財政制度等審議会財政制度分科会
〔議事要旨〕
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1.日時令和7年4月15日(火)9:00~11:00
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2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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3.出席者
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(委員)
増田寛也、秋池玲子、大槻奈那、河村小百合、熊谷亮丸、小林慶一郎、佐藤主光、武田洋子、田中里沙、土居丈朗、藤谷武史、宮島香澄、芳野友子、上村敏之、遠藤典子、小黒一正、木村旬、権丈英子、小林充佳、櫻井彩乃、佐野晋平、中空麻奈、平野信行、広瀬道明、福田慎一、堀真奈美、神子田章博、横田響子、吉川洋(敬称略)
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(財務省)
横山副大臣、宇波主計局長、前田次長、中山次長、有利総務課長他
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4.議題
- 活力ある経済社会の実現・安心で豊かな地域社会の確立(財政各論Ⅰ)
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5.議事内容
- 本日は、「活力ある経済社会の実現・安心で豊かな地域社会の確立(財政各論Ⅰ)」という議題のもと事務局から資料に基づいて説明を行い、その後質疑を行った。
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各委員からの質疑や意見は以下のとおり。
【経済社会情勢】
- 前日公表した人口推計によると、昨年の日本の人口は過去最大の減少幅となった。人口減少下における社会のあり方を考える際に、人口密度という視点が不足している。限られた財源・人材の中における生産性向上の検討に当たっては、人口のボリュームだけでなく、人口密度も考慮すべき。
- デフレから脱しつつある現状において、本来あるべきは需要喚起ではなく供給力の強化であり、供給力強化に向けた生産性の向上が必要。
- 人口減少やインフラの老朽化などは、従前から指摘されている課題であり、スピード感を持って対応すべき。各論点に対する具体的な手法について、もう一段階踏み込んで議論すべき。
- 今後、日銀が国債の買入を減らし、金利ある世界に移行する中で、あらゆる歳出にはコストがかかる。コストに見合った効果があるのかという点について、もう少し着目すべき。
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【活力ある経済社会の実現】
<労働・人的投資等>
- 労働生産性の向上の観点から、三位一体の労働市場改革を進めるべきであり、特に、非正規雇用労働者へのリ・スキリングの強化、正規雇用労働者との格差是正などを進めるべき。
- リ・スキリングについては、新たな職務やステップアップに繋げることが重要であり、個人への支援を充実するとともに、必要なスキルの明確化、能力評価の仕組みの構築を進めるべき。
- 労働参加を促す観点から、誰もが働きやすい環境の整備が必要であり、業務の効率化・合理化を進めるとともに、多様な働き方を労働者が選択しやすくすべき。
- デジタル化を進めることにより、地方行政も含め、公共セクターにおける労働シフトを進めることも重要。
- 現在の認証評価制度には問題がある。学生への付加価値等、アウトカム指標を設定した上で客観的な評価を強化し、予算配分にも反映すべき。
- 国際的な日本のプレゼンスを維持するためにも、教育の質の引上げが必要。学生に選ばれなかった大学を税金で支えるのは理解しがたく、支援の対象の重点化等により、規模の適正化が必要。
- 撤退戦略が重要。大学を作る方には手続きがあるが、撤退の方には手続きがない。学生へのセーフティネットを含め、撤退しやすい環境整備が必要。
- 奨学金返還が困難な者がいるからと言って安直に支援をするのでなく、なぜ返還できないのかに着目し、しっかり稼げる職業に就ける教育ができていないことを問題視するべき。教員数も含めダウンサイジングできていないこと、教育の質が担保されていないことが、日本経済低迷の一因ではないか。
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<企業支援>
- コロナ禍で急増した中小企業支援は、早期にコロナ前の水準に平時化するとともに、今後は一律の資金援助によるのではなく、将来の成長へのインセンティブ付けに重点を置いた支援や、賃上げにとって重要な価格転嫁対策・下請け保護などに移行していくべき。
- 大企業を含む特定産業の支援について、妥当性を客観的・透明性を持って判断し、国民の理解を得ながら行う必要。その手法として、設備投資への直接的支援が真に有効な成果を上げているか検証しつつ、金融市場整備や政府によるリスクマネー供給の強化等により、まだ余剰のある国内の民間資金による発展が主軸となるべき。
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【安心で豊かな地域社会の確立】
<地方創生2.0>
- 人口減少を前提として、経済成長実現、社会機能維持をさせる方策の検討が急務。時間軸を意識しつつ、人口密度の維持向上、都道府県域を超えた自治体間連携や最適な資源配分を図る必要。また、DX化等を通じた地方行政の効率化も必要。
- 若年女性の地方からの流出は、雇用創出のみならず、性別分業意識の改革や環境創出も課題。年齢・性別ごとなどの細やかなデータ分析、政策立案が必要。
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<社会資本整備>
- 社会資本整備は、人口動態やインフラの老朽化等を踏まえると、災害リスク等を踏まえたコンパクトなまちづくりや、都道府県域を超えた広域化等について、時間軸を考慮しつつ、実効性の高い計画の立案とともに、実行していく事が必要であり、優良事例の横展開などのみならず、法規制・誘導的施策の強化や、効果的なインセンティブ・ディスインセンティブの活用等を通じ、施策の実効性を高めていく事が重要。
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<地方財政>
- インターネットバンキングなどの急速なデジタル化に伴い、あるべき税収帰属との乖離が生じており、早急な対応が必要。
- 地方税収の東京一極集中が行政サービスの地域間格差をもたらしており、偏在性が小さい地方税体系を構築していく必要。
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<米・水田政策>
- 米の安定供給は重要な課題であるが、国が米の売買に関与する際には、差損等により大きな財政負担が生じないよう留意する必要。
- 米の安定供給のため、外国産米の柔軟な活用も検討すべき。
- 今回の米の問題や状況変化をきっかけとして、これまでの米・水田政策について、飼料用米への支援の在り方も含め、虚心坦懐に見直すべき。
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<地域資源等の活用>
- 地方創生において、観光は重要であり、アニメ・漫画などの日本のコンテンツ産業を活かした地方資源の活用など、地域でのコンテンツ造成が効果的。また、経済効果測定などを行いつつ、観光人口・交流人口で地域経済が潤うような観光モデルを構築すべき。
- 税の偏在について、観光も同じことがいえる。地域が観光を頑張っても、フランチャイズの飲食店などにリターンが吸い取られると地域振興につながらないのではないか。地域振興と税はセットで考えるべきではないか。
- オーバーツーリズム対策という観点からも、文化財の入場料引上げ・二重価格導入の検討が必要。個別には対応しづらい面もあることから、考え方の整理を政府として行うべき。