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財政制度分科会(令和5年9月27日開催)議事録

財政制度等審議会財政制度分科会
議事録

令和5年9月27日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政制度分科会議事次第

令和5年9月27日(水)9:00~11:05
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)

    • 1.開会

    • 2.議題

     財政総論

   3.閉会

    出席者

    分科会

    十倉雅和

    鈴木大臣

    神田副大臣

    矢倉副大臣

    瀬戸大臣政務官

    佐藤大臣政務官

    茶谷事務次官

    新川主計局長

    寺岡次長

    前田次長

    吉野次長

    大沢総務課長

    木村主計企画官

    三原司計課長

    西村法規課長

    山本給与共済課長

    横山調査課長

    有利主計官

    山岸主計官

    小野主計官

    佐久間主計官

    小澤主計官

    寺﨑主計官

    端本主計官

    松本主計官

    漆畑主計官

    尾﨑主計官

    後藤主計官

    小野寺主計監査官

    石田予算執行企画室長

    西尾主計企画官

    小田切公会計室長

    分科会長代理

    増田寬也

    秋池玲子

    河村小百合

    熊谷亮丸

    小林慶一郎

    佐藤主光

    武田洋子

    土居丈朗

    藤谷武史

    宮島香澄

    安永竜夫

    芳野友子

    臨時委

    上村敏之

    遠藤典子

    小黒一正

    木村

    國部

    権丈英子

    末澤豪謙

    滝澤美帆

    伊達美和子

    田中里沙

    中空麻奈

    平野信行

    広瀬道明

    福田慎一

    真奈美

    神子田章

    村岡彰敏

    横田響子

    吉川


    午前9時00分開会

    増田分科会長代理間もなく開会しますが、本日はカメラが入りますので、まずカメラを入れるようにいたしたいと思います。それでは、お願いします。

    (報道カメラ入室)

    増田分科会長代理ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。

    今日は、秋の財審の初回ということになりますが、春に引き続きまして、秋の財審も対面とオンラインの両立ての開催といたします。今日も委員の皆様方には半数程度、この会議場に御出席をいただいておりますが、残りの方はテレビ会議システムでの御参加と、このようになっております。また、各主計官につきましても、テレビ会議システムを通じての参加と、このようにしてございます。

    本日は、鈴木大臣、神田副大臣、矢倉副大臣、瀬戸大臣政務官、佐藤大臣政務官にお越しいただいております。どうもありがとうございます。

    では、秋の初回ということもありますので、政務の皆様方から一言ずつ御挨拶を頂戴したいと思います。

    初めに、鈴木大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

    鈴木財務大臣皆様、おはようございます。十倉会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、日頃から幅広く、かつ熱心に御議論をいただき、心から感謝を申し上げます。春の本審議会では、我が国が抱える大きな課題について大所高所から議論を行っていただいた上で、グローバルな経済・金融環境も急速に変化する中で、様々な課題への的確な対応が必要である、危機に機動的に財政を運営するため、平時こそ財政を健全化し、財政余力を確保することが不可欠であるといったメッセージを含む建議を取りまとめていただきました。こうした点を踏まえまして、引き続き責任ある経済・財政運営を進めたいと考えております。

    令和6年度予算、及び経済対策に基づく補正予算の編成におきましては、足もとの物価高騰への対応のほか、少子化対策の安定財源確保など、山積する政策課題への対応が求められており、難しい編成になると考えておりますが、歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組むことに加え、潜在成長率の引上げや社会課題の解決に重点を置いた、メリハリのきいた予算編成を行ってまいります。

    こうした中、委員の皆様におかれましては、引き続き、豊富な御経験と深い御見識に基づき、活発に御議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げまして、挨拶といたします。ありがとうございました。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    それでは、続きまして、神田副大臣、お願いいたします。

    神田副大臣おはようございます。このたび財務副大臣を拝命いたしました神田憲次でございます。

    委員の皆様におかれましては、日頃から本分科会への御協力を賜りまして、心から感謝申し上げます。

    一言、自己紹介ですが、私は国政に上がる前、20年強、税理士業務に従事し、それから、2012年に当選させていただきました。その後、政府におきましては、内閣府の大臣政務官、これはコロナ担当でした。それから、その政務官のときに、経済・財政、金融等を担当いたしまして、国会におきましては、衆議院の財務金融委員会の理事、さらには、決算行政監視委員会の理事等を務めてまいったところでございます。今、大臣がおっしゃったように、令和6年度予算ですが、本分科会からの御意見いただきます建議を踏まえまして、しっかりと編成してまいりますので、皆様の忌憚のない御意見、何とぞよろしくお願い申し上げます。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    続きまして、矢倉副大臣、お願いいたします。

    矢倉副大臣同じく財務副大臣を拝命いたしました矢倉克夫でございます。十倉会長はじめ委員の皆様におかれましては、日頃から本分科会への御協力を賜り、心から御礼、感謝を申し上げます。私も少し自己紹介させていただきたいと思いますが、弁護士として、アンダーソン・毛利・友常という法律事務所で勤務しておりまして、その後、経済産業省に出向いたしました。2013年に初当選させていただきまして、政府のほうでは、農林水産大臣政務官も務めて、また、国会においては、参議院の法務委員長、そして、予算委員会の理事なども務めさせていただいたところで、このたび財務副大臣として大任を拝命いたしたところです。

    本分科会では、委員の皆様の幅広く、そして、深い御見識に基づく御指導を頂戴してまいりたいと思います。何とぞよろしくお願い申し上げます。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    続きまして、瀬戸大臣政務官、お願いいたします。

    瀬戸大臣政務官おはようございます。このたび、財務大臣政務官を拝命いたしました瀬戸隆一でございます。本分科会の御協力をいただき、心から感謝いたしております。

    簡単な自己紹介をさせていただきます。私は、郵政省に入省した後、郵政行政や情報通信分野に取り組んできました。また、民間企業に出向した後、2012年に初当選いたしました。衆議院におきましては、決算行政監視委員会の理事等を務めつつ、前回の通常国会では厚生労働委員会にも所属しておりました。DX化、サイバーセキュリティの問題、そうしたことにも取り組んでいたところでもあります。

    予算編成に向けまして、各歳出分野における改革内容について、活発な御議論を何とぞよろしくお願い申し上げます。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    それでは、佐藤大臣政務官、お願いいたします。

    佐藤大臣政務官おはようございます。同じく大臣政務官を務めます佐藤啓でございます。委員の皆様におかれましては、日頃より、当分科会に多大なる御協力をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

    私も自己紹介させていただきますと、ちょうど20年前、2003年に総務省、旧自治省に入省しまして、地方自治体への出向であったり、また、官邸での勤務などを経まして、2016年、7年前に初当選させていただきました。その後、政府では経済産業省の大臣政務官であったり、また、自民党では直近まで税制調査会の幹事なども務めておりました。

    本分科会では、御意見をしっかりと踏まえまして、メリハリのある予算編成を行ってまいりたいと思っておりますので、大所高所からの忌憚のない御意見を賜れればと思っております。

    以上でございます。よろしくお願いいたします。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    それでは、報道の方はここで御退室をお願いいたします。

    (報道カメラ退室)

    増田分科会長代理続きまして、十倉会長より御挨拶を頂戴したいと思います。会長、よろしくお願いいたします。

    十倉分科会長皆様、おはようございます。会長の十倉でございます。本日は、オンライン出席の方々も含めまして、委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、御出席を賜り、誠にありがとうございます。

    先般の春の財審では、皆様のおかげをもちまして、無事建議を取りまとめることができました。重ねて御礼申し上げます。この秋の財審でも、令和6年度予算の課題につきまして、活発な御議論を何とぞよろしくお願い申し上げます。

    第1回目となる本日は、経済と財政の状況や、こども・子育て政策、医療・介護制度改革等の令和6年度予算の重要課題につきまして、皆様方から率直な御意見を頂戴できればと存じます。特に、こども・子育て、医療・介護の議論は、全世代型社会保障制度の構築に向けた議論であり、我が国が直面する最重要課題の一つです。こども・子育て政策の財源確保に向けて、現役世代に実質的に追加負担が生じないようにするには、徹底した歳出改革が求められます。同時に、財政総論の40ページなどにもありますように、医療・介護の現場で本当に御苦労されている公立病院の医師の方々、介護職員の方々などに対しては十分な処遇も必要です。メリハリのきいた予算が求められます。さらに、こうした足もとの議論にとどまらず、全世代型社会保障の構築に向けた負担の議論として、世代を問わず、資産も含めた応能負担の徹底や、将来の人口構成を踏まえた税と社会のベストミックスの追求等、中長期の視点での議論も重要となりますので、よろしくお願いいたします。委員の皆様におかれましては、活発な御議論をどうぞよろしくお願い申し上げます。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    鈴木大臣は、公務のため、ここで御退席をされます。ありがとうございました。

    鈴木財務大臣皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

    (鈴木財務大臣退室)

    増田分科会長代理財務省の事務方幹部及び各主計官等については、お手元に配付の座席表に記載しておりますので、御確認いただきたいと思います。

    それでは、これ以降、議事に移らせていただきます。まず、「財政総論」について、横山調査課長から簡潔に説明をお願いいたします。

    横山調査課長それでは、資料について御説明いたします。

    2ページ目、この1年間で新型コロナに伴う多くの制限が緩和・撤廃され、5月に新型コロナが「5類」に変更されたことに伴い、感染対策は「行政が様々な関与をしていく仕組み」から「国民の自主的な取組をベースとしたもの」に変わっております。こうした中で令和6年度予算編成を進めていくことになります。

    3ページ目、GDPの推移です。内閣府の試算によれば、2023年度には、名目GDPは過去最高を更新する見通しとなっております。実質GDPもコロナ前の水準を回復する見通しとなっております。

    4ページ目、個人消費についてです。個人消費は、コロナによる落ち込みから勢いが戻りつつあります。小売側で見ても同様の傾向となっております。それから、春闘の結果は30年ぶりの高水準となったところです。今後、賃金上昇によって、更に消費が増加していくことが期待されます。

    5ページ目、訪日外国人の状況です。訪日外国人の数は回復傾向にあり、国によっては、既にコロナ前の水準を回復しております。

    6ページ目、企業収益は大企業を中心に右肩上がりで回復しています。また、設備投資額は増加傾向にあり、足もとではバブル期並みの水準に達しつつあります。

    7ページ目、GDPギャップの数値は幅を持って見る必要はありますが、個人消費や民間設備投資の回復に伴い、GDPギャップは縮小傾向にあります。また、日本の実質GDPは今後、主要国と遜色のない水準で成長していく見通しとなっております。

    8ページ目、1980年以降の日本のGDPギャップを見ますと、各年代の平均値はややゼロを下回る水準となっております。諸外国における各年代の平均値も、多くはゼロをやや下回る水準となっております。

    9ページ目、物価は依然として上昇傾向にあります。内訳を見ますと、主な要因は、エネルギーから食料品、その他一般物価に変化しております。

    10ページ目、生産年齢人口は減少してきた一方で、女性や高齢者の労働参加率の上昇に伴い、就業者数は増加してきましたが、足もとではやや頭打ち感が見られるところでございます。

    11ページ目、コロナ禍を経て、労働市場では人手不足感が強まっております。有効求人倍率は職業によってばらつきが出ており、介護や建設などの有効求人倍率が特に高くなっております。

    12ページ目、日本の労働生産性は主要国の中で低い水準で推移しております。生産年齢人口が減少していく中で労働生産性の伸びを確保していくことが重要であると考えております。

    13ページ目、各国のISバランスでございます。日本ではこれまで一般政府が恒常的な赤字を計上する一方で、企業部門が貯蓄超過になっていることが特徴的でございました。今後は企業部門の投資を促し、民間主導の持続的成長が継続するような環境を整えていくことが重要と考えております。

    14ページ、諸外国では物価は一時期より落ち着いたものの、依然として高い伸びとなっており、こうした中で金融引締めなどによって長期金利が上昇しております。日本の長期金利も足もとでやや上昇傾向にございます。

    15ページ目、日本国債のイールドカーブでございます。2016年頃には、超長期債も含めてゼロに近い水準まで金利が低下しましたが、足もとでは超長期債を中心に金利は上昇傾向にございます。今後は、日本銀行の政策変更にも留意が必要かと思います。

    16ページ目、普通国債残高、こちらは既に1,000兆円を超えております。近年、金利は低下傾向でございましたので、債務残高の増加にもかかわらず、利払費はおおむね横ばいでございましたが、今後、金利が上昇すれば利払費が急増することになります。左上の表にありますとおり、仮に令和6年度以降の金利が1%上昇すれば、令和8年度の国債費は3.6兆円増加するという試算結果が出ております。

    17ページ、令和2年度以降の補正予算の規模は、コロナ対応等により突出しているという状況になっております。

    18ページ、本年4月のIMFによる提言でございます。最後のポツでございますが、「各国政府は財政バッファーの再構築により重点を置くことが必要」などとされているところでございます。

    19ページ、主要国では、フローとストックそれぞれについて財政健全化目標を設定しております。

    20ページ、この30年間、日本の政府支出の対GDP比は、主要国と比べて顕著に増加しております。これが主たる要因となってプライマリーバランス対GDP比も低い水準となっているところでございます。

    21ページ、諸外国における最近の財政をめぐる動きでございます。例えば、アメリカでは昨年8月に気候変動対策などを講じる一方で、3,000億ドルの歳入超過となる「インフレ抑制法」が成立したこと。あるいはイギリスでは、いわゆるトラス・ショックを経て、財政健全化に向けた取組が進められたことなどをまとめております。

    22ページと23ページ目につきましては、今申し上げたアメリカとイギリスの事例について、昨年秋や今年の春の財審でお示しした資料を再掲しております。

    それから、24ページ、主要格付会社の一つであるフィッチが8月に米国債の格付をAAA(トリプル・エー)からAA(ダブル・エー)に引き下げております。その要因としては、債務上限をめぐる政治的な混乱に加えて、フロー、ストック両面で見て、財政見通しがよくないことが挙げられているところでございます。

    25ページ目につきましては、アメリカの債務上限問題をめぐる動きにつきまして、春の財審以降の動きをアップデートしたものでございます。この6月に債務上限の当面の凍結と、それから、歳出抑制等が盛り込まれた財政責任法が成立し、債務不履行が回避されております。

    26ページ目は、主要格付会社による格付一覧でございます。

    続きまして、令和6年度予算編成に向けた現状と課題について御説明をいたします。

    28ページ目、春の建議では、平時にこそ財政を健全化することが不可欠、あるいは民間主導の経済成長に向けた環境整備を行うことが政府の役割といった提言をいただいたところでございますが、その後、6月に閣議決定された骨太2023においては、民需主導の持続的・安定的な経済成長を実現する、歳出構造を平時に戻していくといった文言が盛り込まれているところでございます。

    29ページ目、内閣府の中長期試算が7月に公表されております。成長実現ケースで示された成長率が実現し、かつ、これまでの歳出改革努力を継続した場合、2025年度にプライマリーバランスがぎりぎり黒字化する姿が示されているところでございます。

    30ページ、31ページ目につきましては、令和6年度の概算要求基準と、それから、各府省等からの令和6年度の要求・要望額を取りまとめたものでございます。

    32ページ、社会保障においては、「こども未来戦略方針」に沿って、若い世代の所得向上、社会全体の構造・意識を変える、共働き・共育ての推進、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充に取り組む必要があります。

    33ページ、この施策は総額3兆円半ばであり、多くを3年間で実施していくこととなります。

    34ページ、財源については、全世代型社会保障を構築する観点から、歳出改革を徹底し、支援金による負担が全体として追加負担とならないよう確保することとなっております。

    35ページ、この支援金は、現行の保険料を賦課ベースとすることを検討することになります。現役世代の保険料負担は、医療・介護、年金を併せると報酬の3割を超える水準まで上昇してきています。年金保険料は18.3%で固定されていますが、医療・介護の保険料率は上昇傾向が続きます。保険料負担の上昇抑制は、成長と分配の好循環の実現を図る観点、保険制度を持続可能とする観点から重要です。

    36ページ、医療・介護給付費等の伸びと雇用者報酬の伸びを同水準にして、保険料率の上昇傾向に歯止めをかけることを目指す必要があります。

    37ページ、国民皆保険を維持していくためには、保険給付の効率的な提供、保険給付範囲の在り方の見直し、高齢化・人口減少下での負担の公平化という三つの視点から検討していく必要があります。

    38ページ、この三つの視点から考えられる主な改革項目です。本日は、年末の医療・介護等の報酬改定に向けた基本的な視点を御議論いただきたいと思います。その他の改革項目については、社会保障を取り扱う別途のセッションで御議論いただきたいと思います。

    39ページ、年末の報酬改定に関しては、医療については、診療所の1受診当たりの医療費は、物価上昇率を上回るペースで上昇していることを踏まえ、適正な単価を検討する必要があります。介護については、構造的な人手不足の下で、増大する需要へ対応する観点から、職場環境の改善・生産性の向上が重要になります。医療・介護共通の課題として、事業者の収入増を現場の従事者の賃上げにつなげる構造をつくり、経済政策との整合性を取っていく必要があります。

    40ページ、診療所の単価が近年、物価上昇率を超えて上昇していることなどをお示ししております。

    41ページ、介護については、2040年に向けて労働参加が進む場合においても、全体の就業者数は減少が見込まれており、そうした中で担い手を確保するためには、テクノロジーの活用と、それを前提とした職員配置基準の柔軟化等を強力に進めていく必要があります。

    42ページ、最後になりますが、2年前に措置した介護の処遇改善加算は、9割の事業所で取得され、介護職員については5.8%の賃上げにつながっています。また、対象とならない職員の賃上げにもつながっています。こうした賃上げの呼び水となる実効性のある措置を講じていく必要があります。

    説明は以上でございます。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    それでは、ただいまの説明につきまして、委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴します。

    また、本日、オンラインで参加されている小黒委員から、接続環境の問題で発言が難しいという御連絡を頂戴しましたので、チャットまたはメモに記載いただいた内容を最後に事務局より読み上げさせていただきます。

    それでは、会場の委員の皆様方は、ネームプレートを立てて、それから、テレビ会議システムの委員の方は、「挙手する」ボタンで合図していただきたいと思います。今日は御出席いただいている人数が多いので、恐縮ですが、手短に御発言をお願いしたいと思います。お一人3分以内ということで、手短に御発言をお願いします。

    それから、会場から5名程度、その後、テレビ会議システムで5名程度で、交互に指名させていくということで進めていきます。

    会場の方は、マイクをオンにして御発言いただいて、その後、オフにしていただきますようお願いいたします。御発言の際は差し支えなければマスクを外していただければと思います。それから、テレビ会議システムの方は、ミュートの解除を御発言の際にしていただきますが、その後また会議中はミュートに戻していただきますようによろしくお願いします。注意事項は以上でございます。

    それでは、会場の委員から指名させていただきますが、初めに、私から向かって右側の平野委員から順に御御発言いただきたいと思います。それでは、平野委員、どうぞお願いします。

    平野委員今日は、秋の財審のキックオフということで、マクロ的な環境認識と課題設定についてお話ししたいと思います。

    コロナ禍からの正常化を進める。その中で、人的資本を含め、潜在成長率と生産性を引き上げるための投資を促して、我が国の長期にわたる停滞からの脱却を図るという、現政権の政策フレームワークは正しいと思っています。賃上げのみならず、地経学的な状況変化を捉えた半導体分野への外資の導入や日本の企業による国内投資の拡大など、ここ数十年間見られなかった動きが随所に出てきています。需給ギャップも解消されました。世界の市場では、年初来、日本株が欧米をアウトパフォームしていますが、こうした変化に海外の投資家も敏感に反応していると素直に考えてよいと思います。

    こうした大きな局面の変化を捉えて、米国やEUでも活発化している国家が関与する形での戦略分野を中心とした重点的な成長戦略を推進し、同時に、国民の間に根強く残る将来への不安を解消し、公正な社会の実現に向けて必要な制度改革を断行することで、社会経済のダイナミズムを取り戻す。そして、現実になりつつある金利のある世界への回帰を強く意識しながら、国家財政の持続可能性を同時に取り戻す、これが目指すべきシナリオです。したがって、財政運営もそれに即したものでなければいけません。

    一言で言えば、成長と社会的公正を実現するための長期的視点に立った戦略的な財政運用が必要ということです。そのためにまず必要なことは、政策目標を明確にし、政策効果を厳しく問うEBPMを徹底することですが、もう一つ重要なのは、仮に有用であっても、より良い政策を打ち出すために既存の施策を捨てることを恐れないことであると思います。すなわち、足もとの、不足を補うため、或いは痛みを和らげるため、という名目で行われてきた一時しのぎで生産性の低い支出、それは多くの場合、社会の変化や経済の新陳代謝を阻害するような結果をもたらした政策になりますが、そうしたものをスクラップし、未来のための将来世代の視点を強く意識した政策体系を構築する。これがまさに春の財審で十倉会長がおっしゃったダイナミックな財政運営であろうと思っています。

    さて、今回の秋の財審について言えば、大きなテーマは、新たなマクロ的環境の下で、戦略的な財政運営の第一歩をどう踏み出すかということです。各論としては、歳出改革等で捻出するとされている子育て財源をどう確保するかですが、以上の考えに即しつつ、特に前者の戦略的財政運営に関して言うと、「補償的支出よりも未来志向の視点に立った投資的支出を優先させる」という原則を基軸に組み立ててはどうかということを提言したいと思います。

    また、喫緊の課題である子育て財源については、今後の歳出改革の一つのモデルケースをつくるという意気込みで臨みたいと思います。すなわち、第1に、従来から指摘されてきたが踏み込めなかった医療・介護における過剰な支出、ナイス・ツー・ハブ的な支出の削減を具体化すべきであると思いますし、第2には、消費増税をやらないということであれば、収入面にも踏み込んでいくべきと思います。例えば、この場でも議論されてきましたマイナンバーの活用による資産と所得の把握と、それに基づく応能負担の強化を打ち出すべきです。さらに、資料の39ページの最後に示された、年金におけるマクロスライド的な仕組みを医療・介護の分野に導入することも検討を開始すべきではないかと思います。

    最後に付け加えたいのは、今申し上げたような長期的な視点に立った戦略的な財政を行う上で留意すべきは、楽観的な見通しに立った戦略的支出が先行する一方で、その果実としていずれ増えるはずの歳入が増えないという事態をどう防ぐかということです。そのためには、個々の施策のEBPMの徹底に加えて、より客観的に財政支出の有効性と持続性を検証し、予測するための新たな制度、例えば、総合的な政策評価や長期の財政推計などを担う、独立性の高い、かつ透明性の高い機関の設立についても、いよいよ具体的な議論に入るべきではないかと考えます。

    以上です。

    増田分科会長代理ありがとうございました。

    それでは、秋池委員、どうぞお願いします。

    秋池委員3点ございます。

    まず一つ目ですが、しばしば議論になる日本の生産性の低さについてですが、これはもちろん様々な工夫を今後も続けていかなければいけないわけですが、分母を減らすことによって生産性を上げようとする努力というのはかなり長い間やってきていて、もちろんこれからも様々な現場でこれをやっていかなければいけないことではあるのですが、くわえて、分子を増やしていくということ、付加価値を高めるということ、そして、それに対して、適正な価格なり、リターンを得られるということが非常に大事であると思っております。そうしたこともより、常にこの財審では議論のあるところではありますが、引き続き議論していければと思います。

    それに関わって、二つ目ですが、歳出改革の努力というのもあるわけですが、歳出の中には、費用的な部分と投資的な部分がありまして、やはりこの二つは分けて評価され、検討されるべきものなのだろうと思っています。費用的な部分については、単価が適正であるか、使われている量が適正なのかということを見る必要がありますが、いたずらにそれを削ると、今度またそれが将来に先延ばしになっているということになってもいけませんので、そうした視点で改めて確認していくということ、それから、投資的な支出についてはリターンを中立の目でもよく評価するということも重要なのであると思っております。いずれにしてもこのメリハリというのが重要であると思います。

    それから、三つ目ですが、一つ目には、緊急的な支出というものが非常に大きくなっているということがございます。これの着地ということも今後議論していくべきであるというお言葉がさきにもありましたが、こうしたところについて見ていく、それは一つはコロナであったと思います。今後も同様の事態が起きることというのは考えられますので、その着地を考えていくのと同時に、今回の学びをどう生かすのか。実際こうした事態が起きたときには非常に、やはり国民の感情も含めて、手厚いほうに振れてしまうということもございますので、次に起こったときにどうすべきかということをあらかじめ考えておく、そうした指針を持っておくということが重要ではないかと思います。

    同様にインフレも、今後は、各国と同様にある程度起こっていくものなのであるということを考えたときに、インフレに対する補償というもののありようも今後どうしていくかをあらかじめといいますか、早い段階で検討していくことが必要ではないかと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、河村委員、お願いします。

    河村委員私からは財政総論のところに絞って意見を言わせていただければと思います。

    やはり日本として、この国が今置かれた状況、それから、市場環境と、きちんと現実を目をそらさないで受け止めた上での厳しい財政運営が求められる局面ではないかなと思っております。横山課長が御説明くださいましたが、今後の財政運営をうまく続けていかれるかどうか、16ページでお示しくださった利払費のところがやはり鍵を握ってくると思います。今後、金利が上昇した場合、国債費にどれだけ影響が出るかという試算についても、今年度の影響試算、ここで、枠の中でお示しくださっていますが、ただ、これも前提の金利が、前のページにイールドカーブの絵がありますが、こうした順イールドがそのままパラレルに動くぐらいの形での変動しか想定されていないのかなと思いますので、正直申し上げて、ここに想定されているような範囲内での国債費の影響で済むのかどうかも分からないところがあるのではないかなと思っております。やはりそれぐらい厳しく認識した上で、しっかりと締めた財政運営をやっていくべきではないかと思っております。

    格付についても26ページでお示しくださいましたが、アメリカの格付のところ、Fitchが下げたという話で、今朝もまたムーディーズが何とかといろいろ話が新聞に出ていましたが、26ページの表からも分かりますように、アメリカは一番上から1個下がったぐらいのところで、日本は今、もっと下にいるわけですよね。この表で明らかなように、もしこれから先ということを考えると、もう下がない。Fitchの担当者、日本の担当者というのは、日本の場合には財政運営が日銀の金融政策と絡んで大きく影響を受けかねないというのはもうみんなが分かっていることで、日銀の金融政策の絡みで何か波乱があれば、日本だって一段の格下げがあり得ると言っていらっしゃるということが報道されたりもしておりますし、そうすると、次、どこへ行くのかなと思うと、もうB格が見えてきてしまうのですよね。これは大変なゆゆしき事態で、やはりそんなことになっては絶対にいけないので、そこを本当にしっかり受け止めて、きちんと締まった財政運営を、本当に厳しい財政運営をやっていかなくてはいけないのではないかと思っております。

    局面については、御説明くださったように、需給ギャップがもう解消しつつあるように、今、危機ではないですよね。ですから、甘えはもう廃して、ほかの国だって、みんな、コロナ危機のときの対策の分、きちんとどう取り返して財政再建するかということをとっくに決めて、今、実行する局面に入っていますから、日本だって同じですし、先ほど申し上げた毎年の国債発行額の規模から見れば、日本はもう断トツに悪い財政事情ですから、一番、本当にきちんとしっかりと締めた運営をしなくてはいけないところですから、そうした辺り、きちんと認識して、予算編成に取りかかっていくべきではないかと思います。

    また、あわせて補正云々の議論も出ておりますが、必要なところを本当に絞ってやっていくべきではないか。そして、財源についても、アメリカとかでこうした政策を議論されるとき、新たな政策を打つのだったら、必ずそれに見合う財源を何か別のところの歳出をカットするとか、一部切り詰めるとかそうした形で捻出するような議論を必ず併せてやりますので、日本だってそれを見習うべきで、安易に赤字国債の増発なんてとても考えられる局面ではないと思いますので、そうしたところをしっかりと見守っていき、財審として意見も言っていくべきではないかと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、木村委員、お願いします。

    木村委員今日は、秋の財審、第1回のキックオフということで、令和6年度予算編成の全体について申し上げたいと思っています。この令和6年度予算編成というのは極めて重要な意味を持つと私は考えております。日本経済が大きな転換期を迎える中で、今後の財政運営と日本経済の将来を左右する岐路に差しかかっていると言っても過言でないと私は思います。転換期というのは大きく分けて三つあって、一つは新型コロナ、二つ目がウクライナ、三つ目が、以前からの課題ですが、少子高齢化です。

    まずコロナは,5類の移行に伴って、経済活動も正常化に向かっております。巨額のコロナ対策費を計上してきた財政も、正常化にかじを切るというのは当然であると思っています。とりわけコロナを機に異例の規模に膨張した予備費、これをどうするかが令和6年度予算編成で焦点になると思っています。この総括ですね。会計検査院の報告も出たことですし、この予備費がどうやってこれまで使われたのかというのはしっかり検証した上で、今後はコロナ前の規模にきちんと戻していかなければならないと考えております。

    それから2点目は、ウクライナ危機に伴う物価高です。御説明にもありましたように、これに伴った名目のGDPが大幅に伸びて、税収も過去最高になっています。ただ、物価の上昇というのは、財政的には歳出の膨張と金利の上昇を引き起こすというおそれがあります。税収が伸びても、結局は帳消しになってしまうおそれもあるので、予算を大盤振る舞いする余裕はなくて、ここでも財政の正常化の重要性というのは変わらないと考えております。

    それから、3点目の少子化です。人口減少というのは当然、日本の経済、社会機能の維持という問題に非常に大きく影響します。総理が打ち出された少子化対策の強化、これは遅きに失した感もありますが、必要な対応であると思っています。このため、一定の財政出動も当然あってしかるべきであるとは考えております。ただ、ここでも財政の正常化という路線を踏み外すべきではないと考えます。

    最近、税収の増加を当てにした議論も出ていますが、歳出の抑制及び安定財源の確保ということが置き去りにならないかというのが懸念されます。税収増を当てにせずに、歳出の抑制及び安定財源の確保をしっかり行うべきであると考えます。

    最後に、総理が昨日、経済対策と補正予算の策定を指示されました。これについて申し上げたいと思っています。総理は、成長の果実である税収増を国民に還元すべきとおっしゃられました。それはある意味、必要な考え方かもしれませんが、それが規模ありきの編成を招かないよう、先ほど申しましたように、既にもう経済は正常化の方向に向かっておりますし、コロナ禍からも脱して、大規模な補正を打つような状況ではないはずですので、きちんと抑制の効いた必要な物価高対策などに絞った上で、最終的に物価と賃金の好循環につながるような対策に絞り込んで、メリハリのついた対策の策定に努めるべきであると思っております。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。

    熊谷委員最初に総論部分として、経済対策、補正予算や、今後の経済政策の重点分野などについて、3点申し上げます。

    まず第1に、現在、社会経済活動は平時に戻りつつあるわけですが、コロナ禍以前の経済対策における財政支出の規模を検証いたしますと、GDPギャップがゼロのときには、国費ベースではおおむね3.5兆円程度で、そこを発射台として、GDPギャップの動きに応じて財政支出の規模が変動するという、大まかな傾向が見られます。仮にこうした過去の傾向を現在の状況に当てはめますと、直近4-6月期のGDPギャップはプラス0.1%ですから、現状は、発射台、切片である3.5兆円よりも若干少ない、国費ベースの財政支出額が妥当だということが示唆されます。

    第2に、鈴木財務大臣もおっしゃっているとおり、経済対策は予算の量、規模ありきではなくて、真に必要で効果的な質、中身こそが重要です。すなわち企業や個人の活力を引き出し、民需主導の自律的な経済成長を実現する政策対応が求められています。逆に、現在の状況下で、単純な需要喚起策を講じる場合には、人手不足からインフレが加速して、国民の生活がより一層厳しくなるおそれがございます。また、財政のみによる問題解決は困難なケースも多く、財政と規制・制度等の改革を車の両輪として対応を図るべきであると考えます。こうした観点を踏まえて政策の中身を工夫するとともに、PDCAサイクルを強化し、財政出動が経済成長につながっているかを不断に検証することが不可欠です。予算をしっかりとプライオリティーづけして、効率の低い事業は見直し、効率の高い事業には大胆な予算配分を行うべきであると考えます。

    第3に、今後の経済政策における最重点分野として、労働市場改革こそが日本経済の宝の山であることを強調させていただきます。私ども大和総研の試算では、岸田政権が掲げる三位一体の労働市場改革に加えて、年金改革、不本意非正規の解消、「L字カーブ」の解消などが成功した暁には、我が国の潜在GDPは12.3%、70兆円程度増加するものと試算されます。こうした労働市場改革に加えて、企業の賃上げに対するインセンティブの強化や、合理化・省力化投資の促進などに焦点を絞って取り組む必要があります。

    次に、社会保障分野について申し上げます。まず、年々増加する社会保険料負担が現役世代の手取りを縮小させていることを踏まえて、「こども未来戦略方針」にも記載されているとおり、現役世代に配慮し、実質的な負担増とならないように、社会保障の給付の抑制に努めていく必要がございます。この点は、岸田政権の経済政策の一丁目一番地とも言える「成長と分配の好循環」を実現する上で極めて重要なポイントとなります。

    次に、今年の予算編成は、「こども未来戦略方針」ができてから最初の年であり、さらにはいわゆる「トリプル改定」がある中で、全世代型社会保障改革の実現に向けた岸田政権の本気度が国民から問われているという点を肝に銘じるべきです。具体的には、参考資料にございますように、医療・介護の報酬改定は1%の上昇で、3,000億円程度の保険料の負担増となります。高齢化で不可避的にQ、数量が増加する中で、政策的に決定されるP、すなわち改定率については、データに基づいて必要な水準をしっかりと検討する必要がございます。今回提出された医療費の1受診当たりの単価が足もとで伸びているのは、我が国の医療制度が出来高払いであることの帰結です。すなわち、情報の非対称性が存在する中で、国民は医師から勧められたメニューを通常は受け入れることによるものです。したがって、いわゆる客単価が上昇する中で、コストの一部である医療従事者の賃上げは十分可能であると考えます。また、今後公表される利益率を見た上で、必要であれば適正な水準に単価を下げることも視野に入れるべきです。

    私からは以上でございます。ありがとうございます。

    増田分科会長代理それでは、一旦、会場からオンラインに移りたいと思います。次のテレビ会議システムの5名の方に御発言いただきます。土居委員、堀委員、國部委員、権丈委員、小林委員と、この5名の方、順次指名しますので、御発言をお願いします。

    それでは、トップバッターで、土居委員、どうぞ御発言ください。

    土居委員私から2点申し上げたいと思います。

    まず、既に何人かの委員も御指摘されていますが、物価上昇期における財政政策の在り方ということは、今までにない政策スタンスを取らなければならないということであると思います。確かに、物価高で苦しんでおられる国民の方がおられるということで、そうした方々を助けたいということはそのとおりですが、財政が過度に出動いたしますと、逆に物価高をあおってしまって、そうした物価高で苦しんでおられる国民を逆にもっと苦しめてしまうということになりますので、適切な規模で適切な分野に財政支出を講じていくということが必要であると思います。

    それは需要喚起という問題だけではなくて、供給面に対する働きかけについても同様です。財政支出をするということは、仮に需要喚起をしていないということであるとしても、供給力強化のための財政支出は、その時点においては需要を刺激してしまうということになりますので、緊急、今でなければならない、今やらなければならないような供給力強化の財政支出に絞って、限定して行っていかなければ、逆に物価高をあおって、むしろ経済を駄目にしてしまうということになりかねません。そうした意味では、今まで以上に選りすぐった財政支出をしていくことが必要であると思います。

    それから、2点目は、トリプル改定に関連するところです。確かに医療従事者、介護従事者の方々の中には、低賃金で非常に処遇が悪い方もおられるということは承知しておりますが、片や、高給を得ておられる方もたくさんおられるということですから、満遍なく医療・介護の報酬を上げるということだけでは、本質的な問題は何も解決していないということになります。医療分野、介護分野における労働分配をしっかり見極めて、格差が拡大しないような形にしながら、適切に診療報酬、介護報酬を設定していくことが必要になってくると思います。ただでさえ、その原資は国民の負担によって成り立っている。税金や社会保険料の負担によって医療従事者、介護従事者の給料が成り立っているということを国民的に理解を共有した上で、適切な診療報酬、介護報酬の改定率を設定していくということが求められると思います。そうした意味では、単に物価上昇率以上の診療報酬、介護報酬の引上げという話では何ら問題を解決したことにはならないということを強く主張していく必要があると思います。

    私からは以上です。

    増田分科会長代理それでは、堀委員、お願いします。

    堀委員「こども未来戦略方針」で掲げられた方針はおおむね賛同いたしますが、全世代型社会保障構築に向けて安定的な財源確保も必要であると思います。消費税を含めた税財源の確保も一つの手段かと思いますが、短期的には、先ほど土居委員がおっしゃったように、医療・介護、障害等のトリプル改定もありますし、また、賃上げ等の処遇改善も必要になってきます。それらを単純に診療報酬等の引上げだけで対応すると、今日、挙げられています参考資料の10ページにあるように、働く世代の保険料増加にもつながります。財源確保のためにも、前提として、無駄のないワイズ・スペンディング、歳出の見える化と、アカウンタビリティ・説明責任が一層求められていくと思います。国民皆保険の維持と持続可能性のために、医療・介護改革が必要であるというのはもっともですが、これまで給付の効率的な提供、給付範囲の見直しも含めて議論はされていますが、なかなか進んでいないところもありますので、しっかり進めていただきたいと思っています。

    また、負担の公平化という観点からも、後期高齢者の窓口負担として、一部に2割導入されていますが、細かすぎる設定区分の導入が、本当に公平なものであったかの検証も必要であると思います。これからの人口動態の変化に耐えうる社会保障という観点から考えますと、現役世代の保険料を過度にしないということは非常に重要です。例えばですが、年金3号問題ではないですが、国内の専業主婦世帯の割合はすでに2022年に、夫婦がいる全世帯の3割を下回るということも報道されています。この20年間で専業主婦世帯は約350万減って、539万、共働き世帯の半分以下になっています。年収の壁となっている専業世帯を前提とした標準モデルはいかがなものかと。女性の非正規雇用率が高止まりする中で、このままでよいのか、健康保険も含めて、被用者保険における被扶養者の要件が今のままでよいのか。また、中長期的には被用者保険における保険料の在り方そのものも見直していく必要があるのではないかと思っています。

    あと介護の関係で、加算対象でない職員の賃上げにもつながっていることが資料に示されていますが、タスクシェア、タスクシフトを進めていくという観点からも、業界全体として賃上げが進むのは良いことであるとは思っています。ただ、費用負担と配分の見える化が必要で、本当に介護業界全体の生産性向上につながるようなものにしていくことが必要になると思っています。特に社会福祉法人によっては、規模やエリアによっては、導入しろと言われても、実質的に介護ロボットとか、新しいテクノロジーを使うのは難しいところもあります。人手不足のところもありますので、経営の共同化であるとか大規模化というのは重要であると思います。同時に、テクノロジーを利用しようと思ってもなかなかできないところもあると思うので、例えば、デジタルリテラシーを高めるなど、介護現場でのリスキリング、多様なスキルに対応できる人材養成が必要になってくるのではないかと思っています。

    それから、最後1点、介護等の需要増を考えると、海外からの人材確保も必要になってくると思います。技能実習等の制度の見直しもされているとは思うのですが、円安が進んでいることもありますが、日本のみならず、世界的に見ても介護人材の確保は非常に難しい状態になっていますので、処遇面で考えてより困難になっているかと。今のままで日本が本当に魅力的な市場であるのか、労働市場なのかというところもありますので、やはり業界全体で生産性を高めて、働き方も含め、魅力のあるところにしていかないと、現役世代にとっても、介護離職をしなければいけないということになり得ますし、そこのところはしっかり進めていただければと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、國部委員、どうぞお願いします。

    國部委員令和6年度予算の編成に向けた建議について議論していくに当たって重要と考える点を3点申し上げます。

    1点目は、令和6年度、すなわち2024年度予算の重要性です。骨太の方針に明記されているとおり、我が国は、経済再生と財政健全化の同時達成を目指して、経済・財政一体改革に取り組むこととしています。説明にもありましたとおり、内閣府の中長期試算では、2025年度のPB黒字化も視野に入っていますが、そこに至るには、2024年度の予算を「2025年度のPB黒字化が射程に入るようなもの」にする必要があります。これは単に財政の問題だけでなく、経済・財政運営全体に対する信認を確保する上で、政府として経済・財政一体改革に対する本気度が問われる年になるということです。こうした覚悟を持って令和6年度の予算編成に当たるべきと考えます。

    2点目は、財政バッファーの確保についてです。前年比3%近い物価上昇が続く中、市場では「日銀がいつ金融政策を見直すか」に注目が集まっています。イールドカーブコントロールの上限引上げ以降、長期金利がじりじり上昇しているものの、短期金利は依然として低位にとどまっているため、まだ財政に大きな影響は出ていませんが、短期金利が上がってくると、1,000兆円を超える債務を抱え、しかも、調達構造が短期化した日本の財政にとって大きな痛手となります。我が国の公債等残高は既にGDPの2倍を超えており、今後、「金利のある世界」で債務が積み上がっていきかねない状況です。これは機動的な財政運営を行う上で足かせとなります。

    今後も、相次ぐ自然災害や次なる感染症など、万一の事態が生じたときには財政政策に依存せざるを得ません。その際に、機動的に動けるよう常に財政バッファーを確保しておくことは、国家のリスクマネジメントとして必須と考えます。

    3点目は補正予算についてです。昨日、岸田総理が経済対策の取りまとめを指示され、「持続的な賃上げ」や「成長につながる国内投資促進」等の五本柱が示されました。GDPギャップがプラスに転じ、日本経済が構造改革等を通じて、更なる成長に向かうステージを迎えた今、成長支援型の経済対策である点は評価します。ただし、補正予算は、財政法で定められているとおり、緊要となった経費の支出を行う場合などに限って作成されるべきものと考えます。切れ目ない対策が必要という考え方は理解するものの、今回挙げられた対策の多くは、供給サイドに働きかける息の長い対応が必要であり、本来であれば、当初予算で手当てすべきものも含まれている印象を持っています。コロナ以降、数十兆円規模の補正予算が常態化していますが、市場関係者には、財政規律が弛緩しているように見えているのではないでしょうか。春の財審でも意見がありましたが、補正予算に一定の規律を持たせる制度的な対応を検討すべきと考えます。

    最後に、冒頭申し上げましたとおり、来年度予算は我が国にとって極めて重要な意味を持ちます。医療・介護、福祉のトリプル改定に加え、グリーントランスフォーメーション、防衛、少子化対策の安定財源確保、さらには、バラマキの排除による予算の効率化など、健全な財政運営の実現に向け、財務省の果たすべき役割も大きいと思います。皆様の頑張りを力強く後押しできるよう議論を深めていきたいと考えています。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、権丈委員、お願いします。

    権丈委員本年度は、加速化プランとの兼ね合いもありまして、短期的に効果のある歳出改革の徹底に焦点を当てなければならないということは承知しております。そうした中で、やはり中長期的観点からの改革との整合性も考えたほうが良いかと思っております。

    資料の37ページを御覧ください。37ページ、上のほうに、日本の医療の特徴を示す四つが挙げられております。四つ目に「出来高払い」とあります。これは主に診療所への支払い方式を指しているのであると思いますが、病院におけるDPCもDRGとは異なり、出来高的な性質を持っております。また、日本で、医師の都市部への集中や診療科間の偏在をもたらしている原因に、自由標榜制という日本の特徴がありますので、上のほうの三つ目の「自由開業医制」のところに、「自由標榜制」を併記することも考えられるかと思います。中長期的には、今の日本の医療の特徴を完全に予見とすることなく、かつ、当面の政策もそうした中長期的な観点と整合性を持つ形で進めてもらいたいと思います。

    それと、どの国でも再分配制度は一旦出来上がるとなかなか変えることができません。変えるためには大がかりなしかけが必要になります。そこで今、全世代型社会保障という数年がかりの大きなしかけの下に、過去に高齢者の負担が低くなるようにつくられた再分配制度を変えようとしている段階にあると思います。

    38ページを御覧ください。この38ページの右側の後期高齢者の窓口負担、こちらが議論としてメインでしたが、それも引き続き大切なことではございますが、加えて、今は財源調達面での応能負担の強化を意識すべきタイミングではないかとも思っております。後期高齢者や介護保険の第1号被保険者に財源調達側面で協力してもらう。社会保険の賦課徴収の仕組みをより応能負担化するために、資産も考慮して、全世代の負担の公平化を図っていくことは子育て支援のための加速化プランにある支援金の制度を準備していく中でも大切であると思います。

    以上でございます。

    増田分科会長代理それでは、小林委員、お願いします。

    小林委員経済情勢と診療報酬改定に関連して、2点だけお話しします。

    一つ目は、低金利の長期化に関する問題です。これは、これから物価が上昇していく基調が出てくるという中で、今後はその金利がどうなるかというのがキーになるということであると思います。それに関連して、低金利が長期的に続くことについて副作用があるのではないかという研究が最近進んでいるということを御紹介したいと思います。ですので、低成長のときに、金利を下げて成長が刺激できるというのは、短期的には正しいわけですが、長期的には、必ずしもそうなっていないのではないかという、そうした反省がマクロ経済の研究の中で最近出てきているということを念頭に置きながら、これからの財政運営を考えなければいけないのではないかということです。

    簡単に二つだけ御紹介したいのですが、一つ目は、『エコノメトリカ(Econometrica)』に、2022年に載った論文ですが、この中では、金利が下がると、独占力の強い市場のリーダーが一層投資を増やすが、新規企業とかスタートアップのような企業はなかなか投資が増やせないということになって、マーケットの集中度が上がってしまって、経済全体の生産性が落ちていく、成長が落ちていくというモデルがあります。

    同じようなことをハーバードのギータ・ゴピナートが南ヨーロッパのデータなどについて述べておりまして、低金利政策が続いた結果として、正味資産は多いが、生産性が低いような大企業にお金が集中して生産性が落ちてしまうようなことを言っております。これは日本のこれからの金利動向などにとっても非常に示唆に富む結果であると思いますので、参考にしながら議論していければと思います。

    二つ目は、医療制度改革についてですが、子育て支援の財源を公的保険から出して、かつ、医療保険の国民負担を上げないようにしていこうというためには、公定価格をより効率的に決める必要があると、こうした趣旨だったと思いますが、全く賛成です。

    ただ、そのためには1点だけ。データの整備というものがもっと必要になってくるということであると思います。医療機関の経営のデータの開示について、サンプル調査にすぎない医療経済実態調査に基づいて、診療報酬改定をしていくということは、国民にこれだけ大きな負担をかけているということから考えると、これからはなかなか容認できないのではないかと思いますので、医療機関の経営自体の見える化をもっと進めていくべきだろうと思います。具体的には健康保険制度の指定を受けた全ての保健医療機関について、毎年の財務報告と、それから、適切な情報の開示を義務化すべきであると思います。

    また、個別医療機関のデータを共通のIDで政府が統合的に扱うということによって、経営情報だけでなく、病床機能報告などのほかの情報とも接続できるような、効率的なデータの処理、そうした体制をつくるということがまず必要ではないかと思います。

    私からは以上です。

    増田分科会長代理それでは、またこちらの会場に戻りたいと思います。

    続きまして、佐藤委員、どうぞお願いします。

    佐藤委員私からは、来年度の予算編成に向けて3点ほど簡潔にコメントさせていただきます。

    まず、資料の34ページにありますが、子育て支援のような新たな財政ニーズに対しては、医療・介護を含む既存の社会保障の徹底した改革、いわゆるペイアズユーゴーを徹底させるということが必要なのかと思います。当然、子育て支援を充実させるわけですから、ほかの分野というのは、歳出を、削減を含めて見直していくということが求められます。もちろんこれは当初予算だけではなく、補正にも適用して、厳に補正回しは慎むべきかなと思います。何人かの委員からも指摘がありましたが、もちろん税収が最近増えているということはあるのですが、その税収は、今の国民に還元するという以上に、財政赤字を削減して、未来の国民に還元させるという、そうした考え方があってもよいのではないでしょうか。

    それからまた、36ページ、勤労世代の負担を抑えるべく、医療・介護給付の伸び率を賃金上昇率に合わせたらどうかという、そうした御指摘があったと思いますが、これを実現しようというのであれば、かつて医療制度改革で提案があったと思うのですが、いわゆるマクロ管理指標というのを改めて考える時期が来ているかもしれないと思います。もちろんマクロ管理指標の実効性を高めるためにはミクロ的な政策との連携が必要です。もちろん診療報酬改定との連動とか、こうしたものが必要になりますし、もちろん規制改革というのを合わせて行うということはあってしかるべきであると思います。

    あと最後に、今日、御紹介なかったのですが、資料の34ページのところで支援金についてコメントがありました。支援金につきまして、財源としましては、公平な能力に応じた公平な保険料の負担というのが掲げられているわけですが、今の社会保険料は世代間でも所得階層間でも決して公平ではないですね。なので、今の保険料を前提に社会保障の財源を拡充していくというのは、ある意味、国民に不公平を押しつけるという面もあるわけです。なので、総じて、社会保険料の改革、それから、もちろん消費税もある意味財源になり得るわけですが、消費税を含む税制の改革、それから、先ほどペイアズユーゴーの話をさせていただきましたが、給付の見直しというのは本来、三位一体で考えていくべきものかなと思いました。

    私からは以上です。

    増田分科会長代理それでは、末澤委員、お願いします。

    末澤委員私は、近年の内外の環境変化を受けて、今後の財政運営については二つの視点が必要であると考えております。一つは、国内での人口減、少子高齢化が進展する中、構造改革に資する財政。2点目が、需要不足から供給不足、インフレ、コストアップに対応した財政運営。この2点がある面、新たな視点で必要であると思っています。ちょうど今年は卯年、うさぎ年ですね。うさぎ年というのは12年前にもあったわけです。2011年。日本ではちょうど東日本大震災が起きた年ですが、アメリカではオバマ政権の1期目の中間選挙後ということで、与野党がすごく対立すると。債務上限問題が本格化して、先ほどの資料にもありましたが、大手格付会社がアメリカの国債の格付をワンノット下げて、最上位から落ちたのですね。S&Pというところです。実は今年も全く同じことが起きていまして、6月にかけて債務上限問題が本格化して、その後、Fitchが下げたと。実は2011年には、そうはいっても、ちょうど今週末にアメリカの会計年度、2023年、会計年度が終わるのですが、いわゆるガバメントシャットダウン、政府機関閉鎖は起きなかったのです。ただし、このままの状況であると、私の予想であると今週末に起きます。なぜかというと、もう与野党の対立が2011年以上に深刻化しているからなのです。

    では、なぜ対立しているかというと、今回、実はウクライナ追加支援などが主ですが、基本的には、放漫財政をどうにかしろと、こうした対立が大きいと。2011年も同様なのです。日本を鑑みると、そうした話はほとんどないと。では、この12年間、どちらが成長しているか。ちょうど2011年というのは東日本大震災が起きた。10月末に1ドル75円台だった。円高が進んで。今、御案内のとおり、150円。倍になっているのです。一方、株価も向こうはどんどん上がって、日本でも最近上がっていますが、これは円安の影響も大きいと。もっと言えば、近年、東証プライム市場の時価総額は、GAFAとかテスラといった、米国の上位2社の時価総額とほぼ一緒なのです。2社で日本のプライム市場を全部買えると。ちなみにバブル期は、NTT1社で、ニューヨーク証券取引所の時価総額と一緒と。また、これは私の記憶ですが、山手線の内側の土地で、大体カナダが買えると。東京都23区でアメリカ全体が買えると。バブル期は異常ですが、いわゆるバブル崩壊後の過去30年間、特にこの12年間で見ても、日本はどんどん国際的に順位が落ちてきている。これはやはり構造改革の不足、構造問題にうまく対処できなかったことが大きいと。これに対して、もう残り少ない時間なので、やってくださいとお願いするしかないと。

    実は2点目とこれは絡んでいるのですが、ここ数年、世界的に高物価、高金利になっています。私は過去20年間、なぜ低金利が続いたか、低物価、低金利、高成長だったかというと、これはグローバル化の影響が大きいと思うのですね。つまり、中国の改革開放政策、ソ連邦の崩壊。つまり、それによって壁がなくなったと。世界的に市場が大きくなって、ヒト、モノ、カネが流通する。軍縮によって、技術が軍事部門から民間に移転する。こうした問題でグローバル化が進んで、その恩恵が低物価、低金利、高成長を醸成していた。今これは全部変わってきています。まずパンデミック。これは供給制約で大きな問題がありました。100年前のH1N1インフルエンザパンデミック、つまり、スペイン風邪では若い方が数千万人規模で亡くなったことで、インフレになっています。第一次世界大戦の影響もあるのですが、今回も同じようなことが世界的に起きている。

    もう1点目が、ウクライナ戦争、また、米中対立。つまり、結果的にいろいろなところでまた壁が出来始めているのです。つまり、21世紀冒頭の過去20年間のような低物価が今後は変わってくる可能性がある。しかも、国内ではもう供給制約が前面に出てきています。私は、人口減、少子高齢化は、前半は需要不足からデフレ要因になると思うのですが、もっとこれが進行してしまうと、働く人がいなくなってしまうと、これはいわゆるインフレ要因になる。ちょうどそのせめぎ合いがだんだんもう出始めているのではないか。つまり、今後は、日本はある面、良い物価上昇ではないかもしれませんが、悪い面も含めた物価上昇が本格化する可能性がある。それに対応した政策運営をしなければいけない。これに対して、私は、処方箋としては、私が三種の神器と言っているのですが、一つが統合・大規模化です。二つ目がICT化。三つ目がアウトソーシング、外部委託です。これによっていろいろ規模の利益を回復する。今どんどん人口ボーナス期が人口オーナス期に入って、規模の不利益になっていますが、この規模の利益を再回復しなければいけない。こうしたような、つまり、将来世代のために資するような、構造改革に資する、また、内外の環境変化に対応した財政運営を是非求めたいと思っております。

    以上でございます。

    増田分科会長代理それでは、武田委員、お願いします。

    武田委員3点申し上げたいと思います。

    1点目は、経済対策です。御説明いただきましたとおり、一言で申し上げるならば経済はコロナから正常化しておりますので、財政も正常化すべきです。今、末澤委員が全ておっしゃってくださったように、労働市場やグローバルの状況を考えますと、構造的に物価高の状況に変わってきていると思います。その中で、安易に財政出動をすれば、むしろ一時的には、更に物価を押し上げる可能性があります。足もとの規模ありきでの対策ではなく、未来志向で、質重視でどう経済の体質を上げていくか。そこにしっかりかじを切る必要があると思います。

    具体的には成長市場へ資本や労働を動かしていくこと。そのために新陳代謝を高めていくこと。生産性を高めることによって、持続的な賃金上昇を実現していくこと。これにしっかり着手し、進めていく必要があると考えます。

    2点目は、金融政策と金融市場の変化についてです。冒頭、平野委員もおっしゃいましたが、いよいよ金利のある世界に戻ってきており、政府はこれまでの麻痺した感覚から目を覚ます必要があると考えます。金融政策の正常化が本格的に進む前に、世界から、日本の財政は中長期的に持続可能であるという信認をしっかり得ておく、確保しておくことが間違いなく必要です。

    3点目は、こども・子育て支援の財源についてです。実質的に追加負担を生じさせないこと。これはしっかり財源を確保するという観点では、重要ですが、負担のない給付があるかのように、国民に伝わることは、避けなければならないと思いますので、この辺りの意味はしっかり丁寧に是非御説明いただきたいと考えます。

    重要なことは、将来に向けて、この負担の増加をいかに抑制していくか。そのために、抜本的な改革に、これを契機に着手して、取り組んでいくということ。その先には安定的な財源についても併せて議論していくということではないかと思います。つまり、冒頭、大臣がおっしゃったとおり、是非責任ある経済・財政運営をお願いしたいと考えます。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、田中委員、お願いします。

    田中委員まず、令和6年度の予算編成に関しまして、春の建議の時期は、ちょうどコロナが5類に変わった直後で、平時の財政健全化が不可欠であるという力強い表明もなされたところでした。しかし現状を見ると、コロナ後の新しいスタートであり、コロナ関連の支援はきっぱり終わったという意識や気持ちの切替えが、まだ世論的に十分な感じではなさそうなところであり、世の中の気分の切替えというのがとても大事だろうと感じております。個人消費の上昇、インバウンドの回復など、明るいトピックにも光を当てながら、秋は現状の問題、課題を分かりやすく共有して、国民の視点で、今こそ未来に向けた確実な一歩を踏み出すときなのであるという機運を高めていけたらと思います。

    もう1点は、介護の分野での賃上げに関してですが、25、27ページ辺りに、ICT機器の活用、そして経営の協業化などを参考資料にも丁寧につけていただいて、こうした良い事例があるのだなということを理解いたしましたが、やはりこの分野でも、経営のDX化、データベースマーケティングの実行、経営課題をまとめて効率化を図る点はまだ少し弱いのではないのかと思います。介護職員の方々が、給与上昇が達成されているというところですが、現状は人手不足で、そのために手当がなされていることを働き手の方は感じているのではないかと思うところです。成長を続けて、給与がこれからも上がり続けることが実感できる経営となるためには、やはり個人がリカレント、リスキリング、専門能力をつけながら、民間主導の経済成長が果たせるような流れを加速してもらい、情報リソースの面で国が支援していくというスタンスが適切と感じています。そうした情報共有が水平展開なされることで、継続成長、本物の成果に変えていくことができればと思います。

    以上、よろしくお願いします。

    増田分科会長代理それでは、中空委員、お願いします。

    中空委員ごく手短に4点申し上げたいと思います。

    コロナ禍を経て世の中が平時に戻ってきました、財政構造も平時に戻しましょうというのは当然かと思うのですが、一方で、コロナ予算についてきちんと検証したかということは見ておきたいと思います。コロナ予算で使ったお金がどれぐらいあって、そのコロナ予算を立てたことがうまく使われたかどうかも含めてですが、例えば医療体制とか様々な問題点が残っているはずで、これを継承する場はどこかというと、ここ、財審ではないかと思いますので、御負担は増えるかと思いますが、是非ここでやりたいというお願いを一つ目に申し上げたいと思います。

    二つ目は、経済対策ですが、中長期的にはもちろん生産性を向上させていくことに尽きるわけですが、短期的に物価対策をするということが言われています。何人もの委員の方が言われましたが、正しい人に正しい金額をということに加えて、時限でやる。あまり長いこと、ダラダラとやらないということも必要かと思います。最初からそれを考えておく。

    3点目は、金利上昇の局面で利払いが増える。それから、格付も落ちるかもしれないということはある意味当然かとも思います。今回はたくさんのページを割いていただいて、調査課長からも御説明を受けました。この財審では、そうなるよ、そうなるよということを言い続けるしかないかなと思っておりまして、今回はより、何回もこの話をしていけたらなと考えます。

    最後4点目ですが、社会保障の分野です。少子化対策と消費活性化を両立していくためには、医療・介護の改革を行って、保険料負担上昇を抑制していくことが大事になります。35ページにありましたが、雇用者報酬よりも給付費が先に延びてしまうということになると、とてもサステーナブルとは言えないと思いますので、報酬改定を迎える今年、この分野をどうやってやっていくのか。これは小林委員からも出ましたが、医療分野は、日本はデータが本当にないので、データをそろえつつ、適正な議論をしていけたらなと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、ここでまたテレビ会議システムに移ります。次の3名の委員に御発言をお願いします。滝澤委員、福田委員、村岡委員、この順でお願いしたいと思います。

    それでは、滝澤委員、御発言お願いします。

    滝澤委員私からは、財政運営上、重要となりますGDPと生産性について、ごく短くコメントさせていただければと思います。名目GDP、過去最高を更新する見込みとのことでありましたが、物価上昇の影響を考慮しますと、楽観視できる材料ではないように思います。足もとでは、GDPギャップが解消に向かっているとのことですが、労働などの供給側の制約を考慮しますと、供給の天井のほうを心配する必要があるかと思いました。

    それから、労働生産性の推移についてもお示しいただきましたが、為替レートの設定などによって、労働生産性の国際比較、水準の国際比較というのはなかなか難しいものですが、その伸び率が低いということは指摘できるのではないかと思います。生産性の伸びを高めていくためには、シェアが大きい産業で生産性の伸びというのが期待されますが、例えばシェアが拡大している医療・介護部門などの生産性の向上は、規制などによってなかなか難しい状況にあると思います。

    医療・介護部門においてももちろん有形・無形資産の活用による分母の削減も重要ですが、価格の設定を含めて、秋池委員からも御指摘がありましたが、分子をどのように増やせるのかというのを柔軟に検討していく必要があるのではないかと感じました。

    私からは以上です。

    増田分科会長代理続きまして、福田委員、どうぞお願いします。

    福田委員多くの方の御発言に基本的には賛同いたします。日本もいよいよ物価上昇の時代に入ってきて、物価がある程度上がるということを前提にいろいろなことを考えなければいけない時代に入ってきていると思います。その際、例えばマクロ経済の問題を考える上で、名目的なものの上昇と、それから、物価の影響を取り去った実質的な影響の違いというのをきちっと区別して、いろいろと議論する必要があるのだろうと思います。これは今、滝澤委員もおっしゃったことで、名目値としては明らかに増えているのだが、実質値としてはむしろ下がっているということはよくあって、その典型的なのは現状の賃金などもそうなのだろうとは思います。

    そうした意味で、我々が過去30年間ぐらいは、名目で考えようと、実質で考えようと大して違わないよねという時代をずっと経験して、その感覚がまだ、やや多くの人は続いてはいるのですが、足もとはその差をきちっと区別して、マクロ経済にどういう影響があるのかということをきちっと見ていくということはあるのだろうとは思います。

    その観点からも足もとのGDPは名目では増えているが、実質もある程度は増えているのですが、例えば今年の第2四半期のGDPは、ここにあったようにプラスで、GDPギャップも減ってはいるのですが、内容を見ると、やはり外需主導で、まだ内需は比較的弱めだった点はあるのだろうと思います。予測によると、これから内需が増えていくということもありますが、そうした点はあります。

    その際に、これまでのように、やはり需要を喚起するという政策は限界があって、供給サイドの強化という形で経済政策は行っていくというスタンスに変わっていかなければいけないと思いますし、その際には、需要サイドの財政支出というのは金額ありきですが、供給サイドに関しては、金額ありきではなくて、人々の行動を変えることが大事です。そうした意味では金額が多ければよいというものではなくて、きちっとターゲットを絞って、政策評価し、効果のあるところに集中的に財政を持っていくということが大事で、多くの方が言っているように、現在の物価上昇下では、ただ単に総需要を喚起するということはむしろ経済にはマイナスであるということもあり得ますし、あるいは小林慶一郎委員が言われたように、過度の緩和策というのは新陳代謝を抑制して、生産性を逆に下げてしまうということもありますので、そうした意味ではきちっと供給サイドを強化するという観点から非常に、言い尽くされたことかもしれませんが、ワイズ・スペンディングを実行していくことが大事なのだろうと思います。

    私からは以上です。

    増田分科会長代理それでは、村岡委員、お願いします。

    村岡委員私からは、昨日の今日ということもありまして、経済対策と補正予算に絞って発言させていただきたいと思います。なぜなら、今、衆議院の解散が取り沙汰される中で、総選挙を意識しての大盤振る舞いになりかねないのではないかという危惧を持つからです。6月の骨太の方針には、先ほど事務局から説明がありましたように、歳出構造をアフターコロナに移ったことを踏まえて平時に戻していくと明記されました。先ほどの17ページの表を見ても、過去の2020年度、令和2年度に73兆円、それから翌年は36兆円、それから、31.6兆円という補正予算を組んできたわけですが、コロナ以前の2019年度を見ますと、3.2兆円ですよね。しかしながら、今回の経済対策につきまして、与党幹部の中には、既に15兆から20兆円規模の対策が必要であると強調する方もいて、与党内にはかなり積極的な財政出動を求める声が強まっているように見えます。

    経済活動が正常化しつつあるのにかかわらず、補正予算による巨額な財政出動を続けるということは許されないのではないか。まず規模ありきという予算膨張は財政規律を著しく損なうと思います。したがって、選挙目当てのバラマキはともかくやめさせて、経済対策では、緊急性のあるもの、物価高を克服するための賃上げ支援、人手不足やデジタル対応、あるいは脱炭素など経済の構造改革につながるテーマに的を絞るべきであると思います。このリーダーシップは是非岸田総理にとってもらいたいと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、また会場に戻りたいと思います。

    続きまして、広瀬委員、お願いします。

    広瀬委員まず経済・財政を巡る状況についてですが、何といっても賃上げがこれからも続くかどうかということにかかっているのかなと思っています。今年は、政府も相当旗を振っていただきましたし、それから企業も積極的に対応したということで、久しぶりに賃上げらしい賃上げが実現できたと思います。これが来年どうなるかですが、ポイントは、中小企業が来年もついてこられるかどうかというか、賃上げができるかどうかということになるのではないかなと思います。今年は、大企業も、いわゆる価格転嫁ですね。積極的にそれをやって、相当それが効果があったと思うのですが、ただ、一方で、原材料費の増大、エネルギーのコストアップが全て吸収できたかというと、そうでもないわけで、実際、今年の中小企業の賃上げは、むしろ今の人手不足の中で防衛的な賃上げをせざるを得なかったというのが実態ではないかなと思っています。

    これも一つの経済合理性ですからよいわけですが、したがって、来年、もちろん人手不足というのは全く解消しなくて、むしろ深刻になっているかもしれませんが、それでは来年もそうなるかというと、本当にそこまで頑張り切れるか、あるいは息切れしないかどうかというようなことはこれから注目しておかなければいけないのではないかなと思っています。

    それから、二つ目は、昨日、岸田総理が5つの柱を出されたわけですが、中身は本当に今の状況を見ると的を得た内容であると私も思っていますが、これはこれから補正予算になっていくわけです。先ほどから皆様から話がありましたように、17ページのグラフを見てみますと、令和2年は、まあ、しようがないよねということですが、3年、4年と30兆円規模の補正予算がついたと。何となくそこで落ち着いてしまったのかなというような感じもしないでもないので、そうした面では、今年は本当に正念場で、もちろんそうした30兆円規模ということはもうないわけですが、本来の補正予算の在り方まで、どういうふうにそこに近づけられるかという面で、本当に財務省には踏ん張っていただきたいなと思っております。

    それから、三つ目は、6年度予算ですが、これについては、また、個別のことはその都度、意見を申し上げたいと思うのですが、やはりこの一、二年、非常に大きな課題になってきたのは安全保障の問題であると思います。今の状況から考えれば当然、これは大変大きな課題ですが、ベースはあくまでハード的な対応、これがなければ全てがないわけで、もちろんこれが大事ですが、併せて、ODAのようなものも含めたソフト的な対応というのがまた非常に大事ではないかなと思っています。

    これは本当に戦略的に効果的に粘り強くどうやってやっていくのか。そこには当然民間の力というのが相当発揮できるところであると思っていますので、そのハード的な取組とソフト的な取組を全体的なバランスを取りながら、安全保障の問題に対応していくべきではないかなと思っています。

    それ以外の個別の課題については、今後また意見を述べさせていただきます。ありがとうございました。

    増田分科会長代理それでは、神子田委員、お願いします。

    神子田委員私は、コミュニケーションという観点から予算編成について考えてみたいと思うのですが、難しい言葉で言うと、説明責任といいますか、予算編成というのは、予算の編成を通じて、どういう政策を政府がやりたいかというのをアピールしていくという場でもあると思うのですが、その意味で、毎年そうなのですが、今年はどんな政策をやりたいのかというのが分かりやすく伝わるような、それはやはり優先順位ということもあると思うのですが、これよりもこちらのほうが大事であると今年は判断しましたというのが伝わるような予算編成にしてもらいたいということと、それとともに、新しいのを毎年打ち出すというのはあるのですが、ただ、これまでやってきたことも大事であるということもあるんですよね。

    1年でやったら、もうこれで終わりのような、そんな簡単な事業はあるわけがないので、それは今年は子育てと言っていますが、去年は防衛というのがニュース的になりましたが、いずれも何年もかけてやっていくもので、去年、その防衛にしても、では、財源どうするのかというのは今年にかけて論議しておりますが、そんな中で大事になってくるのがこれまでの予算の検証といいますか。この間も会計検査院が予備費の話をしていまして、去年はコロナ対策、どう予算が使われたかという中で、私もテレビで取り上げたのですが、残念な予算の使われ方、地方創生臨時交付金という中ですね。これで、生活が苦しい中で、水道料金を減免しようというところに予算がついたわけです。

    これが、堺市の例で言うと、減免する中で、全ての水道契約者を減免してしまったということで、警察署とか刑務所まで減免されたという例が報告されました。大事なのはこうした残念な使われ方したことをきちんと検証して、次はないようにするということであると思うのです。その意味で、この財審の場においても、いつもは次の年度に向けての議論をするのですが、やはり1回1回、前の年度の予算、どういうふうに使われたのか、私たちはどんな意見を述べて、それに対して、どういう使われ方で、そこにはどんな反省があって、それをどう生かすかのようなのを春秋1回ずつぐらいやってもよいかなと思っております。

    最後に、国民とのコミュニケーションで、やはり政府として矛盾のない対応というのが必要であると思って、先ほど医療費の報酬というか、収入の単価が上がったという話がありましたが、単価が上がれば、わざわざ政府としてお金をつけてあげる、保険料も上げる必要はないという。この保険料を上げないということは、今、物価高で苦しんでいる人たちを助けるという政策を政府がやっているのに、社会保険料が上がったらまた苦しくなるという、そこに矛盾があるわけです。そうした矛盾がないようにするということもありますし、先ほどの、今、GDPギャップが少なくなっているところでまた、これまで、いつもこのぐらい不足しているから何兆円つけようのような議論になっていましたが、そんな議論を続けていてよいのか。それはやはり物価を上げてしまうことになるし、それはやはり政府が物価対策を取っていることと矛盾するということです。これは非常に国民にも分かりにくいということであると思います。

    最後に、結果的に選挙を前に予算をつけたいという圧力もあると思うのですが、やはりそこは安易に、財源は国債でとならないように、ここは実際に政治家の方と対峙するのは財務省の方なので、そこはより一層、真剣度を増して、闘っていただければと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、宮島委員、お願いします。

    宮島委員平時に戻すことや、経済対策の在り方が、今年度は非常に重要であるということはこれまでの委員の方と同じ意見です。

    追加で申し上げたいことを言います。一つは、予備費がやはりコロナで非常に緩くなってしまっているのではないかと思っています。そして、会計検査院が指摘したように、予備費の使い方に関してはしっかりとした検証と公表が必要かと思います。財務省でも事業費ごとに検証するのはできないというようなお話があったのですが、この前の会計検査院の報告では省庁ごとに事業の記録を取っていたと。それから、使い方を変えていたり、時期が不適切なものがあったということで、それは重く受け止めるべきではないかと思います。

    結局、財務省はそのつもりはなかったかもしれませんが、いや、聞けば出てきたのではないかと国民は思ってしまいますし、税金の使い方、まだまだ無駄があるのだなという印象になっていますので、これでは財政再建に関して、国民に協力してもらえなくなるのではないかという心配があります。できる限り透明化して、公表することが信頼を得るためにも必要かと思います。

    二つ目、社会保障については、社会保険の保険料をこれ以上上げたら現役世代が苦しいと、賃上げの効果もなくなるということがまずあります。そして、この子育て予算で保険料が上乗せにならないために、医療や介護の効率化はもちろん必要です。コロナで、国民にも医療の実態というものが今までよりは見えたのではないかと思います。実際に自分が病院に行っても、なぜ風邪を引いただけなのに1週間分も薬をもらったのか、この検査、要るのかとか、実はみんな少しずつ思っているが、お医者さんに言えないことがあったと思うのです。このタイミングで、全体の単価を上げるのではなくて、いや、ここはなくて良いでしょうということを丁寧に出していくことが国民の理解を目指す、求めることでとても必要であると思います。みんな看護師さんなどの報酬改善はやはり必要であると思っていますので、ちゃんと待遇を上げるべきところと、あるいは公立病院などと町の診療所、開業医とをちゃんと説明を分けて、これがどうしても一緒になってしまうのですね。さらに、診療報酬の改定となると、ニュースは何%でのような話になってしまって、より中身が分からなくなるというのは私たちも反省しますが、どこに無駄があるのか、どこを改善するかということをちゃんと説明していくことが医療・介護の改革でも必要だと思います。

    そして、その説明についてですが、少子化対策をやるのに加速プランで年3兆円台半ばが要る。だが、追加負担は要らないと伝わっていることは私も非常に心配していました。つまり、日本の最大の問題は、給付と負担が国民の中で結びついていないことで、どこからかお金が出てくるとみんな思ってしまっているところが問題であるのに、また新たな、みんなにとって絶対大事だよねという少子化対策をやるのに、だが、皆様、負担は要らないですよというふうに、下手すれば聞こえてしまうのです。もちろん社会保険負担は増えないほうがよいのですが、誤った伝わり方になることは、私は大変危険で、魔法のようにお金が出てくるというふうに思われかねない。だから、ここは本当に医療改革など説明を尽くさなければいけないと思います。

    さらに言いますと、私は子育て支援が、昔よりずっとお金を使っているのに、どうして効果が上がらないかについてずっと考え続けています。もちろん経済問題とかいろいろあります。でも、結局足りないのは、みんなで支えようと。こどもを育て終わった人も、産むつもりがない人も、いろいろなライフスタイルの人がみんなが大事であると思うから子育て支援を支えましょうというふうに、いま一つ完全に浸透しないのですね。それで、今回の少子化対策をやるのに、やります、だが、誰かの負担で、皆様は負担は要らないという説明をしてしまったら、自分事にならないのではないかという心配をしています。今のまま、子育てしにくいというパーセンテージがこれだけ高い国から脱するためには、やはり説明をちゃんとして、具体的には負担は抑えたほうがよいのですが、みんなが力を合わせて少子化を何とかしようよという形に持っていくことが非常に重要で、このためにも医療改革をどこをどうしたのか、何が無駄だったのかということを丁寧に説明するということは非常に重要だと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、安永委員、お願いします。

    安永委員ビジネスの現場の視点で4点申し上げます。一つ目は、最近、日本経済に着目する海外の投資家が非常に増えてきているということです。今までは金融投資家が主でしたが、産業プレーヤーが日本市場をもう一度投資対象にすべく見始めています。中には、中小企業の経営承継の問題にまで踏み込んでくるような海外投資家もいます。経済安全保障の問題や、日本企業がどこまで外資を受け入れられるかとの問題はありますが、こうした動きを通じて、産業構造の転換を加速化させることができ、賃金についても、外資がグローバルベースの賃金体系を持ち込むことにより、労働市場の流動化にもつながります。経済のカンフル剤として外資をいかにうまく活用するかが重要となります。外国人労働力に対しても、もう少し踏み込んで考えていくこともできると思っています。

    二つ目が、今の話にもつながりますが、海外投資家が見ているのは、1番はグリーン、そして、2番目がデジタルの分野だという事です。中長期的に資金がこれらの分野に投資されていくことが彼らの着目点であり、長期的視点で、先行投資しなくてはいけないと思います。官民連携で、しっかりとしたダイナミックな経済・財政運営を行うことが、民間主導の経済成長や、グリーン、デジタル分野における中長期的な成長にもつながります。

    三つ目は社会保障です。先ほど現役世代の負担増というお話がありましたが、この裏側にあるのは、各企業が健康保険組合を通じ、社会保障費の半分を負担しているということです。これにより健保組合は大方、慢性的な赤字が続いています。業界によっては個社の健保組合だけでは管理しきれなくなっています。やはり全世代型社会保障という形で、現役世代の負担を軽減しなければ、結局、企業側も賃金上昇に振りわける財資がなくなることになります。従い、医療分野での抜本的なコストの負担の見直しは待ったなしということかと思います。

    四つ目は、マイナカードを活用した応能負担を進める必要があるという事です。データや電子カルテの共通化、共有化によって利便性や効率性を高め、健康管理や日頃からのウェルビーイングにどの様につなげるかであり、未病のステージにおける国民の医療に対する関心を高める為に活用すべきかと考えます。又、病院の効率的マネジメントに関し、民間企業から見ると、税務署の税務調査を受けていない医療機関は、果たして本当の意味で透明性高くデータ開示がなされていると言えるか疑問です。企業はガバナンスや、会計原則の中で改善すべきポイントを見ていますが、医療機関において、経営情報がない中で、いかにして経営の改善をしていくのでしょうか。

    例えば、CTやMRIの保有台数は日本が世界で一番ですが、本当に有効に活用されているのでしょうか。費用対効果、あるいは医療の質を担保するという点において、投下資本、あるいは人材、コストが見合っているのか、踏み込んで社会保障を考えていかねばならない時代に来ています。以上です。

    増田分科会長代理それでは、吉川委員、お願いします。

    吉川委員私からは2点お話しさせていただきたいと思います。

    1点目は、春の建議で、平時にはしっかり財政健全化を進めるべきであると言ったわけですが、正しい主張であると思います。それからちょうど4か月たったわけです。今年も第3四半期が終わろうとしていて、その間にマクロの経済データも出てまいりました。財政政策、金融政策、いろいろありますが、マクロの経済政策としては、当然ですが、マクロの変数を見ながら大きなスタンスを決める。では、何を見るかというと、実体経済のほうは実質GDP、それから物価動向、この二つということなるかと思います。先ほど資料で説明していただいたとおり、直近でGDPの動きというのは良い、GDPギャップも久しぶりにプラスに転じた。物価のほうは御存じのとおり、日銀が目標とする2%を上回って、3%が長期的に続いてきている。こうした状況です。

    ということは、セオリーとしては、財政政策、アクセルとブレーキという、こうした例えで言わせていただければ、ブレーキをかけるというのが一丁目一番地である。右に行くか、左に行くか、それを間違えると文字通り道を誤るということですが、方向としては、私ははっきりしていると思います。財政健全化をこの際しっかりと考えるべきである。これが1点目です。

    2点目。現政権、成長と分配の好循環ということを言ってきて、これは正しいと思っていますが、財政全体のスタンスは先ほど言ったとおりですが、財政としていろいろなことをやらなくてはいけない、あるいは政府としてやらなくてはいけないと、いろいろあると思います。成長に資するような予算、金の使い方ということで、私たち、ワイズ・スペンディングと、これはもともとケインズの使っていた言葉ですが、我々もかなりの期間、使ってきたと思います。

    指摘したいことは、予算に関わるわけですから、スペンディングということになるかもしれませんが、ワイズ・アクション、政府によるワイズ・アクションということです。ワイズ・アクションを伴わないようなスペンディングというのは、これは言葉でどう言ってもワイズ・スペンディングにならないということです。そうした点で、砂をかむような括弧つきワイズ・スペンディングがかなりあったと思うのですが、成功例がないわけではないと私は思っています。

    メジャーな成功例は、ほかでもないインバウンド。今日の資料でも御説明がありました。これは私の記憶では、03年頃、小泉内閣で、インベスト・ジャパンとも言ったのですが、ビジット・ジャパンというプログラムを立ち上げて、インバウンドの低調ぶりということを何とかできないかと。低調ぶりというのは当時ですよ。20年前。それで様々なことをやって、観光庁をつくる、統計を整備する。それから、様々な入国等の規制の改革をやる。こうしたことを積み上げてきて、第2次安倍内閣の頃からそれが奏功して、コロナによるインタラプションがあったわけですが、基本的に今日に至っている。インバウンドの消費というのは、統計上、広い意味での輸出になるわけですが、今日、足もとでは、自動車に次いで2位くらいになった。輸出の中で、5兆円くらいの規模になってきている。

    ここで思い出したいのは、お金を、公的な資金をこれで幾ら使ったのか。繰り返しになりますが、観光庁をつくる、統計を整備する、規制改革をする。民間の努力もいろいろあったわけです。従業員の人に外国語を、少し覚えてもらうとか、官民そろって様々な知恵を絞って、今日に至っているわけですが、一体お金を幾ら使ったのか。少し確かめていただきたい気がします。私は、リターンは極めて高かったと思います。この全てのことにおいては、スペンディングよりはむしろアクションのほうが大きな役割を果たしたことは明らかであると思っています。これは全てのことに関わる大きな教訓と思っています。分配のコアは、もちろん社会保障です。ここでもスペンディングよりは、アクションが大切です。アクションというのは、この場合にはもちろん改革。社会保障の制度の様々な改革をきちっとやるということであると思います。

    これについてはまた機会があると思っていますが、いずれにしても、繰り返しになりますが、私たち、ワイズ・スペンディングと言ってきたのですが、政府のワイズ・アクションを、これこそが実は大切なことである。それに伴って、本当に必要なところには確かにお金をつける必要がある。これはあると思いますが、そこを是非とも考えていただきたい。

    お金の点では1点目に戻りますが、右左の方向、マクロ経済の現状からすれば自明で、健全化にかじを切るときであるということを是非とも議員の先生方にも肝に命じていただければと思います。

    以上です。

    増田分科会長代理それでは、芳野委員、お願いします。

    芳野委員論点を3点に絞って申し述べたいと思います。

    まず1点目は、来年度予算編成の在り方についてです。社会経済活動が平時に戻りつつある中、歳出構造も平時に戻していく必要があります。また、本来、年度の予算編成は、前年度の政策効果の精査、検証を行った上で、真に必要な政策と裏づけになる財源が一体的に措置されるべきであり、同時に財政規律の強化も行わなければなりません。そのため、プライマリーバランスにひずみがある現在、監視の目が行き届かない予算、予備費の積み増しなどは厳に慎むべきであると考えております。

    2点目は、現下の物価上昇への対応についてです。食料品をはじめとする生活必需品は上昇が続いており、低所得者の生活を圧迫し続けています。また、高騰が続くガソリン価格は、特に地方の暮らしと中小企業の経営に大きな打撃を与えています。緊急的に補助金などで対応することも必要ですが、誰もが安心して暮らせる社会とするには、恒久的で実効性ある積極的な対策として、税制改正を行うべきと考えております。真に支援が必要な層に対し、購入時に支払った基礎的消費にかかる消費税を還付する給付付き税額控除の仕組みを導入すれば、買い控えなどを抑制できます。また、ガソリン価格などに上乗せされている、いわゆる当分の間税率は、既に課税根拠も失っていますので、廃止を検討すべき時期に来ていると考えております。国民の命と暮らしを守るために、前向きな検討をお願いいたします。

    3点目は、こども・子育て政策について触れたいと思います。まず、こども・子育て政策の財源は、相当程度を一般会計から支出するべきであり、また、医療、介護、年金、雇用をはじめとする社会保障の制度改革や歳出見直しによって、機能劣化や社会保険の負担増を招いてはなりません。なお、加速化プランにおける支援金制度は、その法的性質や、給付と負担の関係性、運営体制と責任、拠出する側からの意見反映など多くの課題があります。こども・子育て財源確保に当たっては、税や財政全体の見直しを排除することなく、幅広い確保策を検討すべきと考えております。

    最後に、共働き・共育てを推進するには、周囲への応援手当の支給や、時短勤務に係る給付の創設という一時的な財政措置ではなく、働き方改革の徹底による長時間労働の是正、誰もが仕事と生活を両立できる職場環境、社会の構築こそが先決であることを改めて申し述べておきたいと思います。以上です。

    増田分科会長代理それでは、遠藤委員に御発言いただきまして、これで委員からの御発言を最後にしたいと思います。それでは、遠藤委員、どうぞ。

    遠藤委員通常、どの政権でもそうですが、政府が、政権が掲げる改革の大きな方向性と、経済対策とか補正で打ち出される施策のずれというのは、やはり支持率の低下とともに広がっていくものであると思っております。痛みを癒やすような鎮静剤を乱用しても、財政のみならず、長期的な施策の方向性をゆがめてしまいます。これは例えばエネルギー価格の補助と脱炭素という方向性が良い例であると思います。

    財務省としては、政権に寄り添う必要があると思うのですが、その長期的な施策の方向性に修正させていくということは、財審の役割であると思いますので、重荷をもう一度担っていかなければならないという思いを新たにしました。

    吉川先生の御発言に重なるところもあると思うのですが、財政とか補助金の投入よりも、構造改革とか規制改革、そこは政治だけではなく、政府も先送りのインセンティブが高いところなので、こちらもしっかりと我々が発言していかなくてはならないところであると思います。

    財源の話ですが、こどもに限らず、防衛ですが、これまではやはり社会保障料に対して、現役世代はある程度、言葉は悪いかもしれませんが、盲目だったと思います。でも、いよいよ最近目覚め始めています。この点では、例えばエーザイのレカネマブが承認されましたが、これはすばらしいことですが、これが大量に使用されるということを想像すると、現役世代は一気に青ざめてしまいます。やはり世代間の公平性を担保する施策の重要性がますます必要になるのだろうと思います。

    1点触れられていないところなので申し上げたいのですが、資料で、インフレ抑制法について御紹介ありました。米国の法律ですが、近年、産業政策が安全保障政策と一体化して、国内産業の育成であるとか保護に財政の投入が積極的に行われています。IRAは、グリーン化という目的というよりも、むしろ製造拠点としての米国の優位性を確保することが狙いです。確かに安全保障の要件に、自国の産業力が含まれる時代になったということは間違いないのですが、こうした財政投入を前提としたグローバルの競争に日本がどの程度足並みをそろえるのかというのは一つ議論が必要な点であると思います。

    今、日本は再エネ賦課金が一例で、CAPEXだけではなくて、OPEXの支援はこうやって行われているのですが、こうしたような値差補償的なOPEX支援をこれからどのぐらい拡大していくのか。ここはもう1点、一つの今回の予算編成の中で大きなテーマになろうかと思います。以上です。

    増田分科会長代理それでは、通信環境が悪くて御発言いただけなかった委員の方がいらっしゃいますので、事務局から読み上げていただきます。お願いします。

    横山調査課長小黒委員からのコメントを、2点読み上げさせていただきます。

    1点目、社会保障財政の改革議論に関する前提について。経済成長すれば、税収や社会保険料収入も増加するため、中長期的な経済成長率に沿った形で、医療費や介護費を伸ばすことは、国民の追加的な負担は発生せず、未来への投資として望ましい。一方で、成長率を上回る形で伸びる場合は、子育てを担う現役世代を含め、国民の負担増との関係が問題になる。その場合でも、日本を含む世界経済はインフレ基調に変わってきており、インフレを活用した医療・介護についても痛みを軽減した形でゆっくり調整していくことも可能になりつつある。2004年の年金改革で、年金の給付費を安定化できる仕組みが存在するが、例えば診療報酬などについても安定化の仕組みにつき議論いただきたい。

    2点目、今後の社会保険料率上昇幅の推計について。今後の社会保険料率につき、政府が2018年に公表した2040年を見据えた社会保障の将来見通しを利用して、簡易試算すると、成長率が1%程度の低成長ケースでは、社会保障給付費は2025年度で約140兆円、GDP比21.8%と予測されていた。しかし、2023年度の社会保障給付費は134.3兆円、GDP比23.5%で、2025年度の予測値を既に1.7ポイントも上回っている。一定の前提で試算すると、2040年度には社会保険料率が2018年度の約1.3倍になる可能性がある。医療・介護の保険料率は、公的年金と異なり、上限が存在しない状況。子育てを担う現役世代の負担を抑制するためにも有識者の会議体を設置し、政府は2040年度、2050年度までの社会保険料率の上昇幅に関する試算を示した上で、全体の社会保険料率に上限を定めることも検討すべき。

    小黒委員からは以上でございます。

    それから、伊達委員からのコメントを読み上げさせていただきます。

    コロナの収束と共に消費活動、設備投資が活発化する一方で、労働力、総労働時間不足により成長の頭打ちが懸念されます。現在、年収の壁について議論されていますが、公平性の観点から、第3号被保険者制度の廃止と収入に応じた負担を前提とした制度に改革し、労働力の確保と税収の伸びにつなげ、経済の成長スパイラルに向けていくべきであると考えます。また、労働生産性については、業種別目標値を明確にし、その実現に向けて、阻害要因の分解と方法論を明らかにし、数値改善をモニタリングするべきであると考えます。同時に、適正なプライシングによる値上げも必然であると考えます。

    以上でございます。

    増田分科会長代理それでは、本日は「財政総論」について議論いたしたのですが、今後は「地方財政」、それから「社会保障」、「社会資本整備」など、それぞれの歳出分野について、歳出改革部会を活用しながら御議論いただき、建議を取りまとめるという取り運びを考えているところでございます。

    それでは、最後、会長、一言お願いします。

    十倉分科会長皆様、大変示唆に富む貴重な御意見ありがとうございました。昨日、経済財政諮問会議があったのですが、そのときにも申し上げましたのは、成長と分配の循環、この「循環」が一番大事であるということを申し上げました。いろいろなお金の使い方がされていますが、これが本当に「循環」というか、構造的で持続的なものにつながっているのかどうか、吉川先生がおっしゃったワイズ・アクションや、ワイズ・スペンディングになっているのかどうか。GDPギャップが解消されつつある中、今こそ、こうした観点を踏まえた予算編成が最重要と考えております。その最たるものとして、やはり全世代型社会保障改革があって、賃上げをしても、これが消費に回らなければ、貯蓄に回るだけであれば、「循環」はいたしません。何よりも本当に公正で公平な社会保障制度になっているのだろうか。この安心感を得ないと若い人たちは消費しません。若い人たちの貯蓄性向は、お年寄りのよりも15%も高いという統計もあります。是非、成長と分配の好循環に向けてやりましょうということを諮問会議でも申し上げましたが、その中でも、今日御議論いただいた社会保障制度改革というのは大事な部分になると思いますので、今後の議論をよろしくお願い申し上げます。

    増田分科会長代理会長、ありがとうございました。

    以上で本日の議題は終了ですが、この会議の内容については、この後、記者会見で御紹介させていただきます。また、議事録のほうは後日皆様方に御確認いただきますが、それまでは、会議の個々の発言につきましては、報道関係者にお話しすることがないよう御注意いただきたいと思います。

    次回、10月4日14時からの開催ですが、次回以降はペーパーレス化の取組として、会議室で参加いただきます皆様にも原則として紙による資料配付はせず、PC画面で御覧いただく形といたしますので、御了承をお願いします。

    それでは、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。

    午後11時05分閉会