このページの本文へ移動

財政制度分科会(令和4年9月26日開催)議事録

財政制度等審議会財政制度分科会
議事録

令和4年9月26日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政制度分科会議事次第

令和4年9月26日(月)10:00~12:05
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)

  • 1.開会

  • 2.議題

    • 財政総論

  • 3.閉会

出席者

分科会

榊原定征

鈴木財務大臣

秋野副大臣

井上副大臣

宮本大臣政務官

金子大臣政務官

茶谷事務次官

渡部政策立案総括審議官

新川主計局長

寺岡次長

中村次長

前田次長

八幡総務課長

小野主計企画官

大久保司計課長

渡邉法規課長

松本調査課長

一松主計官

三原主計官

佐久間主計官

有利主計官

小澤主計官

寺﨑主計官

大沢主計官

端本主計官

河口主計官

坂本主計官

渡辺主計官

内之倉主計監査官

山岸予算執行企画室長

鈴木主計企画官

園田公会計室長

分科会長代理

増田寛也

赤井伸郎

遠藤典子

大槻奈那

佐藤主光

十河ひろ美

武田洋子

土居丈朗

中空麻奈

藤谷武史

宮島香澄

芳野友子

臨時委

秋池玲子

上村敏之

宇南山

河村小百合

木村

熊谷亮丸

小林慶一郎

末澤豪謙

和夫

竹中ナミ

田近栄治

田中里沙

冨田俊基

平野信行

広瀬道明

別所俊一郎

真奈美

神子田章

村岡彰敏

横田響子

吉川


午前10時00分開会

増田分科会長代理それでは、時間がまいりました。ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様方には、御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

春に引き続きまして、本日の分科会も対面とオンラインの両建ての開催となっておりまして、半数程度の委員の皆様方には、テレビ会議システムを通じて御参加いただいております。また、各主計官等につきましても、テレビ会議システムを通じての参加となっております。御承知おきいただきたいと思います。

本日は、冒頭から秋野副大臣、井上副大臣、宮本大臣政務官、金子大臣政務官にお越しいただいております。誠にありがとうございます。なお、鈴木大臣は、閣議が終わり次第、お越しいただく予定となっております。

それでは、今日、秋の陣の初回でございますので、皆様から一言御挨拶を頂戴したいと思います。

まず、秋野副大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

秋野副大臣皆様、おはようございます。財務副大臣の秋野公造でございます。榊原会長はじめ、委員の皆様方におかれましては、ふだんから財政をめぐる諸問題について、幅広く御議論いただいており、敬意を表したいと思います。

令和5年度予算は、重要課題が山積する中での難しい編成になるものかと思いますが、本分科会から頂く建議を踏まえて、しっかり取り組んでまいりますので、忌たんのない御意見を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。

増田分科会長代理どうもありがとうございました。

続きまして、井上副大臣、よろしくお願いします。

井上副大臣おはようございます。財務副大臣を仰せつかりました井上でございます。私は財務大臣補佐官、財務大臣政務官時代も、皆様方に本当に御示唆を頂きまして、本当にありがとうございます。ちょうど政務官時代はコロナに入る時でして、その時の予算編成に関わらせていただきましたし、そして今回は、出口に近い状況になろうかと思います。今、秋野副大臣がお話しになられましたとおり、今回の予算は大変な問題が山積しておりますので、本当に皆様方の見識深い御指導を賜ればと思っております。

どうぞ、これからの1年間、よろしくお願い申し上げます。本日は本当に御出席いただきまして、ありがとうございます。

増田分科会長代理ありがとうございました。

続きまして、宮本大臣政務官、よろしくお願いいたします。

宮本大臣政務官おはようございます。財務大臣政務官を仰せつかりました、宮本周司でございます。榊原会長はじめ委員の皆様方には平素から本審議会に対しまして、多大な御理解と、また、御協力をいただいておりますこと、厚く御礼を申し上げます。

令和5年度予算編成に向けまして、特に、各歳出分野における改革内容、このことに関しましても、皆様方から活発な御議論を賜りたいと思います。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

増田分科会長代理ありがとうございました。

続きまして、金子大臣政務官、よろしくお願いします。

金子大臣政務官おはようございます。財務大臣政務官を拝命いたしました、金子俊平でございます。本日もお忙しい中、本当に委員の皆様方に多くお駆けつけいただきまして、改めて御礼を申し上げます。

どうぞ本日も貴重な御意見を賜りますよう、お願いを申し上げます。ありがとうございました。

増田分科会長代理どうもありがとうございました。

後ほど、鈴木大臣にも、お越しいただいた際に御挨拶をいただく予定でございます。

続きまして、事務方幹部は、私から御紹介させていただきます。

初めに、茶谷次官でございます。

続きまして、新川局長でございます。

続きまして、寺岡次長でございます。

続いて、中村次長でございます。

続いて、前田次長でございます。

最後に、八幡総務課長でございます。

そのほか、各主計官については、お手元に配付の座席表に記載してございますので、御確認いただきたいと思います。

続きまして、議事に入る前に、榊原会長より一言御挨拶を頂戴したいと思います。

榊原会長、どうぞよろしくお願いいたします。

榊原分科会長皆様、おはようございます。榊原でございます。委員の皆様におかれましては、オンライン出席の方も含めまして、御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

春の財審におきましては、委員の皆様方に大変密度の濃い御議論を行っていただきまして、現在の社会情勢を歴史の転換点と捉えた上で、財政運営に関する基本的な考え方、これを春の建議として取りまとめました。

令和5年度予算におきましては、先ほど先生方からも御指摘ございましたが、防衛の問題、あるいは新型コロナ、あるいは物価高騰といった、足もとの喫緊の課題に引き続きしっかりと対応しながら、厳しい財政状況の下で、財政健全化の観点を十分に踏まえた、質の高い予算を作っていかなければならないと思います。

委員の皆様におかれましては、これから始まる秋の財審におきましても、令和5年度予算編成の課題につきまして、活発な御議論を行っていただきたいと思います。それを、しっかりとした、意義深い建議につなげていきたいと思います。

各予算分野についての本格的な議論は、次回から開始する予定でございます。皆様に御出席いただきたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。

本日は、現在の経済財政状況を踏まえて、委員の皆様から、様々な観点から率直な御意見を頂きたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

私からは以上でございます。

増田分科会長代理会長、どうもありがとうございました。

それでは、これ以降、議事に移らせていただきます。

まず、財政総論について、松本調査課長から、簡潔に説明をお願いいたします。

松本調査課長主計局調査課長の松本でございます。よろしくお願いいたします。

お手元の財政総論の資料につきまして、手短に御説明を差し上げます。

1枚進んでいただいて、本日は経済と財政、あと予算編成の課題の二つのテーマについて説明申し上げます。

次のページをお願いします。一つ目のテーマでございます、経済と財政につきましては、成長力、市場動向、コロナ対策、物価対策の順に説明を申し上げます。

3ページ目です。話の前提といたしまして、各国の財政状況、プライマリーバランスの推移を御紹介いたします。この30年の平均で、日本の赤字幅は諸外国中最悪となってございます。

4ページでございます。その一方で、この30年、日本の成長力も落ちてしまっております。足もとの名目GDPは、ドイツにも再び迫られている状況でございます。一人当たりの名目GDPの順位も、大きく下落しているところでございます。

5ページをお願いします。経済低迷の原因、いろいろな見方があると思いますが、ここでは内閣府の年次経済財政報告の抜粋を紹介いたします。大きく言うと、設備投資の伸び悩み、あるいは労働投入量の減少といったところが、要因として挙げられております。

設備投資に関しましては、左下の黄色い所ですが、アニマルスピリッツが十分発揮されていない、かつて建議でも御指摘いただいたのと同じようなメッセージが指摘されてございます。

6ページです。労働投入量に関しましては、生産年齢人口が減少しており、今後も減少が見込まれます。右側ですが、人口構成の変化が生産性に影響しているとの分析もございます。雇用の在り方など、構造問題への対応も含めて考えていく必要があると考えております。

7ページです。もう1点の設備投資の伸び悩みの裏側におきましては、企業の内部留保・現預金が増えてございます。また、左側ですが、家計の金融資産も増えておりまして、最近では2,000兆円を突破している状況でございます。こうしたものも踏まえて、民間の投資、あるいは消費を引き出すための政策対応を考えていく必要があると考えております。

8ページです。左側の絵にありますとおり、政府債務残高は近年積み上がる一方で、名目GDPは横ばいにとどまってございます。時折、日本経済が低迷している原因は財政出動が不十分だったからである、という指摘をいただくことがあるのですが、現実には、経済の低迷と財政悪化が同時進行していることが実態であると考えております。成長力を高めるために何をすれば良いのか、よく考えた上で、規模ありきではなく、成果を上げられる支出を行うといった、これも財審でも御指摘いただいているような発想が極めて重要になると考えております。

9ページにお進みください。関連しまして、最近よくGDPギャップを財政で穴埋めすべき、といった議論が聞かれるところでございます。建議でも御指摘いただいておりますとおり、そうした対応を続けても成長力向上にはつながらないと考えており、その点を再確認させていただければと思っております。あわせまして、GDPギャップの推計手法につきましても、留意が必要と考えております。例えば、半導体のように供給制約があってサプライチェーンのボトルネックとなっているような製品であっても、そうした事情はマクロの推計値には反映されないということでございます。もう一つ、推計結果の数字にも、主体あるいはタイミングによってぶれがございますし、その中で、日銀におきましては、一番下ですが、年度後半には、このギャップはプラスに転じるという予想も出ております。GDPギャップの推計結果に基づいて財政支出の規模を論じることがなされる際には、こうした観点から注意が必要である、ということを申し上げたいと思います。

続きまして、10ページです。二つ目、市場動向との関係について、簡単に申し上げます。

まず、金利の動向でございますが、10年超の金利は上昇傾向にあるということでございます。

11ページです。今後、仮に金利が上昇した場合の財政への影響はどうなるか、と問われることがございますので、試みにイメージ図をつくってみたものでございます。上の濃いピンクの所、新規発行分に加えまして、下の薄いピンクの所ですが、満期を迎えた既発国債の借換え分につきましても、着実に金利が高くなっていくということでございます。こうした影響を考えましても、国債発行額の抑制に取り組んでいくことが必要であると考えております。

12ページです。もう1点、国債の消化に関しまして、これは春の財審でも御紹介しましたが、コロナ以降に短期債の発行額が増えてございます。先ほどの絵と比べて見ていただければ、金利変動の影響を受けやすい構造になってきていることは明らかでございまして、この点に留意が必要であると考えております。

続きまして、13ページ、コロナ対策について、話題を移させていただきます。こちらはIMFの累次のレポートを紹介してございます。IMFでも、コロナ禍の当初については、財政も含めたあらゆる対応を推奨していた、ということでございますが、他方、そうした議論は既に終わっております。赤い四角囲みの所ですが、本年の4月におきましては、財政赤字の縮小、あるいは持続可能性維持への取組を求めるということになっております。

本年7月版に至りますと、欧米のインフレの状況も踏まえて、マクロ経済全体を引き締めることが基本であろうという観点から、仮に対策を行うとしても、財政中立的なものとすべき、といった内容が盛り込まれているところでございます。

14ページです。我が国に関しましては、令和2年度、3年度にコロナ対策ということで非常に大規模な財政出動を行っております。ただし、今後につきましては、先ほどのIMFのレポートの流れなども踏まえまして、平時の対応に移行していく必要があるのではないかと考えてございます。

15ページへ進みます。足もとの経済状況ですが、雇用は持ち直しの動きが続いております。企業の経常収益も、全体ではコロナ前の水準を超えている、ということでございます。

16ページです。この9月末に、財審でも、これまでも御指摘をいただいてきたものですが、雇用調整助成金、あるいはゼロゼロ融資といった個別の施策につきまして、一定の見直しを行うこととしております。今後ともコロナ対策については、不断に見直しを行い、「例外」からの脱却・平時への移行を図っていく必要があると考えております。

続きまして、17ページでございます。物価高対策に話を移させていただきます。コロナ対応後、欧米諸国が直面する課題は、言うまでもなくインフレ対策でございます。一方、我が国の物価上昇率は、少し上昇してきておりますが、欧米諸国と比べれば緩やかである、ということも頭に入れておく必要があると思っております。

18ページをお願いします。諸外国の動向を幾つか紹介します。

まず、アメリカでは、8月にインフレ抑制法と題する法律が成立しております。気候変動対策に取り組みつつ、大企業への課税強化等で財源を確保するということで、この法律単体で見ると歳入超過となっております。

19ページへお進みください。この法律の成立経緯を見ますと、当初は、上ですが、巨額の歳出計画が公表されておりました。それが、議会での調整過程におきまして、中ほどですが、インフレあるいは債務残高との関係から懸念を示されまして、最終的には規模を大きく縮小し、インフレ抑制法として成立に至った、そのような経緯でございます。

20ページにお進みください。次に、ドイツでございます。ドイツは、5月にインフレ環境下での財政戦略を公表しております。下ですが、インフレ圧力の回避のため、財政対応は一時的、限定的なものとすること。また、インフレ下ですので、サプライサイドの成長を重視するということ。あとは、財政運営は危機対応モードから平時モードに復帰すること、などが盛り込まれてございます。

21ページにお進みください。その上で日本の状況でございます。

全体のインフレ率、物価上昇率も、欧米と比べてマイルドである、ということに加えまして、価格上昇が顕著な品目は、今のところガソリンなど一部であると認識しております。それらにつきましても、欧米と比べれば価格上昇幅は小さくなっている、ということでございまして、必要な対策はもちろん行うとしても、低所得者等ポイントを絞った対策を行っていくことが必要ではないかと考えております。

続きまして、22ページです。日本でも行っております、エネルギー価格の抑制策につきまして、長期化いたしますと市場機能のゆがみ、あるいは脱炭素の取組とのアンバランスといったことが生じかねません。今後とも、こうした点も踏まえ、取扱いについて検討を行っていく必要があると考えております。

一つ目のテーマは以上です。

続きまして、二つの目のテーマに移らせていただきます。24ページ、こちらは本年7月の概算要求基準でございます。資料の右上で、重要政策を推進するための要望枠を設けましたほか、資料の下の箱ですが、一番上の印の所で、必要に応じて事項要求も行えることとしております。さらにその下三つですが、個別の重要課題である防衛、こども、GXにつきましても、「骨太方針」で示された方針を踏まえまして、予算編成過程で検討する方針となっております。この概算要求基準に沿って、既に8月末に各府省庁から要求が提出されているという状況でございます。

続きまして、25ページです。個別の重要課題と申し上げました防衛、こども、GXにつきまして、「骨太方針」での記載を抜粋しております。これら3項目につきましても、それぞれ、後日改めて御審議いただくことになりますが、本日は、この論点の頭出しということで、次ページ以降、紹介させていただきたいと思います。

26ページになります。こちらは防衛費をめぐる議論の経緯です。一番上、年末に向けまして、いわゆる三文書を策定することとされております。防衛費の相当の増額を確保する決意等を表明された上で、総理は、真ん中ですが、内容、金額、財源の3点セットで議論すると仰せでありまして、一番下ですが、幅広く総合的な議論を行うための有識者会議の設置も表明されたところでございます。

続きまして、27ページでございます。防衛力の5年以内の抜本的強化に向けた論点です。財政余力の確保と、国力を総合し、あらゆる政策手段を組合せた対応が必要と考えております。また、三つ目の丸ですが、防衛費は恒常的に支出される経費であることに留意が必要です。

その上で、実効性の観点からは、同盟国との連携をきちんと前提としているか、周辺国に日本への侵攻を躊躇させる効果があるか、あるいは既存事業の見直し、費用対効果の見極めなどを行っているか、といった観点。

続きまして、実現可能性の観点からは、現実的に5年以内の抜本的強化につながるものとなっているかどうか。

一番下、国力としての防衛力の観点からは、関係省庁の施策・資源を総動員しているかといった点が論点となります。

28ページへお進みください。国力としての防衛力の観点につきましては、例えば、研究開発や公共事業などにも、防衛力につながるものがございます。他方、関係予算全体に占める防衛関係の割合は、日本は低くなっております。今後、防衛省、関係省庁の連携の枠組みを構築すべきものと考えております。

続きまして、29ページです。続きまして、経済・金融・財政の脆弱性についても触れさせていただきます。

仮に軍事的緊張が高まれば、資本逃避、あるいは物価高などが生じる可能性がございます。他方で、財政需要の拡大も必至でありまして、市場からの資金調達が必要となってまいります。国家として、こうした状況に立ち向かうためには、平素からの財政余力の確保が不可欠であると考えております。一番下の箱の真ん中の丸ですが、脆弱性を解消せず放置し続ければ、相手国にそこを狙われるおそれすらあるのではないかと考えております。

30ページへお進みください。ロシアの例でございます。ロシアは資源国として貿易黒字を維持しているほか、外貨準備の増加あるいは債務残高の引下げなどを、クリミア危機後、淡々と進めてきていたということでございます。

日本につきましても、有事への備えということを考えている状況でございますので、経済・金融・財政の脆弱性を放置せず、できる限りの改善を図っていくべきものと考えております。

続きまして、31ページ、こども予算についてでございます。コロナ禍の中で出生数が急減しております。減少ペースは、将来人口推計と比べて7年も早まっており、直ちに何らかの対応を行うことが必要な状況でございます。

32ページへお進みください。一方で、子育て支援につきましては、消費税を活用した保育所の拡大、あるいは幼児教育の無償化など、相当充実させてきているということでありまして、国際的に遜色のない水準になっております。この上で更に何を行うことが必要なのか、見極めていく必要があると考えております。

33ページですが、課題の一つは、妊娠・出産から幼児教育無償化が始まる3歳までの期間について、支援が手薄になっていることです。全世代型社会保障構築会議において、支援の充実策とともに、そのための費用を社会・経済の参加者全員が連帯して、広く負担する枠組みづくりが検討課題とされております。この絵の下のほうの真ん中の箱囲みでございます。

34ページにお進みください。子育て支援の課題の2点目、非正規社員の方々の問題です。非正規の方々は結婚されていない方が多く、賃金の低さ、あるいは能力開発機会の乏しさが影響している可能性がございます。雇用のセーフティネットの再構築に取り組んでいくことが課題と考えております。

35ページへお進みください。重要課題の3点目、最後ですが、GX予算についてでございます。

「骨太方針」におきましては、将来の財源の裏づけを持った「GX経済移行債」により先行して資金調達を行い、速やかに投資支援に回していくとの方針が決められており、GX実行会議において議論がなされております。

36ページです。検討に当たりましては、GX経済移行債の具体的な償還財源の確保、その上で効率的・効果的な支援となるよう、内容の精査と、しっかりした執行管理が必要と考えております。地球環境のみならず経済、財政のサステナビリティも一体的に確保することが重要であると考えております。

37ページへお進みください。最後になりますが、温室効果ガス削減目標の達成に向けては、電力由来のCOの削減も一つの重要な課題です。この点も踏まえながら検討を進めていく必要があると考えてございます。

私からの説明は以上です。

増田分科会長代理ありがとうございました。

鈴木大臣が御到着されました。鈴木大臣に御挨拶を頂戴したいと存じますが、その前にカメラが入りますので、そのままでお待ちいただきたいと思います。

(報道カメラ入室)

増田分科会長代理それでは、鈴木大臣、どうぞ御挨拶をお願いいたします。

鈴木財務大臣皆様、おはようございます。今日、閣議と時間が重なってしまいまして、遅参いたしました。大変失礼いたしました。

榊原会長はじめ委員の皆様におかれましては、日頃から幅広く、かつ熱心に御議論をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

春の本審議会では、不確実性が増大する中、危機においても、我が国が円滑に資金調達できるよう、財政の対応余力を持っておく必要性が高まっていること。経済成長のために、金と人の目詰まり状態を解消し、企業と個人の行動変容を実現するための具体的政策が必要であること。予算規模ありきの考え方ではなく、アウトカム・オリエンテッド・スペンディングを行う必要があること。こうしたメッセージを含む建議を取りまとめていただきました。こうした点を踏まえ、引き続き、責任ある経済財政運営を進めてまいります。

また、新型コロナ対応などにより、足もとの財政状況は、より一層厳しさを増す中で、緊急的な対応による「例外」から脱却し、平時へ移行することや、物価上昇対策については、影響の大きな低所得者への対策に重点化することなど、メリハリの利いた対応を行ってまいりたいと考えております。

令和5年度予算編成については、GXなどへの官民投資、防衛力の強化、少子化対策など、重要課題が山積しており、難しい編成となると考えております。財政健全化の道筋をつけていくためにも、歳出の中身を精査するとともに、それぞれの政策に必要な安定財源を確保するなど、しっかり対応してまいります。

こうした中、委員の皆様におかれましては、引き続きその豊富な御経験と深い御見識に基づき、活発に御議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

どうぞよろしくお願いいたします。

増田分科会長代理どうもありがとうございました。

それでは、報道関係者の皆様方は、ここで御退室をお願いいたします。

(報道カメラ退室)

増田分科会長代理なお、鈴木大臣でございますが、公務のため、ここで御退席をされます。

(鈴木財務大臣退室)

増田分科会長代理それでは、ただいまの事務局説明に関して、委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴したいと思います。なお、本日欠席の安永委員より、意見書を提出いただいておりますので、お手元にお配りしておりますが、お目通しいただきたいと思います。

御意見、御質問については、いつもどおりのことでございますが、会場にいらっしゃる委員の皆様方はネームプレートを立てていただきたい、それから、テレビ会議システムを通じて御参加いただいている皆様には、挙手するボタンがあるかと思いますので、そちらのクリックで合図をしていただきたいと思います。なお、本日も御出席の方の人数が大変多くございますので、限られた時間の中でできるだけ多くの方に御発言いただくということで、できるだけ手短に、是非3分以内でお話をまとめていただきたいと思います。

初めに会場から5名程度、そしてテレビ会議システムから5名程度、そうした形で順次指名させていただきます。なお、会場にいらっしゃる皆様方は、備付けのマイクをオンにして御発言いただき、終わりましたらオフということで、差し支えなければマスクを外して御発言いただければと思います。テレビ会議システムの委員の方は、ミュート解除を忘れずにしていただいて、御発言していただきます。そして、終わりましたらミュートに戻していただくということで、お願いしたいと思います。

やり方は以上でございますが、何か御不明な点があれば、事務局におっしゃっていただければと思います。

それでは、まず、会場の委員の皆様方から御指名をしていきますが、初めに広瀬委員、それから大槻委員、その順番でお願いします。

広瀬委員、どうぞお願いします。

広瀬委員ありがとうございました。また新たな気持ちで、この財審に臨みたいと思っております。

今、世の中、何となく閉塞感というか、重苦しい空気に包まれているのではないか。コロナ、ウクライナ、物価高、なかなか出口が見えない。それから、デジタル化も思いのほか難しい。グリーン化も、なかなか一筋縄ではいかないということで、これまではどちらかというと将来に対して展望が開けないということだったのですが、ここに来て、当面の状況をどう脱するのかということになってきているのではないかと思っております。

ただ、悲観ばかりしているのが一番いけないわけで、そうした中でも一つ一つ着実にやっていくことが大切であると思っております。今回、政府が入国の上限を撤廃したとか、あるいは円安の阻止に動いたということで、賛否はいろいろあると思いますが、私は、その一つと受け止めております。

財政に対しても、こうした状況になると当然いろいろなプレッシャーが大きくなるわけですが、これまでどおり財政再建、2025年プライマリーバランス黒字化という旗を後退させることなく、着実に歳出削減、あるいは歳出の抑制、これに努めることが重要であると思っております。

具体的なことを3点申し上げたいと思います。まず、1点目は、コロナについては、有事対応から平時対応に切り替えていくべきであると思います。

それから2点目は、防衛費、こども家庭庁、GX、中身はもちろんですが、その財源、それから負担の問題は避けて通れない問題であると思っておりますので、これもきちんと議論をすべきではないかと思います。

最後は、中小企業でございます。御承知のとおり、中小企業は今、コスト増がなかなか価格に転嫁できない。そのために設備投資あるいは賃上げに回らない、こうした非常に厳しい状況にあるわけですが、その中でも、生き残りをかけて事業革新に努めたり、あるいは新分野に挑戦したり、そうした頑張っている中小企業も多いわけですから、是非、中小企業については、メリハリのある中小企業政策が必要ではないかと思っております。

以上でございます。

増田分科会長代理続いて、大槻委員、お願いいたします。

大槻委員ありがとうございます。毎回、財審のスタートには、待ったなしであり、非常に今期は難しいということで話がスタートするわけですが、今回は掛け値なしに難しい、そして正念場であると感じる次第です。

2点だけ申し上げさせていただきたいのは、1点目に、世界がもしかしたら財政に非常に敏感になっているかもしれない、フェーズが変わっているかもしれないという点と、それからもう1点が、企業の成長力格差が拡大する可能性、懸念を感じているというところです。

1点目については、御存じのとおり、先週、減税を発表したイギリスが通貨も売られ、そして国債の利回りが急上昇しているという状況です。日本の円安は、今金利差で恐らく9割程度以上が説明できるということで、これ自体についての急速な財政からの影響ということではないと思います。しかしながら、市場の変化を十分に懸念するべきことであり、改めて財政健全化を、今、広瀬委員もおっしゃったように、旗を降ろさないということが重要であると思います。

それと同時に、使うべきところには使っていく、というところでもあり、申し上げた成長力格差の拡大は、御存じのとおり米国等は流動性の高い市場である結果として、資源の分配が適切に行われつつあるのが、コロナ禍以降の動きかと思いますが、日本の場合、安定性は非常に良いところではありますが、一方で、それが図られなかった点で、格差拡大の懸念をどうやって財政で担保していくか、財政で、これ以上の格差拡大がないような形で成長を促していくか、そうしたところに配慮しながら、議論ができればと思っております。

以上です。

増田分科会長代理ありがとうございました。

続いて、宇南山委員から、順次指名していきますので、宇南山委員、どうぞお願いします。

宇南山委員ありがとうございます。コロナに続きまして、物価高が起こっておりまして、様々な支援が必要であるというのは間違いないところですが、先ほどの大臣のお話にもありましたように、ワイズスペンディングの観点などを考えると、ターゲットを絞った重点的な政策は不可欠だろう。そこは皆様と同意できることなのではないかと思っています。

しかし、重点化する対象をどうやって選ぶのかに関して、少し問題があるのではないか。言わば、バラマキに対抗するための武器になるべき重点化の選定方法が、現在では所得に偏っている。先ほど、大臣の話にも、課長の話にも、「低所得者」というキーワードが何度か出てきましたが、低所得者というのは必ずしも経済的な弱者を意味するわけではありませんで、特に高齢者を考えれば、多くの資産を持っていたりして、十分な経済資源を持っている人も含まれてしまう。しかし、現在は「住民税非課税」というのがキーワードになっていて、非常に多くの人が対象に、高齢者が対象になっているような政策が打たれています。ここのところはもう少し財審としても武器を増やすということで、DXなどを活用し資産を把握したりすることを通じて、本当に重点化すべき対象を選んでいくことが必要なのではないか。総論、全体として、全ての政策に共通すると思いますが、この辺が論点なのではないかと思いました。

以上です。

増田分科会長代理それでは、遠藤委員、お願いします。

遠藤委員ありがとうございます。先日、北海道のナンバーワンコンビニチェーンにセイコーマートという会社があるのですが、そこの社長のお話を伺う機会がありました。1か月の中で最も売上げが高い日は、ずっと給料日の25日だったそうです。ところが、近年、それが年金支給日の15日に移ってきたということを伺いまして、ところが最近では1日が売上のピークなのだそうです。それは生活保護の支給日ということです。海外に資産を移転されるような富裕層がいる一方で、こうした貧困層の固定化が深刻な状況になっているというのが、特に印象的でした。

さて、令和5年度の予算編成の課題について触れたいと思うのですが、3大方針の中にある、まず、少子化の問題ですが、通年で80万人を割り込むという予想とか、昨今18歳から34歳までの若者が希望するこどもの数が1.79という、非常にインパクトのある数字が示されました。もちろんライフサイクルの変化もあるのでしょうが、日本の年収の中央値は399万円で、やはり経済的な事情によってこどもを持つ余裕のない家庭もあるし、この資料の中でも御紹介されたように、非正規労働者が、育児休暇の制度なども受け入れられない状況も深刻であると思っております。

財務省も長い間、少子化問題について、強い問題意識を持って取り組んでこられたと承知しています。それでも少子化問題、雇用問題について、財政制度が果たし得ることは限られているかもしれないのですが、去年の4月に法改正で児童手当に所得制限が付けられたと思います。そこで400億円ぐらい捻出されたと思うのですが、待機児童を4年間で14万人解消するために、1,400万円を使うということで充てられたと思っています。こうした歳出の効果を併せて注視していかなければならないと思っています。

今般、低所得世帯に5万円給付する8,540億円、うち事務経費510億円ですが、やはり少子化問題に相対感で比べると、国民に対して、不均衡感というのでしょうか、不平等感というのが根づく一つのきっかけにもなっているのではないかと思っております。

2点目、防衛についてですが、もともと高い日本の地政学リスクがあって、米中対立とかロシアのウクライナ侵攻によって更に増しているので、年末の三文書に注視したいと思っています。

また、例えばイージス・アショアの代替艦にどんなミサイルを積むのかなど、防衛予算は事項要求に回っているものが多いので、最終規模や内容を知ることはできませんが、宇宙政策に関わっておりますので、そうした新領域では、日本は2周遅れと言う人もいれば、6周遅れと言う人もおり、こうした現状を打破しなければなりません。サイバー攻撃とか経済制裁の強化といった非キネティック予算も、やはり台湾有事の前に整備を急がなければならないと思っています。

最後にGXについては、本来、民間の企業努力に委ねることを中心として、政府はアンカーテナンシーにとどめるべきと私は考えています。今回はGX移行債発行を裏づけとした膨大な予算が組まれるようですが、現行制度のように、細分化した補助金を数多に配るような仕組みではなくて、エネルギー政策にゆがみをもたらすような形ではない方向で、安定供給に寄与する、例えば送電網を整備、補修することに集中するような、国民生活が平等に潤う措置にする必要があると思います。

最後、1点だけ付加したいのですが、コロナ対策の補正予算は、令和2年度だけで77兆円あったわけです。東日本の復興予算が10年で32兆円だったことを考えると、異次元のボリュームです。復興予算は復興税として回収されていますが、コロナ関連予算も、危機管理措置だったのですから、当然、同様の回収の措置が必要ではないかと考えております。

以上です。

増田分科会長代理それでは、木村委員、どうぞお願いします。

木村委員御説明ありがとうございました。財審春の建議のタイトルは、会長がおっしゃったとおり、歴史の転換点における財政運営という非常に重い内容でした。秋の財審は、令和5年度の予算編成の在り方を中心に議論するのは承知しておりますが、春の建議のタイトルを踏まえて、具体的な今後の国家ビジョンも含めた骨太の財政運営の議論をしていくことが必要ではないかと考えています。

資料の8ページにもありますように、政府債務残高が累増する一方、過去30年の名目GDPは横ばいでしたと、積極的な財政運営が、民間主導の持続的な成長につながっていない、という問題点が指摘されていましたが、これは私もそのとおりであると思います。というか、むしろ問題は逆に、最近更に深刻になっているか、悪化しているのではないかという気もしています。コロナとか物価高とか、そうした例外的な異常な事態があった、ということもあって、それに対する支出はある程度必要かもしれませんが、巨額の財政出動が常態化して、しかも年度の後半に大型の補正予算の編成が繰り返されている。これで、予算がなかなか使い切れずに多額の繰越しと不用額を計上している、という状態が果たして良いのかどうか。

しかも、令和5年度予算の概算要求は、事項要求を多用というか乱発というのでしょうか、そうした状況にあります。事項要求、それぞれ防衛とか少子化あるいは脱炭素と重要な分野ではありますが、本来事項要求というのは例外的に運用するもので、これだけ乱発されると概算要求自体が形骸化されかねない、といいますか、予備費の対応とも並んで財政規律がかなり心配されるおそれがあると思います。

防衛とか少子化、脱炭素、GXは、いずれも国の根幹に関わる政策でありまして、冒頭申し上げましたように国家ビジョンを明確にした上で、メリハリのある予算編成がこれから欠かせないのではないだろうかと考えます。

最後に、総理は来月の総合経済対策を取りまとめるお考えを示されています。与党から、30兆円規模とか大型の対策を求める声が出ていると伺っていますが、必要なものは当然必要なのかもしれませんが、一方で、GDPがコロナ前の水準を回復しておりますし、なおかつコロナに伴う行動制限を課さないという現状、そうした状況に政府として認識があるのでしたら、過度な財政出動は不要ではないか、という認識を持つことが大事であると思います。秋の財審は、これまで財源は半ば置き去りにして膨張する一方で出した財政運営、その転換も、平時ということをにらんで、強く促す方向を目指すべきではないかと考えておりますので、その辺の議論もこれからしっかりしていくべきであると考えております。

以上です。

増田分科会長代理それでは、ここで、テレビ会議システムで御参加の方を指名してまいります。

初めに、赤井委員、御発言ください。

赤井委員赤井でございます。ありがとうございます。今日は財政全体ということで、簡単に3点ほど。

まず、一つ目ですが、財政再建は急務ということですので、原則論になりますが、B/C、支出に見合うベネフィットがきちんとあるのか。さらに、ベネフィットだけではなくて、そのベネフィットを得た人が税金を払っていかないと財政再建になりませんので、将来の税収増を生み出すような、効果的なベネフィットがあるのか。つまり、税収がコストのCに見合うかどうか、その辺りをきっちりと、より深く議論していき、各歳出分野での歳出の在り方を考えるべきであると思います。

2番目に、14ページにもありましたが、コロナの件です。コロナが落ち着いてきて、歳出も減りつつありますが、いまだに歳出も出ていますので、全体でどのようなものに、どのぐらい出されたのか、随時、その効果も含めて検証していくとともに、増えた分は、やはりほかの負担とは別に、国民にしっかりコロナの分は別に返しましょう、という議論を始める意識をつくっていく。そうしたことは努力していくべきではないかと思います。コロナの分だけでもきっちりと返しているのですよということを国民が認識して、海外にも発信していくことが大事かと思います。

3番目に、19ページですか、ドイツの例もありましたが、海外でも危機意識を持って対応していますので、日本がこのまま財政赤字とか今の政策をずっと続けていて、本当に大丈夫なのか、その危険性はしっかりと認識して、対応方法を考えるということを、海外の事例とともにしっかりと伝えていくべきであると思います。

以上です。ありがとうございます。

増田分科会長代理それでは、続いて河村委員、お願いいたします。

河村委員ありがとうございます。私からも2点ほど言わせていただきたいと思います。

まず、第1に、11ページ、12ページのあたりですが、やはり、今の財政運営の極めて厳しい状況をきちんと認識すべきではないかと思います。世の中全体として危機感が少し甘いのではないか。11ページで御説明くださったとおり、やはり、海外を中心に大分金融情勢が変わりつつある、金融経済情勢が変わりつつあるということで、日本はずっと超低金利で来ましたが、これから動きがあった場合、どうなるのかということで、例えば平均残存期間、国債のデュレーションとかを取って示せば、こうした形になると思うのですが、実際はもう少し捉え方は違うのではないか。次の12ページでお示しくださいましたが、コロナ対策でばんと使った部分が、そのかなりの大部分がまだ短期国債の形で残ってしまっている。まだ60兆円も残ってしまっているということは、もう本当に期近のところで借換えがバンバン来るということですので、先ほどの11ページの図と、現実はまた少し違うのではないか。もっとたくさん借換えきますよね。ですから、やはり、金利の長い部分、短い部分、どこが動くかにもよるのですが、影響はやはり大きく出かねないというようなことになり得るということで、そこのところはきちんと危機感を持って、しっかりと手綱を締めてやっていくことが必要であると思います。

そして、繰り返すまでもないことですが、冒頭でプライマリーバランスの推移のところ、各国比較でお示しくださいましたが、何でプライマリーバランスの黒字化を目指すことが必要なのかを、もう1回改めて国民によく語りかけるというか、みんなが認識できるようにすべきであると思います。新発の赤字国債を出してやっているようでは、何かあったときに、やはりそこの赤字国債の分、どれだけ出せるかということにもなってしまうことになりますが、逆にプライマリーバランスが均衡するとか黒字化になっていれば、少なくともその年の支出は税収できちんと、安心して賄えることにつながるということになると思いますので、だからそれを目指しているのであると、そこのところがしっかり国全体で認識できるように、財審としてもやはり訴えかけてやっていくべきではないかと思います。

コロナ対策ですが、次の16ページでも御説明くださいまして、だんだん収束に向かいつつあるようではあるのですが、雇調金のところでの対応などにも見られるように、いろいろ縮小して、10月以降、金額を下げていくというようなお話になっていますが、本当にそれで良いのかどうか、日本はやはり、今回のコロナに限りませんが、危機対応のとき、とにかく手厚く長くずるずるというのが、それが逆に民間の活力をそいでしまったようなところにつながっているのではないか。現在の成長力のなさ、潜在成長力の低さ、活力のなさというのは、ある意味政府が手を出し過ぎで、市場の失敗の是正ではなくて、これは政府の失敗に、事実上なってしまっているのではないか。そうしたことにならないように、やはり心してやっていくべきではないかと思います。

あと最後に、今回の予算より大きな新たな政策課題が出てきていると、防衛費の話もそうですし、それから少子化の話もそうですし、それからGXの話、いろいろあると思います。やはり、それぞれ急務ですし、やらなければいけないことがある、お金もかかります。でも、やはり大事なのは、どの分野についても、防衛でもそうですし、将来のこどもたちのことを考えて、温暖化のことを考えてもそうですし、将来の日本国民、こどもたちが負担する財源でやるようなことでは、全然国としての財政の持続可能性は維持できませんので、防衛のところでもお話が出ていましたが、それでは逆に、この国が狙われてしまう、隙を突かれてしまうようなことにもなりかねませんので、やはり財政健全化をしっかりと進めていく必要がある。その下での予算編成を考えていく必要がある。そうしたことではないかと思います。

以上です。

増田分科会長代理あと、3名の方、オンラインで参加の方、小林慶一郎委員、それから田中委員、冨田委員と、ここまで指名しますので、よろしくお願いします。

続いて、小林慶一郎委員、どうぞお願いします。

小林(慶)委員小林です。おはようございます。

それでは、お話しします。今年の秋もいろいろ緊急的な課題に直面しているということであると思います。防衛費の問題とか、あるいはエネルギー価格の高騰を受けた財政措置、あるいはコロナ対策をどうするか、いろいろな課題がありますが、やはり財審での議論などは長期的な視野と短期的なニーズとのバランスの取れた議論をしていく必要があるということであると思います。言うまでもなく、財政の健全化、あるいは財政の持続性の維持を目標にするということは、堅持すべきであると思いますが、大事なことは、我々の視点を将来の時点に移動させて、将来の視野から、現在の政策課題を考察するということかと思います。そうすることで議論が大きく変わる。ですので、国民全体の視点を、どうやって将来世代の視点に移動してもらえるのかが、やはり大きな課題だろうと思います。

一つ御紹介したのは、何回かこの審議会でも御紹介したフューチャー・デザインという話です。ミクロ経済学者の西條辰義さんが提唱し始めたプロジェクトで、例えば岩手県の矢巾町という町がありまして、そこで、水道料金について、住民討論をしたということがあります。その実験では、水道料金の値下げを、普通に議論すると水道料金の値下げをみんな求めるということですが、50年後の住民になった、50年後の将来世代になったつもりで議論をすると、意見が変わった。むしろ、料金を値上げして、将来の設備投資に備えたほうが良いということがコンセンサスになって、結果的に、実際矢巾町では水道料金の値上げが実施できたということです。

このようなエピソードが実は、たまたまですが、今月の『Foreign Affairs』誌の巻頭論文で紹介されています。『Foreign Affairs』の今月号は、100周年記念の特別号でありまして、その巻頭論文は、ウィリアム・マッカスキルという、若いスコットランド人の哲学者が書いているのですが、その表題が「The Beginning of History」、「歴史の始まり」という題の論文です。これはフランシス・フクシマの『歴史の終わり』になぞらえた論文だと思いますが、この論文の中で、矢巾町のフューチャー・デザインの実験のことをマッカスキルさんは紹介してくれているということです。同じマッカスキルさんは9月16日のワシントン・ポストの記事でも、フューチャー・デザインの実験のことを紹介してくれています。

ですので、このような日本の一部の研究者が始めたプロジェクトが今、世界的に紹介されるような状況になっておりますが、こうした動き、フューチャー・デザインのような動きをどうやって国民に広げていくのか、学校教育のような形で広げていって、我々が政策を考える際に、将来世代の視点で考えるということをやっていくべきであると思います。それを今日御紹介したく、発言をさせていただきました。

以上です。

増田分科会長代理続いて、田中委員、お願いいたします。

田中委員田中里沙です。発言の機会をありがとうございます。

このタイミングで、社会全体のマインドをどう見ていくか、ということがますます難しいと思っています。未来への不安とか、希望も持てないという声が日常的で、先行きが不透明というところですが、例えば若い世代は、データを見ると、自分の親世代よりも豊かにはなれないという点において確信を持ってしまっている。子育て支援に関する頭出しもいただきましたが、この中で財政健全化をこれまでの形で措置しても、趣旨が伝わるには限界があるところかと思うところです。

また、春の建議のときには、歴史の転換点において、という発信において、その地点に立つと、自身の状況が分からず身動きが取れないというマインドですとか、不安が、社会及び自分自身、自分の所属する会社や組織にも、やはり着実に向かっていきます。その中で、人への投資ですとか、成長戦略の投資が、どこかで起きていくという感覚にならないよう、GXとかDXは遠い存在ではなくて、自分を含む、取り巻く社会が対象であることを実感してもらうことが重要であると思います。

25ページにもありましたが、例えば雇用政策とか成長投資においても、秋の建議でこれから議論していく財政運営の内容は、多様な階層の人の能力を、例えば引き上げて、個人も社会も生産性を上げることを目指すということが、例えば強調されて、今言われているリスキリングなどが享受されて、報酬の向上にもつながるような具体的なイメージが広がるようにと期待します。また、グリーンやデジタルにおいても、企業における内部留保の状況が動き、人材教育への費用の投入が拡大されるという、世論によるインセンティブの後押しが有効になっていくと思います。

しかしながら、その恩恵にあずかれない環境の方はいて、具体的な公的あるいは官民連携の支援策が鮮明に見えるような財政政策が共有されることで、格差拡大の流れが変わるような、実感が伴うような取組が重要になってくるのではないかと思います。政策と財政、経済財政運営が、自分に関わりのあるものであると、自分の現在と未来に向いているものである、という連関がはっきり見える観点を浮き彫りにできると良いと感じます。建議のとりまとめのところでどう発信しようかということになるのですが、議論の途中途中、常に意識しながら進めていけたらと思っております。

以上、よろしくお願いいたします。

増田分科会長代理それでは、冨田委員、お願いします。

冨田委員冨田です。ありがとうございます。

今年2月の当分科会におきまして、私は、2025年度プライマリーバランス黒字化目標の達成は、指呼の間に臨めるようになったのではないかと申し上げました。この目標達成の可能性は、更に高まっています。25年度プライマリーバランスの見通しについて、この7月末の中長期試算を、目標年度25年度に先送りした4年前の試算と比較いたしますと、赤字幅は今の見通しのほうが小さくなっております。25年度の税収等については、今回の試算に反映されていない、昨年度の補正後の自然増収分を考慮すると、4年前のベースライン見通しを上回ります。この間、2018年10月をピークに景気後退が始まり、さらにコロナの影響を受けてきたにもかかわらずです。

一方、25年度の一般会計のプライマリーバランス対象経費は、4年前の見通しよりも小さくなっています。これは、歳出の目安に沿って、当初予算の編成を続けてきたことによります。今後も、「骨太2021」で示されました、歳出の目安を守っていけば、本日は御説明なかったですが、参考資料の8ページにあるように、25年度PB黒字化の達成を見込むことができます。

PB黒字化の目標年度は、2003年度、11年度、15年度、20年度、25年度とこれまで何度も先送りされてきました。団塊の世代が60歳になるまでとされていた目標が、団塊の世代の全てが75歳になるまでと先送りされてきました。これがさらに、団塊の世代が傘寿を迎えるまでに、などとなりますと、国は信用の礎を失うことになってしまいます。

目標達成が可能な領域になってきているがゆえに、歳出の全ての分野が、その成否の決定に大きな影響を与えることになります。補正予算を含む新たな財政需要に対しましては、歳入を含めた財源確保義務を課し、当初予算は歳出の目安に沿って編成を行うことが必要です。

このうち防衛関係費については、戦前の軍事費について簡単に申し上げると、それは戦争が終結するまでの多年度予算で、決算は行われず、陸軍費と海軍費とに表示されるだけの、具体的な内容、費目は何ら示されない大括りの予算で、作戦計画から兵器生産も陸軍と海軍とが独立して展開しておりました。こうしたことへの深い反省から、内容と金額と財源の3点セットで議論をしていくのは当然のことです。

そして、総合的な防衛力を発揮するために、28ページで御説明あったように、関係省庁と歳出分担において連携を強化し、我が国の安全保障に対する財政面からの脆弱性を克服する必要があります。

また、GX移行債については、それが国の債務を増大させるものであるため、将来の財源の裏づけを明確に持っていることを検証できた対象に限定すべきです。

以上です。

増田分科会長代理それでは、こちらの会場に戻ります。熊谷委員から順番に御発言いただきます。

熊谷委員、どうぞ。

熊谷委員熊谷でございます。私からは3点申し上げます。

まず、1点目として、9ページでGDPギャップが取り上げられております。22日に発表されたGDPギャップは15兆円でございまして、相対比較で申し上げても、昨年の経済対策策定時点からは大幅に縮小しておりますし、16ページにございますとおり、コロナ対策の見直しが進んでおり、昨年の経済対策では20兆円近く計上されていたコロナ関係の予算の大宗が要らなくなるのではないかと考えます。

こうしたことも踏まえて、規模ありきではなく、積み上げで経済対策・補正予算の議論をしていく必要があると思います。

2点目として、個別分野では、①防衛、②GX、③こども、という三つの重要課題がございますが、私は、大切なのは原理原則であると考えております。これらに共通して言えることは、いずれも日本社会のサステナビリティ、持続可能性を高めるための政策であって、その財源を借金ですとか赤字国債で賄ったとしても、サステナブルな社会は到底実現しない。やはり、借金や赤字国債でサステナブルな社会を実現しようというのは、明らかな論理矛盾であると考えます。したがって、冒頭、鈴木財務大臣から「安定財源」というお言葉がございましたが、やはり恒常的な政策には、安定財源を用意する。この原理原則をしっかり貫くことが最も重要なポイントであり、今、世界的な潮流として、多くの欧米諸国は、こうした対応を取っているということを改めて強調させていただきたいと思います。

最後に3点目、各論の防衛でございます。年末の予算編成に向けて、防衛力の抜本強化が大きな課題となっておりまして、資料の27ページの最後に「関係省庁の施策・資源を総動員しているか」という論点が取り上げられております。

具体的論点として、28ページで、研究開発や公的資本形成が取り上げられていますが、税制、具体的には、研究開発税制や、社会保障施策、これは具体的には、防衛省共済組合による給付、厚生労働省の支援施策でございますが、こうしたものなどにも目を配っておく必要があると考えます。

私からは以上でございます。ありがとうございます。

増田分科会長代理それでは、宮島委員、お願いします。

宮島委員ありがとうございます。来年度の予算編成は本当に重要な予算編成であると思っておりまして、まずは、今もお話がありましたように、大きな、大事な施策であっても、額ありきではないように、そしてその財源に関しては、もちろんしっかり確保することですが、その財源の裏づけのところまで、次世代の負担感や次世代の不安が出るようなものではないということ、それから、その策定に当たって国民に中身が見えやすく、そしてチェックしやすく、その政策の意義が分かるようにということがとても大事であると思います。

まず、規模に関しましては、GDPギャップを埋めれば良いというような規模の議論が今後出ないことを期待しますが、例えば防衛費でしたら、一部の報道で、中期防の総額で、規模40兆円超を検討するというような報道がありました。

これに関しては、私は非常にびっくりしまして、今までは、中期防の総額で20兆円台だったのではないかと思うのですが、それに比べてとても大きな額です。何をやるかということの前に、こうした額が出ることもそうですし、まさに27ページでお示しのように、具体的にこれがどのように実効性があるのか、実現可能性があるのかを積み上げなければ、幾ら大事であるといっても納得ができるものではないと思います。ここは、やはり財源確保の方法と併せて、しっかり中身の議論をしていただきたいと思います。

それから、防衛だけではなくGXとか社会保障も、財源が必要なものですが、過去においては財源と言ってつなぎ国債を発行して、私はつなぎ国債が悪いとまでは言いませんが、そのつなぎ国債を手当てするはずの政策変更が何年も何年も後ろだおしになり、なかなか実現できなかったこともあったと思います。つまり、何となく先送りということが、いろいろな形で出て、次の世代に任せればよいというような空気が、やはり財源に関しては出かねないので、そこのところは次の世代が不安を感じない形が絶対に必要であると思います。

また、見やすさに関しましては、やはり来年度予算は事項要求が多くて、それから根回しの段階でも、既に補正予算を前提にしたような会話がされたと承知していますが、これは予備費も含めて国民から見るととても分かりにくい状況になっています。今何を議論しているかが、納得感がないまま、決まったものだけがばんと出てきているような感じがします。

説明の仕方という意味では、子育て予算に関して一つあるのですが、子育て予算は、いよいよ待機児童対策から、違うところへとか、今リーチしていない非正規の支援にということで、重点が少しずつ移ってきていると思います。その中で、OECDの各国と比べたグラフがよく提示されるのですが、そのときに、この計算の仕方は計算の仕方で、いろいろな計算の仕方があるのですよというような、補足がつくことがあります。このワードの受け止めですが、何となく、子育てを支えると言っても財務省は子育てにお金を使いたくないのかな、と子育て世代が感じるような空気だけを醸してしまって、具体的に何が日本は多くて、何は計算がほかの国と違うのかということが具体的にありません。前に出されたこともありましたが、常に出ているわけではないので、何となく子育て予算にお金を出したくないのかなという、メッセージの雰囲気だけが残ってしまうような印象だと関係者と会話したことがあります。

思いますに、子育て支援は、みんなが支援しているという気持ちやムードが一番大事で、なぜ、みんながこどもを産まないかというと、もちろん財政だけではなくて、満員電車に乗れば、妊婦もベビーカーも何か舌打ちされるとか、そうした世の中の空気感も全部含めて子育てがしにくいと感じてしまっています。財務省の説明の仕方が、そうしたケチりたいのかなとか、支援を全力でしたくないのかなという印象を持たれてしまうのは、得策ではないと私は思っていて、もし、具体的にOECDと比べて違う部分があるなら具体的に、日本はこれに関しては別の形ですごくやっていますなど示せば理解されると思います。実際、幼児教育無償化などすごいことをやったわけなのに、これからの人は恐らくありがたさを、その施策が入ったときに比べてそんなに感じないと思います。それが当たり前になってしまっているからですが、日本はこの形できちんとやっています、あるいは今手が届いてない非正規のところに、これからしっかり手当てしますというような、何をやるかということをしっかり国民に伝えることで、支援の姿勢がしっかり分かるということは、非常に大事であると思います。国民の分かりやすさを大切にし、決定だけが飛び込んでくるという形でない、途中の議論のクリアさもよろしくお願いいたします。

増田分科会長代理続いて、中空委員、お願いします。

中空委員ありがとうございます。今回は総論なので、総論についてお話をしたいと思っています。

まず、最初に、財政健全化と質の高い予算が大事であると会長がおっしゃいました。もうまさにそのとおりであると思っております。先ほど、大槻委員も、世界は本当に変わっているという話をしておられたと思います。イギリスもトラス首相に代わり、減税になります。イタリアはイタリアでメローニさんが恐らく首相になり、また大きくバラマキが出てくる。ただ、イタリアは、国債もまた売られていくと思うのですが、売られるといってもIMFでの債務残高対GDP比で見ると155%、日本は260%、これだけを見ても日本がもっと、なぜ売られないのかとか言っている場合ではないのかと思います。

そもそもを考えますと、この建議、また秋で新しい気持ちで臨まなければいけないのですが、いろいろ、これまで私たちがつくってきた建議を見ますと、過去から、結構待ったなしであると、聖域なくやっていこうと、毎回毎回、私たちは頑張ってやってきているつもりなのですが、一向に変わらないのはなぜなのだろうと思っています。

恐らく、何かやり方を変えないと、同じことを繰り返すことにもなるのかと思っておりまして、その辺から3点申し上げたいのですが、1点目は、先ほど小林委員もおっしゃいました、将来視点を入れていきましょうということであると思います。仕方がない、コロナで仕方がなかった、今は物価高、仕方がない、いずれも仕方がないのであると思うのですが、ここでは、それが仕方がなかった結果、将来どうなるかということを考えなければいけないのです、ということかと思っています。その視点を必ず入れること。

2点目は、分かりやすさかと思います。今、宮島委員も分かりにくいのではないかという話があったと思うのですが、日本国民に対して、財政健全化がなぜ重要かが伝わってないとすると、私たちが、ここで財政健全化を一生懸命話した後の建議が、やはり伝わってないのであると思います。これをどうやって伝えていくのかという工夫をしていかないと、そろそろいけないのではないかというのが2点目。

3点目は、先週、ニューヨーク証券取引所で岸田総理が、一番盛り上がるのは逆転勝ちであるとおっしゃっていて、そろそろ私たちも逆転勝ちの何かを打たなければいけないのですが、それは何かというと、やはり経済を活性化させることであると思います。そのためには、経済を成長させるようなことに、きちんと原資がいかないといけないと思います。そして私は、サステナブルファイナンス、グリーンが一番手っ取り早いと思っているのですが、そこをどうやって現実化させていくか。そのためにも、財審では競争力の観点を少し入れなければいけないかと思います。ウエルフェアとか公平性は、とても大事な観点ですが、その点については多くの委員の方が言っていただいたので、私は、ここでは競争力をいかに磨くかということを重視して、今回の財審に臨みたいと思っていますという、自分の気持ちも込めて、お話をしたいと思いました。

以上です。

増田分科会長代理続いて、武田委員、お願いします。

武田委員ありがとうございます。私からは3点意見を申し上げたいと思います。

1点目は総合経済対策についてです。先ほど事務局から、御説明がございましたとおり、GDPギャップを穴埋めすべきという規模ありきでは、成長力につながらないとの御指摘は、そのとおりと思います。また、現在は、岸田政権において、経済活動の正常化が着実に進められており、ギャップ自体に注目しましても、縮小の方向で動いています。

むしろ心配すべきは、冒頭に大槻委員がおっしゃいましたように、市場での財政に関する警戒感が高まっている点です。補正予算に関しては、こうした内外の経済情勢を踏まえた議論が求められるとともに、成長力の底上げに向けて何をすべきか考え、大臣の御発言にもございましたように、メリハリ、すなわち真に効果的な施策に絞り込む必要があると思います。

2点目は、防衛費をめぐる議論についてです。昨今の海外情勢を踏まえますと、国として安全保障を強化していくことは、必要であると思います。先週、米国へ出張し、ワシントンDCやニューヨークの識者の方々と意見交換を行いましたが、日本以上の危機感を肌で感じてまいりました。だからこそ、規模ありきで予算の議論を進めるのではなく、真に必要な安全保障は何か、中身の議論をしっかり行っていただきたいと感じます。

その上で、経済安全保障やエネルギー安全保障との関係性をよく整理していただき、各省庁の予算を真に必要な安全保障の強化に向けていく、縦割り排除の意識改革が不可欠であると思います。

さらに、国を守るという観点では、財政余力を持つことは極めて重要であり、安全保障強化の柱の一つとの認識を、国民、経済界、政治の間で共有していく必要があると思います。

3点目は、財政全般についてです。来年度の予算編成に当たりましては、様々な論点があることは承知しております。その中でも共通して3点意識していただきたいと思います。

第1は、歳出拡大がこれまで成長につながってこなかったという現実を踏まえ、中空委員もおっしゃいましたように、真に成長力底上げにつながる使い方、競争力向上に資する使い方を徹底していただきたい。アウトカム志向を全省庁の予算で意識した内容にしていただきたいと思います。

第2は、コロナからの出口、これはもう待ったなしです。

第3は、支出拡大の議論が多い中で、社会保障の改革、そして財源の確保、こうしたものとセットで議論を進めていくことです。以上3点を是非お願いしたいと思います。

以上です。ありがとうございます。

増田分科会長代理それでは、土居委員、お願いします。

土居委員土居でございます。3点申し上げさせていただきたいと思います。

まず、来年度予算、厳しい編成作業であると思いますが、2025年度のプライマリーバランス黒字化に向けて収支を改善できる予算というものに、是非とも、最終的な結果、取りまとめていただきたいと思います。税収が好調であるというのは、コロナ禍という不幸中の幸いであると思います。ただ、やはり補正予算、それから事項要求が多いところが、プライマリーバランス黒字化を阻む原因になりかねないと懸念しております。資料の14ページにもありますように、補正予算、第2次以降の安倍内閣では3兆円程度だった。今年、10兆円も補正予算をつければ、十分過ぎるほどの補正予算であると。桁が一つ違うということです。昔は3兆円だった。コロナ前は3兆円だったわけですから、10兆円で少ないなどと、とても言うべきではないと私は思います。

それから物価対策、これも財政にある程度依存せざるを得ない当初の対応はありますが、この依存が長引かないようにする。財政依存が続くと、むしろ逆に物価高をあおってしまう可能性がありますので、諸刃の剣であるということを踏まえながら物価対策をしていただきたいと思います。

それから2点目は、GXと防衛費にまつわる国債発行です。防衛費に関しては、最新鋭の防衛装備品というのは、そんなに長もちしません。最前線で活躍できるのは10年前後、相手の国だって技術進歩します。技術進歩が激しい防衛装備品で、60年償還ルールで国債を発行するということになったときに、10年しか効力がないのに、残り50年、借金返済だけが国民にのしかかることになりかねません。そうした意味では、防衛装備品はしっかり財源を確保した上で整えていくべきであり、赤字国債依存になってしまうようなことは、過度には避けるべきであるということ。

それから、GX経済移行債ですが、例えば、GXにまつわる予算は一般会計だけでなくてエネルギー対策特別会計でも計上されています。ところが、エネルギー対策特別会計の歳出は、総理が議長の行政改革推進会議で開かれる秋のレビューで、毎年常連のように問題のある支出として指摘されているような特別会計です。ですから、ますますアウトカム・オリエンテッド・スペンディングを、GXについても求めて、年2兆円とかという規模にこだわらないような予算編成をお願いしたいと思います。

最後に、今日、直接は触れておられませんが、社会保障に関して、特に医療です。2021年度の概算医療費が厚生労働省から発表されましたが、44.2兆円ということで過去最高であると。ところが、これには恐らく、私が見るには、医療関係のコロナ対策費で投じた国費が含まれてない。診療報酬とかにまつわる部分での医療費として、過去最高44.2兆円。だが、この財審でもやりましたように、7兆円という医療関係のためのコロナ対策費は、医療のために注がれている、ということですから、2021年度の医療費は44.2兆円にとどまってないはずであると思います。もっと、それだけ国民のために医療費を費やしたのであるということ、恐らくは50兆円とかという規模になるのではないかと思います。そうしたところをむしろ、主計局にもし何かデータとかをお持ちであれば、明らかにして、国民に対してしっかり医療費を出している、だから、メリハリづけが更に必要であるというところを、来年度予算でも、しっかり訴えていただきたいと思います。

以上です。

増田分科会長代理それでは、ここからまたオンラインの方に御発言いただきたいと思います。次の3名の方です。堀委員、芳野委員、それから佐藤委員、以上3名の方です。

初めに、堀委員から、どうぞお願いします。

堀委員ありがとうございます。平成以降の構造的な課題、コロナ感染課題、そして、ウクライナ・ロシア戦争など想定外が非常に連続していて、日本の財政は極めて厳しいことは認識しています。

ただ、DX、GXのほかにも、2025年問題とも言われましたが、もう直近の課題ですし、新型コロナの中での出生数減少を踏まえて、全世代型社会保障改革を進めていただければと思っています。

6ページの年次経済財政報告に、長期低迷の原因に「アニマルスピリット」という用語があると思うのですが、この意味が社会的にも広く理解されることを心から期待します。今のままでは、ぬるま湯のまま「ゆでガエル」になってしまうのではないかと危機感を持っております。

いずれの分野であっても、公費投入につきましては、バリュー・フォー・マネー、また、ワイズスペンディング、安定的な財源確保が重要であると思っています。

それから、年末の予算編成に向けて安全保障、防衛力の抜本強化が重要であるということは認識しているのですが、28ページの防衛力強化のところで、防衛省と関係省庁が連携するための枠組みを構築する、というのは重要であると思っております。ここで例として、研究開発予算や社会資本整備のGDPが挙げられておりますが、最大項目となっている社会保障関係費の中にも、例えば自衛隊を退職された方の年金給付であったり、共済であったり、そうしたものも給付が手厚くされています。

また、戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく援護であるとか、原爆被爆者の援護など、社会保障としてカウントされているものもありますので、そうしたものを丁寧に踏まえて、今後の在り方を検討していただければと思っています。

また、GDP比2%のNATO基準で防衛費を求めていくという議論があるのも理解はできるのですが、規模ありきではなく、先ほど冨田委員もおっしゃったと思うのですが、日本は世界唯一の被爆国、戦争を体験した、原爆を体験した被爆国でもありますし、財政破綻を戦後経験したということもありますので、そうした歴史的な背景を踏まえて、こうした議論に向けてどのように検討するかを丁寧に議論していただければと思っております。

以上です。

増田分科会長代理それでは、続いて、芳野委員。お願いいたします。

芳野委員芳野でございます。論点を3点に絞って申し述べたいと思います。

まずは、物価高対策と民間活力を引き出す政策対応についてです。現下の物価高や円安は、日本の構造的な課題が表面化したものであると思っております。予備費による一時的な対策では、国会審議も経ず、効果検証の不透明なものとなると思います。真に国民生活に安定をもたらすには、今後想定される価格上昇を前提とし、徹底した低所得者対策とセーフティネットの構築に向けた予算編成を行うべきであると思います。

また、経済の成長力を高めるため、民間部門の貯蓄を活用し、投資を拡大するとありましたが、貯蓄の増加は、将来不安の高まりそのものです。まずは、持続的に所得が上昇する経済をつくるべきであり、順番を見誤ってはならないと考えております。

2点目は、コロナ対策についてです。雇用調整助成金や産業雇用安定助成金をはじめとした雇用維持の支援は、雇用情勢や感染拡大状況に加え、社会的変化などにより厳しい環境に置かれている産業・地域に対して、その状況に基づいた適切な支援を実施していくことが重要です。

生活困窮対策では、貸付の償還が始まることで、更に生活が困窮してしまうのではないかという懸念もあり、特例貸付の終了を踏まえ、償還に当たっての免除要件の拡大や、生活福祉資金貸付制度の貸付要件の緩和を行うべきであると考えます。

最後に、子ども・子育て支援についてです。妊娠・出産及び育児で休業する際の経済的支援の必要性は、従前より申し上げているとおり、対象者の働き方によって変わるものではないと考えております。フリーランスを含め、雇用、就業形態にかかわらず、全ての働く者が安心して子育てできる環境整備が重要であり、このことは介護についても同様です。育児休業給付、介護休業給付は、一般会計で実施することも検討すべきであると考えます。

さらに、保育サービスの質の向上も重要であり、職員配置基準の改善などに必要な財源確保も欠かせないと思っています。

政府は、こども関連予算の倍増を掲げていますが、その財源をどう確保していくのか、丁寧な国会議論を通じて国民の合意を得た上で、安定財源を確保すべきであると考えます。

以上でございます。

増田分科会長代理それでは、続いて、佐藤委員、御発言ください。

佐藤委員よろしくお願いいたします。令和5年度予算編成について、3点ほどコメントさせてください。

第1は、予備費についてです。これまで、コロナ前であれば多くても5,000億円程度という予備費が、コロナ禍の中で、当初予算で5兆円規模に膨らんでいます。不確実な支出に対して迅速に対応するという趣旨は分かりますが、今回はコロナ対策にとどまらず物価高対策とか、もちろん一般予備費の枠ですが、国葬とかに充てられるなど、拡大傾向にあり、果たしてこれが予備費の趣旨にかなうものかどうかは、疑問が残ります。来年度は当初予算の段階で予備費は極力抑えるべき、あるいは予備費を積むのであれば、その質を検証する仕組みをあらかじめ構築しておくべきかと思います。

第2に、話題になっている防衛費についてです。一部の報道にも出ていますが、今までは防衛費イコール防衛省の予算となっていますが、本来、海上保安庁であるとか研究開発、インフラ、サイバー対策など、防衛に関わる予算は他にもあるわけですので、省庁別ではなく、むしろ機能別に、防衛など機能に即した形で予算の見える化もあって良いと思います。

これは、地方創生とか子育て支援も実は似ていると思います。省庁の縦割りで予算を出しているものですから、全体像がつかみにくいというところは、何らかの対処が要るのではないかと思います。

また、防衛費については、もう一つ、後年度負担をどうするかです。後年度負担というのが見えない防衛費になっていますので、これをきちんと、国民に明らかに見える化させていく、という工夫があって良いと思いました。

最後に、財源についてですが、子育てであれば消費税、GX関係であれば環境税と、財源を国民に明らかにすることはあってしかるべきです。ないとは思うのですが、防衛を含めて、補正回しは避けたほうが良いと思います。補正予算でやりますというのは、まずいと思いますし、また、当初予算の段階でも、今回、コロナで、先ほど申し上げたとおり5兆円の予備費を積んでいますが、これを仮に防衛費に充てるということであれば、これまた、一度広げた財政の風呂敷が戻せないことになりますので、これは慎むべきかと思います。

私からは以上です。ありがとうございました。

増田分科会長代理それでは、また、こちらの会場に戻りたいと思います。吉川委員から、どうぞ御発言ください。

吉川委員ありがとうございます。私は、今まで委員の方々が言われたこと、基本的には全て賛成、セカンドサーブしたいという感じですが、一言、ワイズスペンディングについて発言させていただきます。

問題は、御説明いただいた資料の4ページ、日本経済の長期的な低迷、停滞です。我々、やはり、この図をよくよく見ると、また、考えてみるべきであると思います。まさに、反省の一言ではないでしょうか。

そうした中で、財政にどういう役割があるのか。もともと我々の住んでいる資本主義というのは、主役は民間の企業ですから、20年くらい前、小泉政権の頃にいろいろな議論がありました。目指すべきは、民需主導の持続的な経済成長。つまり、何人かの委員から指摘されていますが、GDPギャップがあるから、それを財政、いわゆるGでの拡張で埋めるというのは卒業する。それでは、民需主導の持続的な経済成長は生まれない。そうしたことで、当時、みんな納得して、コンセンサスになっていたと思います。

しかし、今、我々見ている、この4ページの図を見ると、残念ながら、目的達成できていない。GDPを実質に直すと、若干細かいところで印象も違ってくるかもしれませんが、ここにある名目でもメッセージは十分であると思います。むしろ、より鮮明に出ているということであると思います。右側のランクダウンもまさにひどいもので、これは一人当たりのGDPですが、例えば賃金水準などでいうと、韓国に抜かれているというようなことは、皆様御存じのとおりであると思います。

これをどうするかということで、財政、ワイズスペンディングというのは、私はあると思っています。ワイズスペンディングというのは、御存じケインズが、いわゆる大不況以前、イギリス経済は1920年代から大変深刻な不況に陥ったわけですが、その下で彼が提案した一つのキーワードであったわけです。ワイズスペンディングというのは、いずれにしても存在すると思っています。ただ、日本の場合には、残念ながらワイズスペンディングというのが、規模を膨らます、何でも良いからとにかく財政支出を増やすというときの、安易な、ある種の使いやすい言葉に落ちているということではないでしょうか。

繰り返しになりますが、4ページの図表を見ながら、財政がどういう役割を果たしてきたか。要はアンワイズスペンディングに終始してきた。これがレコード、通信簿ですよ。

往々にして、私感じますのは、日本国内では、特に政治でしょうか。これは、相場感であり、こうしたものでお互いに納得し合える、このような感じの議論をしていることが、往々にしてあるように感じていますが、そうしたものは通用しないということです、経済の世界では。レトリックは一切通用しない。ワイズスペンディングと言っていても、アンワイズであれば、結果はシビアに出る。そうしたものは一体どうなるのだ。幾らでも例はあるのではないでしょうか。スーパー港湾ということで、港湾が日本はぼろぼろになっている。そんなこと20年前から言っていたと思います。それによってどれだけの付加価値が消えているのか。その結果が、繰り返しになりますが、このGDP総決算に出ているわけです。

あるいは、もっと近々の例で言えば、数年前の、まさに補正予算で、国内ワクチンの開発ということで予算計上したと思います。もう御存じのとおり、失敗したということではないですか。なぜ失敗したのか。それを奏功して国内ワクチンが開発されていれば、ワイズスペンディングと言ってよいのではないでしょうか。しかし、失敗したんですよね。

こうしたことを私たちは正面から見る、とりわけ、今日副大臣、政務官、先生方もいらっしゃいますが、政治の世界で、やはり国会でシビアに考えていただきたい。

経済対策ということで、これも先ほどからお話ししているとおり、日本ではそれが当たり前のような経済対策であると。年中行事のようにそれをやるのが、もうそうしたことになっているのであるということでしょう。しかし、よくよく考えてみると、これがワイズスペンディングになる、今見ている、このトレンドを変えることができる施策につながるのか、甚だ疑問です。幾らでも反省して、直すところがあると思います。私は今でも、ワイズスペンディングは、初めからお話ししているとおりであると思っている。それは、基本は中身を見直す。アンワイズなものがたくさんあるわけですから、アンワイズを消して、ワイズのほうに、それを変えるというのが基本であって、今のような日本の財政の下で規模を膨らますというようなことは、絶対避けるべき話ではないかと思います。

以上です。

増田分科会長代理それでは、田近委員、お願いいたします。

田近委員田近です。私からは、先週発表されたイギリスのグロースプランを参考に、我々に対する示唆を考えたいのですが、今日、調査課長から物価高対策として、アメリカのインフレーション・リダクション・アクト、インフレ抑制法、それからドイツの取組が紹介されたのですが、先週、リズ・トラス内閣の下で、早速新しい財政政策が表明された。彼らが言う、グロースプラン2022、2022年成長プランですが、時間がないので本当にかいつまんで言うと、これから2.5%の成長率を達成していくのであると。そのためには思い切ったサプライサイドの、今、吉川さんもワイズスペンディングというか、成長促進の政策をしたい、サプライサイドなのだ。それで思い切って彼らが言ったのは、減税の部分を思い切ったわけです。個人サイドも、企業サイドも思い切って減税する。それが、実はマーケットですごい反応を呼んで、また財政赤字が増えるのではないかということで、ポンドも大暴落して、もはや1ポンドは1ドルぐらいになってしまったのですが。それから、イギリスの10年国債が金利が3.8%、アメリカより高くなったということで、大変な状態になっているのですが。

それを踏まえて、日本の財政の在り方です。では、日本がイギリスよりも財政は厳しい、金利は上がらない、それは説明するまでもなく、日本銀行がイールドカーブ・コントロールをやっている。10年国債の金利は0%、0.25%です。そのために幾らでも日銀が買うと言っているわけです。

ここで説明するまでもないのですが、そのひずみが円安になっている。そのひずみを是正するというか、対抗するので、日本は、要は円介入した。

いずれにしても、世界的な流れの中で、いずれ日本の低金利政策というのが困難になってくる、ひずみが円安になってくるわけですから。だから我々としても、金利が上がるということを備えなければいけない。そうしたことで、先ほどの調査課長の報告は非常に重要だったと思います。

そこで、冨田さんも御指摘になったし、皆様御指摘になっているように、やはり、財審としては、我々としては、2025年のPB黒字を達成することであると。あまり難しいことを言わないで、国民には、いかに日本の経済を維持するのに大切なのであるということを言うことなのかと思います。

ただ、税収が増えてきて、その見込みは非常に高くなり、改善されたかもしれませんが、中身的に言えば、少し専門的になりますが、税収改善の中にインフレタックス的な要因がどのぐらいなのか、実力ベースとインフレ部分と、その辺の識別はしておいたほうが良いと思います。

最後に1点、多くの方が成長促進というのはどう考えるかで、なかなかマーケットからものすごい厳しい反応がされてしまいましたが、イギリスのサプライサイドを重視した政策が間違いだったのか。そこはこれから問われるべきでしょうが、日本で、先ほど皆様から出てきた、日本で本当に真に成長に資するような政策、これはやらなければいけない。

私、その点で思うのは、たまたま今、そうした金融政策があって、日銀の政策もあって円安になっていますが、そもそも日本の実効為替レートというのは落ちているわけで、そうすると、日本の国内における投資も、どうやってサポートしていくのであると。熊本のTSMCでしたか、投資が来るということもありますが、吉川さんがおっしゃった、いろいろな港湾も重要だし、ワクチンも重要ですが、やはり実効為替レートが下がってくる中で、国内における投資をどう促進するか、そこはキーなのかということで、やはり財審としては、複雑なことを言っても、国民と会話することは難しいわけですから、2025年のPB黒字が、この時点で、いかに重要なものなのか。一方、成長促進に対して真に資する政策は何なのか。当たり前ですが、国民と対話ができるようなシンプルで、しかし重要なメッセージを発信することかと思います。

以上です。

増田分科会長代理それでは、末澤委員、お願いします。

末澤委員どうもありがとうございました。私からは、やはり財政出動につきまして、今後は規模から質、ないしは中身への抜本的な転換、この重要性について申し上げたいと思います。

背景は四つあると考えていまして、一つは、やはりヒストリカルレコード、過去の実績です。今日事務方から御説明いただきましたように、過去、GDPギャップがある分を埋めているわけです。これは本来、乗数効果が1以上で、民間投資等を呼び込む呼び水効果も高くあれば、1回あればむしろその後は持続的な成長が進むわけですから、1回限りで終わるはずです。それがずっと繰り返されているということは、相当乗数効果、呼び水効果は極めて低い、やや無駄な支出が、ないし潜在需要にのっとってない支出が多かったということであると思います。

二つ目、これは国力の低下でございます。要は無駄玉を撃つ余力がない。先ほど吉川委員からも御説明がありました4ページ目です。28位になったとありますが、端的な事例で申し上げますと今1ドル145円まで来ましたということです。これは1998年、ちょうど金融危機が起きて、日本の、私も在籍しておりました都市銀行の格付が、トリプルAがどんと落ちたとき以来ですが、実はもっと申し上げれば今の実質実効為替レート、これは物価調整後ですが、通貨バスケット対比の円の価値というのは、1971年8月以前の水準、つまり、1ドル360円の固定相場制当時以来、50年ぶりの低水準です。これは変動相場制になって初めてです、それ以来。

実は私の記憶、80年代からディーラーをやっていたのですが、たしか80年代後半、NTTの時価総額、1社で、ニューヨーク証券取引所総額とほぼ一緒でした。今は、この4月に東証プライム市場ができましたが、4月以降ずっと、アメリカの時価総額1位と2位、大体IT系が多いですが、今はアップルとマイクロソフト、この2社とほぼ一緒です。

90年代冒頭は、私の記憶ですが、大体東京都の山手線の内側で、これは地価ですが、カナダと一緒です。東京都が大体アメリカ1国と一緒。今はもう全然比べて違うのですが、それだけ強かった。

ちなみに実質実効為替レートのピークは1995年の春、たしか4月だったと思いますが、これは阪神・淡路大震災の直後でもあるのですが、より本質的な背景は、やはり生産年齢人口のピークが95年です。つまり、人口動態が、私は潜在成長率に相当大きな影響を与えていると思います。ですから、そうしたところを改善しないと、無駄玉を撃つよりは。

三つ目が、国際情勢の抜本的変化、レジーム転換と言って良いと思います。先般、エリザベス女王も逝去されましたが、その前にはゴルバチョフソ連初代大統領も亡くなられました。ゴルバチョフ氏は東西冷戦を終えんに導いた。エリザベス女王はずっと、戦後70年間統治されていたわけですが、お二人の死を見て、これはやはり戦後、特に冷戦終戦後に向けたデタント、緊張緩和、また、中国で言えば改革・開放政策、こうした、世界全体が低インフレ、高成長の影響、環境を享受できた状況が、もう相当変わった、場合によっては終わるのではないかと感じました。戦前や冷戦期のブロック経済に戻ると、全てのものの値段が上がってきます。また、需要もセグメントされますから、グローバル化が相当逆行化する。ということは、ヒト・モノ・カネ・人件費、商品の価格、サービス価格、金利も上がってくる可能性がある。こうした変化がある。

四つ目が、気候変動。今、ウクライナ戦争で忘れ去られていますが、今年の5月、ハワイのマウナロア、観測所で測ったCO濃度が、実は北半球は、大体5月頃がCO濃度のピークで、そこから下がってきますが、CO濃度が400年前の鮮新世以来の濃度となりました。鮮新世というのは、現世人類が生まれる、現世人類は最後250万とか言われていますが、もっと前ですが、その頃はシベリアのツンドラが森林に覆われて、今よりも海面の高度が大体10メートルから20メートル高かった。それだけ気候変動は着実に進んでおりまして、むしろ今回のウクライナ戦争で、よりこの問題の対応が遅れる。遅れると、逆に言えばグリーンインフレーションのコストにも関わってくるということでございまして、そうした状況が大きく変わってきているので、私はもう本当に抜本的な転換が必要であると。

では、どうすれば良いのか、私が一つ提案したいのは、先ほどどなたかが、おっしゃっていたと思いますが、情報収集分析能力の抜本的強化であると思います。情報収集、これは女王陛下の007のジェームス・ボンド、ダニエル・クレイグ氏の引退で、日本に雇えということではなくて、スパイだけではなくて、全ての情報、データがなければ、政策判断を間違うわけです。今回の全数把握の問題もそうですが、自動的にクリニックで仕事が終われば、今日の診査結果が自動送信されれば、ああいう問題は起きなかった。大体韓国や台湾がそれに近い状況です。

そうした、やはりデータの収集分析能力が向上しないと、これは全て評価もできませんから、一番の問題。ちなみに今ウクライナが頑張っている大きな要因が、ハイマースという高機動ロケット砲システム、あとM777という榴弾砲、これの成果であると言われていますが、榴弾砲だ、ロケット砲であるというと何かやみくもに撃っているように見えますが、今の榴弾砲はエクスカリバー誘導砲弾、これは射程が40キロ弱ですが、これが大体数メートル以内に落ちます、GPSで。ハイマースが大体10メートル以内へ落ちます。つまり、GPSで一発必中です。それが現代戦であり、昔のような数撃ちゃ当たるではない。

そうしたふうに全ての政策を変えていく必要があると考えています。

以上です。長くなりました。

増田分科会長代理十河委員、どうぞお願いします。

十河委員秋の財審も、どうぞよろしくお願いいたします。

今までの先生方のお話を伺っておりまして、大変納得のいく、そして賛同する御意見が多かったと思います。改めて、現在の財審が今後何をするべきかを考えさせられました。

そして先ほど、吉川先生が言及されておりました4ページのランキングを、私も見ておりましたが、確かにこの20年間で、日本はこのような形で衰体していっていることを痛感しながら、その一方で、ここは大転換点と捉え、若者に対しての財政支援優先に考えていく必要があるのではないかと思いました。

現在は結果的にどうしても若い世代が後回しになってしまうという状況であり、その中で若者たちの不安は一層募っている。それを私も、周辺の部下などを見ていると切実に感じます。

また、こうやって真剣に議論を重ねていながら、その伝え方一つで、先ほどの子育ての予算に関しましても、何か誤解を生んでしまうおそれがあり、その点はもう少し慎重に対処したほうが良いのではないかと感じました。

同時に、今メディアも多岐にわたっており、私はまだ雑誌を中心に編集しておりますが、若い世代は残念ながら、プリントメディアをあまり見ないと言われております。ですので夜もずっと携帯を片手に情報収集と情報交換に明け暮れる人が少なくないと聞きます。こうした次世代の若い人たちに、どのような手段で伝えていくべきか、これも考えていく必要があると思います。

そして、その若い人たちは、不安な世の中を生き抜くために共感を求めていることを感じます。ですので、、財審としては、日本の未来に向けた提案を、様々な手法を用いて、これまで以上に、積極的に発信し、伝えることができたら、関心を寄せる若者や賛同者が少しずつ増えていくのではと希望を抱きます。

こうした若年層に向けて、丁寧に、しっかりと、ここで議論されたことを伝えていく。その手段をはじめ、今後より一層強めていく必要があるのではないか。

予算編成の課題につきましては、31ページにございますこどもの新たな予算編成に期待をしております。と同時に少子化の根底にある、非正規雇用を中心とした非婚者、非婚率の高さを何とか改善し、少しでも少子化に歯止めをかけて、若者をはじめ国民がこれからも安心して幸せに暮らせる、そうした国家づくりのために、議論を重ねていけたらと思いました。

以上です。

増田分科会長代理平野委員、どうぞお願いします。

平野委員ありがとうございます。今回は秋の陣の初回ということで、私からはマクロ的な観点に絞って申し上げたいと思います。

今後の財政運営を考える上で、まず前提として、内外の経済環境が、この二、三年で大きく変わった、ということを改めて認識しておく必要があると思います。コロナ禍とウクライナ戦争が、もともと米中対立や脱炭素化の中で進行していたサプライチェーンの分断、あるいはエネルギー安全保障に起因する供給制約を大きく悪化させたということで、40年ぶりともいわれる世界的なインフレ圧力を引き起こし、先ほどから話題になっている、米欧金融当局が歴史的なペースでの金融引締めに転じる状況をもたらしたということです。

春の財審で、私も潮目が変わりつつあると申し上げたわけですが、それが一層はっきりしてきた、と言えばよろしいかと思います。一過性の要因ももちろんありますが、今申し上げたような供給制約の圧力は、今後恐らく10年単位で続く構造的なものであり、世界的なパラダイムシフトが生じていると捉えるべきであると考えます。

他方、こうした世界の大きな潮流の変化に、日本がどこまで適用できているのか、心もとないところです。経済の長期停滞については、先ほど吉川先生からも御指摘ありましたが、コロナ禍において、医療の逼迫などから、行動制約の緩和に時間を要したということも相まって、回復ペースは他国比で大きく劣後しています。

また、これも話題になっている四半世紀ぶり、あるいは40年ぶりとも言える円安の原因は経常収支の悪化、すなわち日本の国力、競争力の悪化という要因に加えて、内外の金利差の拡大にもあるということですが、申し上げたとおり、海外の経済の潮目が変わる中で、日本だけが金融政策を動かせないというところに、根深い原因があると見るべきであると思います。

国際金融のトリレンマというセオリーがあります。自由な資本移動、為替相場の安定、それから金融政策の独立性という三つの政策目標は、同時に達成できないということです。今の日本は、自由な資本移動を前提にせざるを得ないわけですが、そのような状況で、金融政策の独立性を追求すると、為替相場の安定を保つのは容易ではなくなる、ということはここ数週間の相場の動きを見れば、実感されるところかと思います。また、最近では、円安の輸出押し上げ効果は明らかに薄れてきております。総じて見れば、交易条件の悪化、あるいは物価高の助長といったマイナス要因のほうが大きいことに加えて、もう一つ申し上げたいのは、円安が長く続けば、低金利と同様に、我が国の産業、企業に、言わばぬるま湯的な状況を提供することになり、必要とされる産業構造の転換を遅らせてしまい、企業の国際競争力を低下させる要因になるということです。これは先ほど吉川さんがおっしゃったことを、別の面からみた見え方ではないかと思います。

こうした状況の中で、我が国の財政運営に求められることは、限られた財政資源を、日本の長期的な成長と内外の安定を図るために、いかに持続可能な形で有効に配分するかということに尽きるのではないかと思います。足もと、これも今日の話題になっておりますDX、あるいはGXといった民の力だけでは対応し切れないような国家戦略的な成長施策としての投資は必要であるし、防衛、エネルギー、安全保障など、まとまった財政出動の要請もめじろ押しです。その実行のためにも、まさにワイズスペンディング、あるいはアウトカム・オリエンテッド・スペンディングの徹底を基軸に据えることが重要になります。そしてEBPMによって個別政策の有効性を高めることは当然ですが、それに加えて、中長期の財政計画をしっかりと策定し、その中で政策の優先順位づけに基づく必要なスクラップ・アンド・ビルドを通じて、財政の全体最適化を図ることが求められます。さらには、今日は詳しく申し上げませんが、それを可能にするような制度的な対応が急務ではないかと考えています。

最後に、これは財審の守備範囲を少し超えるかもしれませんが、財政と金融政策が実質的に一体化してしまった現在においては、金融政策との調整もいずれ必要になる、ということにも留意すべきであると思います。先週、岸田総理がニューヨーク証券取引場で非常に分かりやすく述べられた内容は、とてもよかったと思います。新しい資本主義の下での成長戦略が奏功すれば、潜在成長率が上がって、前向きな意味で金利のある世界が戻ってくるはずです。そうした状況に備えるための準備、すなわち、異次元緩和からの出口戦略と国債管理政策の在り方について、GXではありませんが、トランジション戦略を今から考えておくべきではないかと思います。もちろん、政権側にも申し上げたいのは、幾つかのことを進めていくためには、政治的資本を必要とします。しかし、総理は、さきに述べたスピーチで強調された、成長と持続可能性が両立するような社会経済システムを再構築し、それを、先ほどから話題に出ている将来世代に引き継いでいくためには、同時に、財政運営の構造改革にも取り組まなければならない、ということを申し上げておきたいと思います。

以上です。

増田分科会長代理それでは、最後になりました、神子田委員、どうぞお願いします。

神子田委員神子田です。秋の財審もよろしくお願いいたします。

まず、財政を健全化するというほうでは、私、この間も、概算要求のことで、過去の予算を見てきたのですが、やはり3年間の歳出改革の目安というのが、やはりきちんとそれに従ってやっていると、その部分は締まっていくのだな、引き続きこれが大事だなと思うとともに、今年は「骨太」で、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という文言が入ったために、それはそれでそのとおりではあるのですが、ならばやはり重要な政策をどのように見極めていくか、各省庁の要求段階でもそうですが、財務省の査定の力が問われると思いました。

もう一つは、やはり皆様おっしゃっているように、これからの成長が重要であるということで、岸田内閣が新しい資本主義というのを打ち出しまして、それはこれまでの資本主義の問題点を解決して、新しい成長を呼び込むための政策をやっていくという中で、人への投資とか科学技術ですとか、イノベーションへの投資、スタートアップへの投資という4本柱で投資を重点化しました。

それで、私は、それぞれの柱の中に、いろいろな各省庁の政策が絡んでくると思うのですが、先ほど佐藤委員が防衛省の予算をめぐって、いろいろな各省庁にちりばめたものを一つにまとめて、総体としてどのぐらいの予算が関わってくるかを、見える化すべきである、ということをおっしゃっていましたが、私は、総理が旗を振ってやっている新しい資本主義の四つ、特にGXなども経産省、環境省とか省庁にまたがってくるものがありますし、4本柱それぞれどのぐらいの予算が各省庁横断的に合わせるとかかるのかを示すべきではないか。なぜかといいますと、これは会社に例えれば社長室直轄プロジェクト、特に会社の存続に向けて重要なプロジェクトなわけですから、必ず成果を上げなければいけないプロジェクト、という位置づけになると思います。ですから、それにどのぐらいの予算をかけて、そのことによって、どのぐらいの成果が出たのか、そうしたことを点検しやすくするように、この4本柱の予算の見える化をやっていただきたいと思います。

あと最後に、ワイズスペンディングの話が先ほどから出ています。これも、私、予算要求のときに、今年はあれでしたか、成長戦略のための特別枠のようなものがあって、この特別枠というのは毎年、いろいろな名前を変えて出てくるわけですが、前にも言いましたが、各省庁の予算要求は同じ予算を要求して、看板だけ変えて要求する。これはでも別に重要な政策は毎年要求してよいと思うのですが、看板が変わることで、どういう趣旨でやった予算かという、目的に対する成果を見えにくくしているのではないかというところがありまして、やはりこれは、過去の予算の成果を執拗に追及していく係の人が要るのではないかと思って、最近いろいろ中小企業のコストアップが適正に転嫁されるような下請Gメンがクローズアップされていますが、是非、ワイズスペンディングGメンをつくって、過去の予算の成果を追及していってほしいと思います。

以上です。

増田分科会長代理それでは、今日、時間もまいりましたので、財政総論については、ここまでの議論とさせていただきます。

今後の進め方ですが、地方財政や社会保障などの歳出分野について議論をする、それから、歳出改革部会では、社会資本整備などの個別の歳出分野について御議論いただく、こうしたことで、令和5年度予算の編成に関する考え方、例年どおり、秋の建議を取りまとめたい、このように考えております。よろしくお願いいたします。

本日の会議の内容については、この後、記者会見で私から御紹介させていただきますので、各委員におかれましては個別に対応、報道関係者に対してお話しすることのないよう、御注意をお願いします。

それから、委員の皆様に、発言内容については、御確認の上、議事録は公開を後日させていただきます。

次回は、10月13日、13時半から開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、以上で、本日は閉会といたします。どうもありがとうございました。

午後0時05分閉会