財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和5年5月22日(月)14:00~16:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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とりまとめに向けた審議
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
井上副大臣 宮本大臣政務官 青木大臣官房長 渡部政策立案総括審議官 新川主計局長 寺岡次長 八幡総務課長 小野主計企画官 渡邉法規課長 尾﨑給与共済課長 松本調査課長 一松主計官 三原主計官 佐久間主計官 有利主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 大沢主計官 端本主計官 河口主計官 坂本主計官 渡辺主計官 内之倉主計監査官 山岸予算執行企画室長 鈴木主計企画官 園田公会計室長 |
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委員 |
秋池玲子 大槻奈那 河村小百合 熊谷亮丸 櫻田謙悟 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 安永竜夫 |
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臨時委員 |
上村敏之 遠藤典子 小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 角和夫 滝澤美帆 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 横田響子 |
午後2時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、時間がまいりました。ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、冒頭から井上副大臣、宮本大臣政務官にお越しをいただいております。どうもありがとうございます。
本日の議論ですが、建議の案について御審議をいただきます。この案は、河村委員、佐藤委員、武田委員、土居委員、中空委員、吉川委員に起草委員をお願いして御議論をいただきまして、お手元のような形で取りまとめていただきました。起草委員の皆様方、お忙しい中ありがとうございました。
審議に先立ちまして、今後のスケジュールを御説明をしておきます。お手元に一枚紙で右上に赤字で「委員限り・対外厳秘」と書いておりますが、お手元のこのスケジュールというメモを御覧いただきたいと思います。本日の会議終了後に追加でコメントがある場合は、大変ショートノーティスで恐縮ですが、本日中に事務局にメールで御提出をいただきたいと思います。様式は自由で結構でございますので、適宜の様式で本日中に事務局にメールで御提出をいただきたいと。それでその後、今日のこの場での議論と、また、いただいた意見を含めて起草委員会において改めて御検討をいただきます。その結果について、委員の皆様方にバックをいたしますがが、修文案については、基本的には起草委員に御一任をいただきたいと存じます。
次回の分科会ですが、5月29日月曜日、ちょうど1週間後、来週の月曜日を予定しておりまして、こちらは鈴木大臣のお時間が許せば、この分科会の場で取りまとめられました建議を大臣にお渡しできればと考えております。
なお、次回の5月29日の分科会までの間、すなわち今週ですが、今週の間に経済財政諮問会議が開催をされるということになろうかと思いますが、その場で鈴木大臣から、「財政制度等審議会の建議の方向」を御報告いただくことが想定をされております。したがいまして、その際に使用する予定の資料もお手元に配付をしてございます。横紙でタイトルにそう書かせていただいておりますが、こちらのほうも御確認をいただきたくございます。
次に、本日の審議の進行について申し上げますが、大きく二つに分けて、まず半分の15時ぐらいまでを目途に、前半戦として、目次にございます「基本認識」、それから続いて「財政総論」、それから「成長」の三つのパートを審議していただきまして、その後、後半戦残り1時間で「こども・高齢化等」、それから「人口・地域」、この二つのパートを審議する、こうした予定にしてございます。前半・後半それぞれで皆様方から御意見をいただいた後に、よろしければ起草委員の方々からもコメントを頂ければ、このように考えております。本日の議論進行はこのような形にします。
なお、お手元に小林委員からの意見書をお配りしてあるかと存じます。またお目通しをいただきたいと思います。
それでは、前半戦として「基本認識」、「財政総論」、「成長」について、1時間弱になろうかと思いますが、審議を行います。本文の該当ページでいいますと、1から43ページの部分でございます。御意見、コメントある方は、会場の方はネームプレート、それからオンラインの方は挙手するボタン、これはこれまでどおりです。5名・5名という形で指名をいたしますので、よろしく御発言をお願いいたします。
なお、限られた時間の中で、できるだけ多くの方々に御発言いただくということで、御発言は2ないし3分で本日はよろしくお願いします。場合によっては、少し私のほうからまた、早めにということをお願いする場面もあるかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。
それでは、前半戦のほう、御意見、コメントがある方は、どうぞ合図をお願いいたしたいと思います。それでは、今、私のほうから向かいまして左側、すなわち秋池委員から大槻委員、熊谷委員という形で、5名の方に御発言いただきたいと思いますので、秋池委員からどうぞ御発言をお願いいたします。
〔秋池委員〕ありがとうございます。今回、この取りまとめ全体がとても読みやすいと感じました。理由はおそらく、横串を刺して構成したというところが大きかったかと思います。それがまず一番大切なところであると思います。
それから、こちらのパワーポイントの紙の2点目にありますが、「平時こそ財政を健全化し財政余力を確保することが不可欠。」とはっきり書いたのは、大いに賛成するところでありまして、財政が健全ではないと何が問題なのかというようなことをおっしゃる方も世の中いらっしゃるのですが、一たび危機が訪れたときにこそ、これが大きな形で顕在化するということを考えますと、このようなことを記載したのは非常に優れていると思いました。
一方で、こちらのパワーポイントの3枚目になってしまうのですが、本編ではなくて恐縮なのですが、「Ⅳ.こども・高齢化等」のところで、少子化は様々な意味で大きな問題なのですが、財審なので仕方がないのかもしれないのですが、「少子化を押しとどめることは、年金、医療といった各保険制度を将来にわたって機能させるためにも必要。」というのが、この手段が方法なのか、人の問題なので、あまりにも手段として少子化問題が記載されているのが、人によっては引っかかるところもあるのではないかと思いました。実際には財政上非常に重要ですし、財審の中ではそうした類いの議論もありましたが、もしも表現で工夫できるのであればと思った次第です。しかし、あえてこのことで少子化の重要性により光を当てようというお考えなのであれば、このままでも結構でございます。
それからもう一つ、本編の41ページの18行目に、大手企業やJAXAからベンチャー企業へ移る人が限定的で、ゆえに産業が起こらないという類いのことが書いてあるのですが、妙にほかに比べてここの部分が具体的に感じました。脚注を拝見しますと、根拠あって書いておられるところのようなのですが、もし全体を通読したときにバランスを欠くようであれば、表現の書きぶりだけの問題でございますが、御再考もあるかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは、大槻委員、どうぞお願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。起草委員の皆様、本当に大作を、感服の至りでございます。ありがとうございました。
私も秋池委員と一緒で、非常に読みやすいと思いまして、何かというと、おそらく横串を通した分、少し似たような概念であったりコンセプチュアルなものが多い中で、それぞれの段落についている事実を述べた後に、まとめ、そしてアクションプランというか、こうしたことをするべきである、こうしたことを期待したいという形のまとめ方になっているので、分かりやすいのかなと思いましたが、一方で、少しだけ申し上げたような最後の形になっていないので、おやっと思うことがあったので、それについてと、あと細かいことをいくつかお話しできればと思います。
1点目は、5ページ目8行目でございます。その次の段落に市場の信認というのが出てくるので、ここで8行目からの1段落は信認ということで書いていただいているのですが、おそらく次の段落のほうにまとめたほうが流れが良いかと思いました。
そして、同じページの23行目からが、申し上げたまとめアクションプランの逆になっていますので、できれば、「以上のような」から始まる一文を最後に持ってきたほうが、その形で統一的で、かつ分かりやすいかと思いました。
続きまして、16ページ目14行目でございまして、効果等についての検証ということ、これは検証することは非常に大きな、重要な点であると思っているのですが、効果だけでなくて、その上に述べている副作用を点検することが非常に重要であると思いますので、副作用という形で、効果と副作用について検証という形がよろしいのではないかと思いました。
それから22ページ目の3行目でございます。こちらにつきましては、22ページ目の12行目でございまして、より高い賃金を得られる職務に対応できるというと、何だかすごく即物的な感じがいたしますが、ここで言っているのは、その前の段落等で成長に関して言っていますので、より効率性を高めるとともに、職務に一層の、例えば「やりがいを感じられるような」にすることなど、少し成長に向けたポジティブな表現にしたほうが良いのではと思いました。
それから、30ページ目から33ページ目のDX全体についてでございます。こちらについては、現在、ピボットをするであろうと言われているテクノロジーであるところの、この会議でも度々出てきた生成系AIについて、ChatGPTなどについてほぼ触れていないと思いましたが、それについて少し何かの形で盛り込んだほうが良いのではと思いました。
そして最後なのですが、39ページ目から40ページ目でございます。最近は、スタートアップについて、金融機関が個人保証を経営者について取るということについて問題視をされ、これについて金融庁さんと中小企業庁さんが取り組んでいただいていると思いますので、それを後押しするようなことを入れてはと思っています。具体的には、例えば39ページ目の17行目ぐらいに、我が国固有の社会・文化的、制度的な問題等の多面的な議論を踏まえた、といったような形にし、かつ、40ページ目の最後のほうの21行目の辺りに、経営者の個人保証から、事業成長を評価する仕組みの推進とかいう形で入れたら良いのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。すばらしい建議をお作りいただきまして、心より御礼申し上げます。
まず全体観として、1ページからの基本的認識の部分などで、重要な概念として、受益と負担の見える化、これをもっと前面に出していただきたいと思います。また、抽象度の高い概念として、デジタル化ですとかPDCA、EBPM、これらのキーワードを是非、基本認識などのもっと目立つところに盛り込んでいただいたほうが良いのではないかと考えます。
それから10ページでございます。9行目から22行目にEUの話がございますが、かなり論旨が行ったり来たりして分かりにくい印象を受けますので、例えば、16行目の「この際、」から22行目までは注釈に持っていくほうが、全体として論旨が分かりやすいのではないかと感じました。
次に、12ページでございます。3行目から9行目辺りの、PBの話でございますが、やはり重要なのは、PB目標というのは国際比較等からみて極めて緩い目標であって、その緩い目標ですら達成できていないという点ですから、このことを是非加えていただきたいと考えます。
また、13ページの9行目から10行目、ここは注の25につながりますが、私は注の25は必ずしも要らないのではないかと考えております。すなわち、大事なことは、国債を引き受けるか否かは各投資家の判断であるということでございますので、それを明記をするか、もしくは注の25を取っていただいたほうが良いのではないでしょうか。
そして、16ページでございます。12行目から16行目の辺りで、先ほど大槻委員からも御指摘があった点には賛成でございますし、また、この部分で書くかどうかは別ですが、やはり平時と有事を峻別するということですとか、もしくは有事の際に何かを導入するときには、必ず事前に政策目的を明確にすることですとか、段階的縮減の仕組みを組み込むことですとか、もしくはEBPM、その辺りの内容を是非どこかでしっかりと書いていただきたいと思います。
次に、17ページでございます。17ページの広く言うと12行目から17行目のISバランスの話でございますが、ここでは、そもそも民需主導型の持続的成長を目指しているのであって、企業と家計の貯蓄超過を政府支出で賄うといった状況を固定化させる政策運営は望ましくないということを、しっかり書いていただいたほうが良いのではないかと思います。
そして、21行目から23行目のところで、21行目「むしろ、」の後に、「巨額の財政支出が健全な労働移動を阻害し、労働生産性を低迷させることなどに加えて、」という記載を挿入して、やはり新陳代謝が進んでいないということを強調していただきたいです。
また、18ページの15行目から16行目、行政事業レビューシートでございます。ここは以前発言いたしましたが、補正予算で無駄が多いので、とりわけ補正予算で行政事業レビューシートを活用するということに言及していただきたいです。
次に、「成長」の部分では、21ページの22行目、構造的な賃上げでございますが、この構造的な賃上げの定義について、もう一度考えていただいたほうが良いのではないでしょうか。ここでは、「持続的な賃上げである『構造的な賃上げ』」と記載していますが、次の22ページの9行目を見ると、「持続的・構造的な賃上げ」と書いてありますので、細かい話ですが、構造的な賃上げに持続的という意味が定義として含まれるのかどうかというあたりが不明確です。構造的賃上げというのはそもそも経済学の用語ではございませんので、定義をしっかりしていただいたほうが良いのではないかと考えます。
そして28ページの辺りで、「排出量取引と炭素税のベストミックス」こそが、やはり本質的に重要だと考えますので、このベストミックスという文言なども是非書き入れることを御検討いただきたいと思います。
また、33ページの23行目以降の部分で、ダイバーシティー、多様性というのが非常に重要な概念ですので、その文言を是非どこかに入れていただきたいと考えます。
それから、35ページの3行目以降のところで、産学連携がうまくいかない大きな理由として、企業のトップがコミットをしていないことが指摘できます。例えば企業の部長クラスと交渉するからどうしても決まらないという、その辺りがポイントではないかと思いますので、書き込むことを御検討ください。
最後、39ページの2行目でございますが、ユニコーンは、おそらく創立10年以内で10億ドル以上というのが一般的な定義ではないかと思いますので、定義を御確認ください。
その他の点はまたメールでお送りいたします。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞお願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。やはり今回の横串の試みについては大変良いなと思っておりまして、ミクロでなくて、本当にマクロで見て、実際財政は国民が何となく不安であると思っているところに関してどうしていくかというような方向を打ち出せれば良いかと思います。
それで、若干、これは私が財審で何回も議論をしていて、かつ、メディアとして政策を見ているせいもあるかもしれませんが、分析とかが、今までの流れの中と、この後進みそうな、今年、来年、再来年あたりに進みそうな改革を視野に入れた文章になっているような気が若干するのですが、特に春の建議においては、もう少し長玉というか、そもそも日本はこのままで大丈夫かという、もちろんそれは政治とかいろんなことを考えれば実現可能性は無理な改革もあるのですが、やはり方向性としてはこうしなくてはいけないのであるというところをもう少し強く書くような建議になると良いかなと。これは、今回だけではなくて来年以降横串でやるのならば、春と秋の建議の視野を少し差をつけても良いのではないかと思います。そうした意味で、もう文書がここまでできているので、今回に関しては具体的にこうすれば良いかというのが浮かぶわけではないのですが、来年以降の春の建議に向けて、そうした少し視野を長期的にお願いできればと思います。
次は非常にミクロなのですが、文言で、世の中には反対があっても、この財審の中では、大体みんなこう思っているのではないかというようなところがいくつかありますが、それを言葉を丸め過ぎないで良いのではないかと思っております。つまり、世の中を配慮して丸めていることは重々に承知しますが、財審はこうなのであるともっと投げ込んでも良いのではないかと思います。具体的にいくつか申し上げますと、補正予算のところ、一定の規律づけが必要であるとの指摘もあり、真摯に耳を傾けていくべきである。いや、財審の人はほとんど一定の規律が必要であると思っているのではないでしょうか。耳を傾けるどころではないかなと。もし反対があれば別です。
同じように、例えば、こうした視点で見ると結構いっぱいあったので全部は言いませんが、中長期試算、これも内閣府が楽観過ぎるという指摘もあると他人事なのですが、内閣府の試算は楽観的であるとほぼ皆様思っていらっしゃるのではないかと思います。さらにこれが、研究していくことが考えられる、研究することに反対があるのかどうか、研究するあるいは中長期試算はもう楽観的だから、もっとちゃんとやれぐらいのことを、こんなに言葉を丸めず言い切ってよいのではないかと思います。
こうした視点で見ると実は結構ありまして、細かく一個一個は指摘しませんが、財審の玉なわけなので、世の中の反対は、それは分かった上で、財審はほぼこう思っているということは言い切ってしまってよいのではないかと思います。
それから、19ページですが、会計検査院もいろいろな報告があるから反映しろと言っているというようなくだりがあります。でも、少なくとも会計検査院は、コロナ対策に関しては会計検査をするのにもデータや仕組みが十分ではないという指摘をしているのですね。これは、そもそものデータの十分性とかというのにつながると思うので、何となくいろいろ報告するからそれも見ておくよというような表現ではなくて、その一部に関しては明確に表現したほうが良いのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、安永委員、お願いします。
〔安永委員〕ありがとうございます。大変よくまとまった建議をお作りいただきまして感謝申し上げます。
数点ばかり、民間企業の視点から、少し私も踏み込みをさせていただきたいと思います。一つ目、建議素案2ページの5行目から6行目にかけて、「民間の活力を引き出していくことが重要であり、そのことが、日本経済の成長力を高めることにつながる。」と書いてあるのですが、これは30年前から分かっていながら、できていないことであります。もう一段踏み込んで民間の活力を引き出すためには、我が国の産業構造の転換と労働市場の流動化を図り、海外資本や労働力を呼び込むことで企業の生産性を高め、日本経済の持続的成長につなげることが必要です。これはウオーレン・バフェットの日本に対する期待値とも一致しているというのが、同氏との対話の中で私が感じたリアルな印象です。
同様にその次の、「民間主導の経済成長に向けた環境整備を行うことが、政府の役割である。」という点について強調させていただきたいのは、「経済あっての財政」という考え方の下、環境整備を行っていただくことが政府には強く求められるということです。「経済あっての財政」という表現を何か所か入れたいと思ったのですが、まず一つここだけには入れていただきたいと思います。
次に、17ページまで飛びます。14行目に、「企業の貯蓄超過について、お金をためていることが問題である」と書いていただいているのですが、それは確かに問題と認識するものの、同時に企業にお金を使わせることを促す政策が、実は無かったのではないかと思います。したがって、15行目の「政府部門の赤字が長く続いているが、」の後に、こうした状況を変えるためには、企業にとって賃上げや国内投資を行うことが経済合理性にかなうよう「財政支援に限らず、規制改革等の各種手段を組み合わせて、」という風に少し具体的に書いていただければと思います。
もう1点最後になります。27ページの6行目から7行目にかけて、「再生可能エネルギーの導入を加速していく。」と書いてあるのですが、財審で議論すべき論点かどうかという懸念はあるものの、やはり「原子力の最大活用」をどこかでうたっていただきたい。再生可能エネルギーの導入を加速するのはもちろんなのですが、今ある技術を最大限使わないで足もとの経済が成り立つとは思えません。したがって、「再生可能エネルギーの導入を加速するとともに、原子力の積極的活用を進めていく」という形にしていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、一旦ここでオンラインのほうに移ります。オンラインで次の二人の方、すなわち櫻田委員、それから遠藤委員に御発言いただきます。初めに櫻田委員、どうぞ御発言ください。
〔櫻田委員〕ありがとうございます。まず、この建議の内容につきましては、正直申しまして、反対すべき点は1点もないということを強調した上で、財審の役割について話すつもりはないのですが、せっかく良いものを作ったら、何とか実現に結びつけたいと。そして、位置づけとしては、財務大臣の諮問機関ではありますが、最終的にどうやってここに書いてあるものを、全てではないにしても、少なくともここは実現したいというものを出していけたらなというのを、毎回毎回すばらしい文章を読みながら感じているところです。
そして、今までの委員の方から御説明あったように、私は、御提案内容について、一つ一つ反論したり、あるいは疑問に思うことはありませんので、全て賛成と申し上げてよいのですが、1990年代に日本は、言わば低金利政策、ゼロ金利というのを導入して以降、黒田さんの10年間を含めても、やはり世界中を含めて非常にイージーマネーの中で企業は生活してきており、また、国民も生活者も、そして国も、そうした中で政策を取ってきたということが、この基本認識にありますように、ウクライナ侵攻やコロナあるいは台湾海峡といった地政学的な緊張によって大きく反転してくる可能性がある。すなわち、金融は金融、経済は経済、政治や外交は別という話ではなくて、これは表裏一体になっているという点を強く強調していると。つまり、歴史的転換点であるということを、おそらくこれまでの建議の中で述べて、これは見ていないので分かりませんが、私はこここそが一番重要な点であると思っておりまして、この歴史的転換点であるということをこの建議の中で、我々審議委員の議員のみならず、国民全体がどういうふうにそれを本気で思うかということをどれだけアピールできるかというのは、私は鍵であると思っています。
もう少し具体的に言えば、潮目が変わって、おそらく金利は、正常化なのか、上がるのかは別として、今のゼロ金利ということはありませんから、ましてやマイナスはない。となると、直ちに膨大な国債の利払いというものがやってくるわけでして、それについての備えというのは一体どうなるのかというのは私は気になってしようがないのですが、これをやみくもにアピールすることによってホラーストーリーを書くのがこの建議の目的ではないですので、そこまで触れようとは申し上げませんが、この基本認識の重要性というのは、いくら強調してもやむところはないだろうと思っております。そうした意味で大きな点が一つ。
もう一つは、個別の点なのですが、簡単に3点だけ言いますと、1点目が少子化対策の財源ですが、また結局医療保険に上乗せという、いつの間にかそんな議論になってしまっていて、いつ決まったのかという感じが私はします。国民が一生懸命議論した結果、やむを得ない、医療保険に上乗せだよねといった声を私は聞いたことがないので、気がついてみたら社会保険料の引上げだったり、つなぎを含めた国債の発行ということになっているわけですが、この議論もどこで行われたのか、私が勉強不足なのか、分かりません。取りやすいところから取るという考え方が変わっていないと思いますし、ポリティカリー・コレクトなのか分かりませんが、少しこれは残念だなと思います。
今すぐに消費税を上げろとは言いませんが、どう考えても、サステーナブルな財源を確保せないかんとすると、消費税を含めた税について、その将来の必要性について議論を開始すべきですし、年齢によるものではなく、応能者、応能主義という点についても議論を開始すべきであると思っていますが、その議論すら今、封印されているというふうに感じます。
二つ目はコロナです。2類から5類ということで、私は大いに賛成ですし、観光地には人があふれているのですが、喉元過ぎれば熱さ忘れるという国民のまさに悪い面が出てきたと思います。何を言いたいかというと、あの感染流行時に5兆円のお金を使いました。5兆円の国費を投入して、全国90万病床のうち、実はコロナ用には5%しか確保できなかったというのは事実として残っているわけです。また、一部には補助金を受け取っていても実際には患者を受け入れない病院があったということで、当時も、そして今も問題になっている。この点についてはどうしていくのかということの議論も忘れられているような気がします。来年4月には法が改正されて、医療機関に対して協力義務が課されることになりますが、はっきり事実として言えることは、人類が経験した感染症の中で、撲滅というふうに宣言できるのは天然痘だけであると聞いています。つまり、このコロナを含めて必ず再来する。これに対して、今この病床問題を含めて医療体制の充実を、痛みを伴っても、そして、言ってみれば特定の既得権を確保する形にはなってはいけない、ならないことを期待するわけです。
最後、PDCAです。検証して見直すスピードがやはりなかったので、何人かがおっしゃっていましたが、過去30年間、失った30年になってしまいました。ここが最も重要な点でありまして、どうしてできなかったのかを検証することなく次の議論をすること自体は、普通民間では禁じられています。でも、私の感覚では、国費を使う場合には、過去どうしてできなかったのかをつぶさに、場合によってはその責任まで明らかにさせることなく、未来志向という言葉でもって次の議論に進んでよいと。これはやはりもうやめたらよいのではないかなという点において、この建議こそ、サステーナビリティーを唱える我々の立場とすれば、何しろPDCAですと。なぜできなかったのか、そして、分からなかった点はすぐに直して、新しくプランを組み、またやってみる。この癖をつける。この仕組みの癖をつけるということを、どういう形なのか分かりませんが、是非うたい込んでいただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕ありがとうございます。起草委員の皆様、御尽力ありがとうございます。いろんな専門の先生がいらっしゃるので、私は自分の領域だけで申し上げたいと思います。
まずGXのところなのですがが、先ほど意見がございましたとおり、少し私の印象も、再生可能エネルギーにスタンスを置き過ぎではないかというふうに考えております。先ほど安永委員がおっしゃられたように、原子力の利用を自給率自立の電源の中に加えていくということは、まず第1点目、政府の方針ともそぐうものですので、ここは必ず入れていただきたいというふうに思います。
また、海外需要の取り込みの中で、こちらも再生可能エネルギーのことばかりが言及されているのですが、この間のエネルギー・トランジションは、2050年はもしかするとその姿は再エネがおそらく大きなポーションを占めるかもしれませんが、これから移行期間の中で、天然ガスを含めていろんなトランジションが行われてくると思います。その中で、日本がおそらく活躍できる分野というのは、むしろ再エネの普及というよりも、そのトランジションのところであると思いますので、この辺りもそうしたコンテクストを残していただきたいというふうに思います。
もう1点目が科学技術のところなのですが、大学の研究の体制のところでございます。適切な研究費による受託のところで、昨年末に日本のガイドラインが改定されて、公的資金を申請する研究者は、外国政府などから資金を得ている場合は報告の義務があるというふうなことをペナルティーも含めて見直されたと思いますので、研究インテグリティーということも少し言葉として言及をしていただけないかというふうに思った次第です。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちらの会場のほうにまた戻したいと思います。それでは続きまして、木村委員から御発言をお願いします。
〔木村委員〕どうもありがとうございます。起草委員の先生方、本当に立派な内容の案をまとめていただいてありがとうございました。横串に刺すことも良かったと思うのですが、また、タイトルも「歴史的転機」とされていて、この位置づけには私もすごく賛成です。昨日まで開かれた広島のG7サミットも、歴史の転換期ということを強く印象づける会合となりました。そうした今の時代にちょうどふさわしいタイトルであると思います。
これは少し教えていただきたいのですが、昨年の建議は転換点ということになっていましたが、今回は転機ということで、何か意味づけが違うのか、もし教えていただくことができれば幸いです。
その上で、基本認識に関して絞ってコメントさせていただきたいのですが、せっかく転機と名づけたわけですから、それを受けた財政運営の対応を、もう少し関連づけて表現を整理してもよいのではないかなという気もしました。要は、具体的にその転機というのは、ウクライナ危機とインフレ、あと日本固有のものとして少子高齢化とか人口減少というものがあって、これに対応した財政運営とか財政支出が問われていると思うのですが、そうした意味では、ウクライナ危機では防衛力の整備、少子化では少子化対策の強化であって、まず基本認識として、それぞれ一定の支出の拡大が必要であるということの認識をまず書いてはどうでしょうかということです。その上で、インフレとかで金利上昇が懸念されている上、高齢化対応で巨額の財政赤字を抱えているので、支出を拡大する場合にも、真に必要な支出に絞り込まなければならないという考え方を示す必要があるのではないかと。
例えば、1ページの基本認識、防衛費の記述です。「昨年末、今後5年間の抜本的な防衛力強化の取組が決定されたが、」、ここから「震災・感染症等の危機への備えも必要」というふうに、防衛費から震災とか感染症の話に広がって、読んでいるほうに基本認識でいきなりここを読ませると少々混乱するので、震災とか感染症、おっしゃっていることはそのとおりなのですが、これは後で記述しているので、基本認識は防衛費に絞って、防衛費の拡大を決めたが、拡張している財政の規律を保つ必要があると、そういうふうに整理したほうが良いのではないかなという気はしました。
また、基本認識の少子化対策についても、まず転機ということでいえば、昨年の出生数がまず年間80万人を初めて割ったという事態ですね、これは歴史的転機なので、これを基本認識に書き込んだ上で、必要な対策には財政支出を行うというふうに明記して、その上で、安定財源の確保と歳出の改革が必要であるという流れにしたほうが分かりやすいような気はしました。
全体の印象として、追加歳出を強く牽制するというような記述が目立って、それは理解できるのですが、歴史的転機だからこそ、この必要な支出を認めた上で優先度の低い支出を削るというメリハリをつけることの重要性を強調したほうが良いのではないかなという印象を持ちました。11ページにもあるように、要は、我が国においても成長力の強化や危機への備えをはじめとする諸課題への対応と財政健全化への取組について、二者択一ではなく両立させていかなければならない、この認識を強調してもよいのではないかなという気はしました。具体的な表現等は先生方にお任せしますので、感想としてはそうしたことです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、國部委員、どうぞお願いします。
〔國部委員〕ありがとうございます。まずは起草委員の先生方、これまでの議論を踏まえ、大変時宜を得た、すばらしい建議案をお作りいただいて感謝を申し上げます。分野横断的な議論を通じて、社会課題の解決あるいは成長力の強化、財政の健全化を同時に実現することを目指す方向性に強く賛同いたします。
その上で、文言の修正ということではなく、2点申し上げたいと思います。
1点目は、政策のグランドデザインについて、建議案、並びに「建議の方向」の1ページ目の最後のパラグラフに、グランドデザインに基づいて全体を俯瞰するアプローチが有効であり、スクラップ・アンド・ビルドの考え方を徹底し、優先度の高い政策に対して財政資金を重点投入するとともに、効果の低い既存予算を見直すことが求められるという趣旨を盛り込んでいただき、感謝を申し上げます。
次は、優先順位づけの基礎となる国全体としてのグランドデザインをどう策定して、それをいかに実効的なものにしていくかがポイントになります。このグランドデザインについて、経済財政諮問会議等の場で策定するよう働きかけていくわけですが、真摯な議論を期待するということだけではなく、それに加えて、そのグランドデザインに基づいた規律ある財政運営を強く求めていくべきではないかと思います。
それから2点目、GXですが、今回の建議案の、「脱炭素目標の達成と成長実現の観点に立って支援対象を吟味して決定していくべき」、「経済社会全体を動かしていくために規制制度的措置も一体的に行う」という方向性に賛同いたします。
私は今、経済産業省のグリーンイノベーションプロジェクト部会、いわゆる2兆円基金事業の運営にも参画しており、この部会においても、CO2の排出削減効果に加えて、国際競争力の観点でも期待できそうな技術の開発、さらには規制改革も含めた技術の社会実装を視野に入れた支援の在り方について議論しています。実際、非常に楽しみな案件も多く出てきており、カーボンニュートラルの実現に向けて有効なプロジェクトの支援が始まっています。今後、それぞれのプロジェクトについてモニタリングによる進捗管理をしながら、案件の絞り込みなどを行っていきます。財政の面からも、2050年カーボンニュートラルという国際目標と経済成長を同時実現させていくことに向けて、意味のあるプロジェクトに資金が適切に配分されるよう、継続的に目配りしていくことが肝要であるということを強調させていただきたいと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、どうぞお願いします。
〔末澤委員〕どうも起草委員の皆様、事務局の皆様、毎度本当に大部の取りまとめありがとうございます。
私からは3点です。
まず、タイトルなのですが、「歴史的転機における財政」ということで、これは先ほど木村委員からもありましたが、去年と近いものにしたほうが良いのか、少し変えたほうが良いのかということで、もし変えるんだったらという代替案なのですが、「歴史的」の代わりに「時代の」、「転換点」の代わりに「分水嶺」または「岐路」と。仮に「時代」という言葉を使うのであれば、1行目からの「温暖化をはじめとする地球環境問題は、生態系にも影響を与えている。」と。これは一言で終わっちゃっていてやや寂しいので、注記でこうした文言が良いのではないかと思っています。現在の世界の平均CO2濃度は、今から410~450万年前の鮮新世――「センシン」は魚が新鮮というのを逆に書いた鮮新、「セイ」は世の中の世です――鮮新世最温暖期に匹敵すると。当時の平均気温は現在より約3度高く、海面は現在より約5メーターから25メーター高かったと。括弧で海洋大気局、NOAAと。つまり、ちょうど時代が変わっているという認識を注目させるのであればそうしたものが良いのではないかと思います。すみません、別にこのままでも結構です。
それで、これは少し変えたほうが良いと思うのですが、4ページ目の上から2行目、7行ですか、「低金利・デフレ基調から、金利上昇・インフレ基調へと変化しており、」とあるのですが、これは実は1ページに同じ文言があるのですが、1ページの9行目では、これは「インフレ・金利上昇に直面し」と書いているのです。その一方、また4ページも、下のほうを見ると、まずはインフレの話を書いて、その次に金利の話を書いているのです。何が言いたいかというと、デフレ・低金利基調からインフレ・金利上昇基調へと変化していると。逆にすべきであるということでございますが。デフレはディスインフレでも良いと思いますが、デフレはあえて日本だけなので、世界的に見るとディスインフレのほうが良いかなという気がします。
また、すみません、9ページの一番下の注釈のところなのですが、アメリカでは、「新たな恒久的施策の導入時には財源確保を要し(ペイアズユーゴー法)」とありますが、実は今年、下院では規則が改正されておりまして、カットアズユーゴー原則というのが導入されています。これは初めてなのですが、実は、ペイアズユーゴーが財源確保、財源確保といったときに、これは歳出カットか増税かが認められているのですが、カットアズユーゴー原則は、ルールは、これは財源確保には歳出カットしか認めていません。つまり、増税は認めていないという、より厳しいルールが共和党主導の下院で設定されていますので、入れておいたら、アメリカでは相当厳しくなっているよということにはなるということでございます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員お願いします。
〔田中委員〕まず、起草委員の先生方に御礼申し上げます。さらさら読んでいけるという形で、本当に分かりやすく工夫をしてくださっていると思います。
その上で、どこを修正というのはあと1か所だけですが、まず、今後広報でいろんな方に知ってもらって、建議のメッセージを受け止めてもらって、意識や行動を変えてもらおうというふうな観点から、これまでも自分事にしてもらおうとか、分かりやすく書いて理解をしてもらうという努力はずっと続けてきて、SNSで発信もして、既にここは実行されているというふうに思うのですがが、ただ、でも、顕著な成果が実感として私たちが受けられないというのはなぜかというと、やはり議論を促していくには、何か違和感とか、ギャップとか、いや、認識違いますよねのようなことに気づいてもらうということがすごく重要なのかなというふうに思っているのです。
例えば、2ページ目の27行目、28行目辺りに、「持続可能な地域社会、さらには行財政の在り方をデザイン」というのがありますがが、例えば持続可能な地域社会とか地域課題を解決していこうと思ったらば、やはりそこで企画を考えて、実行して、まず利益を上げていかなければいけないというふうなところから入るべきであるというふうに思うのですが、すぐ財政がないと何もできないとか、資金援助がないと何もできないというふうになるような認識自体が少し違うのではないかというふうなことですとか、諸外国のいろんな取組を書いていただいていて、まさにこうやって整理していただくと、世界の中での日本というのは、やはり特別な存在なんだなと改めて思うところなわけなのですがが、ここで、これが普通に地球市民として考えて、日本は公共の考え方も、諸外国であれば、例えばですが、社会の一翼を担うのが自分であると思っているのに、日本は、もしかすると公から何かをしてもらうというふうな認識がとても強いかもしれない、そうしたふうな認識があるのではないでしょうかのようなことを、やはり財審が、先ほど宮島委員もおっしゃった立ち位置をはっきりさせて、何かメッセージを出していくということで、ざわついたり炎上してはいけないとは思いますが、やはり議論が促されるのではないかというふうに思うので、少しそうした力強い書きぶりが今こそあってもよいかなというふうに思いましたし、そのためには、可視化と情報共有が重要なので、今回つけていただいているデータなども、いろんな局面で報道してもらったりですとか、このデータを基に、コロナ病床もこんなことがあったのですよということが認識されるようにできれば良いかなというふうに思いました。
1点だけ、少し各論ですがが、35ページ目のところで、先ほど大学と産業界の連携のところで、熊谷委員が企業トップのコミットメントの御示唆をされたのですがが、同時に、大学の本部での組織的な産官学連携というのが今進んでいるのですが、大学こそトップのリーダーシップが必要で、ここがあると変わるかなというふうに思いますので、これも少しセットで検討いただけるとありがたいかなと思いました。よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。先ほどから皆様おっしゃっているとおり、すばらしい建議だと私も思います。重要な政策の柱を中心にして横串のアプローチを行ったことでより分かりやすくなっているし、説得力も増していると思うのですが、それに加えて、財審の場で話題には上がるがなかなか書き込めなかったことまで書いていただいているということについても高く評価したいと思います。その上で、いくつか申し上げます。
1点目は、冒頭の基本認識についてです。2ページの2行目、財政支出は単に需要喚起のために行うのではなくて的を絞るべきであると書いてありますが、ここまで書いたのであれば、もう一歩踏み込めないかと考えております。需要の不足を財政支出で埋め合わせるという発想は間違っているということを書けないかということです。すなわち、先ほどから皆様が言及されているとおり、それをやっていると、民間の投資も含めた国家全体としてのリソースの効率的な配分が阻害されてしまい、その結果として、財政支出の規模を大きくしても成長は実現できないし、むしろ阻害的になるということまで是非書いていただきたいと思います。
2点目は、6ページ下段、20行目の記載についてです。今は、金利上昇局面にありますので、信認というキーワードを使い、かなり書き込んでいただいたことは、とても良いことであると思いますが、この点に関しては、狼少年にならないように気をつけたほうが良いと思います。確かに、ここにも書いていただいているとおり、海外投資家による短期国債の保有比率は高まっていますが、本質的な日本の中長期国債のファンディングにはほとんど関係がないということです。一見、構造が不安定になってきているようにみえますが、中長期国債へのシフトは順調に進んでいますし、中長期国債の保有は引き続き国内投資家が中心となっています。今後、少子高齢化や日本経済の低迷が続いた場合には、中長期的には家計部門の金融資産の取り崩しや、経常収支の悪化によって、中長期も含めた国債消化の海外投資家への依存度が高まってしまうということを認識した上で書かなければ、プロっぽくないという点を指摘しておきます。
3点目は、7ページ8行目、9行目の記載についてです。今回、EBPMについて強く指摘していただいているのは大変結構ですが、先ほど熊谷さんもおっしゃっていたように、財政全体のマクロ的なコントロールも非常に重要であるということを申し上げたいと思います。その文脈でいえば、財政の健全化に向けたマイルストーンとしてのプライマリーバランスの黒字化早期実現ということは落とすべきではないと思います。
4点目は、9ページから11ページの記載についてです。欧米諸国の制度的な対応について、財政ルールの導入などを書いていただきました。財政制度審議会なので制度について議論すべきであると常々申し上げていたのですが、ようやく書いていただけて大変うれしく思います。特にIFIについて明確に書いていただきました。ここまで書いていただけるのであれば、いずれは、中長期的な国としての財政運営計画について、端的に言えば中長期財政計画のことですが、3年から4年の期間のものを導入すべきであるということも併せて書いていただけると良いと思います。そうすれば、皆様が懸念しておられる補正予算に歯止めがかからない、国の基本的な方針がはっきりしない、優先順位が明確にならなくて取捨選択が難しいというような問題にも踏み込めるのではないかと考えております。
5点目は、PDCAサイクルについてです。18ページ9行目以降でしっかり書いていただいているのは大変結構であると思います。しかし、ミクロレベルの行政事業レビューや事業評価にとどまってはいけないという指摘ももちろん重要ですが、それ以上に、事業評価ではなく政策プログラム評価が重要であると思っています。今回の建議が非常によく書けているのもマクロ的な視点を入れたからだと考えています。したがって、PDCAサイクルに関しても、事業単位でみるのではなく、政策パッケージとしての政策が、本当にうまくいっているかをみるべきだと思います。少子化対策や防衛、パンデミック対応でも同様です。また、政策プログラム評価は総務省の行政評価局で行われていますが、全く、第三者レビューになっていないという問題もあるかと思いますので、独立性の高い何らかの機能を立ち上げてプログラム評価を行うべきという記載を入れていただけるとありがたいと思います。
6点目は、20頁以降で書いていただいている成長戦略に関する記載についてです。8行目では、供給側の取組が大事であると書いていたただいています。これは最近のモダン・サプライサイド・エコノミーを反映した記載になっていて大変結構ですが、補償的な支出から投資的な支出にシフトするべきという視点も必要だと思います。ややもすれば、我が国の支出は、現状の失業対策のように補償的な支出に偏りがちになっています。そうではなく、むしろ人に対して投資をしていくというような視点が必要であると思います。以前申し上げましたが、日本の投資的な支出は、対GDP比でOECD加盟国中で最低水準にあるというような注記を入れていただいても良いかもしれません。
7点目は、20ページ9行目の記載についてです。ここでも、潜在成長率の向上に向けて供給側に働きかけるということを書いていただいており、大変結構なのですが、年収の壁の問題についても書くべきではないかと思います。非正規雇用に関しては24ページで書いていただいていますが、この壁を突き崩すことで労働供給が増えますし、女性の活躍もできるようになるという点は書くべきではないかと思います。
最後は、DXについてです。32ページで、省庁間や国・地方間のデータ連携に踏み込んでいただいたのは、大変結構であると思います。DXの本丸はデータの利活用であるという観点からすると、コロナでの大きな反省は、データがないために一律10万円給付のようなバラマキをせざるを得なかったということであり、これを次にどう活かすか考えなければいけません。国民の所得と資産、負担と給付のデータを一体的に整備した上で、政策目的上、どこに本当のニーズがあるのか、あるいはペインポイントがあるのかということを把握して、適切な給付につなげることが重要であると思いますし、それは子育て政策においても全く同じことが言えると思います。したがって、データの活用に関する制度の再設計が必要であり、省庁横断的なデータの収集と連携が重要である、というように書いていただけるのが良いと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場のほう、全員御発言いただきたいと思いますので、広瀬委員、どうぞ御発言ください。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。感想めいたことを3点申し上げたいと思います。
1点目は、これは皆様おっしゃっていましたがが、今回、従来の歳出分野別から、新しい試みとして横串で俯瞰的、横断的に議論してきたわけですが、大変良かったのではないかなと思います。そうした議論をしますと、当然のことながら軽重がつくし、それから焦点も絞られてきますので、逆に言うと、これは結構厳しい、総論的なことにはできないものですから、厳しい反面、そうした面では大変良かったし、結果的に皆様おっしゃるとおり、非常にクリアな、分かりやすい建議になっているというのは、そうした背景があったのではないかなというふうに思っています。そうした意味で、起草委員の皆様、本当ありがとうございました。
それから2点目は、これは最初のこの会議で申し上げたのですが、少しオーバーな言い方をしますと、今、財政が日本の最大のリスクになっている、こうしたふうに言っても過言でないのではないかなというふうに思っています。コロナは有事対応ということで相当な歳出をしたわけですが、何となくそれが平時になってしまって、あまりもうびっくりしなくなってしまったということを強く懸念をしております。日本は10年に1回ぐらい震災とか、経済危機とか、あるいはパンデミックとかいろいろなことが起こるわけで、その都度こうしたことをやっていると、いつまでたってもPB黒字化というのは実現できないわけで、そうした意味で、平時・有事ということを意識しなくてはいけないのではないかなと。
ただ、逆説的に言いますと、その10年に1回ぐらいの有事がある程度解決するのには五、六年かかるわけです。そうすると、考えようによっては、もうずっと有事であるとも言えるわけですから、そうすると、何となく有事のときにはお金を支出するということに焦点が絞られるのですが、逆に言うと、有事のときも着実に歳出改革をするということを強調しておかないと、有事、有事ということで、いつの間にかまた歳出改革という一番大事なことが忘れられてしまうので、そうした面で、有事こそ歳出改革をしっかりすると、こうしたふうな発想の転換も必要なのかなと思っています。
それから3点目は、これも皆様から出ましたが、国民一人一人にどうやってインパクトあるメッセージを出すかということです。私は、一人当たりのGDPが世界で二十何番目になってしまったというのは非常に、私的にはインパクトのあるというか、大変ショッキングだったわけです。もちろん財政とか国家のGDPというのも大切ですが、何となく他人事というか、そうした面で、一人当たりのGDPももちろん全体のGDPを上げなくては、上げることと関係してくるのですが、どこに焦点を絞るかといった場合に、何となく一人当たり、つまり、その一人一人のところまで下ろさないと、そうした肌感覚のようなところに下ろさないとなかなか難しいのではないかなと。
今年、物価が3.何%上がった、あるいは賃上げが3.何%上がったというのは、やはり生活とか暮らしのところに、それがもろに影響してくるので、今年は非常にそれが盛り上がったということからすると、マクロ的な政策発信もあるのですが、一方で、少しそうした、人とか、あるいは一人一人のところにどういった影響があるのかといったところに焦点を絞ったメッセージも必要なのではないかなと思っています。
全体的な修文とか、それから、各論につきましては、また後ほど出していただければと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、神子田委員から御発言お願いします。
〔神子田委員〕起草委員の先生方、どうもお疲れさまでした。皆様おっしゃっているのですが、私もこの春の財審だけでなく、これまで数年、皆様で話し合ってきたことが、あれも盛り込まれている、これも盛り込まれているという感じで、非常によく盛り込んでいただいたなという印象を受けていました。
そして、目次の立て方も財政総論の後に、成長、こども・高齢化、人口・地域と、この国の課題が大くくりで出ているところが良くて、全ての予算がこの国に何が必要かという全体戦略の下に、やはりつくられていくべきであると思いますので、予算編成もこうした考え方に立ってやっていただけたらと思いました。
一つ、私から意見と、クエスチョンが三つあるのですが、14ページの防衛力強化のところなのですが、その予算、もう税金も取って予算を組むという方針がまとまって、今、大事なのは、個々の予算が効率的に防衛力の強化につながっていくということを絶え間なくチェックしていくことであると思いますので、一つは、29行目のところに防衛力強化に効果的につながるとか、何かもう一押ししてほしいなというのと、それとまた、さっき宮島さんもおっしゃっていた、あえて弱めている表現の15ページの一番上も、「フォローアップが必要となることも指摘しておく」の「こともしておく」、「も」ではないだろうというふうに私は思って、ここは「フォローアップされなければならない」とか、力強く言ってほしいと思いました。大変な巨額なお金なものですから、そこのところをお願いいたしたいと思います。
それと疑問点というか、我々、常にこの場で話し合っているものに関しては、その文字面から推測できることもあるのですが、初めて読む人にはどういった意味か分からないというところで、もう少し言葉をつないだほうが良いかなという。一つが、16ページの2行目の「我が国のコロナ対策をめぐっては、正常化までに時間がかかり過ぎている」という、ここだけ読むと、コロナ対策のことを言っているかのように少し受け取れるので、前から読めば大体分かるのですが、おそらくこの「正常化までに時間がかかり過ぎている」ということは、コロナの感染終息の動きに合わせて財政の縮小を図るという対応において時間がかかり過ぎているということではないかなと思ったので、そのほうが良いかなと。
それと、17ページの10行目の「『経済あっての財政』という考え方を体現できたとはいえない」の「経済あっての財政」というのが注釈なしでいきなり持ち出されて、どのようなことを言っているのかなと。一般的なイメージは、財政再建を重視するあまり、経済成長の足を引っ張ってはいけないということと、もう一つは、財政を効率的に活用して、経済成長力を強化するということかと思うのですが、何かこうした鍵括弧で登場してくると、何か我々がこれをこう、そもそも「経済あっての財政」というのは、肯定しているのか、否定しているのか、何かよく分からないねじれた表現になっているので、ここは使い方を考えたら良いと思いますし、この言葉がここになくても良いのかなという感じもいたします。
それともう一つ、分かりそうで分からないのは、21ページの6行目の「『ワイズ・スペンディング』という旗印の下」という、これはおそらく、「ワイズ・スペンディング」という言葉が悪用されているのではないかというニュアンスを出そうとしているのではないかと思うのですが、「旗印」というのは普通、良い意味で使うので、ここは言葉の使い方もおかしいし、ここは意味が通じないのではないでしょうかということがあります。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、どうぞお願いします。
〔横田委員〕はい。ありがとうございます。
起草委員の皆様、ありがとうございました。いくつか細かい点で意見を申し上げたいと思います。まず3ページ目のフューチャーデザインの最後の締めです。好みの問題かと思うのですが、先ほど國部委員がおっしゃった財政的議論につなげるべきであるというのを追加していただければ問題ないような気もするのですが、「真摯な」の前に、何か足もとの利害を超えたとかそうしたことを追加検討いただきたい。10行目と重なってしまうのですが、繰り返し入れてもよいのではないかと思いました。必須ではありませんが、是非御検討ください。
2点目が、31ページのところ、これもウォントレベルになるのですが、デジタル時代に即した行政改革のところで、13行目と14行目に「2割削減」という文言が重なっていて、どちらにも入っていても問題はないのですが、個人的にはテンポが良いので、削減したほうが好みです。
次に、スタートアップに関するところになります。41ページ目と42ページ目、双方で意見申し上げます。
まずは、研究開発におけるスタートアップの活用なのですが、先ほどJAXAがやたら具体的であるというお話もありました。唐突に「例えば」から始まってしまうので、冒頭に結論を持ってきても良いのではないかと思います。「研究予算に関して調達や共同研究などスタートアップをより活用していく必要がある。例えば」のようにつなげても良いのではないかと思います。
次は、大学の役割の5番目のところ、TLOに関するところ、以前、会議でも申し上げたのですが、広域型のTLO等々、賛成はしているのですが、正直、スタートアップ予算のエコシステム形成支援の事業、大学に文科省経由で、相当額、お金が下りていて、事業が重なっている面があると認識しています。なので、縦割りではなく、ここも横串に立っていかなければいけない。TLOは最低限、広域的にやるにしろ、ちゃんと文科省のエコシステム形成支援の事業と連携すべきであると思います。文言は足したいのですが、どこに足せばよいか。がっちりした文章で難しいなと思ったので、一番後ろに置くか、あえてTLOだけに言及せずにスタートアップ予算は本当にいろいろな形で予算がついていますので、各事業がちゃんと有機的に連携すべきであるということを付記していただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、お願いします。
〔小黒委員〕今回、このような報告を起草委員の先生方でまとめていただき、ありがとうございます。私から4点だけ少しコメントさせていただければと思います。
1点目は最初の1ページ目なのですが、少しもしかすると価値観が入るかもしれないですが、G7サミットもありましたが、外務省とかは、1ページ目の上から3行目の「ウクライナ侵略」という言葉があって、「侵略」というワードを使っているのですが、経済の相互依存関係が、ある意味で武力等のエスカレーションを抑制するという考え方もありますので、財務省の財審というか、財務省の立場として、外務省とか使っているのですが、例えば「侵攻」とか、もう少し柔らかいワードを使っていくというのが一つあるのではないかと思います。
それから、2点目は、5ページ目のところになるのですが、上から14行目のところから15行目にかけて、「国際収支の状況」というのがあります。これは為替の変動を説明しているものとして、金利差と国際収支というのを記載しているのですが、理論的には金利平価説と、釈迦に説法ですが、購買力平価説の2種類があります。その関係で、4ページの16行目、17行目、これはアメリカについて言及しているのですが、いわゆる財政インフレを論じているのですよね。これはある意味で、物価が上昇すると。それによって為替が変化するということもメカニズムとしてあり得ますので、本来であれば、財政赤字も影響するというのも入れたほうが良いと思うのですが、少しそこはやり過ぎなので、例えば「国際収支の状況など」ということで、「など」という形でぼかしていただくというのも一つあるのかなと思います。それが2点目になります。
それから、3点目が6ページで、ここは何人かの先生からも指摘があったところですが、金利の上昇のときの記載なのですが、本文に書くのは結構それはそれで書きすぎであると思うので、もし可能であれば、下側に脚注で次のような文言を入れていただくことはできないかと。これはかなり重たい話なのですが、ファクトということで、「日本政府と中央銀行のバランスシートをネットで一体化してみた場合、債務のコストは何も変わらない。むしろ日銀の当座預金が急増している状況にあり、負債のデュレーションが短期化していることから、統合政府のバランスシートは金利上昇に脆弱になっている」というのを書いていただくというのも一つあるのかなと。これは、アメリカのシリコンバレーバンキングがインフレ抑制のための利上げで大変なことになったわけですが、統合政府のバランスシートも金利上昇に脆弱になっており、日本の財政そのものもそうした構造に近いものになっていると。シリコンバレーバンキングは記載しなくても、今のような言葉を書いていただくというのも一つ御検討いただければと思います。
それから、最後が32ページ目ですが、これも何人かの先生から政府DXについてお話がございました。私が気になったのは5行目から10行目のところで、9行目のところに誰の目線かということが書いてあるのですが、「DX先進事業者の目線で」と書いてあるのですが、私は、これは少し違うのではないかなと。これもあるのですが、本来は政府DXを誰のために進めるかといえば、国民のためですので、「利用者たる国民やDX先進事業者などの目線で」という形にしていただくというのが良いのかと思います。
それからまた同じ関係で、22ページ、22行目のところにベンダーロックインという言葉があるのですが、これも今の経済安全保障との関係で非常に重要であると思います。特に、もし海外のベンダーが、我々がそこに入れていた場合に、使えなくなった場合には、政府のシステムが全部使えなくなるということもありますので、「ベンダーロックイン等の調達上の課題を抱えるが」の後に、例えば「経済安全保障の観点も含め」というワードを入れていただくというのも一つかなと。本来は、個人的にはマルチクラウドのようなものも本来あると思うのですが、そこまで書くとそれは書きすぎであると思いますので、柔らかい表現で何か少し入れていただければと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕会場は以上なのですが、オンラインで、堀委員から御発言の合図ございますが、できればメール等でまた御意見いただくことにして、何かこの点だけはというところに絞って御発言いただければと思います。よろしゅうございますか。
堀委員、どうぞ。
〔堀委員〕前半のところ、1分以内で終わらせていただきます。タイトルのところ、ほかの委員からも御指摘がありましたが、たしか私の記憶では、2年前、「例外からの脱却」で、昨年が「歴史の転換点」でした。今年が「歴史的転機における財政」ということなのですが、「歴史的転機における財政」をどのようにしたいのかというメッセージが見えるよう工夫ができないでしょうか。例えば「未来の投資のために」とか、「未来の成長のために」であるとか、何かそうしたものをつけないと、去年、おととしとの違いが分かりにくいかなと思いました。
それからもう1点、ウクライナ、ロシアの侵攻のところの表現については、小黒委員と全く同じで、これはむしろ、ウクライナ・ロシア戦争と表記したほうが第三者からみて分かりやすいのではないかと思います。
3ページのところのフューチャーデザインのところにもあるのですが、若者の、「将来世代の利益」というところで、これは文言については後でメールで送りたいと思いますが、将来においても日本に住み続けたい、働き続けたいと思えるようなことが、彼ら、彼女たちの利益であると思います。といいますのは、海外出張で東欧の国に訪問した際、90年代から2020年の間に大幅に人口が、わずか30数年で人口が3割減ったという話を聞きました。所得が高い国に有能な若い人たちがどんどん流出していくというお話を聞きました。そうしたことになるのではないかという問題意識がありますので、フューチャーデザインに将来世代の利益をより強調して書いていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、御意見のコメントは以上にいたしまして、起草委員の方から、この場でお返ししたいことがあればお願いしたいと思います。
土居委員、どうぞ。
〔土居委員〕委員の皆様、コメントいただきまして、誠にありがとうございました。お褒めの言葉も大変、私たちとしてもありがたく受け止めまして、ますます皆様の御意見を反映させていきながら、より良いものに変えていきたいと思います。
全てについてお答えする時間的余裕がありませんが、タイトルについて、木村委員、末澤委員、堀委員から、御質問というか、コメントがありましたので、1点だけ申し上げさせていただきたいと思います。
今回のタイトルは、あえて「歴史的転機」という言葉を使わせていただいたのは、4月14日の初回の財審のときに、十倉会長から御挨拶を頂戴しまして、そのときに、歴史的転機にある中で、世界や我が国が直面する様々な課題を乗り越えていくべきであるという御発言がございました。そこから、この言葉をお借りしてきているというところで、十倉会長に替わった新体制ということをそこから、どれだけの方がそうしたイメージしていただけるかはあれなのですが、あやかっているというところを何とぞ御理解いただければ幸いです。ありがとうございます。
〔中空委員〕すみません。私も1点だけよいでしょうか。
〔増田分科会長代理〕どうぞ。中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。1点、平野委員からあった、そこはプロではないよという、金利の表現のところですが、そこは私も長くいたので、もう少し精査してプロっぽく変えたいと思います。
また、宮島委員からあった、中長期の内閣府の見方は楽観的過ぎるということについてはコンセンサスだよねというのがあったのですが、すみません。経済財政諮問会議の委員としては、やはり内閣府が出してくるある指標が過剰に悲観的なものばかりであっても、それはそれで国としてどうかということもあるわけです。なので、表現としてもう少しきちんとした言い方をするということについては努めていきたいと思いますが、私が半身、どちらにも行ってしまっているので、ある程度、御理解いただければと思っています。
最後、もう1点だけ、すごく良い意見をたくさんいただいたので、できる限り反映するためにはメールを送っていただけるとありがたいです。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、どうぞ。
〔河村委員〕いろいろコメントいただいてありがとうございました。いろいろ伺っての、少し感想めいた話で恐縮ですが、今回こうした横串を刺したような形でまとめたということで、多くの委員の方々から評価いただいて良かったなと思うのですが、だからこそ、いろいろなところで本質的な問題のところをもっと書き込むべきであるとかそうした御意見はいろいろな方からいただいたと思うのですね。ですから、できる限りそれは反映できるようにということで、おそらくほかの先生方と御相談になると思うのですが、ただ、そうした意識でふだんの分科会の議論もやはり、これからもし春にやっていくのだったら、そうしたやり方でやっておかないと、今までほとんど全員がこう考えていたはずだからということでも、本当にそうかという議論をしているかどうかは分からない点もあると思うので、そこはきちんと丁寧に、また、いろいろ頂戴した御意見の中でも、おそらく意見が割れているようなところに関する御意見もあったと思いますので、そこはやはり丁寧な形で、よくほかの先生方と御相談しながら、もっと強く出していったり、それもおっしゃるとおりであるとは思うのですが、盛り込んでいく方向で考えさせていただければと思います。今後の来年の春以降の審議にもつなげられれば良いのではないかなと思いました。
すみません。感想めいて。以上です。
〔増田分科会長代理〕起草委員で佐藤委員から、オンラインですが、御発言があるようです。お願いします。
〔佐藤委員〕今日はオンライン参加で申し訳ありませんでした。私からも端的に。何人かの委員から、やはり表現が少し丸いというか、易しいというところだったので、もう少しエッジの効いた形の書きぶりというのがあるかもしれませんということと、それから、DX絡みで、ChatGPTは確かに書いていなかったと思うので、この辺り、どのように研究できるかというのと、また、国民の所得情報について、実際、今回、コロナ禍でもあったように、国民の所得情報がリアルタイムに捕捉できなかったということが、プッシュ型の支援を困難にしたということもありますので、今回の財審の中に入れるかどうか分からないですが、少し検討しても良いのかなと思っています。
似たようなのは年収の壁もそうですね。やはり国民の関心は高いので、130万、106万の壁をどう理解するかというところは議論があっても良いのかもしれないということと、せっかく横串を刺したのだからというところで、さっきTLOのところで似たような、重複した事業があるのではないかという話がありましたので、ちゃんと、教育であれ、子育てであれ、いろいろなところに横串を刺す。機能的に、まさに個別事業という考え方で、施策単位で評価をするという観点から見ても、事業を横串に刺して連携させていくということが重要ということも言っても良いのかなと思いました。
また最後に、経済成長はやはり補助金、財政出動ありきではない。民間主導であるということはあちこちに書いているはずなのですが、やはりこの辺はどこかで改めて述べても良いのかもしれないと思います。
すみません。若干感想ですが、以上です。
〔増田分科会長代理〕起草委員の方、よろしゅうございますか。
それでは、前半の議論はここまでといたします。後半ですが、いずれにしても、建議前の議論の場はこれが最後になりますので、できるだけ御意見を頂戴しつつ、ただ、メールで意見を表明できるところは是非そちらをお使いいただいて、この場で起草委員の皆様からもいろいろ議論、お返しができるような、そうした点に絞ってできるだけ御発言いただければと思います。
ということで、発言を希望される方は、どうぞネームプレートで合図していただければと思います。それでは、後半は、私から見て右側からまいりたいと思いますので、初めに小黒委員からお願いいたします。
〔小黒委員〕私からはいくつかポイントを絞って、本当はあと10個ぐらい言おうと思ったのですが、すみません。大変僣越なので、四つに絞りまして。
〔増田分科会長代理〕すみません。時間的にもございますので、できるだけ絞ってお願いします。
〔小黒委員〕49ページ目のところで、上から10行目から12行目のところですが、やはり財務省としては、予算で、少子化対策として対応できる部分もあると思いますが、ここに挙げられているような形で、ある意味で企業に行動変容等を促して、そこで出生率を高めていくというような試みも当然あると思います。この関係は、98ページ目のところに、今、政府が取り組んでいる話が書いてあるのですが、もし可能であれば、伊藤忠商事とかは、企業で、自分の女性社員のTFRのようなものを出していますので、暗に誘導するような形ですが、そうしたような試みもしているというのを下に書いていただけないかなと。ほかの企業ももし可能でも出していただくと、環境が大分変わってくると思いますので、御検討いただければと思います。
それから2点目が、53ページから54ページのところですが、前半で、先生方から負担と給付の見える化という話もございました。54ページの上のところに、今後、保険料をどこで上乗せしていくのかという話も当然あると思うのですが、この辺の関係で、前回の財審でも少し数値を出させていただきましたが、あれは現状であって、2040年度、50年度に社会保険料率が併せてどれぐらいまで上がっていくのかというような将来推計、そうしたものも現役世代の負担の抑制と社会保障のスリム化とも関係しますので、そうしたこともやるべきであるというようなことを少し書いていただけないかなと思います。
それから、61ページになる。これは3点目ですが、この61ページ目の20行目から21行目のところで、薬剤費についてのコントロールの話があるのですが、この民間団体からという20行目のところの前に、もし可能であれば、財政の持続可能性と産業の競争力向上との観点で両立、「財政の持続可能性と産業の競争力向上の両立を図る観点で」というのをもし可能であれば入れていただければと。要するに、財政だけではなくて、成長とかそちら側も見ていますよという視点を入れていただければと思います。
それから、人口密度と成長率の関係で、72ページ目の8行目と9行目があるのですが、9行目の「及ぼしつつある」の後に、かなり財務省としては、財政的な資源配分によって、例えばなのですが、都市部とか、そうした人口密度の高いところに誘導していけば、当然そこの方が生産性が高いですので、成長率もアップするというメカニズムもあると思いますので、バランスを取る意味で、「成長の面では人口密度と生産性の正の相関があるという視点も重要だが、一極集中も進み過ぎると」というのを入れていただけると良いのかなと思いました。
以上になります。すみません。少し長くなりました。恐縮です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕心臓は強いのですが、気は小さいもので、今回は1点だけ。53ページの少子化対策の財源の在り方の23行目から4行目にかけて、「企業を含め」と書いてあるところが、何か唐突な感じもあるし、付け足しのような感じもあり、企業に関してはおそらく、この辺、反発も買いかねないような文脈でもあるので、入れるのであれば、その理由、どういった背景でと。何か上に事業主負担の割合が6割から1割まで低下しているという、もしこれを受けているのだったら、もう事業主と言ったらそのまま通じると思いますし、その辺がこのページ、どういった文脈なのか、いま一つ分かりにくいなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、続いて、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。私も論点を絞って申し上げます。
1点目は、神子田さんも言及されましたが、52ページの記載についてです。2行目以降の児童手当に関する所得制限の撤廃に関しては、両論併記になっています。確かに一部の方からは撤廃すべきであるという意見も出ましたが、多くの方が撤廃すべきではないと主張されていたと思いますし、特に低所得者層や多子世帯などに重点的に支援を行うべきであるということは、おそらくこの場でのコンセンサスに近いと思います。したがって、ここは少し踏み込んで書くべきではないかと思います。
2点目、こちらも神子田さんがまさに言われましたとおり、54ページには税の話が全く出ていません。別に消費税と決め打ちする必要はないのですが、安定財源の確保という観点から、少なくとも税を検討のそ上から排除すべきではない、ということぐらいは書くべきだと思います。また、そのように書いていただければ、「企業を含め」と書いても構わないと思います。
3点目は、医療についてです。56ページ20行目から57ページ5行目で、負担について書いてありますが、ここは応能負担の徹底という意味で、負担能力を測定するに当たっては、所得の源泉にかかわらず考えるべきであると踏み込んでいただきたいと思います。現状、一部が抜け落ちている資産性所得を含める、あるいは資産そのものを考慮に入れるべきであり、それをマイナンバーを活用して捕捉する必要があるということを書いていただけないかと思います。
最後は、介護保険についてです。これから負担や支出が更に増えていくことになりますが、過剰給付の見直しについては言及していただきたいと思っています。69ページ3行目以降で、給付の適正化について書き込んでありますが、要介護認定の問題についても書くべきだと思います。自治体ごとに認定のばらつきが大きいという資料も出ていたかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕私から1点だけ。可能なら、84ページの26行と28行の間に入れてほしいのですが、こうした文章です。「少子高齢化、人口減少社会では、統合、ICT化、民間へのアウトソーシングにより、効率化と教育の質の維持向上を図るという視点も重要である」と。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、國部委員、どうぞお願いいたします。
〔國部委員〕ありがとうございます。基本的に平野委員と同意見でございまして、児童手当の所得制限撤廃の問題は、確かに両方の議論が出ていましたが、「所得制限を撤廃すべきでない」という意見の方が多かったのではないかと思います。私は初参加なので、財審の建議の在り方を十分に分かっていないところがあるかもしれませんが、意見が違うところについても、やはり財審としてこうあるべき、という方向を出すべきではないかと考えますので、それを踏まえて起草委員の先生方にいろいろ御議論いただければと思います。
また、財源については、基本的に税と社会保険料を一体的に見直す中で議論すべきものなので、税についても触れるべきと私も思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで一度、オンラインで、堀委員の御発言をお願いいたします。すみません。できるだけ手短にお願いいたします。
〔堀委員〕時間も限られていますので、細かい文言等はメールで送らせていただきます。解釈のところだけ確認したいところもありますので、若干意見を述べさせていただきます。44ページですが、2行目のところ、「医療・介護の給付費用は累次にわたり制度の手直しが行われているにもかかわらず、この20年で大幅に増加している」と書かれているのですが、この20年間行われているのは、必ずしも給付伸びを抑制するための施策だけではないので、ここの表現のままでは解釈がどうなのかなと。また、給付費用が経済成長率以上に伸びているというのは事実ですが、同様の傾向は、実は国民皆保険以降ずっと続いています。持続可能性が危うくなっているのは、必ずしも経済成長率以上に伸びていることだけではなくて、人口動態のところと、また、制度的な構造要因が大きいと思いますので、そこのところを少し分かりやすく書くか、脚注に記載していただければ良いかと思います。
それから、59ページのところでコロナについて書かれているのですが、先ほど宮島委員もおっしゃっていたと思うのですが、会計検査院の報告などを引用して、明らかになっているところ、また、明らかにしようと思っても明らかにならない理由などを、これも脚注で良いと思うのですが、記載したら良いかと思います。
それから、「病床の役割分担」という言葉が今回はかなり出ているのですが、この表現でもよいとは思うのですが、今まで「医療機能の分化」という表現を使っていたと思いますので、この「病床の役割分担」というのがどういった意味なのかを記載すべきではないかと。今までと表現が違うのは何か理由があるのもしれませんが、地域医療構想では、機能分化と役割分担、両方の意味が入っていると思います。
それから、時間もないので医療のところのコメントは細かいので、後にメールで送ります。生活保護の部分です。64ページのところで、生活保護者や、国保や後期高齢者医療制度に加入するということにしたらどうかとさらっと書いているのですが、私の記憶では、生活保護受給者を国保にというのはこれまでも財審で議論されていたと思うのですが、後期高齢者医療制度についての議論はほとんどされてこなかったと思います。唐突感があるのと、また、その後に「都道府県が保険者としての機能をあわせ持つ」というところも、これも国保についてはそうであると思うのですが、後期高齢者の場合は広域連合が運営主体であり、少なくとも現在は都道府県ではないので、整合性が合わないので、表現を改めたほうが良いかと思います。
それから、障害者福祉サービスについての予算が10年間、2倍にしているということも、これは事実の記載としては良いのですが、サービス利用者数と事業者数も2倍になっているとなっています。普通に考えるとサービス利用者数が2倍になれば、総額が2倍になってもおかしくはないですが、おそらくここで、財審の問題としてはとりあげたいのはそうしたことではないと思います。もう少し何が問題なのかがわかるような表現に変えたほうが良いのではないかなと思います。
また、細か過ぎるところはメールで送ります。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、こちらの会場にまた戻ります。木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕ありがとうございます。私は、医療費のコロナの関連で1点だけです。コロナも、これは100年に一度のパンデミックと、また、3年余り続いたコロナ禍が平時に移行するということも、これも一種の歴史的な転機であると思います。ここはとりわけ財政に極めて大きな負荷がかかって、今回の平時の移行を受けて、財審として何を打ち出すのかというのも結構注目されていると思いますので、ここは歴史的な転機ということで、何かしら、もう少し強調、今回の建議の中でも強調してよいのかなと思いました。
その上で、55ページの3行目です。この3年間、病床使用料を含めて、コロナ関連で21兆円程度の国費による支援が行われていると。こうした巨額の支援に関しては、その効果等について検証を行うべきであるということ、私もこれはすごく大事な指摘であると思います。本来、政府全体として、福島の原発事故で、事故調の白書とか出ましたが、コロナ白書というのを本来、政府としてまとめるべきであると思いますが、そうしたリーダー役を財務省としてもやってよいのではないかということで、そこの部分はもっと強調してよいのかなという気はします。
それから最後に、基本認識に戻りますが、1ページ目で、「コロナ対策により一層低下した財政余力の回復が急務」と表現されています。これは私は賛成です。本来だったら中長期的な負担増も含めて、もう少し表現に踏み込んでも良いのではないかなという気がしましたが、これは今後、今回は難しいかもしれません。今後の課題として検討すべき内容ではないかなという気がしますが、この辺は表現はお任せします。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、安永委員、お願いします。
〔安永委員〕3点。まず、ほかの委員の方も議論になった児童手当の財源でございますが、53ページの上から、さらっと読むと、やはり企業が払っていないから、企業から取れと言っている文脈に読み取れやすいので、やはり企業も負担はするわけですが、基本的には現役世代の可処分所得の減少に直結するような形ではなく、高齢者も含めて全世代が応能型で負担するということを大原則として、やはりもう少し前面に出していただけると、企業としても応分に負担することが考えやすいのではないかと思います。
それから、医療、次の55ページですが、20行目に、今後も高齢化が続くことから、医療費の増加が見込まれるとだけ事実を書いてあるのですが、やはりどこかに、一定水準以上の医療が当たり前に安く受けられるという現行の国民皆保険、このフリーアクセス制度がこのままでは持続可能ではない。こうした問題意識と危機感を国民に正しく理解してもらうことが重要であるというような、少し踏み込んだことをどこかで触れていただくのが必要ではないかと思います。
最後に、85ページの教育なのですが、85ページの8行目に、「若者を中心とした優秀な教員のなり手を確保していくためには」と、相当教育現場の給与水準を上げないと、これは本当に可能なのかというのは。おそらく、民間企業はこれから上げていくわけです。そうしたときに相対劣位に必ずなります。そうした中で確保していくのは相当至難の業で、もちろん教育のために教師の給与も上げることは必要であると思うのですが、もう一つは、教育の質向上に向けて民間企業で多様な経験を積んだ人材を学校現場で教員として採用すべきというようなことを脚注辺りにでも入れていただければと思います。
詳細は別途メールさせていただきます。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞお願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。私も今の安永委員と同じ問題意識のところがあるのですが、このこども、医療に関しましては、春の建議でありながら、目先に、骨太の方針とかいろいろ何となくチラチラしているので、、具体的にこの二、三年のところが書いてあるような印象を持ちます。つまり、前文では、持続可能が大変であると書いてあるのですが、中に書いてあることは割と、本当に、この数年、何ができるかというところがあるので、その後ろでよいのですが、もう少し長球の、そもそも、特に医療ですね。これで長期的に大丈夫なのかというところの問題意識をしっかり書いていただければ良いと思います。
前回、私は医療のところで申し上げたのですが、具体的には、そもそも今の地域医療構想とか、かかりつけとか、そうしたものを進めさえすれば、日本の医療は大丈夫なのかというと、全然それだけでは足りないのではないかと思うのです。例えば他国と比べて民間の医療機関の自由度が高くて、これに関しては、開業規制に関しては書いてあるのですが、それだけではなくて、もっと公的な医療なので、もっと国の政策に従わせる方策があってもよいのではないか、医療関係者の間のタスクシフトは変えるべきではないか、医師や薬剤師の大学の定員や偏在防止のためのルールはこのままでよいのか、増えてしまった医師や薬剤師の経営を守るための制度になっていないか。今のはそのまま直接文章にすると少しきついのですが、医療のこの数年で動かせそうな部分だけではなくて、長期的に本当に大丈夫なのかということに関しても、個別政策の部分にもしっかり課題、もしこれが課題であると同意いただけるのであれば、やはり書いていただくほうが良いのではないかと思います。そうでないと日本は、「医療が栄えて国滅ぶ」になるのでは、そうした恐怖感さえ、一般の人も感じているのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続きまして、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。第Ⅳ章でございますが、とりわけ診療報酬をはじめとする医療費については、国民負担軽減の観点から、全体的にもっと踏み込んだ表現にしていただきたいと思います。
例えば45ページに、診療報酬・介護報酬が1%増えると、3,000億円の保険料負担増になるという記載がございますが、現在、少子化対策で保険料的なものの負担を増やす議論が行われておりますので、そうした状況であれば、医療、介護の負担増は更に抑制すべきであるということをもっと強調していただきたいです。ここ数年で、コロナ補助金を5兆円以上もらっているので、そうした財務状況も考えながら、9行目、10行目で、慎重に対応すべきであると書いていただいていると思いますが、ここはもっとはっきりと、プラス改定は不要であると明記していただきたいと考えます。
医療のほかの項目についても、例えば62ページの15行目から16行目で、診療所の開業規制について、各国の例を参考に、もう一歩踏み込んだ対応が必要であるとの記述がございますが、もっと具体的な規制の案を書き込んだほうが良いと思いますし、医療については、まだまだ効率化できる部分があると繰り返し指摘されておりますので、全体的により一層表現を工夫していただきたいところです。
ここまで申し上げた点は、私からの強い要望事項としてお受け止めいただきたいと考えます。
最後に、52ページ、53ページの辺りで、先ほど平野委員、國部委員などからも御指摘がございましたが、52ページの2行目から9行目の表現は、やはり違和感がございます。多数派は所得制限を撤廃すべきではないという意見であったと思いますので、そこの書きぶりは、是非工夫していただきたいところです。
また、財源についても、税にもやはり言及していただきたいと考えます。
私からは以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。やや大きな話と、それから、フォーマリティーの問題と、それから、個別論、1個ずつお願いします。
1個目の大きなところということですが、若干、最後がしり切れ的な感じが、各論的に終わっているので、何か最後にメッセージ、先ほど伊達委員や広瀬委員からもありましたが、国民全体に対するメッセージを少し強く打ち出すような、最後のまとめとか、今後の方向性とか、何かそうしたものを入れても良いのかなと思いました。
前年も総論というのがあって、その後、各論だったのですが、そこは総論で、最後にまとめ的にそうしたことを入れていたのですが、今回は各論というのはないので、何かそうしたメッセージ性のあるもの、ここを伝えたいというアクションプランを最後に持ってきてほしいのではと。あるいは、基本認識のところの最後にそれを入れていただいても良いのかと思うのですが、その場合は基本認識ということよりは、もう少しアクションプランを含んだものであるという表現のタイトルにしていただくのがベターかと思います。
それから、フォーマリティーの件と申し上げましたのは、45ページ目のところです。こども・高齢化のところですが、こちら、1番から始まって、(1)、(2)、それから、①、②となっているのですが、やや段落のレイヤーが大きく違っているような形になっているかと思いまして、特に①、②、③というのがすごくレベル感が違うところをまとめようとしているようにも感じます。
かつ、細かく段落を分け過ぎていて、現状、政策対応というのをそれぞれの項目に小さく入れるのではなくて、それは一つにまとめて、少し、申し上げたレイヤーのところを工夫していただいたほうがより分かりやすいと思いました。
最後、個別論のところで1点ということですが、これは85ページ目で、先ほど安永委員がおっしゃったのと同じ趣旨です。9、10行目ぐらいの、より優秀な方々をというところについて、外からの協力を得るという趣旨で、以前からも御指摘を皆様からも、それから、資料にも入っていた「特別免許の交付や教員免許を有しない人材の教育現場での活躍のサポートなど」というのを入れていただければと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、以上でこちらの会場からはここまでとさせていただきます。
最後に、オンラインで、権丈委員からまた御発言の要望がありました。権丈委員、手短にどうぞお願いいたします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。主に少子化対策についてです。まずは、例えば46ページに、働き方改革を含め、社会全体の構造や意識を変えていくことこそ、少子化対策の中核とすべきなど書かれており、全体として適切な方向性を打ち出していると評価しております。
48ページの、女性のみが時短勤務を委託することで、「男女間のキャリア形成に差が生じることにならないよう」の辺り、重要な点であると思います。短期的な給付を見るだけでなく、男女共に長期的なキャリア形成という、人への投資を考える視点というのを強調しておくと良いと考えております。
また、51ページにおいて、財源に関して、「少子化対策に効果的なものに重点化する、政策効果の検証を適切かつ迅速に行う、負担する者の納得が得られるかとの観点を考慮する」と述べられている点も、今後、現金給付を安易に増大させるといったことにならないようにするためにも大切であると思います。
その上で、こうした方向性との整合性からも気になった表現が一つあります。54ページ、2行目の「子育て世帯が子育て期間全体として見て手取り増(給付増が負担増を上回る)となるようにすること」とあり、そこでの「手取り」という言葉です。前回、私は、社会全体で薄く負担すれば子育て世帯にとってはネットの受益はプラスになるという点とともに、現物給付の給付額に加える必要があり、国民に正確な情報を伝える努力をお願いしたいと申し上げました。
ここで「手取り」と言いますと、現金給付のみと受け止められると思います。せっかく子育て支援に関するサービスを充実させていきますので、ここは手取りではなく、ネットの受益や受け取る便益とするなど表現を御検討いただき、現物給付も含めたベネフィット全体であることを示すようにしていただければと思います。
それから、先ほど少し話が出ておりました、いわゆる年収の壁についてです。こちら、記述するのであれば、就業調整をかえって促して、将来、老後不安を抱えて、後悔される人が増えないように、また、不公平な形の給付を求める政治的な動きを促進することにならないよう工夫していただければと思います。社会保障制度の正確な理解の普及に是非取り組んでいただきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、後半のコメント等は以上にいたしまして、主な点について、起草委員からお返しするものがあればどうぞ順次お願いします。
土居委員、どうぞ御発言ください。
〔土居委員〕後半部分につきましてもコメントありがとうございました。できるだけ反映させたいと思っております。
特に大きなポイントだったというのは、まず53ページの財源に関してのところで、「企業を含め」という言葉は、「骨太方針2022」にある言葉でございまして、閣議決定されているということですので、それをそのまま引用しているというところでございます。これを入れる、入れないという話は、いろいろな条件付の御発言もありまして、税について何も書いていないではないかということについては、実は53ページの11行目から12行目にかけての「公費と事業主負担の適切な組み合わせ」という言葉で、公費というのは税財源であるということを暗に示唆しているということ。公費は、これは別に私の解釈ではなくて、我が国の一般論として税財源のことを公費と呼んでいるということでございますので、ここに含んでいるということです。
私も持論はあるのですが、これは委員皆様の建議でございますので、私ばかりの意見で決めるわけにもまいりませんで、そうした意味では、ここでできるだけ税財源という言葉もニュアンスとして入っているというようなことを申し上げさせていただきたいと。
それから、所得制限について、52ページですが、確かに2行目から5行目までが制限の撤廃すべきでないという意見であり、6行目から9行目までが撤廃すべきであるという意見ということになっていて、4行・4行で何かフィフティー・フィフティーのような感じになっているので、もう少し軽重といいましょうか、数の多さというものが行数で表せられると、ひょっとしたら、両方の御意見を踏まえながらも委員の中の御意見の構成もうまく表現できれば良いなと。
もちろん表現ぶりについては、このままで行くというつもりではございませんので、御意見を踏まえまして、しっかりと趣旨が通るように、改めるべきところは改めたいと思います。
それから、最後1点だけ。医療については、私の今の認識では、皆様からいただいた御意見というのは、持続可能性がこのままでは危ういということに一言で集約できるのではないかと思います。私も全く同感です。それをできるだけはっきり書けるところをもっと強く書くということに、医療だけでないですが、医療を中心に、社会保障についてのところで御意見いただいたところをしっかりと改めさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕どうぞ、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕本日は、委員の皆様から大変貴重なコメントをいただき、ありがとうございました。最初に、横串を刺した議論を、ということを、この何年かアンケート調査をいただくたびに書いてきましたので、ようやく実現し、かつ、皆様がそれに対して大変好意的な御発言をされていたのを聞くことができまして、実現したことを改めて良かったと感じております。その作業のゆえに、非常にすっきりできた部分もございますし、今回の児童手当のように、両方の議論、意見があり、それをどうしようかという点も出てきているのは事実でございます。
2点目、児童手当については、フィフティー・フィフティーの議論はありますが、個人的には「撤廃すべきではない」のほうが多かった印象もあり、これを上に移動する工夫はしましたが、もう少しその点が伝わるようにできるかどうか。起草委員の中で議論したいと思います。
3点目、財源については、税や企業の観点、御指摘をいただきまして、それについては、土居先生が御回答されましたが、もう一つ重要な点として、歳出改革もしっかり行うことが、そもそも企業や国民の可処分所得の点において、重要な論点になっております。したがって、歳入の面の論点もあれば、歳出の面の議論もありますので、歳出歳入の両面の改革でしっかり議論するべきという表現にまとめたつもりでございます。
税収については、当然、歳入に入っているという理解です。
4点目として、本日、前半の部分も含めて回答させていただくと、言いきりの部分、または、危機感の伝わり方に対する表現について、御指摘いただき、確かにそうした点があったと感じております。次の段階でその表現を改めることができるか、少し起草委員の皆様とも議論し、工夫してまいりたいと思います。思いは同じでございますので、そうした方向にしていきたいと考えております。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕起草委員の方、ほかはよろしゅうございますか。はい。どうもありがとうございました。
冒頭申し上げましたとおり、追加の御意見、あるいは、もうこの場ではなくてメールにしようと思われた方もいらっしゃったかと思いますので、本日中に事務局に、様式は任意で結構でございますので、御提出いただければと思います。起草委員の先生方には、そんな事情で、大分ここで申し上げたかったのであろうことがメールで来る場合が多いかと思いますので、そちらもまた十分御検討の中に入れて、修文等、お願いしたいと思います。
本日の御議論を含めて、改めて起草委員会で修文案を検討いただきます。今日は、これまでも財審で寄せられた御意見についてできる限り反映していただくということで、起草委員には取り組んでいただきましたが、今回の場合、特にそうですが、難しい判断となるものもあるかもしれませんが、いずれにせよ、修文案につきましては、起草委員の皆様に御一任したいと思いますので、よろしくお願いします。
その上で、委員の皆様のお手元にも次回の5月29日の分科会、来週の今日、月曜日になりますが、その前に修文案が届くようにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
それからもう1点、本日の資料、非公表扱いということでございます。お手元の資料の右上に、赤字で、「会議後要回収」と書いた分厚い建議の本文ですね。こちらは会議後回収させていただきますので、お持ち帰りにならず、机の上に残していただきたいとお願いさせていただきます。よろしくお願いします。
また、案の内容、それから、審議過程につきましても、対外的にはお話しにならないよう、委員の皆様方の御協力をお願いいたします。
以上で、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。
午後4時00分閉会