財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和4年4月8日(金)14:30~17:20
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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財政総論等
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文教・科学技術について
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3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
岡本副大臣 藤原大臣政務官 高村大臣政務官 茶谷主計局長 水口政策立案総括審議官兼企画調整総括官 奥次長 八幡総務課長 藤﨑法規課長 吉田給与共済課長 大沢調査課長 渡邉主計官 三原主計官 福田主計官 高田主計官 有利主計官 野村主計官 北尾主計官 渡辺主計官 今野主計企画官 山岸主計企画官 園田企画官兼公会計室長 鈴木主計企画官 宮下主計企画官 |
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委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 櫻田謙悟 佐藤主光 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
上村敏之 宇南山卓 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 権丈英子 小林慶一郎 末澤豪謙 角和夫 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 吉川洋 |
午後2時30分開会
〔増田分科会長代理〕時間になりましたので、間もなく開始をいたしますが、本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。それでは、カメラをお願いします。このまま少しお待ちください。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、財政総論等、それから文教・科学技術、この二つを議題としております。
それでは、報道の関係の方、御退室をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、議題に入ります。
進め方ですが、本日は質疑の時間を十分確保するということから、まず説明の関係、事務局から財政総論と文教・科学技術の両方について、初めにまとめて説明をしていただいて、その後、委員の皆様方からまとめて御意見をいただくという流れにいたしたいと思います。御意見いただくときは、財政総論、それから文教・科学技術、まとめておっしゃっていただいて結構でございますので、よろしくお願いします。
それでは、初めに大沢調査課長から、財政総論の関係について説明を簡潔にお願いいたします。
〔大沢調査課長〕調査課長でございます。お手元の資料1、財政総論等に沿って御説明をさせていただきます。
最初は2ページでございます。12月に建議を先生方からいただいてから4か月たちますが、この間の大きな変化として三つのことが挙げられると思います。ここにありますように、オミクロン、ウクライナ、米国の利上げでございます。財審の春のシリーズの冒頭に当たりまして、これらを中心に、財政政策、経済政策の環境がどう変化をしているのか、まずは御紹介をさせていただきたいと思います。
3ページ目でございます。これは、1970年代以来の主要国の物価と金利の動きでございます。
御覧いただきますと、点線をかけてございますが、1990年の冷戦終結あたりを境に傾向が変わっているのだと思います。それまでは、東西冷戦の中で市場が分断をされておりまして、また石油ショックもありまして、資源価格も高騰しておりました。90年以降は冷戦が終結をして、旧東側あるいは発展途上国にも生産・消費の拠点が広がって、グローバル化、マーケットの統合が進んで、物価はそれほど上がらず、したがって低金利が続く世界になったのだと思います。
右側のグラフで、特に2010年以降は各国とも中央銀行が国債を買うことによって、金利をゼロ近傍に誘導し、物価の上昇を促す政策を取っておりました。言わば、物価がゼロ、金利もゼロの世界が続いていたわけでございます。
4ページ目でございます。この流れを変えつつあるのが、冒頭申し上げたコロナ、そしてウクライナ侵攻でございます。
まず、コロナからの回復過程で供給不足が発生をいたしました。さらに、ウクライナ侵攻によりまして、それ以前から発生をしていた資源価格の上昇が更に進んだということでございます。これによりまして、このページにありますように、世界的にインフレが進んでおります。さらに右下ですが、日本におきましても、携帯電話料金の引下げ要因を除けば、既に物価上昇率は2%、実質的に超える状態にございます。
5ページ目でございます。この物価上昇を受けまして、英国・米国は既に利上げに踏み切り、ECBも資産買入れを3月末で中止しております。
6ページ目でございます。この中で、今回のウクライナの問題は世界経済にさらなる転機をもたらすものになるという指摘が多くなされております。このページの4番目のポツでございますが、冷戦終了以来構築されてきたインフレの低位安定局面の終えんになるのではないかと。さらに次のポツでございますが、欧米と中ロのデカップリングのきっかけになるのではないかという指摘がなされております。
7ページ目でございます。この中で、まず短期的には原油価格・物価高騰への対策について、3月29日に総理から御指示が出ておりまして、月内に対策をまとめることになっております。
8ページ目でございます。ウクライナによる資源不足で、一時的に脱炭素の動きが弱まるのではないかという感じも出ておりますが、中期的には引き続き不可避の課題であると思います。その中で、このページにありますように、投資需要の拡大が金利上昇を招くのではないかと。あるいは、この左下でございますが、EVに使う非鉄金属、これまで普通の車では使っていないような金属の価格の上昇を招くと。したがって、グリーンというものも中期的にはインフレ要因なのだという指摘がなされております。
9ページ目でございます。このような環境変化によりまして、財政がまず影響を受けますのが国債の利払費だろうと思います。左下の青い四角にございますように、債務残高は1,000兆円ありますので、金利が1%仮に上昇すれば、最終的には10兆円以上の政府の支出が増えるということになるわけでございます。
10ページ目でございます。このような環境変化があり得る中で、我が国は新型コロナから今後正常化していく過程で、持続的な経済成長というものを実現していく必要がございます。10ページ目からは、そのための基本的な条件、あるいは、何が障害になっているのかというものを御紹介してまいります。
まずこのページは、経済成長の恐らく一番基本的な条件である人口でございます。これを御覧いただきますと、日本はほかの先進国より一貫して一定幅、低い人口増加率にとどまり、ハンディキャップがある状態が続くことになるわけでございます。
11ページ目でございます。経済成長の一番のドライブは、やはり企業の投資、そして個人消費だろうと思いますが、残念ながら日本におきましては、バブルの崩壊以降、様々なショックが続きまして、人口減少も進む中で、なかなか企業の積極的な投資行動というものが出てこずに、特にICTの分野につきましては、なかなか積極的なストック形成というものが見られなかったと見受けられます。
結果として、右上にございますように、企業の現預金残高が拡大する一方で、右下にありますように、労働生産性の上昇や賃上げのサイクルというものが生じるに至っていないのではないかと思われます。その結果、家計の消費の伸びも弱いという悪循環が生じている可能性がございます。したがって、これを断ち切るための政策を講じませんと、なかなか持続的な経済成長への道筋というものが開けないのではないかと考えられます。
12ページ目でございます。こちらはもう先生方は御存じかと思いますが、90年代以来の政府、企業、家計の資金循環のグラフでございます。御覧いただきますと、90年代後半以降に企業の投資が、上が貯蓄増なので、企業の青いグラフが伸びているということは、企業の投資が抑制をされ、利益を増やしながら、バランスシートを健全化させようという動きが長く続いているわけでございます。 その裏側で、赤い線の政府ですが、その都度の景気対策のために財政赤字を拡大してきたと。したがって、企業の貯蓄超過と、それから政府の投資超過というものが、表裏になっているかのように見えるわけですが、こうした姿というのは、なかなか今後の経済成長のためには望ましいと言えないのではないかと考えております。
13ページでございます。お金が企業にたまってしまっているという問題とともに、人材の流動性という問題もあると思います。左上のグラフは男女別・年齢別の平均勤続年数、左下は我が国の企業が規模別に転職率がどれぐらいあるかを示したグラフでございます。基本的には男性、しかも中高年で、特に大企業で転職は活発でないということが分かります。
さらに、右側は研究者の人材移動でございます。これを見ると、ブルーの企業、それからグリーンの大学の間の研究者の移動が極めて少ないことが御覧いただけると思います。全体として業種ごとに個別の事情もあるかと思いますので、一律に流動性を高めるべきという趣旨ではございませんが、我が国では、必要なところに適切に人材を移動させていくための政策が、更に求められるのではないかと考えております。
14ページ目はデジタル化の遅れでございます。これは恐らく衆目の一致するところであると思いますが、何が不足しているかということで、左側の真ん中あたり、デジタルスキルを持つ人材が少ないという問題が指摘をされております。
また、デジタル化というのは、普通は業務改革、仕事の中身を効率化するために行われるものであるはずなのですが、これは国際機関の報告書ですが、右側の(2)に、業務改革等をしない形でのICT投資というものが多いと言われておりますので、こうしたことをもう少し変えていく必要があるということです。
15ページ目でございます。問題点ばかり挙げておりますが、一方で、まだまだ我が国経済には強みもあるという指摘もございます。これまでの研究開発の蓄積による知識資本、あるいはものづくり、特許の付与数も多いですが、ものづくりにおけるデータの活用、この辺りの強みを伸ばす政策も必要と考えられます。
16ページ目でございます。このように、我が国の経済につきましては、様々な制約、障害があるわけでございますが、それらを克服して、経済成長につながる効果の高い予算に重点化が必要でございますが、そうした閣議決定は、もう何度も実は行われてきております。左上ですが、これは平成25年の12月なので、ちょうど第2次安倍政権が始まって最初の年ですが、傍線部の2行目、消費や設備投資の喚起など民間需要やイノベーションの誘発効果が高い政策に重点化すべきであると。
したがって、過去何度もこうした決定が行われてきて、その都度考えられるベストの予算を組んできたわけでございますが、実際には実質GDPの伸びというものは、諸外国で過去30年見ますと、低いレベルにとどまっておりまして、一方で、左下でございますが、政府の赤字が増え、国債の格付というものは韓国よりも下の状態になっているということでございます。まさに限られた歳出の中で、経済成長につながる予算に重点化していくということについて、世界経済が転機を迎える中で、いよいよ待ったなしの状態と考えております。
17ページ目でございます。こうした中で、若者の消費が減っているという問題が指摘をされております。この統計を御覧いただきますと、右側のグラフですが、老後の生活資金のために貯蓄をしているという若者世帯の方々が、ここ十数年で増えているということでございます。恐らくいろいろな不安、雇用とか、そもそも国力全体に対する不安もあるかと思いますが、そうした不安の大きなものの一つに社会保障への不安もあると思いますので、こうしたものにも応えていく必要があると思います。
18ページ目でございます。こうした中で、今後の財政のスタンスですが、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標というものを掲げております。この目標につきましては、昨年の財審でも、しっかり維持すべきという建議を頂きましたが、本年1月の内閣府の試算で、高い成長率を実現して歳出改革を続ければ、2025年度の黒字化が達成できる試算となりまして、岸田総理から、このページにございますように、現時点で財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にないという発言がございまして、今後状況に応じ必要な検証を行っていきつつも、目標は維持することとされました。
19ページ目でございます。これを各国の財政ルールと比較してみますと、実はEUでは、財政目標自体はあるのですが、コロナで今年までは制裁措置を停止しているわけでございますが、財政目標自体は、財政収支の均衡というものを目標としております。財政収支は、プライマリーバランスに利払費を加えて収支を判断するものですので、実は日本のプライマリーバランス目標というのは、EUの基準よりも緩い目標となっております。
また、EUの四角のところで3番目の丸を御覧いただきますと、「次世代のEU」資金というものがございまして、8,000億ユーロですから、大体100兆円でございますが、グリーン・デジタルという我が国が目指しているような今後の中長期の経済対策につきまして、EUではプラスチックに対する賦課金でございますとか、排出権取引から若干頂くという形で、中期的にも財源を確保しているという状況にございます。したがいまして、今後の検討のベースといたしまして、こうしたものを参考にする必要があるのではないかと思います。
さらに、20ページでございますが、これは先日公表されましたアメリカの予算教書でございます。大変野心的な案でございまして、上の四角のところですが、雇用の創出、家計負担の軽減、生産能力の拡大、気候変動対策、安保と、この辺りの言わば経済対策を行う一方で、法人税率の引上げや、資産1億ドル以上の富裕層への課税をいたしまして、差引きで10年間で1兆ドル、100兆円以上の財政赤字を削減するというものでございます。 これは予算教書ですので、まだ提案の段階ではございますが、EUのものも併せまして、主要国におきましては、大規模な経済対策には、きちんと財源リストを用意するという流れがあるということでございます。
21ページ目でございます。これは為替と経常収支の動きでございます。御覧のとおり、かなりの円安になってきておりますが、エネルギーとか食料を海外に依存する我が国にとりましては、円の価値が極端に低下するということは、国民生活や経済活動への影響が大きく、特に災害その他有事の場合に、脆弱性というものが出てこないようにする必要があるのではないかと考えております。
また、貿易収支ですが、もう随分前から資源価格次第で赤字になる状態になっておりまして、直近の12月、1月では、経常収支ベースでも赤字となっております。こうした中で、円の信用を確保する、そのために財政運営、マクロ経済政策をしっかりやっていくということが、これまで以上に求められる状況になっていると思われます。
22ページ目でございます。財政の議論の中で、成長率と金利の比較の議論がよくなされております。このページは過去の推移でございますが、過去30年を見ますと、成長率が金利を上回っているということは、実はあまりありません。このグラフの赤線が金利でございますが、残高1,000兆円の国債それぞれの平均金利を取ると、現在1%弱になっております。そちらを示しております。
右上に算式がありますが、実は成長率が金利よりも高ければ、算数の上では多少のプライマリーバランス赤字でも、債務残高対GDP比は減少いたします。しかし、これまでの実績、さらには今後の環境変化を考えれば、成長率が金利より高いから今後も大丈夫とは、なかなか言い切れないのではないかという状況と思います。
次に、基金の関係でございます。
24ページ目ですが、岸田政権になってから最初の予算編成の基本方針で触れられましたが、例えば科学技術などの国家的課題については、中長期の視点を持って予算編成を行っていくと。そのため、単年度主義の弊害是正として基金を活用することになっております。
25ページ目でございます。この基金の活用額が大変増えておりまして、令和2年度、令和3年度でかつてなく多くなっております。点線の四角の中ですが、グリーンイノベーション、ワクチン開発、半導体、経済安保など、最近脚光を浴び始めた新たな歳出の多くが基金で行われているということが御覧いただけると思います。
26ページ目でございます。実はどういう場合に基金が適しているかについて、法令上の規定がございます。左の四角のところでございますが、次の二つの性質をいずれも満たすものが該当すると。例えば、各年度の所要額が見込み難いといった要件がありますので、そうしたことを踏まえて、予算編成において対応を考える必要があるかと思います。また、右側の半導体の基金の例ですが、一旦基金に財政支出してしまった後、ほったらかしというのではなくて、実際に基金から事業者に支出をする際にも、適切な支出となっているかどうかチェックをする仕組みがあります。こうしたものを、ほかにも広げていく必要があるのではないかと考えております。
27ページ目でございます。実は、基金が適切なものになっているかどうかについては、チェックする仕組みが既にございます。それを効果的に活用していく必要があるのではないかと考えております。これまでの内閣官房を中心にやっております行政事業レビュー、基金シートという枠組みに加えまして、右側にお示ししているとおり、令和4年度から、原則四半期の支出状況の公表と、それから年1回、外部専門家による進捗状況の評価を行う仕組みとを構築するようになっておりますので、これらを積極的に活用していく必要があるかと思います。
最後に、広報のお話をさせていただきます。29ページでございます。2月のこの審議会で、財審、それから財務省として、国民に分かりやすい発信をしていく必要があると。ここだけで議論していても、国民の意識と乖離していては意味がないのではないかと複数の先生方から御指摘をいただきました。そこで、財政に関するパンフレットを中心に、今後の広報について委員全員の皆様にメールで御意見をお伺いいたしました。これについて、このページにございますような御意見を主なものとして挙げさせていただきました。ありがとうございます。
例えば、プライマリーバランス黒字化について、なぜ追求するのか分かりやすく説明すべきといった、いろいろな御意見をいただきました。今年は実は、皆様の御意見をパンフレットにできる限り反映させた上で、少し時期が遅くなってしまうのですが、来週以降にパンフレットの印刷に入る予定でございます。また中身についてはお知らせをいたします。
また、30ページ目ですが、この4月からの新年度は、実は節目の年でございまして、財政に関する教育の中で、高校において「公共」という新科目が始まります。これは、従来は皆様御存じの「現代社会」、「倫理」、「政治経済」という選択科目だったものを整理いたしまして、主要な部分を全員必修の公共としたものです。
この中で、実は学習指導要領上も、これは左下でバーがかかっておりますが、財政と社会保障を関連づけて学ぶこととされておりまして、参考資料の中に今日お配りをさせていただいておりますが、実際の教科書の中でもかなり財政と社会保障について、ケーススタディーを含めまして手厚く書かれております。
最後のページでございますが、こちらが一般国民向けも含めて財務省として行っている財政・税制の広報の取組の全体像でございます。前回、堀先生から、税金の「うんこドリル」、左側にありますが、このように自然に学べるようなものが必要ではないかという御指摘がございました。実は今、この「うんこドリル」に、財政に関するページも加える方向で検討をしております。
それから、国民の皆様に効果的に発信を行っていくために、財務省ホームページでいろいろな教材とか、動画とかの掲載をしているのですが、そうしたものをもっと増やしていこうと思っておりまして、ちょうど公共の授業も始まるところですので、学校の先生が授業に使う、あるいは一般向けの講演で使えるような資料を、今後も財務省ホームページの中でコンテンツを充実させていきたいと思っております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続いて文教・科学技術について、こちらは有利主計官からお願いします。
〔有利主計官〕文部科学係の主計官の有利でございます。文教・科学技術分野について御説明をいたします。
まず、2ページです。日本の教育に対する財政支出の規模は、対GDP比でOECD加盟国中、最下位に近いという指摘がございます。ただ教育は、子供一人一人に対するものであり、生徒一人に対する公財政支出、教育に対する公財政支出の規模を対国民一人当たりGDP比で見てみると、日本はOECD平均と遜色ない水準となっております。
さらに、3ページですが、OECD加盟国を見ると、租税負担率の高い国ほど教育に対する財政支出規模が高いという関係も見られまして、そうした中で、日本は平均的な線より教育支出を行っているということも分かると思います。
続きまして、5ページになります。5ページから義務教育でございます。
まず、児童数の減少に対し、教職員定数はそれほど減少しておらず、右下の表のように、教員一人当たりの児童生徒数は、以前より2割以上減少しております。
ただ、6ページですが、日本の小中学校教員の勤務時間は、授業以外の時間に多くの時間を費やしている。その結果、諸外国の中で最も長くなっているというのが、OECDの調査結果です。教育の質の向上に向け、教員が授業に注力できるよう、働き方改革を進める必要があります。
一方で、7ページですが、小中学校の時間外勤務の状況は、二、三年前に比べて改善してきております。今後もこうした流れを加速させることが必要でございます。
そこで、8ページ以降は、取組の加速に向けて、まず部活動について、休養日や活動時間について文科省のガイドラインが守られていないという状況がございまして、まずそれを遵守すべきであると。また、外部指導者の活用や、休日部活動の地域移行を図るべきという提案をしております。
9ページでございますが、学校の業務の効率的実施に向けては、地域との連携も重要です。教育委員会は地域学校協働活動を後押しすべきですし、教育委員会が主導して、コロナ禍での行事の簡略化を契機として学校行事を選り抜くことや、教職員が勤務時間外に保護者対応をしないといった周知を図る必要があるとの提案をしております。
10ページですが、長期休業期間がある割に、学校閉庁日の取組が進んでいないという実態がございます。休日のまとめ取りが可能となる変形労働制は都道府県の25%、政令市の5%しか条例制定がなされておりません。変形労働制の条例整備と、学校閉庁日の長期設定を進める必要がございます。
11ページでございます。ここまでの提案をまとめてございます。さらに付言すると、部活動改革とか地域連携とか外部化に関しては、近年、予算も増やしてきている状況です。また、令和4年度、今年度は、教員勤務実態調査が行われますが、教員の勤務実態と働き方改革の取組との相関関係を分析して、教員の負担軽減に向けた働き方改革を更に進めるべきと考えます。
12ページでございます。学校施設の整備について、昨年12月の分科会の建議を踏まえまして、令和4年度予算では、学校と学校以外の施設の複合化・集約化を図る事業で、コスト縮減につながるものについて補助率のかさ上げということを盛り込みました。ただ、現状で出てきている事業計画は3件のみで、複合化・共用化を具体的に進める方策を更に検討すべきと考えております。
続いて、高等教育です。14ページです。昨年12月の建議を踏まえまして、令和4年度予算において、国立大学への運営費交付金における「共通指標に基づく配分」を見直した結果、以前よりはメリハリが利く結果にはなってございます。左のグラフです。しかし、インパクトとしてはまだ小さく、引き続き、メリハリ強化が必要と考えております。
続きまして15ページですが、現在、政府の教育未来創造会議で、人材育成や学部再編等について議論がされておりますが、まず人材育成については、特に情報分野について、企業側のニーズと大学側の提供する授業との間で大きなミスマッチがある一方で、データサイエンスやAIを担当する教員は、私大中心にかなり不足している状況です。
16ページですが、こうしたミスマッチや人材不足に対応するには、必要な規制改革を行うべきとの問題意識の下、デジタル関係の学部について、ほかの自然科学分野ほどの施設・設備経費が必要なのか、オンライン授業が普及する中で他大学との兼任教員を広く認めるべきではないか、オンラインの上限単位数を緩和すべきではないかといった検討が必要と考えております。
それから、17ページですが、学部再編の議論になりますと、再編のための上乗せの予算支援をという話になりがちです。ただ、18歳人口の減少によって大学進学者が減少すると見込まれる中、上乗せ支援だけ行って、全体として大学定員が増えてしまうと、定員割れ・経営困難校を更に増やすことになりかねません。仮に学部再編を強力に推進するというのであれば、定員未充足校など改革に積極的でない大学から、学部再編に取り組む大学に補助金をシフトするなど、大胆なメリハリづけが必要と考えます。
そうした問題意識の下、18ページですが、私大の入学定員充足率を見てみると、半数弱が定員割れで、特に小規模大学、それから、一部学部系統の充足率が低いという状況でございます。
そこで、19ページですが、私学助成のメリハリ強化に当たって、私学助成の不交付判定について、学部単位で判定するとか、充足率の基準を引き上げる等の厳格化、配分基準の客観的指標の見直し、それから増減率の拡大、さらに学部間での助成単価のメリハリづけといった見直しが必要と考えております。
ちなみに、20ページでございますが、日本と同じく私立大学のウエートの高い韓国と米国について、その財源構成を調べたところ、財源に占める私学助成の割合は、これら3国で差がないということが明らかになりました。また、韓国では、18歳人口が減少見込みであることを踏まえて、評価の低い3割の私大に対して、国が定員削減勧告を行っておりまして、定員管理に踏み込んだ改革を行っていることも注目に値します。
続いて21ページです。消費税財源で令和2年度から導入された高等教育の修学支援新制度については、3年連続赤字で、前年が負債超過で、かつ3年連続定員充足率8割未満の大学については、そこに通う生徒さんというのは対象から外れるということになっておりますが、実際に対象から外れた大学は、ごく僅かあるのですが、ほとんどございません。
一方で、22ページですが、修学支援新制度を導入した令和2年度には、定員充足率が低かった私大の学生数増加とか収支改善が、右側のグラフですが、顕著でございまして、改革努力が乏しい私大が救われないよう、先ほど見た修学支援新制度の対象大学の要件の厳格化を図ることも考えるべきではないかと考えます。
続いて23ページですが、オーストラリアのHECS、これは昨年の財審分科会で御紹介させていただきましたが、これに加えて、同様の仕組みのイギリスの授業料等ローンについて調べてみました。オーストラリア、イギリスとも、学生にとって無償、逆に言えば政府が全額負担をしていた大学において、授業料が導入されたということに伴って、HECSとか授業料等ローンが導入されております。つまり、国の大学への財政負担を軽減する文脈で導入されたという点を押さえておく必要がございます。
さらに、参考資料の中に入っているのですが、イギリスでは運営費交付金の削減、さらに給付型奨学金の廃止まで行っているという状況です。
最後に、博士学生の支援です。24ページにありますように、修士課程からの博士課程進学者に対しては、既に5割超の学生を支援しておりまして、今後これを7割まで増加という政府の目標がございます。そうした中で、25ページにありますように、同一学生が複数事業から重複して支援を受けられ、一方で執行機関が異なることから、支給状況を一元的に把握できていない状況ということになっております。できるだけ多くの博士学生を支援できるよう、支給状況を一元的に把握する体制を構築し、限られた財政資源を効率的に用いることが必要であると考えます。
次に、科学技術です。27ページです。日本の科学技術予算ですが、ここはG7を出しておりますが、主要先進国の中で高い数字にございます。
ただ、28ページですが、Q値は引用数Top10%の論文が全論文に占める割合ですが、これを見ますと、G20の中でも下位になっています。『ネイチャー』に掲載された論文であると、政府支出を増やせば論文数は増えるが、論文引用数により評価された科学的インパクトとは相関せず、むしろ、その国の開放性が科学的インパクト、つまり論文の質の向上に影響するとされています。そして日本については、国際化していないことが研究のパフォーマンスの妨げになっている可能性が指摘されています。
29ページですが、今の数字的な裏づけですが、日本では研究者の国際移動や国際共著論文数の伸びが少なく、右側のほうは自校出身の教員が多いというデータがございます。研究者支援の重点化とか、大学ファンドの活用も行いながら、こうした構造問題の解消を図り、研究の質、研究力向上に取り組むべきと考えます。
30ページですが、近年、科学技術分野で基金・ファンドに対する多額の予算が計上されています。既に予算化されたこうした基金の有効活用は今後の重要課題であり、その中では、スタートアップ企業の活用も推進すべきですし、基金において行われる研究開発の中間評価に基づくプロジェクトの絞り込みや、機動的な資金配分の見直しもしっかり行う必要があると考えます。
31ページですが、特定の研究者が多数のプロジェクトの研究費を国から受け取っている例がございますが、これまでの運用では、教育活動とか診療活動とか、大学の運営費交付金が原資となっている研究活動への従事時間というのはカウントしないで、競争的資金による研究活動への従事時間のみで、それが全仕事時間を超えていないかということをチェックしてきています。研究への適切なエフォート確保と、研究費の効率的配分のため、こうした運用を見直すべきと考えております。
32ページですが、研究設備と機器につきまして、まず左のほうですが、研究者とか研究室間の共用化を進めるべきと。右のほうですが、設備機器の利用料金は整備費まで含めて設定すべき。それから、下ですが、電力について、共同調達などのコスト削減の工夫を行っていくべきであると考えます。
33ページですが、応用・社会実装寄りの研究領域においては、企業の研究開発投資をしっかり募るべきで、次期の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の検討に当たっては、マッチングファンド方式の拡大に取り組むべきであると考えます。
34ページですが、宇宙開発の官民負担比率について、近年では米国が、政府が7割程度、逆に言うと民間が3割ということですが、になった一方で、日本では政府が97から99%ということで、民間がほとんど参入していないという状況になっています。さらにJAXAも、発注の8割が1者応札か随意契約でございます。民間の自主的な宇宙開発を促すために、JAXAにおいて、まずスタートアップ企業向けなど、多様なプレーヤー向けの契約・発注の拡大に取り組むべきと考えます。
35ページでございますが、H3ロケットについては、打ち上げ時期が既に2回延期されております。打ち上げ再延期に伴って、仮に開発費用が増加する場合は、契約相手方の貢献度を高めるなど、開発費用抑制のための新たな方策を講じるべきと考えます。
最後に文化の分野です。
コロナ関連予算の検証ということで、まず37ページですが、令和2年度第3次補正予算で計上した「Arts For the Future!」、いわゆるAFF事業について、コロナ前より利益が増加するなど、自力で事業実施が可能だった法人も補助を受けているという事例がございました。そこで、令和3年度補正予算では、売上高の減少割合が小さい営利法人を補助しないといった見直しを行っております。
それから、38ページでございます。令和2年度の同じく3次補正予算で計上した子供文化芸術活動支援事業について、子供の座席を無料とするための経費をはるかに上回る補助となっている例が見受けられました。令和3年度の補正予算では、補助金額について、子供の座席を無料とする経費相当額との関係で、一定の上限を設けるなどの見直しを行ったところでございます。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日ですが、欠席ではございますが、安永委員から本日のテーマに係る意見書を御提出いただいております。お手元にお配りしておりますので、お目通しください。
それでは、これ以降いつものとおり、質疑に移りたいと思いますが、こちらの会場に来ておられる方はネームプレートを立てて合図してください。それから、テレビ会議システムの方は、挙手するボタンでのクリックをお願いします。限られた時間での発言なので、御発言は極力簡潔にお願いするということと、財政総論と、それから文教・科学技術をまとめて質疑を行いますので、よろしくお願いします。
会場から初めに5名程度、続いて、テレビ会議システムで5名程度。以降、その順で続けるという形でやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
また、最後に念のためでございますが、会場の方はマイクをオンにして、もし可能であればマスクを外して御発言いただけると、よりクリアに聞こえるかと思います。それから、テレビ会議システムのほうは、御発言の際、ミュートを解除して、終わりましてから、さらにミュートに戻していただく。この動作をよろしくお願いいたします。
それでは、初めに私から見て左側のほうからということで、末澤委員から木村委員、それから広瀬委員、武田委員、それから、神子田委員が4時退席で発言ありということで、武田委員の後に神子田委員に御発言をお願いしたいと思います。
それでは、末澤委員、どうぞ御発言ください。
〔末澤委員〕よろしくお願いします。どうも御丁寧な御説明をありがとうございます。
私から、まず総論に関連しての話ですが、先ほど3ページ目、近年の主要国の物価と政策金利のグラフを御提示いただきましたが、これを御覧いただくと、今の世界的な消費者物価の上昇率というのは、大体40年前、第2次オイルショックの水準まで上がってきているということですね。
これが一時的なのか、構造的なものかについては、見解は分かれると思います。私は2月23日までの段階では、コロナ後の供給制約の影響が大きくて、1年ということはないとしても、数年である程度、この状況は収まってくると考えておりましたが、2月24日、御案内のとおり、ロシアのウクライナ全面侵攻。これは、私は侵攻の可能性は21日以降あるとレポートに書いたのですが、さすがにドンバスだけに限られて、全面侵攻はないと。この21世紀、リスク・リターンが合わないという見解を持っていたのですが、どうも私の考えは少し甘かったと。
この40年間、もっと言えば、ベルリンの壁崩壊89年、ソ連の崩壊91年以降の30年間で、あまり世界は民主化が進んでいないと。これが確認されたわけでございまして、今の物価上昇局面が、場合によっては、私は中国の対応が今後、鍵になると思いますが、かつての冷戦時のような東西のブロック経済化が今後進展するとすれば、割と長く続いてくる可能性もあると。
そうすると、実は問題になるのが、このインフレ率を御覧いただくと、上がっているのが先ほどの70年代後半の第1次オイルショックと、80年代前半の第2次オイルショックなのですが、我が国の債券市場はいつからスタートしているかというと、当然、国債発行は戦後もあるのですが、私も86年から債券のディーラーをやっておりますが、我が国の債券のセカンダリー市場が基本的に整備されたのは、85年、円ドル委員会の報告以降なのです。
銀行に国債のディーリングが認められまして、85年には債券先物が東証に上場すると。つまり、85年以降に日本の債券市場は活発化していると。ですから、第1次・第2次オイルショックのスタグフレーション下では、必ずしも市場が整備されていなかったのです。79年、80年のロクイチ国債の暴落というのがありましたが、当時はまだ銀行の売却制限等も残っていましたから、必ずしもセカンダリー市場が大混乱した訳ではありません。
ですから、何が言いたいかというと、本当にかつてのような物価水準が戻ってくると、日本の債券市場、国債市場は、ここまで債務残高が膨らんで、安泰とはいかない可能性もあると。こうなるかどうかは分かりませんが、つまり構造的な問題に、この物価上昇が続くとなると、これは相当戦略を変えていく必要もあるということで、いずれ、これは安全保障政策も同様であると思うのですが、従来の政策の見直しが、場合によっては必要になるということも、頭の片隅に入れておく必要があるのではないかと。
マーケットでも相当大きなレジーム転換になる可能性もあるという見方も広がっています。そのとおりになるかどうか分かりません。数年で収まる可能性もあろうかとは思うのですが、そこの問題については、やはり頭に入れておく必要があると思います。
また、文教に関して申し上げると、これはずっと私は8年間申し上げているのですが、人口減が続いていると。人口減が最も早く影響するのは幼児教育、また義務教育のところなのです。ですから、特に今日もありましたが、義務教育のところについては、統合、ICT化、アウトソーシング、この三つの柱で、より教育の質を高めるという観点で。つまり、働き方改革がずっとおざなりになると、良い先生も集まりませんし、当然、教育の質も低下するわけでありまして、生徒、先生、またその周り、近隣の住民、親御さんも含めて、何が一番メリットを受けられるか、つまり正しいかという観点で、私はやはり、統合とICT化とアウトソーシングをもっと進めていく必要があるのだろうと考えております。
また、今後どういうことが必要なのかということなのですが、こちらは思いつきで申し上げて申し訳ないです。いろいろそうした状況が変わってくるということで、従来の同じような前例踏襲とはなかなかいかないと思うのです。特に人口が減ってくる、経済もそんなにパイが増えないということになれば、従来、財務省はいろいろな概算要求が上がってきたので、一部カットすることで政策誘導できたと思うのです。全体が増えなければ、組替えするしかないわけでありまして、組替えのためには政策提言といいますか、この部分もないと、なぜこちらを減らしてこちらを減らすのかということに至らないと思うのです。
ということでございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
このまま続けたいと思いますので、それでは、続いて木村委員、どうぞお願いいたします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。申し上げたいことは、末澤委員と似たようなことなのですが、春の財審は中長期的な観点から議論する場と認識していまして、その議論の土台となる経済情勢、世界情勢が、御説明にあったように従来と一変しました。それはコロナ禍に加えて、ウクライナ危機と。要するに、疫病と戦争という人類の二大脅威に今、直面しているのだなということなのですが、しかも一時的な危機にとどまらないで、世界経済の歴史的な構造変化を引き起こそうとしているのかもしれないということですね。
具体的には、世界の分断と対立がもたらすインフレの長期化ということでしょうか。ウクライナ危機だけではなくて、従前からあった米中対立も含めた世界経済のブロック化、それから気候変動対策に伴うグリーンフレーションといったものが、冷戦後のグローバル化に伴う低インフレ経済というのを一転させるかもしれないということで、しかもそのインフレはコストプッシュ型なので、スタグフレーション的な状況に陥る可能性もあるということで、これがもし構造的な変化であるとすれば、政策対応として、一時しのぎではなくて、腰を据えた取組ということを考えていかなければならないということであると思っています。
とりわけ心配されるのは、御説明にあったように金利の上昇ですね。これが日本経済に及ぼす影響は様々あるでしょうが、説明にあったように、財政の利払い負担が増えると、それだけ、財政健全化の取組というのが一段と重要になると思っています。もちろん、デジタル化などで日本経済の成長力を強化して税収を増やしていくという取組も大切なのですが、人口減少時代にどれだけ高い成長ができるのか、なかなかこれが難しい面があるのではないかと。そうした厳しい現実を直視して、歳出改革、歳入改革にしっかり取り組む必要があると考えております。
今、政府は物価対策を検討しておりますが、借金を積み上げるだけに終わるバラマキ的な対応、それこそ一時しのぎというのをやめて、効果的な対策に絞って行うべきであると考えております。
また、最後に、中長期的というか、包括的な視点として、政府は物価を抑えようという対策を検討されているわけですが、他方で、政府・日銀としては2%の物価目標を掲げていて、日銀は異次元緩和を続けていて、異次元緩和の結果、円安が進んで物価が上がると。国民の目から見れば矛盾しているのではないかなという印象があるように見えるわけです。
これは経済政策の大枠として、10年前のアベノミクスというのを今もまだ大枠として続けていって、果たして良いのかということ。総理が掲げる新しい資本主義の具体像を早期に明示して、経済の構造変化に対応した政策の枠組みというのを再構成した上で、その中で財政運営の方針というのを決めていく必要があるのではないか。それを、財審という場を活用しながら考えていきたいなと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕私は今の状況を見ると、財政の将来展望に対して、すごく危機感といいますか、当たり前ですが、特に最近のいろいろな状況を考えると、そうした危機感を持たざるを得ないような状況にあるのではないかなと思っています。したがって、これまでもあったかもしれませんが、緊急事態宣言のようなものを、しかるべき時期にきちんと出すべきではないかなと思っています。
これまでは社会保障が一番大きかったわけで、そこをどうするかということが一番大きなテーマだったのですが、コロナで、これはしばらく続くと思いますし、この2年間のコロナのいろいろな、財政的に言えば負の遺産が相当あるわけですし、それから、ここで何回も議論しましたが、3点セットですね。グリーンと、デジタルと、レジリエンス。レジリエンスというのはインフラと防災ですが、これはもちろん前向きなもので、成長戦略にもなりますが、時間的に言えば、はるかにお金が早く出て、財政負担が大きくなる。そうした面で、やらなくてはいけないのだが、これは大変な財政的な課題になっています。
それから、恐らくもうヨーロッパで始まっていますが、国防費、安全保障が、これから大きくならざるを得ないのではないかなと。もちろん、軍事的な安全保障だけではなくて、先ほどありましたが、食料の安全保障をどうするのかとか、そうすると、地方をどうするのかとか、そうした問題まで行くと、財政的に見るとニーズばかりなのです。いずれにしても、これは解決しなくてはいけないのですが、これを一体どうするのかという認識を、まず持つべきではないかなと。
幾ら認識していてもしようがないので、具体的な制度的、あるいは仕組み的、ルール的なものを、これまでもここでいろいろな議論がありますが、例えば本予算と補正予算。前に誰かおっしゃいましたが、12か月分を15か月予算でやっていれば、増えるのは当たり前ではないかというお話がありましたが、そうした問題とか、独立した予算策定あるいはチェックをする機構とか、あるいは新しい政策に対してきちんとした財政的な裏づけをするとか、それから目標についても、プライマリーバランスは絶対旗を降ろしてはいけないのですが、本当にこれをそのまま続けていって、危機感なり、あるいは改善につながるのかという面も含めて、そのような目標の在り方、その辺も含めたことを考える時期に来ているのではないかなと。
現在、民間臨調のような動きはもう出ていますが、私はこれは当然であると思いますが、財審の中でも毎年、単年度予算に対する建議はもちろん大事ですが、もう少し、認識と提言と目標、この三つをパッケージにしたような何らかの緊急提言のようなものを出す時期に来ているのではないかなと。
各論はいろいろありますが、今日は総論ということで、私の認識を述べさせていただきました。以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。ただ今、3名の委員がおっしゃられたことと、私も基本的には共通の認識でおります。
昨年の秋の建議からの環境変化として、まとめていただいた3点については、もちろんそのとおりであると思うわけですが、ウクライナ情勢が変化する前から、世界の潮流として、世界の分断というものがありました。また、世界のインフレについても、一時的な事象いうより、潮流変化として起きている部分も大きいのではないかと思っています。
例えば、その背景の一つが、本日の資料にも出していただいているグリーンフレーションと思いますが、二つ目として、経済安全保障の観点もあると思っております。一つ目のグリーンフレーションとも絡みますが、カーボンニュートラルを進めていく上で必要な資源、この資源の生産国を精査してみますと、御存じの方も多いと思いますが、いわゆる権威主義国と定義されている国、あるいはロシアへの国連での非難決議に対して棄権した国の名前が多く見られます。世界の分断が進む中で、こうした分野での価格の上昇が一段と強まる可能性はございます。
さらに、三つ目として労働市場でも変化が見られており、米国では労働参加率が低下、日本ではミスマッチがますます拡大し、かつ労働力人口も減少していくという状況です。
したがって、資料ではウクライナ情勢の影響が強調されておりますが、ウクライナ情勢に関わらず、国際的に潮流が変化しているかもしれない。つまり、一時的なのか、構造的な変化なのかというところを、しっかり見ていく必要があるのではないかと思います。
仮に構造変化が起きているのであるとすれば、金利に与える影響もいずれ出てくると思いますし、そうしたことを念頭に置いた財政運営がますます重要になってくると考えます。大きく世界が変化している中では、国家戦略として、将来の不確実性に備えた財政運営の在り方を考え、秋の建議でも記述したとおり将来の不確実性に備えた余力をしっかり持っておく。そのために、財政の健全化を進められるときにしっかり進めていく。こうしたことをしっかり議論する必要性と、一時しのぎではない財政運営の重要性がますます高まっていると考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで神子田委員、どうぞ御発言ください。
〔神子田委員〕ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
私はウクライナ侵攻の話と財政教育の話をしたいのですが、ロシアのウクライナ侵攻が示したことというのは、自由と民主主義を守るコストのことではないかと思いまして、具体的に言うと、国防費の問題であると思うのですが、ドイツはGDP比2%まで引き上げるということで、ドイツはかつてヨーロッパで、軍靴でヨーロッパ大陸を踏み荒らしたという国なのですが、その国でも2%に増やすということが認められるという、昔の話よりも今の民主主義、自由の敵と戦うということが重要視されている中で、当然、日本もその一翼を担うという姿勢を岸田総理大臣が示しているということで、やはり国防費の問題は考えないといけないと思うのです。
ロシアが、私は軍事専門家ではないのですが、よくウクライナの軍事力を過小評価して作戦失敗したと言われているのですが、逆に正当に評価されてあれば、キーウ侵攻はなかったかもしれないということです。その意味で、戦争をするためということではなく、戦争に巻き込まれないためにも、ある程度の国の構えというのは必要ではないかと。その国の構え、基礎力の中に、財政の力もあるのではないかと。戦争になって、戦費調達とかいうことになったときに、おたくは財政状態が悪いから貸せませんということにはならないようにするということは、改めて問いかけられているのではないかと思いました。
それと、今、ウクライナの国民が非常に悲惨な目に遭って、難民とかがポーランドに出ているわけですが、日本にもこの間、数十人という規模で、政府専用機で来ましたが、現地には当然、日本は軍事国家でもないから軍隊も送れないし、NATOの一員でもないから、その義務はないのですが、何とか民主主義を守ろうとしている人たちに対して支援ができないかということで、ここは相応の財政を出して支援していくべきではないかと思います。
かつて宮澤大蔵大臣という方がいらっしゃって、私はそのとき現役の記者だったのですが、当時から日本の財政は赤字でありまして、今に比べればかわいい赤字ではあったのですが、記者会見で質問して、日本はこんなに赤字なのに、どうして人の国の援助とかをしているのですかという話をしたら、世界でGDP2位という、これだけ国の規模、構えが大きいと、国際的な義務というのは果たしていかなければいけないとおっしゃっておりましたが、このウクライナ問題では、そうした意味で、日本として貢献していくべきではないかと思っております。
二つ目は財政教育なのですが、私はこの問題に、非常に前から興味があって、この会議でも、子供たちに理解してもらう、考えてもらうということが大事ではないかと言ってきまして、ようやく教科書の中で具体的に教えるという手はずが整ったということなのですが、私はメディアの人間なので、こうした新しい動きが始まりました、ではどういうことをカメラで撮影して伝えましょうかというときに、何か動きがあると、取材もしやすいのです。
どんなことがあるかなと考えたときに、例えば模擬国連のような活動を、よく若い人たちはやっているのですが、ここを模擬政府、模擬国会のような、要は政府、予算をつくる側と国会の、簡単に図式として与党と野党のような形にして、それで政府の中にも文科係とか、防衛係とかを一応つくって、そうすると、子供たちが何に予算が要るのかということを考えていくと。自分たちも将来のことを考えるし、お父さん、お母さんにヒアリングしてみたり、お兄さんにヒアリングしてみたりして、何が必要なのかということをお互いにディスカッションし合うと。
一方で税収についても、税金をどうやって取ろうかなという、政府の中に主税局のような担当も置いて、これが成長すると、モデルではこのように政治が入ってきますとか、そうした議論をさせたら面白いのではないかなと。その教材を財務省の人たちに、今日、有利主計官が説明されたような膨大な情報ではなくて、もう少し子供たちにシンプルに頭に入るようなものを考えていただいて、そうした副教材などを作ると、先生たちもまた教えやすいのではないかなと。そうしたことを思いましたので、以上、私の意見とさせていただきます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ここでウェブで参加の5名の方に御発言を移したいと思いますので、合図がございましたので、この順番で指名しますので、よろしくお願いします。櫻田委員、伊達委員、権丈委員、河村委員、そして福田委員と、この5名の方に、この順番で御発言をお願いしたいと思います。
櫻田委員、どうぞお願いします。
〔櫻田委員〕ありがとうございます。事務局から詳細に説明いただいた内容については、毎回申し上げているのですが、ほとんど全く違和感はありません。また同友会も、2018年に高等教育の見直しについては提言させていただいておりまして、この内容もほとんど一致しております。
ただ、違和感がないとは言っておりますが、逆に言えば、財政の問題についてもこれまで建議を出してきておりまして、やるべきことについては、恐らく政府も認識している、つまり、やるべきことははっきりしていると思うのです。そうすると、また同じことを言っていると言われるかもしれませんが、違和感があるのは、問題ははっきりしていることがどうしてできないのか、どうして実行できないのかというところについての提言や提案や案が今回もやはり入っていないというところについては、若干フラストレーションを感じております。すなわち、ドゥーであったりアクションであったりということがないと、幾らやっても同じことを繰り返す可能性があるという危機感を強く持っています。
また、最近、私ども同友会におきましても、例えば実効性のある成長戦略の策定に向けて何が必要であるとか、何ができなかったのかということを結構深掘りしてやっております。中間の段階ですが、先ほど事務局から御説明のありました、例えば総論の16ページに、これまでも好循環経済実現のための経済対策を、たしか何度も閣議決定しているという話をされました。そして、内容がほとんど変わっていないです。そして成長戦略も、長い間やってきていますが、内容はそう大きく変わっていません。しかし、なぜ実現されないのかということについては、依然として、サイレントとは言いませんが、明確な議論はしていないと思います。
そうした意味で、私も調べてみたのですが、例えば今言った成長戦略について言えば、プランの段階でいうと、民間の知見が足りていない。あるいは、省庁間の縦割りがある。もっと大きいのは、既得権益の存在というのがあって、これに邪魔されているというのが、証拠とともに出てきます。
それから、KPIの設定についても、因果関係が明確でないKPIが設定されている。例えば、政策そのものをつくりましたということがKPIの目標になっている。それは民間ではあり得ないことでして、政策目標の結果、どういうアウトカムができたかというのがKPIになるべきですが、そのようになっていない。
それから、評価する人とプランする人、プランナーと評価する人が同じところをやっている等々、我々民間からすると、そうした意味では、PDCAが、民間が言うPDCAとは全然違いますよということを言いたいのです。個別に見ていくと、よく分かります。それはKPIではないでしょうというのがKPIになっていますという話です。
そうした意味では、私は逃げるつもりは全くないのですが、政治の意思というのは非常に重要ですが、政治も当然、民主主義ですから、民意をしっかり酌むということが必要であると思います。そこで私のいつもの課題は、若い人なのです。将来世代が政治に参加するなり、政治に意見を発信していくという場をつくる。そして、彼らがもっと投票所に足を運ぶということをやっていかない限り、恐らく安易にシルバーデモクラシーは消えていかないと思います。これは7月10日を過ぎても、恐らく同じだと思います。
そうした意味では、解決の鍵は、若い人たちをどうやって財政の問題に引きつけていくか、そしてそのために、どうやって投票所に足を運ばせるかということであると思います。言ってみれば、財政のグレタ・トゥーンベリさんのような人が出てくると良いなと思っていますが、半分冗談ですが、そのくらいやらなければいけない。
そして、最後ですが、この提案には違和感がないので、総理がまさにいの一番であると主張されておられる新しい資本主義、大いに期待しています。が、残念ながら、まだグランドデザインが出てきていません。成長戦略は、今までの個別の政策の積み重ねにしか、私には、勉強不足かもしれませんが、見えていないのです。議員であるということの責任も感じておりますので、まず、何としてもグランドデザインをしっかりと描き込んで、次の骨太方針の中に出していけることを期待したいと思います。
長くなりました。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、すみません、伊達委員、初めのほうから御発言をよろしくお願いしたいと思います。
〔伊達委員〕詳しい説明をありがとうございます。
まず、財政総論のほうですが、新資本主義の議論というのは適正再配分であると思いますが、配分の原資というのは企業が稼がなければならない。そのために、いろいろ課題はあるのですが、デジタル化というのは、まさに生き残りのためにマストだと考えています。
そうした意味では、デジタル化は手を緩めてはいけないと思います。現在、金利が上がってくる可能性があり、物価も上がってくると。資源について、半導体も含めて不足している。そうしますと、投資機会すらも競争として激化しているというのが今の状況です。しかしながら、ICTの資本ストック、これまでの蓄積がかなり少ないということは、ディスアドバンテージであるということを、まず私たちは認識しなければいけないと思っています。
また、14ページにデジタル化の遅れが起きているということ、労働生産性が低いということも挙げられているわけですが、それは日本企業の稼ぐ力を削いでいるという状況で、世界市場での競争にも勝ち組とは言えないと思います。経済成長の足かせになっていると捉えてよいのではないかと思います。特に生産性について、日本企業だけではなく、進んでいるアメリカですら、先ほどの資料によると、一大テーマとして挙げられているのですから、ますます競争は激化してくると思います。
14ページには、デジタル化に向けてどの程度進んでいるかという、世界基準の中での指標というのが出ています。また、それが進んでいない状況も示しています。日本全体を成長させていくためには、この指標を政府として、いつぐらいまでに、何位ぐらいまで持ち上げていくのかというロードマップと、そして、この6つの課題をどのように解決していくのかという具体的な方策というのを示していく、それに合わせた財政支出も必要に応じてやっていくことで、本当に企業に稼がせるために必要なのではないかなと思います。
一方、DXの投資減税というのが既に導入されているわけですが、こちらについては、実際どのぐらいの活用が行われているのか定点観測すべきではないかと思います。それなりにハードルが高い印象であり、また対象期間も短いということを考えると、実際活用できるのが、既にある程度予定していた企業ではないかなと臆測しています。DX投資の積極化を一般企業まで浸透させたいと考えるのであれば、その起爆剤にするために、実績をチェックしたほうがよろしいのではないかなと思います。
次に教育なのですが、IT教育のミスマッチというのは、企業の側から本当に感じるところが多くあります。ただ、ITと一言で言っても、データサイエンス、AIのようなものから、アプリを開発するというもの、ノーコードのものもありますので、実は幅広いわけですよね。そう考えますと、もう少し区分して考える必要があるのではないかと思います。理系に専門教育として拡充すべき高度レベルの話と、文系教育の見直しの中で対応できるレベルの話と、もしくは最低限必要なITリテラシーを持たせるために、文理関係なく教育課程の中に第二言語のような形で取り入れるなど、段階を分けて、全体のITリテラシーを上げていくということも考えていってはいかがかと思っています。
また、教員の働き方改革のためにアンケート調査を取られるということなのですが、アンケートに時間を取られているという現実を考えると、デジタル化でタイムリーに情報収集できるようにするということが必要であると同時に、せっかく取ったデータがあるわけですから、それを基に、標準的な教員の配置人数であるとか、教員以外の補助人員の人数であるとか、そうしたものの相関関係を明らかにして、それを示していくというような、次に活用できるものにしていくということも必要なのではないかと考えます。
また、補助金関係が適切でなかったということで見直しに入っていますが、そうしたケースが結構散見されると思います。コロナ関係の医療に対する補助もそうであったし、そうしますと、その繰り返しで、無駄なところに無駄なお金が行っているという印象を受けますので、そうならないようにどうするのか、次善の策というのをもう少し講じられるような仕組みを考えられてはいかがかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続きまして権丈委員、どうぞお願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。私からは1点、コメントさせていただきます。
財政総論の資料13ページの人材の流動性について、こちらの左側にある二つのグラフについてとなります。先ほど御説明の際にも慎重な言い回しをされていたところなのですが、その辺りです。平均勤続年数の国際比較より、特に男性について、「諸外国と比較して平均勤続年数が長い」という指摘と、その下に「会社規模が大きくなるほど、転職率は低い」とあります。
ここからメッセージを導き出すには、幾つかの留意点があると思います。まず、日本では最近は労働力の高齢化の影響で年齢計の平均勤続年数が伸びているため、国際比較の際に年代階層別に見たというのは、良いアプローチであると考えます。日本でも同じ年齢階層で見ると、例えば男性では10年前と比べて、高年齢者雇用確保措置の影響があったと見られる60代以外の年齢層は、平均勤続年数が短くなっているという状況にあります。
それから、転職が多く、平均勤続年数が短い国が理想かというと、ヨーロッパの経験を見ると、勤続年数が短い国では企業内での職場訓練が行われず、人的資本蓄積が難しいということが悩みになっています。これに対応して、企業外での職業訓練、職業紹介、マッチングの仕組みを整えて対応していく方法を模索しています。
また、日本もそうだと思いますが、外部労働市場が発達していない場合に、急に解雇しやすくなるといった動きがあれば、失業が増えるということになります。労働市場をより流動的にしようとするのであれば、外部労働市場の整備に力を入れ、失業給付や積極的労働市場政策など、労働市場政策により本格的に取り組まざるを得なくなってきますので、そうした点も考慮に入れて、人材の流動性に関して、ここに示された左側のグラフで見た形のメッセージを考えていただければと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。私からは、総論のところと文教のところで、それぞれ大きな点を一つずつと、少し細かいことがあるのですが、意見を言わせていただければと思います。
まず、総論なのですが、何人かの委員の方も既に御発言されましたが、現下の局面で、どれほど厳しい状況に置かれているのかということを、しっかりと外に向かって伝えていったほうが良いと思います。その意味でも、9ページの辺りなのですが、金利上昇した場合に、どのように利払費に影響が出るかというところなのですが、これまでと同じような感じでの結果が書いてありますが、ただ、今のこの国の国債の調達構造を考えると、この分析であると少し足りないのではないかと。
例のコロナ対策で第2次補正をやったときに短期国債を出したのが、まだ相当残っていますね。今回の財政総論の資料の中にはグラフは入っていませんでしたが。かつてのようなコロナ危機が来る前の感じでの調達構造だったらこのように長期金利のほうに、長期の国債の利払費のほうに主な影響が出るということで良いと思うのですが、今はまだ、そのときのコロナ対策で出した短期国債を、財務省としてもそれを減らそうということですごく御尽力くださって、去年も少し減らせて、八十何兆円あったのが、今は60兆円ぐらいまで減らせてきてはいると思いますが、まだ60兆円もある。
ここの部分というのは、将来の利払費の影響のところで考えざるを得ないというメッセージを出したほうが良いのではないかなと思いますし、また、21ページのところで、円の信認の維持が重要と書いてくださっていて、本当にそのとおりですので、利払費云々ということを言うだけではなくて、この財政制度分科会としては、短期国債、短期の調達でぐるぐる回しているだけで、要するにコロナ対策、こうした大きな対策を打ったにもかかわらず、それを一体この国内で、誰がどういう形で、みんなで負担を分かち合おうかということの議論が、まだ全然できていないということですよね。
ですから、これまでに私も申し上げてきましたし、ほかの委員の方もおっしゃっていらっしゃると思いますが、例えば震災の後の復興債の枠組みのような形で、所得課税とか法人課税に少し上乗せするという形で、経済的に余力のある人にとか、余力に応じる形で、少しずつみんなで負担を分かち合うような仕組みをきちんとつくって、短期国債に偏重しては本当にリスクが大きいと思いますので、しっかりとした財政の資金調達ができる構造に変えていくということを打ち出していったほうが良いのではないかなと思います。
あともう一つ、基金のところです。それで、ここは今の政権の方針もあって、いろいろ御説明くださっているのですが、基金は良い面と、なかなかうまくいかなくなってしまう面もあって、PDCAの強化のこととかもお書きくださってはいるのですが、過去の経験からすると、いたずらに基金の残高が積み上がってしまって、行革でいろいろな基金シートを作ってレビューをかけたりもしていると思いますが、返納ということになっている事例も結構ありますから、バランスを取って、過去にそうした使われ方というか、使われなかった実績というか、積み上がってしまうだけになったことが、この財政が厳しい中でということがあったことも伝えていったほうが良いのではないかなと思います。
また、文教のほうでも意見を言わせていただきます。今回、例えば先生方の働き方改革であるとか、それから定員のところですね。高等教育の定員のところとかも踏み込んでくださって、今までそんなにやっていなかった点で、すごく良いのではないかなと思います。
申し上げたいのは、主として定員のところなのです。17ページ以降のところで、踏み込んでいろいろ、学部再編支援とかについて踏み込んで打ち出していただいて、本当に良いと思います。
ただ、この話は、財政当局としてできることにはなかなか限りもあって、どのようにうまく当事者とか文科省とかに促していくかということであると思うのですが、学部再編支援、それから定員の問題ということなのですが、どうも今回打ち出されているのが、定員が充足されていない学部・大学が放置されるのはよくないからという問題意識で、何となくそこで止まってしまっているように見えなくもないなという気もいたします。
それはもちろん、とても大事で重要ですし、運営費交付金を国立大学にいっぱい出しているし、私学助成もいっぱい出している財政当局としては、当然そのようにお考えになるし、そのとおりであると思うのですが、実はもう一段踏み込んだ大事な問題があると思います。これは、人口が減少していく中での高等教育のレベル、質をどうやって維持していくかということであると思います。
こうした例で申し上げてよいか分かりませんが、私のところでも耳に入ってくるのは、例えばトップの東大が3,000人ぐらい、毎年、学部生が入学されるのですかね。その3,000人も、やはり18歳人口が200万人いたときの3,000人と、今はもっと減っていますよね。これからもっと減りますよね。90万人とか、もっと減ってしまう。そうした中での3,000人では、先生方の感覚として随分レベルが下がってきてしまってという話が間接的にもいろいろ聞こえてきたりして、それは別にほかの大学でも同じであると思うのです。
そうしたところをどうやって考えるのかということが、この国は全然できていない。それはなぜかというと、教育の質の把握の体制が全然整っていないからであると思います。文科省も後ればせながら、少し学生調査とかもやり出したりしていますが、教育の質というのは単純な定員充足率とか、それから就職率、九十何%で優劣を競うような、そんなものだけではかることができる話ではなくて、もっと踏み込んだ教育の質の把握をすべきであると。
私も海外の高等教育を少し調べたことがありますが、卒業生の所得の状況、要するに、職業に別に優劣も全然ないですが、どれだけ稼げるような人材になっているかというところで高等教育の質がはかられるという意識があって、イギリスなどはそうなのですが、そうしたところまできちんと調査して、全部国民に開示しているのです。
そのぐらいのことを、しっかり日本としてもやって、教育の質が、これだけ人口が減ってくる中で、それぞれの大学でどれぐらいのレベルで、どういう定員でやっていくということが、高等教育の質を維持することになるのか、それぞれの高等教育機関での質を維持することになるのか、単に多ければよいというものでは決してないのではないか。
大学院の質の低下ということも言われますが、これもやはり定員の問題が関係しているのではないのかなという気が私はいたします。ですから、財政当局としては、定員未充足があるとよくないからというだけではなくて、もっと教育の質のところにもしっかりとグリップを、文科省からでもかけていただけるような、そして、国民にしっかり見える形にしていただけるようなことを促す形での取組を促していく形にできれば良いのではないかなと思います。
あと細かいところは、31ページのところでエフォートの把握の話が出てきて、これは、この世界では今まできちんとできていなかったところではないかなと思いますので、このようにはっきり出してくださるのは、すごく良かったのではないかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて福田委員なのですが、赤井委員も16時過ぎに退室ということなので、福田委員の次に赤井委員、御発言ください。
では福田委員、どうぞお願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。私からは、総論と文教に関して1点ずつ、手短にお話させていただきます。
まず総論ですが、事務局からのまとめは、おおむね私もそのとおりであると思いますが、日本経済の置かれている状況というのは、ほかの国に比べると、かなり複雑なのだろうと思います。あまり良い表現かどうかは分からないのですが、日本の経済の状況というのは、インフレとデフレが共存しているという表現も、ある意味ではできるかもしれません。
これは相反する言葉で、インフレというのは物価が上がることだし、デフレ物価が下がることなので、本来共存するはずはないのですが、一部ではインフレというのは非常に顕在化していて、エネルギー価格、あるいは食料品の価格というのは、かなり上がっています。それが、皆様がおっしゃったように金利上昇リスクや、財政の潜在的なリスクともなっているということです。
他方で、日本がほかの国と違うのは、デフレリスクというのも依然として残っていて、実際、エネルギー価格や食料品価格などを除いた場合には、携帯電話の特殊要因もありますが、それも加味したとしても、やはり物価の上がり方が鈍いということはあるということであると思います。それはコロナ前からの構造的な問題に加えて、コロナ下で更に構造的な問題が悪化したということはあったのであると思います。
経済全体として新陳代謝というのが、コロナ前からもなかったのですが、コロナ下でも全く進まなかった。失業率も低いままだったのは良かったし、倒産も過去最低の倒産になったということは、必ずしも悪いことだけではないのだが、結果的に新陳代謝が進まなくて、経済の潜在的な成長力というのが更に弱くなってしまって、それがデフレリスクにもつながっているということなのだろうと思います。
そうした意味では、財政というのは、金利上昇リスクによる財政リスクにも対応しながら、こうした日本経済をどう立て直していくかということは大事で、メリハリのある財政支出をやっていくというスタンスが大事であるということなのだろうと思います。
それから、文教に関しても、事務局の御説明は私もそのとおりであると思いますが、何人かの方がおっしゃったように、教育といってもいろいろなタイプの教育があって、全体の底上げをするボトムアップ的な教育と、世界のトップをいかに育てるかという、両方必要なのだろうと思います。IT人材に関しても、最低限のリテラシーを持つIT人材の育成ということも大事だし、GAFAを担うような人材を育成するということも大事で、両面が必要であるということだと思います。
それは大学の教育でも恐らくは同じで、平均的にレベルをアップするということも大事ですが、世界のトップと伍するような大学をどうつくっていくかということは大事ですし、日本の場合には概して平均主義というのがあって、先ほど韓国やアメリカとの比較もありましたが、平均で比較するということも大事ですが、いかにメリハリをつけて、例えばアメリカの私立大学などは、トップの大学は非常に資金が潤沢であるが、ランクが下のほうの大学というのは、むしろ財政的には厳しいという状況もございます。
そうしたメリハリをつけた支援の仕方もあり得ることなので、そうした意味では、基本的には事務局の考えは正しいとは思いますが、ボトムアップと、それから、世界のトップをどう育てるかという二つの大きな視点という形で、文教行政を考えていただくということは大事なのだろうと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、赤井委員、どうぞここで御発言ください。
〔赤井委員〕ありがとうございます。時間をいただいてすみません。
まず総論ですが、世界でいろいろなことが起きていて、いろいろな対策に迫られているわけですが、短期的な対応と中長期的な対応を区別して、少子化とかグリーンとかはどんどん進むわけですから、この流れを意識して、持続可能な社会構築とは何なのかというところをしっかりと、ぶれない政策が重要であると思います。それを促していくためにも、この財審の場で、ぶれない強い主張を継続することが大事であると思います。
教育に関して、簡単に3点ほどですが、一つ目は、初めのほうにある働き方改革です。今年度、教育勤務実態調査が行われるということで、その調査できちんと働き方改革につながるエビデンスを把握することが重要であると思います。教員は特殊で、給料が固定されている中でも長時間働いてしまうと。もちろん熱意はあるのですが、熱意があるために非効率な業務をそのまま温存してしまって、結果として教育の質が落ちるというところにも入り込んでいると思うので、この資料にあるような様々な視点で議論を続けるということが大事であると思います。
2番目、施設の効率的整備、12ページのところです。効率化策はもちろん積極的に推進すべきなのですが、参考資料の9ページに、施設を造るときに児童生徒数の推計が含まれずに計画しているという、普通あり得ないだろうということが書かれているので、そこのところをもう少し意識して、強くそうしたことも出せるという、意外に参考資料にあるこのページが、びっくりした内容でした。
3番目、国立大学のところ、14ページですが、資金配分が今年から新たに変わりまして、第4期中期目標に入りまして、新たな仕組みが始まったということで、これを分かりやすくまとめていただいたと思います。新たな仕組みはどんどん、この4月からも入っています。小学校でいうと、35人学級であったりとか、あとは担任制であったりとか、新たな仕組みは良いと思うのですが、その成果をしっかりと把握して、更に効率的・効果的な仕組みをどんどんつくっていただければと思います。
以上です。すみません。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちらの会場に戻って、合図のある方全員に御発言いただきます。
平野委員から、どうぞ御発言ください。
〔平野委員〕ありがとうございます。私も財政総論と教育について、それぞれコメントしたいと思います。
先ほどから皆様おっしゃっているとおりで、まず状況認識に関しては、大沢さんの分析にもあったとおり、潮目が変わってきていると思います。金融市場では、グレートローテーションという言葉も徐々に使われ始めていますが、要は、最近の国際的なインフレと金利の上昇は、コロナからの回復に伴う一時的な現象ではなく、グローバリゼーションの巻き戻しや、グリーンフレーションという構造的な要因に起因していると考えるべきであると思います。
もちろん、完全なデカップリングということはあり得ないわけですが、少なくとも、これまでの物価水準を世界的に低位に抑えてきた一つの大きな要因であるグローバル化の流れが、滞ることになります。この中には、先ほど武田さんから御指摘のあった経済安全保障も出てくるわけですが、滞ることは間違いないと考えます。それから、グリーンフレーションに関して、これがエネルギー価格の上昇を招くという構図は、恐らく10年単位で続くと覚悟する必要があると私は思います。
そうした中で、50年来の安値をつけたとして最近報道されている円の実質実効レートの問題も、過小評価すべきではないと私は思っています。その意味では、今の金融政策について、先ほどはアベノミクスのポリシーフレームワークが見直されるべきではないかという御議論もありましたが、少なくとも、今の金融政策の持続可能性が問われる局面が近づいているのではないかとも思います。先ほど申し上げたとおり、潮目は変わりつつあります。変化を読み取って、その先に備えることが、これは官だろうが民だろうが、マネジメントの要諦であるということを強く認識すべきであると思います。
そうした状況にあるわけですから、本来はコロナ禍における、この財審でも言ってきた例外からの脱却を急ぐべき局面であるにもかかわらず、現在、政府においては、物価高の対策等で補正予算の策定を求める声が上がるなど、夏の参議院選挙に向けて、更に財政規律が損なわれようとしているということは、誠に憂慮すべきことであると思います。
そうではなく、今やるべきことは、先ほど櫻田さんもおっしゃったとおり、骨太方針でポストコロナの日本の再興戦略を取り上げていく中で、限られた財政資源を、長期的な成長と社会の安定を図るために、いかに有効に配分するかという観点から、今後の財政運営に関するグランドデザインを示すことであると私は思います。
今申し上げたことを踏まえて、財政を具体的にどう運営するかということですが、まず、ワイズスペンディングの徹底を基軸に据える。EBPM(Evidence Based Policy Making)によって、政策の有効性を高める。これは当然ですが、それと併せて、先ほども申し上げた、限られた財源をどう振り分けるのか、ということについて、政策の優先順位づけを行って、財政の全体最適化を図る必要があると思います。
この過程では、政策のスクラップ・アンド・ビルドが必要になるのですが、この分科会が多くの時間を割いている個別施策の精査だけでは限界があると、私は最近強く感じています。そうした観点から、この財審の在り方も、マクロ的な財政運営をどうするのかという観点を加えていくべきであり、そうした機会を設けるべきであると思います。
それからもう一つは、予算の拡大を正当化するための非現実的な楽観的シナリオを改める必要があると考えています。財政の持続可能性を確かなものにするために、ダウンサイドリスクも押さえた信頼性の高い中長期の見通しを示すべきであると思います。
また、それに加えて、中長期の財政計画を策定して、財政ルールとしての一定の拘束力を持たせるということです。以前も申し上げたことがありますが、それも真剣に検討すべき時期に来ていると思います。
以上申し上げた、言わば財政運営の構造改革を、今年の参議院選挙後に国政選挙の予定がない向こう3年、黄金の3年間と呼ばれているようですが、そのうちにこの構造改革を完遂すべきであると私は思います。残された時間は少ないという切迫感、危機感を持って、未来に向けて希望の持てる日本を再構築して、それを我々の次の世代に引き継いでいくための取組を急ぐ必要があると思います。以上が総論で申し上げたいことです。
次は、教育と科学技術ですが、基本的な考え方としては、これも先ほどから御指摘があるとおり、人口の減少という非常に重い負担を負った我が国にとっては、結局、国民一人一人の人材育成及び科学技術に立脚した産業競争力を強化できるかどうかが国の将来を左右することになるわけですから、この教育と科学技術投資の二つがますます重要になっているということが大前提となります。
科学技術予算のレベルが十分か、ということについて長らく言われ続けているわけですが、今回示していただいている27ページは、これはこれで客観的なデータです。ただし、複眼的な分析が必要なのではないかと思い、私どもも調べてみましたところ、後でお示ししても良いのですが、例えば米国の軍事費予算には大きな額の科学技術関連支出が含まれています。
また、OECDの統計の一つに、政府部門による研究開発支出額の比較というものがあります。これは、Government-financed Gross domestic expenditure on Research and Developmentと呼ばれているもので、日本語では政府負担研究開発費というものです。これを見ると、日本の水準は対GDP比で見ても、ドイツの約半分、アメリカの3分の2程度にとどまっているということです。
それからもう一つ、主要国における研究開発費の産官学の負担割合という統計もOECDにあるのですが、日本は企業の負担率が極めて高いことが示されています。欧米に比べて政府負担率が高いわけではないということです。別に企業の負担率が高いことが悪いとは言っていませんが、国が十分な研究開発費を予算としてつぎ込んでいるということを言うには、まだ十分なエビデンスが不足していると感じています。様々な制約があると思いますが、Apple to Appleの比較ができるように、是非引き続きお願いしたいと思います。
次に、文教予算です。これも国によって異なります。アメリカの場合は、ハーバードやスタンフォードも私立大学であり、お金持ちによる多額の寄附によって成り立っています。また、ドイツ、フランスの場合は国立大学の役割が大きいということで、国によってかなり異なっているため、これらを比較するときには留意すべきであるということを前提として申し上げた上で、二つあります。
まず、今回、私学助成のメリハリの強化など、幾つも非常に的確な御指摘を頂きました。有利さん、ありがとうございます。目的を明確にして無駄を廃止するということは当然なのですが、私は一つ、違和感を感じるところがあります。今後、世界最速で少子化が進む中で、国民一人一人のレベルアップに我が国は活路を見いだすほかないわけです。生産性向上と言っても構わないと思います。
その中で、日本の教育投資の水準がOECDの平均に達していることを以ってして良しとすることは本当に正しいことなのでしょうか。この点こそ、将来に向けた財政あるいは投資をすべきであると考えます。人への投資は未来への投資であると岸田政権が言っておられる。私も大賛成なのですが、賃上げもさることながら、将来を担う人材を育成すること、つまり教育こそが、人への投資の中心をなすべきであると思います。
二つ目。今の脈絡なのですが、今後は学生に対する教育だけではなくて、社会人に対するリスキル・リカレント教育の体制の整備が極めて重要になってきます。それが前提となり、これも話題になっている人材の移動や流動化が可能になってくるというわけです。今後、失われた30年間から脱却して、産業構造の転換や、イノベーションを含む新産業の創出を図るためには、是非ともこれをやらなければいけないということであり、欧米では最近、それを強く意識した公的なリカレント・リスキルのプログラムの整備が始まりました。
これは、DXや、GXなど、これまでとは異なる分野に相当な勢いで人を動かさなければいけないということです。現在、産学の間で、大学の先生方とも議論していますが、政府においても本腰を入れた取組を是非お願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕ありがとうございます。
総論としては、昨年秋の建議で三つのリスクということを掲げたわけですが、その中で、金利上昇リスクが顕在化しつつあるということに加えて、ウクライナ侵攻によって安全保障のリスクも財政的に抱えることになったと。四つ目のリスクが顕著になったということであると思います。そうした意味では、ますます平時の財政余力を確保するということが、より一層重要になったということを指摘しておきたいと思います。
もちろん、防衛費をどうするかということも非常に重要な論点ではあるのですが、そのためにも平時の財政余力が必要で、太平洋戦争のときのように、日銀引受けによって財源を賄って戦費を調達するなどということをしても、勝ち目はないわけですから、財政余力というものがいかに大事かということが、ここでも思いを新たにすることができたのではないかと思います。
さらに、金利上昇リスクということに関して申しますと、我が国は確かにコロナ禍で増発した国債が、短い満期の国債が多く発行されたということもありますが、そもそもコロナの前からも、残高の約7割が10年以内に満期が来るという構造であって、そもそも低金利の恩恵、財政負担の軽減というものは長続きしないというほどに、政府債務が積み重なっている状況だったということは、国民の共通理解として浸透させる必要があって、今日の指摘もあった財政教育ということにおいても、低金利を長く享受できるという甘えで財政を緩ませてよいという話には、決して乗ってはいけないと。そもそも我が国は、そんなに低金利であったとしても、借換えによって金利上昇リスクにさらされることがあるのであるということを、しっかり踏まえる必要があるのではないかと思います。
それからもう一つは、ワイズスペンディングということです。何人かの委員の方もワイズスペンディングを指摘されました。あいにくこのワイズスペンディングという言葉が悪用されている節も我が国ではあって、ただ、財審の委員の方々がおっしゃるワイズスペンディングというのは、悪用されているワイズスペンディングとは意味が違っていて、より正確な意図が表れる表現にしてはどうかと。
私の語感で言えば、アウトカム・オリエンテッド・スペンディングであると。アウトカムを志向する財政支出であると。アウトカムが問われる。そもそも支出予算を計上するときには、本当にアウトカムがきちんと成果として現れているのかということが、当初から問われる、事前に問われる。そうした形で予算づけをする。それがしっかりと示せなければ、そんな予算要求は認められない。こうしたところをおっしゃいたいということなのではないかなと思います。
これは決してほかのいろいろな、これにまつわるものと矛盾しない。EBPMの推進も、このアウトカム・オリエンテッド・スペンディングという言葉と全く軌を一にしているわけですし、PDCAサイクルと先ほど櫻田委員も御指摘されましたが、民間で言っているところのKPIというものと、政府部門におけるKPIというものに、随分食い違いがある。そういうことを改めるという意味においても、アウトカム志向の財政支出、アウトカム、成果を問うのだということが、しっかりと前もって企画されないといけないと思います。
そうした意味では、今日指摘のあった基金についても、基金シートを有効に活用して、PDCAサイクルを回して、基金の必要性をきちんと確認しながら、もし必要性がないものであれば、国庫返納を求めていくということが必要であると思います。
次に、文教に関してですが、私は、デジタル化と教育という観点から、2点ほど指摘をしたいと思います。
まずその一つは、主計官は御指摘されませんでしたが、参考資料2の8というところで、まさにデジタル化の取組状況ということで、学校における働き方改革について示されております。これはまさに御指摘のとおりであると思います。
その中で、非常に重要な指摘がここにあるのは、業務の効率化を更に進める必要があるというところです。あいにく、これと同じ参考資料2の8ページに、事は違いますが、教科書関連予算で公開プロセスにおいて、要は、紙の教科書とデジタルの教科書が併用されて、それだけ重複して予算が必要になってしまうという、それが過渡期ではやむを得ないのだが、いつまでもダブルで重複して予算をつけていれば、幾ら予算があっても足りないということが、公開プロセスの中で指摘されたのですが、その取りまとめということで、実はここには合理化という言葉が書かれておりません。
実際、これは公開プロセスですから、議事録にも残っているわけですが、合理化を求める評価者の意見があったのだが、最終的には文部科学省から、合理化なんてデジタルと一緒にやられては、人員削減のような話が浮かんできて困るというような押し返しがあったということは事実です。ですから、そのようなことを変に疑心暗鬼になるのではなくて、しっかりと働き方改革とセットにして、業務の合理化をデジタル化によって進めていただきたいと思います。
最後に簡単にもう一つは、資料2の16ページにオンライン授業の上限単位という話があります。これはまさに、今ちょうど大学では新学期が始まって、対面授業が復活するという中で、オンラインで単位が取れるというものには上限があるという話が結構各大学でも重要なイシューになりました。
実は、私が所属している慶應義塾大学では、通信教育課程があるものですから、通信教育課程でオンラインというか、通信教育という形で行う単位数を60単位よりも多くしてよいという、実はこの規定というのは、何もオンライン授業云々というよりは、通信教育課程と通学課程を区別するために、かつて古く設けられた基準が援用されていると。いつ設けられたかまでは調べておりませんが、古い基準をいまだにこのデジタル化の時代に適用しているというのは、全く学生のためにもならないわけですから、改めていただく、デジタル化がより進むような形で学校教育が展開されるということを期待したいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
大きなフレームの話、変化の話は、多くの委員がおっしゃっていただきました。私は、まず目先、例外からの脱却のために補正予算は問題であるということは、今までの委員や、あるいは最近のIMFの報告でも指摘があったと思います。
補正予算の問題は、単に財源が大きくなって分からなくなるということだけではなくて、そもそも検証がしにくいという点もあると思います。会計検査院がコロナの予算の執行状況とか効果を見ようとしたところ、もちろん個別に検証できたものもあるのですが、そもそも補正予算をつけた後に、当初予算にくっつけてしまうので、もともとの予算と補正でくっつけたものを分けて、補正のところの効果を見る、あるいは補正全体の一体的な効果を見るということが、基本的にはできないと聞いています。
もちろん、実際には各省庁が自発的に区分管理をされていたり、内閣府に登録をされたりして、執行状況が見られたものもあったということは聞いておりますが、やはり補正予算においても事業別、政策別に、まずしっかりと後から検証できるという形にしなければいけないと思います。その位置づけの問題とともに、しっかりとデータを取って、後から検証できるようにする必要があると思います。
基金に関しては、これも本当にKPIが大事なのですが、今は執行率だけで、良い悪いを言っているように見えます。でも、基金はまさに執行すればよいというものではなくて、その事業のガバナンスや、取組姿勢や、途中におけるスタンス、効果など、全て厳格にチェックしながら進めるべきであると思います。この評価基準づくりが基金によって相当ばらばらであると思いますので、全体に対して必要であると思います。
それから、少しフレームを大きくしまして、人材ですが、本当にこの国の少ない人材をどう配分するかというのは、国家戦略であると思います。職業の選択はもちろんですが、時代の変化で、この辺にこのぐらいの人が必要であるということは、もっと国がフレームとして考えてよいのではないかと思います。そうでないと、それぞれの業種が人を引っ張りたくてアピールをし合って、そして少ない若者が、条件が良いところの業種に行ってしまうということは、現実に医師などで起きているわけです。
ですが、幾ら必要であるとはいっても、現役世代が高齢者の介護と医療と子供の教育に全力を果たしていたら、この国の成長のところに行く人材は誰が行くのかという、大変心配な気持ちになります。だから、がっちりと決めるということではないのですが、大まかな戦略をつくった上で、ここに対してリカレント教育に補助をどのぐらい出す、あるいは資格制度はこのように考える、大学の学部の在り方も変更するというようなことを考えていかないと、人口の急減の中で、日本の国はもたないのではないかと思います。
また、文部科学予算ですが、これはやはり人材の配分があるので、教員が必要だから教員を下さいということは、もうなしかなと私は思っております。むしろ、教員の負担を減らすための様々なやり方というのは既に示されていて、県とか場所によってやっていないだけなので、変形労働制とかデジタル化とか、みんなとにかく競争というか、横を見ながら状況を比較して、強力に進めるステージであると思います。
また、低所得の人にしっかりチャンスを与える方策というのは必要であると思うのですが、これは仕組み方によっては、大学の卒業証書が欲しいだけの学生が、勉強もせず、能力も上がらず、結果的には将来、例えば返済もしない、国に対してお返しもできないということになることも考えられると思います。ですので、大学教育に関しては、十分に成果を示さない、あるいは改革ができない大学の再編や淘汰というのは、私はやむを得ないと考えておりまして、お金を入れることで救済になっては、まずいけないと思います。
さらに、とにかく大学に入ろうというのは、平均的な大卒の人のほうが収入が高いということによっているわけですが、大事なのは、平均的な人がそうなるのではなくて、その人にどれだけ能力に対してアドオンできたかというところが大事であると思うので、むしろ企業の側も、大学の卒というカードとかで選別するのではなくて、高等専門学校とか、あるいは専門学校でも、しっかり実力がつくことを学んだことに対して、しっかり評価をするように考えていただきたい。
あるいは大学の側も、教育の質ということをきちんと、大学のみならず高専なども、示せるようにしていただきたいと。まさに高等教育の質の評価というのをしっかりつくっていくことが必要であると思います。この実力というのは、もちろん就職のための力だけではなく、全体を出していく、まさに人生や国を乗り切っていくための力という意味での質の評価をつくる必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございました。私からは、皆様もおっしゃったようなことではあるのですが、政治的に今、財政規律が緩みそうになっているので、そうした意味では、この財審では頑張ってもう一回締まってやっていきましょうということを確認できればと思います。
春の財審に当たり、中長期的なことをやりましょう、そうした視野でいきましょうということは、何人もの委員の方がおっしゃっていただきました。それはおっしゃる通りです。しかし一方で、いつもどおりのことではありますが、補正に頼らないとか、基金や多年度予算を隠れみのにしないということは、やはり再度確認していく必要があることかなと思います。
また、世界の置かれている環境面では大きな変化がありました。例えば日本についても考える必要があります。何人かの方から防衛費を増やすべきかどうか、見直すべきかどうかというお話をしていただきました。その中で、エネルギー政策、具体的には原子力を動かすべきなのかどうかなど、直面している比較的短期の話というのを、どうこの場で取り入れていくのか、も考える必要があります。日本としてはこうした解決の方法があるのではないかとか、そうした指針とか、私たちの考え方とか、そういうものは示せたらよいのではないかと思います。これが一つ目です。
二つ目としては、今回の財審に臨む態度として、現状維持を是とするようなことをやめていきましょうということを提案したいと思います。大沢さんに示していただいた資料の中で、アメリカのダイナミズムを示す一端というか、1億ドルの富裕層の所得に課税するだけで3,608億ドル出ます、という事実は、私はある意味衝撃的だと思っていて、つまり、これはアメリカの強さの一つであると思うわけです。アメリカのダイナミズムというか、マネーフローの起こし方、それから付加価値のつけ方というのは、学ぶべきところだろうと思います。
そうした意味で、彼らはルールを変更するのがとてもうまいと思うわけですが、その中で、現状維持を是とするような政策は慎み、否定していく見方も重要だと思います。宮島さんがおっしゃいましたが、例えば駄目な大学は潰れてもらうというか、撤退してもらうということを考えていかなければいけないということだと思います。そこまですぐできるかというと、難しいのですが、定員割れして充足率もないのをどうやって延命しようかということを、私たちが考えていくような局面ではもうないのかなと思っております。質とか、メリハリとか、競争力ということを、いかに押し出していくか、そのフレーバーを存分に入れていくことが大事かと思っています。
最後にもう1点だけ。土居先生のお話の中に、ワイズスペンディングというのが悪用されているのではないかという話がありました。全く同感で、私は、スタートアップにとても懸念をしています。スタートアップ自体はとても重要で、これからお金を流していくべき場所であるととても思うのですが、何となく「スタートアップは良いことだから、お金を流しておけ」的なことになりやしないかという懸念を既に持っています。
アメリカではSPACはだんだん終えんに近づいているのに、日本はこれからSPACを用いて資金を流すとか言っています。また、アメリカはこの分野で資金を大きく増やし活用している一方、既にベンチャーの中から詐欺師もいっぱい出てきているわけです。ということを考えると、本当に内容を精査しなければいけない、目利きが必要であるということを勘案して、我々の政策とか意見の中に入れ込んでいかなければいけない、と強く思っているということを、最後に付け加えたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕田近です。財政総論については、今までの皆様のお話を伺いながら、私も潮目は変わったと。それから、残された時間は少なくなったと。だから財政は、平時においてはプライマリーバランスの黒字を実現すべきであると。これは、私もそのとおりであると思う。それをどう分かりやすく発信していくかであると思いました。
一つ付け加えたいのは、前回の財審でも言ったのですが、コロナに対して日本の財政はどう対応したかと。それを明らかにするのは財審の大切な仕事だし、責務ではないのかと。できれば、コロナに日本の財政はどう対応したかということについてのフレームワークを春に議論して、秋に向けて中身を充実していくべきであると思います。
その中身は、実は財政総論に深く関わるわけですが、もちろん、コロナに日本の財政はどう対応したか、中身が重要ですよね。医療関係のコロナの対応もあれば、給付金、資金繰り支援、地方創生とある。また、その中で、補正予算でやっているわけですよね。補正予算というのはコロナだけではなくて、いろいろなことがある。だから、こうした危機時における補正予算の在り方とか、いずれにしても中身と。
次が、今日、むしろ言いたいのですが、第2のコロナ対応を明らかにする柱と思うのは、財政健全化にどういう影響を与えたのかと。政府はそれに関して、意見を表明しているわけですよね。今日、大沢さんが説明された令和4年1月14日の岸田総理の発言で、新型コロナ対応のために、政府は必要な財政出動はちゅうちょなく機動的に行い、経済を立て直しますと。その結果、今回の中長期試算では、こうした取組によって力強い成長が実現し、基礎的財政収支は2025年度に黒字化する姿が示されたと。
そうなのかと。これこそ検証すべきことの一つで、例えば私の懸念は、資金繰り支援を積極的に思い切ってやってきた結果、現状の新陳代謝というのは、経済の新陳代謝が必ずしも進んでこなかったと。したがって、コロナ対策によって経済が回復していく中で、本当にPB黒字が実現するのかと。これが検証すべき第2であると。
3番目は、今までいろいろな災害が起きているわけですよね。そうしたことも踏まえて、危機が起きたとき、渦中、それから、それが収束していく過程で、財政がどのような役割を果たすのかというのを明確にしてほしいということで、私は財審として、コロナに対して日本の財政がどう立ち向かったかと。それは戦略的というか、単に振り返るということではなくて、財政健全化の道筋に対しての分析でもあるということで、ぜひそれをやっていただきたいと思います。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。時間も限られているでしょうから、まずは文教・科学技術から、具体的に3点ほどですが、6ページの働き方改革です。これは前からも指摘されているとおりなのですが、教員が多忙なのは、もともと業務を丸抱えしているからであって、教員の仕事は教えることであって、ほかのことではないはずなのです。なので、チーム学校という議論も以前あったと思うのですが、やはり部活とか、あとは親からのクレームも含めて外部委託をするということがあってしかるべきかと思います。
行政というのは不思議で、丸抱えするか、丸投げするか、どちらかしかないのです。本当は委託という発想があるのだよということを、いい加減理解したほうが良いと思います。
それから、12ページの学校施設の複合化です。これも以前から申し上げているのですが、私も実際に仕事をしているので、難しいのです。なぜかというと、施設が教育委員会のものであり、学校長が管理責任者なものですから、やらせてくれないのです。なので、管理責任の在り方自体を問うということはあって良いと思います。つまり、具体的には管理責任を教育委員会から外す、学校長から外すということがあってよいのではないかと思います。
あともう一つ、今日、面白いなと思ったのは、23ページの所得連動型奨学金なのですが、少し視点を変えると、オーストラリアやイギリスではどうやってお金を返してもらっているかというと、源泉徴収を使っているということです。つまり、これが税と給付の一体化なのです。
今回のコロナでも分かったとおり、我々は給付と税が一体化していないばかりに、いろいろな給付が滞ったとか、遅滞したとか、いい加減なことになったということはあるので、これは政府税制調査会に言ったほうが良いのか、ここで言ったほうが良いのか、よく分からないのですが、税と給付の一体化ということは、せっかくデジタル化も進んでいるわけですから、今後考えるべきことかなと思いました。
また、総論については、簡単に2点ほどですが、一つは単年度主義ですが、単年度主義の弊害是正というのは格好よく見えるのですが、原則と実態は違うと思うのです。原則はもちろん予算の機動的な使用であるとか、単年度の予算消化という非効率をなくすということであると思うのですが、実際は何人かの委員からも指摘があったとおり、バラマキの道具になりかねないということですので、やはり基金のガバナンス、それから、もちろん補正予算の効果測定ということは徹底的にするべきかなと思いました。
また、今日御指摘のあった財政に関する教育です。もちろん、お子さんに対する教育も大事なのですが、大人もいい加減に勉強したほうが良いなと思っていて、そのときに、実は地方自治体がすごく大事な役割を果たすと思うのです。どうしても財政の話が自分事にならないのは、財政というのはお金の話ではないですか。でも、自治体、住民が感じているのは、物のサービスなのです。物と金が実はつながっていないのです。金がなくなれば物が滞るという単純な論理が分かっていないのです。
なので、仮に国が財政的に行き詰まれば、当然交付税はいい加減に切るわけだし、補助金もなくなるわけで、そうなると自治体の多くは、彼ら自身が行き詰まるわけで、となれば、皆様が当たり前に受けていたごみの処理、道路の穴、それから上下水道の整備も、誰もやってくれなくなるということですので、こうしたところからもう少し、財政の見える化というか、お金から物までの見える化を図って、もう少し住民に財政のことも自分事にしてもらってよいのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。私から総論と、あと科学技術について、一言話させていただきます。
総論は、私の隣にいらっしゃる平野委員が先ほどおっしゃったことに基本的にはほとんど同じで、セカンドさせていただきますが、とりわけ潮目が変わったということを言われたのですが、私も本当にそうしたことではないかなと思います。
関連してなのですが、財政の健全化に向けてはこれから議論するわけですが、我々財審のほとんどの委員の方は、基本的な必要性等はシェアしているのではないかと思うのですが、一つ指摘したいのは、それと併せてなのですが、現政権が新しい資本主義と言っているわけなので、私は財政の在り方というのは健全化と併せて、この際、新しい資本主義の在り方と一緒に議論する必要があるのではないかなと。
具体的には幾つか、最近コンサーンといいますか、感じていることがあります。マクロ的な、あるいは展示的な財政政策というのは、基本的にまさにマクロであって、自由主義経済を守るという前提なのです。それをもう少し具体的に言えば、価格システムにはできるだけディストーションを与えないようにと。これが自由主義経済の基本であると思うのですが、それが最近の日本を見ていると、所得の再分配というのは必要だろうと。例えばコロナのときに、本当に困っている人にはそれなりに支援する必要があると。
これは我々の財審でもそうした考えを持っているだろうと思うのですが、繰り返しになりますが、価格ベクトルにできるだけディストーションを与えないというのは前提だろうと思いますが、Go To、あるいは最近で言えば、日本は御承知のとおり、ガソリン価格をかなり抑えているわけですよね。これも、いろいろな視点はあるかもしれませんが、グリーンという目標からすると、それが本当に良いのかどうか、議論の余地があると思います。
価格が上がるので、我々は石油関連の消費を減らすというのが価格機構のABCですが、これ以上言いませんが、価格システムが市場経済にかなりのディストーションを与える形で財政が膨らんでいるということは、もう一度原点に戻って、考え方を整理する必要があるのではないかと思います。新しい資本主義と言うからには、それとの絡みで、財政健全化と併せて議論するのが良いのではないかなと。これが1点目です。総論です。
それから、科学技術のほうは、これも平野委員から、政府のR&Dは必ずしも十分でないかもしれないと問題提起があったかと思うのですが、なるほどそうした問題提起は、十分考えるに値すると私も思います。
ただ、指摘したいことは、国に大きな役割があると私は思っているのですが、特にビッグなR&Dについて、お金を出すだけでは駄目であるという点が重要で、これは我々の記憶に新しい経験を踏まえるのが良いかなと思いますが、数年前の安倍内閣のときにワクチン開発で、補正予算で数千億のお金がついたと思うのです。はっきり言って、この2年で、日本は独自にワクチンを開発することに失敗したと言ってよいのではないでしょうか。
これは、私は専門家ではありませんが、いわゆるメッセンジャーRNA関連の医療関係の研究というのは、日本でも一つの国関係ですかね、研究所がやっていたのだが、数年前に予算カットということで、その研究がストップされたということを、どこかで私は読んだわけですが、それが正しいとすれば、恐らく、似たようなことがあったのだろうと思いますが、国がコーディネーターとして、感染症の問題や何かを考えて、大きな視点から役割を果たしてこなかったということであると思うのです。
ですから、繰り返しになりますが、R&Dに関して国の役割は、大いにあると思います。アメリカの場合でも、国立の医療関係の研究所が極めて大きな役割を担っているというのは御存じのとおりですが、ただ、繰り返しですが、金を出すだけでは駄目で、国がしっかりとしたR&Dのコーディネーターになっていなければいけないと。これは、実質ゼロエミッションのような、いわゆるグリーンの、まさに世紀の大プロジェクトでも同じことであると思います。
私は、何となく今の日本は、金を出す、特に今のような状況で、金を増やそうということだけに傾注している感じがあるので、新しい資本主義の在り方と併せて、大いに財審でも議論できたらよいのではないかなと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ウェブのほうで退室をされるようなので、上村委員、ここで御発言ください。
〔上村委員〕関西学院の上村です。御報告ありがとうございました。私からは総論で3点、財政教育について1点です。
16ページの効果の高い歳出への重点化のところで、令和3年度予算編成の基本方針に、デジタル化を踏まえたEBPMの仕組みと予算の重点化というところがありますが、これは非常に重要な表現であると思いました。デジタル化とEBPMを同時に進めるということなのですが、例えばアウトカムのデータの取得の自動化とか、人間の手間を省くことを前提にした改革が必要かと思っています。現場ではデータ取得がなかなかネックになっていることがあるので、EBPM、デジタル化について、国が取組を始めることで、自治体も取り組みやすくなりますので、頑張っていただきたいと思います。
17ページに、若年世帯を中心とする不安に応えるためにという資料がありますが、こちらは将来の不確実性を下げて、社会保障に対する不安を払拭していくということが書かれており、これも非常に重要なところですが、具体的に何をするのかというところが重要かなと思います。例えば年金であると、2年連続で特例措置になって、マクロ経済スライドはストップしているわけですが、その特例措置そのものについて、どうするのかという検討が必要であると思います。
この間、5,000円給付といったアイデアが出てきて消滅したのですが、公的年金受給者が必ずしも生活困窮者でないということであると思いますが、一方で物価上昇もあり、生活困窮者に対する何らかの支援は必要になってくるかもしれません。誰が生活困窮者で、どのように効率的に支援ができるのかということを考えるべきなのですが、対象者が誰なのか、その人たちに効率的に支援ができるのかというところの問題は、これまで何度も繰り返しているように思います。財政としては、バラマキ的に給付を何度もすることができないので、ICTをうまく使いながら効率的に支援ができるような体制を、いかに早く構築できるかというところかなと思います。
3点目ですが、基金なのですが、基金のガバナンス強化、PDCAサイクルは私も大賛成なのですが、同時に今年度予算でも、5兆円の規模になっている予備費についても同じような方向で検討する必要はあるかなと思いました。
4点目、財政教育です。神子田委員だったと思いますが、模擬国会、模擬予算委員会でしょうか、そうした話をされましたが、熊本県庁の有志が作成された「SIM熊本」とかいう、自治体経営をゲームによってシミュレーションできる参加型ワークショップの取組があるのですが、地方公務員の研修を行っているということで、非常に参考になると思います。私も授業で取り入れたことがあります。
今後の財政教育においても、ワークショップができやすいような教材を作るとか、そうしたことで、学生・生徒にとって取っかかりやすいような工夫ができるかなと思いました。この点、いろいろな工夫があってよいと思うのですが、何とかドリルも良いのですが、大切なのは、どういったことを学んでいただくのか、その内容が重要なのかなと思いました。正しい情報提供ができるのか、その点の配慮もまた重要になると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それで、ウェブのほうで発言を希望される方が、実はあと8名おられて、時間がこうした時間なので、これから順番を申し上げますが、できるだけ手短に簡潔に、すみません、お願いしたいのですが、順番は、竹中委員、小林委員、冨田委員、角委員、芳野委員、遠藤委員、大槻委員、それから宇南山委員と、こうした順番で指名していきます。
竹中委員、どうぞお願いします。
〔竹中委員〕ありがとうございます。時間もないのであれですが、今の世界の状況が、胸が痛いなと思っています。それと同時に、あのように国が破壊されたりしてしまう中で、子供たちが教育をきちんと受けられない状況というのが、未来に大きな禍根だろうなとも思っています。そうした意味で、文教について少し発言させてください。
先生方が間違いなく過重労働になっていると思うのです。スポーツ庁なども、部活をアウトソーシングしたりするということも真剣に取り組み始めたと聞いておりますが、一人一人の子供たちに丁寧な教育をしようと思うと、先生がきちんと自分が教えるべきことを教えなければならない、伝えなければならないことを学ぶ時間が取れることも、物すごく重要であると思うのです。
そうした意味では、新しい公共という科目も入りますし、先生方が、失礼ながらAIであるとかICTの情報に関しては、かなり一般より遅れていらっしゃるというのも、私たち情報通信をチャレンジドの方々に伝えて就労につなげる活動をやってきた者からすると、そうしたところも実感しているところです。
ですので、教員が増えた生徒の人数に、相対的に増えていっていることは間違いないのですが、その人数がおおむね今は特別支援教育のほうにかなり力が注がれています。特別支援教育は、私も自分の立場上、大変重要なものであると思っていますし、そこに力が注がれていくのはとてもうれしいのですが、それは特別支援教育が必要でない子供たちの教育がおろそかになってもよいということでは決してありませんので、どちらの教育もしっかりと進めていけるような教員数の配置であるということが重要かなと思います。
それと同時に、先生、教員というお仕事が、子供たちにとって憧れとか、聖職という言葉も今はほとんど使われなくはなりましたが、やはり子供たちにとって尊敬される、敬われるようなお仕事であり続けてほしいなと願う一人の国民として、先生方の待遇の問題、それから働き方改革の問題を、みんなで一緒に真剣に考えていきたいと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて小林慶一郎委員、お願いします。
〔小林(慶)委員〕小林です。3点ほど短く言います。
二つが財政総論。財政総論の22ページ、金利が成長率よりも低い状態ということが書かれているのですが、今は確かにウクライナとかでインフラ懸念が出ていますが、先ほどデフレも共存しているということで、なかなかインフレが賃金の値上げにつながっていかないと。そうすると、国内でなかなかインフレが起きない。そうすると、こうしたデフレ的状況が続くかもしれないということは、一定程度あると思います。
ただ、私はここで、規範的な意味で、金利が成長率よりも低い状況を我々は目指すべきではないのではないかということを言いたいと思います。確かに金利が成長率よりも低い状態が、ひょっとしたらまだ続くことは可能かもしれないが、それが続くということは結局、民間経済に非常にリスクが高くて、みんな国債に逃げ込んでいるという経済状況を表しているわけです。
ですから、民間のリスクを高めて、そして安全資産の金利を低くするということが望ましい経済の姿なのかということを考えると、もっとリスクが低くて、しかも民間の経済が力強く成長しているという状態のほうが望ましいと思いますので、金利が成長率よりも低い状態を続けられたとしても、それは目指すべきではないということが、我々から発信すべきメッセージではないかと思います。これが1点目です。
二つ目は財政教育について、30ページに公共という科目の話が載っていますが、子供たちに何を教えるかというと、私は将来世代の視点で、現在の予算や政策のアウトカムを評価するという姿勢を教えるべきではないかと思います。ワイズスペンディングとか、アウトカムオリエンテッドな支出といっても、それをどう評価するかというと、アウトカムを10年後、20年後、30年後の視点から見て、何が残るのかという長い将来の視点から、非常に長期的な将来の世代の視点から、現在の政策を評価すべきであると思います。
これは四、五年前に、この財審で私が紹介したフューチャーデザインというものの考え方ですが、それは省略しますが、要するに、遠い将来の世代の視点で現在の政策を評価し直すと、何が本当に必要な政策なのかという判断が変わってきます。そしてまた、持続性を高める政策をやるべきであるというコンセンサスが得やすいということですので、そうした物の見方というものを子供たちに教えるべきではないかと。そうした意味で、公共という科目でワークショップのような形で、将来世代の視点、50年先の将来世代の視点で、現在の財政政策を評価し直してみるということをやってもらえばいいのではないかと思います。
3点目、これは文教のほうですが、先ほど佐藤先生もおっしゃったオーストラリアのHECSのような奨学金、これは私自身は非常に有用な政策であると思っていて、個人に対する国によるエクイティー投資のようなものを、要するに、出世払いという表現を読売新聞でしていたと思いますが、個人が将来どういう所得になるか分からないという個人のリスクを、国が取る。そうした奨学金の制度になっています。
ですから、個人のリスクを軽減して、かつ出世した人からたくさん回収して、出世しなかった人からは回収しないというやり方で、財政中立的な制度設計もできると。しかも、先ほど佐藤先生がおっしゃったように源泉徴収で、所得税の上乗せとして奨学金を回収するということですから、税務署がやる、あるいは財務省がやるということで、非常に効率的な政策が設計できるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。では、手短に申し上げます。
物価の動向に関連して、政策の整合性を疑うような個別政策が見受けられます。第1は、先ほど吉川委員も御指摘あった点ですが、脱炭素を促進しようというのに、そうした中で、補助金によるガソリン価格の激変緩和措置が実施されています。第2は、全世代型社会保障を目指そうという中で、これは議論だけのことのようですが、年金給付に財政支出で補填をしてはどうかという議論です。
こうした政策の整合性の問題で想起すべきは、末澤委員が御指摘になった2度の石油ショックに関連する問題です。第1次石油ショック時の昭和49年度予算についてですが、第4次中東戦争で原油価格が大幅に上昇する中で、総需要抑制という昔懐かしい言葉、そして同時に、福祉の増進という互いに矛盾する方向が、予算編成の基本方針の二枚看板として採用されました。このときのもので、先ほど御説明いただいた今の図が出ております3ページの、著しい物価上昇に見舞われました。
これに対しまして、イラン革命を契機といたします第2次石油ショックのときの昭和55年度予算は、財政再建の第一歩を踏み出すという基本方針の下に編成されました。第2次石油ショックの規模は、例えば所得の海外移転額で見ますと、第1次ショックよりもかなり規模が大きかったわけです。物価と景気への影響は、それとは逆に、第1次石油ショックよりもかなり小さかったわけです。これは、第1次ショックの反省を踏まえまして、輸入インフレをホームメードインフレに転化させなかったことによるものです。
こうした観点も生かして、石油価格高騰、潮目が変わったという表現がございましたが、国内物価への影響、そして炭素社会への対応といったことは、先憂後楽の心構えで、赤井先生が言われた言葉で言うと、ぶれずに、中長期的な視点を優先して進めるべきであるということでございます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、続いて角委員、お願いいたします。
〔角委員〕よろしくお願いいたします。
この場の議論にそぐうかどうか分からないのですが、私は、今ほど増税をする議論をしていただくのに適した時期はないのではないかと。今日のウクライナの問題を考えたときに、昨年のG7で自由主義諸国が結束を示せたということは非常に良かったと思います。
ただ、そのG7で成功した背景には、日米が2015年のパリ協定に復帰をして、2050年にはカーボンニュートラルを達成するという、EUが最も重要視している気候変動リスクに対して歩調を合わせることができたということであると思います。ただし、これを達成するには、かなりの財政出動が必要になるということは当然のことです。
また、台湾海峡リスクが明記されましたが、これも皆様がおっしゃったように、防衛費については一定の増加をせざるを得ないのではないかと。それに加えまして、いよいよ2025年問題、我々団塊の世代が全て75歳以上になって、介護の人がどんどん増えていく。
そして3点目が、今回のコロナに対する財政出動に、それをどのように償還するのかと。EUのように、財政出動するときに、35年で償還しますとかいうことを決めるのが本来ではありますが、それは無理にしても、前回の東日本大震災のときは、3月に震災が起きて、もちろんこれは今回のコロナのように、ずっと続くことではないという違いはあるが、8か月で復興財源確保法というのが決まりました。ただ、これも、財政出動38兆のうちの、政府が持っている株式の売却も合わせて4割程度の償還といいますか、それで38兆に対して4割ですから、その程度のことしかできていない。それを、今回のような大規模な財政出動に対して、今の税制の中で少し手直しするということでは、償還できるはずがないというのが3点目。
そして、いろいろありますが、総理がおっしゃっている成長のためには、お金を投資しなければ成長しません。例えばフランスが少子化を克服したのは、小学校入学前の保育の段階で、それを学校にして、全員2年間無償で教育をしたこと。これがフランスの少子化に対して最も効果があったわけです。要するに、投資をしなければ果実はないというところがあります。
では、どうやって税収を増やしますかということなのですが、今の消費税は社会保障と幼児教育に使われていますが、これにグリーンを当然加えるべき。要するに、国民が何かを消費すれば、必ずCO2が出るわけですから、消費税の使途にグリーンを加えるということで、私案ですが、2年に1%ずつ上げていけば、10年たてば15%になりますから、そうなれば、今日的ないろいろな課題が解決できるのではないかなと。その議論も、是非ともこの状況下において、今ほど適した時期はないと思いますので、少し財審の議論とは外れるかも分かりませんが、主張させていただきます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕大体予定していた時間は17時までということですが、恐縮です、少し延長させていただきまして、あと4名の方がいらっしゃいますので、すみません、できるだけ手短にお願いします。
芳野委員、どうぞお願いします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。連合の芳野でございます。財政総論について、まず3点に絞り込んで申し述べたいと思います。
7ページになりますが、まずは物価高騰への対応についてです。現下のガソリンや食料品を中心とした価格上昇は、コロナ禍で疲弊した家計や中小企業経営を圧迫していると考えています。国民の暮らしと雇用を守るため、トリガー条項の発動に加え、真に支援が必要な層に的を絞った対策を速やかに講じるべきであると考えています。また、それらの対策は、コロナ禍で講じた諸施策の効果検証を踏まえて行うべきであると思います。
2点目は、13ページになりますが、人材の流動性についてです。産業構造の転換に伴う労働移動は、重層的な雇用対策や社会的セーフティーネットの整備など、総合的な支援があって実現できるものであると思います。対策や支援策が不十分な状態で促せば、雇用不安を引き起こすものと考えます。また、労働移動の大前提は、あくまで労働者本人の意思に基づくことが重要であると考えています。労働者が選択したいと思えるような産業や業種において、適切な労働条件で就労できることですとか、事前の教育訓練などの環境が整備されていることが必要ではないかと考えます。
続いて3点目ですが、17ページ、社会保障と税財政一体改革についてです。若年世帯の社会保障制度に対する信頼感が低下し、貯蓄性向が上昇しているということですが、社会保障制度は国民生活の安心と社会安定の基盤であり、全世代支援型社会保障制度への改革に向けて、安定的な財源の確保を進めるべきであると考えています。その際には、税財政一体の改革によって、財政健全化への道筋を示す必要があり、特に財政運営の評価・監視を行う独立財政機関の設置を検討するべきと考えます。
続いて、文教・科学技術について触れたいと思います。まず、令和4年度予算において、教員の加配定数が1,030人増員されることは評価したいと思います。しかしながら、義務教育の国庫負担の対前年比は教職員定数の自然減などで、およそ150億円減少している状況にあります。
小中学校が全国におよそ3万校ある中で、教育不足の実態は深刻であると思っています。
教職を選んでもらうためには、教職員の専門性ややりがいに応じた処遇の改善、長時間労働の是正など働き方改革を早急に行い、魅力を高めていく必要があると考えています。特に休日数については、夏季など長期休業期間の勤務は学期よりも勤務時間が削減されており、休日のまとめ取りなど、変形労働時間制を活用してはどうかとしていますが、現場からは、夏季休業期間は教育委員会の研修等に大幅な時間を要し、所定時間に収まっていないという声も聞いています。時間外労働時間は改善傾向とのことですが、変形労働時間を活用するのであれば、時間外労働を含めた年間を通じた全体の負担軽減が前提となるのではないかと思います。
次に、大学設置基準の見直しについて申し上げたいと思います。デジタル系人材や教員不足への対応として、標準設置経費の見直しや、兼任教員を広く認めるべきとの指摘がありますが、大学設置基準は質を保障するための最低条件であると思います。特に、兼務の取扱いやその際の条件について、「とりわけ若手教員の処遇等が不安定になることがないように」という制度設計上の留意点も併せて記載してはどうかと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕昨年の財審でも申し上げたのですが、今後の財政の中長期的な大きなテーマは、ソーシャルセキュリティーとナショナルセキュリティーのリバランスであると考えておりますので、この点については改めて強調しておきたいと思います。
残念ながら、プーチンの蛮行で世の中が一変してしまいまして、日本が直面する課題というのは構造的ではあるのですが、解決までの猶予期間というのが圧倒的に圧縮されました。これは各委員のおっしゃっておられる意見と同様でございます。
こうした緊急事態の中で求められるリバランスのことなのですが、財政の対応としては、当然増強が求められる国防費について、例えばGDPの何%であるというような大ざっぱな議論ではなくて、日米同盟を強化するという目標を明確にした増強というものを、平時のときから備えておかなくてはならない状況になると思います。今年は防衛大綱・中期防の見直しの時期ですので、財政当局もNSSなどを通じて、しっかり関わっていただきたいと思います。
私の分野から申し上げますと、エネルギー安全保障の問題は触れざるを得ません。無資源国で、また自由化の下で、電力の需給が逼迫するような危うい電力システムの中にある日本ですので、国民負担を補助金に頼らず減らす方法、ガソリンの今回のトリガーの話なども出てきていますが、補助金をばらまくということで手当てするのではなく、安価なエネルギーを使っていく、自立的な電源である原子力を使っていくということは、それこそ財政的にも寄与するのであると思っています。
先ほど平野委員もおっしゃいましたが、資源価格の高騰はしばらく続きます。高止まりします。それはもちろんインフレ要因ですので、金利上昇は財政リスクであるとともに、円の信用、信認、こちらの総論でも触れられておりましたが、ここには非常に危機感を持っております。欧州を中心とする脱ロシア化が進む中で、資源の獲得はエネルギー産業界においても非常に重要な問題で、喫緊の課題です。
となりますと、カーボンニュートラルは、IEAの試算でいきますと毎年4兆ドルかかって、世界のGDP5%が喪失されます。日本はもちろん、先進国の成長が止まるわけなのですが、カーボンニュートラルを否定するわけではなくて、そうした後先の出し入れというのは、財政当局としては考える必要があると思っておりまして、もちろん社会保障の引き続きの見直しに加えて、グリーン成長基金とか、2兆円ありますから、こうした基金の積極的な見直しというのは、必然的に行われるべきだろうと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。文教について2点だけと、それに関連で1点です。
文教について、まず官民の取組、協働的な取組が重要ということです。高校で今年度から情報Ⅰというのがスタートして、これについて専門人材の不足というのが、15ページにもある全体感とは別に、しかもデジタライゼーションという重要な観点からいっても、大きな問題であると思っています。これに適合できるような民間の力というのがぜひとも重要なので、これを推進する必要があると考えています。
それから、16ページ目のオンライン教育です。これについては60単位の見直しということがございますが、そもそも60単位に上限を設けるという趣旨というのが、デジタル教育、オンライン教育というのが、質が劣るものとして相対的な順位が低いという概念が、そもそも古いのであると思っています。
その意味で、「オンライン授業」といったものの定義自体を改めて、もっと積極的にデジタルを使うということで、例えば別の地域の優良な授業を、他の地域の子供たちが聴けるようにすることで、底上げを図るということが重要なのではないかと思っており、また、その後押しとしてのインセンティブづけというのが必要であると思っています。
そして、働き方改革のところで追加でもう1点です。11ページ目なのですが、今年度勤務実態調査は非常に良い機会でございますので、文科省だけに任せるのではなくて、省庁横断で様々な、申し上げたような外部人材等の取組が適切に行われるような形のものをやっていただきたいと思っています。
最後に、関連と申し上げたいのは、全体に御説明をいただいても、非常にいろいろな制度がありますし、いろいろな形で再分配、資金の手当てが行われているわけですが、実態を見ると、それが適切に使われていない、知らないといったものも多くあります。ですので、「アウトカムベース」ということを議論するときには、最終的にどんな人にお金が使われているというだけではなく、中長期的にどうやって成果、つまりアウトカムが出てきたかということを、しっかりと綿密に検証していくことが必要であると考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宇南山委員、どうぞお願いします。
〔宇南山委員〕ありがとうございます。私は総論のほうの17ページ、「若年世帯を中心とする不安に応えるために」の部分ですが、ここのところは、将来不安、内閣府が書いたものではありますが、これまでの財審でも言われていますように、不確実性が上がると消費が落ち込むというストーリーがここで確認されているわけですが、それで、消費を刺激するためにも財政再建が必要というのが、財審でもこれまで言われてきたストーリーとなっていますが、ここの左側の図を見て、消費性向が落ちている部分、極めて技術的な話なのですが、ここは単純にアベノミクスによって所得が伸びたことや、コロナという要因ですごく落ちているということになっていますので、不確実性のせいで消費性向が落ちているという解釈というのは、一般の国民の理解として、ついてきてくれるかというところに非常に不安を持っております。
私は消費の専門家として、財審で長く、将来不安が消費を落ち込ませる、だから財政再建が必要というストーリー、財政再建が必要であるという結論自体は、私は非常に賛成ですし、重要なことであると思うのですが、不確実性があって消費の低迷の要因であるという説明というのは、あまり正しくないと思いますので、説明として信頼性を失わせてしまうと思っておりまして、社会保障の不安を払拭することは重要だし、財政再建は絶対的に必要ですが、消費の落ち込みを財政再建で解消できるという部分については、私は少し方向として修正すべきなのではないかと考えております。
非常に技術的な面ですが、大きいストーリーに関わる部分ですので、コメントさせていただきました。以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
今日、多くの方に御発言いただきましたので、時間が多少、想定しておりましたように延びましたが、各委員からの御発言はここまでとさせていただきます。
また、事務局のほうでは今日の御発言をいただいて、最終的な報告書のところに、できるだけ反映させるものは反映させる、それから、その際に、今日の御意見に対してどういう考え方を取るのか、可能であればそのときにまたいろいろ御説明をいただければと思います。
それでは、今日の会議はここまでとさせていただきます。この点を連絡しておきたいのですが、記者会見は、いつものとおり、私がこれからやりますので、そちらは通例どおりです。
それから、春の財審のほうでまた建議を行うわけですが、こちらはこれまでもお願いしておりますが、小林毅委員、武田委員、田近委員、土居委員、冨田委員、中空委員、吉川委員、以上の先生方に起草委員をお願いしたいと思いますので、お忙しいかと存じますが、どうぞよろしくお願いします。
次回ですが、4月13日、来週になりますが、15時から分科会を開催して、社会保障等について審議をする予定でございます。
それでは、今日は大分時間が超過しましたが、以上で閉会といたします。どうもありがとうございました。
午後5時20分閉会