財政制度等審議会 財政制度分科会
〔議事要旨〕
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1.日時令和5年4月28日(金)15:00~17:10
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2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
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3.出席者
(委員)
増田寛也、秋池玲子、河村小百合、熊谷亮丸、小林慶一郎、佐藤主光、武田洋子、土居丈朗、宮島香澄、安永竜夫、芳野友子、上村敏之、遠藤典子、小黒一正、木村旬、國部毅、末澤豪謙、角和夫、田中里沙、中空麻奈、平野信行、広瀬道明、福田慎一、堀真奈美、神子田章博、横田響子、吉川洋(敬称略)
(財務省)
井上副大臣、秋野副大臣、宮本大臣政務官、金子大臣政務官、新川主計局長、寺岡次長、中村次長、八幡総務課長、松本調査課長他
4.議題
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事務局説明
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財政各論②:人口・地域
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国家公務員等の旅費制度の見直し
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5.議事内容
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本日は、榊原前会長から挨拶した後、「財政総論②:人口・地域」「国家公務員等の旅費制度の見直し」について事務局から資料に基づいて説明があった。
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各委員からの質疑や意見は以下のとおり。
【榊原前会長ご挨拶】
- 会長に就任してこの6年間、米中デカップリング問題、新型コロナの世界規模での感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻など、我が国の経済財政政策にも大きな影響を及ぼす様々な事象が発生した。
- この激動の時代の中で、財政審議会では一貫して歳出改革、特に社会保障改革に関する議論を積極的に進めてきた。また、2025年PB黒字化について、国家および経済の信認維持、リスク軽減の為にも極めて重要であるということを一貫して主張してきた。
- 平成最後の2018年秋の建議においては、平成の財政を振り返りつつ、新たな時代では財政を悪化させてしまった過ちを繰り返してはならないということを強く主張した。
- 令和元年春の建議においては、令和の時代は将来世代へのツケ回しに歯止めをかける時代としなければならないということを主張した。
- 昨年秋の建議においては、わが国財政が長年抱えている様々な課題を真正面から受け止め、そして解決していくことが、財政に対する市場の信認の維持や、将来世代への責任を果たしていくためには不可欠であると主張した。
- 2025年PB黒字化目標については、今後単なる目標に終わらせることなく、必達目標として必ず実現するためのしっかりとした道筋を提言していただきたい。
- 財政健全化は、経済成長、歳出改革、歳入改革の三本の柱で成し遂げるもの。今後は、歳入の改革についても、タブーを置かずに消費税を含めた様々な財源の確保についてもしっかりと議論をしていただき、それを提言に結び付けていただきたい。
- 私の後任は十倉経団連会長にお願いした。新会長に対しても引き続き、委員の皆様方のご支援、ご協力をお願いしたい。この6年間、多大な支援を頂き、改めて感謝したい。
【財政各論②:人口・地域】
<委員からの御意見>
- 人口減少が続く中でも、持続可能なサステナブルな地域社会の姿について議論を深めて、地域に関する政策の前提条件をそろえる議論の場が必要なのではないか。また、財務省においてできる限り俯瞰して、各省の政策の前提条件がそろっているかという視点で、横串を通してチェックしてもらいたい。
- 人口・地域という横串を通して議論すべきテーマという観点では、観光立国に向けた取組が必要ではないか。地域内での周遊や地域間の送客を視野に入れたインフラ整備や、里山風景をはじめとする観光資源の管理・保全など、観光にとどまらない地域産業の担い手作りといった視点も求められる。
- 地域の活性化に向けて、全国同一労働同一賃金というのを提唱したい。企業だけでは無理だが、そこを何か国の政策で補えないか。そこまでやらないと、東京から地方に人が動いていくということにはならないのではないか。
(少子化総論)
- 非正規のほうが働き方に融通が利く面がある一方で、様々な企業が最近は正規の社員に対しても幅のある働き方を提示しており、正規と非正規でかなり近づいてきている面もある。
- 少子化対策を検討する際、労働市場の格差、固定化の問題とセットで議論すべき。
- 少子化対策において未婚者数の増加も課題ではないか。その点に向き合う必要がある。
- 大手企業は、実際に行っている取組など具体的なことを発信していくことが必要。中堅・中小企業は、まず育児休業が取得できるような仕事の明確化と支援、リモートワークの充実が必要。業務が途切れないためのリスキリングや、仕事を離れる期間の情報共有など、きめ細かい具体的な活動を充実させることが重要。
- 企業の取組の見える化のため、例えば有価証券報告書への記載や、取組の独自性、オリジナリティーは何かということの具体的な内容を公表していくことが効いてくるのではないか。
- 少子化対策について、国の歳出を使ってできることには限りがある。世の中の意識を変えていくというところに力を入れると良いのではないか。
- 社会的な格差が広がらないように、同一労働同一賃金を是非推進していただきたい。
- 女性が普通に我が国で活躍できるような環境をつくることが、長期的な出生率の引上げには必要。
- 少子高齢化社会においては、学校の統廃合、ICT化、民間へのアウトソーシングが必要。
- 必ずしも人口密度が高いから出生率が低いとは限らない。むしろ、子育てしやすい都市構造をどうつくっていくかが重要。
- 出生率を上げるためには、結婚している方々に追加でどれぐらい産んでもらえるのかが重要。累進型で例えば第三子以降支援を手厚くするなど検討することが必要。
- 女性の労働参加率が高いほど出生率が高いということは、まだ社会に浸透していないので、声高に言い続けていくことが必要。企業サイドも女性の賃金の引上げが、出生率につながるということを意識して取り組んでいただきたい。
- 人口減少による労働力不足解消には、女性や高齢者の就労参加は必要であり、そのためには非正規の被用者保険の適用拡大と同時に、配偶者控除の見直しも重要。
- 少子化対策について、本当に効果のあるものは何かをきちんと検証していくことが大事。その際、きめ細やかにやることが必要。また、東京以外を地方としてひとまとめにするのではなく丁寧に検証することが有効。
- 少子化対策は、一人当たりで見たときの負担をいかにワイズ・スペンディングにしていくのかという視点が重要。生活関連サービスのインフラが維持できるように、コンパクトシティの推進、公的設備の集約化、DXといった、これまでのやり方ではない新しい提供体制の在り方というものを整備していく必要がある。また、投入した支出が本当に賢いものであったのかどうかPDCAの指標を設定していくことが重要。
- 東京が育児の現金給付を充実化させることは、東京一極集中を進めるだけでなく、全体としての格差を拡大することになり、是正が必要。
- 人口減少下の社会保障制度について、年金にせよ、健康保険にせよ、積立型に近い制度設計を考えていく必要があるのではないか。
- 少子化対策は、国、企業、地域社会、家族など、それぞれがやるべきことを分けて考える必要がある。そのうち国がやることは、政策立案時のEBPMの徹底と長期的な効果の検証、くわえて、所得の再分配である。
- 人口問題は最大の問題だが、バラマキは慎まなければいけない。現物出資も含めできるだけ効果的なもので対応することが必要。
- 少子化対策の中身について、予想される出生率の改善効果を必要とされる財政支出額と比較して、言わばB/C的な観点から政策の優先順位づけを行うべき。
- 非正規雇用で働く女性が多いことを考えれば、全ての労働者に雇用のセーフティーネットが適用されるよう、雇用保険の適用拡大を進めるべき。また、その対象者の範囲については、社会保険と足並みをそろえて検討することが重要。
- 自治体の少子化対策は、日本全体の人口のパイが増えない中で、非効率な住民獲得競争をしているように思える。少子化対策は、本来は国の仕事であり、自治体と国との役割分担を整理していくことが重要。
- 男性が育児休暇を取りにくいのは、人手不足で休みにくいという面がある。例えば退職した人を一時的に採用するなど検討を深めることが必要。
- 育休の取得は着実に増えてきている。まず大企業でしっかり取り組み、その流れを社会全体に広げていくことが重要。
- キャリアの蓄積が阻害されないような形で育休取得を促していくということが大事。
- 育児休業の取得について、男性の意識を変えるためには、配偶者控除と第3号被保険者制度の見直しが必要。制度改革に取り組んでいただきたい。
- 育児休暇について、期間や取りやすさもさることながら、重要なのは柔軟性。長期にわたって取得できる柔軟な対応が重要。
- 労働者が不足する中で、外国人労働者を増やすために日本の労働市場を外国人に開放していくことが重要。そのためには、企業も社会もダイバーシティに対する考え方をもう一段進めることが必要。
- 人口減少対策では外国人の受入れが必要。いずれ外国人抜きではやっていけない社会が来ると思う。その際大事なのは、単なる安い労働力と見るのではなくて、外国人も住みやすい生活環境を整える必要がある。
- 少子化対策の財源について、現役世代に負担が偏らないように全世代型で負担していくことが肝要。所得や資産の保有状況を把握して、より公正な負担の在り方ということを実現していくことが必要。また、国債という形でこどもたちの将来にツケを回さないようにすることが重要。
- 少子化対策の財源について、社会保険料は勤労世帯の負担が重く、雇用に悪影響を及ぼす。本来、消費税が社会保障の基幹財源でもあることから、消費税をタブー視しない議論があってしかるべき。
- 少子化対策は、その効果が現れるのは10年以上かかる中、安定的に将来にわたって財源を確保するとなると、消費税しかない。
- 少子化対策のための財源については、社会保険料か、消費税かではなく、相続税や贈与税など含めもう少し幅広く考えてもよいのではないか。
- 少子化対策の財源は、徹底した歳出改革、あるいは持続的な経済成長を通じた税収増が先決。社会保険料は企業の賃上げマインドに水を差すようなことにもなりかねないので、慎重に考えることが必要。
- 少子化対策の財源は基本的に税を中心に安定的な財源を調達すべき。税財源の整備に時間がかかるのであれば、その間は税制改正の計画をしっかり立てた上で、一時的なつなぎとしての国債発行を認めるといった現実的な財源の整備を目指すべき。
- 財源は、社会保険料を全く排除するものではないが、子育て支援による恩恵は社会全体に及ぶことから、広く負担していくという考え方の基に、税を主軸に安定的な財源を確保することが重要。消費税が最も望ましいが、最終的には社会保険料、所得税、法人税も含むベストミックスをどう構築するか知恵を絞ることが大事。
(東京一極集中・地方財政)
- 人口減少は避けられない中、必要なのは行政サービスと社会資本のコンパクト化と効率化。地方自治の原則は尊重しなければいけないが、国が強力に背中を押して進めるべき。
- 人口減少を補うための有力な一つの手段はデジタル化だが、これは地方こそ重要。対策の一つがデジタル田園都市構想であろうが、その成果はどれだけ出ているのかという検証も大事。
- コロナ臨時交付金のおかげで、地方自治体側からすると財源が担保できたということだが、その裏側では、国がその分赤字国債を出している。国と地方の財政収支のバランスを考えると、平時に戻していくことは当然必要。また、コロナ臨時交付金の使途を今後もしっかり公開すべき。
- コロナ臨時交付金については、使途含め、今後検証が必要。財政の正常化の観点から臨時交付金は廃止するという方向を打ち出すべき。また、臨時交付金は補正予算であり、巨額の予備費がその出どころとなっている。コロナで広がった財政の風呂敷を閉じる観点からも、今後、大型の補正予算や巨額の予備費というのは厳に慎むことが必要。
- 地方税収も過去最高を更新している状況であり、地方税で地方の収入が賄えるということであれば、地方交付税をその分借入金の返済に回すということをしっかりやっていくことが、国と地方の財政健全化につながる。
- 財源の多寡によって、行政サービスにいろいろ差がついてしまうのは良くない。税源の偏在についてしっかりと取り組んでいくことが必要。
- インターネットの発展などによって、地方法人課税についての受益と負担の関係が一致しなくなってきている。地方が法人課税を行う国は国際的に珍しくなってきている。
- 地方財政全体の透明化を高めるために、自治体の行政データの整備と開示が必要。デジタル技術の活用によって、地方の行政サービスの大胆な効率化を目指すとともに、データ整備と開示によって、各自治体の行政の運営実態を明らかにして、行政の品質向上につなげていく必要がある。
(社会資本整備)
- 地域のインフラに関し、建設時に「コンパクト」を目指すということは、初期的な投資を減らすという意味だけでなく、持続性の観点からも意義があることも念頭に置きながら、各地域が計画を立てていくべき。
- 立地適正化施策の成果の検証が欠かせない。しっかり検証したうえで、今後の施策を効果的に進めていただきたい。
- これまでは全国同等のインフラ整備を行ってきたが、今後は新しいものをつくるのではなく、メンテナンスに主体を置き、そのための技術開発を進めていくことでコストを削減していかないと、現在のネットワークを維持できないのではないかと危惧している。
- 近年、補正予算で多くの公共投資を積む傾向にある。きちんと当初予算で予算を組み、予算管理をしっかりやっていただきたい。
- 歳入改革の一番簡単なやり方は、受益者負担を増やすことである。インフラ整備にあたってはこうした考え方を入れていっていただきたい。
- 人口減少や災害リスクを踏まえたコンパクトなまちづくりは非常に有効で大切なことであるが、それに加えて、ネットワークの担保も大変重要。
- インフラ整備について、費用対効果をしっかり見てやっていく必要がある。日本の場合にはこれまでインフラを相当整備しているため、まずは既存のインフラをどう有効活用しながらレベルを維持していくかを考えることが必要。
- 人口減少下の持続可能な地域社会のデザインは重要。具体的には、効果的、効率的な社会資本整備、コンパクトなまちづくりが急がれる。公共事業費は毎年度6兆円前後で安定的に推移しているが、大胆に見直してはどうか。
(農村等)
- 農業のことを取り上げるときには、生物多様性の問題をどうするかということの観点を入れていただきたい。
(教育)
- 人手不足は教師に限ったことでないことを踏まえ、どのように教師を確保していくかということを考えていく必要がある。
- 少子化の中での教育の質を向上させることを検討する際には、義務教育だけでなく高等教育も重要。
- 免許がなくても従事できるような業務については別途採用して対応するなど柔軟に考えていく必要がある。
- 定数に応じての教員の量を画一的に増やすことを政策目標とするのは良くない。業務の内容や地域によっても柔軟にし、それによって優秀な人材が教員という仕事に魅力を感じるようになる可能性もあり、少子化に対応した新しい人材が育成できるのではないか。
- 資源もなくて、人口も減っていく日本にとって、教育は国力を維持するために非常に重要な分野。教育費の見直しを通じた教育の質の向上が人口減少時代の日本の国力の維持にどう役立つのか、その展望も併せて描いていくことが大事。
- 公立の学校の質を良くすることが重要。そのために優秀な先生に必要な報酬が出るような制度を考えることが必要。
- 教員の長時間労働の是正に向けて、再度の給特法の見直しや、外部人材の確保など、学校の働き方改革の実現のための予算措置が必要。
- 東京一極集中の流れを変えるために、オンラインも含む教育環境、また、地域の教育と世界の教育機関との連携など、場所や空間の制限が開放されるような仕組みを際立たせて、若者世代に伝えることが有効。