財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和3年4月7日(水)9:15~11:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
-
1.開会
-
2.新任委員紹介、新任委員より自己紹介
-
3.麻生大臣より新体制へ挨拶
-
4.分科会長互選、分科会長代理指名
-
5.部会設置、構成及び部会長指名
-
6.財政総論
-
7.委員からのヒアリング
-
「中長期試算の試算期間後の公債等残高対GDP比等について」
―土居丈朗委員
-
-
8.閉会
分科会長 |
榊原定征 |
麻生財務大臣 伊藤副大臣 中西副大臣 船橋大臣政務官 元榮大臣政務官 矢野主計局長 大鹿理財局長 角田次長 宇波次長 青木次長 窪田理財局次長 井口理財局次長 湯下理財局総務課長 日室司計課長 森田法規課長兼給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 |
||
分科会長代理 |
増田寛也 |
|||
委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 神津里季生 佐藤主光 十河ひろ美 武田洋子 土居丈朗 中空麻奈 宮島香澄 安永竜夫 |
|||
臨時委員 |
秋池玲子 雨宮正佳 上村敏之 宇南山卓 河村小百合 木村旬 熊谷亮丸 権丈英子 小林慶一郎 小林毅 末澤豪謙 角和夫 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 福田慎一 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午前9時15分開会
〔有利調査課長〕続きまして、財政制度分科会に移ります。対面参加の方、オンライン参加の方もいらっしゃると思いますが、財政制度分科会の委員の方のみ引き続き残っていただき、財政制度分科会に所属しない委員の皆様はオンラインシステムから御退席いただければと思います。ありがとうございました。
では、続きまして財政制度分科会を開催いたします。
本日、後ほど本分科会の会長の選任、それから会長代理の指名を行っていただきますが、それまでの間、引き続き私が議事の進行を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは、議事に移ります。
分科会長の選任に先立ちまして、今回、新たに委員になられた方の御紹介をいたします。新たになられたのは、熊谷委員、福田委員、安永委員、それから本日、所用で欠席されておりますが、米良委員でございます。
それでは、新たに委員になられた方々より簡単に自己紹介をお願いいたします。まず、この場にいらっしゃる安永委員からお願いします。
〔安永委員〕三井物産会長の安永でございます。経団連副会長の1人として広く産業界の意見をお伝えいたしますとともに、国際ビジネスに携わっている者として、海外からの視点で意見をお伝えできればと思っております。よろしくお願いいたします。
〔有利調査課長〕ありがとうございました。
引き続きまして、オンラインで御参加いただいている熊谷委員から自己紹介をお願いいたします。
〔熊谷委員〕大和総研の熊谷でございます。大和総研では、副理事長、兼、専務取締役リサーチ本部長として、政策調査、経済調査、金融調査及びSDGsに関する調査や政策提言等を統括しております。また、菅政権では経済・金融担当の内閣官房参与を拝命しておりまして、そのほかに政府税制調査会、IR(統合型リゾート)推進会議、総務省や金融庁の審議会、有識者会議等でもお世話になっております。
さて、私の基本的な考え方について一言だけ申し述べます。経済成長と健全な財政は言わば車の両輪であって、健全な財政は中長期的な経済成長の基盤となるものであると考えております。その意味で、中長期的な観点から見ると、財政再建は我が国にとって不可欠な課題であると思いますが、残念ながら我が国の財政は、現状、極めて厳しい状態にあります。
実施すべき政策メニューは既におおむね出尽くしていると思いますので、今後のポイントはやるか、やらないかということ、より具体的には民主主義国家である我が国においては、国民に対してどうやって適切な広報活動を行い、財政再建の必要性を言わば自分事として捉えていただくかということであると思います。
その意味では、情報公開が重視される世界的な潮流の中で、我が国の財政状況を極力「見える化」して、国民御一人御一人に丁寧に理解していただき、財政再建に向けたインセンティブが働くような仕組みをつくることが重要です。言わば、人間という生き物が宿命的に持っている現世利益を追い求める近視眼的な傾向にどうやって歯止めをかけるのかという方法論、そして実践こそが問われているのではないかと考えます。
いずれにしても、今回伝統ある本分科会の末席に加えていただいたことは非常に光栄に感じております。諸先生方から御指導、御鞭撻を賜りますことを心より楽しみにいたしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
〔有利調査課長〕熊谷委員、ありがとうございました。
続きまして、福田委員から自己紹介をお願いいたします。
〔福田委員〕東京大学経済学研究科の福田と申します。私の専門はマクロ経済学と金融でありまして、財政は直接の専門ではありませんが、マクロ経済学にとっても日本の財政状況は非常に大きな問題ですし、また、それを支える経済成長の問題はマクロ経済学にとって最重要問題です。そうした観点から様々な形で議論に参加させていただければ幸いです。
〔有利調査課長〕ありがとうございました。
それから、本日、欠席されている米良委員より御挨拶が届いておりますので、私から代読いたします。
米良と申します。本日は、所用のため出席がかないませんので、書面にて御挨拶いたします。私は、READYFORという日本初、日本最大級のクラウドファンディングサービスを運営する会社の代表を務めております。
クラウドファンディングという言葉には、まだあまりなじみのない方もいらっしゃると思います。簡単に言えば、個人、組織又は地域のこの世界に必要だと挑戦する思いと多様な資金を結びつけるための仕組みです。金融機関からの借入れや、行政からの補助金といった従来の仕組みでは資金が届かなかった分野に資金を届けることで、持続可能な未来を実現できると信じて事業を行っています。
取り扱う分野は多岐にわたっており、例えば大学における若手研究者の育成や研究環境の整備、新型コロナ感染拡大を水際で食い止めるための夜間・休日診療への支援など、行政分野と親和性の高いプロジェクトも増えてきています。クラウドファンディングの機動性、迅速性という強みを生かしながら、新たな資金の流れをつくり、行政と補完し合いながら、持続可能な未来を実現するために微力を尽くしたいと考えております。どうぞよろしくお願いします、とのことです。
そうしましたら、先ほどに引き続いてでございますが、麻生大臣より財政制度分科会の新体制の方々への御挨拶をよろしくお願いいたします。
〔麻生財務大臣〕財政の在り方というものを議論していただくことになりますが、これは国の形というものを議論することと同じであると思っております。よく言われることは、社会保障は、今、国家財政のうち約30%を占めておりますので、これがいろいろ大きな問題であるということはもちろんのことです。それ以外の分野、地方財政、文教、科学、エネルギー、防衛、最近ではグリーンという言葉が使われておりますが、そうしたものを含めまして、幅広い政策を皆様におかれましては御議論していただくことになります。そのため、本分科会において、経済界に限らず、マスコミ、また研究者等々、各界の第一線で活躍しておられる方々にお集まりをいただいております。
今回から新たに、先ほど御発言がありました、エネルギーや国際的な視点から御意見いただくということで安永委員に御参加いただきましたし、オンラインで発言をしていただいた方々がおられますが、熊谷委員の御発言の中にあった債券市場は非常に大きな問題でもあります。また、福田委員はマクロ経済学の大家でもありますので、ぜひ御意見をいただきたく思います。クラウドファンディングという最近新たな資金調達手法が出てきておりますが、今日の東芝の買収も一種のクラウドファンティングです。そうした話につきまして、多彩な委員をお迎えすることができたと思っております。
これからいろいろ御議論いただくと思いますが、今、新型コロナという名の中国由来のコロナが世界中の経済に影響を与えたことは確かです。私が総理のときのリーマンブラザーズの破綻は13年前の2008年に起きておりますが、あの時より今回のコロナの方がはるかに全体的な影響は大きいです。
あの時は、マーケットからキャッシュがなくなりました。たった一晩のオーバーナイトコールの金利は5、6%しました。今は1年借りても金利はゼロ%です。同じショックといっても話は違うとよく言うのですが、いずれにしても私共としては、財政は極めて厳しい状況にあることはもう間違いないのであって、これは何も今に始まったことではありません。
起きております現実は何かと言えば、赤字公債を再び発行するようになったのは1994年頃だったと思いますが、あの頃の国債、政府で借りていたのは260兆、270兆円ぐらいだったと思いますが、金利は約5%でした。一方、今はその4倍の1,000兆円を借りていて金利はゼロですから、金を借りたら金利が安くなったのです。我々が習った経済学では全く想定できない話が、今現実に起きています。しかも、それがずっと続いています。こんなことをやったら金利が上がります。上がりますと、財務省は狼少年みたいになりつつある。事実でしょう。
そうした中で、我々、財政を運営しなければならないという立場にいます。高橋是清大蔵大臣等々が出てきた1930年代前半以来、日本はデフレを経験したことはありません。インフレによる不景気しか経験したことのない戦後の日本で、初めてデフレーションによる不景気になったものですから、その対応を残念ながら財務省も日銀も間違えました。結果として、失われた20年、30年ということがよく言われますが、我々はいろいろな意味で大きなマイナスを背負いましたし、大きな借金も背負っております。しかし、幸い我々は借りた金は返すという長い伝統をきっちり守ってきました。日露戦争で借りたお金を我々は一体いつ返済し終えたかといえば1970年です。1970年まで、あの金は借りっ放しでした。そして、それを延々と金利を含めて返済し続けたのですから、これに勝る信用はありません。戦争で負けた国が、きちんと約束どおり借金を払いました。我々は、そうした意味で、あの国は金を借りたら必ず返すという信用を国際金融社会の中で得たことは事実です。
我々は、そうしたことをきちんとしているおかげで、今日、これだけ借金が増えても金利は上がらず、今の状態を維持できています。為替も安定して、そうした状態を続けているということであると思います。昨日のG7の中でもいろいろな話が出ていましたが、日本は大丈夫か等という声は出ません。この10年間も確実にやってきたではないかと思っておりますから、ほかの国もそうしたことをよく理解しているということであると思います。
ぜひ私共としては、そうした信頼のあるうちに財政を必ず再建させ、プライマリーバランスを黒字化するということを申し上げ、それを実行に移してこそ、初めてマーケットの信用を得られると思っております。今、国会の中でもモダン・マネタリー・セオリー、MMTという話等が出てきています。そうした話を含めまして、我々は対応しなければならない問題はたくさんありますが、やはりきちんと後世に、あのときにもう少しちゃんとやっておいてくれればと言われないようにしておかなければならないというのが我々に与えられた責任であると思いますので、きちんと対応してまいりたいと考えております。
いろいろな意味でお世話になりますが、引き続きのお力添えをお願い申し上げて御挨拶に代えさせていただきます。
〔有利調査課長〕どうもありがとうございました。
麻生大臣、中西副大臣、船橋政務官、元榮政務官は、公務のため、ここで御退席されます。ありがとうございました。
(麻生財務大臣、中西副大臣、船橋大臣政務官、元榮大臣政務官退室)
〔有利調査課長〕では、次に分科会長の選任を行っていただきます。財政制度等審議会令により、分科会長は分科会に属する委員の互選により選任することとされております。分科会長につきまして、御意見がございましたら頂戴したいと思います。また、テレビ会議システムを通じて御参加いただいている皆様は、御意見がある場合は「挙手する」ボタンのクリックをお願いいたします。いかがでしょうか。
土居委員、お願いします。
〔土居委員〕委員の土居でございます。
私は、分科会長には榊原委員に御就任いただくことを御提案させていただきたいと思います。榊原委員は、これまで分科会長、もちろん財政制度等審議会の会長でもあられますが、財政健全化、そして社会保障改革の政策形成に関わられて、これまでの経緯をよく御存じであると同時に、これから2022年以降、団塊の世代の方々が75歳以上になられて高齢化が更に進むような状況においても、これまでの御知見をこの分科会の議事進行にぜひとも生かしていただきたいと思っております。したがって、榊原委員を分科会長に推薦させていただきたいと思います。
〔有利調査課長〕ありがとうございました。
十河委員、よろしくお願いします。
〔十河委員〕私も、榊原委員に会長をお願いしたいと思います。コロナ対応で、日本の財政状況が更に悪化し、当分科会の議論がより重要性を増す中で、広く国民一人一人が財政問題について当事者意識を持って捉え、共に考えてもらうためにも発信力が必要です。その点、経済界にとどまらず、様々な分野で大きな影響力がある榊原委員に会長を続けていただき、当分科会の議論を世の中に発信していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
〔有利調査課長〕ありがとうございます。
ただいま土居委員、十河委員より、榊原委員を会長に推薦する旨の御意見を承りましたが、皆様いかがでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔有利調査課長〕御異議がないようですので、榊原委員に分科会長に御就任いただきたいと存じます。
それでは、榊原会長から会長就任に当たっての御挨拶と、会長代理の御指名をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〔榊原分科会長〕ただいま当分科会の会長に御推薦いただきました榊原でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。前体制に引き続きまして、当分科会の会長を務めさせていただくということでございます。
この分科会では、コロナで分科会が開催できなかったわけですが、昨年7月に「会長談話」というものを発出いたしました。11月には、皆様御参加いただいて建議を取りまとめたわけでございますが、談話、建議の2つで通底しておりますのは、1つは、やはり新型コロナの対応には万全を期すべきであるということ。もう1つは、それに関連して、過度な政府支援は成長の足かせになりかねず、構造改革や生産性向上に前向きに取り組む主体への支援に軸足を移していくべきであるということ。そして、我々は社会保障の持続可能性を高める改革を着実に進めてきた、こうしたメッセージを発出いたしました。
新型コロナ対応によって債務残高が増大したこと、そして御案内のとおり少子高齢化という構造的な課題、特に来年から団塊の世代が後期高齢者となるといったことを踏まえますと、経済構造の転換による生産性向上、そして社会保障の受益と負担のアンバランスの是正、これはますます重要な論点となってまいります。先ほど麻生大臣も御出席されましたが、国民の皆様に耳が痛いことも、日本の将来のために必要なことは勇気を持ってきちんと提言する、日本経済と財政が抱える構造的な課題にしっかりと切り込んでいく。今後のあるべき姿と道しるべを我々が示していく、そうした財政制度等審議会の使命を果たすべく、私自身も引き続き先頭に立って取り組んでまいりたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。
当分科会の会長代理でございますが、会長代理には増田委員に御就任いただきたいと思います。増田委員、よろしくお願いします。この後の議事運営につきましては、増田会長代理にお願いしたいと思いますので、増田委員、よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕はい、謹んでお引き受けいたします。
〔有利調査課長〕ありがとうございます。増田委員におかれましては、分科会長代理席にお移りいただければと存じます。
(増田委員、分科会長代理席へ移動)
〔有利調査課長〕分科会長と分科会長代理が決まりましたので、ここからは増田分科会長代理に議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕改めまして増田でございます。円滑な議事運営に努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
早速でございますが、本日の議事に入ります。
まず、部会の設置についてお諮りいたしたいと思います。初めに、榊原会長から御発言をお願いいたします。
〔榊原分科会長〕それでは、私から部会設置について御提案申し上げたいと思います。
資料2でございますが、これまでと同様、引き続き法制・公会計部会、及び歳出改革部会を設置することを御提案したいと思います。その上で、建議につきましては、歳出改革部会での議論を踏まえまして当財政制度分科会において取りまとめると、そうした形を考えております。どうかよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
ただいまの件につきまして、御異議ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
〔増田分科会長代理〕それでは、御異議ないようですので、歳出改革部会、及び法制・公会計部会を設置することにさせていただきます。
続きまして、部会に属すべき委員、及び部会長の指名を行いたいと思います。これにつきましては、財政制度等審議会令によりまして分科会長が指名することとされております。榊原分科会長から、部会に属すべき委員、及び部会長の御指名をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
〔榊原分科会長〕歳出改革部会、法制・公会計部会に属すべき委員につきましては、お手元の資料3-1、資料3-2の部会所属委員名簿(案)のとおりとしたいと思います。
そして、歳出改革部会の部会長は増田委員にお願いしたいと思います。それから、法制・公会計部会の部会長は藤谷委員にお願いをしたく存じます。
以上、私から提案申し上げます。
〔増田分科会長代理〕それでは、ただいまの件、御異議ございますか。よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
〔増田分科会長代理〕それでは、御異議がないようですので、そのように決定をさせていただきます。
歳出改革部会については、御指名をいただきましたので、私が引き続き部会長を務めますので、よろしくお願いいたします。
なお、歳出改革部会の運営について、これまでの運用に引き続き、部会委員に属しておられない財政制度分科会委員の方も、御希望がございますればオブザーバーとして御参加いただけるという形を取りたいと考えております。よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔増田分科会長代理〕それでは、従来どおりの形で、オブザーバーとしての御参加もいただくということで、御希望がある場合にはそうした形にいたします。
それから、お手元の資料1から資料3のとおり、当審議会の議事規則等をお配りしておりますので、こちらは後ほど御確認いただければと思います。
続きまして、財政総論の審議に移りたいと思います。こちら資料がございますが、始めに有利調査課長から、その資料に基づきまして御説明をお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
〔有利調査課長〕有利でございます。よろしくお願いいたします。
財政制度分科会では、毎年春、中長期を含む財政の在り方につきまして、骨太の方針の策定も見据えまして建議を取りまとめていただいております。来週以降、各分野の御議論をいただく予定としておりますが、今日は総論の御議論をいただくために説明資料を準備いたしました。お手元の資料4、財政総論を御覧いただければと思います。今日は、新型コロナの政策対応と経済状況、それから骨太2021に向けてという2つに分けて御説明したいと思います。
まず、1枚おめくりいただいて2ページ目、新型コロナの対応についてでございます。一番下ですが、1次補正、2次補正で一律に行っていた給付をやめて、3次補正、3年度予算では経済構造の転換に資する形に変えていったことが一番のポイントでございます。
1枚おめくりいただきまして、3ページです。左側は、民間エコノミストの予測でございますが、来年1-3月期に実質GDPはコロナ前の水準に戻るとされております。ただし、右側のグラフ、緑の線の新規陽性者数でございますが、直近でリバウンドしておりまして、感染動向と経済への影響をより注視していく必要があると思います。
次に、4ページでございます。政策対応の効果もございまして、青い線のリーマンのときと比べて赤い線の今回のコロナですが、倒産件数、失業率とも相当抑えられておりまして、企業の生産能力、供給能力は維持されているということでございます。
続きまして、5ページでございます。雇用者数は、非正規労働者が減少して、それが失業にも結びついておりまして、政府の緊急支援策の着実な執行が求められている状況でございます。
現金給与総額、右側のグラフですが、青いリーマン時と比べて、特に点線の所定内給与を中心に底堅い動きになってございます。
6ページでございます。家計部門をマクロで見た場合、リーマンのときは可処分所得と消費支出が両方、並行して落ちていったわけでございますが、今回のコロナにおきましては、特別定額給付金もありまして、可処分所得は急増した反面、消費支出は感染防止のための外出や旅行等の抑制で大きく減少しまして、リーマンと比べて大幅に家計の現預金が増加した状況です。経済活動が戻れば、こうした貯蓄が経済を下支えすることが期待されるということです。
次の7ページでございます。左側のグラフ、これはミクロレベルでの家計調査、各勤労者世帯の消費動向ですが、これでも先ほどと同じ傾向が見てとれるところでございます。
8ページ目でございます。輸出、鉱工業生産は、リーマンのときよりも今回のほうが底が浅く、戻りも早い状況になっております。
9ページの企業収益も、同様の傾向でございます。ただ、運輸、宿泊、飲食、旅行業を含む生活関連、この辺りは連続して赤転したままでございまして、業種ごとに大きなばらつきが見られております。
10ページでございます。企業の設備投資ですが、持ち直しの動きが見られる一方で、企業の現預金についてもまた大きく伸びている状況でございます。
11ページでございます。コロナ前までの状況を見ておりますが、諸外国に比べて、家計、企業とも、対GDP比で現預金を多く持っている状況となっております。
続きまして、12ページです。3次補正を中心に、経済構造の転換に向けてグリーンなどの基金を創設しました。ただ、予算をつけて終わりということではなくて、生産性向上に資するのか、民間資金をちゃんと巻き込めているかといった執行管理と評価が極めて重要ということでございます。
今までの資料を総じて申し上げれば、経済への供給能力が維持される中、感染が抑制されて民需が回復すれば、おのずと財政出動は不要になってくるということでございます。特に基金などによって、既に将来の成長に向けても財政上、様々、手当て済みでございまして、むしろその執行管理が重要になるということを申し上げられればと思って、資料を作った次第でございます。
続きまして、2.骨太2021に向けてというところを御覧ください。
1ページおめくりいただきまして、14ページでございます。こちら、骨太2018の記述をまとめたものでございます。2025年度のプライマリーバランス黒字化目標のほかに、2019年度から21年度の予算編成について、社会保障、非社会保障、地方歳出の目安というものを定めておりました。これは2021年度の予算編成まででございますので、今度の骨太2021では2022年度、すなわち来年度予算編成以降のこうした方針を定めることが必要になっているということでございます。
15ページ目でございます。中長期試算ですが、右側のグラフですが、これまで同様の歳出改革を続ける場合、黒字化は、もともと2029年度となっているものが26年度と3年程度の前倒しが視野に入ってくると、そうした見通しが示されております。これまで同様の歳出改革と申し上げましたが、16ページでこれまでの財政健全化の取組を示しておりますが、骨太2015、骨太2018で行ってきました歳出の目安が歳出改革の中心でございます。
次の17ページに行っていただきますが、その歳出の目安の成果を図示、分解して示したものです。ここでは、一番左の目安導入前の2015年度当初予算、左から2番目のコロナ前の2020年度当初予算の2つの縦棒を比較しております。目安の外側の要因、すなわち歳入要因や社会保障・税一体改革の要因、それから臨時・特別の措置の要因、真ん中の灰色の②③④を除いた①の歳出要因だけを見てみると、社会保障については5年間で2.4兆円の増、ピンク色で塗っているところです。それから、単純合計でいくと、社会保障は伸びを0.7兆円抑制しております。非社会保障の分野は、5年間で0.2兆円弱の伸びに抑制しておりますし、地方交付税等も、緑のところですが、一般財源同額ルールの下で0.3兆円の伸びに抑制しております。このように、歳出の目安は歳出抑制に一定の成果をもたらしておりまして、引き続き続けていく必要があると考えております。
18ページでございます。団塊の世代が2022年以降、後期高齢者になって社会保障の増加圧力は増えていくということを示しております。
続きまして、19ページでございます。これは国債の発行額です。新規国債だけではなく借換債も含めた国債発行総額について、特に市中発行額の金額、黒い線のところですが、2013年度以降、当初予算で新規国債の減を行ってきました。これは、借換債の長期化も容易にしておりまして、市中発行額の更なる減少をもたらしております。一方で、2020年度の国債の大増発と、2021年度にまた短期債の大規模な借換えが参りまして、市中発行額の減少、それから借換債の長期化はかつてなく求められている状況でございまして、そのためには新規国債、この緑色の部分を抑制していくことが重要であるということでございます。
20ページでございます。金利が1%上昇した場合の利払費の試算でございますが、毎年1兆円ずつ津波のようにせり上がっていくことになります。それに加えて、コロナ対応で短期国債を増加させた影響が赤い矢印のようにまた出ておりまして、更に津波の高さが高まると、そうした結果になってございます。
続きまして、21ページです。最近の諸外国の財政をめぐる動きでございますが、米国では2兆ドルの雇用計画をバイデン大統領がこの前、演説で発表しましたが、これについて法人税率の引上げ等で財源確保をするとのことです。英国は、財政再建に向けた措置として法人税率の引上げを行い、ドイツは、超過借入れについて20年間の償還計画を公表しました。フランスは、首相の諮問委員会が歳出抑制による財政再建を提言しています。EUは、7,500億ユーロの基金のためにEU共通債券を発行すると言っていますが、この償還財源を検討することになっておりまして、財政再建について考え始めている状態にあると思っております。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ただいまの説明についての御意見は、次の議題と併せて頂戴することといたします。
引き続き、前回の3月18日に土居委員から、中長期試算の試算期間後の公債等残高対GDP比について点検すべきではないかとの御発言がございました。この点につきまして事務局と相談いたしまして、土井委員が別の場でも試算されたことがあるということでございましたので、議論の素材ということで土居委員からその結果を御説明していただければと思います。
土居委員、どうぞよろしくお願いいたします。
〔土居委員〕御紹介ありがとうございます。
今、お話がございましたように、過去に私が試算をしたことがあることと、直近でも自民党の財政再建推進本部で、中長期試算の試算期間後の公債等残高対GDPの推移がどうなるかということについて、報告をしてもらいたいという御依頼がございましたものですから、併せて本分科会でも議論の素材として御利用いただければ、私としても役に立つということで有難いと思います。
お手元の資料5-1と資料5-2に沿いまして、ご報告いたしますが、問題意識として、最初に資料5-2の1ページ目を御覧いただきたいと思います。1ページ目の一番下の図は、内閣府が中長期試算という形で出している公債等残高対GDP比です。確かに、コロナの影響で一時的に大きく対GDP比が上がりましたが、成長実現ケースでは、赤い点線のように2030年度に向けてどんどん下がっていく構図になっていて、苛烈な財政健全化をしなくても公債等残高対GDP比が下がっていくということだから、何も心配ないというような声を聞くこともあります。しかし、ベースラインケースですと、必ずしもそうではないということで、2030年度以降どういうようになるのかは、さすがに内閣府としても責任を持って試算することができないので、研究者という立場で、その試算の延長推計をしたということでございます。
ここからは、資料5-1に沿ってお話を続けます。
1ページ目ですが、試算の前提ということで、成長実現ケースとベースラインケースの2つだけですと、2つの上の方と下の方しかないということになると、間はどうなのかというようなお声もございますから、少しケースを増やしまして、成長実現寄りケースとベースライン寄りケースを間に挟みまして3等分するような形になります。成長実現ケースとベースラインケースは、先ほどの内閣府の試算と全く同じで、かつ2031年度以降は2030年度の名目成長率がそのまま推移します。もちろん、こんな一定になる経済が実現するとは思いませんが、中長期的に平均するとこのような名目成長率であると捉えていただければ、この線の前後で若干振れますが、中長期的にはこの値であると、こうしたように御覧いただければと思います。
それに連動して、右側の基礎的財政収支対GDP比は、当然のことながら経済成長が促されると、それだけ税収が多くなるので基礎的財政収支も改善するということで、内閣府が示しておりますが、成長実現ケースでは2030年度には対GDPで0.1%の黒字になるが、ベースラインケースでは赤字が1.6%の対GDP比になるということですので、その間を取って中間のケースはこのような形に表されております。
それを踏まえまして、2ページでございます。ここからが点検ということになります。計算の詳細は、資料5-2の一番後ろのページに載っておりますが、もうこの図を御覧いただくだけで、端的に何が起こっているかがお分かりいただけるかと思います。
簡単に申しますと、成長率が高くて名目金利が低ければ、利払いがかさまない割には税収がたくさん増えるということで、まさに冒頭申し上げた、成長実現ケースにおいて公債等残高対GDP比がどんどん右に下がっていく姿になります。2ページは、成長実現ケースで、2030年度以降、名目成長率3.2%が中長期的に平均してずっと続くと、名目金利が成長率よりも0.5%ないし1%高いと、2030年度代半ばに対GDPが反転上昇します。それよりも名目金利が低ければ、引き続き下がっていくということです。
ただ、2ページ目の右側に2025年度から金利上昇という形で、つまり、何が申し上げたいかというと、実は内閣府が試算上置いている金融政策の反応は、専門用語ではテイラールールと呼んでいますが、1986年以降の金融政策を踏まえた想定ということになっております。1986年以降といいますと、まさにバブルが80年代後半に起きて、その後、90年代初頭に利上げをしますが、その利上げがややもするとバブルを助長したような形で、遅れた金利上昇だったのではないかと評されることもあります。そうしたことだけが実は反映されていて、90年代以降、バブル崩壊直前の利上げ以降は、1%の金利を超えるような利上げはしていない。そうした想定を反映した内閣府の試算になっているということが考えられるわけです。
端的に申しますと、利上げをすることはあるかもしれないが、試算上はややもすると遅れ気味な利上げになるということが考えられますので、そうではないケースということで、右側の2025年度から金利上昇と言っているのは、物価が上がればそれに即応する形で金利を上げるということがもし起こった場合に、どのようなことになるかということで試算をしております。基本的には、左側のものと同じく金利のほうが低い、ないしは金利と成長率は同じ値である場合は右下がりですが、名目金利のほうが0.5%高い、ないしは1%高い場合は、むしろ反転上昇が成長実現ケースでも起こるということです。
以下、同様に3ページ目は成長実現寄りケースで、これになりますと、名目成長率と金利が同じ値であっても反転上昇することになりまして、4枚目のスライドはベースライン寄りケース、これは2030年度以降1.7%という名目成長率を想定しているのですが、そのときには実は全てのケースで公債残高対GDP比が反転上昇するケースになっていて、名目成長率が1.7%よりも低くなると公債等残高対GDP比は2030年代にはむしろ反転上昇します。5ページのベースラインケースは、推して知るべしというところでございます。
6枚目のスライドは、今は対GDP比の話をいたしましたが、今度は利払費で、2020年度で9.4兆円と内閣府の試算では示しております。これが今後どうなるかということですが、当然ながら経済成長率が高まるにつれて金利が上がることと連動して、利払費も増大してまいります。残高が多いことが影響して、2030年代になりますと20兆円という金額を超えてくるということでございます。念のため申しますと、2020年度は9.4兆円という利払費だったわけですが、それが20兆円を超えてくるような状況で、財政硬直化が懸念されるところでございます。
7ページはベースラインケースですが、ほぼ同様の結果ということで、次に参ります。
8枚目のスライドですが、公債等残高対GDP比、先ほど申し上げたようなことになるという試算結果ですが、これまでの中長期試算で示された成長実現ケースと実績値の比較をいたしております。2016年度から2019年度、実績値が出ておりますが、これを御覧いただきますと、内閣府の中長期試算で、成長実現ケースでは右下がりになると言いながら、実績値はこれまで残念ながら着実に上昇していることになっておりまして、今後も捕らぬ狸の皮算用にならないように財政健全化が必要ということかと思います。
最後に、名目成長率と金利の関係です。先ほど申し上げましたように、名目金利の方が高くなるといったところで、金利は上昇しないではないかとお叱りを受けることもございますので、金利と成長率の差は1%とか0.5%というあまり大きく差が開かないケースで申し上げておりましたが、実績値として1980年から2020年まで御覧いただくと、日本の場合は71%の年において名目金利のほうが高い、G7諸国では66%の年や国で名目成長率のほうが高いというような実績値になっていることを踏まえると、公債等残高対GDP比が下がるということはそんなに楽観視できないのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
今日はキックオフということですので、財政総論の資料と、土居委員から大変興味深い報告をしていただきました。
以降、いつものように御意見がございましたら御発言いただきたいと思いますが、会場に来ていらっしゃる皆様方はネームプレートを立てていただいて、テレビ会議システムの場合には「挙手する」ボタンのクリックで合図をしていただくことにいたします。
会場の皆様方から先に指名をするということでございますが、御出席いただいている皆様方もかなりの人数になりますので、御発言は可能な限り手短にということでお願いします。一応、今日の全体会議、事務的なめどとすると、大体10時半をめどに終わらせたいと思っております。御発言が多ければ、もちろん少し延長いたしますが、そのくらいで考えております。
それでは、これより御発言をお願いいたしたいと思います。会場の方は、左側の大槻委員から順に指名をしていきますので、どうぞ大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
御説明ありがとうございました。最初、麻生大臣からもありましたが、コロナについては全体として、当初、懸念されていたほどの影響がなかったということについては、財政、金融政策の力を大いに感じた次第で、ここまでのアウトカムベースでは相応に奏功したのではないかという感じで見ています。ただ、やはりここからステージが変わると思っています。今、土居委員からお話しいただいたことを加味しても、名目でどう成長していくかということが鍵であると思います。やはり今回の予算等を見ましても、13ページでもいただいているように、今のところ、様々、成長分野に気を遣って、新しいことを取り入れていただいているということではありますが、そもそも何をもって成果とするかが見えにくいということもあります。そうした意味でも今後の執行をしっかりと見ていっていただきたいです。
特に、中小企業等事業再構築促進基金については、もちろん中小企業の方々に対して一層の成長を図っていただくということで支援していくことは極めて重要であるとは思いますが、今まで同様、厳しいから助けてあげるというだけでなく、そこから1つステージ、見方を変えて、成長を目指していける支援をお願いしたく思います。
それから、ここでは企業単位、大学単位での支援ということで予算していただいていますが、一方で働き方がここ数年でこれだけ大きく変わって、それがコロナで一層助長されている可能性がある中で、フリーランスの方々等に対しても、日本全体での成長を図っていけるような、財政の後押しが考えられるようにしていければと思った次第です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、続いて佐藤委員ですが、恐縮ですが、全体的には少し手短にお願いします。どうぞ。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。では、手短に。
まず、非常時の対応についてです。資料でいただいた今年度予算、17ページで見るとコロナ予備費が5兆円と少し少ない、予備費として5兆円は多いですが、実際問題として今年は15か月予算であって、第3次補正予算でコロナ対応をしていますので、これは国民の皆様に対する見せ方でもありますが、実は5兆円だけではなくて第3次補正予算を組んでいて、国としてはちゃんとコロナ対策をしているのであるという姿を見せたほうがよいということです。それに関わりますが、先ほど基金の執行管理の話がありましたが、基金も含めて、やはりコロナ対応をした第1次から第3次補正予算の執行管理もきちんと行って、その政策評価をしていくことが必要かと思います。
また、私が若干気になったのは、今のところ失業や廃業は少ないと言いますが、恐らく、これは政策で支えられているだけであって、政策が終わった後、どうなるか分かりません。これは、実は阪神・淡路大震災や東日本大震災でも起きたことですので、実際この後どうなるかということはかなり注意して見なければいけないと思いました。
2つ目ですが、2025年度に向けて、やはりプライマリーバランスの黒字化という旗を下ろすべきではありません。ただ、税収の先行きがなかなか見通せないということでは、取りあえず歳出抑制に軸を置いて、2025年度、仮に経済が平時に戻ったら恐らくバランスするだろうという見通しを立てていくべきなのではないかと思います。歳出抑制に少し軸を置く必要があると思いました。
また、やはり財審なので最後に一言だけ申し上げますが、今回、コロナで赤字国債を大量に発行していますが、これをどうするのかという話は考えなくてはなりません。グリーン化の話があるので、やはり炭素税と組み合わせて償還財源を確保するか、世代間で偏りがあるならば金融資産を念頭に償還財源を確保するか、いずれにせよ、この議論はしないといけないと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕
事務局、土居委員におかれましては、本日は貴重な御説明をいただきまして、ありがとうございます。私からは、経済政策の観点で2点、財政の中長期試算に関し1点、意見を申し上げます。
1点目ですが、感染状況を見ていますと、引き続きコロナへの万全な対策は必要であると思いますが、給付・支援という観点では、真に困った方への支援に集中すべきと考えます。当社が行いましたアンケート調査では、調査対象世帯のうち65%は世帯収入が不変もしくは増加と回答しています。一方で、50%以上も世帯収入が減った方は1割程度いらっしゃいました。この差が大きいことを踏まえると、真に困った方のみに支援を集中していくことが大切と考えます。
2点目は、構造改革の方向に転換を促していくという考え方に賛成でございます。その下で、グリーンイノベーション、デジタルについて基金を積んだということでございますが、資料にもございましたが、執行管理と評価が大切と思います。予算は積んだものの、それが真に必要な政策に使われていくのか。グリーンイノベーションについても、デジタルトランスフォーメーションにしても、社会実装がしっかり進められることが重要ですので、その点の評価をしていく必要があると考えます。
3点目でございますが、本日、土居委員に御提示いただきました中長期の試算は、私は非常に意義があると感じております。未来に対して責任を持って財政運営を担っていくためには、中長期を見据えた議論が我々としても必要なのではないかと考えます。本日は、金利と成長率という組合せで分かりやすく御提示いただいたわけですが、人口構造の変化も、2050年を展望して見据えていく必要があると考えます。弊社内でも試算しておりますが、家計の金融資産と政府の債務残高が2040年代には逆転していく可能性もございますので、その点を見据えた議論も必要と考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
今、コロナの中で困っている人がいるのに、財政を絞ることを考えるなんてとんでもないというような声も聞きますが、逆にちゃんと議論をしているということが一般の人に安心感を与える部分もあると思います。若い人が貯蓄率を増やしているのは、明らかにこのままでいけるわけがないと思っている証拠であると思うので、ちゃんとその先のことも私たちは考えているということを示す必要があると思います。
その中で、財審の発信として、お金を絞るとか抑えるということだけではなくて、こうしたところに、このように効果的にお金を使うから未来は明るいと、そうした前向きな側面も出していくことがよいのではないかと思います。それから、発信の仕方も、今、メディアも変わっていますので、私は個人的に新聞やテレビで財審のニュースがどんどん減っていることに非常にじくじたる思いがありますが、今はマスのところだけでなく、それぞれのターゲットに向けた丁寧な発信も必要ではないかと思います。例えば、MMTに関しては、一般の人には難し過ぎますが、逆にプロの人たちに対してはまだ財務省の発信が足りないというような声もありますので、ターゲットを分けて発信していくことが必要ではないかと思います。
コロナで、まさに国民は、今まで変わりたくなかったことも変わらざるを得ないという覚悟をある程度して、そして、今、変わってきているタイミングであると思います。苦しくても変わらなければいけない部分に関して、今、発信していくということが大事ではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、安永委員、どうぞお願いします。
〔安永委員〕ありがとうございます。
成長戦略ということで2点、デジタル化とグリーン化についてお話しさせていただきたいと思います。
デジタル化に関しては、もう皆様お感じのとおり、このコロナ禍で一気に進展した感じがあります。これに伴って考えなければいけないことは、データ活用による利便性の向上ですとか、サービスの充実、スピード感の向上という面もありますが、コストの削減も考えなければなりません。我々の現場ではデジタル化によって相当なコストの削減ができております。これが国単位、地方自治体単位で本当に起こってきているのか。デジタル庁の創設によって様々な仕組みができると良いですが、それに伴って、利便性の向上とともにコストの削減ができているのかどうかということは、ぜひトレースしていく必要があろうかと思っています。
もう1つはグリーン化の部分で、グリーン化はもう世界中で後戻りのない方向に動いているということを実感していますが、残念ながらアメリカやヨーロッパに比べて日本の予算はまだ少ないということが実態です。ただ、ここで気をつけなければいけないことは、日本は社会実装をする機会が、欧米に比べてやはり少ないということです。残念ながら日本は、地理的条件、自然条件がヨーロッパやアメリカに比べれば劣っています。人口密度が高い国で、自然エネルギーを利用する場がなかなかないということが実情です。
したがって、日本はやはり技術を磨いて、イノベーションを起こして、それによって社会実装する場を世界に求めていく、これぐらいの覚悟を持ってやっていかないと、日本自身の温室効果ガス削減の貢献にもつながらないですし、また、逆に日本だけでそれを起こすのではなくて、世界にその場を求めていくことが重要であると思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、秋池委員、お願いします。
〔秋池委員〕業種別の経常利益をお示しいただきました。コロナの影響で変化がマイナスであったところもあろうかと思いますが、コロナと関係なく、元来ある傾向といたしまして、価値にふさわしい値付けができていない企業もあろうかと思います。したがいまして、この見方について見誤らないようにというか、日本企業の多くが適正な値付けができるような経営をされていくことも含めて、動きがあると良いかと思いました。
それから、もう1つはプライマリーバランス黒字化ということですが、資料を見ていますと、兆円単位の規模のお金にすっかり目が慣れてきてしまうのですが、消費税1%分が約2.7兆円にあたると考えましたときに、やはり今後のプライマリーバランス黒字化に向けて、こうしたものをどういうように直して、歳出、歳入をどのように見直していくかということについて、この場でも深く議論ができればと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、雨宮委員、どうぞお願いします。
〔雨宮委員〕長期的な試算の関係で金利の話がありましたので、2点だけ補足いたします。
まず、我々、金融政策当局として、あくまで金利については、その時々の経済、物価情勢にふさわしい金利が成立するように金融政策を行うということですので、その結果として、先ほど御指摘のあったような成長率の関係でどういう金利が成立するかということは事前には分かりません。この間、財政運営で大変苦労しておられる皆様の前では少し恐縮ですが、少なくとも金利設定、金融政策の運営、あるいは金利水準を考えるときに、あくまで経済、物価情勢に応じてということがポイントですので、財政事情を勘案するということは基本的には適切ではないということが1つ目です。
それから、これも土居委員から御指摘がありましたが、この間に我々が幾ら金融緩和をしても、あるいは景気がよくなっても、物価も上がりにくいし、金利もなかなか上がらないという状況を世界に先駆けて日本は経験してきて、日本化というような議論もあるわけですが、実は最近、少し待てよという議論も起き出しています。2つぐらいあると思いますが、1つはアメリカで、巨額な財政支出を受けて少しインフレのようなリスクもあるのではないかという指摘が、例えばサマーズとかブランシャールという学者が言い出しています。もう1つは、そうした短期的な財政運営とは別に、世界的な構造、この30年のディスインフレ、あるいはデフレへの構造が、デモグラフィックな要因によって変わりつつあるのではないかという指摘です。これは、イギリスのグッドハートという学者が、最近、『The Great Demographic Reversal』という本を出して、一部で議論になっています。現段階で当否を結論づけるのは尚早であるとは思いますが、我々が大分慣れてきてしまった、物価が上がりにくい、金利も上がらないというレジームに対して、そうした議論も起き始めているということは御指摘しておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。最初に、土居委員がお示しくださった試算について、財政がどれほど大変かということを示す上で大変意義深いというか、このグラフはやはり皆様に非常に分かりやすいと思いますので、ぜひぜひ春の建議の中でも可能であればこうしたところも盛り込んで、国民向けに説明していくのが良いと思います。2つのケースだけでは、と土居委員はおっしゃって、もちろん2030年に先に延ばすことはとても大事ですし、ケースも4つに増やしてくださり、それから金利の前提も、今さらテイラールールではないのではないかという気がしますが、ちゃんとこうやって置いてくださるとどれだけ違うかが皆様によく分かると思いますので、ぜひお願いできればと思います。
また、今日の御説明について、総論で1点、各論で1点、意見がございます。
総論については、現下の経済情勢について、リーマン時との比較を非常に分かりやすくお示しくださいました。もちろん、やはり今のいろいろな対策の効果があって何とか持ちこたえているところはあると思いますが、絶対的な水準を比較すると、例えば4ページの雇用調整とかですが、リーマン時とやはり少し差があります。ですから、大変なことは間違いないですが、例えば生産年齢人口の問題であるとか、当時と今は違う部分がやはりあります。それから、業種別の影響で見ても、全ての業界が一律に駄目ということではありません。今、絶好調の企業、セクターもあるわけですし、やはりそうしたところで冷静にいろいろ情勢を見極めた上で、危機モード一辺倒だけではなくて、今後の成長につなげる上でも、何でも支援ということばかりではなくて、やはりできるだけ危機から脱却する方向に向かっていくべきなのではないかと思います。
もう1点、各論では、御説明くださいました12ページのところです。執行管理が重要な基金で、とりわけ大学ファンドです。これは、運用するところに対して一般会計から出資するという話で、そんなことをやってよいのかしらと私は感じました。先日、有利課長に伺ったときも、なかなか例がない話ということのようですが、これまた財投から出るのも驚くべき話で、この話は財投分科会でしっかりとフォローされるとは思いますが、やはりこちらの分科会としても、一般会計から出る以上はきちんと注視していく必要があるだろうと思います。
私はこの分野の国立大学に少し関わっておりまして、いろいろな公表情報、文部科学省のサイトで出ていると思いますが、国立大学で資金の運用をしているところは既にございます。この分野の方々のお話をいろいろ伺っていると、やはり物すごく研究のための資金を欲していらっしゃいます。そうすると、運用の利回りをどこに置くかというときに、この低金利、低成長のときに、こんな目標を置くのかというような目標を平気で置いてこられます。もしかしたら、陰で民間金融機関が何か甘い言葉をささやいているかもしれませんが、やはりそうしたところは冷静に見ていただきたく思います。また、株か債券か、という次元ではなくて、オルタナティブが入ってくるとか、そうしたことが本当にこの運用に見合うのかどうか。この大学ファンドは、国の資金運用ということで、一般会計から出資もしてということで、本当にそれでよいのかどうかという辺り、JSTさんがどうなさるかというところですが、やはり当分科会としてもしっかり注視していく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕木村委員、お願いします。
〔木村委員〕まず、土居委員の御示唆、大変興味深く拝見いたしました。中長期試算ということは、やはり2030年以降のことを本当は知りたい、2030年以降に高齢化がますます進んで、人口もどんどん減っていくので、その中で本当に財政の姿はどうなるかが知りたい点だったので、そうした意味で大変貴重な御示唆であると思いました。
それから、事務局の御説明もありがとうございました。その中で、諸外国の財政動向にも触れられていますが、やはり財源論は日本でも今後、議論が必要になるかと思います。それは、もろちん財政健全化という観点から語られていて、非常に大事なことですが、それとともに、いわゆる所得再分配の観点からの議論もあってもいいかと思っています。コロナでそうした格差の問題が深刻になっていて、実際、格差が広がると経済成長を阻害するというOECDの試算もあります。だから、ポストコロナへ向けたそうした経済の健全な回復のためにも、所得再分配を強めていくことが非常に大事になるのではないかと思っています。確かに、安易な財源確保は歳出改革の機運を下げるので、これは慎まなければなければなりませんが、いずれ、こうした議論が将来的に必要になるということは、財審としてもこれから促していく必要があるのではないかと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林慶一郎委員、お願いします。
〔小林(慶)委員〕私も、土居委員の中長期のビジョンといいますか、問題意識は全く共有するところです。
それで、短期のコロナ対策の話を少し申し上げたいのですが、今、もう第4波が来ようとしていて、このまま医療逼迫などが深刻になれば、また緊急事態宣言というようなことが、本当に数週間とかいうタイムラインのうちに起きてくると思います。そうなれば、やはり経済損失も大きいのは確実なので、やはり経済のためにも、あるいは経済から得る税収という意味で財政のためにも、コロナ感染症を何とか低い感染レベルに収束させていくことは必要だろう、と思います。これは、東京大学の仲田さんや藤井さんのシミュレーション等でも、経済損失を小さくするためにも緊急事態宣言のような状態を何回も繰り返すことは避けなければいけないと、こうしたことが言われているわけです。財政のためにもそれが最適であると、私も思います。
そのときに、これからの対応としては、やはり変異株などで感染力が強まっていて、しかもベースの感染レベルが、例えば去年の春ぐらいは東京で数人とか数十人だったものが、今やベースラインで300、400人ということになっていますから、それを何とか抑え込んでいかなければなりません。そうすると、できれば今、強い行動制限をかけて感染レベルを抑え込んで、そして、今年、ワクチンが普及するまで時間を稼ぐということが最適なシナリオだろうと思います。
ここで問題があるのは、感染症の政策を考えている方たちや感染症の専門家たちは、やはりある種、財政に対する遠慮があって、要するに飲食店などへの協力金であるとか、国民に対する給付金があまり出せないであろうから、遠慮して強い行動制限をかけようと言いません。こうした間違ったというか、行政の誤謬のようなことが起きておりますので、しっかり財政も必要なときは短期的には出し、それが中長期的な財政の健全化のためにもなるというメッセージを明確にすべきです。こうしたメッセージを明確にした上で、感染症対策の政策当局者と協力して、最適な政策を設計すべきなのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。
昨年来、続いておりますCOVID-19、新型コロナウイルス感染症のパンデミック、これは1918年から20年のスペイン風邪以来で、昨年の世界経済成長、今日、IMFから出ましたが、マイナス3.3%ということで、これはリーマンショック時を超えて、1920年代後半から30年代の大恐慌以来のマイナス成長です。今年は、プラス6.0%ということで、これは未曽有、空前絶後の財政出動、米国で言えばビルド・バック・ベタープランに伴って、1.9兆ドルの米国救済計画、今回出ました米国雇用計画、間もなく今月に出ると言われる米国家族計画、これらによって、恐らく、4兆ドルから6兆ドル、場合によってはもっと大きな金額になるかもしれませんが、それで今年の成長率が上がるということです。
ただ、我が国の財政にとってみると、やはりリカバリーできていない部分が確実に存在しております。これは、二極化、格差の拡大とともに、恐らく、出生数が大幅に落ち込みます。世界的な問題でもありますが、海外では、米国の場合は特に死者が増加する、超過死亡数が増えるということで、あまりよいことではないですが、財政に対してはいろいろな影響があります。一方、国内で見ると、出生数が、これは国内にいらっしゃる日本人の場合ですが、昨年は85万人を割ることはもう確実で、今年も恐らく、80万人に近いところまで落ち込む可能性が高いです。そうすると、これはいわゆる2017年の将来推計人口よりも、恐らく、5年以上、出生減が早まっています。このリカバリーはなかなか難しい。これは財政出動ですぐ解決できるような問題ではありません。
つまり、何を申し上げたいかというと、今回の一連の出来事でいろいろ大騒ぎしていますが、恐らく、日本の財政にとってみると、やはり長期的な潜在成長率の低下、また、少子化の問題が重要です。我々はここ数年、将来世代、現役世代の立場に立った財政健全化を訴えていますが、その将来世代はますます減っています。将来世代が減るということは将来世代の負担が大きくなるということです。そこを冷静に訴えることで、やはり財政健全化の必要性を、特に若い方々に、私は今年、来年にかけて訴えていくことが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕伊達委員、お願いします。
〔伊達委員〕ありがとうございます。
ここ数年、言われ続けてきたことは、デジタルと生産性というキーワードでした。これらは、全領域にまたがる非常にファジーなものです。よって、予算等々を見ていきますと、各省庁の中で具体的予算の在り方として明示されてきませんでした。デジタル分野においては、デジタル庁もでき、DXのテーマも出て、大きな動きになってきたかと思います。一方で、生産性については、言われ続けていますが、具体的行動に向かわないことが課題であると思います。
そうした意味で、財政再建をしていくに当たって、企業等であれば、投資をしながらも生産性を上げて、筋肉体質にする戦略を持つように、財政においても、予算活用は投資の一種であり、生産性を上げながらお金は使っていく方針を明確に示すべきだと考えます。
その第1点として、社会保障費について、人数増加比率の増で抑えられたという段階を超えて、品質も上がり、単価も下がっていき、生産性をあげる、つまり、人数以上に社会保障費の予算が抑えられているという目標を立てるべきではないかと思います。
第2点としましては、行政の予算の活用の仕方、そのプロセス自体を見直すことによって生産性は上がる目標を立てる。付加価値を上げていくことで利益が上がっていき生産性が上がっていくという話をされますが、資金を何に使い、業務の何の改善につながるのか、そのやり方によって生産性は変わってきます。したがって、行政の業務プロセス改革において、生産性のキーワードを取り入れるべきだと思います。
第3点としては、産業分野別に、生産性を上げる必要性が指摘されていますが、その域にとどまることが多いようです。まず低い生産性の要因を分析して、何が原因なのか明確にしながら課題を出し、ロードマップを描いていきます。次に、そのための予算を組んでいく、といったように、予算の組み方を変えていく必要性を訴えるべきだと感じます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
先ほどもお話があったとおりで、今年度は新経済・財政再生計画の中間評価を行う年、節目の年です。骨太2021の策定に向けて、これまでの財政運営をしっかり総括した上で、健全化に向けた道筋を取り戻すべきであると思います。そうした観点から、幾つか申し上げたいと思います。
まず1つ目、先ほどの土居委員の中長期の予測、ありがとうございました。大変重要な試算であると思っております。ただ、一方で、先ほど御説明がありました8ページでは、毎年の試算と実績の乖離が相変わらず続いているということでありました。先ほど有利課長から御説明いただいた15ページの中長期の試算でいくと、これまで同様の歳出改革を続ければ2026年度にPB黒字化が視野に入るということですが、こうした楽観的なシナリオの下での試算は極めてミスリーディングであると、私は思っております。
本来であれば、2025年度という黒字化目標があるわけで、その実現のためにはどういう目安を設定して、そのための歳出改革は何なのか。例えば、より現実性が高いと思われるベースラインシナリオに基づく形で、逆算ベースで目標であるとか目安を提示すべきではないか。それを土台として議論をすべきであると思います。
2点目です。1点目とも関係がありますが、これは先ほど17ページで有利課長から御説明があったように3つの目安は機能してきたと私も思います。ただ、例えば、社会保障費の目安による効果は、先ほどの表によると、5柄年間累計で0.7兆円ということです。一方で、補正予算の年間計上額は、2015年から19年まで同じ期間で約15兆円です。ですから、目安を設定したとしても、いかにそれが補正予算による膨張に歯止めをかけていないかということがよく分かります。
実は、2015年に先立つ2014年の経済財政諮問会議では、補正予算も含めて3年間の歳出上限を設定するスウェーデンの予算制度を引き合いにして、効率的な歳出を促す仕組みづくりというものが提唱されたことがあります。したがって、私は、やはり日本でもPB黒字化に向けた制度的な枠組みづくり、この審議会は制度審議会ですが、制度的な枠組みづくりを議論すべきではないかと思います。目安よりも、さらに強力な枠組みが必要であると思います。
3点目、少し色合いは違いますが、国債の発行、消化の話です。これは、どちらかというとこの審議会の守備範囲ではないかもしれませんが、先ほど雨宮委員もおっしゃったように、このところ若干インフレの議論が、特にアメリカを中心に始まっています。それと併せて、長期に及ぶ超金融緩和の副作用と思われるような、市場の綻びであるとか、ひずみを象徴的に表すような現象が最近幾つか起こっています。先々週のアルケゴスがまさにそれですし、それから3月初めのグリーンシルの破綻も記憶に新しいところです。
こうしたところを見ると、これまでの日本の国債の消化が本当にこれからも同じように続くのかということは疑問です。1つは、短期国債への依存度が非常に高い。これは、海外投資家のニーズに支えられているわけで、6割ぐらいを海外投資家が持っているわけですが、これはいずれ長期へのシフトが必要です。ただ、これに関しては、当然、長期、超長期にシフトすれば、年金、保険のニーズはありますが、当然、金利は上がり、利払費は増えます。一方で、5年物へのシフトをやろうと思えば、マイナス金利なので買手はいません。基本的には中銀が買うだけという構造になっています。
かつて、VaRショックのときもそうだったのですが、大量の国債の発行と償還期限の延長、長期化が行われたときには、突発的な金利上昇が起こったことがあります。今の長期緩和の副作用、インフレ、あるいは今申し上げたような構造的な問題を、やはりライアビリティーサイドも考えていかないといけないということです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
最初の緊急事態宣言が発令されて、今日、ちょうど1年目ということでございますが、当面やらなければいけないことはっきりしております。1つは医療体制が崩壊しないようにこれからも支援していくことです。もう1つは、大きな打撃を受けている飲食、観光、交通、中小企業も含めてですが、そうした業界、あるいは女性を中心とした非正規の方々への財政支援、これはやはり当面、続けていかなければならないのではないかと思います。そうした面で、この1年間、いろいろな問題はありますが、おおむね日本はこうした状態が保たれているということは、ある面、財政が十分その機能、役割を果たしてきたということかと、私は思っております。
一方で、これからのポストコロナに向けた構造改革ですが、前にも申し上げたと思いますが、私はグリーンとデジタルとレジリエンスの3本柱かと思っております。グリーンについては、2050年カーボンニュートラルということは本当にもう大変チャレンジングなことをこれからやろうとしているわけです。2兆円基金は菅総理の本当に大英断であると思いますが、先ほど安永委員からも話がありましたが、恐らく欧米と比べますと2桁ぐらい違うというか、そのぐらいかかると言われております。そうなると、この2兆円基金を呼び水にして、どうやったら官民一体で取り組めるようなスキームをつくっていくのかということは、非常に大事になってくるのではないかと思っております。
それから、デジタルについては、もう皆様おっしゃるとおりコロナで一挙に進みましたので、これはもうぜひ進めていただきたいと思います。
もう1つ、レジリエンスですが、先日、地震の確率予想が一段と上がりました。これは、いつ来るか分かりませんが、絶対来ることは間違いないわけですので、そうした面でインフラの整備とか、あるいは一極集中の抑制とか、そうしたものはこれからも続けていかなければならないし、大変なことですが、この課題も非常に重要ではないかと思います。
こうして見ると、財政の健全化は非常に厳しい状況ですが、この旗を下ろしてしまいますともっと大変になりますので、ぜひ財政の健全化という旗はこれからも高く掲げていかなければならないと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕ありがとうございます。
今日、土居委員の分析で反転上昇ということが何度も出てきて、これからさらに人口動態が厳しくなるときに反転上昇なのかということと、さらに雨宮委員から、金利も物価もいつまでも低いということではないかもしれないという議論が、最近、出ているということで、財政赤字問題も今後、数十年にわたって日本に重くのしかかる問題であるという認識を新たにしました。ただ、足元では、皆様おっしゃっているように、飲食店支援ですとか、ベッド1床当たりの補助金ですとか、お金のかかるものはかかるということは、歳出は必要であると思いますが、一方で、今年はこれがかかるから、これは我慢しようとか、スクラップ・アンド・ビルドということはもっときちんと各部署、各省が自覚して政府全体でやっていく必要があると思いました。
そして、私が気になりましたことは、先ほど平野委員からもありましたが、これは財政総論の参考資料22ページの棒グラフにありますが、リーマンよりコロナの方が割引短期国債の市中発行比率が増えているということです。これは海外投資家の保有率が高いということで、今まで日本国内で売ったり買ったりしている分には、言わば国が借金しても国民全体で考えると右手から左手に借金しているようなものでしたが、やはり海外投資家の保有比率が増えるということは深刻な問題で、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、最後は返すという姿勢を示すことが大事ということです。
私は、財源の問題も、東日本大震災のとき、今、確定申告で所得税を納めるときにもプラス2.1%とか意識させられて、まだまだ払っていくというようなことをやっていますが、コロナに関してもそうしたことを考えなくていいのかということが1つあります。また、アメリカが先立っての2兆ドル規模の財政出動計画のときに、財源として法人税率の引上げという、これはまた共和党が激しく反対すると思いますが、少なくとも政府はそうした姿勢を示しました。イエレン財務長官が直近に国際的に法人税引下げ競争のようなことにならないようにという議論も提起していますが、日本も、消費税引上げは到底無理な状況ですが、こうしたときに法人税の引上げを、国際的にそうしたトレンドの中で考えなくてよいのかということも、今後の財政健全化に向けて少し考慮していっていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕会場のほうは以上といたします。
オンラインで発言希望のある方は、赤井委員、神津委員、上村委員、熊谷委員、冨田委員、福田委員と以上6名です。それでは赤井委員から御発言をお願いします。
〔赤井委員〕2点だけ簡単にいたします。
まず、資料の12ページにあるように、コロナ禍での支出、地方自治体での歳出も含めると思いますが、それとポストコロナでたくさんの基金等のいろいろな取組はすばらしいと思います。しかし、異例な大学ファンドの在り方とか、そうしたものもあったので、しっかり事後評価を行ってPDCAを回していくべきかと思います。今後、またこうしたようなパンデミックが起きたときにも、その評価をしておくことは重要かと思います。
そして、第2点ですが、15ページにあるように、今後、健全化していくということで、経済成長すればいいですが、やはりそこにもリスクがあります。経済成長に頼るのではなくて、まずは歳出の効率化で、歳出の効果を最大化していくことが良いかと思います。それとともに、やはり税構造の改革も軸に健全化を進めるべきであると思います。コロナが落ち着いてくれば、PBはある程度戻ると思いますが、ストック面で傷んでいる部分もありますし、恒常的な財政赤字の部分は少し別枠にして再建を考えるべきであると思います。コロナで傷んだ部分は、命を守るために支出したわけですから、命が守られたということで、今後、しっかりと負担いただくという覚悟で、長期的でもいいので、少し別枠の復興特別税と同じような形で、コロナ禍でも所得が安定していた人を中心に追加で御負担いただくという案を、コロナの出口とともに検討していくべきであると思います。額が大きいので、やはり何十年とかかると思いますが、そうしたものを財政支援とは別に、しっかり国民に御負担いただくということを明示していくべきかと思います。
恒常的な財政赤字分は、やはり高齢化による社会保障負担が今後もかかりますので、その説明とともに負担の在り方、それを税制の改革も含めて行っていくべきであると思います。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神津委員、お願いします。
〔神津委員〕ありがとうございます。論点を2つに絞り込んで申し上げたいと思います。
まず、雇用の問題です。コロナ禍が依然として続いているわけでありまして、そうした中で見かけ上の失業率を低く抑えられているのは、雇用調整助成金の政策効果によるところが大きいです。しかし、これまでにも申し述べておりますが、雇用調整助成金の財源の2事業を含めた雇用保険特別会計の積立金が底をついています。今後も続く雇用、失業情勢の変化に備える観点からも、財源の確保が焦眉の問題となっています。緊急的にも、また本則との関係でも、一般財源の投入は不可避と言わざるを得ないと思います。また、フリーランスなど曖昧な雇用で働く人々のセーフティーネットの欠如、こうしたコロナ禍で露呈した社会の脆弱性の解消、これも待ったなしの課題でありまして、雇用保険でカバーされない方々に向けた政策が不可欠です。
一方で、こうした助成金や給付だけを続けるということでは、ある意味、矛盾が拡大するばかりであると言わざるを得ません。やはり失業なき労働移動のスキームを確立する必要があると思います。コロナ禍による影響は産業によって大きく分かれています。また、今後のデジタル化、あるいは脱炭素化での産業構造の変化も見据えるとすれば、失業なき労働移動の促進がこれらの対応で最大のポイントであると思います。
その際に重要なことは、セーフティーネットの担保です。一般財源によって、生活支援、それから教育、職業訓練を拡充するとともに、再就職支援など労働市場全体をカバーするマッチングのシステムを整備する必要があります。また、雇用の公正な移行を進めていくべきです。これは、先進国各国が競って進めてきていることでもあります。そして、税と社会保険料の稼ぎ手を将来にわたって確保、拡大できるか否か、そうした問題であるということも申し上げておきたいと思います。
もう1つですが、税・財政一体の改革についてです。足元の財政支出は不可欠ですが、その一方で、持続可能な社会を将来世代に引き継ぐために、財政の健全性確保が重要であることは論を待たないと思います。安易な補正予算は避けて、限られた予算の中で支出の有効性を高める、めり張りをつけるということはもとより、税の抜本改革による財源確保と一体で課題解決を図っていく必要があります。そのためにも、中長期的な財政運営の客観的評価と監視を行う、内閣から独立した機関の設置が必要であるということも改めて申し述べておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕上村委員、お願いします。
〔上村委員〕関西学院大学の上村です。
事務局の資料について簡単にコメントします。第1に、今示していただいている15ページの試算ですが、右側に成長実現ケースに加えて、これまで同様の歳出改革を続けると3年前倒しになるということが示されています。これを前提に、経済財政諮問会議、過去の歳出効率化による影響が1.3兆円と書いていますが、これはかなり楽観的ではないかと私は思います。土居委員の報告にありましたが、成長実現ケースがこれまで実現したことはほとんどありませんし、歳出効率化によるプライマリーバランスの改善効果1.3兆円についても、2018年時点と現在ではかなり違う状況なので、今後も同じような効果があるのかということについて悲観的に感じています。もちろん、これを目指して財政再建を進めることが大切であるという見方をすべきかと思います。
プライマリーバランスの改善を含めまして、今後の経済の回復について鍵を握ることはワクチンの接種状況であると思っています。今のところ、絶対量が非常に足りないので、まずは確保に力を入れるべきだと思いますが、どう配分するかについても、経済をいかに早く回復させるかという観点で効果的にしていただくことを期待します。
第2に、19ページに国債発行額の推移が描かれていますが、どの部分がコロナ対応による国債発行なのかが区分できていないので、解釈がなかなか困難です。コロナ対応の国債発行部分を区分することで、今後の財政再建の成果が見えやすくなると思います。
第3に、コロナ危機が終わる段階になるほど、財政再建を進める観点が重要になりますが、今般の大量の国債発行をどうやって返済していくのかという議論を開始することと、こうした経済危機は何度も繰り返すので、平時の財政再建が重要であるという認識をこの機会に広く国民と共有していくことが大切になってくると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕次は、熊谷委員、どうぞお願いします。
〔熊谷委員〕時間も限られておりますので、私からは2点だけ、申し上げます。
まず、1点目としては、中長期で見ればやはり財政再建の旗を下ろしてはいけないということでございます。過去に財政再建に成功した国を調べてみると、経済成長と歳出改革と増税、これらをバランスよく三位一体で行っています。その意味では、本日御説明がございましたが、やはり歳出改革の目安は歳出の抑制に一定の効果があったわけでございますので、引き続きこれからもこうした地道な歳出の改革、目安の設定などを続けることが必要であるということです。
2点目としては、歳出改革の中でやはりめり張りをつけていくことが非常に重要であって、先程来お話が出ているように、グリーン、デジタル、そして医療への対応、飲食店への支援、困窮者対策、こうしたものについてはやはりしっかりとお金を使っていく必要があります。違う角度から申し上げると、コロナに対する痛み止め、そしてポストコロナの中長期的な構造変化、この2つにやはりバランスよく、めり張りをつけてお金を使っていくことが非常に重要なのではないかと考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
骨太2021に向けまして、事務局から御説明があったように、歳出の目安の設定ということを高く掲げることが必要であると思います。その前提の上で、補正予算について申し上げたいと思います。
今日、御説明の資料4の16ページに、これまでの財政健全化への取組というものがございまして、それを見ますと、この20年ほどの間、つまり1997年の財革法から2018年骨太までの間に、財政健全化目標は2003年度から2025年度に22年間、先送りされました。平均で1年余り先送りということになります。この間、当初予算につきましては、事務局から年初に御報告がございますが、建議の反映状況ということで御説明いただいているわけですが、毎年、主要経費の量的削減目標や歳出の目安というものは、予算編成プロセスでの厳しい査定、優先順位づけによってきちんと遵守されてきました。しかし、それにもかかわらず目標が実現できず、先送りを繰り返さざるを得なかったということは、補正予算と楽観的な経済、税収見積りによるものです。
例えば、今年度については、先ほど平野委員が御指摘になった点ですが、本年度は2025年度への中間点として骨太2018で中間指標が設定されております。2019年度、20年度、21年度の当初予算は、先ほど御説明があったように歳出改革の目安がきちんと守られてきましたが、本年度のプライマリーバランスの赤字は、GDP比1.5%程度という中間指標に対しまして、1月の中長期試算の実績見込みは7.2%の赤字、債務残高対GDP比は、180%台前半という中間指標に対しまして、実績見込みは208.5%、財政赤字GDP比3%以下に対しまして、実績見込みは8.5%ということです。
また、日本国債が最初に格下げされましたのは、この16ページの資料の左上の財革法の時期ですが、その財革法の停止法が成立する直前の1998年11月17日でした。私はよく覚えていますが、そのときにトリプルAからダブルA1に格下げされました。その前日に、24兆円の景気対策が発表されました。つまり、景気対策の翌日に格下げになった。市場は、補正予算に注目していました。今はシングルAで、日本銀行の超金融緩和政策が功を奏しているのも、私は日本国債の信認が何とか保たれているからであると思います。日本国債の信認がこれ以上揺らぐことがないように、当初予算だけではなく、もちろん真に必要なものには対応するといたしましても、補正予算も一体で歳出改革の取組を進める必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、福田委員、お願いします。
〔福田委員〕時間も限られておりますので、私からは手短に1点だけコメントさせていただきたいと思います。
今後の財政の動向を見る上では、土居委員が指摘されましたように、成長率と金利との関係ということは非常に重要であると私も思います。ただ、マクロ経済学の観点から言うと、成長率と金利が独立に決まるという設定は通常は想定されておらず、やはり成長率と金利は密接にお互いが影響し合うということだろうと思います。そうした意味では、これまではもちろん日本銀行は金利を低く抑えることに非常に貢献してきたわけですが、その背後には、やはり日本の成長率が低く、その結果として、根源的に決まる利子率である自然利子率と言われているものが低かったことが背後にあって、だからこそ日本銀行が金利を低く抑えることができたということになるかとは思います。
今後、成長戦略によって成長率を高めるということは、我が国にとっては非常に大事なことであることは言うまでもありませんが、仮にそれが成功して自然利子率が高まっていけば、当然、日本銀行が金利を低く抑えられてきたということも実現が難しくなります。そうした意味では、今後の財政のシナリオを考える上でも、金利の動向を単にテイラールールなどで調べるのではなくて、やはり自然利子率はどういうように変わっていくのかという形で調べていくことは大事だろうと思います。かつ、今後の成長を促進するという意味では、もちろん財政の役割は重要ではあるが、それと同時に金利が上がっていくということも考えていけばならないし、その影響を軽減するにはやはり効率的な財政運営、ワイズスペンディングが重要になってくるだろうと思います。
私からは以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
今日はキックオフということですが、御発言、御意見を頂戴するのはここまでにさせていただきます。
土居委員も、事務局も、よろしいですね。
それでは、本日の議題は以上で終了とさせていただきます。
本日の会議の内容については、この後、会長と私で記者会見をいたしますので、そこで御紹介させていただきます。個々の発言につきましては、皆様方から外部にお話をすることのないよう、御注意をよろしくお願いいたします。
次回、4月15日、14時30分、2時半から開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。
午前11時00分閉会