財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和5年4月14日(金)9:05~10:45
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
新任委員紹介
分科会長互選、分科会長代理指名
部会の構成及び部会長指名
分科会長挨拶
財政総論
3.閉会
分科会長 |
十倉雅和 |
井上副大臣 宮本大臣政務官 金子大臣政務官 茶谷事務次官 渡部政策立案総括審議官 新川主計局長 寺岡次長 中村次長 前田次長 八幡総務課長 小野主計企画官 大久保司計課長 渡邉法規課長 尾﨑給与共済課長 松本調査課長 一松主計官 三原主計官 佐久間主計官 有利主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 大沢主計官 河口主計官 坂本主計官 渡辺主計官 内之倉主計監査官 山岸予算執行企画室長 鈴木主計企画官 園田公会計室長 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
秋池玲子 河村小百合 熊谷亮丸 小林慶一郎 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
小黒一正 木村旬 國部毅 権丈英子 末澤豪謙 滝澤美帆 伊達美和子 田中里沙 中空麻奈 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
午前9時00分開会
〔松本調査課長〕引き続きまして、財政制度等審議会財政制度分科会を開催させていただきたいと存じます。
議事に入ります前に、本年3月まで本分科会の会長を務めていただきました榊原前会長より、一度この分科会で皆様にも御挨拶をする機会を持ちたいというお言葉をおあずかりしてございます。本日、榊原前会長、残念ながら御都合がつきませんでしたが、また日を改めてお越しいただくことといたしたく存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、議事に移らせていただきます。
まず、4月1日付で委員の任命をさせていただいております。分科会の資料セットの資料1、委員の名簿を御覧いただければと存じます。今回、新たに委員になられた方々、お名前だけ御紹介させていただきます。
十倉委員、小黒委員、國部委員、滝澤委員、この4名の方々に新たに委員にお入りいただいてございます。
続きまして、分科会長の選任を行っていただきます。これも審議会令によりまして、分科会長は、分科会に属する委員の互選により選任されることとなっております。分科会長につきまして、御意見ございましたらお願いいたします。
増田委員、お願いします。
〔増田委員〕財審全体の会長に御就任をいただきました十倉委員に、分科会におきましても会長をお願いしたらと、このように考えます。お取り計らい、よろしくお願いいたします。
〔松本調査課長〕ありがとうございます。十倉委員を分科会長にという御意見を承りましたが、皆様、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔松本調査課長〕ありがとうございます。御異議がないということでございますので、十倉委員に、分科会長に御就任いただければと存じます。よろしくお願いいたします。
それでは、続きまして、十倉会長から分科会長代理の御指名をお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。
〔十倉分科会長〕それでは、分科会長代理を、増田委員にお願いしたいと思います。
〔増田分科会長代理〕お引き受けさせていただきます。よろしくお願いします。
〔松本調査課長〕ありがとうございます。分科会長及び分科会長代理が決まりましたので、ここからは増田分科会長代理に議事進行をお願いできればと存じます。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕改めまして、増田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、本分科会の下に置かれる部会についてですが、資料2のとおり、引き続き、法制・公会計部会、そして、歳出改革部会としまして、各部会に属すべき委員につきましては、資料3-1及び3-2のとおりとなっております。
また、部会長につきましては、財政制度等審議会令によりまして、分科会長が指名することとされております。
それでは、ここで一旦カメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕先ほど本年度の財政制度等審議会財政制度分科会の体制が決定いたしました。委員の皆様におかれましては、十倉会長の下、本年度も闊達な御議論をどうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、十倉会長より御挨拶を頂戴いたしたいと思います。会長、どうぞよろしくお願いします。
〔十倉分科会長〕皆様方から、先ほど本審議会の会長と本分科会の会長に選任いただきました十倉でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
御案内のように、我が国はいよいよポストコロナの時代に移行しようとしております。と同時に、従前より、我が国、そして、世界が直面している喫緊の課題は大きく二つあるかと思います。一つは地球温暖化に代表されます生態系の崩壊、そして、いま一つは、格差の固定化、拡大、再生産の問題。これに加えまして、緊迫する国際情勢、これを受けての経済安全保障の問題、我が国固有の問題として深刻化する少子高齢化等の問題があります。
我々は、総理の言葉を借りれば、今まさに歴史の転換点に立っており、こうした課題に正面から向き合っていかなければなりません。しかも、こうした課題の解決は、いずれも、政府の役割が重要です。市場だけでは解決できない問題です。一方で、皆様に申し上げるまでもなく、我が国の財政状況は、コロナ対応の影響もあり、ますます厳しさを増しております。「経済あっての財政」は、骨太の方針にも掲げられている、我が国の基本的なマクロ経済財政運営のスタンスです。私が所属しています経済財政諮問会議では、最近、モダン・サプライサイド・エコノミクスといったことも議論されています。これは社会課題の解決にターゲットを絞った財政支出を行い、民間投資の活性化を促す考えです。これによって、経済成長を持続的なものにし、中長期の財政健全化、均衡を目指していくというものです。もちろん見直すべき支出はきちんと見直す、いわゆるワイズ・スペンディングが重要なのは言うまでもありません。
この分科会には、経済界、マスコミ、研究者など、各界の第一線で御活躍されている方々にお集まりいただいております。皆様方の知見を十二分に発揮していただき、充実した審議を行っていただくことが私の役割であると考えております。
皆様方、どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、ここで、報道関係者の皆様、御退室をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、続けさせていただきます。
遅くなりましたが、本日は、井上副大臣、宮本大臣政務官、金子大臣政務官にお越しをいただいております。ありがとうございます。
それでは、事務局説明に入ります。今日の議題は、財政総論となっております。
松本調査課長より、簡潔に説明をお願いします。
〔松本調査課長〕お手元の資料、分科会配付資料の資料4、財政総論でございます。よろしくお願いします。
次のページ、お願いいたします。冒頭、一つ目のパート、経済・市場動向と財政でございます。
次のページ、お願いいたします。右肩の1ページ、各国の物価動向でございます。欧米諸国はインフレ、日本は物価高対策を重ねてきております。
2ページです。物価上昇の要因につきましては、需要・供給両面の要因、さらにウクライナ要因が指摘されてございます。アメリカでは、コロナ対策の給付金が消費拡大につながったことも指摘されているところでございます。
3ページです。アメリカは、財政インフレの状況であるという御指摘も縷々なされてございます。
続いて、4ページ、為替でございます。昨年秋には、1ドル150円というレベルまで円安が進みました。右のほうですが、国際収支、内外金利差、金融政策など様々な要因が考えられるところでございます。
5ページです。貿易収支・国際収支は悪化が続いております。これも円安の要因となり得るということで留意が必要と考えてございます。
6ページでございます。各国ともインフレの中で金利も上がっているという状況の中で、赤線ですが、日本は低金利が続いている状況です。
7ページ、各国が政策金利を引き上げる中で、日本は金融緩和が続いているという状況でございます。
8ページです。金融政策の影響もございまして、国債保有が銀行等から日銀に大きくシフトしてございます。他方で下から3番目、水色の線ですが、海外主体の保有比率も高まっているという状況でございます。
9ページです。海外投資家の売買動向でございますが、昨年以降、時期によっては大幅な売り越しとなった時期があることに留意が必要と考えてございます。
10ページ、海外投資家は、左側ですが、短期債の保有割合が高くなっています。右側、売買シェアも高くなっているということで、プレゼンスが高まっているところでございます。
続いて、11ページです。借換債を含めまして、毎年の国債発行額は、コロナ以降、顕著に増えてございまして、毎年200兆円を大きく上回る水準となっております。
12ページです。この背景としまして、コロナ以降、特に補正予算の規模、濃い青の線の規模感が顕著に増えていることを示すグラフとなっております。
13ページです。コロナ以降、国債発行が増える中で、短期債への依存が大きくなっているということでございます。
14ページ、こちらの表ですが、ピンク色、金利が低いということで、黒色、利払費が低く抑えられてきているという状況でございます。ただし、棒グラフで、債務残高が増え続けておりまして、金利上昇の影響に留意が必要と考えております。
15ページです。金利が上昇いたしますと、満期が来た国債から順次、高い金利に借り換わっていくということになります。毎年度、兆円単位で利払費が増えていくという試算結果も出ております。
16ページです。物価目標の達成が見込まれますと、金融政策も調整が必要になるということを日銀も国会で答弁をしているところです。日銀の国債買入れを前提とした財政運営は適切でないと考えております。
17ページです。今まで御説明をしたパートのまとめでございます。最初の丸ですが、金利上昇、円安、インフレ等のリスクを意識した財政運営が必要と考えております。一番下の丸です。海外投資家を含めて、市場からどう見られるかということを意識して、隙を見せない経済財政運営に努める必要があると、そのように考えてございます。
続きまして、二つ目のパートに移らせていただければと存じます。世界の中での日本の財政でございます。
次のページ、右肩18ページでございます。日本の債務残高GDPは世界最悪の水準となってございます。
続いて19ページ、各国ともフロー、ストック両面での財政規律、法律以上のレベルで定めているというところでございます。
20ページ以降では、各国の最近の財政運営の動向について御紹介しております。イギリスでは、財政運営が引き金となって市場が混乱する、いわゆるトラスショックが起きたということでございます。現在、スナク内閣が立て直しを図っているところでございます。
21ページはアメリカでございます。債務残高が法定の水準で定める上限に到達する中で、野党共和党が歳出削減を求めていると、そうした状況にございます。
22ページは、3月にバイデン大統領が公表した予算教書の内容でございます。歳出削減が求められる中で、この実現自体、危ぶまれておりますが、実は課税強化等により中期的に財政健全化を図る内容となっているということも注目に値すると思います。
23ページはEUの動向でございます。財政収支赤字3%以内、あるいは債務残高60%以内という目標があり、違反した場合のペナルティを回避するには債務削減計画が必要だったということでございます。コメ印のところですが、コロナ以降、ペナルティが停止されていたわけでございますが、現在、このルールの見直しが議論されているという状況でございます。
24ページはドイツでございます。連邦基本法で定める公債発行限度、いわゆる債務ブレーキとも呼ばれておりますが、このルール、コロナ以降、3年間、停止されまして、右側にあるような様々な課題への対応が優先されていたというわけでございますが、2023年度から元に戻り、債務ブレーキを再び適用することになっているという状況でございます。
25ページです。今まで申し上げたとおり、世界が試行錯誤する中で日本はどうかということでございます。骨太の方針におきまして、引き続き2025年度の基礎的財政収支黒字化目標を定めているというところでございます。
26ページです。1月の内閣府の中長期試算では、非常に厳しい状況ではございますが、2025年度の目標達成は視野に入り得るということとされております。
続きまして、27ページ、IMF対日審査における指摘を紹介させていただいております。右下のグラフのとおり、需給ギャップは相当改善してきておりまして、短期的に財政刺激策は見直すべきであるとされております。下のほう、中長期に関しましては、信頼できる財政フレームワークが必要であるということも指摘されてございます。
続いて、28ページ、主要格付会社の指摘でございます。中長期的な危機的な財政面の課題等々、指摘されているということでございます。
29ページは、御参考ですが、仮に国債格付が下がりますと、民間の資金調達にも影響が出かねないという資料でございます。
30ページ、今まで御説明したパートのまとめでございます。三つ目の丸ですが、各国とも直面する課題への対応と財政健全化の両立に取り組んでいるという中で、我が国もそうした両立を図っていかねばならないと考えております。
四つ目の丸ですが、後段のほう、世界からどう見られているかも意識して対応していくことも必要であると考えております。
続きまして、三つ目のパート、危機への備えと財政に進ませていただきます。右肩31ページ、財政支出・国債発行を歯止めなく行ってしまうと、金利上昇、通貨安、インフレなどといった事態を招きかねないということです。危機的な状況をつくり出さないためにも適切な経済財政運営が必要であると考えております。
続いて、32ページです。震災・感染症・戦争といった有事には、経済財政運営の在り方も平時とは「非連続」なものとなると考えております。国家としてのリスクマネジメントが必要であると考えております。
33ページは、終戦直後の経験について触れております。預金封鎖、新円切替、さらに、財産税等々、厳しい措置が取られました。ハイパーインフレーションも生じて、国民の資産が犠牲になったということでございます。
34ページ以降は、第2次大戦中に個人向け国債の割当てのためにつくられた読み物、パンフレットのようなものでございます。このページでは、戦費捻出のための国債購入が呼びかけられているということでございます。
続いて、35ページです。当時は、国家の続く限り元利払いに支障が生じないということが書かれております。
36ページ、国の利払い分は国民の資産になるので財政は破綻しないということも、この読み物には書かれていたということでございます。結果的に生じたことは、先ほどの33ページで御説明したとおりでございます。
続きまして、37ページです。今回の防衛力強化に際して閣議決定をされました国家安全保障戦略におきまして、財政余力の重要性を指摘し、安全保障の礎である経済・金融・財政の基盤強化に不断に取り組むとされております。
38ページは、今回の防衛力整備計画の概要でございます。今後5年間で43兆円、新事業の契約額で言いますと、2028年度以降の支払い分も含めて43.5兆円でございます。今、申し上げたのが38ページです。
続きまして、39ページに進んでいただければと存じます。防衛力整備計画の内訳です。計画におきましては、各年度の予算編成において、各事業の進捗状況を、実効性、実現可能性を精査し、必要に応じて見直しを柔軟に行うということとされております。
続いて、40ページです。南海トラフ、首都直下型地震の被害想定でございます。こうした危機への備えとして財政余力を持つことも重要であると考えております。
41ページです。コロナ感染症関係で、今回のコロナ対策で、医療関係で行った財政支援について紹介しております。今後とも感染症といった事態が起きますと、巨額の財政支出が必要となり得るということかと存じます。
42ページ、コロナ以降、医療関係以外の様々な財政支援が必要となったということでして、一連の補正予算は巨額に上っております。
43ページ、今まで御説明したパートのまとめでございます。特に二つ目の丸でございます。危機において財政が適切な役割を果たすためにも、平時において節度ある財政運営を行うことが必要であると考えております。
続きまして、最後、四つ目のパート、成長力と財政というところに進ませていただきます。
右肩44ページでございます。この資料は秋の財審でも御紹介しましたが、この30年間、日本のGDPはドイツに再び迫られていると。一人当たりのGDPも大きく順位を下げているという状況でございます。
45ページです。経済低迷の原因として、財政支出が足りなかったからであるという指摘も聞かれますが、昨年の建議でも御指摘いただいたとおり、規模ありきではなく、成果志向の支出を徹底することが重要であると考えております。
続いて、46ページです。この30年の政府支出の規模をGDP比で見たものが左側でございますが、日本は大きく拡大しているという状況です。他方で、この間の収支は、右のグラフのとおり、一貫して悪いということでして、拡張的な財政スタンスを取りながら、残念ながら成長は実現できなかったというのが実態であろうかと存じます。
47ページです。GDPギャップ、需要不足を財政支出で埋めるよう求める指摘もございます。しかし、そうした対応ばかりを繰り返しておりますと、資源の効率的な再配分を抑制し、かえって成長力を損ないかねないということを懸念しております。また、GDPギャップの推計結果の信頼性といったことにも留意が必要と考えてございます。
48ページは、貯蓄・投資バランスについてでございます。青色、企業部門につきまして、諸外国は、企業部門、ゼロ近傍で推移しておりますが、日本はずっと上のほう、貯蓄超過にあることが特徴的でございます。民間の投資をきちんと引き出して、青色の部分を下に下げていくための取組が必要であると考えております。
49ページ、新しい資本主義の関係でございます。人への投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX・DXが重点投資分野とされております。財政面でも、成果に結びつく効果的な対応が求められていると存じます。
50ページです。少子化対策につきましても、中長期的な日本の経済の成長力、あるいは財政・社会保障の持続可能性に大きく影響するということでございます。成果に結びつく対応を行い、社会全体で安定的な財源を確保することが重要と考えております。
51ページでございます。先ほど来申し上げていますとおり、財政支出の成果の検証が重要であるということで、PDCAサイクルの確立について御紹介しております。行政事業レビューの活用、あるいは予算編成におけるデータ活用、DX化などを進めていくことが重要と考えてございます。
52ページでございます。今まで御説明したパートのまとめでございます。二つ目の丸、規模ありきではなく、成果を出せる歳出とする必要があると考えております。四つ目の丸ですが、民間主導の成長のため、民間投資、消費を引き出す方策を考えていく必要があると考えております。
なお、成長力強化など、日本が抱える諸課題の対応につきましては、次回以降も改めて資料を御準備させていただく予定でございまして、大所高所の観点から、引き続き活発な御議論をお願いできればと考えております。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日欠席しております安永委員より意見書を御提出いただいております。お手元にお配りしておりますので、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、これ以降、ただいまの説明に関しまして、委員の皆様から御意見、御質問を頂戴したいと思います。やり方ですが、御意見、御質問ある場合は、会場の方はネームプレートを立てていただく、そして、オンラインの方は、挙手するボタンのクリックで合図をしていただきたいと思います。
初めに、会場から5名、それから、続いて、テレビ会議システムから5名、そうした形で交互に指名していきますので、よろしくお願いします。時間が限られておりますので、御発言を手短にしていただきまして、場合によっては、御発言の最中でも簡潔にまとめさせていただくようお願い申し上げますので、御了承いただきたいと思います。
それでは、どうぞお願いしたいと思いますが、今日、途中退室ということの関係がございますので、初めに木村委員、それから、広瀬委員、お二人方に発言をいただきまして、その後は、私から見まして左側になりますが、河村委員から、続いて熊谷委員という形で、会場のほうは指名させていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御配慮いただき、ありがとうございます。事務局の松本課長、御説明ありがとうございました。いろいろうなずける指摘も多かったと思います。
私も、今回、新年度のスタートの財審ということですが、今年度、財政運営にとって非常に大きな局面変化の時期を迎えていると思います。つまり、これまでいろいろ財政の悪化をもたらしてきた要因が変わりつつあるということで、一つは、先ほど十倉会長がおっしゃいましたポストコロナですね。コロナ対策として、これまで多額の財政支出をしてきたわけですが、感染症法上の区分が来月、2類から5類に変更されることに伴って、財政支出が減っていくだろうというのが一つです。
それから、二つ目は物価高です。これも予断は許しませんが、インフレがピークアウトの兆しが出てきて、なおかつ、日本経済、ポストコロナにインバウンドなどが回復して、今後、賃上げが定着すれば、物価対策も縮小できる可能性が出てくるということが二つ目です。
三つ目は、日銀の金融政策です。これまで日銀が異次元緩和によって巨額の国債を買い入れ、それは財政ファイナンスではないということですが、財政が悪化した要因の一つになってきたと思います。今回、日銀の総裁が交代されて、金融政策も変わる可能性があります。もし正常化の方向に進めば、財政規律にとってもプラスに働く可能性があるのではないかと思います。コロナ、物価高、日銀の金融政策、この三つの変化をとらまえて、御説明あったとおり、財政健全化に取り組む。それを進めていく必要が高まっているのではないか。特に資料で指摘されていますが、欧米主要国はもう既にそうした方向で着手しておりますので、日本としてもこうした取組を急ぐ必要があるということですが、ここで気になるのが、いわゆる新たな歳出拡大の動きです。防衛費、それから、少子化対策、あるいはGX、いずれも国の根幹に関わる政策ですので、必要な支出は当然必要なものとして講じていくというのが大切なのですが、だからといって、財政規律を緩めていいというわけではないということです。
例えば少子化対策に関しても、安定財源を確保する必要はもちろん、財政支出をいたずらに増やすのではなくて、それこそ少子化のハードルと言うのですか。問題になっている非正規雇用の待遇改善など、こどもを産みやすい環境の醸成に努めるということも必要ではないかと思います。
それからまた、防衛費の関連です。予算計上されて残っている予備費を防衛費に充てようという動きもあるようですが、これも極めて問題が多いのではないかと思います。いずれも令和5年度予算の財審の建議で明記したとおり、政策のスクラップ・アンド・ビルドを通じたメリハリのついた予算を徹底していただきたい。新年度から春の財審はこれまでの主計官別からテーマ別の議論をされると伺っています。主計官別というのも意味のあることですが、同じ分野の中での議論にどうしてもなりがちだったのですが、本来、スクラップ・アンド・ビルドというのは事業を分野横断的に検討する必要があると思っています。
その意味で、今度、テーマ別にするというのは、分野横断的な議論の足がかりになる可能性があり、極めて意義のあることであると思いますので、こうした分野横断別のテーマ別の審議で、スクラップ・アンド・ビルドの議論を更に深めていきたいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕最初に、発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
日本の財政状態は、これまでも大変厳しいものがあったわけですが、ここ数年のコロナ対策で更に深刻になっているのではないか。本来は有事の対応だったはずですが、どうもそれが平時になりつつあるというのは大変心配ですし、それから、今後、大幅な財政支出が見込まれる、いわゆる防衛や少子化対策、これはメジロ押しということで、少しオーバーな言い方になるかもしれませんが、今や財政が日本の最大のリスクと言っても過言ではないと思っております。この財審では、これまでそうしたことを真面目にというか、愚直に発信してきたわけですが、今回、十倉新会長の下で、新たな気持ち、決意で臨んでいかなければならない。私自身も含めて、そう思っているところでございます。
そうした中で、一言、企業経営について、特に中小企業について触れたいと思います。御承知のとおり、中小企業は、なかなか価格転嫁が追いついていないということで、投資、賃上げのための原資を確保するのが非常に困難な状況にございます。一方で、深刻な人手不足に直面しまして、賃上げをしないと人が採れない。こうした状況の中で、現在、物価上昇を超えるような、4%を超えるような賃上げを決断している、こうした中小企業も約2割ぐらい存在しております。
これからも、そうした頑張っている中小企業が引き続き希望の持てるような経済運営、あるいは財政運営ということを是非お願いしたいと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、どうぞ御発言をお願いします。
〔河村委員〕御指名ありがとうございます。松本課長が御説明くださいましたように、やはり財政運営は非常に厳しい局面に差しかかっているのではないかと思っております。資料の18ページでお示しくださったように、国際比較で見ても、例えば債務残高、グロスで見ても、ネットで見ても、非常に悪い。世界の中でも最悪であるというお話、この点ももちろんですし、それだけではなくて、少し戻りますが、13ページのところで国債発行のプロファイルが出ております。このところ、コロナ危機以降、借換債も含めて、新発国債だけではなくて、200兆円オーダーでの国債の発行が続かないと財政運営が回らない状態である、今年度であれば190兆円という大変なオーダーであると。これは国際比較すると、IMFが、グロスの所要資金調達額の名目GDP比の比較という数字をいつも出していると思いますが、日本だけ名目GDP比で50%を超えてくるのです。これは比較しても、ヨーロッパでも財政が厳しい国ということでよく引き合いに出されるイタリアだって、ここは20%台ですのに、日本は50%を超えている。アメリカは基軸通貨国で少し別の事情があって、基軸通貨国で外貨準備のドル資産での運用ニーズもあるでしょうから、少し高くても許されるというところはあると思いますが、それでも30%を少し超えるくらいと思うのです。それに対して、日本がこれだけの国債の発行を毎年続けなければやっていけないということはやはりどれだけ厳しいか。しかも、それが、課長の御説明にもありましたように、今年、金融政策も含めて、政策運営がいろいろ変わっていく可能性もありますし、非常に厳しい局面にあるということをよく肝に銘じた上で、いろいろ財政運営を考えていかなくてはいけないのではないかと思います。
それで27ページのところで、IMFの対日4条審査の御紹介ございましたが、ここに出ているとおりですし、今年、今回発表された報告書を見ると、最近なかったと思うのですが、日本について債務の持続可能性の詳しい分析もされていて、ソブリンストレスという言い方がされています。IMFによる注書きを見ると、債務の持続可能性が疑われて、ギリシャみたいにリストラクチャリング、債権カットとか何か、そうした話になるようなことではないのですが、日本の場合は、国内の貯蓄は豊富ですから、そうしたことはない、当然であるということはIMFも認めているのですが、そうでなくても、いろいろな意味で、歳出の面、それから、歳入を確保する面ということで厳しい調整がかかれば乗り越えていける、という意味で、ソブリンストレスという言葉をIMFは使っているようですが、そうした指摘が海外からも出てきているということをよく踏まえながら、やはりしっかりと締まった財政運営をやっていくことが必要ではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。私からは大きく2点申し上げます。
まず第1点は、冒頭、十倉会長から、歴史の転換点というお言葉がございましたが、グローバルな経済の環境変化を踏まえると、我が国でもゼロ金利環境が永続するとの慢心は禁物であり、英国の失敗を他山の石として、隙のない財政運営を行う必要があります。グローバルな金利の長期循環を見ますと、片道で二十数年から40年弱のサイクルで上下動を繰り返しており、2020年にボトムをつけて、息の長い上昇局面に入った可能性がございます。
こうした中、我が国を取り巻く経済環境が激変する可能性が生じています。従来は、①マクロ的な貯蓄超過、金余り、②経常黒字、③円高、④デフレ、⑤低金利という5点セットで、経済体質がじりじりと悪化していく「茹でガエル」とでも言うべき状態にありました。しかし、今後は、これらが、①高齢化による貯蓄の取崩し、資金不足、②経常赤字、③円安、④インフレもしくはスタグフレーション、⑤金利上昇という、新たな5点セットへと激減する可能性が生じています。こうしたグローバルな環境変化を踏まえた上で、隙のない財政運営を行うことが不可欠です。
第2に、企業や個人の活力を引き出して、民需主導の自律的な経済成長と財政健全化の二兎を追うことが重要です。言葉を変えれば、短期的な需要喚起策ではなく、中長期的な供給サイドの成長戦略としての側面をより一層重視して、まさしくサプライサイド・エコノミクスを念頭に置きつつ、イノベーションを起こして、労働生産性を上げていくことが財政政策には求められています。
具体的には、PDCAサイクルを強化し、EBPMを推進して、財政出動が経済成長につながっているかを不断に検証することが不可欠です。また、財政出動ありきで予算の規模やインプットばかりに注目するのではなく、予算の中身やアウトプットを精査することが肝要です。予算をしっかりとプライオリティーづけして、効率の低い事業は見直し、効率の高い事業には大胆な予算配分を行うべきです。くわえて、財政のみによる問題解決は困難なケースも多く、財政と規制制度等の改革を「車の両輪」として対応を図るべきであると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林委員、どうぞお願いします。
〔小林委員〕どうも御説明ありがとうございました。財政総論の資料について全く異論はございません。私は2点、補足的なコメントを簡単にしたいと思います。
一つは、世界の中の日本の財政ということで、諸外国の取組が紹介されておりましたが、その中で、もう一つ日本でやられていなくて諸外国でやっていることというのは、長期の財政の試算を政府機関が発表するということがあると思います。日本の場合、経済財政諮問会議で10年先までの予想を出しておりますが、例えばイギリスのOBRでは、45年先までの財政の長期推計を出しているとか、アメリカも50年程度、アメリカやオーストラリアも50年程度先まで長期推計を出しているということがあります。日本でもそうした長期の30年とか50年先までの見通しというものが出されれば、それがかなり国民あるいは政治の中での財政についての議論の土台になっていくのではないかと思います。
先ほど資料の中で、戦後の悪性インフレの話が触れられておりましたが、確かに、そうした不安というのは、みんなそこはかとなく感じているものの、あれがいきなり出てくると少し唐突感もあると思うのです。むしろ、10年先ではなくて、これから30年、50年先まで予想するとこうした戦後の世界に近づいてくるという書き方のほうが説得力があるのではないかという気がいたしました。これが1点目。
もう1点は、成長と財政の論点について、一つ触れてもいいことがあるのではないか。それは財政が悪化しているという、財政のリスクあるいは財政についての将来不安、これが現在の成長を低下させている可能性があるのではないかということです。
佐藤先生と私でやっている東京財団のアンケート調査のことが先日発表されましたが、そこでも財政の将来の先行きについて非常に不安に思っているという国民は、過半数を超えていたと思います。非常に多くの国民が財政の将来において不安を感じている。このままでは大変なことになるのではないかという漠然とした不安を持っている。そうすると、それが現在の投資とか消費を抑えて、成長しなくなってしまう。成長が低下してしまうということがあるのであると思います。
このようなメカニズムについては、私と早稲田大学の上田晃三さんがやった共同研究で、コンピューターシミュレーションで、そのようなメカニズムで、財政の将来不安が現在の成長を落とすということを学術論文で書いたものが『Journal of Money, Credit and Banking』という雑誌に昨年発表されました。そうしたことも学術的な研究としてありますので、財政に対する不安が成長を落とす可能性についても触れておいてもよいのではないかと思いました。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ここで一旦オンラインのほうに移りたいと思います。オンラインで、藤谷委員、それから、宮島委員、お二人にまず御発言いただきたいと思います。
それでは、藤谷委員、どうぞお願いします。少しお待ちください。すみません。会場で声が小さいので。
〔藤谷委員〕ありがとうございます。失礼いたしました。御指名ありがとうございます。私がお伺いしたいのは、過去の成長戦略への財政措置の検証ということについてです。
スライドの45で、成長力を高めるためには財政の規模ありきではなく、歳出の中身を見直し、成果を出せるものとしていくことが必要とございます。全くそのとおりです。
ところで、スライドの49の「新しい資本主義」の施策では、スライド45で示されている原則、すなわち正しい意味でのワイズ・スペンディングの考え方にのっとった歳出プログラムが組まれているという御趣旨と理解しましたが、そのような理解でよろしいでしょうか。
しかしながら、過去30年間に行われてきた様々な経済対策も、多かれ少なかれそのような正しい考え方、合理的な考え方に従って行われてきたという説明がその時々にはなされてきたはずです。にもかかわらず、過去の経済対策が、今日、規模ありきのものであって、良くなかったと総括されてしまうのはなぜなのか。なぜ期待したほどにうまくいかなかったのか。それなのに今回は大丈夫であると言える理由は何なのかということが疑問になります。
もちろんここに掲げられております人への投資、DX、GX、私はいずれも大賛成でございますが、しかし、どういった見通しでもって、過去とは違う、今回は大丈夫という判断になっているのかということが問われるかと思います。もちろん経済成長というのは一筋縄ではいかない課題でございますので、施策が期待どおりの成果を上げるかどうか。これは究極的にはやってみないと分からないわけですが、しかし、少なくとも、どのような仮定、条件、どのようなシナリオに基づいてやっているのかということをあらかじめ事後に検証可能な形にしておかないと、後でうまくいかなかったときに、結局どこが悪かったのか分からないということになりはしないでしょうか。
私が恐れておりますのは、結局、5年後にまた、過去の施策は規模ありきだったが、今度こそワイズ・スペンディングをやるのであるという議論を、私たちがしているということになりはしないだろうか。誤解ないように申し上げますと、私は、財政が積極的な役割を担うべきでないと申し上げたいわけではありません。むしろ積極的にやるべきことはたくさんあると思います。しかし、積極的に何かをやろうとする以上は、事後的にその効果検証をして、そこから我々が賢く支出することができるように学習するためにも、実施前である現段階で何を仮定条件としているのかを、可能な限り明らかにしておくべきではないかと考えます。
また、二つ目ですが、同じ問題意識からの質問ということになりますが、スライド26の中長期試算についてでございます。2020年から2023年の実績値が予測よりも大幅に落ち込んでいる。これは明らかにコロナのせいですが、むしろ問題はこれからです。2019年までについても、実績値が予測を常に下回ってきたという御紹介をかつてこの財審の場で頂いたことがありましたが、その2019年までも、成長戦略はフルスロットルでやってきたはずです。しかし、その時点での成長実現シナリオを下回る実績値が現実となってきました。それでいて今度こそ成長実現シナリオが現実のものになるはずであるという前提で議論するというのは、いささか説得力を欠く。というよりも、大事なのは、なぜ実現しなかったのか、どの予想とどの予想が外れたから成長実現シナリオに至っていないのかの検証ではないかと思います。これは決して揚げ足取りの議論ということではなくて、支出が成長を後押しし、歳出効率化努力と矛盾しないのか、逆に、どのような支出は成長に貢献しないのか、というワイズ・スペンディングの各論をやっていくためには、中長期試算を言いっ放しにしない、過去の検証をきちんとするということが必要なのではないかと考えるわけです。こうした問題意識というのは事務局において共有されますでしょうか、というのが私からの質問となります。
長くなりましたが、以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。また最後に、質問については、お答えをまとめて事務局から申し上げたいと思います。
それでは、続きまして、宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕宮島です。よろしくお願いいたします。私は財政に関する危機感に関しては皆様と思いを同じにしつつ、少し具体的なところを2点、お話ししたいと思います。
一つは、ここ数年を見ても、日本は危機のときに、一度アクセルを踏んだり、緊急事態の対応をするというのはできていると思うのですが、広げたものを平時に戻す。そこのところがどうしても下手だなと思っております。でも、実際にそれが緊急時であっても、それが長引くと、金融政策などそうですが、それが平時になってしまって、戻すのにすごく苦労しているという状況がありますので、ここを何とかする必要があると思います。
緊急事態のときの政策は、政治としても皆様に安心してほしいと発信したいことが多いので、ここまで来たら止めるということを言いにくいのは分かりますが、これが政権の会見という形とは別でもいいかもしれませんが、ここまでやったら止めるのだということをスタートするときにできるだけ明確化することと、この政策は、今はやらなければいけないが、どのようなデメリットがあるのか。それをしっかりと説明しながらやる必要があるのではないかと思います。もちろん私たちは、メディアの立場として、デメリットとかいろいろ、それぞれ研究もしますが、背景説明については、政府ともよくコミュニケーションを取って、国民の理解ができれば、出口がもう少し楽になるのではないかと思っております。
それから、成長につながる財政になっていないのではないかという問題意識は私も同じです。そして、成果の測り方の前提として、資料の51ページにありますPDCAサイクルが本当に今、うまくいっているのだろうかと思います。もちろんずっと問題意識を持ってやっているわけですが、それぞれについて評価軸が適切なのか、甘くなっていないか、そうしたことは非常に気になります。また、資料の分かりやすさなども、これで十分なのか、ちゃんと国民にも伝わるのかということを気にする必要があると思います。
会計検査院が、例えばコロナのワクチンですと、そもそも評価する上で、どういった理屈でこれをこのぐらいにしたのか分からないというような指摘がありました。やはり最初の段階で、できるだけ根拠を明確にしておくことで最後の評価にもつながると思います。また、、同じ会計検査院が指摘したTPP対策の基金に関しましても、いろいろ指摘はあって、それに対して対応もしているとありますが、その対応が何となくこのように働きかけているとか、非常に頑張ってはいるということは伝わるのですが、具体的にどう改善しようとしているかがなかなか見えてこないところがありまして、このPDCAサイクル、指摘されたことへの対応というのを、もっときっちりしたものにしていくことが財政に対する信頼を得ていく方法の一つであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、また会場のほうに戻りたいと思います。続いて、佐藤委員、どうぞ御発言ください。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。手短に3点ほど。
まず一つ目は、1の経済市場動向と財政に関わるところです。これまで過去10年の低金利、デフレ基調から、世の中は、金利上昇、インフレ基調へと、まさに潮目が変わったのだということを意識した財政運営が求められるのかなと思います。その潮目が変わることは大きな不連続の変化に我々は直面するかもしれない。例えば国際市場における投機筋の攻撃であるとか、こうしたことによって金利が急上昇するかもしれない。これは財政だけではなく、家計、企業にも大きなインパクトを及ぼすことですので、そうしたところの危機シナリオというのをあらかじめ念頭に置いておいた財政運営をする必要があるのかなと思いました。
2番目ですが、これは成長力と財政に関わるところですかね。私も参加した経済財政諮問会議の特別セッションで今、はやっているのは、モダン・サプライサイド・エコノミクスでして、ポイントは何かというと、これまで日本の財政政策というのは、やはり需要喚起の景気対策だったのですが、それを生産性向上の成長戦略に大きく切り替えていくべきであるというのが一つのメッセージであると思うのです。
研究開発税制であれ、賃上げもそうかもしれませんが、何か成長に働きかけるような政策をいろいろ打っているつもりでいても、出口はいつも景気対策、つまり、どうやって需要を増やすか、投資を増やすか、消費を増やすかという、そこに目配りが行き過ぎていたのだと思います。そうではなくて、中長期の成長、具体的にイノベーションの創出であるとか、新陳代謝の活性化であるとか、生産性の向上であるとか、そうしたところが財政の新たな目標として位置づけるべきであると。ある意味、規模ありきから、まさにアウトカム、オリエントな財政運営の転換というところに通じる。言葉を変えれば、ワイズ・スペンディングにもなるのかと思います。
3番目ですが、我々日本はギアチェンジが下手であると思うのです。危機から平時へ変わったときに、我々は風呂敷を閉じなければならない。でも、一度広げた風呂敷が常態化していく。危機が既得権益化していくという状況は改めて必要あるだろうということ。それから、今日、御説明ありませんでしたが、やはり子育て支援の話も、少子化対策もあるわけでして、こうしたところ、新たな財政ニーズ、もちろん有事への備えもありますが、新たな財政ニーズが生まれている。これをどうするかというときに、まさに既存の予算配分というのを見直していく。もちろん財源確保も必要ですが、既存の予算配分を見直していくという、そうした対応が求められるかなと思います。
それに関わって、最後一言、やはり補正予算についてもちゃんと目配りをしないと、当初予算はきれいでも、いつも大規模な補正予算が組まれまして、皆様、これを予定して、全て行動されているということはあってはならないと思いますので、財審としても補正予算のところも注目して、議論していくべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。3点述べたいと思います。
1点目は、感想になりますが、十倉会長が冒頭でお話しされたとおり、世界と日本、様々な点で歴史的転換点にあるという点はそのとおりと思います。経済安全保障、ポストコロナへの移行、気候変動対策、少子化対策、いずれも非常に重要な対応が求められると思います。しかし、それぞれの対応のみに目が向き、結果的に国家基盤である財政への信認を失うことになれば、全ての対応が困難になるという視点を国全体で共通認識として持つ必要があるのではないかと改めて感じます。その意識を高めなければいけない環境変化として、やはり市場動向はあろうかと思います。
本日の資料にも、1%の金利上昇で3.6兆円という数字がございましたが、そろそろ現実味を帯び始めていると、感じております。
2点目は、分野横断、全体最適の視点でございます。今回の春の財審では、先ほども御意見がございましたが、テーマ別に設定されていると拝見しております。その背景としては、解決すべきことが非常に複雑で、これまでのように、予算ごとの縦割りですと結果的に解決できない問題も増えてきていると思っており、この点は以前から意見として述べさせていただいてきておりますので、テーマ別に分野横断で議論できることは大変期待しております。
最初は、やや手探りの面もあるかと思いますが、アジャイルに見直していくことも大切ですので、是非議論を活性化できればと考えております。また、ここでの議論に終わらずに、本来の目的である政策あるいは予算編成で横断的に見て、効率的に重複しているものを省いていく視点も重要です。そこにつなげていくことができるかどうか、試されると思います。
3点目、過去の政策の検証をもっと重視いただきたいという点です。日本の財政運営で他国と異なる点は、中長期の視点とフレームワークのブレーキのかけ方の問題。そして、過去の政策評価がいかされていない点にあると思いますので、政策立案、予算編成にぜひ政策評価を生かし、成果が出ていない場合には、次の施策で同じことを繰り返さないことが重要と思います。
とくに、評価する上で設定する目標が重要であると思っており、アウトプットのゴールを置きがちですが、アウトカムで目標を設定いただいて、そのアウトカムを測るのに必要なデータを最初から予算とセットで求めていく。そうしたことを行うことで、先ほどギアチェンジが苦手という話がありましたが、そのギアチェンジをもう少しオープンに透明性を持って行えるのではないかと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕これまでも委員の皆様がおっしゃっておられたように、財政運営の方向性が今後切り替わるということを図らずも、十倉会長をはじめとする財審の新体制の下でしっかりと良い形で議論ができるように、私としても微力ながら議論に関わらせていただきたいと思います。その意味で申しますと、今の財政運営で求められているものは、歳出改革と、真に経済成長に資する財政支出というものを両立させていくということが必要になってくると思います。
26ページにありますように、2025年のプライマリーバランス黒字化はかなり視野に入ってきたと。ひとまずは、一度でもいいからプライマリーバランス黒字化を達成して、成功体験を我々が味わうということをまずは成し遂げる必要があると思います。もちろんプライマリーバランスの黒字化は、財政健全化の一里塚ではありますが、緊縮財政をしなくても、プライマリーバランスの黒字化が実現しそうな状況にあるということであると思います。
確かに内閣府の試算は、成長実現ケースという意味では成長率が高めであると財審でも言ってきてはいますが、たかだか2024年、2025年の2年間の成長率を大きく見誤らなければ、しかも、税収が過去最高を更新しているという足もとの状況もありますから、プライマリーバランスの黒字化はそんなに大きく無理をしなくても実現できる。ただし、この資料にも書いてありますように、歳出効率化努力というのは怠ってはいけないということですから、この歳出効率化努力をしっかり実現できるように、この財審でも建議でそれを訴えていくということが必要であると思います。さらには、防衛財源においても、歳出改革によって捻出するという部分があるということになっておりますから、この歳出効率化努力だけでなくて、防衛財源の捻出のための歳出改革というものも、これも怠らずにやっていかなければならないということであると思います。
そうした意味では、45ページにもありますように、規模ありきでなくて、アウトカムオリエンテッドスペンディングで行くということは、引き続き、春の議論でも重要になると思います。特に規模ありきというところがなぜ問題なのかというと、例えて言うならば、費目が白紙で合計金額しか書いていない請求書が国民に回されているというような状況である。中身も分からないのに、請求書で、国民の皆様、この金額だけ負担してくださいと言っているようなものというのは、規模ありきということになりますから、やはり中身がきちんと詰まっていて、こうしたものにお金を使うので何とぞ御協力をお願いしますという形で国民の皆様に訴えていくことが言えるようにしていく必要があると思います。
そうした意味では、2点目のところですが、真に経済成長に資する財政支出と、これがGXだったりするわけですが、そのときにやはり国民に対して、こうしたものにお金を使うので何とぞ御協力をお願いしたい。もちろんこれは負担増という場合もありますが、財源確保のために協力をお願いする必要があるという意味では、まさに規模ありきではいけないと思います。特にGXについては、エネルギー対策特別会計で経理されるというように聞いておりますが、エネルギー対策特別会計というのはこれまでにも、行政改革の中で無駄の多い特別会計であると指摘され続けておりますから、きちんと中身を精査して、真に我が国の気候変動対策に資するようなものに用いていくことが必要です。防衛財源の確保も、これから更に議論を深めていかなければいけませんし、こども・子育てはこれからいよいよということではありますが、国民にきちんとメニューを見せて、そのメニューにふさわしい負担増ということであれば、それならば国民も応じていいだろうと多くの方が思われるように理解の浸透を図っていくことが必要なのではないかと思います。
私から以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、どうぞお願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。論点を2点に絞って述べたいと思います。
まず1点目は、財政規律の強化についてです。先月成立しました2023年度予算は、緊急対応時であるコロナ禍を上回る規模であり、かつ5兆円もの巨額の予備費が積まれており、財政規律が弛緩しているのではないかと感じております。また、財源の調達についても我が国財政の危機的な状況や脆弱性を鑑みれば、過度に国債に依存する今の財政運営は将来世代へ負担を付け回していることにほかなりません。
資料にあるとおり、「財政運営に当たり、日本銀行が国債買入れを前提とすることは不適当であり、そうした疑念を持たれないようにする必要がある」のであれば、まずは政府の責任においてプライマリーバランスを2025年度までに黒字化することを政府方針として、国の内外に対して明確に示すべきであると考えます。
その上で、歳入歳出を含む行政監視機能の充実を図る観点から、中長期的な財政運営の評価、監視を行う内閣から独立した機関の設置など、財政規律の強化に資する具体的な取組に早急に着手すべきです。また、PDCAサイクルの確立によって、財政支出が成果に結びついているかを検証することが極めて重要であり、次年度以降の予算の質的向上に生かしていただきたいと考えます。
あわせて、物価高対策などの経済政策は、IMFが指摘しているとおり、真に支援が必要な低所得者に的を絞った上で、歳入増加策と併せて行い、その執行に当たってはマイナンバーを活用し、迅速かつ的確に支援ができる制度を構築すべきです。
2点目は、少子化対策について触れたいと思います。こども・子育て政策に必要な財源の確保策については、今後、こども未来戦略会議において議論していくものと理解していますが、報道で聞かれるような社会保険料に上乗せする考え方など、徴収しやすいところから徴収する方法ではなく、こども・子育てを広く社会全体で支える考え方にふさわしいものとすべきであると考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、小黒委員、どうぞお願いします。
〔小黒委員〕発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私からは、24ページ目のドイツの取組のところと関連して、少しお話しさせていただければと思います。もう既に何名の多くの委員の先生方から、今、日本は潮目が変わってきているという話がございました。実際、現実問題として突きつけられている問題としましては、やはり日本銀行が、ゆっくりであるとは思いますが、イールドカーブ・コントロールを修正していく可能性が高いのではないかと私も思っております。
その場合、やはり金利の上昇圧力が高まっていくと思いますので、当然、経済成長とも調和を取りながら歳出の改革と、それから、税収増を図っていくということが求められると思います。そのときに、これは直ちに実施しなくても、24ページにありますように、ドイツがコロナ対応で発行した国債であるとか、あるいはエネルギー価格、物価高騰対策で発行した国債を少しずつ償還していくという試みがございますが、ここにいらっしゃる土居先生、佐藤先生と御一緒に、東京財団でも提言を出させていただきましたが、東日本大震災のときにも特別会計をつくって償還していくというスキームを取りましたので、今回も是非、「経済(GDP)の動向も当然に考慮しながら」ということになりますが、処理の方向性に関する議論だけでも進めていただければと思います。
また、その関連で、なぜこれが重要なのかということで、2点だけ少しお話しさせていただくと、1点目は、資料の1ページ目のところにございましたが、今年の年始のところでNHKで、今後インフレがどうなるのかという特集がございました。日本であれば、例えば本当にインフレ率が1%に戻っていくのか。例えばアメリカでも本当に2%になるのかというところについて少し検討したほうが良いのかなと思っております。
これはなぜかと申しますと、例えばアメリカのケースでは、直近の足もとで、3月の失業率は3.5%程度しかなく、FRBがあれだけ金利を引き上げたにもかかわらず、なかなか調整が進まないという現実もございます。実際、55歳以上の労働参加率もコロナ前に全然戻らないということで、労働力全体としても1%ポイントぐらい下がっていると。それが原因で賃金が上昇して、サービス価格が上昇する。それがドライブする形で、全体のアメリカの物価も上昇しているという状況が続いているということであると思います。
日本も、1ページ目のところにございますが、電気代とかには政府の補助金を入れることによって価格が下がっているということになりますので、もし補助金をやめた場合に、標準のところに戻ったときに、では、物価がどれぐらいになるのかというところもあります。そうしますと、後ろのほうに長期金利の推移がございましたが、では、落ち着いたときに日本の長期金利はどこに向かって行くのか。今のイールドカーブ・コントロールで見た場合、15年物と7年物の線形補完をしてみますと、1%ぐらいはあってもおかしくないという状況ですので、そうした状況を考えると、リスク対応というところもございましたが、やはりきっちり対応していく必要があるのではないかと思います。
それからもう一つは、今年の1月にハーバード大学のロゴフ教授がコメントを出していましたが、日本の政府のバランスシートと日本銀行のバランスシートを統合して見た場合、釈迦に説法ですが、財務省(理財局)が国債を、例えば30年債とか20年債を出したとしても、日本銀行がそこで国債を大量に買えば、これは統合バランスシート全体として見た場合は、債務のデュレーションが短期化しているという問題です。この問題はアメリカの次のような事態に似ている側面があると思います。といいますのは、少し前にシリコンバレーバンキングが破綻しましたが、これはコロナ禍で大規模な財政出動と金融緩和をした中で余ったお金がこのバンクに行ったわけですよね。
例えば現金給付で行ったものが預金に集まって、それで運用先がないので、バランスシートの資産側では、低いクーポンの債券を買っていたというか、国債とかも大量に買っていたということであると思います。他方、バランスシートの負債側の預金は金利上昇に脆弱であり、そこで金利が上がった途端に帳尻が合わなくなって破綻したということであると思います。まさに日本の政府部門と日銀の統合バランスシート自身が同じような状況になっており、それが金利上昇に非常に脆弱な構造になっているということも理解した上で、財政運営していただければと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで一旦、オンラインのほうに移って、オンラインで、堀委員、それから、横田委員、このお二方に御発言いただきます。
それでは、最初に堀委員からお願いします。
〔堀委員〕発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。「世界の中での日本の財政」資料に記載されておりますが、世界における位置づけを確認するというのは非常に重要であると思っております。債務残高が最悪の水準にあるということを念頭に入れた上で財政健全化を図ることが求められますし、先ほど、茹でガエルになるのではないかという御指摘をされた委員の方がいらっしゃいましたが、今のままであると、「井の中の蛙」のまま、茹でガエルになってしまうのではないかなと心配しております。
ウクライナ、ロシアの戦争等では防衛費用も必要ですし、日本の場合、いつ災害等も起きるか分からない。また、明治の統計以降、最少の出生数という状態を更新し続けているのが日本の少子化の状態です。また、社会保障の持続可能性という点においても、2025年、2040年の推移を見ますと、非常に財政的に支出規模が大きくなると思います。何をするにも安定財源が必要ですし、また、安定財源がないまま、財政支出、国債発行を歯止めなくするというのは止めるような仕組みというものが必要なのではないかと思います。
そうした意味でも、今回導入されたようなテーマ横断でワイズ・スペンディングを見る、あるいはPDCAを見るというような視点が重要であると思います。ただ、先ほど武田委員がおっしゃったように、PDCAのサイクルを回したとしても、指標が重要で、指標の設定そのものが妥当なのかも重要ですし、過去を振り返って検証するということはぜひやっていただきたいと思います。
基金への備えと財政のところで、38ページから40ページの資料に歴史的な資料が掲載されています。たしか対米開戦前夜に、大政翼賛会ですかね。隣組に配布された読本なのかと思いますが、唐突感は確かにあると思うのですが、個人的には、この資料を見ますと、戦後のハイパーインフレで紙切れ同然になった、国債になってしまったということを思い出す教訓になるかと。危機意識を非常に強く出しているものであると思いますし、過去の教訓を記すということは重要なのではないかと思いました。
それから、46ページで、これまでの財審の資料にも書かれているのですが、コロナ対策の財政規模の大きさが改めて示されていますが、先ほどもお話ししましたように、政策評価というところは非常に重要であると思いますので、実際これだけの支出があって、それがどうなったのか、それがどれだけリスクに対応できたのかというものも、時間はかかると思うのですが、事後に検証する。これは財務省がするのか、事後の支出なので、会計検査院がするのか、あるいは第三者機関がするのがより適切なのかは分かりませんが、いずれにしても、過去の歴史から学ぶためにも、今、起きていることについて情報を蓄積することが未来にいかせることになると思いますので、是非検証していただきたいと思いましす。最後に、成長力と財政のところに書かれている少子化についてです。
こちらも次回以降、検討されると思うので、細かいところは省きますが、家族関係社会支出を見ると、国際的に見ても確かに日本は低いですし、合計特殊出生率と家族関係社会支出に相関は明らかにあるということは知られていると思います。ただ、現物給付と現金給付の割合を見ますと、現物給付が現金給付よりも日本の場合はやや多いのではないかと思います。
出生率については、現物給付のほうが効果があるというふうにも見られているところがあると思いますので、ぜひその辺も見ていただければと。現金給付が良くないと言っているわけではないのですが、現金給付はすぐにできるという意味でやりやすい政策であると思いますが、効果はなかなか見えないと思います。普遍的に子育て支援を行うこと、少子化対策を社会全体でするというのは非常に重要な視点であると思いますが、家計で一人当たりにたくさんお金をかけようとすると、逆説的でありますが、たくさんこどもを持つことはできない。収入が増えると、より良い教育にというように、質をあげるインセンティブが働く一方で、量を増やすインセンティブにはならない可能性もあるかと思いますので、子供の育てやすさ、仕事との両立など環境面などを含め、その辺を細かく見ていただく必要があるのではないかと思います。
以上になります。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。私からは2点ほど意見申し上げたいと思います。
まず、金利上昇による利払費が増える可能性についてです。金利1%の上昇で3.6兆円ほどの利払費が増加する、数字のインパクトが一般国民に伝わりにくいと思う。かなり現実味が増してきているということもあり、3.6兆円の規模感を、例えば恒久的な教育予算などで3.6兆円というのが、どういった予算と同等となるのか。1%上昇するだけで吹っ飛んでしまうのかというところは、国民の理解を得ていく上でリアリティーを持っていただくような工夫をしていってもよいのではないかと思ったのが1点目でます。
2点目は、経済成長に向けての中長期的な成長戦略に向けた投資についてです。GXやスタートアップそれぞれに投資していくことは非常に重要であると考えていますが、成果が出るまでになかなか時間がかかるものであると理解しております。私自身、スタートアップ関連でいくつか関与しているものもあるのですが、すぐに成果が見えないものに関しても、定点観測で数値で進捗を図るような指標をきっちりと設定をしておき、順調に進んでいるのかというのをしっかり確認していく必要があるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、また会場に戻りたいと思います。
それでは、続きまして、國部委員、どうぞお願いいたします。
〔國部委員〕御指名ありがとうございます。今回、新たにこの分科会に参加させていただくことになりました三井住友フィナンシャルグループの國部でございます。私は、民間金融機関の経営者として、日々、経済や金融市場と向き合う中で、我が国の財政運営について常に問題意識を持って見てまいりました。これまで有識者の一人として、政府の成長戦略会議や気候変動対策、国力としての防衛力等に関する議論にも参加させていただきましたが、その会議の場でも健全な財政運営の重要性について意見を申し上げてまいりました。今回、財審の議論に参加するに当たり、認識を新たにしています。
本日のテーマは財政総論ということなので、最初に我が国の財政状況に対する認識を申し上げた上で、健全な財政運営に向けて重要と考える事項について、2点、コメントしたいと思います。
まずは財政状況に対する認識についてです。我が国の財政が大変厳しい状況にあることは論をまちません。現状、日本国債の格付は、Aレベルで何とか持ちこたえておりますが、外貨調達の担保として不適格な水準に引き下げられると、金融機関の資金調達に大きな影響が生じ、日本企業への波及も避けられません。資料で御紹介していただいているとおり、格付会社は、日本が経済成長率を高めていけるかどうか、それから、債務負担能力、利払い能力を維持できるかという2点に注目していると思います。現時点で直ちに格下げのトリガーが引かれるような状況ではありませんが、2%の物価安定の目標が達成された場合には、政策金利も引き上げられていきます。政府として目指す世界では、利払い負担が増すことを見据えて、国際的な信認が得られている今のうちに、成長戦略と財政健全化を並行して推進していく必要があると思います。
続いて、健全な財政運営に向けて重要と考える事項について。1点目は、グランドデザインに基づく政策の優先順位づけです。先ほど申し上げましたとおり、これまで何度か政府の有識者会議に参加してまいりましたが、いずれの会議でも、我が国全体を俯瞰した上での優先順位づけがないまま議論が進んでいく印象がありまして、優先順位づけのベースとなるグランドデザインの必要性を指摘してまいりました。予算に限りがある中では、優先度の高い政策から順番にリソースを投入する、そのために既存の予算配分もスクラップ・アンド・ビルドで見直す、というアプローチが欠かせません。
少子化対策や、防衛、社会保障など、個別のテーマごとに議論を深めることももちろん重要ですが、それぞれが重要な政策だけに、それだけでは必要な予算が際限なく積み上がります。我が国として取り組むべき政策の全体像を俯瞰して、何から取り組むべきかというグランドデザインを策定し、それに基づいて、優先順位をつけて適切な資源配分を行っていく必要があると思います。その意味でも、この財政制度審議会の位置づけの重要性というのは大変高いと思います。
2点目は、財政運営を客観的に評価する仕組みです。「拡張的な財政運営が持続的な成長につながっていない」、あるいは、「規模ありきでなく、アウトカム・オリエンテッド・スペンディングを徹底し、成果を検証していくべき」といった昨年の建議の指摘は極めて的を射ていると思います。これまでもワイズ・スペンディングの重要性が指摘されてきたにもかかわらず、必ずしもそうなっていない実態を重く受け止めるべきと考えます。
資料でも、政策・予算の質の向上に向けた取組が記載されていますとおり、ワイズ・スペンディングとなっているか、なぜ成果が得られなかったのか、行政レビューシートを用いた検証は機能しているのか、といった観点で、政策の費用対効果を客観的に分析・評価する仕組みを見直し、PDCAサイクルの実効性を高めていく必要があると考えます。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕今年度もよろしくお願いします。私はやはり2020年代、これは内外で大きなレジーム転換、構造変化がある年代なのだろうと思います。
国内で申し上げると、やはり最大の問題は少子高齢化。少子高齢化について一つ例を申し上げますと、今日いただいたペーパー、一番最後で、「成長力と財政」というまとめがございます。ここで、一番上に、「日本経済は、この30年間にわたり低迷を続けている」と。ちょうど30年前といいますと、1993年になります。ちょうどバブルが崩壊し、金融危機が起きた。こうした大きな問題があったのですが、これは人口動態的に申し上げると、ちょうど1992年というのが、いわゆる生産年齢比率、15歳から64歳の生産年齢の比率が最高だったのです。69%。1995年度が生産年齢人口の全体数がピークです。つまり、いわゆるジャパン・アズ・ナンバーワンと言ったときは、実は若い人、働き手、現役世代が一番多かった年なのですね。それが今どうなっているか。同じペーパーで50ページです。戻っていただいて、ちょうど今、政府でも次元の異なる少子化対策ということでこれから頑張っていただければと思いますが、このグラフで見ると、2022年の出生数は下に、外国人を含んで79万9,728人でした。ただし、ここの青色の点線、これは日本における日本人なのですね。日本人人口。日本人人口で勘案すると、2022年というのはいくらになるかというと、実は11月までの統計が出ていまして、11月までの統計でいうと77万5,000人です。12月分、これは総人口ベースで見ると、四、五千人減っています。
つまり、現時点での推計をすると、昨年の日本人の出生数は77万600人ぐらいになってしまう。これで言うと、このグラフで見ると、どこになるかというと一番右です。2034年。2034年に青線が76.9万人とあります。つまり、ここと匹敵している。つまり、少子化というのは、前回の年金財政再計算のベースとなっている将来推計人口より12年進んでいるということです。これは本当に危機的な状況です。
もう一つ、海外要因で申し上げますと、実はIMFが今週、経済見通し、新しいものを出しました。去年辺りからIMFのレポートでよく出てくる言葉があります。これは地経学的リスク。地経というのはジオエコノミクスです。我が国でよく、ここ20年ぐらいで使われるようになったのは、地政学的リスクです。これはジオポリティクス。これはなぜジオポリティクス、地形学的リスクが使われるようになったかというと、これは戦前からある学問ですが、日本ではいろいろタブー視されて、私の理解では2022年にグリーンスパンが使い出したのです。ブッシュ政権が2003年春にイラク戦争をやると。ただし、2002年の段階でイラク戦争リスクとは言えないので、地政学的リスクと言い出したと。実際、2002年の後半にありましたが、G7財務省・中央銀行総裁会議の共同声明にも地政学的リスクという名前が出てきます。これが日本で一般化した。
なぜあの当時は地政学的リスクで、今は地形学的リスクか。これはちょうど1989年にベルリンの壁が崩壊し、その前に中国の改革開放政策があった。中国は天安門事件とかあって、最終的に2000年代に入ってくるとグローバル化が一段と進んで、壁がなくなって、いわゆるヒト、モノ、カネのコストが下がります。低インフレ、低金利、高成長のビジネスモデルが世界的に蔓延したのですね。これが過去20年続いた。それが今回のパンデミックとウクライナ戦争で、再度、ブロック経済化が進んでいます。再度、壁がつくられてきている。
また、パンデミックというのは、これはよくデフレ要因と理論的には言われるのですが、ちょうど100年前のスペイン風邪のときに、これは実はインフレ要因になっています。なぜかというと、生産設備は残ったのですが、若年層が大量に亡くなっています。スペイン風邪では若い人が亡くなっている。2,000万人近く亡くなった。当時の総人口は10数億、世界人口10数億で2,000万人近く亡くなった。
今回も、先ほど御説明ありましたが、若い人が働かなくなってしまったのですね。それで労働参加率が上がらない。つまり、パンデミックによるライフスタイルの変化も実はインフレ要因になった。ここに壁が造られると何が起きるかというと、IMFのレポートに出ていますが、いわゆるブロック間でイノベーションとテクノロジーの共有がなされなくなる。それによって生産性が落ちる。結果的には、要は、かつての低物価、低インフレ、低金利、高成長モデルが、そこそこの物価、そこそこの金利、そこそこの成長率という、いわゆる1980年代以前のモデルに戻ってくるのではないか。こうした可能性が出てきて、先ほどの少子高齢化の話と海外要因、この二つを併せると何が起きるかというと、日本の財政にとってみて、今後、歳入が、伸びるのは伸びるのでしょうが、歳入の伸びに対して歳出増の圧力がかかりやすくなる。相当いろいろな問題がこれから数十年間、継続される可能性がある。
ただし、いろいろな歳出が必要なことがあります。少子化対策、防衛もそうです。ということは、よりワイズ・スペンディング、従来とは違う次元の異なるワイズ・スペンディングが必要になる。ただし、ワイズ・スペンディングというのは、言うは易し行うは難し。これを行うためには、事後検証が必要なのですね。事後検証して、それによって、本当にコストパフォーマンス、コストベネフィットはどうだったかと分析をしていかないと、ワイズ・スペンディングというのは、これは言っただけで、言いっ放しで終わってしまいますので、どうしてもそこの検証というのは、この数十年間、じっくりやっていく必要があると思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。末澤節をもう少し聞いていたいところですが、気分を変えて、お話ししたいと思います。補正予算について考えるべきということや、経済政策や予算が正しい効果があるかという、そのPDCAサイクルを徹底して、効果検証しましょうということについては、もう既に何人もの方が言っていただいたので、私は2点に絞ってお話をします。
1点目は、海外投資家の観点です。17ページの最後のところに、海外投資家のことを含めて、市場からどう見られているかということを意識して、隙を見せない経済財政運営に努めていく必要があると書いていただいています。そのとおりですが、今、海外投資家は2パターンありまして、1パターンは、今年、春闘がうまくいったので、この数字を非常に大きな評価をして、日本は面白い投資先であると言っている人もいるのですが、片方では、金利がこれから上昇することが明らかで、タイミングを見計らっているだけ。しかも、財政はどう見ても大きな政府になりそうであるという雰囲気のある中、今こそ空売りをしたら日本国債はもうけられるというタイミングなのですよね。なので、どう考えても空売りをしたいと思う人たちが今、多いはずなので、割と、悠長ではなく、手だてを取る必要がある。
財政面から、日銀が金融政策は考えるということにして、財政政策のほうだけ考えられるとすると、やれることは二つ。一つは、使ったお金は確実に経済成長に結びつけますよということが確信できるということが1点。もう1点は、必ず財源があるということです。債務を膨張させないという確信が持てる。この二つがあれば、ある程度、財政からも空売りを防ぐことができると思っているのですが、それが果たしてできるかどうか。やっていかなければいけないのですがということが1点目です。
もう1点目が、発信についてです。私たちは、新しい委員の方、何人か来ていただきましたが、多くの人たちが再任になっているはずです。財政再建というのは財審でずっと言ってきたわけです。しかし、残念ながら、コロナがあったり、いろいろ説明はつきますが、事態はどんどん悪化している。なので、この会として言い続けることは重要ということがあるとしても、どう発信するか。これにはもう一段工夫が必要かなと思っています。ということで、何か新たなことが試みとしてやっていけたら良いなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、どうぞお願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今回は、今年度の財審のキックオフのタイミングです。分科会の会長も交代され、一部メンバーも入れ替わりましたので、事務局から示されたファクトも踏まえつつ、私自身の総論的な問題意識を述べたいと思います。
まず直視すべきは、日本が貧しくなったという厳然たる事実です。一人当たりのGDPの日本の国際的な順位の下落がそれを端的に物語っています。これはバブル崩壊後、投資や事業改革に取り組まず、国際競争力を失ってきた、我々、企業の責任であると思っています。しかしながら、財政出動に依存する一方、潜在成長率あるいは潜在成長力を引き上げるための構造改革を先送りしてきた政策運営にも責任があるとも思います。そこに、この数年の世界的なランドスケープの大きな変化が襲いかかり、このまま行けば、我が国は、人口減少と共に衰退への道をたどるしかないと思います。これを打開するには一刻の猶予もないというのが現在の姿であると思います。しからばどうするかということです。
経済財政運営の観点から考えると、以下のようなことではないかと思っています。
まず経済に関しては、冒頭、十倉会長からもモダン・サプライサイド・エコノミクスの話がありましたが、日本の潜在成長率を引き上げるために、必要かつ効果的な政策を重点的に実施すべきということです。その基本戦略は昨年5月に岸田政権が新しい資本主義の実行計画として打ち出した四つの柱に集約されていると思います。脱炭素のための技術開発やインフラ整備といった巨額の投資を必要とする分野における政府の関与が増していますが、これはこれまでの新自由主義的な政策からの転換という世界的な潮流に沿ったものでもあり、我が国も遅れをとってはならないと思います。また、日本の社会を見れば、将来への不安が人々を萎縮させ、ひいては、それが人口減少にもつながるという悪循環に陥っています。それに対処するためには、子育て環境の改善、公正かつ持続可能な社会保障制度の再設計、あるいは円滑な労働移動を可能にするシステムの整備が急務です。
一方、これを財政のサイドから見ると、そうした政策は大きな財政支出を伴いますが、それによって日本が経済力を回復し、経済が成長すれば税収が増え、財政も健全化されるというのが理想の姿であることは間違いありません。しかしながら、そうした予定調和的な期待がこれまで何度も裏切られてきたのも事実です。
何が足りなかったのか。既に何人もの皆様から指摘がありましたが、私は三つあると思っています。まず第1は、政策評価が機能していなかったということです。第2は、先ほど國部さんからグランドデザインの話がありましたが、戦略的かつ計画的な財政資源配分を行う動機と枠組みがなかったことです。第3は、客観的な将来への見通しが示されてこなかったことです。成長と財政の好循環を確かなものにするためには、財政運営面での仕組みづくり、すなわち財政制度の再設計が必要であると思います。
三つ、提案します。
一つ目は、政策の有効性、すなわち財政政策の生産性を高めるための政策評価、財政評価制度を再構築すべきということです。昨今、EBPMの重要性が認識されるとともに、昨年から内閣官房の行政事業レビューの改善が進められていることは良い流れです。
しかしながら、課題が二つあると思います。第1は、行政事業レビューは事業単位であるために細か過ぎて、政策テーマごとの包括的、かつ、省庁横断的な評価はできていません。必要なのは総合評価、プログラム評価です。第2に、総務省の行政評価局は、各省庁自身による一次評価をレビューする、いわば、セカンドラインディフェンスの立場にありますが、現在では、取りまとめの域を出ていないということです。これを解決するためには、現在の姿を見直して、外部の専門人材を起用し、より独立的かつレベルの高い総合評価を行う機能を立ち上げるべきです。その機能をどこに置くのかということはこれから議論すれば良いと思います。
二つ目は、財政の資源配分の全体最適化と予算の膨張に歯止めをかけるための中長期財政計画を策定すべきということです。これまでも我々財審は個別施策の精査に多くの時間を割いてきました。ただ、それだけでは明らかに限界があります。そうした観点から、第1に、先ほどからも御指摘のある、財政資源配分における優先順位を明らかにし、歳出歳入両面の全体最適化を図るために、第2に、補正予算の膨張を抑制する仕組みとして、3年ないし4年の中長期財政計画を内閣において策定し、財政ルールとして一定の拘束力を持たせることを検討すべきであると思います。イギリス、オランダ、スウェーデン、オーストラリアなどには、こうした支出総額を規定する中長期財政計画の事例が存在します。財審もそうした事例を今後の海外調査の対象としてはいかがでしょうか。
三つ目は、楽観的見通しに立った財政運営を回避するための仕組みを設けるべきということです。世の中、何が起こるか分からないというのが長年企業で活動してきた者の実感です。事業計画を立てるときには、もちろんチャレンジングでなければならないわけですが、一方で、ダウンサイドを抑えるのが常道です。先ほど小林さんからもありましたが、執行サイドから独立し、信頼性の高い中長期の見通しを示すことのできる専門家を中心とする機関を設置すべきであると思います。格付機関の見方については國部さんからもお話がありましたが、私がこの場で2月に申し上げたとおり、彼らが見ているのは、個別の指標もさることながら、トラジェクトリ、つまり将来の見通しや方向性、言葉を変えれば、我々の財政運営姿勢です。こうした仕組みづくり、あるいは、私が今申し上げた制度対応は、間違いなく彼らの信認を高めることにもつながるだろうと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、神子田委員。御発言はこれで最後にしたいと思います。では、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございます。事務方から詳細な御説明ありがとうございました。私は少子化対策についてお話ししたいと思うのですが、少子化対策というのはやはりこの国の在り方が問われている問題であると。どのようなことかといいますと、一つはやはり経済的な心配なく子供を産むことができる国は良い国であると思うのです。ただ、個人のレベルでは、決して国の財政、経済、あるいは社会保障のためにこどもが欲しいと思うわけではないと思いますので、そこは履き違えないようにしないといけないと思います。
もう一つは、この国をどうするかが問われているということで、人口減少で国全体が縮んで、経済的に二等国以下に陥っているのか。これは日本の企業の方々も問われている問題で、例えば国内のマーケットが縮小すれば海外の市場を開拓すればよいとか、日本に人材がいなかったら海外から優秀なのを連れてくれば良いのか。そうしたことでよいのかという、これは企業経営者の方が問われている問題でもあるかと思います。
もう一つ、少子化対策は命に関わる問題であると思うのです。そして、人口を急速に失うということは静かなる有事でもあると思います。スライド42で、コロナ以降の補正予算の数字があるのですが、ざっと足していくと140兆円ぐらいになっていました。これはコロナという命に関わる問題だからこそ、巨額の支出を受け入れたのであると思うのですが、少子化対策も新しい命を宿すことができるかどうかという、やはり命に関わる問題。コロナ対策に匹敵する相応のスケールの資金を手当てしてもおかしくない問題であると思います。
もう一つ、人口減少が静かなる有事ということで言えば、4分の1、人口が減るということは、4分の1、国土を失うようなそれだけの損失ではないかと思うのです。去年、安全保障であれだけの財源を確保できたわけですから、少子化対策も有事と捉えて、財源の確保に取り組んでいくべきであると思います。
財源の在り方ですが、今、社会保障ですとか、税ですとか、企業からの拠出金などの手段が言われております。社会保障に関しては、人口が増えれば社会保障も安定するので、こどものいない人も利益を受けるということで理解を得られやすいところもあるのではないかと思うのですが、ただ、社会保障も重要ですが、数年前に、こども保険というアイデアが出てきたときに、なぜ税でやらないのかという議論がありました。そのとき、政治家の方からの発言で、今、税を引き上げるというのは現実的ではないという発言がありましたが、私は、必要があれば、言葉を尽くして、その現実をあるべき方向へ変えていくというのが政治の役割ではないかと思います。ですから、防衛費の拡大と同様、やはり国民に丁寧に説明して、付加税方式でも、税率の引上げでも、とにかく税の負担も求めていくべきことであると思います。ただし、増税が景気を冷やして、結局、税収減を招いては元も子もないということで、そこは現実の経済と折り合いをつけながらやっていくべきであると思います。
最後に、企業の拠出金ですが、過去にも、最後、財源に困ったときは、企業、よろしくお願いしますというような、経済団体に訴えて、企業の方も、うちは国のお財布代わりではないのであるというようなこともありましたが、困ったときに企業をお財布代わりに使うという発想はよくないと思います。ただ、企業にとっても、企業が栄えて国が滅ぶということを望んでいる経営者もいないと思いますし、これは早い段階からお金のある企業を取り込みながら、全体の財源の構想を組み上げていくことが必要であると思います。
最後に、この財審で、先ほど歴史的な転換期というキャッチフレーズがありましたが、転換期と言う割には、今日出た話、PBを必ず達成しようとか、PDCAがどうとか、金利が上昇したら大変であるとか、ワイズ・スペンディングをやりましょうとか、大体この5年ぐらい同じ議論をしているなというのが今日の感想です。ただ、この5年間、決して止まっていたわけではなく、やはり私たちの議論によって徐々に世の中は進んできた、良いほうに進んできていると思いますので、私個人としても今年も財審の中と外でいろいろ発信していきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕オンラインで滝澤委員から希望があるようなので、滝澤委員お願いしますが、できるだけ簡潔に短くお願いします。
それでは、滝澤委員、どうぞ。
〔滝澤委員〕御指名ありがとうございます。時間のない中で発言させていただきます。
私は、47ページのGDPギャップの推移に注目しました。コロナ前を見ますと、GDPギャップが0%を超えていましたし、足もとマイナスでありながらも上昇トレンドがありますので、需給ギャップが解消しつつありますので、総需要刺激策を取ったとしても、すぐに供給力の天井に到達する状況では、伸びやかな経済成長を実現できない状況であると思います。そのため、より懸念すべきは、供給サイドである潜在成長力の低下であるように思います。
潜在成長力を上げるためには、やはり投資を増やしていく必要がありまして、効率的な生産が実現できるような体制が構築されるべきで、そのための資金を出し惜しむべきではないと思います。日本においては、道路とか港湾、空港、電力事業、通信事業といったインフラを魅力的なものにすることで、日本企業のみならず、海外企業が立地選択する際に日本を候補にする可能性を高めますので、対内直接投資が期待できるかもしれません。
また、予算制約が厳しい中で、政府は何にどのくらい資金を投入すべきか慎重に検討すべきですが、国民の理解を得て、廃止されるようなインフラも出てくるかもしれませんが、それを許容して、生産性が期待される交通インフラとか、行政サービスに係る投資への予算を確保するべきと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは、今日の委員の御発言はここまでとして、また、御質問等も若干ございました。事務方から何か回答できることについてお願いいたします。
〔松本調査課長〕本日は、皆様、貴重な御意見ありがとうございました。藤谷委員から、過去の施策の検証についてどのようなことになっているのか。あるいは今回の新しい資本主義の政策が本当に効果が上がるということは根拠があるのかといった厳しい御指摘をいただいております。ほかの委員の方々からも、PDCAサイクルの取組、まだまだ足りないのではないかという御指摘をいただいていたと思います。
現状を申し上げますと、51ページの資料のとおり、これは2月の審議会の場でも少し詳しく御紹介しましたが、行政事業レビューシートにおいて、まずきちんとアウトカム目標を定めていく。これもなかなか予算全体に使える形で目標を定めて、それを事業で検証できるように、御指摘あったとおり、データもきちんと取りながらやっていこうということ。ただ、なかなか実務的には各省を巻き込みながらやっていくということで、担当でも苦労しながら進めているところでございますが、正直申し上げて、まだ取組途上という面はあろうかと思います。また、事業単位だけではなくて、もう少し大きな固まりでやらないと意味がないではないかという平野委員の御指摘もそのとおりかとも思っておりまして、藤谷委員の御指摘とも通じるところがあるのだろうと思っております。
中長期試算の見通しの検証、これも諮問会議でも相当御議論も、民間議員ペーパーでも御指摘があるというようにも承知しておりますが、これも本日の御議論も踏まえて、中長期試算に関しては内閣府の担当ですが、政府としても、つかさ、つかさできちんと検討していくべき話であると思っております。
中途半端なお答えで、現時点では御容赦いただければと思います。
〔増田分科会長代理〕それでは、よろしいですか。
それでは、最後に、会長からまた一言お願いいたします。
〔十倉分科会長〕活発に議論いただき、どうもありがとうございます。大変参考になる意見ばかりで、本当にありがとうございました。お話を聞いていて改めて思いましたが、私ども経団連、ならびに経済財政諮問会議でも言っていますが、やはり「ダイナミックな経済財政運営」をやらねばならないということを痛感いたしました。限られた厳しい財政状況の中でメリハリを付けてやらなければいけないのですが、ワイズ・スペンディングを唱えていれば免罪符となるような議論になってはいけないということでして、本当にバラマキではなくて、乗数効果が明確な投資をきちんと優先順位をつけてやらなければいけない。そして、財源というのは、やはり基本的な問題であればあるほど、安定財源をきちんと見つけなければいけないという思いを強くいたしました。
「経済あっての財政」というスタンスの下、財政の健全化について引き続き皆様方から御意見をいただきながら、この両方を追い求めていきたいと思います。どうも今日はありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕会長、ありがとうございました。
以上で本日の議題は終了といたしますが、会議の内容については、この後、記者会見で御紹介いたします。詳細については、後日、委員の皆様に御確認の上、議事録を公開させていただきます。それまでは、会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者にお話をすることのないよう、よろしくお願いいたします。
次回の日程は追って事務局から連絡させていただきます。
本日は、以上でございまして、これで閉会とさせていただきます。
午前10時45分閉会