財政制度等審議会財政制度分科会
〔議事要旨〕
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1.日時令和7年11月5日(水)8:30~11:00
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2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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3.出席者
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(委員)
十倉雅和、増田寬也、秋池玲子、大槻奈那、河村小百合、熊谷亮丸、小林慶一郎、佐藤主光、武田洋子、田中里沙、土居丈朗、藤谷武史、宮島香澄、山口明夫、上村敏之、小黒一正、木村旬、権丈英子、小林充佳、櫻井彩乃、佐野晋平、滝澤美帆、中空麻奈、平野信行、広瀬道明、福田慎一、堀真奈美、神子田章博、吉川洋(敬称略)
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(財務省)
片山大臣、高橋大臣政務官、新川事務次官、宇波主計局長、中山次長、吉沢次長、一松次長他
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4.議題
- 財政総論
- 地方財政
- 社会保障①
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5.議事内容
- 本日は、「財政総論」「地方財政」「社会保障①」という議題のもと、事務局から資料に基づいて説明を行い、その後質疑を行った。
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各委員からの質疑や意見は以下のとおり。
【財政総論】
- 財政健全化と経済成長は車の両輪。財政への信認を維持することが成長を支える。成長のためにも財政健全化が必要。
- 中長期的な財政健全化に向け、データに基づくワイズスペンディングの徹底が必要。ワイズスペンディングにより、早期の成長への効果も示すべき。また、規制改革も含めたワイズアクションも求められる。
- 物価が上昇し、需給ギャップがプラスとなる中、持続的成長には供給力強化が不可欠。単に歳出を増加させるのではなく、「強い経済」を構築するため、供給力強化につながる施策・予算とすべき。既存産業の保護ではなく、成長に繋がる分野への投資が必要。
- マーケットからの信認を確保するためにも、債務残高対GDP比の着実な引下げに取組むべき。
- 想定外の有事が発生した場合に財政措置が講じられるよう、財政余力の確保が重要。グローバルな不確実性がより一層高まる中、財政余力を残す重要性は増している。
- 金利が上がる前提で財政運営を考えるべき。インフレ全体には金融政策で対応しつつ、生活に打撃を受けている方には財政で対応。物価高に対応しながら、若い世代の賃金を含め、実質賃金の向上を目指し、持続的な好循環に繋げる必要。
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【地方財政】
- 不交付団体である東京都の対個人向けの行政サービスの拡充によって、周辺自治体が追随できず、格差が広がっている状況は看過できないレベルになっている。格差是正のために必要な措置を講じるべき。
- 法人課税は電子商取引やフランチャイズの進展、非分割法人の増加などにより、構造的に東京に集中しており、是正していくべき。
- 固定資産税の地価分は東京都が伸びているが、これは東京都だけの貢献ではないため、是正の余地がある。
- 交付税制度は非対称な制度であり、不交付団体は税収増の恩恵を受けることができるため、それが行政サービスの格差拡大につながっている。財政力の格差は、過去に偏在是正の取組を進める前の水準まで戻っており、新たな取組を講じるべき時期にきている。
- 大都市と地方の格差拡大に対して、交付税等の既存の制度での対応は限界。新しい枠組みの検討が必要ではないか。
- 豊かな財政力を背景とする東京都の取組が、国全体の財政拡張を助長している側面があるのではないか。
- 東京都への法人の集中は効率性を追求した結果ではあるが、これ以上進むと効率性が失われる局面にある。
- 人口減少を踏まえて、地方財政に反映していく観点は重要。
- 地方税の枠計上経費については、見える化を進めて、効率化の取組を進めるべき。
- 自治体運営の効率化を促す仕組みを地方財政制度に組み込む必要がある。
- 人手不足の状況の中で、広域的なインフラマネジメントを進める点は賛成。全国一律という形ではなく、選択と集中の観点を踏まえることが重要。
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【社会保障①】
- 社会保障については、高齢化等による給付増が続いており、現役世代を中心に保険料負担の増加として重くのしかかっている。受益と負担のバランス確保に向け、医療・介護を中心に不断の改革努力が求められており、スピーディーに実行すべき。賃上げ傾向が定着しつつある今こそ、社会保障改革を一層進め、保険料負担の軽減を通じて、現役世代の手取り増加を実現すべき。
- 社会保障改革に当たっては、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」、「年齢ではなく能力に応じた負担」といった原理原則に基づいて進めることが重要であり、来年度予算はその端緒とすべき。特に、高齢者医療の窓口負担割合については、年齢で一律に区分するのではなく、原則3割とした上で必要な配慮を行うよう改めるべき。
- 全世代型社会保障の構築の取組により、現役世代向けの給付は改善される一方、負担は若者が負担し高齢世代を支えるという構図が変わっていない。これが若い世代の将来不安、ひいては国や制度への信頼低下につながっている。世代間の負担の平準化が重要であり、金融所得の勘案をはじめとする応能負担の実現に向けた改革を進めて欲しい。あわせて、高齢者を支え手に変えていく取組も重要。
- 今年末の診療報酬改定は、経済の転換点での改定であり、今後の診療報酬改定の手本となる重要な改定。経済や物価動向への適切な対応と保険料負担の抑制という相矛盾する課題に対し、バランスよく対応することが求められる。
- エビデンスに基づいた議論が進むことが重要。財源に限りがある以上、医療の中でメリハリをつけることは当然であり、経営が苦しい病院と高い利益率を維持する診療所との差異、病院についても機能別の検討、などを今回の診療報酬改定に反映させることが重要。また、調剤報酬についても、効率的な運営形態への移行を促す報酬体系へと抜本的に見直していく必要。
- かかりつけ医を地域包括ケアの中核に位置付けた上で、力強く推進することが国民の納得感を高めるためにも重要。外来医療の包括払い化を進め、かかりつけ医機能報告制度における1号機能を有していない医療機関は減算すべき。
- 低所得者等への適切な配慮を前提として、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の在り方への対応に大いに期待している。外来と病院とで扱いが異なるのは世界的には一般的であることも参考に、できるだけ幅広い外来薬剤が対象となるよう検討を進め、今年中に結論を出してほしい。
- 給付付き税額控除の実現に向け、必要な情報インフラの整備、個人情報保護との関係の整理などの取組を着実に進めるべき。また、情報インフラの整備がされる前の初期の制度設計の検討も必要。

