財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和3年4月15日(木)14:30~16:55
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.社会保障について
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3.閉会
分科会長 |
榊原定征 |
伊藤副大臣 元榮大臣政務官 矢野主計局長 角田次長 宇波次長 青木次長 日室司計課長 森田法規課長兼給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 大久保主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
遠藤典子 櫻田謙悟 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 南場智子 宮島香澄 安永竜夫 |
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臨時委員 |
秋池玲子 上村敏之 宇南山卓 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 権丈英子 末澤豪謙 角和夫 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 福田慎一 堀真奈美 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午後2時30分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、時間になりましたので、以降、会議を始めますが、本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままでお待ちをいただきたいと思います。
それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日も、対面とテレビ会議システムの両立てで開催をいたします。
また、本日は、社会保障についてを議題といたしております。
それでは、報道関係者の皆様方、御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、社会保障についての審議に入ります。
初めに、一松主計官から説明をお願いいたします。
〔一松主計官〕厚生労働第一主計官の一松でございます。よろしくお願いいたします。
では、お手元の資料に基づきまして、まず総論から御説明させていただきます。
資料の3ページ目です。給付が先行して、税財源の確保が追いついていないことを示す資料です。
4ページ目、諸外国と比較しつつ、中福祉、低負担と言うべき我が国の社会保障の現状について確認させていただいた上で、こうした給付と負担の不均衡の是正の手段の1つである国民負担の引上げの取組について、5ページで御紹介しております。一昨年10月に消費税率が10%に引き上げられたばかりであり、当面、もう1つの手段である給付の伸びの抑制に注力せざるを得ません。
6ページのとおり、近年は、社会保障関係費を高齢化による増加分に相当する伸びに収めるとの歳出の目安を守ってまいりました。
骨太方針での記載ぶりを7ページでお示しし、具体的構造をその左下の図で御紹介しております。
8ページは、令和3年度予算編成においてこの目安を達成したことを紹介しており、9ページでは、現行の歳出の目安は国費の規律であり、財政健全化の観点から優先されるべきであるものの、追加的に給付水準そのものの規律も必要ではないかという問題意識を投げかけさせていただいております。
給付と負担のバランスの確保を相対的に実現できておりますのは年金制度であり、11ページの真ん中より下のてんびんの図にありますとおり、平成16年の年金法改正によりまして保険料の上限を固定し、それによる収入の範囲内で年金給付を自動的に調整する長期均衡の枠組みが構築されました。
この長期均衡を可能といたしましたマクロ経済スライドの仕組みの説明について、12ページで御説明しており、中ほどに書かれておりますとおり、前年度の年金の名目額を下回らないという名目下限措置が発動の歯止めとなってきた次第でございます。
13ページです。下の表のとおり、実質賃金が低下する状況が続きまして、マクロ経済スライドが発動されなかったばかりに、真ん中の図のピンクの部分が指し示すとおり、足元で所得代替率が高止まりし、その分、調整期間が長期化することが生じました。
こうした状況に対応し、14ページ、平成28年年金改革法が成立し、左側にあるとおり、年金の収入は保険料を通じて賃金連動となっていることを踏まえ、給付を賃金変動に合わせて徹底して改定する考え方が採られました。キャプションの3つ目の丸のとおり、早速、令和3年度年金額改定率におきましてマイナス0.1%、これは右の小さい表を御覧いただくと、令和3年度年金額改定率マイナス0.1%と書いてございまして、その分、将来の給付水準の向上につなげることができました。
他方、同じ平成28年年金改革法では、右側の②にありますとおり、先ほどの名目下限措置は維持したまま、そのために反映し切れなかったマクロ経済スライドの調整率を後年度に持ち越すキャリーオーバー制度が導入されました。先ほどの表の小さな緑の文字の部分でございますが、平成30年4月に施行され、令和元年度の改定におきましては前年度からのキャリーオーバー分の解消に成功いたしましたが、令和3年度改定では再びキャリーオーバー分が発生しております。
15ページでは、将来の給付水準の向上に資するべく昨年行われました被用者保険の適用拡大の法改正について御紹介しています。
16ページが今後の課題でございますが、まず将来の給付水準の向上のため、今、御紹介いたしました、①の被用者保険の適用拡大をさらに進めること、具体的には企業規模要件の撤廃などを提案しております。②のとおり、これも先ほど御紹介いたしました名目下限措置の撤廃を検討する必要があります。③ですが、平均余命が延長する中で、基礎年金の60歳までの保険料拠出期間を65歳まで延長し、保険料負担を増やすということも選択肢であると考えております。現行の仕組みでは、給付が併せて増えますと国庫負担の大幅な増加につながりますので、財源確保も併せて検討する必要があります。
他方、医療分野では、年金とは異なり、給付と負担の均衡化が必ずしも図られていないという状況にあります。
18ページになります。キャプションの1つ目の丸にありますとおり、かつて経済財政諮問会議等におきまして、マクロ的ないわゆる伸び率管理が目指されたものの、厚生労働省から真ん中の青い両矢印の右側でオレンジの文字にされているとおりの主張がなされまして、2005年末にその主張のほうが通りました。当時の厚生労働省は、オレンジの文字で示すとおり、生活習慣病対策で、2025年度までにマイナス2.2兆円の医療費の適正化効果、平均在院日数の短縮でマイナス3.8兆円の適正化効果が生じ、これらの方策を通じて、2025年度の医療給付費対GDP比は6.7%にとどめることができるとの御主張をなされました。
EBPMやPDCAの徹底が叫ばれています。19ページから検証いたします。19ページですが、生活習慣病対策でマイナス2.2兆円との主張の具体的な手段である特定健診・保健指導について、レセプトデータの分析、さらに専門家の検証を経まして、100分の1の200億円にすぎないこと、2つ目の丸にありますとおり、しかも、そのために費やしている介入費用のほうが大きいことが明らかになっております。昨年末の行革推進会議では、特定健診・保健指導の在り方の見直しが指摘されております。
もう1つの柱でした平均在院日数の短縮も、20ページで示しているとおり、左下の表、入院医療費の対GDP費の抑制には必ずしも結びついておりません。そして、右下の赤線グラフのとおり、医療給付費の対GDP費は2015年度で既に7%を上回り、厚生労働省が主張していた2025年度、6.7%を既に超えております。医療費適正化の取組を一から立て直す必要があると考えます。
22ページですが、医療費の水準と相関が高いのは、そもそも生活習慣病云々といった患者側の需要要因よりも医療提供体制側の供給要因であり、その効率化抜きに医療費の適正化は図れません。右の2つのグラフを御覧いただけば分かりますように、病床が多い都道府県ほど平均寿命が長いという関係も見られませんので、医療提供体制の効率化と質の改善は両立できると考えております。
23ページのキャプションの1つ目の丸として、左上の図のとおり、諸外国におきましても病床数の抑制と平均寿命の延伸を両立してきました。他方、右上の表で赤囲いしておりますが、我が国の場合、人口当たり病院数、病床数が諸外国に比べて多い一方、人口当たりの医療従事者の数は必ずしも多くありませんので、病院、病床で割りましたところの病院、病床当たりの医療従事者数が手薄となっております。これが病院勤務医などの長期時間労働、ひいては患者にそれほど手間をかけられないゆえの低密度医療を招きまして、その結果としての入院期間の長期化などが患者のQOLを損ねてきた可能性があります。
このように我が国の病床数の多さを指摘しますと、精神病床が押し上げているとの特殊要因を指摘する向きもありますが、左下で赤囲いしているところを見ていただきたいのですが、まさに精神医療こそ病床数の多さや平均入院日数の長さが突出しておりまして、これが医療の質に結びついているのか検証が必要であると考えます。
24ページですが、政府のこれまでの地域医療構想の取組の紹介です。右にグラフが描かれていますが、人口減少、高齢化による医療需要の質、量の変化をデータで分析して示し、キャプションの2つ目の丸の中ほどに書いてありますが、いわゆる「なんちゃって急性期」という病床の在り方などを課題として認識しながら、その機能分化を促してまいりました。一昨年秋には、右下の表にありますとおり、データに基づいて診療実績が乏しいなどの公立・公的病院のリストを厚生労働省からお示ししたところでございます。
こうしたところに新型コロナの感染拡大を迎えました。25ページですが、キャプションの1つ目の丸のとおり、人口当たりの病院数、病床数は多く、人口当たりの感染者数は少ないのに、医療提供体制が逼迫するという問題が生じました。右のグラフを御覧いただきたいのですが、1都3県でも、2019年が青、昨年が赤でございますが、前年よりも使用率が下がり、使用されていない病床の割合が増えたにもかかわらず、患者の入院受入れが十分なものとならず、多くの療養先調整中の方が生じました。
1都3県だけでなく全国ベースでも、26ページの左のグラフのオレンジのところを御覧いただきたいのですが、緊急事態宣言直前の12月で病床使用率が低下しており、左の縦の長い棒グラフの白い部分のように利用されていない病床があったにもかかわらず受入れの逼迫が生じました。病床はあっても、専門医、看護師など医療従事者などに不足があったため、十分な数の患者を受け入れられなかった可能性があります。
右の図を御覧いただきたいのですが、横軸が病床当たり医療従事者の数で、青の折れ線が受入れ医療機関の割合でございます。キャプションの2つ目の丸の太字の部分のとおり、病床当たり医療従事者が少ない医療機関、図の左側の医療機関ほど受入れ実績が少ないことが分かります。医療資源が散在し、手薄な人的配置となっております我が国医療提供体制の脆弱さの一端が分かります一方、右側の相対的に病床当たり医療従事者が多い医療機関でも、地域ごとの分析は必要であるとはいえ、棒グラフの白い部分、すなわち受入れ実績がない医療機関も存在し、医療機関相互の役割分担、連携体制、そして医療資源の最適配分の点から検証が必要と考えます。
27ページでございます。4つの円グラフでは、左側2つが大学病院、右側2つが自治体病院の調査ですが、それぞれ左側の青色系の円グラフでは、酸素不要患者や無症状症例、軽症者の患者の入院が半数近くに及んだとのことで、これらの患者をほかの病院における療養や宿泊療養、そして自宅療養として適切に対応することで、これらの病院での新型コロナ患者の受入れ拡大を図ることが可能であった可能性を示唆しております。それぞれ右側のオレンジ系の円グラフでは、濃いオレンジのところでございますが、後方支援体制が整っていないという課題が浮き彫りになっておりまして、やはり医療機関相互の役割分担の徹底や連携体制の構築が課題だったことを示しております。
28ページですが、財審の建議でも御指摘いただいているように、最前線の医療従事者の方に感謝の念を捧げることは当然でございますが、左側の2つの横棒グラフでは、医療従事者の中には労働時間が増えた方もいれば減った方もいるという調査結果、右側の横棒グラフでは、月80時間以上の時間外勤務をした医師の数は対前年比で減少していることが示されております。もちろん、働き方改革の観点から勤務時間が減ったことは歓迎すべきことですが、新型コロナに対応する一部の医療従事者に負担が集中していたことがうかがえます。2つ目の丸のとおり、死者数は11年ぶりに対前年度比減少し、左の真ん中ほどに書いてありますとおり超過死亡の状況、さらには右下のグラフのインフルエンザを含む感染症が激減している状況を見ても、新型コロナ以外の通常の医療のニーズには変化もうかがわれまして、やはり医療従事者の最適配置の余地があるように思います。
29ページでは、外来についても指摘させていただいており、左上の棒グラフのように、外来受診回数が頻繁で、フリーアクセスを誇ってきたはずの我が国ですが、新型コロナが起きまして、発熱患者につきましては、まずはかかりつけ医等の身近な医療機関に相談してください、相談する医療機関に迷う場合には受診相談センターに相談してくださいという対応を執ってきました。が、右上の円グラフのように、そもそもかかりつけ医がいないこと、それから、左下の千葉県の事例のように、受診相談センターに電話してもつながりにくいといった問題が生じました。また、自力で発熱外来を探そうといたしましても、右下の円グラフのように、全発熱外来を公表する都道府県は僅か2県にとどまるということで、発熱外来へのアクセスにはハードルがあったように感じます。
縷々申し上げてきたことは、要すれば、患者がその状態に合った医療必ずしも受けられない、受けにくいという状況が生じてきたのではないかということであり、下のボックスの下線部に書かれてありますとおり、合成の誤謬に陥っているシステムそのものの改革が必須と考えます。
その際、30ページの1つ目の丸のとおり、現役世代が急減する我が国では医療従事者をさらに増加させるという選択肢には限界がありますので、2つ目の丸のとおり、地域医療構想の実現、あるいは働き方改革などの改革を揺るぎなく進める必要があります。3つ目の丸のとおり、右下のグラフでございますが、病院数の8割、病床数の7割を占める民間医療機関の対応こそが鍵です。
31ページでは、キャプションの3つ目の丸の太字部分のとおり、地域医療構想を遅滞なく進める必要があるとした上で、4つ目の丸で具体的提案といたしまして、1つ目、地域医療構想の法制上の位置づけを強化すること、2つ目、地域医療構想調整会議の実効性を高め、PDCAサイクルを強化すること、3つ目、本日、奈良県で感染症法に基づく要請も行われましたが、改正後の感染症法等を参考にいたしまして、平時における都道府県の責務、都道府県知事の権限の強化を検討すること、4つ目として、精神病床について、地域医療構想の推進と連携して改革を推進することを提案しております。
32ページでは、緩やかなゲートキーパー機能を備えた、かかりつけ医の推進は不可欠であるとして、かかりつけ医の制度化を求めております。右下にありますとおり、薬局、薬剤師は制度化が先行しておりますが、医師会、病院団体は、左下にある定義づけで合意したものの、その後、制度化には至っておりません。
民間医療機関の対応が鍵を握るからこそ、33ページで書かれていますとおり、診療報酬の役割が舵取り役として極めて重要であると考えます。しかしながら、これまでの診療報酬の実績といたしまして、先ほどのなんちゃって急性期病床の急増につながった平成18年改定の例を左側の棒グラフでお示しし、右側の黄色い部分では、かかりつけ医機能を評価するはずの機能強化加算について、課題のところを御覧いただきたいのですが、実際には下線部にあるとおり、重複受診による重複加算、受診回数が1回の患者の加算など、機能分化を促しきれていない実態をお示ししております。
キャプションの3つ目の丸の太字部分ですが、これだけ医療提供体制の課題が浮き彫りとなって迎える年末の令和4年度診療報酬改定においては、医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なしと考えて臨むべきと考えます。
新型コロナと医療機関の支援に移ります。35ページにありますとおり、新型コロナについて、これまで医療提供体制等の強化のために、主なものだけで8兆円弱の国費による支援が行われてきました。うち医療機関及び医療従事者への支援は、オレンジで囲ませていただいている交付金、補助金等によるもので4.6兆円になります。
次の36ページですが、4.6兆円のうち新型コロナに対応する医療機関についてですが、収入支援策に絞りますと、左側の表にありますが、主として病床確保料と、昨年末より始めた1床当たり最大1,950万円の緊急支援事業補助金が挙げられ、その措置額合計は1.6兆円弱でございます。他方、右側の医療機関の減収額では、病床を持たない診療所、歯科、調剤は除いて考える必要があり、病院だけ抽出すると0.9兆円でして、このうち新型コロナ患者を受け入れている病院の割合が4分の1弱であることも踏まえると、相対的に規模が大きい病院ほど新型コロナ患者を受け入れていることを加味すれば、機械的に4分の1を掛けるのは適切でないとしても、左右を見比べれば、マクロとして新型コロナ患者に対応する医療機関の減収を補うに十分な額が措置されていることが分かります。
その下ですが、病院団体の調査を見ますと、医業利益の前年差がマイナス4.1億円とのことで、入金率は6割で支援金が3.3億円でございますので、申請に沿ってフルに入金されれば、前年からのマイナスを補える可能性が高いことが分かります。
とはいっても、37ページのキャプションの1つ目の丸で書かせていただいていますが、個別の病院で見た場合、このような手厚い対応であっても減収することはあり得ます。財政面で受入れを躊躇することがないよう、より簡便かつ効果的な支援の在り方を検討すべきと考えています。ここでは、3つ目の丸ですが、法律改正なしで、これまでも通知による対応で行われてきました災害時の概算払いを参考といたしまして、前年同月ないし新型コロナ感染拡大前の前々年同月水準の診療報酬を支払う簡便な手法を提案しております。
39ページですが、こうした新型コロナの医療機関の財務状況などを迅速に把握するためにも、医療法人の事業報告書等の貴重なデータが都道府県に紙ベースで保管されたままという状況について改善する必要があり、せめてアップロードによる届け出、公表を可能とすることで、このページの右側にあるような社会福祉法人並みの見える化を推進するべきであると考えております。
続きまして、全世代型社会保障改革の残された課題ということですが、41ページで、現在、審議中の後期高齢者医療への患者の2割負担導入の内容を御紹介いたしまして、キャプションの2つ目の丸では、なお資産の保有状況等も勘案して負担能力に応じた負担とすべきと、引き続きの課題を挙げさせていただいております。
42ページですが、改革が効果を発揮するには、後期高齢者医療制度そのもののガバナンスの強化が必要と考えており、キャプションの4つ目の丸と5つ目の丸で、財政運営の責任主体を都道府県としていくこと、それから図の紫色の部分ですが、後期高齢者保険料の負担割合を高めるという2つの提案を掲げております。
43ページですが、医療の最初で御紹介しました医療費適正化にかかる2005年末の決着が全国に展開されまして、都道府県が策定する医療費適正化計画が、医療費の見込みもアップデートされなければ保険料水準などの負担面とも連動せず、緊張感がないものになっているため、これまでも見直しの必要性を財審で指摘させていただきました。右のブルーのところに改革工程表で掲げられた様々な課題を挙げさせていただいております。速やかに解決すべきと考えます。
44ページですが、このような医療費適正化計画の下で、関係者がこぞって医療費適正化に向けて協働、連携していくということにはなかなかなりにくいですが、3つ目の丸の太字部分にありますとおり、都道府県の役割や保険者協議会の関与の強化によりガバナンスを強化すべきこと、そして、審査支払機関に医療費適正化の役割を明確に与えまして、データ分析を含めて、こうした連携、協働体制の一角を担ってもらうことを提案しております。
45ページですが、キャプションの1つ目の丸で、後期高齢者医療制度のみならず前期高齢者医療も財政調整を通じて現役世代に支えられており、3つ目の丸にありますとおり、その大宗を占める国保につきまして、法定外繰入の解消や都道府県内保険料水準の統一をなお加速すべきことなどを指摘しております。
46ページでは、納得感のある全世代社会保障改革のためには、国保の都道府県内保険料水準の統一のみならず、合理的でない保険料負担の差は平準化すべきとして、左下の図で所得水準の高い国保組合に対する定率補助の廃止を主張させていただき、右の表で健保組合における保険料率の差異を御紹介しております。
47ページから49ページまでにかけて、生活保護受給者の国保等への加入を検討することを主張しております。
47ページでは、ほかの制度との平仄、国民皆保険制度の趣旨などから、生活保護受給者が国保や後期高齢者医療制度に加入しない現状は必ずしも整合的ではないということを主張しております。
こうした主張の背景といたしまして、48ページでございますが、医療扶助の外来ですが、頻回受診が指摘されておりまして、右上の表にありますような生活保護受給者ばかり診ている医療機関が存在することや、右下の棒グラフのように診療科の偏りがあるなどの実態を見ると、キャプションの4つ目の丸で指摘させていただいたとおり、適正受診指導といった受給者側への働きかけだけではなく、供給側の医療機関への働きかけが必須という認識を抱かざるを得ません。
49ページを御覧いただきますと、入院でも医療扶助では、医療保険と比較いたしますと精神・行動の障害の割合が高く、右下の図のとおり精神病床入院中の生活保護受給者数の都道府県間の地域差は、青の両矢印ですが、7倍ありまして、キャプションの2つ目の丸のとおり、その説明要因として、人口当たりの精神病床数が最も強く相関するという調査結果がございます。左下の横棒グラフにありますとおり、長期入院の実態もあり、適正化には医療提供体制面からの取組は欠かせないと考えます。生活保護受給者の国保等の加入により、都道府県の医療提供体制側へのガバナンスの発揮が期待できると考えております。
引き続き、薬剤費の適正化について御説明させていただきます。51ページですが、左側の図で、既収載の医薬品については青の折れ線のような価格のマイナスが続いておりますが、薬剤費総額としては赤の折れ線のように増えており、その差の理由として、既収載の医薬品の使用量が増加する、そして下の黄色い帯の新規医薬品の保険収載があることを示しております。キャプションの1つ目の丸では、保険収載がほぼ自動的となっており、財政影響が勘案されていない問題を指摘し、2つ目の丸で予算統制の強化を主張させていただいております。
52ページですが、新規収載の医薬品の薬価算定の問題も大きいと考えており、左側のプロセスにつきましては昨年末の行政改革推進会議に取り上げていただき、赤のボックスで書かれています薬価算定組織の委員名簿の公表など一定の前進が図られましたが、右側の薬価算定方式につきましても、例えば左下の一番下のポツの赤字の部分で開示度の低い医薬品の算定の厳格化という指摘をいただいていますが、こうしたことを実現する必要があります。
加えまして、53ページでは、まずキャプション1つ目の丸で、新規性に乏しい新薬について類似薬効比較方式における薬価算定を厳格化すべきと提案しております。左下の適用例にありますとおり、類似薬にブルーのような価格の低い後発医薬品が利用されていたとしても、改めて高めの新薬、左下の黄色い部分でございますが、新薬が収載されてしまう点の見直しが必要であると考えます。
2つ目の丸でございますが、原価計算方式の営業利益の上乗せと補正予算の関係が、下の真ん中の図にありますとおり、循環することで重畳的、言葉を選ばずに言えば雪だるま式になっているという指摘をさせていただきまして、その適正化を求めています。
3つ目の丸では、補正加算の要件の厳格化、すなわち要件を満たさなかった場合に減算することの検討を求めております。
54ページでは、令和3年度予算編成で実現した毎年薬価改定を御紹介しつつ、なお完全実施と言えるためには課題があることを指摘しております。毎年、同じように徹底した薬価改定をすべきと考えます。
55ページですが、既収載の医薬品への保険給付範囲を見直す必要があります。左側にありますとおり、ある医薬品を丸ごと保険から除外するやり方もあれば、右側のフランス、あるいはスウェーデンのように患者負担割合、あるいは患者負担の額を調整することで保険給付範囲を狭めるやり方もありますが、幅広く検討すべきです。
56ページですが、左のグラフで、オンライン診療、電話診療でOTC類似薬が処方されている実態をお示し、右側でOTC置き換えによる医療費適正化効果の推計を御紹介しております。OTC類似薬の保険給付範囲の見直しを求める資料でございます。
57ページでございますが、キャプション1つ目の丸で、後発医薬品の使用促進の数量目標は達成しつつありますが、少し小さくて恐縮ですが、下の左から2つ目の国別比較というグラフがございまして、金額シェアを見ますと、まだ伸ばす余地があります。後発医薬品については品質確保などの課題が指摘されておりますが、そうした課題に的確に対応しつつ、実効的な新たな目標を策定すべきとの提案をしております。
キャプションの2つ目の丸では、その際、バイオ医薬品の後発品について特に目標を設けること、そして、フォーミュラリガイドラインを整備することを提案させていただいています。
3つ目の丸で、調剤報酬等における後発医薬品使用促進のインセンティブも新目標との兼ね合いで見直さなければならないことを指摘しております。具体的には、右下の表で後発医薬品の調剤体制加算の算定額は1,200億円程度ということを示しておりますが、新目標による追加的な医療費適正化効果のほうが下回ることがあれば本末転倒でありまして、減算中心の体系に組み替える必要が生じます。
58ページでは、右上の赤い丸のところで、大学病院の後発医薬品割合が低いことを指摘させていただきまして、医療機関ごとの後発医薬品の使用割合の見える化の必要性と、大学に対する製薬会社からの奨学寄附金の見直しの必要性を指摘しております。
59ページでは、左上の図で、患者の過去の処方、調剤情報が閲覧可能となる電子処方箋の仕組みを御紹介した上で、キャプション2つ目の丸ですが、多剤・重複処方について、診療報酬上、減算等の措置を拡充すべきと主張しております。3つ目の丸については、症状が安定している患者に対しては、一定期間内、処方箋を繰り返し利用できるリフィル処方箋の導入を提案させていただいています。
60ページでは、向精神薬の処方の適正化の取組を点検、強化すべきとの提案でして、諸外国では下の表のとおり、一定の依存性の強い薬剤の投与期間が制限されております。我が国では、1回当たりの投与期間は制限されていても、繰り返し処方が可能でございます。
62ページから介護・障害分野に移りますが、介護保険制度は制度創設から20年を迎えました。左の棒グラフの緑色が制度創設時の予測でございますが、比べると費用の実績は増加しております。右上の保険料についても同じことが言えます。原因は、居宅系サービスの増加、そして右下のグラフにあるような要介護認定者数の増加でございます。キャプションの3つ目の丸ですが、介護保険制度の導入で医療保険の負担が介護への移行で減るとされていた効果も限定的だったと考えます。
63ページでございます。右の表のとおり2割負担の方は5%にとどまっており、利用者負担の見直しなど保険給付範囲の見直しは欠かせません。キャプションの4つ目の丸のとおり、今回、後期高齢者医療に2割負担が導入されましたが、介護におきましても利用者負担、2割負担の拡大や原則化の検討が必要であると考えています。
64ページでございますが、介護人材がますます必要となる中、少ない人数でも現場が回るようにしなくてはならず、ICT等の活用による業務の効率化、そしてキャプション3つ目の丸にありますとおり、経営主体の統合、再編なども含めました運営効率化が課題であることを指摘させていただいております。
65ページでは、ケアマネジメントへの利用者負担の導入であり、キャプション2つ目の丸にありますとおり、介護保険サービスをケアプランに入れようとして、杖とか必要のない福祉用具貸与などによりましてプランを作成するケースも見られまして、右下の赤字部分のような大きな費用がかかり得ます。こうしたケースも視野に入れ、ケアプランの利用者負担を取ること、そして福祉用具貸与のみのようなケアプランについては報酬を低く設定することが必要と考えます。
66ページは、左下の図で特別養護老人ホームについては利用者負担となっている多床室の室料相当額が、右側の図の介護老人保健施設等では保険給付に入ったままなので、見直すべきとの主張になります。
67ページは、介護給付の効率化の代表事例とされてきました地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業について、事業費の上限があり、その枠内で事業を実施することにより効率化を実現するはずでしたが、その上限が形骸化している問題を指摘させていただき、上限超過を厳しく抑制すべきと主張しております。
68ページの区分支給限度額は、利用に一定の歯止めをかける目的に創設されながら、左の緑の表の3つ目でございますが、頭打ちになっている限度額を超えているものの割合はさほど高くない一方で、右の表のとおり例外の加算が増えておりますので、制度の趣旨に沿って見直すべきと考えます。
69ページは、居宅サービスが増加している中でサービスの質の確保をする観点からも、サービス量のコントロールを自治体にしっかりしていただきたいという主張を掲げさせていただいています。
70ページですが、居宅療養管理指導等のサービスが増加している中、通院が困難な利用者へのサービス提供という本来の趣旨に沿った算定が適切に行われるべきと主張しております。
71ページは、先ほどの医療法人についての指摘と同様に、障害福祉サービス等と比較しながら介護サービスの経営状況の見える化を求めているところでございます。
障害分野に移りますと、72ページ、右下の赤点線囲いを御覧いただきたいのですが、これまでの他の分野とは異なり、全体として予算額の伸びは顕著である中65歳未満の伸びが目立つということを指摘しています。その左に収支差の表がありますが、こうした収支差も踏まえながら報酬の改定を講じさせていただいています。
73ページ、74ページとグラフが続きますが、74ページで御覧いただきますと、利用者数の地域差は事業所数と相関が見られますので、先ほど介護分野でも申し上げたとおり、サービスの質の確保の観点からも実際に適切にニーズを把握し、それに基づいてサービス量のコントロールをしていただきたいという主張になります。
子ども・子育て支援につきましては、76ページのとおり、厳しい財政事情の下、安定的な財源を確保しつつ拡充してきました。
77ページでは、右の黄色い部分で、菅政権発足以来の成果として、不妊治療の保険適用の方針、保険適用までの間の助成制度の拡充、あるいは待機児童の解消のための財源確保、児童手当の見直しなどを御紹介させていただいた上で、子ども・子育ての安定財源の確保について、78ページで事業主拠出金や社会保険制度からの拠出の拡充という選択肢もお示ししております。税財源の確保のみならず、幅広い選択肢を検討する必要があると考えております。
雇用や生活支援に移りますと、80ページでございますが、政府は、キャプションの1つ目の丸にありますように、現下の情勢に対応して重層的なセーフティーネットによる支援を講じており、下の図のとおり、雇用についての雇用調整助成金の特例措置はもとより、第2のセーフティーネット分野でも求職者支援制度、住居確保給付金、そして生活支援としての償還免除付きの緊急小口等の特例貸付など各般の措置を講じてきました。財源を確保した上で、平時の対応につなげていくことも検討していかなければならないと思っています。
81ページは、雇用調整助成金でございます。右の表を御覧いただきたいのですが、日額上限1万5,000円の引上げ、助成率最大10分の10といったリーマンショックのときの対応を超える特例措置を実施してきましたが、右の図の青い部分にありますとおり、緊急事態宣言が解除された翌々月に当たる来月からは、上限額は1万3,500円、助成率は最大10分の9となるなど原則的な措置を縮減します。他方で、まん延防止等重点措置実施地域につきましては、引き続き1万5,000円、最大10分の10とするなど、緑色の地域、業況に係る特例措置を講じさせていただき、メリハリある対応を講じます。
キャプションの2つ目の丸にありますとおり、働く方々のモチベーションの問題、人材の移動を阻害しないようにするといったことも必要であり、特例措置のうちリーマンショック時の対応を超える部分につきましては、先ほど御紹介した青色の原則の措置であれ、緑色の地域や業況に係る特例措置であれ、雇用情勢が大きく悪化しない限り早期に縮減・解消すべきと考えます。
82ページですが、左下の図で、左上の4つに分けますと第2象限に相当するところが狭義の雇用調整助成金になります。本来、一般会計繰入は行わないのですが、特例的に薄橙色の部分の繰入を行いまして、この部分に相当する金額は右の表のBにあるとおり約0.7兆円でございまして、比率では24%になります。左の図の下は、雇用保険被保険者以外の対応なので、全て一般会計で対応する薄橙色となっております。
その他、右側で、休業支援金、休業給付金といった制度も設けられておりますが、これらを累計した薄橙色の一般会計の合計額は、右の表の最下段でございます約1.0兆円、30%になります。
83ページでございますが、このような状況の下、雇用保険財政の逼迫が指摘されます。左下の図の青線が失業等給付の国庫負担割合でございますが、キャプションの2つ目の丸で、現在、2.5%となっている国庫負担割合を引き上げるという議論については、ほかの社会保険制度とも比較しながら雇用保険の位置づけを踏まえますと、制度を抜本的に見直すことなしに、そうした引上げは説得性が乏しいのではないかということを指摘させていただいています。
3つ目の丸では、有事の対応としてもそうした手法はいかがなものかと申し上げた上で、雇用保険財政の逼迫に対しては保険料引上げによる対応が筋ということを申し上げています。
4つ目の丸で、とはいえ一般会計による任意繰入の規定も特例的に設けていることを指摘していますが、前のページで申し上げたような、既に行われている一般会計による多大な寄与をどう評価するかを含めまして、有事の場合における一般会計の責任の範囲のルール化を検討するのがまず先と考えます。
最後に、社会保障等という、この資料の題の「等」の部分でございますが、財審で取り上げるのは恐らく初めてですが、厚生労働省医薬・生活衛生局が所管している水道行政について簡単に御指摘させていただきます。
85ページは、上段の左右で、市町村経営の原則の下、事業者が小規模でありまして、職員数も規模が小さいほど少ないこと、下段で、今後、水需要が減り、更新需要が増えることを指摘させていただき、健全で効率的な経営を展望しにくいことを指摘しております。
86ページでございます。上の図の赤囲いのとおり、本来、料金をしっかり取るべきですが、料金設定について、約4割の事業者で給水費を賄える水準に設定されていないこと、右上の円グラフのように、資産維持率で見て将来の更新費用等を十分に反映できていないという実情、さらには、下の2つの図表で、都道府県内の水道料金は最大6.2倍と料金差が大きく、将来的に一段と拡大する可能性があることを指摘しております。
88ページに飛びますが、経営戦略をしっかり立てていただきたいのですが、現在のレベルで十分なのかという指摘もさせていただいています。4つ目のキャプションにありますとおり、先ほど御説明した人材配置も難しく、個々の事業者単位での十分な経営戦略を立てるのは現実的ではないと考えた上で、89ページでは、国は既に広域化の推進を図っていることを指摘しています。都道府県は令和4年までに広域化推進プランを策定することとされておりますが、申し上げたような水道事業の実情は、まさに医療の国民健康保険が置かれていた状況と同様と受け止めており、より多くの都道府県において厳しい状況を認識し、統合度が高く、面的な広がりのある広域化を目指すべきと指摘しております。
私からの説明は以上になります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。社会保障と、それから最後、水道ということになりますが、財審の肝の部分でもありますので、大変ボリューム多くなってございます。
以降、各委員の意見をいただいていきたいと思っておりますが、本日、神津委員が欠席しておりますが、神津委員から意見書を御提出いただいておりますので、お手元にお配りしております。改めてお目通しいただきたいと思います。
それでは、御意見ある場合にはネームプレートを立てて、いつもどおり、こちらから指名して御発言をお願いしたいと思います。テレビ会議システムの皆様方には、システムの中で「挙手する」というボタンがあるかと思います。そちらのクリックで合図をお願いしたいと思います。
それでは、会場から先に指名をさせていただきます。私から見て右側からいきたいと思いますが、櫻田委員が先に御退室とお伺いしておりますので、何かございましたら、初めに櫻田委員から、どうぞ御発言をお願いいたします。
〔櫻田委員〕ありがとうございます。
本日、御説明いただいたことについては、私、細部にわたって了知しているわけではないですが、どれも反対する点は見つからないということが正直なところです。もちろん、細部にわたって見ていけば、修正したり、数の訂正はあったりするかもしれませんが、ないということをまず申し上げた上で、ただ、ファクトを見つめると、2020年度の歳出が第3次補正まで含めると既に176兆円、そのうち赤字国債で90兆円が賄われていて、依存割合は4割を超えている。一方、今年度の予算、通ったばかりですが、106.6兆円ということですが、これは補正なしですから、連動してみたらどうなるか分からないし、私は予断を許さないと思っております。いずれにしても、コロナもありで、予算枠のうち最大の塊が36兆円弱の社会保障関係費ということも事実であると思います。
マクロ的にはそうした状態がある中で、目の前の事実を見れば、財政健全化というのはもう切っても切り離せない。サステナビリティーを口だけで言ってはいけないという世界であると思っています。ということで、前回も申し上げましたが、やるべきことは実は明確なっているはずで、一番重要なことは、いかに実行していくのか、工程表を含めてHowの部分に移っていくべきであると、何度も思っています。
そして、実はその抜本改革、今日、事務局からいろいろ提案がありましたが、それらを最後は決めなければいけないとすると、最終的には必ず政治判断が入ってくるわけで、これを的確に行うことのできる場、装置をいかに設定するかということが、私は重要であると思っています。例えば、残された課題という表現になっていましたが、全世代型社会保障検討会議、私も議員として微力を尽くしたつもりですが、そもそも最初に設定されたテーマが十分だったのかということを含めて言えば、残された課題はあれだけではなくて、もっと山ほどあると思っています。したがって、全世代型社会保障検討会議のように、それぞれ利害関係の異なる、言わば対立軸をしっかりと明示して、その場で議論して、最終的には高度な政治判断をしていくという場、しかもそれは透明性を持ってされていく。こういう装置がないと、恐らく今日のような提案が実現に移ることはないのではないかという危機感を持っています。財政健全化の手段というのは、言ってみれば、簡単に言えば支出を減らす、それから成長、増税によって収入を増やす、あるいは、説明にありましたように応能負担の考え方を入れて支出を抑えていく。そうしたことしかないわけですので、ぜひお願いしたい。
あとは、社会保障というテーマは、ともするとコストと位置づけられがちですが、私は、日本にとっては、社会保障はコストだけではなくて成長戦略としてもぜひ捉えるべきではないと思っています。
その点で2点申し上げたいと思っていますが、1つは子育てです。まさに少子というのは国力と比例するわけで、国難と位置づけられるわけですが、2020年の出生数は87万3,000人、私が生まれた1956年は166万人です。質の問題を捉えなければ、明らかに半分というのは国力を下げているわけです。そうした中で、まだ議論は始まったばかりと聞いておりますが、こども庁というのは成長戦略の観点から、私はポジティブに受け止めております。かわいそうな子供たちを、あるいは機会均等という、いわゆる弱者救済という観点だけではなく、成長戦略としての子供の問題、こども庁の設置というのはぜひお願いしたいし、それに当たっては、デジタル庁の設置のように省庁の枠を超えた、横を見た考え方で設置ができればと思っています。
2つ目は介護です。御説明ありましたが、介護給付費も、団塊の世代が75歳になる2025年には、予想では15.3兆円、さらに2040年度には26兆円に膨らむ。見方によっては、これは超成長マーケットです。一方、介護従事者というと、現在、日本全体で190万人おりますが、この190万人に対して26万人の需給ギャップがございます。これは、2025年には55万人に膨れ上がるということははっきりしています。言ってみれば、日本の社会課題と言える介護を、このままコストの問題にしている、需給ギャップを生産性だけで解決するのではなく、何としても成長産業として位置づけていって、そのために何ができるのか。国費を含めて投入していく、そうした考え方が必要で、日本の成長産業、成長戦略の一つに子育てと介護は入れてよいのではないかと、今、思っている次第です。
長くなりました。以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
それでは、私から見て右側から順に指名をしていきたいと思いますので、一番初めに中空委員から、順次、こちらに戻っていきたいと思います。
それでは、中空委員、どうぞお願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
今、大きなお話は櫻田委員にしていただいたので、私は小さい話をさせていただきたいと思います。
御説明、本当にありがとうございました。一松主計官にお話しいただいたことに関しては私も異論はありません。受益と負担のバランスを取りましょうとか、適切な医療体制の整備が必要、薬価算定方式の適正化も重要だ、本当にそうだろうと思います。ただ、聞いていて何となくもやもやしていたのですが、それはなぜかというと、例えば医療を取り上げると、なんちゃって急性期というものが平然と説明の言葉として出てくる。なんちゃって急性期というものは、恐らく、制度の悪用をしていると思われるわけですが、こういうものが多々出てくると日本人としてはゆゆしき問題であると、まずは思います。
それから、今はコロナの問題が収束しないで、何回も第何波、第何波と来るわけですが、そうすると、よほど医療は逼迫しているのだろうと思いきや、データで見るとマクロとミクロの差はすごく大きいということが、今日、一つ一つで分かりました。例えば、26ページ、コロナにかかったときに利用していなかった病床数は、マクロとミクロで見るとすごい差があって、ということは、本来、逼迫なんかしていませんよねという話なわけです。
コロナになって1年以上たちまして、それでも医療提供体制が整っていないということであれば、どういう問題があるのだろうと思っていましたが、それを全て合成の誤謬という話で済ませてよいのかどうかというのは、ずっともんもんとして聞いておりました。病院も診療報酬制度という、言ってしまえば公的インフラの一翼を担っているということを考えると、民間病院の収益を考えなければいけないということは非常によく分かりますが、どこまで採用しなければいけないか。あるいは、飲食店については、時短を守ってくれなかった人にペナルティーがあるわけですが、病院にはあるのか、ないのか。様々な制度の見直しも、しなければいけなくなっているかと思います。ただ、合成の誤謬と言うだけでは、とても推しはかれない大問題が実はあるのではないかと感じました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。
今回は、例年に増して極めて大部で、しかも詳細な御説明ということで、準備も大変だったと思いますが、これを見ても私は日本の医療はそれなりにしっかりしていると思います。少しここで例を挙げますと、今、新型コロナウイルス感染症、COVID-19のパンデミックが大変なことになっていますが、アメリカと日本との違いを見ると、アメリカの感染者数は昨日段階で、CDCですが、3,115万人、死者が56万人、これに対して日本は、昨日段階で感染者は51万人、死者は9,500人。この間、アメリカは、どうも56万人が亡くなった関係で、昨年は平均寿命が、私の試算であると1.3歳ぐらい短くなっている。1月から6月の速報で、1歳短くなったとCDCから出ています。ただ、アメリカの場合は、1-6月期より7-12月期のほうが1.7倍、亡くなっています。それで見ると、1.3年ぐらい短くなっているのではないか。その前の数年間も0.4年ぐらい短くなっていますから、米国は4年ぐらいで、場合によっては2年近く平均寿命が短くなっている。日本は、恐らく、当然延びています。
では、アメリカの医療費は幾らかかっているかというと、2019年の速報ですが、3.8兆ドルかかりました。日本円で420、430兆円です。日本の医療費は2019年で約44兆円です。アメリカの人口は日本の3倍はいません。それで見ると、1人当たりで見て3倍以上コストがかかっている。つまり、米国は、日本の3倍以上コストをかけても、平均寿命がこの3、4年で2年近く短くなった可能性がある。そうした意味では、コストパフォーマンスは非常に悪いです。
ただし、今、ワクチンが問題になっていますが、米国のワクチン接種回数は昨日の段階で1億9,500万件、今、1日300万件から400万件やっていますから、バイデン大統領の改定後の目標、100日間で1億回が2億回に倍増しまして、それはもう今週末には達成します。アメリカの場合は、金もかけるが、有事対応はすばらしいです。
一方、日本の今日の御説明を聞くと、ある面大変細かくやっていらっしゃいますが、平時が有事に変わった段階で急にうまく回らなくなる。恐らく、こういう特性があるのだろう。では、日本はこのまま大丈夫なのかというと、今までに一番問題になっているのはやはり少子高齢化です。要は、かつての人口がそこそこ伸びる状況ではなくなっていて、今年、東京都は少し人口が減る可能性がありますが、もうここ10年、20年、東京一極集中、地方でも大都市や中核都市への集中が続いて、つまり日本の人口構造が相当変わってきているわけです。その中で、過去何十年かやったスタイルで、今後、20年、30年間うまくやれるのかというと、私は相当疑問であると思います。
ですから、逆に言えば日本の医療、介護、年金、こうしたものは、むしろこれから5年後、10年後に相当大きな問題を抱えてくるということで、今はうまく回っていると思います。やはりそうした問題点について今後は着目して、特に今回のパンデミックの影響で出生数が相当下がることはもう間違いないので、そうした観点からより長期の対応を考えていくべきではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明、どうもありがとうございました。どれも大変重要な指摘であると感じております。私から、2点、コメントさせていただきたいと思います。
1つは、9ページの社会保障費の規律の必要性、現行の規律は公費のみということですが、国民にとっては、公費、いわゆる税も保険料も負担という意味では同じなわけです。ですから、負担全体の抑制という観点から、給付全体の規律づけの導入は大変必要であると考えております。これまで、公費は財務省、保険料は厚生労働省という仕切りのようなものはありますが、そうした縄張りや縦割りを超えて、国民の視点に立った仕組みづくりをこれから手がけていただきたいということが1点でございます。
もう1点は、医療費の関連ですが、資料に挙げられていますように、コロナを受けて、医療提供体制の改革なくして診療報酬の改定なしということはそのとおりかと思っています。特に、26ページに挙げられているような医療提供体制の改革に向けて、医療機関相互の役割分担、連携体制の強化は必要であると思います。ただ、先ほど中空委員もおっしゃっていましたが、これまでコロナが出てきてから1年以上ずっと言われてきて、いまだになぜ進まないのか、よく分からないところもありますが、そうした連携を妨げている構造的な要因に踏み込んで、そこの見直しを促していかないと、結局、今後も進まないのではないかという気がしています。この部分、より踏み込んだ提案ができるような内容になればよいのではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
私も、この詳細を拝見して、特に医療のところで申し上げます。今までも、私たち財審の委員は、医療のどこが問題かということはある程度認識、共通認識はあるのですが、実は一般の人は、やはり便利だし、すごく良い医療であるということで、そこに非常にお金がかかっているということは、そんなにしょっちゅう気にすることはなくて、これで良いと思っていたと思いますが、いよいよ国民から見ても、日本の医療は本当にこのままで良いのだろうかというような気持ちになる重要なタイミングに来ていると思います。
分かりやすく言えば、実際、欧米に比べてこんなに感染者が少ないのに、どうしてこんなに医療が逼迫になってしまったのだろうということは、いろいろなところで聞かれる質問です。結局、今まではどこにでも行けて、そして診療所にとっても自由度が高かったことは良いことであると認識されていたわけですが、いや、それだと危機は乗り切れないのではないかという気持ちが、普通の人にも出てきたのではないかと思います。ですので、この制度が本当に持続可能で、このままで良いのかという点に関して、2013年などにいろいろな提案がありましたが、それをさらにブラッシュアップして今の時代に合わせてというか、いよいよ制度全体を国民に問いかけることができるような土壌が、今、あるのではないかと思っています。
そんな中で、今回、財審の資料で、コロナの課題を手厚く取り上げているということは非常に良いと思います。やはりデータが十分でないと思う点は、ここが効率的ではないということを示すために、主計官も結構無理に、一生懸命いろいろなデータで、質が良いかどうかを寿命と比べるなどされていますが、やはりダイレクトに医療の質を問う方法が、今、なかなかないのだろうと思います。今、レセプトデータなどいろいろなデータが、いろいろな形で、研究にも使えるようになってくる中で、医療の質をちゃんとデータを示せるようになること、何より今、デジタル化が全然進んでいないことに関しては、もう早急に進めることが重要ではないかと思います。
結局のところ、危機のときに、必要に応じて融通や連携が利かなくなっているということに関しては、そもそも悲鳴も上がっているわけですが、普通の人から見ても、非常に大変なお医者さんがいる一方で、お客さんが来なくて困っている、収入の補填を求めるお医者さんもいるという状況をどう理解したら良いのかということは非常に難しいと、思います。一言で、お医者さん側は診療を抑制すると病気が悪くなると言うが、そのレベルがどこなのか分からない。今、診療抑制された水準が実は結構良い水準の可能性もあります。今までと同じようにもうからないから大変であるということが本当に困っていることなのかということは非常に疑問ですし、結局、今、お医者さんは効率的な診療をするよりも、できるだけ長く病院に入院させたり、何回も何回も診たり、薬を大量に出すほうがもうかるということになってしまっている中で、今、効率化を国民に訴えやすい状況になっているので、本当にインセンティブを変えていくということは非常に重要ではないかと思います。
そのインセンティブの中でも、コロナの病床への補助金が1,950万円とか、とてもたくさんありましたが、それは効いたのかという検証はシビアに必要かと思っていて、結局は、人手が足りなかったのではないか、あるいは回転しないから、なかなかうまくいかないのではないかということに関しては、今、コロナの最中ではありますが、ぎりぎりと検証し、そこを改善するような方法がやはり必要なのではないかと思います。
かかりつけも、私たちもメディアで報道していて、熱が出たが、自分はどこへ行ったらいいか分からないし、電話もかからないから、いきなり救急車を呼んだ人などがいます。普段からかかりつけ医的なものを持つことの重要さがあるかと思います。
また、いろいろとコロナで分かった、例えば潜在看護師がちゃんと把握されていなかった点や、本来、ちゃんとあるべきデータがきちんとない点や、その効率化をちゃんと考えるベースがないという点に関して、まさに今、取り組んでいけばよいと思います。
少しだけ子どものところに関しては、こども庁のような一本化は望ましいと思っています。特に、成長、次の時代に必要な、子供を保育するとかだけではなくて、教育も含めてこの子たちをどうしていくのかということをトータルで考える機能が今、弱いと思っているので、こども庁が形ばかりではなくちゃんと良い形で進むと良いと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
もう既に明らかなことですが、今後の財政健全化にとっては社会保障費、とりわけ医療費の増高を構造的に以下に抑制するかが不可欠であるし、まさに健全化の本丸であると思います。そのためには、困難が伴うことは覚悟した上で、医療システム、それから様々な制度の見直しをしていく必要があると思っております。その観点から3つほど申し上げたいと思います。
まず、1点目、制度改革に当たっての基本的な考え方ですが、今後の制度改革を立案するに当たっては、日本の経済、財政事情であるとか、先ほどから話題になっている人口動態などのマクロ的な状況を踏まえて、そもそも適正かつ持続可能な医療サービスのあるべき姿を改めて設定し直して、それと整合するような医療提供体制がどういうものであるべきか、恐らく、今回のペーパーでも示唆されていますが、各地域でかかりつけ医を起点として、小規模な病院を一定以上の規模を持った病院に集約・再編していく方向だろうと思いますが、いずれにしても、そうした需要サイドと供給サイドの大きな絵を描く必要があると思います。
その際に重要なのは、18ページ、19ページでも触れていただいていますが、これまでのような希望的な観測に基づいたり、ミクロ的な施策を積み上げたりするのではなくて、マクロ的なアプローチで、かつ諸外国との実証的な比較であるとか、医療の費用対効果、診療所や病院の経営実態に関するエビデンスベースの検討が必要だと思われます。データの制約という話は、今、宮島委員からもありましたが、ここはぜひエビデンスペースの検討を進めるべきです。
2点目、では、どうやるかということですが、確かに制度改革とはいっても、出来高払いであるとか、フリーアクセスという制度を、いきなりひっくり返すのは現実的ではない中で医療費を抑制するためには、やはり公定価格によるインセンティブを活用して受診者側と医療提供者の行動を変容させていく、これがまず重要だろうと思います。そうした意味では、ややミクロ的かもしれないが、主要な症例の診療報酬の議論、つまり大きな塊については財政当局も関与していくことが現状では望ましいと、私は思います。それから、受診者側の需要の適正化に向けて、いわゆる小さいリスクに関する患者負担のさらなる引上げも引き続き模索していく必要があると思います。
さらに、そうした手法だけではコントロールできない、先ほどから話題になっている医療機関の統合・再編を進める上では、都道府県知事の権限に基づく規制的な手法も重要ですし、また、合理化コストの財政支援、税財政の支援も材料になるだろうと思います。
ただ、一歩引いて見てみると、日本では公的な仕組みで医療財政が成り立っている一方で、これは30ページで指摘されていますが、そうした公的な財政を使って医療を提供する病院の多くは民間というねじれが生じているわけです。私自身も答えを持ち合わせているわけではありませんが、この姿をどうしていくのかということにも、やはり何らかの形で切り込んでいく必要があるのではないかと思っております。
最後、3点目、今、コロナの話題が出ていますが、以上、申し上げたような改革は、コロナの危機によって決して後退させてはならない。むしろ、これを契機に、これも先ほど宮島委員おっしゃいましたが、改革を加速させなければいけないだろうと思います。すなわち、コロナ危機が明らかにしたものは、医療資源の散在、薄く、広く、かつ低密度な医療が提供されているという、我が国の医療提供体制がもともと抱えていた問題が顕在化したということです。逆に言えば、その是正に向けてこれまで財審でも議論してきたような地域医療構想の取組自体は、極めて的を射たものだったということが示されたと思います。もちろん、感染症対策が足りなかった、危機対応が十分ではないという問題もあるわけでありまして、26ページ、27ページにもあるように、医療機関同士の連携強化、役割分担の仕組み、整備といった新たな切り口を加えるべきだし、インペディメンツがあるのであれば、それを取り除くという努力が必要ではあるが、冒頭、申し上げたとおりで、医療機関の再編・統合を含めた形で地域医療構想を推進し、民間病院にも次の段階でその取組を広げていくことが重要であるということは何ら変わるものではないと私は考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、十河委員、お願いします。
〔十河委員〕ありがとうございます。
大変細かいデータと説明によって理解をすることができました。基本的には、私もここに出ている提案に異論はございません。
その中で、今回、このパンデミックによって様々な課題を一般の国民も知るところとなり、財審でずっと議論されていたことを国民も真剣に考えるタイミングに来ていると思います。ですので、今こそ具体的に検討し、確実に前進していくべきではないでしょうか。
また今、第4波が来ておりまして、おそらく第5波、第6波もあるでしょう。ワクチンへの期待もございますが、こうしたウイルスの感染症などによるパンデミックは、また近い将来にやって来るかもしれませんので、30ページからの今後の課題という箇所は中長期的に確実に変える工程表やプランを作成し、議論で終わらせないことが大変重要であると思います。
その上で、AIやデジタルを活用していくことが不可欠であり、例えば遠隔医療に関しては一時的な活用という判断もあるようですが、こうしたデジタルを活用したシステムが当たり前の社会になっていかなければ、この先財政面がより厳しくなっていきますので、今回指摘されている箇所を確実に改善しながら、将来に備える必要があると思います。
そして、何人かの委員も述べられておりますが、なかなか進まない地域医療構想をどうやったら進められるのか、これも具体的に考えていくべき時ではないでしょうか。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、村岡委員、お願いいたします。
〔村岡委員〕ありがとうございます。
新聞社は、毎月、世論調査をやっておりまして、昨年、コロナの感染拡大が始まってから1年余りたちますが、見事なほどに、感染が拡大するかどうかと内閣支持率が連動しています。ここまで来てもまだ半分は五輪開催に悲観的、ないしは反対という世論調査の結果もあります。やはりこの1年余、国民の関心はコロナにあって、今後もまだいつ収束するのか先が見えないので、当面強い関心を続けるだろうと思います。そうすると、その中で財政リテラシーを、国民に受け入れられる形でどう発信するかがより重要になってくるのではないかと思います。
少しミクロな話をします。重症のコロナ患者の受入れをかなり積極的にやっていた、ある大学病院のトップが話していたのですが、やはり感染拡大時に最も重要なのは、重症患者の扱いであると。自分の病院の場合、ICUに入れられれば、まず90%助けられると。逆に言うと、ICUにたどり着かない患者さんは、ほぼ100%亡くなるそうです。そこが最大のポイント、課題になる。つまり、ICUをどう確保するか。
ICUは、普通、大部屋だそうです。しかし、1人でもコロナ患者を大部屋に入れてしまうと、それ以外の一般の患者さんを受け入れられなくなくなってしまう。その大学病院は衆知を集め知恵を出して、数千万円かけてICUを改修し、壁を作って導線を一般患者用とコロナ用に分けたそうです。そうすれば、コロナ患者を受け入れられるはずだった。ところが、せっかく増やしたICUのベッドを結局は十分に使えなかった。コロナの重症患者に対応するには看護師が、通常の2倍ないし2.5倍必要だそうです。人工心肺をはじめとした高度な医療機器の取扱いができる専門的看護師は数が少ない。こうした熟練の看護師を集められなかったのです。
医療従事者は努力しているにもかかわらず、こういうミスマッチが起きている。先ほど一松主計官から説明いただいた26ページ、医療資源が散在して手薄な人的配置となっている我が国の医療提供体制の脆弱さが明らかになったというのは、今、言ったような話なのかとも思います。ということは、パンデミック対策の本丸は医療の構造改革なのではないかと思います。それを多くの国民世論が納得するよう訴えかけていくためには、まずは次の予算、骨太も視野に入れながら、コロナ対策で安心感を与えていくことが順序としてはいいのではないかと思います。すなわち、ICUという設備面だけではなくて、医療人材とセットにした使える医療資源の提供です。
35ページにあるように、新型コロナと医療機関の支援についてはこれまでも8兆円弱の国費の支援を行っていますし、例えばワクチン確保にも1.7兆円を適時出していますが、現実はどうかというと、まだ接種率が0.2%と遅れています。4月の新聞各社の世論調査でも最大の不満になっていまして、約70%がワクチンの遅れを不満であると言っています。この状況の中で一般的な医療構造改革の必要性を説いても、なかなか受入れは難しいだろう。そうすると、重症患者対策とワクチン接種の2点については、やはり踏み込んだ提言が必要なのではないかと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕手短に。
ありがとうございました。これだけの分量で、国民とどう対話していくかですが、そうした国民とのチャンネルというか、つながりをイメージして、我々の発するメッセージをできるだけシンプル、クリアにできないか。それで2点です。
1点、医療ですが、私も非常に良い書き方であると。20ページを開いていただいて、医療費の伸びで、一松主計官が書かれたように、今の日本の医療制度改革というのは2005年の議論に始まっているわけです。書かれていませんが、このとき後期高齢者医療制度もつくられました。それを踏まえて、あのときに厚生労働省はこう言っただろうと。ところが、20ページを見ると、足元、医療給付費が予想より全然高いではないかと。それで、20ページの上の3番目の最後、すごい日本語ですが、15年来というのは2005年からですが、「15年来の医療費適正化の蹉跌からの立て直しが求められている」と。懐かしい蹉跌という言葉が出ていますが、ここであると思います。
何を言いたいかというと、医療給付費がコントロールできなかったではないかということが第1点、良いと思います。次に、先ほどから出ている点で、そこは繰り返しません、あまり言いませんが、医療提供体制で33ページの丸の3番目です。先ほど御指摘された方もいらっしゃいましたが、2番目のメッセージは、医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なしと、それをしなければ診療報酬を見ないと。つまり、今回、コロナで分かったことは、やはり病院の機能分化が十分ではないので、コロナの患者さんを受けられなかったではないかと。だから、財審としては地域医療構想を徹底的に推進してほしいと、これが第2点。
第3点は、47ページを開いてほしいのですが、書かれていなかったことで重要であると私が思うのは、保険者の役割についてもっと触れてよかったのではないか。つまり、最前線で医療費情報を持っている者は保険者であるわけです。彼らの持つ情報も重要だし、そこで医療費適正化もできたはずだ。だから、厚生労働省は特定健診などやってくださいと言ったわけですから、それ自身は悪くなかったわけです。
それから、46ページ、これは結構険しい表ですが、国保組合への国からの補助金を減らしていくべきは分かります。右側の保険組合、大企業、あるいは大企業連合の保険料がこれだけ違うわけです。これは労使を合わせたものです。しかも、協会けんぽが10%です。これはどうしてかという一つの原因は、先ほど言った2005年の後期高齢者医療制度で外側に出してしまったわけです。支援金を出しているが、それでも格差がある。だから、格差を是正しろというわけにもいかない。そうすると、医療保険料に関する考え方をどうするか。これ以上は時間がないので言いませんが、これは大きな問題を御指摘されていると思いました。
そうしたわけで、メッセージは、給付費コントロールが思うようにできなかったではないか、一松主計官に言わせればエビデンスベースになっていないではないか。第2点は、地域医療構想は徹底しろと。これは、もう財審の一番大きなポイントとして言うべきだ。保険者に関しては、我々を含めてでしょうが、もう少し議論が要るのかと。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員。お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
本日は、大変充実した資料の御説明をありがとうございました。3点、意見を申し上げます。
1点目は、医療体制です。コロナ下で使用されている病床数は、全体の5%以下と伺っております。昨年春から何度も経済活動を抑制してきたわけですが、その間のコロナ対応の病床数の増加があまりにも鈍いということは大きな問題点であると思います。解決策としては、26ページ、27ページがヒントになるかと思いますが、患者受入れ医療機関に対して人材を集めるという観点から、効果的な支援をできないのか。同時に、医療機関の役割分担、連携体制の強化に向けて、ガバナンスの利かせ方を工夫できないのかと思います。
2点目、コロナ危機とはいえ高齢化社会の訪れが後ずれすることはありません。財政の現在の状況を踏まえますと、私は、本丸である社会保障制度改革はしっかり進めるべきと考えております。その点で、全世代型社会保障の残された課題について異論はございませんが、メニューがこれだけありますので、きちんとロードマップを作成し、優先順位をつけ、その上で、一つ一つを着実に進めることをぜひお願いしたいと考えます。
最後に、3点目、ささいなことではありますが、社会保障の議論をしていますと、社会常識としておかしいという事例が、毎年、出てきます。今年の例で言うと、65ページ、購入する場合と比べて40万円高い。こうした社会常識的におかしなことは、直ちにやめるべきと考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
次、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。
コロナ禍で不透明な情勢の中、社会保障制度が効果的、効率的となるよう御尽力されたこと、御礼申し上げます。
年金と医療について、簡単にお話しいたします。
昨年の年金制度改正には、15ページにありますように意義がございました。ただ、細部を見ますと、給付水準、特に基礎年金の引上げという意味では、全くとは申しませんが、不十分でした。16ページの今後の課題にまとめられている被用者保険の適用拡大、キャリーオーバーの見直しを意味する名目下限措置の撤廃、保険料拠出期間の延長は、いずれも基礎年金の給付水準の引上げ策として期待されております。これからの働き方の方向性と整合的な年金改革でもあります。財源の確保をしっかりと検討しながら、ぜひとも進めていただければと思います。
また、昨年12月に年金数理部会でオプション試算の追加試算がなされておりますが、そのことに触れられていないのはなぜかと思っております。これは質問になります。
医療につきましては、先ほどから委員の皆様がおっしゃっているように、コロナ禍で日本の医療の課題が見えてきたと、一般の人にも分かってきたということがあると思います。22ページにありますように、今回のコロナ禍で、効率的な医療提供体制の改革を通じて医療の質そのものの改善も図ることができる、そうしたことについても多くの人たちが理解されたのではないかと思います。
日本の医療の現状に関して言いますと、効率化と質の向上はトレードオフではないということは重要なポイントであると思います。29ページにあるように、個々の病院も、一人一人の医療関係者も皆様懸命に頑張られていますが、提供されている医療の総体が不十分、非効率なものになっているということは、合成の誤謬という表現を使っておられたところですが、ここの意図としては、今の提供体制の下でこうした問題が起こり、個々のサービス提供者の問題ではないということ、努力した皆が報われるようなシステムの変革そのものが必要であるという長らく言われてきたことを確認されていると思います。とても良いことであると考えております。
32ページで、日本の医療は、いつでも好きなところでという従来のフリーアクセスから、必要なときに必要な医療にアクセスできるようにするという意味でのフリーアクセスへの転換が書かれております。そのためには、緩やかなゲートキーパー機能が必要になりますし、その役割がかかりつけ医に期待されております。
32ページに、日医と四病院団体協議会合同による、自分たちが目指すかかりつけ医とはこういうものであるという定義が紹介されております。世の中の人たちは、地域の医師、医療機関とお互いに協力して、休日や夜間も患者に対応できるとか、在宅医療を推進するというなかなか立派なかかりつけ医の定義を知りません。同じページに、地域連携薬局の話が紹介されておりまして、病院の連携よりもかなり先に進んでいるということがうかがえます。医師会自らが定義したかかりつけ医の普及が、今、強く期待されているのであると思います。財政、診療報酬、そして法制の面からも、ここに定義されている意味のかかりつけ医を促す工夫をお願いしたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、安永委員、お願いいたします。
〔安永委員〕ありがとうございます。
私からは2点、1つは医療費の抑制に関して、もう1つは社会保障関連費用負担の公平性について申し上げたいと思います。
医療費の抑制については、既に多くの委員の方から言われておりますとおり、今のコロナ以外の医療支出が実は本来あるべき実需なのではないかと。もちろん、コロナによって病院に行けないという制約を抱えている人はいると思いますが、不要不急の病気や、なんちゃって急性期は問題ですが、病院がサロン化しているというような実態の中で、本来、国民皆保険の中で医療行為を、良好な医療サービスを必要とする人が必要な形で受けられる、その実需はどういうレベルかということを問い直す良い機会ではないかと思います。そうした意味では、過去のトレンドをベースに、高齢化増分を単純に乗せるといった、これまでのトレンドを踏襲するのではなく、ベンチマークを新たにリセットする良い機会ではないかと考えます。
少し端的な例で恐縮ですが、私ども海外で、アジアを中心に10か国で80個の病院を経営しております。病院経営をしている身からすると、経営データを2年に1回更新しているというような日本の実情は、もう衝撃でしかありません。経営データをリアルタイムに把握しないで、どうやって効率の改善ができるか、コストの削減に取り組めるのかということはものすごく疑問です。私どもは、実態として、データを取りそろえることによって、ベンダーとの価格交渉を有利に進めるですとか、あるいは診療科目の中でどの部分が強い、弱い、強化しなければいけない。それから、非医療人員の効率化をどうやって図っていくか、外来の待ち時間の解消をどうやって進めるか。あるいは、それをオンライン、要するに病院に来なくてもよい方を来ないで済ませるようにするためにはどうすればよいか、こういうことに一生懸命、経営努力を重ねています。そのためにはデータがないとできません。これはもう、まず病院経営そのものを掘り下げていかないといけない問題ではないかと思っています。
2番目に、費用負担の公平性についてですが、まず医療・介護については増加し続ける現役世代の負担の抑制、これはやはり生産年齢人口が減少していく中で、企業から見ると、現役世代に一方的に負担を増やしていくということは、とても持続性があるとは考えられません。やはり費用負担の公平化を考える必要があると思います。
子ども・子育てについては、こども庁を通じてしっかり育児を助成していくことは大事であると考えておりますが、既に事業主拠出金の事業規模が年間7,000億円に上ってきております。やはりこれから持続的に子育てを支援するためには、必要な安定財源の負担を事業主だけに偏ることなく、広く社会全体で支えるということが必要ではないかと思います。
最後に、雇用調整助成金についてですが、そもそも雇用調整助成金についての我々の理解では、今回のパンデミックのような原因を想定していたというよりは、通常の景気変動、産業構造の変化、そうした中で経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を支援するということが制度の本筋であったと思います。パンデミックが続く中で、既に事業主側の負担は2兆円を超えています。一般会計からも1兆円を負担していただいてはいますが、やはりこうした衛生対策にかかる負担について、事業主側に過度な負担を、異例の負担と我々は思っておりますが、継続的にするのは持続性の観点で課題があるのではないかということを最後に申し添えさせていただきます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕御説明ありがとうございました。
非常に包括的、かつ相当突っ込んだ、きめ細かい御提案をされているということは改めて理解いたしました。本当にこれだけの課題が山積して、年々、どんどん、どんどん資料が厚くなっているというか、課題、問題がそれだけ増えているわけですが、やはり先ほど武田委員からも話がありましたように、これも一つ一つ着実にやっていくしかないわけで、ぜひ、したたかに、そして、しなやかに取り組んでいただければと思います。
今日は、少し各論を何点か申し上げさせていただきたいと思います。
最初に、医療、介護・障害です。これも皆様から話が出ていますが、42ページの後期高齢者の本人負担の問題です。やはり医療保険財政の健全化とか、世代間の公正性の確保、そうしたことから、ぜひこれは2割という対象を拡大していく方向ではないか。
それから、利用者負担という面では、63ページの介護保険もそうですが、これにつきましても現役世代、あるいは企業の負担を抑制する。さらに、世代間格差を是正するために、現在、2割負担という対象がありますが、例えばそこをもう少し拡大するとか、そうしたことで負担を少しずつ広げていくことが必要なのではないかと思います。
2つ目は、子ども・子育てでございます。これも皆様からいろいろ出ておりましたが、特にこれから少子化対策についても、そもそも社会全体で支えていくという観点からは、やはり税というか、恒久財源で賄っていく方向にあるのではないかと思っております。特に、事業主拠出金ですが、現在、業績の良し悪しに関係なく、あるいは全ての企業を対象に、厚生年金とともに徴収されるわけですが、この料率の引上げが続いていることから、特に中小企業にとって負担感が増している。それから、これから新子育て安心プランに基づく保育の受皿整備、こうしたことから料率の引上げが予想されているわけですが、ぜひこの拠出金の運用規律を徹底していただいて、料率の抑制、あるいは将来にわたってあまり上がらないように、ぜひお願いをしたいと思います。
最後に、雇用生活支援です。これも今、安永委員から話がありましたが、雇用調整助成金、使い道は違ったかもしれませんが、結果的に本当に今回のコロナ、これだけの大変な中で、このぐらいの落ち着いた状況になっているということは、まさに雇用調整助成金の果たす役割は非常に大きかったのではないか。ただし、これはもう3兆円以上、支出が増えておりますから、特に会計がこれから枯渇化していくという心配があります。さらに、雇用保険二事業への貸付けを行っていますから、今後、ある面では国費で負担するといったことも少し検討する必要があるのではないかと思っております。
もう1つは、今、企業は、在籍しながらもどこかに出向させるとか、あるいは求職者の訓練をするとか、いわゆる円滑な労働移動がこれから非常に大事になってくると思います。これをきちんとしないと、なかなか産業の再生とか、そうしたことも難しいと思いますので、ぜひそうしたような観点からも雇用保険の財源の安定化、これは必要なのではないか。国庫負担割合、本則では25%に引き上げるということですので、この辺についても、これから一般財源の投入をどうするかということを御検討いただければ大変ありがたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、遠藤委員、お願いします。
〔遠藤委員〕少々、重複感はあるのですが、社会保障について久しぶりに発言させていただきますので、お許しください。
我々、日本国民は長い間、過保護とも言うべき手厚い受益を受け続けてきたわけですが、こういうコロナ禍にあっては、すぐにそうしたことも少し忘れてしまうので、ふんまんがいろいろと沸き上がってきている状況にあると思います。特に、毎日のように首長や医師会のトップの会見で、国民、叱られておりますが、それにしては4.6兆円も病床確保に予算がつきながら全然充足されていない。このギャップがどうしても、ふんまんという形で出てきているのかと。
その点については、せっかく国民において供給体制にスポットライトが当たったという好機でもありますので、先ほどから皆様おっしゃっておりますが、医療提供体制の構造改革、これは4枚のスライドで御説明されていましたが、かかりつけ医、地域医療体制の充実をぜひ粛々と進めていただきたいと思っています。1点、気になったことは、オンライン診療が抜けています。これは、もしかしたら医師会への配慮なのかもしれないですが、本来ならばDXの進展とともにオンライン診療を掲げないということは、国民全体の利益からすればよろしくないことなのではないかと思います。コロナ禍で、そうした意味でのかかりつけ医、どこなのかという話になったときに、オンラインでアクセスできるということは非常にメリットがあることであると思っております。
また、先ほど安永委員もおっしゃられたのですが、受診控えということもありますが、これが本来の適正受診なのではないかという視点です。こういうことも含めて診療報酬の本体改革、本体改定に進んでいただきたいと私も思っております。
もう1点、やはり今回の財政支出の規模、赤字国債の規模は、やはり異常値であると思っております。日本は、超過死亡はマイナスなので、その中でこういう財政支出が行われてきたということは、政治的にも、財政当局としては合理的な判断だったと思うのですが、これは一つの災害であると考えた場合、しっかり復興税のような形での徴収が担保されていないと財政は破綻するということは、もう明確なメッセージとして我々は打ち出していかなくてはならないと思っております。この点をしっかり、お金をかけることは仕方がないとしても、取ることを含めて、財政再建に努めていくという旗を絶対に下ろさないということを守っていただきたいと思います。
せっかく水道をつけていただいているので、コメントさせてください。上下分離などの話は水道の問題でよく出てきますが、下水はもうかりますが、上水はとても無理です。いろいろなインフラセクターとの下水の連携はできても、上水は難しい。しかも、老朽化が進んでいくインフラであるということで、水道料金等の徴収は合理的な判断だろうと思っておりますので、この点はインフラ老朽化への対処という観点から、しっかりやっていただきたいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕堀委員、どうぞお願いいたします。
〔堀委員〕ありがとうございます。
詳細な御説明を頂きありがとうございます。ほかの委員の方たちの発言と重複するところはなるべく避けたいと思いますが、総論における問題意識は基本的に共有しております。負担増を伴わないままに受益が先行するという在り方、あるいは未来への借金という意味での公費に依存した形で、公費が調整弁となって社会保障を維持するという在り方は、明らかに社会保険をベースとした医療保険の在り方としていかがなものかと思いますし、ほかの社会保障制度も含めて見直すべきであると思いますので、こちらに書かれている問題意識は共有しております。
ただ、基本的に負担増ができないことを前提に、受益の部分をどのように抑制、あるいは規律設定するかに焦点が当てられていると思います。持続可能性を維持する上でも負担と給付のセットで、公費のみならず給付費全体にも規律をということは非常に重要な視点であると思いますが、同様にほかの保険料も含めた規律の在り方も検討すべきではないでしょうか。令和3年度までは高齢化の伸び率で公費を規律するということになっていると思いますが、給付、負担セットで規律の在り方を検討する非常に良いタイミングなのではないかと思っております。
それから、医療に関しましては、実は細かくたくさん言いたいことはありますが、時間もあまりないので、大きなポイントだけお話しさせていただきます。
医療給付費の伸びのところで、2005年の医療制度改革大綱に書かれているオレンジのところと一松主計官はおっしゃっていました。これは健康増進の推進ゼロ次予防、一次予防で、治療を必要としない人を増やすという意味で良い着眼点であったと思いますが、医療費適正化という意味では十分なエビデンスがない、アウトカムが出ていないということは御主張のとおりであると思います。また、PDCAという観点で、実際、都道府県の医療費適正化計画をみても、医療費適正化の目標額を達成したとなっているところはほとんど診療報酬の抑制によって達成しているものであって、特定健診等の実績によるものでは必ずしもないかと思います。また、私自身、健康増進は健康寿命の延伸という観点から賛成しておりますが、特定検診も含めてですが、今の各種健康診断の方法は、保険者、自治体、委託業者によってやり方も違いますし、ばらつきが少なくないと思います。国際的に見ても、対象者の範囲、頻度・回数等も非常に大きく、費用対効果の面でも改善の余地があると思います。健康増進重要であると考えますが、エビデンスベースであるかどうか、それから費用対効果の検証は非常に重要であると思います。
医療費適正化計画に戻しますと、より医療費適正化とセットになったようなKPI指標を設定すべきであると考えます。また、後期高齢者の医療確保の法律の中で地域ごとの診療報酬ということも記載されておりますが、都道府県が医療費適正化のために具体的に何ができるのか、そこも含めて検討していく必要があるのではないかと思います。
22ページ以降、効率的で質の高い医療提供体制の整備についての記載があり、都道府県格差等の情報が出されていますが、これは別に15年に始まったことではなくて1960年代以降、継続的に同じような状況になっています。現状では、恐らく、特定の県に何とかしろとか、一人当たり医療費の少ない長野県に近づけろと言っても、実際、なかなかできないところはあります。日本の医療供給体制は中小の私立病院が中心となっているというのも歴史的な経緯もありそうなっております。地域医療構想の推進は絶対すべきであると思っていますが、具体的に進めるための何かしらのエンジンがない限り、恐らく、声がけだけで実現はできないと思います。
そのためにも、都道府県知事の裁量であるとか、権限の強化であるとか、あるいは保険者協議会に具体的な実行権限を与えるとか、そうした具体的なエンジンを入れていく必要があると思います。まさにコロナ禍だからこそ、今回、委員の方々からも医療提供体制の話がたくさん出てきましたが、国民的な注目を浴びているということはこれまで動かなかったものが動く可能性があると思いますし、従来、社会保障の中でも医療提供体制はあまり、この場では両者はセットで関係すると思われているとは思いますが、一般的には全く別物と思われているところがあったと思います。そこがセットであるということを、逆にコロナであるからこそ、うまく説明ができるのではないかと思っております。
また、人口当たり病床数は世界に比べても多く、病床当たりの人材が少ないということも構造的な課題でありまして、医学部の定員の問題であるとか、あるいは医療法の規制であるとか、様々な課題があります。構造的な課題を解決するには構造にアプローチしないといつまでも変わらないと思うのです。
また、「なんちゃって急性期」という表現もありましたが、これも診療報酬が7対1の関係で、経営面や医療従事者のマインドセットから「身の丈に合わないで無理して頑張ってしまっている医療機関」、中小病院があるということもあります。そうしたところが無理して急性期をやろうとするのではなく、身の丈に合った地域医療、地域の実情に応じた真のかかりつけ医としての新しい医療の提供でも経営面では採算がとれる、医療従事者側も生涯キャリア設計ができ、やりがいを感じるようにするにはどうすればよいか。先ほどDXを進めてオンライン診療という話もありましたが、これまでとは全く違う新しい医療の在り方があると思いますし、未来の医療も変わっていく可能性もあるのではないかと思っています。受診の適正化を進めるという意味でも、かかりつけ医の推進は非常に大切ですし、今回、かかりつけ医がいた患者さんは受診抑制がそこまで行われていない、また、受診抑制があったとしても、健康状態がそこまでは悪化していないという健保連のデータ等もございますので、そちらも参照していただくとよいのではないかと思っています。
新型コロナと医療提供体制については、こちらに書かれているとおりであると思いますが、私自身も非常に悩ましいというか、考えてしまうところ、医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なしにも賛成です。
新型コロナと医療機関の支援につきましては、「言うは易し行うは難し」という以前に、日々状況が変わる中、こういう公の場では、財政面についてあれこれ言うことそのものも難しい状態であると思います。新型コロナで一生懸命頑張っている機関もあるということが分かっていますし、費用面のことを心配せずに診療をやっていただきたいと思います。また、新型コロナの受入れはしていないが、影響を受けて経営悪化している特定の診療科もあることも分かっております。あえて述べますと、マクロレベルで見たときには賄うに足るだけの十分な財政支援がされていると思いますが、ミクロレベルのところで過不足はあるかもしれません。37ページにありますような診療報酬の不足は診療報酬で補うことが自然であるということですが、どこまで自然なのかどうかというところで悩ましいところもありますが、結局は、何を軸で考えるかによると思います。私自身は、ミクロレベルでの不足に柔軟かつ速やかに対応するという軸で考えると、公費・補助金等で一律というよりは、期間限定であったとしても診療報酬で補うのが自然であると思うところもあります。しかし、法律的な立て付けで考えると、診療報酬でどこまで対応すべきなのかとも。例えばここに書かれていますが、「前年同月ないし新型コロナ感染拡大前の前々年同月水準の診療報酬を支払う簡便な手法」というのが何を意味しているのかによっても少し違うかと思いますが、新型コロナは、感染症法の公費負担の医療になっておりますし、その辺の法改正が必要なくできることなのかどうか。もし、改正なくしてもできるならばよいのかもしれないですが、そこの部分はどうなっているのかというところが少し気になりました。
生活保護受給者の国保加入は、日本の社会保障全体を考える上で非常に良いと思います。生活保護は生活保護に特化して機能を強めていく、そして国保にも被用者の方たちが一部いますので、そうした方たちは被用者保険に入っていただく。被用者保険は被用者保険の中で保険者機能を強化するというように、役割分担、機能強化をすることで社会保障全体が強くなるのではないかと思いますので、生活保護に関しても同様に見ていくという視点は良いかと思います。
それから、薬剤費の予算統制という言葉が気になりました。前半の規律ではないですが、予算の規律の在り方など言うほうがよいのではないかと。統制するということは個人的には少しどうなのかと思いました。
保険給付範囲の見直しの在り方について、一律に保険外ではなく柔軟な在り方をという提案も、これまでの財審でも御提案がありましたが、良いと思います。
また、多剤・重複投薬、長期処方の対応なども含めて、基本的にかかりつけ医をちゃんと制度化して、今まではかなり曖昧なところがありましたので、しっかり対応する。
オンライン診療も、推進するのは非常に賛成ですが、やみくもにオンライン診療、誰でもできるようにしますと、私たち日本人の受診行動が変わらないと、むしろ医療費が増える可能性もありますので、適切な受診を進めるために、かかりつけ医とセットでオンライン診療を進めるならば納得感があると思います。
介護のところにICTと生産性の向上とありましたが、医療にも同じように、先ほど遠藤委員もおっしゃっていましたが、DXは前回の予算のところでもさんざん議論されていたと思いますので、入っていてもよいのではないかと思いました。
多床室の室料負担の見直しについては、介護と一部の医療で見ていますが、実は一般病床や精神病床も含めて見ていただくという視点もあるのではないかと思います。
それから、ここに入っていないですが、医療と介護の総合合算制度というものがございますので、自己負担の上限も医療、介護を含めてどのようにあるべきなのか。ここの資料には入っていませんでしたが、見てもよいのではないかと思います。
子育てに関しては、今、こども庁という議論もありますが、総合的な支援という形で別枠にするというのは一つの考え方ではないかと思っております。
最後に、全世代型社会保障の残された課題というのは、こちらに掲げられていることもまさにそのとおりであると思いますが、例えば後期高齢者医療と介護保険を一緒にするとか、介護保険と障害者総合支援法というように、制度と制度の間の整合性を踏まえて、どのようにすれば持続可能にできるのかというようなことも、将来的に検討する余地はあるのではないかと思います。
長くなりましたが、以上です。
〔増田分科会長代理〕オンラインで参加している熊谷委員ですが、ほかの用務で退席をするということなので、熊谷委員、どうぞ御発言をお願いしますが、すみません、手短にお願いします。
〔熊谷委員〕一松主計官からの御説明には、基本的に全く異論はございません。その上で、4点ほど申し上げたいと思いますが、まず1点目として、社会保障制度改革について、往々にマスメディア等が、現状を基準にして誰が得をする、損をするという話をするわけでございますが、こういう議論はやめたほうが良いと考えております。現状、不当に得をしている人が改革によって損をする、もしくは不当に損をしている人が改革によって得をするのであれば、これらはむしろ望ましいことであって、それこそがあるべき改革の姿である、このことをまず1点目として申し上げます。
2点目として、大切なのは、原理原則をしっかりと立てて、それに照らしてあるべき姿を探ることです。1つ目の原理原則は、まさに自助、共助、公助ということでございまして、小さなリスクは自助を徹底する、大きなリスクは皆で分かち合う。そして、言うまでもなく社会保障はあくまで保険であるということだと思います。
もう1つの原理原則は、負担と給付のバランスを回復するということでございまして、例えば全世代型の社会保障への転換、また、制度の持続可能性を高める、そして応能負担を進めるといった様々なポイントがあると思いますが、本質的に考えると、やはり理想の姿は「入るを量りて出ずるを制する」という原点に戻ることです。年金は、マクロ経済スライドが入っていますので、ある程度そうした姿ですが、やはり医療、介護についても極力、「入るを量りて出ずるを制する」という理想の姿に近づけていく不断の努力をしていくことが必要ではないでしょうか。
3点目として申し上げたいポイントは、きめ細かい制度設計や運用を行って、PDCAサイクルをしっかりと回していくことです。まずは、先ほども議論があったように、プライオリティーをつけて改革のロードマップを示すことが重要だと思いますし、医療、介護などの効率の高い提供体制ということで言えば、医療について先ほど31ページで一松主計官が御説明された、4つの御提案がございましたが、これも基本的に賛成するところです。
くわえて、ICT化、見える化、そしてインセンティブが働く仕組みをつくることなどが重要となりますが、具体的には、PDCAサイクルを回すという観点で言えば、医療費については、目標を各都道府県で設定して、各都道府県がPDCAサイクルを回していく。最終的には、地域別の診療報酬を設定するぐらい、やはりきめの細かい方策を講じて行く必要があるのではないかと考えます。
最後、4点目としては、本日の財審の枠外かもしれませんが、医療に関してはやはり緊急事態への対応に関する法的な整備、いわば非常時における国家の危機管理(ガバナンス)を強化することが不可欠であると考えます。医療体制に関しては、平時はある程度自由、レッセフェールで良いと思いますが、やはり新型コロナのような非常時に際しては、一歩踏み込む形で、政府が医師や医療資源の適材適所の配置をある程度、強制できるような法改正を行っていくことが喫緊の課題だと考えます。
私からは、以上4点でございます。先にお話しさせていただいて失礼いたしました。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕田中委員、失礼しました。それでは、田中委員、どうぞお願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。短く1点だけ。
課題と根拠を包括的かつ丁寧に示していただき、ありがとうございます。特に、医療提供体制について、制度に込めた狙いが果たされない点はやはりこの方針どおり是正をして、同時に受益も負担も担う国民はもっと正しく理解する必要があると改めて感じました。誰もが今、漠然と医療への期待を持っていて、深く考えずに医療を受けることがありますと、病院に行くことが誰の得にもならないような事態を招いてしまうということを知るためにも、具体例を示していくことが大切であると思います。
地域医療構想の実現においても、成功事例がよく示され、そのポイントは連携にあるとよく言われますが、それは体制提供側の視点ですので、住民や患者の視点から分かりにくくて、それをもっと見せられないかとも思います。機能分化を強化されている医療体制が組まれていて、それを理解して必要なときに適正にかかれば、財源も有効に使えて、うまくいくというようなことを、現実を個人の立場から理解できるように工夫して見せることが必要であると思います。
今回、コロナで、医療機関へのかかり方を多くの方が少し考えたタイミングでもありますので、この機を逃さず、メッセージを今回の政策とともに出せればと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。手短に3点だけ。
まず、財政規律についてですが、やはり脱デフレに向けた大型な財政出動を結果としてマクロの財政規律が弛緩してきた。今度は、ミクロの財政規律が弛緩する懸念があって、それは何かというと無駄な病床の許容ということです。なかなかコロナ病床が確保できない、だったら無駄な病床をある程度、各病院が持っていたほうが良いのではないかという風潮に流れるのはまずいだろう。何人かの委員から御指摘あったとおり、これは本来、病床の数の問題ではなくて利用の問題ですので、やはり機能分化、医療機関の間の機能分化とか、病床配置の適正化とか、人員配置の適正化も併せて実施していく必要があるだろうということが1点目。
2点目は、そうはいってもどうやるかという話ですが、やり方は大きく規制とインセンティブがあるわけでありまして、これまでも地域医療構想、医療機関の連携と笛を吹きながらなかなか踊らないのは、各病院がやはり政策ではなくて経営判断に基づいて病床の適正化をするかどうかとか、そうしたことを決めていた。これはコロナでも同じで、結局、コロナ患者を受け入れると赤字になる、だから受け入れないという、本来、政策的にはコロナの受入れを求められているはずなのに、経営判断上、そうならないということであると思います。
では、どうするかということですが、実は今回、さらっと37ページに概算払いの話が出ていました。確かに、マクロ的には十分な支援があったとしても、ミクロ的には手が届いていないケースは幾らでもあり得るわけですので、こうした診療報酬の工夫によって、ここでは概算払いの話になっていますが、もし制度を実行するなら、誰が最終的に負担するのかということも含めて詳細を詰めなければいけませんが、こうした仕組み、迅速な診療報酬、確実な診療報酬の支払いといった仕組みがあってよいかと思います。
これは平時においても使えることでありまして、これまでやはり日本はどうしても、出来高払いはありましたが、例えば外来であれば人頭払いであるとか、入院であれば包括払いとか、あと連携をすれば、P4Pといいますが、連携したところに対して加算措置を取るとか、そうした形で診療報酬によってまさに強いインセンティブづけをしていくと、やはり診療報酬制度全体の抜本的な改革があってよいかと思います。
最後に、一体改革に立ち返ることがあってよくて、結局、社会保障と税の一体改革は何だったかというと、負担と受益の一体改革だったはずなので、一般会計繰入金のところでも議論がありましたが、例えば保険料と給付を連動させる。それから、マクロ全体、一国全体に関して言えば、やはり医療費と消費税を連動させるといった形で、受益が増えれば、給付が増えれば負担が増えるのであるという姿を見せていくことが必要かと思いました。
また、今日、せっかく水道の話をしていただきましたが、議論する時間が全くなかったと思うので、水道は、広域化という観点から見れば地方財政の問題ですし、老朽化という観点から見れば社会資本整備の問題でもありますので、ぜひそうしたセッションで改めて議論したらいかがでしょうかという提案です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。負担と給付のバランスを取るべきということで、総論、それから中身についても本当に全部賛成です。ポイントを絞って、医療のところについて2点ほど申し上げさせていただきたいと思います。
既に、もう本当に何人もの方が言っていらっしゃいますが、今回のコロナで医療提供体制がうまく回っていないということが極めてはっきりしたと思います。26ページ以降の資料でお示しいただいたように、日々、我々が報道で目にするのは、どれほど医療現場は大変かということばかりで、実はこうやって全体でデータを見ると、これだけ使っていない病床もあると。お医者さんも、皆様本当に倒れてしまいそうなのかと思っていると、実はそんな感じでもないというようなことが分かったりもしますので、やはりこうした現実をきちんと見せていただいて、とにかく国から財政出動してくれ、してくれと、この国はなりがちなところがありますので、そうならないように持っていくことが大事ではないかと思います。
医療提供体制のところは、コロナが来たからといって地域医療構想を止めてしまわないで、きちんと検討を続けていくことが大事であると思います。これも、もともとは二次救急をどうする、三次救急をどうするとか、そうしたところの議論を中心にやってきたはずで、感染症についての対応はやはり手薄だったということは、もう本当に否めないのではないかと思います。やはりその辺りも含めて、きちんと再検討していくということ。
そして、やはり最大のコロナの関係で、各地域の病院ごとの連携がどれだけできるかということが、今まさに本当に試されている局面ではないかと思いますが、そうしたところの事前の準備とか、事前の計画ができていなかったところが露呈してしまった。そこは、やはり都道府県にしっかりやっていただくしかないですし、国から強制するわけにもいきませんが、国としては、例えば病床の調整とかうまくいっているような県もおありになるという話も聞いたりしますので、そうしたところの横並びのデータを開示して、やはり都道府県にしっかり御対応いただくことを促すことが一つ大事ではないかと思います。
もう1つ、日本の場合には、やはり歴史的な経緯もあって民間病院が多い。これはもう本当に致し方ないことであると思います。33ページのところで御説明いただいたように、民間医療機関の対応が鍵を握るからこそ診療報酬をどうするかということが大事と、もう本当にこれはおっしゃるとおりであると思います。ただ、私が思いますのは、私、社会保障は全然専門ではないので、門外漢が何を言うかとお叱りを受けるかもしれないですが、やはり医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし、要するに診療報酬を2年に一遍、何%上げるかどうのということだけが焦点になるようですが、診療報酬制度の枠組みそのものを、ここで1回、見直す必要はないのかと思います。
見ていて思いますのは、診療報酬というのは点数をつけて、基本的に良いことをやったらプラスの加算、それだけです。マイナスがない世界、良いことをやったら加算で、その分は私たち国民も負担しなければいけない。それは調剤報酬の議論とかを行革でしているときにも聞いたことがあって、厚生労働省に、後発薬のときですが、良いことをしたからということで私たちの負担が増えて、それはおかしいのではないですかと言うと、こういう制度ですから、しようがありませんということで逃げられて終わってしまいましたが、本当にそのままでよいのか。そうした制度の下で、民間病院が、要するに規模の大きいところも小さいところも、今だって少し回復された方が転院できれば重症病床を空けられるのに空けられないという話もありますよね。そうしたことに協力してくださらないところがあると。経営上の理由とか、風評が立ってしまってと、いろいろ理由はおありでしょうが、結局、好きにやることが許されてしまっている中で、これは地域医療構想が、こうした危機時の対応も含めてきちんと立てられていることが前提であると思います。
やはり病院という世界、医療の世界は社会にとって非常に大事なことで、診療報酬といういろいろな公的な制度によって競争からも守られているわけです。我々も信じてお任せしているが、やはりこうしたときに動いていただけないのだったら、診療報酬制度はプラスの加算だけでよいのかどうか。やはりマイナスということもあり得る。もし協力していただけなかったときには、少しマイナス要素が入ってきますということを入れるような、そうした制度にしていかなくてよいのかと、すみません、門外漢の考えかもしれませんが、思いました。
もう1点、非常にマイナーなところですが、73ページ、障害福祉サービスの地域差のグラフをお示しいただいて、こういうデータをお示しいただくことは非常に良いと思います。客観的な現実がよく分かって良いと思いますが、やはりこれだけ都道府県によって倍率の格差があるのは、正直言ってぎょっとしてしまうというか、驚きます。これは、やはり事業所数が多いほどサービスが過剰になる傾向もあると思います。ただ、都道府県によって、例えば障害者の方、障害児の方がどれだけの割合いるかということは、そんな県によって差がないはずなのに、こんなに差がついてしまってよいものなのかという気もいたします。やはり過剰にサービスが供給されてしまっていないかということを検証すると同時に、本当にサービスを必要としているような人々が地域にいるかもしれないのに、きちんとしたサービスが供給される体制になっているかということも含めて、両面から検討する必要があるのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
この会場にいる方で、御発言希望の方は全員指名をいたしました。一応、予定している時間があって、それを過ぎてはいますが、オンラインであと5名の方が発言を希望しておりますので、大変恐縮でございますが、オンラインの方は手短にお願いできればと思います。以下、横田委員、土居委員、冨田委員、上村委員、福田委員と、この順番で指名いたしますので、横田委員から、どうぞお願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。
幅広い分野の、きめ細かい御説明、ありがとうございました。特に、コロナと医療に関するデータは豊富で、冷静な議論に資する資料が満載であると思っています。ただ、新型コロナの件に関しては、地域の感染状況によっても景色が全く異なると思っていて、データによっては一まとめに議論すると、やや乱暴な気がしています。例えば、医師、看護師の労働時間などに関しては、逼迫した医療を経験した地域と、それ以外に分けて確認する必要があるのではないかと感じた次第です。
医療提供体制は、オンライン診療に関しても出ていましたが、今回、コロナ禍の学びは広域連携という点もあるかと思います。広域連携やオンライン医療というところも含めて、医療提供体制をぜひしっかり考えていくということは、改めて進めていただきたいと思いました。
あと2点だけ、雇用と年金に関する点です。まず、雇用調整助成金の特例措置の内訳についてです。失業なき労働移動に当たって在籍出向を対象とした助成金もスタートしていますが、今後、活用状況を見ていく必要があると思っています。この制度は、出向先にそのまま移籍をする場合もあれば、コロナの感染状況が落ち着き経済が回復したときに人材が戻ってくる可能性もあるという質のものであると考えています。ワークシェアリングができるような仕組みにはなっているものの、事務局に問い合わせると少し柔軟性が足りないように感じた点もあるので、しっかり周知をされているのか、実際の活用度など、中身を今後、検証していっていただきたいと思っています。
最後に、少し中長期視点の話になってしまいますが、社会保険の適用拡大に関する点です。適用拡大を進める点には異論はないですが、長期視点で考えると十分なのかと少し疑問符を持っております。というのは、多様な働き方が進んで時短勤務、短い時間の方々をカバーしていくようになっていますが、今後、雇用類似の兼業や副業が増えていくと、恐らく、個人事業という種類の方が増えてきて、意外と適用拡大を頑張ってやったものの、結果的に捕捉率はそこまで行かないかもしれないということを念頭に置きながら進める必要があると思っています。なので、雇用形態と物価の変化を注視しながら、どこまでを対象としていくかなどということをきちんと議論する必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、すみません、土居委員から2分ぐらいでまとめていただくとありがたいです。次、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕感想は割愛させていただきまして、意見のみ述べさせていただきたいと思います。
今回の新型コロナで、出来高払い偏重の診療報酬が弊害をもたらしたということが顕在化したと思います。そうした意味では、入院医療も外来医療も、出来高払いから包括払へとシフトさせていくという改革が必要であると思います。そうした意味では、今回、述べられていたものは、それにうまく整合するものであると考えます。もちろん、入院医療については、地域医療構想の貫徹ということは言うまでもないことですが、今、DPCという1日当たりの定額報酬となっていますが、さらに包括化して、1入院当たりの包括払いであるDRG/PPSを適用するようなことも含めて考える必要があると思います。外来については、かかりつけ医制度の定着ということは言うまでもないわけですが、選択的なかかりつけ医の登録制というものを導入するであるとか、人頭払い、キャピテーションを含む定額払い化ということも外来医療で必要なのではないかと思います。
後期高齢者の自己負担割合を2割にするということは、第一歩としては良かったと思いますが、今後、診療報酬改定ごとに2割対象者を見直す仕組みを定着させるというような形で、2割対象者は固定しないようにすることは大事なことかと思います。
医療費適正化計画に関しては、59ページにありますが、これは増田会長代理、田近委員、佐藤委員も私と共に出席していた内閣官房の社会保障制度改革推進本部の専門委員会で、まさに同時に10種類以上の薬を服用すると、3人から4人に1人はアドバースドラッグリアクションを起こして、健康を害するというエビデンスが示されたにもかかわらず、第三期医療費適正化計画では、多剤投与に関しては15種類以上の薬でないとそれに該当しない、適正化しないと、そうしたような方針が厚生労働省から示されるという意味では、骨抜きになった過去があります。第四期医療費適正化計画では、そうした骨抜きにならないようにしていただきたいと思います。
最後に、介護については、先ほど櫻田委員が介護を成長産業にという点は私は全く同感です。そうした意味で言いますと、65ページにありますように、ケアマネジメントの1割負担というのは必須です。ケアマネジャーが職業人として責任を全うすることの対価を、利用者がその負担を支払うということでもってこそ、産業たり得ると思います。
今回、取り上げられたことが骨太2021にしっかりと明記されることをお願いしたいと思います。以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、恐縮です、手短にお願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
社会保障給付につきまして、社会保険料負担分を含めた中長期の給付水準の規律が必要という説明をいただきました。そこに向けて、まずは今のコロナ対策で、一時異例に一般会計から繰り入れる措置を、社会保険料で賄うべき給付に置き換えていくということが必要であると思います。さらに、曖昧になっていた社会保険と公的扶助の境界を見直し、社会保険制度に期待される受益と負担の牽制作用を、社会保障給付費全体の規律づけにつなげることは必要であると思います。
例えば、雇用情勢が著しく悪化しない限り、御説明があったように、新型コロナ対策のための一般会計から労働保険特別会計への特例的な繰入を段階的に外していくことが必要です。また、医療機関への支援として行われてきた国費100%の緊急包括支援交付金は、御提案があったように、保険の診療報酬制度を通じて、診療の対価として減収分を支払うことが合理的な方法であると思います。
また、国保改革についても、県内保険料水準の統一と、普通会計から保険特別会計への法定外繰入の廃止が必要という点は御説明があったわけですが、くわえて、国からの普通調整交付金については、これまで建議でも書いてきたわけですが、収支差の補塡という考え方を混在させずに、年齢と性別のみで算定した普通交付金とすることが都道府県の保険者機能の発揮につながるものと思います。
このほか、今日は、公的年金の被用者保険の適用拡大など多くの項目についても言及がありましたように、社会保障給付において社会保険としての規律づけが重要です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。簡単にコメントします。
今回の報告では、重要な論点が大きく2つあったと思いました。1つ目は、マクロ的な統制をいかに図り、大きなPDCAサイクルと小さなPDCAサイクルをいかに連動させて回すかということ、2つ目は都道府県のガバナンスの強化です。
1つ目の重要な論点は、年金のようなマクロ的な統制を図る仕組みをいかに医療と介護に入れていくのかというところです。特に医療費については、医療費適正化という言葉の意味を正しく理解して、将来見通しに沿ってうまくコントロールすることが重要であると思います。本来の意味でも、医療費適正化を中心に据えて、マクロのPDCAサイクルと、都道府県医療費適正化計画におけるPDCAサイクルの連動が必要になります。
2つ目の論点ですが、都道府県のガバナンスの強化です。特に、医療と水道です。42ページですが、国民健康保険は、都道府県化によって法定外繰入の解消や、保険料の県内統一といった改革の成果が徐々に出ていますが、今は広域連合で運営されている後期高齢者医療制度については、都道府県が中心的な役割を果たしていくことで、国保と連動したマネジメントが期待できます。
49ページにある生活保護受給者の国保加入についても、問題が指摘される医療扶助に関して、都道府県のガバナンスを利かせるという意味でも大きいと思います。
最後ですが、89ページですが、都道府県の役割強化は水道においても重要です。水道は小さな事業者が多いわけで、人口減少に伴って広域化は不可欠ですが、医療と同様に都道府県のガバナンスを強化していくことが重要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。福田委員、お願いします。
〔福田委員〕ありがとうございます。手短にコメントさせていただきたいと思います。
幅広いデータを提供されるということは、こうした改革をする上では非常に大事で、EBPMという精神にものっとるような資料になっていたと思います。1つ、EBPMに関してコメントさせていただきたいのですが、大きく分けて事前評価の際のEBPMと事後的な評価の際のEBPMがあって、どちらも大事ではありますが、概して事前評価はかなりやっているが、事後的にEBPMが総体的にみなされることが必ずしも多くない中で、今回は例えば医療制度改革に関しても事後的な評価を提供されている。実は、事後的な評価のほうがデータも豊富だし、やりやすい面がある。それはかなり進めていただいて、問題のあるものを改革していくことが重要だろうと思います。
高齢者の自己負担に関しては、多くの方々が同意するということで41ページにも書かれております。ただ、重要なのは、やはりいかに資産を把握して負担してもらうかということで、現状ではなかなか難しいということで所得ベースになっていて、これはこれからも難しいことは分かっていますが、それでも諦めず、いかに高齢者の資産を把握して、資産のある方には負担をしていただくということは大事だろうと思います。
最後に、病院経営に関して1つだけコメントしたいのですが、アメリカのメディカルスクールには、1つの病院のマネジメントを行う人を育成するというコースもあって、やはり優れた医者は必ずしも優れた病院経営者ではないわけです。もちろん、優れた医者は尊敬すべき方ですが、病院経営者としては必ずしも優秀かどうかは分からない。やはり優れた病院経営者を日本も育成して、そうした意味では効率的な病院経営、あるいは医療体制の充実に貢献するというような仕組みづくりなども必要なのではないかと思います。
簡単ですが、以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、一松主計官から質問に対しての答えをお願いします。
〔一松主計官〕2つ御質問をいただいたと認識しております。
まず、権丈委員から、昨年末の年金数理部会で示された追加試算についてのお尋ねがありました。お尋ねがあったのは、恐らく、基礎年金の拠出金の仕組みを見直して、基礎年金と報酬比例に係る、マクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合の追加試算が示されたということでございますが、この試算は、将来において国庫負担の増加が示される試算でありまして、慎重な検討が必要であると考えております。具体的な制度改正の内容が示されたものでもありませんでしたので、したがって、今回の議論において取り上げる段階にないと認識しておりまして、参考資料も含めまして、資料で特段言及していないという扱いになります。
次に、新型コロナ患者を受け入れる病院に前年同月ないし前々年同月水準の診療報酬を支払う簡便な手法について法律改正が必要なのかという点ですが、参考にすると申し上げました災害時の概算払いについては、法改正を行わずに通知だけで実施されてきた実績が度々あると認識しております。こうした災害時の概算払いというものは、このページでも紹介されていますが、診療録が滅失、毀損するなどの事情がある場合に行われていることではありますが、こうした事情自体は法律改正の要否とは直接関係ないと認識しております。したがって、法改正の要否に関わる法律上の建てつけという意味では、特に今回、御提案させていただいているものと、災害時の概算払いとでは大きく変わらないと認識しておりますが、法制的な論点については引き続きよく確認していきたいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後、会長から発言をお願いします。
〔榊原分科会長〕時間も過ぎていますので、手短に申し上げたいと思いますが、今日は冒頭、事務局から包括的な、きめ細かい課題提案をしていただきました。また、委員の皆様からは、非常に多くの重要なコメント、あるいは御意見、御提言をいただいたと思っております。現状、課題山積であるということは、皆様認識できたと思います。このまま放置しておきますと、日本の国が身動きの取れない状況になるといった認識も共有できたと思います。これを変えていくと、この課題を確実に解決していくことがどうしても必要であると、この必要性も委員の皆様と共有できたのではないかと思っております。
今日、後期高齢者の2割患者負担の説明がありましたが、この課題一つでも本当に10年かかっています。課題一つに、いろいろな場所で提案し始めて本当に10年です。今日、あったような提案に、今後も10年かかってしまえば、国が潰れてしまいます。したがって、今日、皆様方から御提案ありましたが、こうした課題をきちんと優先順位をつけて、重要な課題は必ず実現する。そのためのロードマップを我々が示すといったような提言につなげていきたいということで、春の提言ではこうしたことに留意しながら、課題解決型の提言づくりにつなげていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いいたします。
今日は、本当に皆様、ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕皆様、どうも御苦労さまでした。会長、ありがとうございました。
時間が25分ほど過ぎました。大変恐縮でございました。以上で、本日の議題は終了といたしますが、この後、記者会見で会議の模様、御紹介いたしますので、従来どおり個々には御発言なさらないようにお願いします。
次回、4月21日、14時30分から、地方財政、文教・科学技術ということになります。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。
午後4時55分閉会