財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和4年10月13日(木)13:30~15:40
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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財政総論(補足)
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GX(エネルギー・環境)、中小企業について
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地方財政について
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
秋野副大臣 井上副大臣 宮本大臣政務官 金子大臣政務官 青木大臣官房長 新川主計局長 寺岡次長 中村次長 前田次長 八幡総務課長 小野主計企画官 大久保司計課長 渡邉法規課長 松本調査課長 一松主計官 三原主計官 佐久間主計官 有利主計官 小澤主計官 寺﨑主計官 大沢主計官 端本主計官 河口主計官 坂本主計官 渡辺主計官 内之倉主計監査官 山岸予算執行企画室長 鈴木主計企画官 園田公会計室長 |
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委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 安永竜夫 |
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臨時委員 |
上村敏之 宇南山卓 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 小林毅 末澤豪謙 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 平野信行 福田慎一 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午前1時30分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、会議はこの後始めますが、冒頭カメラが入りますので、まず、そのままでお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕それでは、ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日は、冒頭から秋野副大臣、井上副大臣、金子大臣政務官にお越しいただいております。どうもありがとうございます。なお、宮本大臣政務官も、後ほど、お越しいただく予定となっております。
そして、本日の議題ですが、財政総論の補足、そしてGX、中小企業、さらには地方財政といったテーマで議論を行っていきたいと思います。
このまましばらくお待ちください。
それでは、報道関係の方、御退出をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、事務局説明に入ります。
まず、松本課長から、財政総論の補足について、簡潔に説明をお願いします。
〔松本調査課長〕主計局調査課長の松本でございます。よろしくお願いいたします。
前回、9月26日の財政総論の審議でも御議論いただきましたが、最近、イギリスの状況が特に注目されておりますので、補足で報告させていただきます。資料1でございます。
1ページ目をお願いします。
イギリスではインフレ抑制に向けて金融引締めを行う中で、9月23日に財政拡張的な成長戦略が発表されてございます。
中身ですが、2.5%成長を目指して、エネルギー価格高騰対策や減税を行うといった内容でございまして、今年度の国債発行の増額も盛り込まれてございます。その先の財政見通しが示されなかったことについて批判がありますほか、金融政策と財政政策の不整合も指摘されまして、結果的に金利が急騰、あるいは為替が急落といった状況に陥りました。
これに対しましてIMFは、下でございますが、大規模で的を絞らない措置は推奨しないという異例の警告を行っております。
また、中央銀行、金融引締めを進めていたところですが、金利の上昇があまりにも急だったことを受けまして、一時的に長期国債の買入れを行うという真逆の対応を取ることに至っております。
また、財務省、財政責任庁の財政見通し公表を11月23日とすることで一旦発表しましたが、それでも遅いと批判がありまして、改めて10月末への前倒しを公表したということでございます。
さらに、一番下ですが、一度表明しました所得税の最高税率の引下げの撤回をした、ということでございます。
もちろん日本とイギリスは状況が違うということですが、一たび経済財政運営に関する信認が損なわれますと、市場が鋭く反応しかねないということは一つの教訓になると思われます。
2ページ目はIMFの警告、先ほど申し上げたものの内容と、格付会社各社もネガティブな見通しを示していることを、資料で御紹介してございます。
3ページ目は、前回9月26日にも提出したIMFのスタンスに関するペーパーでございますが、最近では財政赤字を縮小すべき、ターゲットを絞った支援とすべき、あるいはインフレ対策で引締めが必要な中では財政支援も少なくとも財政中立的にすべき、といったことが言われている中で、イギリスにおいて説明したような状況が生じたということでございます。
私からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、事務方の説明を先に済ませておきたいと思いますので、次に有利主計官から、GX、中小企業について、簡潔に説明をお願いします。
〔有利主計官〕経済産業・環境係担当主計官の有利です。GXと中小企業分野について御説明いたします。
まず、GXです。2ページを御覧ください。
ここでは、現在議論中のGX向けの政府投資に関して、基本的な考え方を提示しています。本年6月の「新しい資本主義実行計画」、それから「骨太の方針」におきまして、150兆円超の官民の投資を先導するために、十分な規模の政府資金を、将来の財源の裏づけを持ったGX経済移行債により先行して調達する、という方針が示されました。したがって、具体的に償還財源が確保できた範囲内で、GX経済移行債を発行する必要がございます。
また、GX向け政府投資は、温室効果ガス削減に向けて効率的・効果的なものとなるように、内容の精査と執行管理をしっかり行う必要があり、これらにより、地球環境、経済、そして財政のサステナビリティを一体的に確保していくことが重要と考えています。
3ページを御覧ください。先ほど申し上げた償還財源の確保ですが、それに当たっては、まず、GX向けの政府投資により、民間において脱炭素のための費用が軽減されたり、事業が拡大したりする受益の観点、温室効果ガスの排出抑制の観点、温室効果ガスの原因者による負担の観点等を踏まえて、具体的かつ確実な財源を確保する必要があると考えております。
4ページです。2030年に向けた温室効果ガス46%削減目標のうち、電力由来のCO2削減が25%分ですが、電力以外、例えば石油とか石炭とかガス、このCO2削減が15%分となっていまして、電力由来の削減分は既に大きいのですが、それに加えて、電力以外の15%分も、例えば、車のEVへのシフトといった電力への付け替え分があるので、追加的に電力由来のCO2削減が必要な状況でございます。我が国の発電比率の75%が化石燃料由来と、高いのがおおもとの原因ですが、電力がCO2発生の原因、排出抑制の観点から、大きなウエイトを占めることがお分かりいただけると思います。
5ページ目です。GXの効果ですが、地球温暖化対策のみならず、1次エネルギー自給率が極めて低い日本にとっては、貿易収支、経常収支の改善を通じて、あるいは、これは経団連の試算ですが、産業経済システムの転換やイノベーションによって、経済全体に裨益すると考えております。
6ページ目でございます。アメリカでは、エネルギー安全保障・気候変動投資を盛り込んだインフレ抑制法が8月に成立しましたが、ここではむしろ歳入超過となるような財源確保を行っております。
EUは、次世代EUという復興基金を設置し、その4割をグリーンに充てるとしていますが、日本の今回の考え方と似て、まず、EU共同債を発行して資金調達をしつつも、償還財源の裏づけをしっかり確保してきています。こうした動きも参考にする必要があると考えています。
続いて、これまでのグリーン関連の予算事業から見た、今後のGX投資の課題について御説明します。
まず、7ページです。導入支援の在り方ですが、脱炭素に加えて、成長・イノベーションをもたらす、そうした観点から、高性能・高効率の設備等への支援の重点化、それから規制基準との組合せが重要と考えております。
次に、8ページでございます。研究開発支援の在り方ですが、実用化を目指す研究開発は民間が行うのが基本であると思いますが、民間のみでリスクが負えない場合には国が一定の支援をしつつも、民間企業が応分の資金負担と研究開発への関与を行うことで、社会実装・製品化につなげていくことが重要です。また、モニタリング指標、ステージゲートなどにより進捗管理を精緻に行うこと、スタートアップの活用、さらにプロジェクト選定・管理に当たって、アウトカムもよく精査することが必要であると思います。
9ページですが、これは予算支援だけでなく、規制も組み合わせていくべきという観点から、欧米の例をお示ししています。
10ページですが、CO2発生源の一つであるごみの焼却ですが、リサイクルの促進によりCO2発生を減らすとともに、広域化・大型化によって、発電設備のあるごみ処理施設の発電効率を高める必要があると考えています。その上で、リサイクル促進に加えて人口減少によりごみの排出量は減少する予測となっていますので、ごみ処理施設の更新は、この予測と整合的な範囲で行うべきと考えています。
続いて11ページです。前回の総論のときの資料にもこの資料はあったと思いますが、最近、OECDがレポートを出しましたので、その記述を加えております。下から二つ目の矢印ですが、エネルギーコストの高騰の影響を緩和するための財政措置は、最も脆弱な人々をうまく対象とするのが理想的であり、例外的な価格圧力の時期を超えて続けてはならず、エネルギー消費の削減のインセンティブは維持されなければならないとの提言がなされております。
続きまして、中小企業に移らせていただきます。
13ページです。コロナ禍で、極めて多額の中小企業対策を行ってきましたが、左下のOECDのレポートを見ると、日本は給付金・補助金という現金支給にアクセスし得た割合が、OECD加盟国の中で最も高かったとされており、我が国の給付金・補助金による中小企業支援は他国に比しても大きかったということが分かります。
そのため、14ページですが、コロナ禍での倒産件数を見ますと、これまでの支援策の効果もありまして、それ以前よりも低い水準となっております。一方で、経常利益を見ると、中小企業はもうほぼ回復してきていますし、中堅企業や大企業は過去最高益といった状況になっています。
15ページですが、こうした手厚い支援を行ってきているわけですが、それを続けると資源の効率的再配分を抑制し、生産性低下を通じて長期的な成長を押し下げるリスクもあるとの指摘がなされております。中小企業に対する支援の量的な縮減とともに、支援が生産性向上につながっているか、しっかり検証すべきと考えます。
16ページですが、コロナの影響を踏まえて措置された事業再構築補助金です。コロナの状態が落ち着いてくれば出口に向かうべきものと考えておりまして、特に、補助率が最大4分の3と高い点を見直していくとともに、より付加価値が望める産業への業種転換等への支援といった、産業構造転換につながる支援にシフトしていくべきではないかと考えています。
17ページです。ゼロゼロ融資につきましては、9月末に終了しましたが、金融機関の貸出に対する100%保証、いわゆるセーフティネット保証4号は継続しております。金融機関の貸出先企業へのモニタリング・経営支援を弱めないようにするためにも、今後の状況も踏まえつつ、適時の見直しが必要であると考えております。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、最後に地方財政の関係です。小澤主計官から説明をお願いします。
〔小澤主計官〕地方財政担当の主計官の小澤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
表紙を1枚おめくりいただくと目次がありますが、もう1枚めくって2ページを御覧ください。令和4年度を含めまして、近年、地方交付税交付金等は15.9兆円前後で推移をしております。
3ページ、地方交付税総額については、財源不足に関する国・地方の折半ルールや、一般財源総額実質同水準ルールなどを基に算定いたしますが、令和4年度においては、折半対象財源不足はなかったことから、赤字地方債である臨時財政対策債の発行額を大幅に圧縮しております。
4ページ、令和5年度要求は仮試算という位置付けけですが、令和4年度に引き続き、税収増により折半対象財源不足がなくなる見通しです。来年度予算につきましても、令和4年度と同様、臨時財政対策債の発行縮減に取り組んでまいりたいと思います。
1枚おめくりいただいて、ここから、国と地方の財政状況について、振り返っていきたいと思います。
御覧いただいている5ページは、フローの状況ですが、リーマンショック後や東日本大震災の時を含めて、国から地方に手厚い財政移転を実施しております。このため、国のPBは十分に改善が進まない状況ですが、地方のPBはほぼ一貫して黒字を維持している状況です。
6ページ、ストックの状況を御覧いただきますと、国債の残高は増加の一途をたどり、令和4年度末には初めて1,000兆円を超す見込み、他方で、地方の債務残高はほぼ横ばいという状況になっています。
7ページ、地方公共団体の令和3年度普通会計決算です。左から実質単年度収支、経常収支比率、基金残高のいずれもコロナ前よりも良好な結果となっています。
8ページ以降は、新型コロナ対応による財政状況の変化と課題について御説明いたします。
次の9ページ、新型コロナ対応は、令和2年度に本格化していますので、前年の令和元年度と比較をすると、コロナ対応に要した国と地方の歳入歳出の変化を抽出できるのではないか、という趣旨で資料を作成しております。
資料右側は、地方の歳入歳出の増減でありまして、吹き出しに赤字で記載されておりますように、地方には制度融資、時短協力金、医療提供体制の確保、特別定額給付金などを行っていただいておりますが、この財源はおおむね国庫支出金となっております。
資料左側は国の歳入歳出でありまして、地方への国庫支出金のほか、持続化給付金などの中小企業対策などを合わせると、合計46兆円となっておりまして、この財源はほぼ赤字国債となっております。すなわち、国も地方も総力を挙げてコロナ対応をやってきたわけですが、財源はほぼ赤字国債で調達をしているという状況です。
10ページ、地方におけるコロナ対策においては、地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施できるように、という趣旨で、臨時交付金を順次措置してきておりまして、総額16.4兆円に上っています。
11ページ、このような巨額な資金を地方公共団体の裁量に委ねて執行するということから、事業内容やその効果について住民にしっかり説明をして、公表して説明責任を果たすように要請しておりますが、約半数の自治体しか公表しておりません。速やかに公表していただきたいと考えております。
12ページ、こちらは春の財審でも御紹介いたしましたが、財政調整基金は不測の事態において真っ先に取り崩して、喫緊の政策ニーズに充てるべきものと考えますが、コロナ禍において、交付団体では、むしろ増えているという状況になっています。国から地方への財政移転が十分過ぎることから、一般財源が節約され、基金の増加につながったのではないかと考えられます。
13ページ、基金と補完的な関係にある単年度収支の状況についても併せて見る必要があります。こちらの資料は、本審議会でオンラインで参加されている赤井委員による研究成果を紹介したものですが、単年度収支と基金増減を併せて見ると、大部分の都道府県、市町村で黒字となっています。上段の三つ目のキャプションに記載しておりますが、新型コロナ対策が新たな段階に移行していく中、このような状況を踏まえると、臨時交付金については縮減・廃止をしていく必要があるのではないか。また、今後の感染症対策においては、地方債による財源調達を含め、国と地方の負担の在り方を見直すべきではないかと考えます。
14ページ、これまで御覧いただいたとおり、国と比べると地方財政は良好な状況にありますが、先々を考えると、行政改革の手綱を緩めるような状況にはありません。
15ページ、会長代理の増田委員が10年ほど前に消滅する自治体、地方消滅と警鐘を鳴らされましたが、2040年には約半数の自治体で人口が3割以上減少すると見込まれております。このような中で行政サービスを安定的に提供していくためには、徹底的な行政効率化を図ることが必要となります。
16ページ、地方団体では職員数を約15%削減してきました。ただし、今後の生産年齢人口の減少を踏まえると、右側の四角で囲ってあります自治体戦略2040構想研究会報告にも提言されておりますように、半分の職員でも自治体として本来担うべき機能を発揮できる仕組みを構築していく必要があります。
17ページ、現在、政府では令和4年度中にほぼ全ての国民にマイナンバーカードを普及させることを目指し、国はマイナポイント事業をはじめとして3兆円以上の予算を計上しているところです。
18ページ、また、令和7年度末までに、自治体情報システムの標準化・共通化の実現を目標として、移行経費約1,800億円の予算を計上しております。
19ページ、これはマイナンバーカードや自治体情報システムの標準化・共通化といったことによってデジタル行政基盤が整備されますので、これを基にデジタル、AI、RPAを最大限活用することによって行政サービスの利便性の向上を図り、かつ、行政コストの削減を行って、これを地方財政計画にもしっかり反映していっていただきたいと考えております。
1枚飛ばして21ページ以降は、これまでの財審でも御議論いただいていた論点ですが、地方財政計画の歳出を増やすような状況にはないということを御説明していきたいと思います。
22ページを御覧ください。地方財政計画には、ほぼ毎年1兆円程度の決算乖離が発生しています。決算を踏まえた精算、または後年度の予算編成において、これらを適切に反映すべきと考えます。
23ページ、地方財政計画には、まち・ひと・しごと創生事業費1兆円や、地域デジタル社会推進費2,000億円といった特定の政策目的で計上している枠計上経費が1.6兆円ありますが、決算との対応関係が不明で、効果の検証ができない状況になっております。「見える化」を図るとともに、規模や配分方法についても見直しを行っていくべきと考えます。
24ページ、地方財政計画においては、一般行政経費のうち社会保障に係る経費が、この7年間で約6兆円増加しております。高齢化に伴う増もありますが、国と同様、地方でもこの圧縮に是非とも努めていただきたいと考えております。
25ページ、社会保障に係る経費は都道府県によって大きな差異があります。数年前に財審でも医療費について御議論いただいておりますが、こちらの資料は介護についての資料となっておりまして、上段が一人当たり介護給付費、下段が要介護認定率となっておりますが、都道府県によってやはり大きな差異があります。地方公共団体においては、こうした差異について主体的に分析を行って、適切に事業者への指導、または利用者への働きかけを行うことによって、コストの適正化に努めていただきたいと考えております。
26ページ、目次の最後になりますが、地方債務の早期返済ということで、27ページを御覧ください。建設地方債は大分減少してきましたが、上段の黄色いところ、交付税特会借入金は、ほとんど償還が進まない状況になっております。
28ページ、交付税特会借入金については、国負担分については一般会計で承継しておりますので、こちらの残高30兆円は全て地方負担分となっております。これまで財源不足が深刻化しているような年度においては、償還を先送りするということがありましたが、近年のように好調な税収によって、折半対象財源不足は解消されるという状況においては、できる限り前倒しをして、返済を進めていくよう折衝を行っていきたいと考えております。
私からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。事務方の説明は以上でございます。
本日は欠席ですが、広瀬委員、それから芳野委員から意見書を提出いただいております。お手元に配付してございますので、お目通しください。また、赤井委員はウェブで出席でございますが、赤井委員からも資料の御提出をいただいております。
それでは、これ以降、意見、あるいは場合によっては御質問を頂戴したいと思いますが、いつもどおり会場にいらっしゃる方は、ネームプレートを立てて合図をしていただき、テレビ会議システムの方は、挙手するボタンのクリックで合図をしていただきたいと思います。財政総論とGX、中小企業、それから地方財政と、大きく三つのテーマを取り上げましたが、御発言はまとめてしていただければ結構ですが、財政総論についてこうであるとか、地方財政についてこうであるとか、意見の内容が分かるようにおっしゃっていただければ、まとめて言っていただいて結構でございます。ただ、それぞれの方の御発言をいただくために、大変恐縮ですが、できるだけ手短にまとめていただきますように、事務方からは3分以内と書いていますが、手短によろしくお願いいたします。
それでは、会場から5名程度、御質問等々、御意見を受けさせていただいて、それからテレビ会議システム、それからまた会場に戻ると、いつもどおりのやり方で行っていきます。会場の方は、備付けのマイクをオンにして御発言いただき、終わりましたらオフ。それから、もし可能であれば、マスクを外しての御発言をお願いいたします。テレビ会議システムの委員の方は、ミュート解除、そして発言が終わりましたらミュートに戻していただく、この操作をよろしくお願い申し上げます。
それでは、御発言ですが、今日は、途中退席とも伺っておりますので、中空委員から順に、こちら側に指名させていただくこととしたいと思います。
それでは、中空委員、どうぞお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。手短にというくぎを刺されたので、二つぐらいでいきたいと思います。
まず、総論についてですが、イギリスが本当に良い例を出してくれていると思います。長期国債はぐっと上がりましたし、ポンドも史上最安値になったということで、これだけはっきりと財政再建ができない、財政規律が緩むとなると、売られるということが分かった。先生方にお話をすると、いや、それでも日本は売られないとよく言われるのですが、イギリスはポンドも刷っていますし、日本も円を刷っているということで一緒なので、相当程度良い例になってきた。
ちなみにですが、格付が下がりそうであると、私は下げてほしいと思っているのですが、スタンダード・アンド・プアーズとムーディーズがイギリスの格付を見直してくるのは10月20日です。ですので、これをもって日本もふんどしを締め直すということが必要かと思っています。その意味では、御説明のあったとおり、国民の人たちにも説明していけたらと思います。
二つ目ですが、GXの話です。GX経済移行債の話を主計官からしていただきましたが、これは全然出ないのですよねというのが、私は相当問題であると思っていて、総理がロンドンで発言されたのは5月です。私のようにマーケットにいますと、8月9月になるとさすがに出るだろうと、毎日のように外国の投資家は言ってくるわけですが、出ませんと。ですので、日本が本当にGXで成長したいと思うのであれば、これは財審とあまり関係ないのですが、早めにいろいろなことをやらなければいけないと思います。やりますやります、と言っているばかりで、全然出てこない。財審でGX経済移行債を考えるのであれば、主計官がおっしゃったように、どういう財源が必要かということをやらなければいけないのですが、炭素税の話も全然出てこない。GXリーグもどうなったのかよく分からない。そうした中で、果たしてGX経済移行債が本当に日本の経済成長に資するものになるのか。疑問が随分大きくなってきたと思います。
この場で発言することではないかもしれないのですが、では、どこで止まっているのだろうということも含めまして、GXに関しては少し進めていく必要があるのではないかと思います。
財政規律を守らなければいけないということと、だが経済成長していかなければいけないということで、様々な例が出ていることをお話しさせていただきました。質問ではありません。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、安永委員、どうぞお願いします。
〔安永委員〕GXと地方財政に関しまして、それぞれコメントさせていただきたいと思います。
GXにつきましては、今、中空委員から道筋が見えないというお話がありましたが、経団連、それから民間企業から見ますと、脱炭素も道筋であり、これに向けて先行投資をしている企業は多々あります。ESGの視点なくして企業経営はあり得ない状況になっているのは事実です。
一方で、日本という国を見ると、エネルギー事情と産業政策を考えた、GXのためのグランドデザインというものが、まだ残念ながらできていない。これが一番の課題であると考えています。経済効果は非常に高く、GXを実現すれば経済全体に裨益すると引用いただいたのは本当にありがたいのですが、このためには政官一緒になって、これからの道筋、政策パッケージをきちんとつくっていくことが必要であると考えています。
2030年で46%、2050年でネットゼロは長い道のりであり、しかも、そんなに簡単な話ではありません。長期間にわたって、民間の投資を引き出すための政策的な予算取り、あるいは、こちらに規制的手法についても書かれていますが、これは有効な手段であるとは思うのですが、間違ってもEUやアメリカのものをそのまま踏襲する、ということがあってはいけないと思います。なぜなら、彼らの置かれているエネルギー事情、あるいは、彼らが狙っている産業の方向性は、決して日本とは同じではないからです。日本が大事にすべき、生かしていく産業とは何かというと、やはり省エネ・蓄エネ、それからリサイクル・リユース、あるいは内燃機関も生かしながら、いかに脱炭素を達成するかということが重要であると考えています。
それから地方財政についてですが、見える化がなされてないことは、民間企業から見れば非常に驚きです。経費の見える化、あるいは使ったお金がどのように経済的な効果につながっているかを、データやきちんとした統計で示すことなく経営の、要するに財政の改善が起こり得るとは思えません。民間企業がそれらを緻密に見ながら改善を図っているのに比べて、やはり見える化やデジタル化をもっと強く推し進めていくことが必要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞお願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。いろいろなテーマがありますが、私も絞って申し上げたいと思います。
まず、GXに関してです。移行債の財源をしっかりということは、本当に言うまでもないことかと思います。それをやっていく、例えばGI基金ですが、私、基本方針の策定にも関わったのですが、やはり責任ある立場、ステージゲートですとか経営者の関わり方、取組などをしっかりと明確に開示することが何より大事かと思います。
特に、NEDOが今までやってきたもの、良いものもいろいろあるのですが、逆に、よかれと思って、内輪で詳しい人をやった結果、そこでの関係が、疑いを持つようなこともあり得るという話になっておりまして、誰が責任を持つのか、どのような形で責任を持つのか、まずかったことはどうするのかということ。情報公開と規律を含めて、すごくしっかりやっていく必要があると思います。これはGI基金だけではなくて今後、水素・アンモニアのサプライチェーンですとか、いろいろ補助金が出るところに関しましても、規律をしっかりする必要があると思います。
そして、すごく言いたいのはエネルギーの支援の激変緩和のところですが、いろいろな政策で、国民への政策メッセージの伝え方がもともとすごく難しいと思っております。この前、子育て支援のところで資料の細かいところを指摘したのですが、今回の資料がまずいということではなくて、かねてより、小さいところで、財務省がものすごく子育て支援をしようとしていることが伝わりにくくなっている、という会話をしておりました。子育ては精神的サポートもかなり大きいので、とにかく気持ちとしてきちんと支えたい、ということが、メッセージとして大事であるということを前回申し上げたと思います。
もう一つ、すごく分かりにくかったのが、激変緩和措置でありまして、最初から激変緩和であるということは言っていて、メディアも一生懸命言っていたのですが、言っていた途中に何かはしごを外されたように168円というのが出てきて、あれ、これは激変緩和だったのですか、価格維持政策だったのですかということが、政府とメディアとの会話においても分かりにくくなってきて、そして今、では、どこまでだったら抑制するのか、どのような理屈で抑制するのか、やめる出口戦略は何なのか、ということが分かりにくくなっています。
もともと、できれば最初スタートするときに、出口も定めておくべきだったとは思うのですが、それがなかなか緊急で無理だったとしても、意図がはっきりと国民に伝わらなければ、やめる理由も伝わらず、かつ、世の中を見ていると、今のガソリン代は170円ぐらいであると思っている人が多くて、本当は200円かかるというところを理解している人は実はとても少ないです。ですので、このお金はすごくかかっているのに、そのありがたさを身にしみて感じている人はいなくて、逆にこれをやめようと思えば、いきなり値上げするのというメッセージしか伝わらないわけです。これは、やはりスタートのときに、メッセージを伝えるときに、この政策はこのためです、そして、やめるのはこうした理由ならやめます、出口はこうですということを説明することに、かなり失敗した例ではないかと思っておりまして、とにかく今、出口を頑張ってつくってほしいのですが、それについては、これが価格機能をゆがめていることや、実際にこれをやっていることでインフレを助長している側面もあるということを、今からしっかり伝えるしかないので、相当頑張らないと、すごくやめにくい政策になってしまったと思っております。
あとは地方財政です。マイナンバーカードですが、まず、この資料にもありましたように、いろいろな自治体で共通化するということは何より必要であると思うのですが、その前に、今自治体でも全然、自治体内での情報の共有化が、自治体によっては十分できてなくて、そして、できると思っていたことが全然できてないことが多いということは大変問題であると思います。そもそもマイナンバーカードを持ってもらうために、これだけポイントでお金も使ったのですが、逆に、本来はポイントのインセンティブとかつかなくても、これを持っていると便利だ、あれもできて、これもできてということができて広がることが本来だったと思います。ただ、初期においては、それが難しかったからポイントをつけたことに関して否定はしませんが、ポイントをつけ始めて何年たっても、いまだに、役所に行ってこれとこれの情報は結びついていると思ったら結びついてなかったり、これはいつでもできると思っていたら、できていなかったりというのがとてもたくさんある結果として、何も使わなかったが5年間で更新の時期が来てしまったという人が今度発生し始めるという、これもどこが悪かったのか、デジタル庁も頑張っていると思うのですが、掲げる目標がうまく回転しなかったために、そこに過剰な予算を使うことになってしまったということになっていると思います。
だから、これを財審で言ってどうなのかというのもありますが、実際にマイナンバーカードで実現することに向かって、きちんとそれぞれの自治体が前進できているのか。それを行政がウォッチできているかということを非常に心配していますし、頑張っていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございます。今、宮島さんがガソリンの話をされたのですが、今朝のニュースで電気の軽減負担という話を伝えていて、まだスキームは固まっていないのだが、現場の記者とどんな感じになるのという話をしたときに、いや、ガソリンと違って電気はみんなが使うから、等しく国民が裨益するものになりますということを言っていたのですが、私なども当然電気代は上がっているわけで、それは負担の軽減だったらありがたいのですが、その負担を軽減する財源はどこから来るのかということを考えると、結局また何か、将来の自分たちから借金して、将来、今の私たちにそのお金を持ってきているのかなということになると、確かに本当に生活の苦しい人は助けないといけないと思うのですが、やはりここでも社会福祉の議論と同じように応能負担というか、本当に苦しい人に出すというような考え方は重要なのではないかと改めて思いました。
それと、GXに関しては、いよいよ本格的に脱炭素に取り組んでいくということで、これに伴って、いろいろな産業も発展して、期待が高まっているのですが、前にも言ったのですが、有利主計官の担務の範囲内でも環境省と経済産業省と、それぞれ脱炭素とか水素に対する新技術とか、そうしたものに関して予算をつけていて、私一度両省の間を行ったり来たりして、これとこれがどう違うのかとかいって似たような予算をほじくったところ、一応デマケというか仕分けはできているので、無駄に予算がついているということはないのですが、よく考えたら、これは別に、同じ国なのですから、一緒にやってはどうか。それぞれ知見もあるでしょうし、この予算を束ねて、両省で力を合わせてやっていったほうが、より効率的な予算の使い方にもなると思いますし、成果も上がるのではないかということを改めて言っておきます。
それと最後に中小企業です。御説明を受けたときにも言ったのですが、例えば15ページに企業支援と生産性で、「量的な縮減を図るとともに、支援が生産性の向上につながっているかどうかを事後的にしっかりと検証すべき」とか、次の16ページも、「より高い付加価値の望める産業への業種転換等の支援へとシフトすべく、仕組みを見直すべき」ということがあって、一々おっしゃることはもっともなのですが、今までやってなかったのですかというのが感想です。これを実際に現実のものとするために、どうやったら良いかをもっと考えてもらいたいと各省庁にきちんと言ってほしいというところがあります。
それと、やはり中小企業の問題は、ゼロゼロ融資などを通じて、本来であれば倒産してしまうような、要は何か強みのない企業です。それも生き残らせたという指摘もあります。これは非常に言いにくいことではあるのですが、例えばコロナ禍で、アメリカとの失業率の差を見てくると、アメリカは一時期、バッと失業率が上がって、その後景気回復して、元に戻ってきた。日本は低いままずっと抑えてきました。どこが違うかというと、アメリカは人々が失業している間に、企業が新しく生まれ変わっていて、より競争力の強い企業に、また就職しているということで、日本は、ずっと前の企業の形態のまま生き残っているところにずっと働いているということで、そこを何とかしないといけないのではないかと思いますし、もう一つは、今新しい産業をどんどん創造しようとしますが、企業からいえば、新しい事業が軌道に乗ってきたら、そこで人を増やしていきたいわけですが、効率の上がらない企業に人が滞留していたら、人も取れなくなるということで、二重の意味で日本経済にとってマイナスではないかと思いますので、その辺のところも、予算面からどのように見ていったら良いのか、考えていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。まず、GXから申し上げたいと思います。GXについては、足もと、少子化と防衛に並んで、財務省としても極めて大きなテーマであると思います。かつ、この三つはいずれも短期的な施策ではなく、中長期的な施策となるため、財源の確保、健全な財政なくしては実現できないということです。
今日、恐らく初めてかと思われますが、事務局の説明で、財審ではあまり触れられることがなかった歳入について触れられたのは大変結構なことであると思います。ただ、一方で、財源確保に向けた具体的な検討はどこまで進んでいるのかという点については、私も心配しています。そうした観点から2点申し上げたいと思います。
まず、GX経済移行債の制度設計についてです。以前、この場でも申し上げましたが、GX経済移行債は、うまく設計すれば非常に有力な選択肢になると思います。
設計上のポイントは、第1に、資金使途を明確化させるということです。その上で資金の動きをトレースし、その後、効果をしっかり測定する。最後に、それを開示するというサイクルを回す必要があります。これにより、我々がこの場で使っている言葉を使えば、アウトカムオリエンテッドな政策の執行を実現していくということが重要であると思います。
別の角度からもう一つ申し上げると、この分野では欧州が先行しておりまして、グリーンボンドという形で、資金使途を再エネなど、まさにグリーン化に絞って手掛けています。それとは異なり、我々がやろうとしているのは移行債です。金融の世界ではトランジションボンドと呼んでいます。ややもすれば、トランジションボンドは、トランジションウォッシング、グリーンウォッシングという言葉にもありますように、ウォッシングの可能性があることが批判されてきました。我々、日本の金融業界も同じでありまして、国際会議の中で、現実的にはいきなりグリーンなどできないので、グリーンに向けてトランジションが大事である、ということをずっと主張してきたのですが、常に批判の対象になってきました。
したがって、今回の移行債の発行に当たっても、調達された資金が、脱炭素化を確実に後押しするということを担保するために、グローバルな目線を踏まえた形で設計されて、明確な基準と透明性の確保が大事であると思います。
もし、今回、政府が発行するトランジションボンドないしはそれに類したものの制度設計がしっかりとできれば、日本のトランジションに向けての真剣な取組が認知されることにもなります。さらに言えば、10年150兆と言われている官民の脱炭素化投資の資金調達全体にも、良い影響を与えるだろうと思います。この辺の制度設計をしっかりお願いしたいということです。
2点目、カーボンプライシングです。これは経済界でも様々な議論がありますが、1点だけ、合意ができていることがあります。それは、我々は、市場経済の中で生きているため、炭素に値づけすることで経済主体の行動変容、これは前向きと後ろ向きの両方がありますが、新たな価値を生み出す、あるいは炭素を減らすことを促すという意味でのカーボンプライシングが、脱炭素化を図る上で極めて有効であるということです。
もちろん、先ほどからも少し話題になっていますが、現状のエネルギー価格の高騰という状況で、企業あるいは家計の圧迫要因を増やしていくことには、もちろん慎重でなければいけません。
それからもう一つ、カーボンプライシングはオールマイティーではありません。効くところと効かないところがあります。価格やボラティリティが高く、投機の対象になるなどの様々な課題もあります。
一方、先ほど安永さんが言われたとおり、海外の例をそのまま持ち込めば良いという話ではないものの、海外の知見は相当に蓄積されているため、そうしたものも参照しながら、日本の制度を設計すべきであると思います。
それと同時に考えなければいけないのは、脱炭素化の達成は非常に難しい課題であるので、政策の総動員が必要になると思います。現状、経済界はGXリーグという取り組みをやっていますが、大企業をはじめ、相当な規模で参加を表明しているという点では評価できます。
しかし、参加企業のCO2の排出量のカバー率は全体の4割であり、かつ、自主的取組となっています。日本は真面目なので、恐らく真面目にやると思いますが、やはりカバー率が4割であるということでは限界があるので、CO2の排出量の3割超を占める業務・家庭の行動変容を促すための取組も、全体戦略として考えていく必要があるだろうと思います。
それから、言わずもがなですが、先ほど述べたGX経済移行債も、最終的には国の償還能力が問われるということですので、財源の確保はやはり重要になります。そうした脈絡でカーボンプライシングを見ると、例えば、海外の事例、EUのETSでは電力部門への有償割当、キャップ・アンド・トレードにおける有償割当だけでも年間190億ユーロのオークション収入を得ています。最初からそうだったのではなく、タダであったものが徐々に有償化されることでそこまでの収入になっています。そして、それが再エネの普及であるとか、住宅の断熱化などの省エネの財源になっているということです。
そうした例も参考にしながら、脱炭素と経済の成長、そして産業競争力の強化と財政の持続可能性の両立確保、これは大変に難しい課題ですが、是非とも施策と財源の両面から、今申し上げたようなカーボンプライシングの議論、当然炭素税についても議論をしなければいけないと思います。どのような格好で入れるか、或いは入れないかは別にして、議論がとまってしまっているのはよくないと思います。これら政策のベストミックスをパッケージでつくる必要があると思われるので、この議論を進めていただきたいと思います。
地方財政に少し触れたいと思います。今日ご説明が縷々あったとおりで、先ほども、安永さんから話がありましたが、地方財政の見える化、我々の言葉を使えば情報開示を進めなければならず、ブラックボックス化していたのでは切り込みようもないということです。企業経営もそうですが、経営のディシプリンを利かせようと思うと、やはりディスクロージャーが最大の武器になります。実は私自身もニューヨーク株の上場を十数年前やったのですが、結果的に何が効果的だったかというと、資金調達の面ではなく、開示をすることによって変なことができなくなったということです。これにより健全化が進んだ、ということも少し付け加えておきたいと思います。
2点目、デジタルですが、当然、地方行政の効率化、それからワイズスペンディングには、デジタルは切り札になると思います。
一つは、業務の標準化です。閣議決定された自治体システムのクラウド化は第一歩にもちろんなると思いますが、載せるだけではなく、クラウドに移行するのを契機として、システムの統一に加えて、自治体ごとにばらばらになっている業務プロセスとか規格などを統一する、これが重要です。
以前この場でも、地方自治体の徴税業務のコストは8,000億に上っている、ということを申し上げました。銀行業界から強く働きかけをいたしまして、最初自治体の抵抗は強かったのですが、今は、QRコードを使った徴税業務の標準化のプロジェクトが進んでいます。是非、こうしたことを横展開することで、デジタル化プラス標準化の相乗効果によって、大幅な行政コストの削減を目指していただきたいということです。
2点目はデータの活用です。これは先ほど申し上げた見える化にも大いに効果があります。うまく使えば、国からも見えるようになります。
ちなみに、民間では既に、企業の内部管理であるとか、それから監査法人の監査業務にデジタル化、つまり、デジタルのデータをリモートで取り寄せてモニタリングするというところまで行っているので、これは是非、そのような形でのデータの活用をお願いしたいということです。
最後に、マイナンバーです。宮島さんから先ほどお話ありましたが、これは明らかにポイント付与だけというのは限界があります。先ほど、健康保険証の切替え方針が公表されましたが、これには大賛成です。当然こうしたことも含めて、メリットを増やしていくことは基本ではありますが、同時に、今回の施策のような、使わなかったら医療を受けられないという一種のディスインセンティブを設ける手法、あるいは規制的な手法も取り入れるべきではないかと思います。単純に金をつけるだけではなくて、ディスインセンティブ規制を組み合わせるというのは大事ではないかと思われます。例えば、今、難しいと言われ、難航している全国の銀行口座への付番といった場合にも、そうした手法を使うべきではないかと考えておりますので、付け加えておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからオンラインで参加の方を指名したいと思います。次の5名の方を初めに指名します。申し上げますと、横田委員、堀委員、福田委員、冨田委員、それから田中委員、この5人の方を指名しますので、御準備をお願いします。
初めに、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田でございます。改めて中小企業、地方自治体の双方を、国が借金をしながら大きく下支えをしてきたのだなというのを感じた次第です。これが過剰だったのか否かは、今後のためにも検証が必要ですが、リターンをどう見ていくかというところもしっかり注視をしていくべきであると思います。その上で、中小企業に関して2点、地方財政に関して1点申し上げます。
まず、中小企業の補助金についてとなります。不安の軽減には大きく寄与したと考えられますが、乗り切った中で、今後税収によるリターンにも注目していきたいところです。
具体的には、今後の検証として補助金の受給事業者の黒字割合や、その後の税収としてどれぐらい戻ってきたのかは見ていく必要があるのではないかと思いました。今後、補助が過剰だったのかはもちろんですが、次なる緊急時に、やはり補助金を出してほしいという声は大きく上がると思いますので、そのときの検討材料としていただきたいと思います。
2点目は、中小企業の資金繰りについてです。17ページ目になりますが、左下の図で、8割以上が返済の見通しが立っているということで、非常に安堵しているところですが、5%はコロナ前から借金に苦しんでいて、その後も、今も見通しが立たないと言っている企業もあります。リスケの丁寧な対応は必要ですが、ゾンビ企業を生み出さないように精査はしっかりしていくべきであると考えます。
次に、地方財政についてお話しいたします。こちらも冒頭で述べたとおり、国が支えてきて、何とか切り抜けたということですので、交付税の特別会計の借入金の返済など、できることは早めに、次なる危機に備えてほしいと考えます。
一方で、赤井委員の研究内容から出てきた13ページ目の基金の状況です。多くの団体が単年度収支と基金の増減額の合計が、黒字で終わっているということで、これも評価すべき、安堵するところではあるものの、赤字だった都道府県の8団体がどのような状況だったのか、また、市町村との関連性がどうなのかはしっかり見て、団体の状況に応じて、今後どのようなことを求めるのかも、しっかり中身を見ながら検討していくべきであると考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、どうぞお願いします。
〔堀委員〕時間もないので短く、3点に絞らせていただきます。
地方財政の現状についてですが、5ページで、国から地方への財政移転によって、国のPBは改善が進まない一方で、地方自治体は黒字を維持していることが示されています。「改善」という言葉が使われていますが、財政移転のための黒字と地方自治体の自助努力による黒字が今の状況では区別ができず、黒字をどう評価したらよいのか。制度的な構造で峻別するのが難しいのは分かるのですが、これまでも、同じような資料を繰り返し見てきて感じますが、地方自治体自身の自助努力の見える化がはかられるような資料を準備していただけると、より建設的な議論ができるのではないかと思います。
それから、コロナ禍の補助金の使い方については、これまでも財審において問題にされてきたと思います。補助金の適正な規模についても議論があったと思うのですが、地方財政の参考資料の7ページで、公立病院の経営について記載があります。令和2年、3年は収支改善されていますし、自治体の負担する繰出金も、今まで、本来ならば減らさなければいけないのを維持されていると思います。この公立病院の状況は、先の地方財政の状況と同じく、全てが病院自身の健全経営による改善結果とは必ずしも言えないと思います。結果として実態に比べやや過剰とも言えるコロナ病床交付金、これが全て無駄だったとは言わないのですが、本当に適正に使われているかどうかは、事後検証は必要ですし、病院経営の透明化は進めていただきたいです。内部留保もかなり増えていると思いますので、病床の利用状況を瞬時に把握できるシステム導入など、DXを進めるためにもお金が必要であると思いますので、そうしたものに有効に活用されると良いのではないかと思います。
それから、マイナンバーカードと保険証の一体化、健康保険証の原則廃止は非常に良いと思いますし、先ほど他の委員のご発言もありましたが、是非進めていただきたいと思うのですが、 DXは、自治体の行政、保健所も含めて行政も遅れているところがありますが、公立病院を含めた医療機関でもまだまだ進んでいないところがありますので、進めるようにしていただければと思います。
3点目です。地方における社会保障費の抑制の必要性で、介護費が焦点を当てられています。抑制というより、恐らく適正化と、タイトルを変えていただいたほうが良いと思います。一人当たり介護給付の認定率の地域差で、不合理な給付が認められる場合には、「事業所の指導や利用者への働きかけなどで取組を加速化」とあるのですが、実際、どのような取り組みを都道府県、市町村がどれくらいやっているのか。もしデータ、あるいは何かしらの情報があれば、教えていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて福田委員、どうぞお願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。私からも手短に3点、コメントさせていただきます。
まず、GXに関してです。脱炭素化で成長の好循環を目指すというのは、是非必要なことですし、それを目指したいということであると思います。
その際に、成長するのであれば、基本的には民間の活力が大事で、民間でできることは民間でという観点は必要です。そうしたときに、政府がどのような形で関与していくかということの概念整理は必要で、経済学では市場の失敗という言い方をするのですが、民間でやると必ずしもうまくいかないケースで政府が関与するとされています。例えば公共財的なものは、当然政府がやらなければいけないということになります。あるいは外部効果といって、ある民間の事業者の活動が、他の事業者にいろいろな影響を与えるような場合には、政府が関与していかなければいけないということもあります。
ただ、日本の場合、より大きな問題として、安永委員や中空委員も指摘されたことですが、将来の不確実性をどう除去していくかが非常に大事なのではないかと思います。脱炭素化に向けたトランジション、これは平野の委員がおっしゃったことですが、その道筋がはっきりしていることが非常に大事なのだろうと思います。
例えば、電力は非常に大事であるということで、2030年に向けて野心的な目標が立てられてはいますが、やはり多くの人が疑問に思うのは原発の問題であると思います。もちろん経済学的に考えれば、原発はある程度利用しなければいけないというのはあり得るとは思います。ただ、なかなか国民のコンセンサスを取れていなくて、その議論を、やはり政府は避けて通れないということはあるのだろうと思います。
そうした意味での不確実性は除去できていないという面は非常に大きくて、そうしたことはお金がかかる問題では必ずしもないですが、政府の役割において、そうした不確実性を除去することに関して非常に重要な問題があるのだろうとは思います。
2点目は中小企業に関してです。私も事業の再編、再構築は非常に大事であると思います。日本経済がなぜ非効率かということで、昔から何度も指摘されてきたことは、参入が少ないだけではなくて退出も少ない、いわゆる企業の新陳代謝が非常に少ないということが、やはり経済の非効率化につながっているのだろうと思います。新陳代謝はコロナ後を見据えて経済構造が大きく変わっていく中でも、是非とも必要で、それに向けてどのようなことに取り組むべきか、ということは大事なのだろうと思います。
その際、民間の金融機関では事業再構築のノウハウが、かなり蓄積されてはいるのですが、今回そのように積極的に取り組むインセンティブづけをしっかりつける必要があるとは思います。今回、通常のケースと違うのは、民間の融資はかなり信用保証をつけられていて、自らの痛みを伴わないでいろいろな関与ができる仕組みになってしまっていて、それはこれまでの問題とは違う。やはり痛みを伴うからこそ積極的に、こうした事業再編に金融機関では取り組んできたわけですが、そうしたインセンティブづけをどうつけるかは大きな課題で、今回の特殊な事情としては、是非考慮する必要があると思います。
最後に、地方財政に関して簡単にコメントさせていただきたいのですが、自治体の行政の効率化というのは私も是非とも必要であると思います。そのためにはデジタル化、DX化というのは必要であると思います。また、皆様も御指摘のように、マイナンバーを活用するというのも大きな力になると思いますが、やはり何となく多くの人は、マイナンバーは必ずしもそれほど便利ではないよねと思っていることも事実なのではないかと思います。例えば、先ほど、コンビニでマイナンバーを取れる、使われて、住民票や印鑑登録証明を取れるという話も出ていました。ただ、そこからハードコピーに入ってしまうのです。実は住民票とか印鑑登録証明のハードコピーを使う多くの理由は、大体行政手続であることが多いのです。そこでデジタル化がとまってしまっていて、だから、マイナンバーでコンビニで取れるのは便利だが、結局またハードコピーの世界に戻ってしまうということがあると思います。印鑑証明や住民票のハードコピーも使わなくて、マイナンバーで一気通貫でできれば、もっと便利であると思うので、更にこうしたデジタル化を大きく進めることを進めていただくことが必要なのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて冨田委員、どうぞお願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。GX、中小企業、地方について、それぞれ申し述べたいと思います。
GXについては質問です。先ほどの御説明で、今後10年間で150兆円を超える官民投資を実現するという箇所の御説明のときに、「示されたように」という御説明がありました。私は、その規模の推計及びその根拠といったことが、簡単にでも御説明いただけたらと思います。
その中に、2020年度の補正予算の、例のグリーンイノベーション基金及びその基金が誘発することが期待されております民間投資が含まれているかどうか。あるいは、先ほど安永委員も御指摘あったのですが、民間の企業では既に行っている部分もあるということもありますので、この150兆というものをどう捉えたらいいか。
つまり、この資料だけを見ていると、GX移行債との関係が非常に強く意識された文章になっていると思うのですが、その全体はどうなっているか。特に、財政支出だけではなしに、税制改正、規制改革も含めた民間投資の誘発効果といったことが期待されているわけですから、そこの全体像が見えてこないということをお聞きしたいと思います。
それから、中小企業についてですが、これは信用保証付融資についてです。14ページで、倒産件数について資料が示されました。2020年の半ばから、コロナ前の水準よりも大きく倒産件数は減っております。このことは、コロナの影響がなくても倒産していたであろう企業が、延命している可能性を示していると思います。
資金繰り支援で大きな役割を示したのは、17ページの左の図にありますように、民間金融機関によります信用保証協会の保証付きの融資でして、プロパー融資からシフトしたかのように、20年度に著しい増加を続けてきました。その残高は、リーマンショック後の水準を超えまして、前世紀末の国内金融危機後に並びまして、今年の春には43兆円を超える水準にまで達しておりまして、その後も高水準が続いております。
これによって、民間金融機関の与信リスクは抑えられましたが、保証制度への依存が金融機関の融資先の審査、モニタリング機能を弱め、高リスクの企業への融資を促進したことが懸念されます。
そして、融資先のデフォルト、つまりは代位弁済が増えるとともに、日本公庫の保険収支が悪化し、国からの損失補填が増大いたします。
このため、17ページの上に事務局がまとめられたことに加えまして、金融行政による民間金融機関の対応の厳格な把握が必要であると思います。コロナ対応として、中小企業に大規模で多様な支援を行っていながら、返済の段階になって事後的に返済が困難になったから債権放棄する、ということは、許容できるのでしょうか。事業の再構築を進めるとともに、支援期間中とは逆に、信用保証付融資をプロパー融資に転換していくことが必要であると思います。
最後に、地方財政です。20年度からの累計16兆4,000億円もの地方創生臨時交付金により、地方財政の規律の緩みが更に顕著となってきているように思います。これまでに当審議会の建議で指摘しましたように、この交付金を一般財源で行うべき事業に使ったり、あるいは、最近マスコミで批判されたことで注目を集めておりますイカキングなどなど、事業目的は不明確としか言いようがない事業が散見されます。
地方創生臨時交付金に相当する措置は、リーマンショック後には、国の当初予算時の地方財政計画に歳出特別枠が設けられ、地方財政計画の規模が拡大し、これによる歳出入ギャップの拡大が、国の赤字国債、地方の臨時財政対策債の発行要因と認識されました。
これに対しまして、コロナ対策では、補正予算や予備費として編成され、地方では、臨財債すら意識することもなく、歳出の拡大が可能となったのではないでしょうか。
このため、地方創生臨時交付金の下では、一般財源総額実質同水準ルールによる規律づけが後退しかねません。歳出特別枠、別枠加算が廃止されるまでに、リーマンショックの後、10年近くもかかりました。また、現在、公金預金の残高は、コロナ前の2016年6月からの2年間で6兆1,000億円増えまして、この6月末には51.2兆円にも達しております。
これらのことから、地方創生臨時交付金は、早急に縮減・廃止すべきであると思います。
そして、新年度予算は、一般財源総額実質同水準ルールの下に編成を進め、臨財債の償還を促進し、これまでは償還計画が伸縮自在のようでありました、交付税の特会借入金の償還について、今後は、後ろ倒しのリスケは行わず、償還計画の前倒しのみとすべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、5人目になりますが、田中委員、どうぞお願いします。
〔田中委員〕田中です。よろしくお願いいたします。私は1点、中小企業に関して発言をさせていただきます。
コロナ禍で当面の需要や売上げの回復が期待できなくて、何とか事業を継続させたいと自助努力をする中で、中小企業事業者に補助金が出されて、その資金の生きた例は多数ありますが、ゼロゼロ融資で倒産は免れましたが、今度はお金が返せないという報道の、今のデータ集計上に増える見込みが、各地域の報道からも顕在化していますので、気になっております。
事業再構築補助金においても、委員の方々がお話しのとおりですので、加えての観点のみお話ししますと、経済社会の変化に対応するために、中小企業等の事業再構築を支援するということが目的ですので、新分野への展開とか、業種の転換ですとか業態の変換という、ビジネスモデルの転換という思い切った挑戦が選択されるのかどうかが、はっきりと重視、精査されるべきところですが、経費の見える化ですとか、使った後では、アウトカムを出しても限界があるところで、趣旨と異なる使われ方がなされるという公費がこれまでも他分野でも指摘されている中で、各主体の独自性やアイデアを阻むことなく、しかしながら、同時に、誰が見ても納得ができるという、共通のインパクト指標のようなものも、事前にそろえられるような方向に進むことが大切ではないかと思います。
アウトカムだけでは、重要ですが、次に生かすということが、個々の財政政策においては、質的には限界があるような感じもありまして、これはGXとか地方創生臨時交付金にも共通のことかと思っております。
国や行政からの支援に関する情報を必死で調べて、アクセスして、資料を作成したことで、危機を乗り越える手だてやきっかけを得て、成長戦略になり、黒字化しているという事業者も聞いていますので、これこそ先にインパクト指標や共通の指標ということを意識したからこそ出てくる成果ではないかと思っております。その精査をしていくような仕組みが重視されることへの指摘をさせていただければと思います。
以上、よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは、ここからまた当会場に戻りたいと思います。
続いて、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕遅参いたしまして、失礼いたしました。私からは、GX1点、地方財政3点申し上げたいと思います。
GXについては、資料2の2ページにありますように、将来の財源の裏づけなくして、GX経済移行債の発行はない、というぐらいの気構えで、しっかり財源の確保もしていただきたいと思います。GXが大事であるということは、もちろん言うまでもないのですが、ただ、やみくもに投じていては緊張感に欠ける。特にエネルギー対策特別会計はこれまでにも、この審議会でも述べさせていただいたように、行政改革推進会議の秋のレビューとかで、毎年問題のある支出が取りざたされるような特別会計だったりいたしますものですから、しっかり使い道も精査して、必要のあるものに限るというところで、無駄遣いの温床にならないようにしていただきたいと思います。
それから、地方財政については3点ですが、1点目は、資料3の5ページにありますように、一般財源総額実質同水準ルールは曲がり角に来ているのではないかと思うわけです。消費税率が10%に引き上げられたおかげで、地方消費税収は増収しております。それで地方税が支えられているということは良いことですが、一般財源総額を同水準にするということについては、結局のところ地方交付税を減らさないといけないわけですが、そうした計算方法にはなっていない。国税の交付税財源が増えれば、交付税も増えるというような関係になっているので、本当に地方財政をうまく切り続けるような仕組みになっているのかということは、次の期間には、また新たな規律づけが必要なのではないかと思います。
同じ資料3の12ページにあるように、結局のところ、コロナ禍なのにもかかわらず基金が積み増されているようなことも、交付団体では観察されているわけですから、やはり、地方財政に対しての支援は、国の財政の状況ときちんとバランスを取って考えるべきであると思います。
それから、2番目はマイナンバーカードの件ですが、政府の方針で、健康保険証利用が事実上、全員行うことにする、ということは非常に良いことであると、ほかの委員もおっしゃったように、私もそのとおりであると思います。そうなれば、ほかの地方行政の恩恵よりも、むしろ健康保険証としてマイナンバーカードが使えることの恩恵のほうが圧倒的に大きい。国民皆保険ですから、皆が使えば、医療での恩恵がマイナンバーカードによって受けられるということですから、変にマイナンバーカード取得を促すような、小さな取組のようなものを促していくことよりかは、むしろ、地方自治体も保険者として、国民健康保険や後期高齢者医療の保険者として、マイナンバーカードを健康保険証として使うように促していくことに注力するほうが、よほどマイナンバーカードの普及が今後進むのではないかと思います。
そうした意味では、保険者からの働きかけというほうに、マイナンバーカードの普及は、力点をシフトさせるべきではないかと思います。
3点目は、公立病院についてです。参考資料の7ページにもありますが、経営改革は待ったなしであると思います。特にこれから人口減少が更に進む地域では、公立病院の存続が問われることになると思います。確かに令和2年度、3年度と、相当な医療の支援があったために黒字になっているということで、もちろんこれの渡し方が妥当だったのかという検証も、それはそれとして必要かもしれませんが、渡した金は戻せないということであるならば、むしろその黒字を生かして、今後更に、今まで以上に経営改革に取り組んでいただく、ということをきちんと担保する必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕私からは、まず初めに、御説明があった今回のイギリスの話とDX、GXと地方財政全般についてお話しさせていただきたいと思います。
3ページ目にIMFのエコノミック・アウトルックの話が出ていますが、実は11日に新しいのが出まして、今回のアウトルックの説明に合わせて、BBCはグランシャという経済顧問にインタビューしたのです。今回のイギリスの政策どうですかと聞いたら、グランシャ氏はこう言っています。これはうまくいかないだろう。なぜかというと、自動車に運転手が二人いて、一人が右にハンドルを切り、一人が左にハンドルを切っている、このようなものだから。
この話を聞いたとき、私は、日本だとよくエンジンとブレーキに例えられて、エンジンをかけながらブレーキを踏むと言います。彼が言った右と左、これはよく考えていると思って、何が起こるかというと、エンジンとブレーキだと事故は起こらないのです、右と左だと事故が起こります。実際、イギリスの10年金利は4.5、30年金利4.8まで来ました。これは、今、イギリスの年金基金でレバレッジを利かせて、スワップを受けたりいろいろやって、金利が上がらない方向にポジションをとっています。これがうまくいかなくなって、今破綻のリスクが出て、一旦、また中銀、BOEが国債を買うことになっていますが、つまり、あまり変なことをやると事故が起きるということの例えだろうと思います。
GXと地方財政全般についてですが、私はこの話をする前に、今の日本の経済ないしは世界の状況について一つお話ししたいと思うのですが、今、ちょうど11日から、日本は開国であると、全国旅行支援も出て、入国規制も緩和されたので、また外国人も増えて、非製造業の方々はこれから良い時代が来る、戻ってくると思われていると思うのですが、私が思いますには、この先、日本経済、世界経済の先を見ますと、西側に黒い雲があって、もっと奥にはもっと大きな黒い雲がある。なぜかというと、まず、短期的な話ですが、やはり世界全体は物価上昇、インフレと金融引締めのリスクがこれから顕在化してくる。先ほどのグランシャ氏も、今回の11日に出したアウトルックでこのように言っています。これは日本文として出ていますが、要するに最悪の事態はこれからだ。多くの人にとって2023年は景気後退期のように感じられるだろう。これだけはっきり言っています。2023年の経済成長見通しも0.2ポイント下げています。つまり、これから、この冬を乗り切れるかどうかということが一つ大きな問題。
そうすると日本は、物価対策だとおっしゃるかもしれませんが、日本の8月の物価は総合で前年比3%、コアで2.8です。ただ、昨日出た企業物価で見ると、これは9.7%上がっています。だから、実は日本も、川上だと10%ぐらい上がっていて、川下はまだ世界の3分の1ぐらいですが、だんだんこれは遅れて転嫁されてくる。こうした問題があるのと、私は、より長期的な、大きな黒い雲というのは、ある面、2000年以降の経済のビジネスモデルが大きく転換する。2000年以降、なぜ低金利高成長ができたかというと、これはやはりベルリンの壁が崩壊し、中国の改革・開放政策で、ヒト・モノ・カネのコストが下がった。つまり、安い商品を旧東側の社会でつくり、マーケットも広がる。これで、そうした状況が生まれたと思います。人口も増えていました。
ただし、これは今回のウクライナの戦争、また、これから中国の問題等を考えると、世界全体ではよりブロック経済化する。日本はより少子高齢化が、今回のパンデミックですることが確定的になっていますから、これからはコストが上がってくる可能性があります。また、気候変動、今気候変動をどうするのかという議論も出ていますが、今回フロリダに上陸したハリケーンは、アメリカで起きた第5位の勢力です。こうしたのも起きて、これからどんどん気候変動が厳しくなって、気象災害も増え、また、それに対するグリーンインフレーションと言われるコストも上がってくる。そうした中長期的には相当リスクを控えているという中で、今何をすべきか。だから、日本はまだ、今年来年ぐらいは余裕があります。地方財政で見ると、税収は1年遅れですから、今年度も良いだろうし、来年度も良いのではないかと思います。ここは余裕がある。余裕がある間に、先ほどの交付税特会借入金を前倒しで償還する。
一方で、中長期的に考えると、やはり今回のGX経済移行債についても、償還財源をしっかり決めておかないと、誰が返すのかという話になりかねない。そうしたところを、将来世代に先送りするのはよろしくない。
そうした中で、やはり地方財政、農業、文科、全部一緒ですが、私がずっと申し上げているのは、三つです。統合、アウトソーシング、もう一つがICT化、これによって生産性、効率性を上げ、成長性を高める、これしかない。そのためには、今回のマイナンバーカードは、健康保険証と一本化するという報道がありますが、私は大賛成です。要は、何でこれが過去使われてないかというと、使い道がないのですよ。使い道がないから、使わないのでアプリケーションもできない。それが一本化されれば、これは民間がどんどん入ってきます。民間が入ってきて、そうすると、これを使わないと損だ、使わないと生活できないとなれば、これは皆様一気に100%いきますので、そんなインセンティブは要らないという話になります。
ですから、従来のやり方があまりにも中途半端過ぎた。ここでも本当に選択と集中、もうぐっとかじを切って、日本の今後の少子高齢化、場合によっては戦前、また、冷戦期のブロック経済化の波に対抗できる、本当に強靱な経済、国をつくっていくことが必要だろうと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いします。財政総論について1点、中小企業について1点、地方財政で2点、できるだけ簡潔にコメントしたいと思います。
中小企業から始めさせてください。やはり中小企業の支援には出口戦略は欠かせないと思います。今日御紹介ありませんでしたが、雇用調整助成金は、構造転換とか労働移動にマイナスだったという評価があります。非常時において、もちろん支援は必要ですが、速やかな正常化がやはり前提なのかと思います。また、平時においても、この間、政府税制調査会でも議論があったのですが、99%が中小企業です。それらを一くくりにするのではなく、例えばスタートアップであるとか、GX絡みとか、そうしたところに重点化させた支援が必要、支援があってしかるべきかと思いました。
それから、地方財政についてですが、もちろん臨時交付金の使途について速やかな公開と効果の検証が必要です。ただ、一つ気になるのは、コロナ対策と平時の財政支出が、国もそうですが、地方自治体レベルも区分経理されていない。医療関連であれば、これはコロナ対策であるということは言えるのでしょうが、臨時交付金の中には地方創生目的も入っています。ですので、観光とかを含めて地元企業への支援など、そうしたもので拡大した支出が常態化してしまって、広げた風呂敷が今度閉じなくなるのではないか、という懸念もあるのではないか。
結局、この臨交金は切れるのかという話になってくるので、国への補助金や交付金の要求は、地方から続くのではないかということが少し懸念されるところです。
それから、23ページにある枠計上経費についてですが、お金に色はないと言いますが、お金に色をつける作業が必要かと思います。説明責任や効果検証を通じたPDCAサイクルを回すという面もあるのですが、御紹介のあったとおり国の借金が1,000兆円を超える中、国民の間で財政に対する危機感がなかなか伝わらないのは、国の借金と、自分たちにとって身近な行政サービス、例えばごみの回収とか、こうしたものとの関係が見えていないからです。国が借金をしました、それが地方にお金として回りました。それが自分たちの行政サービスに、こう使われましたというところが見える化すれば、国がコケれば、自分たちの生活にどう影響するのかということが伝わりやすいのではないかという気がします。やはり、これからお金の見える化というか、お金に色をつけることが必要なのかと思いました。
最後に財政総論ですが、少し感想めいたことになるのですが、イギリスにおける財政赤字の拡大が金利を上昇させる、というのはマーケットの正常な反応かと思います。日本のように大幅な財政赤字が続く中、もちろん金融緩和があるからですが、市場からの警告シグナルが全く発せられない状態は、むしろ異常なのではないかと思いました。
すみません、もう一つだけ、今日、興味深いなと思ったのが、地方財政の参考資料の4ページに予備費の使途についての一覧があったので、これは便利であると思ったのですが、最近、予備費の使途について取材を受ける機会が多いので、一つ質問、一つコメントですが、質問は、これらの使途はレビューシートにひもづいていますかということ、何とか事業とついているのがあるので、これは恐らくそうだろうと思うのですが、何とかのための支援とやられると、何の事業という話になってくるので、レビューシートときちんとひもづいているのか。そうすれば後から、事後的に、これはこの用途に充てられたのであるということが分かると思います。
それからもう一つ、今秋のレビューが始まるので、行政のレビューシートは、予算の執行については、当初予算と補正予算は分かれています。ですので、補正予算が多くつけられている事業は何か変だよねということを議論するのですが、これからはむしろ予備費の欄も必要なのではないか。これだけ巨額の予備費が続くとすればです。なぜかというと、予備費は国会で議論しないわけですから、後で国会に報告はしますが。ですので、ある意味、何でこれが予備費だったのかということ自体、事後的な説明責任はすごく求められる分野であると思うので、やはり予備費の扱いはこれから少し考えなければいけないのかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林毅委員、どうぞお願いします。
〔小林(毅)委員〕ありがとうございます。まず、先ほどから話題になっていますマイナンバーと健康保険証の一本化の話ですが、これはそのとおり、結構なことではあるのですが、これはある意味正念場かと思います。実際に、私は健康保険とやってみたことがあるのですが、受付でカードリーダーに出してやっても、つながらないのですよ、何度やっても。時間がかかるのです。そうすると、後ろの人がいらいらし始めてきて、もういいです、紙でやりますとなってしまう。もしこうしたことが続くと、全く逆効果になってしまって、マイナンバーと健康保険証の一本化ができても、また紙に戻せという議論さえ起きかねないと思っていますので、これはある意味、本当に絶好の機会というよりも、むしろ正念場である、というぐらいの気持ちで取り組んでもらわないと、駄目なのではなかろうかと思います。
それからもう一つ、GXに関してですが、7ページで、予算事業から見た課題(導入支援)のいろいろな精査が必要な事業、というくだりがございます。これについては、導入支援を精査するのは結構ですが、では、何をもってして、これはよかったと判断するのか、合格とするのか、評価軸をある程度きちんと決めておかないといけない。導入して、導入したものがどのような効果を発揮したのか。それが、実際にCO2の削減にどこまで寄与したのか、ここまで調べろ、明確にしろというのは難しいかもしれませんが、それが無理ならば、せめて、この事業によって電力量の中のどのくらいの率をカバーできるようになったのか、そのくらいのものは出していかないと、ただ単に導入した学校数が増えたから、それで良いですね、という話にはならないのではないか。
と同時に、これは特に太陽光発電、太陽光パネルで良いと、ふさわしいかと思うのですが、太陽光パネルに関しては、もう大分導入が進んでおります。当然、使っている期間も長くなっておりますので、その期間中に、例えばパネルの劣化の具合はどうなのか、あるいは機能が低下した場合、あるいは壊れる、破損する、そうしたいろいろなデータが出てきていると思いますので、そうしたものも含めて、総合的に見ていかないと、また、お金はつけましたが、結果的にそれがどのくらいの効果があったか分からない、ということになりかねないのではないかと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、5人目になります。熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。熊谷でございます。
最初に、私からは、主に中小企業の分野に関連しますが、全体に通底する話を三つほど申し上げたいと思います。
まず、1点目として、私はやはり政府ですとか、財政の役割というのは二つあると思っていて、一つは、現状を維持して、国民の生活を守ること、もう一つは、国民に行動変容を促して、よりよい未来をつくることであり、現在と未来をバランスよく追求していくことが肝要ではないかと考えております。
ただ、日本社会は、残念ながら現状維持バイアスが非常に強くて、結果において、現状維持を目的とした巨額の財政支出が行われることによって、国民の行動変容が起きずに、低生産部門が温存されてしまい、経済が長期にわたって、トレンドとして低迷してまいりました。我々は、現状維持を目的とした巨額の財政支出こそが、日本経済の長期低迷を惹起してきたという、「不都合な真実」を正面から認識する必要があるのではないでしょうか。
少し大げさに申し上げると、人間というのは残念ながら、どうしても現世利益を求める本能があるわけですが、やはり将来世代によりよい未来を残していくということも、バランスよく考えるという意味で、日本人の理性や品格のようなものが問われているのではないかと思います。
2点目として申し上げたいのは、平時と有事を峻別することが極めて重要であるということです。宮島委員から御指摘ございましたが、有事の政策を始める際には、必ず事前に、何のためにやるのかという、政策の目的をはっきりさせる必要があります。また、民主主義社会の下では、ずるずると例外的な措置が続いてしまう傾向がありますから、いつまで、どのような条件があれば続けるのか、やめるのかという、段階的縮減の仕組みを、必ず事前にビルトインすることが肝要です。くわえて、事後で、徹底的にEBPMを回していくことがポイントだと思います。
3点目は、将来的な政策の方向性でございます。企業を救うのではなくて、やはり将来的には弱い個人に焦点を当てて、ある程度の産業と企業の新陳代謝を前提としながら、本当に困っている弱い個人を守るような、そうしたインクルーシブな政策へと移行することが必要ではないでしょうか。その際、鍵になるのは、一つはデジタル化ですし、二つ目に税と給付、もしくは税と社会保障の一体改革、3点目としては、今、岸田総理が強調されている、リスキリングを中心とした積極的労働市場政策であったり、失業なき労働移動、これらによって、インクルーシブな政策を行うべきだと考えます。
それから、GXについては簡単に申し上げますと、私も中空委員がおっしゃったカーボンプライシング、炭素税ですとか排出量取引などの、ベストなポリシーミックスを追求するということを、今の段階からしっかりと議論していくことが不可欠だと思います。
そして、最後に地方でございます。地方は、やはり明らかに財政規律が今緩んでいると思いますので、私も冨田委員がおっしゃった臨時交付金を縮減・廃止していくということ、そして土居委員がおっしゃった一般財源総額の実質同水準ルールについても、新たな規律づけが必要であるといった、考え方に賛同いたします。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、またオンラインに戻りたいと思いますが、この順番です、伊達委員、武田委員、河村委員、上村委員、赤井委員、この5名の方です。なお、まだ当会場で御発言希望の方もいらっしゃるので、今のところ総勢9名の方が残っていますので、時間の関係で、すみません、恐縮ですが、できるだけまとめて手短にお願いできればと、このように思います。
それでは、伊達委員から、どうぞ御発言ください。
〔伊達委員〕では手短に。まず、中小企業のところです。世界的に見て日本のコロナ対応が非常に手厚かったということに関しましては、やはり、先ほどのガソリンの補助と同じように、国民なり関係者があまり感謝してない可能性もありますので、もう少しプロモーションされてはいかがかと思います。
次に、16ページ、投資促進に関する課題ですが、4分の3、3分の2という補助率が非常に高かった。よって無駄に使われているのではないかというところです。これまで企業がため込んでしまって、なかなか投資しなかったものが促進されたというよい面もあると思いますので、その部分も評価しつつも、やはり比率が高過ぎるということを、もう少し重要視したほうがよいと思います。これは、過去にそうした事例がそもそもあるのかを確認したいと思うのですが、日本の制度は前例主義になりがちですから、将来も何か有事があったときに4分の3、3分の2という比率で補助することを、前例から中小企業であればよい、とならないようにするためにも、半分以上の補助率があるということには大きな問題があるということも、指摘するべきではないかと思います。
そして、地方財政ですが、基金の増減が黒字化されて、臨時交付金はもっと減らしても良いのではないか、であるとか、負担率を変えるべきであるということ、数字が明確になって非常に分かりやすい資料であると思うのですが、ただ、何年もそのような話があり、変化がないことが課題です。また、実態を公表すべきだ、公表しないことがあれば、それは問題であるという指摘もありましたが、そこの指摘でとまるのではなくて、例えばペナルティーを科すであるとか、具体的に動くような提示・提案が、コメントとしてできないだろうかと思いました。
そして、マイナカードについては、政府の方針に私も賛成で、保険証だけでなく免許証も取り組まれると報道に出ていると思います。あらゆる行政サービスが、カード、デジタル経由でしかできない、例えば、学校関係、年金関係、失業保険全てにおいてそうしていくことによって、全員が持つことになり、そしてコストコントロールがされ、人材の不足にも対応できるという意味で、よい面しかないと捉えてよいのではないかと思います。
ただ、既に医師会からくぎを刺されたりとか、いろいろな反対報道が出ているようにも思いますので、それに対してどうやって解決していくのか、これは絶対進めていくべきものであるというような、もっと前向きな方向性を示してもよいのではないか、そのように思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。意見を2点申し上げます。
1点目、財政総論についてです。前回も申し上げましたが、今回の英国の状況は、日本にも警告を発していると思います。経済対策や予算策定は、今後議論が本格化しますが、市場の財政に対する厳しさを十分踏まえた対応をお願いしたいと考えます。
2点目はGXについてです。既に多くの委員が指摘されましたとおり、この分野での国際競争は極めて重要であり、かつ、厳しさを増しています。中でも日本の置かれている状況は、より複雑であると思います。具体的には、カーボンニュートラルの実現に加え、エネルギー安定供給、再エネや脱炭素投資に必要なクリティカルマテリアルの確保や循環、さらには経済成長と財政の健全化、これらの両立を実現していかなければなりません。したがいまして、早期にグランドデザインを描き、KPIを定め、企業が投資する上での予見性を高めること。その上で、国にしか取れないリスク、仕組みについては、政府が支援を行うこと。そして、官民の取組を持続的に行うために、財源を確保すること。その財源の確保として、炭素価格の価値の見える化を行い、財源確保だけでなく、企業や個人の行動変容にもつなげていくこと。最後に、移行過程の途中で政策効果を評価し、随時見直していくこと。これらをパッケージで行っていく必要があるのではないかと考えます。
以上です。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕御指名ありがとうございます。私からは総論のところ、それからGXのところ、地方財政について要点だけ申し上げさせていただきます。
まず、総論のイギリスの話、これはコメントです。今回の動き、いろいろ大変なことになっていて、ということで、財政、政府も対応を迫られ、そして中央銀行も対応を迫られということですが、中央銀行は緊急措置する中で、いろいろ幹部がスピーチとかをやっていまして、何を言っているかというと、今のような金利の動きはリプライシングであるということを言っています。価格の再評価だ。要するに、財政のリスクが織り込まれたということで、ある意味、市場の健全な機能が発揮されているということを言っています。ですので、今日の資料にも書いていただいていましたが、イングランド銀行は一番正常化を進めていまして、国債の満期落ちだけではなくて中途売却もやるということを、9月に決めている。10月3日にスタートするところ、31日に延期にはなっていますが、幹部らの考えをいろいろ聞いていると、これはやる、断固としてやる。市場が混乱している状況で国債の売却はしないが、リプライシングされた状況の下で売却していくということを言っていますので、なかなか大したものだなと。それで、この緊急措置を本当に14日までで終われるのかどうかというところをよく見定めたいと思います。やはり日本としては、先ほど佐藤委員も言っていらっしゃいましたが、こうした市場機能が日本だけ、残念ながら働いていない状況にあると思います。アメリカでも、本当に物価上昇の影響もあって長期金利が上がり、ヨーロッパでも上がり、イタリアのような、ある程度ECBに助けてもらっているような国の長期金利も上がっています。でも、日本だけ上がらない。別の意味で今、マーケットのプレッシャーがかかってきていると思います。
ですから、今、日本では直近でまだ上がらないから、中央銀行の金融政策もあるからということで安心しないで、財政運営していくことが大事だろう。特に、ここに来ていろいろ新たな財源のこと、政策の財源、防衛ですとか子育て、GXのことを考えるべきという話が出てきていますが、コロナ対策の財源の話がどこに行ってしまったのかと思っています。まだ60兆円も短期国債出して、自転車操業をやっています。ここだって考えなければいけない。そこは肝に銘じるべきであると思います。
次、GXについてです。今回、本当に、財政制度分科会では歳出の話が中心なところ、歳入も踏み込んで、いろいろ資料をつくってくださって、主計官から御説明くださって、本当によかったと思います。
財源の話、3ページにお書きくださっていると思うのですが、ただ、この辺り何でこの財源が必要なのかという理解が、国内でまだ十分に行き渡っていないか、というところがありまして、例えば先月、9月に経団連が税制改革の要望を出された中に、このようにあります。GX、カーボンニュートラルの実現に向けて、まずは設備投資の支援措置のようなことを講じるべきであって、そして、炭素税の新規導入であるとか温対税の引上げのようなことは、少なくとも現時点では合理的とは言えないとまで書いてしまって、これはなかなか御理解いただけてないのではないかと思います。
話が、炭素税の話は企業セクターの中だけで終わってしまう、完結する話ではないと思います。最終的な負担は価格転嫁されていって、最終的な消費者である私たちであってしかるべきですし、そうした枠の中で考えるべき。ですから、3ページの資料も、原因者負担とかいろいろ書いてくださっているのですが、やはり効率的な負担の観点ということも、是非この中で言っていただいて、その中では、財務省の守備範囲を超えてしまうかもしれないのですが、やはり、排出権取引のところがすごく重要な役割になってくると思いますので、そこのところも含めて、しっかり訴えていったほうが良いと思います。
また、財審で考えるべき点としては、GXの資料の11ページ、下に、OECDの指摘が書いてありました。下から2番目の矢印に書いてありますが、エネルギーコストの高騰の影響を緩和するための財政措置は、最も脆弱な人々をうまく対象とするのが理想的であると書かれています。このとおりだと思います。弊社でもいろいろ、カーボンプライシングの話で取り組んでいて、私のチームでもいろいろやってもらっているのですが、いろいろ調べますと、炭素税とかをやるとして、その財源をどこに入れるか、どう使うか、もちろん、そのために投資する設備投資の促進ということもあるのですが、それだけではない、きちんと価格転嫁が進んでいれば、負担するのは結局、最終的には消費者、私たちになるわけです。食費と一緒で、やはり逆進性がすごく高いものなので、そうした意味での配分も大事だろうということで、こうした炭素税の財源とかを、やはり低所得者の支援とかに使っている国もあります。そうすると、やはり制度設計として、特会の中でやる増税で良いのか、特定財源みたいにしてやってしまって良いのか、やはり一般財源でやっている国もそれなりに結構あったりします。やはり今の時期、炭素税絡みのいろいろな制度設計を考えていく中で、財政制度分科会としては、国の財政全体としてどういう枠組みの中でやっていくのが良いのか、そうした議論をもっとしても良いのではないかという感じがいたします。
最後に、地方財政について簡単に。本当に地方財政も、これだけ外部環境が厳しくなって、財政面で厳しくなってくる中で、これから先、本当に前年同水準だけでやっていって良いのか、やはりもっと良いやり方をしながら、国と地方の財政運営全体をもう少し健全化に結びつけていかないといけないのではないかと思っております。
その一環として2点申し上げますが、一つ目は、23ページにあります枠計上経費です。これは、政治的にはいろいろな経緯があったと思います。かつては三位一体改革で交付税を減らされたり、でも、そうした中で何となく、いろいろ名前は変えつつも、地方に渡すお金の総額を維持するために使われてきたところもあって、この枠計上経費などというのは見える化のところにとどまらずに、もっと踏み込んで、こうしたものは基本的に廃止する方向へと持っていくぐらいのことがあっても良いのではないかと思います。
もう一つは、ページは戻りますが、11ページの例の臨時交付金のところです。これは、私は今年の夏の内閣府の公開プロセスなども関わったのですが、見える化も必要ですが、内閣府も一生懸命やっていらっしゃるのですが、全体を合計してどうなっているかばかり見せるのです。それでは駄目なのです。個々の自治体がどう使っているのか、個々の使い方がおかしくないのか、それを横並びで比較できるようにしなければいけない。そうして情報開示を通じて、隣の自治体はこのようなことに使っておかしいという感じでの、やはりピアプレッシャー的なものがかかる中で、国から渡すお金の効率的な使い方につなげていただくことが必要なのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて、上村委員、どうぞお願いします。
〔上村委員〕上村です。御指名ありがとうございます。中小企業と地方財政について、2点です。
中小企業政策が中小企業の成長を阻害している側面もあるのではないか、と考える時期かと思います。これは税制に関することですが、外形標準課税を逃れるために、大企業は減資を行って、中小企業になるという動きがあると聞いています。中小企業政策についても、中小企業を育てる効果を持っているのかどうか。そもそも何をもって中小企業なのか。資本金の規模が意味を持つのか、ということを考える時期かと思っています。
本来、労働の流動性を高めて、有能な人材が移動していくことで、企業の労働生産を高めていく、新陳代謝を促すということが大切ですが、企業への補助が過剰になされていると労働が動かない、新陳代謝が起こらないということが起こっているように思います。
今日の資料でいえば、例えば、事業再構築補助金について、財審で度々取り上げてきましたが、コロナ禍からの正常化を図るためにも、補助率の引下げは当然であると思います。もちろん事後検証はしっかりすることが大切です。
地方財政についてです。コロナ禍における地方自治体の基金残高の増加に関するものです。自治体の決算の数字が出てきたので、幾つかの自治体の状況を見ていると、基金残高が増加している、ということを私も実感しています。コロナ禍で厳しいと思われていた地域経済ですが、業種によっても温度差があって、地方の税収がそれほど減らなかった、むしろ増えている地域もあります。それにくわえて、コロナ対策ではない事業をコロナ対策に位置づけて、国からの臨時交付金を充当することで一般財源を節約できた可能性は高いと思います。
本来は、地方財政において、コロナ対策の事業とそうでない事業を切り分けていくということが必要だったと思いますし、情報公開と検証は不可欠であると思います。
情報公開についても、何らかの形で義務化づけるということは考えてよいと思いますし、今後の正常化に伴って、臨時交付金については廃止もしくは縮小が望ましいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、赤井委員、どうぞお願いします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。今、お話しされたことと重なる部分もあるかと思いますが、今日、皆様も聞いていて、やはり、全てのテーマに関して重要なのは財源かと。英国の例にしろ、GX債にしろ、コロナの地方での交付金にしろ、やはり財源の重要性を感じた次第です。
地方財政に関して少し。ページでいうと13ページで私たちの研究を引用していただいているのですが、黒字になったところが多いということで、この研究は財務省の財務総合政策研究所のフィナンシャルレビューでもうすぐ地方財政の特集を行うので、8本ほどの論文で、地方財政の動き、支出の要因分析のようなものをやっているので、また興味ある方は見ていただいたら良いと思いますが、そのようにしながらいろいろ地方財政で起きていること、自治体は本当に多様ですので、全体マクロで見ることとミクロで見ること両方重要であると思いますが、そうしたところを見ていく必要があるのかと思います。
意見書を映していただいたらと思うのですが、意見書の1ページにまとめさせていただいたのですが、これもほかの方が言っていただいたように、一つ目のポイントがコロナ禍の経験、交付金も含めて何が起きたのか、その配付方法がよかったのか、今言われたように別の目的に使って健全化しているということもありますので、そうしたところをきちんと調べて、また、今後このような緊急的なときが起きたら、国がまた交付金を配ることになると思うのですが、そのときの交付金設計に生かしていただきたいと思います。
もう一つ、ポイントの二つ目は、地方財政の効率化はこれまで、デジタル化も今日出ていますが、いろいろなことをどんどん、今後も少子高齢化の中でやっていくべきであると思うので、継続してやっていくということが更に重要かと思います。
それから、次のページにマイナンバーカードのこと、データを用いて調べたのがあるので紹介していただくと、これは20代と50代で、横が累積交付率で、縦がフロー、横がストックですが、ストックで増えているところ、もう既にかなり交付しているところでも、今月、6月や7月で交付できているところもあるので、ある程度のパーセントに達していても、まだ可能性はある。それも20代と50代でまた違うとか、細かいデータを使った分析をすれば、今後どのように伸ばしていくのか。もちろん保険証などと、ひもづけて国全体として後押ししていくということも大事ですが、地方自治体それぞれが、地域別、年齢別、性別などで要因を調べて、どのようにしたら残りの交付、受け取ってもらえるのかというところが大事かと思います。
参考、3ページ目は、以前少しこうした研究もしていたので紹介までです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ウェブ参加の方の意見は、ここまでといたします。会場で、木村委員、それでは、どうぞ、お願いします。
〔木村委員〕どうも御説明ありがとうございました。私も手短にGXと地財でコメントを申し上げたいと思います。
GXは、環境対策にとどまらず、日本経済の成長とかエネルギーの安全保障の強化につながるものですから、国家全体のそうした重要な土台、柱になるということなので、当然、その財源は安定財源で賄わなければならないということは言えると思います。
その財源を考えるための前提となる支出ですが、資料というかGX会議では、官民合わせて今後10年で150兆円超というトータルの数字が出ていますが、ここで教えていただきたいのですが、要は官民の内訳はどうなっているのか。政府は20兆円程度という考え方も示されていると伺っていますが、その20兆円というのは、150兆円超の中に含まれているのかどうか、もし分かれば教えていただければと思います。
何で申し上げているかというと、官民の負担割合です。資料の5ページでも示されていますように、経団連の試算ではカーボンニュートラルの経済効果は非常に高くて、GXの実現は経済全体に裨益するということですから、それだけ経済効果が高いのならば、その投資も含めてできるだけ民間資金で賄うのが適切ではないか。政府の投資というのは、民間でなかなかできないリスクの高い分野などに限定すべきではないかと考えておりますので、官民の内訳はどうなっているのかを教えていただければと思います。
付けくわえて、11ページのエネルギー価格の助成に関してですが、これまで物価高対策でガソリン価格抑制のための補助金というのをやってきたわけですが、さらに今度、総合経済対策で電気代とかガス代の負担軽減策も検討されていると伺っていますが、いわゆる物価高対策は必要かもしれませんが、マーケットへのそうした巨額で長期の介入というのは、マーケットのメカニズムを通じて化石燃料の消費を抑制するという機能を損なって、脱炭素に逆行しかねない。一方で、GXを推進するために政府が巨額の投資を行うというのは矛盾していると受け取られかねないので、説明にも窮するのではないか。目先のそうした対策に終始するのではなくて、エネルギー政策全体を見渡した整合性のある対策を考えていただければと思います。
それから、地財ですが、コロナ禍での臨時交付金は16.4兆円にも上るわけです。もちろん感染拡大の影響を受けた地域とか、住民の暮らしを支援するのは大切ですが、これだけ巨額の費用が適切に使われたかどうかは、きちんと検証しなければならないということで、その意味では資料の11ページにあるように、事業の実施状況と効果に関して、その自治体を公表することは重要というか、当然であると思います。
ただ、同じ資料で示されているように半数近い自治体が実施状況を公表しない、6割の自治体が事業効果の情報を公表していないというのは、極めて理解に苦しみます。公表しない理由を少々上げられているようですが、途中経過あるいは分かる範囲でも構わないはずなので、公表できないというのは何か後ろめたい理由でもあるのかと、痛くもない腹を探られかねないわけです。公表することで今後の効率的な予算執行に役立てる狙いも当然あるわけですから、国としても、公表を促していただきたいというのが一つ。
もう一つ、マイナカードです。マイナカードと健康保険証の一体化は意味のあることであると思いますが、これによって事実上、カードの保有が義務化されるわけです。すると、これまで多額の予算をつぎ込んでやってきたマイナポイントは何だったのか。要するに、これを失敗したから、義務化するということではないのでしょうかということです。
義務化する以上は、今後また、年末までポイントをつける予定ですが、ポイントを、また予算をつけてやるということは必要なのでしょうかという疑問も湧いてくるわけです。
この検証を含めて、予算の使い方としてポイントは適切だったのかどうかも改めて検証していただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。私は地財、マイナンバーの点と中小企業についてお話しできればと思います。
まず、マイナンバーですが、健康保険証の一体化は非常に大きな一歩であると思いますが、先ほど小林委員もおっしゃったように、本当に正念場であると思います。と申しますのは、やはり、赤井委員の指摘にもあったように、恐らく、金銭インセンティブで普及するというのが相当限界に来ているとすると、心理的な問題で、コスト、一つはやはり利便性があまりないのか、それともそれが伝わってないのか、あるいはそれ以上にコストとか不安があるからという三つの要因でつくられていないということであると思うのですが、この1点目について今回働きかけるということでは大きいと思うのですが、ただ、2点目、3点目、特に3点目の不安のところは、オンライン等でも意見を見るところでございますので、これがあまりにも進んでしまって手がつけられないと、結局これは事実上の義務化ということに対する反対意見が出かねないということで、慎重にうまく進めていただきたいと思っています。
それからマイナンバーについて、皆様あまりメリットなしということですが、個人的には非常にメリットを感じておりまして、早速、ICチップの交換時期に来て、交換に行ったのですが、すいている時間にもかかわらず40分かかりました。これが、大量交換時期に迫ったときに一体、これだけ一生懸命新しいものを更新、取得を促しても、取りこぼしが出てしまうのではなかろうかということで、ここのDXも早急に進めていただきたいということでございます。
それから中小企業についてです。先ほど来の効果検証、15ページ目でしょうか、これは必須であると思っています。横田委員がおっしゃったとおり、これは過去に遡ってもやるべきではないかと思いますし、やれる範囲でやる、やるべきところであると思います。
どのようにかというところで、一つお気をつけいただけたらと思うのは、恐らくゼロゼロ融資等の下支えのところ、それから成長性への効果というところは少し分けて考えるべきところでありまして、それぞれの効果検証が必要ということで、特に今回資料もいただいている事業再構築、これこそは生産性向上の効果検証を徹底的にやっていただきたいということと、それに伴って高付加価値産業への転換シフトを、例えば将来の需要見通しに応じてウエートづけを進めるとか、そうしたことをしていただければと思います。
そして、中小企業政策について、ここから先非常に重要であると感じているのは、資料にはないのですが、成長とやはりガバナンスであると思います。14ページ目を見ると、中小零細企業のところで利益が出ていない、あるいは出さない状況ということかもしれないと思っていますが、ここから先成長を促すということは、中小企業の何が問題なのかということを徹底して見ていく必要があり、そのためにはガバナンス、どうやってやっていくのか、銀行の役割、それから経産省さんが進めていらっしゃる中小企業活性化パッケージNEXT、それから支援機関等、こうしたことも含めて、後押しをしていくべきではなかろうかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕GXに絞って申し上げます。経済とエネルギーとエネルギー資源と環境というのはトリレンマ問題の代表格であって、気候変動をはじめとする環境汚染対策というのはコストであって、基本、気候変動対策をすれば即イノベーションに直結するというような議論には少々違和感があります。電力自由化もそうだったのですが、気候変動対策も社会的には善、よいことなので、議論が煮詰まらないままの制度設計がなされてしまうことに十分警戒しなければならないと思っております。日本の排出量は世界の3%にすぎません。それでも国が気候変動枠組条約の締約国として、大胆な削減にコミットする場合は、まずは、やはり規制的なアプローチを行うのが原則であろうと思います。その上で民間が、国における規制下で気候変動対策を行うことのコストを削減するために、設備投資を行うということにはもちろん異論はございません。
また、気候変動対策、ESGと言ってもよいかもしれませんが、それに前向きであることが、デット、エクイティ両面でも民間企業に金融資金調達の面でも恩恵をもたらすことも否定しません。大いに取り組むべきであると思っております。
さらに、もし気候変動対策がイノベーションに直結するというのであれば、本来やはりそれは民間企業の努力に委ねることを中心とすべきだろうと思います。
今回は、GX移行債と称する国債発行を裏づけとした大胆な予算が組まれようとしています。仮にこの財源が、電源開発促進税のような電力料金で回収されるならば、エネルギー政策とか電力政策にゆがみをもたらすものではない形で、安定供給に寄与するようなものにしていかなくてはならないと思います。石石税とか温対税のように、環境省、経済産業省がそれぞれ補助金を細分して配るような現行制度の費用対効果は極めて小さいと言わざるを得ません。また、グリーンイノベーション基金2兆円あったわけですが、NEDOのサイトを見ますと、9月7日時点で1兆6,568億円分が採択されていました。GXの発動は、その効果の初速を見てからでもよいのではないかと考える次第です。
最後に、グリーンと名がつくと、必ず太陽光とか風力といった再生可能エネルギーに限定されて議論されるのですが、GX実行会議でも原子力発電の再稼働、運転延長、次世代原子炉の開発や建設について検討を求めた、総理指示の内容とも異なります。今回の資料で示されたとおり2次エネルギーの中心は電力であって、デジタル化と電化が進んで電力消費量というのは増える見通しです。発電中のCO2の排出がなくて、電源コストの低い原子力の最大活用、これはエネルギー価格の助成によって市場をゆがめるより大変意味のあるものであると考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。田近委員、どうぞお願いします。
〔田近委員〕手短に。私からは、財政総論の補足、最近のイギリスの経済的な混乱について、2点指摘させていただきたいと思います。
一つは、今日この1ページのイギリス「成長戦略」公表直後の動き、これを是非アップデートしてほしい、アップデートが必要であるということです。
第2点は、イギリスのトレジャリー、財務省、それからオフィス・フォー・バジェット・レスポンシビリティー、財政責任庁、財政責任庁というのは政府の中にあって、経済財政見通しを行っているところですが、財務省と財政責任庁の緊張関係が非常に大切なのであると、また、今回それが重要な、今回の問題のキーの一つになっているということを指摘したいと思います。
まず、アップデートですが、9月23日に財務大臣、クワーテンが「Growth plan 2022」を公表した。その後に、先ほど御説明あったように、市場でいろいろ混乱があった。手短に言えば、金利が上がって国債価格が下がった。それが年金基金の債務問題に飛び火して、そして9月28日に、市場安定化というのは年金基金の債務に対して、中央銀行が救いの手を差し伸べた。つまり、長期国債の一時買入れを発表。実はこれが10月14日に買入れをやめると言って、今大問題になっているのですが、これも含めて、どうこの問題が展開していくのかアップデートが必要だ。それはテクニカルなことです。
言いたいのは、2で、9月23日にクワーテンが成長戦略を発表したときに、実は、OBR、財政責任庁の見通しをつけないで発表した。これが市場に大混乱を招いたわけです。どの記事を読んでも、アンファンディングなタックスカットなのであると。つまり、財源の裏づけのない減税であるということで、どのような言葉を使って良いか分からないのですが、いろいろな人にやり込められた。結果的には10日ぐらいたって、財務大臣が異例の所得税最高税率の撤回まで出たわけですが、私が言いたいのは、やはり今回、まざまざと見たのは、やはり財政当局と、それから経済見通しを行う、客観的に行う機関との、緊張関係がすごく大切なのだなと。そして、財務省はどうなったかというと、11月23日に見通しを出すと言っていたのを、それでは駄目だ、もっと早くしろと言われているわけですが、これもどのような見通しを出してくるのだろうということで、我々、中長期試算というのは持っているわけですが、やはり財務当局と、また、仮に中長期試算を財政見通しで使うならば、その間の緊張関係というのはもっときちんとしてないといけない。それが今回の、私が、イギリスのケースで興味深いと思った点です。
ということで、今後、公表直後、非常にスピーディーなまとめをいただきましたが、これからまた、財審はまだ続きますから、是非このアップデートもしていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。委員の御発言はここまでとさせていただきます。
有利さんから、質問が150兆の関係で、お二方からありましたので。
〔有利主計官〕冨田委員と木村委員から、150兆円に関し御質問がありました。まず、150兆円はグリーンエネルギー戦略に関する有識者懇談会が今年の5月にありまして、総理御出席であったのですが、ここで分野別、省エネ、燃料転換、電動車、蓄電池、水素、アンモニア、CCSとか、そうした分野別の、どのようなことをやっていくかという方針とともに、一定の仮定に基づいて計算すると官民協調でこれぐらいかかるだろうという試算として示されたものです。
その場で総理からは20兆円とも言われる政府投資という御発言もございました。いずれにしても、規模、官民の内訳、こうしたことは、GX実行会議の中でも、今後議論になって、年末の10年ロードマップに何がしかの方針が示されていくのではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、松本課長、お願いします。
〔松本調査課長〕佐藤委員から、行政事業レビューシートと予備費の関係で御質問ありましたが、既存事業について予備費で積み増す場合には、レビューシートの中で予備費の欄がございますので、費用が書かれるのですが、予備費で新規事業というものについては、必ずしも今のところ作成されてないという状況でございますので、また、いろいろ勉強させていただきたいと思います。
〔増田分科会長代理〕それでは、時間が10分ほどオーバーして大変恐縮でございましたが、本日の議題は終了とさせていただきます。
会議の様子はいつもどおり、記者会見で私から紹介しますので、個々に御発言なきようにお願いします。
次回は、10月19日水曜日です。9時半からで、歳出改革部会としての開催を予定しておりますので、よろしくお願いします。その後、また、今日のような形の分科会ということになりますが、その日程につきましては、事務局から追って御連絡をさせていただきます。
本日はこれにて閉会をいたします。どうもありがとうございました。
午後3時40分閉会