財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和4年10月28日(金)9:20~11:30
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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有識者ヒアリング
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「日本の防衛政策の課題」
-神保謙慶應義塾大学教授 -
「日本の安全保障環境と防衛力整備の方向」
-河野克俊前統合幕僚長(三菱重工業株式会社顧問)
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防衛力について
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3.閉会
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分科会長 |
榊原定征 |
宮本大臣政務官 金子大臣政務官 茶谷事務次官 青木大臣官房長 新川主計局長 寺岡次長 中村次長 前田次長 八幡総務課長 小野主計企画官 大久保司計課長 渡邉法規課長 松本調査課長 一松主計官 三原主計官 佐久間主計官 有利主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 大沢主計官 端本主計官 河口主計官 坂本主計官 渡辺主計官 内之倉主計監査官 山岸予算執行企画室長 鈴木主計企画官 園田公会計室長 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 安永竜夫 芳野友子 |
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臨時委員 |
秋池玲子 宇南山卓 河村小百合 喜多恒雄 木村旬 熊谷亮丸 小林慶一郎 小林毅 末澤豪謙 角和夫 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 平野信行 福田慎一 別所俊一郎 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午前9時20分開会
〔増田分科会長代理〕時間がまいりましたので、間もなく会議を始めますが、本日は冒頭からカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日は、冒頭から宮本大臣政務官、金子大臣政務官にお越しいただいております。どうもありがとうございます。
本日の議題は防衛です。そして有識者ヒアリングも実施いたします。本日、有識者として、神保謙慶應義塾大学教授、河野克俊前統合幕僚長からお話をお伺いいたします。御多忙のところ誠にありがとうございます。
なお、河野様は後ほどお越しいただく予定となっております。
それでは、報道関係の方、御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、有識者ヒアリングに移りたいと思います。皆様のお手元にお二人からいただいた御説明資料を配付しておりますので、御確認いただきたいと思います。
なお、お二人の御説明内容に対する委員の皆様方の質問事項につきましては、事前にいただいておりますので、後ほど、私から、まず、代表して御質問させていただきます。そしてその後、皆様方からの通常の質疑という形にいたします。
それでは、神保様、御説明どうぞよろしくお願いいたします。
〔神保講師〕御紹介いただきました慶應義塾大学の神保と申します。本日は大変貴重な会合にお招きいただきましたこと、委員の皆様、御出席の皆様に感謝申し上げたいと思います。
私からは、「日本の防衛政策の課題」ということで資料を準備いたしました。年末にかけて、国家安全保障戦略を中心とする防衛関連3文書の改定が予定されておりまして、現在、政府部内では活発な議論が展開されていると理解しております。
もちろん、私自身はその議論の中身をつぶさに存じ上げているわけではないのですが、あくまでも専門家という立場の中で、昨今日本が置かれた安全保障環境が、どのような特徴を持つもので、その中で防衛力の整備、また、日米同盟を中心とする国際連携の在り方、そして防衛を支える産業基盤の在り方が、どのようなものであるべきかという形で、私見を準備いたしました。委員の皆様の参考になれば幸いと考えております。
それでは、進めさせていただきます。
まず、日本を取り巻く安全保障環境で何に着目するべきなのかを1枚目にまとめてございます。
これまでの前提はどのようなものだったかというと、それは戦後長らく、アメリカが日本との安全保障条約を1951年から60年に改定して、ずっと続けているわけですが、同盟国であるアメリカが日本の周辺国に対して圧倒的な軍事的な優位を持っていたということでございます。
また、日本の防衛力整備も戦後続けられてきまして、基本的に、ソ連、ロシアを除いて考えるとですが、日本を取り巻く国々に対して、日本の防衛力もまた優位な状況が続いていたということでございます。
つまり、戦略的な優位性と戦域、つまり、より短いレンジのということですが、日本との2国間関係における優位性という、二つの優位性が、実は日本の戦略をつくっておくときの、長らく前提だったということであると思います。
ところが、今日その前提が大きく変化しております。現在の前提は、中国の接近阻止・地域拒否、A2/ADと呼ばれる環境ですが、これは、基本的にはアメリカが中国の近接領域に兵力を展開させて戦うということを、大幅にコストを増大させる能力と言って良いと思いますが、これが拡大しているということで、それによって米軍の前方展開能力及び戦力投射能力の優位性が必ずしも自明ではないという前提を考えなければいけないということであると思います。
二つ目に、日中の軍事バランスに関しては、既に現在の防衛大綱、これは2018年12月にできたものですが、その中でも、日本の自衛隊は、常に、航空及び海上優勢を確保できるとは言えないということを前提に書かれています。今般書かれる文章においては、さらに厳しい戦力、戦略環境の分析になるのだろうと思いますが、その中でも、日本は、いわゆる低強度、これは離島とか尖閣諸島防衛や、東シナ海におけるいわゆるグレーゾーンの脅威と言われているものですが、こうした脅威に対抗するような自立的な能力を拡大させると同時に、より中及び高強度の紛争に対しても、この能力を適合させていくという課題を捉えなければいけないということであると思います。こうした複合的な脅威に対抗するために、平時から有事までのあらゆる段階で日本の、ローエンドで言えば法執行能力の強化、ハイエンドで言えば防衛力の拡充や日米同盟での共同対処をシームレスに可能とするような実効的な防衛態勢を構築する必要があるというのが前提ということでございます。
以下に書いてある国防費の推移は、主に、北方にあるSIPRIが出しているアニュアルレポートで、各国の防衛費を、これはカレントベースのドルで出しているものですが、このような推移になっているところにも、ぜひ皆様の御着目を頂ければと思います。
例えば、米中がどのぐらい接近しているのかを見ると、大体、中国の国防費は、2000年代の初めには大きく引き離されていたわけですが、これが比率としては徐々に近寄ってくる構図にあるということです。大体アメリカの60%ぐらいまで、2030年になると迫ってくるというのが、中国の国防費の考え方となります。
着目していただきたいのは、中国と日本との関係です。ここには書いてありませんが、2005年にドルベースの中国の国防費と日本の防衛費は大体一緒だったということです。それが僅か5年後には1対2に開き、2030年になると1対10、1対9ぐらいの段階で拡大するという、つまり、日中間の国防力の変化は、ものすごいスピードでギャップが拡大しているということであると思います。したがって、よく米中対立の中で、アメリカの戦略をどう転換するかが議論されるわけですが、アメリカが中国の戦略を展開するのとは、まるで次元の違う形で、実は日本は中国との関係をより積極的に規定していかなければいけないというのが、こうした数字から読み取らなければいけない戦略の変更の必要性、ということになるのだろうと思います。
2番に入っていただきますと、現大綱における「多次元統合防衛力」の考え方は、基本的には継続すべきであると考えておりますが、2ページ目に行っていただきますと、やはり、こうした優先順位や資源配分、運用態勢というのは不断に再構成するべきであると考えております。
具体的には、この統合運用を前提としながら、以下のような事項を重視するべきではないかと、個人的には考えております。
陸上自衛隊に関しましては、高い機動力と即応能力を重視して、特に南西方面への機動展開能力、これはエアー・シーカバー能力を伴うというのは、つまり有事にしっかりと行動を発揮できるような態勢を整えていくこととともに、様々な他用途の任務に対応できるような組織改編を同時に整えて、かつ、陸上配備型の、後ほど議論になりますような、長射程の火力、対艦・対空ミサイルを強化するという方向性が望ましいと思います。
航空自衛隊に関しましては、主要作戦空域における航空優勢を、やはり航空優勢を獲得するという状態が厳しい情勢に置きながらも、しっかりと獲得・維持のための努力はしてほしいと思います。ただし、高強度事態への備えとして、航空基地への抗堪性の強化、例えばミサイルが撃ち込まれたら滑走路が全然使えませんというような状況ではなくて、しっかりと抗堪性を強化して、有事においても、その機能が担保できるような様々な能力を拡張すると同時に、有人機だけではなくて、これからは無人機も大幅に増勢して、特に警戒監視能力のようなリダンダントなミッションを強化していくというものは大変重要であろうと思います。全てのリダンダンシーのあるミッションを、非常に高価な戦闘機を常に運用してやるということを、できれば無人機であったり、あるいはより簡素な形での航空機による代替のようなことを通して、より重要なミッションに高性能の戦闘機を充てていくといった仕分は大変重要であろうと考えております。
海上自衛隊に関しましても、このような情勢になってくると、やはり中国と艦船の数を比べて、そこにバランスを取っていくという考え方では、もはや通用しないと思っていまして、そこにはやはり、中国の作戦遂行能力を積極的に拒否できる能力とは何かを中心に考えていく必要があるだろうと思います。そうやって考えてみると、例えば船体のコンパクト、多機能化を果たしたような、新たな護衛艦隊のようなものを重視したり、沿岸戦闘機能のようなものを重視することによって、中国が仮に台湾を占領しようとしても、あるいは尖閣に迫ってきても、そうした作戦能力を効果的に拒否するといった能力の中で整備を進めていくことが重要であろうと思います。
また、総合ミサイル防衛能力は引き続き重要でございまして、日本を取り巻く環境において、中国、北朝鮮、ロシアが、それぞれ日本を射程に収めるミサイル能力を強化しております。大変心配なことに、それぞれの国がやはり核戦力をより使いやすい戦力として位置づけていることも大変重要であるということを考えると、やはり日本が、そのような脅威に対して強靱であるという状況をつくるためには、仮にミサイルが配備されたとしても、それがしっかり撃ち落とせる能力を内外に示していくことが大変重要になると思います。ただし、日本を取り巻くミサイルの種類は、これからどんどん増えていきますし、ミサイルを撃たれ方、運用のされ方も多様になっていくということで、従来のPAC-3、SM-3を中心とするレイヤードディフェンスにくわえて、あらゆる経空脅威、例えばその中には巡航ミサイル、変則軌道のミサイルや極超音速のミサイルといった、多種多様なミサイルがあるわけですが、これに対する防衛能力を拡充していくことは大変重要であろうと考えているわけでございます。
また、3番目、先端技術の軍事分野での応用と研究開発を考えていただくと、現在2022年ですが、2020年代の国際安全保障環境と、30年代、40年代というのは、脅威の性質も、また、それに対抗する戦い方も、その技術の変化に応じて革新を果たしていかなければいけない。仮にゲームチェンジングな技術を、想定する相手に取られてしまった場合に、戦略環境が一変してこちら側に不利になることは十分考えられるわけでありまして、常に新しい技術の導入に関しては、想定する相手よりも一歩先に行くような形で技術革新を進めていかなければいけないということであると思います。
その際に重視すべき幾つかの技術分野は、例えば無人化システム、ロボティクス、そして、極超音速のシステムや高出力エネルギー、そして、これはタイムラインとしては少し後になりますが、量子技術、量子コンピューティングを使った軍事技術への応用が大変重要なポイントになってくるということであると思います。こうした分野において、日本の産業基盤・技術開発を、タイムラインの変化に応じてしっかりと整備していくというのは大変重要であると思います。特に日本はこれから少子化ということで、自衛隊の、例えば人員の獲得や充足率が大幅に改善するという見通しが十分持てない中で、やはり技術によって多くのものを代替していくという考え方は、日本の戦略環境にとっても大変重要だろうと感じているわけでございます。
次に、3ページ目の4に進ませていただきます。
日本の防衛は日本の防衛力、自衛隊のみで完結するわけではなくて、特に日本が強靱な関係を持つ日米同盟の機能を強化していくというのは、日本の防衛戦略にとっての基盤的な考え方であると考えております。ただし、先ほど申し上げたように、アメリカが、例えば中国に対応する際にA2/AD環境の拡大によって、必ずしも中国に対して、その戦域内で戦い抜くということが自明と考えることに対する挑戦が広がっていることは、大変重要なポイントになると思います。ただし、そのような環境においてもしっかりとアメリカが、戦域内作戦アクセスと言いますが、戦域の中で戦い抜ける環境を日米がともに整備していくというのは、大変重要なポイントであると考えております。そのためには、日米の共同作戦の領域を、よりハイエンド領域、必ずしも低烈度のものに対する日米共同ということではなくて、ハイエンド領域にも拡大できるということと同時に、仮に、例えば中国が日本の在日米軍基地や自衛隊の基地に対して攻撃を仕掛けてきたとしても、それがしっかりと強靱な装備、装備体系というか施設区域の強靱性によって、戦闘能力が維持継続できる環境を整えることは、極めて重要であると考えているところでございます。
また、非常に重要な現在の安全保障環境において、特に防衛力整備において掲げられている項目が、日本の長射程の攻撃能力の保有ということでございます。ここにはいろいろな考え方がございますが、既に現大綱の中でも長射程の攻撃能力はビルトインされているというのが前提でございます。現大綱の中では、これはスタンド・オフ防衛という考え方ですが、今の考え方は、いわゆる脅威圏外からでも攻撃プラットフォームがしっかりと残存していて、そこから、例えば離島防衛や、様々なところに遠くから撃ち込むことができるという形で位置づけられているわけです。しかし、これだけ厳しい安保環境になってくると、より長射程環境を日本の遠くにいる相手に対しても撃ち込める能力が大変重要になってきまして、特に洋上戦略としての対艦攻撃、そして例えば揚陸艦を使った台湾に対する侵攻作戦が仮にあるとすれば、それを踏まえた形で、アメリカの攻撃アセットだけではなくて、日本のアセットもそれに対して攻撃し得る能力を持っているということが、どれだけ中国の人民解放軍にとって、彼らにとっての作戦計画を複雑化させる能力を持つかというところを重視した、日本のアセットの整備が大事になってくるということであると思います。こうした攻撃能力は当然、中国の地上固定目標に対しても、精密誘導攻撃が行えるということにしておくと、紛争の初期段階から中期段階において、やはり中国がこれほど多くの攻撃をされるということを前提に作戦を考えていかなければいけないのだなという形のコストを、日本の装備が付加することができるというのが、ここでの大変重要な考え方ではないかと思っているところでございます。
最後に、5、6で、もう時間が迫ってまいりますので、6番と7番を中心に申し上げて結論とさせていただければと思います。
こうした、これから2030年代を踏まえたタイムラインの中で、しっかりと防衛力整備を進め、また、新たな技術基盤を整えていくためには、日本自身の防衛技術の基盤の拡充、国際共同研究や防衛装備を海外に移転していく制度をつくっていくことは大変重要でございます。特に、防衛技術基盤の強化・技術イノベーションを加速する仕組みの構築、そして、下にも書いてありますとおり、2014年に「防衛装備移転三原則」をつくって、比較的日本はこうした防衛装備移転の法的な基盤を整えてきたわけですが、必ずしも成功例が多いわけではないということでございます。成功例がなぜ多くないのかということは、政府の中でしっかりと整理をして、今後の成功例をつくっていくことが重要ではないかと思います。
最後に、防衛費に関することでございまして、今委員会の中心的な関心事項であると思います。
一つは、防衛力の抜本的強化に向けた財政基盤を整えることは大変重要でありまして、既にこれは日米首脳共同声明の中でも、防衛力の抜本的な強化と、その裏づけとなる防衛費の相当な増額は、言わば国際公約になっているということでございます。特に政府・防衛省が掲げております実効的な防衛力の確保、ここに書いてある7項目ですが、これに対して重点的な配分をすることは重要であると同時に、先ほど申し上げましたとおり、これからの技術革新のタイムラインに合わせた研究開発への投資と防衛産業・技術基盤の確保を、日本の防衛構想に適合する形で整備していくことが重要であろうと思います。
最後に、とは言っても我々は無尽蔵に財政基盤があるわけではないので、常にこれを最適化していくという努力は大事だろうと思います。特に戦略的な防衛力整備のための自衛隊の組織改編、戦力組成の最適化、そして、装備体系の最適化、特にレガシー装備体系を積極的に見直していき、優先順位の明確化、事業に関する見直しを積極的に行っていく、仕様の共通化・最適化、調達の効率化、長期契約の活用を通じて、しっかりと支出管理をしていく。さらには、様々な形でこれまで共同開発を通じて、開発費が高騰することが起きていたわけですが、こうしたことをしっかりとプロジェクトマネジメントの中で、リスクの低減をしていく。そして、安全保障上の優先度を踏まえて、研究開発を何でもやるというわけではなくて、この中で重点化していく、そしてこれまでアメリカの国防産業が取り入れているような研究開発プロセスも、スパイラル方式、ブロック化、モジュール化といった様々な、いわゆるプロジェクトイノベーションというものの成果が過去20年ぐらいあるわけですが、こうしたものを日本の産官で取り入れて、最適化を果たしていくということ、不断の努力によって取り入れていくというのが、同時に必要な我々の作業ではないかと感じております。
以上で私からの問題提起を終わりにします。どうもありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕神保様、どうもありがとうございました。
それでは、ここで委員を代表して私から先に4点、御質問させていただきますので、簡潔にお答えいただければと思います。
4問は次のとおりでございます。1問目、我が国の周辺国の軍事活動が活発化し、サイバー、宇宙、電磁波を含め戦い方も変化している中で、5年以内に防衛力を抜本的に強化する必要性はよく理解いたしますが、目前の脅威を抑止する観点から、現状の日本の防衛力、防衛体制に具体的に欠けているものがあるとすれば、それは何でしょうか。今後5年間で優先的に強化すべき分野、逆に優先度が劣る分野は何でしょうか、1問目です。
2問目、我が国の防衛産業技術や産業基盤を持続的に維持発展させるための、最大の課題は何であり、それをいかに解決すべきでしょうか。装備品移転による市場の拡大、少量多種の開発・生産の在り方や、事業者が負担を感じる調達慣行を改めるといった施策を取ることは考えられるでしょうか。
3問目は以下です。実効的かつ効率的な予算を策定するため、防衛省において費用対効果や優先順位はどのように議論されているとお考えでしょうか。秘匿性が高く、国民からは中身が見えにくい中で、納税者をはじめとする国民への説明責任をどのように果たすことができるのでしょうか。
4問目、防衛費の効果を最大化させる観点から、新戦力の配備と併せて既存戦力のスクラップ・アンド・ビルドをセットで進めていく余地はどの程度あり、それを進める上でのネックは何でしょうか。各国において、戦略戦術に即した防衛体制への見直し、新たな戦闘領域の強化が進められている中で、陸上自衛隊をはじめとして、定員の在り方についてどのようにお考えでしょうか。
以上、4点でございます。神保様、よろしくお願いいたします。
〔神保講師〕ありがとうございます。
どの質問も、河野統幕長の横でお話しするのは大変胃が痛い状況にあるわけですが、私見として述べさせていただきます。
まず、目前の脅威、今後5年間の防衛力整備の中で、何を重視しなければいけないのか、特に欠けていること、日本が仮に優勢であると、比較優位性があるというところであればそれはどこなのかという御質問でございます。
特にこの5年間の中で重視すべき内容というのは幾つかあると思うのですが、二つは、目前のことを言うならば、やはり、自衛隊が実際の脅威に対して、ウォーファイティング能力と言いますが、しっかりと戦って、それを継続していける能力はぜひ重点的に整備をしていただきたいと思います。
特に、今回のウクライナ戦争を見ても、どれだけの長期間にわたって継戦能力を維持できるのかということに関しては、戦況をしっかりと打開し、そしてしっかりと停戦に導くための能力として、決定的に重要ということになります。
日本の防衛力の整備において、戦いを継続させるということに関しては、ぜひ重点的に手当てをすべき領域ではないかと思っております。
また、相手もまた戦力がどんどん向上していくという中で、やはりこれまでのような形で日本の専守防衛の考え方の中から、例えば着上陸侵攻のような比較的近接領域で防衛していくという考え方から、より広域の、戦略重心性を遠方に取った形で攻撃を仕掛けていくことによって、日本の防衛に多重的な地形、地理の概念を持ち込んで、そしてしっかりと防衛力を整備していくというジオグラフィーの拡大というのですか、それを防衛力整備の中にしっかりと組み込むということは、大変重要な考え方であろうと思っているわけでございます。
日本の、いろいろ中国に対して厳しい環境にあるということは申し上げて、特に海上・航空優勢を常に維持するというものが難しいと申し上げたのですが、その中でも比較的日本が優勢を維持している分野は、潜水艦を中心とする海中、海の中の能力であろうと思います。この能力は優位が保たれているということを重視して、しっかりと戦力整備をしながら、相手に対してどのような形でコストをかけていくことができるかということは、我々の優位性を維持していくという点で大変重要だろうと思っています。
2番目の産業基盤に関しましては、もちろん、完全な解はないということであると思いますが、防衛生産基盤の強化を、例えばアメリカやNATO諸国のような、ライクマインデッドな国々との共同研究開発の拡充を通じて、しっかりと技術の研究開発における基盤を、多くの国々の企業とともに拡大していくことは、開発コストをお互いにシェアしていくという点からも重要であろうと思いますし、そこに出来上がった完成品、あるいは部品も含めてですが、それが多くのライク・マインデッド・ステーツに対して提供できるという体制を整えていくことによって、防衛産業から見ると、はるかに広い市場の中で全体のサイクルを考えていける。今のところ非常に、我々は中期防で決められた領域に対して、それに生産をやっていくという、非常に計画経済的な発想で防衛産業は成り立ってきたと思いますが、そこにより競争的な観点を入れて、新しい市場を競争的に獲得していく、多くの友好国に対して部品も提供していくということになれば、日本の防衛産業も、より活発な形で防衛産業を位置づけていくことができるのではないかと思います。
実効的な技術基盤をどのように整えていくのかということにおいては、1番とかなり重なり合うところがあると思います。先ほど申し上げましたように、4番の質問と重ねて答えたと思いますが、やはりこれまで、例えば防衛費をどのぐらいの水準にするか、あるいは防衛省が定めた7項目をどのように満たしていくのかということは、当然、新聞記事にも出ましたし、国民にも徐々に浸透している考え方であると思うのですが、その基盤となっている日本の防衛戦略は一体何なのか。2020年、30年に向けて、一体我々は、どのような脅威に、どのような防衛力整備をすると、国民の安全安心を保つことができるのか、こうしたコンセンサスの形成の下に、なるほど、だからこれほどの予算を使わなければいけないのかということが位置づけられれば、政府一体また、国民と一体となって防衛力整備に進めていけるのではないかと思います。
ですから、既存の、例えば個々の装備品をどのように導入するか、そのために幾らかかるのかという具体的な話もさることながら、全体の防衛戦略に対する深い理解と、国民の納得の基盤を整備することが、何よりも大事なのではないかと感じているところでございます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、河野様から御説明を頂戴いたしたいと思います。
河野様、どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔河野講師〕よろしくお願いいたします。河野と申します。自衛隊におきましては、最後、統合幕僚長を務めておりました。
今日は、まず、今後の防衛力整備をする上において、やはり気になる世界情勢、特に西太平洋情勢、台湾海峡危機というのが今一番焦点が当たっていると思いますので、まず、これについて、海洋戦略の観点から私なりの見解を述べさせていただいて、御意見を頂ければと思います。
まず、地図を出していただけますか。まず、この地図ですが、今画面に出ていると思いますが、これは最近よく出回っている地図であると思います。いわゆる逆さ地図というやつですが、冷戦中は米ソの対立でしたから、したがって、主戦場というのは、やはりヨーロッパ大陸でした。ベルリンの壁を挟んで、ソ連を中心としたワルシャワ条約機構軍、アメリカを中心としたNATO、これが対峙するということです。
日本も冷戦中は極東ソ連軍と対峙していましたが、世界地図という観点からいくと、極東はやはり第2戦線、第3戦線です。ヨーロッパが第1戦線でした。
ところが、時代が移り変わって、今後は米中対立が予想される時代になったときに、要するに、今後の主戦場というか、米中対立の舞台というのは、やはり太平洋ということになってくるわけです。
したがって、下の地図ですが、これは中国から太平洋を見たという地図ですが、恐らく毛沢東、鄧小平、江沢民、あの辺りはこんな地図は頭になかったと思います。というのは、そのときの構図は、大ざっぱに言いますと中国はアメリカと組んで、ソ連に対峙するという構図でした。なおかつ、鄧小平については、韜光養晦、頭を下げとけと。それで、アメリカとは事を構えるなというのが鄧小平だったのです。したがって、アメリカを向くということはなかったわけですが、今の中国は、経済発展に伴って海洋進出する、なおかつ、習近平総書記のキャッチフレーズは、海洋強国です。海洋に強い国を目指している。そして、今後アメリカとの対決が予想されるとなった場合、習近平指導部は、こうした地図を見ながら戦略を立てていくことになります。当然のことながら、米中対立の、米ソ対立の正面、西側の正面に立っていたのは西ドイツですが、米中対立ということになりますと、この地図でお分かりのとおり日本ということになってくるわけです。
今度は上の地図をお願いします。
それで、鄧小平は改革・開放路線を1980年代の最初に号令をかけて、今や世界第2位の経済大国になったわけですが、併せて、海軍力の増強を命じました。その結果、今、空母については4隻と言われております。それから戦略原子力潜水艦、中国版イージス艦、台湾を対象としている強襲揚陸艦、あと戦闘機、爆撃機ですね。今、数の上ではアメリカ海軍を凌駕したとされておりまして、さらに、軍事バランスが中国に有利に傾くであろうという予測が大きく主流を占めている状況です。
それで、アメリカと対決する場合の、中国海軍の戦略とされているのは、この地図に示されているもので、これも見られたことがあると思いますが、おさらいをしますと、第1列島線は、ですから、日本列島、南西諸島、台湾の外側を通ってフィリピンから南に伸びる線です。ここは、アメリカと対立する場合、アメリカと事を構える場合、緊張状態が走ったならば、この内側は、中国は絶対的に自分たちの排他的な水域にすると言っております。それは中国本土を守るためのバッファーでもあります。
A2/ADということがよく言われますが、それは簡単に言えば、この中には入れませんよという話です。
第1列島線と第2列島線ですが、もし不幸にして米中戦うとなれば、アメリカの太平洋艦隊が接近してくるであろう。それを第1と第2でやる。中国から言わせると、打撃するということです。
その際によく言われているのが中距離ミサイルでありまして、今回北朝鮮が撃ったようなミサイル、いわゆるグアムを射程に入れるようなもの。これを2,000発、中国が持っていると言われておりまして、それはこの第1第2の間で使用するということになっております。グアムを狙うグアムキラー、空母を狙う空母キラーと言われております。それに対抗するアメリカの中距離ミサイルは、INF条約の結果、今ゼロです。ただ、トランプ大統領はINF条約を破棄しましたので、今アメリカはこの研究開発に着手して、間もなく実戦配備になるであろうと言われております。
それで、台湾の位置づけですが、このようにアメリカと今後、緊張あるいは対立、あるいは事を構えるということになれば、第1列島線の中は、今言いましたとおり、態勢を固めておかないといけない、中国としては。そうなるときに、中国としてコントロールできていなかった、もしくはできていない箇所が三つありまして、それは、香港、台湾、尖閣ということになります。香港は、御承知のとおり一国二制度50年で中国に返還されたわけですが、今や、そのときは鄧小平がサッチャーに約束しているわけですが、鄧小平は心底、一国二制度50年ということをサッチャーに約束したと思います。ただ、今の中国は、鄧小平が想像する以上の中国になってしまった、いわゆる海洋進出する中国、経済大国の中国、アメリカと事を構えるような中国、こうしたことになってしまったということです。
となると、鄧小平はそう約束しましたが、今の習近平政権にとっては、今、何かあったら騒ぎまくる香港は絶対許容できないということです。したがって、御承知のとおり抑えた。あとは、台湾と尖閣ということになります。
こうなりますと、もしくは、この状況でアメリカと緊張状態になったときに、中国としては戦えないわけです。喉元にあいくちを突きつけられると一緒ですから。逆に、日米にとっては、これは出城のような形になる、非常に重要です。
ですので、ここで私、結論だけ申し上げたいのは、台湾問題、台湾海峡危機というのを、米中対立のクライマックスとして捉える向きが結構あると思います。これはクライマックスではなくて、今後、中長期にわたる米中対立を中国として生き抜くためには、解決しておかなければならない問題であるということです。
ですので、今回の共産党大会でも非常に強調していますし、ブリンケン国務長官が最近、中国がずっと早い時期の統一を追求する決断をしたと断定しています。やはり、そうしたいろいろな背景があると思います。これを踏まえて、日本は今後防衛力整備をやっていかなければいかんということであると思います。
地図は結構です。
それで、やはり日本としては、ウクライナの悲劇を見るにつけ、ウクライナと違うのは、日本は海洋国家、海という舞台があるということです。したがって、やはり海でもって侵略を防ぐというのは第一義的に考えるべきであると思っております。
今後重視すべき防衛力としてですが、よく、自衛隊は世界で何番目に強いのですかという質問を受けることがあります。その場合、私は答えに窮するわけです。
なぜならば、自衛隊は、憲法9条ということもこれあり、攻撃力については、もう制限に制限をかけて、防衛力を整備したのです。普通の軍隊というのは攻撃力、防衛力両方持っているのが普通の軍隊です。したがって、防御力とされる潜水艦をやっつける対潜戦であるとか、爆発物を処理する掃海、海の機雷を掃海する、これは私たち世界一であると思います。ぐらい強いです。ただし、今言ったようにやり先の長いやつについては一切ない、攻撃力はない。これは、日本はアメリカに全面的にお願いしますとしていたのです。しかし、圧倒的にアメリカが強く、日本がこうした状況であれば、アメリカは俺に任せろという話ですが、もうそうしたアメリカではなくなってきているわけです。ですから、アメリカ抜きでだったら日本は全く戦えませんという状況は、やはり考え直す必要があるのではないか。
よく、これを持たせれば使うから、はなから持たせないという議論があると思います。長射程のミサイルも、自衛隊に持たせたら危ないと。この議論は、もう卒業すべきであると思います。要するに、手段を持っていないということは、そうした状況になったときは、お手上げということになりますから。
例えば、敵基地攻撃をやるやらないというのは、極めて高度な政治判断が要ります。もしくは、これで政治的に許容できないということであれば、それは政治がストップをかければ良いわけです。はなから持っていなかったら、もうお手上げとなります。ですから、ここは避けるべきではないかと思います。
二つ目が、いわゆる継戦能力です。私が現役時代というか30代ぐらいのときに、防衛力整備を担当していたのですが、そのときに先輩から言われた防衛力整備の教えというのがありまして、平時、何もないときは、まずは、飛行機であるとか潜水艦であるとか護衛艦であるとか、これは正面装備と言いますが、正面装備をまずやれと。そして、緊張状態になったときに、弾とかミサイルに手をつけろという教えを受けました。
それは、やはり防衛費は限りがあるので、どこに優先順位をつけるかということです。だから正面装備が、例えば護衛艦であれば、予算を取って、出てくるまでに5年間かかります。さらに戦力化するのであると1、2年かかります。7年、8年のスパンで見なくてはいけないです。したがって、ここはやはり、平時のときはそこに手をつけて、そして緊張が高まったときには、継戦能力に重点を置けという、それは防衛予算が制限をされているという前提です。今申し上げたとおり、台湾海峡についても、習近平政権にとっては、そうそう悠長な話では、私は少なくともないと思います。ですから、今後防衛力がどれだけ伸びるかと、政治的には決められると思いますが、そろそろ継戦能力に重点を移す、まさにその時期に来たということであると思います。
三つ目ですが、今、非常に厳しい防衛予算でやってきたもので、重点をやはり正面装備に置いてきた問題が、どこにしわ寄せが来たかというと、継戦能力とともに整備、修理能力です。例えば、護衛艦であれば半年に1回、あるいは1年に1回、そして4年に1回オーバーホールをやりますが、私が今聞いているところでは、オーバーホールの期間もやはり5年に延ばすとか、あるいは、修理期間も、予算を節減するために短くするとか、点検項目も短くするとかというようなことで、整備、修理がやはりしわ寄せが来ている。ということは、どのようなことになるかといいますと、稼働率が下がってくる傾向にあるわけです。ウクライナで、キーウの郊外で戦車が動かない状態になったと思いますが、あれほど惨めなことはないわけです。持っていても、動かなければ意味がないわけです。ですから、ある意味、稼働率を上げるということは、防衛力を強化するのと一緒ですから、そうした考え方もやはり必要であると思います。
また、研究開発です。今、国の全体の研究開発は4兆円と聞いておりますが、防衛関係は2,000億ぐらいだったと記憶しておりますが、やはり研究開発を、極端にいえば失敗しても良いから、とにかくやるということ、予算をつぎ込む、あるいは、軍民一体です、技術というのは。やはり、そうした国全体として防衛関係の研究開発を位置づけて、そして、どんとお金を出して、失敗しても良いからやってくれというような話で、防衛産業を育成する。失敗は絶対許さないなどという話になれば、やはり、発想は非常に貧弱になってくるわけです。ですから、そのような観点も踏まえて、やはりここは、これは防衛産業を育成するという観点も踏まえて、研究開発は必要であると思っております。
宇宙・サイバー・電磁波ですが、これは今の大綱で強化を初めて打ち出したもので、はっきり言いまして、自衛隊としては遅れました。ですから、今、サイバー防衛隊についても中国、ロシア、北朝鮮、人の数からして非常に足りておりません。また、国全体としてサイバー防衛をどうするかという議論についても、併せてやっていただければと思いまして、ここの強化についても外せないということであると思います。
抗耐性の強化ということですが、これもやはり優先順位としては低かったと言わざるを得ないです。例えば、飛行機が野ざらしになって、一発でやられます。それは掩体であるとか、あるいは特に、それ以外も陸海軍の施設というのがまだ残っておりまして、自衛隊はそれをまだ使っているという状況もありますので、ここは施設の強化も含めて、抗耐性を考えていただきたいと思っております。
私、焦点を絞りまして申し上げましたが、私の説明はこれで終わらせていただきたいと思います。
〔増田分科会長代理〕河野様、どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのプレゼンと若干ダブるところもあろうかと思いますが、ここで私が代表いたしまして、4点、御質問を河野様にさせていただきます。
1点目、目前の脅威を抑止する観点から、日本の防衛力、防衛体制に欠けているものがあるとすれば何か。また、今後5年間で優先的に強化すべき分野、優先度が低い分野について御教授をいただきたいと思います。
2問目、日本の防衛産業技術や産業基盤を持続的に発展させるための課題解決策、例えば調達慣行を改めるといった施策に対するお考えをお聞かせ願います。
3点目、実効的、効率的な予算とするための防衛費の議論のされ方、秘匿性が高く国民から内容が見えない中での納税者への説明責任の果たし方についての御意見をお聞かせください。
4点目、新戦力の配備と併せた既存戦力のスクラップ・アンド・ビルドの余地、それを進める上でのネック、陸上自衛隊をはじめとする定員の在り方についてのお考えをお聞かせください。
以上4点でございますので、河野様、どうぞよろしくお願いいたします。
〔河野講師〕まず、抑止ということの観点から欠けているものですが、これは先ほど申し上げましたとおり、攻撃力というのは基本的には今までアメリカに全面的に依存しておりました。私も演習、そうしたものに参加をいたします。例えば、今この時点でアメリカに頼んでやってもらいたいということがあるわけです、叩いてもらいたい、日本は攻撃力がないので。ただ、演習をやっていても、そうはいってもアメリカの事情があるわけです。どんぴしゃに日本のタイミングでやってくれるかというと、保障はないのです。やはりずれというのはどうしても、演習においても出てくるということがありまして、先ほど申し上げたとおり、手段を持っていないということになると全くのお手上げ状態ということになりますから、ここはやはり攻撃力というものを日本も考えるべきであると思っております。
敵基地攻撃能力ということで、議論としては矮小化した議論になっていますが、私は、ですから、専守防衛の範囲というのは政府の解釈です。私は、これについても、日米共同でやるべきであると思います。というのは、日本がミサイルを持ったとしても、あるいはターゲットがどこにいるであるとか、宇宙からどう監視をするとか等々、それは今すぐに日本ができる話ではありませんので、日米共同という形で取るべきではないか。矛はアメリカで、盾は日本という切り分け方をしますが、もう盾と矛という話は、大砲が飛び交う時代だったらそのような切り分けができたかもしれませんが、サイバーとかなんとか言い出したとき、どれが盾で、どれが矛か分からないです。ですので、私は盾も矛も、日本の自衛隊が動くときはどのようなときかといったら、日本を防衛するときですから。日本は、海外に行って戦争するという話はないので、日本を防衛するときしか自衛隊は動きませんから、基本的には。したがって、盾も矛も、日米同盟ということで私は進めるべきではないかと思います。
また、抑止という観点からいけば、残念ながら、防御は決定的な抑止力にはなりません。攻撃力が決定的な抑止力になるというのは厳然たる事実ですので、そうした観点は必要であると思います。
5年間、どこが優先するかということですが、先ほど申し上げましたとおり、継戦能力、戦う地盤。今、護衛艦をどんとつくろうとしても、出てくるのは5年、そうなりますと2027年、戦力化できるのは27年、28年。よく言われるように、この5年間、習近平総書記の3期目が危ないぞという話になっているわけです。そのときに、残念ながら、今護衛艦を発注しても、それは、この5年間にはぎりぎり間に合わない話になるわけです。ですから、ここは今の正面装備、取りあえず継戦能力の強化、あるいは、外国にある武器を、必要であれば導入も決断する等々、この5年間はそうした考えで、もちろん、これから防衛力強化に向けて、第一歩とするわけですから、当然、5年先、6年先を見据えた防衛力も必要ですが、この5年間は非常に注意しなければならないとされていますので、いろいろな手を打ってやっていく、継戦能力、あるいは必要であれば海外のものを導入する等々をやっていくべきではないかと思います。
それから、防衛力の調達、防衛産業、今、防衛産業というのは、基本、競争入札になっておりまして、例えば船だったら競争入札になります。しかしながら、防衛産業、防衛の技術者というのは非常に特殊で、そこしか使えない人たちです。ラインもそうです。ほかの民需との混合は基本的にできません、機密保全の観点もありますから。そうなると、防衛産業側としては、その施設、技術者、これをやはり首切るわけにいきませんから、維持する必要があるわけです。そうなると、どのような決断をする傾向になるかとなると、維持するために、損をしてでも入札を取るという負のスパイラルになる可能性があります。やはり企業ですから、しかも、株主の理解を得なくてはいけないので、損をする防衛産業というのは今後立ち至っていかないのではないか。そうした調達面も含めて、そこは手を入れていただければ良いかと私は思います。
ちなみに、御参考までですが、以前は、護衛艦であれば随意でした。長官指示が出まして、これはあなたと、これはあなたとという。でも、これは財政の面からもよくないということで競争入札と今なったのですが、ただ、今申し上げた、防衛産業の特殊な事情があるので、これを全く民需と同じようなレベルでとなると、そごを来すことになる可能性があるということです。
それから、国民に対する説明ですが、今回は、もちろんいろいろな秘密とか、そうしたものもあるのでしょうが、かなり、安保3文書、それから有識者会議、それからこのような財審でも議論していただいておりますし、記者発表もどんどんやっておりますから、私は、かなり透明性のある議論が進んでいるのではないかと思っております。
最後、スクラップ・アンド・ビルドですが、私は海上自衛隊出身なので、陸を減らせとはなかなか言いにくいのですが、やはり、日本は海洋国家です。ですから、どうやって日本を守りきるかということ、そこのコンセプトを最初に立てて、陸海空だから3分の1、3分の1、3分の1というのはよくないと思います。重点を置いて、そうしたら全体のパイは決まっていますから、減らすところは減らすという考え方を取るべきだろう。その根本は、今であれば、台湾海峡危機というのが蓋然性が高いと思いますので、これを想定してどのような場面が考えられるかについて、これは恐らく防衛省統合幕僚監部でいろいろと検討していると思います。そうした戦い方を踏まえて、防衛力整備をやっていくべきではないか。
以前は、基盤的防衛力構想というのがありまして、日本には脅威はないという前提で防衛力整備をやっていた時期がありました。そうなると、どのようなことになるかというと、山川理論といいまして、主要な港がありますね、それにワンユニットずつ置きましょうとか、非常に静的な防衛力整備をやって、これで積み上げたのです。さすがにそれはもう言う人はいなくなりまして、脅威がこうあるから、こう持っていこうという議論になりつつありますので、それをさらに深めていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕河野様、どうもありがとうございました。
引き続き両先生にはこの場での御同席をお願いしております。
それでは、続きまして、事務方からの説明に移ります。渡辺主計官、簡潔に資料の説明をお願いします。
〔渡辺主計官〕時間が限られておりますので、ごく簡潔に説明いたします。
まず、1ページ目、2ページ目は、我が国の周辺環境、ウクライナ情勢などをまとめております。
3ページ目、日米中3か国の軍事、非軍事の相対関係を示しております。
4ページ目は、宇宙、サイバー、電磁波の重要性。
6ページ目は、春以降の総理発言の主なものをまとめております。防衛力強化の内容、規模、財源を一体として議論すること、官民の研究開発、インフラなど、政府全体のリソースを活用する必要性などが主な点となっております。
7ページ目は、防衛関係予算の過去の推移。
8ページ目は、いわゆるNATO定義ですが、こちらにつきましては、主権の異なる複数の国が共同の軍を運営することを目的としていることなどに留意が必要かと思います。
10ページ目は、研究開発、公共インフラについて、民生を含めた予算全体を活用する必要性を示したもの。
11ページ目は、宇宙です。米英のように我が国も民間を最大限活用する必要があること、同盟国のアセットも活用する必要があると思います。
12ページ目、有事の際には、防衛省のみならず国全体として縦割りを超えて対処する必要があります。
14ページ目は、ドイツ、スウェーデンの直近の状況を示しております。ドイツは健全財政で財政余力を確保してきたことなどが功を奏していると思います。スウェーデンは9月の選挙で、社会保障などの歳出削減の方針にかじを取っている状況ですが、国民で真剣な議論がなされていると承知しております。
15ページ目、NATO諸国のうち、欧州の東方の国が国防費を増やしておりますが、債務残高の対GDPの低さ、あるいはEU内での財政支援の仕組みなどには留意が必要かと思います。
16ページ目、国防費対GDP比を分析したものですが、日本はどの道を選んでいくのかが問われていると思います。
17ページ目、一人当たりの国防費ですが、日本は一人当たり国防費が低い、増やすべきとの御議論がありますが、一人当たり税負担ないしは所得も低い点などを併せてトータルで議論していく必要があろうかと思います。
16ページ目、中国の国防費・経済財政の状況をまとめたものです。
19ページ目から22ページ目にかけて、貿易、投資、経常収支などを踏まえて、我が国が経済・金融・財政の脆弱性を低減し、侵攻に対して国家として立ち向かうことができる財政余力は不可欠であると考えております。
21ページ目は、ロシアが2014年以降、経済・金融・財政面で準備してきたことを示すものです。
25ページ目、武力侵攻の過程を想定いたしまして、プロセス全体での費用効果を高めて相手に負荷をかけていくことが重要であるという視点を示しております。
26ページ目、長距離のミサイル配備を含めまして、国民・住民の理解、地元調整が重要であるということ。装備品につきましては、運用維持の経費が取得費を上回ることが多いことを踏まえて、調達全体を考えていくことの必要性を示しております。
27ページ目、自衛隊の定員、実員を増やすべきとの議論がありますが、日本全体の生産年齢人口の減、人手不足を踏まえまして、自衛隊自身の効率化、自己改革などが必要であると考えます。
29ページ目から31ページ目は、研究開発です。AI、量子などが話題に上がりますが、民生分野の技術の取組が必要であると思います。
33ページ目は、防衛産業です。それなりの規模はありますが、顧客が1人でありまして、分野も多岐にわたっている。撤退企業などが指摘されておりますが、日本の製造業全体に共通する面もあろうかと思います。
35ページ目には、防衛調達を確実にするため、コスト、初期投資、設計の費用、契約の方法など、他産業に比べて、あるいは政府の他分野に比べて手厚く国費で措置する仕組みにもかかわらず、事業者からは厳しいという声が上がっているのもまた事実かと思います。
37ページ目に課題をまとめております。防衛産業を自律的な成長産業に発展させるためには、コストの適正な反映を行った上で、市場の拡大が必要であると考えております。
38ページ目は、韓国の例を示しております。
最後、40ページ目、防衛省が事項要求、5年度要求の事項要求であったりとか、次期中期防で重視しております7本の柱について、こちらに示しております。
41ページ目は、それを検討する上での論点、例えばスタンド・オフ能力を含めて、相当数の研究開発が並行していますが、いつ、どのような成果が得られるのか、確実に得るためにどうしたら良いのか。あるいは弾薬など地元調整を経て確実に配備していくことの重要性、領域横断ですとか指揮統制の分野は、システムの部分がかなりの部分を占めますが、システム構築の内容、金額の妥当性などが重要な論点かと思います。
また、サイバーセキュリティーは、自衛隊自身を防護するものということを念頭に置く必要があると思います。
宇宙、衛星などにつきましては、同盟国、民間を最大限に活用していけるのかどうか。あるいはいろいろな、共通して買うのか、つくるのか、開発するのか、こうした判断もあると思います。そのバランスもあります。
あとは従来の装備品への資源の割当て、さらには従来の施策の見直しを含めた、防衛省自身の自己改革をどのように進めていくのかといった論点があろうかと思います。
極めて駆け足で恐縮ですが、御説明は以上のとおりです。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、これから質疑ということですが、若干、私から申し上げておきます。
まず、本日欠席の広瀬委員より意見書を提出いただいております。お目通しいただきたいと思います。
それから、質疑のやり方はいつもと同じです。当会場にいらっしゃる方はネームプレートを立てて、それからオンラインの方は挙手するボタンでの合図をお願いします。会場から5名、テレビ会議システムから5名、そしてその際マイクのオン・オフ、それからオンラインの方はミュート操作につきましても、忘れずによろしくお願いします。
それで、本日は時間がかなり限られておりますので、今後御発言なさる委員の方には、基本2分程度でまとめていただきたい。大変失礼ながら、御発言が少し延びた場合には、3分前に私から簡潔にということをお願いさせていただく場合もございます。2分のラインを前提に、御発言をお願いしたいと思います。その上で、最後に神保様、河野様から全体を通じてのコメントをいただく予定となっております。お二方の時間の御都合もございますし、また、外でのぶら下がりにも対応していただこうと思っておりますので、11時35分、今10時25分でしょうか、11時35分には、議論はまだ続いたとしても、一旦中断させていただいて、お二方にコメントをいただいて、そして、お二方には御退室いただいて、後の御予定に対応していただく。もし議論が続いていれば、その後、この場で残りの委員の方に御発言いただく、こうした形にさせていただきますので、くれぐれもその辺りの時間配分を考えた上での御対応をよろしくお願いいたします。申し訳ありませんが、御理解お願いいたします。
それでは、これから質疑に入りたいと思います。私から見まして左手側、安永委員からということになりますが、安永委員から5名の方に指名していきます。
安永委員、どうぞお願いいたします。
〔安永委員〕ありがとうございます。3点申し上げます。
実効性のある抑止力を持つためには一定の攻撃力が必要なことは、先ほどの御説明でよく理解したつもりですが、どのレベルまでそれを本当に持つべきかということについては、十分な議論と、それから国民的な理解、これがないと結果的に財源確保につながらないのではないかと思います。
2番目に、防衛産業について、私共経団連の方で関連する防衛産業の皆さんからヒアリングを行いましたけれども、やはり先ほどの御指摘があった部分に加え、手続や条件面で圧倒的に民間の仕事に比べて劣る、かつ、発注が競争入札もあり、それから特異性、特殊性の観点から、必ずしも民間企業として一定の計画性を持って仕事をすることにならない。
やはり、韓国のように国と民間でもう少し、産軍複合体とは申しませんが、一定のレベルの役割分担、共同研究、それから、やはりライク・マインデッド・カントリーの中でどのような、日本の防衛産業を位置づけるのかというところまで踏み込んでいただかないと、なかなか防衛産業の維持が難しいのではないかと思っています。
最後に、防衛費の財源問題についてですが、やはり先ほど触れましたとおり、国民全体で広く負担するということが基本であると思います。一義的に法人税の増税という話になりますと、やはり企業には成長と分配の好循環のための国内投資や賃上げが求められている中で、やはり、どこかに偏るというのではなく、負担する者、負担の程度やタイミングなどは、慎重に御検討いただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続いて、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。お二方には大変勉強をさせていただき、ありがとうございます。
お話を伺っても、国民も含めて、今防衛力を増やさなければいけないということは承知していると思います。ただ、だからといって、白紙委任だったり、議論を閉じるのではなく国民により近づいてほしいということをお願いしたいと思います。というのは、やはり今までどおりにはいかないと思っていても、そうは思えない人もいるでしょうし、あるいは負担をする国民というのは、自分の財布からお金を出すか、あるいはこれまでの社会保障を諦めるか、そうしたところで問われる話になると思いますので、やはり拒否をするという気持ちになってしまう可能性もあると思います。大事なことをしっかり説明していただいて、国民に近づいてほしいと思います。
その上では、最終的に、最も効率的なことはこうした形ということを御説明いただいて、国交省ですとか自治体ですとか民間ですとか、いろいろなところと最大限の連携を取って、今出来得る限り最も努力できるのはこの形であるということを示していただければ良いかと思います。
さらに、組織内ということに関しては、外からは分からないのですが、三つ御質問したいのは、今、自衛隊の中で、民間では進んでいる多様な能力の生かし方、あるいは縦割りの排除、女性の活躍、そうした組織内での改革をしているかということを、河野さんに御説明いただければと思います。
さらに、財審としては、借金が増えると結局は、防衛は強くなっても、国全体が脆弱になるというのはもう明確であるので、経済戦争の部分も含めて、財政も強くしていく必要がある、財政が健全であることの必要性は、引き続きこの場でも訴えたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕土居委員、お願いします。
〔土居委員〕お二方の御講演、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。そして、事務局からの御説明もありまして、資料3の17ページ、確かに一人当たりの国防費はほかの国よりも少ないということである。これがもし、国民として、もっと国防費、防衛費に予算を割いても良い、そしてしかも、その財源として増税をしても良いということであれば、これは正々堂々と、安全保障防衛力の強化と増税とセットで議論を提起するということは、逃げるべきではないと私は思います。借金で賄うと、我が国の借金は60年償還ルールである。だが、防衛装備品は60年ももたないということになると、防衛装備品が陳腐化した後、借金だけしか残らない。その借金返済は、将来の国民が負わなければいけないということになりますから、やはり、きちんと財源を確保した上で、防衛力を強化するという姿勢が大事であると思います。
ただ、いろいろ報道を聞いていると、予算要求はあれもこれもというような防衛装備品の要求が多いように思いまして、あれもこれもということではなくて、やはり真に防衛力強化に実効性のあるものから順番に許可していくということを図っていただくという、メリハリ付けが必要であると思いますし、さらには補助金とか基金というものを防衛産業向けに出すというようなお話もあったりいたします。
防衛装備品については、資料3にも書いてあるように、間接費を含めたコストに利益率まで価格に上乗せされるという形で発注していることがある。それだけ、当然、防衛産業を支援するということは分かるのですが、これが国民から許容できるものなのかというところは問われると思います。
それからもう一つは、補助金ということになりますと、防衛省から防衛産業に対して補助金を出すということは、ほとんど、発注者から受注者に対して補助金を出しているということになるわけですが、受注者に対して先に補助金を出して、その受注者から製品を購入するなどというような補助金の出し方が、ほかの政策・予算では許されてないような気もいたしますし、さらには調達した後で補助金を出すということになりますと、それはキックバックしているような形になってしまったりいたしますから、やはりそこら辺の公平性、透明性をきちんと、政府調達する上でも、きちんとしていただかなければならないと思います。
最後に、基金についてですが、やはり中期防で5年間の防衛力、防衛経費を計上するということになっているわけですから、基金というのは年度を越えてお金を出すというものにはなるのでしょうが、そもそも5年間の経費が見積もられている中で、なぜ基金を設けなければならないのかというのは、私は意味がないと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕お二人のお話からも明らかなように、安全保障環境が大きく変わる中で、日本の防衛力の強化が必要なことは全く疑いがないと思います。問題は、いかに最適解を求めるかということでありまして、2点申し上げたいと思います。
まず、1点目、当たり前のことですが、まず、防衛戦略をしっかり打ち立てて、それに必要な防衛体制とはどのようなものか、それを実現するために今の体制をどう再構築するか、これを明確にすることであると思います。したがって、防衛予算を対GDP比で2%という数字ありきではなく、新たな防衛戦略に沿って、優先順位と時間軸を明確にした上で財政資源を投入すべきであると思います。その過程では、新戦力の配備と同時に、先ほどもお話ありました既存戦力のスクラップ・アンド・ビルドをセットで進めるべきであると思います。
また、産業界との共同、さらに言えば、アカデミアを含めた、特にデュアルユースの技術の共同研究開発を推進すべきであり、そのためにも省庁間の縦割りを打破して、産官で進める必要があると思います。
2点目、財源についてです。借金に依存する防衛力は脆弱です。それなら、安定財源をどう確保するかというと、結局二つのことをやるしかないだろうと思います。まずは、かねてより申し上げている、財政運営の構造改革により、我が国の財政全体の資源配分を見直すことが求められます。そして、足りない分については、純粋な公共財である防衛の受益者、すなわち個人と企業全体に、広く負担を求めるべきであると思います。
東日本大震災後の復興財源については、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うということで、国民的な合意を得ました。性格は大きく異なりますが、これからも長く続くであろうこの問題に対する国民の理解を求めていくためには、情報の発信、あるいは開示を強化していく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕赤井委員、どうぞお願いします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。少し重なるところもありますが、2点簡単に。
一つ目は、ここの表にも出ていますように、まだ日本は少ないということで、増やしていくという議論はもちろんあると思うのですが、財政の持続可能性、この問題はいつまで続くか分かりませんので、増税とセットということを明示して、国民と議論をして、どのぐらい増額するのかを決めていくべきであると思います。
2点目、それも国民の理解と説明責任ということですが、日本でどのように説明責任を果たしていくのか、これは海外でもいろいろ説明責任の議論はあると思いますので、その説明責任という観点から海外の事例、各国の事例のようなものを、最近増額したところを特に整理されると、役立つ議論ができるのではないか。それと幅広い意見交換、もちろん国会での意見交換、さらに有識者の意見交換もそうですが、有識者でない方も特別な委員会のような形で、特別な情報を提供し、本当に理解できるのかとか、そのような外から見ても、こうした人が理解していれば大丈夫であると思えるような組織づくりも大事かと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからオンラインに移りたいと思います。オンラインで合図のございました次の方に、初めに御発言いただきます。5名の方です。芳野委員、河村委員、熊谷委員、小林慶一郎委員、それから藤谷委員です。
それでは、芳野委員、どうぞ御発言ください。
〔芳野委員〕芳野でございます。ウクライナ危機をはじめとした、様々な脅威が我が国を取り巻く中、限られた財源の中で、いかにして国そして国民生活を守るかについては、この場だけでなく、幅広い国民的な議論が必要と考えています。その上で2点、意見を申し述べさせていただきたいと思います。
防衛産業の課題として、「低い収益性により事業の継続が厳しいとの声がある」と説明がありました。今後の議論においては、装備品などの調達における公正な取引環境を確保する視点を入れていただきたいと考えます。
また、自衛隊員の勤務環境整備に関して、隊員が誇りと働きがいを持って勤務し、国民からの信頼につながるよう、施設面の課題改善や隊員教育への資源投入、特にハラスメント防止教育の視点も盛り込んでいただきたいと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕続いて、河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕ありがとうございます。神保先生、それから河野様、御説明くださいまして、ありがとうございます。いろいろ厳しい状況にあって、今この国が何をしなければいけないのかということ、非常によく分かりました。これまでのような防衛の考え方だけでは太刀打ちできない、どう抑止力を確保すべきかといった辺りについても、やはり非常に重たい問題があると思います。その上で2点申し上げます。
1点目は、今後、どのような形で、どこまでやっていくかということは、もちろん議論の余地がありますが、そこは立ち入りませんが、やはりしっかりとした財源を確保する必要があるということでございます。基幹税で対応すべきだと思います。税には応益課税と応能課税の両方の側面があるとは思いますが、やはりここの分野、長く続く話でしょうし、防衛力の増強に向けては応能課税の部分をやはり重視するような形で、法人課税であるとか所得課税であるとか、やはりここは応能課税の仕組みがビルトインされておりますので、そうした辺りを中心に考えていくべきだろうと思います。
2点目は、質問で、これは時間があったらで結構ですが、神保先生から、防衛産業を日本の国内でどうしていくか、本当に重要な課題であるということ、これまで過去の財審でも、渡辺主計官からの御説明を伺っても、本当に感じているのですが、その中でやはり友好国、アメリカですとかNATO加盟国との共同研究開発をというお話を伺って、なるほど、そうしたことができれば、少し道が開ける可能性もあるかと思うのですが、これは質問で、渡辺主計官にお答えいただくのが良いのか、河野前統合幕僚長にお答えいただくのが良いのか分からないのですが、もしお時間があれば、日本のようなNATOに入ることはあり得ないような国のような場合でも、そうしたアプローチでやっていくことが可能なものかどうか。ヨーロッパでもスウェーデンなどは、ここでNATOに入ることになりましたが、そうではない立場で今までやってきたりする国もあると思います。やはり、防衛産業、技術革新の協力で、どのように一緒にやっていくことができるか、同じようにできるものなのかといったところ、もし可能であればお答えいただければありがたいです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕熊谷でございます。ありがとうございます。私からは5点意見を申し上げます。
まず第1に、我が国をめぐる防衛環境を精査した上で、国民的な議論を経て、大局的な防衛戦略をしっかりと策定して、プライオリティーの高い分野に資源を集中投入する必要があります。その際、費用対効果の観点から、徹底的に無駄を省き、合理化を行った上で、縦割りを打破して、総合的な防衛体制を強化すべきです。米国を中心とした同盟国、同志国との連携強化にくわえて、研究開発やインフラといった分野におけるデュアルユースも必要です。
第2に、国防費は経常的に支出される経費ですから、安定財源を確保することが不可欠です。経済力は国力の源泉です。我が国が安定財源を確保することなく、GDP比2%という数字ありきで野放図に国防費を増やせば、経済・金融・財政の脆弱性が強まり、逆に、他国に付け入る隙を与え、国民の安全が脅かされる事態を招きかねません。
第3に、財源に関しては、これまでの延長線上ではなく、歳出歳入両面からの検討が必要です。恐らく財源の候補は四つあって、①国債、②経済成長による税収増、③歳出の組替え、④増税ですが、初めの二つは必ずしも安定財源だとは言えません。現実問題として、歳出の組替えにも限界がありますので、最終的には増税を検討せざるを得ないと考えます。百歩譲って、一旦国債で賄う場合でも、あらかじめ償還財源を明確化しておくことが不可欠です。
第4に、全体として議論の透明性を高めて情報開示を行い、国民に選択肢を提示することが肝要です。例えば、防衛費は後年度負担の仕組みがありますので、翌年度以降の負担を当年度の予算に含めて、見える化することなどが必要です。
最後に5点目として、防衛産業を自律的な成長産業に発展させるためには、コストの適正評価、価格への反映等の徹底にくわえて、防衛装備移転による市場の拡大等が不可欠だと考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林慶一郎委員、どうぞお願いします。
〔小林(慶)委員〕それでは、1点だけお話をしたいと思います。
神保先生、河野先生、御講演ありがとうございました。また、事務局からも御説明ありがとうございました。
私が述べたいのは、今日お話しにならなかったこととして、国民の保護の問題を誰がどのように考えるべきなのかということについて、もし、お考えがあればお伺いしたいということです。
先ほど来、皆様おっしゃっているように、財源をしっかりと確保しなければいけないということであると思いますが、そのためには国民の理解が必要であって、また、そのためには有事について、自分事として国民が考える、そうした必要があろうかと思います。
そのときに、やはり国民が、有事になったらどのような行動をしなければいけないのか、することになるのかということが、あらかじめ公の場でいろいろ議論されて、皆様が認識するような状況をつくる必要があるのではないかとも思います。
また、有事対応としては、防衛力あるいは戦力を強化するということでやることも必要ですが、被害を最小化するということが、まず、大きな目標であるべきであると思いますが、先ほど河野さんの話もあったように、護衛艦などを戦力化するには5年ほど時間がかかるということは、ひょっとしたら台湾有事には間に合わないかもしれないということであると思いますが、そうであればこそ、国民が、では有事が起きたときに、どのような避難の在り方をするのかとか、あるいは国民保護のどのような計画があるのかということを、むしろそちらを明示すべきではないかという気がいたします。
国民保護については、自治体がやることになっていると思いますが、例えば南西諸島で有事が起きたときに、沖縄県だけでそのような計画を立てるということは無理なわけで、非現実的ですから、当然、防衛省が考えている有事のシナリオ、10通りか20通りかは分かりませんが、そうした有事のシナリオに沿って、県、自治体と協力しながら政府が、国民保護の計画、避難の計画などを立てるべきではないかと思いますので、その辺の理解、その辺の計画が進めば、国民の防衛力増強、あるいは防衛費の増額についての理解、国民負担の増加についての理解が進んでくると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして、藤谷委員、どうぞお願いします。
〔藤谷委員〕ありがとうございます。私からは、今後防衛費を大幅に拡充せざるを得ない、すべきであるという前提の下で、防衛調達の改革の考え方について、主に事務局にお伺いしたいと思います。
先ほど増田会長代理からの御質問の3点目にも関わるのですが、それに対するお答えとして、神保先生、河野前統幕長からは、いずれも戦略レベルでの国民に対する説明責任の重要性ということがございました。大変説得力のあるお答えであると承りました。
その上で、我々が考えるべきこととして、より具体の調達レベルでの合理化、透明化については、まだ論ずべきことが残っているように感じました。
本日の事務局説明資料37ページで、防衛産業側の問題意識、不満が指摘されております。ところが36ページでは、原価計算方式等、手厚く措置しているのに、それが必ずしも伝わっていないという御説明だったと承りましたが、これは一体全体どうしてそうなっているのかという分析が必要ではないかと思います。予算が厳しいから、現場調達レベルでやむを得ず企業に泣いてもらっているということも考えられるのですが、そうすると今後、予算が増えれば解決するのかというと、もちろんそうはなりません。なぜならば、今日、お二方から御説明ありましたとおり、ますます整備しなければいけないニーズが高まっているわけですから、予算を倍増したって、ニーズはもっと高まっているわけですから、同じ構造が温存されることになりはしないか。そうすると、分析をした上で、それを可能な限り縮減していく制度的な手当てが必要ではないかと考えます。
例えば、神保先生の資料の4ページ目で防衛装備移転が失敗続きである、その理由の一つとしてコスト高という要因がある。これも、想像に難くないところでありまして、やはり予算が限られていると少数精鋭主義といいますか、また、命を預ける装備品ですから、なるべく良いものをというのは、軍事のロジックとしては当然だろうと思うのですが、これと財政のロジックをもっと高いレベルでインテグレート、統合していく必要がありはしないかと考えております。米国でも、防衛調達については、繰り返し見直しが行われているということは、うまくいってないということで、それだけ難しい問題であるということは踏まえた上で、我々制度的な手当てについても考えるべきではないか。
すなわち、せっかく水を増やしても、バケツに穴が開いているような状況ですから、国民にとっても現場にとってもハッピーにならないということですので、財政制度の問題として、この点、法制度も含めて考えていくべきではないかと考える次第でございます。
以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、会場に戻ります。遠藤委員から引き続き指名してまいります。
遠藤委員、どうぞお願いします。
〔遠藤委員〕ありがとうございます。2001年12月の海保の巡視船と北朝鮮の工作線の銃撃戦があり、10年の9月に尖閣諸島で中国と、また衝突をするという事案以降も、日本は防衛力を急激に増大させることもなく、結果として、神保先生が御説明されておられましたが、中国との軍事力バランスで大きく劣後してしまったという認識です。
防衛予算や財源の議論というのは別の会議体で行われていますので、あくまで報道ベースですが、遠足のバナナは果物ですかお菓子ですかといったような種類の議論もあるように聞いております。
例えば、海保予算がNATO基準で防衛費に当たるか否かというような議論があるようですが、現状、領域外での武力行使というのは認められていないわけであって、それを可能にするようなコーストガード改革こそ、本来は必要ではないかと考えます。
そのように、重要であるのは、日米防衛を基軸としながらも、日本が防衛戦略を、拡大する脅威に向かえる能力を、5年あるかどうか分かりませんが、急速に立ち上げることであって、その程度の予算がどの程度なのかを積み上げ、その上で財源を、他予算からの組替えを行ったり、増税によってあまねく国民が負担したりすることへの、理解の醸成であると考えています。
新しい戦い方がこれからの前提となるということで、技術における産学との連携について、2点申し上げたいです。無人化システムやキネティックの戦力について、科学技術が寄与する点は大いにあると思うのですが、現在の防衛省とか装備庁にはデュアルユースの技術の目利きはできません。一方、大学をはじめとする研究機関には、デュアルユースを行うことは研究倫理上、現実的には不可能です。デュアルユース研究を行う体制を構築しなければ、防衛予算を科学技術に振っても、意味はないと思います。
次に産業界ですが、防衛省が調達する装備品の利益率は8%と紹介されていますが、ロッキードとかレイセオンとか、海外勢と比較すると、彼らは20%程度あります。経済安保推進法ができたこともあるので、国が生産設備を持って、運営は民間が行うなど、そうした工夫が必要であると思います。グローバル市場を視野に入れたサプライチェーンを含む防衛産業技術基盤育成も必要で、防衛装備移転3原則の見直しを行うべきであると思っています。
装備品の輸出額は0.01%以下ですし、恐らくフィリピン向けのレーダーぐらいであると記憶しています。一方韓国は、10年間で3倍に拡大したということを付言したいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。国民目線的なコメントになりますが、国民の今のコンセンサスは、防衛費の増加はやむを得ない。ただ、防衛力については、最大限拡充して強くなってほしいということであると思います。ここのところを、両方の希望をかなえることとして、恐らく、防衛費の乗数効果を高めてほしい、限られた中でそれを拡充していくということであると思います。その点で2点だけです。
1点目は研究開発でございます。今、遠藤委員からもありましたが、アカデミア、日進月歩の世界の中ではありますが、アカデミアの中にはやはり防衛に関する、特に基礎研究については躊躇する向きがあるかと思います。ここについては、何らかの工夫が必要なのでは、それが1点です。
それから、2点目は人材です。人材の量のお話ありました。ただ、もう一つの質の問題、特にウクライナを見ていると、モチベーションがいかに、先ほど申し上げた乗数効果的には強いかということが分かる中で、何らかの形で広報するとか、若い方々が活気を持って働いていただくようにする、そして、もしかしたら民間の活力も何らかの形で使うなどが有効ではないかと思っています。
そして、これらを含めて、先ほどほかの方からもありましたが、コストを抑えていくべきところのアカウントと、それから増強していくところのアカウント、これは別建てで、しっかりと見張っていく、管理していくことが重要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。どの企業の世論調査を見ていても、防衛費は増やしても仕方がないよね、出して良いよね、というように考える国民が増えていることを鑑みて、財審としては、財政基盤とか財源を考えていきましょうということは強く主張していくときが来ているということかと思います。その他の意見は、ほかの委員と一緒なので割愛しますが、私ずっと聞きたかったことがあって、今現在の日本の防衛及び防衛力をよく知っているお二人に、あえて質問させてください。
今の日本の防衛力を考えて、例えばよくGDP比で1%から2%にしますよと、増額について言われていますが、2%になったら、とても安心なのでしょうか。これが1点。
それから、皆様のようなプロのレベルから見て、日本の防衛には本当は幾ら必要なのか、という考えがあったら教えてください、ぜひとも。これが2点目です。
また、先ほど、河野様のお話を聞いていて、台湾海峡危機はもうすぐ、ここまで来ているのではないかという気がしてしまったのですが、5年などという悠長なことを言っていて良いのか。皆様のような専門家から見たら見当外れ、あるいは遅きに失して、笑ってしまうというような話なのか。これが三つ目で、この三つについて教えていただきたい。
さらに、主計官に質問ですが、先程遠藤委員が少し触れておられたのですが、私もそう思っていて。今の防衛産業を完全に民間にというのは、もうきつくなっているのではないかと言う点についてです。例えばESGの投資の一環でも、「武器をつくっているような会社には資金は出せません」というような判断が多くなっている中で、果たして民間で全てを賄えるのか。一部国営化等を考えるのは突飛過ぎるのでしょうか、教えてください。
以上です。
〔増田分科会長代理〕最後にまとめて、また、お二方、それから主計官にお願いします。
それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕今日は両先生、どうもありがとうございました。
安全保障のリスクに備えた軍事力を持つこと、それから財源の在り方、そして予算の効率化については、ほかの先生がおっしゃったことと同じですので、私は中国の脅威について思っていることを話させていただきたいのですが、中国は今回の共産党大会で、台湾有事に関して武力行使の選択肢を排除しないということと、また、党の規約に台湾の統一を盛り込んであるということで、日本の世の中的にも中国の脅威が高まった、あたかも、すぐに台湾を軍事攻撃してくるのではないかという雰囲気が高まっているのですが、私はあくまで、習近平さんとしては、平和的な統一を第一として、では、どのようなときに軍事行使をするか、アメリカが軍事的な挑発を仕掛けてきたり、あるいは中国の中の独立分子が武力蜂起して、それをアメリカが助けるということではないか。平時において、今中国が自分から軍事攻撃を仕掛けるような、経済的な余裕は中国にはないと私は思っております。
そこで、台湾の有事に関して、どうしても納得がいかないのは、台湾の有事に日本が巻き込まれて、日本の自衛隊でも民間人でも、血を流すということがどうしても納得がいかない。日米同盟ですから、日本が攻撃されたとか、アメリカが攻撃されたというときに、その同盟関係が機能するのは分かるのですが、台湾は、さめた見方で言えば、別に中国の中の内輪もめの話で、確かに民主主義は大事ですが、そのために日本が出張っていくのかということで、そうしたことのないようにしたら良い。やはり中国とアメリカ、中国と日本の関係、いずれもそうですが、作用と反作用なので、どちらかが脅威であると思えば、その脅威に対して備えて、軍事力を高め、それをまた脅威であると相手が感じるという、かつての米ソの冷戦のようになっていくわけですが、まず、一つは、日本はアメリカに対し、台湾の独立分子を仕掛けて中国を挑発するようなことのないようにということを、外交的努力が必要であると思いますし、仮に、アメリカと中国が戦って、アメリカが日本の軍事基地から戦闘機を飛ばした、あるいはミサイルを飛ばしたとしても、それは日本の意図ではないということで、意図とは違うということで、意図とは違うというのは、日本がやっていることではないということで、中国が日本を軍事の対象に、攻撃の対象にしないように、そこは中国に対して外交努力をしていくといったように、いわゆる外交努力を通じて、軍事的な紛争に陥るのを未然に防ぐということが、財政的にも最もお金がかからないことではないか。ぜひその道は追求してもらいたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕本日は神保先生、河野様、大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。2点申し上げます。
1点目は、総合的な防衛力という観点です。日本の安全保障環境が厳しくなる中での防衛力強化、これは必要であると強く認識しております。神保先生、河野様が御指摘された能力、これに加えまして、議論がございました健全な経済・金融、財政の余力、これを含めての国力、防衛力であると考えております。俯瞰的、総合的な視点から、国としての戦略を描くべきです。また、いかにそれを実行していくか、その実行においては、縦割りは排除いただき、財源の在り方も含めて具体化していく、そうしたプロセスが必要ではないかと思います。
2点目は、技術力の重要性でございます。神保先生が前半で強調されたとおり、先端技術をめぐる競争も重要な局面に来ていると認識しております。先生がおっしゃったとおり、優先順位、重点化に加えまして、官民合わせての総合力をどう高めていくか、この点も重視いただければと存じます。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからオンラインにまた移りたいと思います。発言順序は、福田委員、それから冨田委員です。
それでは、福田委員、どうぞお願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。手短にお話しさせていただきたいと思います。
最近の世論調査で、NHKが行ったものを拝見させていただくと、防衛費増額、必要であるというのは55%で、かなり必要だという国民の理解が広がってきているのであるとは思います。他方で、その財源をどのように確保すべきかという質問に関して、国債の発行とか増税という回答は決して多くなくて、61%がほかの財源を削るという回答で、その比率が非常に多かったということです。もちろんほかの財源を削ることは大事で、財審でも非常に議論はしているところですが、それのみで増額分を賄うというのは非常に危険で、やはり、皆様おっしゃっているように増税というのは不可避であると私は思っています。ただ、必ずしもその理解が国民の間に依然として広がっていないということがあるのだろうと思います。そうした意味では、財務省を中心に、国民の理解を深める努力は必要だろうと思います。
それから2点目として、防衛は非常に大事ですが、中国とは経済関係も非常に日本は深いという複雑な事情があります。これは東西冷戦の対ソ連との関係とはかなり違うだろうと思います。年にもよりますが、中国は最大の輸出相手国でもあり最大の輸入相手国でもあり、そうした国とどのように対立していくか。尖閣列島の問題のときにも、日本企業が中国国内で非常に痛い目に遭った経験もある中で、そうした難しい問題もあるかと思います。そうした意味では、防衛の問題も幅広い、省庁間をまたいでというお話もありましたが、かなり総合的に解決しなければいけない問題は数多くあるのだろうと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。神保先生、河野さん、ありがとうございました。2点、申し上げたいと思います。
第1は、イージスアショアをめぐっての経緯も踏まえまして、重点分野の整備に当たりましては、開発から運用、ライフサイクルコストまでを含め、多面的な評価項目を設定し、代替案をきちんと評価することが必要と思います。特に次期戦闘機の開発や、事項要求となっておりますスタンド・オフ防衛能力や総合ミサイル防空能力の強化などについては、多様な侵略シナリオの想定、同盟国の兵器体系との関係、人的資源、稼働率、そして、隘路、クリティカルパスですね、そして、開発の時間軸などを考慮したシステムの評価体系を策定し、代替案を明確な手順で事前に評価し、国民の理解を得ることが必要と思います。
第2は、継戦中にも機能する国債市場の構築に向けて、日本国債の信用を高めることです。イギリスとフランスの最終戦争となったナポレオン戦争で、人口、経済規模で、大陸のフランスに劣るイギリスが勝利した大きな要因は、イギリス国債の信用力にあったと見ることができます。長く続いた絶対王政とフランス革命で大混乱に陥ったフランスは、ナポレオンの下で国債を発行できませんでした。これに対して、名誉革命後、国債を発行するごとに、その利払費を新税の創設を繰り返すことによって担保し、国債の信用力を守ってきたイギリスは、低い金利で大陸からも資金を調達し、ポルトガルとの連合軍や、そして、ワーテルローでの反仏連合国の指揮を取ったウェリントン卿に、そして、同盟国に金、ゴールドを送り続けることができました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、また、こちらの会場に戻りたいと思います。
まず、末澤委員からお願いします。
〔末澤委員〕ありがとうございました。今日も2027年という話が出てきました。2027年8月1日がちょうど人民解放軍の建軍100年で、10月頃には今回3期目に突入した習近平氏が4期目と、次回は総書記のみならず、場合によったら党主席のポストにつく可能性があるということで、これからの5年間に台湾有事の可能性が指摘されております。デービッドソン司令官、マクマスター元補佐官、また、最近ですと、ギルディー海軍作戦部長は二、三年という話もありまして、ミリー議長も、1年、2年はなくても3年、4年、5年という話をされていまして、米国でも相当危機感が高まっていると思います。
ただ、私が思いますのに、やはり日本の状況と、過去の状況と今後の状況のギャップがあり過ぎる。そうしたことで少し韓国の話をさせていただきたいのですが、韓国では御案内のとおり最近BTSのJINさんが、この12月に30歳になるので兵務庁に兵役の延期申請を取り下げて軍に入隊するということが発表されました。韓国は日本と違いまして、戦争状態です、国際法上は。まだ朝鮮戦争は終わっていませんから。ですから、18歳から30歳ですか、本来28ですが、男性は全員兵役につかないといけない。陸軍及び海兵隊は18か月、海軍は20か月、空軍21か月、その後も8年間予備軍に入って、40歳までは民防衛隊に入らないといけないということで、向こうは本当に人員の確保の問題があります。日本は、今日お話ありませんが、本当に自衛隊の定数、まだ相当充足率は低いわけですが、今後大丈夫なのかという問題と、韓国は先般、ポーランドにいろいろな装備品の売却が決まりまして、先週も、新たな装備品の契約が決まったのですが、ここまでですとK2ブラックパンサーがライセンス生産含め980両、また、K9自走砲がライセンス生産を含め648両、あと攻撃機48機、また、先週決まったのはK239、天舞と言われる多連装ロケットシステム、これを300両、総額40兆ウォン、日本円で4兆1,000億の大型契約を結んだ。それがある面、戦争状態にある国はそうなっていますね。
一方、翻って我が国の防衛装備品、今回の概算要求を見ましても、基金をつくるとか、多品種のいろいろなミサイルをつくるということですが、これはガラパゴス携帯の世界でありまして、今のiPhoneなど、グローバルスタンダードな兵器体系とは違う。携帯の話にしましたが。実はアメリカのF35、ジョイント・ストライク・ファイター、また、今、欧州ではスカイシールド構想というのが出てきました。これは14か国プラス、ノルウェーです。対空ミサイルシステムを共通化する。ロシアでさえアルマータという戦車とか自走砲とか全部共通化する。共通化、プラットフォームのファミリー化がグローバルスタンダードです。つまり、日本の防衛産業もグローバルスタンダードな装備品をつくることが長い目で見て極めて重要だと思います。
また、自衛隊も防衛庁も、やはりグローバルスタンダードな調達慣行に移行しないと、これは本当にコストの面、持続可能性の面、あえて言えば実戦で使えるのか、この面でも、慣行をぐっと変えていく必要があるだろう。そうしたいろいろな面で、人的な面、装備面、やはり相当アウフヘーベンといいますか、レベルを転換して発想を変えていかないと、現実には、全く台湾海峡有事には対応できないと思います。
それで、元統合幕僚長に一つ御質問したいのですが、今日は反撃能力が重要であるということですが、先ほどの事務局の説明ですと、25ページですか、有事のシナリオがあります。反撃能力、スタンド・オフ・ミサイルは上から四つ目に出てきます。実際は2番目、3番目、つまりミサイル攻撃、空爆で、第一撃でやられる。第一撃をしのいで、どうやって反撃をするのか。その秘匿性、抗堪性、今日は実は読売新聞朝刊にトマホークを導入するという話がありまして、これはどうもイージスコンバットシステムに搭載するということですが、イージス艦をどうやって守るのか。こうしたことを含めて本当に反撃能力を保有して意味があるのか、その辺りをお伺いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕神保先生、河野先生、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。ウクライナ危機と安全保障環境の変化を踏まえた防衛力の整備が必要であるというのも、一定の国民のコンセンサスを得ていると思っておりまして、そのことを踏まえると、今の防衛力に関する議論は、戦後の日本の安全保障政策の大きな転換点になる可能性があると思っております。それは、ある意味、周辺諸国との緊張を高める可能性もあるので、そこは私たちも覚悟を持って議論していかなければならない、気を引き締めて臨まなければならないと思っているのですが、一方で、大きな転換点ということだけに、幅広い大局的な観点から、あるべき防衛力を検討していくことが大事ではないかと思っています。
財務省の資料にもありますように、国の安全保障はいわゆる防衛力だけではなくて、財政力や経済力、さらに食料とかエネルギーとか含めた総合的な包括的な安全保障の観点から考える必要があるのではないか。特に日本は資源の乏しい島国であって、資料でも示されたように様々な脆弱性を抱えている。この課題に向き合うことを抜きにして、安全保障の議論をすることはあり得ないと考えております。
それから、大事なのは専守防衛との兼ね合いを考えることも重要かと思っています。戦後の日本の国是となってきている原則に基づく平和外交が、アジア諸国から一定の信頼を得て、それが日本の安全保障に役立ってきたという指摘もあると思います。
ただ、河野先生おっしゃられましたように、もう今は攻撃力、防御力というのは分けて考えられない時代になっている、おっしゃっていることもっともな話であると思っております。
そうなると、専守防衛の考え方を改めて整理し直すことが大事なのではないか。そうした上で、あるべき防衛力を見定めた上で、一つ一つ防衛費、必要な事業を積み上げていくことが大事であると考えています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林毅委員、お願いします。
〔小林(毅)委員〕神保先生、河野先生、お二方とも大変分かりやすくて、私の中でも、いろいろぼやっと考えていたものが非常に整理されたような気がいたします。
その上で、いろいろ考えたのですが、では何をどうやって、どのようにして優先順位をつけていくのか、何が必要なのかということで考えるときに、一つ、時間と空間というふうに考えてみても良いのかと、今のお話を聞きながら思いました。
時間というのは、一つは、すぐに調達、配備、装備、それから量産できるもの、これをまず優先させるということと同時に、実際に使うまでにはかなり時間がかかるもの、先ほど船などは5年ぐらいかかるというお話もありましたが、この二つをどのように組み合わせていくのか。すぐに調達できるものについては、今最も有効なもの、これを使うと非常に効果的なものに絞っていく。それから、時間がかかるものという中には、一つは基礎研究から始めて、研究開発から始めていくというのもあると思うのですが、特に新領域では技術が陳腐化する速度も速いと思いますので、こうしたことを考えると、先ほど何人かの先生方からお話がありましたが、やはり民間あるいは大学とか研究機関とか、そうしたところと共同することを真剣にまた、あるいは友好国も含めてそうした海外との共同研究を考えて、スピードアップすることが必要なのではないかと思いました。
ただ、こうした空間ということでは、さっき神保先生がおっしゃっていた、近接領域から遠方からの攻撃、この二つをどう組み合わせていくかということであると理解します。
ただ、この二つには入らないかもしれないが、恐らく、万人がこれはすぐにやらなければいけないと思っているのが、ウクライナ侵攻以降、非常に人の言葉に上ることが多くなった継戦能力であると思います。この継戦能力と、今言いました時間軸、空間軸、そうしたものの組合せ、これをやっていくとおのずと優先順位は絞られていくのではないのかという感覚を持って今のお二方のお話をお伺いいたしました。
どうもありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕御説明ありがとうございました。私からも何点か、できるだけ手短に、既に何人もの委員の方がおっしゃっていますが、防衛を支えるのは経済力であり財政力であると思います。ですので、どうやって防衛の強化と経済の成長を両立させるかがポイントかと思います。
ただ、念のため、くぎを刺すようですが、例えば防衛費を新たな景気対策や経済対策として位置づけるのは避けるべきであると思います。つまりは軍事ケインズ的な思考です。こうした考え方は戦前にあったわけです。
むしろ、デュアルユースとか民生技術の軍事転用とかを進めるということがあれば、民間経済との整合性を保てるのではないかと思います。確かに防衛装備品は特殊と言われるのですが、今、戦争で活躍するのはドローンとかAIですので、こうしたものはむしろ民生との垣根は低いのではないかと思います。
また、繰り返しになりますが、危機に備えて財政余力の確保は必要です。先日、IMFからフィスカルモニター、オクトーバーが出ていましたが、その中でも、危機に備えるためにはフィスカルバッファが必要であるということはさんざん強調されているとおりです。
それで、これもよく言いますが、防衛費のためには経常的な財源が必要だろうということで、ある程度の増税はやむを得ないということになるとは思うのですが、ただ、一方では税制改革をきちんとやって、まさに応能原則というのであれば、きちんと応能原則に即するような形の税制を整えていくことを併せてやる必要があると思います。具体的には、所得税改革は必須かと思います。これは税調で議論すべきことですが。
また、防衛予算の効率化と透明化が必要です。何人かの御指摘があったと思いますが、後年度負担が非常に不透明です。むしろ、後年度負担をきちんと予算計上して明確するということと、それからNATO基準と最近言いますが、例えば防衛に関わる予算の全体像を見せるという仕組みが良いかと思います。もちろん、今、防衛産業が大変であるという話もありますが、だからといって随意契約とか、国営化も私はどうかと思いますが、保護するというよりは、日本の中小企業政策と近くなってしまうので、保護するのではなくて、きちんと育成するという視点が必要です。競争力の強化とか、そうしたところに向けていくということがあってしかるべきであると思います。
また、継戦能力はすごく重要であると思いますので、これはある意味、部品とか弾薬といったものについては、防衛にかかるサプライチェーンの全体像が見えるように、サプライチェーンの見える化は併せて進めるべきかと思いました。
簡単に2点だけ質問。今日の話で出てこなかった韓国ですが、例えば、軍事的なことを考えたとき、韓国との関係はどのようになるのか、一緒に共同戦線を張るのかどうかという話と、それから、本来、防衛と外交は一体でありまして、一方ではけんかを仕掛けるようなことを言い、一方では、外交でどうやって、外交の窓口がなければ相手の意向も分かりませんし、どこでけんかをやめるかも分からないので、防衛と外交は一体的に考えるべきではないかと思うのですが、その点いかがでしょうかという質問です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
一応、こちらに発言希望があった方は全部指名したと思います。
それで、お二方の先生方には11時半になりましたら、幾つかの質問もありましたし、それから、最後に全体を聞いてのコメント等を頂戴したいと思います。ということは逆に言うと、あと14分ぐらいは時間がまだ残っているということですので、追加で、また、御質問があり、あるいはお考えがあれば、御発言の時間がございますので、ぜひ、せっかくの機会ですので、お願いをしたいと思いますが、いかがですか、赤井委員、良いですか。
それでは、せっかく来ていただいているので、後が詰まったりすると困りますので、まず、今までの議論をお聞きいただいてのコメントと、それから具体的な質問もございましたので、有識者の先生方お二方、順序はプレゼンの順番で、神保先生、それから河野先生と、この順番で御発音を頂戴できればと思います。
それでは、神保先生、お願いいたします。
〔神保講師〕委員の皆様から、大変刺激的な、かつ、勉強になるコメントをいただきまして、ありがとうございました。特に防衛力整備と財政健全性の考え方、幾つかパターンも示されたように思いますし、私自身大変勉強させていただきましたことを、まず御礼申し上げたいと思っています。
その中で幾つか具体的にいただいた質問について、お答えさせていただきたいと思います。河村委員から海外装備移転と国際共同研究に関して、ライク・マインデッド・ステーツとの研究共同開発は可能かという質問ですが、これは可能でございます。2014年の装備移転三原則とともに、防衛装備移転三原則の運用指針が定められているのですが、その中で、アメリカをはじめ我が国との間で安全保障面での協力関係のある諸国との国際共同開発、生産に関する際の海外移転というものは指針の中で特に明示されて認められているということです。
小林先生からは、国民保護に関する御質問がございました。これはかなり遡ってですが、平成15年6月に事態対処法という法律が成立いたしまして、その翌年に、国民保護法という法律が同時に成立しております。国民保護法によって各自治体は押しなべて国民保護計画というものを策定しなければいけない立てつけになっていて、平成18年に、それが全て完了しているということになっているので、皆様が住んでいる自治体はすべからく、実は国民保護計画を持っているのですが、問題はそれが十分に認知されてないばかりか、国民保護計画に基づく訓練も実施されている自治体はほとんどなくて、かつ事態の変化がどんどん進んでいるにもかかわらず、それを見直していくという、いわゆるこの計画が十分に運用されてないというところが問題です。
例えばJアラートが鳴って、中に隠れましょうと言われても、非常にシュールな状況で、一体何をすれば良いのかということが、やはり、より切迫したシナリオとともに国民がどう行動するのかということを、より実態に合わせて考えていかなければいけないと考えております。国民保護計画にきちんと魂を込めていくということが、すごく重要であると思います。
中空委員、間違っていないでしょうか、御質問いただきました。2%であると安心かということですが、これは、やはり日本が取るべき防衛戦略がどうあるべきかという考え方によって変わってくるということです。例えば、中国と同じだけの装備を持って、それをバランスさせなければいけないという考え方を取れば、それは全く足りません。相当程度やらなければいけないのですが、それでも、中国の作戦計画をしっかりと拒否する、彼らにとってのビクトリーという状態をもたらさないような拒否能力を持つという点でいうと、2%は相当有効に機能すると考えております。
したがって、防衛戦略の目標、その構成をどこに置くかによって、必要な所要は変わっていくということなので、私は2%というのは一つの、目標軸としては、参照し得る内容であると思います。
また、台湾に関する御質問がありまして、もちろん、中国の人民解放軍にとっても、台湾に対する全面侵攻作戦を成功させるというのは、かなりハードルが高いと私は思っています。ただ、その可能性がないかと言われると、それは過去のどの段階において比べても、相対論としては高いと思います。それは明らかに、意図としては、やはり非平和的な解決、つまり武力統一による解決というものを、正規に中国は言っているわけですし、それは反国家分裂法という法律によっても定められ、それに従って人民解放軍は着々とその能力を高めている。意図と能力が結びついたときに、その蓋然性というのは飛躍的に高まるというところでいうと、やはりこれはデビッドソン前インド太平洋軍司令官がおっしゃったとおり、2026、2027、2028というタイムラインというのは、極めて重視すべき、緊張を高めるべき時期であろうと思います。具体的に言うと、それは、いわゆる全面侵攻に伴う揚陸能力が能力として高まる時期であると思っているところでございます。
神子田委員から切離し論ということがおっしゃられまして、私、この理屈はよく理解しているつもりでございます。ただ、私自身の考えでは、台湾における有事を日本の有事と切り離すことは、ますます難しくなっているのではないかと思いまして、それは中国の気持ちになってみると、これは地続きではないので、いわゆるハイブリッド型のオペレーションはすごく難しくて、船に乗せて大規模な攻勢をかけるときに、揚陸艦というのは脆弱です。それが攻撃されないようにするためには、しっかりと海空の優位性を中国が獲得して、その優位性を獲得するためには、日本における在日米軍基地、そして攻撃アセット、日本がもし攻撃アセットをそのときに整備されていれば、それらを恐らくしっかりとたたいてから上がってくるということで、まさに、台湾有事は日本有事等も、裏表の関係にあるというのが今の現状で、日本だけがそこから離れるというのは実態としては、恐らくかなりあり得ない。しかも最近の軍事演習でも、中国は日本の排他的経済水域にミサイルを落としていることを考えると、与那国島と台湾の距離は僅か110キロですから、全面侵攻したときに、日本の海空域が切り離されるということは、現実としては少し難しいかと思っているところでございます。
打撃力に関してはいろいろな見方がございます。先ほど申し上げたように、遠方で日本がたたける能力は、日本の攻撃力の厚みといいますか、いろいろな形でのレイヤー化というものを増す関係性を持つと同時に、やはりこれからの、統幕長おっしゃったように打撃力は日本だけで完結するもの、領域はあると思うのですが、向こうの、いわゆるチープな脅しに対して、しっかりとした反撃力をかけるという意味では完結すべき領域があるのですが、本格的に運用するときは日米共同であると思います。逆に言うと、日本が打撃力を持っているからこそ、アメリカが打撃するときの共同作戦計画に加われる、ことなるということでありまして、撃ってほしいときに撃ってもらえないとか、逆に撃ってほしくないときに撃ってしまうとかというのが同盟のジレンマの本質であるとするならば、やはりストライクするときはストライクトゥギャザーという形での能力を持っていくということが非常に重要なのではないかと私自身は思っています。それはある意味、例えば、朝鮮半島有事においても、韓国のキルチェーンとかアメリカの打撃力によって、北朝鮮が東京に対して撃つ可能性だってあるわけです。逆に言うと、日本が撃つことによってソウルが火の海になる可能性もあるということを考えると、打撃をするときの結果責任を、やはり共有する仕組みがすごく大事で、そのためには日本自身も打撃力を持って、そのプランニングの中に入っていくというのが非常に重要ではないかと思います。
最後に、韓国との関係そのとおりで、私が今申し上げたような関係で、やはり日本と韓国は多くの意味で戦域を一体としているという関係ですから、日韓の防衛協力、日米韓の安全保障協力というのは、ますます推進していかなければならないと考えています。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、河野先生、お願いします。
〔河野講師〕順不同になりますが、御質問に簡潔に答えていきたいと思います。
まず、GDP2%は安心かという話ですが、防衛費というのは、例えば橋だったら、これは幾らとか、道路であると幾らと出ます。防衛費は安心を得るために幾らという話になります。そうなると人によって違います。ある意味、青天井になってくるかも分かりません。
今までGNPおおむね1%でやってきました。これは全然積み上げではないです。経済力を度外視した防衛力はないでしょう。その意味の1%。しかし、もうこれでは足りなくなったということで、世界を見てみたら、NATOは2%ですね。したがって、これを持ってきて、これを基準にして考えましょうというのは、私は合理的な話であると思います。
また、5年間、大丈夫かという話ですが、先ほど言いましたように、正面装備に集中すると、やはり時間がかかります。ただ、整備とか修理とか、そうしたものに力を上げれば、今動いてないやつも動けるようになるわけです。ですから、この5年間は今持っている防衛力を最大限に動かせる、活用する、こうしたこともやはり大事であると思います。
国営化。昔は工廠というのがありました。ところが戦後、工廠の施設とか整備とか、例えば呉に戦艦大和のふるさととありますが、あれは昔、呉の海軍工廠だったのですが、今は民間会社です。それは全部売り払っているので、これを元に戻すのは難しいかとは思いますが、ただ、そうなってきたときに、工廠の役目をどこが担うかといえば民間会社になってしまいます。これは別の問題、要するに、軍だったからやってくれるわけです。民間会社にその責任を負わせるということが良いのかという、そうした問題は確かにありまして、ここはまだ結論は出てないということであると思います。
また、台湾有事は、もちろん日本が台湾に乗り込んでいって、台湾と一緒にやるなどとは全然考えていないわけです。ただ、一つ言えることは、中国の理屈は、尖閣は台湾省の一部であると言っているわけです。ですから、台湾有事になったときに、尖閣だけは、これは10年後の話に向こうはしてくれるかとなると、同時に来る可能性があります、一挙に。恐らく、私だったら一挙にやろうと思います。そうなると、これは日本の問題であるということです。
また、例えば制海権、制空権の戦いになったら、やはり日本は影響を受けるわけです。ですから、日本の立場というのは、あくまでも日本を防衛するために、どうするかという立場で、台湾に介入して、台湾と一緒に戦うということは誰も考えていないと思います。
また、外交もやるべきであると、大賛成です。ただ、外交と言われる方は、力の論理は駄目だ、だから外交であると言われるのですが、ここはやはり現実問題として両輪を回す必要があると思います、外交と抑止力の。この議論を、私は外交は大事であると思います。絶対動かさないといけない。この両輪を回す。外交だけで行くという議論になりがちな面がある。そこは正す必要があるのではないかと思います。
また、韓国ですが、もちろん防衛協力は大事ですが、では、有事に韓国とともに同じステージに上がるか、それは、私のときは考えていませんし、台湾問題に韓国が来るというと、それも考えられないと思いますので、有事で韓国と行動するということは、今の自衛隊も防衛省もそれは考えていないのではないかと思います。
最後、大きな話ですが、専守防衛です。ここはいろいろ御議論あると思います。私は、憲法9条は、国際紛争を解決する手段として、武力の威嚇、武力行使はしてはならない、これは絶対賛成、絶対に守るべき。
ただし、こちらが侵略を受けたときにまで、必要最小限の対応でしかやってはいけないという、守りをですよ、守り、そこまで憲法9条は本当に要求しているのかということを、私かねがね疑問に思っておりまして、そうした意味ではもう1回、本当に憲法9条がどこまで要求しているのかについて、専守防衛の再定義という意味で、考えていただければとは思っています。
反撃です。これは抗堪性と一体であると思います。それはしのぐということです。今は、これを反撃してしのいだとしても、アメリカさんお願いしますという話です。それは、日本は一緒に行ってくれないのですかという話になってくるわけです。ですから、ここは、反撃能力というのは備えておく必要はあると思います。やれば、向こうは来るかも分からないということは、ある意味抑止力になりますので、ですから、これを今全面的にアメリカに依存しているということを、日米共同でやりましょうという体制に持っていくべきであると。戦闘の順番としては、反撃というステージが出てくる、それは絶対あり得る話ですから、そこは抜かしてはいけない。
〔増田分科会長代理〕お二方の先生、ありがとうございました。
それでは、主計官からお願いします。
〔渡辺主計官〕御質問にお答えします。
河村委員から、神保先生からもお答えありましたが、共同開発はあり得るかということで、今、原則上あり得ることになっております。現に資料でもお示ししていますが、国際マーケットをどう取り組むかというのは、この産業は持続的な成長をするために極めて重要であると思います。
ただ、そのためには、末澤委員もおっしゃいましたが、グローバルスタンダード、例えば戦闘機ですとか軍用機を飛ばすのも、実は相当部分の基準は民生品と同じです。これをきちんとクリアしていくノウハウをつけませんと、外に出て行けない。ですから、防衛省の仕様だけを守っていれば良いか、やはりそこから脱却していかなければいけないと思います。
藤谷委員から、調達などの御指摘がありました。これはまさに御指摘のとおりであると思っておりまして、構造的にも、仕組み上は手厚い仕組みになっていますが、ひずみがそこに生じている。資料にもありますが、度重なる仕様変更だったりとか、契約にない要求がある、こうしたものをやはり透明化していくような、全体のプロセスを改善していく、それを仕組み上どうするかはありますが、必要であると思います。
ただ、より根本的には、お客が1人で、しかもそこは独自仕様で、そこが言ったものに全部応えなければいけないというところが、やはり一つの問題点であるのと、あとはこれ委員の皆様もおっしゃっていましたが、ライフサイクルコストですとか、こうした全体を正しくきちんと認識しながら進めていくことがありませんと、なかなか適正な調達につながらないのではないかと思います。
中空委員から、国有化、今まさに河野さんからお話ありましたが、事務的なことで申し上げると、例えば、資料に入れていますが、初動費というのは、ある意味国が全額出していますので、国が買って、貸すのか、全額お渡しするのか、それはある意味、経済実態においては似ているようなところもあるのかもしれません。ただ、物を超えて運営まで入ってきますと、それをどう効率的にこなしていくかという問題も出てまいりますし、利益率の問題も、結局、欧米の企業が利益率が高いのは、もちろん慣行もあると思いますが、付加価値力に対して一体幾らでつくれるのか、その差額が利益になっているということを考えると、やはりグローバルマーケットの中で、どのようなところを日本は狙っていくのか、そこで付加価値をどうやって出せるのか、それは末澤委員がおっしゃった話などとも通じるかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ほぼ時間も参りましたので、本日の議題はここまでとさせていただきます。
本日は、神保様、河野様、大変貴重なプレゼンと、それから質問に対しましても、最後まで大変丁寧に御対応いただきました。御多忙なところ、貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。
本日の会議の内容につきましては、会議後の記者会見で私から紹介させていただきます。したがいまして、会議の個々の発言につきましては、皆様方から報道関係者等に対してお話をすることのないよう、いつもながら御注意をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
次回は11月7日月曜日9時半から開催を予定しておりますので、よろしくお願いします。
それでは、本日は、これにて閉会いたします。ありがとうございました。
午前11時30分閉会