財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和3年3月18日(木)9:30~10:55
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
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1.開会
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2.議題
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令和3年度予算等について
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3.閉会
分科会長 |
榊原定征 |
伊藤副大臣 元榮大臣政務官 角田次長 宇波次長 青木次長 日室司計課長 森田法規課長兼給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 |
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分科会長代理 |
増田寛也 |
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委員 |
赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 黒川行治 神津里季生 佐藤主光 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 |
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臨時委員 |
上村敏之 宇南山卓 葛西敬之 河村小百合 喜多恒雄 木村旬 権丈英子 小林慶一郎 小林毅 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 冨山和彦 平野信行 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午前9時30分開会
〔増田分科会長代理〕おはようございます。本日は、冒頭でカメラが入りますので、しばらくこのままでお待ちいただきたいと思います。
それでは、カメラ入室、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
皆様方には、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、「令和3年度予算等について」を議題としております。よろしくお願いいたします。
それでは、カメラは御退室をお願いいたします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、審議に入ります。
令和3年度予算の概要等、そして令和3年度予算編成等に向けた建議の反映状況、この2つにつきまして有利調査課長から説明をお願いします。
〔有利調査課長〕調査課長の有利でございます。よろしくお願いします。
資料1と資料2を続けて御説明させていただきたいと思います。
まず、資料1を御覧ください。表紙をおめくりいただいて、1ページ目はこれまでの動き、2ページ目は11月の財審建議の概要がございますが、皆様、よく御存じの内容であると思いますので、説明は省略させていただきます。
3ページ目でございます。1次・2次補正と3次補正・令和3年度予算、その2つの塊に分けて、コロナの対応を図にしたものでございます。
まず、一番上のピンク色のところ、これは新型コロナウイルスの感染拡大防止に万全を期すという観点から、1次、2次補正、そして3次補正、3年度予算でもしっかり対応しつつ、その下にオレンジのところがございますが、感染状況や経済動向も踏まえて不測の事態に備える観点から、3次補正予算、令和3年度予算で、それぞれ5兆円のコロナ予備費を措置しています。
一方で、財審建議、11月の建議で、単なる給付金や一律のつなぎ的措置から、経済の構造変化への対応や生産性向上に前向きに取り組む主体への支援と軸足を移す、そうした考え方に沿いまして、水色のところに書いてある様々な措置がございますが、これを3次補正や3年度予算に計上しないとか、また、計上するにしても期限をつけていくといった形で徐々に縮小していく方向を出す一方で、緑色の経済構造の転換のための措置にシフトしていくようにしています。
4ページ目でございます。令和2年度3次補正予算のフレームでございます。経済対策関係経費として、19.2兆円を計上しているところでございます。税収は、右側ですが、8.3兆円の減補正であり、最終的に国債の追加が3次補正で22.4兆円でした。
5ページ目でございます。2年度当初予算と3次補正後の数字の比較ですが、歳出は73兆円の増、税収は先ほど申し上げた8.3兆円の減であり、国債の発行額は80兆円と未曽有の増加です。
6ページ以降は、3次補正の概要でございます。新型コロナウイルス感染症の拡大防止として4.4兆円を計上するほか、ポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現として11.7兆円、ここにはデジタル改革やカーボンニュートラルのための基金の創設、事業債構築補助金、大学ファンドといった経費が含まれています。これに加え、防災・減災、国土強靱化などに3.1兆円を計上してございます。
続いて、8ページですが、令和3年度予算のフレームでございます。社会保障関係費、社会保障関係費以外とも歳出の目安を守った編成を行いました。一方で、令和2年度当初予算との対比では、新型コロナ予備費5兆円を計上しつつ、一方で税収が6兆円落ち込むということ等から、国債発行額は11.0兆円増の43.6兆円となってございます。
9ページ以降は、令和3年度予算のポイントでございます。感染拡大防止、デジタル庁設置などのデジタル社会の実現、グリーン社会の実現などがポイントであるほかに、10ページに行っていただいて、上のほうでございますが、社会保障につきましては、毎年薬価改定の実現。令和4年度予算以降に影響するものでございますが、後期高齢者医療の自己負担割合の見直しなどの制度改革も実現しました。
13ページまで飛んでいただきまして、いわゆるワニ口のグラフでございます。まだ閉じる状態には程遠いものでございますが、めくれてしまった上顎を元に戻す努力はいたしております。
14ページ目ですが、国債の市中発行額でございます。ここには、新発債のほか、借換債、財投債も含まれますが、市場との対話、市場のニーズも踏まえた結果、国債の大きな増発に伴いまして、1年未満の割引短期国債の金額は大きく増加しました。
15ページは、令和2年度のコロナ予備費の使用実績でございまして、現在の残額は2.7兆円でございます。
16ページは、内閣府の中長期試算でございます。成長実現ケースでは、プライマリーバランスが2020年度と2021年度は大きく落ち込みますが、その後は経済回復に伴ってプライマリーバランスは回復するということでございます。ただし、2025年度には7.3兆円のプライマリーバランス赤字が残る試算になっており、プライマリーバランスの改善努力が求められております。一方で、ベースラインケースでも、プライマリーバランスは回復してまいりますが、そのペースは遅く、2025年度の段階で12.6兆円のプライマリーバランス赤字が残る試算となってございます。
17ページですが、これまでの骨太方針の記述のおさらいでございます。2025年度のプライマリーバランス黒字化と債務残高対GDP比の安定的引下げという財政健全化目標の下で、社会保障関係費、非社会保障関係費、地方の歳出水準について目安が定められております。ただし、この目安は2019年度から21年度までのものでございまして、来年度予算編成に向けては新たに目安の設定が必要な状況でございます。
18ページ以下ですが、経済の状況でございます。ざっと説明いたしますが、GDPにつきましては、今年の1-3月はまた違った形になってこようかと思いますが、2020年の第4四半期でも第3四半期に続いて大きな回復を見せ、失業率も2.9%に踏みとどまっている状況でございます。
19ページでございます。2020年の通年では、特別定額給付金の影響等もありまして、可処分所得は増加する一方で、消費は行動制限、自粛で減少しておりますが、貯蓄は大きく伸びる結果となってございます。
20ページでございます。現預金の状況ですが、右側の図を見ていただくと、青色の家計も、オレンジの企業も、いずれも現預金が大きく伸びる結果となっています。これは、コロナ対応の財政出動も大きく効いているのではないかと思います。
以上が、資料1の御説明でございます。
続きまして、資料2、令和3年度予算の編成等に関する建議、いただいた建議の反映状況でございます。ここでは、建議の総論部分でいただきました生産性向上、人口減少・少子高齢化への対応、行政のデジタル化・DX、省庁等の垣根を超えた連携という3つの観点に照らしまして、主な反映状況を御説明いたします。
まず、1ページ目の成長力強化のためのグリーン化・デジタル化・DXの推進でございます。3次補正予算で創設します2兆円の基金により、カーボンニュートラルに向けた革新的技術開発を支援することといたしました。IT導入補助金については、3次補正予算において業務を非対面、非接触で行えるような業務的形態への転換(DX化)に資するITツールの導入等に限定しまして、中小企業の業務の広範なDX化を推進することとしました。
続きまして、中小企業の生産性向上についてでございます。事業承継等に予算を重点化しましたほか、中小企業向けの補助金について、大企業の子会社や課税所得が一定以上の者については補助の対象外、または大企業と同率の補助率の適用とすることで支援の重点化を図っております。
科学技術の生産性向上でございます。科学研究費助成事業(科研費)について、新興・融合領域の研究への予算配分を高めるとともに、戦略的創造研究推進事業について優秀な若手研究者のステップアップを促す仕組みを推進いたします。また、研究の国際性を高めるために、WPIについて新たに1拠点を形成するとともに、成果を横展開いたします。
2ページ目でございますが、大規模農業経営体の生産性向上についてでございます。農業経営の生産性、収益性の向上に向けまして、農地バンクを通じて農地の集約化を進めるためのインセンティブを拡充するとともに、輸出用米や高収益作物の水田での生産拡大に向けた生産者の低コスト生産技術等の導入支援の予算を措置しております。
円滑な労働移動の支援でございます。「総合経済対策」で、雇用調整助成金による雇用維持と、出向、再就職等支援を含めた「雇用対策パッケージ」のための予算を措置しております。1月以降、雇用調整助成金の特例措置について、緊急事態宣言への対応を行うとともに、宣言が全国で解除された月の翌月末まで現行措置を延長した上で、雇用情勢が大きく悪化しない限り、原則的な措置を段階的に縮減する。それから、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業について特例を設けるといった予定を公表したところでございます。また、2月には、「新たな雇用・訓練パッケージ」において、求職者支援制度への特例措置の導入等を公表しております。
3ページ目でございます。高齢者医療の見直しでございますが、令和4年度より後期高齢者であっても、課税所得が28万円以上(所得上位30%)、かつ年収200万円以上の方について、医療費の窓口負担割合を2割とし、それ以外の方は1割にすることとします。
次、4ページ目に行っていただいて、行政のデジタル化等でございます。令和3年9月にデジタル庁が設置されるとともに、情報システム関係予算の一括計上を進め、当初予算で3,000億円規模の予算を措置しまして、政府全体の情報システムの一元的な管理を強化するということでございます。それから、地方公共団体の基幹系情報システムにつきまして、国が定める基準に適合したシステムを利用する形態への移行に要する標準的経費を支援するために、3次補正予算で1,509億円を措置しまして、J-LISに時限の基金を創設いたします。
流域治水の実現に向けた体制構築ということで、令和3年度予算では、全国109の一級水系だけではなくて2級水系についても、水系ごとに関係者が一堂に会する流域治水協議会を設置しまして、流域治水プロジェクトを推進することとしております。具体的には、国直轄事業や交付金、補助金について、堤防、下水道、農業水利施設、学校施設等の機能連携に向けて、関係者が垣根を超えて行う流域の被害軽減の取組に重点化することで対応を加速化いたします。
また、資料3を置いてございますが、これは各分野別に今、申し上げたこと、または、その詳細ということで、それぞれ建議の反映状況を解説しておりますが、説明は割愛させていただきます。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して御意見等がありましたら、以降、順次お願いしますが、いつものように御意見がある場合、こちらに御出席の方はネームプレートを立てて合図をしていただきたいと思います。テレビ会議システムを通じての御参加の方は、システム上に「挙手する」というボタンがあるかと思いますので、そちらのクリックで合図をしていただきたいと思います。
順番ですが、まず会場に出席されている委員を先に指名させていただいて、その後、オンラインの方を指名いたします。
今回、御出席いただいている方の人数が多いので、できるだけ手短に御発言いただいて、多くの方に御発言いただけるようにお願いしたいと思います。
私から向かいまして左側から指名したいと思いますので、ネームプレートを立てておられる平野委員からお願いします。
平野委員、どうぞ、お願いいたします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
昨年秋の建議の内容が来年度予算に反映されたことに関しましては、関係者の皆様の御努力に感謝したいと思います。その上で、私からは、春の財審の第1回でもありますので、日本財政の在り方、それを踏まえた今後の対応について申し上げたいと思います。
まず第1は、コロナ禍での危機対応であるとか、DX、それからカーボンニュートラリティーといった、民の力だけでは対応できない国家戦略的な政策へのまとまった財政出動が必要ですが、それを可能にするためにも、財政の持続可能性を取り戻しておくことが不可欠であるということです。
2番目は、最近の財政運営には、結果としてMMTの影がにじんでいると言われても仕方がない状況にあるわけですが、この不毛な議論に対するより本質的なポイントは、「官主導、財政依存型の経済対策では自律的な経済成長を促すことは難しい」、言い換えれば、「我が国経済の潜在成長率を高めることは、政府支出を増やすことによってではなくて、民の力を高め、引き出すことによって初めて可能になる」ということであり、さらに言えば、「国富をどう使うか、リソースのアロケーションの問題である」ということを改めて認識すべきであると思います。
もちろん、こうした認識の下で、先ほどからお話がありますように、今回の国の予算策定でも、後期高齢者の2割負担であるとか、社会保障費の3,500億円への抑制、これは高く評価するものですが、こうした個別施策を積み上げるだけでは、PBの黒字化目標は遠ざかるばかりであるという感じはします。
今後も、経済危機は繰り返す、カタストロフィックな災害もまた発生するでしょう。
それではどうするかということですが、今、述べたような状況の中で、財審の基調はワイズスペンディングに置かれています。これは正しいことですが、問題は、それをどう担保するかも含めて、財政規律であるとか、仕組みづくりが不可欠であると私は思います。今回、春の財審では、少し構えを大きく取って、我が国の財政全体に関する制度的な対応について議論できないかと思います。
ポイントは大きく2つです。1つ目、今後、財政健全化を図っていくためには、もちろん消費税を含む給付と負担の在り方であるとか、社会保障、医療提供体制といった個別の大きな課題に向き合うことは重要ですが、それらを総合的に見た場合の中長期的な財政計画を策定して、これを財政規律として機能させる必要があるのではないか。我が国において、仮に中期財政計画と呼べるものがあるとすれば、これも先ほどお話がありましたが、骨太方針の中に示された経済・財政再生計画であるとか、新経済・財政再生計画ですが、これらは例えば3年から4年といった比較的長いレンジの支出総額を規定する諸外国の中期計画に比べると拘束力は乏しい。また、予算策定手法であるとか、プロセスも含めて、財政ルールとして機能させるだけの制度的な裏づけを持たせる工夫が必要ではないかと思います。
もう1つ、平成最後の建議に「共有地の悲劇」という言葉が使われました。非常に印象的でした。政府サービスの受益者と、その費用の負担者が異なる中では、多かれ少なかれ赤字バイアスがかかってしまう。これを回避するためには、財政運営状況の監視、財政政策の検証、それらの前提となる長期予測の策定など、規律を遵守するための制度的な機能、枠組みが必要であると思います。それは、とどのつまりはOECDの多くの諸国がリーマンショックの後に取り入れたように、何らかの独立した機関にするしかないのではないか。もちろん実効性と、もう1つ実現可能性、両にらみで考えなければいけません。また、どのような機能を持たせるのか、どこに置けば良いのかといった制度設計については様々なオプションがありますが、財審としては、まず、そうした検討が必要なのではないかという見解を打ち出させないかということが私の提言です。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕御説明、どうもありがとうございました。
先ほど説明があった令和3年度の当初予算に関してです。資料1の8ページに御説明いただいたように、令和2年度の当初予算と比較すると、例えば臨時特別の措置を除けば歳出総額で、確かに小計と書いてある100.9兆円から106.6兆円に見えるのですが、その中には新型コロナ予備費が入っており、その予備費を差し引くと101.6兆円で、大体0.7兆円の増に収められているというのは、先ほど平野委員の御指摘にあった骨太の方針、さらには歳出改革の目安が非常に規律として働いていると私は評価しております。そうした意味では、この夏にも予定されている骨太の方針において、新たに2022年度以降の歳出改革の目安を、しっかりとたがをはめて歳出改革をさらに進めていくことが重要であるということは令和3年度当初予算を見ても分かると、私は思います。
もちろん、補正予算については財審でもいろいろ議論していますが、付け焼き刃で熟考が足らないのが補正予算の編成、これはある意味で語義がトートロジーなのかもしれませんが、もし補正予算を打つということであったとしても、しっかりとその中身を点検、厳選して、効果的なものにしていくことが必要であると思います。
それから、16ページに内閣府の中長期試算が書かれていて、確かに成長実現ケースでは、左下にありますような形で赤い折れ線グラフがどんどん右下がりになっていって、公債等残高対GDP比が下がっていく。しかも、2030年まで下がっていくような絵姿ではありますが、果たしてこれが本当にずっと継続的にそうなのかどうか。明らかに、この裏側には、経済成長率と名目金利の関係は金利のほうが低いと、2030年度まではそうした内閣府の試算になっていることが影響して、このような数字になっていますので、果たしてこれがずっと継続するのか、それともプライマリーバランスの改善が鈍いと公債等残高対GDP比も下げ止まることがあるのかどうか。そうしたところは、よりきめ細かく点検していく必要があるのではないかと、私は思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、どうぞ。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
では、私から、財政のマクロと、ミクロと、ガバナンスについて簡単にコメントさせてください。
第1点のマクロにつきましては、もう既に土居委員から御指摘ありましたが、財政の出口戦略、今回のコロナ対応の出口戦略を模索する時期であると思います。まだ第3波の最中ではありますが、非常時の財政支出を恒常化させないということ、これを肝に銘じるべきであると思います。確かに、今回、何とか106兆円に抑えているという面はあるのですが、間違いなく補正予算を組むでしょうから、結果的には財政の膨張に歯止めがかからないということもあり得ますし、持続化給付金、その後継支援を含めて、やはりコロナを契機に現れてきた弱者、あるいは中小企業、零細企業の卑弱性といったものに対する支援が恒久化する可能性もあるわけです。観光事業や地方創生もそうです。したがって、決してそうしたことがないように、きちんと広げた風呂敷は閉じる方向にかじを切るべきであると思います。
頂いた資料1の3ページですが、確かに緊急対応のGo To キャンペーンを含めた財政支出から、だんだんデジタル、グリーンへの支出へと転換していることは良いですが、考えてみると、デジタル、グリーンはこれからの必要な財政ニーズであると思います。であれば、本来、考えるべきは、既存の財政支出の見直し、具体的には平時における中小企業、あるいは各種社会保障といった既存事業に対する見直しも併せて行わなければいけないということが1点目。
2点目のミクロですが、やはり今回いろいろな緊急対応もあったので、Go To キャンペーンであれ、一律10万円の支給であれ、いろいろな試行錯誤はあったと思いますが、その効果はきちんと検証する必要性があると思います。頂いた資料の中に、執行率の低い事業もあります。また、地方創生臨時交付金のように、受け取ったのは良いが、それでイカのモニュメントを造ってしまったとか、いろいろ変わった使い方をされる自治体もありますし、臨交金は駄目であるとは言いませんが、実際にどのような効果があったのかということについて、やはりきちんとPDCAサイクルを回すべきであると思います。
それから、ガバナンスですが、やはり今回のコロナでよく分かったのは、政策と現場の乖離であると思います。例えば、コロナの病床を増やしてほしいと国が幾ら通知しても、自治体が幾らお願いしても、現場は動かないという状況です。デジタル化も、昔から言っていることなのに、なかなか自治体でデジタル化が進まないという面もあります。どうしても笛吹けども踊らず、つまり政策と現場の目線が合っていないという状況がありますので、ここはやはり現場からフィードバックをもらうとか、実態を把握するとか、やはりきちんと目線を合わせる努力が必要かと思います。でないと、これから特にデジタル化だ、グリーン化であると新しい局面もありますので、やはり少しこれまでの一方的な通知、あるいは一方的に予算措置しておしまいではなく、そのフォローアップに努めていくべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、吉川委員、どうぞお願いします。
〔吉川委員〕ありがとうございます。
財政全体につきましては、私、先ほど平野委員がおっしゃったことに全面的に賛成です。
ワイズスペンディングについて、一つコメントいたします。もちろん、それはキーワードであるべきですが、公共投資など物に対してソフトの重要性を指摘したい。例えば、たった今、今日も含めて医療提供体制が問題になっています。コロナ病床数の不足と言われますが、これは御存じのとおり、ある意味ではビッグアイロニーといいますか、対人口比での病床数が日本は他の先進国と比べて際立って多い。にもかかわらず、病床が不足しているのが現実で、このことは財審でも長く議論されてきました。今、そのことが問われている。なぜこうなっているかというと、今、佐藤委員もおっしゃいましたが、基本的には先送りしてきたからだ。問題は認識し議論してきていた。分かっているのにそれを先送りしてきたことのツケと言っても良い。
そのツケですが、最大の問題が財政赤字になります。頂いた資料1の16ページ、内閣府の試算、ベースラインケースを参照しますが、ほぼ10年後でもPBの黒字化は全く見通せていない、デット対GDP比も高止まりということです。この問題は、我々、財審でずっと言ってきていますが、狼少年と言われる始末といいますか、しかし、このままでは財政は破綻することは間違いない。先ほどもちらっと出ましたが、大きな自然災害、例えば地震、いつ来るかは誰も分からない、しかしいつか来る。地震が来たときでも、それなりに日本の財政はもたなければいけない。しかし、今のままではもたない。地震は天災ですが、財政破綻は人災です。
今回、コロナで大幅な財政増、ハウマッチの問題はあるにしても、基本的には格差の緩和ということが私はポイントであると思いますが、それはある程度必要であったと思います。しかしながら、財政の健全化という点からすれば、大きな宿題を抱えたまま、私たち日本経済は走っていかなくてはいけない。この問題はおろそかにしてはいけない。先ほど医療提供体制を例として挙げましたが、同じこと、あるいはもっと大きな問題になり得るわけですから、我々、財政制度等審議会として、狼少年と言われても、このことは情報発信すべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、権丈委員、どうぞお願いします。
〔権丈委員〕まずは、コロナ禍の不透明な情勢の中、効果的、効率的となるよう尽力されたことと御礼申し上げます。
私からは、ポイントを絞ってお話しいたします。資料2の2ページの円滑な労働移動の支援、及び参考資料1-1の5ページにある求職者支援制度に関してです。
求職者支援制度は、リーマンショックのときに、フレキシキュリティーで有名なデンマークの制度なども参考にして創設されました。フレキシキュリティーというのは、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と、保障安定性(セキュリティー)を上手に組み合わせるという有名な制度です。これは、社会保障を用いて成長を促すことが意識された制度であるとも言えます。雇用調整助成金を通じて、1つの会社における雇用の維持も大切ですが、労働市場全体における雇用の維持、そして収入の維持を図りながらスキルアップできる仕組みをつくり、成長が期待できる分野への移動を図り、経済の構造変化や、経済全体の付加価値生産性の向上につなげていくことは非常に大切で、それを目指してヨーロッパではフレキシキュリティーが推奨されてきました。
先ほども事務局から御紹介がございましたが、昨年11月の建議でまとめた際の、経済の構造変化への対応や、生産性の向上に前向きに取り組む主体の支援へと軸足を移していき、未来に向けた日本経済の成長力の強化につなげていくべきという政策を、求職者支援制度も担うことになります。また、これを所得保障面から見れば、日本で長らく言われていた第2のセーフティーネットの機能も果たすものであると思われます。この制度は、前向きですが、困っている人を応援するという制度ですから、昨年の定額給付金などと比べると、必要な人に効率的に給付が回る仕組みとしても高く評価できると思われます。
以前、職業訓練施設を幾つか視察したことがありますが、訓練を受けている人だけでなく、教えている人も生き生きとされていました。これまで求職者支援制度を利用するためには、8割出席で給付が10万円であるとか、ハードルがなかなか高くて必要な人にサービスが届かないという弱点がございました。今回、求職者支援制度への特例措置の導入や、求職者支援訓練の受講者数を増やすこととされています。職業訓練は、最近はICTや医療、福祉などの訓練も増えてございます。これらは、今の時代、今後のステップアップに結びつけられる支援であり、評価できると考えております。特に、非正規雇用労働者のスキルアップにつなげることは、彼らの生活、そして税制にとっても大きな意義があり、社会的包摂を目的とする今の時代に整合的かと思います。今後も、利用状況を見ながら調整すると良いと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いいたします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。短く3つ申し上げたいと思います。
去年の予算編成は、皆様の御苦労している姿を拝見していまして、そして単位が違うお金が飛び交っているなと思いながら拝見していました。今、私たちも、ニュースで財政再建を真っすぐに投げるのは本当に難しい状況であると思っております。その中でも、一体このお金はどこから来ているのかということは、せめて国民に意識してほしいと思ってやっていますが、みんなが信じられる長期予測をつくって、それに基づきながら、国民とこの先どうしていくのかという対話をどこかで始めたいと思います。イギリスでは、増税を言ったスナク財務大臣が支持を上げるというようなことまで起こっていまして、この差はどこから来るのかとは思いますが、とにかく頑張って対話をしていきたいと、メディアの立場からも思います。
2つ目は、そうは言ってもコロナがあったことで、今まで動かなかったいろいろなことが動いていると思うところもあります。つまり、変革せざるを得ないところに対して、ハードルが下がっている部分はあると思います。なので、ぜひこの機を捉えて、必要な変化や改革に対してお金を使っていく、つまり過去を維持するのではなく、必要な変革にお金を使うということをしっかりやりたいと思います。東日本大震災そのものはいろいろ側面がありますが、戻った時の予測が違い、元に戻すように試みたが、実は世の中、もう元には戻らなかったようなところはあったと思いますので、やはり先にどうあるべきかをしっかり考えて、予算をつけていくことが必要かと思います。
3つ目は、やはり佐藤委員もおっしゃったように、コロナでつけた一つ一つの政策効果をしっかり見直すことが必要であると思いますが、特に医療に関して国民からの関心が非常に高まりました。みんな今まで、どこの病院でもふらっと行って診てもらえるという便利さを享受してきたが、危機のときに急速に危機モードにならず、必要に応じて変化することがなかなかできないというこの体制でよいのかとの疑問は、国民の中にも生まれてきていると思います。つまり、ふだんちょっとした病気のときは我慢しても良いから、危機のときにしっかり対応できるような体制であってほしいという気持ちが今までとは違って出てきていると思うので、これもこの機を捉えて一気に議論したり、進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、どうぞお願いします。
〔堀委員〕御説明いただき、ありがとうございました。
今、宮島委員からもお話がありましたが、非常に厳しい状況下で、うまく何とか切り抜けているとまで言えるかどうか分かりませんが、まとめられているのではないかと思っております。
3点あります。1点目は、先ほど佐藤委員もおっしゃっていましたが、非常時と常時を分けて考えるは重要かと。本日、御説明の資料1の3ページでも分かりやすくなっているかと思いますが、これまでの委員の方が指摘されていたように、例えば医療に関しては、新型コロナ感染、新興感染症拡大防止という視点もあると思いますが、同時に、今後の新しい医療の在り方、たとえばオンライン診療を含む新しい受診行動であるとか、DX化など、既存の在り方でないものが新しい日常に、今後、どのようにシフトしていくのかも重要なのではないかと思っております。病床数の話も吉川委員からありましたが、地域医療構想の推進であるとか、コロナ禍でスピードの遅延、一部滞ってしまっているところもあると思います。非常時の対応も重要ですが、非常時から常時においても継続して必要な対策を、重点的にしていくと良いのではないかと思っています。
ワイズスペンディングの話もございましたが、ワイズであったかどうかの事後的な効果検証は非常に重要であると思います。効果検証するためのKPIが必要となると思いますが、KPIがそもそも設定されていなかったり、あっても浸透していないこともありますので、それが国民にも分かりやすいようになると良いのではないかと思います。
また、政策と現場のギャップというところですが、先ほど宮島委員も少しおっしゃっていましたが、イギリスのスナク財務大臣が増税するということで支持率を上げたという話がありましたが、それが良い悪いはともかくとして、何が大きな違いなのかというと、恐らく、痛みを感じたときにすぐに痛いと感じる仕組みになっている。だから何か対策が必要であると国民と政治で考えるタイミングに大きな差が生じにくい仕組みになっていると思います。日本の場合は、政策過程が複雑でありすぐに変更することは難しいこともありますが、霞が関・永田町と現場でギャップが生じやすいかもしれません。特に社会保障の制度などはある意味非常に精緻にできており、財政的な綻びが生じていても、全体としては痛みをすぐには感じにくいので、当事者意識が国民全体に共有されにくく、何となく他人事になっており、自分以外の誰かが何とかしてくれることを期待しているのではないかと。それが「共有地の悲劇」という話にもつながるのかもしれませんが、痛くないように見えても本当は痛い、痛み止めを打っているだけの状態であるということを発信して、国民的な理解を醸成する必要があるかと。そのためには、先ほどの長期推計のデータもそうですが、見やすい、分かりやすいデータと、分かりやすいメッセージとをともに伝えていく必要があるのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明ありがとうございました。
皆様おっしゃられているように、今回、コロナ禍ですごく難しい予算編成が求められていて、当局の方々、すごく御苦労されていると推察しております。また、今回、建議の反映状況をまとめていただきまして、これも大変分かりやすいと思って拝見していました。一方で、建議が反映されている部分は良いですが、逆に建議が反映されていないところもあるのではないかと思います。例えば、国土強靱化で、今後5年間で15兆円の費用が盛り込まれています。確かに防災などは大事ですが、財審としてもハードだけではなくてソフト対策の重要性を強調したわけで、今回、果たしてどこまで反映されたのか、本当にこれだけの巨額な予算は必要であったのか、反映されているかどうかという部分の整理も必要ではないかと思っています。また、反映されたものにしても、実際どこまで有効に使われているかということも検証して、次の建議とか予算編成に生かしていくことが重要であると思っています。
今年、衆議院選挙を控えて、歳出の拡大圧力というか、それこそ補正予算などがまた予想されますが、今後、歳出改革の取組をさらに強めていくためにも、今後、緻密な戦略が大事になってくるのではないかと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
まず、先ほど皆様からもありましたが、このコロナの苦境をよく乗り切れた予算編成であったと思いますが、インプリメンテーションのステージについてはまだ検証が必要ではないかと思っています。3ページ目の項目も、成長に向けてよく練られていると思いますが、グリーンの定義がまだ曖昧であったり、中小企業を成長分野に転業させることの成長の見定めが難しい分野も多くあるように見えますので、本当にワイズスペンディングがミクロレベル、現場レベルでしっかりとできるように各省庁と連携して、かつ事後の検証もしっかり行っていくことが大事ではないかと思いました。
それと、マーケット、株式市場が異様に好調でございます。これは、御存じのとおり財政を各国で出しているということですが、結果として、2021年度は実質4.0%の成長という予想ですが、順調な回復に見えて格差が拡大していかないのか、個々のレベルでどうなっていっているのか。市場が拡大しているということは、富める人たちの資産が拡大しているということになって、その差が大きくなっているのではないかということを少し懸念しています。そうした平均の全体像だけではなくて、個別のところも見ていく必要があると思っています。
最後に、堀委員もおっしゃった、ホラーストーリーにならないレベルで分かりやすい危機感を国民と共有することが何とかできればと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、どうぞお願いします。
〔広瀬委員〕感想めいたことを、一言、申し上げたいと思います。
やはりこの1年、財政もコロナに振り回されたというか、翻弄されたというか、ある面では財政がそれなりの役割を果たしたと、逆に言えばそうしたことも言えるのではないかと思います。それにしても、今の財政は本当に大変な状況でございまして、今までも積み重なった赤字、気の遠くなるようなものがあったわけですが、今回はさらに、何か無力感のような、あれよ、あれよといううちにという感じもしないではないですが、ここでへこたれてはいけない。
私は、コロナによって財審の役割がさらに高まってきたのではないかと思っています。先ほど、今、メディアでなかなか言いにくいといったお話もありまして、そのとおりであると思いますが、このようなコロナのときであるからこそ、温かい気持ちで、きついこと、厳しいことを言うのが財審であると思います。今、榊原分科会会長、増田分科会長代理がいろいろな発信をしていただいておりますが、先ほど構えを大きくしてというお話もありました。もちろん専門的な話、各論も大事ですが、やはり国民のコンセンサスというか、それをどのように取っていくかが全てであると私は思っておりますので、そうした面の発信をこれからも続けていかなくていけないし、ぜひ続けていただきたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕手短にお話ししたいと思います。他の委員の方々と発言の内容の重なるところは避けまして、2点だけお話をしたいと思います。
一つは格付けです。私が格付アナリストで日本国債の格付をつけるとすると、恐らく、格下げをしたくなると思っています。なぜかというと、言うまでもなく債務が増えていて、増えたものに対して返す算段も整っておらず、かつ短期債務が増えていてという状態はやはりよくないと思うからです。そうなると、財審で、やはり意地でも財政再建をやると主張していくことはとても大事であると思っております。本音を言えば、特別会計にするとか、どうやって返すか考えていくことが大事かと思いますが、そこまで至らずともせめて財政再建をやると言い続けることに意義が出てくると思っています。これが1つ目です。
2つ目としては、ワイズスペンディングの話が出ておりましたが、使い方のみならず、見せ方の工夫も重要かと思います。日本の予算は、方々に目配りがなされている甲斐あって非常に良いところは多いのですが、逆の言い方をすると特徴がない。例えば、次世代EUなどは、グリーンだ、グリーンだとグリーンが前面に出ています。日本は、グリーンであるとか、デジタルであるとか言っている割には、何にお金を使うのかよく分からない。実は、有利調査課長に教えていただいたのですが、日本のグリーン政策の予算は単年で見れば決して欧州に負けないぐらいの金額を張っています。ところが、にも関わらず、その割には特徴もなく、主張もできていない。とてももったいないと思いますので、ワイズスペンディングは本質的に重要ですが、見せ方の工夫もする必要があるのではないかと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕今年度、2020年度の予算ないし来年度、2021年度というのは、恐らく、日本の財政にとっても大きなメルクマールというか、分岐点として、やはり後世に位置づけられると思います。これは米国でも同様でして、先般、3月11日に2021年米国救済計画法が成立しました。これは1.9兆ドル規模ということで、バイデン氏が1月に提唱したプランにほぼ沿ったものになったのですが、この結果、恐らく、アメリカの連邦政府債務、パブリックデットは、今会計年度、9月末には過去最高、戦後最高を抜く可能性が高い。これは対GDP比率です。過去の最高は、1946年度、トルーマン政権下、第2次世界大戦後の106%でしたが、今年のもともとのCBOの年初の見込みで大体103%、ただ1.9兆ドルのうち1.2兆ドルが9月末までに執行予定なので、これを合わせると大体107%から108%になります。バイデン氏は、これに続いて3月には第2の経済対策、これは気候変動プラン、クリーンエナジープラン、インフラ投資、弱者支援などを出してきますので、相当アメリカの財政も拡張に転換したということになるかと思います。
そうした中では、恐らく、我が国でも相当、財政膨張圧力が強まると思われますが、少しここは冷静になりたい。資料1の13ページを御覧いただくと、2年前にもこの一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移というグラフを使って御説明しました。1975年度から2021年度までの税収と歳出、公債発行額が出ています。1975年度から2020年度までの一般会計の税収を当初予算の見積りと決算ベースで比較すると、6割弱の確率で決算のほうが上回っています。そうした意味では、そこそこ財政はうまくいったとも言えますが、実は1975年度から2020年度、今年度は見込みですが、ここまでの累積を合わせるとマイナス30兆円です。ですから、ちょこちょこ勝って、大きく負けるという形になっています。
なぜかというと、このグラフでいくと、80年度前後に第2次オイルショック、90年度前半にバブル崩壊、98年から99年あたりにかけて金融危機、ITバブル崩壊があって、その後、2008年、2009年リーマンショック、それで今回、コロナショックということで、大体10年に1回大きな危機があって、先ほど平野委員もおっしゃっていましたが、そこで一挙に財政規律が崩れる。しかも、その際には、税収が落ちるだけではなくて多額の補正予算が組まれますから、一気にワニの口が開きます。
では、今回、これで終わりかというと、恐らく、そうではない。我が国の中長期的な財政リスク、私は大きく3つあると思っていまして、1つは少子高齢化です。少子高齢化の問題は、今回のコロナショックで相当加速します。まだ政府は出していませんが、日本人、海外の日本人、日本にいる外国人も含めた全体の出生数の統計が昨年出まして、これは87万人です。ただ、日本人だけで見ると85万人を切ってくる可能性が高い。そうした意味では、年金等の将来推計人口を大きく下回っています。
また、南海トラフ地震、これは30年来の発生確率が75%程度、最近、政府は細かい確率を出さなくなったのですが、75%程度と極めて高い。首都直下型地震の発生確率も30年で大体70%という震災等のリスク。
3つ目は、地政学的リスクです。やはり米中の覇権争いは、今後、本格化する可能性が高いと思われます。今年のオリンピックの開催日はちょうど中国の共産党創設100年でございまして、たしか2027年が人民解放軍の創設100年であると思います。先般、バイデン氏もいろいろな戦略を出されていまして、やはり人権問題等を考えると、日本を取り巻く地政学的リスクもこれから相当高まってくる可能性が高い。
つまり、こういう危機が、次10年待ってくれるかというと、必ずしもそうは言えないわけです。早期にコロナの収束は必要ですが、ここについても相当、効率的に、データ、科学に基づいた対策を講じるとともに、その次を狙った早期の財政健全化、というよりバッファーをつくるということが、恐らく、求められるのではないか。そうした方向で、特に2021年度は、当審議会、財務省にも頑張っていただきたいということでございます。
すみません、長くなりました。以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
会場に御出席いただいている皆様方、今まで名札で合図いただきました方は以上であると思います。
続いて、オンラインで参加の皆様方に移りたいと思いますが、今、合図をいただいている方、小林慶一郎委員、横田委員、神津委員、赤井委員、冨山委員、冨田委員の6名の方であるかと思います。それでは、今の順番で指名をしていきたいと思います。
初めに、小林慶一郎委員、どうぞお願いします。
〔小林(慶)委員〕小林でございます。御説明ありがとうございます。
私、今日、コロナ対策の諮問委員会などにも参加してきましたので、コロナと財政の問題という関係で、短期の問題と長期の問題、1点ずつお話をしたいと思います。
短期の話としましては、今、第3波の最中で、緊急事態宣言は解除されるわけですが、もう既にリバウンドが始まりつつあるということで、第4波が来て、ひょっとしたら3回目の緊急事態宣言が早く来るかもしれないという状況になっていると思います。理想的にはというか、経済学者の我々から見ると、何とかコロナの感染者数を低いレベルまで抑え込んで、そして経済を普通に回していけるようにすることが理想ですが、そのときに短期の政策で少し問題があると思っているのは、財政をどれぐらい出すべきなのかということです。要するに、国民に我慢してもらって行動抑制することで、コロナの感染者は一義的に減っていく。しかし、国民に行動抑制してもらうためには、経済支援を十分にしなければいけない、そのために財政をもっと出さなければいけないということになる。
一方で、今、起きていることは、恐らく財政支援が十分に出せない中で、行動抑制についても国民に強いることができなくなっている。その結果、コロナが十分に減らず、緊急事態が2回、ひょっとしたら次の3回目が来るかもしれない。もし3回目の緊急事態宣言があるとすると、これはまた大きな経済損失につながるわけで、ひいては税収の減少から財政損失にもなる。結局、短期の経済支援策を十分に出せないことが大きな財政的な損失につながる。今、ある種の合成の誤謬が続いているような感じがします。私も答えはないわけですが、やはり給付金であるとか、飲食店などへの協力金のような政策については柔軟にある程度出していって、それと引換えに国民に強い行動規制を求めてコロナを早期に抑え込んでいく。そうしたことが、長期的には財政や経済にとってベストなのではないかと思っておりますが、今のところ、少し合成の誤謬のような状況に陥っている気がいたしますので、指摘をしたいと思います。
2点目は、コロナでできた債務、それ以前から大きな政府債務があるわけですが、この長期的な債務をどうやって返していくかという道筋を見せなければいけない。このときに、コロナに限って言えばグローバルなパンデミック、グローバルな問題ですから、コロナでできた各国の借金を国際協調して、国際協調の枠組みの中で債務削減していくという考え方ができるのではないかと考えております。要するに、国際協調で何ができるかというと、例えば環境税とかトービン税のような1つの国で課税するとなかなか税収が得られないものでも、協調して、各国が連携して課税すると税収が得られるものもあると思います。そのような財政手段を使って、国際協調の枠組みでコロナによって生じた債務を返していく、そうしたような提案をしていくことができるのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、どうぞお願いいたします。
〔横田委員〕ありがとうございます。横田です。
まず、建議の反映状況をおまとめいただきまして、ありがとうございました。非常に分かりやすくて助かります。その上で、2点申し上げます。
歳出削減についてですが、今回、コロナ禍における緊急対策や、新しい変化に向けて予算を投じる中、今期はコロナで非常に混乱した面もあったと思いますが、ちゃんと既存事業の見直しが行われているのか。来年度に関しては、しっかりとそこも見て、省ける部分は省いていくべきということが1点です。
2点目は、中小企業に関してです。これから中小企業、大変な局面を迎えるところ。もともと厳しかったところがコロナ禍でさらに厳しくなっており、雇用調整助成金の支給期間によっては本当に雇用状態が厳しくなり、安心できる労働移動を着々と進める必要である。その中で、3点、中小企業に関しては事業承継と、DX化と、柔軟な労働環境をつくるということがセットで必要になります。事業承継機関と連携し連携、全ての会社が事業承継できるわけでもないですし、承継につながらない場合もDX化と柔軟な雇用を組み合わせ、労働者が少しでも安心して労働移動できるような環境をつくる策を練っていく必要があると考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神津委員、お願いします。
〔神津委員〕私からは、雇用の問題に重点を置いて発言したいと思います。
新型コロナウイルス感染症の克服は、いまだ見通しは立っておりません。経済の先行きは不透明、雇用情勢も予断を許さない状況が続いています。緊急対応としての雇用維持、事業活動維持のための支援は継続が必要ですが、その繰り返しにとどまらず、将来に向けた持続性を担保させていく施策が不可欠であると思います。そして、今回、2020年度第3次補正予算案と合わせて、財政支出40兆円規模の経済対策を行うということですが、財政の悪化が深刻度を増す中でありまして、規模ありきになってはならないと思います。従来から、補正予算が尻抜けになってしまっていることへの問題意識は各委員から指摘されてきています。財政投入は、経済、社会の持続性の観点で、しっかりとメリハリをつけていくべきことも改めて強調しておきたいと思います。
そうした問題意識の下で雇用関係ですが、まず雇用調整助成金の特例措置の延長、あるいは産業雇用安定助成金の創設、こういった足元で抱えている大きな問題に対応する措置については一定の評価をしたいと思います。しかしながら、緊急対応の繰り返し、これらの施策の財源は雇用保険特別会計ですが、これは現在、枯渇が懸念されています。現在の残高の水準で、今後、新たな雇用危機に見舞われますと、雇用保険を財源とした失業保険や教育訓練といった各種のセーフティーネットが機能しないおそれを抱えることになります。したがって、これまで相当な期間、雇用保険の国庫負担を当面の間ということで引き下げたまま今日に至っていますが、この国庫負担率を本則の25%に戻すことはもとより、危機的状況が継続しても耐えられるよう、予備費や一般財源から雇用保険会計に充当する必要があるということを、足元の喫緊の課題として申し上げておきたいと思います。
そして、今回のコロナ禍では、雇用保険の対象となっている雇用労働者のみならず、個人請負や、フリーランスという働き方をしている方々の生活に極めて大きな影響が及んでいることは御承知のとおりです。こうした状況も含めて考えますと、一般財源により生活保障と教育訓練、スキルアップ、そして再就職支援、就労のマッチングをパッケージにした包括的なセーフティーネットの構築を検討し、導入すべきであると思います。先ほどの権丈委員の御発言と同様の趣旨、同様の視点での考え方です。
2021年度の予算案は、デジタル化、あるいは脱炭素社会、そうしたことに向けた対策が多く盛り込まれていますが、これらはいずれも人材育成と、失業なき労働移動の枠組みを抜きには成り立ち得ないと思います。真に持続性に裏打ちされた施策への財源投入を強く求めておきたいと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、赤井委員、お願いいたします。
〔赤井委員〕よろしくお願いいたします。
それでは、コロナ関連でマクロに関して1点と、ミクロ政策について、私が研究している教育、地方財政、インフラに関して少しコメントしたいと思います。
まず、もう皆様も言われているように、コロナ関連の支出が大幅に増えたわけですが、今後に向けても、その支出が本当に効率的、効果的だったのかという効果検証が必要かと思います。10万円の給付などもありましたが、どこまで、どのように出すべきだったのか、今後も対応は必要でしょうから何を出すべきだったのかを検証していくことも、今年は大事であるかと思います。あとは、これも言われましたが、コロナ収束を見据えて財政再建の方向性も検討し始めてよいのではないかと思います。今年の財政学会、学術のほうでも、このテーマでシンポジウムなどを行っていきたいと考えております。
2つ目からミクロですが、簡単に。資料1の10ページ、来年度の政策に小学校の35人学級とありますが、これも少しコロナの風に乗って、エビデンスがないまま導入されたようなイメージもございますので、エビデンスの構築と、35人学級のためには教員が必要になりますから、質の高い教員の確保がまず重要かと思います。
次に、同じ10ページ、地方財政のところですが、交付税と、足りない部分は臨時財政対策債、さらには減収補塡債などで今年は財源を確保されました、ただ、減収補塡債は、本当に苦しいところに渡すだけではなくて、苦しくないところも借金をしたら得になるという、借金を促すような、これまでにない特別な制度が初めて入り、借金して財源を賄えばよいというような感じにもなっています。その借金は将来負担ですから、財源が地方で確保されたのであればているということは、その分しっかりと有効活用して、無駄のない地方財政運営を行っていただく。そうしたところを見ていくことも大事かと思います。
最後に、次のページ、公共事業ですが、ほかの委員も言われていましたように、国土強靱化、防災という名目で、やはりコスト効率化の意識が緩みがちになっている。もちろん、命の重みを金銭的にはかることは難しくて、命が大切であるからということで強靭化は重要ですが、その一方でコストがかかっているわけですから、命が救われた代わりに、そのコストを国民全体で負担していくという覚悟、意識がないと財政が破綻しますから、その分、コストを意識して、ちゃんとかかったコストは国民で負担する。そのためにどうすべきか、人口減少を踏まえてコンパクトなまちづくりとか集約化、そうしたことも含めて議論していくべきではないかと思います。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨山委員、お願いいたします。
〔冨山委員〕ありがとうございます。
私も少し長期の話をしたいと思いますが、ビジネスの最前線にいるので、つくづく感じるところは、先ほどの神津委員の話に少しつながりますが、イノベーションは良いことばかりではないです。分かりやすく言ってしまうと、産業革命の歴史は既存企業の大量殺りくの歴史です。要するに入れ替わってしまうことです。現状、デジタルトランスフォーメーション、日本では何か知らないですが、IT化とか業務効率化として捉えていますが、DXの本質は破壊的産業変容です。グローバルに言ってしまうと、この瞬間、猛烈に進んでいます。本当にすごいです。グリーンもそうです。イノベーションということは、既存の産業が相当壊されます。正直言って、自動車もかなり危ないです。その大変容、大転換を進めるということは、どう考えても大企業も、中小企業も、このポストコロナにおいてはものすごい新陳代謝をやらなければいけないということです。
現状の日本の社会システムは、基本的には自助、共助、公助と言いますが、極めて法人、個社、共助になっています。この仕組みの中では、確かに短期的な緊急措置として、とにかく雇用調整助成金を含めてお金を配って会社を維持するということをやらないと、社会の底が抜けます。ですから、今、やっていることは、私、否定しません。今の仕組みの中で、逆にこれより有効なものはあまりないです。ところが、やはりそれは裏返して言ってしまうと、この後、ものすごい、これから肝に銘じるべきと思われるのは、この仕組みのままでは、企業の新陳代謝とか、産業の新陳代謝はできません。どうしても新陳代謝をすれば廃業も起きるし、会社も潰れるし、退出は起きます。その中で、過度な個社、法人、共助依存でやっていると、必ずそこで悲劇的な失業や、悲劇的な人生の破壊現象が起きます。
これを解消しようと思ったら、既に何人かの方がおっしゃっていましたが、やはり流動性とか新陳代謝を前提とした包摂的な社会をつくり直さなければ駄目で、それをちゃんとやっていかないと、何となくグリーンだ、イノベーションだ、投資だ、それでうまくいくという訳の分からないバラ色のユートピア論は駄目です。絶対そうならない。今まで日本はそうなってきていないですから、ずっと破壊されてきた歴史です。黒物家電など、はっきり言って致命的にアウトです。だから、これから自動車がそうなってしまう危険性があるとすれば、その中で乗り越えていこうと思ったら、もうとにかく新陳代謝を前提とした包摂的社会経済システムをやはりもう一度、根本的につくり直すということに踏み出さないと、これはますます、すごく非効率なお金を出し続けることになる。
ぜひ長期的に、これを機会にそうした議論を、これは財務省にかなり頑張ってもらわないと、各省でやってしまうと、やはり何となく今の式を前提にちょこちょこっと答えを出す方向になってしまう。これも何人かの方がおっしゃっていましたが、かなり省をまたいだシステム転換を進めていただくようなきっかけにしてもらえれば良いと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、お願いいたします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
重複を避けまして、少し厳しい話からです。地方財政のところで、一般財源総額実質同水準ルールがきちんと守られたということは大きなことであると思いますが、実はその裏側で、それをファイナンスするために借金をリスケしています。交付税特会の借入金の返済期限を令和34年から38年に延ばしています。それによって、交付税特会から8,500億円が捻出されています。これについて、令和2年度における公債発行が100兆円を超え、令和3年度の当初予算における公債発行約44兆円に比べると、取るに足らない規模にすぎないということではなしに、リスケをしなければならないぐらい大変な財源難であるという認識がどこまで持たれるかが大事であると思います。
先ほど中空委員から、もし担当者だったら格下げであるということがございましたが、まさにリスケです。これをもとからたどってみますと、2007年に30年以内に返済するとしていたのですが、今やそれが令和38年、2056年ですから、もう20年もリスケしているということです。こういう実態はやはり知るべきで、財政の窮状を示すものであると思います。隠さず、表に出して、こうした議論がなされることが大事であるということが1点目です。
2点目ですが、中期の財政試算です。確かに、コロナが収束すれば当初予算だけで見るというのは一つの理屈ですが、実は今年の予算も、特別枠とか、コロナ対策の予備費を除いてプライマリーバランス対象経費が計上されているわけです。去年の試算では2025年の数字は86兆円でしたが、今年の試算では2025年、85兆円に減っています。もちろん、これは社会保障の改革などで歳出を削減したということがあるわけですが、実は私の印象では、中期防のように中期計画がある防衛費であっても補正予算にのせているわけです。そうした現実にあることも注視すべきであるということです。
何を言っているかというと、経済見通しを楽観的なものに依拠して、高めの税収を前提に、そして歳出についてもできるだけ楽観的にというような見通しでは、なかなか信頼が得にくいのではないか。先ほど宮島委員が、ふだんは我慢して、いざというときには対応するということは、国民として納得いただけているようにということでしたが、確かにふだん我慢しなければいけないし、そうあるべきであると思います。もう一方で、佐藤委員がおっしゃったのは政策と現場の乖離です。この乖離は、直すのに様々なシステムの経費であるとか、費用もかかっていくわけです。そうしたことも考えて、やはり冷静に見通しをつくっておく必要があるように思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
会場、オンラインを含めまして、御発言を希望された方は全員指名できたかと思っていますが、さらに追加で何かあればお受けしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
それでは、宇南山委員、御発言、どうぞお願いします。
〔宇南山委員〕すみません。最初に順番が来たときにはまとまっていなかったので、今、発言します。
全体として、ワイズスペンディングとか、選択と集中ということと、政府からのメッセージをどうやって伝えるかが重要であるということは多くの委員の御指摘であると思いますが、今回、御説明がなかったのですが、資料3の3ページにあります児童手当の改革についてです。建議の中で、所得制限を超える者への特例給付を廃止すべきであるということと、世帯合算の所得に基づき支給を判断する仕組みにすべきであるという2つがあった中で、所得制限は実現しつつ、世帯合算は今後の課題とされてしまった。
これが一般の受け止めとしては、政府は少子化、少子化と言っていながら、子育て世代への支援をどんどん減らしているではないかというメッセージとともに、格差、格差と言っていながら世帯合算はやめたのかということで、本来、出すべきメッセージとは非常に異なるメッセージが伝わってしまっているような気がしています。特に、特例給付等440億円、非常に大きいのですが、少子化に政府は真剣に取り組んでいないのではないかというようなメッセージを出してしまう。そのコストも非常に勘案されるべきではないかと思いますので、ワイズスペンディングというのは必ずしも小さく節約していくことではないと思いますので、政府が出していくメッセージをより有効に伝えられるような、真の意味でのワイズなペンディングをしていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、御発言はここまでとさせていただきます。これだけ財政出動が行われましたので、今日の御意見、それぞれ大変貴重な御意見でした。そうしたことを背景に、総論的に財政健全化に向けてどう筋道を立てていくのか等、財審できちんと受け止めて役割を果たしていく上で大変重要な御意見が多かったのではないかと思います。
春の建議は、基本的には大きな総論的なこと、各論、各分野については、より具体的には秋の建議のときにいろいろ取り組むわけですが、もちろん春も各分野のいろいろな議論が行われます。4月から、恐らく初めに財務大臣が来られて、それから通常どおりといいますか、財審の審議が行われていくことになるかと思いますが、実は今の体制の任期は、2年間の任期でございますが、3月31日までとなりまして、このメンバーでの審議は事実上、今回が最終回となるということでございます。この2年間、熱心な御審議ありがとうございました。そうしたこともございますので、最後に榊原分科会長から御発言をいただきたいと思います。
榊原分科会長、どうぞよろしくお願いいたします。
〔榊原分科会長〕それでは、私から一言、御挨拶を申し上げたいと思います。
委員の皆様におかれましては、御多忙の中、財政制度分科会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
ただいま増田分科会長代理からお話がございましたが、今日は現体制での事実上、最後の会合ということになります。そこで、私から、この体制での2年間の活動を簡単に振り返ってみたいと思います。
2年前、この体制が発足したとき、平成の時代でありましたが、平成31年4月に現体制が発足したわけです。まず、その春に、来るべく令和の時代の財政の在り方に関する建議、令和建議と呼んでいますが、こうしたものを取りまとめました。この建議では、平成時代の財政を厳しく総括した上で、令和の時代は受益と負担の乖離、それから将来世代への付け回し、こうしたことにきちんと歯止めをかける、財政健全化という厳しい航海を揺るぎなく前に進める時代とすべきと、指摘いたしました。
そうした中で、令和元年10月、政府が消費税率を8%から10%に引き上げました。これは、財政と社会保障制度の持続可能性に向けた長い道のりの一里塚にすぎないわけですが、令和建議等の提言が実ったものと受け止めております。率直に評価できると考えております。
その矢先に、世界中が新型コロナという荒波に襲われたわけです。我が国も、感染拡大防止、そして経済と雇用を守り抜くために、先ほど御報告がありました2度にわたる大規模な補正予算を編成しました。緊急事態宣言が出されて、財政制度等審議会の開催もままならない中、令和2年7月には、委員の皆様にお諮りした上で「会長談話」というものを公表いたしました。その中身は、国民の生命と経済、社会を守ることが最優先、ただし過度な政府支援は成長の足かせになりかねない、そして社会保障制度改革を着実に進める必要があることを指摘いたしました。
昨年秋の財審では、この会長談話の問題意識にも沿った形で議論を深めていただきまして、3次補正予算、令和3年度予算編成に向けた考え方を建議として取りまとめたわけでございます。この建議では、新型コロナの感染防止、経済回復、財政健全化の三兎を追う、この三兎の実現を目指すということをうたっております。具体的には、引き続き新型コロナ対応に万全を期す必要があるとした上で、感染状況等も十分踏まえつつ、単なる給付金から経済の構造改革への対応、あるいは生産性向上に資する主体への支援、に軸足を移していくべきであるといった指摘。それから、新型コロナの下であっても、社会保障制度の受益と負担のアンバランスを是正するために歳出改革の取組を着実に進めていくべきであるという考え方を示しました。冒頭、調査課長から、この建議の反映状況の説明をいただきましたが、こうした財審の提言は財務省にもしっかりと受け止めていただいたと思っております。
このように、新型コロナという荒波の中で財政健全化の航海を少しでも前に進めるということで、実りある議論を行い、考え方を取りまとめることができたと思っておりまして、この機会に、増田分科会長代理、起草委員会の委員の皆様方、それから委員の皆様方の御尽力に改めて感謝を申し上げたいと思います。
御案内のとおり、来年から、いわゆる団塊の世代が後期高齢者になり、社会保障費の増加が見込まれております。こうした構造的な課題への対応が不可欠でございまして、財政健全化の議論をさらに前に進めていかなければなりません。また、単なるばらまきは行わない、経済構造の転換を促していくということも引き続き重要な論点であろうと思います。先ほどから何人かの方に御指摘いただいておりますが、耳が痛いことでも日本の将来のために必要なことはきちんと提言、発信する、これが財政制度等審議会の使命であろうと思っております。今後、我々、財政制度等審議会の使命はますます重要になってくると思っておりますので、引き続き皆様方の御支援、御協力をお願い申し上げたいと思います。
私からの挨拶は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕榊原分科会長、どうもありがとうございました。
今の分科会長御挨拶の最後にございましたが、財審の使命は今後ますます重要になってくるということでございます。4月には新しい体制で再スタートということになるわけでございますが、引き続き財審の役割を果たしていく上で、今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。
時間が参りましたので、以上で本日の議題は終了とさせていただきます。本日の会議の内容につきましては、記者会見で私から紹介いたしますので、個々の発言につきましては報道関係者に対してお話をすることのないように御注意いただきたいと思います。
それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
午前10時55分閉会