財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和2年7月2日(木)14:00~16:05
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.議題
海外調査報告
予算フレームの透明性の向上について
会長談話
3.閉会
分科会長 | 榊原定征 | 井上大臣政務官 太田主計局長 阪田次長 角田次長 宇波次長 阿久澤総務課長 日室司計課長 前田法規課長 斎須給与共済課長 森田調査課長 寺岡主計官 大久保主計官 佐藤主計官 渡邉主計官 吉沢主計官 関口主計官 八幡主計官 一松主計官 中澤主計官 中島主計官 岩佐主計官 坂口主計企画官 井上主計企画官 飯塚主計企画官 | ||
分科会長代理 | 増田寛也 | |||
委員 | 赤井伸郎 黒川行治 神津里季生 佐藤主光 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 秋池玲子 上村敏之 宇南山卓 葛西敬之 河村小百合 木村旬 権丈英子 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 |
午後2時00分開会
〔増田分科会長代理〕それでは、時間が参りましたが、冒頭でカメラが入ります。そのまましばらくお待ちいただいて、それから開会といたしたいと思います。
それでは、カメラのほう、お願いします。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会、財政制度分科会を開催いたします。
皆様には、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
前回に引き続きまして、本日の分科会も対面と遠隔の両立ての開催となっておりまして、希望いただきました委員の皆様には、テレビ会議システムを通じて御参加をいただいております。
また、本日は、井上大臣政務官にも御参加をいただいておりますが、密を避ける観点からテレビ会議システムで参加をいただいております。
また、各主計官も、同様にテレビ会議システムを通じての参加といたします。
本日は、議題が3つございます。第1点目が海外調査報告、第2点目が予算フレームの透明性の向上について、3点目が会長談話と、この3つを議題としております。
それでは、この辺りで報道陣の皆様方には退室をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕本日も、新型コロナウイルス感染症対策のため、委員の皆様には大変御不便をおかけいたしますが、御協力のほどよろしくお願いいたします。
会議の進行につきましては、前回同様、途中、3つ目の議題になりますが、会長談話の前に5分間程度の休憩を挟みまして、換気を行わせていただきます。
また、マスク越し、ウェブ越しの開催となりますので、音声が明瞭に伝わりますように、できるだけマイクに近づいて御発言いただきますようにお願いいたします。
なお、資料につきましても、感染拡大の防止の観点から紙配付とさせていただいております。御了解いただきたいと思います。
それでは、審議に入ります。
まず、海外調査報告について、調査に参加された委員の方々から説明をお願いいたします。なお、本年の海外調査については、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえまして、フランス・スイス、そしてアメリカ・カナダへの出張は中止といたしております。このため、本日は、調査を実施した英国・デンマークと、EU・ドイツの2班について、各班7分程度で発表していただきます。
それでは、まず、英国・デンマークについて、堀委員、宮島委員からお願いいたします。
〔堀委員〕それでは、英国調査について報告をさせていただきます。
今、お話がありましたように、新型コロナウイルスで英国が重大になる前の状態だということを、最初におことわりさせていただければと思います。
2ページを御覧ください。ポイントに沿ってお話をさせていただきます。
1点目としまして、これまでの取組で生まれた財政余力を、低金利環境下において投資に振り向け、課題である生産性の向上等を図るのが政府の方針ということになっておりました。これに関しては、非常に肯定的な意見が多かったと思います。
2点目、3点目といたしましては、長期推計の必要な見直しを随時実施するなどしており、高く評価されているということ、及び長期推計では、医療、年金については政策的な判断が今後、必要になるというお話がありました。
4点目につきましては、財政運営に関する政治と行政の役割の分担がはっきりと意識されているということです。
3ページ目に行きます。英国の経済・財政状況と今後の見通しをまとめたものになっておりますが、過去10年間の財政健全化努力の結果、そのときまでは比較的良好に推移していたということが示されております。
続いて、4ページに参ります。ブレグジットについて、経緯を左側の表にまとめております。そして、右側のほうには、昨年12月の総選挙の保守党のマニフェストが抜粋されています。右下のところにボリス・ジョンソン氏の言葉が入っていますが、「Get Brexit Done」というのが保守党のスローガンで、とにかくブレグジットに集中しよう、それが終わった後には、「unleash Britain's potential」と書いてありますが、成長志向的な財政拡大をしていこうということで、マニフェストでは財政運営目標についても掲げられておりました。
5ページ、お願いします。5ページには、今、お話ししました財政運営目標ですが、財政責任憲章というものがあるのですが、左側が旧になっております。ジョンソン政権では、一応、これを、憲章そのものは変えてはいないのですが、マニフェストで目標を出していたところがございますので、新たな財政運営目標として純投資をGDP比で平均3%、これは逆に言いますと3%までは許容されるという目標となっております。なお、利払い費が一定以上になった場合は、債務残高対GDP比の減少に向けて具体的な行動を取るとなっております。ただ、この目標がうまく実現できるのかというところは、ヒアリングのときには低生産性の問題を解決する、あるいは低金利環境における借入れコストの面から肯定的な意見もあったのですが、実効性はどうなのかと疑問視する声も一部聞かれました。
6ページ、お願いします。6ページには、財政責任庁(OBR)の長期推計について調査をしてきました。実際、伺うことできなかったのですが、ほかのシンクタンク等から伺ったお話によりますと、OBRでは、労働生産性の上昇率を数回にわたって、実態に合わせて引き下げていると、こちらの図を見ると分かるかと思います。長期的なものを含めて書かれています。
7ページ、お願いします。7ページでは、財政持続可能性レポートが紹介されております。左下のグラフを見ますと、過去50年間で歳出は対GDP比で約8%増加すると推計されているのですが、歳出増加の最大要因として、医療、それから年金が挙げられています。医療といいますのは、NHSは89%以上が公費、国庫ということもありますし、年金に関しましてもペンションクレジットという制度の影響があるかと思います。詳しくは8ページを御覧ください。
7ページに、長期推計のヒアリングについて書かれているのですが、OBRの長期推計について非常に高い信頼性を得ているということで、ただ、政策を計画どおりにすることが前提に推計されておりますので、計画どおりでない場合は、ちょっとその部分は限界の余地があると書かれています。
9ページに行きます。国民とのコミュニケーションはどうなっているのかということを、たしかこの審議会でも皆様聞いてきてほしいということだったので財務省に聞いたのですが、左側の一番下、財務省のSNSでグラッドストーンという猫がいろいろメッセージとか発信しているので、特徴的な取組なのでしょうかと聞いたら、そこまで意識していないというようなことでした。むしろ、客観的な情報を提示するのが行政の役割で、分かりやすく財政について国民に説明するのは政治の責任なのではないかというお話がありました。それが一つ違いかなと思いました。
年金については、公的年金も含め老後の資金をわかりやすく説明し、各自が将来設計を考えられるように、民間の相談部署が設けられていました。
すみません、3分半でと言われて、時間になってしまいましたので、一応、これで終わりにさせていただきます。
〔宮島委員〕では、英国と一緒に訪問しましたデンマークについてです。こちらは11ページから御覧ください。
まず、全体のポイントお示ししております。調査の中では、いろいろなところで、2006年の年金制度改革が国の大きな分岐点だったというような意見がありました。これは、それまでは60歳早々でリタイアできるという仕組みがあったところを、その年齢を徐々に引き上げる改革を実現したということが、一つのデンマークの良好な経済・財政状況に反映されていると言えます。
ただ、もちろん12ページから14ページにありますように、デンマークは、そもそもが日本とは全く違うというか、経済・財政状況がとてもいい国、世界的にも極めていい国という印象を持ちます。
13ページは、経済と財政の構造ですけれども、財政規律自体はEUの基準よりも厳しくて、粛々とそれを守っているというのが財政の現状でした。
14ページに、足元の財政運営があります。1つは、デンマークに関しましては低金利をどう利用しているかというような点があったのですけれども、利払い費がそれで減って、どう使うかということに関しては、まだ明確な方針が決まっているわけではないということでした。ただ、日本にいると、えっとびっくりするほど気候変動関係の話がよく会話に出てきまして、みんな財政を気候変動の支出のほうに使うというようなところに意識が行っていると思いました。いずれにしろ、今の財政スタンスを堅持することが前提でありますので、財政スタンスがぶれないということがこの国の特徴だと思います。
気候変動対策に関しましては、それに関する公共投資を増やすべきという意見もあるのですけれども、公共投資は今も水準が高いという意見がありますので、どういう形で気候変動対策にしていくかに関してはいろいろな意見があるようでした。ただ、非常に意識が高かったです。
あと、低金利をどういうふうに考えているかということは、私たち一つテーマではあったのですけれども、ゾンビ企業を生き延びさせるというようなことは全く考えていないという感じで、質問しても、何ていうか、あまり反応がないぐらいに、そんなことはするわけがないでしょうという感じでありました。
15ページから17ページは、長期推計とコミュニケーションです。15ページには長期推計の概要をお示ししていますけれども、デンマークは、財務省と独立財政機関である経済評議会がそれぞれ長期推計を行っていて、その評価はどちらも高いという状況です。計算式、その他、両者に違いはあるのですけれども、それぞれがその違いをクリアにしているという認識があって、どちらがいい、どちらが悪いという話ではなかった。それから、推計に用いるモデルはまた別の機関が管理をしていまして、彼らがユーザーと意見交換をしながら、モデルの更新や経済理論を踏まえた新しいモデルの構築などをしていました。
この上で、日本は、モデルが政権寄りではないかというような議論があるので、そのことを聞いてみたのですけれども、経済学者同士の、あれはうそっぽいとか、あれは甘いとかいうような議論対立はそんなにない感じでした。というのは、いいことか悪いことか分からないのですけれども、あまり大きな国ではなくて、結局、経済学に携わっている方々がほぼ同じ大学の卒業生というか、似た感じの思想を持っているために、みんな思っている、大体こんな感じだよねというところには共通認識があると思いました。
それから、EC(経済評議会)では政策の提言はしないと、はっきり決めていました。役割分担に関しましては、コロナでは昨今、専門家会議と政府の役割議論などもありますけれども、そのようにどちらが何をやるかということはもうあらかじめ決まっていて、決めるのは政府だったり、政治だったり、評議会はあくまでもデータをちゃんと出すところに特化しているという状況でした。
続いて、16ページです。16ページ目は、こうした長期推計を活用した例です。最初に申し上げましたように、2006年の福祉合意ということが国民といっても非常に印象的で、このときに、年金の支給開始年齢の引上げですとか、自動調整制度の導入などを、国民も一緒に考えて実現したというような感じをみんな持っていまして、その後、5年ごとの見直しにもつながったという、これは重要な改革でした。
詳細は参考資料のほうにありますけれども、ヒアリングでも、なぜこの改革がみんなにそんな反対されずに成功したのかということに関しましては、長期推計というエビデンスをしっかりと国民に示して、そして、私たちが福祉国家を維持できるかどうかを率直に説明したことが大きかったのではないかと、そういう印象を持ちました。
この国民との対話ですけれども、17ページには、もう一つのテーマでありました財政に関してのコミュニケーションということを示しております。かえって意外だったのは、一つの行く前の仮説として、しっかり教育しているから財政に対しての関心が高いのではないかという仮説があったのですけれども、それはそうでもありませんでした。学校関係の人に聞くと、別に教育はしているけれども、そこの効果は割と低いという意見すらありましたし、そこにかけるよりも、いわゆる理系的な実技につながるようなことをもっと教育するべきではないかというような声が国民にあったりして、必ずしも財政教育に熱心というわけではありませんでした。
一方で、国の財政に関する国民の根幹のところの考え方が割としっかりしていて、そこは自分たちがちゃんと守るべきだというようなことを政治家も発信し、その政治家の発信をしっかりと受け止めるという印象です。やはり政治家の役割というのは大きいのではないかと思いました。
印象としましては、英国とデンマークを私の中で比べますと、英国は、例えば年金の説明に関しては行った場所によってちょっと意見が違いました。政府はきっちり説明していると言うけれども、国民が相談を受けるところは、いや、全然、誤解だらけだ、みたいなことを言っていました。それに比べると、小さい国であるからかもしれませんけれども、デンマークのほうが何となく、お尋ねしたところでも意見の幅がある程度一つになっていると思いました。
あと、これは5か月前ですから、どこに行っても、おい、アジアはコロナ大丈夫かと言われましたので、もう今ははるか昔な気持ちになりますけれども、いずれにしろ、今、しっかりと英国などがお金を出せているのは、やはりその前の10年間、国民に不評だろうが何だろうが、とにかく絞ったと、もうこれ以上嫌だと言われるぐらい財政再建に邁進した時期があったことが、たった今の余力を実現していると思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、続きまして田近委員から、EU・ドイツについてお願いいたします。
〔田近委員〕では、報告させていただきます。
EU・ドイツ班は、竹中委員と私とで行きました。
2月17日の月曜日から22日の土曜日、ぎりぎりで帰ってこられたという感じです。
調査地点は、ブラッセル、ミュンヘン、ベルリンです。ブラッセルでは、欧州委員会、その中の経済・財政総局、欧州財政委員会、ドイツでは、連邦財務省、ミュンヘンの経済研究所のIfo、ドイツ経済研究所等を訪問しました。
お手元の資料のEUから始めさせていただきます。実は、22日に帰ってからコロナの感染が始まるわけですけれども、それを踏まえて我々の班としては、この時点では何もなかったわけですけれども、コロナのところまで踏まえて、日本の財政健全化、コロナ対策へのインプリケーションを中心に考えたいと思います。
資料19ページ、御覧になっていただくと、ポイントはここに書きましたので、それを少しずつ読ませていただきます。
欧州委員会は、本年2月、安定成長協定等の見直しに向けた議論に着手。主眼は、これから申し上げる財政規律の簡素化、結果的には、これが我が国のプライマリーバランスに近いようなものにたどり着くということです。
それから、EUでもう耳にたこができるほど言われたのは、環境とデジタル化の促進、この2つが彼らの政策目標なのだということを言っていました。
3番目に行きます。結局、金利が下がったので、フローで見ると財政収支は健全、よくなった。しかし、債務残高対GDP比がなかなか改善されないようなギリシャと、どの指標を見ても財政が悪化したイタリアと、EU全体では、コロナの前ですよ、財政が健全化されてきたのですけれども、個別に見るとなかなか思うようにいかない。
そこで、4番目ですけれども、欧州委員会の諮問会議は、低金利環境における財政規律の維持等の観点から、債務残高を目標としつつ、ここからです、歳出ベンチマークを単一の指標とすることを提言。何だ、今までいろいろな議論をしてきたけれども、結局、たどり着いたのは歳出ベンチマークではないか、というのが我々のこの調査での印象です。
時間に制限があるので、20ページは御案内の方も多いと思いますけれども、EUにおける財政規律、構造的財政収支がマイナス0.5%以上になると黄色信号が出ますと。それから、次の是正的措置、これはもう再三繰り返されているところで省略しますけれども、その場合には制裁措置が出ますと。
ただ、そうは言うけれども、実際にはなかなか適用されないわけで、21ページ左側、これは、面白い図だと僕は思ったのですけれども、左側は3%で財政収支です。右側は60%で、債務残高対GDP比です。薄く山のように、山の姿みたいなものが見えているのが債務残高対GDP比で、御覧になっていただくと大分改善されている。それから、財政収支を見ていただくと、左側の図ですけれども、これはもう3%へ下っている。
ということで、全体としては、欧州としてはいいのですけれども、21ページの右側です。時間がないのですが、横軸に構造的財政収支のGDP比、右側に行くと改善されて、左に行くとマイナス、縦軸が債務残高対GDP比ですけれども、右下がりというのはフローもストックも改善されたということで、ドイツとか、オランダはそうだと。ところが、ギリシャを御覧になっていただくと、左側の2010年から右側に行くのですけれども、フローのほうでは改善されたけれども、ストックのほうは改善されない。ポルトガルもそうです。イタリアに至っては左上に行きますから、EU全体のピクチャーと、中を見るとなかなかうまくいかないということで、では、どうするのかというのが22ページです。
今まで、いろいろなことを言ってきた。財政安定化協定では、財政収支ではいけないので構造的な要因を含めましょうと言ってきたのだけれども、では構造的な要因をどうやって計算するのか。それまでまたいろいろ紛糾して、それなら思い切って歳出中心に財政をコントロールしていこうと。歳入とか、景気循環要因の一部をしんしゃくしますけれども、基本的には歳出だというところで、長い議論の果ては、我々のやっている、考えている「骨太」の基礎的財政収支というのは、私もそう思うのですけれども、財政を規律化していく上ではいい指標ではないかと思います。感想と調査結果ですが。
23ページ、左側の女性はフォン=デア=ライエンさん、欧州委員会のヘッドです。宮島委員もそうでしたけれども、もう耳にたこができるほど言われたのは、グリーン、クライメイトニュートラル、それからデジタル時代にする対応と。我々が行ったときには、グレタさんの話が物すごく盛り上がっていて、子供たちが金曜日になるとデモに行ってしまうとか、そういう話を聞かされました。だから、後で締めくくりますけれども、グリーンの話、これがヨーロッパでは大変な話になっています。
ドイツです。25ページです。ドイツは、実はEUの安定成長協定よりももっと厳しい基準を連邦基本法で決めて運営している。
ブレット2です。ですが、ドイツで調査すると、2行目、好況下での規律遵守が不況下でも生きるのだということがある一方、やり過ぎなのではないか、もっと投資をしたほうがいいのではないか。我々が行った時点でも、この2つが中で議論されていた。
財政のリスク要因としては圧倒的に年金ということで、この辺は時間次第です。
それから、ずっと見ていっていただいて、27ページまで行ってもらえますか。ドイツの財政状況ですけれども、左側がいわゆるEUの安定成長協定で見た一般政府です。下の図を御覧になっていただくと、もう数年、財政収支は黒字化されているわけです。それから、債務残高対GDP比も60%を下がっているという感じです。
そうは言うけれども、28ページ、ショルツさんの顔が出ていますけれども、シンクタンクA、ここは無駄な歳出はやはり削除したほうがいいと。そうではなくて未来への投資が必要だと、シンクタンクB。この当時、我々が行った時点で、いろいろな意見がありましたということです。
29ページは、本当はしゃべりたいのですけれども、ドイツにおける財政で、これだけ規律化しても年金の管理は難しいということを言っています。
残りの時間、資料1-2です。この調査後にコロナの問題が起きて、事務局の人を煩わせてしまったのですけれども、EUとドイツがどう対応しているのかを調べてもらいました。
2ページです。2ページはEUですけれども、構造的財政収支マイナス0.5、それも一時的、今のコロナの中ではサスペンドしましょうと。是正的措置3%、60%の話ですけれども、これも中期的な財政の持続可能性を損なわないという前提で、理由はともかくサスペンドした。もうさま変わりの姿になっているわけです。
3ページは、今まで議論されてきたけれども、本当に起きるかもしれないというのは、EUはこれまでユーロを発行してマネタリーユニオンだったわけです。しかし、国債は、EUで発行してみんなが使うというような形のフィスカルユニオンではなかった。それが、ここに至ってEUリカバリーファンド、右側の復興基金をつくろうと。規模は、グラントが500ビリオン、ここがポイントなわけです。融資は今まであった。EUがボンドを発行して、そのボンドを使う。つまり、あたかも1国のようにフィスカルユニオンを目指そうと。ハミルトニアン・モーメントとか説明したいのですけれども、今までのユーロの枠から出るような議論が進められています。ここで我々にとって重要なのは、財源として炭素税、それからデジタルタックス、これが挙げられている。
ドイツです。くしくも、7月1日から、ドイツでは付加価値税がカットされた。その経緯、様子を御説明したいのですけれども、5ページです。ドイツの予算規模というのは、362ビリオンユーロ、40兆円ぐらいです。それに対して、今、御覧になっているところの左側がコロナの第1次補正、第2次補正ですけれども、合わせると200ビリオンユーロ。彼らとしては、どれほど大きな歳出拡大をしているか。だから、我々が見てきた世界とは、もうすっかり違う形です。
そうすると、我々、ここで何を財政健全化、あるいは財政運営として学ぶか、示唆を受けたかというと、5ページで、第1次補正、第2次補正を合わせて220ビリオンユーロぐらいあります。二十何兆円です。それから、特別会計の黒字を減らしたり、若干の調整をして、結果的には、120ビリオンユーロ、15兆円ぐらいをこれから20年かけて償還する。つまり、大きな歳出をしたわけですけれども、連邦基本法によってこれから20年間にわたって返済していく、そのプランができている。それから、テクニカルになりますけれども、歳出を計算するときに税収減が入っている。これは、この間、見せていただいた日本の補正予算とは違っている。
最後に、6ページ、まさに昨日、今日の話ですけれども、ではドイツがコロナで何をしたのか。左側に感染拡大期、右側に経済活動再開期と書いています。
左側、ドイツでは重要な短期労働、クルツアルバイトとかいうのがあって、休業補償がものすごくよくできている。でも、短期の政策メニューは、いわゆる休業補償、日本で言うと雇用調整助成金です。それから、事業支援である持続化給付金、信用保証。メニューとしては、休業補償と事業支援、信用保証、これは変わらない。
右側は、今、彼らが始めたものですけれども、7月1日から半年間、付加価値税を下げる。同時に、先ほどのEUの環境とデジタルが絡むのですけれども、将来を見越して法人税の欠損金の繰越還付を増やす。つまり、損をもっと過去に遡って費用化してあげる。それから、減価償却の加速化、グリーン対策をするということで、ある意味で緊急的な対策から既に次の時代、次を目指し、次を視野に入れた政策に入っている。
ただ、私が申し上げたいのは、我々が見てきたドイツと一夜にしてさま変わりの状態にはなりましたけれども、20年間にわたって拡大した歳出を償還していく。そして、もう一つ申し上げたかったのは、感染拡大期の救済策から、その次のコロナの時代を見据えた政策に移っていると、そういうことです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。両班の委員の皆様方、御苦労さまでした。
それでは、両班の説明に対して御意見ありましたらお願いしたいのですが、いつものように御意見がある場合、こちらの会場に来ていらっしゃる皆様方はネームプレートを立てていただければと。それから、テレビ会議システムで参加している皆様方は、テレビ会議システムの中に挙手するというボタンがあるかと思いますので、そちらをクリックしていただいて、こちらから指名します。運営の都合上、まず会場に出席されている委員の方を先に指名させていただいて、それからテレビ会議のほうと、こういうことにします。
それでは、初めに土居委員から、どうぞお願いいたします。
〔土居委員〕調査、御報告、どうもありがとうございました。非常に厳しい時期であったとは思いますけれども、大変有意義な調査だったのではないかと思います。もちろん、コロナの前と後では随分対応が違うということではありますけれども、コロナ後にどういう動きがあるかをコロナの前に知っておくということは、非常に重要なことだったのではないかと思います。特に、ヨーロッパはそうだと思います。これまでの財政運営について、規律をいろいろと各国それぞれに、ないしは欧州委員会が相当配慮してきたがゆえのコロナ後の対応ということだと思います。
その中で、直接お答えいただけるかどうか分からないですけれども、1点だけお伺いしたいことは、欧州の主要国で、コロナの前まである意味で財政収支を改善する努力をしてきたから、今回、コロナの後でいろいろ対策する余地ができていたのだと、どの程度強く認識されているかというところが、もし何かお分かりなら教えていただきたいと思います。
〔増田分科会長代理〕質問に対しては、後でまとめてお答えいただこうかと思います。
それでは、次、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕すみません。ちょっと質問をさせていただきたいと思います。
まず、英国についてですけれども、英国のNHSというのはゆりかごから墓場までということで有名な制度の一つで、先ほどの資料8ページだと英国人が最も誇りに思うのはNHSということですが、たしか昨年末の総選挙では、ブレグジット並びNHSの問題が相当クローズアップされて、労働党は相当資金をつけると。それを受けて、ジョンソン氏も、相当、財政支出するというようなことを公約に盛り込んで総選挙に立ち向かって、実際、今、コロナが起きていて、英国の死亡率は世界でもベルギーに次いで相当高い。一時、集団免疫を打ち出したのですけれども、3日で撤回した。スウェーデンは現在でも医療制度に対する支持率は高いらしいのですが、英国は相当落ちているのではないかと思いまして、今後、NHSの動向がどうなるのかということ。
あと、年末にブレグジット、これは移行期間なく出ていくことになると思うのですが、その後、来年以降の英国の財政健全化の目標というのはどうなるのか。英国について2つですね。
あともう一つ、分かればですけれども、今回の欧州全体の動きで、コロナ後、EUは再構築というか、内向きにまとまれるのか、それとも一段と遠心力が高まるのか。ここ数年、実は移民、難民問題で相当、遠心力が効いたのですが、コロナでむしろまとまれるのかどうか、ちょっとその辺りの印象が分かればお伺いしたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕はい、分かりました。
それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
1つは、素朴な質問がありますけれども、資料1-2の5ページ、今回、コロナ対応で多額の債務を発行する、新規公債を発行することになったということですが、多分、ドイツは憲法でこうなっているのだろうなと思うのですが、償還期間が20年ということですが、これは本当に、日本だと60年ルールがあるじゃないですか。借換えなしで20年という意味なのかということと、ほかの国は借金したときにどういう償還計画を持っていたのかというのがちょっと素朴な疑問です。
あと、英国のケースで、5ページのところで最近の財政運営として、なるほど、経常収支を一つの目標とするということなので、この場合だと公共投資が投資的経費なので、多分、対象から外れるだろうと思います。ただ、これから日本でもこういう議論は起きるだろうということをあらかじめ予見してのコメントになりますけれども、やはり日本の場合と、英国、あるいはアメリカの場合と公共投資をめぐる環境は相当違っていて、日本はもともと多額にやっているほうでありまして、向こう、英国はずっと絞ってきたほうですので、そういう点も考えると、やはり英国はこれから量的に公共投資を拡充する。日本の場合は、めり張りをつけさせるというか、PFIを含めて、むしろ民間資金を活用するとか、そちらのほうが重要になってくると思いますので、その辺り、多分、立ち位置はちょっと両国で違うと思います。それは感想です。
もう一つ、これも半分質問になるのかもしれないのですけれども、EUの目標として、最後は歳出をコントロールする、歳出ベンチマークですよね。でも、これは分かるような気がするのは、結局、基礎的財政収支を目標としても、税収というのはまさに水物でありまして、税率を変えない限りは、実際、景気の動向に依存します。あらかじめ年の初めに決まっているわけではない。歳出は、ある程度、自分たちで決めるものじゃないですか。ある意味、自分たちで決められるものをベンチマークとして定めるというのは、ある種ありかなという気はしたのですけれども、EUを受けて、例えば今後、先ほど英国は経常収支を目標と言っていましたけれども、この歳出ベンチマークという方向にEUのいろいろな国が収れんしていくという理解でいいのか。あるいは、EUとして単に歳出を安定成長協定のターゲットにしているだけであって、各国は各国でそれなりに違うベンチマークを持つと理解していいのか、その辺りちょっと確認させていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、次、権丈委員、お願いします。
〔権丈委員〕ありがとうございます。
海外調査の貴重な御報告、ありがとうございました。質問を1つと、コメントを1つさせていただきたいと思います。
財審での議論の中でも、社会保障の制度改革の話がよく出るのですけれども、日本のsocial expenditure(社会支出)、社会保障の対GDP比の国際比較をすると、日本はさほど高くないですし、特にこれだけ世界トップの高齢化率の国としてはかなり控え目に推移しています。もちろん、社会保障の給付の効率化、制度改革を図り、一層の高齢化に向けて高まり過ぎないこと、自己負担の公平性を考えるというのは必要ですけれども、社会保障制度と国の財政の持続可能性を考えますと、財源調達を考えるというのは不可欠になります。給付の効率化を考えれば制度の持続可能性が保たれる、というような幻想を与えるのは危ないことだと考えております。
ということで、改めてになるかと思いますが、今回の海外調査では、税、社会保険料の負担について、国民と政策当局がどのようにして情報を共有しているのか、それぞれの国でどのように取り組まれているのかというところで、もし、もう少し情報がございましたらお伺いできればと思います。
コメントとしては、財政の長期試算についてです。日本は、公的には内閣府が行っている中長期の経済財政に関する試算ということになると思いますが、10年先までしか見通していないということです。社会保障では、今、ラフな試算ですが、2040年まで一応ありますので、せめて負担と給付の整合性のある議論を行うために、2040年程度までの財政の長期試算が必要であるように思います。今回の海外調査では、長期試算が財政運営に役立っているということを報告していただきました。そちらは当然のことでして、財政民主主義を運営していく上では、国民と政府がきちんと情報を共有することは必要だということを改めて考えましたし、それがなされないと財政規律が失われるかなと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、ウェブで参加している2人の委員の方、赤井委員と田中委員から御発言いただきます。
赤井委員、どうぞお願いします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。赤井です。
海外調査、ありがとうございました。財政コミュニケーションのところについて少し、長期の推計は、今、言われたように、将来の状態をきちんと示すことで国民の理解を得る、これが大事だというのはそのとおりだと思うのですけれども、英国のほうでは、コメントとして政治家に説明責任があるだろうと。デンマークのほうも、国民知識は低いということと、政治に責任感という話だったと思うのですが、将来に負担を先送りしないという意識がやはり国民には、財政の知識は低くてもそういう意識があり、その意識を共有できるような政治家を選挙で選んでいるということに究極的にはなるのか、そこを確認。それと、ドイツのほうでは、あまりコミュニケーションの話はなかったのですけれども、黒字を維持できているのは、やはり政治家の責任という意味のコミュニケーションがちゃんと取れているということなのか、その辺りを教えてください。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、武田委員、どうぞお願いします。
〔武田委員〕海外調査の御報告をどうもありがとうございました。大変勉強になりましたし、理解も深まりました。
海外調査のお話を伺うと、毎回すばらしい報告で、日本にとっても参考になる点が多々あると思いますけれども、この海外調査をそろそろ日本の財政運営にも生かしていく、学ぶべきところは学んでいくという姿勢が必要なのではないか、具体的なアクションにつなげていく面があってもいいのではないか、このように思った次第です。
そこで、お伺いしたいのでが、それぞれが行かれた国の取り組みの中で、日本の財政運営において、ここは取り入れたらどうか、あるいは、ここは学べるところがあるのではないか、特にここは強調したいというところがございましたら御意見を伺いたいと思います。個人的には、中立機関の存在や、長期推計が議論の基盤になっている点は考慮してもよいのではないかと思いましたけれども、調査をされた委員の方々に御意見を伺えればと思います。
以上です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、今、幾つか質問ございましたし、それから御意見を求められているところもございましたので、この場でお返しできることをおっしゃっていただいて、あと、必要であれば事務局等にもまた調査させて、お返しするということにしたいと思いますので、初めに英国・デンマーク班のほうから、続いてEU・ドイツ班と、こういう順番でお願いしたいと思います。
〔堀委員〕私からで、英国からでよろしいでしょうか。
〔増田分科会長代理〕それでは、どうぞ堀委員、お願いします。
〔堀委員〕コロナ以前と以後の違いというお話がありましたが、我々がちょうど行った日が2月の中旬で、日本のことを逆に英国から心配されるような状態でした。財務省に訪問に行った翌日、実は英国の財務大臣が替わる直前というところで、財務省の中も非常にばたばたしていて、自分たちも先がどうなるか分からないというようなことを率直におっしゃっていました。ただ、先ほどお話をしましたように、財政的な目標数値があるので、幾ら政治家が財政支出を拡大すると言ったとしても、やはりある程度基準としてそこが生きるのではないかという話が、行った当時はありました。
その後、実際、どうなったかといいますと、新型コロナの影響が非常に大きくて、6月30日に緊急財政はしないという宣言をジョンソン首相はおっしゃっています。それは私からすると、2月に行ったときの感じと、今、直近は随分違うのだなというような印象です。
もちろん、財政健全化が随分進んで、それができたからこそ財政支出ができる環境があるということは当然だと思うのですが、若干、新型コロナによって、先ほどNHSによる死亡率が多いという話もありましたが、政治的なスローガンの用語でもあると思いますが、ニューディール政策という言葉を6月30日にジョンソン首相は使っていまして、もともと財政支出をすると言っていた分野だけではなく、グリーン・環境分野という話はありましたけれども、鉄道であるとか、教育であるとか、医療であるとか、デジタル分野であるとか、あとはブロードバンド、そのほかも含めて積極的に投資をしていくということになっています。
新大臣による予算書が発表される前であった訪問時である2月の状態とは違うと感じます。ただ、2月の時点でも、オステリティーとおっしゃっていましたけれども、財政健全化に向けた緊縮財政を随分長くやっていて、もううまくいったのだ、これからは新しいことにしようというような印象を受けました。積極投資というのも、財政健全化を長年にわたって実施していたという前提があるので、日本とは前提条件がかなり違うのではないかとは思っております。
それから、NHSの人気ということですが、マクロレベルでは、ロンドンオリンピックの開会式で象徴としてあげられていたくらいでNHSを維持しようという意味での人気はあるのですが、細かく見ると問題はたくさんあります。今回も、新型コロナに対応するNHSスタッフの尽力についてエールを送るなどの動きも見られました。しかし、NHSが新型コロナにうまく対応できていたかどうかという点は、ちょっとこれは細かくなので、ここで話す議論ではないかと思いますが、もともとの衛生面であるとか、文化的なものであるとか、そういうものもかなりありますので、単に制度的な問題と財政的な問題とはちょっと切り離して考えたほうがいいのではないかというところがあります。
それから、公共投資が対象から外されるのかというところですが、コメントにありましたように、日本と英国をめぐる環境は、全く違うと思いますので、日本はやはり質的なところで、公共投資を少なくとも見ていく必要があるのではないかと思っています。
それから、社会保障についての質問がございましたが、御指摘のように国際比較をすると、日本はさほど支出は高くないと言うこともあるかもしれません。ただ、やはり財政的に持続可能性があることが前提としての社会保障ですので、私がドイツのことを話すのはどうかとも思いますが、ドイツは基本的に国費に大きく依存しないような保険者機能が強化された社会保険の仕組みになっています。日本の場合はそこがちょっと違うので、今回のような財政が悪化する状態になったときに、ひもつきで両方とも悪くなってしまうのかどうかというところと、切り離して考えなければいけないのかなと思います。
それから、長期推計については、今回、非常に学ぶべきところがあると思いました。財政コミュニケーションを政治家がするのか、行政がするのか、あるいは第三者がするのかというところは議論があるかと思いますが、何をするにしても客観的な、中立的な中長期的な推計・データ、そして必要なごとに見直しをする仕組みがあるということはやはり強みだと思いますので、現在、日本でも長期推計はあるとは思いますが、より中長期的な推計を、例えば年に2回とか3回とか見直したりしながら、それによって政策がどううまくいっているのかをチェックする機能が働くのではないか。その長期推計のところは非常に勉強になったと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕はい、ありがとうございます。
それでは、宮島委員、お願いします。すみません、ちょっと簡潔にお願いします。
〔宮島委員〕では、簡潔に。
英国については、ほぼ同じです。もうコロナの前の段階でも、公共投資を増やそうというような空気感が既にあったので、それでコロナが起こっても、一気に財政は拡大という方向も全く違和感がない、日本に帰ってきてから見て違和感はなかったです。
長期推計のところは、本当に日本は悩ましいのですけれども、結局、どこがつくるかということももちろん大事ですけれども、みんなが信じることができるということをどうやって担保するかというところで、彼らは、とにかく自分たちができる限りのデータ、例えば単純に最後のゴールを示すだけではなくて、これがこうで、こうで、こうで、こうだからというところを説明できる限りやって、信頼性を保っている。そして、ちゃんと議論もするし、批判も聞くというところだったと思います。
日本も、まずは政府の外というか、外のように中立的に見える、別に外につくらなくてもいいと思うのですけれども、日本の場合、外につくったからといって、そこがかいらいだとか、政権寄りだとか言われたらそこで終わってしまうので、本当に心からみんなが中立だと思えるかをどうやって担保するかというところが、本当にすぐにやりたいことだし、それをどうやって現状でやるかということが大事だと思いました。
財政コミュニケーションに関しましては、これもまさに、私たちの質問がちょっと変かなと向こうに取られたのは、教育をやっているからみんなに財政の理解を得るんでしょうという前提で私たちが聞くと、いや、国民はそんなに勉強していない、だって政治は国をよくするためのことを言うんだから、政治家がちゃんと言うでしょうとか、それは政治が日本にとってよいことを言うでしょうみたいな話で終わってしまって、そういう人を選んでいるとかという意識の前に、政治というのは国の未来に関してちゃんと向き合って、国がこうするとよくなると発信するものであるということでしたので、そこは誰に対してぶつければいいのかが非常に難しいと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕幾つかの質問を頂いたのですけれども、武田委員から、いろいろ海外調査をしてきているけれども、そろそろ日本に対するインプリケーションをしっかり考えてほしいということですけれども、恐らくその御質問はほかのものにも関わってくると思います。私のEUとドイツを調査してきての考えですけれども、やはり財政健全化のルールが事前に決まっているEUの場合は、要するに安定成長協定で、構造的財政収支、そして財政収支、それから債務残高対GDP比のルールが決まっている。ドイツに至っては、憲法で財政均衡がうたわれているわけで、だからドイツでは、それがあまりにも金科玉条で、堅く理解され過ぎているのではないかという議論もあったぐらいですから、何がインプリケーションになるか。やはり財政健全化のルールがあって、それで動いていく。今回のような非常事態が起きたら、それは非常事態だと宣言して始めていく。
それから、佐藤委員からの質問にも関わるのですけれども、EUに各国は縛られるか。各国はEUに予算を示して、審査されるわけですよね。したがって、どのEUの国も、安定成長協定に対する、自分たちはどれだけ守っているか。たまたま今日、持ってきていますけれども、ドイツの場合、ジャーマンスタビリティープログラムというものがあって、これを各国でつくってシェアされているということです。だから、逆に言えば、財政健全化のルールがなくて何で議論できるのだというのが私の意見です。
それから、コロナの前の財政健全化努力が生きているのか。いかにもドイツ人なら言うだろうなと思うのは、ショルツさんというのは今の財務大臣ですけれども、彼が今月、先ほど申し上げた補正予算に関して、ドイツがそのパッケージをやっても債務残高対GDP比は81.8%だ、それはほとんどのEUの国よりも低い、だから我々はやれるんだと。先、どうなるか分かりませんけれども、ドイツはそう思っている。
それから、土居委員の質問は、結局、根深い、ギリシャみたいに形は、フローではよくなったけれども、債務は高まっている、プライマリーバランスもそうだ。イタリアは両方悪い。なかなかうまくいっていない国がある。恐らくインプリケーションがうまくいっていない国というのは、コストをこれから払うのだと思います。
そのほか、もう時間がないので、お答えできるかもしれませんけれども、割愛させていただきます。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ウェブで、黒川委員、挙手をしておられるのでしょうか。
〔黒川委員〕黒川です。ありがとうございます。
田近委員に1つ教えていただきたかったのですけれども、ドイツのコロナ対策で、ドイツというと音楽関係とか芸術に非常に造詣が深いと。そこで、ドイツにおいて、文化とか、そういうようなものに対してどのような助成措置、あるいは補塡ということがあったのかどうか。もしお分かりになれば、教えていただきたいと思います。
以上です。
〔田近委員〕すみません、黒川委員、また。
〔増田分科会長代理〕それでは、後日ということにして。
あと、田中委員から、ちょっと映像のトラブルがあったようで、財政コミュニケーションに関して、チャットのほうで、質問が来ているのですが、英国の政治と財務省の役割分担と連携は成功しているという手応えがあるのかどうか。これは英国ですね。それから、シンクタンクとの意見交換について言及があったのだけれども、国民目線でコミュニケーション戦略を組むまでの展開があるかどうか、こういう質問を頂きました。すみません、ちょっと時間の関係がございますので、そういう質問があったということで、これも含めて後で事務局のほうからお返しいたします。
ちょうど1時間たちましたので、このパートはここまでとさせていただきたいと思います。恐縮でございます。
それでは、2つ目の議題ですが、予算フレームの透明性の向上について、こちらの審議に入りたいと思いますので、初めに阿久澤総務課長から説明をお願いします。
〔阿久澤総務課長〕総務課長の阿久澤でございます。それでは、お配りしている資料2「予算フレームの透明性の向上について」と書かれてある資料に沿って、御説明させていただきます。
まず、おめくりいただいて、1ページ目からでございます。我が国の経済社会の現状に鑑みますと、今後、経済の再生と財政健全化の両立はますます重い課題となると考えます。このため、経済や財政の現状と改革の必要性につきまして、国民、及び広く国の内外の理解を得るための努力、これをこれまで以上に続けていく必要があると考えます。
我が国は、これまでも数々の危機を乗り越えてきたわけでございますが、今回のコロナ禍を克服し、その後の経済社会の変化に対応するためにも、新たな成長モデルを構築するための取組は不可欠でありますし、併せて歳出と歳入の両面からの不断の取組が必要だと考えております。
その際ですけれども、国の債務残高が1,000兆円に近づきつつある中、その持続可能性の問題についてはこれまで以上に真剣に考える必要がありまして、経済再生と財政健全化の両立という大きな基本方針を堅持しつつ、国の予算の姿につきまして、基礎的財政収支の黒字化と、債務残高対GDP比の安定的な引下げという財政健全化に向けた目標の達成状況が、より分かりやすく示されることが求められていると考えております。
これまで、毎年度の一般会計予算を示す予算フレームにおきましては、これはお配りしている資料の参考1と書かれているものがこれまでの予算フレームであります。令和2年度の当初予算の例を出しておりますが、これを御覧になりながら聞いていただければと思いますけれども、財政法が掲げる非募債主義、建設公債の原則にのっとりまして、歳出と税収の差額であるところの新規公債発行額が示され、また、その内訳として建設公債と特例公債の額が示されてきております。ただ、現実、近年の財政状況は、財政法が本来予定する姿とは残念ながら乖離してしまっております。特例公債の発行が常態化してしまっておりまして、債務残高が毎年度累増する中で、多額の借換債も発行されているという現状にございます。
続きまして、参考2という資料を御覧いただきながら、お聞きいただければと思いますが、こうした中で改めて新規公債発行額の内訳を見てみますと、政策的経費に係る赤字分、それから利払い費に相当する額、また債務償還費に相当する額に分けることができます。
このうち、債務償還費に相当する額の部分につきましては、他の2つと同様に新たな歳入を増加させるものではございますけれども、債務償還費が過去の債務を減少させるものであることから、債務残高の増減には影響を与えないラインでございます。すなわち、新規公債発行額が債務償還費相当分までで収まっていれば、債務残高は増えないということになるわけでございます。
一方、政策的赤字分と利払い費に相当する額の部分の合計額、これは一般会計における財政収支赤字に相当します。補正予算等における増減を除けば、この分だけ債務残高が増加するということになるわけでございます。また、政策的赤字分、これは一般会計における基礎的財政収支赤字でございまして、現在の政府の財政健全化目標の指標であります国・地方の基礎的財政収支と整合的な概念となっております。
こうしたことから、予算フレームにおきましては、財政の現状や基礎的財政収支の黒字化という当面の目標等の整合的な形で予算の姿を示すこととし、具体的には歳出や税収、新規公債発行額といった情報に加えまして、一般会計における基礎的財政収支や財政収支の姿を示すことが望ましいのではないかと考えます。
さらには、こうしたフローの情報に加えまして、債務残高や、そのGDPに対する比率といったストック情報、及び借換債を含めました公債発行や、債務の資金繰りに関する全体像を併せて示し、一般会計における基礎的財政収支と債務残高対GDP比の動向を分かりやすく示すことが有用ではないかと思います。
もちろん、財政の現状がどのようなものであったとしても、現世代が負うべき負担を将来世代に先送りすべきではないことは変わりなく、財政法に掲げられた健全財政の姿は、目指すべき姿として今後とも堅持すべきと考えております。
こうした考え方に立ちまして、令和3年度予算以降の一般会計フレームにつきまして、別紙の試案のような示し方をすることについて検討を進めたいと考えております。
お開きいただいて、3ページ、別紙とあります。これは、令和2年の当初予算の数字をベースに、新たにフレームでこのような示し方をしたらどうかという試案となっております。上が歳出でありまして、下が歳入でございます。
歳出は、一般歳出、それから地方交付税交付金等、国債費になっていまして、国債費のうち債務償還費と利払い費が示されております。
一方、歳入でございますが、税収があり、その他収入があって、歳出と税収等との差額として公債金がございます。この数字、令和2年度当初予算で見ると32兆5,562億円でございます。これを、債務償還費相当分、利払い費相当分、政策的赤字分、それは取りも直さず基礎的財政収支赤字でございますけれども、3つに分けて表記させていただいております。先ほども御説明しましたが、新規公債金部分のうち、債務償還費相当分の範囲内で収まっていれば債務残高は増えない、もしくは減っていくということになるわけでございますが、これを超えた部分、すなわち利払い費相当分と政策的赤字分の合計額が、備考の右側に書かれておりますが、財政収支赤字となりまして、この金額が17.6兆円になるということも表記させていただいております。
なお、(注2)に、細かく書いてあるのでちょっと恐縮でございますが、今、申し上げました公債金の分類は基礎的財政収支や財政収支の観点から行ったものでございまして、公債金による収入が直ちに債務償還費や利払いに充当されることを意味するものでないことから、相当分という表現にさせていただいております。
併せて、フレームの右側には、これまでのフレームでも示してきました公債依存度や、建設公債、特例公債の内訳も示させていただいているところでございます。
一方、下のほうになりまして、今度はいわゆるストックの情報、債務残高等に関する情報でございます。令和2年度、普通国債残高を、まず一番上に示させていただいておりまして、これが857.4兆円ということでございます。対前年度当初予算と比較いたしまして、19.1兆円増加しているということを示させていただいております。
普通国債残高対GDP比は、令和2年度当初予算段階では150.4%ということでありまして、前年当初との比較で2.3%増えているという姿になります。
また、国債発行額についての情報もつけさせていただきました。令和2年度の32.6というのは、上のフレーム上、不足する公債金発行額になるわけですが、それ以外に借換えをするための、特別会計で借換債の発行も行われておりまして、それがその下にあります106.3兆円です。この合わせた金額138.8兆円が、いわゆる国債の発行額になるということでございます。
最後に、このストック情報の右の備考のところにつきましては、基本的には先ほど申し上げました財政収支赤字が残高の増加につながるわけでございますが、そこから実際の残高の増加まで幾つか調整が必要になってきます。
17.6兆円がどうやって19.1兆円になるのかという内訳ですけれども、1つは、財政収支赤字17.6兆円から始まりまして、出資国債等の償還に伴う増とございます。これは、国債費の債務償還費の中には、普通国債の減だけではなくて普通国債以外の償還にも充てられる部分がありまして、それがここに書いてある出資国債等になるわけですけれども、この分だけは普通国債の減に働かないものですから、財政収支からスタートした場合、戻さなければいけない部分です。
それから、令和元年度補正予算による公債発行の追加が4.4兆円あります。
さらには、令和元年度ですけれども、平成30年度の出納整理期間に予定された国債の発行を1兆円縮減しまして、その部分で▲が立ちます。
さらには、今、足元、国債の発行がオーバーパー、つまり債券価格が額面を上回る状態で発行できる形になっておりまして、その場合、発行収入が上振れる部分だけ、予定された発行額を下回って残高の引下げ要因になるということでございまして、それが▲2.8兆円になって、最終的に19.1兆円にたどり着くということになっております。
このように、フローの情報とストックの情報をつなぐようなこともつけさせていただいているものであります。
私からの説明は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ただいま、別紙の形で試案、試みの案という形で、今、検討しているフレームについてお示しをいただきました。
これについて、何か御意見ですとか、御質問あれば、どうぞお願いしたいと思いますが、こちらの会場にいる方は名札を立てて、ウェブの方は挙手ボタンでこちらに合図してください。
それでは、神子田委員からお願いします。
〔神子田委員〕
私、メディアの人間なので、現状の数字を都度、伝える仕事をやっているわけです。この試案は、当初予算ベースの数字が書いてあるのですけれども、実際には、年度の途中で補正を組んだりして数字が変わっていくと思うので、都度、変わるたびに何かこういった対応をしていただけると、報道するほうもありがたいというのはあるのですけれども、国民としても、そのとき、そのとき、どうなっているのかということが分かる。当初予算ベースのときにこれだけ抑えたというのは、当初予算ベースで抑えていても、結局、その後、どんどん増えていってしまうのだから意味ないのではないかというような話をしたら、主計局長が、いや、これはこれで、やはり当初で抑えるということには意味があるんですと言われて、確かに意味はあると思うのです。ただ、都度、都度、変わっていく数字を、やはり順次追いかけていくということが必要なのではないかと思いますので、そういった点もこれから配慮に入れていただければと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
この試案ですが、従前のものと比べると、2点、改善していると思いました。1点目は、建設公債の別についてです。昔から、私が冨田委員のもとで財政をやっているときからずっと、建設公債とか赤字公債が出ている点については不思議に思っていたことの一つです。国債の市場では、建設国債と赤字国債を区別してトレードされることはありません。そういう意味では、これをいちいち区分して出す必要はないのではないか、同じ債務は債務だと考えます。これから先、基礎的財政収支の赤字にフォーカスしていくことにも照らして考えるのであれば、今回の試案のほうがやはり見やすくて良い、というのが1点目です。
2点目としては、残高の話を毎回出せる仕組みになっているということです。私は、クレジットリスク、信用をずっと見てきましたが、債務残高が増えると、当然、どこかで日本国債の格下げという話が出ないとおかしいと思います。すぐに格付けが落ちるわけではないですが、債務残高がどれぐらい大きくなっているかということを毎回、毎回確認することは信用を維持するためにも重要だと思います。その確認をしないと、今、どれぐらい状況が悪くなっているかを知ることに繋がらない。そうなれば、債務を削減していこうという意思にはなり難い、と思うからです。今のように、コロナの問題があるときには、財政を使うのは仕方がないと、みんな仕方がないと思っているわけですが、かといって債務がどこまでも膨張していいわけではないとも思っているはずですので、その目途を決めたり、どこかで財政再建をしていく意思がありますということを示すためにも、この数字がセットになって一緒に見られるというのは非常に改善になるのではないかと思いました。
以上、2点です。
〔増田分科会長代理〕それでは、冨田委員、お願いします。
〔冨田委員〕ありがとうございます。
国と地方のプライマリーバランスを黒字化して、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくという目標を達成する上で、やはり肝となりますのは、予算編成におけますプライマリーバランス、一般会計の基礎的財政収支であって、それをこの予算フレームに明示するというのは当然であります。その上で、私、3つ、手短に注文をつけたいと思います。
今日の資料の御説明は、予算フレームの透明性の向上という副題がついているわけですけれども、透明化すべきは、予算フレームではなしに、内閣府の中長期の経済財政試算であると思います。それは、前回もこの会議で申し上げましたけれども、国・地方のプライマリーバランス対象経費の推計方法について明らかにされていないので、例えば今年1月に国・地方のプライマリーバランスが15兆3,000億円の赤字だと言われても検証しようがないのです。一方、今日、お示しの予算フレームのほうは、これまでの予算フレームであっても、国債費と公債金収入の差額から、暗算でもって9.2兆円のプライマリー赤字というのは出てくる話です。ですから、もう十分、明示的であったのですけれども、今回はストックとの、国債残高との関係で示したということに意義があるように思います。ということで、透明化すべきは、内閣府の中長期の経済財政試算のほうであるということでございます。
第2は、今日の試算の右下にあります、先ほど御説明いただきました国債残高の増減要因についてであります。ここでは、昨年度の補正予算について4.4兆円の増加ということが示されておりますけれども、今回、2次補正までだけで、この4.4兆円プラスの代わりに57兆6,000億円が加わるということであります。
申し上げたいのは、この表は、国債残高の増減要因というのは大変有用な表だと思うのですけれども、これまでプライマリーバランスの黒字化が円滑に進まなかった大きな理由として、ここでも度々、繰り返し議論があったわけですけれども、補正予算の編成があった。先ほど神子田委員もおっしゃられましたように、現在でも補正予算のフレームというのは発表されているわけですけれども、そこにプライマリーバランスの情報をやはり明示的に示したほうがいいのではないかと思います。御検討いただきたい。
第3は、特例国債、本年度当初予算では25兆4,000億円の発行でありまして、それからの脱却の話です。これは、現状では極めて高いハードルです。先ほど中空委員おっしゃったこととは違うのですけれども、私は、債務償還のための定率減債制度の下での特例公債脱却というルールは、一定幅のプライマリーバランス黒字をもたらす上で重要な規律だと思います。ただし、現状では、まだ規律の意味もなさない、9.2兆円のほうが低いハードルですので、これをまず片づけなければいかんわけですけれども、先ほど英国の出張報告がございました。経常的収支の均衡、これはかつてゴールデンルールと言われておりました。このルールよりもさらに厳しいルールが、定率償還がある中における赤字国債からの脱却というルールだと思うのです。
資料にも、財政法に掲げられた健全財政の姿は今後とも堅持すべきであると記されております。申し上げたい点は、えてして特例公債からの脱却という規律は、言ってみれば博物館に収納されたり、美術館に飾られたりするような精神論ではなくて、債務残高を減少させていくために、プラグマティックな意味をやがて持ってくる規律だと思います。なぜなら、現在の国債残高というのは、将来にわたるプライマリーバランス黒字の割引現在価値の合計、将来の黒字の合計によって償還される。そのことへの信頼が、我が国の金融、そして社会経済の前提になっているからです。
ということで、特例公債を収納庫だとか、美術館に飾ってしまってはならないということが申し上げたい点でございます。同時に、定率償還も極めて重要であるということも併せて申し上げたい。
〔増田分科会長代理〕それでは、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕ありがとうございます。
これまでの委員の御意見と同じく、分かりやすく示されることになる今回の試案というのはよいと思います。付け加えて、ぜひこうしていただきたいと思うことは、このフレームの表し方は非常に意味があると思います。それと、冨田委員もお触れになりましたけれども、普通国債残高等の状況というところも極めて重要な情報で、右下にある備考のところも、なかなかこれまで必ずしも全てが簡単に手に入る情報ではなかったので、これを予算フレームという比較的多くの人がアクセスできる情報のところで、把握できるようにしていただいているということはとてもいいことだと思います。
もちろん、財政の研究者も、財政法第28条等による予算参考書類とか、そういうマニアックな書類を見るとこういうものは載っているとか、主計局の説明という書類を見ると載っているとかいうのは分かってはいるものの、いちいち、そういう書類まで遡って見ないと出てこない数字とかも、このフレーム、今、試案になっていますけれども、そこに記載されていて、かつ国民にとっても重要な情報なので、引き続きこれを試案から、実際に令和3年度予算のところで活用していただくことをお願いしたいと思います。
それとともに、実はいわゆる基礎的財政収支に相当する部分、予算ならば歳出と歳入の総額が等しくなるので、参考2のポンチ絵のような形で表せるということですけれども、決算は、主計局の方には釈迦に説法ですけれども、歳計剰余金とかが発生するので、基礎的財政収支の数え方というのは少し変わってくる。予算のときには、こういうふうに単純に基礎的財政収支赤字が表されるのだけれども、決算段階になると、歳計剰余金で歳出総額と歳入総額にずれが生じることがあったりするので、基礎的財政収支の定義が決算と予算とで微妙に違ってくるところがあるということは、何らかの形で説明できるような形にされるといいのではないか。
基礎的財政収支対象経費、政策的経費と税収等で差し引いたらこうなるというのは、予算の場合はそのとおりですけれども、決算の場合はもう少し込み入った計算が必要で、その結果として、決算段階での基礎的財政収支がどうなっているか。これも併せて何らかの形で説明されたほうが、つまり予算だけしか基礎的財政収支は見ていなくて、決算では結果論でそうなったのだという話ではなくて、やはり財政健全化目標との対応関係を考えると、決算段階で基礎的財政収支がどうなったかということは極めて重要なポイントになりますので、決算段階で一般会計での基礎的財政収支がどういうふうに計算されるかということも示しながら、結果的にこういう金額になりましたということを国民にも示す機会があるといいかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕どうもありがとうございます。
今回、新しくフレームの作成方法を見直される可能性があるということですが、私、アナリストの立場にとってみると、データの開示量が増えるのはよろしいことだと思います。
ただ、気をつけなければいけないのは、今回、債務償還費相当分という内訳が出てまいりまして、これは、かつて前政権で事業仕分けをやったときも、私、国債整理基金特別会計の仕分人をやらせていただいたのですが、要はネットアウトする、しないという話が出てまいりまして、なぜここを積んでいるのか。これは60年償還ルールで積むと。
あと、実は残高が増えるときと減るときでは逆の方向が出てきて、整理基金の資金繰りにも影響するとか、いろいろな将来的な課題もあるのです。ですから、何でこういう項目があって、何のために償還費が存在しているのか、この点についてはやはり開示をもう少し詳しく、分かりやすくやったほうがいいのではないかと思います。
オーバーパー発行等による減も、これは今のようなマイナス金利、ゼロ金利の中で起こるわけで、平常時では必ずしもそうはなりませんから、そういう足元の金融市場の特徴、特色というか、今のような特異な状況を意味しているということも、やはりちょっと付記したほうがよろしいのではないかと思いました。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
ちょっとマニアックな質問、指摘になるのかもしれませんけれども、2点ほど。1つは、まず内閣府の中長期の経済財政の試算のほうでいう財政収支と、ここで掲げている一般会計の収支というのは微妙にずれていますよね。つまり、内閣府の掲げている財政収支、もちろん国と地方を合わせていることもありますけれども、国だけで単独で切り抜いたとしても、SNAをベースに計算しているはずなので、しかも、それを財政健全化目標の基準として掲げているので、実は今回の基礎的財政収支を出すことによって、内閣府の経済・財政一体改革との連動もある程度確保できるとは思うのですが、やはりちょっと微妙に両者に違いがあるというのはどうするのだろうと。ここは一般会計の話をしているで、あちらは特別会計も含んでしまうので、これはこれでいいでしょうという議論はあると思いますが、その辺の整合性をどうするのかと思いました。
それから、もっとマニアックな質問になるのですけれども、消費税の議論をするときには例の隙間の話が出るのです。つまり、社会保障4経費と消費税の隙間を埋めるのだというのが、多分、消費税を説明するときの議論です。では、大体合っているような気がするのですが、その隙間と基礎的財政収支の赤字分はどういう連携になっているのか。この辺も何か見せたほうが、これまでの国民に対する説明との連続性を確保する上でもいいのかなという気はしました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、委員の指名、続けていきたいと思います。木村委員、お願いします。
〔木村委員〕御説明、ありがとうございました。
今回の予算フレームの透明性の向上というのは、非常に重要な作業だと思いますし、重要性は理解できると思います。その上でコメントしたいのですが、目的ということで、財政コミュニケーションの観点からですけれども、要は分かりやすいというか、国民の理解を得るためにということではあるんですけれども、細かくしたことで逆にすごく分かりにくいというか、例えば今回、利払い費相当分と政策的赤字分の合計ということで財政収支赤字という項目を立てられたんですけれども、これと基礎的財政収支の赤字がどう違ってくるのかというのは、多分、一般国民の方にとっては、似たような言葉で区別がなかなかつきにくいのではないかと思うので、そういうところはもっと分かりやすく説明されるほうがいいような気がします。
それとともに、趣旨の説明が全体的に、一読してなかなかのみ込みにくいところもあって、建設公債と特例公債の問題点を書いた直後に、どうして新規公債発行額の新たな内訳の話が出てくるのか、つながりが普通の人には分からないと思うので、もう少し説明を補っていただくと、より分かりやすいかなという気がします。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明、ありがとうございます。
今回、予算フレームの透明性の向上ということで、ぜひこの方向で進めていただければと思います。賛成です。本当にこういう仕事をしていまして、予算が出たときに、それこそ国債費だって内訳を見ないと、債務償還と利払い費に分けてみないといけないのに、このフレームの資料にはありませんでしたので、私もやはり予算が出たときに、ほかの説明資料とかで歳出と歳入の円グラフとかあると思いますけれども、ああいうところから債務償還費と利払い費を拾ったりもしておりましたので、そういった意味ではいいのではないかと思います。
ただ、試案となっている別紙、3ページのところで、これはあくまですごくオフィシャルな資料で、用語も正確でなくてはいけないですし、こういう形になっているのかなと思うのですけれども、例えば一番下の国債発行予定額の内訳のところで、うち一般会計における発行額と国債整理基金特別会計によるということで、阿久澤課長、御説明くださいましたけれども、多分、一般の人が見たら分からない。やはりそこをもう少し分かりやすくというか、一般会計のほうというのは要するに新発国債、年度の新たな借金の積み増し額であって、国債整理基金のほうは借換債、過去にやった借金の借換えをまたこれだけやっているということが、何か分かるような説明をしていただければというのが一つ。
もう一つは、ほかの委員の方もおっしゃられましたけれども、やはり補正予算の問題があって、特に今年度の場合はコロナショックということもあって大変なことになっておりますので、ぜひ対比するときには、これに補正の分まで入れるかどうか、それとも当初予算ベースで基本的に比べておいて、それに補正の数字を、また別のものをつくるか。それはいろいろやり方があるかと思いますけれども、やはり財政の実態をきちんと示して、前の年と比べるという意味では、補正の部分をどう入れるかということをお考えいただきたいと思います。
こういった御説明を頂くことの意味は、参考2の資料でお示しくださったように、要するに公債金収入、新発国債を出したもので、実際、どういう足りない部分、足らず間を埋めることに使っているのかが明確になるということで意味があると思います。
私は、この国で財政健全化がなかなか進まない、特にリーマンショックの後も、よその国に比べれば、ほかの主要国はみんな財政収支を目標に掲げて、リーマンショックの震源だった国とかもありますけれども、日本よりもずっと頑張って財政再建をやったわけです。先ほども出張報告、ヨーロッパの話もありましたし、英国もキャメロン政権のときはすごかったと思うのです。それぐらいやっている。だけど、なぜ日本でできなかったのかというと、国民が、今、この国の組んでいる予算がどういう位置、どういう意味があるのかということを正確に理解できていなかったのではないかと思います。これだけ新たな借金をして、過去、それなりに借金があるのに、それにさらに借金を上積みしている。
参考2の図が示すところは、先ほど課長の御説明にありましたけれども、国債費の債務償還費相当分は債務残高の増加にはつながらないというお話でしたけれども、裏を返して言えば、これは定率繰入れの分だと思いますけれども、債務償還に充てる分も自力で、自分たちが納めている、私たちが納めている税収で返すことができなくて、国債を出して償還費用をひねり出している。要するに、市場に対して、今は日銀かもしれませんけれども、追い貸しに応じてもらっていると、そういうことですよね。それぐらいこの国の財政は、実は厳しいのだと。
当座は、やはりプライマリーバランスの黒字を目標に掲げていたので、現実的だと思いますけれども、それではいつまでたっても借金は減らないということをよく理解してもらったほうがいいですし、消費税率の引上げのときにもいろいろ使途の変更とかがあったと思います。2012年の3党合意で決めたときのやり方を、いろいろ変えてきましたよね。そのときのいろいろなメディアの報道とかを見ていても、過去の借金の返済に充てる分を減らしてとかいうような言い方をしているメディアを随分見たのです。でも、それは正確ではないですよね。
過去の借金の返済なんか全然できていなくて、毎年毎年、社会保障の面から新たに生み出す赤字分をどれだけ減らせるかということをまだやっている、そのレベルだということの理解もできていない。国民からすれば、正直申し上げて、この国がどれぐらい厳しい状況にあるのかを理解できていなかったところが、これまでなかなか財政再建が進まなかった一つの理由でもあるのではないのかと思います。そういったところで理解を深めていただくという意味でも、やはりこういうやり方で御説明いただくというのは非常に意味があるのではないかと思います。
あと、今後の課題として、できればお願いしたい点が2つありまして、今回は予算の示し方ということで、これでいいと思うのですけれども、できることであれば、財政運営の目標がそれぞれどこに位置づけられるものなのかということを、例えば参考2の資料で言えば、ここがプライマリーバランスです。均衡になればこの間の線のところに来て、利払い費のところまで税収で賄えることになれば財政収支が均衡して、それよりもっと上に行けば黒字になるわけです。ドイツとかは、そういう状態で来たわけで、借金を減らしてきた。ぜひ、そういうことが分かるような説明の資料とかも使って、財政健全化の訴え方の工夫につなげていただきたいということが一つです。
もう一つは、ちょっと前回にも申し上げさせていただいたのですが、それこそ借金が1,000兆円にもなるのではないか、それぐらいある中で、これだけ新発国債をばんばん出しながら債務償還費を14.9兆円しか出していない。これは例の定率繰入れの分だと思いますけれども、それで大丈夫なのかということを、やはりこれから将来的にはきちんと考えていかないといけないと思います。
諸外国の例を見ると、今日の御報告にもありましたけれども、やはりきちんと中長期の見通しを立てて財政運営を考えている。英国のところでOBRのお話もありましたけれども、私もこの2018年7月の財政持続可能性レポートを読んだことありますけれども、人口の見通しとかもきちんと置いてやっています。日本だって、これだけ厳しい人口減少が見込まれている中で、やはり国民1人当たりが背負い切れる借金というものは限りがあると思うのです。そういう厳しい人口減少、ほぼ確実に進むことがもう見込まれている中で、こういう状況でいいのか。やはり今の世代のお金を使ってでも、債務償還をどうやっていくのか。
今、債務償還のやり方は3つあると思います。定率繰入れと、決算の剰余金繰入れと、予算繰入れとあって、予算繰入れはやはり本当になかなか政治的にも大変だし、そんなに大した額はできていないと思うのです。決算の剰余金も、財政法のルールどおりの年と、そうではない年もありますけれども、私も過去20年くらい遡って足し算してみたことがありますけれども、仮に剰余金全部を繰り入れても、20年間ぐらい繰り入れても20兆円ぐらいだと思います。
やはり定率繰入れが大事だと思いますので、今みたいに建設国債も赤字国債も60年かけてやる、これだけしか債務償還費は出さないということで本当にいいのかどうかということも、将来的には考えていかなければいけないのではないかと思います。
長くなってすみません。以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、こちら側、田近委員、お願いします。
〔田近委員〕では、手短に。
既に、もういろいろ議論があったのですけれども、おおむね賛成です。予算フレームについて財政実態を反映するように表記を変えようということで、具体的な御提案は、今まで歳入部分の公債費を建設国債、赤字国債と分けていたものを、実態に合わせて債務償還、利払い、プライマリーバランスに分けようと。
この試案を御覧になっていただきたいのですけれども、先ほど来、武田委員の御指摘もあって、我々、何を財政政策として基軸に置くのか。プライマリーバランスだと。情報がある意味で錯綜しているというのは、財政赤字とファイナンスが同時に入っているわけです。それはどう入っているかというと、両立てになっている試案の国債費を取ってしまう。取ると何になるかというと、えらいすっきりして、一般歳出、地方交付税の支出、税収、その他を引いたものがプライマリーバランスなのだと。要するに、この表は両立てのものを取ってしまえば、プライマリーバランスがどうなっているかを示したものだと。それに利払いを足したものが財政収支だと。その財政収支をどう調達したかというのが下になる。
私の意見は、重要な提案で、よりよくはなると思いますけれども、ただ、この御提案のものも考えてみると、財政収支の部分とファイナンスの部分が混在する必要はないではないか。何か知ったようにしゃべっているのは、実はIMFの統計とか、どこを見てもそういうふうに書いてある。そういう意味で、情報がここに書いてあるのだから、これはいいじゃないですかというレベルなのか、それとも、今、言ったような形のものも用意するのか、それはアイデアだと思います。
第2点は、既に指摘されている、僕も気になっているのは、財政健全化のときに国・地方のプライマリーバランスはSNAベースでつくっているのです。実際、国民経済計算年報に、中央政府、地方政府、社会保障基金ということで表があるんですけれども、もちろん佐藤委員が言ったように中央政府には特会が入っているから、あと発生ベースになっているかもしれない。だから、この際、やはり少なくとも中央政府部分の財政赤字がどうなって、この予算フレームとどう対応しているかというのは解明していただきたいと思います。
ということで、前進ではあるのだけれども、よく考えたら、この試案はプライマリーバランスを出している表ではないかと言いたかったわけです。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
情報が増えるのはとてもありがたいことですので、あとは、一方でたくさん書いてあると分からなくなる者もいるというのは正直なところなので、御説明のときに、それぞれがどういう意味で、特にこの紙の中でどこに注目すべきだということ、この紙でなくてもいいのですけれども、要するにあなた方が今、議論しているのはこれですよねというようなことを、来たばかりの記者でも分かるような形で紹介していただけるとありがたいと切に思います。
あとは、これは考え過ぎなのかもしれませんけれども、これを見て議論が、例えば、今、まさにプライマリーバランスが大事だけれども、では、そうでないものは忘れていいかというと、もちろん忘れてはいけないわけで、政策的赤字を減らせば、ほかのことは忘れていいのだとか、政策的赤字は政策なのだから、こんな危機のときはしようがないんだとか、そういう何となく緩くなるような議論になるのは、警戒していかなければいけないと思いますので、数値を出すことを変えるに当たっては、そうした隙がないようによろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ウェブで御参加の3人の委員の方、神津委員、上村委員、黒川委員、合図がありますので、その3人までで締め切ります。
神津委員から、どうぞお願いします。
〔神津委員〕ありがとうございます。
透明性向上を図るという趣旨については、非常にいいことだと思います。その上で、やはり補正予算も含めてどう表現できるか。既に御指摘もありますけれども、財政規律厳格化の趣旨からすると、補正と一体で見せる工夫が要るのではないかと思います。足元は特殊事情ですが、しかし巨額の国債新規発行ですから、財政の真の姿を示すということでは、そのところは検討が必要ではないかということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、上村委員、お願いします。
〔上村委員〕上村です。
こういった情報提供をしていくことは賛成です。例えば、普通国債残高とか、普通国債残高対GDPといった指標が予算フレームに加わっていくことですけれども、これらについては、既に財務省のウェブサイトの財政に関する資料、普通国債残高の累増という図がありますので、そちらに示されています。
そのウェブサイトの資料と、新しい予算フレームの試案の数字を比較したのですけれども、異なっています。先ほどまで、他の委員から債務の範囲に関する意見も出ていましたけれども、なぜ数字が異なっているかというと、ウェブサイトのほうは普通国債残高に復興債、前倒し債が含まれている。新しい予算フレームは、脚注を見ると除いているということで、そのために対GDP比も異なっています。恐らく、復興債とかは一般会計の枠外にあるから予算フレームから除いているということだと思いますが、脚注をよく見ないと、同じ名前の普通国債残高とか、普通国債残高対GDP比なのに、ウェブサイトのほうと予算フレームで数字が異なるということは、ちょっと混乱する国民もいるかもしれません。財政コミュニケーションを深めるという意味では、目的があるのだったら、これまでの情報提供との整合性を確保するということも必要かと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、黒川委員、どうぞお願いします。
〔黒川委員〕私は法制・公会計部会の者なので、発生主義の財務諸表をつくっているほうからしますと、国の貸借対照表の資産・負債差額、すなわち債務超過の推移と特例国債の残高の推移が極めて類似する、同じような動きをしているのがわかります。これは、会計学者からすると当然だろうと思うのです。そこで今日のお話の中で、特例国債と建設国債という区分は非常に大切です。会計情報としての実績を測ってみると、結局、特例国債が資産負債差額・債務超過の大きな原因になっているということが分かってきますので、やはり特例国債と建設国債の区分はしておくべきだろうと、このように思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
いろいろ御意見を賜りましたけれども、試みの案ということでお示しを事務局のほうでしたということでありますので、今日、いろいろ御指摘いただいた点も踏まえて、さらに議論を深めていただいて、また当部会のほうにお話をしていただきたいと思います。
議題、2つ終わりました。実は、冒頭、ここで休憩と申し上げたのですが、時間が大分押しております。春の財審が前回と今日と2回だけなものですから、各委員の皆様方、いろいろ御意見あるかと思いまして、私もあまり時間のことを催促せずに進めてきたのですが、結局、ここまで時間が押しておりますので、休憩はちょっと取りやめをして、ただ、窓のほうを開けて一部換気をしながら議事を続行させていただきたいと、このように思います。
3番目の会長談話のほうに移りたいと思いますので、初めに会長のほうからお話を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
〔榊原分科会長〕前回、6月1日の財政制度分科会の場で申し上げましたけれども、新型コロナウイルス感染拡大と財政上の対応について、財審として何らかの意見表明を発出することが望ましいと考えているわけでございます。とは言うものの、春以降、新型コロナウイルスの影響もございまして、財審の会合は、これまで1回、今日を含めて2回しか開催できていない中で、従来のように起草委員会の方々による起草とか、あるいは素案の議論を経て建議を策定するということは実質的に困難でございます。そういった中で、増田分科会長代理とも御相談をいたしまして、会長談話という形で財審としての考え方を発信したいと考えているわけでございます。
会長談話という形ではあるわけでございますけれども、前回の財審における、また、今日の財審における皆様の御意見をなるべく酌み取って、言わば最大公約数的な形としてお示しさせていただいたつもりです。本日、委員の皆様の御賛同を頂ければ、今日、この後の記者会見で対外公表をしたいと考えております。何分、建議とは違って大変短い文書でございますので、全ての委員の皆様方の御意見や思いを酌み尽くすことは限界があるわけでございますけれども、これを第1弾という形で発出しておいて、本格的な議論というのは秋の建議策定に向けて引き続き行っていくと、そういった形にしたいと考えております。
私からは、冒頭、以上です。
〔増田分科会長代理〕会長、どうもありがとうございました。
ト書きですと、ここで一応、読み上げることになっていることになっているのですが、事前にお配りしておりますので、皆様御覧いただいてきたと思います。したがいまして、それも省略させていただいて、そういう前提で、繰り返しになりますが、腰を据えた本格的な議論、検討は秋の財審の中でしっかりとやっていくと、こういうことにしていくわけでございますが、いろいろ今後の財政運営について、補正予算との関係もあったと思いますので、御意見おありかと思いますが、ぜひ御理解いただきまして、会長談話というとおり、内容は基本的には会長にお任せいただきたいと思っております。今、この時点で、タイムリーに公表することが大変重要でございますので、この後の記者会見でぜひ公表させていただきたい。
そういう意味で、大変恐縮でございますが、非常に大きな御意見がもしこの場でおありでしたら、もちろんおっしゃっていただいて、その大きな御意見だけお伺いして、あとは会長のほうにお任せいただきたいと、こういうことでございます。どうぞ、趣旨、お酌み取りの上で、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、御発言ございます方、プレートを上げる、挙手ボタン等々で合図していただければと思います。
それでは、神子田委員から、どうぞお願いします。
〔神子田委員〕すみません。では、1つだけにします。
2ページ目の12行目「制度の持続可能性を確保することは引き続き待ったなしの課題である」ですけれども、ちょっと言葉尻を捉えるようで恐縮ですけれども、待ったというのは1回だけだと思うのです。だから、待ったなしが引き続きというのはどうかと思って、でも、まさにこれが今の財政の状況で、もう財政を悪化させてはいけないから、これ以上、国債を発行できないのですというときに、いや、待った、ちょっとこの1回だけ国債を発行してもいいですか、みたいなことが年々続いているというところが問題なのではないか。先ほど、宮島委員のデンマークの発表で、1つは、政治家がちゃんと立派なことを言っているから私たちは任せておけばいいのだということに対して、日本ではまだまだ借金はできますからとか言う政治家がいるという中では、やはり教育は大事ということ。
一方で、長期絵図を描くと、このままではもちませんというようなことでみんな従うということですけれども、この国はもちませんと言いつつも、今年も大量の国債が発行できて、しかも、ちゃんと調達できるという状況が続いている。だから、今後に関しては、そこをどうやって、何でヨーロッパと違うのか、同じ人間なのに何で彼らは国民がちゃんと理解して、何で我々はそういうふうにならないのだろうというところを、また秋にかけて考えていきたいと思います。
最後の1行も「議論を進めていく所存である」とあるのですけれども、やはり議論とともに、私たちから発信していくことも大事かと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕一言だけ申し上げたいと思います。
とてもいいタイミングで、この会長談話が発表されることは、私も願っておったところでございます。
もう一つ、セコンドするという意味で申し上げたいことは、2ページの下から5行、6行目の「低金利環境の継続を当然視せず」というところ、極めて重要な重みのある言葉だと思います。ずっとデフレが続いているので、国債を大量に発行してもデフレが止まることはない、インフレになんかならないのだと、とんだ勘違いだと私は思いますが、そういうことが平然と語られているのが今の状況だと思います。ですから、決してそんな、国債を大量に発行してもインフレになんかなりっこないと、金利は変わりっこないというわけではないということをしっかりと訴えていくことが、今、重要だと思います。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、進藤委員、お願いします。
〔進藤委員〕一言、コメントですけれども、今回のコロナの対策で第1次、第2次の補正が加わりまして、みんな、これは国民の生活と事業を守るために必要な支出だと思っているのですけれども、一方で、これだけ悪化した財政をどうするんだと、何とかしなければいかんだろうと、これは誰も言わないわけです。このままでは、政府も現代貨幣理論に宗旨替えしたのかと思う人もいるかもしれない。そういう意味で、今回、会長からきちんと言っておくことが僕は極めて大事だと思います。ぜひお願いしたい。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、佐藤委員、お願いします。
〔佐藤委員〕ありがとうございます。
大きいコメントということなので、今回のコロナ対策として財政を拡大させていくということで、特に規模を重視した結果として、委託費が高いとか、中身を伴わない事業が結構多かったと思うのです。やはりこの国は、財政を拡大させるということは規律を弛緩させてもいいのだと勘違いしている部分があって、財政の拡大は決して規律の弛緩を意味しないわけです。
この国は何でそうなのかと思ったら、ケインズ経済学によく出てくる話で、穴を掘って埋める公共事業、それでも所得を生み出すし、経済を支えるのだということがあるのです。何となく無駄であっても、とにかく量さえ確保すればいいのだ、委託費を積めばいいんだと、何となくそういう雰囲気がある気がします。
しかし、決してそうではなくて、諸外国の報告にもありましたとおり、海外はそれを未来の投資につなげているわけで、それがデジタル化であり、グリーン化なのです。では、我々は今回の補正予算を何のために未来につなげているのか。これは、やはり問われてしかるべきと思いますので、その辺りを強く言われたほうがいいかと思いました。
それと、先ほど空気を読むという話が出たので、この国はやはりもうあまり空気を読んではいけないと思うのです。何となく今の空気は、財政規律を言うのはけしからんという空気です。だから、建議さえ出さなかった。だから、悪い言い方をすると、財審が白旗を上げたのではないかとネットとかで言われそうな気がするのです。なので、決してそうではないのだと、建議を出さないということは決して白旗を上げたということではない、財政再建の旗は降ろしていないのだということ、これは強いメッセージとして伝えるべきかと思います。さもないと、この国、結構危険な方向に行くと私は思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、ウェブで参加されている3人の委員の方、初めに平野委員、続いて堀委員、最後に神津委員と、ここまでにさせていただきます。
平野委員から、どうぞお願いいたします。
〔平野委員〕平野でございます。ありがとうございます。
まず、会長談話、大変によいものだと私は思っております。今回の予算執行事後検証の必要性だとか、平時からの財政健全化が重要である。それから、特にこれは金融の立場からそうなのですけれども、過度な支援というのは、結局、現状の維持であるとか、固定化を招いて、将来の成長にはつながらないということにも言及していただいているなどであります。
その中で、特に私が重要だと思っておりますのは、1ページの下から2ページにありますワイズスペンディングについて、まず一言申し上げたいと思います。
ワイズスペンディング、まず1つは無駄をやめるということだと思います。今回も膨大な予算が費やされるわけですけれども、率直に申し上げて、本来の予算の趣旨に十分沿ったものではないような形の給付金の支給などが行われているということも含めて、第1は無駄をやめるということだと思います。
ただ、それ以上に重要なのは、今も御指摘ありましたけれども、やはり未来志向の予算の執行、すなわちポストコロナを見越した戦略的な予算の策定を行うこと、これが重要であろうと思っております。すみません、時間がない中で人の言葉を引用して申し訳ないのですが、最近、ウィンストン・チャーチルの「Never let a good crisis go to waste」というのがはやっているようでありますが、やはり今が構造改革のチャンスだと思います。社会、産業、それから、もう一つ、公共セクターの構造改革を加速させる、このための予算でなければいけないと思います。
EUの場合は、これも先ほどから御報告あるとおりで、デジタルと環境に特化した予算が策定されています。日本の場合は、それに加えて様々な社会的な課題、医療であるとか、教育が必要でありますし、それ以上に、将来に向けての持続的成長という観点からすると、デジタルもその一つですけれども、イノベーションに対する予算の投下が非常に重要である。今回の補正を見ても、必ずしもその辺の目鼻立ちがいいものにはなっていないという印象を受けております。それが1点。
一方で、これも先ほどから皆様おっしゃっているとおりで、財政の持続可能性、健全性をどう担保するかということであります。予算フレームでもあったように、国民に対して分かりやすく実態をディスクローズしていく、これはもちろん大事でありますが、それ以外にも、冒頭の海外調査の中で出てきた財政規律のフレームワーク、EUの場合だとStability and Growth Pactというのがあるわけだし、ドイツの債務ブレーキはやや過剰かもしれませんが、こういったものをどういう格好で取り入れていくか。
もう一つは、やはり中期財政計画をしっかりつくって、それと整合性のあるような、単年度でそれが組まれているかということを見ていく必要がある。
それらを誰が見るかというときに、これも先ほどから話題になっておりますけれども、IFI(独立財政機関)を何らかの形でつくり込んでいく必要があるのではないかと思っております。この場でも何回か申し上げておりますが、直近の同友会のシンポジウムなどを拝見していると、憲法86条との関係が随分言われていますが、別にこれは必ずしも中長期的な予測をしてはいけないとか、中期財政計画をつくってはいかんということを言っているわけではなくて、単純に内閣は各会計年度の予算案をつくって、国会に提出して承認を受けなければいかんということを言っているだけなので、ここはもう少し頭を柔らかくして、具体的に財政の再建がどうするのか。その仕組み、それこそフレームワーク、メカニズムについて、本当にしっかりした議論が必要だと思っております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、堀委員、お願いします。
〔堀委員〕時間もほとんどないと思いますので、1点だけ。
「2022年には団塊の世代が後期高齢者となり始めた後」という文言ですが、入れること自身には非常に賛成ですし、社会保障の議論をここに入れていただくのは大賛成ですが、先ほどから未来に対する投資という意見もありますが、社会保障制度改革をいささかも後退させることなくというのは当然で、さらに2022年だけではなく、2030年、2040年、2050年と、もうアフターコロナ、あるいは新しい生活様式をふまえたときにも、強い社会保障が必要。そのためにも財政健全化が必要だというようなメッセージがもう一つあるとよいかと。つまり、目先、2022年ももちろん大事ですが、それ以降もということが一言どこかにあるといいなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、最後、神津委員、どうぞお願いします。
〔神津委員〕ありがとうございます。
会長談話の内容自体に異論はありません。この内容を大事にして、先にどうつなげていくかという意味で、一言、申し述べたいと思います。
コロナの問題で、日本の社会の弱いところ、これが露呈してしまったと思います。具体的には、雇用のセーフティーネットの脆弱性や、格差、貧困の現状が浮き彫りになり、一方ではデジタルが行政、あるいは医療、学校の現場で生かされていないなど、デジタル活用の遅れが明白になったと思います。したがって、必要なところへの予算配分というのは極めて重要だと思います。であるだけに、税財政一体で解決を図ることの重みはより一層増してきたと考えます。また平野委員からもお話がありましたように、海外調査報告のいろいろな事例なども参考にしながら、やはり独立財政機関、中長期的な税財政の客観的評価、監視を行う、そういった機関が必要ではないかと思います。
以上であります。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。最後のほう、大分急がせるような形になってしまいまして、大変申し訳ございませんでした。
先ほど申し上げましたとおり、基本的には会長談話ということでございまして、内容は会長にお任せいただければと、このように考えております。また、手交方法など、その取扱いにつきましても会長のほうにぜひお任せいただければと、このように考えております。
以上、内容、取扱いを含めて会長に御一任いただくということで、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
それでは、今、幾つか注意点も頂きましたので、会長談話につきましては、この後、記者会見で会長のほうから御発表いただくということでございますが、そうした点も含めて臨んでいただくことといたしたいと思います。
それでは、時間、参りました。少し延びまして大変恐縮でございますが、以上で本日の議題は終了とさせていただきます。
繰り返しになりますが、本日の会議の内容につきましては会議後の記者会見で御紹介させていただくことにいたしますので、個々の発言につきましては報道関係者等に直接お話しすることのないよう御注意いただきたいと思います。
本日は、これで閉会をいたします。今日は、どうもありがとうございました。
午後4時05分閉会