財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和3年10月11日(月)10:30~13:05
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
-
1.開会
-
2.議題
-
有識者ヒアリング
-
「急性期医療提供体制、医療資源分散がもたらす「医療の質」と「医療費」への影響」
-渡辺幸子 グローバルヘルスコンサルティングジャパン代表取締役社長 -
「コロナ禍を乗り越えてあるべきプライマリ・ケア」
-草場鉄周 日本プライマリ・ケア連合学会理事長 -
「医療機関に対する新型コロナ関連補助金の『見える化』」
-井伊雅子 一橋大学国際・公共政策大学院教授
-
-
地方財政について
-
-
3.閉会
分科会長 |
榊原定征 |
鈴木大臣 伊藤副大臣 大家副大臣 高村大臣政務官 繁本大臣政務官 矢野事務次官 水口政策立案総括審議官 茶谷主計局長 奥次長 坂本次長 阿久澤次長 八幡総務課長 大久保司計課長 藤﨑法規課長 吉田給与共催課長 大沢調査課長 渡邉主計官 三原主計官 福田主計官 坂口主計官 高田主計官 有利主計官 一松主計官 田中主計官 野村主計官 北尾主計官 渡辺主計官 山岸主計企画官 鈴木主計企画官 |
||
分科会長代理 |
増田寛也 |
|||
委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 神津里季生 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 南場智子 藤谷武史 宮島香澄 安永竜夫 |
|||
臨時委員 |
上村敏之 宇南山卓 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 権丈英子 小林慶一郎 小林毅 末澤豪謙 角和夫 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
午前10時30分開会
〔増田分科会長代理〕おはようございます。少し時間早うございますが、もう大臣もお見えになっていますし、今日少し長丁場になります。もう会議を始めたいと思いますが、本日は冒頭からカメラが入ります。そのまま、少しお待ちいただきたいと思います。それではお願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕それでは始めたいと思います。ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、有識者ヒアリング、地方財政を議題といたしております。
また、先般、組閣が行われました。本日は鈴木大臣、伊藤副大臣、大家副大臣、高村大臣政務官にお越しいただいております。初回でございますので、皆様から一言御挨拶を頂戴いたしたいと思います。
それでは、鈴木大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔鈴木財務大臣〕皆様、おはようございます。このたび財務大臣を拝命いたしました鈴木俊一でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
榊原会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、日頃から幅広く、かつ熱心に御議論をいただき、心から感謝申し上げます。
10月4日に岸田内閣が発足いたしまして、令和4年度予算は、岸田内閣の下で編成する最初の当初予算となりますが、新型コロナ対応に万全を期すとともに、成長と分配の好循環を実現していくという観点から、グリーンやデジタルといった分野に予算を大胆に重点化し、歳出改革の取組を継続することで、質の高い予算をつくり上げていきたいと思います。
同時に、我が国の財源は、新型コロナ以前から、少子高齢化に伴う財政の悪化という構造的な課題に直面をしております。社会保障制度の受益と負担のアンバランスを解消していくことは、引き続き重要な課題であり、厳しい財政状況の下で、財政健全化の観点を十分に踏まえた予算としていかなければなりません。
こうした中、委員の皆様におかれましては、引き続き、その豊富な御経験と深い御見識に基づき、活発に御議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
続きまして、伊藤副大臣、お願いいたします。
〔伊藤財務副大臣〕皆様、おはようございます。引き続き、財務副大臣を拝命いたしました伊藤渉と申します。
〔増田分科会長代理〕どうぞお座りになって。
〔伊藤財務副大臣〕榊原会長をはじめ、諸先生方には引き続き大変お世話になりますが、よろしくお願いいたします。
今、鈴木大臣からございましたとおり、令和4年度の予算は、コロナ禍における大変厳しい予算の編成になろうかと思います。その上で、コロナ禍で抽出された課題、そして今後のコロナ後の社会を見据えた取組、こうしたことをしっかり予算に反映していく必要があると思いますので、また、先生方の様々なアドバイスを、どうぞよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、大家副大臣、どうぞよろしくお願いします。
〔大家財務副大臣〕大家です。どうぞよろしくお願いします。このたび財務副大臣に就任いたしました大家敏志と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
政務官でも、7年前に1年間お世話になったと思いますので、久しぶりでございます。どうぞ、先生方にもいろいろな御指導をよろしくお願いしたいと思います。
この分科会では、委員の皆様の幅広い、そして深い知見に基づく御指導を頂戴してまいりたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、高村大臣政務官、どうぞ、お願いいたします。
〔高村大臣政務官〕高村正大です。よろしくお願いいたします。
今日は、本当にありがとうございます。榊原会長はじめ委員の皆様におかれましては、日頃から本審議会への御協力、心から感謝申し上げます。令和4年度予算編成に向けて、社会保障をはじめとした各歳出分野における改革内容について、活発な御議論を、何とぞよろしく申し上げます。どうぞよろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、報道関係者は、ここで御退室ください。どうぞ、退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕また、鈴木大臣、伊藤副大臣、大家副大臣、高村大臣政務官は、公務がございますので、ここで御退席をされます。
〔鈴木財務大臣〕皆様、よろしくお願いいたします。
(鈴木大臣、伊藤副大臣、大家副大臣、高村大臣政務官退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、有識者ヒアリングに移らせていただきます。
本日は有識者として、渡辺幸子グローバルヘルスコンサルティングジャパンの代表取締役社長、草場鉄周日本プライマリ・ケア連合学会理事長、井伊雅子一橋大学国際・公共政策大学院教授、このお三方にお越しいただいております。
全体について、井伊様から御説明を頂きました後、各論について、渡辺様からは「急性期医療提供体制、医療資源分散がもたらす「医療の質」と「医療費」への影響」について、草場様からは「コロナ禍を乗り越えてあるべきプライマリ・ケア」について、井伊様からは「医療機関における新型コロナ関連補助金の『見える化』」について、それぞれお話を伺いたいと思います。
その後、事務方から、医療機関の収支データについて、御説明をいたしまして、その後、質疑応答の時間をまとめて設ける、こうした流れとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速、井伊様から、全体の説明をお願いいたします。
〔井伊講師〕一橋大学の井伊雅子と申します。座ったままで失礼いたします。
私、2015年まで財審の委員をしておりましたので、今日は立場を変えて、説明に参りました。研究仲間2人と参りました。渡辺さんと草場さんです。
私たちの問題意識は、日本は欧米と比べて、感染者数も死亡者数も桁違いに少なく、そして、人口当たりのベッド数、病院の数なども世界一であるにもかかわらず、なぜ医療崩壊が起きたのか。また、財政支出の規模と経済損失は巨大で、欧米並みかそれ以上になっており、巨額な財政支出がどのように使われたのか、検証をする必要があります。
医療提供体制は、高度な急性期医療を担う病院とプライマリ・ケアの両方が不可欠です。
まず、急性期医療を担う病院に関して、これは課題1の①に関するところですが、データに基づいて渡辺さんから、次に、②の外来は、オンライン診療や在宅医療なども含め、プライマリ・ケアに関して草場さんから説明をお願いします。最後に、補助金など医療経営の見える化について、私から説明をいたします。
では、渡辺さん、お願いします。
〔増田分科会長代理〕どうぞお願いいたします。
〔渡辺講師〕グローバルヘルスコンサルティングの渡辺です。お手元の資料と反映資料の順番が少し入れ替わっていますので、お手元のタブレットで見ていただければと思います。
井伊先生のお話もありましたが、なぜ医療があっという間に日本は逼迫するのか、これは病床数に対する医療資源、つまり、医療従事者が非常に分散していて低密度医療になっていることが背景にあります。これは平時からです。
コロナが低密度医療に、一番弱いところを突いてきた。それは病床が足りないのではなくて、医療従事者の薄さが問題であるということです。
今日、私の資料はOECDのヘルスデータ、そして実は患者の診療データに基づいています。患者の診療データを、私どもが病院経営のコンサルティングをする際に、実際の診療データを病院から頂いたものであり、大体日本の4分の1ぐらいのデータベースとなっております。
それでは、まず、お手元のタブレットを見ていただきたいのですが、急性期病床数、いわゆるがんや救急などの患者さんを診る病床の人口当たりの数をOECD加盟国で比較したものです。日本は人口当たり急性期病床数が断トツ多い。そして、急性期病床以外、例えば、慢性期病床や精神病床などを入れますと実は病床、千人当たり13床です。
次のスライドは、急性期(一般)病床の平均在院日数です。これもOECD比較ですが、わが国は他の先進国に比べて倍以上の在院日数です。後で申し上げますが、日本は、在院日数を引き延ばさないと、なかなか病院経営が成り立たないような診療報酬体系になっております。ですので、性悪説ではなくて、病院も経営に必死です。在院日数が、ある意味、コントローラーとして病院経営に働いているという背景があります。
急性期(一般)病床の平均在院日数は16日ですが、右下を見ていただきますと、7対1と言われる患者が7人に対し看護師1人である急性期一般1でも平均在院日数が13日です。大体OECDの倍ぐらいあるのが現状です。
では、どういう状況が今、医療提供体制、医師・看護師で起きているのか。上が医師、下が看護師です。左側のグラフは例えば医師は、OECD比較で、人口千人当たり2.5人で、確かに多くなく、米国と同じくらいです。
1床当たりにしますと、これだけ減るということです。日本は一番左、赤い矢印で書いてある所で、非常に低レベル、低密度になっています。
そして、看護師はどうなのか。日本の看護師数は、千人当たり非常に高いレベルです。一方で、1床当たりにするとこれだけの低密度になってしまいます。
また、外来の問題もあります。これだけ低密度ですので、非常に入院医療が忙しくなる一方で、急性期病院、急性期病院の外来も非常に忙しくなります。慢性期の患者さんを急性期で診ているような状況があって、それは慢性期を、プライマリ・ケア、かかりつけ医の先生方に全部回してしまうと、結局、出来高で外来がありますので、なかなか経営が成り立たない。そして、入院に結びつく患者を逃してしまうのではないかというおそれが、実は現場ではあります。
4ページのスライドは、上が医師、そして下が看護師で、左側のグラフが人口千人当たりです。医師はOECD平均で3.5ですが、日本は2.5で、もともと人口当たり医師数が少ない中で、過剰な病床ということで、ますます密度としては、右側ですが赤い矢印のように極めて低くなります。人口千人当たりの看護師数に関しては、OECD比較でも非常に高いレベルです。しかし、1床当たりに直すと、日本は一番左ですが、これだけの低密度になるということです。
急性期病院、外来は基本的に出来高、そして外来を紹介型に抑制すると、なかなか入院に結びつかないということもあって、たくさんの慢性疾患を診ています。したがって、急性期の病床も体制が薄くなって忙しい一方、外来も非常に忙しい、これが実際の急性期病院の今の現実の姿になります。
このような低密度医療の下で、コロナ禍によって瞬く間に医療従事者のリソースが枯渇したということが言えます。
ここから診療データについてですが、これは東京都だけに絞って、第5波で34病院、5,207症例のコロナ患者です。グラフに3つ、箱ひげがありますが、一番左が200床未満、次が399床以下、一番右が400床です。下の表に書いている数字は、1病院当たり、7月、8月、コロナ患者が入院できないと言っていた状況の中で、1病院がどれぐらいのコロナ患者を診ていたかということですが、非常に少ないです。
例えば、400床以上でも22人、中央値ですが、そして200から399床で10人です。これは、病床が足らないのではなくて、繰り返しですが、密度が低いので、多くの患者を診ることができないのです。例えば、中等症ですと、通常患者の2倍から3倍、重症ですと4倍から5倍の手間がかかります。そのための非常に濃密な看護体制が必要になってくるということです。
これには、低密度の中で、平時において病床を埋めないと経営が成り立たないという報酬制度が背景にあります。私も「なんちゃって急性期病院」という言い方をしますが、2つ、平時においてどういうことが起こっているのか。
1つ目が素泊まり入院、2つ目が外来医療を入院で、ということが挙げられます。例えば、国が指定している拠点病院は400少しあり、その約4分の1に相当する114のがん診療連携拠点病院、いわゆるがんの拠点病院がありますが、その拠点病院の胃の切除術、悪性腫瘍の切除術で、在院日数がこれだけばらけているということを示しています。国は均てん化を進めていますが、例えば一番左側の病院ですと、入院が最短5日以内になっています。他方、一番下のグラフを見ていただければと思いますが、一番右で最長30日を超えています。つまり、6倍の差があるということです。
なぜこれほど差があるのか。がん患者を集められている病院は図の左側になりますが、医療費は1入院当たり大体100万円弱です。点線が25%タイルずつになっており、中央値が17日ですが、75%タイルで190万です。大体倍ぐらい違います。これだけ病院の収入である医療費を、在院日数を延ばすことによってコントロールしているような状況が日本にはあります。
DPC/PDPSという支払い方法があります。これは急性期病院における1日あたり包括払い制度ですが、なぜこの制度の下で在院日数が長期化するのか。それは低単価であっても1日単価がゼロよりましという理由です。
図は縦軸に1日の報酬、横軸に在院日数を取っています。在院日数が長くなると、入院期間Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとあり、点数は落ちていきます。しかし人件費などの固定費を考えると、収入ゼロよりはましである。そうしたインセンティブが働いています。
次のスライドですが、これは大腸がんの腹腔鏡の悪性腫瘍の切除術です。横軸に在院日数、この患者さんは20日間入院しているということです。縦軸に、どんな診療内容を行ったのか、これらが実は全て見えるのが診療データの非常に優れたところですが、どのように標準化していくかというときに、非常に使えるデータです。
見ていただきますと、最初の2日目から4日目は入院しかしていないということが分かります。ここは全部空白です。退院前の青い部分。赤い部分がパターン1、入院と食事のみと書いています。右側のパターン2は入院、食事、投薬のみということです。
これらを私ども素泊まり入院と呼んでいるのですが、素泊まりパターン1、2を足したのが一番下ですが、全国の一般病院に拡大推計した場合、この素泊まりの金額は8,830億円ぐらい。1兆弱。医療費は全体で42兆円から43兆円程度ですので、それぐらいのインパクトがあります。
これは、外来でできることを入院で、そしてなるべくベッドを埋めようとするということで、日本がいかに遅れているかを示しています。例えば表は白内障ですとか、ポリペクトミーといって、大腸の良性腫瘍ですが、それらを外来にすれば、どれぐらい医療費削減できるかがこのシミュレーションになります。
次のページは入院と外来で、薬剤・材料を除いた分、どれぐらいの粗利があるかを見ています。これだけ10倍も違えば、当然入院のほうに持っていきたくなるということです。これだけ在院日数を延ばしても、日本の稼働率は、コロナ前で76%です。他方、OECD平均では35%ぐらいの稼働率となります。「なんちゃって急性期病院」は、とにかく在院日数を延ばしてコントロールしようする結果であり、これが実は医療の質にも影響しています。
これは5大がんで見ていますが、例えば、1,238病院で分析していますが、年間50症例未満が、全体の約30%を占めています。199床以下で約6割になっています。
次のページの図では、縦軸に合併症の発症、横軸に患者数、このボリュームと、患者と合併症の発症率の相関を見ています。結腸の開腹が左側、右側が腹腔鏡で、丸印が病院です。患者数と合併症の発症率に相関があるということは、先進国では昔から先行研究がたくさんあります。今、やはり集約化、医療の質を上げるためには、話し合いでは地域医療構想がなかなか進みません。何らかの経営的インセンティブや強制力が必要と考えます。
これは最後ですが、1つは、在院日数を延ばすことで医療費が上がるのではなくて、アウトカム、つまり医療の質をきちんと評価して、ここに費用を使う仕組み。すなわち医療の質を競争するような仕組みである一入院包括払いを導入してはどうかということです。
これは別の事例で、メイヨークリニックと共同研究したものですが、膝の置換術の効果と効率性を表した図です。それぞれの点々は病院です。縦軸に合併症の発症率、横軸に医療費をとっていますが、医療費だけでもこれだけ異なり、合併症発症率もゼロ%から20%の幅があります。
ここに医療の質を加えてみると、例えば緑の線が中央値ですが、支払いをこの189万にする。そして、赤軸、赤の縦線ですが、医療の質が平均よりも低い病院は179万円ということで5%マイナスにする。そうすると医療の質を上げるインセンティブが高まります。医療の質を上げて、そしてコストのほうもコントロールできるような仕組みが、一入院包括払いでできないか、そうした1つの御提案になります。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、草場様、どうぞ、お願いします。
〔草場講師〕それでは、日本プライマリ・ケア連合会理事長の草場と申します。よろしくお願いいたします。資料1-3になります。
私はふだん、北海道の室蘭という地域都市で、1人の開業医として、外来診療、訪問診療を提供している医者の立場でございます。今回、プライマリ・ケアということで、コロナ禍の中で、改めて見えてきた問題点をお話しさせていただきたいと思います。
まず、プライマリ・ケアの定義ですが、基本的には、住民の身近な医療機関として、よくある健康問題に幅広く対応し、診察・検査・治療を提供できる医療機関。外来診療だけではなく、訪問診療・往診なども提供する医療機関ということでございます。また、地域の総合病院、介護施設、介護サービスとの連携をする、ケアのハブの機能を果たす。そして、日本の中では「かかりつけ医」というイメージで、主に内科・外科の診療所や中小病院がその役割を果たしますが、日本の中ではプライマリ・ケア自体は制度化されていないということでございます。
今回、コロナ禍の中で、プライマリ・ケアの限界が非常に見えてきたと思っています。例えば発熱、上気道炎などの症状を持って、コロナ感染の可能性がある患者さんに対して、実際診療所の中では診察を断る医療機関も当初は少なくありませんでした。感染への不安から受診を避ける患者に対して、オンライン診療ができるかというと、そうした診察を提供できる病院もなかった状況がございました。
そしてまた、クラスターが発生した介護施設の患者さんに対しても、我々プライマリ・ケアの医師がサポートする機会もほとんどなく、実際、多くの方がそのまま介護施設で亡くなったという、非常に厳しい状況がございました。
また、コロナ感染者として施設療養、あるいは自宅療養、自宅待機している患者さんに対して、私どもが直接診療する機会は当初ありませんでした。第4波、5波の中でようやく関与することができましたが、その中でも政府や医師会の呼びかけにもかかわらず動いた医療機関は非常に限定的であったという状況がございました。
結果的に、有症状の患者さんがふだんかかっている医療機関の中での診療を受けることができず、急性期病院に直接受診をする、あるいは保健所・自治体に相談をするというケースがたくさんございました。そんな中で医療逼迫が非常に悪化しまして、非常に大変な状況になりました。
また、施設などでクラスターが発生した場合に、十分な医療を提供できず、たくさんの方が亡くなられました。自宅療養の方でも、非常に状態が悪化する中で、孤独の中で亡くなる方もおられたということが、現実としてたくさんございました。
こうした問題点は、1人1人のドクターの問題ではなくて、あくまでも構造的な問題であると私自身理解をしています。まず、グループ診療というものは、ほとんど日本ではございません。多くは1人の先生が診療所で診療している状況の中で、人員の余裕がありません。また、比較的年齢層が高い開業医の先生方が診察をされております。くわえて、ビル診に代表されるように施設規模も小さく、感染防御のためのゆとりある施設構造がない状況がございます。そしてオンライン診療や訪問診療を提供する医療機関も非常に少ない状況がございます。ですので、そうした状況の中で、幅広く診ていくという開業の先生方が、そもそも非常に少ないという状況がございます。
また、フリーアクセスということで、非常にそれが強調されて、非常に良いものであると評価されておりますが、住民1人1人の健康管理は、逆に自分で管理しなければいけない。つまり、プライマリ・ケアの医療機関が責任を持って住民の健康を担うというシステムはございません。ゆえに、コロナ禍など有事の中では、住民自身が健康リスクを自分で取らざるを得ないという状況が生じます。かかりつけ医ということでかかっても、あなたは患者さんではないという形で、ワクチンを打ってもらえない状況が生まれるのも、そもそもそうした関係性がありません。かかりつけ医という存在自体が、非常に曖昧な枠組みであるということが一番大きな問題であると思っています。
そのため、日本の医療制度の中で、こうした形で強制的に医療機関を動員するという法制定を整えるという話も進んでおりますが、実際、病院の中で、中等症以上の診療については、こうした法律の中で必ずやりなさいと言われても、実効性のある活動が可能な医師は非常に少ないです。実際は感染症の専門医、あるいは呼吸器科の専門、救急の専門、また、総合診療医など、そうした医師しかコロナの患者さんの、ある程度の重症の方を診ることはできません。そのような方々は、医師全体の中ではマジョリティとは言えない状況でございます。したがって、病床数の問題ではなくて、あくまでも人的資源が問題の中核であると考えております。
また、診療所も、先ほど言ったような理由で、実際今の診療所に、コロナの患者さんをたくさん診てくれといっても、なかなか診られない。法律があっても、実際診ることができないという状況がございます。
したがって、「強制の法制化」の議論をするのであれば、医療提供体制の速やかな改革と連動させなければ、結果的には、現場の医師の対応ができないということで、「絵に描いた餅」になり、今回と同様の失敗を、今後5年10年、また同じようなことが起きても、繰り返すことは必定であると認識しています。
つまり、日本の医療は、こうした大きなギャップがあるということです。右側は日本の医療の現状です。左側はいわゆる公衆衛生、保健行政、厚生労働省が管轄している領域です。右側はいわゆる専門医療であったり、日本のプライマリ・ケアですが、日本のプライマリ・ケアは、現実的には急性疾患の外来診療、慢性疾患の外来診療ということに非常に特化していますので、訪問診療をやっているところが全てではございません。左側は、いわゆる法定感染症の管理や医療計画の管理、そうしたいわゆる公衆衛生的な業務に関与する。つまり、日本の開業医の先生方は、左側にタッチする機会はほとんどないという状況になっています。
他方、諸外国のプライマリ・ケアの制度は、専門医療と公衆衛生、保健行政の間に、期待されるプライマリ・ケアが存在しています。その中に包括的な外来診療、よくある健康疾患に関しては全て診ることが可能である。そして訪問診療、予防医療、健康増進活動、また、地域包括ケアに関して、責任を持って診ることができるというのが、基本的なプライマリ・ケアの本来の役割でございます。
これを今回のCOVID-19のパンデミックに当てはめると、実はプライマリ・ケアのところで、本来は保健所が担っているような機能ですが、有症状者、あるいは濃厚接触者へのPCR・抗原検査、施設や自宅で療養する無症状・軽症者の方の診療、また、クラスターが発生した介護施設での診療、また、ワクチン接種はもちろん当然でございます。そうした、現在非常に逼迫した中で行政が担っている役割は、本来は開業の先生方のプライマリ・ケアのところで担えるはずであったと理解をしているわけです。そうなりますと左側にあるように公衆衛生の機能としては、感染者の診療状況の管理、感染経路の把握とか、あるいはワクチン接種の後方支援ということで、今回保健師さんが非常に苦しむような状況は、本来はそんなに生まれるはずではなかったと考えています。
今回のコロナ禍を通して、システムとしてプライマリ・ケアをやはり整えるべき時期が来たと感じています。つまり、有事の際に働けるように、平素から保健所、自治体、急性期病院、また、地域の介護施設としっかり連携を取りながら、対応することができるプライマリ・ケアの仕組みを整えるべきであると考えています。
有事のときに慌てて整えることはできません。平素から予防医療、公衆衛生の活動への積極的な関わりを、基本的にプライマリ・ケアの中にネットワークをつくる必要があります。
また、今回提言したいのは、かかりつけ医への住民の緩やかな登録システムによって、行政・かかりつけ医が連携して住民の健康サポートを隙間なく担うシステム、つまり、「かかりつけ総合医制度」を、このコロナ禍を契機として、構築していくべき、ということです。
かかりつけ総合医制度とはどういうものか。現在は、純粋にかかりつけ医といっても、国民自身が自由に選んでいくという形になっていますが、国民は平時から、自分自身の健康管理に対応するかかりつけ総合医を選択して、基本的にそこで健康問題の、ほとんどの問題を相談ができるという状況をつくりたい。その中に予防医療、健康増進の支援も受けられる体制をつくられればよいかと考えています。
そして、医療機関は、選択した患者さんを登録し、日々の診療だけでなく有事の場合には、保健所、行政などと連携しながら、登録した患者さんに関する健康管理を支援するという枠組をつくっていく。
そして、訪問診療、オンライン診療は当然必要な時に提供することができる。また、総合病院など各科の専門医療を受ける際には、原則的にかかりつけ総合医から紹介をしていく。そして、今の出来高払いという形になりますと、健康問題が生じた場合には全て支払われる状況ですが、健康を維持することに対しては全くお金が出ません。ですので、総合的な健康管理に対する対価は出来高払いではなく、登録住民に比例する包括払いの枠組みをしっかり組み込んで、併用という形で運営していく。これらが必要ではないかと考えております。
実際は、かかりつけ総合医は誰が担うのか。本来的には、プライマリ・ケアの専門家である家庭医、総合診療医、こうしたトレーニングをきちんと受けた医師が望ましいと思います。ただ、実際私自身が運営している日本プライマリ・ケア連合学会の中では、10年間養成を続けていますが、残念ながらまだ1,100人程度しか専門医がおりません。
また、日本専門医機構の中でも総合診療専門医の養成を開始しておりますが、ようやく今年1期生が生まれるという状況であり、非常に数が少ない状況です。ただ、10年後、20年後には、こうした医師が中核を担うことは当然期待されます。ただ、それまで待てませんので、現在の開業医の先生方に、ぜひ活躍していただきたい。現在の開業医の先生方は基本的に、ある臓器の専門医として経験を積んだ後、プライマリ・ケアに開業という形で従事していますが、それに必要な研修、認証制度はございません。ですから、その間は、プライマリ・ケアを担う開業医、病院勤務の先生を対象に、かかりつけ総合医に向けての公的な研修、認証制度をぜひ国として整備していく必要があるのではないかと考えております。
こうした形でパンデミックに対応するためには、まず、保健行政とプライマリ・ケアが効率良く連携することが非常に重要であると考えます。特に自宅療養の方で明らかになったように、保健行政と現場の開業の先生方の乖離が非常に大きな問題でした。今回、想定外の健康危機に柔軟に対応できるプライマリ・ケアのシステムを、日本の中でもう1回再構築する非常に大きなチャンスであると思っています。そうした機会に今回の危機を、ある意味、危機の中で、むしろ日本の医療を強くしていく、そうした機会に、ぜひ結びつけていただきたいと思っています。
以上、私からの発言です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、井伊様、お願いします。
〔井伊講師〕では、井伊から説明いたします。
コロナ禍で医療を利用する人たちの行動が大きく変わりました。今、渡辺さん、草場さんから説明がありましたが、医療提供体制は、高度な急性期医療を担う病院とプライマリ・ケアの両方が不可欠です。草場さんが説明されたように、プライマリ・ケアは外来だけではなく、オンライン診療、在宅医療などもほかの先進国では含まれていますし、全医師の恐らく2割から3割は、諸外国では、プライマリ・ケアを担う医師がいるところですが、日本では、先ほど説明があったように、専門のトレーニングを受けた医師は1,000人ぐらいです。
日本の医療機関はこうした役割分担ができていないため、病院も診療所も同じような患者を診ています。高機能な大病院でも、外来の受診理由の上位は、風邪、糖尿病、高血圧、腰痛、頭痛などです。それがコロナ禍で大きく減少しました。私たちはデータを丁寧に分析したのですが、患者の予防による受診減もあります。また、薬をもらうためだけに2週間とか1か月に1度、病院に通っていたのが、処方間隔が長期化したことも、受診が減ったことの大きな理由です。入院では、よくある軽症の疾患で、ほかの先進国であれば入院する必要のない疾患で、日本では長く入院していましたが、そうした入院も大きく減りました。必要な医療を控えている可能性もありますので、この点は、後ほど説明いたします。
次のページ、これは外来に関してですが、コロナ受入れありの病院と受入れなしの病院を、第1波から今年の6月まで見たものです。丸印が受診回数ですが、受診回数はずっと減少したままですが、今年の2月以降、収益は増加しています。これは単価の引上げや、様々な加算の影響があります。
また、入院に関してですが、入院もコロナ受入れあり、なし、両方とも症例数は減少したまま、患者は減少したままですが、収益は戻ってきています。特にコロナ受入れなしの病院は黒字です。この2つのスライドの分析は、DPC病院という比較的高機能な病院の分析です。
次のページは、中小の病院や診療所を含めた分析になっています。これは診療報酬総点数、収益ですが、受診回数はかなり減ったままなのに、最後の8月の欄を見ていただくと、収益はかなり増えています。コロナ前でも、日本の病院の7割は赤字でしたが、コロナ禍で収益は良くなっています。
必要な医療を控えている例として、がん検診が多く減ったこと、そして進行したがんが見つかるといった報道がマスコミなどでもされています。OECDの公衆衛生白書でも指摘されていますが、日本はがん検診や健康診断を、エビデンスもないのに過剰に行う傾向があります。がん検診に関して、手術を含めて、不必要な介入が今まであった可能性もあります。これは数年かけた検証が必要ですが、日本のがん検診の在り方も、今回見直しをする良い機会です。
これらのデータ分析から分かることは、外来も入院も患者の数は減っているのに収益は回復しているということです。しかも、この分析に補助金は含まれていません。補助金を受け取った医療機関は公表されていませんし、もちろん額も公表されていません。100%国のお金ですが、都道府県経由の仕組みになっていますので、都道府県に負担をかけるから公表はしにくいとか、コロナ対応医療機関名を公表していないので、補助金の支出先を公表するとそれが分かってしまうので公表できないなどが理由として言われています。多額の補助金を受け取って発熱外来を行う診療所の名称も、公表されていません。
コロナだけでなく、平時から、公的な医療保険で経営しているのですから、医療機関は財務諸表を作成し、公表するべきです。正確には、地方公共団体が開設する病院などに関しては、地方公営企業年鑑から入手可能です。一方で、民間の医療法人に関しては、都道府県に情報公開請求をすると入手できるのですが、全て紙ベースなので、分析に時間がかかります。その上、補助金は事業収益に含まれていて、補助金だけを取り出して分析することはできません。また、法人として登録をしていない規模の小さな病院や診療所は、そもそも財務諸表を入手できないという問題点もあります。
「骨太方針」でも、財審の建議などでも、今までも何度も指摘されてきていますが、特にコロナ対策の巨額な財政支出を検証するためにも、早急に体制整備を行うべきです。一橋の同僚の荒井先生も、最近まで中医協の委員を務められていましたが、診療報酬改定の判断材料としても重要であると指摘をされています。
様々な財政支援がある一方で、補助金や、補助金バブルであるとか幽霊病床などの指摘があります。どのような効果を生んだのか、課題は何だったのか、検証するべきという国民的な関心も高まっています。国民の税金を使っているのですから、説明責任があります。
最後にワクチン接種に関してです。日本ではワクチン接種が国民の6割に達したと、政府でも報告があります。そのためにかかった金額を検証する必要があります。医療崩壊で、医療関係者は多忙を極めると言われながら、時給が良く、業務内容も楽なワクチン接種の求人に全国から殺到しました。
国際比較をすると、日本がワクチン接種に投じたお金は、かなり高額と思われます。今後3度目、4度目、恐らく毎年の接種が必要になるかもしれません。そのためにも、ワクチン接種にかかった費用の検証は必要となると思います。
次の2ページは、今日の報告の基になった私たちの研究ですので、別途御参照いただければと思います。
最後にまとめとして、資料説明1-1、説明の概要にお戻りください。
コロナで患者数が激減し、収益も大きく減少しました。今後の少子高齢化社会において、10年ぐらいかけて患者は徐々に減っていくと言われていましたが、コロナで一気に早まりました。いつまでも加算や補助金を続けることはできませんので、医療機関の収益の安定化のためにも、渡辺さんから説明のあった一入院当たりの定額払い、これは下の解決策の①ですが、また、草場さんから説明のあった、外来診療所で登録住民に比例する包括払い、こうした導入が不可欠であると思います。このような支払い制度は、私たちが独自に考えているわけではなく、ほかの先進国では既に何十年も前から進めています。OECDの研究や報告書でも、同様のことが指摘されています。
もう一つ重要なことは、支払い制度を変えることと、医療の質を評価することはセットにすることです。日本の現状の支払い制度は、質の評価はほとんどなく診療報酬が支払われています。これは先進国では大変まれなことです。医療制度を充実させるというと、予算を増やすという話になりがちですが、支払い制度を改革することで、医療機関の行動が変わり、医療の質も高めることができる。これが今日私たちからお伝えしたかったことです。
以上、報告終わります。御清聴ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、最後に事務方からの説明として、一松主計官から、お願いします。
〔一松主計官〕厚生労働第一主計官です。お手もとの資料2に基づきまして、医療機関の収支データについて御説明します。データの制約上、今年3月末までのデータ分析になり、第5波の状況など、以降の状況については、別途の分析が必要となると考えております。
1ページ目でございます。キャプションの1行目にありますとおり、1床当たり最大1,950万円の緊急支援事業補助金を支給した対象の医療機関に対しまして、厚労省がアンケート調査をし、回答があった1,290の医療機関についての分析でございます。
左下の表の③の行を御覧いただきますと、今申し上げた1,290の対象医療機関の平均では、感染拡大前の令和元年度では、医業収益から医業費用を差し引いた医業収支がプラス0.2億円あったところ、令和2年度には、新型コロナ関係補助金除きで、マイナス3.5億円に悪化しました。
その下ですが、しかし、対象医療機関当たり10.1億円に上ります新型コロナ関係補助金のおかげで、医業収支が6.6億円に改善しております。
⑥の行の利益率で申し上げますと、令和元年度の0.2%から、昨年度は6.3%に上昇しており、改善率はプラス6.1%ポイントになります。
これを棒グラフにしたのが右の図ですが、右側の棒グラフによって、ピンクの1対象医療機関当たり、先ほど申し上げた10.1億円の補助金によって、本来赤字の状況が前年度を大きく上回る黒字に飛び抜けています。減収補塡なり赤字補塡、あるいは感染拡大前の収支差の水準に回復するといった考え方からすれば、その水準を大きく上回っています。補助金にコロナ患者受入れに対するインセンティブを与える意味もあるとすれば、このような状況が直ちに問題とまで言えませんが、費用対効果を検証すべきという話になります。
しかし、これが公的医療機関になりますと、その地域における医療の確保に果たすべき役割がございまして、まして国が開設する場合、インセンティブ云々という理由づけにはなじみにくいと思います。
2ページですが、既に本年5月の建議におきまして、国立病院機構の個別の医療機関について、補助金の影響による凸凹があるということは御指摘いただいておりますが、今回は、国立病院機構140病院について、分析しております。
真ん中の表を御覧いただきますと、そのうち新型コロナ患者を実際に受け入れている94の病院の平均値について、先ほどと同じ分析でございますが、同じく③の行を御覧いただきますと、令和元年度では、平均でプラス0.1億円の収支黒字だったものが、令和2年度には、新型コロナ関係補助金がなければマイナス3.7億円の収支赤字に悪化しており、それが1受入医療機関当たり10.1億円、これは、たまたま先ほどのページと同じ数字になっておりますが、いずれにしましても、そのおかげでプラス6.4億円に転じており、一番下の⑥の行ですが、収支改善率はプラス6.7%ポイントとなっております。
なお、この10.1億円という補助金を、受入患者数1人当たりで機械的に割りますと、少し分かりにくいのですが、キャプションの下から3行目の括弧の最後に書いてあります1人当たり944万円という数字になります。
3ページを御覧いただきますと、今申し上げました国立病院機構の1医療機関当たりプラス6.7%という収支改善率ですが、左上の表ですが、個別の病院で見ますと、収支率が高い病院から3つ匿名で並べますと、一番改善率が高いA病院の場合43.5%ポイントという数字になります。この病院におきましては、診療業務収益を100といたしますと、新型コロナ関係補助金が102.3と、診療業務収益を上回っております。
下のグラフを御覧いただきますと、一般に受入人数が多いほうがスケールメリットで収益改善率が良くなるという傾向が指摘されるわけですが、そのようなこととはあまり関係なく、受入人数が少なくても収支改善率が高い病院が見られ、まさにまちまちでございます。
なお、A病院におきます1受入患者当たりの新型コロナ関係補助金を機械的に計算しますと、Aの表の上から5つ目にあります1,514万円という数字になります。こちらの数字は、先ほどのページで、平均値は944万円と申し上げたのですが、この数字につきまして、右上の表のとおり、上位から並べますと、D病院のように5,916万円に上る病院もございます。
右下の図では、まさに、新型コロナ関係補助金が診療業務収益に与えているまちまちな影響を示させていただいております。
4ページは、地域医療機能推進機構についても同様の分析をしておりまして、これは、コロナ患者受入れかどうかにかかわらない地域医療機能推進機構の病院全体の分析になります。
同じく③の行ですが、令和元年度0.9億円の収支黒字が令和2年度は、新型コロナ関係補助金がなければ、マイナス1.5億円の収支赤字になっていたところ、1病院当たり、補助金5.5億円によりまして、プラス3.9億円の黒字に転じており、利益率はプラス4.5%ポイント改善しています。
同様の分析を国立大学病院について行ったのが、5ページになります。
6ページ、7ページは現行の病床確保料、それから先ほどの最大1,950万円の緊急支援事業の概要なので説明は省略させていただきます。
なお、先ほど、有識者のプレゼンテーションがありましたが、病床確保料を受け取って、受入れ可能として申告しているにもかかわらず、病床が逼迫している状況下で、新型コロナ患者を受け入れていない病院があるとの指摘、報道がございます。これにつきましては、8ページの下線部のとおり、10月1日に厚生労働省から都道府県へお出しした事務連絡におきまして、東京都において実態調査を行っていることに触れた上で、全都道府県におきまして運用実態を適切に把握し、即応病床数を適正化すること、状況がはかばかしくなければ、病床確保料の返還あるいは申請中の補助金の執行停止を含めた対応を行ってもらい、その状況について適切に国に報告を行ってもらう旨、記されているところでございます。
私からの説明は以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、これまでのプレゼンなどについて、質疑に入りたいと思います。会場の方はネームプレートをいつものとおり立てていただいて、それからテレビ会議のほうでは挙手するボタンで合図をしていただきたいと思います。御発言は可能な限り手短に、2分以内ということでお願いしたいと思います。
それから、前回から行っておりますが、テレビ会議システムのほうで5名程度、それから会場から5名程度、それでローリングさせていくということにいたしたいと思います。なお、テレビ会議システムのほうはミュートを解除して御発言いただいて、ミュートに戻すということでお願いします。会場の方は、パソコンには触れなくて結構でございますので、マイクボタンをオンにして、御発言していただきまして、終わりましたらオフにしていただきますように、このような操作でお願いしたいと思います。
それでは、テレビ会議システムのほうで、5名の方ですが、この順番で初めに指名します。田近委員、権丈委員、田中里沙委員、上村委員、堀委員、この5名の方でお願いしたいと思います。
初めに、田近委員、どうぞ御発言ください。
〔田近委員〕ありがとうございました。では、手短に。
今日は、井伊さん、渡辺さん、それから草場さん、ありがとうございました。
質問は、渡辺さんのところの御報告ですが、要するに御主張は、急性期医療に関してDPC1日当たり包括払いをしているが、なかなかそれが思うようにいかないと、具体的には入院期間が短くならないではないかと、それが第1点。
では、日本の医療提供体制を見直そうというので地域医療構想があるが、これもなかなか病院同士の話合いでは進まないと。よく分かるのですが、それで御提案は一入院当たりの包括払い、いわゆるDRG、つまりDPCからDRG、1日当たりではなくて疾病単位でいこうと、よく分かるのですが、質問は、示されたデータは非常に新鮮で、私、とても良かったと思うのですが、御主張自身は前からあって、私の質問は、一体どうしてこれが進まないのかと、改革を進めるには一体どういうことを考えればよいのだ。
例えば、保険者は、この場合どう機能するのか。質問は、したがって、御主張は私も大変分かったし、資料もすばらしかったと思います。それを踏まえて、その次にどうしたら良いのか。
それから一松さんの報告に関しては、一言、これもとても良かったと思うし、コロナのさなかで、よくここまでまとめられたと思うのですが、御主張は、例えば、コロナ患者の受入人数と収益改善率があまり関係してないのではないかと。つまり、コロナ患者さんをいっぱい受け入れれば、収益も改善したということではない、それも分かるのですが、では、これからその関係を改善していくためには、どういうことを考えたら良いのか、それを財審の場で翻訳すれば、どういう主張を我々はしたら良いのか、それを伺いたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕質問についての回答は、最後にまとめてお願いします。
それでは、権丈委員、どうぞお願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。御報告ありがとうございました。大変勉強になりました。
本日の御報告は、限られた資源の中で医療の質を高めるためには、どうすれば良いかという政策の技術についての御提案だったように思えます。医療の質を高めるために、選択と集中を図りながら、医療の集約化が必要であるということ、長く言われておりました。そしてまた、医療の質を高めるために、プライマリ・ケアの必要も長く言われておりました。
しかし、そうした目標が、日本の医療の歴史的経緯の中で、なかなか前に進めることができませんでした。提供体制の改革の遅れが、今回のパンデミックの下で、多方面で弱点を表してしまったという御報告だったと理解させていただきました。
井伊先生の御報告で、配付資料の7ページ、8ページで論じられておりました診療報酬改定の判断材料としても、全数調査である医療法人事業報告書を用いることができるようにすべきということは、本当にそうであると思います。今年の「骨太の方針」でも触れられていますので、速やかに実行していただければと思います。
それから、草場先生が4ページに示されておりましたように、今回の問題の原因となったのは、医師、医療機関のエゴではなく、構造的な問題であるという御指摘、そのとおりであると思います。草場先生御指摘のように、これまで言われていた医療提供体制の改革を速やかに行わなければ、今回と同様の失敗を繰り返すことになるということを、今回のパンデミックで私たちは学んだと思います。
また、渡辺先生のおっしゃるように、医療の質を高め、患者のQOLを高めるために、基本的に出来高払いの性格を持つDPCの在り方を検討し、さらに今回のパンデミックで必要とされた医療の対応力を高めるために、これまでの話合いという方法から一歩進めた方法を考えていく時期かとも思います。渡辺先生の15ページの医療の質と症例数の間の高い相関のグラフは、非常に重要な資料ですし、16ページにある、手術症例数が少ない病院が多い現状を変えて、病院の集約化を図っていくことは、医療の質を高めるために必須であるように思います。
最後に、草場先生の御報告でありますように、患者の総合的な健康管理には出来高払いはなじまないというのも、よく理解できますので、包括払いを制度的に組み込むということも議論していくべき時期になっているのかと思っております。
質問というのではなく、感想でございますが、本日、本当にありがとうございました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、どうぞお願いいたします。
〔田中委員〕田中里沙です。今回、コロナ禍の医療に関するニュースがたくさん出る中で、その背景が理解できるようなデータや御見解をありがとうございました。
2点ございます。まず、草場理事長が御説明してくださった、かかりつけ医を、ということはまさにそのとおりであると思いますが、通常、特に都心部では、緊急時には、ネット広告とかSNSで検索をして、お医者さんにかかってという感じで、かかりつけ医のいない人がほとんどかと思っております。地域性もありますし、でも、地域においても、地方においても、家族でずっと同じ病院にかかるということもなくなりつつある中で、システムをつくる何か大きなポイントとか、加速するようなことがもしありましたら、聞かせていただければと思いました。
もう1点は、井伊先生から御提言されました説明責任はまさに重要で、税金を使うのですからと思いますが、病院側のデータを出したり説明したりしなければと、病院側から思ってもらえるような要件定義とか、そうしたものも、もし、御示唆がありましたら頂ければと思います。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、どうぞお願いいたします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。御報告ありがとうございます。様々なコロナ対策がなされてきたわけですが、特に医療に対して支出された補助金が適正だったかを検証していくことが重要で、エビデンスが取れない状況があるならば、それは解消していくべきであると思います。大変勉強になりました。ありがとうございました。
私からは、草場理事長のあるべきプライマリ・ケアの御報告に関してコメントします。
私も、総合医の制度化に賛成します。今後更に高齢化が進み、地域医療を担う医師のニーズが高まることから、総合医をいかに制度化して社会に定着させていくかは重要であると思います。
そのためには、日本の医師の養成の仕組みから変えていく必要があるように思いました。草場先生の4ページのスライドには、眼科、皮膚科など特定の臓器に特化した診療所が多いということと、11ページでは、ようやく総合医の養成が始まったということも指摘していただきました。現状ですが、医師を養成している日本の大学、すなわちほとんどの医学部が、臓器別や疾病別に医師を養成しているからであると思います。医師養成機関としての大学の医学部で、総合医をいかにして育てるのかという、医師の供給面の側面からの検討の余地があるかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、オンラインのほうで最後になります、堀委員、どうぞお願いします。
〔堀委員〕堀です。本日のご報告は医療資源分散をもたらしている医療供給体制における課題についてのお話であったと思いますが、基本的な課題の認識と示された解決の方向性について賛同いたします。また、根拠資料もありがとうございます。
先ほど権丈先生が御指摘されたように、限られた資源をどれだけ有効に活用するか、また、質を上げるか、そしてアカウンタビリティーをどうやって確保するか、そして、最終的にはそれが医療費の適正化につながるということが重要なポイントかと思います。
コロナ対策における財政的支出についても、前回の財政総論でもお話がありましたが、世界的に見ても巨額の支出だったと思いますし、医療供給体制についても、少なくともマクロレベルでは、国のみならず、地方自治体からも、多様な補助金が出ていたと思いますし、本日の一松主計官の御報告にもありましたが、医療機関の収支改善傾向が顕著であると思います。
一方で、幽霊病床といわれる問題も一部報道されておりますし、病床確保のための補助金が、本当に費用対効果でワイズスペンディングであったのかを検証する必要があると本日の報告を伺い改めて認識しております。井伊先生の御報告にありましたように、補助金等を踏まえた医療機関の経営収支を「見える化」するためにも、詳細な実態把握が必要であると考えます。現状、中医協が行っている2年に1回の医療経済実態調査は、サンプル数は病院の約3分の1、診療所20分の1で、有効回答率も50%程度で限られていますので、特に今回のように有事のイレギュラーなときに、2年に1回のデータに基づいて診療報酬改定の参考にするのは少しバイアスが大きいのではないかと思っています。
また、回答単位もそもそも法人単位ではないので、実態把握をするためにも、井伊先生がお話しされているような医療法人事業報告書の電子データ、また、それを最終的にデータベース化する仕組みが、アカウンタビリティーの確保のために重要であると思います。
それから、草場先生のお話ですが、プライマリ・ケア医の推進という意味で、私自身も推奨の立場にありますし、賛同いたします。ただ、「かかりつけ医」についても今までも何度も公の場で議論されてはいるのですが、診療報酬の加算要件としてかかりつけ医機能という形では導入されているのですが、厳密には、制度化されていないので非常に曖昧な状態となっています。専門医制度により、今年度から恐らく総合診療専門医の認定医が出てくると思うのですが、現状では数が非常に限られています。ですので、今回のコロナ禍ということもありますが、医療のDX化を進めることにもなりますが、オンライン診療と総合専門診療医、あるいはプライマリ・ケア医と、新しい名前でも、今日御提案のような形でもよいと思うのですが、認定可能な新しいタイプの医師の養成とオンライン診療をセットで進めることで、かかりつけ医の普及促進を図るとよいのではないかと考えます。それが、最終的には医療機関への受診行動の適正化にもつながると思います。
受診行動の適正化は、限られた資源を有効活用するという意味で非常に重要です。財審の中でもこれまで何度も議論されていましたが、例えば受診時定額負担についてもそうですが、受診行動が適正化しない限りは、国民から見ると単なる負担増に見えてしまうと思います。かかりつけ医のもとにデータが蓄積されることで、提供される医療サービスの質の向上につながり、ポリファーマシーの問題も減少、最終的には、医療費の適正化が進み、医療供給体制の分化も進むことによって、医師の働き方改革にもプラスになる。先ほどから問題になっている医療資源の分散の問題も改善する。在宅療養や、将来的には保険者や、機能強化にもつながるという意味では、ウィン・ウィンになるような改善策であると思うのですが、繰り返しますが、制度化により、医師の養成とオンライン診療をセットで進めると同時に、それに合わせた診療報酬の支払いの仕組みの見直しを図ることが重要であると思います。 最後に、渡辺さんのお話ですが。
〔増田分科会長代理〕すみません、手短にお願いします。
〔堀委員〕すみません。すぐ終わらせます。DRG/PPSに動かすのかという先ほどの田近先生の質問にも近いのですが、御指摘の内容はそのとおりであると思うのですが、かつて財審でも平均在院日数を短縮化させるということを恐らく提案をされていて、実際DPCも導入され、平均在院日数は、ほかの国に比べればまだ長いですが、多少減ったはずです。
しかし、結局何が問題になったかというと、医療供給体制の改革とセットで進んでないために、平均在院日数が多少短くなったところで、医療費の適正化にも進まないし、質の向上もないということがありましたので、ここで書かれていることには全く同意しておりますが、診療報酬の在り方については、もう少し、議論をした上で進めたほうが良いのではないかと思います。
基本的には、「なんちゃって」かどうかはともかく、機能面からみると、慢性期がメインであるにもかかわらず急性期病院になることを診療報酬の誘導により選択している医療機関が少なからずあると思います。その結果、医師獲得、看護師獲得競争が進んで、資源の集約どころか資源分散がそのまま放置されたところがあったかと。つまり、何を言いたいかというと地域医療構想の推進と、都道府県の権限強化など医療供給体制の改革が着実に進むことが前提ならば、今回、提案されている診療報酬の見直しは理解できるのですが、単純に支払い方式だけであると、かつてのように7対1で起きたことと同じようなことが予期せぬ悪インセンティブが働いてしまうリスクもあるのではないかと思いますので、診療報酬と医療供給体制の改革はセットで進めるようにすると良いのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕政務三役の中で、本日、繁本大臣政務官にもお越しをいただきました。ここで一言、御挨拶を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。
〔繁本大臣政務官〕皆様、おはようございます。発言の機会を頂きまして、増田会長代理、ありがとうございます。榊原会長の下で、熱心に御議論をいただいていますことに、まずもって感謝を申し上げます。
この部屋に入って、少し皆様の議論を聞かせていただきました。コロナ禍を踏まえながらの今後の医療体制や、それを支える様々な制度について、将来を見据えた議論がこれからも進むと思うのですが、私が国会議員になったのはちょうど4年前です。その頃には、厚生労働委員会に入って、議論があったのは医療資源の偏在です、医師不足等々です。
そこに加えて働き方改革の議論が始まって、御存じのとおり、医療現場は5年の据置期間があって、目の前に目標年次があります。そこで、更にパンデミックが襲ってきた。2年目に入って、コロナの対応も医療現場様々、局面が変わりながら、熱心に、医師の先生方や看護師の先生方、技師の先生方が対応していただいています。まだまだ見えない部分もあります。見えてきている部分もあります。
したがいまして、これから、先ほど診療報酬の話も出ていましたが、きちんと制度に落とし込んでいくことが最終的な目標ではありますが、くれぐれも現場の実態を踏まえた議論をしていただきたいと思います。
それが国民の健康と命を守り、最前線で頑張っていただいている医療人に報いる、そしてやる気を彼らに出してもらうことが、我が国の医療をしっかりと守って、国民の命と健康を守ることにつながりますので、それをいかにして制度として支えていくかという議論にしっかりとつなげていただきたいと御期待申し上げます。
以上、ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕政務官、どうもありがとうございました。
政務官はここで公務のため御退席をされます。どうもありがとうございました。
〔繁本大臣政務官〕皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
(繁本大臣政務官退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、引き続きまして、会場から御意見を頂戴したいと思いますが、私から向かって左側の神子田委員から末澤委員まで、5名の方に順次御発言いただきたいと思います。
神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございました。今日いらっしゃった方の分かりやすい説明を聞いて、現状の問題点がよく分かりました。
1つ、最初に、渡辺さんがおっしゃった、いわゆるなんちゃって病床の話ですが、今回、コロナの病床確保のための補助金が病床単位で行われて、ある程度効果があったということですが、一定程度より先は、やはりスタッフの問題があるということで、1つ疑問に思ったことは、病床を基準にいろいろな給付をしていくという制度が、そもそもどうしてそうしたことになったのかが1つ疑問に思うのですが、これを、どのぐらいの実際の患者を診るかという能力に応じて補助などを出していくと、どう変えていこうとしているのか、改めて財務省の意見もお伺いしたく思います。
それともう一つは、草場先生が説明していただいたプライマリ・ケアの話です。これは資料の7ページあたりを見ると、今回のコロナ禍において何がボトルネックになっているかは非常によく分かるお話で、プライマリ・ケアを強化することが必要であるというのがよく分かったのですが、その前の、今なぜ診療所に弱点があるか、4ページで、医師・医療機関のエゴの問題ではないという話がありましたが、巷でよく報道などでコロナ患者お断りのような、開業医が貼り紙を張っていて、開業医は何て冷たいのかという世論も一部にあるわけですが、それは医師のエゴの問題ではなく構造的な問題であるとということはよく分かりました。
ただ、この多くは医師1人の診療所ですが、医師が1人で開業しているということは医師のエゴではないかと思うのです。1人でやりたいから1人でやっているのではないかと思いまして、これを総合診療というか、複数の医師がいて、1人が感染しても、まだ診療を続けられるとか、いろいろな医師がいるとか、今NHKの土曜ドラマでやっていますが、弁護士事務所にいろいろなスペシャリティーを持つ弁護士さんがいて、総合的に力を発揮していくというような、そうした診療所にしていく、つまり、医師が1人でやりたいというエゴを排して、そうした形にしていくためには、どのような制度による支援が必要か、もし、アイデアがあればお聞かせいただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林毅委員、お願いします。
〔小林(毅)委員〕御説明、どうもありがとうございました。大変分かりやすく、明確だったと思います。
そこで1点、質問とそれから意見ですが、1つ、草場先生のプライマリ・ケアの話、プライマリ・ケアのシステムとしてやりましょうと、こうした機会ですからやりましょうと、誠にそのとおりであると思います。まず最初にどこから手をつけて、また、それをどのくらいの規模感といいますか、スピード感といいますか、何年間ぐらいでやるというのを目指すべきなのか、あるいはできるものなのか。全部同時に進めましょうというと、恐らく、全然進まないと思いますので、どこから手をつけるべきなのか、まずこれからやりましょうというのを頂ければと思います。
それからもう1点、神子田委員からもありましたが、医者のエゴではなくて構造的な問題と言われておりますが、先ほど繁本政務官のお話にもありましたが、現場の状況をよく見てというお話がありました。ただ、どうしてもこれエピソード主義になってしまって、全体を把握するのはなかなか難しいと思います。現場にもいろいろあると思います。そのどちらにスポットを当てるかということではなくて、全体を見渡した上で判断していかないと、やや偏った話になってしまうのではないかという気がいたしました。
質問と意見です。以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。素晴らしいプレゼンにたくさん御礼を申し上げたいところですが、、時間もないので先に行きたいと思います。
井伊先生のおっしゃっていた質の確保、それから、補助金をもらっているのにデータ開示がないということは、私も論外であると思います。くわえて、かくも、なぜ病院のばらつきが生じてしまうのかについては、エゴの問題ではなく構造問題であると考えても、分かりません。何か適切な答えがあったら教えてください。
また、主計官の説明の中にあった、7ページにあったのですが、コロナ病床確保に、1,950万円という1病床当たりの金額はあまりにも破格で、驚きました。ほかの国は幾らなのか、こうした計算はどうするのか、どう決まっているのか、多く疑問が残りました。分かっていることがあれば教えてください。
続きまして、何でもかんでも教えてくださいで申し訳ないのですが、渡辺先生には、低密度医療になっていることが問題であると教えていただきました。ほかの国はどうなっているのでしょうか。何かご存じであればお教えいただきたいと思います。また、入院包括の支払いについての良さの説明を、私も本当にそうであると思ってお聞きしていましたが、逆にデメリットがあれば教えていただきたいと思います。
また、草場先生には、かかりつけ医があると良いという話をお聞きしました。とてもそうである、と思うのですが、インセンティブやメリットなしでそれが可能でしょうか。何となく患者としては最終的には専門医に行きたいような気がしてしまうのですが、インセンティブやメリットづけが必要なのではないかという意見があるかないか、どのようなことが考えられるか教えてください。
そして、その延長でもあるのですが、こうしたかかりつけ医的なものをつくるのに、現在、大学医学部にはそうした育成するような制度はあるのでしょうか、教えていただきたいと思います。
何でもかんでも教えてくださいばかりで、すみません。私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。非常に分かりやすい説明で、改めて、相当大がかりな改革が必要であるということが身にしみてよく分かりました。
そこで、コメント1個と、質問2つですが、コメントは、井伊先生、御説明の私立病院、それから中小規模クリニックの情報開示、皆様ももう既に言っていますが、やはり税金が入っているということ、そして外から見えづらいという意味で、ガバナンスの強化の観点で極めて重要であると思います。これから医療のDX化等様々な形で進めている中でもありますので、中小の医療機関でも、手がつけられるところが、簡便化されていくと思いますので、そうしたことも踏まえて、ぜひとも前に進めていただきたいと思っています。
質問2つ簡単に、1つは、プライマリ・ケアについてですが、これ、超長期的な話ですが、金融市場等にいる者からすると、こうやって囲い込みを入り口のところでしてしまうと、後から入ってきた若い方々、若い医師の方々が、自分はプライマリ・ケアの病院になりたいのだが、もう既にいろいろなところに囲い込まれているといったような、そうした競争阻害要因とかはあり得ないのでしょうか。大分先の話であるとは思いますが、教えてください。
それからもう1点は、オンライン診療です。こちらが進まないということで、確かに、これだけコロナでいろいろな形で進められたにもかかわらず、1割程度しか導入が進んでいないということも聞いておりますが、これを進めるためにはどうしたら良いのでしょうかという案があれば教えてください。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔 末澤委員〕どうも御説明ありがとうございました。時間の関係で2点だけ質問させていただきます。
第1点は、これは井伊先生と一松主計官にお伺いしたいのですが、2002年度の概算医療費、これは国民医療費の98%程度を表しますが、これは42兆1,648億円と、前年度43兆5,777億円と比べて、1兆4,129億円、マイナス3.2%と、過去最大の減少になっています。これは厚労省が8月末に試算しました。ただ、これには、先ほどから御説明あった補助金が恐らく入っていない。ですから、補助金を入れた場合に、2002年度の実績の医療費はマイナスなのか、プラスなのか、プラスであるとすると何%ぐらいのプラスになったのかということを、もし、先ほど収益の試算をされていたと思うので、そのベースでお伺いしたい、これが第1点目です。
第2点目は、草場講師からの御説明でプライマリ・ケア、お話ございました。私もそのとおりであると思うのですが、ただ、英国の場合、かかりつけ医で有名な英国の場合は基本的にNHS制度の下、国立です。一方で、日本は御案内のとおり、ほとんどがプライベートの1人の専門医が多い。今、例えば混んでいるのが、例えば週末とかに行くと、整形外科医とか、例えば、春になると花粉症の関係で眼科医とか、また、場合によっては最近精神科とか、そうしたのがはやっております。ただ、そうしたいろいろな専門医がいらっしゃる中で、プライマリ・ケアに転向しろといったとき、では、何割ぐらいの方が、例えば1年で転向できるのか。最終的にこの制度を実現するためには、何年ぐらいかかるのか、こうしたイメージがあれば、ぜひお伺いしたい、2点です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ここでオンラインのほうの御質問をされる方、御意見される方、神津委員から希望ございますので、神津委員、どうぞお願いします。
〔神津委員〕ありがとうございます。手短に申し上げたいと思いますが、まず、有識者の皆様の提言は、私は非常に大事な内容であると思いますから、これをやはり実現していくことが非常に大事であると思います。直近で送られた別の資料をたぐっていますが、有識者の方々のパンデミック全般の対応に関わる御提言も、非常に大事な内容であると思いますから、併せて、やはりこれは実現していかなければいけないということを強く感じました。
それと、やはり医療の問題ということは、いろいろな意味での偏りといいますか、ひずみといいますか、これがコロナ禍であらわになったということにほかならないと思います。この機に、この偏りをどうやって是正していくのかということで、特に、労働時間の偏りは医療従事者、特にお医者さんの場合、顕著でして、これは例の働き方改革で、パンドラの箱を開けられた、そうした状況にもありますので、私は大いに関わるところがあると思いますので、そうしたところも含めて深掘りしていく必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。
それと、もう何人かからありましたが、かかりつけ医です。これが非常に大事であると思います。やはり、その重要性がもう既に指摘されて久しいのですが、やはりお題目になりがちなところがあるので、今日の御提言のように制度化をしていくということは極めて重要であるということを、私からも申し述べておきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、また会場から御発言いただきたいと思います。有識者の方に御回答等、また、お願いしたいと思いますので、恐縮ですが、手短にお願いいたします。
平野委員、どうぞお願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。今日のお話、大変興味深く伺いました。前回の建議でも、低密度医療の問題を取り上げたわけですが、今日まさに、医療の現場から、それを的確に分析していただけたと思っています。何といっても財政健全化の本丸です。
供給サイドと需要サイドの両方あると思いますが、供給サイドに関して言うと、この場でも何度も指摘されたように中小病院の大病院への集約化が極めて重要です。言ってみれば、分散した資源を集約することで、効率性と品質の向上を同時に図る、これはマネージメントのイロハであると思います。
ただ、問題はそれをどのようにやるかということです。井伊さんがおっしゃって、かつ皆様も何度か指摘しておられるとおりで、データがないということは本当に問題であると思います。公的な収入に依存している一方で経営は自由ということは変な話でありまして、ほかの規制業種、運輸であるとか通信、教育、ついでに金融もそうかもしれませんが、それらのことを考えても随分無理がある。ここはぜひ変えていただきたいというのが1つ。
それから2番目は、やはりインセンティブをどうするかという話と、それからあとは、一定の強制力を働かせるような制度設計が必要ではないかと思います。
そして、結局は、医療体制に関して言うと、今日もお話がありましたプライマリ・ケア、すなわちGPと大病院の体制をどう組み合わせるかということですが、このグランドデザインを、やはり描かないといけないと思います。なぜかというと、これはGX(グリーントランスフォーメーション)と同じですが、言ってみると、産業構造の変革に関わるわけで、リスキルも先ほどから御指摘のとおり必要になりますし、それをどのような時間軸の中で、どのようなインセンティブでやるとか、あるいはディスインセンティブをつけてやっていくかということを、やはりグランドデザインとして描く必要があると思います。
もう一つ、プライマリ・ケアに関しては、私も実は海外に13年ほどいまして、日本の制度を見ていると、本当に恵まれていると思います。ただ、逆に言うと、これを変えると相当不満も出るだろうと思います。
ただ、今回、プライマリ・ケアの必要性というのがワクチンの接種やその他で、一部の国民には実感されたことで、チャンスであると思うのです。ですから、この辺のベネフィットをどう訴えるかということが1つと、もう一つは、英国も最近実は制度が変わって、前はかかりつけ医が自動的に決められていたのですが、複数から選べる仕組みに移行しています。フランスの場合は、併用というのでしょうか、プライマリ・ケアと、それからフリーアクセスに関するディスインセンティブをうまく組み合わせることで、プライマリ・ケアへのシフトを図っていると聞きます。ですから、この辺り、具体的に日本の医療の現状と国民の感情にアピールできるような制度設計を是非進めていただきたいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、木村委員です。
〔木村委員〕有識者の先生方、今日、御提言ありがとうございました。極めて示唆に富む内容であると思いますので、大変勉強になりました。
確かに、御指摘されたように日本は感染者数がすごく少ない一方で、病床がこれだけ多いのに、医療アクセスが制限されるというような、すごく理解しがたい事態がコロナ発生後続いて、それが1年半以上もたっているのに、まだ解消されていない、これは多くの国民がずっと疑問に思っていたことであると思うので、そうした意味で今回の説明はよくそれが分かり、意義があると思います。
命に関わる問題だけではなくて、こうした医療体制が充実しないと、それこそ過剰な行動制限を国民に強いて、経済活動の抑制を招いてしまうという極めて重要な問題を抱えていますので、これはコロナ対策と経済の回復の両立に向けて、早急に手を打たなければならない問題であると思っています。
とりわけ、御指摘された背景で、現行の診療報酬制度の問題、病床を埋めなければ経営が成り立たないとか、あるいは素泊まり入院が横行しているとか、これは極めて異常な事態で、一般の国民からしても、こうした無駄が横行しているということは、どう考えてもよく分からないところがあって、これは医療提供体制の問題も含めて、しっかり当局として対応してもらいたいと思っています。
1つお伺いしたいのは、田近先生からの御質問があったのですが、なぜこうした医療の状況がなかなか解消されてこなかったのか、その根底まで踏み込まないとなかなかこの問題、うまく構造的に問題は解決しないと思いまして、例えば、これはここで言ってよいのか分からないですが、どこかに医師会なりなんなりの既得権益があるのか、あるいは政治的な影響力が極めて大きくてこうした問題が解消されないのか、その辺も含めて御示唆いただければと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。まず、有識者の皆様、本日はすばらしい御発表を本当にありがとうございました。私からは3点質問がございます。
1点目は、データの整備と見える化の必要性です。様々な構造問題があるという御説明でございましたが、それを解決する最初のステップが、どの制度においても、私はデータの整備と、それを見える化していくことではないかと考えます。では、何をすべきかというところが重要かと思います。1つには、法制度の問題があろうかと思いますし、もう一つは、デジタル化の遅れも根っこの問題と思います。先生方からはこれらの問題で、どこを押せば見える化、データ整備が進むのかという点について、御意見があれば伺えればと思います。
2点目はプライマリ・ケアについてです。御説明いただいたことは、最終形としてそうした方向性が望ましいと思うのですが、実態と現状を踏まえますと、総合医療医が今の段階では限られる中で、どういった時間軸でこれを進めていけば良いのか。体制としても包括払いとセットで行わない限り、医療費の抑制・効率化にはつながらない可能性があることについて、どうお考えか。
3点目として、今回の保健所のとおり、どこかがゲートキーパーになりますと、そこが効率的に関係先とつながらない限りは、またそこで目詰まりが起きてしまう可能性がありますので、これもオンライン化、データの共有化とセットで進める必要があるのではないかということ。そしてインセンティブ設計も重要と考えますが、これらについて御意見を伺えれば、ありがたく思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕ありがとうございます。貴重なお話を伺いまして、大変勉強になりました。
資料の1-1に、解決策①から③まで記載がございまして、ここはもう全面的に賛成で、ぜひとも進めてほしいと思うわけですが、先ほど来御質問が出ているように、なぜ進まないのか、そして、財審としてどういう制度に落とし込んでいって、どういう主張をすべきなのか、これはプライオリティー、時間軸を含めてですね、言葉を換えれば、実現に向けてどういう具体的なアクションを起こしていくかというところは、後ほどまた確認をさせていただきたいと思います。
それから、全体として申し上げると、米国第35代大統領、ジョン・F・ケネディが「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」ということを仰っているわけですが、まさに今、新型コロナの第5波が落ち着いているので、その中で、やはり医療提供体制の強化に向けた制度改革を徹底的に、今、日が照っているときにこそ行う必要があるということを強調させていただきたいです。例えば、緊急時に医療資源を強制的に集約することですとか、一元的な司令塔を作って各地域における医療機関の連携を強化していくようなことなどが、ぜひとも必要であると考えます。
そして、これは本日の財審の議論のスコープからは少しはみ出してしまうのかもしれないのですが、コロナの医療であるとか医療体制に関連して、私が重要であると思うことを3点申し上げます。
1点目としては、やはり平時と非常時を峻別して危機管理体制を強化することが極めて重要です。国と地方の関係を明確化することに加えて、これからは残念ながら南海トラフ地震であるとか首都直下型地震が起きるリスクも存在するわけですので、非常時の国民に対する私権制限なども含めて、危機管理体制を強化することが喫緊の課題となります。
2点目としては、EBPM、科学的な知見であるとかエビデンスを踏まえて、医療システムを構築していくことが肝要です。前提としては、やはり情報公開、見える化ですとか、もしくはデジタル化、例えばデジタル庁で医療のDXプロジェクトを立ち上げるとか、こうしたことがカギとなります。
3点目は徹底的な事後検証です。「失敗の研究」という言葉がありますが、厚労省の解体的な出直しまで視野に入れて、例えば厚労省の技官制度の抜本的な改革ですとか、もしくは医療版のシビリアンコントロールのようなものを実現するべく、徹底的に事後検証を行う必要があります。
以上の3点について、追加で申し上げたいと思います。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕どうもありがとうございます。大変勉強になりました。構造的な問題であるということが非常によく分かったのですが、一般の人が理解しているのは、恐らく、病床は多いということは分かっていて、そして、でも人が足りなかったのであるというふうに理解が少し今進んできたと思います。それで最近よく聞くのは、だから医者をもっと爆発的に増やそう、看護師をもっと爆発的に増やそうというようなことをおっしゃる方もいないではないというか、そうした方向になってしまうと、またそれは違うのかなということなので、本当に今日のお話は大変重要であると思います。
その中で、これまでの方もおっしゃいましたが、私も診療報酬のベースとなるものが、このように一種曖昧な、ずさんな医療経済実態調査によって決まっていては、診療報酬によってインセンティブを変えようとしているのに、そのベースが非常に根拠が弱いということになってしまいます。ですから、これまでも言われているように、データを明確にして、やはり事業調査などを加えたちゃんとしたデータから診療報酬も変えていくということは、もう最低限のことかと思います。
また、プライマリ・ケアのことに関しては、これは御質問なのですが、やはりトータルとして全然進んでこなかったので、もう今年あるいは今年度の財審で何か主張して、どこを変えるのが良いかということはぜひ伺いたいと思います。
プラス、実は見ていて、職域の分担をもう少し変えたら良いのではないかというところがあったように私は思います。つまり、お医者さんが、これは経営のためでもあるとは思うのですけど、いろいろなお仕事をお医者さんを通さなければいけないかのように抱え込んでしまって、いや、これは別の人でもできるんじゃない? というようなものがあって、そこに目詰まりがあったような気もしますので、その辺りをどういうふうにこの総合制度の中で考えていけば良いかも伺えればと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。土居委員、どうぞお願いいたします。
〔土居委員〕お三方の御発表、どうもありがとうございました。この財審での5月の建議で、「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」と銘を打っておりますので、今回の議論も、医療提供体制の改革につなげられるようにする必要があると思いますし、さらにそれは、診療報酬体系そのものにも言及していく必要があると。財審が診療報酬体系に言及すると、それは中医協の仕事であるというふうに横やりを入れられるのですが、いや、医療提供体制の改革を進めるには診療報酬の改革に手をつけなければいけないということで、しっかりこの秋の建議でも、その診療報酬体系に関連するところで、事細かくでもよいので、言及する必要があると思います。
その中で、このお三方のプレゼンテーションは、重要なポイントが2つあったと思います。
1つは入院医療についてですが、DPCからDRGという言い方ではなくて、むしろPDPSからPPS、つまり、1日入院当たりではなく1入院当たりにするという報酬体系への実質的な転換、これをする端緒を開くべきであると思います。
資料1-2の6ページにあるように、渡辺さんがお示しされた、もう少し入院日数初期の時期に大きく点数をつけ、そしてだらだらと入院しているということで点数がつかないようにするような形に追い込めば、PPS化が実質的にできるのではないかと。それは、地域医療構想で言われている医療資源投入量に応じた病床機能の分化と整合的に進めることで、この改革が実現できるのではないかと思います。
それから外来医療については、草場先生がおっしゃったように、かかりつけ総合医制度の定着につながるような形で、資料1-3の10ページにありますような包括払い化、しかもその包括払い化には、かかりつけ総合医が満たすべき要件を算定要件に、診療報酬体系の中で要件を定めるということによって、医師にその要件を定めれば、かかりつけ医に関連する包括払いの報酬が受け取れるのであるという誘導をも打っていくということによって、先ほど草場先生がおっしゃったような、様々な今の外来医療における非効率なものがなくなっていくのではないか。
最後に1点、財務データに関連しては、井伊先生と一松主計官がおっしゃったように、少なくとも、国立・国営の病院については、もし収支で黒字になるならば、運営費交付金等で調整するとか、いろいろな調整の方法がありますので、そうしたものを通じて、データの開示はもちろんですが、改革を進めるインセンティブをつけていく必要があるのではないかと思います。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それでは、これまでの各委員の皆様方からの御意見、御質問がございましたので、お三方の先生方、それから事務方のほうから、この場で御回答いただけるような点につきまして、お願いしたいと思います。場合によっては、後日メールということでも結構でございますし、時間の関係もございますので、その点よろしくお願いしたいと思います。それでは、お三方の先生方から、どちらからでも結構ですが、何かございますか。それでは、渡辺様からでよろしいですか。どうぞお願いいたします。
〔渡辺講師〕いろいろと御質問を、そしてアドバイス、コメントをありがとうございました。
今、日本の医療提供体制で起きているこの低密度医療、これは医師・看護師を増やそう、もしくは更に病床を増やさないといけないのではないかというような世論がありますが、逆なのです。高密度医療をするために急性期病床数を集約化する。今、日本は8,000病院以上ありますので、全ての病院が1割、2割減らすというのではなく、やはり集約化をして病院の規模のボリュームゾーンをつくっていくことで、医療の質も上げ、そして医療費もコントロールできると考えています。
医療提供体制は、これはもう10年以上、集約化に向けていろいろと施策がありますが、調整会議での話合いは、やはりもう限界なのです。医療現場では、皆様が想像している以上に、病院は経営体ですので、インセンティブ、つまり、診療報酬に基づいて合理的判断をしているのです。今のDPCでは、1日包括払いですので、それに応じて自分たちの経営を最適化し、やはりそこにインセンティブが強烈に働いているのです。日本は1入院包括払いを取らずに1日包括払いというふうに、ここ14年ですか、15年ですか、来ていますが、1入院包括払いは切り札というか、集約化に向けて質を上げ、医療費もコントロールできるように、1入院包括払いは、もうこれは最後のカードを切らざるを得ない。話合いだけでは難しい、というのが今回の話です。では、1入院包括払いでデメリットはないのかというお話もありましたが、もちろんあります。先進国が経験してきたのは、やはり粗診粗療になるのではないか。例えば、治療が不十分なまま退院させて、在院日数をコントロールして、経営のほうにインセンティブを働かすということもやはりあります。ですので、最後のスライドでお話ししたように、医療の質が高い病院にインセンティブがつくような支払い。質で競争しない業界というのも医療ぐらいで、そこが可視化されていない。医療費の問題はもちろんあるのですが、質の問題も、やはりこれが可視化されていない。最後のスライドでは、どなたも恐らく、第二象限の病院にかかりたいと思うのです。合併症もない、再入院も少ない、再手術も少ない、そして医療費も非常に適正にコントロールできている病院、これらの第二象限の病院、もしくは医療の質が平均よりも高い第一象限の病院に、質と医療費のインセンティブをつける。そうしたことで、1入院包括払いのデメリットを補っていくというようなことが必要であると思います。
繰り返しになりますが、病院は想像以上に経営体として合理的判断をする、そこで診療報酬は必ず非常に大きな切り札になりますので、今回の提言といいますのは、そうした意味で地域医療構想とセットというか、地域医療構想を実現するために、集約化を、密度を上げるために、その報酬制度は手を入れないといけない切り札ではないかというふうに話しました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。それではほかには。草場先生、どうぞ、お願いします。
〔草場講師〕草場でございます。よろしいでしょうか。たくさんの御質問をありがとうございます。いろいろな御質問がありましたけども、全体的に総括的な形で御説明したいと思います。
まず、現在の一人開業医、ソロプラクティスが中心となっている開業医制度というものが、なぜ日本の中でメジャーなのか。これは実は江戸時代から、いわゆる町医者という形で、いわゆる家業として医療を担っていくというものが、日本のいわゆる診療所の形態として非常に歴史的にかなりマジョリティーを占めていたという現状があると思います。一方、海外はそうした形態はございません。基本的に、診療所も病院も、個人の属性として、家業として継ぐという枠組みではないので、基本的に自分の財産としてずっと継いでいくという枠組みはございません。日本の開業医制度は非常に独特な、八百屋さんとか、そうした伝統的な技術職の流れの中で日本の医療が存在している。それが日本の非常に独特な枠組みであるということをまずは御理解いただきたいと思います。
これを改革していくためには、1つは、やはりグループ制、グループ診療所というものをつくっていく、これを実現していかなくてはいけない。実際、地域の開業医の先生方は、もう70代80代で非常に高齢化していて、御子息が継ぐこともできない状況があります。そうした中で、御自身の診療所を誰に継がせるかと非常に悩んでいる状況が実はございます。ですから、そうした医療機関が実は地域には非常に多い。今までの個人的な財産としての開業医制度というものから、いわゆる公的な診療所というものに変えていく非常に良い今タイミングが出てくると思います。今回の枠組みでは、基本的にソロプラクティスではなくて、グループプラクティスの診療所というものをつくっていく。それはしかも、プライベートというよりは、プライベートでもありますけども、基本的には半官半民、つまり、機能としては公的な役割を果たしながら、もちろんプライベートの部分も果たしていくという、そうした非常に日本的な在り方を目指していくべきではないかなと思います。
イギリスも、GP制度は公的な制度と誤解されていますが、GP制度も実は開業されているのです。その中で、それがNHSの中に加わっているという形になっていて、実はパートナーの先生方は自分で開業しています。あくまでも個人が主体になっていて、それをNHSがカバーしている。つまり、日本の公的な医療保険制度と実は変わりません。ゆえに、イギリスの制度が日本と違うかというと、実は非常に私は近いと思っていて、頂くお金の分が全部公的な保険から入っているという意味では、日本は非常にNHSに近い状態に実はあると思っています。ただ、保険者のほうがそうした管理をしていないので、非常に自由自在にいろいろな診療ができるというだけで、何か日本は自由自在で、英国のGPは非常に管理されている感じがありますけど、保険者の管理がないのでそうした状況になっているというのを私は非常に感じているところがあります。それが1つです。
まずどこから取り組むべきかというお話がございましたけども、一番大きいのは、実は総合診療、つまりプライマリ・ケアを専門として認識している医者は非常に少ないという点です。ほとんどの医師は、循環器内科、呼吸器内科、脳神経外科、そうしたものを目指していって、病院の医療をある程度やってこられて、あるとき開業する。突然開業医という形で、何でも診ますよという形になる。つまり、プライマリ・ケアを診る専門的なトレーニングは存在していません。そこが専門的であるということを認識してもらうためには、やはり現場の中に、例えば今、介護保険では地域包括支援センターがございます。それと同じように、地域の中に総合的な診療を提供する医療機関というものを例えば位置づける。それは、全部の医療機関がなる必要はないと私は思います。例えばある1万人の都市であれば、1万人の中に2つの診療所がそうした役割を果たす。そこにはかかりつけ総合医とか、そうしたトレーニングを受けた先生を集中的に入れて、訪問診療とか、あるいは予防医療というのを集中的にやる。そうした場がないので、私自身が今養成している、総合診療を志している若い医師も、自分がどこで働くべきかという場所が見えないのです。そうした場所を少なくともシンボリックにつくっていく。それをいろいろな地域に、東京の中でもいろいろな区の中に幾つかつくっていくような形で、総合診療をやっていく象徴的なグループプラクティスの診療所というものを制度の中に位置づけてつくっていく、これだけでも非常に大きいと思います。そうすると、若い医師はそうしたものを目指したいという気持ちが湧いてきますし、国がそうした制度を支援しているのであるということが形で分かります。そこからまず、すぐに手をつけられる部分もあるのではないかなと私は思っています。
そこには必ず包括制度を入れていただいて、つまり出来高払いで、病気になった人を診る。病気にならないように頑張ったら収入が減っていくという今の状況がありますので、我々が一生懸命予防医療をやっていったら、患者さんが元気になられて、草場先生、もうこれから来なくて良いよねといっていなくなる。そうしたら、診療報酬は減ります。そうではなくて、健康的な管理をずっと続けていくことで、管理そのものに対して、病気にしないことに対して報酬がある。それが今は全くありませんので、そうした枠組みを少なくともそうした診療所にはつくっていく、そうしたところからまずスタートしていただくということは、私はできるのではないかと。それは少し例外的かもしれませんが、今の開業の先生方の出来高払いの枠組みと少し別枠をつくっていって、それを、一応今両方を並べていくような形で進めていくという形でできるのではないかなと感じて、お聞きしていました。
〔増田分科会長代理〕それでは、井伊先生、どうぞ。
〔井伊講師〕では、私から簡単に2点。
今までさんざん指摘されてできなかったことをできるのかということなのですが、私は、コロナは千載一遇のチャンスであると思います。まず、供給者側ですが、受診が本当に減りました。戻ってきているところもあるのですが、また6波などが来たら、また減ると思います。どの診療科がどの程度減ったかというのもデータでお示しすることができます。加算や補助金がないと、なかなか経営が難しい医療機関が出てきます。これは先ほどの報告でも申し上げたように、今後10年ぐらいかけてゆっくり起きてくるだろうということが一気に起きました。医療機関の収益の安定化ということを考えても、今まであまり関心がなかった医療機関でも、制度が変わるのならばそちらを選ぼうかなという人たちが出てくるのではと思います。
また、患者側、需要者側ですが、フリーアクセスはすばらしい、幾つもの医療機関に好きなときに受診できるといいながら、PCR検査を受けたいのに受けられないとか、入院が必要かもしれないのに自分で医療機関を探さなければならない、この制度はどうなのかなと、コロナで強く不安を感じたところです。私も、朝起きて熱が出たらどうしようか、いろいろお医者さんは知っているけれど、どこに行ったらよいのかと、私自身が非常に不安に感じています。
2点目ですが、ラグラム・ラジャンというIMFのチーフエコノミストや、インドの中銀の総裁なども務めた方が「The Third Pillar」という本を書いて、日本語でもこの夏に訳が出ましたので、お読みになった方があるかと思いますが、ラジャンはその中で、国家と市場だけでなく、Third Pillarとしてコミュニティーの重要性を強調していて、まさにヨーロッパの多くの医療制度は、その地域の診療所に登録した地域住民の人数に応じて収入があるというコミュニティーベースの制度を基礎にしています。これは、今後の制度設計でとても重要になる考え方で、日本でも参考にするべきと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕一松主計官、それではお願いします。
〔一松主計官〕田近先生から政策インプリケーションについてお尋ねがありました。コロナ患者の受入れの促進という目的と経営の下支えという、いずれも重要な二つの目的が切り分けられないまま対応した結果をお示ししたと思っております。
経営の下支えに特化するのであれば、5月の建議にて御指摘いただいた、コロナ感染拡大前の診療報酬の支払いというのも一つの手段だったとは思っています。しかし、現時点では、医療経営の状況は回復しておりまして、下支えの必要性が乏しくなっているとすれば、患者の受入れ促進を実効的にするよう、先ほど御説明した運用の改善にとどまらず、病床確保料の単価や請求要件などの制度設計を適正化していくことが必要です。
中空委員から御質問があった1床当たり1,950万円の補助金の設計につきましては、第3波を控えまして、当時の標準的な人員配置を前提として、処遇改善の必要性なども踏まえまして制度設計させていただきました。カンフル剤であったのですが、その位置づけ、状況が変わっておりますので、その在り方も見直していくことが必要であると思っています。
神子田委員から、実際に診療するかに応じてお金をつけるという、非常に重要な御提案ですが、コロナのように感染の波が大きいものですと、一定の患者数に収まっている場合であっても、次の波に向けて診療の準備をしているという体制確保にも配慮していく必要があると思います。
2点目のインプリケーションは、平野委員が言われたとおり、財政支援だけではなくて、現行法あるいは法改正も含めまして、国あるいは都道府県知事の権限の活用が重要であるということであると思っています。
3点目としては、診療報酬改定にも通底しておりまして、診療報酬改定では、診療行為に点数をつけるという価格面の調整が主となるのですが、それでもって、同時に財政とも調和し、医療経営の下支えも行うということにはなっているのですが、果たしてそのような、いずれの目的も同時に果たすことが、芸当としてできるのかということでございまして、やはり価格すなわちPのみならず、医療提供体制といったQの面、それから1点単価の問題も含めて議論していく必要があると思っております。
末澤委員の試算につきましては、今後の議論の中で、大胆な前提が必要になると思いますが、お示ししたいと思っております。
私からは以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、有識者ヒアリングはここで終了とさせていただきます。お三方の先生方、大変限られた時間の中で、貴重なお話をお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。
それでは、ここで三方の先生方は退室となります。
(渡辺講師、草場講師、井伊講師退室)
〔増田分科会長代理〕それでは続いて地方財政のほうに移りたいと思うのですが、すみません、25分遅れということになっているので、巻いて進めていきたいと思います。
初めに、高田主計官から説明しますが、こちらは本当に簡潔にお願いをいたします。
〔高田主計官〕地方財政担当主計官の高田でございます。
2ページをお開きください。地方交付税交付金等は、近年16兆円前後と、社会保障に次いで2番目に大きい政策的経費となっております。
3ページです。地方交付税は、地方財政計画上、歳出歳入ギャップを埋める形で支出をされておりますが、今年度につきましては、その法定率分等で不足する折半対象財源不足が3年ぶりに発生をしております。他方、地方財政計画上、一般財源総額実質同水準ルールを導入しておりまして、地方が使途を定めないで自由に使える一般財源の総額を一定水準確保しております。直近では、このルールは、6月の骨太2021によりまして更に3年間適用することとされております。
4ページです。この地方一般財源総額ルールは平成23年度から導入されております。これによって、地方の財源を安定的に保障する一方で、これが実質的な歳出のキャップとなることにより、財政規律が保たれる効果を発揮しておりまして、引き続き、このルールの下で歳出改革に取り組んでいく必要があります。
5ページです。こちらは来年度の総務省の概算要求、これは仮の試算、機械的な試算という位置づけですが、これによりますと、国税収入の増加、地方税収の増加により、令和4年度は折半対象財源不足が解消される形となっておりますが、一般財源総額については、社会保障費の増加等のためにプラス0.1兆円となっておりまして、一般財源同水準の観点から抑制を図っていく必要があると考えております。
7ページです。コロナ対応は、地方についても大変重要な課題です。過去、同様の財政ショックとしては、2008年にリーマン・ショックが発生しました。下のグラフにありますが、2008年度から2009年度にかけまして、国から地方へ国庫支出金あるいは交付税の形で多額の財政移転が行われ、このグリーンのライン、国のプライマリーバランスは急激に悪化しました。他方で、赤のライン、地方のプライマリーバランスは若干の悪化でとどまっております。その後、地方のPBはおおむね一定水準で推移、国のPBは徐々に改善してきておりましたが、2020年度は、このコロナ対応により国から地方へ多額の財政移転が行われ、他方で国のPBは急激に悪化をしております。
2025年度のPB黒字化目標は、国と地方で合わせて達成が必要なわけですが、この国から地方への財政移転はゼロサムでして、トータルとしてパブリックセクターの改善につながらないわけです。したがって、この国から地方への巨額の財政移転の内容と規模を見直し、国と地方がそれぞれ財政改善に向かうことが必要と考えられます。
8ページです。コロナ対応の地方創生臨時交付金、こちらは右の表にありますが、累次の補正予算、予備費で8兆円を超える額が支出されております。その使途は、左にあるようなものですが、この右下に京都新聞の報道を一部引用しております。紙袋購入補助制度、あるいは市役所の和式トイレの洋式化、あるいは公民館を修繕し、空調設備の更新と、こうした用途はコロナ対応に資するものとは言えるわけですが、ただ、もともと予定されていた事業の財源に活用されている、すなわち、国による交付金が事実上、地方の一般財源の肩代わりになっているケースもあるのではないか。国の厳しい財政事情を踏まえれば、こうしたものに真に国費による支援が必要なのかどうか、その内容や効果をよく見ていく必要があると思われます。
9ページです。地方の基金残高は一貫して増加基調にあります。リーマン・ショックの後でさえ一貫して増加をし続けてきております。足元の令和2年度におきましては、まだ決算の確報値が出ておりませんが、右に時事通信の報道を引用しております。これによれば、47都道府県のうち37道府県においては基金の残高が増加しているということです。もちろん、基金の増加自体は、地方公共団体における健全な財政運営の結果という面もありますから、そこは個別によく見ていく必要がありますが、少なくとも、この国から地方への巨額の財政移転が真に必要なところに効率的に行われているかどうか、検証の必要があると考えられます。
続いて12ページです。財審で従前から取り上げておりますが、地方の計画上の歳出を決算の歳出が継続的に1兆円前後下回っております。したがって、結果的には計画が過大に計上され、また、交付税も過大に支出されていた可能性があるわけでして、計画計上の適正化、また、後年度の予算編成への反映を検討する必要があります。
13ページです。地方財政計画には、内訳、積算が明らかでない枠計上経費が多数存在しております。近年、地方単独事業の決算の内訳をより詳しく示す取組が行われていますが、いかんせん、この左側の地方財政計画と右側の決算で費目が異なっておりますので、比較対照が難しい。したがって、地方歳出の見える化と、また、予算決算比較可能性の向上を進めていく必要があります。
14ページです。こうした枠計上経費として、今年度から新たに「地域デジタル社会推進費」0.2兆円が計上されております。これは、左側にありますが、地方公共団体金融機構の準備金を活用し、2か年にわたって実施しておりまして、地方における高齢者のスマホ活用の支援等を行うものです。
他方で右側ですが、国の一般の国庫補助事業として類似の目的を持っていると思われるものが実施をされております。例えば、この上のデジタル活用支援推進事業ですが、こちらは総務省の旧郵政部局で行っているものですが、この左の交付税における地域デジタル社会推進費と目的、内容が似通っているように見えるわけです。したがって、これらの関係性、あるいはそもそもこうした事業を国・地方・民間企業でどう分担していくのかは、よく整理する必要があると考えられます。
16ページです。社会保障費の増加は、国においても地方においても重要な課題です。国においてもそうですが、高齢化が進むからといって野放図に伸ばしてよいわけではなくて、その中で効率化を図っていく必要があります。
17ページです。社会保障費については、国の制度に左右されるので、なかなか適正化が難しいという地方の声もありますが、ただ、そうした中で、個々の団体の取組も重要です。1人当たり介護給付費については、都道府県によって大きな差がありますし、介護認定率においても都道府県ごとに差があります。これは、地域における年齢構成の差を調整した後のデータですので、それ以外の要因でこうした差がついている。したがって、何らか効率化の余地があるのではないかと思われるわけです。
18ページです。同様の論点を今年の予算執行調査でも取り上げておりますので、参考としてつけさせていただいております。
19ページです。こうした社会保障等の行政サービス効率化のために、マイナンバーカードの普及の促進を進めております。その一環として、マイナポイント事業を実施しておりまして、1人当たり最大5,000円相当のポイントを付与しております。これは、申請の促進に一定の効果はあったと思われるわけですが、他方で、これを経ても、カードの申請率が国民の4割にとどまっている。6割の国民はこのマイナポイントにも反応しなかったわけですので、その効果に限界もあるのではないか。
他方で、地方公共団体によってカードの普及率には顕著な差があります。右側に三田市の例を挙げておりますが、普及が進んでいるところでは、カードの申請サポートや、カードの利便性向上などの工夫をしておりまして、今後、こうした真に普及につながる効果的な施策に重点化をしていくことが望まれます。
21ページです。インフラの老朽化は、地方において大きな問題になっておりまして、最近でも、和歌山市の水管橋が崩落するといったことも起きております。この左のグラフにありますが、インフラの維持・更新費用は年々増大していく一方で、ブルーのラインの総人口、赤のラインの生産年齢人口は年々減少していきますので、今のままのインフラを維持することは難しい。インフラの規模の合理化「省インフラ」を進めていく必要があります。右側に事例を挙げております。
22ページです。こうしたインフラ適正化について、総論には皆賛成なのですが、各論になると反対、合意は難しいという問題があります。左側では、奈良県の例ですが、「奈良モデル」と呼ばれておりまして、県が主導する形で市町村の水道の広域化を進めております。また右側は、こちらは東洋大学の根本祐二先生の研究からの御紹介になりますが、合意形成の手法として、スマートフォンを使って地域の匿名住民投票を行う。これによって集団の中での自分の立ち位置が分かる。声高に叫んでいる人でも少数派であるということもあるでしょう。あるいは、公民館を廃止しますかと、それだけ聞けば皆反対なのですが、他方で、学校・スーパー・ガソリンスタンドなど身の回りの施設の中で何が重要ですかと聞くと、大体公民館は下位に来る。相対的なプライオリティーが明らかになります。
24ページです。地方行財政効率化のために、民間資金・サービスの活用が重要です。民間委託は様々行われておりますが、近年、新しい手法として、成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)というものが出てきております。行政が業務を民間委託する際に、そのやり方を細かく定めるのではなくて、達成すべき成果を定め、やり方は民間の創意工夫に委ねる。さらに、成果目標の達成状況に応じて支払いがなされる、より高い成果が上がればより高い支払いがなされるという形でインセンティブを与えております。またさらに、その資金を民間から調達をする手法として、ソーシャル・インパクト・ボンドというものも実施されております。
この右側に広島県の例が挙げられておりまして、広島県と県下の6つの市が合同でがん検診の受診勧奨を行いました。キャンサースキャンという会社に委託をするのですが、キャンサースキャン社は、マーケティング手法を駆使して、その対象者の属性に応じ、より効果的な勧奨を実施する。受診率の増加に応じた支払いがなされるという契約です。また、キャンサースキャン社は、この右側にありますが、複数の民間銀行や、あるいはクラウドファンディングを活用して資金を調達しております。
最後に25ページです。気候変動対策あるいはグリーン投資も地方の大きな課題でありまして、この分野でも民間資金の導入が重要です。左側にありますが、世界でも日本でも、いわゆるESG投資の市場が拡大しておりまして、こうした投資をしたいというニーズが民間金融機関、機関投資家あるいは個人投資家の中にも高まっております。実際、右側にありますが、地方公共団体においてソーシャルボンドやグリーンボンドといったESG債を発行する事例も出てきております。
また、その下にありますが、地方公共団体金融機構が地方自治体に成り代わってグリーンボンドを発行し、市場から資金を調達し、その資金を地方公共団体の下水道事業に貸し付けるといったことも行われておりまして、こうしたことも参考に、更に民間資金の動員を図っていくべきと考えます。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕地方財政については、赤井委員から意見書が提出されております。お手元にお配りしてございますので、お目通しいただきたいと思います。
それでは以降、質疑に入りたいと思いますので、合図をしていただければ指名をいたします。それでは、会場から先に指名したいと思いますので、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕御説明どうもありがとうございました。コロナ禍の中で、国家財政が地方財政を支えるという役割を果たしたということは、当然それはそれとして一定の役割はあったと思いますが、やはり過剰に国家財政の赤字を強いてしまっているという部分については、今後、国と地方との間での何らかの調整をする必要が私はあると思います。
ともかく、まずは令和4年度の地方交付税をどうするかというところが一つの予算編成上の焦点であると思うのですが、やはり、折半対象財源不足ができるだけ小さくなる、ないしは解消されるということを、私は願いたいと思います。税収の増加の見積りがどうなるかということ次第ではありますが、先ほど主計官がおっしゃったように、枠計上での歳出の精査も必要でしょうし、さらには、今年、令和3年度の補正予算との関係もありますが、交付税法定率分の年度間調整で、本来は来年度、令和4年度の交付税財源に充てるべきものを令和3年度補正予算で使ってしまうというようなことになると、なかなか折半対象財源不足がなくならないというようなことになりかねないので、その辺りは、やはりコロナの収束に合わせて地方財政対策も平時に戻していくということが必要なのではないかと思います。
最後に1点ですが、令和2年度から令和3年度にかけて、国の一般会計で31兆円の繰越しがあると。そのうち地方に配分する部分が恐らく幾ばくかはあると思うのですが、それが決算に与える影響も今後あり得ますから、それを今後の地方財政計画、地方財政対策を見極めていく上で、決算と計画の乖離というところに目配りするところでも、この巨額の繰越しというものがどのように影響を及ぼしているかというところも、今後きちんとウォッチしていただきたいなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。いつもグリーン、デジタル、それからレジリエンスと言っているのですが、レジリエンスの中で、先ほど御説明がありましたが、インフラの中の水道について、非常に今深刻な問題になっているのではないかなと感じておりまして、今御説明ありましたように、和歌山の水管橋の崩落がありましたけど、この間の地震でも、都内でも数十か所から相当水道が漏れているわけです。それで、実は地下には、電線、通信ケーブル、地下鉄、ガス管等々、見えないのですが、もう一つの別の世界が地下にはありまして、特に水道の場合には、非常にパワーというか圧力がありますから、万が一何かがあると大変な事態が起こる。もちろん、メンテナンスが非常に大事なわけですが、地方財政の中で、なかなか膨大な量ですから非常に難しい。そうなると、ここに書いてありますように、ある程度効率化というか最適化、被害の大きさとコストの関係でどういうふうに順位づけをしていくかということが非常に大事になるわけですが、いずれにしても、これからいろいろな地震あるいは水害等々、これは間違いないわけですから、これをどういうふうに効率的にきちんとやっていくか、これもなかなか難しいのですが、ぜひ、これまでも重要であるということになっておりますが、もう一度その視点を強めていかなくてはいけないのではないかなと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕ありがとうございます。前回申し上げたのですが、昨年度、2020年度の国の一般会計税収は、昨年末の補正後見積額を5.7兆円上回りました。私はこの将来性、持続可能性については少し疑問を持っているのですが、地方税収は基本的に国税から1年遅れますので、恐らく、今年度は相当余裕が出てくると思うのです。ただ、来年度以降、米中の問題とかいろいろな難問を抱える中、ぜひ今回の予算編成では、その余裕をベースに、過去のいろいろな負の遺産の解決であるとか、やはり将来を見渡した予算編成をぜひやっていただきたいと。
また、効率性に関して見ると、地方に関しては3つです。1つはICT化、あと統合です。あと3つ目が、今日も出ていますけど、民間へのアウトソーシング、この3つを進めるしか人口減少下ではなかなか難しいだろうということでございます。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。今、末澤委員からもICTという話がありましたが、やはりデジタル化は国を挙げて進めているわけですが、実効性については、地方が鍵ではないかと感じております。昨年の例えばテレワーク一つ取っても、都市では進みながら、地方との差は倍ぐらいあったということも考えると、ここについて強力に進めていただきたいと思っています。例としてマイナンバーカードの促進の例が今出ていましたが、金銭メリットについては、一定の効果はあったものの頭打ちであると考えていくと、ここでも挙げていただいている例にもございますように、デジタル化は案外入り口はヒューマンタッチだったりするわけで、それが効果的であるということがこの例からも明らかになったということで、これから、ここで国の予算との関係見直し等にも触れられていますが、地方との連携、特に、人も使う形でのデジタルの推進ということを一層進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは続いて、オンラインの方が9名いらっしゃいます。佐藤委員、堀委員、神津委員、上村委員、冨田委員、赤井委員、横田委員、田近委員、河村委員と、9名いらっしゃいますので順次指名しますが、恐縮ですけど、お一人2分厳守でお願いいたします。佐藤委員どうぞお願いします。
〔佐藤委員〕よろしくお願いします。では、今回地方財政については、従来の課題とコロナの課題とこれからの課題、3つに分けて端的に説明したいと思います。
まず13ページ、これはいつもの話ではあるのですが、地方財政計画の物差し、つまり予算の組み方、これは性質別です。他方、交付税とか、この右に出ている決算は、これは目的別になっていますので、もともと物差しが違うのです。物差しが違うものを比較するということは意外と難しいので、ここはやはり予算の項目を合わせるということが肝要かと思います。これをやることによって、逆に住民にとってみても、自分たちが受けている行政サービスのどこまでが交付税で、どこまでが自前の財源なのかが分かってきますので、それで国の財政の悪化が自分たちの行政サービスにどうつながっていくのかということが見える化していくと思います。そうした意味では、地方財政再建に向けての国民の合意形成の必要性もありますので、やはりそうしたお金の流れの見える化をしたほうが良いかなと思います。
また、8ページは端的に。コロナの課題ですが、地方創生臨時交付金ですが、やはり効果検証をやったほうが良いと思います。もちろん、コロナである、非常時であるということで迅速な支援が必要であるということはよく分かるのですが、それで結果的に何ができたのかということと何ができなかったのか。いろいろな事例で面白ネタはあるのです、確かに。イカのモニュメントとか、ランドセルを配ったとか、面白ネタがあるのは分かるのですが、それが結果的に、例えば感染拡大の防止にどうつながったのか、地方の経済の底支えにどうつながったのかという視点で、やはりもう少しそうした検証があってよいかなと思いました。
また、すみません、19ページ、最後ですが、マイナンバーカードについてです。これはこれから大きな話になってくるのは、自治体と国と地方の新しい役割分担であると思います。これまでの地方自治体は、要するに窓口業務が中心だったわけです。つまり、具体的には住民票の発行を含めた公的認証業務が中心だったわけです。でも、これは対面が前提だったからです。しかし、マイナンバーカードが普及して、逆にマイナポータルのほうが使えるようになってくれば、必ずしも自治体を通して公的認証しなくてはいけないということはないと思うのです。今回の各種給付金も、さっき出てきた医療機関への補助金もそうなのですが、これまで多くの国からの支援が間接補助の形を取っている。つまり、一旦地方に渡して、地方が住民の方やあるいは医療機関に配るという形を取っているのですが、実はダイレクトな支給も可能になってくるわけなので、そうした点も含めて、これからの新しい国と地方の役割分担というものを見据えた上でのマイナンバーカードの普及かなという気はしました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、簡潔にお願いいたします。
〔堀委員〕16ページ、17ページのところに社会保障費の効率化というところがあるのですが、地方財政は、ここに記載されているとおり、地方における社会保障の経費は、国の制度によって変わるところもあるのですが、ここは民生費なので、よく見ていただくと、老人福祉費、児童福祉費、社会福祉費等で、次のページにあるのが、特別会計と一般会計の違いがあるので仕方がないと思うのですが、介護給付費の話なのです。何が言いたいかというと、先ほどの佐藤委員の話にも少しつながるのですが、結局、地方自治体、都道府県なり市町村なり、自分たちが適正化に努めると、それがどういうふうに自分たちの財政にもつながるのかというところがもう少し見えるようになると良いかなと思うのですが、今、当然一般会計と特別会計を一緒にすることはできないのは分かっているのですが、例えば国保の繰入金、一般会計に繰り入れたりとかしていると思うのですが、それは本来できるだけ解消したほうが良いと思うものの、そうしたものがどういうふうになっているのかなど、単純に民生費の推移の話と次の支出の抑制の話がつながっていないので、どういうふうにしたら見えるようになるのかを考えることがもしできると良いかなということが1点です。
もう1点は、ここにある介護給付費の適正化のところは、医療ともつながっているところがありますので、そこは見ていたほうが良いということと、また、マイナンバーカードの普及に関しては、赤井委員が今日出されている資料にもあったかと思うのですが、普及のためにはどういうものがボトルネックになっているのか把握する必要があると思います。幸い、健康保険証のマイナンバーカード化を今進めていると思いますので、それを進めるのに重点的に補助をするとか、進めるためにどうすればよいか、メリハリをつけた支出をすると良いのではないかなと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神津委員、簡潔にお願いします。
〔神津委員〕ありがとうございます。3点申し述べたいと思います。
まず1点目は、パンデミックへの備えという点です。今回のコロナ禍は、想定し得なかった事態が惹起されましたので、地方創生臨時交付金の果たした役割は大きいものがあったと思います。ただ一方では、説明にもありましたように、問題事例もあったということも事実です。今後、新型コロナウイルスを大幅に上回るような感染力を伴うパンデミック、これも考えておかなければいけませんので、今回の交付金の使途を十分に検証した上で、地方自治体におけるこの種の対応の標準的なパッケージを策定し、提示する必要があると思います。
次に、マイナンバー制度についてです。今回のコロナ禍のような緊急事態において、真に支援を必要とする層への迅速かつ確実な支援体制を確立する、そうした意味と、そもそも平時からの正確な所得捕捉に基づく公平公正な税制の実現、こうしたことに向けてマイナンバー制度の一層の活用は極めて重要です。折しも先月、デジタル庁が発足をしています。強力なリーダーシップの下に、全国の自治体の情報システム整備、標準化と併せて速やかに進めていく必要があるということを申し述べておきます。
最後に、長年にわたる地方財政の逼迫は様々なひずみや矛盾を生じさせている、そのことについて申し添えたいと思います。1つは、新型コロナウイルスとの戦いの最前線で今なお奮闘されている各地域の保健所で働く方々の負担軽減に向けて、足元において対策を講じるべきであるということはもちろんですが、コロナ禍で質・量ともにその必要性・重要性が再認識をされている行政サービスのかなりの部分を、いわゆる非正規公務員と呼ばれる方々が支えている、そうした現状を直視すべきであるという点です。不安定かつ低処遇の雇用形態がかなりの規模で常態化をしてしまっており、矛盾が拡大しています。昨年の4月から導入された会計年度任用職員制度が、その趣旨に基づいて機能しているのか、そうした点についても十分なチェックが必要であるということも申し添えておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、簡潔にお願いします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。御報告ありがとうございます。私からは2点です。8ページの地方創生臨時交付金ですが、コロナ対応でもあるにもかかわらず、もともと予定されていた事業の財源として活用されている事例については、これはやった者勝ちになっているというのだったら、少しひどい状態なので、非常にひどいものについては返還などの対応が必要ではないかと思いました。
次に、24ページの民間資金の活用、PFSやSIBです。これは非常に重要であると思います。これらは成果をあらかじめ設定することが必要になるスキームなのですが、こうした成果の考え方を地方の行政運営全体に浸透させることが重要かと思います。国の場合は、行政事業レビュー等で成果を重視するという行政改革がある程度浸透してきたと思うのですが、地方自治体は、私が見る限り、なかなかそうした行政の体質になっていないというのが認識です。こうした取組は、民間資金を活用するものではありますが、全体的な地方の行政運営を、経営本位に転換するためには、インパクトを持つ可能性があるので、成功事例を供して、横展開を推進していただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、簡潔にお願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。私からも2点でして、1点目は、地方創生臨時交付金。その活用事業について、今日御説明がありました。そこでは、皆様の御意見と同じように、適切な効果検証が行えるよう、KPIの設定等の工夫が必要ではないか。また、実態把握とか検証の必要性が言われました。私も、こうした事後評価は当然必要であって、予算編成の前提であるとは思います。しかし、補正予算であっても、事前の予算統制が必要ではないかと考えます。コロナ感染症への対応は、その手段の体系がまだ明確でなかった初期の段階はともかくといたしましても、何を目的に、具体的にどのような費目に対して補助金を出すということを明確に示す必要があったのではないか。しかし、その時点時点で政策の具体像を明確に示さないままであったので、国は規模ありきで対策を打ち、地方はあたかも一般財源を国からもらえたと考えて、御指摘にあったような多様な用途に使ってしまったと思います。
この問題は、実は我々最近、令和になってからですけども、この場で議論いたしまして、建議でまとめました社会資本整備総合交付金、防災安全交付金が、国全体から見た計画的・集中的な事業進捗の確保や地方単独事業との適切な役割分担に課題があるなどの理由から、交付金から、個別補助金へシフトを行うべきであると建議したばかりです。KPIも大事なのですが、臨時交付金は、交付金という名がついていても、重要な財政規律である一般財源総額実質同水準ルールの枠外である補助金であるからには、目的と使途を明確にして地方にお金を配るべきです。
2点目は、先ほど御指摘のあったPFSについてです。私は、こうした手法の重要性を否定するものではありませんが、PFIとか、あるいはPFSにしようが、地方公共団体が直接やろうが、事業内容が変わらなければ、最終的に国民の負担が変わるわけではないわけです。具体的に何が問題であり、何を変えねばならないかということを示す必要があると思います。地方公共団体の仕事のどこに非効率があるのか、料金にいかなる問題があるのかといったことを、手法の議論の前に本質的な問題点を指摘することが必要ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、赤井委員、簡潔にお願いします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。もし可能でしたら、資料を出していただけますか。簡単に説明します。
皆様が言われているように、交付金がものすごくたくさんの数が配られているので、まず1つ目は、その効果検証です。それからまた、税収に対する減収補塡債など新しい制度もできたので、効果検証をお願いしたいと思います。また、実際今、決算が9月末に出て見ているのですけど、その決算の対応方法などもばらばらなので、そこのところをきちんと精査していく必要があるかと思います。
それからもう一つは、これまでやってきたことを、マイナンバーカードや財政の効率化ですが、それに向けた試みをしっかりとやって、あとはそのルールが延長され、今後また3年間適用されますので、それとともに説明責任が大事かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、簡潔にお願いします。
〔横田委員〕ありがとうございます。私は前段も含めてコメントをさせていただきます。
まず、印象論や空気に流されず冷静な議論ができるような端緒となるデータや報道資料の御共有、ありがとうございました。特に個人的には、前半の医療機関の経営収支データ、また、地方自治体の基金に関する報道の御共有が非常に参考になりました。
前段の議論ですが、医療機関の収支状況について、気になる点があるので共有したいのですが、経営の状態が、昨年言われていたように医療機関が逼迫しているということがなく進んでいる点は評価をしたいのですが、きちんと現場で危機に立ち向かって汗をかいた医療従事者にまでお金が回っているのかということ。ほかの支援金が医療従事者向けに出ているということは理解しているのですが、全体のこれまで支援してきたものがきちんと現場に還元するなど有効活用された上で、経営もちゃんと安定した状態になるかきちっと見る必要があるかと思っています。
また、基金についても同様で、基金も額ベースで見ると、大都市の緊急事態宣言が長く出ていた地域が非常に大きな影響を受けていると思います。37道府県で基金が増加している可能性があるという報道は、非常にポジティブにというか、悲観せずに捉えられるお話であるとは思っていますが、市町村単位でコロナの影響が産業構造を含めてどういったふうに出ているかというのを見ていくべきであると思います。ですので、マクロとミクロを行ったり来たりしながら丁寧に議論をした上で取りまとめをしていくべきであると思います。
最後に、マイナンバーカードについてです。個人的な印象としては、ようやく40%まで来たかと思っています。次のフェーズは、やはり交付済みの方にインセンティブを、早く支給ができるなど、何らかのインセンティブを与えて、書類の人にはどうするなどという検討が可能なフェーズまできたと認識しております。更なる交付のスピードを上げるため、国なのか、地方なのか、何がこれまで一番効果的だったのかということをきっちりと検証すべきであると考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、手短にお願いします。
〔田近委員〕
日本の財政健全化に向けた取組の重要な柱の一つとして、地方財政がある。要するに、2025年までに向けて、国・地方のプライマリーバランスを黒字化すると同時に、債務残高対GDP比を下げていくと。歳出では社会保障、非社会保障、地方と。つまり、改革の3本柱の一つにあるところ、地方財政が多少難しいのは、一般財源総額実質同水準ルールがその取組なのですが、私の意見はそれをもっと国民に分かりやすく説明できないかと。ということは、要するにどういうルールになっているかというと、一般財源を2021年度水準にする。一般財源は、地方税、地方譲与税云々、臨時財政対策債等なのですが、私は、国民というか、普通の人に分かってもらうために、こうしたルールなのですよ、総額同水準ルールですよ、一般財源とはこれですよ、それぞれの費目、項目が、次のページに実はあるのですが、それが何年来こうなっていると説明できないかと思います。ここから私のコメントなのですが、そうした一般財源の収入見積りを、何か頂いた資料で計算したら、今年は63.4兆円。多少その中に、専門用語になりますが水準超経費などがあるので、多少それから引かなくてはいけないのですが、それが2021年の水準の約62兆円よりも多少多い。細かなことを言いたいのではなくて、もし収入が多いときには一体どういう形で調整するのだ、足りないときにはどうやって調整するのかと。したがって、一言で申し上げると、国の財政健全化に向けて重要な3本柱の一つの地方財政の管理、それは一般財源総額ルールなのですけども、それは決まったものですから、それをもっと国民に分かりやすく、そして、結果的にどうやってそれが調整されたのか、分かるようにしてほしいと。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕ありがとうございます。私からは、地方に国から出ていくお金は、交付税と国庫支出金と2つがありますが、足元の極めて厳しい財政状況に鑑みれば、この両方とももう少し踏み込んだ厳しい運用を考えていく必要があるのではないかなということでございます。矢野次官が雑誌に御寄稿になったものを拝読しましたが、そこでも指摘されておりますとおり、財政を健全化するためには、金利ボーナスの期間中に、単年度収支の赤字幅を十二分に縮めていかなければならないと。そのための赤字幅縮小は、もう当然ですが、社会保障分野だけで達成することは、とてもじゃないけどできないと思うのです。我が国の財政というのは社会保障の分野だけが危機なのではなくて、財政運営全体が極めて差し迫った厳しい状況にある、そうしたことを踏まえれば、社会保障に次ぐ大がかりな分野ですよね、地方財政は。そこについてももう少し踏み込んだ改革を検討していくべきなのではないかなと思います。
交付税に関しては、一般財源総額実質同水準ルールが、これはまた続けることになって、それは良かったのですが、それが達成できればということで満足してしまってよいのかどうか。それから、税収が上振れたときにどうするのかとか、それから、これまでこうしたルールに基づく財政政策運営の結果として、自治体の基金のほうが積み上がり過ぎていないかどうか。この基金は幾つかありますから、減債基金は話が別であると思いますが、財政調整基金ですとか、それからその他の特定目的基金についてよく検証すべきではないかなと思います。
地方創生臨時交付金についても、もういろいろ御意見が出ているところで、私も同じなのですが、これまでの国からの支出分の使途を精査して、きちんと公表することに加えて、事務局で御用意くださった資料にもあって、御説明もくださいましたように、KPIの設定を義務づけたほうが良いと思います。それを最初から設定してもらうことで、どういう政策目的のために国の交付金を使うのかということをはっきり自治体側が事前に示すことになりますし、事前に説明してもらうことになりますし、事後的に検証できることも大事ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、質疑はここまでとします。高田主計官から何かありますか。よろしいですね。
それでは、本日の会議はここまでとします。
会議後記者会見で、内容については私から御紹介いたしますので、個々の御発言につきましては、報道機関に対してお話をすることのないよう御注意をお願いします。
次回、10月20日10時から、次回は歳出改革部会として開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。
午後1時05分閉会