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財政制度分科会(令和4年4月8日開催)議事要旨

財政制度等審議会 財政制度分科会
〔議事要旨〕

  • 1.日時令和4年4月8日(金)14:30~17:20

  • 2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 3.出席者

    (委員)

    増田寛也、赤井伸郎、遠藤典子、大槻奈那、櫻田謙悟、佐藤主光、武田洋子、土居丈朗、中空麻奈、藤谷武史、宮島香澄、芳野友子、上村敏之、宇南山卓、河村小百合、木村旬、熊谷亮丸、権丈英子、小林慶一郎、末澤豪謙、角和夫、竹中ナミ、田近栄治、伊達美和子、冨田俊基、平野信行、広瀬道明、福田慎一、堀真奈美、神子田章博、村岡彰敏、吉川洋(敬称略)

    (財務省)

    岡本副大臣、藤原大臣政務官、高村大臣政務官、茶谷主計局長、奥次長、八幡総務課

4.

    • 事務局説明

  • 財政総論等

  • 文教・科学技術について

5.議事内容

    • 本日は、「財政総論等」、「文教・科学技術について」という議題のもと、審議を行った。

    • 各委員からの質疑や意見は以下のとおり。

【財政総論等】

<委員からの御意見>

  • 中国の対応が鍵になると思うが、かつての冷戦時のような東西のブロック経済化が今後進展するとすれば、今の物価上昇局面は長く続く可能性もある。従来の政策の見直しが場合によっては必要。

  • 議論の土台となる経済情勢、世界情勢が一変した。コロナ禍とウクライナ侵攻、すなわち疫病と戦争という人類の二大脅威に直面している。とりわけ心配されるのは、金利の上昇、財政の利払い負担の増。財政健全化の取組が一段と重要。

  • 財政の将来展望について危機感を持たざるを得ない状況であり、緊急事態宣言のようなものをしかるべき時期にきちんと出すべき。財政的に見ると、社会保障、成長戦略、国防、食料安保、地方など解決しなければならないニーズばかりである。具体的な制度・仕組をどうしていくか考えなければならない。また、認識と提言と目標の3つをパッケージにしたような、長期的課題に対する緊急提言を出す時期に来ている。

  • 大きく世界が変化している中で、国家戦略として、秋の建議でも指摘したが、将来の不確実性に備えた余力を持っておくべきであり、そのために、財政の健全化を進められるときに進めておくべき。

  • 因果関係が明確ではないKPIが設定されている。民間が言うPDCAとは全く異なる。

  • 新しい資本主義の議論は適正再分配だと思うが、配分の原資は、企業が稼がなければならない。そのために、デジタル化はまさに生き残りのためにマスト。ICTの資本ストックがかなり少ないことはかなりのディスアドバンテージ。

  • 新型コロナ対策で大きな経済対策を打ったにもかかわらず、短期国債、短期の調達でぐるぐる回しているだけで、誰がどういう形で負担を分かち合うかという議論をまだ全然できていない。

  • 日本の経済の状況は、インフレとデフレという、本来共存するはずのない両者が併存。経済全体として、コロナ禍でも新陳代謝が全く進まず、経済の潜在的な成長力が更に弱くなり、デフレリスクにもつながった。

  • 国際的なインフレと金利上昇は、コロナからの回復に伴う一時的現象ではなく、グローバリゼーションの巻き戻しやグリーンフレーションといった構造的要因に起因していると思う。完全なデカップリングはあり得ないが、グローバル化の流れが滞ることは間違いなく、グリーンフレーションがエネルギー価格の上昇を招くという構図は、10年単位で続くと覚悟する必要がある。

  • 本来は例外からの脱却を急ぐべき局面であるのに、現在、政府においては物価高の対策等で補正予算の策定を求める声が上がるなど、夏の参議院選挙に向けて、更に財政規律が損なわれようとしているのは憂慮すべきこと。骨太方針でポストコロナの日本の再興戦略を取り上げていくわけであるが、その中で、限られた財政資源を、長期的な成長と社会の安定を図るために、いかに有効に配分するかという観点から、今後の財政運営のグランドデザインを示すべき。

  • 昨年秋の建議で3つのリスクを掲げたが、その中で金利上昇リスクが顕在化しつつあるということに加えて、ウクライナ侵攻により4つ目の安全保障リスクも財政的に抱えることになった。そうした意味では、ますます平時の財政余力を確保しておくことが重要になった。また、我が国では、ワイズスペンディングという言葉が、悪用されている節もある。アウトカムを志向する財政支出を意味する「アウトカムオリエンテッドスペンディング」など、より正確な意図が表れる表現にすべき。

  • 補正予算は、当初予算にくっつけてしまうため、補正予算の効果を見ることが基本的には出来ず、検証がしにくい。基金も執行すればよいというものではなく、その事業のガバナンス、取組姿勢、効果など、全て厳格にチェックしながら進めるべき。

  • 春の財審では、補正予算に頼るべきではないことや、基金や多年度予算を隠れ蓑にしないこと等を確認する必要。スタートアップは重要だが、スタートアップだからといってお金を流すのではなく、内容を精査し、しっかりとした目利きが必要だということを勘案すべき。

  • コロナに対し日本の財政はどのように対応したのか、コロナ対応は財政健全化にどのような影響を与えたのか、危機に対し財政はどのような役割を果たすのかを、財政健全化へ向けた分析のためにも、しっかりと検証すべき。

  • 財政の在り方は、新しい資本主義の在り方と一緒に議論する必要。財政政策は基本的にマクロであって、自由主義経済を守る前提であるため、本来は価格システムにできるだけディストーションを与えないようにすべき。

  • 日米がEUに歩調を合わせ、2050年カーボンニュートラルを掲げたが、これを達成するにはかなりの財政出動が必要。

  • 社会保障と税財政一体改革について、若年世代の社会保障制度に対する信頼感が低下し、貯蓄性向が上昇している。全世代支援型社会保障制度への改革に向けて、安定的な財源の確保を進めるべき。

  • 今後の財政の中長期的な大きなテーマは、ソーシャルセキュリティーとナショナルセキュリティーのリバランス。当然増強が求められる国防費について、対GDP比の何%など大ざっぱな議論ではなく、日米同盟を強化するという目標を明確にした増強、を平時から行わなくてはならない状況になる。

  • 単年度主義の弊害是正について、予算の機動的な使用や単年度の予算消化の非効率をなくすということが原則だが、実態ではバラマキの道具になりかねないので、基金のガバナンスや補正予算の効果測定を徹底的にするべき。

  • 子供たちに財政について理解し、考えてもらうことが大事。模擬政府、模擬国会などにより、今、何に予算が必要なのかなどをお互いにディスカッションしてもらえばよい。

  • 解決の鍵は、若い人たちをどう財政の問題に引き付けていくか。

  • 財政教育について、大人も勉強すべき。その際、地方自治体が大事な役割を果たすと思う。国が財政的に行き詰まれば、交付税・補助金がなくなり、自治体の多くが行き詰まり、ゴミ処理や上下水道の整備など当たり前の行政サービスが滞る。こうしたことから、財政を住民に自分事と捉えてもらえるのではないか。

  • 財政教育では、将来世代の視点で現在の予算や政策のアウトカムを評価する姿勢を教えるべき。フューチャーデザインという考え方を子どもたちに教えるべき。

【文教・科学技術】

<委員からの御意見>

  • 人口減が最も早く影響するのは、幼児教育と義務教育。教育の質を高めるために、統合・IT化・アウトソーシングの3つの柱をより進める必要。

  • 教員が多忙なのはもともと業務を丸抱えしているからであり、部活動や親からのクレーム対応などを含め外部委託すべき。学校施設の複合化等については、施設の所有者が教育委員会である一方、管理責任者が学校長であることもあり、進めることが難しいため、管理責任の在り方自体を問うべき。

  • 教員は間違いなく過重労働になっていると思うが、子供たちにとって尊敬され、敬われるような職業であり続けるよう、教員の待遇、働き方改革の問題を真剣に考えるべき。

  • 教員の働き方改革に関連して、今年度勤務実態調査は、外部人材等の適切な活用が行われるよう、文科省だけで考えるのではなく省庁横断で取り組むべき。文教関連の政策においてアウトカムベースで議論するときは、最終的にどんな人にお金が使われているというだけではなく、どんな人にどうやって使われて、数年後、中長期的にどうやってアウトカムが出てきたか、しっかりと綿密に検証すべき。

  • 今年度、行われる教育勤務実態調査では、働き方改革につながるエビデンスを把握することが重要。また、学校施設整備について、児童生徒数等の推計を含めずに計画するといった非効率な施設整備の事例があり、改める必要。

  • デジタル化による業務の効率化を通じた働き方改革は重要。

  • 企業側からすればIT教育のミスマッチを感じるところが多い。ITにもデータサイエンス、AI、アプリ開発からノーコードまで様々であり、区分して考える必要。また、理系に専門教育として拡充すべき高度なレベル、文教教育の中で対応できるレベル、最低限必要なITリテラシーを持たせるために文理関係なく第二言語のような形で取り入れるレべルなど、段階を分けて全体のITリテラシーを上げていくということも考えるべき。

  • 大学設置基準の見直しについて、設置基準は質を保障するための最低条件であり、特に、兼務の取扱いやその際の条件について、とりわけ若手教員の処遇等が不安定にあることがないように制度設計上で留意すべき。

  • オンライン授業の上限単位数は古い基準であり、デジタル化の時代に適用していると学生のためにならないため、改める必要。

  • オンライン教育について、60単位の上限を設けるという趣旨は、デジタル教育、オンライン教育が質の劣るものとして相対的に順位が低いという概念であり、そもそも古い。

  • 人口減少下で高等教育の質をどう維持するか、という問題意識を持って取り組むべき。同じ定員でも、人口が減少すれば、学生のレベルは下がってしまう。大学の定員問題や評価に関連して、定員充足率や就職率ではなく、教育の質を把握することが必要。例えば、英国には高等教育の質に関連する指標として、卒業生の所得状況を調査して公表している。

  • 低所得者に高等教育のチャンスを与える方策は必要だが、学生の能力をどれだけ高められたかが大事。企業も、大卒資格などで評価するのではなく、高等専門学校や専門学校の卒業生でも学んだことに対して、評価すべき。十分に成果を示さない、あるいは改革ができない大学の再編や淘汰はやむを得ず、お金を入れることで救済すべきではない。

  • 全体の底上げをするボトムアップ的な教育、そして、世界のトップを育てる教育の両方が必要。トップの大学に資金を重点的に配分するなどメリハリづけも重要。

  • 科学技術予算の水準について、様々なデータを見て複眼的な分析が必要。人材の移動・流動化のためにも、社会人に対するリスキル・リカレント教育の体制の整備が極めて重要。失われた30年間からの脱却、産業構造の転換、イノベーションを含む新産業の創出を図るために、是非ともやる必要。

  • R&Dについては国に大きな役割があるが、ただ金を出すだけではなく、国がコーディネーターとして役割を果たす必要。

  • 研究のエフォート率の把握については、研究の世界ではこれまできちんとできていなかったところであり、はっきり指摘があったのは良いこと。

  • コロナ関係の補助金について、適切でなかったケースが散見される。無駄なところに無駄なお金が行っているという印象を受けるが、そうならないよう次善の策を講じられる仕組みを考えるべき。