財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和元年11月25日(月)9:00~9:45
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.議題
とりまとめに向けた審議
3.閉会
分科会長 | 榊原定征 | 井上大臣政務官 宮島大臣政務官 太田主計局長 阪田次長 角田次長 阿久澤総務課長 日室司計課長 前田法規課長 斎須給与共済課長 森田調査課長 西山官房参事官 寺岡主計官 大久保主計官 佐藤主計官 渡邉主計官 吉沢主計官 関口主計官 八幡主計官 一松主計官 中澤主計官 中島主計官 岩佐主計官 坂口主計企画官 井上主計企画官 飯塚主計企画官 | ||
分科会長代理 | 増田寛也 | |||
委員 | 大槻奈那 黒川行治 神津里季生 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 雨宮正佳 葛西敬之 河村小百合 木村旬 権丈英子 小林毅 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 田近栄治 田中里沙 土居丈朗 冨田俊基 平野信行 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 吉川洋 |
午前9時00分開会
〔増田分科会長代理〕おはようございます。時間が参りましたので、ただいまから財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
本日は、前回に引き続きまして、建議の取りまとめに向けて、お手元にお配りしております「令和2年度予算の編成等に関する建議(案)」について、ご審議をいただきます。
2種類、配られておりまして、本文と、もう一つは修正がわかる見え消し版と2つございます。ご確認をいただきたいと思います。お配りしております建議案は、11月15日の金曜日、前回の会議においていただいた御意見や、その後、書面でいただきました御意見を踏まえて、起草委員会において修正を行ったものでございます。ご参考にしていただきたいと思います。
それでは、審議に先立ちまして、前回の会議でお配りしたバージョンからの主な変更箇所について、事務局のほうから補足の説明をお願いします。
〔森田調査課長〕前回、11月15日の分科会でいただきました御意見、及び書面でいただきました御意見につきまして、起草委員会においてご審議いただきました。私からは、修正点が赤字となっております見え消し版に沿って、原案から修正がなされた主な箇所について順にご説明させていただきます。駆け足でのご紹介、あらかじめおわび申し上げます。
1ページ、12行目から17行目、末澤委員から、少子高齢化のインパクトを強調すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
22行目、葛西委員と神子田委員から、安全保障環境等のリスクも記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。同じ趣旨ですが、飛んで3ページ、14行目、こちらも修正されております。
続いて、4ページ、9行目から11行目、村岡委員から、当初の表記では債務残高対GDP比が増えなければ問題ないと受け取られかねないとの御指摘を踏まえ、修正されております。
21行目、神子田委員から、プライマリーバランスが重要という最大のメッセージがぼけないようにすべき、繰り返しは絞るべきとの御指摘を踏まえ、本文を修正の上、脚注後に追記されております。同じ視点ですが、一旦飛んで5ページ、16行目の一文が削除されております。
4ページに戻りまして、24行目、佐藤委員から、歳出だけでなく歳入面にも触れるべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
5ページ、2行目、村岡委員から、足元の低金利が続いている特殊な状況について詳しく記述すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
脚注8、小林慶一郎委員から、金利が成長率より高まった場合の具体策を欠くような議論は問題である旨、記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
6ページ、最後の行から7ページ、2行目にかけまして、堀委員から、シンクタンクの活動の評価が上から目線にならないようにとの御指摘を踏まえ、修正されております。
同じく7ページ、12行目から16行目、神子田委員から、長期推計について省庁横断的に取り組むべき課題であるとの御指摘を踏まえ、修正されております。
9ページ、10行目、武田委員から、改革は給付と負担の見直しも含めたものとすべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
10ページ、1行目、大槻委員から、海外下方リスクの意味をわかりやすくとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続きまして、11ページ、社会保障の修正点です。
11ページ冒頭、宮島委員から、次世代のために改革するというメッセージを記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
12ページ、5行目、末澤委員から、将来的に「中福祉、高負担」、さらには「低福祉、高負担」に転換する可能性もあるなど、給付と負担のアンバランスについてわかりやすく記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
15ページ、15行目から23行目、河村委員から、急激な高齢化や人口減少のような単なる頭数の話だけではなく時代に伴う質的な変化についても記載すべき、伊達委員から、将来世代にツケを回さないため、現役世代の負担をこれ以上増やさないための改革が必要との趣旨を明確化すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
16ページ、7行目から13行目、堀委員、佐藤委員から、エビデンス、費用対効果の視点が不可欠であることを明確化する趣旨、また、健康増進の取り組みと医療費適正化を分けて考えるべきとの趣旨の御指摘を踏まえ、修正されております。
18ページ、5行目から9行目、堀委員から、受診時定額負担については、単なる負担だけではなく、受診行動の適正化や医療提供体制の確保という視点を盛り込み、患者にとって1回ごとの受診の質が向上するということをあわせて説明していくべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
21ページ、4行目、佐藤委員から、医療費の抑制に都道府県は主体的な役割を果たすべきことを念押しすべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
7行目から8行目、平野委員から、民間病院でも公立・公的病院等と同種の取り組みを行う必要性や、医療提供体制のダウンサイジングを検討する必要性について言及すべき、また、アウトカムベースの目標に向けてKPIを改めるべきである旨、記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
脚注26、平野委員から、医療分野は医療費削減に向けた供給側のインセンティブが働きがたい構造にあるとの御指摘を踏まえ、修正されております。
22ページ、17行目、佐藤委員から、法定外繰入金については期限を定めて解消すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
飛んで24ページ、6行目と脚注34、小林慶一郎委員から、資産にも着目して資産の把握と、その保有状況によって負担を検討するべき、また、負担増だけではなく、所得や資産が少ない者に対してどのような軽減措置があるかも記述し、納得感のある応能負担の原則を主張すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
25ページ、12行目、佐藤委員から、医療と同じように大きなリスク、小さなリスクの考え方があってもよいとの御指摘を踏まえ、修正されております。
28ページ、脚注40、事務局提出資料に記載された厚生労働省の調査結果について、同省から論点に大きくかかわる部分の修正がなされたことを踏まえ、修正されております。
33ページ、6行目、宮島委員、進藤委員から、在老について慎重に検討すべきであることを明記すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続きまして、地方財政の修正点です。
39ページ、9行目、河村委員から、歳出効率化効果については事後的な検証を行うことが重要との御指摘を踏まえ、修正されております。
脚注59、上村委員から、上水道についても建議の中で触れるべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、41ページ、文教・科学技術の修正点です。
41ページ、3行目から7行目、宮島委員から、読み手が理解しやすい表現に修正すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
42ページ、脚注62、宮島委員から、ICT環境整備という目的自体の正当性は明確に記述すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
43ページ、脚注64、赤井委員から、コスト面、教育の質の面から適正化や統廃合の効果をしっかりと把握し、住民に示すことが必要と記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
44ページ、脚注65、進藤委員と広瀬委員から、政府の研究開発投資の量と質、双方の確保が必要との御指摘を踏まえ、修正されております。
46ページ、14行目から16行目、田中里沙委員から、より中立的な記載にすべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
47ページ、17行目、河村委員から、国立大学の運営費交付金の評価配分について、教育と研究の別を明確にするような表現を入れるべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
48ページ、4行目、宇南山委員から、国立大学の運営費交付金の相対評価の仕組みは適切な配分をするための努力であることを示すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、51ページ、社会資本整備の修正点です。
51ページ、18行目、村岡委員から、ハード整備を軽んじているように受け取られないよう記載すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
54ページ、14行目から15行目、広瀬委員から、維持コストの最小化やイノベーションの活用の観点から公民連携(PPP/PFI)を進めていくことも重要、神津委員から、責任の主体を明確にすべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
18行目、神津委員から、地方公営企業の事業に係る利用料については住民の意思で決められるべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、農林水産の修正点です。
57ページ目まで飛んでいただきまして、脚注73、平野委員から、水田活用の直接支払交付金の具体的な金額を追記すべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、62ページ、エネルギー・環境の修正点です。
62ページ、23行目、広瀬委員から、エネルギー分野の研究開発や導入支援は将来的な効果も視野に入れた支援も必要ではないかとの御指摘を踏まえた修正、続く63ページ、6行目、こちらも同じ趣旨から修正されております。
同じく63ページ、1行目、進藤委員から、規制的手法よりも自主的取り組みの後押しについて主に議論しており、記載の順番を入れかえるべきとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、64ページ、中小企業の修正点です。
13行目、神津委員から、成長投資には人材への投資が欠かせないとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、外交関係の修正点です。
68ページ、1行目、神津委員から、現在の館員数では館員への業務負荷が著しく高まっているとの御指摘を踏まえ、修正されております。
続いて、69ページ、情報システムの修正点です。
11行目から13行目、平野委員から、システム構築の無駄を排除するにはオーバースペックにしないとの発想も重要との御指摘を踏まえ、修正されております。
16行目から18行目、伊達委員から、システムの効率だけではなく、業務のあり方の見直しを通じて生産性向上につなげることまでが期待されているとの御指摘を踏まえ、修正されております。
以上が本文の主な修正になりますが、参考資料につきまして、参考資料3の121ページ、資料Ⅰ-1-3、家計に例えた絵ですけれども、上村委員から、国家財政と家計の差異に関する注が必要との御指摘を踏まえて、注を追加しております。また、本文に合わせまして概要につきましても修正されております。
主な修正について、私からの説明は以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日、全体の時間のめどは、お手元に資料が配付されているかと思いますが、60分程度の審議の中で建議の取りまとめを行っていきたいと思っております。
それでは、建議案について、御意見やコメント、また、感想等あれば、どの部分でも結構でございます。いつものように、御意見がある場合はネームプレートを立てて、ページと何行目かということも具体的に御指摘いただいきたいと思います。
なお、本日の議論を通じて神津委員から意見書が提出されておりますので、こちらもお目通しいただきたいと、このように思います。
それでは、神津委員からお願いしましょうか。
〔神津委員〕ありがとうございます。意見書も提出していますので、この場ではくくって発言させていただきます。 まず、起草委員の皆様方、大変なご苦労があったと思います。改めて敬意を表しておきたいと思います。また、幾つかの項目、私どもの主張を反映いただいたことについても感謝申し上げておきたいと思います。
その上で、本日、最後の場面でもありますので、意見書で申し上げているところを少しくくって申し上げておきたいと思います。
まず、総論的なところですが、財政規律の重視、これは当然のことながら外せないわけであります。そのもとで、10兆円超の補正予算が検討されるというようなことも耳にするわけですが、足元での災害対応はもう当然に不可欠だと思います。ただ、そのことと、財審でもたびたび問題意識としてありました抜け穴的なところ、これは峻別されることが不可欠だと思いますので、ぜひ、そこのところのご努力、財政当局にはお願いしておきたいと思います。
一方で、やはり予算は、将来にわたっての国民生活を支えていくものでありますので、貧すれば鈍すという事態を招来することがあってはならないと思います。とりわけ、社会保障、教育分野の持続性の担保の観点が不可欠だと思います。特に、雇用の質の向上、格差是正、貧困の解消においては、そのことが社会の支え手、すなわち納税者を増やすことにもつながるのだという点にも留意が必要だと思います。
それと、この中でもかなり記述をいただいていると思いますが、税財政の構造問題にメスを入れることは不可欠だと思います。税の財源調達能力の回復、所得再分配機能の強化、これは主に税制に関わるところではありますが、やはり税財政全般において大いに必要なことだと思います。
その上で、4つの視点ということでくくらせていただきました。これは、角を矯めて牛を殺すようなことにならないために、慎重な検討が必要ではないかという問題意識です。
1点目は、社会保障の持つ重度化予防機能ということであります。言葉尻を捉えて申し上げるつもりはないのですが、小さなリスクは自助でということで、それは医療や介護へのアクセスを遠ざけることを是とするものではないと思っていますので、そういった観点でぜひ慎重に見ていただきたいと思います。社会保障制度は、重度化を防ぐ機能を持っていると思いますので、その重要性を常に踏まえていただきたいと思います。それぞれの指摘は枠囲みにしておりますので、ご参照いただきたいと思います。
2点目は、働き方改革の観点です。これも言及いただいている部分はあるのですが、例えば医師の働き方のところです。医療従事者全体の働き方改革に取り組む医療機関に対する診療報酬上の評価、さまざまな政策的支援が必要ではないかと思っています。また、学校の働き方改革ですが、これはご承知いただいていると思うのですが、学校現場は、危機的な状況と言わざるを得ないと思っています。業務の整理、合理化はもちろん必要ですが、それだけではなくて、教職員定数の改善、それから給特法もやはり本来的な抜本見直しが必要だと思っています。
3点目は、人材確保のための処遇改善の視点であります。これは、特に保育、介護でありますが、保育については無償化がスタートしているわけですけれども、いかんせん人材不足がネックになっているということは明白だと思います。それから、介護、これは前回も、これまでも発言をしておりますけれども、介護人材は世界の中で取り合いでありますので、継続的かつ、やはり潜在的に資格を持っている人たちのインセンティブに足る処遇改善を見せていく必要があるだろうと思います。
最後、4点目ですが、普遍主義の理念であります。これも、前回、発言させていただきました。子供は、社会全体で育てるという趣旨が必要だと思います。基本的には全ての子供に対して給付をするという観点、そのことは納税者意識の醸成とも連動するのではないかと、私は思っております。
以上、4点、申し述べましたが、これはいずれも日本の経済、社会の持続可能性と包摂性を確保するという観点も踏まえてのものであります。繰り返しになりますけれども、税財政構造の将来像を示すとともに、国民がそのこととあわせて主体的に理解し、納得感を持つこと、そういったことに向けてさらに努力を重ねていく必要があるだろうと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。御意見、コメントとして承っておきたいと思います。
ほかには、いかがでしょうか。それでは、宮島委員、どうぞ。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
起草委員の方々、大変なご苦労、どうもありがとうございました。
いろいろ受けとめていただきまして、今回の建議で、特に団塊の世代が75歳になる直前、もう本当に時間がないということを強く感じております。そして、団塊の世代が75歳になってしまったら、それ以降の改革を訴えるときの説得方法がものすごく難しいのではないかと、とても心配しております。今回の建議では、75歳の医療費の窓口負担に関しまして、新たに75歳になる人からということを明確に打ち出して、はっきり切りかえたと思います。これはとても重要なことだと思うのですが、最近のネットなどのニュースの状況ですと、どうしても見出し、あるいは最初の数行の印象が国民全体の印象になることがとても多いので、ここを記者がしっかりとわかっていないと、あるいは伝える人がしっかりわかっていないと、誤解されたまま伝わる可能性があると思います。これまでも何回もいろいろなところで申し上げていますけれども、ここを何とか、とにかく団塊の世代の方に受けとめていただきたいのだということを、本当にしっかりとお願いするような形で、私たちも発信したいと思いますし、いろいろなご説明の際にもよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。
ほかには、いかがでしょうか。それでは、木村委員、どうぞ。
〔木村委員〕ご説明どうもありがとうございました。
起草委員の先生方、取りまとめ、本当にありがとうございました。お疲れさまでした。
建議がまとまるということで、これから令和2年度予算編成が本格化していくわけですが、その際に幾つかお願いしたいと思っているのは、1つは、こうした建議案にまとめられたことはどれも痛みを伴う改革で、これからどれだけこれを実行していくかが大事なことだと思いますけれども、随分難しいことだと思っています。これまで何度も建議案で取り上げてきたことが多く書かれていますけれども、それがなかなか十分に実行されなかったということが難しさを物語っていると思います。これから当局の方もご努力されると思いますけれども、ご苦労されると思いますけれども、ぜひご努力をお願いしたいと思っています。
その上で、一つ気になるのはやはり政治のほうの動きで、具体的にどうとは申しませんけれども、いろいろ問題が出てきている中で、こういう痛みを伴う改革を実行する力がどこまで政治のほうにあるかが一つ気がかりになっていて、それだけに財政当局の役割もすごく大きくなっていると思います。そういう意味で、当局の方々のお力というのは重要になっていくと思いますので、令和2年度予算にできるだけ反映していただけるようにご尽力をお願いしたいと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
ほかには、いかがでございましょう。それでは、平野委員、お願いします。
〔平野委員〕すみません。感想めいたことと、1つ質問です。
私は、今年度からこの審議会に参加させていただきまして、さすがにこれだけのメンバーがそろうと、いい審議ができるし、本日のペーパーをつくづく読み返してみても、かなり細かいところまで踏み込んで、非常にクオリティーの高い建議案ができたと思って喜んでおります。皆様も先ほどからおっしゃっているとおりで、やはり我々が持たなければいけないのは、将来に向けて、この国の財政の持続可能性をいかに維持していくか。一方で、先ほど神津委員もおっしゃいましたけれども、国として、国民に対する生活であるとか、福祉のクオリティーの保障をいかに両立させるかと、そういう難しいところにあります。かつ、2022年、2025年という期限が迫っている中で、政治の世界でそれと同じような危機感が本当に共有されているのかというと、非常に疑問に思うことがあります。ぜひ、我々がここで共有したような危機感を、これから先、本日、政務官のお二方、来ておられますけれども、国会の場でも共有していっていただきたいと思います。
そういう脈絡でちょっと気になっているのがMMTの話ありまして、前回、少し話題になりまして、記述も入りました。ここのところについて、私、財務省にお願いしたいのですが、MMTに対する反論というのでしょうか、より明確にすべきではないか。一見して、こんなものを本気にする人はいないだろうとたかをくくっているといけないと、私は思っています。
というのは、確かに今のこの日本の状況を見ると、物、サービス、それから金融、全ての分野において需要が足らないと思うのです。供給は、ある意味で過剰になっている。足らないのは人だけです。そういう中で、放っておくと物価が上がっていくという状況にはなかなかならなくて、g(名目経済成長率)のほうが事によったらr(名目金利)よりも大きいという状態が、少なくともここ何年かは続くかもしれないと思っている人がやはりいるわけです。
そうなったときに、MMTを都合よく引用する人の数は増えるだろうと思うのです。そのときに、最後に問題になるのは、民間、すなわち消費者、あるいは企業セクターにかわって、政府セクターが支出を膨らませることで需要を創出するのが正しいのかどうか、最後はそこに切り込むべきだと私は思っているのです。それは、本来、民間の活力をどう活用するかということを考えるべきであって、今現在、そうなっていないから政府が金を使えばいいという話には、多分、ならない。おそらくそういう議論を、もう少しきちんと組み立てていったほうがいいのではないか。これは非常に難しい議論だと私は思っていまして、簡単ではないです。やはり政治の世界でいうと、都合のいい形でこの理論が使われる可能性はあるので、ぜひ身構えていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
最後、質問です。これで終わります。前回、櫻田委員が独立財政機関設置についてのコメントをされました。その後、経済同友会からペーパーが出ました。私も読みましたけれども、なかなかよく書けています。こういった議論はどこでやればいいのか、というのが私の質問です。
もう一つ、私からも、本日も先ほど神津委員がおっしゃっていましたけれども、将来に向けての少し長い展望をつくるべきではないかということを申し上げました。そうでないと、せっかくここでやっているような細かな議論の積み上げを幾らやっても、歳出、歳入のバランスの問題もありますけれども、それらも含めて全体像がどうなっていくかということを国民にきちっとした形で提示できない。したがって、突き詰めた議論ができないということになりかねないので、そういったロングレンジでの計画をつくっていったらどうか。ただ、今の単年度主義の中ではそれは難しいのだという議論は、一般に言われていますけれども、やり方はおそらくあると思うのです。それが質問です。
先ほどの独立財政機関もそうですし、財政の制度設計についてもそうだと思うのですけれども、どこで議論すればいいのでしょうか。この場だとすれば、できたら、来年、やってみたらどうかというのが私からの質問です。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕起草委員の皆様、本当にご苦労、どうもありがとうございました。
私からは、最近の世界の状況について簡単に申し上げますと、12月12日にイギリスで総選挙がございまして、ちょうど1年後、来年11月3日にはアメリカの大統領選がある。場合によったら、今月末のSPDの党首選によっては、来年春にドイツでも総選挙がある可能性がありまして、これはイタリアも同様な状況です。これから1年、世界で相当選挙が続くと思うのですが、各国の公約を見ても、財政出動、財政を吹かすというのが、本当に昨年来、世界的な潮流になりつつあります。
そういう中で、我が国でも大型補正の話が出ていると思うのですが、ただ、我が国の人口動態は今、人口ピラミッドとは言えない逆ひょうたん型にありますけれども、この状況というのはもう世界に類のない、人類史初めての状況ですから、やはりそういう状況を国民の方にわかりやすく説明するということは引き続き重要だと思います。
今回、プライマリーバランスについて相当詳しく取り上げていただきまして、それがあったので、特に注文をつけなかったのですけれども、以前、財務省が発表した資料でも、プライマリーバランスの内容を人に説明できるほど詳しいという方は、アンケート調査でわずか4%でございます。毎回、プライマリーバランスを詳しく書く必要はないかもしれませんけれども、やはり財政の根幹的な問題、先ほどの少子高齢化の問題とか、プライマリーバランス黒字化の必要性、こういったところは、毎回、わかりやすく執筆して、本当に一般の方、国民の方々にご理解いただくということが、むしろ今後、より重要になってくるのではないかと思います。今回、本当に詳しく書いていただいたので感謝しております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、大槻委員、どうぞ。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
起草委員の皆様、本当にお疲れさまでございました。
2点ほどコメント、感想と、それからお願いごとですけれども、今の平野委員のお話のMMTにも関係するのですが、2年前のシムズ理論に続き、アマゾンを見ていただくとMMTがいまだにベストセラーです。わりに最近出たMMT関連本が、またまたベストセラーでございまして、我々、リテールの証券会社へもぽつぽつと、週1回ぐらいは、日本の財政はMMTがあるのだから大丈夫ですよねという質問が来ます。
なぜかといったら、向こうの論者の方々は布教活動がすごいです。いろいろなところで、オンラインで討論会とかを積極的にやられて発信しているので、ぜひ正当派の論客の皆様が、公開討論とは申し上げないまでも、前にも申し上げたように何らかの発信をされていくことを強く期待したいと思いますし、シムズ、MMTのようにまた何か出てくると思いますので、そのときには早急なご対応をぜひお願いしたいと思います。これだけのものをつくるからには、国民全員を巻き込んだ形で、財政健全化に向かって邁進していくような同意を取りつけ、集めるためには、そういった普及活動が必要なのではないかというのが1点でございます。
もう一点は、参考資料のほうです。文章は非常によく書けていらっしゃって、包括的、網羅的だと思うのですが、参考資料、多分、一般の先生方が学生とかに教えるにはこちらのグラフとか非常に使いやすいと思うので、それが非常に充実しているのはすばらしいと思っております。一方で、やはり実数も多いですし、せっかく本編のほうはメッセージ性が強く、まとまった形で出ていますので、こちらにもストーリー性、難しいとは思うのですけれども、参考資料のほうも一層わかりやすく、かつストーリー性というか、強調したい点がよりわかりやすいような形のものを、漠然とで恐縮ですが、期待したいと思います。
以上、2点です。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
今の参考資料、一応、昔に比べると、これでも大分見やすくなっています。
〔大槻委員〕はい、すごく見やすくなって。
〔増田分科会長代理〕改革の方向性を色塗りにして、入っているものと、そうでないものがあるのですが、参考資料ということもあって、多少、その労力を落としているのかもしれません。今の意見を聞いて、事務当局で何らかの改善がこれからなされると思います。ありがとうございました。
ほかには、いかがでしょうか。大体よろしゅうございますか。
先ほどの平野委員のご質問ですけれども、これは主計局の太田局長、お願いします。
〔太田主計局長〕多分、増田分科会長代理のご理解で、少し考える時間をということで時間をあけていただいたのだと思うのですが、正直に申し上げて、主計局長として答えようとするとなかなかお答えしにくいので、というか建前上になりますので、主計局長ではなくて、長らくこの仕事をさせていただいた人間としてどういうように思うかということでお答えさせていただければありがたいと思います。
基本的には、経済同友会がおっしゃっている話は、結局、国民から税金をいただいて、それをどういうように使うのかということについて、誰がちゃんといろいろな意味での監視をするというか、チェックをするというか、決断をするというか、そういうことをどうするかということで、これはいよいよ主計局長としては言いにくいのですが、私なりの意見は、これまで政治の世界で選挙制度を含めたいろいろな議論がある中で、ある時点において小選挙区制と政党交付金というシステムを入れて、でき上がって、そのある時点での結論で今のような政治の状況ができ上がっていると思っています。
その上で、今のような政治の状況は、国民の皆様が選挙で選択されたということなので、そういう意味では極めて正統性の高いものだと思っていますが、世の中には、それに対して、きちんとした機能が果たされていないのではないかと。それについて、経済財政諮問会議なり、財政制度等審議会なり、そういうところが果たすべきだということはあるでしょう。しかし、財政制度等審議会は財務大臣の諮問機関であり、経済財政諮問会議もそうは言っても政府、内閣総理大臣のもとというような会議体なので、必ずしもそういう機能が果たし切れていないではないかと、いろいろな意味でのご不満からこういうご提言が出て、こういう議論が生じていると思います。
もちろん、第三者的なところをつくって、そこが議論をしてということはあると思いますが、最大は、どこで議論をするかということ、あるいは何を議論するかということではなくて、それをある意味で、政治側がと言うと政治家のことを言っているようですが、我々、行政も含めて、役人も含めてということだと思いますが、それをそのまま受けとめるという状況になるのか、それはそれで一つの意見として聞いているという状況になるのか。やはり最終的な力は、我が国は民主主義国家なので、民主主義国家である以上、国民が選挙で選んだ結果をどういうように受けとめるのかということが非常に大きいところだと思います。
だから、どこで議論するかというのはもちろん大事ですが、どう受けとめるという状況になるのか、許容するという感覚になるのか。それは、政権を持っている側だけではなくて、野党も含めて、国会全体としてどう受けとめるかということをちゃんと意思統一できるか。それが今、そういう状況には、なかなかなっていないということではないかと思っております。
何を答えているかちょっとわからないかもしれませんが、私なりに感想を含めて申し上げさせていただければ、そういうことだと思っております。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
私が余計なことをつけ加えるのもあれですけれども、やはり選挙があって、今、何度か太田局長が言っていた正統性、レジティマシーのほうですが、それが今の日本の民主主義国家の根幹だから、どうしてもやはり国民の選択を最優先するという中で、税金の使われ方が正しく行われているか、配分が正しく行われているかということを考えなければいけない。そういう国民の皆様方の意識に対して、いろいろなところからの働きかけがあるのでしょうけれども、そこをどういうように考えるか、少し、財政の枠組みをもうちょっと超えたところで、いろいろな問題を考えていかなければいけないような気がします。
この財政の議論をする場が、私も財務大臣から諮問を受けたということではあるので、当然、私自身も運営をしていく上で、そうは言っても、できるだけ広目に議論するのがこの場の役割ではないかと思っております。おそらくずっとこれからも、今、お話あった、あるいは平野委員の御指摘も、バックグラウンドとして頭に入れながら考えていかなければいけない問題ではないかと思っています。今回の秋のほうは、12月に編成される来年度予算の建議ということでしょうけれども、春の建議はもっと広い視点でいろいろ議論をすることになっていますので、そういう中で、場合によっては頭に入れておかなければいけないバックグラウンドかと思いました。
それでは、大体よろしゅうございますか。御意見、あるいは感想も大体出尽くしたかと思いますので、議論のほうはここまでとさせていただきたいと思います。
本日は、さまざまな御意見をいただきまして、ありがとうございました。特に、何点かコメントございましたし、これまでの審議を通じて、政府の皆様方もずっとこの審議の様子を聞いていただきましたので、どういう観点で、どういう意見があるかということは十分頭に入れていただいたと思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
それでは、建議の本文のほうでございますが、特に本日、修文にわたる意見はございませんでしたので、お手元に配付しております文章で決めさせていただきたい。いずれにしても、参考資料も含めて会長のほうにご一任をいただきまして、本文のほうはお手元に配付のもので決めさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
〔増田分科会長代理〕それでは、そのように取り扱わせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
最後に、榊原会長から、一言お願い申し上げたいと思います。よろしくお願いします。
〔榊原分科会長〕委員の皆様におかれましては、今回も大変ご熱心にご議論いただきまして、まことにありがとうございました。今回の提言につきましても、会長一任ということで、この後、しっかりとまとめて、大臣に提言するという形にしたいと思います。
また、いつも申し上げていることですけれども、起草委員の先生方に対しまして改めて御礼を申し上げたいと思います。
今回の建議ですけれども、大きく3つのポイントを提言していると私は思っています。
1点目は、令和2年度の予算編成、令和初めての予算編成になるわけですけれども、やはり歳出改革の目安に沿った予算編成を行うということ、厳しい財政規律を土台とした質の高い予算をつくると、この必要性を提言しています。
2点目ですが、先ほど平野委員、それから大槻委員からも御指摘ございましたMMTを含めた論調です。いわゆる低金利下で財政健全化は必要ないといったような論調に対して、この提言では、低金利の恩恵を享受できるのは日本の財政に対する信認が大前提だということで、低金利環境に安住せずに歳出改革を進める必要があるのだということをきちんと主張しております。
3点目ですが、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化の目標を堅持した上で、引き続き財政健全化に向けて、歳出、歳入の両面での改革を進める必要があると提言しています。
この3点が、今回の提言の大きな骨子になると思っております。
また、社会保障をはじめとする各分野につきましても大変密度の濃い議論を行っていただきまして、令和2年度予算編成に向けた歳出改革の方向性を示すことができたのではないかと思っております。
財務省におかれましては、ぜひこの建議を踏まえた形で、しっかりと令和2年度予算に反映していただくようにお願いしたいと思います。
この後、委員の皆様を代表して、起草委員会の先生と一緒に、麻生大臣に対しましてこの建議を手交することになっておりまして、大臣に対しましても、私たちのほうからしっかりと、この建議に沿った予算編成を行っていただくようにお願いしたいと思っております。
本日は、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、以上で本日の議題は終了とさせていただきたいと思います。
会長からのご挨拶にもございましたとおり、この後、会長と起草委員で麻生大臣に建議をお渡しして、記者会見を行う運びとなっております。
なお、本日、お手元に配付しております、右肩に赤字で「会議後要回収」と書いてある建議(案)、それから建議(案)の見え消し版についても、保秘の観点から、会議後、回収させていただきます。お持ち帰りにならず、机の上にお残しいただきますようお願いします。
建議については、本日、事務局において印刷、製本の後、明日以降、速やかに皆様方に送付をする予定でございます。
それでは、本日はこれにて散会をいたします。どうもありがとうございました。
午前9時45分閉会