財政制度等審議会財政制度分科会
議事録
財政制度等審議会財政制度分科会議事次第
令和元年10月9日(水)14:00~16:00
第3特別会議室(本庁舎4階中-412)
1.開会
2.社会保障について①
3.閉会
(注)令和元年11 月14 日に厚生労働省「平成24年度児童手当の使途等に係る調査報告書」が修正されたことに伴い、令和元年10 月9 日財政制度等審議会 財政制度分科会配布資料「社会保障について(総論、年金、介護、子ども・子育て)」を令和元年11月15日に修正しております。
分科会長代理 | 増田寛也 | 遠山副大臣 井上大臣政務官 太田主計局長 阪田次長 角田次長 宇波次長 阿久澤総務課長 日室司計課長 前田法規課長 斎須給与共済課長 森田調査課長 西山官房参事官 寺岡主計官 大久保主計官 佐藤主計官 渡邉主計官 吉沢主計官 関口主計官 八幡主計官 一松主計官 中澤主計官 中島主計官 岩佐主計官 坂口主計企画官 井上主計企画官 飯塚主計企画官 | ||
委員 | 赤井伸郎 遠藤典子 大槻奈那 佐藤主光 角和夫 十河ひろ美 武田洋子 中空麻奈 藤谷武史 宮島香澄 | |||
臨時委員 | 秋池玲子 葛西敬之 河村小百合 木村旬 小林慶一郎 進藤孝生 末澤豪謙 竹中ナミ 伊達美和子 土居丈朗 広瀬道明 別所俊一郎 堀真奈美 神子田章博 村岡彰敏 横田響子 |
午後2時00分開会
〔増田分科会長代理〕今日は冒頭でカメラが入ります。カメラを入れますので、そのままお待ちいただきたいと思います。
(報道カメラ入室)
〔増田分科会長代理〕ただいまから、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたします。
大変お忙しい中、委員の皆様方には御出席をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、社会保障を議題としておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、報道関係の方は御退室をお願いします。
(報道カメラ退室)
〔増田分科会長代理〕それでは、社会保障の審議に入りたいと思います。
初めに、八幡主計官、一松主計官から説明をお願いしますが、今回も会議はペーパーレスで行いますので、もしパソコン等の調子が悪ければ、近くの職員にお申しつけいただきたいと思います。
主計官の2人の説明は極力短くして、審議の時間をできるだけ長くとるような形にいたしたいと思いますが、中身の量が多い事柄でございますので、時間はかかるかと思いますが、30分の説明ということで大幅に短縮することにしてございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、八幡主計官からお願いします。
〔八幡主計官〕厚生労働第一主計官の八幡でございます。
社会保障につきましては、本日と、もう一回お時間をいただく予定でございます。本日は、社会保障の総論、及び年金、介護、子育て分野につきまして御説明を申し上げます。なお、医療につきましては、2回目の機会に御説明させていただきたいと思っております。
では、早速ですけれども、資料2ページをお願いします。
まず、総論についてでございます。
本年度、2019年度予算での社会保障関係費は約34兆円でございます。下段にあります平成最初の1990年度の予算と比べますと、歳出面では社会保障関係費のみが約3倍と大きく伸びておりまして、他の経費はほぼ同額、横置きといった状況でございます。歳入面では、30年前と比較して、税収はほぼ同じ額という中で、社会保障費が増大する分を、特例公債を発行して賄っているという構図が見てとれるかと思います。
続いて、3ページでございますが、今度は社会保障給付費のベースで、同じく30年間の変化を見たものでございますが、足元120兆円を超える水準まで大きく増加をしております。
これを財源面で見たのが右の棒グラフでございますが、70兆円の保険料と、先ほど申し上げた34兆円の国費を含めた公費で賄う姿となっております。しかしながら、国費の部分は国債発行に大きく依存しておりますので、将来世代へ負担の先送りを続けてしまっているという状況でございます。
4ページでございますが、人口構造の変化です。社会保障の関係者の間では2022年問題とも言われておりますけれども、2022年度からは戦後直後生まれの、いわゆる団塊の世代の方々が順次、75歳に到達されます。22年から25年にかけて、真ん中の赤い枠のところでございますけれども、1年当たりプラス75万人となっている部分でございます。
そして、その次に来る問題が、下段の20歳から74歳の支え手側の減少でございます。これは、特に2040年以降、我々も含めた主計官の世代ですけれども、この世代が75歳に到達するころには、毎年93万人程度、支え手から卒業していくことになりますので、今後の社会保障制度の検討に当たって、こうした状況を念頭に置きつつ、検討していく必要があると考えております。
5ページでございますが、さらに高齢者人口の増減の足元の状況を見たものでありますけれども、来年度と、その次の予算編成という意味では、後期高齢者の増加は比較的少ないときでありますので、この間の予算の自然増も少なくなると考えております。
しかしながら、その後、2022年度からは、先ほど申し上げましたとおり、3年にわたって大きな増加の山が来ることが明らかです。制度については、見直してからその効果を予算に反映できるまでは時間がかかりますので、今年の予算編成の段階から2022年度以降の山を見据えて制度改革の議論をして、結論を得ていくことが必要ではないかと考えております。
6ページは、いつも御説明している給付と負担のバランス、いわゆる天の川のグラフと我々は呼んでいるものですが、我が国は近年、給付と負担のバランスが大きく崩れていることを示しておりまして、左上の点線の枠囲いにありますとおり、支え手の増加、負担の引き上げ、それから給付の伸びの抑制といった方策を組み合わせながら、この天の川の上に我が国の位置を戻していくことが必要と考えています。
7ページに、その具体的な項目を掲げております。視点を3つ記載しておりまして、左から給付・サービスの範囲、真ん中が給付の中身の効率化、右側に時代に即した負担と給付といった視点があります。冒頭に申し上げましたとおり、医療は次の機会に御説明申し上げますけれども、この視点を踏まえた検討項目について、本日、順次御説明を申し上げます。
8ページは、前回、森田調査課長からも紹介がありましたとおり、社会保障については、総理を議長、西村担当大臣が議長代理として、麻生大臣をはじめとする閣僚や有識者を構成メンバーとする検討会議が立ち上げられたところでございます。
9ページに、先日、行われた第1回会議での総理の取りまとめ発言と、西村大臣の会見での発言を記載しております。総理の発言にございますけれども、年金、医療、介護、労働など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討していくということになっておりまして、西村大臣の発言では年末までに中間報告というスケジュール感が示されているところであります。
なお、本日、説明は省略いたしますけれども、既に第1回の議事要旨が公表されております。各委員からは、負担と給付の見直しの点についてもしっかりと議論すべきといったご意見も出されております。参考資料2としてつけておりますので、ご覧をいただければと思います。
〔一松主計官〕厚生労働第二主計官の一松です。ここで、年金分野の説明で割り込む形とさせていただきます。
12ページをご覧ください。12ページのとおり、我が国の公的年金は全国民共通の国民年金と報酬比例の厚生年金の2階建てになります。
13ページです。ライフスタイルとともに、制度の適用が移り変わります。
14ページでございます。年金の保険料負担の数字が青字、年金給付の水準がオレンジの字でございますが、まず青字のご負担は賃金水準に連動する形となっております。赤い矢印ですが、我が国では現役の方々に納めていただく、その時々の保険料の収入で給付を賄うという賦課方式を採用しております。そのため、オレンジ色の算定式で算定される新規裁定年金の給付水準も原則として賃金水準に応じて改定され、実質的な価値を保障できる形となっております。
15ページでございます。国民年金の被保険者は20歳から60歳未満の者、厚生年金の被保険者は適用事業所に使用される70歳未満の者でございます。
次に、受給でございますが、厚生労働省年金局の用語法に従って御説明いたします。先ほど、14ページのオレンジ色の算定式による給付を増減なく受け取ることができる年齢が赤字の支給開始年齢でございます。我が国では、基礎年金で65歳、厚生年金については65歳への引き上げ途上でございます。
他方、実際に年金を受け取り始めることができる期間は60歳から70歳まで幅がございまして、支給開始年齢より早く受給を開始すれば繰り上げ減額受給、遅く受給を開始すれば繰り下げ増額受給になります。このように、青字の受給開始時期を選択できる制度になっているところでございます。
マクロの資金の流れを俯瞰したのが16ページでございまして、現行の公的年金制度は先ほど御説明した賦課方式を基本といたしておりまして、積立金は補完的な存在でございます。
続きまして、財政検証の説明に入ります。
18ページ、平成16年制度改正に基づきます年金財政のフレームワークを御説明いたします。左側に収入、右側に支出がございまして、長期的に負担と給付を均衡させる意味で、天秤の図が描かれております。平成16年制度改正によりまして、からにありますような上限を固定した上での保険料の引き上げ、基礎年金国庫負担割合の引き上げ、積立金の計画的な活用という形で、天秤の左側が固定される一方、右側の年金支出がマクロ経済スライドを通じて調整されまして、長期的な収支均衡が図られる仕組みとなったところでございます。
19ページは、そのマクロ経済スライドの説明でございます。下にイメージ図がありますけれども、人口構造が変化していきますと、支えられる側の平均余命の伸びが年金の給付の増要因となる一方で、支え手が減少し、負担面の保険料収入の減少要因となり得ます。給付と負担を均衡させるため、こうした人口構造の変化の影響につきまして、年金給付の調整でバランスをとる仕掛けがマクロ経済スライドになります。
財政検証について、20ページでございます。中ほどの赤字の部分をご覧いただきたいのですが、少なくとも5年ごとに財政見通しを作成いたしまして、年金財政の健全性を検証することになっております。令和元年度の61.7%という所得代替率を下に書かせていただいていますが、この率が次の財政検証のときまでに50%を下回ると見込まれる場合にはスライド調整を終了し、給付と負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずることとされております。
21ページが、本年の検証結果でございます。右上の水色の箱をご覧いただきたいのですが、人口の前提を前回の財政検証と比較しますと、足元の出生率が向上したことで将来の見込みも上向くというプラス要素がある一方で、平均寿命が伸長するというプラス要素を減殺する要素がありますが、全体としては年金財政に追い風になっております。
その下の点線の箱に書かれているとおり、労働力の受給の推計が財政検証の労働力の前提になっておりますが、足元の就業者数の増加、これも年金財政の追い風となっているところでございます。
具体的な検証結果は22ページにございまして、6つのケースが書かれており、それぞれ対等という位置づけでありますが、よく引用されるケースⅢをご覧いただきたいと思います。
ケースⅢの左側の点線の箱ですけれども、内閣府試算の成長実現ケースに接続して3つのケースがございまして、その中で控え目な経済前提となっているのがケースⅢでございます。このケースⅢにおきまして、マクロ経済スライド調整終了後の所得代替率は50.8%と50%以上を確保する見通しとなっている次第でございます。
23ページです。上の箱ですが、平成25年8月に、社会保障制度改革国民会議報告書が出されまして、それを契機といたしまして、制度改正に資するような検証も行うこととされております。年金財政検証に伴うオプション試算というものが行われておりまして、今回は2度目となっております。主な結果は、このページに整理しておりますが、この後、個別に御説明させていただきたいと思っております。
続きまして、年金分野の課題に入ります。
25ページは、本年6月の骨太方針の抜粋でございまして、太字のとおり、被用者保険の適用拡大、繰り下げ制度の柔軟化、在職老齢年金の見直しという3点の課題が具体的に示されています。いずれも、財政的な視点ではなく、多様な働き方を後押しするという観点からの課題と受けとめております。
26ページでございます。被用者保険の適用拡大でございます。上の箱の1番目の丸にありますとおり、第1号被保険者の実態といたしまして、被用者でありながら被用者保険の保障を受けられない方が増加しております。こうした短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大が2016年10月からなされております。
中ほどをご覧いただきますと、その適用要件を赤字で書いておりまして、(5)の太字のところでございますが、従業員501人以上の企業におきまして、(2)月収8.8万円以上などの要件を満たす短時間労働者が拡大の対象となりました。
右に目を移していただくと、ですが、任意的な適用拡大がなされまして、また、にありますとおり、法律上、本年9月末までにさらなる適用拡大について検討を行うこととなっておりまして、先月、厚労省の懇談会で報告書の取りまとめが行われたところでございます。
このさらなる適用拡大について、27ページをご覧いただきたいと思います。左側の図の青い部分の左下のはみ出ている部分のとおり、週20から30時間の短時間労働者で、既に40万人程度が先ほどの適用拡大の対象となっている中、企業規模要件等の見直し等によりどこまで拡大できるかという、オレンジで塗り潰した部分が鍵になっております。適用拡大の意義として、上の箱の太字部分で被用者の将来の所得保障を充実するとありますが、その内容について被保険者本人の給付・負担の変化としてお示ししているのが右の図になります。短時間労働者が国民年金から厚生年金保険に移行することで、保険料の支払いが全額個人負担だったものが会社との折半になる一方、受給額は基礎年金に加えて厚生年金の報酬比例部分を受給できる形になります。また、※にありますとおり、第1号被保険者のうち、未納等により低年金リスクを抱えていた方にとっても、将来の年金権が確保されることにも留意する必要があります。
28ページでございます。この適用拡大によりまして、将来的には基礎年金の給付水準が改善いたしまして、適用拡大の直接の対象者以外も含めて、幅広い年金被保険者に裨益していくことになります。
上の箱の1つ目の丸にありますとおり、短時間労働者が厚生年金の加入者になりますと国民年金の1人当たり積立金が増加することが、基礎年金の給付水準の改善の理由となります。そのイメージ図が2つ左側に描かれております。このことが幅広い年金被保険者に裨益することは、右側のイメージ図の黄色い矢印、黄色い斜線、上の2つの赤囲いに書かれた文字の部分で示されています。所得再分配の機能も強化されます。
右下でございますが、先般の財政検証のオプション試算では、先ほどのケースⅢの50.8%の所得代替率が、被用者の適用拡大による基礎年金の給付水準の改善によりまして、51.4%まで上昇するとの結果でございました。これは、現行の企業規模要件、従業員501人以上を撤廃した場合の試算になります。
2つ目の課題が、29ページの繰り下げ受給の柔軟化でございますが、年金の受給開始時期を選択できることは先ほど説明させていただきました。左側の表で、70歳では42%といった繰り下げ受給の現行の増額率などについてお示ししているところでございます。
右側でございますが、財政検証のオプション試算では、現行の増額率のままの場合、70歳まで働いて受給すると、所得代替率が76.1%まではね上がることが示されました。これは、その下の図の青の矢印で示されております現行の繰り下げ受給による増額率42%に加えまして、オレンジの矢印のとおり、厚生年金の拠出期間が延びる効果が加わるためでございます。なお、モデル年金と比較する場合、モデル世帯は60歳まで厚生年金に加入することが前提となっておりますので、ここでの76.1%には60歳から70歳まで厚生年金に保険料を拠出する効果が反映されていることになります。さらに制度改正をして、受給開始時期について75歳も選択可能といたしまして、75歳まで繰り下げて受給する場合について機械的に試算いたしますと、所得代替率は実に95.2%まではね上がるといった試算が示されているところでございます。
30ページをご覧ください。同じ計算をしていきますと、足元で所得代替率が61.7%、将来的にはケースⅢで50.8%まで調整されると御説明した点につきましても、今、20歳の若者の場合で申し上げますと、66歳9カ月まで働きまして、そこから繰り下げ受給すれば所得代替率61.7%と、今と同じ所得代替率を享受できることが財政検証で示されています。しかも、平均寿命は延びていますので、平均受給期間が短縮されることもありません。これは、20歳の方に限らず、ケースⅢで見込まれておりましたマクロ経済スライドの終了年度ごろに65歳となるような方についても、同様の試算が成り立つと承知しております。就業機会を確保し、長く働ける社会を構築し、その中で繰り下げを選択して給付水準を上げていただくことを目指すことが重要と考えております。
そして、3つ目の課題が31ページの在職老齢年金制度の見直しでございます。在職老齢年金制度、略して在老でございますが、65歳以上の方々の例で申し上げますれば、賃金と基礎部分を除いた厚生年金の合計額は、黄色で塗り潰している部分の47万円になるまでは年金を全額受給できますが、47万円を超えますと徐々に年金額が支給停止されるという制度でございまして、右上にイメージを図で描かせていただいております。
支給停止の対象者数、総額につきましては、最新の数字を左側の表に載せております。
上の箱の2つ目の丸のとおり、高齢期の就労を促進する観点から、将来的な制度の廃止を展望しつつ、縮小を行うことが課題になっています。※にありますような繰り下げ受給との関係性もございます。ただし、3つ目の丸にありますとおり、年金が支給停止されている方々は受給権者の1.5%と限られている点に留意が必要でございまして、年金財政のフレームワークのもとでは、在老の縮小や廃止を行う場合、高収入の受給者に追加的な給付を行う一方で、モデル世帯を含めまして、相対的に収入が少ない将来の受給者の給付水準が低下します。右下の青枠は、先般の財政検証に伴うオプション試算の結果でございまして、65歳以上の在老につきまして、47万円の基準額を一定程度引き上げた場合、所得代替率はマイナス0.2%、高在老、65歳以上の在老でございますが、廃止した場合で0.4%の低下となります。高所得者優遇との批判が生じ得ることも踏まえて、検討する必要があると思っております。
〔八幡主計官〕続きまして、介護でございます。33ページをお願いいたします。
介護保険は、2000年に制度が施行されて以来、約20年たっておりますけれども、この間、総費用が約3倍、65歳以上の第1号保険料も当初の3,000円弱から6,000円近くまで上昇しております。今後も、その費用、保険料とも大きな伸びが見込まれる中で、持続可能な制度とするためには、さらなる見直しは避けて通れないところでございます。介護保険制度は、3年ごとに事業計画を立てて、その間の費用の見通しのもとに保険料をセットするという構図になっておりまして、通常、2年目、今年度に当たるわけですけれども、次の3年間の事業計画期間を念頭に制度改正を検討し、必要な法令改正を行うことになっております。ちなみに、その翌年度に報酬改定を検討するというサイクルになっています。
34ページでございますが、介護分野の主な改革項目について、先ほど申し上げた3つの視点で整理しております。中段には、これまでやってきた改革を記載しておりますけれども、今後、さらに取り組むべき事項としては下段の色を塗ったような項目があり、本日はこれについて、順次、説明をしたいと考えております。
ページをおめくりいただきまして、視点1、給付・サービスの範囲の見直しということで2点挙げております。
まず、36ページでございますけれども、ケアマネジメントの利用者負担の導入でございます。左側の円グラフにありますとおり、介護保険は基本的には1割の自己負担のほか、9割が保険給付されるという仕組みでありますけれども、在宅のケアマネジメントだけは例外的に自己負担がゼロとなっています。自己負担がない理由は、その下の3年前の社会保障審議会の意見にも記載がありますけれども、ケアマネというのは制度創設時に新しく導入されたサービスで、その普及のために自己負担をとらないという形でスタートしたものでありますが、制度創設後、もう20年たっておりまして、右の表にも事業所数や受給者数の増加を示しておりますけれども、今では新たなサービスという状況ではなくなっております。また、ケアプランの作成は1件当たり約1万2,000円かかると言われていますけれども、利用者負担がありませんので、利用者のほうもあまり関心がない状況となっています。ケアプランの質にもばらつきがあって、利用者による評価を通じた質の向上も期待されるという指摘もある中で、そろそろ利用者負担も導入すべきではないかということであります。
37ページでございます。軽度者へのサービスの地域支援事業への移行です。左側の図をご覧いただきますと、青く色づけされているのが、いわゆる要介護者への保険給付と要支援者への予防給付ですけれども、このうちの要支援者への通所・訪問介護サービスについては、既にその下の地域支援事業という枠組みに移行しております。保険給付は、人員や施設基準と要件も画一的とならざるを得ない一方で、事業のほうは地域の実情に応じて柔軟にできますので、後ほど先進事例も紹介しますけれども、軽度の方々に対しては、きめ細やかで、より充実したサービスが提供できるという指摘もあります。そうした現場の方々からは、要介護1の方々につきましても地域支援事業として実施するほうが、より効率的、効果的なサービスが提供できるといった指摘もあるところでございます。
さらに、次の視点2で2つ挙げております。
最初の39ページをご覧ください。ここは、今申し上げた、既に移行した地域支援事業について、さらに有効活用していこうということであります。
資料の右側ですけれども、大阪府大東市の例を挙げています。大東市では、さまざまな試みをされています。ここでは通所サービスの例だけを挙げておりますけれども、極めて柔軟な形でサービスが提供されております。例えば、実施主体は自治体、老人クラブといった多様なものでありますし、サービス内容も地域の実情、特性に合ったものとして提供されております。ここでは掲げておりませんけれども、訪問介護などでもさまざまな地域オリジナルの工夫した形で実施されております。
右下の図のように、青い棒グラフの部分が従来は介護予防給付だったものが、オレンジの部分、これは地域の実情に合わせた多様なサービスであるいわゆる緩和型の地域支援事業ですけれども、あるいは完全に介護保険の外、自立などに移っていくといった成果もあらわれているところです。もちろん、大東市のほかにもいろいろな事例はありますけれども、さらに多くの市町村でもこうした先進事例を見ながら横展開ができれば、より効果的・効率的なサービスにつながると考えられるところでございます。
40ページをお願いいたします。今のように頑張っておられる保険者への支援のあり方という観点でございます。2つ比較表を挙げておりますけれども、従来よりご紹介しているものでありますけれども、上の段は要介護認定の率、下のほうが1人当たりの保険給付額の都道府県別の比較になっています。地域でばらつきが出る理由というのはいろいろあるものと思いますけれども、保険者、自治体の努力では何ともできないところもあるとは思いますが、やはり平均から大きくかけ離れている地域は少し意識して頑張ってもらったほうがいいというところもあるのではないかと思います。
その上で、次の41ページをご覧いただきますと、平成30年度から保険者、自治体がさまざまな保険者努力をするということで、インセンティブが湧くようにインセンティブ交付金というものを200億円、予算措置し、市町村、都道府県に交付しているところです。この交付金の配分基準は厚労省がつくっておりますが、それによる具体的な得点獲得状況を見ても、必ずしもあまり望ましい結果になっていないのではないかというところです。
この表の見方ですけれども、青い棒グラフの左側の長いところが得点の高かった自治体になりますが、2番目のところに、先ほどあまり望ましくないと申し上げた大阪府とか、もう少し右に行くと和歌山県とか、認定率や1人当たり給付費が必ずしもよくないところが並んでおりまして、あまり相関関係がないのではないかと思っております。
点数の中身についても、会議をつくったとか、何かをやったという、いわゆるアウトプット系のものが多く、アウトカムの指標の配分点が小さ過ぎるのではないか。そのために、保険者としての頑張り方も必ずしも正しい方向に向かわないのではないかと考えられますので、せっかく今、200億円もの予算がありますので、今後も措置するということであれば、もう少し頑張るインセンティブが湧く形で点数を見直していく必要があるのではないかと考えております。
42ページ、保険者のインセンティブの関係でもう一つあります。先ほどのインセンティブ交付金というのは、別に予算を措置するものだったわけですけれども、こちらはそもそも介護保険制度にビルトインされている、調整交付金という仕組みを使ってはどうかというものであります。上の論点の箱に、ちょっと小さい字で参考として骨太の方針2019の記述を載せておりますけれども、調整交付金の活用につきましては第7期中、つまり今、検討して結論を得ることになっております。
具体的な方策は、例えば下の左下端のようなパターンで、調整交付金の一部を留保して、それを努力に応じてAからEの保険者に配分するといったこともオーソドックスには考えられますし、ほかにもいろいろあると思いますけれども、いずれにせよ具体的な結論を得ることが必要ではないかと考えています。
それから、ページをおめくりいただきまして、視点3として公平な負担と給付ということで、44ページをお願いいたします。利用者負担のさらなる見直しという項目ですけれども、左の図をご覧いただきますと、制度の基本的な話ですが、介護保険費用は、今、11.7兆円です。これにつきましては利用者が原則1割負担して、残りを保険料と公費で賄う仕組みになっております。この利用者負担については、原則1割に加えまして、所得に応じて2割、3割の負担も順次、導入されたところですけれども、右下の実効負担率を見ていただきますと、今、足元7.8%となっております。今後、保険料がますます増加していく中で、制度を持続可能なものとしていくためには、この利用者の負担についても見直しが必要ではないかと考えております。
45ページでございます。多床室の室料負担の見直しであります。2005年度の制度改正の際に、施設サービスの食費や個室の居住費は保険給付の対象外、すなわち利用者負担とする改正を行っております。また、2015年には、特養においては多床室についても居住費を自己負担する改正を行っております。
一方で、右側ですけれども、保健施設のほか、いわゆる医療系の施設については、今、個室だけが自己負担となっておりまして、多床室は依然、保険給付の中に入っております。最近は、介護医療院という施設もできておりまして、これは生活の場と位置づけられていることから、介護保険施設全体の室料負担について、保険給付ではなく利用者負担とするという方向で見直すことも必要なのではないか。
次に、46ページでありますが、介護分野の最後でございまして、補足給付の見直しというテーマになります。先ほど申し上げました施設サービスの食費や居住費を利用者負担とする改正を行ったときに、低所得の方につきましてはこれらの費用を保険から給付することとしておりまして、これを補足給付と呼んでおります。この補足給付につきましては、2014年の制度改正により、所得だけではなく、対象となる方の資産についても着目するということで、左の表の補足給付の対象範囲の差の枠の下に書いておりますけれども、預貯金等が1,000万円以下であることを要件としまして、それ以上の預貯金がある方は補足給付の対象とはしないということにしております。社会保障の分野で、所得以外に資産についても勘案するというのは、かなり先駆的な考え方ではないかと思っていますけれども、資料右側にありますように、施設での生活にかかる費用等を踏まえまして、この1,000万円という水準が適切かどうかについては、検討していくべきではないかという論点でございます。
最後に、子育ての分野でございます。48ページをお願いいたします。子ども・子育て支援の予算額の推移のグラフを示しています。子育て関係については、我が国は長らく、高齢者への給付に比べると相対的に支出が少ないのではないかと言われてきたところです。ただし、2010年ごろから、民主党政権時代の子ども手当の創出で現金給付分が大きく増加しておりまして、その後、消費税率引き上げの財源を使いまして、保育サービスの充実などにもかなり予算配分がされてきているところです。
子育て支援施策は、引き続き重要と考えておりますし、まだまだ十分でないという指摘もありますが、その一方で、こうした急速な支出増の中で、予算の中身自体はやはり丁寧に見ていかなければならないと思っておりまして、しっかりと精査していく必要があると。
そうした観点で、2つ挙げております。まず、49ページの児童手当の関係です。所得が高い方への児童手当の支給の問題で、概要の下段に主たる生計者の年収が960万円以上の場合というところがありますけれども、当分の間の特例給付としまして月5,000円が給付されております。総額では、右端ですけれども、553億円に上っております。本年10月からは、幼児教育・保育の無償化もスタートしたところでありまして、果たしてこうした給付が真に子育てについて必要な施策になっているのか、改めて検討すべき時期が来ていると考えております。
そして、50ページでございます。同じく、児童手当の所得の関係ですけれども、親の所得の判定につきましては、今は先ほど申し上げました主たる生計者で見ておるわけですけれども、左側にあるバッテンの図にありますとおり、今、専業主婦世帯と共働き世帯は従来とは逆転しておりまして、どちらを標準として見ていくべきか。右上の表にありますけれども、例えば夫800万円、妻400万円の年収という場合、つまり世帯としては収入がかなりある場合もフルに児童手当が支給されるという状況であります。先ほどの高所得者への特例給付とあわせまして、同じ子育て関係の給付でも、真に必要な人への給付という原点に立ち戻って、支出の内容についても考えていく時期が来ているのではないかと考えています。
最後に、51ページでございます。少し細かい点ではありますけれども、保育の公定価格の見直しについてであります。右側に2つ棒グラフがありますけれども、土曜日と平日の保育所の利用実態を見ると、当然ながら土曜日の利用者は少なく、その分、職員の配置も少なくなっております。一方で、公定価格の算定は土曜日も平日も同じになっているところが多いなど、少し丼勘定のような実態になっているのではないかと思われます。全体として保育関係の予算は伸びていく中で、やはりその中身については少し丁寧に精査して、必要に応じて見直しも行っていくことが必要ではないかと考えております。
以上、駆け足でございますが、社会保障の1回目、本日の説明は以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
本日は、総論とそれから年金、介護、子育て、この分野について議論を行う、そして医療については次回と、こういうことにいたしたいと思います。
これから質疑に移っていきたいと思いますが、お手元に意見書が配られていると思います。神津委員、櫻田委員、本日、欠席でありますが、お手元に配付をしてございますので、お目通しをいただきたいと思います。
それでは、ご意見ある場合には、ネームプレートを立てて合図をしていただきたいと思います。中身は総論とか、年金とか、幾つか分かれておりますけれども、幾つかの項目にまたがる場合でも、指名された方は全部まとめてお話をしていただきたいと、初めはそういった形で進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、ネームプレートを立てて合図していただければと思います。佐藤委員、進藤委員、末澤委員と、そちらのほうから行きたいと思います。よろしくお願いします。
〔佐藤委員〕
では、まず年金からですが、今、話題の在老についてです。在老について、これが高齢者の就労の阻害になっているかどうか、いろいろな実証分析があるのですが、現行を見ると、どちらかというと60歳から64歳のところ、ここはやはり何ら措置が必要かもしれない、就労の阻害要因というのは出ているかもしれないけれども65歳以上は必ずしも確定的ではないということがあると思います。したがって、もし見直すのであれば、優先的に見直すとすると、2025年にはなくなっていくので、どちらかというと前倒し的な措置ということになりますが、在老を見直すのであれば60歳から65歳未満のところ、ここが多分、当面の焦点になるかと思います。
ただ、それにあわせて、例の1兆円の財源をどうするのだという話もありますとおり、ほかの制度の見直しがやはり必須であります。例えば、税制であれば、本来は公的年金等控除を見直して、そこから財源を調達するか。あるいは、何度かここでも議論は出ていたと思いますが、基礎年金のところ、クローバックを入れて、そこから財源を捻出するか。
それから、金融資産の話が、介護の自己負担のところで、補足給付のところで出ていたと思うのですけれども、本来は金融資産も考慮して年金受給の調整もしなければいけない、受給額の調整もしなければいけない。そういったところの工夫が要るのかなと思いました。
社会保険料ですけれども、1点、気をつけるべきことは、27ページ、適用範囲の拡大というのは構わないのですが、これは1事業所当たりで4分の3であるとか、週20時間以上とかという基準です。ところが、今、フリーランスとか、非正規で、複数事業所で働く人もいます。したがって、合計するとこの基準をクリアするかもしれないけれども、各事業所の労働時間、給与が少ないので、適用の対象外になります。なので、これからこういう働き方の多様化ということを考えると、本来であれば1事業所からとるというよりは、合算してとるという仕組み、社会保険料も所得税同様、所得を合算して、それに応じて保険料を徴収するという仕組みがなければいけないのかなと思いました。
最後に1点だけ、介護事業者ですけれども、今日、お話がなかったのですが、事業者の効率化、IoTとか、ICTの導入に当たって、事業者の大規模化、介護事業者の大規模化をこれから図っていく必要があります。もちろん、受給者側のインセンティブにどう働きかけるかという議論も大事ですが、提供者側の効率化をどうやって促していくかと、この視点も必要かなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
進藤委員、お願いします。
〔進藤委員〕ありがとうございます。
毎回申し上げているのですけれども、やはり負担できる人が負担するという原則を貫徹しないと財政再建はできないわけで、社会保障などもその原則をしっかり徹底していく必要があるということだと思います。
そういう意味で、3点、申し上げます。第一に、高所得者への児童手当の特例給付についてです。これは毎年言っているのですけれども、現在、主たる生計者の年収が960万円の場合が給付対象となっていますが、960万円という所得は決して低い額ではありません。それなりの企業で、課長になり始めが960万円ぐらいだと思いますけれども、そういう人たちが月5,000円ずつもらうということは本当に意味があるのかどうかということ。それから、主たる生計者の年収で判定されるので、共稼ぎの場合、それより多い所得でも児童手当を受けることもあるわけです。その財源が今、550億円規模になっているということであれば、このお金はもっと有効に使えるのではないか。もっと所得の低い人のところにもう少し増やすとか、そういう使い方のほうが社会としては合理的なのではないのかということです。子供を育てるための給付を減らすのかということに対して非常に感情的な違和感はあるのですけれども、やはりそれを乗り越えて見直さないといけないということが1点です。
それから、2点目は同じような考え方ですけれども、在職老齢年金制度の見直しについてです。これは年金を払っていけば、労働力が、労働供給が増えるのかが問題なわけですが、実際には、必ずしも明確ではないと思います。この制度を見直すことによって、高齢期の就労を促進するという意見もあるわけですけれども、これも負担できる人が負担するという原則に従って、年金は要らない人は要らないということであれば、今の制度のままでよいのではないかと私は思います。
3つ目は、ケアマネジャーのための費用の件です。在宅ケアのプランをたてるということが、介護サービスそのものなのか、あるいは介護サービスのためのプレ営業や紹介のようなものなのかという考え方の違いですけれども、今日、説明を受けた通り、20年たってそれなりの位置づけが明確になってきているということであれば、ほかの介護サービスと一緒に同じ負担にしていく、これは意味があると思います。最初に聞いたときに、計画をたてるのは、やはり介護そのものではないかと、私も考えたんです。介護サービスを得るための準備として計画をたてる必要があるのなら、これは介護の一部ではないのか、介護サービス自体が1割負担にしているということであれば、それと同じ形にするというのは理屈があると、こう思った次第です。
以上、3点です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
末澤委員、お願いします。
〔末澤委員〕それでは、年金と介護と少子化対策と1点ずつ申し上げたいのですが、年金につきましては、今、お二方からもお話ありました在職老齢年金についてです。ここは、私は慎重に検討すべきではないかと思っています。私事ですが、私、1961年に生まれておりまして、1961年から老齢年金の受給が65歳に変わります。だから、ちょうど私の代から新制度に変わるということです。
そういう面で見ると、世代間の格差是正と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、今の方々は、2019年度の所得代替率は61.7%ということです。それが、ケースⅢというやや楽観的なシナリオでも、このままいくと2047年は50.8%に下がる。これが、先ほどのオプション試算で62万円に引き上げると50.6%、廃止すると50.4%と。先ほど佐藤委員もおっしゃっていましたが、64歳以下にすると、下手すると50%を割る可能性もあるわけです。
ある面、ぎりぎりの状況で、これからの現役世代は50%いただけるかどうかわからない状況で、あえてこのタイミングでそういう特例を見直す必要があるのか。私は、今の若い方々にマイナスのアナウンスメント効果を及ぼす可能性があるのではないかと思っています。そういう意味では、今の高齢で元気で、たくさんもうけていただいている方々には引き続き頑張っていただいて、むしろ賞状でも出したほうがいいのではないかと思っております。
2点目は介護のところですけれども、ちょっと全般の話ですが、実は介護業といいますか、このビジネスというのは、多分、今、日本では数少ない成長産業だと思うのです。今後、どんどん増えてきます。通常、成長産業というのは、いろいろな他業種から参入が相次ぎますし、もともとあまりノウハウがない方々も、当然、入っていらっしゃる。一方で、今、人手不足が相当深刻化しています。先般、日銀短観でも、最も人手不足が深刻だったのは中小企業非製造業、これはもうバブル期並みの人手不足です。この状況でどんと入ってくると、多分、相当質のばらつきが出てくる。しかも、この業種は高齢者を対象にしておりまして、ある面では生命の安全にも相当影響してくる。災害対応、インフルエンザの対応と、ですから、ここは相当きっちりチェックしていかないと、サービスと受益と負担の関係も相当いびつになりますし、場合によっては、本当にいろいろな事件、事故が起こりかねないということで、私は横軸をきちっと入れるシステムを早く策定すべきではないかと考えております。
最後に、少子化対策、子ども手当等のところですけれども、今日は企業の経営者の方々も多いと思いますので、今、企業が仮に社運のかける設備投資をするとしたら、相当迷っていらっしゃる。家庭にしてみると、子供をつくって育てるというのは、ある意味20年計画ですから、企業にとっての本当に社運をかける設備投資と同じ効果があると思います。これに対して、例えば今、米国、欧州でも起きていますけれども、今、米中貿易戦争があって企業は設備投資に相当慎重になっている。毎年、制度が変わっていくのでは20年の大規模な投資はできません。つまり、少子化対策というのは、場合によっては超党派で、10年、20年変えない仕組みをつくる。それこそ、場合によったら憲法改正していただいて、そこにきちんと条項をつくるぐらいの制度設計をしないと、なかなか一般の今の若い方がそれを信用してお子さんをつくる、ないし子育てをやっていけないのではないか。私は、ちょっとここは疑念を持っておりますので、従来とは違う、よりレベルの違うところで、次元の違う政策展開をぜひ期待していたいと考えております。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
武田委員、お願いします。
〔武田委員〕御説明いただきまして、どうもありがとうございます。
意見は2点でございます。1点目は総論についてです。全世代型社会保障検討会議が始まったとご紹介いただきましたけれども、給付と負担のバランスの見直しを含めて、制度改革をぜひしっかり進めていただきたいと考えております。その際に重要なことは、先ほど進藤委員も同様のご意見をおっしゃっていたかと思いますが、社会保障のあり方、原理原則に立ち戻ることではないかと考えております。私は、小さなリスクは自助で、大きなリスクは皆で支えるという原則に基づき、社会保障の制度のあり方をもう一度見直して、その原則のもとで改革を進めることが大切ではないかと考えます。
2点目は、高所得者層への児童手当についてです。今、原理原則と申し上げましたけれども、私は、子育て支援は非常に重要だとは思います。しかし、限られた財源の中、果たして高所得層に、幼児教育の無償化も始まった中で、さらに追加で児童手当を続けることが原理原則に基づきどうかという点については、立ち戻って考えるべき、つまり見直しすべきではないかと考えております。真に必要な世帯へ、つまり大きなリスクを抱えていらっしゃる世帯への給付という形に改革を進めていただきたいと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
土居委員、お願いします。
〔土居委員〕消費税率も10%に上がって、社会保障・税一体改革が一段落して、これから全世代型社会保障の改革に新しくかじを切っていくという局面ですので、やはり何人かの委員もおっしゃったように、社会保障改革の原則をまずきっちり打ち出して、単にとれるところからとるとか、削れるところから削っていくというようなことではなくて、将来、こういうような社会保障のあり方を目指して、その過程での一つ一つの改革であるということをしっかり打ち出していくことが大事だと思います。
そういう意味では、資料の7ページにあるように3つの視点、これは従来、この財政制度等審議会でも掲げていて、よく添付されていて、建議にも入っている我が国の医療、介護制度の特徴と課題という資料、今日は入っていないのですけれども、こういう資料もあわせて示しつつ、この3つの視点が大事であり、こういう改革策が必要なのではないかということを訴えていくことが大事だと思います。
まず、既に何人かの委員がおっしゃっているところは簡単に省略して、在職老齢年金についても、私は何人かの委員がおっしゃったように、公的年金等控除の縮小とか、クローバックの仕組みを導入するなど、中高所得層が有利になるというような印象を持たれないような形で、制度の簡素化は大事ですけれども、所得再分配への配慮は必要だと思います。それから、児童手当の特例給付についても、もう早期になくしたほうがいいのではないかと思います。
まだお触れになっていないところについて少し言及したいと思いますけれども、介護についてです。主計官から御説明がありましたけれども、これは実は今の第7期の計画期間に向けた制度改革でも同じようなメニューを提示したけれども、結局、あまり採用されなくて宿題として残されているものばかりと、私から言うとそういうようにしか見えないわけでありまして、第8期の2021年度からは、これらがかなりの部分、反映されるような形で、しっかり制度改正をしていていただきたいと思います。
主計官は非常に謙虚に御説明されたのですが、36ページにありますケアマネジメントに自己負担がない理由というところで、この引用元は介護保険制度の見直しに関する意見という社会保障審議会の介護保険部会の意見書であります。当時は私もその委員をさせていただいて、この引用された部分の後ろに、利用者負担導入に反対する立場から以下のような意見があったということと、利用者負担導入に賛成の立場から以下のような多くの意見が出されたと明記されておりまして、どちらが多い意見だったかということがはっきりしているのが平成28年12月の段階だったということです。残念ながら、第7期の今の計画期間では、ケアマネジメントの1割自己負担は実現できなかったということでありますから、これはもう徳俵一枚残っているだけですので、最後はしっかり、今回は寄り切って1割負担を導入していただきたい。既に財政審のみならず、社会保障審議会介護保険部会でも多くの意見が賛成ということでありますから、ここでためらうことはないのではないかと思います。
それから、補足給付の資産勘案でありますけれども、資産勘案を導入するというのはほかの制度でもなかなかない中で1,000万円という線引きをした。これは切りのいい数字だということであります。ただ、実際、1,000万円の資産勘案によって、補足給付をしないことになった方が一体どれぐらいいらっしゃるのかというと、なかなか統計もないようでありますし、私もさらに多くの人が対象者になったというようなことは聞いておりません。そういう意味で言いますと、資産勘案を入れたというのは重要なのですけれども、あまり実効性がないというのが実情ではないかと思いますから、もう少し実効性のある形で資産勘案の金融資産の閾値を下げるという形で、実効性を担保していただくことが大事なのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、中空委員、お願いします。
〔中空委員〕ありがとうございます。
常日ごろ金融市場にいますと、金融市場には諦め感が出てきていると感じます。何かといいますと、今は金融緩和の原則ということが基本であり、その金融緩和もし過ぎましたので、この後は金融政策から財政政策にシフトするとみんな思っている、ということなのです。つまり、財政再建をしていきましょうというこの会の趣旨とは違って、きっと財政は増えてしまうだろうと思っている諦めということです。
多分、そうなるだろうということを覚悟した上で、やはりここは質を担保しなければいけないだろうと思います。今年に関しても、財政を見直し、こういういいことをやりました、こういう目玉がありましたということを、財政制度等審議会の場として何らかけん引していくべきではないかとは思っています。
その中で、皆様おっしゃってきましたが、給付と負担のバランスについてもきちんと見直しましょうということは欠かせません。その中で、1つ質問があります。27ページです。先ほど来、今度、適用のところを広げていきますという話ですが、そもそも論として、非適用業種がなぜここに決まってきたのかよくわからないところがあります。今日は、時間も短いので難しいかもしれないですが、もし非適用業種になったところのそもそもの理由が何か明確にわかるのであれば教えてください。これが1点、質問です。
もう1点だけお話をしたいのですが、44ページ、先ほど土居委員も触れられていましたが、若年層の保険料負担の伸びの抑制に加えて、高齢者間での利用者負担と保険料負担との均衡を図ることが必要というページがあります。この話を聞いていて、私、一つ思い出したことがありまして。つい先般、セミナーをしたら、お年寄りの人が多かったのですが、その中から質問が出ました。何かというと、「自分は介護を受けたことがないのに保険料は上がっていく、これはいつか返してもらえないのか」という質問で、そうだろうなと思いながら聞いていました。また別の方から言われたのは、「消費増税になりました、ポイント還元と言っている。でも、自分はそういうのはうまく使えないので、結局、現金を払っている。今、やっていることは高齢者からお金をとることではないかと、素朴に思っている」ということでした。
申し上げたいのは、財政再建ということを考えるとき、世代間ギャップとよく口にしますが、世代間ギャップに加えて、実は世代内ギャップも結構な方々が感じているのではないかということです。なので、この点についても少し認識を払っていく必要があるのではないかと思って申し上げました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕1点目の関係は、一松主計官、この場でわかりますか。
〔一松主計官〕最近、社会保障審議会年金部会、あるいは被用者保険の適用拡大に向けた懇談会なども開かれており、その中での説明でも同じですが、基本的にはかなり経緯のある話であり、私のほうが今、ここでたちどころに論理的に明確に説明できるような内容ではなさそうであるということを申し上げておきたいと思います。今回も適用拡大の議論の中で、非適用業種について、どこを適用拡大していくか、例えば、士業みたいなものは適用拡大してもいいのではないかという議論になっていますけれども、このようにやや漸進的な経緯、その時々の経緯によって広げてきたきらいがあると理解しています。
〔増田分科会長代理〕それでは、この場はそういうことで、よろしくお願いします。
それから、堀委員。
〔堀委員〕総論のところにもありますが、多様な働き方を認めて、人生100年時代に相応する制度設計ということだと思いますし、全体として示されている流れは賛成です。ただ、年金のところ、今の中空委員の指摘でもありましたけれども、働き方をめぐる変化と被用者保険適用拡大で、主に従業員500人以下の企業等というのは中小企業等であるので、企業の負担が大変だとか、そういうことがあったのかと思うのですが、やはり全体で支えていく、全世代で多様な働き方に対応して支えていくという視点からは適用拡大はしていくべきですし、支え手を増やすことで社会保障の持続可能性や、財政的に持続可能性も維持できるのではないかと思います。個人的には、従業員の規模だけではなく、学生も含めて、将来的には主婦等、被扶養者も含めて拡大していくと、整合性がとれる制度になるのではないかと思っています。
それから、31ページのところで、在職老齢年金につきましてはもう既に複数の委員が同様のことをおっしゃっているので、重複することは言う必要はないかとは思うのですが、64歳以下はともかく、65歳以上に関する在職老齢年金の見直しというのは、下手をすると、賦課方式を前提としている社会保障において、現役世代の負担が増えることにもなるので納得を得られないこともあるのではないかと思います。多様な働き方を認める、あるいは高齢者の就労を促進することは大賛成ですが、在職老齢年金の見直しでするというのはバランスを見てもう少し丁寧に検証する必要があると思います。
それから、36ページのケアマネジメントの利用者負担の導入につきましては賛成です。ケアプランの質を上げるという意味でも、今のままですとケアプランの標準化も質もなかなか上がっていかないと思いますので、利用者負担は財政的な意味だけではなく、質を高めるためにもプラスではないかと思っております。
それから、49ページの補足給付のところで、資産を入れるということはいいのですが、この金額につきましては、土居委員もおっしゃっていましたが、1,000万円ということの根拠がよくわからないので、もう少し精緻な統計を見て把握していく必要があるのではないか。
あと、世帯単位というところと子供の児童手当のところにも関係するのですが、社会保障は基本的には社会的リスクないしは、自助で必ずしも対応しきれないところが、公助、共助でなっていると思うのですけど、どこからどこまでを公助、共助とするのかを整理することが必要だと思います。そうなると、高額所得者の方に対する児童手当というのは性質上、公助なのか、共助なのかもう一度考える必要があるのではないでしょうか。無論、普遍的な給付とするための十分かつ安定的な財源があり、そのための負担について社会的な合意がとれる情勢があるなら別ですけれどもそうでない場合は、マクロの全体として見たときに給付と負担のバランスがとれないので、中長期的に見た持続可能性に懸念が生じるかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、神子田委員、お願いします。
〔神子田委員〕まず初めに、私、前回の会で、不遜にも事務方の説明は20分程度でと申し上げましたが、今日、お二人で、30分で終わらせていただいて、非常にありがとうございました。私も、できるだけ短く発言したいと思います。
最初、2つ質問ですが、1つは、先ほどから年金の話をされているのですけれども、例えば31ページに在老のグラフが出てきて、飛び出た部分はその他のほうで引っ込めるという図がありますけれども、要は年金財政の中で完結する話なのですけれども、これに対して財務省的にどういうようなアプローチをしていくのか、ちょっとそこを疑問に思いましたので、後でお答えいただけばと思います。
それと、今回の消費税の引き上げ分が、そこで得た財源の2分の1は社会保障に使われて、受益する人もかなり多いということで、せっかくの保育と幼稚園の無償化ですけれども、私はあまりその分野は明るくないのですが、子育てもしている同僚の職員等によると、例えば0歳から2歳と、3歳から5歳で扱いが違って、うちの子は1歳半なのだけれども、何か恩恵がないとか、そもそも保育園と幼稚園は所得に応じて保育料が決まっているのだけれども、全部無償化ということになると、要は所得の高い人はたくさん払っているわけだから、所得の高い人ほど無償化の恩恵を受けるというのはいかがなものか、恩恵が大きいというのはいかがなものかと。あと、そもそも待機児童の問題が片づいていないのに、通ったら無償化なのだけれども、保育園に入れてもらえないのなら、そもそも恩恵を受けられないのではないかとか、いろいろな不満の声を受けて、大きく言うと子供たちにお金が給付されるようになったというのは大きな進歩だと思うのですけれども、また、やはり一遍で何でも全ての人が納得する制度というのはつくれないと思うのですけれども、ただ、せっかく多くの人に受益してもらおうと思ってやった制度に、やはりけちばかりつけられていてはなかなか理解も進まないので、そういったところを、今後、どうやって直していくのかということが質問です。
もう1つは、在老のことで、前回、ある委員がとんでもない仕組みだと、要は20万円給料が増えたら年金がゼロになってしまうという話をしていて、私も本当にひどい制度だと思って聞いていました。ただ、よくよく考えてみると、そんな優位な人たちは、お給料がゼロになるとかいうわけではなくて、年金が減るからといって、ではお仕事しないのですかというのはちょっと聞いてみたいなというところがあります。ただ、それを言い出すと、結局、先ほどから出ている高所得の人にはたくさん負担してもらうとか、そういった話につながっていくと思うのですが、その辺を国の財政を支えるために仕事をしているわけでもない高所得の人たちに、どうやって納得してもらうのか。その辺りについて、どういうように考えていらっしゃるのかお聞きしたいと思います。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。3点目の在老の話、前回、ここの分科会である委員の方がおっしゃったのですが、今回、欠席なので、そこは今、ちょっとお答えは難しいと思うので、1番目と2番目についてご質問あったので、最初のほうは一松主計官で、次のほうは八幡主計官で、お二方、お願いします。
〔一松主計官〕1番目のお尋ねは、31ページの左下の図についてです。御説明しましたとおり、給付が一定の枠組みのもとでは、高所得者への給付を復活させますと所得代替率が下がることになるということでございます。
私ども、今回、3点のトピックを挙げさせていただきましたが、いずれも平成16年制度改正の年金財政フレームのもとで給付と負担が均衡する仕組みができている中で、財政の話としてではなく、働き方の多様化にどう対応していくかということで提案させていただいているつもりでございます。
ただし、この平成16年制度改正の年金財政フレームが持続可能なものになっていくためには、やはりその基礎年金の給付水準を改善していくこと、私が御説明したところで言うと、被用者保険の適用拡大といった取り組みは重要と考えています。
それから、2番目に御説明させていただいたとおり、長く働ける社会をつくって、その中で繰り下げ受給を選択してくことを目指すことが重要と考えています。
在老につきましては、そうした中で申し上げますと、31ページの2つ目の丸の※のところにありますように、その繰り下げ受給をする観点からネックになっているというご指摘がございます。また、長く働ける社会をつくっていくという意味では、やはり高齢期の就労促進の阻害になっていないかということが重要だと思います。他方で、佐藤委員からおっしゃっていただいたように、そういうエビデンスが65歳以上の在老にはあるのかということがあります。そして、より重要なことは、年金制度への信頼を保っていくという意味でも、やはり制度改正に対する国民の支持が必要だと思っており、この部分がご指摘への答えだと思いますけれども、やはり平成16年制度改正の年金の財政フレームの中で、高所得者優遇という批判がいたずらに生じることのないように見直しをやっていかなければいけない。
私どもの整理としては、このような順番で考えていく中で、こうした問題についてはやはり幅広く意見を聞く中で、また社保審の議論、あるいは全世代型社会保障検討会議の議論を踏まえて対応がなされるべきだと考えております。
〔八幡主計官〕2点目の子育て部門の費用の関係について、今後、どうやってしていくかという話であります。神子田委員が例示されておりました、例えば保育の0-2歳と3-5歳で実は差があって、必ずしも全部が無償化されているわけではないという点、これは、育休をとる方のバランスをとったり、精緻に見ているところもあったりするので、そういう意味では保育全体で見ると、0-2歳、3-5歳に実は差があるのではないかとか、幾つか挙げていただいた、所得の高い人のほうが相対的に得ではないかとか、そういった疑問点、問題点は我々も、全てかどうかは別としても、認識はしておるつもりです。
そういった観点で、やはり子育て費用というのは、基本的にもともと相対的に低かったので伸ばしていくべきだということで、現実、伸びてきている中で、我々、財務省全体で、伸びゆく予算にはやや無駄が多くなり得るということで、むしろ自戒を込めてなのかもしれませんけれども、きっちり精査をしていかなければいけないのではないかと思っております。その例としまして、今回、児童手当と、細かいですけれども、保育の公定価格の一部を取り上げておりますけれども、こうした伸びゆく予算とはいえ、丁寧に見ていくことが必要だと思っておりますので、改めてご質問を踏まえて、そういった形で進めていきたいと考えております。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。在老は、一松主計官が後半、説明したお答えでよろしいでしょうか。
〔神子田委員〕在老で聞きたかったのは、高所得の人が負担するというような意識づけをどうやって持ってもらいますかという点です。
〔増田分科会長代理〕はい、わかりました。中立的に、先ほど一松主計官に話してもらったので。あと、大臣もたしか、広く意見を聞かせてくださいと話していましたので、また社保審ですとか、そういったところの議論を見ながら、もう一回、最後の建議のときにまた議論することになると思います。
それでは、宮島委員、お願いします。
〔宮島委員〕ありがとうございます。
まず、総論のところは、まさに給付と負担に尽きると思うのですけれども、社会保障の官邸の会議でも、今、本当にここをちゃんと意識してもらわなければ、社会保障の改革はないというぐらいの気持ちをみんなで持ちたいと思います。
一般の方の視点に立つと2つありまして、今、給付のほうが負担よりはるかに多いわけですから、今の状況はわりとハッピーなわけですよね。皆保険もそうですし。今のハッピーなまま、何だかんだ言って、このまま行けてしまうのではないかと、これ以上、厳しくなるのは嫌だと思っている方々が、まずこちら側にいらっしゃる。もうワンパターンは、医療費も増大して、赤字も多くて、こんなデスパレートな時代は、もう年金は破綻するし、この先、何をやってもどうにもならないと思って絶望して、お金をためている人たちがいる。
でも、本当は、行くべき道はその真ん中で、かなり厳しい状態ではあるけれども、制度を改正し、お互い少し譲り合って、負担できる人は負担したら、ちゃんと持続するのですよというところをしっかり示すことが必要なのではないかと思うので、そこのところを今、しっかりやっていただきたいと思います。
具体策ですが、私たちはミクロで物を考える業種なので、例えば高在労を一般の方に説明するときに、この方が損をします、この方が得をしますというのを説明します。今、私がわかっているのは、損をするのは将来世代、あるいは、これから年金をもらう全体がちょっとずつ損をします。得をするのは、一部の比較的高所得の高齢の方だけです。高齢者に働いてもらったほうがいいということはみんな思っているので、それがちゃんとドライブになるのであれば、説得できると思うのですけれども、今想定にのっている組み立てが、本当にこれをしたら、みんながちょっとずつ年金を我慢しても、みんなでプラスだと思えるほど高齢者にちゃんと働いていただけるのか。あるいは、それをインセンティブとして頑張っていただける方がどのぐらいいるのかというところが、あまりちゃんと見えないと思います。だから、単に高齢者、一部の方々の年金が増えて働きやすくなったということを超えて、これをやれば、若い人も含めて、日本全体にはプラスなのですというところまで説明し切れないと、みんなが年金をちょっとずつ減らしますというところを説得し切れないのではないかと思います。
次に、子ども・子育てについてですけれども、私は2年ほど前、1年半前ですか、児童手当の特例給付をなくそうという提案があったときに、正直、ちょっと空気がまだ違うのではないですかというようなご意見を申し上げました。その後、今回の幼児教育無償化などがあって、子どもにある程度お金が行くことがわかって、その空気は大分変わったかなとは私自身も思っています。なので、今回のご提案に対しては、減らすことに関しても一定程度納得できるのですけれども、1点、やはりケアする必要があると思うのは世帯で収入を見るというところです。これも、公平性からすると、基本、納得できます。ただ、1点だけ思うのは、先ほどのように誰が損をして、誰が得するかということを分析しますと、これは共働きの人への下押しになりますので、共働きや女性の活躍を進めていることとは、ちょっと逆に見えてしまいます。
私、地方自治体でも政策の議論などをしているのですけれども、今、共働きが大分進んだと思うので、前よりは、例えば2年や3年前よりはいいと思うのですけれども、それでもやはり世の中、女性がある程度以上に働くこと、あるいは男性に育児や家事もやってもらって、かつ、たくさん稼ぐことに関しては、日本はまだすごく下押し圧力があると思います。ですから、この制度変更が共働き世帯、あるいは、より収入を高めて働こうと思う女性のマイナス要因にできるだけならないような、メッセージにならないような配慮は必要なのではないかと思います。
具体的には、例えばそこで財源が出たとしたら、これは女性の活躍や共働きや子育てのほうに持っていくお金にするのですということを明言するなどです。やはり何だかんだ言って、今はまだ行政が高齢者のほうばかり見ているという気持ちはありますので、子育てのところのお金は、子育て内であってもより効率的に、ただ絶対にプラスになるように使うというメッセージをちゃんと組み立てながら、あるいは、今、神子田委員がおっしゃったように、確かに今の制度はいろいろ不満とか不公平感があるのですけれども、さはさりながら、数年前に比べて高齢者より子どもに目配りができたというところはプラスだと思いますので、では、この子どもに行った財源をいかに効果的に、今後、少しずつリメークしていくかということがすごく大事ではないかと思うので、そこのメッセージ性も大事にしながらやっていただければと思います。
〔増田分科会長代理〕次に、横田委員、お願いします。
〔横田委員〕私は、まず厚生年金の適用拡大の件でお話しします。ちょうど今、宮島委員が、共働きの人たちは女性ももっと働けるような世の中に、ということをおっしゃっていました。中小企業に対象範囲を広げるということで、基本的にどこまで説得できるかわかりませんけれども、方向性としては賛成です。最近、最低賃金が上昇など、中小企業の負担が増えている一方で、配偶者控除による時間調整が生じていないかなど気になっています。中小企業の目線からすると、最低賃金が上がって、時間調整もされて、かつ厚生年金も払うとなったときに、人材不足の中でちぐはぐ感が生じている可能性があると思っています。
1つには、先ほど佐藤委員がおっしゃっていた合算制度にしないと、1企業が20時間を切る形に調整してしまうような方向にかじをきられたり、一方で、個人の働く側は、配偶者控除の関係で時間調整されるなど、数年前に配偶者控除の見直し後、その作用が雇用調整にどうなっているかとかいうことを検証もセットで、ぜひ中小企業の人材確保、女性活躍ともに促進できるような形にしていただきたいというのがまず1点目です。
2点目は、総論のほうの財政検証結果です。いろいろなパターンの試算ケースが出てきていましたけれども、民間企業であればトライアルのときは楽観的にスピーディーにトライをするというところですけれども、大きな決定をするときは最も悲観的なシナリオに基づいてターゲットを設定するというのが王道かと思いますので、最も悲観的なシナリオのもとに検証をしていただきたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。配偶者控除、基本的には主税の話かなとは思いますが、何かありますか。多少、次回に回してもいいですが。
〔一松主計官〕ご承知のように、税と社会保障をめぐって、いわゆる所得の壁と言われるものが幾つかありまして、かつてと言うのが適切かわからないですけれども、103万円の壁と呼ばれていて、それは配偶者控除の関係で言われていました。今103万円の壁がなくなったかというと、本人の所得税の負担がそこに生じるか、生じないかという意味では残っているわけです。配偶者控除の仕組み自体は、税制改正によりまして、所得控除38万円の対象となる配偶者の給与収入の上限額が103万円から150万円に引き上げられたことによりまして、103万円の壁は引き続き先ほど申し上げた観点では残っているのですが、配偶者控除のその基準は150万円になったということで、配偶者が就業調整を意識せず働くことができる環境になったものと考えております。
他方で、社会保険のほうでは、今の適用拡大にまつわる論点になっております、まさに賃金要件8.8万円に由来する106万円の壁と、よく言われるものとして被扶養の基準である130万円の壁は残っていると、そういう状況と承知しております。
〔増田分科会長代理〕よろしいですか。政府税調でも、私はメンバーですが、土居委員もそうですけれども、大分議論したのですけれども、基本的にその後、どういう影響になっているか、私ども、ここでそれについてきちんとご披露するあれもありませんし、もし何かそれ以上のメッセージをこちらの議論で、建議で伝える必要があれば、また事務局のほうから伝えてもらう。そうでなければ、少し必要な資料を主税局に当たってもらって、委員に直接お知らせすることもあるかもしれません。よろしくお願いします。
それでは、次に、テーブルのこちら側の方をご指名して、もう一度、私から見て向かい側のテーブルに行きたいと思います。木村委員、河村委員、大槻委員という形にしたいと思います。木村委員からお願いします。
〔木村委員〕御説明、どうもありがとうございました。
消費税がこの前、上がって、来年度予算、令和2年度予算は消費税が上がって初めて編成される予算になります。政府のほうでいろいろ負担軽減策が講じられておりますけれども、国民の負担というのは、1世帯平均、年間3万円とか、4万円とか上がるという見方、シンクタンクの試算もあります。そうした国民に痛みを求めるだけに、その分だけ、今度、使われる予算というのはより効率的にすること、国民もそれに対してはかなりしっかり見ているということを踏まえて、予算もつくらなければならないのではないかと考えています。
特に、消費税が使われる社会保障分野の使い道というのは極めて重要だと思っています。そういう意味で、資料の7ページに挙げておられた改革の方向性ですね。これは、これまでも財政審でよくメニューに挙げられてきたことかもしれませんけれども、従来にも増して、そういう意味で重要な意味を持っていると思っています。とりわけ消費税というのは逆進性が強いものですから、その分、所得の再分配が多分、大事になると思うのですけれども、そうした観点からは、これまで各委員がおっしゃってきましたような高所得者への児童手当見直しとか、そういうことに力を入れて取り組むことが大事になってくるのかなと考えております。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございます。
次は、河村委員、お願いします。
〔河村委員〕御説明ありがとうございます。
私のほうからは、主として3点申し上げたいと思います。1点目は、後に続いてくる我々よりも下の世代に対する配慮の点。2つ目は、現実の社会構造、世帯構造とか変わってきていますので、そこにやはり政策の枠組みを反映させていくべきではないかという点。3点目は、国全体で、全世代型社会保障という言い方をされていますが、人生100年時代になってきたことを受けて、では、どういうように改革していったらいいのかということについて、国全体で改革に取り組む機運を醸成できるような形で、提言や建議を行っていけるといいのではないかという点でございます。
少し細かいところを申し上げますと、最初に八幡主計官が今の社会保障費の構造のところ、それから財政運営全体の状況を御説明くださいましたけれども、4ページのところで、よく出てくる話ですけれども、支え手がこれからだんだん減っていくと、大変なことになるということで、よくこれまで財務省でいろいろお作りくださった資料を見ても、人数というか、頭数で、何人で何人をどれぐらい支えるというような、肩車のような絵を描いたりとか、そういう御説明をしてくださっていたと思います。やはり今後のことを考えると、要するに頭数だけの面ではなくて、それぞれの世代の経済力というか、下の世代は力がかなり弱ってきているところもありますので、そういったところにぜひ目を配って考えていただければと思います。
4ページの図でも、団塊ジュニアの世代が後期高齢者になり始めるところがということでお書きくださっていますけれども、この世代、ある意味、日本が長い目で経済運営を振り返ったとき、バブル崩壊とか、いろいろなことがあったわけで、ある意味その犠牲になった世代でもあるわけで、非常に細っています。本当に頭数だけで、1年当たり20歳から74歳の人口が93万人減っていくということだけでは把握し切れない、やはりそこは、この世代に負担がかかっていったらどういうことになるのかということを、我々は真剣に考えていく必要があると思います。
にもかかわらず、社会保障費をどうやって支えているかという構造を見ると、冒頭のところでも御説明くださいましたし、参考資料にもありますけれども、今の段階でも、消費税率は本当に上がってよかったと思いますけれども、自分たちが使う社会保障費は全く賄い切れていない状況にあると。毎年10兆円は下らないですよね。十数兆円の新たな借金をどんどんしていってしまっている状況にある。そういうもとで、では全世代型社会保障といっても、どういうところにお金を使っていくべきか、誰が負担していくべきなのかということは、よく考えていくべきなのではないかと思います。
既に何人もの委員の方がおっしゃられたので、在職老齢年金のところはあまり繰り返しませんけれども、やはりそういう目で考えたときに、誰がこの財政状況を負担する力を持っているのかということを考えると、一体どの世代が金融資産を持っているのかということを考えると、やはりそれなりのお年を召した世代の方々に、それなりに負担をしていただいたらいいだろう。その世代でも、やはりいろいろ格差があるということは言われていますけれども、それなりにやはり経済力があって働くこともできて、それなりのお給料がおとりになれる方にはそれなりにご対応を、やはりご負担をいただいたほうがいいのではないかと思います。今回の見直し、働く意欲を損なわないようにというお話も出ていて、それは部分的にわからなくはないところもあるのですが、この局面で毎年十数兆円の新たな借金をツケ回しているこの国がやれることなのかという気がいたします。
それから、29ページのところで、繰り下げ受給のお話とか出ていたと思います。これは、個々人がどうやって選択していくかということですけれども、あわせて考えなければいけないのは、では、年金をどうしようかということを考える前にみんな思うのは、自分が一体どこまで働けるのか、お給料は果たしてどれぐらいもらえるのかということだと思います。そのあたりが、まさに本当は国全体で取り組むべき課題なのではないか。民間は、それぞれいろいろな立場があって、大企業の立場、中小企業の立場、いろいろあると思います。もちろん、一律に乱暴に進めるようなことができるわけでは決してないと思います。公務員についても、定年の延長の話、しばらく前に出たと思いましたが、その後、全然報道もないなと思って、どうなってしまったのかなと思っているのですけれども、こういったことは民間だけとか、公務員というか官の世界だけということではなくて、やはり国全体が足並みをそろえて、では、どうやっていったらいいのかということをみんなで検討する機運を高めていったほうがいいのではないかと思います。
被用者保険の適用拡大のところで、少し前のページでも御説明いただきましたけれども、これだけ非正規雇用で働いている方が増えている中で、後の世代のことをやはり考えても、彼らの生活をどれだけ安定させられて、国全体として支えて、どういう持続可能な経済、社会をつくっていくのがいいのかということを考えたときに、適用拡大になると、企業のほうから、特に中小企業のほうから負担が増えるのでということで難色を示される。それもわからなくはないですか、では、誰がどうやって負担をしていったらいいのか。国債発行の形での後の世代への負担というのはもうパンパンになっていると思いますので、では、どうやっていったらいいのか。増税にも限界もありますし、そういったところを国全体で、現実にきちんと向かい合って考えていく機運をぜひ醸成できるように、働きかけをしていったらいいのではないかと思っております。
3点目の社会構造への反映ということですが、これも何人かの方が言っていらっしゃいましたけれども、現実として専業主婦世帯がモデル世帯で前提というのは果たしてどうかと。それから、児童手当も、主計官からも御説明ありましたけれども、やはりこういう形で算定するのもちょっとおかしいのではないか。共働き世帯が増えている中でどう扱うか。もちろん、税制上の配偶者控除の問題とかもありますし、やはりこういうところも足並みをそろえて、きちんと現実に合うような形で、より多くの世帯、より多くの国民の生活とか、所帯の持ち方のあり方に沿うような形で政策を考えていくべきなのではないかと思います。
児童手当に関しても、やはりこの財源、今回、いろいろな無償化がありますよね。幼児教育の無償化とかもあって、何となく国民的には、今回の消費税率引き上げに応じて、その分の中からお金が出されるから、自分たちが負担しているとみんな思っているとは思うのですけれども、やはりちょっと一歩引いて、立ちどまって考えたときに、毎年毎年の社会保障費全体を考えると、全然、自分たち世代の負担では賄い切れていない、大変な多額の借金を毎年毎年、新たに生み出して、ツケ回している状況でやっていい政策なのだろうか。ですから、児童手当などもさかのぼって考えれば、結構な財源、国債があるということを考えて、そういう形で借金して児童手当を支給していく。それは真に必要な方々にということであればいいですけれども、この資料にもありましたけれども、大人のお小遣いに回ってしまうような世帯にまで支給する必要があるのかといったことを、きちんと考えていく必要があるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大槻委員、お願いします。
〔大槻委員〕ありがとうございます。
全体の方向性、改革の方向性については全くの同感でございまして、苦しい中でいろいろと新しい施策を考えていらっしゃるということについて、非常に頭が下がる思いですが、1つ、私のほうから申し上げたい点として、土居委員も少し触れられましたけれども、実効性ということでもなるべく上がるような施策をということを申し上げたいと思います。
2つ例がございまして、1個目が29ページ目の繰り下げ受給の柔軟化です。就労の話は全く別として、こちら、小さい文字で繰り下げ受給の実績が繰り上げに比べると相当少ないということですが、個人のイラショナルな行動からすると、やはり先にもらってしまいたいと。同じような額をもらえるということであれば、どうしてもそういったインセンティブが働くのかと思うと、もうちょっと後にもらうことに伴うモチベーション、インセンティブが何かあったほうが、利用が進むのかなと、繰り下げ受給のモチベーションが上がるのかなというのが1点です。
もう一つは、46ページの補足給付の要件見直しのところです。今は預貯金で1,000万円、これをどういった額にするかということでテーマに挙げていただいています。これは確認の意味もあるのですが、預金通帳を自主的に開示していただいて、それによって適用を判断すると思うのですが、もしこれをより低くしてしまった場合、今は多分、正直に預貯金の残高を見せているということなのでしょうけれども、果たしてそういった形になるのかどうか、自主的開示が進むのか。それから、金融資産全体ということで本当は把握するべきなのではないかと思うと、預貯金だけで、暫定的にはいいのかもしれませんけれども、より公平感があるような形もお考えいただいて、考えていったほうがいいのかなと思っております。それに加えて、マイナンバーを活用することも含めてということかもしれないと思っています。
以上です。
〔増田分科会長代理〕後のほうはご意見ということでよろしいですか。ありがとうございました。
それでは、次、赤井委員、お願いします。
〔赤井委員〕ありがとうございます。
まず、総論に関しては、もう皆様も言われていたとおり、増税はしたわけですけれども、6ページですか、天の川にありますように、増税した後でも天の川の上に全然のっていないわけですから、しっかりともとに戻していく、つまり持続可能性を高めていくことがさらにキーワードになっているのかなと思います。
そのために、いろいろな改革、皆様からも意見が出たと思うのですけれども、少し意見の出ていないところで。44ページの介護の利用者負担のところ、最近、3割を導入したりして改革はしているわけですけれども、将来図を見ていくと、2040年度の値はものすごく大きくなりますし、やはり将来の持続可能性ということを今、考えた上では、全然それができていないということですし、早く持続可能な形にしたほうが将来の世代にとっては受け入れやすいですし、若い人にとっても何とか払っていこうという気持ちにもなります。
その意味では、これを見てみると利用者負担が現在でも7.6%ですので、もう少し利用者の負担を上げてもいいのかなと。若い世代と、公費負担は将来世代へのツケですから、そういう意味ではもう少しそこの部分を広げる。あとは、所得に応じて1割、2割、3割とあるわけですけれども、所得とか、ほかの要素、資産とか、あとは利用度合い、例えば車の事故の免責みたいもので、初めのうちは10割払って、その後、払わなくていいとかありますから、初め、低所得の人も高くても少し我慢していただいて、さらにもっと使う場合には下がるとか、もう少し1割、2割、3割を多様化していくような方法で、利用者負担をせめて7.6%から10%ぐらいまでに増やせるようにということも考えることで、持続可能性が保てるのではないかと思います。
以上です。意見です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、私から見て向かい側になるのですが、角委員からお願いします。角委員、それから十河委員という形でお願いします。
〔角委員〕ありがとうございます。
定年延長の話ですけれども、私どものグループでは、中核会社においては、今現在は60歳定年で65歳までの再雇用という形ですけれども、来年4月にちょっと間に合いませんが、再来年には定年を65歳、そして再雇用制度を70歳までと変えていこうと思っています。これは、もちろん支え手を増やすということ、あるいは健康経営を標榜する以上は働いて元気な社員を増やす、あるいは健康寿命を延ばして医療費を減らしていく。そういったことを総合的に考えてやらせていただく。
以前は、公的年金の支給開始年齢が60歳から65歳に延びていくときに、各企業、みんな定年延長をやりました。一方、男性は2025年、女性は2030年に今の制度が一応、整うわけですから、それまでに公的年金支給開始年齢を下げてくれというのは無理なのはよくわかります。ただ、今回の全世代型社会保障検討会議の中で支給開始年齢を先に送るということは議論できないことはよくわかりますが、その2025年以降、あるいは2030年以降に、仮にこういう形で支給開始年齢をずらせれば、2040年の所得代替率が幾らになるのかとか、そういった試算も見ていただきながら、やはり長期的な視野に立ってその辺を示していただくと、将来はそうなっていくということで定年延長をする企業も増えていくのではないかと思います。
それと、今回の検討会議の議事録を読ませていただきますと、櫻田議員のご発言で、経済同友会では、いわゆる経済、財政、社会保障の長期展望を調査、分析する独立財政機関の設置を提言しておられます。私も先般、大阪で地方公聴会をやっていただきましたときに、ぜひともアメリカ等のように、アメリカは国会の中に独立した機関があるようですけれども、海外のように日本もこういった独立機関を、政府から独立した形で長期推計を出していただいて、それに基づいて国民がまさに納得する形で、政策を立案していただくのがいいのではないかと思います。
ちょっと最後に、それだけ言うつもりだったのですけれども、赤井委員のおっしゃった介護は、過去のデータで、要支援、あるいは要介護1、2ぐらいの方が生活援助を月に100回受けているという話がありましたでしょう。ですから、最初は比較的安くてもいいけれども、例えば生活支援で月に何回以上になれば1割負担が、所得がなくても2割、3割と上がっていくと、そちらのほうが正しいのではないでしょうか。
〔赤井委員〕多様な、いろいろなやり方を検証してもらうと。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは、十河委員、お願いします。
〔十河委員〕ありがとうございます。
私は、子ども・子育てについて幾つか申し上げたいと思います。まず、今週の月曜日だったと思いますが、日経新聞の1面トップが、子供の出生数がいよいよ90万人を割るという記事でした。2016年に100万人を下回って、この3年で1割が減ってしまうということで、かなり衝撃的な数字だと思いました。もちろんいたずらに子供を増やせばいいわけではありませんが、支え手の減少によって本日の議題となっている社会保障は、より深刻な状況になると案じております。
それで、49ページにございます、先ほど進藤委員も述べられていた特例給付、高所得者に対するあり方という箇所ですが、私も常々、日本の現代社会において、主たる生計者という区切りはいかがなものかと思っておりました。女性の労働参画が進み、共働きの割合が増えているわけですので、この区切りは再考すべきではと考えます。
それから、年収が960万円でというのは、現実的に見ると、これはいつの時代なのかなというような疑問を抱きます。特に、私の周りも働く若い女性が多いのですが、この金額に達している人はかなり少ないように感じます。そういった女性たちが子供を産む年齢になっていて、結婚や出産に戸惑いを感じているのです。
あとは先ほどの出生数もそうですけれども、1人産むか、2人産むか、ここでまた迷うところもあって、実際に今、出生率1.5ぐらい。
〔増田分科会長代理〕1.42です。
〔十河委員〕42ですか。
〔増田分科会長代理〕ええ。
〔十河委員〕若干上がったとはいえ、やはり1人で諦める人は少なくないと推測できますし、960万円という金額の見直し、あるいは、低所得層に向けて、例えば500万円以下、400万円以下とか、ここを2段階などに分けることはできないものか。さらには第1子、第2子で金額を変えることはできないのかなど、現状をしっかり見つめた上で、検討していく必要があるのではと思いました。
またこうした使い道の精査と見直しに加え、インセンティブは非常に重要ですので、強く押し進めていただきたいと思っております。
最後に、次世代を担う若者に向けて、子供を産みやすい、育てやすい、そして働きやすい社会を作っていくという前向きな方針や事実を、真摯に伝えていく必要があると思います。例えば30ページにございますが、実は若者も65歳以降まで働くと、現役世代と同じぐらい年金を受け取ることができることなど、積極的に発信したいところです。とにかく今はマインド不況とも言われておりますので、人々の気持ちが前向きになれるような策を講じる必要があるのではないかと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、伊達委員、お願いします。
〔伊達委員〕ありがとうございます。
十河委員のところと重なるような面もあると思います。21ページのところです。出生率が過去の資料よりもポジティブに向上していましたように、確かに多少よくなっているという面もあります。そのあたりは何が要因なのか、どのように捉えられているのかを教えていただきたいと思います。私の仮説としては、企業等の制度が整ってきた、社会保障等の中で子育てに対する補助が増えてきたということで、女性一人が負担をしているのではなくて、社会全体が支えてくれる方向になってきた、こうした経済的なものに加え、メンタリティーも影響しているのではないかと思っています。
そう考えますと、今、子育て世代に対しての様々な予算をつけることの是非論を考えていくときに、こうして出生率が上がってくることが、将来統計を見るときにも、人口の支え手が増えていくことにつながり、数字が向上します。つまり、出生率を上げるということ自体マストな状態ですから、ここの部分の予算の枠は確実に増やしていかなければいけないと思っています。いつも議論が、必要論の積み上げ議論になっていて、部分部分でこれが正しいか否かという話になってしまっています。しかし、社会保障費の中のある一定の比率は、次世代に振り分けていくことを、大きな枠組みとして、先に決めるべき事ではないかなと思います。
つまり前回の資料の中に、他国と比べて高齢者向けの負担の比率に対して、若者世代に対する予算の配分率が非常に低いというデータも出ていましたが、本来、公平性という意味でバランスを考え若い世代のための予算を大枠でとるべきです。その上で、その予算を最大限、その世代のためになり、生産性の高い方向に振り分けていく。こうした、少し逆の発想で物を考えてはいかがかと思っています。
また、社会保障というのは、全てコストであり、負担すべきものだと思いがちですが、企業は事業をしていく際にかかるコストは、運営上の必要コストと将来の投資コストがあります。必要コストの場合は、正しいコスト配分であること、かつ生産性を考えコストコントロールをすることが求められます。同時に、品質も整えながら、生産性を上げるための積極的投資の枠も持ちます。
同じように、社会保障も、単にコストとして使うだけでなく、高齢化というのは絶対にとめられない事実がありながらも、資源は限られている中なのですから、必要コストを配分する一方で、生産性が高く、将来の効率性をあげるための仕組みの開発は、利用促進、自助努力による行動変容を促すような仕組みに、コストを抑えるためのコストにも予算を割り振るべきだと思います。
そして、社会保障制度の投資的発想でいうと、介護のところについて話します。2003年から2019年までのグラフがありましたけれども、3.6兆円から11兆円になっている、三、四倍になっているという急成長の産業になっています。普通であれば、規模の経済が働き、生産性が上がってくるはずです。が、それが一切行われずに今日を迎えているという事実と、また、どうしてこれまでエビデンス、情報というものがきちんと集まらなかったのか、それを分析しながら生産性を上げる動きはなかったのか、必要サービスの整理等々もしてこなかったのか。部分的に対象物を減らすか否かの議論程度ではなく、抜本的に経営の在り方、運営の在り方を見直さなければ、膨らんでいくばかりです。11兆円もお金をかけて、それだけのコストを使っているがゆえに、発生しているデータが大量にあるはずです。予算は使いっぱなしではなく、過程で発生するデータを徹底的に吸い上げ分析し、次につなげる、そういった義務も、社会保障制度の中でも設計するべきではないでしょうか。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、広瀬委員、お願いします。
〔広瀬委員〕ありがとうございます。
前回のこの場で、財政再建、あるいはその社会保障改革はもう待ったなしと。特に、給付と負担の問題、世代間バランスといったことをお話ししました。その脈絡からしますと、医療問題が一番大きいと思いますけれども、やはり介護の中で1割負担の問題ですね。これは、赤井委員の意見と私は全く一緒ですけれども、これからこの介護の部分というのは相当拡大していくわけですから、少しスピード感を持って1割負担のあり方について、改革、見直しを進めていくべきではないかと思っております。
それから、介護の運用なり、運営については、もう皆様からお話がありました。現場の問題も、現場の介護している方の負担を少なくするとか、あるいは、その地方に対する保険者へのサービスの移管等々、この辺は今、現場の実態とか、地方の状態を踏まえて改革が進んでいるということでございますので、ぜひこれは続けていただきたいと思います。
もう1点は、ちょっと戻って申しわけないのですけれども、年金の被保険者の適用拡大についてです。大きな方向は、おそらくこういうことだろう思います。多様な働き方、あるいは女性の社会進出等を考えればこういう方向だと思いますけれども、一方で事業者負担が増える。特に、中小企業の場合は、大企業に比べて利益率が半分ぐらい、それから労働分配率が逆に2倍ぐらいと、そういった実態があるわけです。そういう面で、これは先ほど横田委員からもおっしゃっていただきましたけれども、現在、中小企業は最低賃金の引き上げですとか、消費税率の引き上げ等々、いろいろな課題が一遍に今、山積しているという状況でもありますので、ぜひそうした中小企業の状態も踏まえた検討をしていただければと思います。
先ほど委員の方から、中小企業の今、一番大きな課題は人手不足、いい人が来てくれないという問題がありまして、そのために例えば処遇を上げるとか、あるいは働き方改革をしなければいけないとか、それは十分にわかっているわけでありますけれども、一方で、先ほど言いましたように、実態としては人件費の割合が大きいと。この2つの、相矛盾するというか、事実ですね。このジレンマの中でいろいろ試行錯誤しているというのが中小企業の実態でございますので、ぜひそういう面で、中小企業の全部ということではないと思いますけれども、頑張っている中小企業もたくさんいらっしゃいますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
プレートを上げていただいている方には全員指名をいたしました。追って、さらにこれだけはどうしてもという話があれば指名いたしますけれども、いかがですか。
それでは、土居委員、お願いします。
〔土居委員〕せっかく貴重な資料を提出していただいているので、言及しないのはもったいないと思いまして、参考資料1の49ページに介護保険のサービス付き高齢者向け住宅の居住者のサービス利用状態というのが予算執行調査でされていて、これは非常に重要な調査だと思います。もともとは大阪府がなさっていて、大阪府で実はそういうことが、大阪市とか調べるとそういうことが判明したということで、ローカルな話かなと思われていたら、実はそうでもないと。全国的に見るとこうだと。
つまり、サービス付き高齢者向け住宅だからサービスがついているということを居住者も意識されるのでしょうけれども、通常の要介護度ならばそこまでたくさんは利用されないはずなのに、なぜかサービス付き高齢者向け住宅にお住まいの方はより多く利用されている傾向があるというのは、大阪府だけではなくて全国的にもそういう傾向があるということだとすると、これは結構無視できない話であると。しかも、サービス付き高齢者向け住宅というのは施設の設置について厳しい規制があるわけではないので、そうすると厳しい規制がある特養とか、なかなか介護施設がつくりにくいということになったときに、サービス付き高齢者向け住宅にお住まいになられるのはいいんだけれども、かといってほかの施設なり、在宅におられる方よりも多く利用されるというのはちょっと偏りがあると思いますので、その点をよりきめ細かくできるような制度設計がこの第8期には必要だと思います。
さらには、角委員もおっしゃったようなことを考えると、同じ参考資料1の37ページにある区分支給限度基準額を、例えば生活援助だけは別枠にして、生活援助ばかり100回も使うとか、そういうようなことにならないような限度額、お使いなられるのはいいのだけれども、お使いになる基準を上回れば全額、自己負担でお願いすると。こういう形にすれば、介護保険財政に対しても好影響があるのではないかと思います。
以上です。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。以前、サービス付き高齢者向け住宅の利用実態はあまりよくわからなかったところがあって、執行状況調査で初めて出てきたので、これも非常に貴重なデータですよね。どうもありがとうございました。
佐藤委員、何かございますか。
〔佐藤委員〕先ほど言い損ねたので。介護です。めり張りのある形でインセンティブ交付金を配るということはもちろん大事ですが、特に重視するべきは都道府県の役割だと思います。やはり都道府県が、例えば介護事業計画をつくるにしても、あるいは介護予防とかにしても、さまざまな局面で市町村を支援したり、指導したりする側に立つのですが、どうもその辺にもまだばらつきがありまして、つまり結構一生懸命取り組んでいる都道府県と、そうでもないところに分かれます。医療においても,もはや地域医療構想や医療費適正化計画におきまして、都道府県の役割がかなり重視されています。介護も、やはり広域化という視点がないと、小さい市町村ではなかなか対応できないと思いますので、都道府県の役割をもう少し全面的に押し出して、インセンティブ交付金とかの見直しにつなげていくことがあっていいのかなと思いました。
以上です。
〔増田分科会長代理〕それでは、大体皆様方、ご意見をいただいたということで、最後に全体を通して主計官から何かこぼれている点、あるいはご質問ではないかもしれませんが、何かあればお願いして、それで閉じたいと思います。
〔八幡主計官〕貴重な意見をたくさんいただきまして、ありがとうございます。
全体の方向性として、我々としても、まだまだ不十分だというご指摘を受けていると思っておりますし、後ほど一松主計官のほうからも、特に年金分野から補足があるかもしれませんけれども、我々も従来から何度も同じような資料を出して、例えば介護の例で委員からご指摘ありましたけれども、既に第7期で、対応すべきはずだったことを、今、やろう、次、やらなければと言っているだけだと。要は宿題で先送りしたものを、今、また紹介しているだけだとすれば、先ほど申し上げた自戒を込めてございますけれども、次のタイミングではその宿題ができるだけ対処し、少なくとも別の宿題に変わっているように頑張りたいと思います。ありがとうございます。
〔増田分科会長代理〕それでは、一松主計官。
〔一松主計官〕年金制度におきまして、角委員から支給開始年齢の引き上げということにつきましておっしゃっていただきました。閣議決定において支給開始年齢の引き上げを行わないということになっており、今日の資料の30ページにも書かせていただいているように、そういう手法ではなくて、長く働く社会をつくる中で、個々の者が繰り下げを選択して給付水準を上昇させることをやっていく必要があると、基本的にそう考えております。
また、委員の中で、そうはいっても繰り下げ受給が使われていないではないかというご指摘がありました。そこについては繰り下げ制度の周知の取り組みなども行っています。制度的には、先ほどの在職老齢年金の話だけでなく、今、特別支給の老齢厚生年金が支給されていて、65歳まで支給されるのだけれども、一旦、支給がなくなって、その後、繰り下げ受給するのはなかなかしんどいみたいな要因もあります。この点は、厚生年金の支給開始年齢が引き上げられれば解決すると思います。
今、ファイナンシャルプランナーの方々にかなり繰り下げ受給をお勧めいただいているように、だいぶ、環境の変化もあるように感じていますので、そうした動きを大事にしながらやっていく必要があるのではないかと思っています。
補足的な説明でございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
今日、医療の部分を除いた総論と、それから年金、介護、子育てということであったのですが、その大きなボリュームの医療を除いた今回の中でも、一番最後のところに子育てが本当にちょっとついているぐらいの形になって、全員の皆様があそこをもっともっと充実という気持ちは大変おありになっているだろうと思うのですが、我々の一方での財政健全化ということを考えると、それ以外のところをどれだけ合理化するか、効率化するかのようなことでないと、なかなかそちらのほうに行かない。今、やっと対GDP比でも、広い意味での子育て予算は1%を超えるようになりました。以前は0.9何%ぐらいしかいっていなかったので。それでも、ヨーロッパなどは対GDP比で3%を超えるような国はいっぱいあるので、そういう意味で今日の議論も大変重要だと思います。それから、次回、大どころの医療ということも、また皆様方にいろいろ議論をお願いしたいと思います。
今日は、以上、ここまでということにさせていただきますが、今日の会議の内容については、この後、記者会見で私のほうからご紹介をさせていただきますので、恐縮ですが、個々の発言につきましては、皆様方から報道機関にお話しすることのないようにお願いします。
次回は、10月17日、13時半から、この場所で開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日は、これで閉会といたします。どうもありがとうございました。
午後4時00分閉会