財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和3年11月8日(月)13:00~14:50
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
社会保障について -
3.閉会
分科会長代理 |
増田寛也 |
高村大臣政務官 水口政策立案総括審議官 茶谷局長 奥次長 坂本次長 阿久澤次長 八幡総務課長 大久保司計課長 藤﨑法規課長 吉田給与共済課長 大沢調査課長 三原主計官 渡邉主計官 福田主計官 坂口主計官 高田主計官 有利主計官 一松主計官 田中主計官 野村主計官 北尾主計官 渡辺主計官 山岸主計企画官 鈴木主計企画官 宮下主計企画官 |
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委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 芳野友子 |
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臨時委員 |
秋池玲子 上村敏之 宇南山卓 河村小百合 喜多恒雄 木村旬 熊谷亮丸 権丈英子 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 冨山和彦 福田慎一 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
午後1時00分開会
〔増田分科会長代理〕時間になりましたので、間もなく会議を始めたいと思いますが、本日は冒頭からカメラが入ります。カメラのほう入っていただいて、少しそのままお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。皆様には御多用中のところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。
本日は、社会保障を議題といたしております。
それでは、カメラの方、御退室をお願いしたいと思います。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、社会保障の議論に入ります。まず、一松主計官、田中主計官から、簡潔に説明をお願いいたします。
〔一松主計官〕厚生労働第一主計官の一松でございます。私からは、社会保障の総論と診療報酬改定を御説明します。
まず、総論になります。資料3ページは、令和4年度概算要求のいわゆる「自然増」が6,600億円と令和3年度の「自然増」5,000億円を上回ったこと、その原因は右下のグラフで赤丸囲いしているとおり、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることであることを示しております。他方で、65歳以上の人口の伸びが鈍化していることで年金に係る「自然増」は鈍化していることを指摘しております。
この「自然増」を、予算編成過程で「高齢化による増加分」に抑えてまいります。
4ページは、令和3年度の「高齢化による増加分」の水準の御説明、5ページは、「高齢化による増加分」が適正化の一途をたどってきた経緯の振り返りでございます。
6ページは、先般の国会で、後期高齢者医療の患者負担割合への2割負担の導入という、「高齢化による増加分」そのものを抑える改革に取り組んできたという、取り巻く環境からしても厳しく精査するのは当然であるという主張をさせていただいております。
診療報酬改定に入ります。
8ページ目で、年末にマクロの改定率が決定され、年度末までに診療行為のミクロの点数と算定要件の改定がなされるというプロセスを御説明しつつ、マクロの改定率について正確な理解を促しております。
具体的に9ページ目のグラフを御覧いただきますと、薬価について、青線のとおり価格面でマイナスが続いておりますが、薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により、薬剤費自体は、赤線のとおり平均伸び率プラス2.3%で成長が続いてまいりました。赤の点線で薬価改定を行わなかった場合の薬剤費の推計が平均5%強であることをお示した上で、そこから2%強へ調整する作業を「マイナス改定」と呼ぶことが適切かという問題提起を、キャプションの2つ目の丸で申し上げております。
3つ目の丸のとおり、薬価改定自体は、既存医薬品の薬価を市場実勢価格に合わせる作業でございまして、要求段階の単価を、薬価調査の結果を踏まえて適正化する、「過大要求の積算の修正」作業です。
4つ目の丸のとおり、「マイナス改定」と呼ぶことや、改定率に意味を持たせることは慎むべきであり、薬価改定を経てもなお残る経済成長率を上回る薬剤費総額の伸びが適正な水準か否か、そうした伸びをいかにイノベーションの推進など必要な課題に振り向けるかという観点からの議論こそがなされるべきです。また、薬価改定後の経済成長率を上回る年平均2%強の伸びという水準は、なお一段の適正化の必要性を示すものと考えます。
10ページですが、診療報酬(本体)については、「プラス改定」が続いてまいりました。先ほどと同じ分析をいたしますと、グラフの赤い点線、年平均伸び率1.6%で済んでいた医療費を、あえて年平均プラス0.2%上積みしてきたことになります。年平均伸び率1.6%の伸びを打ち消すには、2年に1度の改定で、マイナス3.2%の改定を続けないといけない計算になり、キャプション2つ目の丸のとおり、2年に1度マイナス0.8%の改定を続けたとしても、人口減少も加味した高齢化要因による伸びは確保されたはずです。
「プラス改定」が続いている現状は、3つ目の丸のとおり、医療費の適正化とは程遠いと言わざるを得ず、本来的には「マイナス改定」を続けずして医療費の適正化は図れません。まずは改定前の診療報酬(本体)の伸びがいかなる水準かということを出発点として改定の議論を行うことが適切であり、そこが高止まりしているのであれば、マイナス改定は躊躇すべきでないと考えます。
11ページでは、キャプションの2つ目の丸で、「過大要求の積算の修正」作業に過ぎない薬価改定で財源が生まれることは観念できないということを申し上げております。まして、それを論拠に診療報酬(本体)の上積みをすべきという主張は、そもそも診療報酬(本体)の適正化を図る必要がある中で、フィクションにフィクションを重ねたというよりほかはなく、このような独特の主張が行われがちな因習ともいうべきものは払拭されなければなりません。
12ページでは、具体的に令和4年度予算編成における「自然増」を定量的に分析しております。6,600億円のいわゆる「自然増」のうち、医療分は国費3,600億円ですが、医療費ベースに直しますと、左側の表のとおり1兆4,100億円になります。キャプションの1つ目の丸のとおり、要求段階から診療報酬プラス3%の要求がなされているに等しいと言えます。
これを分解いたしますと、右下の図のピンクの部分にありますように、薬価等で8,700億円、診療報酬(本体)で5,400億円です。
薬価等の8,700億円は、キャプションの2つ目の丸のとおり、仮に薬価制度の抜本改革を行った平成30年度診療報酬改定と同等の薬価改定を行ったとしても、医薬品市場の成長は残ります。なお残る成長の果実をどのようにイノベーションの推進に振り向けていけるかという観点から、薬価算定方式の見直しなどを検討していくことが重要です。
診療報酬(本体)の5,400億円は、これを全額人件費に振り向ければ、機械的な計算では、医療従事者を全てプラス2.5%賃上げできることになります。医療費の適正化をしてもなお残る医療費の増加をどのように有効に配分すべきか、今までの診療報酬の分配の仕組みや在り方の見直しを検討しながら、やはり水準の適正化を図っていくことが重要です。
13ページは、マクロの改定率が決まった後の、診療行為のミクロの点数と算定要件の改定についてです。改定によって決まる財源の範囲に収まるように、点数等が改定されるわけですが、キャプション2つ目の丸のとおり、実際には診療行為の算定回数を正確に見込むことも、コントロールすることも難しいと考えます。このようにクオンティティ、すなわち量Qをコントロールできないのであれば、医療費適正化と医療機関の経営の安定を両立して図ることは難しいと言わざるを得ず、4つ目の丸では、Qをコントロールするための医療提供体制改革や、P×Qを直接管理する給付費の伸び率管理が必要と述べさせていただいております。
先月の社会保障の1回目の審議の際、田近委員の御質問にお答えする形で申し上げましたが、点数等の改定という行為のみで、複数の政策目的を同時に効率的に達成するのには困難を伴うはずです。キャプションの1番最後の丸では、診療報酬の1点10円の単価を全国一律で塩漬けにしていることで、政策ツールをいたずらに1つ失っているのではないかという問題提起をさせていただいております。
14ページでは、政策手段としての診療報酬の有効性について、本年9月末に打ち切った感染予防対策の診療報酬の特例措置を基に論じております。
左側のとおり、令和3年度予算で導入された外来等感染症対策実施加算は、1診察当たり50円が医療機関にわたる仕組みでございましたが、名前はともかく、本当に金額に見合う感染症対策が実施されるのかを問わない仕組みでございました。実質的には経営の下支えをすることも狙いだったと考えますが、これを9月末に打ち切り、右側のとおり、感染防止対策にかかった費用を実費補助する合理的な仕組みに変えさせていただきました。そもそも安易に財政上の対応に頼るべきではないのですが、頼る場合であっても政策目的の達成に効果的な手法を模索すべきと考えます。
医療機関の経営実態でございますが、16ページのとおり、診療報酬点数の集計で見ると、収入がコロナ感染拡大前の水準を上回っており、医療機関の経営は底堅いですが、この表には補助金収入は含まれておりません。
17ページは、10月11日の先般の審議の際、末澤委員からも御提案があった資料でございまして、補助金収入を加味しました。先ほどの診療報酬点数の集計である概算医療費、すなわちブルーのもので見ますと、令和2年度は前年度よりも1.4兆円落ち込んだと強調されがちでございますが、補って余りある補助金収入の黄色い部分が医療機関に入ったと推計されます。今年度については、来年3月末まで一定の前提で延伸した推計になりますが、ブルーの診療報酬点数が先ほど見たように底堅い動きを見せている上に、黄色の補助金収入を加えますと、キャプションのとおり、医療経営は近年まれに見る好調さと考えます。
このように、大まかな傾向が分かっております中で、18ページのとおり、今月中旬以降に医療経済実態調査が公表されます。キャプション、2つ目の丸のとおり、令和元年度と2年度の調査結果が出るのですが、コロナ感染拡大の影響を大きく受けます。そこで、特別に6月単月調査というのもやっておられるのですが、中ほど左のほうで、中医協での意見を披露させていただいているとおり、コロナの影響の払拭は困難と考えます。補助金収入も分析するよう申し上げていますが、不確実です。
そもそも、真ん中の表のとおり、診療所の場合、サンプル数20分の1、回答率が半分ぐらいで、2%ぐらいしかカバーできておらず、サンプルバイアスも指摘されております。
右の表で、都道府県に全数提出されております医療法人の事業報告書と比較しておりますが、小児科の場合、無床診療所でサンプル数は37分の1にとどまり、医療経済実態調査の有床診療所の小児科のサンプル数はゼロとのことです。診療行為のミクロの点数等の改定の根拠としてエビデンスの弱さを指摘せざるを得ません。
次の19ページは一橋大学の荒井教授の分析ですが、先ほどの表にありました事業報告書と比較したものです。事業報告書は全数調査ですので、経年比較しますと、この4つある図の中の実線部分のように、相対的に安定的な経年推移を見せるのですが、医療経済実態調査のほうは、キャプション2つ目の丸にありますとおり、サンプル数が非常に少なく、しかも入れ替わることによりまして、点線のように振れが大きく出ています。
20ページでございますが、5月の当審議会の建議では、表の右の2段目のとおり、医療法人の事業報告書が、紙媒体で全数都道府県に提出されたまま有効活用されてない点につき、アップロードでの提出を可能とし、電子データベース化・「見える化」をすべきとの提言が盛り込まれました。「骨太の方針」にも反映されましたので、早急に進めるべきと考えます。もちろん、キャプション2つ目の丸にあるとおり、事業報告書においても、内容の充実が必要です。
医療・福祉分野の処遇改善の必要性が指摘されており、22ページ以降の資料を御用意しております。
22ページは、医療・福祉分野の雇用の特徴として、女性・非正規雇用者が多いこと、次の23ページでは、国際比較すると、他分野同様、賃金水準が低いことを示しております。
24ページ、左の図が職種別の月収になります。保育士については、女性の役職者を含む月収の水準が、見にくくて恐縮ですが、一番右側のダイヤ印の31.1万円という水準になり、これがすぐ上の緑の点線の全産業(女性)の31.8万円と比較して低いことが、まずは問題になります。介護職員については、青線の一番右側のとおり29.3万円と、今申し上げた保育士の水準よりさらに低い水準になります。看護師の方ですと、赤線のとおり、全産業平均より高い水準になります。
右の棒グラフでは、先ほど申し上げた女性・非正規雇用者が多いという特徴は、保育士、介護分野、看護師まで共通していることを示しております。ちなみに、医師の方は、月収では左側のグラフにあるとおり高い水準にありまして、右のグラフでも、女性・非正規問題とはあまり関係がありません。上に枠囲いしてありますとおり、医師は、非正規の方が正規の雇用者よりも給料が高い特異な職種であると分析されております。
次の25ページは、労働分配率の国際比較です。医療・福祉分野について、労働分配率は低く、診療報酬・介護報酬など、公定価格の影響を免れないだけに、公定価格の在り方に遡って分配の在り方を見直していく必要性が高いと考えます。
次の26ページのとおり、診療報酬の分配については、そもそも医科・歯科・調剤で、左下の1対1.1対0.3とされる配分が、近年固定化しており、分配が硬直的であることが指摘されております。一番右側の図のとおり、診療所のほうが病院より収益率が高いにもかかわらず、病院と診療所の間の適正・公平な分配が行われているかどうかなども含めまして、「見える化」が必要とされてきました。そこに、さらに、労働分配がきちんと行われているのかという課題が加わることになります。
27ページは、介護職員のこれまでの処遇改善の取組です。
28ページでは、キャプションの1つ目の丸で、平成21年度補正予算に措置されました介護職員処遇改善交付金が一時的な財政措置であったため、一時金などによる対応を招きまして、根本的な処遇改善につながらなかったことを指摘しております。
そこで、その効果を継続させるべき平成24年度介護報酬改定では、介護職員処遇改善加算を設けましたが、2つ目の丸では、これですら介護職員の賃金引上げにつながらなかったとの指摘もあるということを御紹介させていただいております。
3つ目の丸では、こうした過去の経緯を踏まえつつ、介護職員の実際の賃金引上げにつながる実効的な仕組みを模索する必要があることを述べております。右の表の下線部のとおり、最近の仕組みでは計画書と実績報告書により、処遇改善の実効性を確保しております。
29ページでは、保育についても同様にこれまでの取組を掲げさせていただきまして、それを踏まえて、賃金引上げにつながる実効的な仕組みを模索する必要があるとしております。
30ページでは、フランスが最近行いました看護師・パラメディカルといった非医師の医療従事者向けの報酬引上げ、具体的には右上の図の薄いオレンジ部分のとおり、公立病院看護師の報酬を月額で183ユーロ引き上げたことを紹介しております。もっとも、左下のグラフのとおり、看護師の平均収入が、先ほど申し上げたとおり、全産業平均より高い我が国とは異なり、フランスでは、看護師の平均収入が全産業平均の月額で225米ドルほど下回っております。引上げにより、概ね追いつく格好になります。
このほか、右上の濃い茶色い部分のとおり平均月額35ユーロの勤続年数に応じて累進的な報酬引上げがなされます。
また、キャプション3つ目の丸のとおり、フランスの看護師・パラメディカルの大部分は公的セクターで勤務しているため、俸給表の改定で実効的に賃金引上げが行われやすいことにも留意する必要があります。
31ページの赤く囲っている計画ですが、イギリスの医療・介護の充実の財源を、医療・介護負担金の導入や、配当所得課税の税率の引上げで賄おうとする取組であり、処遇改善など社会保障の充実には、基本的に安定財源の確保が必要であることを示しております。
32、33ページでは、コロナによる医療・福祉分野の給与や労働時間への影響は、宿泊、飲食など他分野と比べて大きなものでないことを示しております。
34ページでは、10月11日の当分科会でお示しさせていただいたとおり、コロナ関係補助金の効果もあり、公的医療機関をはじめ、コロナ受入れ医療機関の経営はマクロとして好調ですので、現場で頑張っていただいている看護師等の処遇改善に回していただきたいという考えを述べさせていただいております。
本年5月の建議で掲げました「医療提供体制改革なくして診療報酬改定なし」の方針について敷衍させていただきます。
36ページは総論になりますが、コロナ禍で浮かび上がった、キャプション1つ目の丸にありますような医療提供体制の課題に応えていくためには、中ほどの図にある地域医療構想の実現、医師・医療従事者の働き方改革、医師偏在対策の三位一体の改革を進めていく必要があります。
37ページですが、いわゆる「なんちゃって急性期病床」の急増につながりました平成18年度診療報酬改定の蹉跌を、左側の青の棒グラフの図で示し、診療報酬の算定要件を見直してもその是正が進まない中、右上の図でございますが、病床機能報告とデータに基づく必要病床数との差を浮かび上がらせる手法で、病床の機能分化を促してきた地域医療構想の取組を紹介しております。
右下の奈良県の取組では、病床機能報告と必要病床数との差異となっている部分ですが、手術と救急入院件数が少ないにもかかわらず、急性期と報告されている病床であることを明らかにいたしました。
38ページですが、必ずしもはかばかしい地域医療構想の進展がないところで、新型コロナの感染拡大を迎えまして、政府として多額の財政支援を行ったものの、様々な課題が浮かび上がった次第です。
その1つとして、いわゆる第5波の下での東京都ですら、右の表にありますとおり、感染拡大ピーク時の確保病床の使用率が65%にとどまりました。患者の受入れ要請があれば即時受入れ可能と申告し、病床確保料の対象となりながらも、患者受入れに使用されなかった病床の存在が問題となりましたが、いわば「構え」先行で、医療機能の実質が伴わなかった点で、「なんちゃって急性期病床」の問題と通底しておりました。
39ページにおいて、結局、実体面の取組の進展がないまま、診療報酬や補助金といった財政支援で医療機能の強化を図ることには限界があることを指摘させていただいております。
キャプション3つ目の丸のとおり、新型コロナの対応では、財政支援ありきではなく、コロナ用の病床の使用率の見える化、現行法の最大限の活用、公的病院の専用病床の更なる確保などによって、実効性を伴う病床確保を図る方向性が示されつつあります。
地域医療構想についても遅滞なく進める必要があり、5つ目の丸で、具体的な提案として、地域医療構想の法制上の位置づけを強化すること、PDCAサイクルを強化すること、都道府県の責務や都道府県知事の権限の強化を検討することを提案しております。
40ページでは、財政支援の在り方の見直しについて、キャプション3つ目の丸では、新型コロナへの対応では、病床確保料の見直しを提案させていただいております。
4つ目と5つ目の丸で、10月11日の有識者プレゼンで「なんちゃって急性期病床」について、いわゆる「素泊まり入院」が行われている実態や、諸外国では外来で行われるような手術が、入院で行われていることが示されたことを踏まえ、診療報酬の適正化の提案をさせていただいております。
41ページは、診療報酬体系そのものの見直しの主張でございます。キャプション4つ目の丸で、現行の診療報酬体系につきまして、医療機関単位・医療行為単位・入院日数単位の評価が中心の診療報酬でありまして、医療行為の回数や病床の稼働率、在院日数の長期化に医療機関の経営上の関心が向きがちと述べさせていただき、このような「インプット重視」・「量重視」の医療機関本位の言わば「縦突進」型の診療報酬体系から、「アウトカム重視」・「質重視」の患者本位かつ医療機関相互の面的・ネットワーク的な連携・協働をより重視する「横連携」型の体系へのシフトを模索していくべきとしております。
5つの目の丸では、10月11日の有識者ヒアリングを踏まえまして、1入院当たり包括報酬の本格導入、包括払いの対象の急性期入院医療からの本格的拡大を視野に入れるべきであるとしております。
42ページからは外来医療の機能分化でございまして、42ページではかかりつけ医に関する制度、実態面の取組が進んでいないことを示しております。
43ページでございますが、そうした中で診療報酬上の評価が先行いたしまして、左の表にありますとおり、相次ぐ算定要件の緩和により、求められている医療機能の強化の方向性と、現状追認に陥りがちな診療報酬上の算定とで、乖離が進んでいることを示しております。
右側の機能強化加算の例、白い部分でございますが、重複受診における重複加算、急性気管支炎の算定が多く、生活習慣病の算定が少ない、受診回数が1回の患者への算定が多いなど、本来算定の対象として期待された患者像と、算定の実態が乖離しております。
44ページでは、新型コロナ下で、発熱患者の発熱外来へのアクセスに問題があったこと、また、右下のとおり、有識者ヒアリングでも指摘されました新型コロナ禍の外来医療で生じた様々な事態について指摘させていただいております。
これまでフリーアクセスを誇ってきたはずの我が国で、必要なときに必要な医療にアクセスできなかったということでございまして、45ページでは、改めて、右下の図にありますように、平時にも感染症有事にも機能するかかりつけ医の制度化を具体的に提案しております。
46ページでは、あくまで制度化と診療報酬上の評価は足並みをそろえるべきであり、キャプションの3つ目の丸のとおり、機能強化加算はゼロベースでの見直しは必須であるとともに、ほかの関連する診療報酬についても、安易な算定要件等の緩和は厳に慎むべきとしております。
その下の2つの丸では、令和4年度から、受診時の定額負担の仕組みが拡充されるため、かかりつけ医以外の受診時にも定額負担を導入すべきと提案しております。具体的には、現在、大病院における紹介状なしの受診において、選定療養に要する費用として徴収されている下の真ん中の図の定額負担が、今般右図のとおり、選定療養の給付から減額して保険財政への寄与を生じさせるという形で拡充されます。
47ページですが、外来受診時の定額負担は、今申し上げたような、選定療養に要する費用として徴収するやり方のほか、キャプションの②及び右下の最近の日経新聞の報道のとおり、そもそも保険適用外の費用として徴収するやり方で、オンライン診療のシステム利用料で行われていることが参考になると思っております。
(注2)では、今申し上げたオンライン診療のシステム利用料が、保険適用外の費用と整理されていることについては、電話診療の場合の電話代、遠隔診療料の場合のシステム利用料が保険適用対象とされていることとの整理が必要であることを指摘しております。
(注1)の後段部分では、ともかくこのような整理が可能であれば、かかりつけ医以外の、登録されていない患者による受診について、患者情報の取得等に係る事務負担などを保険適用対象外と関連して、定額負担を徴収することも可能ではないかと指摘しております。
(注2)にお戻りいただきますと、オンライン診療について、かかりつけ医の制度化とセットで在り方を考えていくべきということにも触れさせていただいております。
48ページでは、令和2年度診療報酬改定で導入された働き方改革を名目とする520点の地域医療体制確保加算について、どう働き方改革につながるのか実効性が乏しいのではないかと問題を指摘しております。関係する他の診療報酬上の評価との関係を含めて、在り方を見直すべきとの主張になります。
調剤報酬につきましては、50ページで、まず、キャプション2つ目の丸で、技術料に占めます調剤基本料、調剤料及び薬学管理料の割合がほとんど変化していないことを指摘した上で、右側で、調剤料について、真ん中の部分ですが、剤数や日数に比例した現行の算定方法を適正化する見直しを行う必要があるほか、対物業務から対人業務への転換を図るため、調剤報酬の具体的な見直しを幾つか提案しておりまして、これを順次御説明します。
その1つ目が、51ページでございまして、地域連携薬局が制度化されたことを踏まえまして、先行してかかりつけ薬剤師、薬局の機能を評価するとしてきた右側の地域支援体制加算について、制度と平仄を合わせる方向で算定要件等を見直すべきと考えます。
キャプションの2つ目の丸では、かかりつけ薬局・薬剤師以外の処方箋受付に対する負担の在り方についても検討を深めるべきと指摘しております。
52ページでは、医薬分業の趣旨を損なう敷地内薬局について、調剤基本料の更なる引下げを求めております。
53ページでは、後発医薬品の調剤体制加算につきまして、予算執行調査において、算定額は1,200億円程度であるのに対し、後発医薬品の使用促進の新目標による追加的な医療費適正化効果が200億円と下回っているという結果をお示ししました。本末転倒とならないよう、減算中心の体系への組替えなども求めております。
54ページは、本年の「骨太の方針」に盛り込まれました通院負担の軽減や利便性の向上の観点からのリフィル処方についてです。
キャプションの2つ目の丸で、代替策としても持ち出されがちな分割調剤の実効性の乏しさについて触れ、あくまでリフィル処方を導入すべきと主張しており、3つ目の丸で、地域連携薬局の制度が導入された今、その環境が整いつつあることを指摘しております。
55ページは、多剤・重複処方等についてです。歯止めには、薬局・薬剤師の寄与も、あるいはそれに対する調剤報酬上の対応も重要ですが、処方側の対応もより重要です。
キャプション3つ目の丸のとおり、多剤・重複処方について、診療報酬上、減算等の対応を導入・拡充すべきです。
4つ目の丸では、向精神薬について、諸外国の例を基に、処方の厳格化を求めております。生活習慣病の医薬品のようにリフィル処方を認めるべき医薬品もあれば、処方も厳格化すべき向精神薬のようなものがあるということで、メリハリをつけるべきでございます。
薬剤費の適正化に入ります。
57ページでは、既に先ほど御説明した薬価改定と医療費の関係を基に、薬価総額マクロスライド制などの予算統制の強化を主張しております。保険収載がほぼ自動的になっており、財政影響が勘案されていない点を抜本的に改めるべきと考えます。
58ページは、薬価算定方式の見直しでありまして、左下の一番下のポツの赤字のとおり、開示度の低い医薬品の算定の厳格化などを実現する必要があります。
くわえて、59ページでは、キャプション1つ目の丸で、新規性に乏しい新薬について、類似薬効比較方式における薬価算定の厳格化を提案しております。左下の例のとおり、類似薬にブルーの価格の低い後発医薬品が上市されていても、改めて高めの新薬として収載可能な点の見直しが必要です。
2つ目の丸では、下の図の青い部分の原価計算方式の営業利益の上乗せと黄色い補正加算の関係が、図のとおり重畳的な関係であることを指摘させていただき、3つ目の丸では補正加算の要件の厳格化、すなわち要件を満たさなかった場合は減算することの検討を求めております。
60ページでは、令和3年度予算編成で実現した毎年薬価改定に、完全実施と言えるためには、なお課題があることを指摘しております。下2つの丸では、調整幅の廃止に向けた見直しを求めております。
61ページですが、この薬価改定の猶予措置ともいうべき新薬創出・適用外薬解消等促進加算につきまして、キャプション2つ目の丸で品目要件の厳格化、3つ目の丸で、大半の企業が左下の図のとおり上中位の判定を受ける企業要件のメリハリづけの徹底を求めまして、最後の丸で、毎年薬価改定となった以上、この猶予措置の解除も、要件を満たせば毎年行うこととすべきと主張しております。
62ページは、費用対効果、評価についてでございますが、キャプションの太字の部分のとおり、迅速・効率的な評価、対象品目の拡大、価格調整を行う対象範囲の拡大、保険収載の除外への活用を求めております。
63ページは、既収載の医薬品への保険給付範囲の見直しについてです。左側にありますとおり、ある医薬品を保険から除外するやり方もあれば、右側の①のフランスの薬剤の種類に応じた患者負担割合の設定、②のスウェーデンの薬剤費の一定額までの全額患者負担など、保険収載したまま、その保険給付範囲を狭めていくやり方も考えられ、幅広く検討すべきです。
64ページでは、左の図で、オンライン診療・電話診療でOTC類似薬が処方されている実態を示しつつ、右側でOTC置き換えによる医療費適正化効果の推計を紹介し、OTC類似薬の保険給付範囲の見直しを訴えています。
私からの説明は以上になります。
〔田中主計官〕続きまして、厚生労働第二主計官の田中でございます。私からは雇用関係中心に御説明いたします。
まず、66ページでございます。これは、雇用・生活支援について、かねてより重層的なセーフティーネットを構築してきたということ、それから新型コロナ禍で様々な特例措置を講じてきたということを示しております。
図の左上、後ほど詳しく御説明しますが、雇用調整助成金をはじめとしまして、生活保護制度に至る手前の困窮者に対する自立支援金ですとか、あるいは様々な福祉資金の貸付、そうした特例貸付を行ってきております。
68ページでございます。雇用調整助成金、左上の表を御覧いただきますと、今回のコロナ特例では、上限額、それから助成率について、リーマンショック時を大幅に超える特例を講じてまいりました。その結果として、左側の下の図にありますようにリーマンショック期を大幅に超える支出が出て、今なお続いているということでございます。右側のグラフにありますように今年の5月に一定の見直しを行いましたが、その後、見直しが行われないまま延長されているということでございます。
69ページ、これは雇用調整助成金等の全体像でございます。もともと、左側の4象限の図を御覧いただきますと、これが全体像でございますが、雇用調整助成金は本来、保険料で全額賄うという制度になっておりますが、新型コロナ禍におきましては、臨時特例法を成立させて、肌色の部分に一般会計からの負担を入れるということになっております。
その結果、累計としまして、右側の表の一番下、令和2年度、3年度累計で、10月末までの時点で、雇調金等の支出総額は約5兆円、そのうちの一般会計負担は約1.5兆円に上っているということでございます。
キャプションの4つ目の丸にありますとおり、こうしたことをやってもなお、積立金を含めて、財源は事実上枯渇しているという状況でありまして、今後、更なる一般会計負担は避けられない状況にあるということでございます。
次に、70ページです。雇調金の特例、これは失業率の抑制に相当寄与したという評価もございます。試算はいろいろあり得ますが、例えば2.6%失業率を抑制したというような試算もございます。そうした点は確かに評価できると思いますが、他方で、2つ目の丸にありますように、雇調金の特例を必要以上に継続することにつきましては、かねてより指摘されているように、労働力を固定し過ぎるのではないか、労働移動を阻害しているのではないか、あるいは労働者自身のモチベーション能力の低下、将来の保険料増という形で、事業主の負担増を招くのではないか、そうした懸念もございます。
諸外国においても、今回の新型コロナ禍におきまして、様々雇用維持スキームを講じてまいりました。例として、イギリスとフランスの例を右側の表に掲げております。例えば、イギリス、フランスにおきましては、段階的に縮減をしてきているということでございます。経済の回復、それから行動規制の緩和、こうしたことを背景に、いずれも段階的に縮減をしておりまして、イギリスにおいては9月末をもって雇用維持スキームを終了しているということでございます。
次に、71ページ、雇調金の最後のページでございますが、これは雇用環境について示したものです。左上のグラフを御覧いただきますと、縦の点線で示しているのが、コロナが発生した当初でございます。確かにコロナの当初、例えば黄色の自動車、あるいは紫色の宿泊・飲食サービス、あるいは赤色の製造業全般、多くの産業で雇用過剰感が発生いたしました。他方で、今年に入って、2021年のところを御覧いただきますと、紫色の宿泊・飲食サービスにつきましては、引き続き厳しい情勢にあるものの、押しなべてほかの産業を見てみると、全産業平均で見ましても、様々な産業を含めて雇用不足感が上回っているという状況でございます。
参考まで、下にリーマンショック前後の動向を掲げておりますが、当時は雇用過剰感が当分続いたことと照らせば、同じ状況にあるとは言えないのではないかということでございます。
右下に、実際に休業した数のコロナ前との比較をグラフで示しております。確かに紫色の宿泊・飲食サービス業、いまだに厳しい状況にありますが、ほかの産業については、おおむねコロナ前の水準には落ち着いてきているのではないかということでございまして、2つ目の丸のキャプションの後段にありますように、少なくとも全ての業種・地域について、今の特例措置によって休業を支援する状況にあるとは言えないのではないかということです。3つ目の丸にありますように、むしろ労働移動を促すための施策を講じながら、雇調金の特例については、見直していくべきではないかということを主張しております。
73ページでございます。ここからは雇用保険制度全般についてです。
左側の図の真ん中のブルーのところを御覧いただきますと、労働保険特会では、大きく分けて3つの事業、1つが失業手当などの失業等給付、それから育児休業給付、それから雇調金を含む雇用保険二事業、この3つの事業を実施しております。
右側の図に御覧いただきますとおり、昨年成立した臨時特例法で、赤い点線が示しておりますように、例えば、国庫負担を直接入れることができるですとか、あるいは積立金から雇調金のほうに貸付を行うことができる、そうした財源手当について異例の対応を行ってきております。
74ページでございます。これは保険料率について示したものですが、キャプションの一番上にありますように保険料率は、平成29年度以降、法律上の本則は0.8%でございますが、平成29年度当時は積立金が十分な水準にあったこと、それから、雇用環境が良好であったことから、今年度末までは0.2%まで引き下げられているという状況でございます。
左下に積立金の減少要因を整理したものでございます。昨年、令和2年度の当初積立金の残高は4.5兆円ございました。それが令和3年度の、一番下の積立金残高を御覧いただきますと0.4兆円に下がると、これはしばらく前の試算でございますので、足もとの状況に照らせば、これが完全にゼロになるという見込みでございます。
そのうちの雇調金の貸出による寄与額は、赤い囲いのとおり、1.6兆円でございます。実は残りの2.4兆円は、保険料率、それから国庫負担も引き下げております。そうした引下げによって、もともと収支が合っていない、すなわちコロナ前から収入が大きく不足する状態にあったということを示しております。
75ページでございます。一番上の行にありますように、こうした雇用保険の財政の逼迫に対しまして、国庫負担割合を法律上の本則の25%に引き上げるべきであるという御議論がなされます。これに対して考え方を書いておりますが、要するに、雇用保険も社会保険の一形態であり、そうした中で相対的に考える必要があるのではないかということを述べさせていただいています。
それから、2つ目の丸にありますように、仮に法律上の本則の25%に国庫負担割合がなったとしても、昨年と今年の国庫負担の合計は0.5兆円にとどまっていたはずですが、実際には、既にこれまで、先ほど御紹介しましたとおり1.5兆円の国庫負担を行っておりまして、更なる国庫負担が避けられない状況にあるということです。
したがいまして、3つ目の丸でございますが、現状の雇用保険財政の逼迫に対しては、まずは保険料率を戻すことによって対応すべきではないかという主張をさせていただいております。
他方で、4つ目の丸にありますように、今回の新型コロナ禍のような有事において、国が一定の責任を果たすことも当然であると思っておりまして、今後の雇用保険財政における役割を、今回のコロナ禍を契機に整理し直すべきではないか、と述べております。すなわち、平時においては保険料収入によって雇用保険財政の安定を確保することを基本としながら、今回のような有事の場合においては、例えば任意繰入規定の常設化、あるいは、国庫負担割合の引上げ、そうしたことを含めて、国の責任の範囲を再整理する必要があるのではないかということを主張させていただいております。
最後、76ページです。これはもう少し中期的な課題かもしれませんが、今回の新型コロナ禍においては、非正規労働者を中心に失業・休業者が大幅に増加したということが指摘されております。そうした方の多くは、雇用保険の対象にそもそもなっていない方です。そうした方の休業については、今般のコロナ禍では全額一般会計、国費負担で救済することになりました。こうしたことを踏まえて今後、雇用保険の射程をどうするのか、適用拡大を含めて、セーフティーネット機能の在り方に向けた議論も進めていくべきではないかということを提言させていただいております。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、議事に先立ちまして、今回新しく委員に就任をいただいた方を御紹介いたします。日本労働組合総連合会会長の芳野友子委員でございます。どうぞ、一言御挨拶をお願いします。
〔芳野委員〕芳野でございます。今日は遅参をいたしまして、申し訳ありませんでした。前任の神津の退任を受けまして、連合の会長を務めております。どうぞよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕よろしくどうぞお願いいたします。
本日は、芳野委員、土居委員、安永委員、小林慶一郎委員、平野委員、そして広瀬委員、6名の方から、本テーマに係る意見書を御提出いただいております。こちらはお手元にお配りしてございますので、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、ただいまの両主計官の説明に対して、委員の皆様方から御意見、御質問を頂戴したいと思いますが、初めに、いつもながらのことですが、やり方を少し申し上げておきます。
まず、会場にいらっしゃる委員の方は、御発言ある場合にはネームプレートを立てて合図をしていただきます。それから、テレビ会議システムの方は、挙手するボタンのクリックでお知らせを願います。
なお、今回御出席いただいている方、人数が大変多いので、毎度ながらで大変恐縮でございますが、御発言は2分以内ということで、よろしくお願いいたします。
それから、会場から5名程度、それからテレビ会議システムから5名程度、そうした形で順次御指名をさせていただきます。会場の皆様方は、備付けのマイクボタンをオンにして御発言をいただいて、終わりましたらオフにしていただく、それから差し支えなければ、できるだけマスクを外してマイクに近づいた上で御発言をお願いしたいと思います。テレビ会議システムの方は、ミュートを解除して御発言いただいて、また、ミュートに戻していただくようにということでお願いいたします。
それでは、会場の方から、御発言をお願いいたしますが、それでは土居委員から熊谷委員まで、5名の方に順次御発言をいただきたいと思います。
初めに、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕中座いたしますが、御配慮いただきまして、ありがとうございます。意見書もございますが、私から3点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、かかりつけ医機能の強化は待ったなしであると思います。制度の定義を明確化することも大事ですが、むしろ診療報酬改定で、かかりつけ医を真に果たす医療機関が算定できるように要件を定めて、包括払い化を進めていくことが必要であると思います。
それから入院医療についても、更なる包括払い化が必要であると思います。そのためには、1人1日当たりの包括払い制度PDPSから、1入院当たりの包括払い制度PPSへの移行を積極的に進めるべきであると思います。
最後に、雇用調整助成金との関係ですが、労働保険特別会計雇用勘定は、先ほど主計官からも説明があったように雇用調整助成金の話もありますが、失業等給付もこの勘定で行っています。ところが今回の新型コロナ禍で、失業率が上がらずに済んだことは良かった面があるのですが、雇用調整助成金と失業給付、なかんずく求職者給付についての役割が不明確になりました。確かに雇用調整助成金で失業が防げましたが、逆に失業等給付はしなくてよかった反面、積立金を雇用調整助成金に回すような形になって、どちらがどのようなリスクに備える給付なのかが不明確になったと思います。
ですから、新型コロナ禍を受けて、リスクをどのように備えるかを、やはり特別会計での勘定で再整理していただく必要があると考えています。その再整理なく、保険料収入が足らないから国庫負担を増やせという議論は、私はあり得ないと思います。
そして、そのリスクに見合った保険料を、まず設定していただいて、その後に、国庫負担がどのように行われるのか、国庫負担を含む失業等手当の給付をするのか、国庫負担のない雇用調整助成金で給付するのかを考えるべきであると思います。
現役世代の保険料は非常に重い負担になっていることはよく分かりますが、雇用保険だけ払っているわけではありません。医療保険、介護保険、年金保険も、保険料を払っているわけですから、診療報酬を上げ過ぎずに、医療保険の本人負担、事業主負担保険料が上がらないようにしながら、雇用保険の保険料も考えられるようにすることが必要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。私からは3点申し上げます。
まず、医療機関の経営実態の見える化についてです。春の財審でもありましたが、事業報告書を紙資料でアップロードしていくという点は早急に進めていただきつつ、とはいえ、データによる分析ができることのほうが重要であると思いますので、次のステップに向けて早々に進めていただいて、早く医療経営状態を見える化し、次の策を迅速に練られる環境構築を進めていただきたいというのが1点です。
また、雇調金と雇用保険について申し上げます。雇調金は、コロナが始まって1年半以上たっていますが、そろそろ出口のほうに進んでいっていただきたいと思います。現状は、人材を留め置くことには寄与しているのですが、健全な労働移動の阻害にはなりかねない状況であると思います。徐々に段階的にでも、次のステップに移っていただきたいと思います。
雇用保険については、数年前、積立金額が相当積み上がっていたこともあって、いろいろな施策を練られるような状況でしたが、この2年で環境が大きく変わりました。かつ、この2、3年、むしろ少なめに徴収をしていたと考えることが妥当であり、元の状態に戻していく方向で検討するのは妥当であると考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。御報告ありがとうございました。
今、横田委員も言われましたが、17ページ、20ページにあるコロナ補助金が医療機関に与えた影響についてですが、非常に重要であると思います。データの取得に問題があるならば、どこにボトルネックがあるのかを明らかにしていただきたいと思います。コロナ補助金によって医療機関がどのような状態になったのかを見える化して、今後の政策に反映していただきたいと思っています。
また、雇用関係について、68ページ以降にあるコロナ特例があり、緊急的臨時的な補助金があるわけですが、これらについてもエビデンスに基づく分析によって検証を続けていくことが重要かと思います。新たにデータが出てくると思いますので、引き続き分析に基づく政策への反映をお願いしたいです。
そして、直接の資料はありませんが、公衆衛生は社会保障の1分野ですので、ワクチンの接種に関する事業についてです。本日の午前中、ワクチン接種事業の行政事業レビューをやっていましたが、現在進行中の事業であるから、現時点での検証は難しいかもしれませんが、国の一大事業であって、全ての自治体を巻き込む巨大事業で、多額の経費がかかっていますので、事後的には必ず検証しなければならないと考えています。ワクチンの打ち手や看護師の確保、アルバイトの確保や、ワクチンの運搬・保管などにおいて適正なコストになっていたのか、きっちり振り返ることが大切であると思います。
最後に、コロナ関連をひとまとめにして、どこかの段階で分野横断的に歳出の検証が必要かもしれないと思った次第です。それによって、今回の経験を将来に蓄積することができると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。私から2点をお話ししたいと思います。
コロナに関してですが、今、中東欧ではまたコロナの波が来ていると言われていて、ロシアではロックダウンが始まっている。日本ではなんとなく安定していますが、あくまでなんとなくで、なぜ安定したかがよく分からない状態です。第6波が来る前に、“いざそれが来たときに、次は本当に対応できるのか”については考える必要があると思います。また医療が逼迫しているという話は、もう再三再四出過ぎていることなので、今のうちに何とかならないか。手がつけられるところからつけるべきであると思います。
病床を埋めないと経営問題になるという報酬制度は、やはり根本的な問題であると思いますので、この点をどう見直すか。一括払いの報酬制度に変えていくというのも、それから1入院当たりに変えていくというのもそうだし、かかりつけ医もそう、全て問題になっている点を解決していく必要がありますが、何か1つから始めて、きちんと医療の逼迫の問題を解決できるようにしていく必要があると思います。
2つ目は雇用調整助成金の話です。ここで重要になってくるのは、やはり線引きであると思います。失業率も低くて、デフォルト率も低くて、非常に良いのですが、これがなくなった途端、急に失業率が増えて、デフォルト率も悪化したという話になりかねない状況かと思います。これをあまり引っ張り過ぎると、国が政策を失敗したので、失業率が増えて、デフォルト率も上がったのであると言われかねません。やはり国の役割の線引き、どこからどこまで国庫で負担するのか、土居先生の意見にありましたが、その辺はもう1回線引きを見直していく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、お願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。何点か申し上げます。
まず、36ページで、基本方針として、三位一体で進めるということですが、これについては全面的に賛同いたします。その際、やはり徹底的な見える化を伴う形で推進をしていただきたいと思います。
2点目として、医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし、こうした大原則の下で、徹底的な医療提供体制の改革を断行することが喫緊の課題です。例えば、なんちゃって急性期病床、幽霊病床という言葉が人口に膾炙しておりますが、これは本当にゆゆしき問題です。やはり医療提供体制の改革がない限り、言葉は悪いですが、ざるに水を注ぐようなものであって、現状追認型で支援の更なる要件等の緩和ですとか、財政支出の拡大を招くという悪循環に陥っているのではないかということを申し上げます。
財政面の課題としては、40ページ、41ページにあるものを全て実現していただきたいと思いますし、本質的なところでは、資料に書いてございますように、診療報酬体系を、インプット重視、量重視、医療機関本位のものから、アウトカム重視、質重視、患者本位へと変えていくことが肝要です。例えば、1入院当たりの包括払い制度の導入に加えて、地域ごとに点数を変える、これは13ページで指摘がございますが、そこまで踏み込む形で徹底的な改革を行っていただきたい。これが2点目です。
3点目として、かかりつけ医に関しては、先ほど土居委員からあった御意見に全面的に賛同いたします。
4点目として、医療・福祉分野の待遇改善ですが、私は2つポイントがあると考えております。1つは、職員の実際の賃上げにつながる実効的な仕組みを作ることで、例えばマイナンバーを活用して、現場の職員に直接支給されるような仕組みも検討するべきではないでしょうか。
もう一つのポイントは、社会保障・税の一体改革などを通じて、いずれは安定財源を確保する議論へとつなげていくことが重要であると考えます。
最後、5点目でございますが、質を高めながら、医療費全体をコントロールすることが最終目標でございますので、例えば、中長期的には医療費の給付水準そのものへの直接的な規律、これは13ページに記述がございますが、こうしたところまで踏み込む形で、ぜひ検討していただきたいと考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからウェブで参加の方5名に御発言いただきます。佐藤委員、福田委員、田近委員、伊達委員、田中委員、この5名の方に御発言いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは初めに、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いいたします。私から3点、コメントさせていただきます。
まず、14ページに関わるところですが、補助金について、これは何名かの委員の方からも御指摘があったとおりですが、補助金をもらっておいて、結果的にどうなったのか、その使途及びコロナ患者の受入れの実績について報告、情報がないのはゆゆしき事態であると思います。本来、補助金であれ、診療報酬もそうであると思うのですが、もう少し成果払い、つまり、コロナ患者を何名受け入れたのかという成果払いの要素があっていいのかと考えるところです。
それから次に42ページから、かかりつけ医についてのお話がありましたが、かかりつけ医については、本来、診療報酬それ自体も、例えば包括化をさせるとか、いわゆる人頭払い、そちらのほうに持っていかないと、ある意味きめ細かい対応が難しくなるような気がします。関連して、今オンライン診療の仕事をしているのですが、オンライン診療の中に、診療前相談というのがあります。これが診療かどうかです。診療前相談なのだから診療ではないだろうと言ったらそうですが、これはどうもお医者さんによって判断が違うらしいということになります。となれば、これはやはり出来高払いをベースにした診療報酬なので、診療か否かを問われているわけですので、この辺りも包括化するべき理由の1つになるかと思います。
先ほど処遇改善加算の話もありましたが、これまでも含めて考えると、ある意味、成果払い的な要素を、診療報酬に入れていく要素はあるかと思います。実際に、給料が本当に増えたのかどうかとか、そうしたことに基づいて診療報酬をある意味では後払い的にしていく、こうしたことで、診療報酬の体系そのものを転換する、そうした契機にしてもよいかと思います。
最後に、地域医療構想についてですが、今日、日経にも書かれていましたが、地域医療介護総合確保基金が使われていないという話がありますが、実はこれ、規制改革推進会議でも問題になっていまして、地域医療構想の遅滞です。やはり現場でいろいろなお医者さん関係の方々が調整会議を開いているはずですが、どうも調整会議に全て丸投げしているらしく、調整会議の割には何も調整できていないという状況になっているようです。やはり、もう少し都道府県がリーダーシップを発揮して、医療の機能分化を進めていくこと、これがあってしかるべきかと思います。
私からは以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、福田委員、お願いいたします。
〔福田委員〕ありがとうございます。2点、コメントさせていただきたいと思います。
まず、1点目は医療の経営実態に関してですが、見える化という形での重要性は私もおっしゃるとおりだと思います。事務局から限られた資料ではありますが、非常に詳細な説明があって、問題点をあぶり出していただいていることは非常に良いことで、こうしたことを続けていただくことは重要であるとは思います。
ただ、私の専門は金融の分野なので、金融の分野の立場から少し考えてみると、通常、企業の経営実態を見るときには、必ずしも損益計算書だけを見るわけではなくて、バランスシート、貸借対照表のようなストックベースがどうなっているのかということも見ているわけです。実際に日本の一般事業会社であると内部留保が非常に多くて、これを過剰ではないか、どうなっているのかというような話は出てくるわけです。そうした意味では、こうした企業実態は、もちろん単年度の利益が上がったかどうかも大事ですが、健全性を見る上では、そうしたストックベースの議論ができるような調査をもう少ししていく必要があるとは思います。
実際私は報道ベースでしか分かりませんが、今回、補助金で得た利益を資産運用して利益を上げたという医療法人の報道なども出ていました。そうしたことは決して望ましいことではありませんので、資産や負債といったストックベースでの議論も今後は深めていくようなことが重要ではないかとは思います。
2点目は雇用に関してですが、ある程度雇用を守るということは当然重要ですし、昨年のコロナが起こった当初は、ともかく守らなければいけなかったという形で補助金を出したのは適切であったとは思います。しかし、コロナが発生してからある程度時間がたった段階では、やはり少しずつ、過度に雇用を守ることは修正して、労働移動を進めていくことは大事だろうと思います。
日本の場合には、確かに失業率は非常に少なくて、雇用を守ることができたという大きなメリットはあったのですが、諸外国と比べて、そのトレードオフとして賃金が上がってないという大きな問題があります。雇用を守って賃金も上げるということは、企業としてはなかなか難しいわけです。雇用を守れば賃金は上げにくい、雇用を守らなければ、賃金は相対的には労働移動が起こって賃金が上がりやすいという関係があります。今、世界経済で起こっていることは、海外ではインフレが非常に深刻になっていて、アメリカとかヨーロッパではインフレが深刻になっていることです。その一方で、日本は相変わらず物価が上がらない状況が続いていて、これはやはり賃金が上がらないことから来ている面は非常に大きいわけです。
これは、補助金で雇用をかなり守ったことで労働移動が進まなかったことの1つの側面として起こっているということも、やはり我々は考えるべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いいたします。
〔田近委員〕ありがとうございます。37ページについて、私の視点は1点で、既に多くの人、熊谷委員や佐藤委員から指摘がありましたが、今回のコロナも含めて、日本の医療体制で本当に分かったことは、1つは地域医療構想をどう徹底的に実現するか、ということです。今日お話があったのは、介護配置の7対1の申請がいまだに続いているとか、それから地域医療体制について、高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床の分化が進んでいません。
私が今日言いたいことは、地域医療構想を現実的に実現していくための方法を、財審でも具体的な議論、あるいは提案してはどうかということです。すなわち、ここで示されている、高度急性期、急性期を、この図で2020年度から25年度に17万床減らさなければいけない。すると、各都道府県でそれを実現していく。逆に言うと、実現してないところは、やはり、診療報酬の点数の格差をつける。1つのアイデアですが、そのぐらい思い切ったことをして、これを実現させる必要があると思います。
もちろん、そのベースにあるのは、不十分かもしれませんが、各当事者同士の話合いが必要であるとしても、私の主張は、地域医療構想を実現する具体的な手段というか、診療報酬をそろそろ議論してよいのではないかということです。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、伊達委員、お願いいたします。
〔伊達委員〕詳細な説明ありがとうございます。今回の医療関連全体の資料を俯瞰してみますと、これまで何年も議論されて模索しているテーマが出てきていますが、それはつまり、何年も改善されていない現れです。様々な問題が継続的に山積してしまっているのが医療の状態であり、また、例えばコロナ補助金が過剰であるということも、春の資料でも既に読み取れたはずですが、今回のデータのような把握・分析が出てくるまでに、時間がかかりすぎます。よって対応策が後追いになり、タイムラグがあるという印象があります。
つまり、構造改革がとにかく進まない医療分野と、リアルタイムに活用できるデータがそろう基盤ができない、分析ができないという大きな課題であると思います。
その中で今後の基本方針として三位一体の改革が必要であるということで、まさにそのとおりであると思うのですが、やはりそれを実行するためには、合意形成を感情論とか個別最適論で決めるのではなくて、ベースとなるデータを、ファクトというものをきちんとそろえていくことが必要であると思います。
よってデータの標準化、統一化、リアルタイムに見える化は徹底する。データは、これだけ国費を使っているのですから、国に帰属し、そのデータをもってPDCAを回し、適正配分をするという方針を明確にする。そして、そのデータを基に、コスト管理、質の向上をしていく。そのためにイノベーションが必要であると思います。
また、コストだけではなく質を上げていくためには、運営の在り方も変わっていかなければいけないということを考えると、医療についても、今よく言われているデジタルトランスフォーメーション、DXを進めていく。つまり、医療DXを、国として、大きな方針として進めるということを示していくことによって、新資本主義の中での、日本の未来の在り方が示せるのではないかと考えています。
そうした予算をつけていくべきであるということも、もう少し議論していただけないかと思います。つまり、個別最適の議論が多いのですが、もう少し大きな医療のビジョン、新しい時代に合わせた医療のビジョンを示していく。そのための予算をつけていくということをしていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕田中です。御説明ありがとうございます。医療に関して2件と雇用について1件、お話しさせてください。
まず、医療機関へのコロナ補助金の適切な助成におきましては、やはりまず、デジタル化の進捗の遅れが障害になっているところも大きいかと思います。20ページの資料でも、医療法人の報告書が紙媒体であり、それへの対応をなさるという紹介もありましたが、現状では客観的な病院経営の動きの迅速把握にはつながってない様子ですし、打ち手の成果をリアルタイムに近い形で把握・集計することを条件として、このような助成がなされていく流れを構築して、公開して検証していくということが必要かと思います。
また、地域医療構想は、今世の中の関心も高まっている中で、患者の立場から、かかりつけ薬局も含んで、医療にアクセスするようなライフスタイルの変化という視点から、示していく必要があるのではないかと感じます。
雇用に関しましては、今回、国の責任の範囲の再構築ということを御紹介くださいましたが、重層的なセーフティーネットが施行されて、適切な享受という点からも、今回のコロナのような環境下では、不公平感が生じたり、本当に困っている人が救われないという現実が出されたりしておりますが、国の政策という観点のみならず、地域や国民にとって、自分事として捉えられるように、冷静かつ具体的に示した上で、国の責任の範囲の再整理という際には、様々な立場の方の声が集約されているという打ち出し方が求められるかと思います。
以上、よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここからまた、会場の方に御発言いただきます。大槻委員から十河委員まで指名いたしますので、初めに大槻委員、どうぞお願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。医療関係2点と雇用1点でお願いします。
全体として、今も田中委員からありましたが、デジタル化の改善の余地が大きいという印象を受けます。そして20ページ目の、例えば医療機関のデータの電子化ですが、やはり全医療法人となると、恐らく中小の機関に対しての何らかの支援を、お金だけではなくて、恐らく、何らかのマンメイドであるとか、人ベースの支援が必要かと思います。
また、先月から始まったマイナンバーです。医療機関の保険証としての活用ですが、これはどちらでもできるということだと、恐らくあまり利用化推進に結びつかないのではと思いますので、お薬手帳との自動連携など、一層の利便性の向上をお願いしたいと思っています。
それと保育ですが、今年度からの新子育て安心プランで、14万人増加ということで、目標になっているかと思うのですが、量の面もさることながら、やはり質の向上も何らか担保していかなければいけない。そうなったときに、やはり保育所の経営ですとか、それから働く方々のモチベーション向上のような賃金体系の推進など、それから第三者評価を使ったPDCAサイクルの推進なども考えていかれたらと思っています。
それから雇用については、日本でフリーランスの急増が言われていますが、一部のデータだと、この1年間で5割も増加したのではということもあります。こうした方々には、説明の中にもございましたが、既存のセーフティーネットだけでなく、スキルアップの機会がやはり少ないと言わざるを得ないので、今後、一般会計の範囲の見直し等について、そうした整理を行うのであれば、雇用の形態にとらわれない、柔軟な働き方に対応するような保障制度やリスキリングの機会を与えるような施策を考えていただきたいと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕私は、全般的に、やはり負担なくして給付なしという応能負担の考え方をどんどん進めていくべきではないかと思っていまして、これに対して国民の理解もかなり進んでいるのではないかという気がいたします。というのは、この間の衆院選において、与党は、消費税を当然、下げないと言っているわけですが、野党は下げると言っている、あるいはゼロにするとか言っていたわけです。実は4年前の衆議院選挙、与党は消費税を上げると言って、野党は上げないと言って、支持はやはり与党に集まったわけです。これは、やはり国民が、今回の選挙でも給付はすると各党言っていたわけです。では、財源はどうするかといったときに、いや、税も取らないということに対して、本当かというところに疑問を持っているということが出てきたのではないかと思っています。特に最近、若者の投票率が上がって、若者は最近、新型コロナ禍でアルバイトがなくなったり、自ら痛い思いをしていて、政治に関心を持っているということですが、やはり将来、自分たちが生きていくための国の財源が確保されているかということにも意識を持ち始めているのではないかということがあると思います。やはり、給付を受けるためには財源が要るということで、よく政治家の中でも財源はあります、国債ですとか言う人がいるのですが、国債は財源ではないので、そうしたところから、やはり日頃から、小さなところからでも取れる人からは取るという応能負担の考えを、全般的にこの分野で徹底してもらいたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、芳野委員、お願いいたします。
〔芳野委員〕ありがとうございます。時間も限られていることから、何点かに絞って発言をさせていただきます。なお、席上に意見書を配付させていただいておりますので、今後の建議案の取りまとめに、ぜひ反映をいただきたいと考えております。
まず、社会保障総論についてですが、高齢化や独居高齢者の増加等が進むことにより、社会保障ニーズがますます高まっていく中、将来にわたり誰もが、患者本位で質の高い医療を切れ目なく受けられるようにすることが必要であると考えております。そのため、社会保障関係費の伸びを抑える努力を行い、高齢化による増加分の適正化を図ることが必要です。ただし、こうした取組の推進に当たっては、全ての人の医療アクセスと医療の質が損なわれることのないよう丁寧に検討する必要があります。
2つ目として、診療報酬改定についてです。診療報酬改定と薬価改定の関係として、薬価改定財源の是非など、財政のつじつま合わせに着目した資料が提出されています。しかし、国民の命と暮らしを守る医療の在り方に直結する診療報酬と薬価は、診療・療養環境及び医薬品それぞれが果たすべき役割や機能を担保する価格とすることを基本に、それぞれの改定財源を確保する必要があります。その上で、厚生労働省中央社会保険医療協議会、中医協において、充実あるいは適正化を図るべき項目について、エビデンスに基づき、丁寧な議論を行い、結論を得るべきであると考えます。
同時に、医療・福祉分野で働く労働者は国民の命と暮らしを守り支える最前線で働いており、このことに見合った処遇改善を通じて人材確保を図ることが不可欠です。その際には、医療・福祉分野それぞれについて、既存制度を踏まえつつ、財源が確実に労働者へ行き渡るようにするべきです。
続いて、雇用関係について触れたいと思います。雇用情勢の変動に伴う雇用保険の支出の上下幅が大きく、雇用保険がその目的を果たしていくためには、将来の危機の到来などの環境変化による雇用情勢の悪化に備える必要があり、労働保険特別会計の雇用勘定を一定以上の水準に保つことが不可欠です。雇用保険財源が危機的状況を迎える現状においては、求職者支援制度を含めた雇用保険の適用拡大を進めるとともに、一般会計からの繰入れを通じて、雇用保険の財源安定化が図られるべきです。
適用拡大を含めたセーフティーネット機能の在り方に向けた議論を進めるべきとの記載がありますが、まずは国庫負担割合の引上げがなされるべきであり、雇用保険に関連する議論は、あくまで労働政策審議会における合意が当然の前提です。そもそも政府が雇用保険に国庫負担する意義は、政府が主導する雇用政策の責任を明確化するものであり、雇用保険の適用拡大の議論の方向性によらず、国庫負担割合を直ちに本則に戻すべきです。コロナ禍における業況や労働者への影響に鑑み、労使の雇用保険料は引き上げられるべきではないと考えます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。新型コロナで医療のいびつな問題が、一般的な人にも分かるようになったと思います。一方で、その理解としては、医療費は糸目をつけるべきではないというか、お医者さんはもっと増やすべきである、もっと医療費は使ってもらっても新型コロナだからしようがないのではないか、そうした意見も世の中には存在していることも事実です。ですので、財審がどこまで世の中の空気を読むべきかというようなお話もこの前ありましたが、ここで提示されている様々な改革策が、単に財審が医療費を削減したいからやろうとしているわけではなく、これが最も、今、コロナで顕在化された様々な問題を解決する手法であるということを、強く打ち出しながら、進めていくことが良いのではないかと思います。
これは医療データですとか役割分担、あるいはなんちゃって急性期病床の問題、かかりつけ医がいなくて不安だったこと、そうしたことそれぞれについては、国民も深く理解している部分もあるのではないかと思います。
医療従事者や社会保障の従事者の待遇引上げですが、これは誰が何をやるかというところの見直しも含めてやったほうが良いと思います。つまり、医療においては職域の分担ですが、普通の人が見ても、これは絶対にお医者さんが関わらなくても良いのではないのというところも、医師が関わらなくては進まないという状況になっていた点が幾つもありますので、待遇を改善するのと含めて、職域の整理もやっていただきたいと思います。
雇用保険ですが、先ほど土居委員のお話にもありましたが、そもそも日本の財政の根本的なところに、負担と給付の関係がどんどん不明確になってしまった結果として、国民を説得するのがすごく難しくなってしまったというところがあると思います。そうした意味では、雇用財源の問題も、何を税金でやって、何を保険でやるのかというところの再整理はやはりぜひ必要であると思います。特に気になるのは、雇用保険の財源の苦境も分かるのですが、一番弱いフリーランスの人たちは、そもそもこの枠内に入っていないわけで、枠内に入れた比較的保障されている人たちを助けるために、みんなのお金である税金から投入するということは、理解が得られない部分もあるのではないかと思います。もちろん国の雇用の責任という部分もあるので、投入したらいけないという話ではないのですが、まず、一番最初に何を税の負担でやるべきで、何を保険の負担でやるべきかという、きっちりとした整理は必要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、十河委員、お願いします。
〔十河委員〕私からは3つ申し上げたいと思います。今回、大変踏み込んだ提案をされていて、まさにコロナの、少し休止しておりますが、まだ第6波も懸念される中で、非常に国民にとりましても、この提言に関しては賛同してもらえるものではないかと、個人的にも、およそ、ここに提示されているものに関しては賛同いたしたいと思います。
その中で、39ページにございます地域医療構想に関してですが、今日まさしく朝の日経新聞にも、病床再編が進んでいないという状況が1面の記事に出ておりました。これもそうですが、まさに、ずっと進んでいない地域医療構想を、どのように具体的に進めていくかということが、いよいよ待ったなしの状況にあるということを私も感じております。そのためには、やはりDX化を同時に進めていく必要があると思います。
それから、44ページ、45ページのかかりつけ医のところですが、上の表内のポツ4つ目に、連絡がつかない、病院に行けないということが書いてございますが、実は私も発熱を今年いたしましたときに、まさに同じ状況になりまして、いわゆるたらい回しといいますか、1日かなり苦しんだということがございました。そうした体験を基にしても、やはりこれは、およそたくさんの国民が同じような経験をされていると思いますので、ここも国民には訴えかけられる内容ではないかと思います。
それから最後、66ページからの雇用関係につきまして、先ほど大槻委員もセーフティーネットのことを触れられておりましたが、私も仕事柄、観光やホテル関係、そうした飲食に従事している方とつながりが深いということもございまして、特にここは女性の非正規雇用者が多いです。やはり女性の中でも、例えばシングルマザーであるとか、相対的貧困率も上がっておりますし、あるいは昨今、女性の自殺者が増えているといった懸念されるデータも出ておりますので、やはりセーフティーネットの在り方、こうした弱者の方たちに向けた在り方を、より具体的に考えられたらよろしいのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインで参加の方を御指名します。河村委員、堀委員、権丈委員の三方に御発言いただきたいと思います。
初めに、河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。ほかの委員の方と重なる部分もかなりありますので、要点だけ簡単に申し上げさせていただきたいと思います。
まず、医療費のところ、多くの方がおっしゃられましたが、補助金をこれだけ投じて、17ページの辺りです、それが一体どこに使われたのか、やはりきちんと明確に示していただくことが必要なのではないかと思います。ですので、医療経済実態調査などできちんと補助金の分析もやってもらうように促すとか、そうしたお話も出ていましたが、賛成ですし、ぜひそうした方向で促していただけたらと思います。
その後の資料のところでも、やはり診療報酬体系も、医療機関本位になっているという御指摘があって、まさにそのとおりであると思います。私、厚生労働省の国の病院評価とか少し関わっていまして、そうした方々とお話しすることもあるのですが、今回のコロナ関係でこれだけいろいろ補助金が出てというお話、当事者の医療関係者の方々がどうおっしゃるかというと、あれだけ大変な思いをした、本当に現場の方々、御家族のこともあるから、うちにも帰れないような感じで、本当に泊まり込みになって、あれだけ大変な思いをしてやったのだから、それに国が感謝してくれたのだから、たくさんお金をくれて、補助金をもらってよいではないかということをおっしゃるのです。そうした見方があるのは事実でしょうが、でも、国民の見方はどうかというと、必ずしもそれで良いとは思っていない。やはり、必要なところをきちんと国で補助金を出すなりすることはやるべきだが、どう使われたかをきちんと見せてほしいというのが、大方の国民の思いではないかと私は思います。
ですので、診療報酬改定とかこれからまたいろいろ、中医協や厚労省で御検討されると思うのですが、国民の見方、国民の思い、気持ちを言ってくれるところが、この国のどこにあるのかということを考えたとき、ぜひ、その1つとして、やはり財審としてそうした方向を打ち出していただきたいと思います。
財審は、医療費を削りたいから、やりたいと思っているというだけではなくて、国民の思いの代弁として、やはり負担も伴うのだから、どう使ったのかを明らかにしてほしいということを強く打ち出すのが良いのではないかと思います。
見える化については、本当に、この図の病院調整などでもそうでして、実際に調整が途中からそれなりにうまくいった神奈川県の話などを聞くと、どれだけ協力しているかを見える化すると、みんな本当に疑心暗鬼で協力しなかった病院が参加してくれるようになったという話もありますし、本当に事後の検証もそうですし、これからは、リアルタイムでの見える化を進めていくことが必要であると思います。
また、もう1点は雇用で、これもいろいろな先生方がおっしゃられていますが、やはり局面が少し変わってきています。この局面で、ただ今までの仕事の職にとどまれることを支援するだけで良いのか、こうした辺りで欧米各国などと取組に差が出ていますし、私などはそれが、それぞれの国の潜在成長力というか、危機からの回復の局面での立ち直る力に影響が出ているのではないかと思います。そうした経済の活力というか潜在成長力が、福田先生もおっしゃられていましたが、それこそ、インフレ、物価上昇率の格差になって出てくるのではないかと思います。ですので、この局面としては、どちらかというと、やはり新たな需要に向けて、うまく労働力の移動が進むように、リカレントであるとか、そうしたところを促すほうに力を入れていくほうが良いのではないか。
それから、今回の危機で明らかになった非正規の方々の問題は、今後どうやって支えていくのか、今回はもうやむなく国費でお支えするということで、もちろんそれでよいと思いますが、やはり、きちんとした雇用の保障の仕組みが必要なのではないかと思います。ですので、事業者の方々から、中小企業などから、とても出せないというお声があるのも聞くこともありますが、そのように最初から決めつけてしまうのではなくて、みんながきちんと、それなりの保障を受けられるような仕組みの中に取り入れていく、もちろん当事者も、御本人も、労働者の方も負担するわけですし、そうした中に入れていくことを、中長期的な意味でも考えていくことが必要ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、お願いします。
〔堀委員〕5点あります。まず、1点目は、現在の診療報酬の限界についてのお話が中心であったかと思いますが、御指摘のとおり、マクロの改定率は政府が政治経済状況を見据えて、ミクロの点数配分や要件は中医協で決めております。イノベーションを推奨するようになっているかといいますと、現状の医薬品の薬価制度は不透明、複雑なところも多いですが、必ずしもそうなっていないと思います。コロナ対策のところでも、新薬の開発であるとか国内ワクチン開発の重要性が認識されていたと思いますが、イノベーティブな新薬を創出できる環境を創出することは、この国の経済発展や安全保障の確保という意味で重要であると思いますので、診療報酬の構造を見直す必要があると思います。
2点目。診療報酬や介護報酬の引き上げがそのまま直接的に労働者の処遇改善につながるとは限らないと示されています。報酬改定の上昇分が実際に何に使われたのかなど、労働分配率の課題もありますが、把握したほうがよいかと。全体の支払いは診療報酬や介護報酬で規定されていても、地域における労働市場の需要と供給の中で賃金や処遇は決まると思われますが、全国一律の診療報酬のみできめ細かく対応するには限界があるかと。特に介護報酬につきましては、後ろのほうにありましたが、女性の非正規が多いということも関係するかと思いますが、介護報酬を引き上げるだけでは、引き上げた分の処遇改善にはつながらないかと。人材確保や人材育成のコストを現行の診療報酬や介護報酬だけでみるのは限界があると思います。今回の御提案にもありますが、診療報酬改定等で意図した目的をどれだけ達成したのかなど、PDCAではないですが、政策としての有効性を評価することも必要かと。、さらに、意思決定に国民的な議論を含めるという意味で中医協そのものの在り方の改革といいますか、そこも検討してもよいのではないかと思っております。
それから、3点目。地域別の診療報酬につきましては、「保健医療2035」の提案をこちらに載せていただいていますが、大賛成です。都道府県ごとに地域医療構想を進めるためにも、何かしらの政策手段が都道府県側にない限り進まないと思いますので、地域主体の、治し支える医療に転換するためにも、都道府県が積極的に関与できる政策手段があると良いのではないかと思います。医療機関の経営の見える化についても、賛同いたします。以前から指摘されていますが、基本的には、つまるところ、診療報酬の原資は税金と保険料なわけです。日本の医療機関の多くの収入は診療報酬に依存している以上、使途の説明責任、アカウンタビリティーの確保がはかられるのは必然であると思います。医療経済実態調査の2年に1回のサンプルというのは、過去の歴史的な経緯では意義もあったと思うのですが、DX化の遅れというのも指摘されていますが、これからの新しい時代を考えますと、よりリアルな実態データに反映させるという意味でも、事業報告書等のデータをアップロードして、それが最終的にはデータベースを蓄積するようなことも必要なのではないかと思います。
4点目は、資格との関係です。先ほども少し触れました女性の非正規の処遇改善のところで、介護報酬の引き上げに言及しましたが、労働分配率の問題もありますがそれだけでは限界もあります。より直接的な処遇改善の在り方として、例えば、現在縦割りの業務独占の国家資格の専門職として医師、看護師、保健師等がありますが、医療系と異なり多くは名称独占の資格ですが、介護、保育、社会福祉系の国家資格も複数あります。複数専門職間で共有可能なタスクやスキルもあるのではないかと。例えば今回のコロナの保健師不足と言われましたが、あれは本当に保健師でなければできないものであったのかなどを考えますと、その他の専門職等でも担えることもあったのではないかと。専門職間のタスクシフティングやタスクシェアリングといったことも必要ではないかと。人口減少する中、医師については将来的に需要過剰になることが、医師需要供給分科会等で指摘されていますが、医師以外の資格専門職にロールシフトしていくことなども必要になるのではないかと。タスクシフティングやタスクシェアリングの在り方も含めて、国家資格の有資格者の仕事や待遇を「見える化」していくことが必要なのではないかと思います。
最後に、5点目。かかりつけ医の制度化につきましては、前回のヒアリングのときにもお話ししましたが、基本的に大賛成です。ただし、かかりつけ医の定義を制度的に明確にするなども必要ですし、制度とセットで診療報酬の話も出てきましたが、人頭払いというよりは、その要素も当然一部にはあるのですが、むしろ、成果に連動する包括払いのようなもの、たとえば、P4Pと言われますが、パフォーマンスに応じた支払い方式を組み合わせるとよりと思います。それからオンライン診療と要件を組み合わせることが前提かと。また、保険外併用診療費を活用した受診時定額負担などもあわせることによって、患者の受診行動の適正化や医療時間の機能分化を進めることにもつながるかと。今、医師が必要だから医師をそのまま増やすとか看護師をそのまま増やすのではなく、2040年、2050年を見据えて、多様な専門職種がその時々のニーズに柔軟に合わせてステップアップしながら働けるような体制を、今のうちからつくっていくことが必要なのではないかと思います。
あと追加で、本当に最後に1点だけ。診療報酬・介護報酬の引き下げというのは、結局は国民の医療費の伸びの抑制になりますが、逆に、診療報酬・介護報酬の引き上げは、国民の医療費、保険料の負担上昇をもたらします。結局、どちらを選択しても誰かの痛みが伴うことになりますが、両方が対になっているということは、給付と負担の関係性が見えにくいことから、なかなか国民には理解されていないところもあります。受けられるサービスの選択肢にも関わると思いますが、先ほど宮島委員からもあったと思うのですが、国民の理解を促すようにより見やすくするような工夫も必要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕どうもありがとうございます。既に、ほかの委員の方もお話しになられたところもあるのですが、医療の提供体制の改革についてでございます。
医療の提供体制の改革は、医療の質の改善につなげていきたい、そして、ニーズのミスマッチも解消していきたいというところがあったと思いますが、これまでは関係者たちの自発性、自主性に委ねられた方法で、それがなかなかうまくいかなかったということかと思います。今回のパンデミックで、政策の方向性の正しさは確認され、そして、政策に実効性を持たせるために、政策の手法を考え直してみる、そうした御提案が多くあったように思います。3点ほどコメントさせていただきます。
まず、資料の39ページです。地域医療構想がうまく進んでこなかった歴史を考えますと、法制上の位置づけの強化はとても大切になると思います。地域医療構想を実行する都道府県の責務の明確化など、地域医療構想のPDCAサイクルを強化するために、責務と対になる都道府県知事の権限の強化も、資料にありますように医療法の中でしっかりと図る必要があるかと思います。
次に、45ページの左下にありますように、この国では保険証1枚で、いつでも好きなところでという意味でのフリーアクセスから、必要なときに必要な医療にアクセスできるという意味への転換が既に図られてきております。そして、提供体制をよりよくするためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えたかかりつけ医の普及は必須であると指摘されていました。その方向への改革が十分でなかったために、10月にも、草場先生が御指摘されたような、今回のパンデミック下、プライマリーケア段階での混乱や不幸が起こっただと思います。
また、多くの人たちも、相談できる身近な医師がいれば安心できるのにと思ったと思います。以前も話しましたように、少なくとも、日医と四病院団体が2013年8月に定義した、かかりつけ医機能を果たすことのできるような、かかりつけ医の制度化を図ってもらいたいと思います。なんちゃってかかりつけ医ということにならないように、しっかりとした機能を備えた制度化、その機能を果たすのに適した診療報酬の支払い、それは包括払いになるかと思いますが、そうした制度を日本の医療に組み込んでいく時期かと思われます。
それから、資料戻りまして、31ページになります。こちらで英国の社会保険と税の一体改革の御紹介がございます。給付を考えると、当然、給付と負担を一体として考えていくということは普通の話かと思います。安定財源の確保、負担の話も、ぜひ忘れないでいただきたいと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、会場のほうで、木村委員から、各委員の皆様方に御発言いただきたいと思います。
初めに、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。私からも短く3点だけ、申し上げたいと思います。
まず、社会保障費の関連ですが、御提出いただいた論点、どれも基本的にうなずけるような内容であると思います。同時に、表現も、いわゆる霞が関文学と違って歯切れの良い表現といいますか、11ページにあるような薬価のマイナス改定を診療報酬(本体)のプラス改定の論拠にするのは、フィクションにフィクションを重ねたものとか、こうしたストレートな表現は私好きでして、なかなか進まなかった社会保障改革に、こうした歯切れの良い表現は大事なのかなと感じました。
特に重要なのは、41ページにあるような診療報酬体系そのものの見直しであると思いまして、コロナで病床不足など様々な問題が表面化しましたが、これは資料にあるように医療機関本位の診療報酬体系に起因しているものが、やはり多いのではないかということで、新型コロナ禍の今こそ、そうした患者本位の診療報酬体系へと見直していただきたいということです。これはロングスパンの課題かもしれませんが、年末の診療報酬改定の中でも、ぜひ議論していただければというのが1つです。
また、補助金のことですが、こうしたこれまでやってきたような手厚い対応をいつまでも続けてはいられないとは思うのですが、私もいろいろ仕事上、非正規の方とか含めてよくお話を聞いたり、取材したりとかしているのですが、要するにコロナで何の落ち度もないのに職を失いそうになった人、多くの人が救われたということは事実ですし、また、労働移動と一口に言っても、そう簡単に書いても、これまた現場の話を聞いていると、よく分かるところなので、仮に縮減するにしても、働く人が安心できる施策をきちんと整えた上で、こうしたことをやっていただきたいというのが1つお願いとしてあります。
最後に、これは今日の議題とは直接関係ないのですが、社会保障費ということで、今、政府の経済対策として18歳以下に10万円を給付するという話があるようです。生活支援は重要ですが、果たして18歳という年齢の線引きは妥当なのか、配るのが一律でよいのかとか、これは景気対策なのか福祉対策なのか、いろいろ疑問が生じるわけです。経済対策は、来週中にも決まってしまうので、財審の建議に間に合わないかもしれないのですが、総額2兆円という大きな規模の支出とも言われているだけに、あえて意見を申し上げた次第です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。大変詳しい資料を、ありがとうございました。3点申し上げます。
まず、1点目は、団塊世代が後期高齢者となります2025年に向けて、具体的な次の制度改革の方針が必要と考えます。その上で、工程表を明確にし、実効性を高めるために、データを活用して見える化し、進捗を管理する必要があると思います。
特に、医療推進体制については、様々な問題が明らかになっており、地域医療構想の法制上の位置づけをより強化することとともに、医療機関の経営実態の見える化、データ管理、これは多くの方が言われましたが、その徹底が必要と私も考えます。
2点目、医療・福祉分野の処遇改善についてです。データで示していただいたとおり、労働分配率の適正化は重要と考えますが、これを機に、硬直的な制度の在り方そのものを見直すとともに、見える化を実現していくことが重要ではないかと思います。
3点目、雇用調整助成金に関してです。確かに弱者への配慮は、個別に必要ですが、全体として見た場合、労働者のモチベーション低下に加え、私は長期化によるスキルの低下という側面もあるのではないかと考えます。
また、労働移動が遅れれば、マクロとして事業構造転換、新陳代謝の遅れによって、経済ひいては雇用に悪影響が及びかねません。スキル習得や移動を促す施策に、そろそろかじを切るタイミングではないかと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちら側に移りまして、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。新型コロナウイルス感染症、COVID-19と後に名づけられる新型肺炎が確認されてから、間もなく2年になります。これは2019年の暮れに、湖北省武漢で確認されたわけです。その間、第5波まで感染波がございました。ちなみに、日本でも第5波です。実は、日本は第5波ですが、世界の多くの国は2波か3波か4波かしかなくて、G7諸国で、明確に第5波まであるのは本当に日本のみ、珍しいです。米国は5波ありますが、ワクチン接種の影響で第4波が不明確です。
今、世界全体では2週連続で新規感染者が増加しております。これは欧州地域、そして米国、地域では南北アメリカですね、及び西太平洋地域、これはアジアですが、増えておりまして、第6波の兆候が出始めています。今後、実際に第6波が拡大するかどうかは分かりませんが、今後もグローバル化によって新たな感染症が、パンデミックが起きる可能性は極めて高い。
こうした中、今回の資料を見ますと、今の医療制度、また、新たなパンデミックに備えた、我が国の問題点が割と分かるインプリケーションが多く含まれていると思います。
それで、1点だけ申し上げますと、まず、17ページです。これは前回の会議のときに私が質問させていただいて、一松主計官から御指摘いただきましたが、補助金を含めると、この2年間、2020年度、2021年度は過去の数年間以上の医療費の伸びが出ている。つまり、それが対応していました。ただし、それが本当に、政策目的が、特にコロナ対策で発揮できたかというと疑問でございまして、これは38ページの右側を御覧いただきますと、東京都における療養者数の推移、東京都は8月13日に5,908人という過去最高の新規感染者を確認するわけですが、9月1日時点で確保病床使用率は僅か65%にすぎない。
この背景としてよく言われたのが、OECD最大の人口比病床数がある我が国も、これは過去の議論にございましたが、要は、医師、看護師、特に看護師が足りない。看護師が足りないので65%にとどまった、こうした説明をされています。
ただ、これは、私はおかしいと思います。なぜかというと、24ページを御覧いただきますと、24ページの左側、今回2020年度までの職種別平均賃金の推移を掲載されておりますが、20年度の医師の賃金は増えています。ただし、看護師は減っているのです。
つまり、これだけの危機的対応、しかも看護師が足りないことで医療崩壊が起きているところであれば、本来、これはもっと増えていなければいけない。減っているということは、市場原理のみならず、政策も効果的に達成するような制度、利用制度に今はない。これは相当大きなボトルネック、制度的欠陥があるとしか言わざるを得ません。
やはり、そうしたところを、今回明らかになったわけですから、次のパンデミック、また今後の少子高齢化における介護人員の不足等に備えた対応が必要だろう。
具体的には、先ほど皆様御指摘いただいておりますが、やはりICT化による統計資料の整備、やはり見える化を発揮することで、国民の皆様に分かっていただく。これがやはり一番大事ですし、やはり賃金の問題があるのであれば、職種別の最低賃金制度、これは給付をすればよいという意見もあって、私も賛成ですが、聞くと、給付をもらったところはボーナスがカットされたという話も聞きますから、トータルで所得が増えないと意味がないので、やはりそうしたきめの細かい対応を医療制度でやっていかないと、今後やはり同じようなことがいくらでも起こると思います。ぜひ今回のコロナ禍を奇貨として、新たな医療制度の整備につなげていただきたいと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、合図があった方は全員これで指名したかと思いますので、一松主計官、田中主計官から、今御意見や御質問というか、大体御意見でございましたが、事務方から何か御回答できることございましたらお願いしたいと思います。
〔一松主計官〕貴重な御意見ありがとうございました。
委員の先生方の中に、今朝の日経新聞の報道についてお触れいただく方がいらっしゃったので、その点について申し上げておきます。
地域医療介護総合確保基金の執行残があるということでございます。もちろんその執行残の中には、今後のニーズを見込んで計画的に確保されているものがあると思いますが、やはり私の説明の中で申し上げた、診療報酬か補助金かといったときに、この手法は補助金ということでやらせていただきましたので、結果的に地域医療構想が進んでないという実態が見える化されたものであると思っております。仮に、これを診療報酬で対応していたならば、恐らく財政支援は行ったけれども、しかし、地域医療構想は進まない。進まないから、なお財政支援する必要があるという、一層の悪循環に陥ったものであると思っております。権丈委員その他から御指摘いただきましたが、この間の反省は、やはり、例えばかかりつけ医につきましては、意識改革で進めるということと、国民会議の報告書でされておりました。また、地域医療構想については、データを見える化によって、関係者の良識が発揮されることが期待されて、調整会議で議論が進むことが期待されていました。しかし、佐藤委員から御指摘ありましたように、調整会議での議論はあまり進んでないということでございまして、やはり、かかりつけ医の推進にしても、地域医療構想の推進にしても、次の政策手法を、すなわち規制的手法をきちんと考えていく段階にあるのではないかと思いまして、まさにコロナ対策で我々が経験し、今まさにそうした規制的手法に向かっていっているわけですが、そこが平時の地域医療提供体制整備にも必要とされている対応なのかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕田中主計官。
〔田中主計官〕田中でございます。雇用関係も様々貴重な御意見頂戴しまして、ありがとうございました。
雇調金については、様々な御意見頂戴したとおり、労働移動を阻害している、あるいは労働者御自身のスキル低下を招いているのではないか。あるいは日本経済の成長、あるいは賃金に影響を与えているのではないか。そうしたことをエビデンスも含めて検証をすべきという御意見を頂戴したと受け止めております。
それから、こうした特例が長期化することによって、雇用を守る雇調金、それから失業等給付、そうしたものの役割が曖昧になってきている部分があるのではないか。そうしたことも踏まえて、国の役割を再整理・再構築していくべきではないかという御指摘を頂戴したと認識しております。
保険料につきましては、コロナ禍で影響を受ける業種、様々ある中で引き上げるべきではないという御意見も頂戴しました。一方で、局面あるいは環境が変わっておりまして、そろそろ戻していくべきではないかという御意見ですとか、あるいは国庫負担を引き上げることは、すなわち雇用保険の枠外にいる人にも負担を求めていくことにほかならないのではないかという御意見も頂戴したと思っております。
それから、非正規、フリーランスが増える中で、そうした方のセーフティーネット、仮に雇調金を縮減するとしても、労働移動といってもそんな簡単な話ではないということ。したがって、スキルアップ、リスキリング、そうしたことを含めて重要になってくる。そうしたことも考えなければならないのではないか。そうした様々な御意見を頂戴したと認識しております。
今後、財審の建議はもちろんですが、来年度に向けて雇用保険法等の改正あり得べし中で、また議論を深めてまいりたいと思っております。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、今日は大変珍しく、予定された時間より早いのですが、議論もここまでということにさせて、本日の議題は以上で終了とさせていただきます。この後、記者会見で会議の内容を御紹介しますので、個々の発言につきましては、外にお話しにならないよう御注意いただきたいと思います。
次回ですが、11月15日、来週月曜日です。15時30分から開催いたしまして、テーマは防衛でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、本日これにて閉会をいたします。御多用中のところ、どうもありがとうございました。
午後2時50分閉会