財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和2年10月8日(木)13:00~15:15
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.議題
社会保障について
3.閉会
分科会長 | 榊原定征 | 伊藤副大臣 中西副大臣 元榮大臣政務官 角田次長 宇波次長 青木次長 中山総務課長 日室司計課長 森田法規課長 高田給与共済課長 有利調査課長 中島主計官 大久保主計官 飯塚主計官 渡邉主計官 関主計官 岩佐主計官 一松主計官 坂口主計官 波戸本主計官 藤﨑主計官 渡辺主計官 山川主計企画官 井上主計企画官 | ||
分科会長代理 | 増田寛也 | |||
委員 | 赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 黒川行治 神津里季生 櫻田謙悟 佐藤主光 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 南場智子 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 秋池玲子 上村敏之 宇南山卓 葛西敬之 河村小百合 喜多恒雄 木村旬 権丈英子 小林慶一郎 小林毅 進藤孝生 末澤豪謙 田近栄治 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 平野信行 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
午後1時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、時間が参りましたので、会議を始めたいと思います。本日は冒頭でカメラが入りますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
それでは、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会の財政制度分科会を開催いたします。
前回に引き続きまして、今回も、この場でのリアルの出席皆様と、テレビ会議システムを通じての参加と両立てになっております。また、密を避けるという観点で、各主計官もテレビ会議システムを通じて参加となります。
御発言をするときには、マスク越し、それからウェブの方はウェブ越しの開催となりますので、音声が明瞭に伝わりますように、御発言はできるだけマイクに近づいてお願いします。
それから、資料も、今回も紙配付としております。
そして、本日の議題でございますが、「社会保障について」となっております。
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、報道関係の方、御退室をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、審議に入りたいと思います。
初めに、一松主計官、坂口主計官から説明をお願いします。
〔一松主計官〕厚生労働第一主計官の一松でございます。
社会保障につきましては、年末に介護、障害報酬改定を控えまして、今後、別の機会に介護、障害分野などを取り上げる予定でございます。そのため、今回はということで資料を御用意しております。第二主計官の坂口と、適宜、入れ替わりながら御説明いたします。
資料3ページ目及び4ページ目は、委員の先生方には改めて御説明するまでもない内容でございますが、我が国社会保障の受益と負担の乖離の状況についての資料です。3ページ目は給付が先行して税財源が追いついていない状況、4ページ目は諸外国と比較しつつ、中福祉、低負担というべき状況を示しております。
こうしたアンバランスの是正の一助といたしまして、5ページ、社会保障関係費を高齢化による増加分に相当する伸びに収めるとの歳出の目安があること、さらには、おめくりいただきまして6ページの下線部にありますとおり、来年度予算まではその目安が存在すること、そして、2022年からは、団塊世代が後期高齢者に入るため、社会保障関係費の急増が見込まれること、いずれも委員の皆様は御承知のとおりです。
改革の焦点となる医療分野でございますが、8ページを御覧ください。今世紀に入っての医療費の伸びは、青の字で書いてある約1.6倍でございますが、右下にもオレンジで約1.6倍とありまして、75歳以上の後期高齢者の医療費の伸びは制度が創設された2008年から同じ1.6倍に達しております。65歳から74歳までの前期高齢者の医療費まで含めた高齢者の医療費で申し上げますと、全体の約6割に上るという数字が右側で示されております。なお、前期高齢者の医療費の約8割が国保の医療費です。
9ページ目は、実績が判明しております2017年度の医療費の構造でございまして、一番左側の棒グラフでは、今、申し上げた後期高齢者医療給付分が多いこと、また、前期高齢者が多くを占める国保の医療給付費が多いこと、一番右の棒グラフでは、費用構造といたしまして、医薬品の薬剤費が2割強を占めていることがお分かりいただけるかと思います。
次のページは、薬剤費についてです。青の線でございますが、既収載の医薬品については薬価改定で価格のマイナスが続いております。一方、赤の折れ線でございますが、薬剤費総額としては増えております。その理由といたしまして、使用量が増加しているほか、新規医薬品の保険収載があることを示しております。下の黄色い帯に書かれているような数の医薬品が、毎年、収載されております。
11ページは、足元の新型コロナウイルス感染症への医療費の影響でございます。中長期的な受診行動の変化につながるかは、なお見極めが必要と考えておりますが、左上の制度別のグラフを御覧いただきますと、本日、これから取り上げます高齢者医療、あるいは医療扶助に係る影響は相対的に小さいことが分かります。右上のグラフの調剤の動きを見る限り、これも本日、これから取り上げます薬剤費の影響も相対的に小さいと考えております。下段のほうでは、地域別、診療科別でまちまちな状況が見てとれまして、左下の地域別では、7月はそれほどでもございませんが、6月までは感染が目立つところほど影響が出ていること、右下の診療科別では、小児科、耳鼻科で影響が大きく、皮膚科、産婦人科はそれほどでもないことなどがお分かりいただけるかと思います。
12ページ目に、医療保険に係る改革の視座を載せております。国民皆保険、フリーアクセス、自由開業制、出来高払いという我が国の医療保険制度の特徴の下では、患者と医療機関側との情報の非対称性も相まって、供給側から医療費の増大を招きやすい構造にあることに留意が必要でございます。医療保険制度の持続可能性が問われている中、給付面からの取組の視点は、保険給付範囲の在り方の見直しと、必要とされる保険給付であっても効率的に提供することの2つがありますが、本日は、保険給付範囲の在り方の見直しといたしましては患者負担の在り方の見直しを取り上げたいと思っております。
また、保険給付範囲の在り方の見直し、そして、右側の保険給付の効率的な提供の中にあります公定価格の適正化の双方にまたがる論点といたしまして、薬剤費の適正化を取り上げたいと思います。さらには、今、申し上げた我が国医療保険制度の特徴からして、供給面からの改革も不可避でございまして、地域医療構想の推進をはじめ、医療提供体制の改革が必要と考えます。併せて、保険者機能も強化していく必要があるという認識の下、都道府県によるガバナンスの強化やデジタル化の推進といったことも取り上げていきたいと存じております。
その際、強調しておきたいことは、高齢者の医療の改革が求められているということでございます。13ページのとおり、制度が分立しております我が国の医療保険制度の下では、保険者間の構造的な財政力の格差は免れません。このため、緑の部分でございますが、後期高齢者医療制度が設けられておりまして、現役世代の保険料負担による支援の仕組みといたしまして、給付費の約4割に対して後期高齢者支援金が充当されております。黄色い65歳から74歳の前期高齢者に関しましても、保険者間の財政調整を行う仕組みが設けられておりまして、こうした制度設計の下、団塊の世代が後期高齢者入りする2022年以降、現役世代の保険料負担がますます重くなると見込まれ、改革が急務と考えます。
論点の1つ目の患者負担の在り方でございますが、そもそも患者負担は何のためにあるのかということを、15ページの左下、ブルーのところに、平成24年版厚生労働白書の引用で記しております。1970年代の「病院のサロン化」というやや刺激的な言葉も使われておりますが、先ほど御説明した我が国医療保険制度の特徴の下で、患者の過剰受診、あるいは医療サービス提供者から見た過剰診療が生じやすいところで、患者負担は、モラルハザードとも言える事態を回避するための工夫の一つとして意義があるとされております。
上のキャプションの2つ目の丸でございますが、現在、我が国では、患者負担割合が低い高齢者の増加や高額療養費制度の影響によりまして、右下のグラフのように、毎年、実効的な患者負担率が下がっております。このように、患者負担が果たすべき機能が低下していることは、制度の持続可能性を確保する上で望ましくないのではないかという問題提起をしております。これは、全世代型社会保障検討会議で取り上げられております75歳以上の後期高齢者の患者負担割合の引上げの議論につながります。
16ページを御覧ください。まず、年齢で区切って、75歳以上になりますと1割負担になる仕組みは、年齢が上がるほど給付範囲が広がるという仕組みにほかなりません。左上の図のとおり、医療費に対して保険給付範囲がありまして、その不足前が水色の患者負担という仕組みでございますので、現役世代は7割給付なのに、70歳以上になりますと8割給付、75歳以上は9割給付と、保険給付範囲が拡大するのが現行制度でございます。
左下の図を御覧いただきますと、75歳以上の方で、現役並み所得ということで現役と同じ7割給付となっておりますのは、黒い部分の僅か7%の方々にすぎません。残り93%の方は9割給付を享受しています。上のキャプションの1つ目の丸にありますとおり、こうした高齢者の給付を支える現役世代の保険料負担はますます重くなっています。
全世代型社会保障改革によりまして、現役世代への給付は少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代という構造を見直すとよく言われますが、今まで御説明したことは、まさに見直すべき構造がここにあるということであると思っております。
そうしたことがキャプションの2つ目の丸に書いてありまして、3つ目の丸にありますとおり、残り93%のできるだけ広範囲の方々に2割負担を導入すべきと考えております。2022年度初までに間に合うようにという施行時期の考え方は、全世代型社会保障検討会議の中間報告にも書かれていることでございます。
そうはいっても、後期高齢者にとって負担増ではないかという御指摘もあろうかと思います。17ページでございますが、まずはキャプションの1つ目の丸のとおり、現役世代が自らの医療費に加えまして、後期高齢者支援金も負担しているという状況を左側にグラフとして記載しております。後期高齢者支援金には企業負担も含まれておりますが、ともかくも高齢化に伴い人口構成が変われば、この構造はますます現役世代にとって厳しくなることは明らかでございます。
左下は、1人当たりの医療費と保険料の8年間の変化でございますが、ますます高齢者の給付は増える一方で、現役世代の負担が厳しくなっていることがうかがえます。これに対しまして、右上の図では、75歳以上の方が現在の患者負担にそれほど負担感を感じておられないということ。そして、その下の図では、75歳以上の方の1日の患者負担は800円弱でございまして、15歳から64歳の方の2,100円程度とは大きな開きがあることを示しております。こうした構造の下で、後期高齢者の方の受診回数が多い、しかし青の折れ線が示すとおり、1回当たりの診療密度は64歳までがピークでございまして、年齢が高いほど低くなっているということが生じているわけでございます。
そして、次のページ、左側では、高齢者の体力や運動能力は着実に若返っており、年齢を基準に高齢者と一くくりにすることは現実に合わなくなっているということ、元気で意欲ある高齢者が年齢に関わりなく活躍できるよう、70歳までの就業機会確保や年金の受給開始時期の選択肢の拡大などの環境整備を行ってきたことを示しております。右側では、高齢者の負担能力について、所得水準は低くても資産のあるケースがあることなどを示しておりまして、上のキャプションの一番下の丸では、資産の保有状況も勘案した上での制度設計を模索すべきと提案しております。
19ページは、全世代型社会保障検討会議のもう1つの検討課題でございます。本分科会でも、かねて御議論いただいておりました外来受診時の定額負担につきまして、全世代型社会保障検討会議では、このページで御説明します紹介状なしで病院を受診する場合の定額負担、すなわち左の現状のところで下線を引いております、初診時に5,000円を徴収する仕組みについて拡大するという話で決着しております。まずは、これをやるということであれば、この定額負担につきまして、右下の図の赤い部分の病院が含まれますよう対象病院を拡大すること、定額負担額を増額すること、さらには、その増額分について公的医療保険の負担を軽減するよう改めるということにしっかり取り組まなければならないと考えております。
20ページは、縷々言及しました全世代型社会保障検討会議の報告の抜粋です。
21ページは、現役並み所得者の割合が減少傾向であることを踏まえまして、その判定基準について世帯収入要件などを見直すべきという従来の主張になります。
続きまして、薬剤費の適正化に移りたいと思います。
23ページでございます。薬剤費の増加の原因となっております新規医薬品の保険収載がほぼ自動的になされておりまして、財政影響が勘案されていないことに対し、これを勘案して新規収載の可否を判断すること。それから、既収載の医薬品の保険給付の見直しとセットで行う、いわゆるペイゴールールとすることなど、予算統制の強化が必要という主張を掲げています。右下には、欧州における薬剤予算制度の例を取り上げております。
24ページでございますが、新規収載につきましては薬価算定の問題も大きいと考えております。まず、左側がプロセスでございますが、薬価算定組織が案をつくり、中医協が承認する仕組みです。審議経過の公表が不十分であり、透明性を向上させる必要があります。右側の薬価算定方式につきましても、類似薬のない新薬の場合、右側の原価計算方式で算定されますが、事実上、原価は製薬会社の言い値に近いとの指摘があります。情報開示度が低い場合に加算率が低くなるという代償を支払っても、なお開示がなされておりません。右下にありますように、上乗せされる営業利益率が14.8%と高いなどの問題もありまして、類似薬効比較方式を含め、不断の見直しが必要と考えます。
25ページでございます。先ほど、新規医薬品の保険収載の際、既収載の医薬品への保険給付を見直すことがあってもよいのではないかと申し上げました。そのやり方といたしまして、左側に並んでおりますとおり、ある医薬品を保険から除外するやり方もあれば、右側のの薬剤の種類に応じて患者負担割合を設定するフランスの例、あるいはの薬剤費の一定額までの全額患者負担を求めるスウェーデンの例のように、保険収載はしたまま保険給付範囲を狭めていくやり方も考えられます。幅広く検討すべきだと考えます。保険給付からの除外の場合、左側のケースですと、下にあるような保険外併用療養の柔軟な活用も検討すべきでございます。
26ページは、毎年薬価改定についてでございます。キャプションの1つ目の丸にありますが、医薬品の取引価格が下落しているにもかかわらず、保険からの償還価格が一定期間据え置かれることになれば、患者負担、保険料負担、公費負担がいたずらに高止まりしますので、市場実勢価格をタイムリーに薬価に反映することは当然と考えます。現在、薬価調査が行われておりますが、2つ目の丸のとおり、来年度が毎年薬価改定の初年度になりますので、ふさわしい内容にする必要があると考えます。その際、3つ目の丸のとおり、幅広く先発医薬品も対象とすることはもちろんのこと、全品改定を視野に入れるべきと考えます。4つ目の丸にあるとおり、流通安定のために設けられているとされ、市場実勢価格に2%の上乗せを行っている調整幅についても、根本的に在り方を見直すべきと考えます。
次のページは、医薬品の価格の見える化の提案でございます。先ほどのページにもあった右側の図で御説明いたしますと、医薬品の流通実態は非常に複雑で、特殊な商慣行がたくさんあります。例えば、卸売業者では、メーカーの仕切価を医療機関、薬局への納入価が下回るため、一次売差マイナスが生じます。ところが、実際には、メーカーが割戻しやアローアンスという販売奨励金を卸売業者に補塡することによりまして、卸売業者は粗利を確保できております。卸売業者と医療機関、薬局の間では、納入価が決まらないまま納入する未妥結、仮納入や、本来は個々の医薬品ごとに決めるべき納入価を一山幾らで値引きする総価取引などが行われております。
こうした特殊な商慣行がある中、各段階の価格が見えにくくなっております。キャプションの1つ目の丸ですが、例えば生産者価格を把握すべき日本銀行が発表しております国内企業物価指数の医家向け、医療機関向け医薬品におきまして、最終消費段階の薬価が用いられておりまして、ほかの品目は1か月ごとで変動するのに対しまして、薬の場合は2年間固定されたままということが起きております。左の表にまとめておりますが、生産者段階で薬事工業生産動態統計調査、今、申し上げた国内企業物価指数、そして卸売段階では卸売サービス価格指数の改良を重ねることで、薬価調査のみに頼ることなく、市場実勢価格の大まかな動向が比較的タイムリーに「見える化」されるのではないかと考えておりまして、各方面に統計の改善をお願いしたいと思っております。
28ページは、後発医薬品の使用促進目標が達成されつつありますので、実効的な新たな目標をつくるべきとの提案でございまして、その際、全体の目標だけではなく、バイオ医薬品の後発品について特に目標を設けること、保険者別だけでなく医療機関別の使用割合の見える化を行うこと、フォーミュラリガイドラインを整備することなどを提案しております。また、後発医薬品の加算も、診療報酬改定の際には見直さなければならないと考えております。
29ページは、毎年薬価改定に係るこれまでの閣議決定でございます。
続いて、ガバナンスの強化に移ります。
31ページでございますが、近年の社会保障改革によりまして、都道府県が医療提供体制と国保の財政運営の双方、すなわち住民の受益と負担の双方をマネジメントする方向となりつつあります。まずは、その取っかかりともいうべき国保の都道府県単位化の改革を徹底すべきであると、キャプションの2つ目の丸で述べております。後期高齢者医療制度における広域連合の仕組みも見直すべきではないかという中期的課題を、3つ目の丸で述べています。
都道府県が行う医療提供体制整備に関しては、32ページで地域医療構想の現状を述べております。32ページの右下の④のとおり、昨年の秋、424の公立・公的病院のリストが出たことは記憶に新しいところでございますが、そのときに設定されました再検証の期限は、次の33ページのキャプション冒頭にありますとおり、新型コロナウイルス感染症の影響で改めて整理することとなってしまっております。しかし、2つ目の丸にありますとおり、人口減少や高齢化という構造的課題は待ってくれませんので、改めて取組を再加速させねばならないと考えております。このページの下の「骨太2020」の抜粋にはガバナンスという言葉も出てまいりますが、これに沿って再加速してまいりたいと思っております。
34ページですが、高齢者の医療の確保に関する法律におきまして、都道府県が策定を求められております医療費適正化計画について様々な問題があると考えております。
介護保険では、上のボックスの下の(注)や、明朝体の条文が示すとおり、財政均衡を図る規定がございまして、3年間の介護サービスの見込み量を計画で立てまして、そこから公費を差し引いて逆算で保険料率を定め、そのために、3年に1度の介護報酬改定を行うという給付と負担が連動した仕組みが出来上がっておりますが、医療のほうはそうなっておりません。
1つ目の丸でございますが、実際の医療費は、当然、2年に1度の診療報酬改定、来年度からは毎年になる薬価改定、そして制度改革、さらには足元で起きている感染症の流行といった特殊要因も手伝って毎年のように動いており、それを見ながら各保険者は適時に保険料率を判断していると認識しておりますが、そうしたことにお構いなく、医療費適正化計画の医療費の見込みは6年間固定されております。
現在の計画の1つ前の第2期計画は5年間の計画でございましたが、左側に載っております47都道府県の表のとおり、計画策定時の2012年末に今後の薬価改定や制度改革を見通すことなく立てられたAという2017年度の数の見込みが、そのまま据え置かれます。その5年間に、薬価改定や制度改革によって、実際の医療費Bはそこを下回ることになります。結果として、PDCAサイクルを回しますと、どの都道府県もすばらしい医療費適正化の実績を残したかのような実績評価が行われることになりました。
第3期計画では、毎年度のPDCA管理を求める方向性が、右のほうにある課長通知などで示されておりますが、今の立てつけでは、各都道府県が実際の医療費の動きと見込みとを比較して、医療費適正化の努力が十分であったかを振り返り、不十分なら必要な対策を取ることを期待できる余地はないものと考えております。
さらに申し上げますと、35ページのとおり、医療費適正化計画と銘打ちながら、医療費の見込みが適正化目標として位置づけられていない、あるいは、やるべきことの優先順位がエビデンスに基づくものになっていないといったことがありますので、これらの点をまとめて見直す必要があると考えております。
36ページでは、この分科会でも繰り返し取り上げております国保の法定外繰入れでございますが、解消の取組が不十分と考えております。介護保険制度では、先ほどの財政均衡を図る規定があるため、法定外繰入れを行えない仕組みとなっていることを踏まえまして、同様の規定を入れるなど制度的対応を講ずるべき段階にあると考えます。
37ページです。都道府県がガバナンスを発揮しようとすれば、保険料水準について責任を持つべきであり、都道府県内の国保保険料水準の一本化が望ましいと繰り返し主張してきました。厚労省のほうでは、その方向性と齟齬を来すガイドラインを設けていましたが、水色の新旧対照表のように本年5月にはある程度の改善がなされました。しかし、法制的対応を含めたもう一段の取組が必要と考えます。
38ページは、デジタル化の推進でございます。キャプションの1つ目の丸と2つ目の丸でございますが、マイナンバーカードが保険証として活用され、本人同意があれば、ほかの医療機関における患者本人の診療、投薬、検査等のデータを確認できるようになります。マイナンバーカードの保険証利用の原則化と本人の同意を推進するとともに、医療機関が患者のそのようなデータを確認できるようになった暁には、医療費適正化に結びつくよう、重複投薬、重複検査のディスインセンティブが働く仕組みを診療報酬上も取り入れるべきと考えます。また、審査機関と保険者の段階につきましても、デジタル化されたデータが医療費適正化の観点から宝の持ち腐れとならないような仕掛けが必要と考えております。3つ目の丸にありますように、審査機関に医療費適正化の役割を付与したり、先ほどの都道府県によるガバナンス強化のところにも書いてありますが、保険者協議会も含めまして医療費をめぐるPDCAサイクルを強化することが不可欠と考えます。
〔坂口主計官〕厚生労働第二主計官の坂口です。ただいまの医療の説明に続きまして、生活保護の医療扶助について御説明を申し上げます。
40ページを御覧ください。生活保護費負担金は、平成30年度で約3.6兆円でございますが、医療扶助は約半分を占めてございます。県別に、生活保護受給者1人当たりの医療扶助費を見ますと、右側の棒グラフのとおり相当ばらつきがございます。その要因に関しまして、外来と入院に分けて見ていきたいと思います。
次のページを御覧ください。41ページ、左下のグラフですが、レセプトを基に、平均通院日数の県別のばらつきが赤い折れ線グラフで示されております。それとおおむね同じ傾向にあるものが、青い棒グラフで示されている受診状況把握対象者の割合でございますが、この受診状況把握対象者とは月に15日以上受診していらっしゃる方ということであるため、医療機関が週2日休みであると考えますと、ほぼ毎日、医療機関にかかっていらっしゃる方と言えるかと思います。こうした頻回受診が、外来の医療扶助の増要因の一つではないかと考えられます。また、右側で医療機関側の状況を見ますと、専ら生活保護受給者を診療している医療機関が存在すること、また、その下のグラフで赤で囲んでおりますように、特定の診療科への偏りが見られるなど、医療機関側の実態把握も非常に重要であると考えております。こうしたことから、福祉事務所を有する自治体においては、頻回受診者が多い医療機関に着目した対策を講じること、嘱託医を充実することなど、生活保護受給者に対する指導とともに、医療機関に対する適切な対応を含め、両面からのアプローチが重要であると考えております。
続きまして、入院に関して、42ページを御覧ください。左の図でございますが、平成30年度では、入院期間が180日を超える方の中で、入院の必要がないとされた方が4,173名いらっしゃいました。このうち、退院等の手当てがなされていない未措置の方が1,201名でございます。右の表でございますが、長期入院に関しましても、先ほどと同様に自治体において大きな差がありまして、実態把握の強化、入院の必要がない方の地域移行をさらに促進すべきであると考えております。
さて、こうした課題に対応するための一つの方法として、医療扶助におけるデジタル化の推進について御説明をいたします。43ページを御覧ください。医療扶助においては、健康保険証に代えて医療券や調剤券が使われておりますが、実態を調査してみますと非常に形骸化しているという状況です。こうした状況も踏まえまして、政府としては、今後、医療扶助においてマイナンバーカードによるオンラインの資格確認を進めることとしております。これによりまして、医療券や調剤券は不要になるとともに、先ほどもございましたが、本人の同意を得て、生活保護受給者、医療機関、福祉事務所がそれぞれ診療の履歴や処方された薬の把握が可能となれば、生活保護受給者にとっては医療の質、利便性の向上につながるとともに、福祉事務所としても迅速で効果的な適正受診指導につながると見込まれます。また、医療機関にとっても重複検査などを避けることが可能になると考えております。医療保険制度においても健康保険証のマイナンバーカード化を進めておりますので、医療扶助においても資格確認は原則としてマイナンバーカードにより行っていくべきであると考えております。
次のページを御覧ください。自治体のガバナンス強化に関してでございます。そもそも生活保護制度では他法優先の原則がございますので、真ん中、左側の図にありますように、介護、年金、労働保険などは、生活保護受給者であっても、加入、利用が可能でございます。例えば、介護保険制度であれば、利用した場合には自己負担分などを生活保護費で手当てすることになっております。
ただ、国民健康保険及び後期高齢者医療制度に関しましては加入することができず、仮に国保に加入していた方が生活保護受給者となった場合には、国保を脱退した上で医療扶助を受けるという扱いになります。左下の表にありますとおり、医療扶助と国民健康保険等に関して自治体の業務は多くが重複している上に、そもそも都道府県医療費適正化計画においては、医療扶助費も適正化されるべき医療費に含まれているという状況でございます。これらを踏まえるならば、生活保護受給者も国民健康保険等に加入することを検討することが考えられると思います。
これによる効果としては、右下の図にありますとおり、医療提供体制や国保の財政運営等に係る都道府県のガバナンスが医療扶助にも及ぶようになるとともに、生活保護受給者にとっても、生活保護から脱退したときでも国保等への資格移行が円滑なものになるというメリットもあると考えております。このように、生活保護受給者が国民健康保険等に加入する制度を検討するなど、医療扶助に対するガバナンス強化を図るべきであると考えてございます。
〔一松主計官〕引き続き、私から子ども・子育てについて御説明いたします。
46ページは、子ども・子育て支援の予算額の推移です。厳しい財政事情の下、安定財源を確保しながら拡充してきた経緯がございます。
47ページは、今年の5月に閣議決定されました少子化社会対策大綱でございまして、安定財源の確保を前提といたしまして諸施策を進めることになっております。下線の引かれた施策について、順次、御説明いたします。
まず、48ページからは不妊治療でございます。左側が現行の不妊治療の流れでございまして、保険外となっている体外受精、顕微授精などについて、現在、行われております国費151億円の所得制限つきの支援事業の概要を右側に記載しております。
不妊治療の保険適用の実現という方針の下、取組を進めてまいりますが、49ページの左下、平成24年版厚生労働白書に書かれておりますとおり、保険適用につきましては、単に負担軽減といった側面ばかりでなく、上のボックスのキャプションで書かれている様々なメリット、から⑤まで書かれているようなメリットが治療を受ける御本人に生じると考えております。一律な給付内容が保障され、治療内容の標準化、費用の明確化が図られる、給付の権利性が強まる、所得制限を伴わなくなる、立替払いが不要になるといったことでございます。
2つ目の丸に書いてあるとおりでございますが、保険適用で治療内容が標準化されますと、一部の高度な不妊治療が保険外に残ると考えられますが、その場合も保険外併用療養費制度の仕組みを柔軟に活用し、いたずらに患者負担が生じない仕組みとすべきと考えております。また、保険適用までの間に、現在の保険外サービスに対する助成金という形態が残る場合であっても、先行的に再診料や検査料などの保険診療部分につきまして負担軽減の恩恵が及ぶよう、やはり保険外併用療養費制度の仕組みを活用すべきと考えております。
50ページの育児休業給付につきましては、左上の表のとおり、国際比較をいたしますと、我が国の男女共通の所得保障の水準は十分なものがあると考えております。しかし、男性育休の取得率は、左下のとおり、7%台半ばと政府目標に程遠く、取得期間も短い実情にあります。現在、パパ休暇と申しまして、右下でございますが、配偶者の出産後8週間以内に取得開始、終了した場合のみ育児休業は再取得可能ですが、キャプションの3つ目の丸にありますとおり、8週間以内に限らず、分割して複数回取得可能にすることなどが考えられます。所得保障の在り方につきましては、こうした男性の育児休業取得推進という論点に絞りまして、ほかの取組の進捗状況も見極めながら、取り組むべきテーマと考えます。
続きまして、51ページは待機児童の解消でございます。今年度末、すなわち2020年度末に待機児童ゼロを達成するということで、子育て安心プランが策定されていたのでございますが、本年4月1日時点の待機児童数は1万2,439人でした。調査開始以来最少とはいえ、今年度末の目標達成は厳しく、キャプションの3つ目の丸のとおり、市町村が策定する計画に基づきますと、2024年度末までに最大14万人の受皿が必要と見込まれております。
ただし、52ページにありますとおり、両立支援策の再分配への影響には留意が必要と考えております。例えば、保育所の入所基準といたしまして、右下にありますように、労働時間の長さが保育の必要性のメルクマールとされがちで、結果的にパートタイムの御家庭が不利になっていないか。そうした御家庭に、まさに今回の新型コロナウイルス感染症による影響が及んでいる可能性がありまして、今後、職場に戻っていただく際にネックにならないかといったことも見ていく必要があります。それが、キャプションの1つ目と2つ目の丸でございまして、3つ目の丸では地域ごとの特性に応じた対応の必要性を指摘しております。左下のグラフで、人口が減少しているのに待機児童が増えている自治体がありますが、まずはマッチングが必要と考えます。最大14万人という数字については、数字そのものもさることながら、丁寧に内容を精査して待機児童の解消を進めていく必要があります。もちろん、安定財源の確保が大前提でございます。
児童手当については、2つの論点を掲げます。1点目は、53ページの高所得者への児童手当の見直しでございます。概要の赤字のところにありますとおり、主たる生計者の年収が960万円以上の場合、当分の間の特例給付として月5,000円が給付されております。先ほど申し上げました両立支援策が再分配に与えている影響も鑑みつつ、高所得者の消費の実態や他制度の例も踏まえ、こうした給付が真に子育てについて必要な施策になっているかを検討し、見直す必要があると考えます。
2点目は、54ページの所得基準の見直しでございます。現在、主たる生計者で見ている所得基準についての問題提起でございます。左側の図のとおり、共働き世帯の数が多くなっている中、右上の表のように、例えば夫800万円、妻400万円の年収という場合、つまり世帯としては収入がかなりある場合もフルに児童手当が支給されていることについて問題はないのかというものでございます。他の制度も見ながら、世帯合算としていく必要があります。
55ページ、安定財源の確保につきまして、従来、社会保険制度は一定の子育て支援機能を持ってきたことを指摘しまして、社会保険制度からの拠出の拡充という選択肢も指摘しております。税財源の確保のみならず、幅広い選択肢を検討していく必要があると考えております。
〔坂口主計官〕最後に、雇用に関しまして、雇用調整助成金について御説明します。
57ページを御覧ください。雇用調整助成金は、景気の変動などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を休業させること等により雇用の維持を図った場合に、労働保険特別会計から休業手当等の費用を助成する制度でございます。この雇用調整助成金に関しまして、今般の新型コロナウイルス感染症を受け、上限額を1万5,000円に引き上げる、助成率を最大10分の10とするなどの特例を設けております。この特例は、過去のリーマンショック時の対応を超えて、これまでで最も手厚いものとなっております。その経緯といたしましては、4月7日に政府が緊急事態宣言を発出し、都道府県知事が事業主の方々に営業の自粛をお願いしたということがございます。要請により休業をしていただくというかつてない状況に対しまして、休業手当を手厚く助成するという趣旨でございます。
次のページを御覧ください。コロナ特例について図にしたものでございますが、今、申し上げましたように、雇用調整助成金の拡充を行うとともに、右側のように休業手当を受け取っていない中小企業労働者に直接給付を行う制度、さらには下にありますように、週20時間未満の短時間労働者の休業に関しましても、雇用調整助成金と同様の助成を行っております。しかしながら、こういったコロナ特例をずっと続けることで、かえって経済活動の円滑な回復に支障となっているおそれがあるのではないかと考えております。
次のページを御覧ください。現在、政府としては、経済活動を再開し、感染防止策と社会経済活動の両立を目指しておりますが、真ん中、左側にありますように、マスクや消毒などの感染防止策や、テレワーク、時差出勤などの工夫をしながら営業を再開し、従業員に給与を支払っている事業主と、休業を継続しており、休業手当は雇用調整助成金で賄っている事業主との間で不公平が生じているのではないか、かえって営業の再開をためらうというモラルハザードが生じているのはないかという懸念がございます。
また、左下の諸外国に目を転ずれば、我が国がコロナ特例をつくる際に参考にしたイギリスでは、段階的に上限額、助成率の引下げを行っております。さらに、右上にありますように、休業者数は、緊急事態宣言下の4月、5月は対前年同月で急増したものの、その後、減少傾向でございます。なお、休業者の数には育児休業の方なども含まれますため、新型コロナウイルス感染症の影響を見るには主として前年同月を見るのが適当ではないかと考えております。一方、失業者数は増加をしておりますが、有効求人倍率は足元でも1倍を超えている状況にあります。
こうした状況を踏まえますと、雇用調整助成金の特例によって休業を促すことから、再就職を支援することに労働政策の軸足を移していくべきではないかと考えております。厚生労働省からは、来年1月から、このコロナ特例を段階的に縮減していくという方向性が示されております。事業主の方々の予見可能性を高め、雇用調整助成金の特例の終了に備えていただくという観点から意義のあることだと考えております。これまで申し上げました論点を踏まえ、いわゆるコロナ特例については、できる限り早期に、段階的に廃止していくべきであると考えております。
次のページには、雇用調整助成金に係る最近の論考を御参考までにつけております。
事務局からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、ただいまから、各委員の皆様方から御意見、あるいは御質問等をお受けしたいと思います。
なお、本日、出席しておられます神津委員、及び欠席の広瀬委員から意見書を御提出いただいておりますので、こちらはお手元にお配りしております。お目通しいただければと思います。
これから御意見がある場合は、ネームプレートを立てて合図していただければと思います。それから、テレビ会議システムで参加いただいている皆様方には、いつもどおり、多分、手のひらの形のようになっていると思いますが、「挙手する」ボタンのクリックで合図を送っていただければと思います。
システムの運営の便宜上、まず、会場に出席されている委員から先に指名をさせていただくことにいたします。分野は、医療、子ども・子育て、雇用、総論と分かれておりますが、時間等の関係もございますので、1人の方を御指名したら、全体を通して、どの分野でも結構ですので、意見を言っていただくという形にさせていただきます。というのは、今日、実はウェブの方も含めて37名の方が御出席となっておりまして、多分、今までの中で一番多いかもしれません。ということもあって、発言時間が大変限られることになると思いますので、御発言は可能な限り手短にしていただいて、大勢の皆様方に御発言いただけるように御配慮いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、名札を立てていただいて、あいうえお順で指名させていただきます。したがいまして、秋池委員、宇南山委員、大槻委員と、こういう形で指名させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、秋池委員、どうぞお願いします。
〔秋池委員〕様々な制度があるわけですが、民間で事業をやるときに、何かを始めるときは終わる目安をつくるというのが鉄則であります。過去、それをやらないで事業を始めてしまって、経営上、後悔したというような経験を民間はたくさんしてきていて、そういう中で、終わらせることを考えるのが通例になってきているわけです。必ずしもできるとは限らないのですが。
社会保障については、継続的にあることによって、社会の安定や、国民の安心を見いだしている類いの部分ももちろんございます。一方で、一時的に何か、今回のコロナのような危機が起こったがゆえに投入しなければいけないもの、あるいは個人の人生の中でいうと受益をする期間について、今まで、もう既に始まってしまったものについては、どう終わらせていくのかということであったり、終わらせる、ないしは変容させるということであったりかと思いますが、個人のものについては受益の期間をどう設定するのが適切なのか、それが事業の効果を最も高めるのかということを、あらかじめ考えた議論が行われるとよいと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宇南山委員、お願いいたします。
〔宇南山委員〕27ページの医薬品の価格をめぐる公的統計の整備・精度向上という点についてですが、非常にいい視点だと私は思っております。私、統計委員会という日本の公的統計を束ねるところの委員もさせていただいているのですが、統計を、調査を実査している省庁以外が、新しい調査項目を提案する場面というのは極めて限られております。ぜひとも、この案件に限らず、財審などでこういう数字が必要だということがあれば、他省庁の統計であっても、こういう情報が日本にとって必要だという意見を述べていくことは非常にいいことだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
また、51ページ、待機児童の解消についてですが、既に80万人近い定員枠を増加させていながら、もともと2万人だったはずの待機児童がいなくなっていないというのは、結局のところ、使えるならば使いたいという人が、いたちごっこ状態で出てくるというのが最大のポイントだと。もはや、最低限の保育所は準備できていると思いますので、保育料というところに少し切り込んでいただいて、本当に真に必要な人が一定の負担を持った上で使えるような状況をつくっていったほうが、よりニーズに合った分配ができるのではないか。少子化に悪い影響が出る可能性はあるんですが、決して少子化にプラスっぽいというだけで聖域化するのではなくて、コストベネフィットを十分に考えた上で、保育料の自己負担についても切り込んでいただければと思います。
最後、次の児童手当の在り方については、昨年、いろいろごたごたがあって実現しなかったのですが、特に主たる生計者だけで判断しているというところについては、児童手当という性質からしてもかなりゆがんでいると思いますので、早期に世帯ベースでの所得制限に移っていただければと。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いいたします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。2点プラスアルファのコメントができればと思います。
1点目は、後期高齢者の窓口負担ですけれども、2割負担の実現というのは本当にやっていただく方向でお願いしたいと思っています。もちろん、言うまでもありませんが、不公平感ということについては、このコロナで、様々な意味で格差の拡大が世界的なテーマになっていると感じております。やはり若年層、そしてリスクを取っている層が、その中で割を食っているような状況が見えなくもない。そういう中で、健康、命に関わるようなところまでも、高齢者の方との格差を感じるようなことがあってはならないという意味で、若年層などに対しての公平感を醸成してほしいと思っています。
金融資産の検討と書いていただいていますけれども、同様に若年層と高齢者の間を分ける一つの格差の壁でありますので、そういったことの検討も早期に進めていただきたいと感じております。
それから、もう1つがデジタル化の流れです。38ページ辺りにいただいている点であります。マイナンバーカードが保険証として使えるということですが、もうすぐこれは実現するものと理解しているのですけれども、残念ながら一般的な認知は非常に低いと感じています。しかしながら、これは政府全体としてのデジタル化の大きな後押しにもなりますので、制度設計とともに、周知をなるべく早く、広く進めていただきたいと感じております。
そして、プラスアルファということで申し上げたいのは、58ページ目辺りの雇用関係、雇用調整助成金についての関連であります。これも、昨今、問題となっているフリーランスの在り方、そして、そのセーフティーネットの観点です。増えていくフリーランスが日本の成長を支える一つにもなってくると感じておりますので、フリーランスに対してのセーフティーネットも、別途、御議論いただければと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いいたします。
〔河村委員〕御説明、ありがとうございます。私、前回、ウェブ出席だったこともあって、その話も少し含みますけれども、意見を言わせていただきます。
現在の財政事情を見ますと、前回、御説明がございましたけれども、2回の補正予算を組んで、新発国債を大幅に増発することになった。その調達は、割引短期国債がかなりの分で、これは大変なことだと思います。やはり国にとって、長期の安定調達を市場からできれば一番安心ですが、割引短期国債(TB)だと、毎年、借換えが来る。これはどれだけ大変なことか、そういう危機感を持ってやはり財政運営に当たっていくべきではないかと思っております。
今日も、社会保障、そのど真ん中の一番大変な課題ということで、3ページのところで御説明くださいました。確かに、我が国の財政悪化の最大の要因であるということで、これから先、少子高齢化が進む中で、どれだけこのワニの口が開くのを止めていくかということは非常に大事な課題です。ただ、やはり過去にした借金の返済をどうしていくかということも同時に大事な課題だと思いますので、2つの重要な課題のうちの1つではないかと思います。
全体としては、この国は、危機がある、景気が大変になると、弱者を保護しなければいけないというセンチメントがすごく強くなってしまって、ともすれば、それがずるずると長引いてしまうと思います。そういうところは、やはり国としてもきちんと見直さなくてはいけない。ですから、社会保障の問題というのは、特にその弱者をどうするのですか、見殺しにするのですか、国として放っておいていいのですかみたいな論調に流されがちですけれども、やはりそういうふうにならないように、きちんと見直していくべきところは見直していくべきなのではないかと思います。
医療については、12ページのところで主計官から御説明ありましたけれども、国民皆保険、フリーアクセス、自由開業医制、出来高払いという制度があって、いろいろ良いことももちろんあるのですが、今回、御説明ありましたけれども、やはりフリーアクセスがふだん許されていることが個々の診療行動にどう影響したかということを、今の段階で結論を出すのはちょっと時期尚早という感じもしますが、やはりよく見極めて、医療費全体を抑制していく上で、どうやっていくべきかということをきちんと考えていったほうがいいと思います。
やはり供給のほうからきちんと改革を進めていくべきというお考えには、本当に全面的に賛成であります。地域医療構想についても、去年、せっかくああいう動きがあったのがコロナの影響で止まってしまいそうな、それから医療関係者の方が、もう本当にエモーショナルなというか、コロナでこんなに病床の問題が大変になったから、あんなのはもう棚上げになんていう声まで聞こえてくるといった話を、メディアの方から聞くこともありました。そんなことでは決してないので、感染症対策が手薄だったところは事実だと思いますけれども、そこは別途、考えながら、きちんと地域医療構想を推進していくことが必要だと思います。
それ以外についても、やはり負担できる人が負担をする形で、なるべく社会保障の支出を、本当にワニの口が開いたままになっていかないようにすることが大事だと思っております。後期高齢者の負担を上げていくというお話であるとか、それから児童手当についてもやはり高所得者は対象から除いていくとか、そういったことは今からでも着手できる話ではないかと思います。コロナで大変だからということで実施を先送りするような話ではなくて、むしろ国全体の財政の厳しい状況を鑑みれば、こういうところこそ本当に早く手をつけて、実施していくべきなのではないかと思っております。
雇用調整助成金についても、やはり負の側面があると思いますので、自律的な民間セクターの回復を促していく上では、できる限り早期に区切りというか、段階的に閉じていくような形にするのがいいのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、木村委員、お願いいたします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
挙げられた社会保障制度の見直しと改革、どれも日本の構造問題を踏まえると非常に喫緊の課題だと思っています。ただ、コロナで景気が悪化したので、いろいろな見直しには逆風がかなり強いと思いますけれども、それだけに、より説得力がある、丁寧な説明が必要だと思っています。
特に、17ページで挙げられた、現役世代の後期高齢者に対する支援金が重くなっていることに関しては、後期高齢者の窓口負担を2割にすると、その分だけ現役世代の支援金が少なくなる可能性があると思います。あからさまにはなかなか言いにくいでしょうけれども、コロナが年金の支給額には影響を及ぼしていない半面、現役世代にはやはり経済的な影響や収入の減少で負担が重いので、現役世代の負担をできるだけ軽くする。コロナの時代にこそ、幅広い世代で負担を分かち合う全世代型の社会保障改革というのは、より意義があり、重要性を帯びているということを、今後、丁寧に説明していただくことが大事だと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。3点ほどコメントしたいと思います。
まず、全体として、社会保障制度の持続可能性を高めるための重要な改革が示されており、国民の理解を得ながら着実に進めていただきたいと考えております。特に、医療のガバナンスの強化という項目で示されている医療提供体制の改革は、超高齢社会を迎える日本にとって極めて重要な、病院完結型の医療から、地域全体で治し、支える地域完結型の医療への転換を目指すものであり、しっかりと進めていっていただきたいと考えております。
2つ目としまして、子ども・子育てにつきまして、少子化社会対策大綱も改訂され、少子化対策の必要性は多くの国民が共通に理解していることだと考えております。ここに示されているように、不妊治療への補助や待機児童の解消は確かに重要であり、それを恒久制度化するのであれば、安定財源はぜひとも確保してもらわなければいけないところです。不妊治療への医療保険の適用は、検討に十分値すると考えます。保育サービスについては、量的確保にまずは注力することになると思います。それとともに、質的充実も課題になってきておりまして、子ども・子育て拠出金へのさらなる貢献も期待したいと考えております。少子化対策として、幅広い施策も重要である一方で、優先度の高いものに資源が回る工夫が必要となります。
3つ目としまして、保育サービスの充実や育児休業の柔軟性を高めるといった施策は、少子化対策という観点だけではなく、女性活躍推進にとっても意味があります。女性が継続して働く環境が整備されることで、企業にもメリットがあります。さらに、女性の人的資本が高まり、賃金が上昇すれば、タックスペイヤー、医療、介護保険等の支え手としても期待できます。ヨーロッパでも、女性の労働市場での活躍が先行した国々では、タックスペイヤーを育てるという観点も強く意識されておりました。日本においても、若い世代のライフスタイルの変化に対応しながら、保育サービスの充実等で女性が働きやすい環境を整えることで、社会における少子化対策、企業における競争力強化、生産性の向上、そして、国としては、財政の再建、社会保障の持続可能性の強化といった複数の課題解決にも役立てていけるとよいと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、神津委員、お願いいたします。
〔神津委員〕ありがとうございます。
この場での発言につきましては、雇用関係を中心に申し述べたいと思います。その他の論点に関しましては、先ほど御紹介いただきましたが、席上配付の意見書を御参照いただきたいと思います。
雇用についてですが、新型コロナウイルス感染症のインパクトは、特定の業種、業態において強く出ています。雇用調整助成金は、そうした産業、企業において雇用を維持するために活用されています。具体的な産業の例としては、観光関係、あるいは航空関連産業などがありますが、そもそも、これらは決して斜陽産業ではありません。感染症の影響が鎮静化するタイミングまで支援していくことは不可欠だと思います。
一方、その下で、関係団体の取組、あるいは自発的なものも含めて、雇用のマッチングの取組がなされています。これは非常に重要であると思います。休業制度のみならず、在籍出向も活用することで、全体としての雇用の維持を図っていかなければならないと考えます。
また、今回のコロナ禍においては、もともと雇用基盤が脆弱であったり、雇用保険にカバーされていない労働者が、この20年余りで大変大きく増大してしまったことが大きく災いしています。いわゆる就職氷河期世代が一層厳しい状況にあることは御承知のとおりです。現在、一般会計での対処を含めて、特例措置での休業手当給付が行われてきています。経済が復旧するまでは、不可欠な措置としての継続が必要であると認識しております。
ただ、これもそもそもの議論ですが、AIの進展等、今後の技術革新を踏まえるならば、近未来の雇用の姿は大きく変化をしていくと思います。失業なき労働移動という観点から、先ほども申し述べましたが、在籍出向といった枠組みの活用も含めて、給付と職業訓練、能力開発をセットにした雇用のセーフティーネットを検討すべきであると考えます。北欧型の政労使の枠組みなども参考にしながら、その制度設計や十分な支援の在り方について検討し、実現していくことが求められていると思います。そのことは、結果的に財政においても寄与するものであるということは、今回の経過からも明らかではないかと考えます。
また、医療と子育て、一言ずつですが、まず医療についてです。医療保険制度は、皆保険を堅持し、保険者機能が発揮される持続可能な医療保険制度の確立が不可欠であり、今回のコロナ禍においてその重要性は再認識されていると思います。全ての人が可能な範囲の負担で医療を受けられるよう、応能負担を原則とするとともに、様々な問題意識を取り込みながら、診療報酬等の検討が中医協で進められることが肝要であると思います。
子ども・子育てですが、少子化が深刻化している状況には歯止めがかかっておりません。幼児教育、保育の無償化を進める下で、そのメリットを子育て世代が広く享受できるようにすべきであると思います。そのために、質の担保された保育所等の整備による待機児童の解消を急ぐべきであると考えます。
以上です。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、櫻田委員、どうぞお願いします。
〔櫻田委員〕ありがとうございます。
主計官の説明内容につきましては、各論を含めまして異論はございません。ただ、患者の応能負担、あるいは受益者の応能負担という思想を貫いて、問題は、いかに実行していくか、実現するかということに尽きると思っておりまして、これは以前もこの場でHOWが大事であると申し上げたとおりです。
目下の懸念の最大のポイントは、コロナとの闘い、あるいは経済との両立ということですが、コロナの勢いが財政改革のモメンタムをそぎ落とすリスクというのは避けて通れない。経済を回すフェーズに移行する中、さらに財政に負担をかけてブーストさせようという動きも見られて、言ってみれば財政健全化を議論することがやや後ろめたいという雰囲気がないこともない、というのは懸念です。
一方で、ウィズコロナのニューノーマル、新しい普通の時代では、沈殿化していた日本の課題が一気に浮き出てきた。私たちは、それを直視させられました。そうした意味で、世界で既に行われている議論のキーワードは、圧倒的にサステーナビリティーです。そして、実は皮肉なことに、そのサステーナビリティーが最も求められているのはこの日本であると思っております。この国を担う次世代の未来のためにも、歳入歳出の抜本改革はまさに待ったなしであり、言い方を変えれば、今、まさに千載一遇のチャンスが来たと考えるべきであると思っています。
新政権には、目指す国家像とともに、社会のサステーナビリティーと財政が表裏一体であるということをぜひとも示していただきたいと思いますが、実は民間の経営の知恵、経験を申しますれば、こうしたことを達成するためには、一つ一つの具体的各論の実現を積み重ねていくことが非常に良い。終わってみれば、そういうことであったのかというぐらいの思いで、一つ一つの各論を実現していくことがとても大事であると思っています。そうした意味で、主計官から説明のあった、あれほどたくさんある各論のどこから手をつけるのか、そして、それは何なのか、なぜなのかということについて、大いに議論し、行動につなげていくことが必要であると思っています。
ちなみに、経済同友会では、この中長期的な様々な議論を全体的に捉える、一つ一つを全体的に捉えて、どちらの道に進むのかという論点を示すために、未来選択会議を9月11日に立ち上げました。ここでは、経済界ではとても解決できない、たくさんのテーマを扱うために、経済界以外のステークホルダー、労働を含めたステークホルダーに積極的に参加してもらっています。そして、その中の一つのテーマは、OECD36か国のうち28か国が持っていると言われている独立財政機関の設置です。なぜ持てないのか、持つ必要はないのかということを含めて、議論していく必要があると思っています。
いずれにしましても、今、まさに日本の行く末を選択するときが来たという点において、ビジョンも大事ですが、各論を一つ一つ実現することにこだわり、そして、皆様と行動していくために国の中に一つのムーブメントが必要であると思います。ムーブメントがないと、これらの問題はとても前に進まないであろうと、今、私は思っております。
ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
3点ほどです。まず、36ページと37ページで取り上げられている法定外繰入金と保険料の統一問題ですが、これはそろそろ期限を定めて、設定を行うように厚労省に求めるべきであると思います。例えば、2025年までに達成するようにといった期限設定です。
それから、28ページにある後発医薬品の80%の数量目標ですが、医療費の適正化という観点から考えると、そろそろ数量ではなくて金額で考えていくという視点があっても良いかと思いました。
それから、25ページの医薬品と、49ページの不妊治療のところで取り上げられている保険外併用療養費制度ですが、要するにこれは病院の区分経理の問題であると思います。つまり、この部分は保険適用、この部分は保険適用外という、ある程度の区分経理ができる仕組みが必要かと。実は、似た話が妊婦加算でもあったはずです。妊婦加算という形で加算をすると、結果的に自己負担が増える。では、加算部分は自己負担ゼロでいいですと区分経理ができれば問題はなかったわけですので、医療機関の区分経理問題というのは少し考えたほうが良いのではないか。診療報酬ではなくて、区分経理というのは本格的に考えたほうが良いのではないかと思いました。
最後に2点ほど。感想になってしまいますが、デジタル化についてです。オンライン診療を含むデジタル化ですが、これはあくまでも手段であって目的ではない。デジタル化すれば良いというわけではないので、その出口は何かということを考えてみると、やはりそれはある意味、デジタルという性質上、情報が集まってきますから、利用者の利便性を高めるだけではなくて、健康管理、疾病管理にもつながりますし、高齢者の見守りにもつながります。最終的には、病院のビジネスモデルの転換、つまり患者さんを診るのではなくて、住民の健康を守るという方向にもつながるのではないかと思います。そのためには、実は診療報酬制度はもうそろそろ見直すべきであって、外来の包括化、あるいは人頭払い化というのは本格的に考えるべきではないかと思います。
最後に、今回、取り上げられませんでしたが、コロナに係る病院、医療機関の赤字補塡に関する問題です。いろいろな救済を求める声がありますが、やはりコロナに対してちゃんと対応した、コロナ患者の受入れに協力した、あるいは医師の派遣に協力したという形で、積極的に関与した病院に対しては補塡があってしかるべきですが、そうでないところはやるべきではないと思います。そうした点の支援にも、やはりメリハリが必要であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、進藤委員、お願いします。
〔進藤委員〕総論と各論、申し上げます。
総論というよりも、考え方ですが、どのような考え方を基軸に置くかということです。よく皆様からワイズスペンディングと言われます。何がワイズかということについては、前回、麻生大臣も言われたように個人で価値観が違うということかもしれませんが、社会保障の関係で言えば、高齢者であろうが、若手であろうが、負担できる人が負担する。それから、本当に必要な人にお金や効果が及ぶように考える。これが基本的な考え方の1番目であると思います。
そうした意味では、12兆円を使って1人10万円支給した、これは社会保障でも何でもないですが、この政策は目的や効果と照らし合わせてよかったのかどうかということは、やはり時間ができたときに検証することが必要であると思います。前回の資料で、可処分所得は大きく増えているが、消費は減って、預金だけが増えているというものがありました。要するに、政府の預金が個人の預金に移っただけであると、こういうことなのでしょう。ワイズスペンディングという観点から、負担できる人が負担し、本当に必要なところへお金が流れるか、こうした考え方に照らした振り返りが必要であると思います。
2番目は、やはり現役世代の負担が増えることを抑制し、制度の持続可能性を維持することです。
3番目は、タイミングですが、2022年から団塊の世代が後期高齢者になりますので、本当に時間がないわけで、本年度中に道筋をつけないといけない。
この3つが、やはり総論として基軸に置く考え方かと思います。
あとは、個別にコメントいたします。毎年、申し上げていることですが、今回も言わないと、あれは下ろしたのかと言われると困るので申し上げます。医療について、後期高齢者の窓口負担2割への引上げ、それから紹介状なしの5,000円の問題、後期高齢者の現役並み所得の認定基準の見直し、これは資料に書いてあるとおりであり、進めなければいけないと思います。
ただ、5,000円の追加負担について言えば、この分がきちんと公的医療保険の負担減にならないといけない、要するに病院の収入が増えただけでは話にならないと思いますので、ここはぜひ適正な制度設計をお願いしたい。また、後期高齢者における現役並み所得の判定基準の見直しで公費負担の5割分が現役負担になります。これも、先ほど申し上げた現役の負担増につながることになりますので、ぜひ制度上、考えていただきたい。
それから、子ども・子育ては、児童手当の特例給付金が、960万円以上の人にも出ているということについては、何回も、申し上げておりますが、当分の間と言いながら2012年から8年続いているわけで、「廃止を含めた見直し」という表現では弱過ぎるのではないか、そろそろ、「廃止する」ぐらいしっかりと言わないといけないのではないかと思います。
それから、少子化対策の安定財源の確保ということで、保険を使う、保険料財源を拡充すると書いてありますが、私はこれに若干違和感があります。保険というものは、やはりいろいろな個別のリスクを持っている方が集まって、リスクをプールして何とかしようということですが、少子化対策とはそういうことなのでしょうか。保険を使うと、これはまた現役世代の負担増にもなり、むしろ社会全体が税金で負担すべきものであろうかと思います。
3番目は雇用です。いろいろありますが、これだけ経済活動が落ち込んでいるにも関わらず8月の失業率は3%と、これは大変評価すべきことであると私は思います。リーマンのときは5.5%までいったわけなので、これは個別企業が大変努力しているということもありますが、雇用調整助成金の特例措置の効果はものすごくあると思います。失業予防という意味では、制度の趣旨どおり大変よく機能していると思いますが、この12月末でだんだん減らしていくという話がありました。特例措置の期限が来ますけれども、ぜひ今後の景気の状況や雇用の情勢を丁寧に見て、可能な限り弾力的に判断していただきたい。モラルハザードの問題とか、いろいろありますが、それを個別に見ながら判断していただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、次、末澤委員に御発言いただきますが、土居委員が間もなく退席されるということで、末澤委員の次に土居委員という順番でお願いいたします。
それでは、どうぞ末澤委員。
〔末澤委員〕どうもありがとうございました。私のほうからは3点です。
まず、第1点ですが、過去、こちらの財審の議論の中では、2020年度、2021年度は、いわゆる焼け跡世代、焼け野原世代が75歳に到達する局面で、この時点では医療費があまり伸びないと。そのため、ここできちんと抑えた上で、2022年度以降、団塊世代が75歳、後期高齢者になるときに備えて、いろいろな中長期的な改革を行おうという話であったと思います。この視点は忘れずに、今日も後期高齢者の問題等ございましたが、じっくり進めていただきたい。
2点目です。とはいっても、やはり新型コロナウイルス感染症、COVID-19の問題が、今年の2月に、国連の世界保健機関、WHOで国際的な公衆衛生上の緊急事態、PHEICに認定されております。パンデミックと言っていますが、あれはあくまで非公式の宣言でございまして、WHOの正式な宣言は緊急事態宣言です。現在、WHOの制度的な枠組みでは、パンデミックは新型インフルエンザのみが対象となっております。一方、PHEIC宣言、これは、実は2009年の新型インフルエンザ以来、11年間で6回目です。つまり、こういったパンデミックに相当するいろいろな健康危機というものは、やはりグローバル化等の影響、あと気候変動もあって、どんどん増えてきている。ですから、やはり医療、社会保障の観点でも、こうした危機対応のことを考えておかなければいけない。
その中で、私、今回、いろいろ疑問に思ったことは、3月、4月以降、先ほどの資料にもありましたが、11ページ、これは感染症の影響を受けた医療費の動向という資料で、実は2019年度の概算医療費が出ています。年間では、前年比プラス2.4%であると思います。ただし、3月単月で見ると、前年比1.2%ほど下がっています。つまり、3月以降、4月、5月とずっと減っていまして、6月、7月がちょっと増えている理由は、要は感染者が減ったからであり、8月はまた減ってきている。ということは、この秋、冬に相当感染者が増えれば、また既存の医療機関の診療がぐっと減って、一方で、コロナ対応をやっている医療機関が逼迫することになります。
これは、少し変であると思います。つまり、資源の再配分がうまくいっていない。そのため、やはり日本の医療機関においても、危機対応のモード、枠組みをつくり、例えば最近、PCR検査をかかりつけ医でも実施するという話がありますが、私はなかなか機能していないのではないかと思っています。そうであれば、1日閉めて、どこか応援に行っていただいて、そこで集中的に実施するほうが風評被害等も避けられるのではないかと思います。つまり、そうした危機対応モードへの対応を、やはり今後、きちんとやっていく必要がある。そうしなければ、開店休業の医療機関と、とても逼迫しているところと両方起きて、これはもう本当に無駄であると。
3点目は、不妊治療の問題でございます。私は今回の不妊治療の保険適用は大賛成です。やはり従来の不妊治療は、美容医療的な、お金を持っている人が個人で行うものという風潮がありましたが、これは少しおかしい。社会として、これから子育て、人口問題を取り上げていくのであれば、これはやはり保険適用にして、普通に皆様がかかれるようにすることで、安全、安心、コスト対比の質の維持ができます。これは極めて重要であると私は思っておりまして、ぜひ前向きに進めていただきたいと思っております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、ここで土居委員、お願いします。
〔土居委員〕中座しますので、先に失礼します。
個々の論点は、来年度予算を意識したものですが、消費税率が10%になり、社会保障・税一体改革が一段落した時期で、ポスト一体改革を模索していかなければならない時期であることを考えますと、年末までの来年度予算への反映は第一ですが、それだけでなく、中長期的な改革につなげられるような橋頭堡を年末までにつくっていく。すぐ成果が出るわけではないですが、次の改革につながるものも年末までにきちんと埋め込んでいく、築いていくことが大事ではないかと思います。
その観点から、3点ほど申し上げたいと思います。ほかの委員もおっしゃっているように、後期高齢者の患者負担2割対象者をできるだけ増やすことが、世代間の受益と負担のバランスという観点からも大事であると思います。ただ、必ずしも1回で100点満点の決着がつくわけでもないということであるならば、不断に見直す仕組みを埋め込む。つまり、診療報酬改定ごとに患者負担は不断に見直すと。資料の21ページにもありますが、3割負担、現役並み所得の定義自体がもうほとんどナンセンスな、税制のゆがみのようなものを反映した定義になっている。給与所得控除、公的年金等控除が併用されているものを露骨に反映した定義ですから、これは抜本的に改めていただくにしても、3割負担の方がおられ、2割負担の方がおられ、1割負担の方がおられるということが、今後、75歳以上の方の中で出てくるわけですから、3割、2割、1割の対象者を何人にするかを診療報酬改定時に絶えず見直していくという仕組みを埋め込むことで、仮に年末までに完全決着というわけにいかなかったとしても、今後、不断に見直して、より良くしていくことができるのではないかと思います。
それから、19ページに定額負担の話がありますが、ここでキーポイントというか、枕言葉になっている重要な言葉は、かかりつけ医機能の強化ということであると思います。新型コロナ対策ということであっても、やはり診療上どのように生かしていくかが、今、問われている。やはり我が国ではかかりつけ医機能が手薄だったことが新型コロナで明らかになっています。かかりつけ医機能を強化するためには、特に診療報酬という観点から言えば、今の出来高払いがほとんどという状況から包括払い化を進めていくということも、今後、大いに検討するべきではないかと思います。
最後に、生活保護の医療扶助、それから不妊治療という、いわゆる保険外になっている医療についてです。我が国は、国民皆保険と言いながら、保険外であるものが意外なところに残っていたということを改めてここで感じました。確かに、生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づいて設けられて、医療の国民皆保険制度が成立する前にできたという経緯があるので、当時は医療扶助というやり方をせざるを得なかったという面はあったかと思いますが、今日においては、保険外にすることが望ましくベストなやり方であるとは全然思えない。むしろ、保険とうまく共存していくことが必要なのではないかと思います。現に、先ほど主計官からも説明ありましたように、介護保険が2000年にできましたが、生活保護受給者は、一旦、介護保険制度に入った上で介護サービスを受ける仕組みになっているということからしても、言わずもがなかと思います。そういう意味では、国民皆保険の利点をうまく生かしていく制度改革を進めていくことが大事であると思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、十河委員、お願いします。
〔十河委員〕ありがとうございます。私のほうからは、全体的な感想と、それから各論を2点ほど申し上げたいと思います。
まず、今回も、御担当の皆様、大変具体的で、分かりやすいものを提出いただきまして、ありがとうございました。非常によく理解できました。そして、先ほど櫻田委員もおっしゃっていましたが、私も基本的にここに出ている提案については賛成でございます。
その中で、やはり今回、こうしたコロナという状況にあって思いますのは、今が本当に様々なことを変えていくタイミングであるということです。当たり前のことではありますが、ここに出ている提案につきましては、長年ずっと議論されてきて、なかなか実行されていないものが多数ございます。世の中がこれだけ大きく変わってしまって、社会が半分止まっているような、逆に言うと足元をゆっくり見つめ直すことができる時期でもございますので、やはりこのタイミングを、ある意味、天からの声のようにしっかりと受け止めて、ここで変えていくべきことは変えていくということを、ぜひ行っていただきたいと思っております。そのためにも、幾つか出ておりますが、デジタル化の推進は医療においても非常に大切なことであると思います。
私が各論の中で2点ほど申し上げたかったことは、1つは、32ページ、33ページにございます地域医療構想、これももう数年来、ずっとこちらで議題として大きく取り上げられておりましたが、なかなか進んでいない状況である。そして、今年はコロナになってしまったことで、それが一旦止まってはいると思いますが、逆に言うと、コロナにより、医療の現場で非常にいろいろな問題が起きているということに、テレビやニュースで私たちも日々触れることになりました。つまりは、今の医療体制がこのままでいいのかということを、ある意味コロナが浮き彫りにしていると思います。そのためにも、ここで大きくかじ取りをしていただきまして、特に医師たちの働き方改革ですとか、書いてございますが、医師の偏在対策、もう現場が悲鳴を上げているということを国民も感じ取っておりますので、そういった国民の賛同も基に現場を改善して、構想を推進していただけたらと思っております。
それから、53ページ、54ページの児童手当の特例給付、こちらは先ほど進藤委員もおっしゃっていましたが、私ももう廃止をするべきではないかと思います。あとは、主たる生計者という概念が、私がここ数年、気になっているところでして、やはり今はもう世帯として収入を考えていくべきで、女性のほうが収入が多いという家庭もございますし、主たるというところでどうしても世帯主という印象を持ちがちですが、ここはやはり社会の流れの中に則り世帯収入で考えていくべきであると思います。
最初の話に戻りますけれども、後期高齢者問題が2022年度以降にやってまいりますし、とにかくタイミングを大切に進めていけたらと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、お願いします。
〔武田委員〕ありがとうございます。
本日も、大変詳しく御説明いただきまして、ありがとうございます。私からは、3点申し上げたいと思います。
まず、1点目は、社会保障の制度改革を進める上で、やはり原理原則は大事であると思っております。個人的には、小さなリスクは自助で、大きなリスクは公助でと。総理も、選挙期間中、自助、共助、公助、そして絆とおっしゃっていましたので、そういった視点で様々な改革案が載っておりますが、その原理原則をベースに進めていければいいと考えます。
その上で、櫻田委員もおっしゃられた一つ一つの各論の実現が大事であるということは、私もそのとおりであると思います。やはり私にとっての優先順位は、時間軸で考えたときに、2022年問題はもう時間が迫ってきておりますので、ここはしっかり進めるということは時間軸での優先順位として、再度、申し上げたいと思います。また、コロナ禍で現役世代に様々な収入面への影響が出ていることも考えますと、高所得者への児童手当もコロナがゆえにしっかり見直すことも大事ではないかと考えます。
2点目、デジタル化でございます。どなたかもおっしゃっていましたが、確かに医療費の抑制という視点も大事ですが、同時に、国民の健康、あるいは身体への影響ということを考えても、重複の検査、重複の投薬は是正するべきであり、デジタル化は医療、社会保障全般に使えるツールであると思いますが、目的は何かというところで、単にデジタル化、効率化を進めればいいというよりは、国民にとって何がよくなるかというところをしっかり訴えていくことが大事ではないかと考えます。
3点目、雇用調整助成金に関してです。私も、日本の失業率が各国に比べて相対的に低位にとどまっている背景の一つには雇用調整助成金の支援があると考えていますので、これはコロナが起きた直後として必要な措置であったと考えております。一方で、今、企業が売上、あるいは収益対比でどれくらい過剰雇用を抱えているかということを当社で試算してみますと、ざっくり申し上げて、今、リーマン並みの水準にまで達しています。
したがって、この先、これらの方々の失業なき移動をどのように実現していくかということがやはり課題であって、どこまで支援を続け、そして、デジタル化が進む中でその方々に新しいスキルを身につけていただいて、社内での配置転換なのか、あるいは社外も含めた日本全体でのシフトということをどこから考えていくのか、そこをうまく今から制度設計していく必要があるのではないかと思います。つまり、軸足を移していくということであると考えます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕田近委員、お願いします。
〔田近委員〕いろいろ御説明、ありがとうございました。総論、患者負担、薬剤費の適正化、ガバナンス、医療扶助ですが、これは考えてみると必ずしも横並びではなくて、ガバナンスの強化というのは全体を構造的に捉えるものであると思いますが、非常にいい説明だったと思います。
1点、31ページですが、都道府県によるガバナンスの強化で、私も前から多少気になっていましたが、後期高齢者医療制度は、実態的には都道府県が運営しているかと思えば、広域連合による事務処理が行われていて、それを都道府県に移行してガバナンスを強めると。非常に重要なことであると思いますが、広域連合は基本的には都道府県単位ですよね。都道府県単位の広域連合に、一体どういうガバナンスの問題があって、それを都道府県に移行することで何を期待しているのかということについて、時間次第ですが、ぜひご説明をお願いします。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田中委員、お願いします。
〔田中委員〕ありがとうございます。
まず、医療費において、これだけ公費が大きく投入されているにも関わらず、病院経営が大変で、例えばコロナ禍で尽力されているソーシャルワーカーの方々の給与や賞与が十分に出ないという情報なども報じられまして、ここは少しアンバランス感が否めないと思います。個人と、医療体制の制度と、公費との関係が、受益と負担の構図と同様に、よく見えていない、つながっていないという実態があると思いながら、今日の方針自体は全て納得感があるので、これをよく理解していただく環境を整えねばと思いました。まず、国民が望むべき理想的な医療の在り方とはいかなるものなのか、医療機関の健全な経営はどうなのか、そして、限りある財源を有効活用していく公費の支援を、同じ方向を向くようにデザインを変えることと、国民レベルで議論を重ねることが今こそ必要かと思います。
もう1つ、自治体及び地域医療のガバナンスに関しましては、本来、不要かもしれませんが、毎日、通院する高齢者の方がいて、来なくてもいいですよと病院側はなかなか言えず、自治体としては、高齢者の居場所の問題や、健康管理の問題など課題意識がある中で、住民サービスの政策では、医療単体ではなくて各種の公費措置についても、いろいろなまちづくりや、ほかの厚生労働の分野でも政策や取り組みが多々ある中、これらを立体的に考えていくことがあってもよいかと感じます。
また、保育について、共働き夫婦が平均世帯の中心となっていく中で、保育園の入園で仕事への復帰条件が決まるようなケースは周りにも多くありまして、保育あってのフルタイムが続けられるという女性も多いところです。パートタイムとの比較は、少し慎重に考えなければいけない部分があると思うと同時に、これは特に都心部中心であると思いますが、フルタイムワーカーの立場でも、リモートワークとか、在宅ワークの制度を使える人も出てきていますので、実態に即した支援の在り方を精査することが必要かと感じます。
以上、よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。かなり議論も出てきたと思いますが、私から3点、お話をさせていただきます。
11ページですが、先ほど末澤委員は、この表を使って別の話、危機対応の話をされていました。グラフは人によって見るところが違ってくるということかもしれないのですが、やはり新型コロナウイルス感染拡大の結果、不要不急の外出をやめたことで減ったものがかなり見られるというふうにも取れるかと考えます。消費のデータを見ていても、基礎的支出は減らないけれども、選択的支出は減りましたということが起きています。ということは、やはり不要不急の外出をやめたことによる影響も少なからずあるであろう。今回のイシューではないですが、先ほど土居委員もおっしゃった、かかりつけ医制度を徹底する必要があると思います。かかりつけ医を設けることで医療サービスの利用が根本から減ってくる、そういう仕組みをつくることができるのではないかと思いますので、このページだけではないのですが、まず、その点を申し上げたいと思います。
続いて、16ページですが、これも再三、皆様おっしゃいました。できるだけ広い範囲で8割給付を、高齢者の方々からいただきましょうという話は私も大賛成ですしし、そうすべきだと思います。ただ、仮に後期高齢者の方々が2割負担になった場合、どれぐらい実効給付率が減るのかという推計ができるのであれば、ぜひ見せていただきたいと思います。本当にこんなに減るということが示せれば、言い方あるいは推進の仕方も変わってくるのではないかと思うので、もし、そのような推計が可能であればお願いしたいです。
3つ目としては、様々なところでPDCAサイクルの話が出てきまして、本当に大事であると思いますが、いざ実行するときに、既に慣習になっていて、もう説明がつかないような様々なことがところどころあると感じています。例えば、診療報酬制度は何で2年に一遍の改定なのかとか、都道府県医療費適正化計画も一気に6年間になったのはなぜかとか、先ほど一松主計官から収載医薬品の調整幅も20年間変化なしで2%ですという説明がありましたが、なぜそうなったのかということを考えないといけない。ただ単にPDCAサイクルをまわすだけではなくて、常識を疑っていきましょうということを、もう1回、見直さなければいけないのではないかと思います。
私からは以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕ありがとうございます。
今日は、社会保障改革ということで、財政の健全化を考える上で、まさに一丁目一番地ということです。コロナのこうした時期で、とかく重要な問題が遅れがちになるのではないかということを大いに懸念しています。
そうした中で、この課題を解決していくために何が必要かというと、やはり全体感であるとか、戦略性を強く意識して進めていく必要があるのではないか。大きな方向性とは、負担と給付の見直しや医療提供体制の適正化といった方向が出ていますが、その下に、今日もたくさん施策が出ていますが、それらの施策はどのようにつながっているのか。それから、それを実現したとき、あるいは全部寄せ集めたときに、社会保障の全体像がどうなっていて、かつ財政の持続可能性も確保できるということを国民に示していかないといけないのではないか。
ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、先ほども少し話題になっていた今回の10万円の給付、なかなか消費が戻ってこない。当社では、4兆円の個人預金が増えました。なぜそういうことになっているかというと、やはりコロナの先にある社会の姿が見えないからです。同じように、社会保障の問題も、やはり将来に向けて、このようにすれば安定させられる、すなわちサステーナブルであるということを見せて理解を得ていく必要があるのではないか。
その場合の視点としては、先ほどから何人かの方が触れておられますが、1つは、やはり深刻な社会的格差が広がる中でのフェアネス、公平感。もう1つは、やはり社会的なダイナミズムというのか、成長力と言ってもいいのかもしれませんが、それを確保するための工夫が必要であると思います。例えば、現役世代とリタイアした人たち、どちらを重視するのかという考え方です。
もう1つ、財審での議論の進め方についてです。今、中空委員が言われたこととも少し関係ありますが、そもそも、ここで示されている個々の施策の財政上の効果はどれぐらいあるのか。それから、実現の可能性がどれぐらいあって、どこがインペディメンツというか、鍵なのか、障害なのか。それを示した上で、優先順位を明確にして、やはり重点的に取り組むべきものに議論を集中して、抵抗もあるかもしれないですが、頑張って皆で実現に向けて力を注いでいくという運営が望ましいと思っております。
その上で、簡単に3点だけ個別の話をします。
まず、1点目、患者負担の在り方のところで、18ページの後期高齢者負担の割合見直しですが、これはぜひやるべきであると思います。そもそも、年齢を基準にした高齢者を一くくりにするというのはあまり現実的ではありません。何といっても、国民の1,900兆円の金融資産のうちの相当部分は高齢者が持っています。
それで、見直しの方向観は全く違和感がありませんし、ぜひ、やっていただきたいのですが、一方で、特に負担能力を加味するとなると、金融資産の把握をどうするのかという問題が出てくるため、制度に加えて情報インフラをどのようにつくるかが非常に重要なポイントであります。これは、1つ、デジタル化ということでマイナンバーカードの普及にもつながっていくわけですが、これらの問題にどのように対応するのか。このあたりにも、今回の予算をどのように使うかということを考える上で重要な鍵があると思います。データの基盤の構築、利活用、それから、これは財政の問題ではないかもしれませんが、プライバシーの問題をどうするか。これは、まさにプライバシーを気にする個人に対して、それを提供しろという政府の方針があるのであれば、その代わりにどのようなバリューが提供できるのかということを明確にする必要があると思います。
それから、2つ目、都道府県によるガバナンスの強化のところです。34ページ、35ページです。これは、私も全然知らなくて、新しい指摘であると思うのですが、そもそも医療費の見込みが目標ではなくて、負担面との連動もないということに少し驚きました。これでは、医療費の抑制に向けた自律的なインセンティブは全く働かないということです。したがって、都道府県が主体的に計画の進捗状況管理に取り組んでPDCAを回すための仕組みづくり、ガバナンスのみならず、情報開示であるとか、適正化に向けたインセンティブをどう与えるか、そこをぜひ工夫していただきたいと思います。
最後です。雇用調整助成金、これも先ほどから皆様触れておられるとおりでして、私も効果は非常にあったと思います。ただ、ディスロケーションというか、要するに雇用の潜在的なミスマッチが起こっていることも事実であって、特例措置である以上、出口戦略は必須です。ここではモラルハザードの問題という指摘がありましたが、やはりコロナ前の世界は戻ってこない、産業構造も変わる、企業の新陳代謝も促していかなければなりません。
したがって、今後、この施策の重点化のためには、第1に働き手の能力開発支援、リカレント、第2には労働市場の流動性を高める方向にシフトすべきだと思います。この2つは、デジタル化の加速と相まって進んでいくであろう雇用機会の大幅な変化、簡単に言えば今のままでは仕事が続けられない人が出てくるという状況に対処するためには不可欠なことでありますので、今から備えていく必要がある。先ほど神津委員がおっしゃった雇用のマッチングの活用も非常に良いことだと、私は思っております。
いずれにせよ、この話に限りませんけれども、コロナからの再生というのはビルド・バック・ベターであります。前回のこの会議で皆様が指摘になっておられたワイズスペンディングの流れで言えば、お金は未来の投資に使うということで、ぜひお願いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、お願いします。
〔堀委員〕ありがとうございます。
時間もあまりないかと思いますので少し早口になりますが、意見を述べたいと思います。
資料で示された総論、背景にあるフィロソフィーについては、基本的には共感、賛同しております。各論で若干違うところもあるのですが、全体としては財審で今まで述べてきたことを着実に進めていくことが重要であると考えております。
まず、ポスト社会保障と税の一体改革の流れで2025年までに行うべきことは速やかに行うこと、そして、ウィズコロナの時代も踏まえて、2040年以降の世界をどのようにつくっていくかをふまえた社会保障に転換するという複眼的な視点が必要であると思います。
参考資料の14ページに、「国民医療費の増加は国民負担の増加を意味する」と書かれており、医療費の増加を経済成長の伸び率の範囲で抑制することが必要という認識が示されておりますが、持続可能性の確保の対応という意味でその必要性は理解いたします。ただ、今の制度のまま一律にキャップをはめるというような抑制は限界があると思いますし、これまでの議論にもありましたが、ワイズスペンディングが求められると思います。つまり、給付の中身に合わせたメリハリの利いた支出とすることが肝要かと。そのような観点から、今回の資料を読み込むと、メリハリをつけようとしている意図を少なからず感じますし、各論はそれぞればらばらにように見えて、全体としてはつながっているところがあるのではないかと思いました。
資料の薬価のところですが、診療報酬改定で薬価が下がっていっても、使用量の増加や年度中の新規保険収載で薬剤費が上がるということは、まさにそのとおりで、保険給付範囲×単価×数量で決まっていますので、新規で保険収載が増えるならば、それに合わせて何かを出す、あるいは単価を下げるしかないわけで、そこをどうするのかという基準をつくっていく必要があると思います。これまでもありましたが、今回、そういう幾つかの提案が具体的になっているので、ちょうど薬価の改定が1年ごとになっていくこともありますし、そこは進めていくべきであると思っています。
また、11ページの新型コロナウイルスでの医療機関の経営悪化も、受診控えが一部報道されていますが、先ほど他の委員からもありましたとおり、不要不急の受診、コンビニ受診、子供の夜間受診が減って、その代わりオンライン診療が増えました。あと、待機可能な手術の延期という可能性もありますので、ある意味、賢い受診が増えた可能性もあります。これはデータの詳細な分析が必要であると思いますが、ウィズコロナの時代、必要なアクセスは必ず確保した上で、どうやって受診行動の適正化を進めていくのかを考えても良いと思います。
それから、12ページ、16ページは、資料の工夫が本当にすばらしいと思いました。今までですと、保険給付範囲の在り方の見直しの議論に色々な用語が混在してわかりにくいところがあったのですが、患者に関わるものと医療技術や薬品に関わるものを明確に区分したのは、分かりやすくなってよかったと思います。財審でも分かりやすさが重要であるという話がありましたし、引き続きお願いしたいと思います。
また、訴え方のところでも、これは小さな工夫なのかと勝手に思っているのですが、患者負担の導入というところも、厚生労働省の資料を引用し、一部負担金としての趣旨が明記されたのは良かったと思います。財源確保が主な目的ではなくて、モラルハザードの防止とか、受診行動の適正化という要素があると記載されていましたが、まさにそのとおりです。この趣旨をふまえると、療養の給付は、年齢を問わず同じ負担であっても全く問題はないと考えることができるのではないかと。驚かれるかもしれませんが、療養の給付としての一部負担金を年齢で区分する積極的な根拠は実はあまりないのではないかと。子どもも高齢者も年齢を問わず、療養の給付、あるいは一部自己負担金は一律であったとしても、本来はおかしくない。受益に応じた応能負担という言葉もありましたが、もし受益である一部負担で応能負担を徹底すると、それは誰にでも起こりうる社会的なリスクを分散する共助としての社会保険というより、社会福祉制度、あるいは公的扶助のほうに近づいていくことになってしまうのではないかとも思います。
この問題を細かく議論していくのは難しいかもしれませんが、要は、保険料とか所得税は、所得による応能負担であるのは当然であると思うのですが、療養の給付、つまり、一部負担金である自己負担は年齢を問わず同じように得られるということが、それこそ全世代型社会保障でも言っている、世代を問わず誰もが同じようにサービスを受けられるということなのではないかと思います。それから、一定所得以上にするという趣旨については理解できるのですが、例えば所得の細かいところ、現役世代並みの所得をどうするか、低所得の判定基準をどのようにするかなど細かい線引きの議論を今、このタイミングでやろうとすると、ほかの制度にも大きな影響を与えますし、制度間の整合性を確保した上で進める必要があると思います。後期高齢者の患者負担2割は、保険財政面でもそうですが、団塊世代が後期高齢者入りする2022年度までに実施しないと混乱も大きくなりますので、2025年までの喫緊の課題です。現在、前期高齢者である団塊世代の一部負担金は2割となっていますが、そのまま、後期高齢者となっても2割維持、全員がそのまま2割というほうがシンプルで理解を得やすいのではないかと考えます。
将来的には、世帯単位で見るのか、あるいは年金の所得控除をどうするのかという議論もありますので、そこの部分も重要であると思うのですが、16Pで提示された図では、医療費の給付割合として表記されておりますし、児童と高齢者の方は給付割合がやや高くなっているが、給付の基本は同じと見せていると思いますし、そこを強調してもよいのではないでしょうか。現役世代の収入減少は報道されていますが、高齢者の年金収入は、新型コロナでもそこまで大きな影響を与えていないということもデータで出ています。
それから、24ページの新規医薬品の保険収載、これは先ほどもお話ししましたが、保険収載と既存薬品の保険給付の見直しを、財政中立に行うことは極めて重要で、ただ、予算統制の在り方について、先ほどもキャップの話を言いましたが、医薬品のイノベーションをどう評価するのか。それこそ、家計に与える大きなリスク、小さなリスク、財審でも議論されていますが、それは保険給付の範囲の在り方とともに考えることが重要な視点なのではないかと思います。
ここでは、既存の収載済みの医薬品を保険給付から除外すること、保険外併用療養費制度に新たな類型を設けることがあげられています。来年度、毎年薬価改定になりますので、28ページにある公的統計の精度を上げて、本当に薬の流通制度は不可思議なものがかなりありますので、良い悪いが分かるような、データが「見える化」できるのは非常に重要な視点なのではないかと思います。
それから、都道府県によるガバナンスは、私が長年ずっと言い続けていることですが、地域医療構想、医療計画、医療費適正化計画も主体は都道府県です。私は戦後の一番大きな改革と思っていますが、国保改革により都道府県が市町村と共同で保険運営を担う保険者になったはずですが、実態はほとんどそうなっていません。都道府県の方とお話をしても、保険者といっても、インシュアランスの保険ではなくて保健となっていることが多い。本当の意味で保険者にはなっていないので、そこに何かインセンティブをつける必要があると思います。
地域医療構想の推進は、後期高齢者の窓口負担2割の統一とともに、全世代型社会保障の改革で最も重要であると思っています。機能するためには、そちらでも都道府県の役割が必要で、新型コロナで遅延していますが、先ほど他の委員の方もおっしゃっていましたとおり、新型コロナで露呈した問題の中にたらい回しの問題が一部ありましたが、医療機能の連携、それぞれの地域における、地域完結としてどのように医療連携を進めるのか。それは公立病院も含めてですが、そこがしっかりできていれば、もう少し問題が少なくなった可能性もあるのではないかと思います。当然、未知の新興感染症に対する配慮が欠けていたということも十分反省すべきですが、むしろウィズコロナ、あるいは、ほかの新興感染症を踏まえても地域医療構想の推進は非常に重要であると思っていますし、公立・公的病院のみならず、私的病院も含めた、地域全体で治し、支える地域完結型の医療の展開が必要であると思っています。
〔増田分科会長代理〕恐縮ですが、そろそろ終わりにしてください。
〔堀委員〕最後に1点だけ。
不妊治療の保険適用の話ですが、保険適用ということそのものに異論はありません。ただ、どの保険なのかというところで、医療保険以外の選択の余地もあるのではないかと思います。例えば、育児休業の給付の一部は雇用保険から出ています。労働災害による治療は、労災保険があります。医療保険は疾病リスクを対象としている保険であるので、不妊症を疾病ととらえ、その治療を保険診療に入れるというのであれば、当然、医療保険が良いと思いますが、そうではなくて不妊症治療の保険適用の趣旨が少子化対策であり、少子化を社会的リスクとするならば、別の保険の枠組みもあり得ると思います。たとえば、老人医療費が増えたときに、老人保健制度とは切り離して、要介護を社会的リスクとして介護保険制度という新しい制度ができたように、待機児童の問題、あるいは児童手当の問題、少子化対策全体を含めた、こども保険ではないですが、新しい安定的な財源確保もできるのではないかと思います。
仮に50年後に少子化の問題が解消し、人口が減少しない定常状態になったとき、一度保険適用対象となった不妊症治療を保険診療から外すというのは難しいと思います。一度、制度ができたら基本的に定着していくことが普通であると思います。不妊治療、育児支援を公的に保険等で支えようという趣旨そのものには賛成ですが、その手段が医療保険だけであるかどうかということは、検討の余地もあるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕オンラインの方を含めて、あと6人、挙手しておられるので、できるだけ手短に。それから、多岐にわたる場合には神津委員のように、この場で発言されることとペーパーで意見されることと分けていただけるとよろしいかと思います。
それでは、神子田委員、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕社会保障に限らず、財政健全化には規律が求められると言われますが、先週の概算要求で一つ愕然としたことは文部科学省の要求です。4年後にアメリカ人宇宙飛行士を月に着陸させるというアルテミス計画、これに810億円を要求しています。今年度当初は70億円ですが、何がびっくりしたかというと、これをコロナ対策の緊要の予算として要求していたということです。文科省に聞いたら、宇宙での遠隔操作技術、それと密閉空間で衛生を高度に保つ技術は感染症にも有効ですと。それは理解しましたが、では、どうして緊要なのですかと聞きました。答えはいただきましたが、恐らく皆様を説得するほどのものでもないので割愛します。この間もどなたかおっしゃっていましたが、どうしてもコロナ禍で、緊要ということで歳出が拡大することに国民は納得する面もあるという中、私は霞が関の規律はどこへ行ってしまったのかと思った次第です。
気を取り直して言いますと、規律というのは別に霞が関だけではなくて、負担する国民側にも求められると思います。先ほどの9割、8割、7割の問題で、やはり7割、要は3割しか負担していない年代も、例えば風邪とか小さなリスクの自助の部分は、もう少し負担割合を増やしても良いのではないか、負担割合を病状によって変えても良いのではないか。やはり高齢者だけ言うと高齢者いじめという話になりますが、そうではなくて、国民全体で負担を減らしていくということを言ったら良いかと思います。
また、13ページを見ると、何かパッチワーク的な、昔はこのように現役が少々負担すれば、もつのではないかということで当座の制度をつくりましたが、やはり制度を抜本的に変えないと、これからの高齢化社会はもたないのではないかと思いました。今日、お話のなかった診療報酬の件も、医者からすると報酬で、報酬を下げると何か悪いことをした感じがしますが、国民からすれば料金であり価格です。これは、料金引下げとか、価格破壊とか、やはり国民を味方につけるような議論をしていったら良いと思います。財務省とか、政治家の方は難しいかもしれませんが、財審は、一応、そこから独立しているという建前ですから、そういう提言をしたら良いのではないかと思いました。
最後に、不妊治療は、やはりこの国の将来を取り戻すためには子供が生まれてこないとといけないので、20年、30年では財政的には間に合わないかもしれませんが、100年、200年と続く国家の将来を考えると、ぜひここには多めに、メリハリを利かせた多くの予算を取ってもらえたらと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、どうぞ。
〔宮島委員〕ありがとうございます。可能な限りこれまでの方とダブりがないようにします。
今回の財審では、コロナであぶり出された有利な部分を可能な限り活用し、コロナの結果としての逆風をできるだけ避ける、という方向で建議をまとめるのが良いのではないかと思います。その意味で、1つメリットがあったことは、先ほどの頻回受診です。これまでも頻回受診があり、無駄な医療がたくさんあるとわかっていながら、その証拠がなかなかつかみにくかったと思います。もちろん、控えた受診は全部無駄で、全てにおいて行く必要がなかったというわけではなくて、子供が無理して行かなかったり、高齢者で負担が少ないから相変わらず行っているということもありますが、いずれにしろ、ここでせっかく出てきたデータをより深掘りして、頻回受診や無駄な医療を減らすため、うまく活用できるデータをそろえることが良いのではないかと思います。さらに、電話相談や遠隔医療でできることも増えましたし、コロナ禍においては、若い人はコロナかもと思ったときに、自分はどこに行ったら良いか、どこに駆け込んだら良いか分からなくて、外来の緊急に飛び込むということもありましたが、まさに、かかりつけ医制度が機能していないところのデメリットも出ましたので、そういったところを進める必要があると思います。
また、薬の価格形成については、これまた一般の人たちは、薬のどこかに絶対無駄があるということはみんな感じつつも、どこに無駄があるかということを明確に言えない、このもどかしさをプロではない人たちは皆感じます。その一端を今日の資料で見ましたので、これは製薬会社は嫌がると思いますが、多分、ここは国民と財審と財務省は同じ視点に立てると思うので、可能な限りごりごり掘って、データを詳しくあぶり出していくのが良いと思います。
一方で、財審のデメリットですが、こんなときに財政再建を言うのかという逆風の中にあるのは明らかです。財審はこのような時期に財政再建と、国民の気持ちと逆のことを言っている組織であると思われないことが、一つ大変大事であると思います。
そうした意味では、必ずしも普段の、主要官庁が要求してきました予算を、財審あるいは財務省は可能な限り抑えようとしていますという見え方だけではなく、同じ視点で、この生産性はもっと上げたほうが良いと、同じベクトルに向かっているというような側面を国民に対してもちゃんと出していくことが必要です。皆がウィン・ウィンになれる形と、それに反対している既得権者を明確にしていきますと、規制改革など割と既得権者に厳しい風も吹いている昨今でございますので、財審の言っていることは国民の声と相反しているベクトルではないということが示せるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕以上が、この会場での皆様方の御発言になります。
それで、オンラインで参加の方、登録が赤井委員、上村委員、黒川委員、冨田委員の4人でございます。3時を少し過ぎておりますので、発言はぜひ手短にお願いしたいと思います。マイクに近づいてお願いします。
赤井委員から、どうぞ。
〔赤井委員〕簡単に。もう皆様おっしゃっていたように、財政状況は劇的に悪化していますし、今後も少子高齢化は進みますので、適正に負担してもらうということが重要です。一つの観点として、段階的な負担をもう少し取り入れても良いのではないかと思いました、例えば、15ページの医療保険の患者負担では、後期高齢者は3割から1割に一気に変わってしまうので、その辺りでは就労のインセンティブも変わりますし、3割と1割、2割ではなくて、その間に、少し制度はややこしくなりますが、今、デジタル化でできるので、1.2割とか、もう少し直線的な形で崖をなくすのも良いのではないかと思います。
それから、19ページの大病院への患者集中も、5,000円となっていますが、今後、200病床とか増やしていく段階で、例えば5,000円だけではなくて、4,000円、3,000円、2,000円みたいな段階を入れるのも良いのではないかと思います。
最後に、マイナンバーのところで、38ページや43ページでデジタル化とマイナンバーの話がありますが、どちらでもいいので、できたらマイナンバーでという形だとなかなか進まないので、やはりマイナンバーと一体化しようと各個人が思えるようなインセンティブ設計も大事かと思いました。
簡単ですが、以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕34ページの都道府県医療費適正化計画についてです。半年前に全ての都道府県の計画を見ましたが、形式も目標もばらばらで、比較が非常に困難なものでした。医療費適正化計画という名称でありながら、医療費が目標値になっていません。御報告のとおりです。適切なマネジメントができるようなものになっていないという根本的な問題があると思います。医療費の抑制を目標にした上で、可能ならば制度改革による医療費の抑制部分と、地方自治体の努力による医療費の抑制部分を明確に分けることができればと思います。地方自治体の努力による抑制部分について、いかにエビデンスを抽出していくかが大切だと思っています。地方自治体が医療費抑制に対してどのように努力したかを明示する、そのようなマネジメントの改革が大事かと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、黒川委員、お願いいたします。
〔黒川委員〕ありがとうございます。
私は、会計学者として1点だけ、24ページを開けていただけますでしょうか。24ページの新薬の価格づけの問題で、類似性のないものについて原価計算方式と書いてあると思いますが、そこについて確認したいことがあります。
1つ例を挙げてお話ししますと、ある製薬会社が別の製薬会社を買収したときに要した一定の対価について、買収された会社の識別可能な純資産の構成価値を超える部分は、無形資産になりますが、そのうち、いわゆるのれん代については、超過収益力の源泉、あるいはシナジー効果があるとかいろいろ言われていますが、のれんは高い買い物であるともいえます。
この、のれんが多額に発生している、要するに買収をしているような会社で新製品ができたときに、この原価計算方式でのれん代の回収というのはどうなるのだろうか、ここが一つ疑問です。もちろん、買収した先の会社だけではなくて、ほかの製品も成功するかもしれませんが、全体的に企業が存続するためには、いろいろなのれん代も新たな新製品の価格算定に算入する可能性がある、ここが問題です。
また、買収の際にアドバイザーに払った金額も、ここに上乗せされるのかどうか。
それから、もう1点だけここに関連すると、研究開発費、研究開発の努力が成功する会社と、そんなに成功しない会社があるかもしれません。しかし、そういう会社で新製品ができたときに、新製品の成功の陰にはたくさん失敗する製品がありますが、その失敗したコストも、恐らく成功した新製品に上乗せしないと企業は存続しないということになる。そうすると、失敗する確率の高い会社は、たまたま成功したところに失敗コストがたくさん上乗せされる。しかし、ある意味、優良な会社の場合には、幾つかの製品に分散して失敗の部分が上乗せされるということになると、どうもこの原価計算方式でいくと、失敗する会社のほうが高い薬価になってしまうのかということが心配です。
もちろん、失敗する可能性の高いものに対して一生懸命努力するということ、あるいは成功する可能性の高いものだけ研究開発をする、そうした違いが分かった上で質問していますが、今、私がお話ししたような、のれん代とか、アドバイザーに払ったフィーとか、あるいは成功の可能性の高低が薬価に反映されているかどうかというこの原価計算方式の中身について、厚生労働省のほうに問合せをしていただきたいと思います。
以上が、黒川のお願いでございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、最後になります。冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。2点でございます。
第1は、既収載の医薬品の薬価改定についてです。資料の26ページにありますように、市場実勢価格の加重平均値に対する上乗せ幅の在り方について、事務局は問題提起をなさっておりますが、医療保険に収載されるということは、政府が国民負担で医薬品を購入するという意味で、一般の政府調達と同様の行為と見ることもできるのではないか。一般の政府調達の場合は、購入価格の客観性を担保するために入札が行われております。品質が同じであれば、最低価格が政府購入価格となりますが、医療費については、最低価格ではなしに、資料の26ページにありますように、加重平均を取って、さらに2%もの上乗せが行われております。したがって、ここに大きな国民負担軽減の余地があるのではないかと思います。
もう1点は、国保の都道府県単位化についてです。これは、社会保障制度の持続可能性を確保するために肝となる、不可避の重要な課題ですので、コロナ禍においても粛々と進めねばなりません。既に巨額の国費がつぎ込まれ、当審議会が建議で繰り返し指摘してきた事項の進捗状況について確認しておく必要があると思います。
まず、普通調整交付金についてです。これは、今日の説明資料ではなしに参考資料のほうにありましたが、23ページ、年齢構成では説明できない医療費の差を都道府県の保険料水準に反映するという方向に向けて、普通調整交付金の配分方法の見直しを行うということをずっと言ってきたわけですが、それはきっちりと進んでいるのかどうかということ。また、昨年度の予算では、普通調整交付金6,400億円でしたが、本年度は6,100億円となっております。代わって、特例調整交付金が増えているように見えます。来年度の予算においても、このあたりをどのように検討するかということが課題であると思います。
次に、都道府県単位化に関係する問題として、法定外繰入れの解消もあります。これについては、資料の36ページ、毎年3,400億円ずつ国費が投入されております。これは、左下の図にありますように、国民健康保険料の補塡のために行われていた法定外繰入れをなくすために実施したのではないか。2010年代の前半、法定外繰入れは3,400億円程度でしたので、既にこの全額は国から支援が行われていますので、2018年度、2019年度で法定外繰入れはなくなってしかるべきであると思いますが、それが具体的にどうなっているか、まだ伺っておりません。ここでは、18年度に少し残っていることが示されております。
また、このページの右の図でありますが、普通調整交付金の配分です。これは、配付されたものが法定外繰入れの減少につながっているグラフであると思いますが、まだ法定外繰入れが巨額になされている都道府県もあります。さらに、毎年3,400億円の財政支援のほかに、財政安定化基金という名前の積立金が総額2,000億円、国から支援がなされておりますが、これはどのように利用されているのか。今日は伺えませんでしたが、やはりこの問題は個々の都道府県単位化の重要な問題であろうと思いますので、もう時間がないですが、機会があれば詳しくお聞かせいただければと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、委員の方々からの御発言はここまでとさせていただきます。今日、1回限りで言い放しという格好になってしまいましたが、建議の案をまとめるときに、またいろいろ御意見を賜れればと思っております。社会保障については、もう1回、議論の場がございますので、また、そういった場を御活用いただければと思います。
それでは、今日の議論はここまでといたします。この後、記者会見をいたしますので、個々の御発言につきましては報道関係者にお話にならないようにお願いします。
また、次回ですが、10月19日、16時から、歳出改革部会を開催します。議題は、社会資本整備、農林水産、外交関係等を予定しておりますので、部会委員の方はどうぞよろしくお願いします。
以上で、本日は閉会いたします。ありがとうございました。
午後3時15分閉会