このページの本文へ移動

財政制度分科会(平成31年4月17日開催)記者会見

平成31年4月17日
財政制度等審議会 財政制度分科会


 
〔増田分科会長代理〕 お待たせいたしました。本日15時30分から、財政制度分科会を開催いたしましたので、その状況を私から報告したいと思います。

 基本的に大きく二つでございます。一つは、我が国財政の現状等について、委員の皆様方でディスカッションをしました。それからもう一つは、来月5月13日に大阪で地方公聴会を開催するので、各委員の方に御報告をしました。

 それでは、前半の我が国の財政の現状、資料1について各委員から出た意見を、委員の方の名前は伏せて御紹介したいと思います。

 まず、ある委員ですけれども、10月に消費税率の引上げが予定されておりますが、幼児教育の無償化などによって起こるポジティブな面もあわせて伝えていくことが、国民の理解を得るに当たって重要と考えている、という意見であります。

 次の委員ですけれども、財政の状況について若年層に対する政府広報が重要という点について、財審でも認識が共有されたようで嬉しく思いますと。これは、後の地方公聴会などを意識しているということもあってだと思います。どのように進めていくか、今後さらに議論していくことが重要であるとの意見でした。

 別の委員ですが、プライマリーバランスの黒字化について、何回か先送りされてきましたが、先送りされてきたことについて、政府も国民も慣れ切ってしまっていることが問題ではないか、という意見であります。要は、安易にプライマリーバランスの黒字化を政府が先送りしてきたことで、プライマリーバランス黒字化の意味を国民がきちんと受け止めていないという事態につながってきたのではないかという意見です。

 別の委員の方の意見ですが、この方はドイツとの対比についての発言です。少子高齢化については日本とドイツ、同じような状況にあるにもかかわらず、財政状況は日本とドイツとでは違っているわけで、日本とドイツの違いを対比させながらきちんと示していくと、国民の理解が進んでいくのではないかという意見でございます。

 それから、受益と負担について、深刻な未来という形を共通認識としていて、建議の資料の中にも共有地の悲劇として紹介したわけですけれども、個々人の負担を「見える化」するような伝え方が重要ではないかという意見がありました。

 次の委員の方ですけれども、ドイツにもう1回戻りますが、ドイツのシュレーダー政権が2007年に付加価値税率の引上げを行いましたが、それでも実質成長率は3.7%を維持しているわけです。この方の意見は、日本と照らし合わせてみると、その辺りが大変興味深いと。要は、ドイツでやられていること、日本でやれなかったことをきちんと分析して示すことが重要ですと。これは私の解説ですけれども、シュレーダー政権のときに労働市場改革が行われたということも意識して、こういう意見を言われたものと理解しております。

 次の方の意見ですけれども、一つは、堅実な経済前提のもとで財政健全化に取り組むということが重要だということ。あと、資料の最後のほうに入れてあるMMTの議論について、様々な意見や議論が、特にアメリカを中心にしてあるわけですが、結局、いわゆるフリーランチはないということに尽きるのではないか。フリーランチというのは、平たく言うとタダ飯ということですが、タダ飯ということは決してなくて、後で何らかの形でツケを払わなくてはいけない。その方の発言全体を聞いていますと、後でインフレが起こる、あるいは急に災害が起こったときの財政的な余裕がなくなる、というようなことをおそらく意識していたのだと思います。全体の御紹介なのでできるだけ客観的に申し上げていますが、私も会議の中で、MMTはセオリーではなくて、ポリティカルなアクティビティのようなものに見えますと申し上げました。

 また別の方なのですが、この方はドイツの財政健全化について独自にいろいろ調べておられるようで、ドイツは受益と負担の関係を制度的にも非常に明確に結びつけており、また5人の識者による予測を行うなど非常に堅実な成長率の見通しを立てているということで、日本として学ぶべき点が多いという意見でありました。

 次の方の意見でありますが、財政健全化に向けての取組はやはり痛みを伴うので、ある程度の経済成長の中でやっていく必要があると。それと、やはりこの方も、堅実な見通しの上に立って財政健全化をしていく必要があると言っております。それからその上で、10月の消費税率引上げを確実に実施することが必要だという話をしております。この方は、成長と財源確保と歳出と、この3つで一体的に改革するしかもう方法はないんだと。その大前提として、堅実な見通しの上に立って行っていく必要があるということであります。

 別の委員の方ですが、一般の方もいろいろ考えておられて、消費増税を受け入れる、税率が上がってもそれを我慢する必要があるという思いにまでは至っているのではないか。ただやはり、自分事として受け入れるというところには壁があって、それを乗り越えていくためには、自分たちで理解して考える場、環境を整備していくことが必要だと言っておりました。

 別の方の意見ですが、財政健全化へ向けての国民のコンセンサスづくりということですが、コンセンサスづくりは時間がかかって難易度が高い。それを進めていく上では、日本でもシュレーダー氏のような強烈なリーダーシップを持つ人が出てくる必要があるということを言っていました。

 別の方、この方は大学で教えているという関係で、財政について学生に教えていると、やはり単位が100兆円とあまりにも大き過ぎてぴんときていないため、規模感が伝わるようなプレゼンの工夫が必要だと言っていました。

 次の方の意見ですが、今後、消費税率が上がっていくということについて、幼児教育の無償化のような見返りがあるなら受け入れるという声も聞くが、そもそも1,000兆円を越える債務が積み上がっているということを丁寧に伝える必要があると。見返りがあるから受け入れるということよりも、もっと根っこのところをきちんと伝える必要があるということだと思います。

 次の方の意見ですが、社会保障と税の一体改革の時期と比べると、国民にとって差し迫った状況が少し薄くなっているのではないかと。消費税率も10%になると、財源のほうにある程度手当がされたという思いで受け止めるのではないか。ですから、それ以上の負担を御理解いただくということは、以前よりもずっとハードルが上がっていると認識する必要がある。より説得力がある、分かりやすい説明をするという意識で、今後取り組む必要があるということです。

 次の方、これが最後になりますが、我が国の債務残高対GDP比が世界で一番大きいことに対して、大変衝撃を持って受け止めているけれども、若い人たちにこうした数字を含めて分かりやすく伝えていく必要があるということでありました。

 発言の順番でお伝えしたつもりでありますので、項目としては大分重複しているところはございますが、意見の内容については以上でございます。

 それから、2つ目の大阪での地方公聴会について、私から簡単に御紹介いたします。5月13日に大阪で開催されます。昨年の建議を受けて作成された、今年2月の「委員の意見の整理」の中で発信力の強化が謳われていますので、その一環としての大阪での地方公聴会という位置づけでございます。

 お手元にチラシがあるかと思いますが、地方公聴会の開催が13年ぶり、大阪での開催は2004年8月以来の15年ぶりの開催ということになります。

 分科会からの出席予定者は、榊原会長、会長代理であります私、関西を拠点にしていらっしゃる赤井委員、上村委員、角委員、竹中委員です。それから地元の自治体ということで、滋賀県、奈良県、大阪府の知事等、また、関西経済界からは関経連の松本会長、大阪商工会議所の尾崎会頭などに御出席いただく予定です。財務省からは、うえの副大臣、伊佐政務官に出席していただきます。

 内容は3部構成となっていまして、第1部で、榊原会長から、我が国の財政状況や財審の活動状況などについて基調講演を行っていただき、第2部で、滋賀、奈良、大阪の3府県の知事から、国民健康保険における改革、取組事例について発表していただく予定でございます。第3部で、財審の委員、関西経済界、それから、うえの副大臣を交えて、パネルディスカッションを行うことにしています。モデレーターは伊佐政務官です。そして公聴会の終了後に記者会見を行います。

 参加者の募集はインターネットで行うこととしております。その際に、あわせて財政に関する意見も書き込めるようにしておりまして、会場で可能な範囲でその内容について御紹介する予定でございます。専用申込サイトは今晩オープン予定であります。締め切りが5月6日、連休最後の日になっています。

 それから、新しい試みとして、できるだけ発信をしたいということで、インターネットでライブ中継を行うことにしております。公聴会の模様について、ユーチューブの財務省公式チャンネルMOFJapanにて、当日視聴が可能です。また、中継が終わった後も視聴できるように、オンデマンドでの配信も予定しています。

 当日の取材は、マスコミフルオープンということでございますので、取材を御希望の場合には、別添の取材要項を御覧の上、お申し込みいただきたいと思います。

 以上が、地方公聴会についてのお知らせでございます。

 なお、リーフレットをお手元にお配りしているかと思いますが、そちらは一般向けの御案内ということであり、御不明の点がございましたら事務局までお問い合わせをいただきたいと思います。

 私からの御紹介は以上でございます。それでは、質疑をよろしくお願いします。

〔幹事〕 MMTについて、セオリーではないという御意見もあったということですが、肯定的というか、一理あるという御意見は出ましたでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 本日の財審の議論の中では、委員の皆様、否定的でございました。それから、セオリーでないというのは、私が意見で言ったのですが、それとほぼ同じことを言った方もほかにおられます。

さらに言いますと、アメリカでは民主党内でこの議論をいろいろ言っており、そこが発信元でもあるのですが、今回の財審の資料の中でも、日本以外の各国の皆様方はほとんど否定的で、インフレを招くとか、財政や通貨の信認をなくすとか、いろいろなことを言っています。また、私が本日感じた限りでは、財審のメンバーでエコノミストの方が多くいらっしゃいますが、皆様同じような認識を持っておられるのではないかというふうに思います。

〔幹事〕 もう1点確認ですが、発信力の強化が大きなテーマの一つだということですが、5月の地方公聴会のほかに、何か今後、具体的に実現しそうな取組はありますでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 これは私の考えでもありますが、地方公聴会は大阪だけでいいのかという問題もあります。一度大阪でやってみて、その結果を分析して、別の地域での地方公聴会も含めて、また、ほかのやり方も含めて、次はどういう形でやっていくのかを考える必要があると思います。ただいずれにしても、これからの展開を考えると、発信力の強化は必須ですので、様々な検討を前向きに考えていきたいと思っております。

〔幹事〕 ありがとうございます。

〔質問〕 重ねて、MMTについて質問で、肯定的な意見は出なかったということですが、このMMTのくだりではどれくらいの数の意見が出たという感じですか。

〔増田分科会長代理〕 名札を挙げた人から順番に発言していただいたので、取り上げた人、取り上げなかった人はもちろんいますが、MMTについては、あまりにも理論ではないという感じで、もうあえて言うまでもないような雰囲気を私は感じましたけどね。MMTだけを取り上げて議論するとなると、もっと盛り上がったかもしれませんが、本日の議論では、皆様、MMTについて非常に冷めた感じでありました。

〔質問〕 増田会長代理の御指摘の政治的なアクティビティというのは、サンダース氏のことを念頭におっしゃっているという意味ですか。

〔増田分科会長代理〕 アメリカのことをそこまで分析しているわけでもないですけれども、サンダース氏が言うような完全雇用実現みたいな話もやはり出てくるわけで、財政出動の話につながってくるのですが、現在のアメリカ、あるいはヨーロッパも含めて、各国の状況を見ると、基本的には、いわゆる経済論、金融論を含めて理屈を言う人たちはほとんど否定的ですよね。

 アメリカの今の社会の中でMMTが必要だという根っこがあるから、ある程度政治的にパワーを持ち得るのであって、民主党の中ではかなりこの主張に賛同する人が多いというふうなことも聞いてはいますけれども、政治運動の一つの理念というか象徴として取り上げられている部分が、今のアメリカではあるのではないかなというふうに私は思います。29歳の下院議員のコルテス氏だけではなくて、次の選挙を狙う人たちもかなりその主張に賛同していて、やはり一種のポリティカルムーブメントというか、ポリティカルアクティビティというか、そういうものになってきたのではないかなと思います。

〔質問〕 委員の方は皆様同じような意見だったということですけれども、本日の資料の内容を拝見すると、MMTに限らずいろいろな指摘に答える資料が集められているなと思いましたが、この段階でこういう資料を提示したというのは、やはり財政再建を進める上で、財政再建は必要ないという勢力が少し足かせになっているような実感が、現場としてもやはりあったということの裏返しなのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 資料自体は、皆様かなり斬新に受け取られたのではないか。例えば、ワニ口の資料のように、ずっと継続して示している資料はもちろんありますが、新しく作成した資料が、今回かなり多いですよね。ですから皆様、そこは非常に新鮮に受け止めた。

 それからやはり、結論というか、結果を見ると、昨年秋の建議でも言ったとおり、平成の時代というのは非常に悔いの残るものであり、財政健全化からはうんと距離感のある結果でしたので、やはりそれは、財審も責任の一端を担わなくてはいけないので、やはり財審としての危機意識は高まっていますし、議論をこれから進めていく上でも、やはりこういう資料がベースとなり、この上に立ってこれから議論していかなくてはいけないのだなという受け止め方をしている委員が非常に多かったと、私は感じました。

〔質問〕 建議の中でもあった、歳出増圧力に抗えなかったという表現について、財政再建不要論を主張する方々というのは、やはり財政再建をやらなくてもいいのではないかという思いをもっているので、そこを排除していく上でもこういうデータが必要ということですか。

〔増田分科会長代理〕 そうですね。それは、何も財政再建不要論を主張する方々がどうのこうのというよりも、伝える側の伝え方が足りなかったという受け止め方もあるかもしれません。いずれにしても、結果として、財政健全化から遠ざかっていくような数字が示されていますので、やはり危機意識というか、様々な面でしっかりやらなければいけないというスタート点だと受け止めたというふうに思います。

〔質問〕 今回、現状認識に加えて、情報発信というところにも一部踏み込んだ中身になっていますけれども、今後、財政再建というゴールに向かうに至っては、どのようなパスで進んでいこうというイメージなのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 やらなければいけないこととして、歳出改革は当然ですし、それから消費税率は10%に上がると思っていますけれども、財源をきちんと確保するということは当然必要です。それから先ほど御紹介したように、きちんとした前提を置いて議論していくということが大事ではないかなというふうに思いますね。経済成長がうんと背伸びしたような形で進んでいくような前提よりは、やはりベースラインで、堅実な目標の上に立って議論していくことが必要なのではないかと受け止めている委員が多いと思います。

〔質問〕 我々も、内閣府が出す中長期試算の成長実現ケースは認識が甘いのではないかと指摘することがありますが、あれでも2026年にやっとPB黒字化というデータになっていますけれども、実際としては、もっと努力が必要だという認識なのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 本日は、内閣府の中長期試算について具体的に言及した委員はいませんでしたけれども、しかし複数の方が、堅実な前提に立って議論を進めていく必要があると言っていましたので、それをさらに分解していくと、その頭の中には、今、政府が取り上げているそのような見通しがあるのではないかなと私は思います。

〔質問〕 これは一松課長に伺ったほうがいいかもしれませんが、MMTを巡って、ある意味冷めていたという話が結構多かったとは思いますが、なぜ今回、この財審でMMTを取り上げたのでしょうか。MMTはセオリーではないとの立場というのはよく分かりましたけれども、国債を発行して、いろいろと財政出動すればいいのではないかという、聞こえの良い理論が世に出てくると、あるところで釘を刺すような段階があってもいいのかなということで、今回、この話を議論したのでしょうか。MMTがセオリーでないというのだったら、あえて取り上げる必要もないのかなという気もしたのですけれども、今回、これをあえて議論した理由を教えていただければ。

〔調査課長〕 率直に言うと、MMTが今政策的なところにかかわってきているという認識は、全くもってないわけです。ただ、今回の資料を作成させていただいたのは、国民の皆様の間にあるいろいろな御懸念、御指摘、御疑問についてはできるだけ拾いまして御紹介するという目的からです。そういう意味では、2年半前に流行って、今はあまり言われていないシムズ理論もあえて載せていると。その背景としては、今年2月に委員の意見を集めて整理したときに、いろいろな議論に対して答えていく姿勢というのがやや欠けていたのではないかという御指摘もあったものですから、そこは少なくともきちんと海外の事例紹介の中で取り上げることにしたということでございます。

〔増田分科会長代理〕 私も一言言いますと、取り上げたほうと私とでは立場は違いますけれども、ケルトン教授は、やはり日本が一つの良い例だということを言われていて、それは、学問の世界では非常に異端であるとは思いますが、やはりこれから、アメリカの政治的なムーブメントとして出てくる可能性は大きいのではないかと思うので、やはり財審の中で一度はMMTについて議論しておく意味はあるのではないかなというふうに思います。日本でMMTがどれだけ広がるか、それは全く分かりませんけれども、消費税率の引上げに対してのいろいろな対策等も講じていますし、災害も多発しているし、全体としては当初予算が100兆円に乗っていて、歳出規模の拡大が非常に起こりやすい状況にある中で、しかしこれ以上そういう流れがあると、やはり財政再建からどんどんどんどん離れてしまっていくので、私は、こういう議論をきちんと財審で行う意味は十分あるのではないかなと思っています。

〔質問〕 先ほど会長代理から、平成の債務累増に対して、委員の間で危機意識が高まっているというお話があった一方で、一体改革のときと比べて国民の危機意識が薄れているという意見もありましたが、実際、例えば日銀が国債を買えば相殺できるといった、今までだったら極論ととられるような主張をある程度信じる人が出てくるといいますか、受け入れられるような土壌になっているという、その辺りに対しての危機意識があって、もう少し釘を刺したいといったお考えがあるのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 委員の中には、今、おっしゃっていただいたような危機意識を持っている方もいると思います。社会保障と税の一体改革がスタートした時点に比べて、少し切迫感において差が生じているのは、異次元緩和の中で日銀の政策も大分変わり、それを踏まえて少し危機意識が薄れたから、あるいは財政的な危機の状況が見えにくくなったからだというふうに考えておられる委員はいらっしゃると思います。

〔幹事〕 そのほか質問がなければこれで終わります。どうもありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕 どうも遅くまでありがとうございました。

(以上)