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財政制度分科会(令和3年10月11日開催)議事要旨

財政制度等審議会 財政制度分科会
〔議事要旨〕

  • 1.日時令和3年10月11日(月)10:30~13:05

  • 2.場所財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 3.出席者

    (委員)

    赤井伸郎、遠藤典子、大槻奈那、神津里季生、榊原定征、佐藤主光、十河ひろ美、武田洋子、土居丈朗、中空麻奈、南場智子、藤谷武史、増田寛也、宮島香澄、安永竜夫、上村敏之、宇南山卓、河村小百合、木村旬、熊谷亮丸、権丈英子、小林慶一郎、小林毅、末澤豪謙、角和夫、竹中ナミ、田近栄治、伊達美和子、田中里沙、冨田俊基、平野信行、広瀬道明、福田慎一、堀真奈美、神子田章博、村岡彰敏、横田響子(敬称略)

    (財務省)

    鈴木大臣、伊藤副大臣、大家副大臣、高村大臣政務官、繁本大臣政務官、矢野事務次官、茶谷主計局長、奥主計局次長、坂本主計局次長、阿久澤主計局次

4.

    • 有識者ヒアリング

    • 「急性期医療提供体制、医療資源分散がもたらす「医療の質」と
      「医療費」への影響」
      ー 渡辺 幸子 グローバルヘルスコンサルティングジャパン 代表取締役社長

    • 「コロナ禍を乗り越えてあるべきプライマリ・ケア」
      ー 草場 鉄周 日本プライマリ・ケア連合学会 理事長

    • 「医療機関に対する新型コロナ関連補助金の『見える化』」
      ー 井伊 雅子 一橋大学 国際・公共政策大学院 教授

    • 地方財政について

5.議事内容

    • 本日は、冒頭、鈴木大臣、伊藤副大臣、大家副大臣、高村大臣政務官、繁本大臣政務官よりご挨拶があった。

    • 講師として渡辺 幸子 グローバルヘルスコンサルティングジャパン 代表取締役社長、草場 鉄周 日本プライマリ・ケア連合学会 理事長、井伊 雅子 一橋大学 国際・公共政策大学院 教授をお招きし、それぞれお話を頂き、次に、事務局から資料に基づいて説明があったのち、質疑を行った。

    • 次に、「地方財政」について審議を行った。

    • 各委員からの質疑や意見は以下のとおり。

【有識者ヒアリング】

<資料1-2に基づき渡辺幸子グローバルヘルスコンサルティングジャパン代表取締役社長から御説明>

  • わが国の医療制度は、1病床当たり医療従事者数が極めて低い「低密度医療」であり、コロナ禍によって瞬く間に医療従事者のリソースが枯渇することとなった。

  • 現行の診療報酬制度の下では各医療機関は病床を埋めるインセンティブが強く、それが素泊まり入院の慣行による在院日数の長期化や、外来化の遅れの原因となっている。

  • この「なんちゃって急性期病院」の存在が、医療従事者の分散や低密度医療を招くとともに、「医療の質」にも影響を及ぼしている。

  • 報酬制度を見直し、「一入院あたり定額払いの創設」や「外来可能手術へのインセンティブ付与」を実現するのに加えて、医療の質やアウトカムを評価する仕組みを構築することによって、コロナ禍でも柔軟な対応を可能にする、密度の高い医療提供体制を確保する必要がある。

<資料1-3に基づき草場鉄周日本プライマリ・ケア連合学会理事長から御説明>

  • わが国では、住民の身近な医療機関として、外来診療のみならず訪問診療なども提供するとともに、地域の総合病院などとの連携機能を果たす「プライマリ・ケア」の制度化はなされていない。

  • 今回、コロナ禍による医療逼迫でわが国のプライマリ・ケアの限界が露呈。包括的な外来診療を始め、PCR・抗原検査や訪問診療の実施等、現在非常に逼迫した中で公衆衛生が担っている役割は、本来はプライマリ・ケアにおいて担うことができたはずであった。

  • 今回のコロナ禍を契機として、有事であっても医療へのアクセスが維持できるよう、平素から地域と連携を取りながら対応することができるプライマリ・ケアのシステムを整備することが重要。この行政とかかりつけ医の連携により住民の健康サポートを隙間なく担う制度として、国民が自身の健康管理に対応する医師を選択する「かかりつけ総合医制度」を構築すべき。

<資料1-4に基づき井伊雅子一橋大学国際・公共政策大学院教授から御説明>

  • コロナ下での受信行動の大きな変化によって、医療機関への経営への影響が指摘されている。これに対し緊急包括支援交付金をはじめ国から様々な支援策が講じられているが、その支払いデータは都道府県が情報を公開しない限り「見える化」されず、またその支払先であるコロナ対応医療機関名も公表されていない。

  • 病床確保やワクチン接種促進など、コロナ対策として行われた巨額な財政支出の効果を検証するためにも、医療機関への影響などを早期に分析できる体制整備が必要。事業報告書のデータベース化に合わせて、交付された補助金なども把握できるよう、その内容の精緻化にも取り組む必要がある。給付後の患者の受入れ実績など事後検証して、医療の『見える化』を推進すべき。

<委員からの御意見>

  • 急性期医療に関して、DPC制度をとっているが入院期間が短くならないという点、地域医療構想は病院間の話し合いでは進まないという点、1日当たり払いのDPC制度から疾病単位、いわゆるDRG制度へ転換すべきという点、コロナ患者の受入人数と収益改善率があまり関係していないという点はご指摘のとおり。

  • 入院医療費について、DPCからDRGではなく、むしろPDPSからPPS、つまり、1日入院当たりから1入院当たりへの実質的な転換が必要。

  • 日本は、感染者数が非常に少なく、病床数も多いのに、医療アクセスが制限されているということは、理解しがたい事態。

  • 診療報酬と医療提供体制の改革はセットで進めるべき。

  • 今回の問題は「構造的問題」というのはまさにそのとおり。医療提供体制の改革を速やかに行わなければ、今回と同様の失敗を繰り返すことになる。

  • 「総合医制度」に賛成。現状、ほとんどの医学部が臓器別・疾病別に医師を養成しており、総合医をいかにして育てるか、医師の供給面からの検討の余地がある。

  • コロナ禍において、開業医がコロナ患者をお断りするケースなどが報道等であったが、これは医師の問題ではなく構造的な問題であることがよく分かった。しかし、一人医師の診療所から総合診療への転換を実現していくためにはどのような制度的支援が必要か。

  • プライマリ・ケアについて、長期的な話だが、囲い込みが行われて後発の医師が参加できないなど、競争阻害要因となることはないか。

  • プライマリ・ケアの仕組みを導入しようとした場合、何割の医師がプライマリ・ケアに転向できるのか。また、プライマリ・ケアの仕組みを制度として実現するには何年くらいかかるのか。

  • かかりつけ医は重要であるが、お題目になりがちなので制度化していくことが重要。

  • ワクチン接種を契機に、プライマリ・ケアの必要性が一部の国民に実感されたことで、今は見直しの好機。

  • プライマリ・ケアについて、総合医が現段階では限られている中で今後どういった時間軸で進めていけばよいか。包括払いとセットで行わない限り、医療費の抑制・効率化にはつながらない可能性あり。

  • 医師や看護師を爆発的に増やそうとおっしゃる人もいるが、そうした議論は違うということがよく分かった。

  • 「医療法人事業報告書を利用できるように」という意見に賛成。骨太にも記載があったように、速やかに実行していただきたい。

  • 補助金をもらっているのにデータの開示がないことは論外。

  • 病院側がデータを提出したり説明をしたりしなければならないと考えるような、補助金の要件定義が必要ではないか。

  • 補助金の費用対効果を見える化するため、医療機関の実態把握が必要。2年に1度実施される中医協の医療経済実態調査は、サンプル数は病院の約3分の1、診療所の約20分の1で、有効活用率も50%と限られているため、診療報酬改定の参考にするには少しバイアスが大きいのではないか。

  • 診療報酬のベースが、曖昧な医療経済実態調査で決まっていては根拠が弱い。事前調査などを加えたデータから診療報酬を変えていくことは最低限のこと。

  • 医療の現場をよく見るようにと言うが、エピソード主義になり全体の把握が難しくなる。全体を見渡した上で判断しないとやや偏ったことになる。

  • 第5波が落ち着いている今こそ、医療供給体制の強化に向けた制度改革を徹底的に行うことが重要。緊急時には医療資源を強制的に集約することや、一元的な司令塔に基づいた各地域の医療体制の連携が必要ではないか。

  • 5月の建議でも「医療提供体制の改革なくして診療報酬改定なし」と銘打っているが、やはり医療提供体制の改革を進めるためには、診療報酬の改革にも手をつけなければいけないということで、秋の建議でも診療報酬体系に言及する必要。

【地方財政について】

<委員からの御意見>

  • 令和2年度の一般会計税収決算額は、昨年末の補正後見積額を5.7兆円上回った。地方税収は国税から1年遅れるため、今年度は相当余裕が出てくると思われる。今回の予算編成では、それをベースに、過去の負の遺産の解決や、将来を見渡した予算編成を行ってほしい。

  • 一般財源総額実質同水準ルールに満足せず、税収が上振れたときにどうするのか、自治体の基金が積み上がり過ぎていないか、よく検証すべき。

  • コロナの収束に合わせて地方財政対策も平時に戻していく必要。令和2年度から令和3年度にかけての繰越金に、地方に配分する部分が幾らかあると思うが、今後の地方財政計画、地方財政対策を見極めていく上で、決算と計画の乖離に目配りし、その影響を検証する必要。

  • 地方創生臨時交付金について、感染拡大の防止にどうつながったのか、地方の経済の底支えにどうつながったのかなどの視点で検証すべき。

  • 地方創生臨時交付金は大きな役割を果たしたと思うが、同時に問題事例があったことも事実。今後、新型コロナウイルスを大幅に上回るようなパンデミックに備え、今回の交付金の使途を十分に検証した上で、地方自治体におけるこの種の対応の標準的なパッケージを策定し、提示する必要。

  • 地方創生臨時交付金について、コロナ対応のための交付金にもかかわらず、もともと予定されていた事業の財源として活用されている事例があり、ひどい事例については返還などの対応が必要。

  • 地方創生臨時交付金の活用事業について、適切な効果検証が行えるよう、KPIの設定等の工夫が必要。そして、一般財源総額実質同水準ルールの枠外であるからには目的と使途を明確に示す必要。

  • 基金について、額ベースで見ると、大都市の緊急事態宣言が長く出ていた地域が非常に影響を受けている中、37道府県で基金の額が増加している可能性があるという報道は、悲観せずに捉えられる。一方で、市町村単位でコロナの影響が産業構造を含めどのように出ているのか検証する必要。

  • マイナンバーカード普及促進について、金銭メリットは一定の効果があったものの頭打ちである。御説明の例にあったとおり、デジタル化の入り口として、地方公共団体による窓口のサポート等のヒューマンタッチが効果的であり、国と地方との連携が必要。

  • マイナンバーカードについて、今回のコロナ禍のような緊急事態において、迅速かつ確実な支援体制の確立のために重要。また、平時においても、正確な所得捕捉に基づく公平公正な税制の実現という観点からも重要。

  • 地方は対面を前提とした窓口業務が中心だったが、マイナンバーカードが普及すると、必ずしも自治体を通して公的認証する必要はなくなる。各種給付金や補助金について国からのダイレクトな支給も可能になってくる。これからの国と地方の新しい役割分担を見据えて普及を進めていくべき。

  • インフラについて、被害の大きさとコストの関係から優先順位づけして効率的に対応するという視点を強めていく必要。