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財政制度分科会(平成30年10月30日開催)記者会見

平成30年10月30日
財政制度等審議会 財政制度分科会


 

〔増田分科会長代理〕 それでは、記者会見、記者発表を行いたいと思います。

 本日10時から、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたしました。

 本日は、まず、講師として三原岳ニッセイ基礎研究所准主任研究員をお招きして、社会保障制度改革における自治体の役割、特に医療行政の都道府県化の現状と課題について、お話をいただきました。その後、事務局から地方財政について説明をしていただいて、質疑を行いました。

 初めの三原さんのプレゼンのほうですけれども、各自治体、都道府県の行政の現場での様子を中心にお話があったのですが、特に都道府県の総合的なガバナンスの強化を期待するということが、国、厚生労働省などのこれまでの発言などではうたわれているわけですが、それと都道府県との間で認識のギャップがあるといったことについて、三原さんのほうから説明がありました。

 次の地方財政に関する事務局からの説明でありますが、こちらについては一般財源の総額、一般財源総額の実質同水準ルール、平成23年からスタートして、現在までとられているのですが、先般の「新経済・財政再生計画」でもこれが維持されているわけであります。こういうルールのもとで、総務省などから要望が出ているのですが、そういったことについての説明をどのようにしていくかという説明があったところであります。

 質疑の様子、意見について少し御紹介をいたします。

 まず、前半の三原さんからの説明に対しての各委員からの意見などですけれども、ある委員のほうから、現在、地域医療構想を推進しようとしているわけですが、現場でそれがきちんと実行に移されていないのは由々しき事態であるとのご意見がありました。住民にも全体のコストを認識してもらって、コストを賄えなければ保険料が上がるということを十分認識してもらう必要かある。それから、この委員からは、三原さんの資料の中で紹介があった奈良県のような先進事例は讃えていくべきという意見がありました。

 別の委員の意見ですが、この方も、地域医療構想は期待が大きかった分、現場が説明あったような状況なのは残念であるということ、それから先進的な事例として奈良方式を推進すべきと、こういう意見がありました。その場合に、どういった形で奈良方式を推進していったらいいかという質問に対して、三原さんからは、奈良方式は県が主体であると、これが奈良県の特徴で、もう一つ、資料の中に出ていましたが、佐賀県の方式というのも、関係者の合意形成を積み上げていくというなかなか良いやり方、ベストプラクティスであり、こういった先進的な取組をあちらこちらで取り上げていくことが重要だと、こういう三原さんからの回答がありました。

 別の委員の方ですが、この方の意見は、財審でこれまでも地方自治体の法定外繰入について、普通調整交付金の配分の仕方を議論してきたと。これについて、年齢で再計算した標準的な医療費で配分する必要があるのではないかという意見がありました。

 別の委員の方ですが、いわゆる財政の状況について国などから積極的に情報提供することによって、各地のお医者さんの意識も変わってくるのではないかという意見がありました。それから、やはり改革をするに当たっては、自治体に改革のインセンティブが働くような制度設計が必要になるのではないかと、こういう意見がありました。

 別の方の意見ですが、やはり先にあった方と同じように奈良方式が先進事例ということで、これを横展開で広げていく上でどのようなインセンティブをつけたらよいのかという質問がありまして、三原さんから、国保の保険者努力支援制度について法定外繰入の解消努力、各自治体で行う法定外繰入の解消努力を評価して、それによって差をつけて支援していくことが必要ではないかという答えがありました。

 次に、厚生労働省において議論が進められた地域医療構想の策定にも携わった委員の話ですが、地域医療構想ができ上がり、その上で三原さんが指摘するような現場の状況は、ガイドラインをつくった当初の想定の範囲内であって、それをこれから適正化していくということが重要ではないかという意見でありました。意見を聞いていて、やはりきちんと自治体全部につくってもらうという意味では、そこのギャップをある程度認識しつつ、しかし、まずはつくるということを重視したということだったのかなと思って、聞いていました。いずれにしても、これからさらに適正化していくことが重要だろうと、この委員はそう言っております。
 この委員は、適正化に向けて、進捗管理をしっかりやっていかなければいけないが、その際には地方交付税のインセンティブづけという方法もあるのではないか。病床稼働率が低くなっているということは、過剰な病床があるということを示しており、病床稼働率も判断のための指標の一つとして使えるのではないかと、こういう意見をおっしゃっておりました。

 別の委員の方ですが、地域医療介護総合確保基金がどういうように活かされているのかという質問があり、三原さんから、基金の目的の曖昧性がやはりダイレクトに反映されているという回答がありました。つまり、財政当局は、過剰な病床の削減に使ってもらいたいと思っているが、都道府県は切れ目のない医療提供体制の構築のほうに重点を置いていて、そちらのほうに使いたがっているという状況があり、そのずれが生じていると思うと、こういうお話をしておりました。

 主なやりとりは以上であります。

 続いて、2つ目のセクションですが、主計官のほうから地方財政についての説明があって、その上での各委員の意見がありました。

 初めに、ある委員のほうから、アメリカでは、民間の病院が大規模に他の病院を傘下に収めて一つのマネジメントを実施している例があるとおっしゃっていました。その人は、直接は言っていませんが、おそらく医療連携推進法人のような、あのような制度的なことを頭に入れているのだと思いますが、一つのアンブレラの下に各病院がぶら下がるという前例もアメリカにあるので、病院の統合を進めることで医療の効率化を追求するということが考えられるのではないかという意見でありました。

 別の委員の方ですが、地方財政の関係でいつも問題になるのですが、地方財政計画と実際の地方財政運営つまり決算との乖離ですが、こういう乖離が住民に対して財政の姿を曖昧にしているということで、中身をきちんと精査すべきという意見でありました。

 別の方の意見です。この方は、大前提として、一般財源総額の水準を確保していくことが地方の現場で行政サービスの質の高いものを提供していくのに重要だとおっしゃっていました。その上で、本日も話題になった地域医療構想を進めていくためには、民間病院を含めて地域全体の取組が必要であって、そのためには知事の権限を強化するということも考えるべきではないかという意見でありました。

 別の意見の方ですが、この方は、公営企業会計のことを取り上げておられて、下水道などが一つの例だと言っていましたが、公営企業会計の導入によって事業のフルコストの計算はある程度できてきているが、問題は、そうしたコスト計算、積み上がったフルコストの計算を税金や保険料など、料金に反映できる構造になっていないことであるとおっしゃっていました。国民が財政再建に関心を持ってもらうためにも、住民に身近な地方財政の世界で、コストや、受益と負担の関係を見える化していくことが重要ではないかという意見を言っておられました。

 また別の方ですが、これまでは地方税収が伸びる中で地方財政計画の策定に当たることができ、現在、40兆円を超える地方税収があるが、今後、世界経済がピークアウトして税収が伸びなくなる可能性がある。実際にそうなると、地方で進んでいる少子化や、社会保障費の増といった要因が一挙に顕在化する。したがって、税収が好調な今のうちに地方財政の改革を進めることが重要だと、こういう意見をおっしゃっていました。ジョン・F・ケネディの「屋根を修理するのはよく晴れた日に」という言葉を引用して、まだ税収が好調なうちに必要な改革をしていくべきだという意見でありました。

 別の方の意見ですが、この方は、平成27年度から入ったまち・ひと・しごとについて、1兆円という額がそこから地方財政のほうに入ってきたのですが、ちょうど来年、5年経つので、どのような施策をその中で行って、どのような成果が出たのか、一旦整理する必要があるのではないかという意見でありました。

 別の方ですが、法人課税の偏在是正について、地方交付税の減ではなくて、結果として、これまでは歳出増につながってきたと思うが、例えば臨時財政対策債の縮減につなげることができるのであれば意義があるのではないか、つまり、今後、偏在是正を行った上で、出てきた財源を臨財債の縮減等につなげていくべきであると、こういう意見でありました。

 かいつまんでご紹介しましたが、全体の意見は以上のものでありました。

 本日、一応、建議についての各分野の議論というのは一通り終わりましたので、いよいよ次回から建議の策定のほうに進んでいきたいと思っております。

 以上です。

〔幹事〕 ありがとうございます。

〔質問〕 先ほど意見の中で、三原先生のプレゼンに対する意見で、地域医療構想策定にかかわった委員の方が、ガイドラインをつくったとき、こういう事態はある程度想定していたというようにお話になったのですが、ここ、ちょっと、もしほかにもっと詳しく発言があったりしたら教えていただきたいのですが。

〔増田分科会長代理〕 おそらく国と自治体で、医療提供体制を切れ目なく提供していくというのが自治体の考え方で、それに基づいて地域医療構想をつくっていった自治体が多かったのではないかと。国のほうの当初の目的は、特に急性期の病床が非常に多くて、回復期のほうが少なかったわけですけれども、そこのところを全体として病床数、過剰病床を圧縮する。これは、医療費の増と病床数というのは非常に連関していますので、そういう思いを今回の地域医療構想の狙いとして国のほうは強調していたし、それに期待感があったと思うのですが、やはりそこに認識のずれがあって、本日、三原さんがプレゼンしたような状況になっていると思うのです。

 当初、厚生労働省でガイドラインをつくって、各自治体にこういう格好でつくってくださいと言ったときに、厚生労働省は当初の狙いのことはきちんと伝えていたようですが、現場では、やはり地域医療構想をつくるには医師会の人たちも入れて協議会を作ってやっていくので、いろいろな障害もあるだろうということをその当時、議論していて、厚生労働省が考えているような、あるいは国が考えているような狙いどおりの姿で、きちんと決められた期間までに全部でき上がるとは、その方は自治体の行政にもある程度精通している方ですから、思っていなかった。あるいは、ほかの委員の中でも、やはり自治体の段階に行くと少し違う格好で地域医療構想ができ上がるということは、当初の段階からそういう認識があったのだろうなという認識を披露されていたのですが、ある種、想定内と言っていたので、おそらく最初から狙いどおりのものを全部、自治体がつくってくれるということでは必ずしもなかったのだろうと言っていました。

 しかし、その委員の人は、そのままでいいということではなくて、社会保障の金額はこれから地方財政の中で非常に大きなものを占めてくるので、一旦きちんと、各病院で病床数をどうしていくということができ上がった以上、今度はそれをどうやってそちらの方向にきちんと実行していくのか、その際に是正していくべきと、そういうふうに意見を言っていました。

〔質問〕 ちょっと整理のために教えていただきたいのですが、このデータで、やはり当初の計画と決算のずれが続いている、基金も積み上がっているというような状況に対して、委員の方々としては、今、地方財政というのはお金が余っているといった認識を持っていらっしゃるのか、その辺の感覚を教えてください。

〔増田分科会長代理〕 そこは多分、委員の中では、本日、はっきりとその議論がわかるような数が出たわけではありませんが、意見を言っている中で、ある方は地方税収が今、非常に好調だということを前提に意見を述べられているので、今が非常に良い時期だと捉えているのだと思います。しかし、これからピークアウトする可能性があるとおっしゃっていました。また、別の方は、地方財政については、交付税の一般財源総額の確保を前提に意見を言っていましたので、その方はやはり必要な財源手当はきちんと国が行っていくべきという認識をうたっているので、その2人の意見だけ聞いても、少しそのあたりの認識は、各委員がそれぞれの認識を持っているのではないかと思います。

 基金の積み上がり方というのは、昨年、財審でも議論ありましたし、確かに財政調整基金だとか、特定目的基金だとか、幾つか基金の性格によって違うのですが、一方で社会保障の関係で、特定目的基金を国のほうで各自治体に積ませたりするところもあるので、特定目的基金が積み上がる要因はあるのですが、いずれにしても、各自治体の住民にもそうですし、国民全体にその理由をきちんと説明していく必要があるので、それがどうやって積み上がったのか、また、基金の額の説明を常にきめ細かくやっていく必要があると思います。

 もう一つは、地方税収自身は、私が総務大臣や知事をやっていたころは35兆円ぐらいとか、かなり厳しい時期を経験しましたが、現在40兆円を超えていますから、日本の景気動向も踏まえて、偏在の問題はありますが、今は税収がかなり入ってきている時期かなと私自身は思っています。

〔質問〕 もう一点、すみません。地方の偏在是正の件なのですけれども、こちらはメインは税調のほうになるのかもしれませんが、財審として、どういうやり方が良いとか、どういう規模が良いみたいなことを、今後検討される予定というのはあるのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 メインの場は、やはり私も税調の場だと思いますので、本日も主として税調の場だという意見をおっしゃる方がいて、その上でその方は、偏在是正が行われた後の税収の使い道として、それを歳出ではなく、先ほど紹介したように臨時財政対策債の解消に向けて使うというのであれば、これは財審の議論になじみますし、その方は臨財債の解消のほうにやはり使っていくということは意義があるのではないかとおっしゃっていました。私も、税調なりで今後、やり方とか考え方を整理されると思うのですが、その上で偏在是正についても、是正されたものをどう使うかというのは財審で議論する意味はあると思います。
〔幹事〕 ほか、ございますでしょうか。

 では、ないようですのでこれで。

〔増田分科会長代理〕 ありがとうございました。

(以上)