下の表にありますが、河川・ダム事業や港湾整備事業におきましては、この評価に当たって将来の人口減少が反映されていないという課題が見られます。より精度の高い評価が事業の優先順位づけなどに当たり不可欠であるというふうに考えております。
17ページです。国土強靱化に向けた取組では、事業ごとにKPIを設定いたします。左の表、下水道事業のKPIを御覧いただくと、近年浸水実績がある39万ヘクタール全てを対象として、中長期的には100%実施するということを目標としております。しかし、今後、人口減少が進むことも勘案したKPIにすべきではないか、少なくともKPIは不断の見直しが不可欠であるというふうに考えます。
ここまで、人口減少を今後の防災等の事業において十分に勘案していくべきであるということを申し上げてきましたが、では、災害リスクエリアにおける人口はどうなっているのかということをお示ししているのが次のスライドになります。
18ページです。左の棒グラフでございますが、都道府県ごとの全体の人口増減率と洪水浸水想定区域の人口増減率を表したものです。点線の中の2行目、「うち」から始まるところを御覧いただくと、21の道府県で人口は減少しているが、洪水浸水想定区域内の人口が増加しているという状況になっています。また、右側の図ですが、ある自治体の例で、居住誘導区域を緑色の部分として定めているわけですが、この区域を定めた後に、下の四角にありますが、7,015戸の住宅が建築されたところ、居住誘導区域外に2,770戸、うち浸水想定区域内に603戸が建築されているということでございまして、全ての住宅建築が必ずしも居住誘導区域内ではないという状況になっています。
19ページです。人口減少に対して国交省でもコンパクトシティ政策を推進しておりまして、立地適正化計画の策定と居住誘導区域の設定を促進し、人口密度を維持して行政コストの削減などを目指しています。ところが、右側のグラフにありますとおり、立地適正化計画の未策定自治体が6割以上になっております。その下にありますとおり、立地適正化計画の策定に取り組んでいない自治体については、国交省として新規の都市事業の補助対象にしないということにはしているのですが、それ以外の道路ですとか治水ですとか住宅ですとか、そうした個別事業は引き続き支援対象となっているというところでございます。
20ページでございます。左の表で青の部分が居住誘導区域ということになっているわけですが、そこをつなぐ道路を作りますと、左下の写真のように、居住誘導区域の外ですが住宅が集まってしまうというような状況がありまして、コンパクトシティ政策はそれ単体ではなくて、道路政策などとも連携する必要があると考えます。右の表をご覧頂くと、災害リスクエリアにおける開発規制などが行われているわけでございますが、他方で規制上の様々な課題の中で、下に囲みの中の例えば②、災害レッドゾーンにおける開発規制で、マンション建築は規制対象ですが、自己居住用の住宅、すなわち自分が住むための住宅は規制の対象外となっています。居住の自由との関係は十分に踏まえなければならないと考えますが、規制として実効的に機能しているか、検証が必要ではないかと考える次第です。
21ページです。さらに、新築住宅に対する支援についてです。左側が令和4年度補正予算のこどもエコすまい支援事業で、1,500億円が措置されておるところでございます。高い省エネ性能を有する新築住宅に対して、1戸当たり100万円を補助するというものです。この制度で立地に関する要件としては、③として赤字になっている災害レッドゾーンの外に立地というもののみであり、矢印の下にありますとおり、災害レッドゾーンの外にあるが5メートルの浸水リスクエリアにある住宅についても同等の支援となっているということでございます。また、右側ですが、ある自治体において近年、洪水で被害を受けた地域に被災地区以外から移住すれば補助金を出すというような取組をしておられまして、災害リスクの高いエリアへ居住を誘導するような政策になっています。防災・減災の観点からは、支援については災害リスクの低いエリアへの居住を促す内容とすべきです。
22ページです。土地利用規制と組み合わせた雄物川の治水対策の好例でございます。左の図は、仮に下流部の整備を待って連続堤防で対策を行うと時間が約19年、事業費として約63億円かかるというような想定がありました。そこで右側の写真のように土地利用規制を水色の部分にかけまして、その部分は洪水時には浸水してもやむを得ないとしつつ、住宅がある本当に守らなければならない地域だけ輪中堤をつくることで期間とコストが安く済んだという事例でございます。実際、今年7月の大雨の際には家屋の浸水被害は回避されたということでございます。このような形で時間短縮、コスト効率化に資する治水対策に優先的に予算を配分していく必要があるというふうに考えます。
24ページでございます。これまで河川の話をしてまいりましたが、津波・高潮対策での海岸堤防につきましても、ハード事業をリスクの高い地域について鋭意進めておりますが、ソフト対策としての津波災害警戒区域等の指定について、右の表にありますが、津波・高潮とも未指定の区域というのがまだ半分程度あるということでございます。この分野でもハードとソフトの対策を一体で進めていく必要があるというふうに考えております。
以上が大きな2点目でございます。
最後に大きな3点目ということで、「地域公共交通について」を御説明させていただきます。
27ページでございます。地域公共交通の利用者でございますが、道路整備の進展やマイカーの普及を背景に減少しておりまして、コロナで更に落ち込んでいるところです。路線バス等に対しては、下の右側の上の表にありますとおり、国が赤字の2分の1を欠損補助するという制度がございますが、このコロナ禍でその額は大きくなっているところです。上の囲みの三つ目の○を御覧いただきたいのですが、公共交通は、基本は料金収入をもって運営されるべきものであります。ただし、仮に収益性が見込めなくとも地域の判断として公共交通を維持することは当然あり得るというふうに思いますが、その際には、まず地域の自治体が、主体的に利用促進や経営改善などの様々な取組を最大限行う必要があるというふうに考えています。その上で、国の支援の在り方を検討すべきです。
28ページでございます。経営の効率化の取組として、独占禁止法の特例としての地域の複数会社による乗合バスの共同経営や、オンデマンド交通の実証実験などを御紹介しています。
29ページでございます。地域公共交通はそれ単体で考えるのではなく、まちづくりとの一体的な検討が重要です。下の真ん中のナント市の事例では、赤いところには車は乗り入れず、公共交通で移動するというまちづくりで公共交通の利用を促しています。令和7年度以降は、上の三つ目の○にありますとおり、先ほど御紹介した欠損補助を受けるに当たって地域公共交通計画の作成が要件となるわけですが、例えば、立地適正化計画との連携強化が重要と考えております。
以上が地方公共交通についてでございます。
最後に32ページでございますが、9月28日の当審議会におきまして吉川委員から、観光庁の予算はどの程度になっているのか、ワイズ・スペンディングはワイズ・アクションを伴ってこそであるという御指摘について、1枚、表を作らせていただきました。観光庁予算の推移は棒グラフ、黄色の線が訪日外国人旅行者数の増加を示しております。黄色の線の外国人観光客の旅客数が増える中では、ビザ免除など様々なアクションがなされて、一体として効果が出ているというふうに考えておる次第でございます。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、漆畑主計官から「農林水産」について、同じく簡潔に説明をお願いします。
〔漆畑主計官〕よろしくお願いします。
早速、3ページをお開きいただければと思います。昨今の農政を取り巻く状況でございますが、国際情勢等々により食品、原材料価格の高騰等、食料安全保障の問題が顕在化しているところでございます。また、気候変動による世界的な食料生産の不安定化等も言われているところでございます。このような中、食料・農業・農村基本法の二十数年ぶりの見直しの議論がなされているところであり、これについては本年6月、下にあるとおりでございますが、総理本部長の下、本部で新たな展開方向が提示されたところでございます。
4ページでございます。この新たな展開方向に従い、今後は基本法の見直しの議論が進むことになると思いますが、その際、思い切った構造転換の議論も進める必要があると思ってございます。下の左側に「新たな展開方向」における考え方を整理してございますが、こちらについてそれぞれ今回、右側で対応する論点を取り上げてございます。それぞれこれから後ろで説明させていただきます。
6ページでございます。まず食料生産面での論点の一つ目、転作でございます。1.のグラフにございますように、青い折れ線が主食用米の需要でございますが、右肩下がりで落ちてきているところでございます。これについて毎年、転作助成金、水活交付金ですね、こちらで転作を支援し、生産量を調整しているところでございます。昨年は飼料用米の一般品種について、2.にあるように単価の段階的な引下げを行っているところでございます。今後、人口減少のもと、主食用米の需要が更に減少されることが見込まれる中、畑地化の推進を進めるとともに、交付単価の見直しなど、適正化に取り組んでいく必要があるのではないかと思ってございます。
7ページでございます。さらに、食料安全保障の観点から、小麦・大豆、非常に大きく輸入に依存しているものでございますが、国内の生産力を高める必要がありますが、生産性を見ると、1.にございますが、我が国の単位当たりの収量というのは小麦・大豆とも停滞しているような状況で、大豆に至ってはむしろ減少気味なのではないかなと思います。これについては、2.にあるように、水田よりも畑作でつくるほうが生産性がよいにもかかわらず、水活交付金があるために、3.のグラフにございますように、水田でつくり続けてしまうのではないかということと、また、水活交付金は収量に関係なく面積に応じて交付金が交付される仕組みになっていることも一因ではないかなと考えてございます。今後、引き続き畑地化をしっかり進めるとともに、水活交付金については生産性向上を意識した仕組みにしていく必要があるのではないかなと考えているところでございます。
次に8ページ目、生産面での課題の二つ目のテーマでございますが、セーフティネットでございます。現状は1.の表にあるとおり、様々なリスクに備えるために品目別の補填制度がございまして、さらに一番下でございますが、令和元年から品目横断的な収入保険が創設され、選択加入が可能になったところでございます。右側の2.を見ていただければと思いますが、従来の制度から収入保険、そちらに移行は進んでいるところでございますが、グラフにあるとおり支払金額で見ますと、青の点線囲みのとおりですが、収入保険が導入とともにそのままオンされるような形になってございまして、あわせて、青い折れ線が国費でございますが、国費も増えているような状況でございます。
9ページでございます。1.のグラフを見ていただきますと、ナラシ対策の支払金額と米価の関係でございますが、主食用米について過剰な生産により米価が下落すると、その補填としてナラシの支払いが増えている、そうしたのが見てとれるかと思います。右側、2.の野菜についても毎年レタスやキャベツなどの特定の品目で支払いが発生しているような状況で、需要に応じた供給計画になっていないのが現状ではないかなと思ってございます。セーフティネットは本来、需要に応じた生産が適切に機能した上で、それでもなお農業者が避けられないような収入減、そうしたものを補填することを意図した仕組みになるべきなのでしょうが、こうしたものをしっかり考えながら制度の在り方を考えていく必要があるのかなと思ってございます。
10ページでございます。セーフティネットの中核を担う収入保険のほうでございますが、令和元年から品目横断的に創設されました。概要については1.にあるとおりでございますが、保険方式と積立方式、2段構えになってございます。積立方式のほうですが、保険事故を起こすと保険料が上がったとか、保険金の受取実績とか、そうしたものに関係なく、加入者が事前に積立金額を設定して、その3倍が国庫から補助される仕組みになってございます。つまり表にあるとおり、被保険者負担が25%、国庫が75%付き合うという、そうした仕組みになってございます。右側の3.を見ていただければと思いますが、支払いのところですが、当然ですが、棒グラフの一番上の緑色の部分、積立の部分が全体を圧迫している状況になってございまして、積立方式から保険方式への移行など、持続可能になるような制度での見直しを進めるべきではないかなと考えてございます。
11ページは参考でございますので、次のテーマ、13ページへ飛んでいただければと思います。
13ページからが生産基盤の論点の一つ目でございます。農業人材の確保でございます。我が国の新規就農を見ますと、一番上の1.のグラフにございますとおり、5万人程度で推移してございまして、内訳は棒グラフの上から青い部分、法人等に雇用される雇用就農者、緑の部分、自ら土地を調達して農業経営を始める新規参入者、赤い部分が会社員等から自営農業を始める自営農業就農者の3種類でございます。赤い部分の自営農業就農者については、2.左下の円グラフを見ていただければと思いますが、半分が65歳以上など、定年退職後に親の自営農業を承継するような親元就農が多いような、そんな状況でございます。
14ページでございます。次に、自ら資金・農地を確保して参入してくる新規参入者でございますが、1.にあるとおり様々な支援制度がございます。ただ、他方で、2.を見ていただければと思いますが、就農5年たっても半分弱が農業所得のみでは生計を維持できない状況で、このため、真ん中の表がございますが、家族の非農業収入などを切り崩して不足分を賄っている、そんなような状況になってございまして、さらに一番右側、生活面でも課題を抱えながら営農しているような、そんな状況でございます。
15ページでございます。農業人材の確保という観点では確かに1.にございます基幹的農業従事者、主に自営農業に従事する、そうした個人経営体は減少傾向なのですが、他方で、一番下のほうの棒グラフですが、法人経営体に雇用される就農者、雇用就農は増加傾向にございます。右側の2.にあるように、法人経営体も増加しており、1億円を稼ぐような法人も増加しているような状況でございます。3.のグラフでございますが、法人経営体が農産物の販売金額で4割弱を生産している状況であり、このような状況を踏まえて、親元就農や零細の自営農業経営体での就農なども含めて、これまで支援してきたところですが、雇用就農をしっかりと増加させて、生産性の高い農業へ転換を図る必要があるのではないかなということを考えてございます。
16ページでございます。雇用就農をしっかり促していく上でも労働環境の改善は重要であると思ってございます。右側の2.はアンケートでございますが、休暇の確保とか、経営者の人柄、労災保険の加入などが重要な要素になっているにもかかわらず、左側を見ていただければと思いますが、労働基準法が適用除外等々になってございまして、雇用就農を促す上でも障害になっているような可能性のある制度とか、そうしたものについても今後見直しを考えていく必要があるのではないかと考えてございます。
17ページでございます。最後のテーマがスマート農業でございます。2.にあるように、これまで実証はかなりやってきてございまして、これからいかに実装していくかが課題であると思ってございます。この点、スマート技術は導入コストも高く、高いスキルが求められることから、小規模経営体での活用というのは経済的に成り立ちにくい、そうした可能性もございますので、大規模経営体を中心に考えていく必要があるのではないかなということを考えてございます。
18ページでございます。とはいえ、小規模事業体でのスマート農業を諦めるのかということなのですが、昨今、民間の農業支援サービス事業体というものがございまして、1.にあるとおり様々なサービス提供をしているところでございます。他方で、こうしたサービス事業体、認知が十分、真ん中の円グラフですが、進んでいないところもございますので、スマート技術の実装という観点からも、このサービス事業体をうまく活用していくことが重要ではないかなと思ってございます。
説明は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
本日は欠席の伊達委員、安永委員、芳野委員より意見書、そして事務局からは財政総論の追加参考資料を提出いただいておりますので、説明資料と同様に各端末に格納しております。お目通しをいただきたいと思います。
それでは、ただいまから委員の皆様方からの御意見、御質問を頂戴したいと思います。会場の方はネームプレート、オンラインの方は「挙手するボタン」での合図をお願いします。本日も、大変恐縮ですが、限られた時間の中でできるだけ多くの方々に御発言いただくために、御発言は手短に、3分以内で是非よろしくお願いいたします。会場から5名、そしてその後、オンラインから5名と、いつもと同様に進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
では、会場でまず広瀬委員から5名ほど、皆様方に御発言いただきたいと思います。
初めに、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕社会資本整備について一言申し上げたいと思います。社会インフラは将来の投資と、こう言われているわけですが、投資と言うからには国でも企業でもやはり投資効率、費用対効果、これをきちんとやっていくというのが言わずもがなですが、効果・目的という面ではいくつかあると思うのですが、一つは先ほど御説明がありましたがレジリエンス、国土強靱化ですね、これは非常に分かりやすいというか、特に最近、非常に頻発化、あるいはいろいろな災害が強くなっていますから、そうした面では非常に良い。それから二つ目が、これはなかなかあれなのですが、地方の活性化という視点です。最近、産業も国内回帰が進んでいますし、それから農産品の輸出とか、あるいはインバウンドとか、相当地方が今活性化してきております。言ってみれば地方の稼ぐ力、こうした産業なり、雇用、そうした面での効果、あるいは目的というのもあるのかなと。それから三つ目は、これはなかなか分かりにくいところなのですが、社会的な安全・安心ですね。日本は社会的に安全・安心というのは非常に高いわけですが、これは維持していくためにはいろいろなことをやっているわけで、それがインバウンドにつながったり、あるいは産業が海外から日本に来るという、これは極めてベーシックなインフラであると思います。そうした面で、いろいろな効果・目的を含めて考えなくてはいけないと思うのですが、むしろ実際は費用というか、どうやってそれを抑えていくかということで、私はあまりバラマキという言葉は好きではないのですが、とにかくバラマキになるというのが一番の問題であると思うのですが、そのためにはビジョンとか、あるいは基本政策とか、いろいろな呼び方がありますが、それをきちんとまずつくっておくと。これは割と今、政府はそうしたビジョンとか長期政策とかというものをつくっていただいているので、是非これはこれからもきちんとやっていただきたいと。
それから、日本固有の問題としてこれから考えなくてはいけないのは、先ほどありましたが、一つは人口が減少すると。人口が減少する中でインフラをどうやって整備というか、維持していくかということですね。それからもう一つは、日本の地政学的な、山がちな国で、本当に狭いところに多くの人が住まなくてはいけないと。そうしたような日本固有の人口減少、あるいはそうした地政学的なものを踏まえて、どうしていくかと。そのときに一番問題になるのが、ネットワーク的なインフラというのが非常にその辺が難しくなるわけですが、水道とか、あるいは交通とか、コンパクトシティ、いろいろ今言われておりますが、先ほどありましたように基本的には受益者負担と、こうしたことをいつの時代でも確認しておくということが必要かなというふうに思っています。特に心配しているのが水道ですね。これは本当にいろいろな問題が先送りされているので、住民の人に負担していただくというのは非常につらいわけですが、何らかの対応をしていかないと、これはにっちもさっちもいかなくなっているのではないかなというふうに思っています。
そうしたことで、費用対効果、特にある面では厳しいが分かっていただくと。そのためにはメディアの重要性というのが非常に高いのではないかなと。最近、JRのほうでそうした協議会が始まったとか、そうしたいろいろな報道がされておりますが、そうした報道の中で世の中の流れを国民が理解してもらえるという面では、メディアのウエートというのが非常に大きいかなというふうに思っています。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明されたこと、おおむね私もこの方向で良いのではないかなというふうに思いました。その上で、社会資本整備と農林水産でそれぞれ一つずつコメントを申し上げたいと思います。
社会資本整備なのですが、一つは国土強靱化ですね。これまで3か年緊急対策で7兆円ですか。それが5か年加速化計画で15兆円ですね。かなり手厚く実施され、もちろん命を守る政策は大切なのですが、でも、御説明によると大雨による被害というのは以前に比べて随分、相当程度低減されて、災害への対応力が増したなと。確かに何年か前に比べると随分、大きな台風とかが来ると言われても被害というのは結構少なくなったなという感じはいたします。そうやって一定の成果を上げられるということは良いことなのですが、これを今後の防災・減災対策にどう生かしていくかということが問われていると思います。要するに、ハード整備にひたすら金額を積み上げるのではなくて、早めの避難とか、ソフト対策も組み合わせて効率的な対策に努める必要があると。実際、5か年加速化計画はまだ計画の期間中ですし、さらに政府が検討されている経済対策でも国土強靱化が柱の一つになっておりますが、例えば5か年加速化計画とかでも予定どおりの金額ありきではなくて、これまでの成果を生かして金額を圧縮できる余地はないかとか、今後の経済対策でも効率的な国土強靱化につなげていっていただきたいなというのが一つです。
それからもう一つ、コンパクトシティなのですが、人口減少時代を踏まえて自治体の在り方として、これは欠かせない要素であると思いますし、資料で御説明されたとおり、防災・減災のみならず、地域公共交通の効率化、持続可能性の観点からも、このコンパクトシティというのは極めて重要であると思います。ただ、その要となる具体的な立地適正化計画となると、6割の自治体が策定すらしていないというのは少し驚きですよね。街の規模が小さくなるということを受け入れるのが嫌なのかもしれませんが、これまでの大規模開発が果たして多くの自治体にとって好ましい結果になったか、最近、中心部のテナントが空洞化するとか、そうした事態をむしろ招いているのではないかと思います。あるいは、空き家がこれだけ多くなっているのに、災害リスクエリアに新築住宅を建てて、被害になってしまえば、あまりにちぐはぐではないかという気もします。むしろ、このコンパクトシティ化によって自治体経営が効率化されて、それで浮いた費用を新たな魅力あるまちづくりに回せるという、そうしたメリットも出てくるのではないかと。だから、街が縮むのを恐れるのではなくて、縮んだその先に別の豊かさがまた広がっているのではないかなということに目を向ける時代ではないかなというふうに思います。そのためにも、資料にあるように立地適正化計画を策定するインセンティブ、あるいは作成していないディスインセンティブをきちんと検討していく必要があると思います。
すみません、長くなって、あと1点だけ。農林水産、生産基盤に関してですが、日本の農業政策というのはここ10年ぐらいの間で大きく変化してきたと思います。要するに2010年代に入って、TPPをはじめとして貿易自由化の路線にかじを切りましたが、最近になってまた国際情勢の変化に伴って食料安全保障とか、需給力強化を求める声が強まりましたが、政策のベクトルとしてはこの二つ、貿易自由化と食料安全保障と逆のベクトルのように見えますが、求められていることは基本的に変わらないのではないかと。つまり貿易自由化に対応するには国際競争力を高めて生産性を向上させることが必要だし、食料安全保障や需給力強化も生産性の向上というのが欠かせない要素であると思います。いずれにしても、資料で説明されたように、法人経営体の数とか規模を増やして生産性の高い農業へと転換を図ることが大事であると思います。食料安全保障と言うと、保護主義的な政策というのですか、農家を現状維持を優先するような政策が連想されるのですが、それでは農業の未来というのは決して切り開けないというふうに思います。若い世代を引きつけるような労働環境の改善とか、スマート農業の推進のためにも、法人経営体を後押しするような支援をこれから具体化していただきたいと、そうしたふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞお願いします。
〔宮島委員〕まず社会資本整備ですが、これに関しましては、まずは次世代にとっても良いもので、そして持続可能であるかということ、それから地域全体にとって良いものであるかどうか、自治体がしっかり責任を持って全体を見てやっているかということと、縦割りを防ぐと、その四つを強く求めたいと思います。国土交通行政が若干縦割りであるために、私から見ても、結局、道路と鉄道を同時に一生懸命頑張った結果として両方が、取り合いが起こって今の地域交通のインフラの問題がにっちもさっちもいかなくなるというようなところもありますし、お互いに負の部分を打ち消し合うようなところにお金を使うことがないようにということが非常に重要で、建設事業者もいなくなっていることですし、より施策にはメリハリが必要であるというふうに思いますが、そのベースは次世代にとってトータルで本当に必要かどうかということであると思います。
都市計画に関しましても、広げたはよいが、後で減っていって撤退して、そしてそこに整備したインフラが無駄になるようなというようなことがないように、今の日本は好きなところに住んで、そこのどこにでも十分なインフラをつくるほどの余裕はもうないと思うので、そこは地域におけるちゃんとした計画がしっかりあることが良いと思います。
地域交通インフラに関しましては、協議会ができるようになったところはまずスタートとしてよいと思うのですが、協議会に出ているメンバーによっては、結局、今あれもこれも欲しい、あれもこれも残してほしいということを言って、それでそれに対して国にお金くださいというようなことになりかねないと思っています。協議会にどんな人が入るのか、特にちゃんと未来の、次の世代も維持できることを考えられる人が入るかどうかということは非常に重要であると思っておりまして、支援をする上でもそこら辺の自治体の責任感ですとか、地域の主体性ということをしっかり見ていただきたいというふうに思います。
農水に関しましては、全体的にとにかく入ってくる人が減るので、どの人も歓迎したいのは分かるのですが、そこはどの人も歓迎するのはやめて、メリハリをつけてほしいなというふうに思っております。やはり農業をそのまま何となく、サラリーマンがリタイアしてやる人もありがたいのですが、結果的に零細企業で新しいことを考えたくない、今までどおりにやりたいという人を増やしてしまっては、そうではない人のある意味ストッパーになってしまう部分もあると思うのですね。農業は新しい若い人材も欲しいと思っているのですが、今までと同じようなことをやりたい人がたくさんいるところに若い人材が行きたいはずがないと思います。ここの業態は変革したいのだな、今の時代に合いたいのだな、次のことをしっかり考えているのだなということを農業が見せられるようにならないと、そもそも若い人が入ってくるはずもないと思うので、そうしたことを考えれば、サラリーマンにある程度同等な環境といいますか、保険も含めて、できるだけ会社に入るか、農業しようか、どっちにしようかなということを考えられるような体制を整えるのが必要であると思いますし、より需要や未来のニーズに対してしっかり変革をしているところを優先的にお金をつける、支援をするという形をとっていただきたいと思います。畑作転換などは、明確に畑作に踏み切ったほうがお得であるというようなメッセージを出さないと、どっちも良いよという、ふらふらしたところに相当人が残ってしまうのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕全体として御説明いただいた内容に同意いたします。社会資本について2点、農林水産について1点、コメントをさせていただきます。
一点目、毎年述べていますが、コンパクト化、立地適正化の必要性についてです。皆様おっしゃったとおり、人口減は昔から予想されていますし、近年は多少被害が和らいだとしても自然災害が毎年起きることを前提にしますと、災害リスクがある地域には新たには住まないとのコンセンサスを持って様々な施策を打つ必要があると思います。
ところが、本日の御説明でも災害リスクへの居住をむしろ促す施策がとられたり、あるいは人口が減少している地域でも、洪水浸水地域で人が増えている状況が相変わらず、続いているのは、これは国として放置していてよいのでしょうかという問題意識を持っています。従来より住んでいる場合はやむをえないですが、新規に促すことは、国あるいは地方自治体のトップとしての責任が問われると思いますので、是非国民の命を守るということで、こうした地域への流入をしっかり規制する施策、先ほどインセンティブ・ディスインセンティブという言葉もございましたが、策定を行っていない自治体に対して何らかのディスインセンティブ、あるいは行っている地域をより応援するのか、一歩踏み込んだ対策を講じる時期に来ているのではないかと考えます。
2点目は、民間投資についてです。6ページのグラフです。日本銀行の短観によりますと国内の設備投資は非常に高い計画値になっています。つまり、ここでの黄色の民間投資が更に増えていくことが示されていますが、御案内のとおり、この分野は非常に人手不足です。その状況で青の政府投資に金額だけ積んでも、公共投資を行うために民間投資を抑制するという事態になりかねず、岸田政権で掲げている好循環の歯止めになる可能性もあります。官で予想されている投資でも、安心・安全のためであったり、これがなければ民の投資につながらないというものもありますので、そこは取捨選択をした上で、民の投資を抑制しない官の投資のメリハリづけ、ここを是非お願いしたいと思います。
続いて、農林水産でございます。昨年、水活交付金の見直しなどに着手いただいたこと、これは大変よい取組と思います。あわせて、今回は二十数年ぶりの基本法の見直しのタイミングにあるということですので、この機に大きなグランドデザイン、今後どうあるべきかを議論いただく必要があると思います。産業として魅力ある、付加価値がつく分野にしていかなければ若い人も来ません。また、食料安全保障を考えても、この部分で一定程度競争力向上が必要と思いますので、そこを戦略として描いていただいて、その上で若者に魅力ある産業として必要な分野や、国際競争力を高めるのに必要な手段に予算をつけ、それが結果的に食料安全保障にもつながるということを是非お示しいただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、どうぞお願いします。
〔大槻委員〕まず社会資本整備なのですが、様々きめ細やかな施策をお示しいただいて賛成しております。武田さんからもありましたが、やはりグランドデザインは重要だなと。それから宮島さんからもありましたが、縦割りの話、省庁横断的にやっていただいて、今、社会資本整備の関連であると国土形成計画もつくっていらっしゃるところであると理解しておりますので、農業基本法と同時にこちらも、国土形成計画についても一つに、一括で、国の在り方全体、配分をどうするかというアセットアロケーションの観点から行っていただきたいなと思います。省庁横断的にと言いましたが、先ほど広瀬委員からもあったネットワークも含めて、総務省の管轄になるかと理解していますが、それらも全て包括的に大きなピクチャーからまずたどっていっていただかないと、御指摘いただいたようなダブりの問題ですとか、そうしたことが出てくるのではなかろうかと思っております。
社会資本についてもう一言、ワイズ・アクションを促しましょうと、吉川委員がおっしゃった観点でございまして、結局、人々が動いていないというところで危険地域に行ってしまうということなのですが、確かに自治体のほうの問題もあると思います。それと、やはり安いと買ってしまう心というのが人々にございますので、不動産仲介のほう、規制を厳しくしていただいており、危険地域についてしっかり示すということなのですが、私も何回か経験がありますが、非常に見づらく、ほぼ誰も注意を払わず、仲介としては売りたいという気持ちもございますので、ワイズ・アクションが行われていないと。これをもう少し促すような、これは規制のほうになるかもしれませんが、考えていただきたいというのが1点です。
それから、農水のほうです。これも先ほどの冒頭、全体像ということが1点と、もう一つはリスクベースの保険ということで、収入保険という形で統一していかれるということなので、とにかく一つのリスクソースに対していくつも重複しているということは回避いただく形の方向性が良いのかと思っています。
それから、法人経営体の活発化ということにいても賛成をしております。特に今も何人か御指摘のとおり、地方のベンチャー育成という点で非常にポジティブな効果が見込めると思っておりますので、補助金なども含めて、何か農業ベンチャーを一層手厚く、将来に夢がある形に誘導いただけるような、そうした施策も併せて考えていただければなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。ここで一旦、オンラインに移りたいと思います。ウェブで参加されている方で以下の5名の方、佐藤委員、福田委員、横田委員、吉川委員、上村委員、この順番で指名しますので、どうぞ順次御発言いただきたいと思います。
初めに、佐藤委員、どうぞお願いします。
〔佐藤委員〕社会資本整備、それから農林水産、それぞれ3点ほど簡単にコメントさせていただきます。
まず社会資本ですが、やはりコンパクト化、それから防災、そして公共交通は三位一体で進めていく必要があると思います。ただ、地方行政も縦割りでして、所管が違うと全くこの辺りの連携がとれないということがありますので、やはり自治体ごとに総合計画、これら三つを含む総合計画をつくって、それを推進していくという、そうした体制づくりが必要かと思いました。
また、公共交通についてですが、公共交通と言うとバスの話が出るのですが、なぜかタクシーがないのですよね。本当は地方においては、公共交通はタクシーも含めるべきですし、あとはライドシェア、これは規制改革の話になってしまいますが、ライドシェアとか自動運転とか、こうしたものも多岐に含めて公共交通として位置づけて、人口減少の中における街の公共交通の在り方を考えていくということが必要であると思います。
また、ややもすれば、あれも欲しい、これも欲しい、公共交通の管理・維持のためには補助金を求めるということがありますが、この辺で興味深いのは滋賀県の取組でありまして、滋賀県では公共交通の整備というのを自分たちの税金を使ってやろうという、そうした試みをして、住民に対してもいろいろな説明会を開こうとしているのですね。こうしたのをある種のベストプラクティスというか、好事例としてほかの都道府県にも展開していくことがあってしかるべきかと思いました。
農業については3点ですが、もっと農業生産法人の活用というのがあってしかるべきであると思います。大規模化しないことには農業の生産性というのは高まりません。しかし、今、農業生産法人にも様々な規制がかかっていて、なかなか要件が厳しいんですね。ですので、これであると新しい担い手の確保につながりませんので、是非規制改革を併せてですね、農業生産法人の活用というのを進めていく必要があると思います。
また、経済安全保障の観点から、最近食糧自給率の話が出ますが、いくら米をつくっても、肥料とか、あるいは家畜もそうなのですが、肥料・飼料が海外からの輸入に頼っていたのではあまり話にならないわけですから、サプライチェーン全体の見える化というのがあってよいのかなと思います。例のバターのときもそうだったと思うのですが、どこかにボトルネックがあると本来、下流のほうに十分な製品が流れていかないということになりますので、やはりサプライチェーン全体の見える化を農業の分野においても進めていく必要があると思います。
最後に、価格補填ですね。セーフティネットとしてナラシ対策を含む価格補填と、今、収入保険というのが併存している感じになりますが、全体としては保険のほうにセーフティネットを寄せていくという、そうした転換があってよいのかなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて福田委員、お願いします。
〔福田委員〕私からは社会資本整備と農業に関して、それぞれ簡単にコメントさせていただきたいと思います。
まず御提案のあった人口減少下で社会資本整備を見直さなければいけないという考え方は大賛成ですし、これからますます人口は減っていくわけですので、それに応じて見直さなければいけないということなんだろうとは思います。ただ、人口の減り方が一様ではないということは少し注意、より配慮する必要があって、人口の減っている地域というのは、残っている人たちは高齢者ばかりになっている地域というのが非常にあるという、そうした地域でどういうふうに物事を考えるかというのは大事な問題で、例えばお亡くなりになるのをじっと待つということではなくて、例えばその方にどこかに移住してもらうような工夫をするとか、そうしたよりきめ細かい対応をしながら、人口減少で不必要な公共事業をしなくて済むような対策をしていくということは大事なのではないかとは思いました。
それから、災害リスクエリアに人が住んでしまうという問題は非常に深刻な問題で、いろいろとリスクがあるところはそれなりに分かっているのだが、地価が安いから住むというケースが非常にあって、逆にインセンティブが、リスクがあるという意味ではインセンティブはないのですが、地価が安いから住んでしまうというふうなことがないような工夫というのをしないとなかなか、社会的には大きなコストを払わなければいけなくなってしまいますので、注意する必要はあるのかなとは思います。
それから、建設業の人手不足は非常に深刻で、それに向けた対応はしなければいけないというのはおっしゃるとおりであると思いますが、建設業者の人手不足というのは日本全体の人手不足より、より深刻であるということ、かつ担い手が現状でもかなり高齢化しているということがありますので、この人手が減っているというのはしようがないというふうにはしないで、育成するというプログラムはそれなりにきちんとやるということに関してはやらないと、さすがに見直すだけではなかなか対応できない問題もあるのかなとは思いました。
農業に関しても、事務局がおっしゃるとおり、新しい魅力ある人材を育成するような農業をいかに育てるかというのは大事であると思います。その際、あまり論点としてなかったのは、農業というのは季節性がある仕事であるという点は少し、新しい人たちが仕事を始める上では考えてもらう必要があって、普通のサラリーマンのように1年中収穫できて、収入があるわけでもない作物というのは少なからずあるわけですね。あるいは、常に忙しいわけでもない。そうしたときに、例えば若い人が農業を始められるかというと、そうしたライフプランは立てにくいという問題はどうしても起こります。例えば新潟であれば、お米づくりを夏はするのだが、冬はスキー場で働くとか、そうした感じになっている人たちも多いのではないかと思うのです。昔は冬は出稼ぎだったのですが、最近はスキー場で働く。そうした全体、1年を通じた生活設計というのをどういうふうにつくって、新しい農業の担い手というのが生まれていくのかということを総合的に考えていく必要はあるのかなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして横田委員、お願いします。
〔横田委員〕私からは、社会資本整備1点と農水に関して2点、意見を申し上げます。
まず公共事業ですね。これまで先生方もお話しいただいているところではあるのです、人手不足と物価高騰のダブルパンチで、入札も不成立になっている状況が発生していると伺っております。さらに、2024年、建設業も労働時間の上限規制がかかってくる、対象になってくるので、より深刻になるのが来年だろうというふうに考えております。過渡期の混乱も見込まれますし、今、民間との奪い合いをしている時期でもないので、公共事業においては本当に必要不可欠なものに限定をしていくなど、より一層吟味をする必要があるというふうに考えます。
次に、農水について。10ページ目の収入保険についてです。御説明を伺ったところでは、初期、加入促進を行うために結構リッチなプラン内容になっているというふうに伺いました。加入促進の初期の段階の特典ということであれば、本来は時限的措置としておくのがよかったという考えはあるものの、現状で一定の加入数を超えているのであれば、御提案をいただいているとおり、特典の部分を減らして、ならしていくということが重要ですし、すぐにできることではないので、早めに検討し、早期に予告をして変更していくということを御検討いただきたいと思います。
2点目は、農業の大規模化と新技術の活用についてです。大規模経営体が効率的な生産性の向上と雇用の安定というところに寄与しているということはよく分かりましたし、大規模経営体に重点的に補助をしていくということも賛成ではあります。一方で、現状でこれ以上、法人経営体がどんどん増えていくというよりも、長いことかけて法人化をしていく、要は小規模事業体が緩やかに法人化していくための階段を設ける必要もあるかなというふうに思ってます。法人化を待っている間に新しい技術を活用しないということであれば時間的にもったいない。申し上げたいのは、小規模事業体同士の連携を組んで新しい技術を使っていくことを促進していくということも現実論では必要ではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕私からは、本日は参考資料として配付していただきましたインバウンドのグラフですね、前回の会議でお願いしたもの、早速つくっていただいてありがとうございました。頂いた資料を拝見すると、令和元年以前、令和元年が700億くらいでしょうか、それ以前の予算、使ったお金を足し算しても3,000億にはいかないということがすぐ分かるかと思うんですね。もう一方で、インバウンドの消費のほうは、御存じのとおりコロナで激減したのは事実ですが、現在回復していて、コロナ以前に戻るかを期待されますが、毎年のように3兆、4兆、目標は5兆ということですが、フローで支出がなされるということです。そうなると長期的に金利が3%なら年々のフローのプレゼントバリューは33倍、金利が2%であると50倍というオーダーになるわけですが、もちろんリターンに当たるインバウンドの消費全てが国のアクションの成果だけではないわけで、民間の努力もあったわけですが、皆様、目の子算でやられれば、どう固めに見ても3,000億くらいのお金を使って、それに基づくゲイン、プレゼントバリューというのは100倍を超えるということは間違いないと。B/Cということであれば、ほとんど考え得るベストのリターンであると。
しかし、前回の会議でも指摘させていただきましたが、ポイントはお金というよりは、ここにもいくつか挙げてありますが、政府のアクション、ビザの緩和とか、総じて様々な改革、これは政府にしかできないわけですが、方向として適切な様々な改革がなされた結果であると。それをワイズ・アクションと前回の会議では申し上げました。ですから、本日のテーマである社会資本整備、あるいは農業についても、この点は文字どおり当てはまると思います。ワイズ・アクション、必要な改革を政府がしっかり進めるということが何より大切であると思います。
資料に基づく御説明、基本的な方向は賛成です。農業で提案されている事柄というのは大分以前から提案されていることも多い、残念ながら遅いというのが偽らざる感想です。是非ともワイズ・アクションを進めていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕私からは社会資本整備について2点、農業について2点、申し上げます。
まずは社会資本整備です。第1に15ページの将来の人口減少・居住動態を見据えたハード整備についてです。無居住化が進むと考えられる地域についてですが、これは社会資本の仕組みをいかにスムーズに進めるかを検討する必要があると思います。私が関わっている地方自治体でも、無居住地域の課題が見えてきています。道路、橋梁はもろちん、また、上下水道についても縮減戦略を描くべきであると思います。縦割りの弊害はあるのですが、維持コストがばかになりませんし、コンパクトシティを形成する上でも非常に重要であると思います。
第2に16ページ、人口減少等を踏まえた適切な事業評価の必要性についてですが、B/Cに人口減少を適切に考慮すべきであるということですが、全くそのとおりであると思います。人口減少だけでなく、今の資材費や労務費の高騰でコロナ禍前に着工した公共事業の事後的なB/Cはかなり1を割り込んでいると考えられます。資材費や労務費の上昇で計画段階と実施段階の費用が乖離しているわけですが、着工後に追加的に財政資金を投入せざるを得なくなっている状況が増えていると思います。もちろん計画段階で、ここまで上昇するとは見込めなかったかもしれませんが、今後は人口減少と物価上昇についてB/Cに適切に反映すべきであると思います。計画段階と実施段階のコストの乖離については、可能な限り縮減していく必要があります、そのためにも事前のB/Cと事後のB/Cの乖離を分析するということで、適切なB/Cの在り方を検討するためにもそれが必要であると思います。
続いて農業です。第1に10ページ、収入保険制度ですが、11ページにあるように、他のセーフティネット制度の重複があるならば、それを整理すべきであると思います。2019年に農業共済事業が行政事業レビューの対象になったのですが、収入保険制度の対象は全品目で、農業共済の品目は限られていると聞いていました。収入保険を創設されたわけですが、そうすると農業共済を縮小すべきではないかと。つまりセーフティネット事業の間で重複する部分があるのだったら整理すべきであるというような指摘がされています。8ページにあるように、セーフティネットの金額の推移が農業共済はほとんど減っていないというように見えるのですが、そうすると重複の排除や役割分担といった改革がなされていたのかどうかということを検証する必要があります。
二つ目ですが、これは大きな話ですが、今回の農業の話は生産面に関する構造転換に関して交付金など助成金がテーマになっていたわけですが、農地の土地利用についても考察すべきではないかと思いました。農地は土地利用が非常に硬直的になっていますが、人口減少が進む中で資源配分の効率性のためには、土地利用の柔軟な仕組みを検討するということが重要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻りまして、続いて小黒委員から、どうぞお願いします。
〔小黒委員〕今後の急激な人口減少を踏まえると、コンパクトシティの推進は私も極めて重要な施策であると思います。この関係で2点ほどコメントさせていただきます。
1点目は人口の密度と生産性との関係です。例えば経済産業研究所の森川所長の分析によりますと、製造業も似た状況ですが、特にサービス業の生産性は人口密度と強く相関しているとしています。人口密度の高い大都市ほど生産性が高い傾向がありますが、人口密度が低い地域は逆に低い傾向があります。ですから、経済学的には今後の人口減少で人口密度が低い地域が増加すればするほど、日本全体の生産性は低下していくということであると思います。本日の御説明では、立地適正化計画との関係で災害リスクエリアにおける開発規制の在り方などが取り上げられておりましたが、このような規制の在り方のみならず、更に一段踏み込み、都市部などの人口密度をどう維持するか、深く御検討いただけないかと思います。特に災害リスクの高い地域のほか、先ほども福田委員からご指摘がありましたが、急激な人口減少が進む地域でも、特に土地の値段が安くなるということで、こうした地域にそれ以外の地域で住居を確保できない人々などが流入してくる問題をどう制御するのかという問題を解決する必要があると思います。
私は個人的には、一つのヒントとしては、地方交付税交付金のほか、あと各種交付金、補助金などですね、こうしたものをもう少し活用できないかと思います。例えば人口増加の経済では、都市部で混雑コストが発生することから、これらの地域への居住を抑制するため、理論的には都市部から地方に交付税などを移転することによって都市部への人口の流入を抑制するというような施策的な意味があったと思います。ですが、現在は人口減少の時代ですので、人口密度の維持や向上を図った試みを行った地域ほど多くの補助金や交付金が獲得できるというような仕組み、他方で、バラマキにならないように、先ほど上村委員からもお話がありましたが、インフラ整備を進め、それ以外の地域では交付金などの大幅な縮減をしていくという方法もあると思います。あるいは、例えばですが、固定資産税などを増やしていくというような施策に転換して、人口密度を維持・向上させ、そして日本全体の生産性を高めていくという施策が重要になってくるのではないかと思います。現在でも一定の施策が存在することは十分承知しておりますが、このような転換の拡充も御検討いただけないかなと思います。
2点目は都市部の人口密度の維持と時間軸との関係になります。今後の時間軸という視点では、既に御説明、資料でありましたが、2050年で人口が30%減少する地域が全体の8割、それから未居住となる地域が全体の2割となるというような形になっています。また、日本全体でも人口が2割ぐらい減っていくという形になっています。このため、地方創生などの施策で地域の人口の維持を試みる、こうした施策の趣旨は十分理解していますが、2040年、2050年以降になれば、当然首都圏でも人口減少が進み、人口の密度が低下していくということになります。そうした意味で、地方創生との関係で東京一極集中の是正や、それから例えば23区内の大学定員の規制などが進められておりますが、東京を含む首都圏の人口密度が低下していけば、冒頭に挙げた森川所長の研究成果との関係でも、将来日本の経済力が一層低下するという懸念はないかというふうに危惧しております。岸田首相が今力を注いでいる賃上げのコアは成長になります。現在はセンサー技術を用いた自動運転の走行や、あるいはドローンとか、政府でも成長戦略として新しい動きも出てきていますが、東京は日本の全体の成長を牽引するエンジンでもあり、社会資本整備の在り方について選択と集中のほか、都市部の人口密度の維持や日本全体の生産性の向上との関係で時間軸や効率性の視点も考慮して、更に踏み込んだ御検討をお願いしたく思います。
最後に、簡単に農林水産のところで、食料安全保障の観点から、予算の話ではないのですが、気になっている点を一つだけコメントさせていただきます。もう御存じであると思いますが、例えばですが、牛肉と豚肉と鶏肉を1キログラム生産する場合に、トウモロコシの換算で、牛肉の場合は11キログラム、豚肉の場合は6キログラム、鶏肉の場合は4キログラムという換算になっています。本当に食料安全保障という観点で何か起こったときに、国民の食料を供給するという観点で考えると、こうしたときに例えば牛肉のほうの穀物を鶏肉のほうに回せば、もっと生産できるわけですよね。そうしたような、ちゃんとした食料安全保障のようなものもきちんと御検討いただけないかなというふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕何点かお話をしたいと思います。先ほど吉川先生からもあったのですが、社会資本整備も農林水産も、お聞きしていくといろいろなことが少しずつ進んでいるのは分かるのですが、言われているポイントはあまり変わっておらず、そうした意味では長い時間かかっているという感じはどうしても否めないなというふうに思いました。それはなぜかと考えると、そこに住んでいる人にどきなさいというのはなかなかできないことや、それから農業だって、高齢者の人たちがだんだん体力がなくなったり、亡くなったりしてやめていくのを待っている感じ、そうすると基本的にはそれを自由な発想のもと、待ってしまっているので、なかなかアクティブに動いていかないのだろうというふうには思います。もちろん個人の自由が尊重されるのは当たり前のことなのですが、これでは進まないよねというふうには思います。ある程度、強制力やペナルティや法整備やということを考えていかないと、進むものも進まないのではないかというふうに考える次第です。
社会資本整備のほうでありました、6ページの建設投資額と技能者数のグラフは、多くの方がコメントされていましたが、本当に衝撃的な絵であると思うのですね。日本はサステナブルではありませんよということをこの絵からも理解することができる。ですので、どういうふうに働き手を確保するかだけではなくて、公共事業を含めて、どれぐらいの工事が可能かということも考えなければいけないというふうに思うのです。そうした意味では、何が優先順位でやっていくのか、このまま、また公共工事をがんがんやりますよとなっても、どこかでボトルネックが来ることをこの表は表しているし、突き進んでも物価が上がるだけ、供給力に資する間もなくいろいろなネガティブなことが起きるのではないかというふうに思わせてくれてしまうかなというふうに思います。
また、もう1点が災害リスクエリアに人口増はおかしいというのは言うまでもないことなのですが、もう一つ、22ページで御説明いただいた土地利用規制と組み合わせることで時間を短縮して、コストを効率化させる治水対策に優先的にやっていこうという御説明があって、大変共感するのですが、難しいのはどれが優先的なのかということを決めることかと思います。フィージビリティがあるかどうか分からないので、この辺は感触を教えていただければうれしいと思いました。
農業のほうなのですが、農林水産と言いながら農業だけだったわけなのですが、今は水産業のほうも割と注目されているので、この辺のフォローアップもお願いしたいというふうに思います。もちろん割合が大きいということはよく分かった上で申し上げてみました。
それから、3ページに農業についていろいろ書いてあって、今回、「環境と調和のとれた食料システムの確立」という一言が入っております。ここが入っているので、入っているでしょうと言われたらそのとおりなのですが、私が見ているESGのエリア、SDGsのエリアでいくと、農業というのはもっと問題になってしかるべきというふうに思います。環境との関わりや、それから物理的リスクというのは、農業は大変大きく抱えているので、同じことだけをやっているように見えてしまう施策だけではなくて、そうした新しいものについても是非取り入れて、付け加えて開拓していっていただきたいなというふうに思いました。交付金がどうしても農業体の競争力に資する工夫を阻害している面が否めないと思うので、そこを厳しく、どうやって選別するのか、食糧自給率か、カロリー自給率か分かりませんが、安全保障の観点で農業を保護していくのであれば、それはそれとして、どれぐらいの供給量が必要で、どれぐらいのものが見込めるかということまでやっていけるかどうかということを検討していただきたいというふうに思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕私からは農林水産のところを中心に、最後に一言、社会資本整備についても言わせていただきます。
いろいろ御説明くださったとおり、農水のところ、農業の担い手が徐々にですが変わりつつあって、15ページとかでお示しくださったように、要するに売上げベースとかで見ると法人経営体による部分というのがすごくウエートも上がってきているし、稼げるようなところもすごく出てきているというのも事実で、移行に時間がかかるのは、中空委員おっしゃるとおり、いろいろ問題なところもありますが、そうした流れを後押しするような政策をやっていくのがよいのではないかなというふうに思います。
その流れのもとで、私も非常に問題ではないかなと思いますのは、今回重点的に取り上げてくださったセーフティネットのところなんですね。既に何人もの委員の方が言及してくださいましたが、5ページの辺りですね、収入保険の制度が入って、一部保険というふうな形で、自己負担をしてもらうような形でセーフティネットを少しずつ張り替えていきましょうという、そうした農水省のお考えもあって、いきなり自己負担だけで、保険だけということであるとなかなか難しいところもあるので、恐らくそうした、恐らく配慮があったのだろうなというふうに想像しますが、積立方式というのも併せて入れられてということでやったのだろうなというふうに想像はするのですが、でも、5ページの棒グラフを見ると、少しびっくり、令和3年度、何でこんなに増えているのかなと。農業共済とかとの間で選択制であるというふうに伺っている割には、旧来からの制度の部分ですよね、オレンジのところの農業共済のところとかというのが減っているかなというと、そんなに減っている感じでもないですし、選択性だったら二重取りはないはずなのでしょうが、これは本当にないのかしらのような気がしてしまったりもするところがあります。
また、このセーフティネット自体が、農業と言うと零細の弱者というか、零細的にやっていらっしゃる事業者、農業者の方を前提に制度が組まれているようなところもあるような気がしまして、こうした制度を全部見ると、つくり過ぎて豊作になってもセーフティネットで支援してもらえて、天災があって大凶作になってしまってもいろいろ支援してもらえてということで、正直申し上げるとあまりリスクはないのだなという感じがしますよね。
そうした現実もある一方で、このセーフティネット、このセーフティネットの制度の概要というのが11ページのところでお書きくださっていますが、個人だけではなくて、こうした法人経営体のところも、収入保険とかも対象になっていて、積立のほうも対象になるということでしょうかね。そこまでする必要があるのかなと。加入者負担の3倍の金額を国費から補助、これも少しびっくりで、年金の世界で確定給付と確定拠出という話があって、確定給付なんて、この低金利の時代にやっていけないから、だんだん確定拠出という流れになっていると思いますが、これはすごいですよね。国費が負担して確定給付のような感じですよね。そのお金は一体どこから出てくるのかなというふうに思いますし、本当に個人でやっていらっしゃる零細のところの支援と、それから大規模な法人経営でそれなりの収益性も高くてというところの同列の支援で本当に良いのかな、そうしたところをもっときちんと検証してやったほうが良いのではないのかなというふうに思います。
そのときに、この制度の担い手のことを事前に御質問させていただいたら、農業共済とかをやっていらっしゃる全国農業共済組合連合会で担っていらっしゃるということで、保険となっているが財投でもないし、農水省の傘下の独法がやっていれば、またいろいろデータを出せとか、規律づけ、がかかると思うのですが、そうではないと。ですから、今申し上げたような問題点をきちんとデータを出していただいて、検証することが必要であると思うのですが、そうした意味でも、一般会計の予算の議論のときにしっかりとそうしたところを農水省のほうにもお尋ねしていただいて、国民にきちんと説明していただいて、既に何人もの委員の方々が指摘されていますが、基本的に保険のほうに寄せていくとか、それから積立のほうも、一体誰に対してこれを認めるのかという制度的な要件も考えるとか、検討していく必要があるのではないかなというふうに思います。
また、社会資本整備のところで一言だけです。いろいろなところを御指摘、御説明くださって、ありがとうございました。本当にハード対策だけでなくて、防災という意味でも、私も本当にこのソフトの対策がやはり効いていたんだなということを本当に思いました。同じ大雨が降っても全然、実際に起きる災害が違ったという御説明もあったので、そのとおりであると思いました。そうした考え方で進めていく必要があると思いますので、人口減少ということですね、それから既に社会資本が、整備率、かなり高くなっているということ、そして、あと財政事情ですよね。人口減少ということは先々の納税、担税力というか、税金を納める力が基本的に頭数の分、落ちてくるということを意味するわけですから、そうしたことも考えて、あまりつくり過ぎると後々の維持コストもかさんで、それも後の世代の負担になるので、本当に必要なものだけをということの考え方を徹底していくべきではないかと思います。
それから居住地域の誘導についてなのですが、確かにここはすごく難しいところがあって、財産権の侵害とかの関係もあるかもしれないし、先ほど福田先生、地価が安いからというふうな話もされていて、本当にそうであると思うのですが、現状、住宅については、新築住宅についてはこうした安全なエリアに建てるときにという政策的な誘導がつくられていると思いますが、既存住宅のところも対象にした何らかの、なるべく安全なところに住んでもらうようにするような、そうした政策の枠組みを考えていったほうが良いのではないかなというふうに思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕まずは社会資本整備について申し上げます。先ほどから皆様からすでに御指摘されていますし、大槻さんからはアセットアロケーションというお話もありましたが、人口減少やインフラの老朽化、激甚災害頻発という事態を踏まえると、地方のまちづくりや土地の利用政策と、社会資本整備を同期させて最適化していくことが財政運営のみならず、日本の将来の地域社会の活力を保つためにも重要であると思います。特に15ページ以下をはじめ、今回の御説明は、こうした考え方に立つものになっており、基本的に賛同いたします。その上で2点申し上げます。
1点目は、既に多くの方に御指摘されているコンパクト化についてです。今年の夏に策定された国土形成計画ならびに国土利用計画では、従来と比べてコンパクト化への言及が減っています。これは恐らく、地方で必ずしも人気のある政策ではなく、また、あまりうまくいっていないということが背景にあるのではないかと思いますが、小黒さんからもお話があったとおり、インフラの維持・更新や防災・減災対策の推進、自治体サービスの安定的な供給を含めて、人口減少下において、特にスポンジ化を食い止めて地域社会の活力を維持していく上で最も有効となるのはコンパクト化だと思います。であるにもかかわらず、19ページにあるように、立地適正化計画の策定状況ははかばかしくなく、計画策定地域においても事前届け出等の勧告制度だけでは集住化は進んでいかないと思われます。既に皆様から御指摘されているように、財政面からのインセンティブに加えて、市街化調整区域の開発規制の厳格化などの規制強化とコスト負担等によるディスインセンティブを組み合わせて対応する必要があると思います。
一方で、都市部における人口密度と生産性が高い相関性をもつという小黒さんのお話は経済学的に言えば当然のことですし、戦後日本はずっとそれをやってきたわけです。地方の人口減少を受けて、集住化を更に推し進めるべきという議論もよく分かりますが、一極集中のリスクが高まることも事実なので、何か手だてを講じる必要があります。本質的には、インセンティブ・ディスインセンティブや、規制だけに頼るのではなく、住民たちにとっての快適さや利便性をもたらすような新しい構想を考え、そして、それを先ほどから申し上げているような様々な行政上の取り組みやインセンティブ・ディスインセンティブと組み合わせていくことが必要ではないかと思います。
例えば、私の出身地である岐阜では、最近も都心部のデパートが閉鎖されるという報道がありましたが、人口20万、30万人規模の都市はシャッター街化が進んでいるという状況です。今回、29ページでも御紹介されているナントのようなウォーカブルシティ、歩ける街という概念は、最近、国交省からも言われ始めていますが、地方の街でも、車社会と歩ける街を両立させるような手法となっており、公共交通機関の整備という文脈を越えて、本当に楽しく住めるまちづくりというアイデアにもつながると思っています。これらも上手く組み合わせながら、東京一極集中を回避しつつ、日本全体の社会の活力と生産性を維持していく必要があると思います。
2点目は、縦割りを廃した国の推進体制の必要性についてです。地方の独自性や地方による自治は非常に大事と思いますが、国による総合的な推進体制も必要であると思います。すなわち、国交省所管の社会資本整備だけではなく、病院、学校、下水道の在り方が省庁横断的に十分議論された上で、それに基づいて各地域において将来の人口規模に合わせた形での地域社会全体の将来像を描き直し、インフラの再編計画を具体的に策定していくことが必要です。地域交通機関や生活関連インフラの将来計画が明示されれば、時間はかかるかもしれませんが、将来公共インフラのアクセスが悪化することが明らかな地域への人口移動を抑制する効果はあるはずです。しかし、先ほども少し申し上げたとおり、総務省所管の公共施設等総合管理計画が国交省所管の立地適正化計画と有機的に連動していないこともあり、インフラの数値目標を設けている自治体は少数派になっていますし、将来計画として施設の集約・廃止に踏み込む先は限定的で、長寿命化が大半を占めるような状況では困ります。21ページ右側にもあるとおり、自治体にとって、郊外を開発することは人口の獲得競争や当面の税収増といった誘因があるわけです。やや地方自治に反するかもしれませんが、地域医療構想も同じように進んでいないことを思い起こせば、自治体任せではなく、全体最適化のために国が一定のガイドラインを示して、各自治体により踏み込んだ総合計画の具体化を求めていくべきではないかと考えます。
次に農業について申し上げます。国際情勢が緊迫する中で食料安全保障への関心が高まっている現状を、従来滞りがちだった課題を解決する上でのチャンスと捉えるべきです。一方、安全保障を理由に経済合理性を無視して食糧自給率を高めればよいという議論に流れてしまえば、皆様から御指摘されているように、財政支出の増加に留まらず、補助金漬けによる農業の弱体化を招くという従来の悪循環に拍車をかけることにもなりかねません。
したがって、この局面で重要となるのは、まず、国際情勢や人口動態、気候変動によるリスクなども勘案して内外の食糧自給の予測をつくり、その上で佐藤さんもおっしゃったように、サプライチェーンも含めて国内の生産、輸入、備蓄の適切なバランスをどうするか、自給率向上のためにどの農作物の作付けをどの程度増やす必要があるか、というような日本の農業が中長期で目指すべき姿を武田さんがおっしゃったグランドデザインとして描くことです。くわえて、この機会にそれを実現するためには、インセンティブや規制・ペナルティだけではなく、市場メカニズムをどう取り入れるかということを本格的に議論すべきではないかと思います。本日の資料や皆様からの御指摘で示された極めて珍妙なケースは、価格形成や需給調整において市場メカニズムを取り入れるべきであるということのエビデンスであると思っています。
安全保障と言うと、市場メカニズムとは別次元の話のようになってしまいますが、国内の安定生産には、第1に、平素から生産性を高めること、強靱な事業体質をつくり上げること、第2に、新陳代謝を伴いつつ農業の持続可能性を維持することが不可欠。そうした観点からも、今回指摘していただいている点は全て賛成ですが、生産基盤のミッシング・ピースである担い手不足に関しては、従来、農地法で制限されていた株式会社による農地取得を条件つきながら全国で認めるという動きについては更に進めていけばよいと思いますが、14ページで御指摘されている低収益の主因となる農地の集約、集積化の遅れは、やっかいな問題ですが、食料安全保障についてさかんに取り沙汰されていることをきっかけに、改めて議論を喚起すべきではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、どうぞお願いします。
〔末澤委員〕これは毎回申し上げているのですが、やはり日本国、日本社会、日本経済にとって最大の課題は人口減、少子高齢化であると思うのです。それにどういった対応をするか。そうした意味では、基本的には私は統合や大規模化、あとICTやデジタル化、加えて、アウトソーシングによる集約と、そうした三つの観点が必要であると思っているのですが、実は本日テーマになっています建設・農業ですね、ここはやや特殊な分野であると思っています。どこが違うかと言うと、この二つの分野は基本的に屋外で業務に従事しているんですね。かつてから建設業は3K、きつい、汚い、危険と言われて、実は今も65、年齢層が高いんですね。農業も同様なんです。私はその部分が相当大きいのではないかと。本日出ました農業のほうのアンケート調査でも、14ページの一番右下、黄色いところにあります。新規就農者の生活面での課題、「思うように休暇がとれない」「健康上の不安(労働がきつい)」、これはやはり屋外の労働の影響が大きいんですね。つまり雨の日は仕事ができないので、晴れの日に行かなくてはいけない。16ページ、今度は就農経験者等の意見でも同じなんですね。右側を御覧いただくと、1番は「経営者の人柄」ですが、2番目が「労災保険の加入」なんですよ。通常、ほかの業種で労災保険の加入がこんなウエートが高いのはあまりないんですね。つまり、けが等のリスクが相当高いと。これは実は今の若者にとって一番嫌いなところなんですね。今は車の運転すらしませんから。なかなかバスの運転手、タクシーの運転手が増えないのは当然であると思うんですね。そうすると、今後どうなるかというと、私はますます厳しくなってくると。
実は、平野さん、岐阜ですか、私は四国の香川県出身なのですが、政務官と御一緒でございますが、40年ほど前に東京に出てきまして、そのときの印象は、東京の夏は涼しいなと、関西に比べると。と思っていたんですね。ただ、今年、御案内のとおり東京都心の猛暑日は、最高気温35度以上ですね、22日です。これは断トツで多いです。過去はたしか16日ですね。東京都心で30度以上の真夏日、これは90日です。これも過去は恐らく71日だったと思います。断トツに高いんです。25度以上の夏日、実は本日25度を超えまして139日になりました。過去最高が140日。明日も天気予報では25度以上なので、恐らく記録、最多タイ、場合によっては更新すると。つまり東京で見ると、3か月、90日が真夏ですよ。5か月近くが夏なんですね。東京でさえ、そうであると。ということは地方はもっと厳しい、特に関西などであると。これは何が起きるかというと、熱中症のリスクがどんどん高まってくるし、気象災害、かつては一番お米がうまかったのは新潟県と言われていましたが、今年、新潟は不作ですよね。昔はB級米だった北海道が今はA級米になっている。明らかに気候が変わっていっているんですよ。
今年、夏が暑かった、今後どうなるか。今年がピークかと。そんなことはないです。実は今月になりまして、世界気象機関とアメリカ海洋大気局が2023年の世界の最高気温は統計観測史上、過去最高になるという見通しを出しています。ちなみに米海洋大気局の見通しでは、今年が最高になる確率はなんと99%超です。ほぼ100%。では、今年がピークかと。そうではないですね。実は今年は5月頃にエルニーニョ現象が発生しまして、通常エルニーニョ現象の影響は翌年に強く現れると言われています。その関係で世界気象機関は、今年より来年の気温のほうが高いという予想を既に出しているんですね。ということは年々高くなっていくんですよ。つまり、だから特に建設でも農業でも、従来の経験をもとに作業とかをやると相当厳しいことになると。同じものは当然、農業、漁業、とれないですね。そうした面では、より情報、ICTが必要ですし、人が足りないなら何をやるかと。危ない仕事は、私は機械にやってもらったほうが良いと思います。
実はその機械にやってもらうという意味で、本日の財審の会合を見据えて発表したのではないかとも思ったのですが、実際はないと思いますが、大手ゼネコンの鹿島が昨日発表していまして、クワッドアクセルというシステムなんですね。全自動施行システムです。今、秋田県の成瀬ダム、これは日本最大規模のダムなのですが、これをつくっているのですが、全自動、ダンプからブルドーザーまで、14台使って全自動です。コントロールは神奈川県の小田原でやっているんですね。本当に未来社会のことなのですが、これを実は実証でやっていると。今、公共事業でやっています。私は今、自動運転で、タクシーだ、バスであると言う人がいるのですが、街中で運転するのは相当危ないと思うんですよ。まずは人のいない、そうした公共事業とか、農地等でまずやってもらう。クボタさんも頑張っていますが、そうしたのをもっと早めないと、まず同じものはつくれません。しかも去年と今年は気候が違うと、違うものをつくらなくてはいけないという分析も必要になってきますが、実はこの建設とか農業の分野ほど、むしろICT化と機械化が必要であると。これは待ったなしであると。遅れていますが、逆に言えば人がいないのだったら、それをやるしかないということで、むしろ私はこの産業に本当に全勢力をつけないと、安全保障どころではないです、はっきり言って。というふうに考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで一旦、オンラインに移ります。次の二人の委員、堀委員、それから小林委員と御発言いただきますが、時間も厳しくなってきており、全体で最低でももう6人の方が発言すると思いますので、少し短めに、是非おまとめいただければと思います。
それでは、堀委員から、どうぞお願いします。
〔堀委員〕社会資本について。人口減少、地域ごとに将来人口の動態の予測に合わせて事業を進めていくということは大賛成なのですが、先ほど佐藤委員からも御意見があったと思うのですが、公共交通機関について、バスだけで見るのは限界があるのではないかと。他の委員からもコメントがありましたが、高齢者の多い街での暮らし、あるいは地域の産業構造によっては、タクシー、ライドシェア、あるいは自転車道路の整備というのもあると思うんですね。最近はグーグルマップで交通手段を検索すると、自転車も含めてですが、どのツールが誰にとって一番早く行けるかというのが出てきます。そうしたデータを蓄積したものをAIなどで分析した上で、総合的にどうした都市計画が望ましいか、公共交通機関として何が重点的に残すべきなのかを検討できるのではないかと思います。
MaaS、これはフィンランドで進められているものですが、MaaSやスマートモビリティチャレンジなども、日本でも実証実験が行われていると思いますので、そうしたデータも活用して総合的に見ていただくと良いのではないか。また、先ほど平野委員がおっしゃったことにも賛成なのですが、病院であるとか学校であるとか、そうした公共インフラの整備計画の在り方もこうした交通インフラとの関係がありますので、地方自治体で総合計画をつくるときには、縦割りではなくて総合的な視点で見ていただくことが重要ではないかと思います。
もう1点だけ、これは農業についてですが、DXが進む北欧の国の事例が参考になるのではないかと。たとえば、デンマークは農業先進国でもありますが、ICTの活用を非常に進めております。ただ、そのときに、業界の自発性のみに任せるだけではなく、産官学で連携し、どのようにスマート農業を進めるのかが検討されています。そうした縦割りではない横断的な視点というものもスマート農業を進めるためには必要ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林委員、お願いします。
〔小林委員〕途中参加ですので、皆様と議論がかぶってしまうかもしれませんが、社会資本整備と農業について、それぞれ一つだけお話ししたいと思います。
人口減少下での社会資本整備の見直しは非常に重要であると思います。その中でコンパクトシティの構想というものを進めていくべきであるという話は全く大賛成なのですが、このときに自治体の境界線が今のままで本当に良いのか、あるいは今の自治体の境界線を前提にした議論で良いのかというようなこともあるだろうと思います。これは平野委員が先ほどおっしゃっていたような話、あるいは小黒さんがおっしゃっていたような話ともつながる、同じかもしれませんが、要するに総務省の地方自治の世界と国土交通省の社会資本整備の政策、これらがある種縦割りのようになっていることを解消しなければいけないのではないかということであると思います。コンパクトシティを進めていくためには、恐らく市町村の境界線を越えて都市機能を集約していくと。そして社会資本のインフラも集約していくということが必要になってくるのだろうというふうに思います。あるいは、市町村だけではなくて都道府県の境界線を越えて集約化が進む、進めなければいけないというようなことも出てくるのではないかと。そうであるとすると、都市機能を集約化した地域を維持する代わりに、別の市町村とか、あるいは別の地域は衰退していくことを認めざるを得ないというか、認めなければいけないと、こうしたことがどうしても起こってくるので、これは市町村レベルの地方自治体の自主性に任せておくだけでは、なかなか意思決定が進まないということではないかと思います。ですので、地方自治について、平野さんがさっきおっしゃっていましたが、全体最適を達成するための広域的な意思決定の仕組みというものをまず国が用意して、それを都道府県、あるいは市町村のレベルでも共有していくと。そうした国全体の意思決定の仕組みづくりというものがまず必要になってくるのではないかなというように思います。これが1点目。
二つ目、農業について簡単に言いたいのですが、生産基盤の構造転換は非常に重要なのであると思います。その中で、資料には一部書いてあるのですが、恐らく論点になっていなかったのは、輸出マーケットをどれだけ重視するかということであると思います。生産基盤を効率化して拡充するためには、対象としているマーケットの大きさというのが重要で、マーケットが大きければ大きいほど生産基盤が分業化して効率化していくとか、あるいはリスクを分散できる、それこそいろいろな補助金が必要なくなるような、リスクの分散もマーケットの大きさによってできるということであると思いますので、やはり輸出進行型の農業政策というものをもっと前面に打ち出していくべきなのではないかということです。要するに農業を輸出産業にすることによってリスクを分散していく、そして成長のドライバーにしていくということが必要なのではないかというように考えております。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻ります。続いて、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕社会資本整備について3点です。公共投資の適切な規模を考える際に、現在といいますか、B/Cを見ますが、利用されるかということだけではなくて、それが残る場合の将来の維持費用につきましても念頭に置いて議論を行うべきではないかと思っています。人口減の中で、あるいは人口が維持されていようとも、メンテナンスのコストというのは非常に大きくなっていくわけですので、その点について、よく査定の際にも御検討されること、あらかじめ検討することというのが重要であると思います。
それからもう一つは、居住を誘導する区域以外で新たな住居が整備されるということで、こちらも多くの委員が触れているところではありますが、やはり一度生活が始まってしまうと、移動してくださいというのは、個人の生活にとっても大変ですし、また、自治体や政治からしても切り捨てるような政策をすることというのは非常に困難になると思います。ですので、何がシビルミニマムなのかという定義を、何となく曖昧にみんなが共有しているようなところがありますが、ここを自治体ごとであろうと、あるいは国が主導してであろうと検討して、そうはいっても、それを越えて自己選択をする方というのは不便を承知でやられるということもあるかもしれませんし、そうしたところも念頭に置きながら、住むこと、それから補助することのガイドライン、及びグランドデザインをつくっていくことが重要であると思います。
3点目に、これは広瀬委員もおっしゃっていたことですが、ネットワークの維持については非常に難しい問題です。よく議論に上がるのがPFIを活用してはどうかということなのですが、もちろん視点を変えると収益性を見出せるということもあるかもしれないのですが、一方で、かなり難しいものもあります。民に頼って、民がやればうまくいくのではないかという議論がありますが、ここも現実的な解を求めていかないといけないと思います。こういった点も合わせて、どれだけその地域の維持なり、人々の生活の維持に費用がかかっていくのか、お金がかかっていくのかということを念頭に置きながら、大きなデザインがつくられていくことというのを強く求めたいと思います。
〔増田分科会長代理〕続きまして、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕私はまず最初に社会資本整備のことから申し上げたいと思いますが、これまでも何人かの委員がおっしゃっておられたように、人口減に対応したインフラ整備ということを考えていく必要があるだろうと思います。その点で言うと、災害リスクエリアに依然として新たに居住が増えているというところは大いなる問題であると思います。もちろん国と地方の権限配分をどうするかとか、人々の自由を尊重しなければいけないとか、いろいろ考えなくてはいけないことはありますが、来年度予算からでもできることはあると。それは補助金の要件厳格化であるということであると思います。まさに資料1の20ページにありますように、立地規制の抜け穴を防ぎつつ、災害リスクの低いエリアへの居住を促すことを補助金の要件にするというようなこともあり得るでしょうし、立地適正化計画を策定していない自治体が多いということであれば、策定していないならば補助金は出さないというようなことであるとか、居住誘導区域外への居住が行われないようにする措置がなければ補助しないとか、そうしたようなことも厳格化してやっていくということはあると思います。
それから何人かの委員の指摘もされましたが、災害リスクエリアの地価というのは安いと。だからこそ、それに対しては、政策的に考えられるのは固定資産税を上げることであるということなのですが、固定資産税を上げる権限は市町村にあるということであるならば、確かに率先して自主的にやっていただくのがベストですが、それが難しいということであれば、固定資産税率を上げていないということであれば補助しないというようなことであるとかという意味で補助金の要件を厳格化するということで、できるだけ多くの人が災害リスクエリアに居住しないように誘導していくということがもはや喫緊の課題ではないかというふうに思います。
もう1点だけ、社会資本については、資料1の16ページにありますように、B/C、これも人口減を踏まえた評価をする必要があると思います。特に整備新幹線がまだ新たにつくられるということになっているわけですが、右上にあるように新規事業化段階とその後のB/Cの状況が、まさにこんなような状況になるということは今後は絶対避けるべきであると思いますので、今後建設される整備新幹線についてはB/Cを適切に評価して、人口減を踏まえた評価をしていく必要があると思います。
農業についてでありますが、やはり何人かの委員も御指摘されましたが、農業の生産性向上というのは不可欠ですし、それは規模の経済性を発揮できる形でまだまだ我が国の農業には伸びしろがあるというふうに思います。資料にも御指摘がありましたように、雇用就農を増やすということ、それから法人経営体の数や規模を拡大するということは、これを促すことになるでしょうし、それから水活交付金についても畑地化促進をもっと補助の要件にするというような形にして、ますます生産性を向上していただきたいというふうに思います。
最後に、農業のセーフティネットに関連してなのですが、資料2の11ページにいろいろラインナップがあるということで、既にお示しいただいているところですが、農林水産省のホームページを見ますと、国費の二重助成を避けつつ、こうしたセーフティネットを設けていると言っておられます。実際は確かに収入保険と、それら以外の類似制度はどちらか一つに入るということを要件としているということではあるのですが、これまた農林水産省のホームページにQ&Aがあって、集落営農法人はナラシ対策に入っているが個人として収入保険に入れますかといったら、入れますと書いてあるわけですね。結局は二重助成ではないかというふうに思うわけでありまして、やはり二重助成に対する制度の利用が甘いと思います。ですから、確かにこの制度をもう少し分かりやすくするとか、重複がないように整理するということもゆくゆくはお願いしたいところですが、来年度予算からもできるという話であれば、やはり国費の二重助成を防ぐということ、これは農水省も言っているわけですから、二重助成をできるだけ行われないような形で保険の利用、ないしはその他の類似制度の利用というものをまずは厳格に進めていただくということをお願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕まず社会資本整備に関して2点申し上げます。第1に、議論の出発点として、今後我が国の人口が大幅に減少することなどを踏まえて、国が防災・減災や経済の活性化などに関するアウトカム目標を明確化した上でプライオリティづけを行い、全体最適に資するような社会資本整備に関するロードマップや鳥瞰図を示すべきです。これは複数年度予算の導入や中長期の財政計画の作成などにつながる議論であると思いますし、その過程ではここまで各委員が御指摘されたとおり、縦割りの徹底的な是正が喫緊の課題となることは間違いありません。
第2に、政策の実効性を高める意味では、インセンティブを与えて地方政府や民間の主体を好ましい方向に誘導するだけでは不十分であり、強制力を伴う規制の強化や災害レッドゾーンに居住するといった間違った行動に対するディスインセンティブを強化することが必要です。具体的には、土居委員からも御指摘のあった補助金の要件の厳格化に加えて、様々な政策を都市計画法の規制手段などとうまく連携させていくことが鍵となります。
次に、農業について2点申し上げます。まず第1に、食料の安定供給や農業者の経営安定化といった、いわば「守りの政策」と、労働生産性を向上させて農業を成長産業に変貌させていくという、いわば「攻めの政策」との間のバランスを回復することが重要です。もちろん、この二つは二律背反ではございませんが、現状の農業政策が前者、すなわち「守りの政策」を過度に重視する結果、後者の「攻めの政策」が極めておろそかになってきたことは疑う余地がありません。まずは政府がこの二つの視点をバランスよく取り込んだ我が国の農業が目指すべき将来像を示した上で、時間軸も含めたグランドデザインを策定することが農業の再生に向けた第一歩であると考えます。
以上の観点を踏まえた上で、例えば水活交付金などについては、引き続き制度の改善を図っていく必要がありますし、セーフティネット制度に関しても本来の制度の趣旨に立ち返り、情報開示を強化するとともに、速やかに積立方式から保険方式への移行や二重助成の排除などの必要な見直しを進めるべきです。
第2に、人口減少下で雇用就農の受け皿となっている大規模な法人経営体を育成することなどを通じて、スマート技術の実装などを促進することが不可欠です。以前から申し上げている点ですが、農業の産業としての競争力強化と食料安全保障とをバランスよく両立する解が輸出であると思いますので、引き続き農地の集約化、大規模化などを進めつつ、マーケットインの発想で農産品の輸出を促進するべきです。こうした目標を農林水産省などともしっかりと共有した上で、財政当局としてはメリハリをつけた政策を行っていただきたいと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕私からは社会資本整備で何点かと、農業で1点。
最初に、5ページの公共事業関係費をめぐるグラフというところで、令和2年度から当初予算と補正予算ということで、補正予算のほうが毎年きれいに2兆円台の数字が並んでいるというのはどういうことかと。補正予算というのはそもそも、当初予算作成後に緊急な事態があって、例えばコロナのようなことがあって、わっとお金が必要なときにやるものではないかと。しかるに、国土強靱化というのは国の政策としてやろうということになっているのに、なぜか毎年補正で組まれているというのはどういうことかという話を毎年担当主計官に聞くのですが、にやにや笑うばかりということです。私、やはり分かりにくい話がこうした予算をめぐってあると、なかなか国民も、予算のアカウンタビリティということで、何か信じてもらえないのではないかなということで、これは言ってもしようがないのですが、一応言っておきます。
それと、公共事業の規模に関して、人手不足という観点から考えるというのは、工事が発注してもやり切れないということもあるのですが、今、人手不足が賃金の上昇を通じてインフレにつながるということもありますし、アメリカの場合、コロナ禍で思いきり財政出動をやったら、それがまた景気の過熱、インフレにつながっているというのもあるので、今年は特にインフレを国民も意識しているので、そうした観点からも事業規模の適正化をお願いしたいと思います。
国土強靱化なのですが、私は国土強靱化というのは、一つは日本は災害が多いのですが、大災害に遭っても経済活動の基本線を維持する、基本的なインフラを守るということと、もう一つは災害に対して人の命を守るということであると思うんです。NHKも災害報道に力を入れていますが、やはり願いは犠牲者が出たという報道をすることがないということで、そうするとこれまでいろいろな、ダムやら堤防やらつくってきたのですが、昨今の自然災害の状況を見ると、ハードでは守り切れないということを前提に、ソフトに力を移すということは非常に良いことであると思うのですが、そのときに、レーダーで雨の動きを捉えるとか、それを防災無線でいち早く知らせるというのもあるのですが、最後の最後は動けないようなお年寄りとかをどうやって運んで守るかというところなので、ソフトウェアということでは、そうしたところまで含めて、人の命をどうやったら守れるか、そのときにどの道を生かしてどう運ぶかとか、その辺も綿密にやって、是非人の命を守ることにつながる社会資本の整備につなげていってもらいたいと思います。
それとコンパクトシティなのですが、私一つ思うのは、いろいろな地方へ行くと、山の奥に点在している人たちがいるのですが、この人たちは、お年をとるとなかなか生活も不便だし、街の中心に集まって住むほうが、その人たちも利便性が高いし、災害にも強くなるのではないかというのは一つ思います。一つアイデアとしては、空き家となるところを、そこを買うとかと言うと先祖伝来の土地ということで抵抗があるかもしれないので、少し貸してくださいとかと言って、そこを外国人の観光客の長期滞在用の施設として有効活用するというふうなことができれば、より前向きな対応ができるのではないかと思いました。
社会資本整備で最後に一つ言いたいのは、私は今回の事前レクで感動したのが22ページの雄物川の例なのですが、連続堤防を輪中堤にすることで23億円、予算を削減することができるという話だったのですが、恐らくこの絵を見て分かるのですが、日本中、AIなどで探せたら、こんな地形のところは幾らでも見つかると思うんですよね。だから、是非こうした箇所をどんどん増やしていって、これが10か所あれば230億円、100か所で2,300億円という大変なお金が浮いてきますので、そうしたのを是非お願いしたいと思います。
最後に、農業に関してなのですが、先ほどから担い手不足という話が出ていたのですが、日本中、人手不足になる中で農業だけ人手が確保できるということはないと思うんですよね。この農業においても、やはり外国人とか、あるいは外国法人、日本の経営に長けるオペレーションができる外国法人、あるかどうか分かりませんが、世界中で何か良いアイデアを持っているかもしれないし、是非国の中だけにとどまらない発想で担い手を見つけるということも大事かなと。産業のコメと言われる半導体に関しては、別に日本人、日の丸企業がつくらなくてもよいよと。日本でつくってくれることが大事なんであるということでTSMCを誘致してきましたが、農産物についても、日本でつくって日本人が食べられるのをどれだけ確保するかという意味では、誰がつくろうと、日本でつくってもらう、そうした人が増えればよいということなので、外国の人に土地を売り渡すことはできないと思いますが、その辺は使用権を与えるぐらいにして、是非オペレーションとか働き手とか、そうしたのを外国から確保するという、そうした観点も考えてもらえればなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは、御意見等はここまでといたしまして、主計官から何かありますか。よろしいですか。
それでは、時間がまいりましたので、本日の会議はここまでとさせていただきます。
会議の内容はいつもどおり、この後、私が記者会見で御紹介します。したがいまして、個々には報道機関にお話をすることのないよう、よろしくお願いいたします。
次回は10月27日金曜日、午前9時から分科会の開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。詳細につきましては事務局より追って御連絡を申し上げます。
それでは、本日はこれにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。
午後4時00分閉会