財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和2年11月2日(月)13:00~15:15
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.議題
社会保障について
地方財政について
3.閉会
分科会長 | 榊原定征 | 中西副大臣 元榮大臣政務官 藤本政策立案総括審議官 角田次長 宇波次長 青木次長 中山総務課長 日室司計課長 森田法規課長 高田給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 坂口主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 | ||
分科会長代理 | 増田寛也 | |||
委員 | 赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 黒川行治 神津里季生 佐藤主光 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 上村敏之 河村小百合 喜多恒雄 木村旬 権丈英子 小林慶一郎 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 伊達美和子 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 冨山和彦 平野信行 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 横田響子 |
午後1時00分開会
〔増田分科会長代理〕ただいまから会議を始めたいと思いますが、本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
それでは、お願いします。
このまま、しばらくお待ちください。
(報道カメラ 入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。
今回から、再び財政制度分科会に場を移して、議事進行は私が務めさせていただきます。
本日の分科会も、コロナウイルス対策のために、対面と遠隔の両立ての開催としております。
また、議題ですが、本日は社会保障、これは第2回目になります。社会保障の第2回目と、地方財政を議題としております。
それでは、報道関係者の皆様方、御退室をお願いいたします。
(報道カメラ 退室)
〔増田分科会長代理〕まず、社会保障についての審議に入ります。
一松主計官、坂口主計官から説明をお願いいたします。
〔一松主計官〕厚生労働第一主計官の一松でございます。
社会保障について2回目になりますが、今回は、介護、障害報酬改定を控えまして、介護、障害分野などを取り上げます。第二主計官の坂口と、適宜、入れ替わりながら、御説明したいと思います。
資料3ページ目でございます。介護保険費用の推移でございます。制度の創設から約20年がたちまして、赤い矢印のとおり総費用は約3倍を超え、紫色の矢印、黄色い数字ですが、第1号保険料は約2倍の水準となっております。今後も、ともに増加していくことが見込まれております。
4ページですが、介護保険制度は3年ごとに事業計画を立てることとしておりまして、今年度が第7期の最終年度に当たります。来年度から第8期が始まりますが、制度改正は新たな計画期間までに準備期間を設けるため、前の計画期間の2年目、すなわち昨年度までに方向性を決めることとなっております。その上で、本年末、介護報酬改定を行い、第8期計画に反映させていくこととなります。
介護保険給付範囲の現状を俯瞰した資料が5ページになります。制度改正では、これらの給付範囲をどのように見直していくかが課題になるのですが、下にこれまでの制度改革を列挙しております。右下の赤枠で囲った内容が、昨年度までに方向性を定め、第8期計画に向けて行う予定の見直し内容でございます。
6ページは、その具体的内容でございます。食費、居住費の助成につきまして、資産勘案のため、1,000万円以下とされておりました預貯金要件を所得段階に応じてきめ細かく設定し、その際、黄色のところでございますが、第3段階をとの2つに分けまして、新たに設けましたの所得段階におきまして、食費の負担限度額を引き上げることといたしました。
また、右側でございますが、高額介護サービス費につきましては、負担上限額を医療保険に合わせて細分化することとしております。
下の残された課題にありますとおり、利用者負担のさらなる見直し等、第9期以降の計画期間に向けて宿題がたくさん残ることになっております。これまで当分科会で繰り返し御審議いただきながらも、積み残しになってしまったということを重く受け止め、見直しに向けた取組を強化してまいりたいと思います。
介護報酬改定に移ります。
7ページで、介護報酬の仕組みを紹介しております。介護報酬では、賃金は地域によって差があり、この地域差を介護報酬に反映させるため単位制を採用し、サービスごと、地域ごとに単価を設定しております。
8ページ目以降、令和3年度介護報酬改定についての考え方を説明いたします。
まず、8ページでは、キャプションの1つ目の丸で、介護費用の総額は高齢化などの要因により毎年増加しており、介護報酬のプラス改定は、保険料負担と利用者負担のさらなる増加につながるものであり、慎重を期すべきという当然の考え方を述べております。
そして、2つ目の丸では、足元、新型コロナウイルス感染症が国民生活にもたらしている影響を踏まえれば、通常のトレンドによる国民負担増に加えまして、令和3年4月からさらなる国の負担増を生じさせることはいかがなものか、全体の改定率では、国民負担を抑制しつつ、ICTの推進などによる運営の効率化などを推進すべき、という考え方を述べております。
9ページでは、介護サービス施設・事業所の経営状況を分析しております。令和元年度の収支差率は、一番左の青いグラフでございますが、全サービスで見ますと2.4%と、黄色や緑のラインで示されております中小企業と同程度の数字でございます。黄色が全産業の中小企業で、緑がサービス産業に限った中小企業になります。介護報酬は、計画期間の3年間を見据えて定めるものでございまして、過去の経営状況についても一定期間、3年間の状況を踏まえる必要があると考えられます。右側の平成29年から令和元年度の収支差率によりますと、経営状況は同じく中小企業と同水準です。
さらに、この収支差は、特別損失である事業所から本部への繰入れは反映している一方で、特別利益が反映されていないという偏りがあります。このような偏りを排するため、特別損失を除いた収支差率で見たものがオレンジの棒グラフになります。これを見ますと、介護サービス施設・事業所の収益率はさらに上昇します。このような特別損益を含まない観点からの分析は、サンプル数がより豊富な福祉医療機構が公表する経営分析参考指標でも用いられておりまして、それが灰色の棒グラフになります。
このように、近年の介護サービス施設・事業所の経営状況からは、少なくとも介護報酬のプラス改定を行ってまで国民負担増を行うべき事情は見いだせないと考えております。
10ページには、先ほど偏りがあると申し上げました介護経営実態調査の調査票と集計方法、障害福祉サービスとの違いを掲げさせていただいております。
11ページでございます。新型コロナウイルス感染者の影響について分析しております。左下のグラフのとおり、一部のサービスで一時的な利用控え等は見られましたものの、6月以降、状況は改善しております。また、右側にありますとおり、調査結果によれば、費用への影響は、人件費は影響がなかったとした事業所が9割以上であり、物件費は令和2年度決算でプラス1.0ポイントの上昇が見込まれています。ただし、物件費割合は約3割ですので、総費用の増加はプラス0.3%程度になります。このうち、消毒液の購入等のかかり増し経費につきましては、緊急包括支援交付金により支援が行われております。
キャプションの2つ目の丸にありますとおり、感染症対策等に伴います一時的な事象への対応ということであれば、報酬改定において恒久的な負担増をもたらす対応は適切ではないと考えております。
3つ目の丸にありますとおり、仮に何らかの対応を行うにせよ、これまで緊急包括支援交付金による支援などを行ってまいりましたが、令和3年度以降については同様の措置は必ずしも必要な状況ではないと考えております。他方、影響には、地域別、サービス別にばらつきがあることも踏まえまして、メリハリをつけながら、新型コロナウイルス感染症の流行の収束までの臨時の介護報酬上の措置を講じることまでを否定するものではありません。介護報酬による対応は、緊急包括支援交付金よりも、執行の迅速性や措置の継続性を含めた予見可能性において優れるものと考えております。
各論に入ります。
12ページでは、まずは介護職員の処遇改善の必要性との関係でございます。キャプションの1つ目の丸にありますとおり、これまで他産業の賃金が上昇する中で、介護職員の累次の処遇改善を行ってまいりましたが、真ん中左のオレンジのグラフのとおり、1人当たり現金給与総額は前年比減少している足元の状況がございます。左下のグラフの灰色の線のとおり、全産業では有効求人倍率が低下しております。介護報酬改定においてプラス改定による国民負担を求めてまで、処遇改善をさらに進める環境には必ずしもないと考えております。
介護職員の人材確保につきましては、まずは職業転換施策の推進や、請求が6割にとどまっている特定処遇改善加算の適用の促進、あるいは、右下にありますような社会福祉法人における社会福祉充実財産の活用による処遇改善の促進などが考えられると思っております。
13ページは、介護事業所・施設の運営効率化についてでございます。キャプションの1つ目の丸にありますとおり、そもそも介護報酬の総額が毎年度増加している中では、サービス提供体制次第で、介護サービス事業者が恒常的に増収増益を確保し得る余地はあると考えております。
2つ目の丸にあるとおり、利用定員増などには限りはありますが、そうであればこそ、ICT化などを促進し効率的なサービス提供を実現することにより、介護現場における生産性向上を図る必要があると考えております。
3つ目の丸にありますとおり、こうした取組は、介護職員の働きやすい職場を実現するとともに、介護職員の処遇改善の余地をもたらすものでございまして、今後、就業者数の大幅な減少が見込まれる中、介護サービスを安定的に供給していくために必要不可欠な取組と考えております。
14ページですが、キャプションの1つ目の丸のとおり、介護報酬については、これまで様々な観点からの改定が行われまして、右側の表の加算の種類の増加からも分かりますとおり体系が複雑化しております。
2つ目の丸のとおり、PDCAサイクルを回しながら、真に有効な加算への重点化を行い、介護事業所・施設の事務負担の軽減と、予見可能性の向上につなげるべきと考えます。
15ページですが、1つ目の丸のとおり、予算執行調査によれば、いわゆるサ高住に併設した事業所の外部サービスを利用するサ高住居住者の介護サービス利用量が多く、かつ区分支給限度額の90%以上の利用割合が多いという結果が出ております。
3つ目の丸のとおり、サ高住でのサービス利用につきまして、同様のサービス形態である外部サービス利用型の特定施設の報酬設定などを踏まえまして、利用限度額や算定できる回数の上限を設定すべきと考えます。
16ページでございます。福祉用具貸与ですが、左下の例で示されているとおり、購入した場合には自己負担は1万円で済みますのに、貸与を行った場合、赤字の毎月のケアプラン作成などに給付費がかかることになりまして、購入する場合に比して多額の費用を要しております。このため、廉価な福祉用具については、販売に変えることで毎月のケアプラン作成などの費用を不要とすることが考えられます。
17ページですが、キャプション1つ目の丸にありますとおり、介護療養病床につきまして、令和5年度末の廃止期限までに介護医療院への移行を行うこととしておりますが、転換に向けた検討が十分に進んでおりません。
2つ目の丸にあるとおり、医療では、令和2年度診療報酬改定におきまして、新基準に移行していない療養病棟の入院基本料の引下げを行っていることも踏まえまして、第8期における介護療養病床の報酬水準の適正化を図るべきと考えます。
18ページでございます。地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業でございます。左下のグラフにありますとおり、各自治体は高齢者の伸び率を勘案した事業費の枠内で事業を実施するはずでございました。これにより、訪問介護や通所介護をこの事業へ移行させることによりまして、重点化・効率化効果が生じるものとされておりました。ところが、高齢者の伸び率の上限を超過した場合、右のオレンジの枠内にあります厚生労働省が定めるガイドライン上では、一定の特殊事情がある場合には、個別の判断によりまして、上限を超えても交付金の措置を認めることとしております。
実態といたしましては、個別協議を行った全ての自治体で上限超過部分の交付金措置全額が認められておりまして、上限が機能せず、形骸化していると判断しております。右下の表にありますとおり、上限を超過している保険者数も、超過額も年々増加し、連続して超過している保険者数はかなり多いことになっております。重要な制度改革の根幹が、このような運用になっていることは看過できない問題と考えておりまして、原則として上限超過を認めないよう改めるべきと考えます。
19ページです。インセンティブ交付金は、介護費の抑制や地域差縮減に向けました保険者の取組を推進するものですが、実際には取組の成果に応じて交付されておりません。このため、キャプションの2つ目の丸にありますとおり、介護費用の抑制に直接的につながる指標のみを評価する方向に制度を簡素化し、アウトカム指標への配点の重点化を進めるべきと考えます。また、注にありますとおり、医療の保険者努力支援制度のほうでは、市町村ごとの点数獲得状況が厚生労働省のホームページで対外的に公表されておりますが、介護はいまだ公表されておりません。医療同様、評価結果の対外的公表を行うべきと考えます。
20ページですが、頻回のサービス利用者への対応の見直しでございます。訪問介護の生活援助サービスにつきまして、通常よりかけ離れた回数を利用している場合、自治体にケアプランを届出る仕組みが設けられております。しかし、届出を避けるため、生活援助から身体介護への振替が行われているとの指摘もありまして、身体介護も含めました訪問介護全体で回数の届出を義務づけるなど、制度の改善を図るべきと考えます。
〔坂口主計官〕第二主計官、坂口でございます。私から、障害福祉サービスについて御説明をします。
22ページを御覧ください。まず、ここ10年間の予算額の推移でございますが、約2倍に増えてございまして、社会保障関係費の伸びと比較しても顕著に増加をしております。これを裏づけますように、利用者数、事業者数ともに約2倍に増えている状況でございます。今後、サービスの質と、制度の持続可能性をともに確保していくためには、事業者の収支状況等も踏まえて、給付内容の効率化、適正化を行っていくことが必要不可欠であると考えております。
次のページを御覧ください。予算額の伸びの分析でございます。中段、右側の棒グラフでございますが、利用者1人当たり費用額の伸びに比べまして利用者数の伸びが高くなっており、障害福祉サービスを利用される方が増えていることが予算額の増加に寄与していることが分かります。この要因といたしましては、平成18年の障害者自立支援法の施行以降、障害福祉サービスの充実に伴いまして、利用者が増えていることが考えられます。
次のページを御覧ください。報酬改定上の論点です。まず、介護と同様、事業者の経営状況でございますが、障害福祉サービス事業者の直近3年間の収支差率は、一番左側にございますように4.6%となっておりまして、中小企業を上回る水準となってございます。また、事業所と本部の間の資金移動の中には、収支均衡を目的としている例があるとの調査もございますため、特別費用や特別収益を除いた収支差率を見ますと6.8%となってございます。したがいまして、今般の報酬改定においては、収支差率を踏まえた報酬水準の適正化を徹底するとともに、サービスごとの状況を踏まえて、メリハリのある対応を行う必要があると考えております。
25ページを御覧ください。新型コロナウイルス感染症の影響でございますが、短期入所のほか、生活介護などの通所を伴うサービスで、一時的に給付費の減少が見られたものの、足元ではほぼ回復している状況でございます。来年度以降の感染症への対応につきましては、介護同様、障害報酬によって臨時的な措置を講じることが考えられます。
26ページを御覧ください。ここから、各サービスの論点でございますが、まず就労系サービスについてでございます。一般企業での就労に向けた訓練、あるいは一般企業での就労が困難な方に就労の機会を提供するサービスなどがありますが、前回の報酬改定におきまして、一般就労への移行実績や、平均労働時間、平均工賃の実績が高い事業所に手厚い報酬設定を行いました。この結果が中段の帯グラフでございますが、一部効果は見られておりますが、実績が低調である事業所がそのまま存続している例も見られますため、さらにメリハリのある報酬体系を目指していく必要があると考えております。
また、一番下ですが、就労継続支援A型につきましては、厚生労働省の定める運営基準上、利用者の賃金を、税財源である障害報酬ではなく生産活動収入から支払うこととされておりますが、それを達成している事業所は全体の約3分の1にとどまっております。平均労働時間だけではなくて、利用者の賃金向上に向けた取組など、事業者の経営改善努力も適切に評価する報酬体系に変えていく必要があると考えております。
27ページを御覧ください。次に、放課後等デイサービスでございます。障害児の生活能力向上のための訓練や社会との交流などを通じて、自立を促進する障害福祉サービスでございます。費用額の推移、右側を御覧いただきますと、現在のサービス体系となった平成24年度と比較して約7倍に増加しており、その下ですが、事業所数も営利法人の参入を中心に約5倍に増加をしております。
次のページを御覧ください。予算執行調査によりまして経営状況を分析したところ、重症心身障害児向け以外の事業所や、児童指導員等加配加算を取得している事業所の収支差率が著しく高くなっている状況にあります。基本報酬や加算の水準について、コストを適正に反映したものとなるよう見直す必要があると考えております。
また、その質に関してですが、29ページを御覧ください。右側に、地方自治体や事業所からの現場の意見をまとめてございます。それによりますと、児童の自立にそぐわない30分未満での利用が複数確認されるですとか、児童の支援よりも営利を追求する事業者が後を絶たないですとか、そういった声が上げられております。放課後等デイサービスの報酬水準は1日単位となっておりますため、利用者がどれだけの時間を利用しても報酬は変わりません。制度の趣旨に沿わない利用を防ぐためにも、生活介護や介護保険制度における通所介護も参考に、利用者ごとのサービス提供時間を考慮するなど、サービスの質や費用に見合った報酬体系となるよう見直しを行う必要があると考えております。
次に、児童発達支援です。30ページを御覧ください。未就学の障害児に対しまして、日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練等を行う障害福祉サービスでございますが、これも近年、費用や事業所数が大きく増加をしております。予算執行調査の結果、児童発達支援センター以外の事業所や、利用定員10人以下の事業所の収支差率が著しく高くなっておりますので、コストを適正に反映した報酬に見直す必要があると考えております。
31ページを御覧ください。処遇改善加算ですが、訪問系サービスにおいて加算率が高くなってます。加算率は、全国の事業所における従事者数をベースとして計算されておりますが、この従事者数の根拠となっている社会福祉施設等調査の結果を分析いたしますと、従事者数が過大になっている可能性があると考えられます。社会福祉施設等調査において適正な従業員数のデータを把握した上で、加算率を算定する必要があると考えております。
最後に、32ページを御覧ください。事業者に対する実地指導でございますが、近年、行政処分件数が増加傾向にあり、報道によれば事業者の不正受給が増加しているとの指摘もございます。一方で、事業所開設などの権限を有する都道府県等における実地指導の実施率には大きなばらつきが見られます。厚生労働省は、3年に一度の調査をガイドラインで求めていますが、大半の自治体では実施していない状況にございます。障害福祉サービスにおいて悪質な事業者を厳正に排除していくことは、サービスの質と制度の持続可能性をともに確保していく上で不可欠の取組でございます。厚生労働省において、自治体による実地指導を促していくとともに、令和3年度報酬改定に当たっては、悪質な事業者の参入を防ぐ観点からも、報酬の適正化を徹底するとともに、これまで以上にサービスの質を適切に評価する報酬体系を目指していくべきと考えております。
〔一松主計官〕最後に、補論といたしまして、医療に係る新型コロナウイルス感染症への対応について触れさせていただきます。
34ページでございます。これまで新型コロナウイルス感染症への対応といたしまして、累次の補正予算、そして予備費において医療機関への支援を講じさせていただきました。34ページは、9月15日に講じた予備費の概要でございますが、御覧いただくと分かりますとおり、あくまで新型コロナ感染症患者を受け入れる医療機関への対応と、インフルエンザ流行期への備えという政策目的に沿った措置を講じておりまして、それ以外の医療機関に対しましては基本的に特段の措置は講じておりません。他方で、赤線が引いてありますとおり、そうしたところも含めました今後の対応につきましては、その対応の要否、在り方を含めまして引き続き検討するものとされております。
この赤線部分は、次のページ、35ページの大臣合意から引用されております。35ページを御覧いただきますと、地域医療の実態等を踏まえること、医療機関等の経営状況等を把握するといった前提条件がついた上で、その在り方も含め、引き続き検討するものとされております。これらの点に沿って御説明いたします。
まず、地域医療の実態等につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を36ページに載せております。10月8日に御説明させていただいたデータのアップデートなので、詳しい御説明は省略いたしますが、更新したデータでは、地域別のばらつきは収束傾向があるように見えます。他方で、右上の診療科別のばらつきは相変わらずでございまして、特に小児科への影響が続いております。
次に、医療機関の経営状況等の把握につきましては、37ページにおいて提案をさせていただいております。そもそも医療機関の経営状況等に関するデータは、都道府県に保管されているだけで見える化されておりません。医療法人につきまして、社会福祉法人並みの見える化を推進すべきという提案を37ページでさせていただいております。
最後に、在り方についてございますが、38ページにおきまして、これまで緊急包括支援交付金による対応が診療報酬の特例的な評価と連動してきたことを、キャプションの上から3つ目までの丸において指摘させていただいております。本日、介護報酬改定や障害報酬改定のところで指摘させていただいたこととも平仄を合わせまして、キャプションの4つ目の丸でございますが、仮に対応を講じるとしても、緊急包括支援交付金といった交付金措置よりも、臨時の診療報酬による対応に軸足を移すべきということを指摘させていただいております。あくまで介護、障害分野まで俯瞰した上で平仄を取った考え方として、医療分野でも仮に措置が必要であればという前提で申し上げているものでございまして、その上で、さらなる対応の要否については慎重に見極める必要があるものと考えております。
最後のページは、先ほど御説明した診療報酬と交付金の単価の連動に関する資料でございまして、御説明は省略いたします。
以上になります。
〔増田分科会長代理〕それでは、ただいまの説明に関して御意見等がありましたらお願いしますが、本日は神津委員により意見書を御提出いただいております。お手元にお配りしておりますので、お目通しください。
いつものように、御意見ある場合はネームプレートを立てていただければ幸いですが、テレビ会議システムを通じて御参加いただいている皆様方には、システムの中にございます「挙手する」というボタンのクリックをお願いします。
システムの運営上、まず、こちらの会場に出席されている委員を先に指名します。その上で、オンラインの皆様方に移りたいと思います。恐れ入ります、今回も御出席の皆様方の人数が多いです。限られた時間の中で御発言いただきますので、極力、御発言は手短にお願いを申し上げたいと思います。
それでは、こちらの会場の、初めに中空委員、中空委員から田近委員という順番で指名していきます。よろしくお願いいたします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
御説明、ありがとうございました。簡単に2つだけ、総論についてですが、応能負担の話が出ています。これはそのとおりであると思っておりまして、特に利用者負担の中でも応能負担は考えて良いであろうと思ってお聞きしました。
各論のほうですが、16ページにありました、実はレンタルが買い切るより高いという説明は少しびっくりしまして、個人の資本合理性に基づいた判断が、国の財政を減らすことと平仄が合わない制度設計になっているということが分かってしまったわけです。こうした制度設計の失敗はたくさんあるのではないかと思いました。例えば、18ページの上限超過に対する問題についても、皆が上限超過していますではなくて、それに対するペナルティーがないとか、このような事業会社がもうけても良いと思いますが、もうけられるようになれば補助金は要らなくなるのではないかとか、言い過ぎかもしれないですが、ひょっとすると制度設計の失敗が現状の肥大化につながっているのではないかと思いますので、そこは不退転の決意で見直していく必要があると思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、一度、堀委員のほうに戻します。堀委員、それから続けて田近委員と行きます。
お願いします。
〔堀委員〕すみません。
社会保障についてですが、全体的に各制度間の整合性にも配慮されていると思いますし、基本的な方向性には賛同いたします。その上でいくつかコメントを上げさせていただければと思います。
まず、6ページ目、第8期介護事業計画に受けた見直しのところに残された課題とありますが、利用者負担のさらなる見直し、ケアマネジメントの利用者負担の導入、多床室の室料負担の見直し、軽度者へのサービスの地域支援事業への移行、これらを同時に進めることによって、少なからず改善できるものも幾つかあるのではないかと思いました。
現在、利用者負担につきましては1割負担になっていますが、将来的には負担のあり方を検討すべきなのではないかと思います。また、介護職員の処遇改善は、介護人材の確保という意味では、非常に重要な視点であると思いますが、資料に示していただいておりますように、過去においてもかなり加算措置をされています。それにもかかわらず、実際には加算措置をしても介護職員の処遇改善に必ずしもつながっていないということは、介護事業者での分配のほうに課題があるようにも思いますし、加算検討の前に、実態把握をしたほうが良いのではないかと思います。つまり、介護報酬加算がどのように事業所の中で活用されているのか、内容の検証が必要であると思います。
また、資料で示されている福祉用具の件につきましても、ケアマネジメントの有償化、を含む見直し、利用者負担のあり方の見直しを進めれば、解消する可能性も少なくないと考えます。
地域支援事業につきましても、原則、上限超過を認めない方向性が示されておりますが、その必要性を否定するわけではありませんが、なぜ、そのような状態になっているのかを、PDCAサイクルを回して検証する必要があるのではないでしょうか。かなりの保険者が上限を超えていることは、何か制度的な課題があると思いますので、そちらの検証が必要なのではないかと思います。
それから、これまでにもそのようなお話しがありましたが、全産業において中小企業の経営状況が悪化しておりますが、中小企業が多く参入する介護も例外ではありません。生産性を上げる必要性があるということは認識しております。ロボットなどICTの活用は必要であると思いますが、生産性を上げるためにも職員の処遇改善も同時に重要かと思います。しかし、先ほどから繰り返しお話ししていますように、介護報酬は上がっているにもかかわらず、現場の職員に回っていないのではないかとも。恐らく、これは介護報酬の問題ではなくて、現場におけるオペレーションにおける非効率など何か別の構造的なボトルネック・課題があると思いますので、人材不足の解消も含めて、そちらを検討したほうが良いのではないかと思いました。
障害者総合支援法における事業所についてですが、実は盲点になっているというか、経営状態が比較的良いということはあまり知られておりません。障害者ケアと介護の事業者の経営状態の相違は何からくるのかを明らかにする必要があるのではないでしょうか。一部、障害者ケアに参入する事業所で問題があるところも指摘されていますが、不正防止の仕組みも必要ではないかと思います。
最後に、新型コロナ感染症への対応ですが、陽性、重症等の感染患者を受け入れた医療機関、福祉施設、障害者施設等に関しては相当の措置が必要であると思いますが、全ての医療機関、福祉施設に必要な措置ではないと思います。介護報酬、あるいは障害者総合支援法における報酬で、臨時的に報酬加算で対応することはあり得るとしても、恒常的に対応ものではないかと。恒常的に報酬加算をするならば相応の理由が必要だと思いますし、あくまで緊急事態の臨時的な措置という位置づけを強調したほうが良いと思います。いずれにせよ、実態をもう少し見た上で検証したほうが良いのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕私から1点、障害福祉です。障害福祉は、財審でもきっちり議論してもらいたいと思っていたのですが、今回、これまでに比べるとしっかり資料を作っていただき、ありがとうございました。
23ページですが、質問です。まず、社会保障関係費と比べて、この10年間、ものすごい率で増えていると。その増えている理由を見てくると、下の青いところですが、18歳未満がこの5年間で84.6%増えている。質問ですが、先ほど堀委員からもあったように、障害福祉は措置の時代から支援費制度になった。したがって、もう少し長いスパンの議論は必要でしょうが、つまり適切な福祉を必要な人にきちんと提供するという観点から考えると、なぜこれだけ利用者が増えていったのかをきっちり分析してもらいたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕御質問は、最後にまとめて答えるようにしたいと思います。
続いて、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございます。私からは2点です。
まず、介護、障害者福祉、両方に通じる話であると思いますが、やはりこの分野のサービスは、ある面、市場原理が働きにくいといいますか、少し卑近な例ですが、皆様がお食事に行く場合、やはり基本的に安い、うまい、早い。関西であると、安い、うまい、早いが一つの標語ですが、通常、ある程度のサービスは、質が悪いところは、本来、自然淘汰されるはずです。恐らく、介護サービス、つまり高齢者であるとか、障害児の方々は、なかなかサービスのよしあしを判断できない、特にそれを表に表明できない分野であると思います。ということは、逆にどんどん業者が入ってきたとしても、やはり相当質の悪いサービスを提供するところが、今日の御説明の中でもあり得ると。そう考えますと、サービスの質について、ICT化も含めた見える化とともに、都道府県等による実地指導の強化はもうやらないと、むしろサービスを享受している方が現実に不利益を相当被っている可能性があるので、今後、要介護者が急速に増える中、極めて重要かと思っております。
新型コロナウイルス感染症に関してですが、週末に、米国では新規感染者が大体10万人、世界全体では大体50万人に達しておりまして、全体で4,600万人と。先月、WHOが発表したライアン氏の報告では、もう既に10月の頭段階で全人口の1割が感染しているのではないかと。これはちょうど7億7,000万人ですが、そうした報告がありまして、やはりこの10月、11月になって、北半球の気温、湿度、UVが低下する中、相当、感染が拡大している。日本でも、そうした傾向が生まれてくる可能性は否定できないと思います。
そうしますと、やはり先ほどからの話で、一部の医療機関、コロナ患者を扱っているところは、この春、相当ひっ迫していた。一方で、相当余裕を持っているクリニックなどが並存しているということで、これはもう極めて、ある面無駄といいますか、資源の再配分を、仮に我が国でもこうしたパンデミックが、今、欧州でロックダウンが再開されているわけですが、まだ日本は感染者が少ないわけですから、そうした状況に備えて都道府県や地域、また、医療機関ごとの連携体制を今のうちに、強化しておくことが、この本格的な冬、今年はラニーニャ現象で12月以降、相当寒い。平年並みの冬ということは、近年に比べると相当寒い冬になりますから、そうした体制を今月、来月にやっておく必要があるであろうと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。3点、コメントいたします。
1点目は、介護保険の利用者負担についてです。参考資料1の4ページに、受給者全体の利用者負担の現状があります。介護保険の利用者負担は、高額介護サービス費や、医療と介護の負担の上限を調整する合算療養費制度によって、普通の人たちにとって自己負担の上限が無理なものにならない制度があるということを説明の表に出し、その上で低所得者対策はしっかりやるという原則にしてもよいのではないかと思われます。
といいますのも、少子高齢化が進む先進国では、様々な制度を就労に中立にしていく必要性が高まっております。働かないという選択肢を持つ高年齢者の労働供給は、将来の給付や負担も加味した手取り所得に弾力的であるという性格を持ちます。このことを考えると、所得が高まると自己負担割合が高まるという制度などは就労インセンティブを阻害することになります。労働力希少社会の中で、税・社会保障の様々な側面で就労中立という政策目標のウエイトが高まっていますので、こうした観点も考慮して、将来的には、所得に関わりなく、医療や介護の給付は必要に応じてという方向性も御検討いただければと思います。
2点目は、資料1の12ページ、介護報酬改定、各論の介護職員の処遇改善についてです。最近、労働市場一般の状況が悪化していることと比較して、介護関係職種の有効求人倍率は3.8倍と引き続き高い状況にあります。介護労働力の質の問題は大きく、賃金が低いと良い人材が確保できず、経験者や資格取得者が離れてしまうこと、また、デジタル化を進めて業務の効率を図る余地があっても、現場では対応できる人材が限られているという状況がございます。介護職員の人材確保、特に質の向上も重要な課題として捉えることが必要であると思います。
3点目は、障害福祉サービスについてです。全体として、サービスが充実し、障害を持つ人に対する理解や人権保障が進んできていると評価しております。ただし、23ページにもございましたように、予算額や利用者数、事業者数が急激に伸びてきている現状の中には、本日の資料で指摘されていますように見直しが必要なものがあると考えられます。サービスの質と制度の持続可能性を考え、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕私も、障害福祉サービスについてコメントがあるのですが、32ページで実地指導の強化を主張されていますが、この囲みの記事にありますように、国の給付費の不正受給が5年間で26億3,000万円に上るということは、先ほどこうした業者の経営が良いという話がありましたが、まともな経営努力で経営が良ければ良いのですが、給付を受けている割に、しっかりと障害者のためにコストをかけていない、適切なサービスを行っていない、そうした結果が利益の水準を上げているということであればやはり問題であると思います。サービスの質を確保するための実地指導の強化は、ぜひ進めていただきたいですし、特に障害者は自ら声を上げにくい方々であるということも踏まえて、こういう行政による指導はきっちりとやっていってもらいたいということが1点です。
もう1つは、コロナ禍の医療ですが、36ページのところで、小児科は前年割れという数字が多い。やはりこれは、今まで安易に医者に行き過ぎて、コロナ禍で医者に行ったほうが危険であるから行かないということになって、医者に行かなかったから小児で重病患者が増えたとかいう話もあまり聞かないので、過度な診療抑制は病気の重症化につながるという問題点はあるのですが、その辺、どちらが本当にあるべき姿なのか。毎日、マスクをして、手洗い、うがいをして、手指の消毒をしてという感染症にかからない生活を日頃から送った上で医者に行かないようになるのであれば、それは健康にとっても良いし、国の財政にとっても良いことなので、ぜひ、コロナ禍でこういう結果が出たことをきっかけに、適切な医療はどういうものであるべきかをもう1回考えていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕次に、田中委員、お願いいたします。
〔田中委員〕田中です。ありがとうございます。
介護に関してですが、地域の中でも、サービスの質にばらつきがあって、様々な評判が見受けられると聞きます。経営者の顔が見えず、現場の職員の方にしわ寄せが行っている現実もあるように思いますが、今日、いろいろとお示しいただいた中から、制度上、現在の設計が本来の理念どおりに行っていなくて、少し違う形で運用されていることが把握できます。そのためにも、現状を見える化するようなICTのツールを入れまして、メニューの組み方やトータルの質の検証を行い、冷静に分析をして、その上でサービスと支援をするポイント等を整理する、ということが本来の姿ではないかと思います。もし社会保障制度の分野で検討が進んでいるのであれば、ぜひ迅速化をお願いしたいと思いました。
応能負担の考えはもちろんそうで、納得感のある利用者負担分も出るはずですし、この部分の説明責任をしっかりと果たすという方向に持っていくことが、今、求められていると思います。
よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕続いて、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕御説明、どうもありがとうございました。介護に関し、意見を2点申し上げます。
1点目でございますが、13ページにありました介護分野へのAI、技術の活用の余地は大きいと考えております。介護職員の体力面、時間面の負担を減らすとともに、人でなければできないことに時間を割くことによって、入居者の方々のQOL向上にも資すると思います。また、中長期的には、効率的な人員配置につながることによって、財政にもプラスに効くことが望ましいと考えます。
その際に重要なのは、エビデンスと社会実装に向けたボトルネックの把握ではないかと考えます。昨年、そうした技術を積極的に導入している介護施設にお邪魔し、実際に見てまいりました。様々な先進的な器具が入っておりましたが、現場の方にお話を伺うと、非常に使いやすいといったものもあれば、使ってみたが現実的には使いにくく効果に乏しいものもあるといった声が現場レベルであります。したがって、そうしたエビデンスをしっかり積み重ねていくことが大事ではないかと思います。
2点目は、実証事業についてです。導入効果の実証研究や実証事業はよくされていると思いますが、そうした実証事業を行った後に、これが社会に普及するために必要なことは何か、そのためにボトルネックになっているものは何かを追求せず、実証実験をして終わりというケースがよく見られます。その点はそろそろ変えていかなければいけないと考えます。
最後に一言だけ、16ページの貸与の在り方です。これは、既に他の委員も御指摘されましたので、改めては述べませんが、制度設計上の問題と私も考えますので、これを機会にしっかり見直していただければと考えます。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神津委員、お願いします。
〔神津委員〕先ほど御紹介いただいたように、意見書を提出させていただいています。論点、多岐にわたるものですから、この場では絞り込んで、社会保障で幾つかの論点のみ発言したいと思います。
今回のテーマである介護、障害福祉は、いずれも政府が進めている介護離職ゼロ、あるいは障害者が活躍できる社会の実現に関する重要な論点であると思います。菅総理の答弁書なり、あるいは所信表明の中でも触れられているところです。将来にわたって、これらのセーフティーネットが安定的に機能し続けるよう、検討していかなければならないと考えます。
その際に、介護、障害福祉に共通する課題は人材の確保です。サービスは、働く人がいなければ提供されません。ロボット、センサー、ICTの活用、地域社会の支え合いの基盤をつくる努力は大事ですが、高齢者や障害者の尊厳ある暮らしのためには、適切なケア技術を身につけたプロのケアワーカーが不可欠です。にもかかわらず、介護職員の年収は、依然として全産業平均を100万円以上、下回っております。有効求人倍率も、全産業との乖離は大きくなるばかりです。
連合として調査しているのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、介護現場の人材不足が高まっているとの声が非常に多くあります。人材確保対策は、これまでにも増して喫緊の課題となっています。仕事に見合わない低い賃金を改善しない限り、新たな人材の流入は期待できません。人材の定着も、ままならないわけです。ぜひ、2021年度介護報酬改定で、一層の処遇改善を行っていただきたいと考えています。
また、一連のコロナに関わる問題として、医療機関、介護サービス事業者の患者、利用者の安全、そこで働いている方々の就労環境、そして、それぞれの経営に大きな影響が生じています。コロナ対応に関しては、被保険者への保健医療サービス及び福祉サービスの係る給付については、診療報酬及び介護報酬で整々と対応し、他方で、地域の医療、介護サービスの提供に深刻な影響が生じることがないよう、医療機関、事業所に対する財政支援を拡充すべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。私も、介護関係について、少し意見と、それから若干の質問です。
そもそも、今、神津委員もおっしゃっていただいたように、介護離職ゼロにはまだ相当遠いという理解をしております。くわえて、見えないコストという意味で、社会全体で、私自身も実はそうですが、介護関係で40代以降の人たちの時間なり労力が相当、取られているのではと非常に懸念しております。しかも、この問題は、放っておけば悪化する一方ということで、やはり量的、質的なサービスの向上を優先して考えていただきたいと強く思います。
今、挙げていただいているポイントは、総じて賛同いたします。効率化に資するものであると考えております。ただ、介護施設・事業所ですが、9ページ目にいただいているとおり、今回、収益は悪くないというデータをお示ししていただいた一方、倒産件数が相当増えています。前年同期で、恐らく2割ぐらい増えているのではないかと思っております。そこら辺の格差、平均だけでなく、少し分散もチェックしていただき、もしも収益的にサービスを続けられない事業者があった場合の対応も、考えていただきたいと思っております。
もう1つ、介護人材についてですが、今、神津委員からもありましたが、相当厳しい状況になっていると認識をしておりまして、そもそも時間が非常に不規則であり、くわえて賃金も低いということになると、今後、成り手がどうなっていくのか。もちろん、AIで一定程度、補完していくことを前提にしても、そこは慎重に調査を進めて、しかるべき対応を図っていくべきであると思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
介護と障害に関しましては多くの方の意見とほとんど同じですので、私は新型コロナウイルスの補論の部分で申し上げます。
まず、対応に関しましては、予見可能性から診療報酬のほうが優れているということで、診療報酬に軸足を移すことが御提案されています。このタイムリーであることなどは私も賛成ですが、少しだけ心配なのは、診療報酬の分配は割と医療系の人たちに議論の中心が行ってしまって、外の人が口を出す余地が少し減ってしまう印象を持っています。保険者機能を持つ方々がしっかり主張していただければ良いのですが、そこで診療報酬を増やす時だけではなくて、今後、だんだん出口を模索するタイミングもあると思いますが、不要となった加算などがそのまま維持されて新たな無駄が生じないような形で進めていただければと思います。
さらに言いますと、今日の後は、建議を書くようになると思いますが、全体として、やはりコロナの中で、財政制度審議会の出す建議が国民に対して優しくないと伝わるおそれを非常に感じております。もうワイズスペンディング・メリハリを言うということ、そして公正性を保つ、公正性を求めるということは、誰から見ても当然のように思うのですが、やはりこれが高齢者の負担増になるということは、その人たちの強い反対を引き起こす可能性があって、こんな大変なときに負担増なのかという声は大いに高くなって、そして財審はやはり国民の敵なのではないかといった空気が生まれることを非常に心配しております。
そこで、私が伝えたほうがよいと思うのは、今までに増してコロナは、実は高齢者ではなく、現役の世代に大きなダメージになっているということを、強く書く必要があるのではないかと思います。もちろん高齢者も大変な思いはされていると思うのですが、やはり収入が大きく減るなど直接のダメージは現役を中心に一部のところにかなり集中しているところがあって、そこを何とか助けなければ持続性がないことをしっかり言う。そして、そのためには、今、倒れそうな現役を支えるために何とかしてほしいということを出したいと。
私が恐怖に思うことは、今、目に見えて次の子供が減りつつある感じがデータでも出ていて、やはり現役世代が厳しくなると、若い人たちの生活が厳しくなると、次の世代を生み出すことをやめてしまうということにすぐつながってしまうのです。高齢者を助けて次の世代を潰すということは、最も国としてやってはいけないことなのではないかと思うので、建議におかれましては、支え切れなくなっているかもしれない現役を助けてほしい、あるいは、未来に向けてつなげてほしいということを、今まで以上に書き込んでいただければと思います。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕時間がありませんので、手短に3点ほど、介護保険に関連して意見を述べたいと思います。
まず、資料6ページに残された課題、ぜひとも第9期にはこれらが解決するような方向で議論していただきたいと思います。ところが、実は来年、議論しないといけないと私は思います。3年に一度の制度改正で、4ページにもありますように、制度が変わる前の年の通常国会で制度改正に関する法律を通すということで、2024年から始まる第9期ということは、2022年末までには制度改正についての議論を取りまとめるということで、確かに議論が本格化するのは2022年ですが、やはり2021年、つまり来年に第9期に関する制度改正の機先を制する議論を、財審でもしていただきたい。そうしないと、また第8期のように、結局は変わらなかったといったことが起こってしまうのではないかと大変懸念をいたします。そして、2025年には、いよいよ団塊の世代の方々が75歳以上になられる年を迎える第9期である、という重みがあると思います。
それから、もう1点は、16ページの福祉用具貸与に関してですが、借りるより買うほうが安いならば、買うほうを選ぶのであって、借りるほうを選ぶのは奇妙なことであるという人間の常識のようなことが、ここでは起こっていない。奇妙なことが起こっているということを、やはり国民にきちんと理解をしていただくことが必要なのではないか。そのからくりをここで見事にあぶり出しているのは、貸与業者が利用者に誘導しているという話ばかりであったら、確かにそうしたこともあるかもしれないということかもしれませんが、実はここにケアマネジャーがかんでいることが問題の本質としてあぶり出された。やはりケアマネジメントの利用者負担がないことによって、利用者が貸与でも良いかと易きに流れてしまうことが重大な問題であると思いますので、やはりケアマネジメントの利用者負担を導入するということは、この福祉用具貸与一つをとっても重要であることが例示されたのではないかと思います。
最後に、介護保険の応能負担についてですが、確かに高齢者の就労選択に中立になることは大事です。しかし、よくよく考えてみると、高齢者の就労インセンティブと要介護者の利用者負担が応能負担になることは全く矛盾しない。就労するということは、それだけ健常であり、要介護状態でないということであり、要介護状態になるということは、なかなか就労が難しいという状態で、所得でいえば、勤労所得を得ているというよりか、むしろ年金を中心とした所得を得ていて、それが高所得であれば、しっかりと応能負担をしていただくことになるのではないかという意味では、就労インセンティブと介護保険の応能負担は矛盾しないと、私は思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
私からは、新型コロナ感染症対策についてです。新型コロナについては、最近は、感染者数は多いですが、軽症者が多いこともあり、それが安心材料になっているように思うのですが、やはり海外の状況から見ても、先行きは不透明であるということは言えると思います。御紹介がありましたとおり、緊急包括支援交付金などのような措置はありますが、やはり不測の事態に備えてコンティンジェンシープランというものがあってしかるべきかと思います。さもないと、事が起きてから支援を決めるではなし崩し的な支援になってしまいますし、それでは財政規律も保てないので、やはりメリハリをつけるという観点から見ても肝要かと思います。
具体的には、少し2点申し上げたいのですが、1つは、やはりコロナ患者の受入れ病院に対する重点的な支援があるべきで、もちろん今回、御紹介があったとおり、診療報酬による措置はあります。ただ、それは患者を診たら、確かにいろいろと措置をしてもらえる。あるいは、空床を確保しておけばお金がもらえることはあっても、コロナ患者を受け入れると、いろいろと病院の話を聞くと、やはり入院患者を減らさなければいけない、手術を先送りしなければいけない、外来を止めなければいけないということもあるので、様々な減収が起きる。そうしたところに対する補塡はできていない、これをどうするかという問題があります。やはりそうした点で、迅速性を重んじるのであれば、ある意味、病院に一旦まとまった資金を与えて、後で診療報酬分を精算させるといった事後調整をかけてもよいかと、個人的には思っています。
また、もう1つ、金だけではなくて人のやりくりです。これは、まさに戦争と変わらないので兵たんの問題です。つまり、前線にいる人間たちを入れ替えていかないと、前線は皆疲れてしまいます。したがって、やはり人のやりくり、つまりコロナに対応する病院に対して、ほかの病院から応援に駆けつけやすい体制をつくっていく必要性があります。そのためにも、例えば逆に応援に人を派遣する病院の給与の一部を補塡するとか、とにかくそうした人のやりくり、それは医師だけではなく看護師、医療スタッフ、彼らの流動性といいますか、そこを担保するような措置はあってしかるべきかと思いました。
取りあえず以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
私も、介護報酬に関して1点申し上げたいのですが、プラス改定、これ自体は国民負担の抑制の観点から慎重にすべきという考えは理解できますし、まして、今回のコロナの国民生活への影響を踏まえると、とりわけ慎重にすべきであるという考えも分かるところではありますが、一方で、コロナで介護職員の方々はかなり御苦労されている。そうした中で、全くのゼロ回答は果たしてどうなのか。今回、資料でも挙げられていますように、コロナ収束までの臨時の措置、対応も一つ積極的にやるべきであると思いますが、コロナで介護人材の不足がより深刻化して、長く定着していくようになってしまうと、今度、構造的な問題になってしまう。そうなると、果たして臨時措置だけで十分済むのかどうか。そこは、国民の理解を得られるように、慎重に検討していったほうが良いのではないかと考えています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、オンラインで参加の委員の方を御指名したいと思いますが、今、登録がございますのは、河村委員、それから小林慶一郎委員、冨田委員とお三方です。
河村委員から、どうぞ御発言、お願いします。
〔河村委員〕福祉サービスのところで意見いたします。
田近委員や権丈委員も御指摘くださいましたが、23ページのところ、やはり近年、利用者が非常に増えてきている。権丈委員もおっしゃいましたが、国の努力も本当に実を結んでおりますし、社会での理解も進んできている。そうした中で、29ページのところで御指摘がありました、いろいろと問題があるようなサービスの利用状況が出てきていて、やはりこれは少し問題であると。前のところでも説明がありましたが、例えば障害児の放課後デイサービスとかに、大分、営利法人も参入してきている。これ自体は大変良いことであると思うのですが、さはさりながら、やはり利用状況に問題があるのであれば、今までの経緯はもちろんあるとは思いますが、障害福祉サービスについても、全部ということでは決してありませんが、今、申し上げたようなお子さんについては、本当に少しでもよいので、自己負担の復活を検討してもよいのではないのかと考えます。これまで障害福祉は、自己負担という考えが最初にありながらも、やはりやめる方向で来ているということは承知しておりますが、全部では決してありませんし、今のタイミングということでももちろんないのですが、今後、やはり一つの選択肢として、一部のサービスについては自己負担を少し薄く入れることも考えてもよいのではないかと思います。
もう1つ、一松主計官が最後に御説明くださいました医療機関の経営状況の把握はもう大賛成でございます。福祉医療機構が、WAM NETで一生懸命いろいろとやっていらっしゃる。これは、私も厚生労働省の仕事を少しさせていただいて、よく承知していますが、社会福祉法人だけではなくて医療法人についてもということで、やはりデータをきちんと開示して、皆がきちんと見られるようになるということは非常に意識づけになっていきますし、いろいろな政策対応の可能性も広がってくると思いますので、ぜひこうしたところは推進していただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、小林慶一郎委員、お願いいたします。
〔小林(慶)委員〕では、最後の補論の新型コロナ対策について、少しお話をしたいと思います。これは、先ほど佐藤委員もおっしゃったのですが、実は週末に佐藤員や土居委員とも話し合って、こういうことが必要ではないかという話をしたのですが、これから冬にかけてコロナの感染急拡大が起きる可能性があって、やはりそれに備えて、ある程度、財政措置を伴うコンティンジェンシープラン、あるいは危機管理プランというものをつくっておくことが必要ではないかということです。医療崩壊が起きて、また緊急事態宣言になると、もう1回ばらまきをやることになりますので、財政の健全化のためにもそうした危機管理のプランを事前につくっておくことは必要であると。
一方、今、目前のコロナ対策で自治体や厚生労働省は忙殺されておりますので、そうした危機管理プランの作成を、ぜひ財務省から厚生労働省や自治体に促していただきたいと思います。特に、やるべきこととして、規制の面で、医療機関の間で医療スタッフを派遣することが重要になってくると思うのですが、そのためには病院の人員配置標準が報酬に結びつくような、今の規制を少し緩和する必要があると思います。財政は、先ほど佐藤委員がおっしゃったように事前の一括補助金、そして事後的に精算するというやり方で、風評被害による減収の補塡などもできるような大胆な措置が必要ではないか。そうした大胆な措置をやることによって、冬場、コロナ対策に手を挙げてくれる、参加してくれる病院や診療所が増えることを期待したいと思います。
どうやってこの補助金を出すかといいますと、まず都道府県がコンティンジェンシープランをつくって、それに対応して基金を各都道府県に積んで、その基金は国が原則100%負担をして、その基金から各医療者へ一括補助金を出す。こういう大胆なプランを、この冬に向けてつくっておく必要があるのではないかと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
介護保険のインセンティブ交付金の在り方ということで、19ページで御説明をいただきました。去年もこの資料があったのですが、保険なのに何でインセンティブ交付金があるのかということは、なかなか不思議な感じがしていたのですが、去年と同じように今年もグラフが出ております。1人当たり給付費、これは年齢構成で調整したもの、それから認定率、この高低に関わらずインセンティブ交付金が配られているという様子。しかも、去年と同じで、大阪府と和歌山県で1人当たりの給付費が非常に多くて、認定率も高い。それで、長野県と茨城県で低かったことを去年の資料で覚えております。
そもそも、保険制度はそれ自体に効率化のインセンティブがある仕組みなわけです。受益と負担のバランスを取ろうとするインセンティブがあるのに、なぜこうしたものがあるのか。問題点と書いてあるのは、インセンティブをつけるとしても、どうやったらつくか分からないということを言っているのに等しいと思うのです。ですから、在り方の見直しというよりも、これは本当に必要なのかどうか。確かに、半分公費が入っているわけですが、保険制度にはこうした受益と負担のバランスを取るための保険者機能を発揮してもらうことが大事である。これは、今日の介護報酬の話など全てに通ずることであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
一通り御発言いただきました。御質問がございましたので、それに対しての回答を事務局からお願いします。
〔坂口主計官〕障害についてお答えします。田近委員から御質問がございました。障害児、障害者のサービスの利用が増えている、特に障害児のサービスの利用が増えているが、その要因分析が必要ではないかといった御趣旨の御質問であったと思います。
経緯を申しますと、障害児の支援の強化に関しましては、平成24年からそうしたものを盛り込んだ児童福祉法の改正法が施行されておりまして、それを基に非常に利用が増えているという状況でございます。こちらの資料に記載させていただきましたように、足元まで引き続き利用者が増えておりますが、これは基本的にはサービスの充実、また、使い勝手が良くなったことに伴いまして、特に障害児の利用が増えているということであると思います。ただ、委員からいただきましたように、その要因分析をより精緻に行うべきであるという御趣旨ですので、そこはしっかり宿題とさせていただきたいと思っております。
〔一松主計官〕佐藤委員及び小林慶一郎委員から、補論の新型コロナ感染症への対応について御意見を頂戴いたしました。
新型コロナ受入れの医療機関に対しましては、2度の補正予算及び予備費により、これまでしっかり支援してまいりました。特に、本日、改めて小林委員からは、今冬の感染拡大に備えた意見をいただいたところでございます。政府は、まさに8月末に、今冬を見据えました今後の取組をまとめまして、これを受け、34ページで御説明いたしました予備費を講じたところでございます。
危機管理計画という御指摘をいただきましたが、まさにこの予備費などを使いまして、都道府県は現在、新型コロナ患者専用の病院や病棟を設定するなど、受入れ体制を確保する医療機関を重点医療機関として指定いたしまして、新たな患者推計を基に、感染拡大の時間軸のフェーズに応じて、必要な病床、宿泊療養を確保する計画を立てております。
また、34ページにありますとおり、それにとどまらず、インフルエンザとの同時流行に備えまして、診療所の発熱外来に対する仕組み、今冬に向けて備えをしております。
先ほどの病床や宿泊療養に関する資金の手当てにつきましては、御説明したような診療報酬の特例的な評価、これは当然、迅速に交付が行われるものでございます。それに加えまして、緊急包括支援交付金の病床確保料などによって措置されておりまして、緊急包括支援交付金につきましては、都道府県に対しまして、この冬はもちろんのこと、年度末までに必要と見込まれます概算の金額を交付しており、医療機関は既に請求が可能な状態であると思っております。これらの措置を講ずるに際には、御指摘のありましたコロナ受入れ医療機関に医療従事者等を派遣した場合についても交付金で支援いたします。
これらの措置について、執行の円滑化に、迅速な執行に努めていくことがまずは大事であると思っておりますが、具体的な御意見をいただきましたので、今、政府が取っている措置で十分かどうかということも含めまして、改めて両委員に直接、御意見を伺う機会を頂戴できればと存じております。
貴重な御意見、ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、社会保障の議論はここまでとして、続いて地方財政の審議に入りたいと思います。
こちらは、関主計官から説明をお願いいたします。
〔関主計官〕地方財政担当の主計官をしております関と申します。よろしくお願いいたします。
資料2を御覧いただければと思います。
まず、1枚おめくりいただきまして目次がございますが、本日は、地方財政に関わる現行制度の枠組みを御紹介した上で、地方財政の課題を大きく3点、御説明したいと思っております。
3ページをお開きください。国と地方の歳入、歳出の状況でございます。歳入面は、国税が6、地方税が4の配分であるのに対しまして、歳出面は、国が4で、地方が6という割合になっておりまして、その調整を行っているのが地方交付税、譲与税でございます。地方財政をめぐりましては、国と地方で財源の綱引きを行っているということがよく言われますが、国・地方を通じたプライマリーバランスの改善を目指していく上で大事な点は、下の表の中にございますが、租税総額105兆円に対しまして歳出総額169.2兆円と、租税総額が大きく下回っているというこのアンバランスの是正が大事になっております。このためには、国・地方を通じまして歳出の見直し努力が重要であると考えております。
4ページでございます。一般会計における地方交付税交付金等の位置づけを整理しております。通常の地方交付税交付金に加えまして、住宅ローン減税などによる地方の減収分を補塡するための特例交付金、これを加えた額を指しますが、令和2年度の予算では15.8兆円となってございます。この数字、経年変化を右のほうで見ていただきますと、着実に減額してきておりましたが、近年は、国の税収増などの効果がありまして、若干増加傾向ということでございます。
5ページ目、お願いいたします。地方交付税の高さですが、表題にあります地方一般財源総額実質同水準ルール、いわゆる一般財源ルールに従って決定されてきております。このルールですが、下の絵で黄色に塗られている部分、地方税、地方交付税、臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債でございますが、こうした使途の縛りのない一般財源の水準を、2018年度に決定しました水準と実質的に同水準に維持するというものでございます。令和3年度につきましても、このルールを維持することとされております。このルールの下で、一般財源全体の高さが固定されまして、そこから地方税収や臨財債の発行分を差し引いたギャップ、赤枠で囲んでいるところでございますが、ここを埋めるのが地方交付税の額です。
その上で、キャプションの1つ目の丸に書いたとおり、まず、地方交付税額を国税の一定割合、法定率と呼んでおりますが、ギャップをこの法定率等で賄い、なお不足する場合は、不足分のところ、折半対象財源不足と呼んでおりますが、これを国と地方が半分ずつ追加負担して賄うようにしています。この点につきましては、昨今の税収増を受けまして、折半対象財源不足を令和元年度、2年度と解消することができています。
6ページでございます。一般財源ルールがどのように機能してきたかをまとめた図ですが、一般財源見合いの歳出額は赤い点線の水準で維持されてきております。そこから一部増やしたところもございますが、これは消費税率の引上げなどの財源が捻出できた場合の見合いに抑えられていまして、このルールは歳出面の規律として機能していると理解できます。その結果として、税収増の効果は、この下、折半対象財源不足等の推移にございますように、財源不足額の着実な縮小という結果に結びついてきたところです。
7ページを御覧ください。一方で、令和3年度予算をめぐりましては、これまでの税収増のトレンドが一転しまして、税収減が見込まれる環境下での予算編成になります。この資料は、予算の概算要求のタイミングに合わせまして総務省が行った仮の試算の中身ですが、国・地方を通じた税収減の影響により、真ん中の列のえんじ色に塗ったところですが、折半対象財源不足が4.2兆円発生するという絵姿でございます。また、右下のところ、一般財源総額は62.1兆円と前年度より増える絵姿ですが、これは一般財源ルールがございますので、社会保障費の動向なども見ながら、しっかり抑制していく必要があると考えております。
8ページ目でございます。新型コロナウイルス感染症による経済へのインパクトがございますので、これをリーマンショックと比較する議論がございます。地方財政の分野では、リーマンショック時に、左のほうを見ていただきますと、歳出特別枠や別枠加算という特別措置を講じてきた歴史がございます。別枠加算と申しますのは、先ほど財源不足額4.2兆円と御紹介いたしましたが、こうしたものについて国が特別な加算措置を講ずることによって、折半ではなくて半分以上、国が負担するという意味を持つものでございます。ただ、これらの特別措置ですが、このグラフを見ていただきますと、本来は21年度の対応として導入されたものでしたが、創設時の趣旨を超えまして、地方財源を確保するための理屈づけとして活用され、長い期間、存続する結果となっております。
9ページ目でございます。この特別措置を講じている間に何があったかを整理しておりますが、左側にございますように、地方交付税を受け取る交付団体においては、赤丸で囲んでおりますように、基金が積み上がったという結果になっております。こうした過去の歴史を教訓といたしますと、新型コロナウイルス感染症を理由として、安易に国の負担により、地方の長期的な歳出増を招くといった事態に陥らないようにする必要があるのではないかと考えております。
次の10ページでございます。地方における新型コロナウイルス感染症対策のための財政支援策としては、国は、令和2年度の1次補正、2次補正予算において、総額3兆円もの地方創生臨時交付金を既に措置しているところでございます。地方公共団体は、こうした資金を活用して、効果的な施策を講ずることが求められております。
11ページでございます。この臨時交付金の活用状況を、地方公共団体が内閣府に提出いたしました事業計画に基づいて整理した資料でございます。少し細かくて恐縮でございます。真ん中のところに1つ赤丸をつけておりますが、5月末に交付決定された1次計画におきましては、雇用の維持とか、事業継続といったメニューに重点を置いている団体が多かったのですが、状況の変化に応じまして、9月末に締め切られた右側にあります2次計画の段階では、経済活動の回復や強靱な経済構造の構築といったものを目的としたメニューに重点が移ってきております。
次の12ページで、個別の事例を整理させていただいております。黄色く塗った、雇用の維持と事業の継続のところの事業者への給付金の例に見られますように、国が既に講じている施策と重複するような上乗せ、横出し的な事業ですとか、緑のところ等々にございますコロナ以前でも行われてきたような学校のICT化等の事業が多いのが実情でございます。さらには、注に書きました、ごみ袋や公用車といった事例を挙げておりますが、コロナ対策との関連性が問われるような事業も見られます。
こうした実態を見ますと、地方が実情に応じて独自に行う必要があるコロナ対策は、今後、どのような分野にあるのかといった点は、慎重に整理される必要があるのではないかと考えております。
13ページ目でございます。これまで令和3年度の地方財政対策に関して申し上げましたが、総括いたしますと、国・地方とも税収が厳しくなる中で、一般財源ルールや、財源不足額の折半ルールというもともとの原則のルールを超えまして、地方だけに特別な配慮を行うことはなかなか難しいのではないかと考えております。その上で、令和4年度以降の地方財政を考えました場合には、地方においても社会保障分野の歳出増が見込まれる中で、どのように一般財源ルールを守っていくかという課題があります。この点に関しましては、歳出が伸びている分野だけに着目するのではなく、国・地方を通じた歳入歳出ギャップの解消という、最初に申し上げました長期の課題に取り組むべく、ここに付した会長の談話にまとめていただいた考え方に立ちまして、地方の歳出の在り方を見直していくことが重要なのではないかと考えております。
そのための切り口として、ここから3点、御紹介したいと思います。
15ページ目、御覧ください。まず、1点目の大きな固まりは、今の地方財政計画に関する問題でございます。このページと次のページにかけまして、歳入歳出の両面で、計画段階と決算の数字の乖離についての御紹介でございます。
15ページ目は、歳入面では地方税収が中長期的に上振れ傾向ということでございますが、実は上振れました場合には精算がなされません。1度、国が交付税としてお渡ししますと精算がなされませんので、結果として地方へ渡し切りということが発生しております。
16ページ目は歳出面についてですが、これについては、右側に表がありますが、国の予算でいうところの不用というものが存在しております。要因を見ますと、予備費的な性格を有します追加財政需要を使わなかったケースや、国庫補助事業が不用となったために、補助事業の地方負担分の財源として計上した金額が要らなくなったのに地方に渡し切りになってしまったケース、こうしたものが一定程度生じています。この点につきましては、使用実績を踏まえた地方財政計画への計上の適正化とか、不用額の精算とか、こうした取扱いの適正化が必要なのではないかと考えております。
それから、17ページ目、お願いいたします。現行の地方財政計画へ計上された経費の中身でございます。地方団体の標準的な行政サービスの提供のために財源保障すべき範囲はどこまでかという観点から、検証が必要ではないかと思っております。この審議会の中でも、過去に、中身の見える化が大事であるという御指摘をいただいており、個々の地方公共団体が独自で行うソフト事業に関しまして、総務省の努力もございまして、昨年度から決算内訳の開示が行われるようになりました。この取組を継続していただく必要はございますが、右側の表にございますように、非常勤職員の人件費やシステム経費といった施策横断的な経費、この辺りはまだ実態が見えない点もございますので、改良を重ねていく必要があるのではないかと考えております。
それから、19ページ目、お願いいたします。2点目の大きな固まりとして、地方公共団体の業務運営の効率化という課題でございます。このページの資料は、人材確保の観点を述べたものでございます。左上の棒グラフにございますように、人口減少により採用減が確実に見込まれる中で、総職員数を維持していくことが難しい状況にあります。そうしますと、限られた人材を有効活用するという視点が重要になってくるのではないかと思っております。そのためには、下の表にございますが、広域化・共同化とか、ICT化、既に取り組んでいただいている自治体はございますが、こうしたことを通じた業務の効率化を一層進めていくことが不可欠ではないかと考えております。
20ページ目の業務運営の効率化の観点からは、各地方公共団体の情報システムの標準化も課題でございます。いわゆるベンダーロックインという課題を回避するためにも、標準化を進める必要があると考えております。標準化に伴います地方公共団体の財政負担への配慮といった声もございますが、本来の目的は、行政サービスの効率化ですとか、質の向上といった点にございますので、お金がかかるという議論のみが先行するのは本末転倒ではないかと考えております。この点に関しまして、キャプションの最後の注に書いているとおり、国はシステム経費3割削減という目標を既に掲げてございます。地方のシステム経費に関しましても、こうした標準化を通じまして、同様のコスト削減メリットを目指していくべきではないかと考えております。
次の21ページにあるとおり、公共施設等の適正管理も課題でございます。これは、前回の文教のセッションでも、一部、同じような論点がございましたが、地方公共団体では、総合管理計画に引き続きまして、個別施設管理計画を策定しつつあります。今後は、複合化・共用化などの適正管理によるコスト削減効果を定量的に「見える化」いたしまして、きちんとPDCAサイクルを回していくことが重要ではないかと思います。
右上のほうに、愛知県の例を掲げさせていただきました。予防保全型の維持管理を行うことによるコスト削減の見通しをお示しになりながら、現状の経費と比較しながら、さらなるコスト縮減を図るといったサイクルを回していらっしゃる取組例も見られています。こうした「見える化」に努めながら、複合化・共用化を行い、コスト削減を着実に推進していくべきであると考えております。
それから、3つ目の固まり、23ページでございます。公営企業改革に関してです。今回は、公営企業の中で最もウエイトが高い下水道事業を取り上げております。
公営企業は、本来、独立採算制でございますので、利用者負担で事業を回していくのが筋でございます。その中で、下水道事業につきましては、雨水の処理は公費、それから、家庭などから出る汚水の処理につきましては使用料で賄っていくことが基本の考え方であろうと思います。左の棒グラフに書いておりますが、決算の数字から見ますと、本来は公費と使用料収入は1対3の比率であるべきです。しかし、実態を見ますと、左下のほうに書いているとおり、繰出基準自体におきまして公費負担割合が30%から70%と、そもそも原則よりも高めに設定されています。それから、右の棒グラフ、黄色く塗っておりますが、基準を超えまして毎年3,000億円規模で公費を投入している。こうした実態がございまして、原則とは大きく乖離した姿で公費が持ち出されている状況でございます。
24ページです。事業として成り立つようにするためには、左のグラフにございますように、広域化・共同化によりカバーするエリアの人口密度を高めるとか、間接部門を統合するとか、こうしたことによってコストダウンを図る必要があろうかと思っております。ただ、一方で、そうしたことを進める上で、同じ物差しである公営企業会計の適用状況を見ますと、右の表にございますように、小さい自治体をはじめとして、まだこの導入が進んでいないということがございますので、こうした取組を一層強力に進めていく必要があると考えます。
25ページでございます。左の円グラフにございますように、経営戦略自体をまだ作成していないようなケース、それからこれは国土交通省の調査になりますが、右の棒グラフで赤く囲わせていただいておりますが、使用料の設定に当たって他の自治体の水準との横並びを意識して改革に踏み切れない、こうした経営上の課題が見られます。繰り返しになりますが、広域化・共同化による費用の削減や使用料収入の見直しで、ペイする形での事業運営が求められていると考えております。
今回は、3点、御紹介いたしましたが、地方財政計画における歳出の在り方を、こうした取組を通じて見直しを行いながら、地方財政の歳出の規模の抑制に努めていく必要があるのではないかと考えております。
駆け足になりましたが、私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、これから以降、質疑に移りますが、こちらのテーマも神津委員から意見書が提出されております。御覧ください。
先ほどと同じように、ネームプレートを立てていただいた方から指名して、オンラインで参加の方はその後指名いたしますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
それでは、御発言をされる方、このパートは木村委員のほうから、私から向かって左側のほうから順次、指名いたします。
木村委員、どうぞお願いします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
私、コロナの関連で、地方への臨時交付金に関して、1点、申し上げたいと思っています。この趣旨、自治体が地域の実情に応じて、きめ細かに対応するという趣旨は大切でしょうが、問題は、その趣旨に沿っていかに適切に使われているかということで、資料の12ページに挙げられましたように、具体的な事業を拝見すると、特に枠外の公用車の購入とか、ライトアップとか、ユニークな取組と書かれていますが、ユニークどころか、単なる便乗にしか見えない事業が多く、便乗だけではなくて、本来、支援されるべき事業に回す予算がかえって少なくなってしまう。そうした問題もあるでしょうから、こうした予算は確かに一部かもしれないですし、本来、自治体がその予算措置する段階で議会がチェックすべきでしょうが、国として、制度として何らかの規律が働く仕組みを設けることは可能なのかどうかということも、今後、検討していただきたいと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、どうぞお願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
私も、まずは地方創生臨時交付金についてですが、先ほど御紹介があった緊急包括支援交付金とも似ていると思うのですが、これはKPI、アウトカム指標です。交付金ですから、何らかの成果を求めているはずなので、特に今回の地方創生臨時交付金は、臨時という名前はつきますが、地方創生交付金なので、先ほどの便乗も含めて、恐らくそれぞれ何らかのKPIがあるはずであると思いますが、この辺、どのように取りまとめられるのかということは、1点、質問です。
それから、2つ目は、地方財政計画の適正化のところ、いつもの話なので言っているほうも飽きてきているのですが、地方財政計画の単位、地方財政計画は性質別に計上するのです。そこから出てくる基準財政需要の単位、これは実は学校教育であるとか、土木費とか目的別です。しかも、その区分と地方の予算が合っているわけではないです。つまり、それぞれ違う単位です。尺があったり、マイルがあったり、センチがあったりというような感じで、これではPDCAサイクルが回るわけがないということになりますので、この尺をちゃんと合わせることをどこかでやらなければいけないと、毎年、言っています。
それから、今の話はマクロの話ですが、ミクロの話としまして、やはり自治体のデジタル化です。私、規制改革推進会議の仕事をしていて分かってきたのは、全ての規制は自治体に通じるという世界で、やはり自治体のほうでデジタル化が進まないと規制改革も進まないのです。例えば、オンラインでの申請や許認可といったものです。自治体のデジタル化を阻害しているのは、先ほど御紹介のあったベンダーロックインという問題もありますが、例えばデジタル化の最終的なゴールは、個人データの共有や利活用という視点で考えると、やはり例の2,000個問題、個人情報保護条例の問題であるとか、それから自治体内部ではシステムが結構分断しているのです。ホームページ上のシステムと、内部管理のシステムと、マイナンバーのシステムが違うので、そこで情報が一気通貫しないという問題もある。この辺、何かボトルネックがあるのではないかということを、少し検証してみたほうが良い気がします。
最後に、よく人材、人材と言うのですが、人材は外部から求めるのではなくて、そんなことをしたら、ますますどこかのコンサルなどに丸投げになってしまいますので、そうではなくて自分たちがデジタル人材になる。つまり、自治体の職員の中でちゃんとデジタル人材を養成していくという姿勢があってよいかと思いました。
取りあえず以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、どうぞお願いします。
〔土居委員〕2点、申し上げます。
地方交付税、恐らく来年、地方税収は減るので、ある程度出さざるを得ないということかもしれませんが、8ページにもありましたとおり、今年の予算編成の中で、歳出特別枠、別枠加算という臨時的な対応が恒久的に残ることにならないよう、あらかじめ時限措置であるということをコミットしていただく必要があるかと思います。
結局、税収が増えると、確かにその分だけ一般財源は増えるのですが、かといって歳出がそれほど増えないとなると、地方交付税を維持するために、もともとその趣旨ではなかった加算とか、特別枠とかが温存されてしまうようなことが、景気拡張期になっても依然としてその枠が残っているような状態を助長しているということがあります。確かに一般財源総額実質同水準ルールは、ある一定程度の経費の膨張を抑えるという側面もありながらも、もろ刃の剣のようなところがあるというところ、つまり、こういう枠を温存させてしまうおそれもあるというところは気をつける必要があるかと思います。地方交付税は、あくまでも標準的な財政需要に対応したものであって、標準を超えた財源保障までするべきものではないということを、これは原点に立ち返って地方自治体にも肝に銘じていただきたいと思います。
それから、24ページですが、下水道について大変重要な御指摘であると思います。特に財務省では、理財局の財政投融資で、地方公共団体の財務状況把握とか、実地監査をやっておられて、結局、地方支部部局、財務局に行ったところでは、主計局からの仕事も理財局の仕事もやることになりますので、もともと財政融資資金で下水道事業にも融資しているという仕事が一方としてありながら、当然、債権者として、財務省が下水道事業に対して償還確実性をきちんと御覧になっておられる。せっかく主計官がこうした御提案をなさっていますので、そうしたところとうまくタイアップして、財務省内で局を超えてタイアップして、下水道事業の経営改善を進めていただくことが重要かと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
20ページの情報システムの標準化についてです。先ほどもありましたが、やはりシステムのインフラの互換性がないことは非常に問題ですので、ベンダーも含めて互換性を高める、標準化する。これは言うのは簡単ですが、相当大変なことで、きっとデジタル庁の最大の仕事になるのではないかと思います。
その前提として、仕事のやり方といったものもまた共通化しなくてはいけないのですが、そのときに大事なのは、今あるものをそのままシステム化しようとすると大変なことになってしまうので、むしろ逆にデジタル化の中で業務改善を図る。民間企業は、もうそうしたコンセプトでやっているのですが、これも言うはやすし、行うは難しで、なかなか難しい。できれば、そのときに、公倍数的な考え方ではなくて公約数的な考え方、恐らく、いろいろな自治体で、きれいな言葉で言うときめ細かくやっているのですが、逆に言うと、本当にそこまでやるのかということがたくさんあると思います。トップランナーというか、むしろ公約数的にそちらのほうに持っていくようにしないと、これはどんどん膨らんでしまうと思いますので、ぜひそうした考え方でやっていただきたいと思います。これは、恐らく、デジタル庁だけではできないので、行革と一緒にやっていくのではないか。
最後に、標準化のベースとなるのはやはりマイナンバーであると思います。これは、鶏と卵の関係で、普及していないからできない、あるいはその逆ということですが、恐らくもうここまで来たら、国民的なコンセンサスとして、マイナンバーを前提としていろいろなものの仕組みをつくっていくべきということが、ほぼ出来上がりつつあるのではないかと思います。せっかくここまで来たわけですから、ぜひマイナンバーをベースに考えていただいても良いのではないかと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。私からは、2点、申し上げます。
先ほど土居委員がおっしゃったことと重なりますが、確かに地方で、コロナによって特定の業種や特定の方々にかなりしわが寄っているのは事実で、そうした方々への支援を国全体でどうしていくかという議論は必要です。一方で、そうした時限的な支援という趣旨を超えて長期間残存することについては、リーマンショックの後に適正化するのにかなり長い年月を要したことを考えますと、そこをあらかじめ踏まえた、適切な対応が必要なのではないかということで、その点、よろしくお願いいたします。
2点目は、今、広瀬委員がおっしゃられたことでございます。デジタル化を進めていく上で、やはり地方がかなり鍵であるということは皆様周知の事実であると思いますが、実際、どうやってデータを共通化していくのか。個々の地方自治体がばらばらにデジタル化対応をしますと、効率化どころか、むしろデジタル化の恩恵が地方自治体の皆様にも、それから国全体の財政という観点でもメリットが及ばなくなりますので、ここの進め方、あるいは考え方をしっかり整え、きっちり制度設計していくことが何よりも重要ではないかと考えます。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、どうぞお願いします。
〔田中委員〕田中です。ありがとうございます。私も、2点ほどお話しいたします。
12ページ、コロナについての臨時交付金について御説明いただきましたがKPIがもともとなくて、使い切りの予算が目立つということで、特に欄外のところは少し残念な例のようなことが示されましたが、持続可能性の担保に向けたアイデアが出されて、各自治体で良い使い方をされたものがあれば、それも共有いただくと良いかと思います。
17ページの予算のところについては、各自治体でホームページや広報紙などにも予算がよく公表されますが、一般的には住民の方々にとって難しく、なかなか理解されない。予算、費用の整理分類、紐付けの議論などもよく聞きますので、透明性と説明責任という意味でも特徴のある地域経営を行って、特徴ある予算の使い方をしていることを公表できれば、住民視点にもなりますし、地方財政が健全に使われているという証明にもなるかと思います。
もう1つは、皆様も言及されていたデジタル化です。今後、行政のデジタル化を進めていくには、共通基盤をつくって、プラス自治体でカスタマイズするということになると思いますが、この辺りには人材の問題が大いにありまして、先ほどのベンダーロックインが起きるのも、行政それぞれにデジタルの専門家が手薄であるという現状があるかと思います。広域化・共同化という観点からも、人材面で対策を講ずることで、例えば県から市町村へということもあるかもしれませんし、民間の副業としてデジタル人材が各市町に行くようなところに関してもセットで行うことで有効性が図られるのではないかと思います。
以上です。お願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
先ほどから皆様が御指摘になっておられる点とかぶるのですが、大きく2つ申し上げたいと思います。
まず、1点目、デジタル化です。菅政権がデジタル化を一丁目一番地として掲げておられる今こそ、これをやるべきであると思います。佐藤委員、広瀬委員をはじめ、皆様御指摘のとおりですが、まず、やるべきことは自治体業務の見直しです。そもそも今の業務フローが本当に良いのかどうか、余計なカスタマイゼーションは入っていないのかということをまず見直す、それをシステムに落としていくという作業をすべきです。その上で、標準的なシステムをつくって、それを統一化する。つまり、標準的なシステムをばらばらにつくられたのでは意味がないので、1つにすべきであると思います。
もし、それが実現すれば、国は今後5年間でシステム経費3割削減と言っていますが、自治体についてはもっと大胆に削減できるはずです。ということは、1,200か、1,300か知りませんが、それぞれがつくっているものを1つにしてシェアードサービス化すれば、つまり地方自治体事務システムセンター、これは銀行などは当然持っているわけですが、そうしたものをつくればよいのではないか。非常に大胆な人員の削減、地方の人手不足にはもちろん役に立ちます。それで、コスト削減ができるはずであると思います。
例えばですが、税、公金の収納支払いに関して言うと、昨年のこの会の資料によると、地方の徴税費用は人件費も含めて8,000億円。それから、これは私どもの分析ですが、公金を含めた納税者と金融機関のコストも、2,000~3,000億円かかっていると見積もっています。なぜこんなにコストがかかっているかといえば、アナログで、手作業が多くて、かつ自治体ごとに異なる帳票で、ばらばらなシステムで動かしているからということです。今、銀行界では、QRコードを通じた用紙であるとか、様式の標準化を進めていますが、これは言ってみれば序の口、経過的な措置です。最終的には、オンライン化で対応するべきであると思っています。
それに関して、もう1つ重要なのは、これも先ほど皆様から指摘がありましたが、データです。巨大なデータレイク、最近はデータベースの先にデータレイクという言葉があるのですが、これをやはり国と地方で1つ大きいものをつくる。もちろん、地方自治の原則はあるわけだから、レイクの中でパーティションは幾らでも立てられるのです。アクセスを、地方ができるもの、国ができるもの、両方からできるものと分ければいいので、システムもデータベースも国と地方で1つにすべきであると私は思います。
それが、まずシステムの標準化、統一化、統合化です。
もう1つ重要なのは、これは財審の議論と少し関係ないかもしれませんが、やはり個人情報の取扱いをもっと議論しなければいけない。マイナンバーがなぜ普及しないかというと、2つあって、1つは役に立たないから、ちっとも便利ではないから。もう1つは、やはり個人情報の取扱いについての日本国の、やや言葉を選ばずに言えばガラパゴス的な、世界でも極めてユニークな捉え方があります。今回のコロナ禍で、プライバシーと公益のバランスの議論が少し始まった、これは良いきっかけであると思います。その問題と併せて、個人情報を提供することによって、各個人が、国民がいかに便益を受けられるかということをきちんと説明しないといけない。これはマイナンバーも同じであって、マイナンバーを持っているとこんな便利になるということを、魅力のある施策として打ち出す必要があるのではないかと思います。
これは時間がかかります。人も要るし、3年、5年でできるわけがないです。恐らく、刻みながら10年ぐらいかけてやっていくのであろうと思うのですが、今、申し上げたような大きな構想を、ぜひ財務省さんにおかれても、他のデジタル庁、あるいは官邸とも共有してお進めいただければと思います。
また、2点目は簡単です。今回、コロナ禍に対応する様々な予算が組まれているわけですが、これも先ほどから皆様が御指摘のとおりで、1番はとにかく無駄遣いはやめてほしい。12ページについては、先ほどから皆様の御指摘がたくさんあります。おかしなものがいっぱいある、ワイズスペンディングを徹底するような仕組みをつくるべきである。もう1つは、臨時的な措置の長期化の回避です。先ほど、8ページ、9ページでリーマンショック後のケースが説明されましたが、ここを考えるべきであるし、もう1つ最後に、やはりお金を使うのと同時に出口を考えるべきときに来ていると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕では、3点申し上げます。
デジタル化ですが、この夏に地元の市町村を対象に少し調査したのですが、人口が少ない、もしくは今後、人口減少が進むと思われる地方自治体ほど、デジタル化に関心がないとか、ICT化の計画がないという状況になっています。小規模自治体ほど今後の人口減少は深刻なので、デジタル化は非常に重要であると思います。ただ、何でもデジタル化すればよいかというと、そうでもなくて、やはり優先順位を決めて、コストパフォーマンスを見ながらやらないといけないと思います。もちろん、自治体間同士で連携を取るシステムの共通化は不可欠であると思いますが、今は先進的でお金がある自治体ほど独自のシステムを構築してしまっているような気がしていまして、今後、問題になるかと思っています。
資料の21ページですが、公共施設等の適正管理ですが、公共施設等総合管理計画を策定したものの、なかなか削減計画が進まないという現状であると思います。公共施設の総量を削減することは、総論としては賛成ですが、個々の施設に議論が及ぶと反対意見が出てきて、話が進まないという実態になっていると思います。今後、施設の建て替えやランニングコストが増え、これが財政を圧迫するおそれがありますので、何らかの手を打たないといけないように思います。
24ページの公営企業会計ですが、下水道について広域化・共同化が必要なことは分かりますし、また、そのために「見える化」を進めないといけないということです。さらに、25ページにおいては、経営戦略が未策定の自治体が存在するということです。下水道分野については、広域化・共同化もそうですが、PFI/PPPの導入も非常に重要でして、そのためにも会計情報の「見える化」が非常に重要になっているということです。
これらの問題については、これまでも進めてきたわけですが、なかなか進まない自治体があるということで、何がネックになっているかを調べて、ボトルネックの解消に努めてもらうことが大事かと思っています。多くの場合は小規模自治体であると思いますが、補助金で解決できない問題があるので、やはり丁寧に見ていく必要があるかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございます。
15ページですが、これは計画と決算の乖離ということで、マクロ的に申し上げますと、以前も何回か申し上げていますが、国税でも、平均すると10年間ぐらいは税収が伸びて、10年に1回の危機でどんと税収が落ちるとともに、補正予算と歳出増で財政収支が大きく悪化するという事態がございます。15ページを御覧いただいても、前回のリーマンショック、平成20年辺りからどんと落ちて、その後は国際経済の回復とともに実績、決算が計画を上回るような状況は国税と同じです。
ただ、地方の場合、御案内のとおり国税に比べて税収が1年遅効し、昨年度から国税は相当落ちてきていますので、あと2、3年は相当厳しい状況が続くでしょう。その間に、国としても、それなりの財政対応が私は最終的に必要になるであろうと思いますが、やはり以前から申し上げていますように平時でしか財政再建はできません。こうした有事等の対応と少子高齢化、長期的な少子化高齢化を見据えた過去の財政健全化の枠組み、これはやはり別に考えるべきであろう。総務省も、来年度概算要求で、交付税特会の借入金の償還については、一応、計画どおりやるという案を出してきていますので、ぜひそうしたところは継続していただきたいと思っております。
また、これは話をするつもりはなかったのですが、皆様デジタル化の話をよくされているので一言申し上げますと、文部科学行政であるとか、中小企業の問題等を含めてデジタル化の必要性がずっと指摘されています。実は、国税、また地方税についても、私は以前も何回か申し上げたと思いますが、隣の韓国は、中小企業の決算でもずっと、要は売上等をオンラインで国税当局に出して、全部オンライン処理している。日本の場合、なかなか難しいところはありますが、お隣は徴兵制の問題もあって、日本よりプライバシーがある程度、国で共有されている面もあると思います。ただ、長期的に日本でこれから少子高齢化が進み、一方で人手不足、また、ICT化を進めるのであれば、やはり皆様がおっしゃっているように、アナログでやるのではなくて、もう最終的にはオンラインでやって、そこで全部、徴税手続も終える。個人でも、そうした方々に対してはインセンティブを出す。お隣の韓国であると、クレジットカード情報を出したところには還付金が年度末に来ますので、要はインセンティブをつけつつ、きちんと徴税コストを下げて脱税を防ぐ。そうした新たな枠組みを10年、20年計画でやっていかないと、私は最終的にはもたなくなるのではないかと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕ありがとうございます。
私からは、地方財政に対する国の関与の在り方、具体的には今年の予算をどう考えるかということです。5ページを御覧になっていただきたいのですが、おおむね関主計官の説明を私なりにアクセントをつけることになるかと思いますが、足元は、たしか2015年の地方の一般財源ルールというものがあって、2018年度の一般財源の水準を保障しようと。一般財源である地方交付税と地方特例交付金、地方税、地方譲与税等を保障しましょうと。ところが、今回は、地方税も減るし、交付税であげる法定税率も減る、したがって交付税は増える。それはルールですから、かなりの額ですが、受け入れなければいけない。したがって、今回、今年度の予算に関しては、折半で国も交付税、特例加算をしなければいけないのは分かります。その代わり、きちんと、それ以外の別枠加算はない、起きないようにするということが今年度の地方財政の最大の課題であると思います。
では、これからの課題は何か。このルールが適用されるのは、まさに今年までなのです。だからこそ、今日、関主計官が今後に向けての論点を出された。デジタル化についても非常に積極的に議論された。したがって、今年度まではルールを守らなければいけない、別枠加算は出さないという方針。そうすると、来年度以降、どう臨むかですが、やはり大きな点は、一番上に書いてあった地方財政計画における歳出歳入ギャップを交付税が埋め合わせると。私は、本当に財政が厳しくなってきたら、給付の自動調整のようなこともあり得るかと思います。つまり、交付税で払えるところまでしか、法定税率で払えるところまでしか払わない。だから、ぜひ今回の予算はきっちり成果を上げてもらいたいのと同時に、来年の春になると思いますが、来年度に向けて、デジタル化のことも含めて、どのように交付税で関与するのかというルールを、相当きっちり議論しなければならない。
また、コロナに関しては1点、事前説明していただいたときも申し上げましたが、11ページで、雇用の調整、事業の継続に3兆円の中の1兆6,000億円ぐらい使っているわけですが、この中で資金繰り対策とか、事業継続とか御指摘ありましたが、国がやっていることと重複すると思われるものがあります。さらに、これに加えて予備費もあるのです。予備費で小口資金の支援もしている。それは、実は銀行ではなくて社会福祉協議会、社協がやっている。そうしたところで、申し上げたい1点は、やはりダブりがあるということ、単にその指摘だけではなくて、資金繰りに関しては少なくとも全容がきっちり分かるように、どのようにサポートするのかをはっきりさせたほうが良いと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
多くの委員の方がおっしゃったデジタル化の効率化の徹底ということと、別枠加算の時限的措置化ということについては強くお願いしたいと思いますが、私からは1点だけ。
先ほど佐藤委員から、交付金だからKPIはあるよねという話がありましたが、私もそこが気になっていて、セーフティーネットになると良いようなものも、今の状態では使わなければ損になっているかと思います。先ほどの社会保障のところでもそうでしたが、制度設計の失敗が多いと思っていて、農業政策などもそうかと思いますが、使わなければ損という考え方のものがどんどん出てくると、当然、財政膨張につながってしまう。今回できないかもしれないですが、やはりペナルティーとかインセンティブ、地方自治体の努力が何か結びつくようなことを考えていかないと、いくら大元で締めても一緒という気がしてなりません。その点については、今後の課題として提案しておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕今、時間とするとちょうど3時で、予定された時間ですが、まだ御発言がございますので、もう少し延長したいと思います。手短にお願いいたします。
それでは、堀委員、お願いいたします。
〔堀委員〕では、手短に1点だけ。
ワイズスペンディングが求められていると思いますが、先ほどの地方創生臨時交付金の活用の中身について、賢い使途といえるかどうか判断が難しいものもあるかと思います。交付する際は、KPIを設定、「見える化」を進めるなどし、効果が上がっていない場合は、翌年度以降に何かしらのペナルティーを置くなどの仕組みにしない限り、同じようなことが繰り返されるのではないかと思いました。
一方で、宮島委員が社会保障制度について先ほどおっしゃったことは地方財政についても当然あるのではないかと思いました。財政審として、財政健全化の必要性を国民に届くような形でメッセージを発信することは重要だと思います。ある市町村の選挙で、物理的に実現不可であるにもかかわらず、「コロナ対策といって1人5万円を配る」と言ったことによって、無風とされていた選挙の情勢が大きく変わったということが報道されていました。現金給付が争点となり、急に投票率も上がって、配るといった候補者が当選したということでした。財政の仕組みや状況を一般の市民の方たちに正しく伝えていく必要があるのではないかと思います。まるで蛇口からお金が、必要に応じて湯水のように出てくると勘違いされるような状態になると将来のつけを大きくするだけかと思います。丁寧かつ客観的なエビデンスを伝えると同時に、理性だけではなくて何かしらの国民感情にも訴えるようにメッセージを伝えていかないと、深刻な状態がさらに深刻になるのではないかと。私自身は、ワイズスペンディングという意味で、無駄な支出は削減する必要性があるという考えをもっておりますが、厳しいとことをただ言い続けても伝わらないでしょうし、コミュニケーションは重要だと思います。
最後に、公営企業改革については、公立病院も同じですが、ぜひ「見える化」と、それから会計適用を徹底していただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕横田です。
私からは、皆様もお話しされているデジタル化についてです。20ページに既に記載いただいていますが、今回のシステムの標準化については、地方制度調査会で7月上旬に答申がなされていて、地方6団体も含めて標準化に関してはかなり前向きな書き込みがなされておりますので、標準化を前提として、どう地方自治体が今後の計画を立てていくのかが重要であると思っています。先ほど来、専門人材はすぐ採れないので、共通的に、広域的に共有化していくということであったりとか、既存人材の再配置であったりとか、計画はもちろんですが、その上で、今、自治体で、リモートワーク環境だったりとか、環境面もこのコロナ禍でどれぐらい整備できたのかということは確認が必要なのではないか。良い人材を採っていくためには、良い環境がなければ活用できませんし、そこも含めて現状把握と来期以降の準備をしっかりとしていく必要があると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、次、オンラインのほうで発言登録のある方は、進藤委員、赤井委員、冨山委員、河村委員と4名の方でございますので、この順で順次お願いいたします。
進藤委員から、どうぞお願いします。
〔進藤委員〕ありがとうございます。
たくさんの委員の方がもう言及されましたが、デジタルについてです。これは、毎年、発言させてもらっていますが、どこの自治体も共通の仕事が多いので、特殊な仕事でない限り、自治体毎のカスタマイズが必要になることは多くないと思います。ただし、重要な点は、管理のメッシュをきちんと統一して推進していく、そのためのリーダーシップをどこが発揮するのかということです。そうした意味では、今回、デジタル庁ができますので、ぜひこれは国主導で進めていただきたい。地方自治との関係はありますが、やはり国主導でひな形をつくって標準化を進めていくというスタンスに立たないと進まないので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕続いて、赤井委員、お願いいたします。
〔赤井委員〕2点ほど。7ページですが、折半対象の財源不足がようやく昨年ぐらいにちょうどゼロになり、これから積み上がってきた残高、臨時財政対策債の残高を減らしていくというところに来ましたが、来年度は再度発生することは仕方ないということで、できるだけこうしたものは継続しない。臨時という言葉もついていますから、臨時財政対策債は継続して生じないことが望ましいので、歳出、歳入の在り方は厳しく見直していくべきであると思います。今後の話ですが。
それから、6ページのところと、コロナ対策のところに関係するのですが、まず、実質同水準ルールはもう定められているので、それに従ってしっかりと予算策定していくということで、曖昧なまま追加の歳出を膨らませないということが大事かと思います。コロナ対策は、必要というものを募ればどんどん出てくることは仕方ないと思いますが、やはり透明性を持って対応する。特にコロナ対策は、単に失業保障的なものではなくて、将来につながるように、今後、コロナの第2波、第3波が来ても抵抗力をつけるよう、ここにも書いていただいていますが、強靱な経済体制をつくるものに使うべきと。これまでに配布された3兆円の交付金の使い方も、既に議論も出ていますが、しっかりと検証して、今後に向けてまた交付金を配ることがあるかもしれませんが、そのときに役立つように検証、さらにPDCAを回していく。これまでにあった地方創生交付金でも、検証作業は進められていて知見もあると思いますので、それをベースにしていく。特に、地域の人材力のようなものが、地方創生でも、今回の交付金の使い方でも影響していると思いますので、ミクロ的に各地域でどういう課題があるのかというところも見ていくべきであると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨山委員をお願いいたします。
〔冨山委員〕ありがとうございます。
意見というよりは予言をしておきますが、先ほどの地方創生臨時交付金関連、これは恐らく、閉じられなくなってしまって、だらだら続くと思います。何が起きるかというと、個人に直接、出しているものはまだ良いですが、会社に出しているものは、結果的に途中からほぼゾンビ延命に使われることになるので、恐らくこうした産業群の生産性は長期的に下がっていくと思います。結果的に、今、官邸の、菅総理を中心に言っている再編は間違いなく止まります。恐らく、間違いなくそうなります。
結局、生産性は上がらない、賃金は上がらないという方向に途中から作用するので、皆様がおっしゃるとおり、途中できれいに引いたほうが良いです。恐らく、これは止められないです。そうなると、私は政治的に予測しております。信じております。だから、本当に気合を入れて、政治的に相当なキャピタルを使わないと、恐らく、これは止められないです。また、半年もしたら、皆十分に麻薬患者になっています。実際、近場で、我々、バス会社とか、旅館とかやっているので、よく分かりますが、そうなっていく可能性は高いです。これは、長期的にものすごく禍根を残す可能性があると思っているので、財審としては相当気合を入れて牽制球を投げたほうが良いと私は思います。
もう1点、地域のインフラ、地方のインフラ関係のシステム、公営企業体などはその典型ですが、過去、ここでも議論されていたように、実はこの辺の効率性はほぼ密度で決まってしまうので、基本的な居住形態の集住化を進めていかないと問題は解消しないです。下水道事業を幾ら大きくしても、過疎地の下水道会社と過疎地の下水道会社をくっつけるととてもおかしくなる、駄目駄目な下水道会社ができるだけなので、この中にありましたが、結局、要は人口密度の高いところに集約していかないと絶対効率は上がらないという脈絡でどうしていくか。今後、非常に大きな意味での国土計画をどうするかという問題。
一方で、違う方向にお金を使いたいというインセンティブは、やはり先ほどと同じで地域では働きます。結局、かわいそうという議論がどうしても先立つので、限界集落はかわいそうであるということで、そこにどうしてもお金を使うという引力が政治的に働くので、それは何とか財審のほうで頑張って、少しでもそうしないように、逆に集住する方向にお金をつけていくことが引き続き大事であると、改めてこれを見て思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、どうぞお願いします。
〔河村委員〕御説明、ありがとうございます。私からは、地方財政の今後の方向性に申し上げます。
主計官も御説明くださいましたが、足元のコロナ対応をどうするかというところに加えて、やはり令和4年度以降、どういう形でやっていくかということを真剣に考える必要があるのではないのかと思っております。15ページの計画と決算の乖離というところですが、やはりこれだけ乖離額が出ている以上、根本の計画のつくり方に問題があるのではないか。ですから、対応としては、次のページでお示しいただいたように、手続面というか、もし使わない分が出たのであればきちんと後年度の歳入に繰り越すとか、そうしたルールを入れていくこともちろん必要です。それと併せて、計画の策定の仕方、基準財政需要額のはじき方の話も先ほど出ていましたが、やはりそこに少し立ち返る必要があるのではないのか。本当に総務省、十年一日のごとく、変えていないところがあると思いますので、きちんと変えることも視野に入れて議論していくべきではないかと思います。
また、地方一般財源総額実質同水準ルールについて、平成23年からずっと、ということで10年間ぐらいやってきて、これだけ人口減少が強烈に進んでいて、次の10年であればもっと強烈に進むとみられているなかで、地方の一般財源は毎年、前年と同じ額でということだけでは、多分、今後は回らなくなるだろうと。人口減少に対応できるルールを考えたほうがいいと思います。先ほど、お話のあった財源不足もせっかくなくすところまで、ついこの1年前にいったのに、また増えてしまってということになりましたし、また危機対応に必要な費用をどう見ていくかということで、過去、リーマンショック以降、ずるずる、ずるずる歳出特別枠であるとか、別枠加算がずるずる、ずるずる続いて、まち・ひと・しごと創生事業費とかで、いろいろずるずるいってしまったということがありますので、そういうことにもつながらないように、今後、長い目で在り方を見据えて検討していくべきだと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ひととおり御発言はございましたので、ここまでとし、最後に主計官から質問に係る部分で何かありましたら。よろしいですか。
それでは、今日の財審は、地方財政もここまでとして、議題は終了といたします。
いつもどおり、会議後の記者会見で私から内容を紹介いたしますので、個々の発言につきましては報道関係者にお話しすることのないよう御注意をお願いいたします。
それから、秋の審議における総論、各論の議論は本日で終了となりますので、今後は建議のとりまとめに移ります。起草委員については、事務負担等を踏まえまして、これまでもお願いしておりました小林毅委員、田近委員、土居委員、冨田委員、中空委員及び吉川委員に、今回、武田委員を新たに加えた7名の委員の皆様方にお願いをしています。お忙しいところ大変恐縮でございますが、各委員の皆様方はどうぞよろしくお願い申し上げます。
次回は、11月16日、9時半から、建議のたたき台について審議を行うことといたします。
以上で、本日は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
午後3時15分閉会