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財政制度分科会(平成30年10月16日開催)記者会見

平成30年10月16日
財政制度等審議会 財政制度分科会


 

〔幹事〕 それでは、よろしくお願いいたします。

〔増田分科会長代理〕 それでは、財政制度分科会の内容について御報告いたします。

 10時から開催をして、少し時間を延長して先ほどまでやっておりました。本日の事務局からの説明は、1つは、昨日、閣議決定をされた今年度の補正予算についての紹介、その後、外交関係、農林水産関係、それから社会資本整備と、この3分野についての質疑を行いました。

 事務局の3分野についての説明は、外交関係について言いますと、JICAの技術協力の選定、執行を行うJICA、さらには監督する外務省における運用上の課題などの説明がありました。それから、農林水産については、農地中間管理機構による農地の集積、そして、その後の集約化を後押しする協力金の在り方などの説明がありました。そして、社会資本整備については、7月豪雨など、最近の自然災害の被害状況を踏まえて安心・安全の向上と、それに向けた対応策などの説明がございました。

 説明は、お手元に配付の資料を使ってのものでありますので、そこは省略して、各委員からの意見などについて、3つの分野別に御紹介したいと思います。

 まず、外交関係です。JICAの予算管理問題についてですが、リスクに対応できる予算管理の体制をきちんと持つべき、また、まだJICA内に単年度主義の文化が残っているのではないかと、こういう意見がありました。

 在外公館について、定員や、公館の設置の要求等も出ているのですが、これについては業務内容を精査したほうが良いと。例えば、ビザの発給数などをきちんと精査して、現在の公館でばらつきがあるのであれば、大きい公館に機能を重点化するなど適切な配置を考える必要があると、こういう意見がありました。

 国際機関の評価について、国際機関に我が国から拠出金を出しているので、評価基準ごとに評価が開示されていないのは問題であると。総合評価だけが開示されているのですけれども、きちんと開示をしていくべきという意見がありました。

 JICAについては、基本的にお金を出すということが中心になっています。技術協力の場合には人が行く場合もあるが、技術協力でなくとも、お金を出すだけではなく、人も一緒に行くということが重要で、そのことによって相手国と長期的につながりができてくると。それから、我が国は今、高齢世代、大量に退職するシニアが国内にいるので、こういうシニアが持っているノウハウをもっと活用したらどうかと、こういう提案がありました。

 各国へボランティア派遣をしているのですけれども、逆に現地の途上国の人を我が国に呼んで、日本の初等教育のノウハウを相手に教える、そういう機会を提供してはどうかと、こういう意見もありました。現状では、各国の小学校の教育、教員が足りないので、そのために現地に行くような形になっているのですが、この委員は、いろいろな状況を熟知しているということもあって、外に出ていくだけじゃなく、外から人を呼ぶような、そういう在り方も今後、考えたらどうかということでありました。

 国際機関への分担金、拠出金について、拠出国である我が国の意見を反映させる、あるいは、しっかりと意見を言えるようにすることが重要だという意見がありました。

 開発協力重点方針というものの中に、SDGsについて記載されています。SDGs関連のものは、単年度での費用対効果にはなかなかなじまないものがあるので、重点項目から落ちていってしまう場合があるから、そういったことに対して配慮が必要と、こういう意見であります。

 拠出金の評価について、日本は拠出金を出すだけという傾向があって、そこに哲学、どういう日本でありたいのか、どういう日本にほかの国々から見られたいのかと、そのあたりが十分ではない。したがってストラテジーというものをしっかりと持つ必要があると、こういう意見であります。

 外務省の定員は増やせば良いというものではないので、どうすれば日本の価値観を浸透させていけるのか、きちんと考える必要があると、こういう意見もありました。

 開発支援について、現状が相手国からの声に基づく要請主義になってしまっており、我が国の重点施策が浸透していっていないのではないかと、こういう指摘もございました。

 外交実施体制の定員や公館の配置について、単に定員を増やすだけでなくて効率的配置を考えていくべきと。それから、外務省だけではなくて、ほかの省庁からも在外公館にアタッシェも派遣されているので、それも含めた、それぞれの在外公館の館員の効率的配置を全体の中で考えていくべきと、こういう意見がありました。

 次の分野、農林水産であります。この農林水産についてでありますが、こちらは少し項目をまとめて御紹介しますと、まず本日、事務局から説明があったのですが、ある委員のほうから、農業政策の大きな柱、あるいは農業政策のフレームワークというのをまずきちんと示す必要があるのではないか。その上で、そのフレームワークに沿った形で各政策がこれまで展開されて、どういう評価であったのか。そういうところから、この農業政策の評価に入っていくべきではないかという意見がありました。

 別の委員ですが、農業は外貨を稼ぎ得る重要なセクターともなり得るので、長期的な視点でどう稼ぐかを考える必要があるのではないか、こういう意見がありました。

 各論のほうにも少しつながる話ですが、この人は総論としての言い方ですが、飼料用米に対する交付金ですね。これはかなり多く出ていて、転作でそちらのほうに誘導した経緯があるものでありますが、この飼料用米に対する交付金などを見ると、まさに農政の在り方は計画経済的になっているのではないかと。昭和35年の農業基本法ができた、あのあたりの精神と大きく離れているのではないかという話をしておられました。この委員は、農家はやはり一つ一つ独立した経営体であるので、農家の経営判断に任せて、イノベーションをそれぞれの農家で起こしていただくという視点が今、欠落しているのではないかと、こういう意見がありました。

 本日の説明の主要な論点の一つであります米政策ですが、米に対する視点が変わってきていて、米は日本にとってどういうものと位置づけるのか、これは長期的な視野で考えることが必要ではないかという意見が委員のほうからありました。

 飼料用米の販売収入が本当に少しで、補助金の割合がぐっと高くなっている。多収品種のほうについては、さらにそういうことが多く見られるのですが、これは明らかに市場原理からかけ離れているのではないか、こういう指摘もございました。

 農地中間管理機構の集積・集約化の関係でありますが、ある委員からですけれども、農家の高齢化が今、進んでいる。あと5年ぐらいが農地の集約を進める非常に良い期間、あるいは加速期間、こういうふうに考えるべきと。この5年ぐらいの間に集約が進まなければ、耕作放棄地になる懸念もあると。したがって、この委員は、是非その間に進めてほしいと、そういう考えでの意見です。

 同委員からもう一つ、集約化については取組の地域差、都道府県単位の地域差を十分見たほうが良いという話がありました。今、都道府県と言いましたが、さらにもっと小さな単位で、多分、考えておられるのだと思いますが、地域の農業委員会がこの集約化をどんどん進めているところもあるし、そうではないところもある。はっきりと取組の差、地域差を見せることで、集約化を進めていない地域の集約化を後押しするということにつながるのではないか、こういう話であります。

 最後に水産改革についてであります。資料の中で、漁業についてのインディビデュアルクオータ、いわゆるIQと言っていますが、個別割当についての記載があるのですが、これについては経済的観点から移転可能にするのも一つの案ではないかということと、いずれにしても漁業のIQについて独占的なものにはしないような注意が必要ではないか、こういう意見がありました。

 3番目に社会資本整備についてであります。少し順不同になりますけれども、資料の中で交付金の問題点について指摘しているものがあります。御承知のとおり、以前は補助金として個別に各分野についていたものが、途中段階で一括交付金のような形でまとめて自治体に渡されるような交付金制度になったのですが、一方で、そういう自主性を重んじるという趣旨で、紐付きではないものにしようということで導入されたものでありますが、これも多年度で予算の積算が十分にされていなくて、こういった部分は改善が必要なのではないかということであります。やはりそういう様々な周辺からの指摘を踏まえて個別補助金化、これは資料の中でも考えるべきということで個別補助金化を書いているのですが、そういった方向をこれから推進していくべきであろうと、こういう意見がありました。

 別の委員からですが、補正予算の関係です。昨日、閣議決定された補正予算の関係で、社会資本整備の問題もあるわけです。特に、事故がありましたのでブロック塀についての予算があったのですが、これは考えてみると30年以上前の宮城県沖地震の際にも指摘をされていたものであり、当時も予算措置されていたわけですが、実際には十分進んでいなかった。その委員によると、これはもう一種のモラルハザードになったのではないかと。その委員は、今回、補正予算で計上することは必要で、緊急性があるのでやるべしということを言っていますが、ただ、その予算を受け取った自治体が肝に銘じて、二度とああいう悲惨な事故を起こさないという気概で、きちんとブロック塀の耐震化に取り組むべきと。これをやる、やらないとかいうことじゃなくて、モラルハザードはもうやめてほしい。そんなことを考えると、個別補助金化にしていくという部分は、それはそれで良いことではないかと。早目に防災、減災に対応してやっていってもらう必要があると、こういう話がございました。

 別の委員の意見ですが、7月、西日本を中心に豪雨等がありました。甚大な被害が出たのですが、それを見ると、ハード面というよりも、ソフト面の人的な要因が大きいという部分もあるのではないかということであります。

 もう一人、別の委員も同じく、やはりこういう防災関係、災害関係はソフト対策についてもっと入れていくべきということ。それから、この委員は、中長期的なビジョンとして、リスクの高い地域に立地する住宅の存在については、今後、どういうことを行っていくか、国として考えていくことが重要。資料の中で、危険区域の指定なども制度ができましたので、そういうところに既存住宅があるのですが、そういったことの記述も中にございますので、それを捉えての話ですが、現在、リスクの高い地域に立地している住宅の存在という部分について、今後、国としてどうしていくのか考えていくべきとおっしゃっていました。

 あと、もう一つ、新技術の活用ですね。これは、中長期的にはコスト削減に資するので大いに進めていくと。それから、コストの関係だけではなくて、人手不足への対応にも資するので、これは大いに進めていくべきという意見でありました。

 別の委員の意見ですが、インフラ整備へのB/Cの導入について、さらに取り組んでほしいということであります。

 あと、上下水道についての問題ですが、これは非常に老朽化が進んでいまして緊急性があるという意味では、水道の民間資金の活用を進めるという方針があって、これは進めるべきであるし、企業の参入を検討していくということが必要であると、こういう意見であります。

 別の委員の意見でありますが、人手不足がもう本当にバブル期並みの、景気が最高潮のとき並である。これは中小企業もそうだし、製造業においてもそうだし、そして建設業においても顕著であり、これに対しての対策は非常に難しい。そうした状況において、特に今回、緊急を要する自然災害の復旧についても優先順位づけが非常に重要であると。選択と集中で、長期計画と短期計画をきちんと分けて、なおコスト管理、進捗をしっかりと行いながら計画の実施に取り組んでいく必要があると、こういう意見でありました。

 別の委員ですが、この方はやはり自然災害、防災についてなのですが、最近、これだけ頻繁に災害が起きるのであれば、災害が起きてから、今回のように、補正などで対応するのではなく、当初予算からそういう災害についての手当をしていくべきではないかという意見が一つ。それから、自治体に対して国費が災害対策費として渡っていくのですけれども、それについては何らかの防災対策を地域でもしているところ、例えばハザードマップをつくる、あるいは、それを公開しているところには優先的につけるといったような形で、選択と集中がもっとあっても良いのではないかという意見であります。

 この委員は、ほかの委員の方が賛同した一括交付金から個別補助金へということについて少し違う見方をしているようでありまして、それがいかんとかいうことではないのですが、個別補助金をやるという場合には、いずれにしても交付金、補助金の全体のパイを膨らませないで、全体の同じ中でやり方の変更をしていくべきであると、こういう話がございました。

 最後の意見でありますが、今回、災害があって、御承知のとおり北海道は全道停電、ほかの地域でもかなり停電等が起きたわけですが、停電によって何が起きたかというと、もちろん工場が止まったりすることもあったのですが、交通信号が止まって交通マヒ、それから一般の生活もオートロックが止まって家に入れないとか、生活全般についても問題があった。これを総合的に検討する必要があって、財務省だとか、そういうところの枠は超える話ではあるのですが、関係省庁会議などがもう既にあるとは思うのですが、そういったところにも有識者が入って、今回、起きたことをきちんと踏まえて、どうしていったら良いのかということをもっと大きな枠の中で議論していくべきではないかと、こういう意見を述べられました。

 私からの意見の紹介は以上であります。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 3点ほど教えてほしいのですけれども、1点目が、7月の豪雨の関係で、ハードというよりソフトの部分で人的要因が大きかったのではないかという意見があったということなのですけれども、これ、具体的にソフトで、例えばこういうところとかという指摘はございましたでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 そこまで、その方はおっしゃっていませんでした。私が思うには、勧告についても以前よりはかなり細かく出すようになりましたよね。高齢者避難開始とか、グレードを分けて、避難指示とか出すようになったのですが、実際の行動にやはりそれが結びついていないところがございましたので、そういうソフト対策と、それから実際の行動等をどういうふうに結びつけていくかといったようなところで、まだまだ、もっと工夫の余地があったのではないかと、そういうことではないかと思います。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 もう一点、災害対応の部分で、当初予算から手当していくべきじゃないかというふうな御意見あったと思うのですが、これ、ちょっと事務方のほうに確認したほうが良いのかもしれないのですけれども、具体的にどういうやり方で当初に手当するということが、理論上、できるのかというのをちょっと教えてほしいのですけれども。

〔主計官〕 詳細にはおっしゃっていなかったので、正確なところはあれですけれども、想像するに、災害復旧に関しては災害が起きたときに、当初予算でもある程度は積んでいるのですけれども、そこでもう賄い切れないところがあると、災害復旧費という形で補正予算で手当しているというのが現状でございますので、当初予算に積んでいる災害復旧費をもう少し増額してはどうかというようなことを念頭にお話しされていたのではないかと受け止めました。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 それから、新技術の活用は中長期的にコスト削減に資するのではないかという御意見、これは具体的にどの部分を指摘していますか。

〔増田分科会長代理〕 特に具体的な指摘はなかったのですが、ドローンの写真とか、そういうものが出ていました。それから、赤外線で照らして水量をきちんと測る水位計などの写真が出ていましたので。あれ、やはり導入のコストがかかったりしますのでね。ただ、中長期的に見ると、すごくコストパフォーマンスも良いし、それから、その人が言っているとおり人手の削減にも相当役立つと。私、以前、現場を見たことがありますが、時間がものすごく短くでき、橋梁なんかも診断できるので非常に効果が高い。ですから、具体的にどれということはわかりませんけれども、その新技術の導入の資料を御覧になって発言されていたので、多分、ドローンですとか、そういうものを念頭に置いての発言じゃないかと思います。

〔幹事〕 わかりました。ありがとうございます。

 幹事社からは以上です。各社さん、どうぞ。

〔質問〕 社会資本整備のところなのですけれども、災害復旧のところでもソフトの対策がより重要だという声があったということなのですけれども、これはハードと一体的にやっていくべきだという話なのか、それとも、おそらくこれからハードでのインフラ整備というのはものすごく要求が出てくると思うのですけれども、そういう野放図な膨らみを抑えて、よりソフトにシフトしていくべきだというお考えなのか、その辺はどんな意見だったのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 何人かの方がそのことをおっしゃったので、多分、突き詰めると、やはりハードとソフトをきちんと組み合わせるという話ではないかと思います。今、いろいろ災害が頻発していて、世の中の動きですとかいろいろ見ていると、ハードをかなり整備しなくちゃいけないという声もやはり相当大きくなっている中で、やはり財審の場ですので、財政が非常に膨らんでくるということに対しての懸念もあり、ハードだけに偏るのではなくて、ソフト面の対策を講じて、ハードをうまく使いこなすことが必要だよと。やはり財政的な観点とか、膨れ上がることの心配もお持ちになっている方もいらっしゃると思います。

〔質問〕 公共事業の関係でお伺いしたいのですけれども、先ほどは委員からも意見が出ていたということですが、交付金でやることによって別のところに使われちゃって、それで災害が起きたら補正でやるというようなモラルハザードが起きているという話なのですけれども、これについて、例えば今補正で見ればブロック塀とかに関しては、本来、交付税で措置されているような事柄であったりとか、多分、河川もそういった種類に入ると思うのですけれども、そういったところ、どちらかというと、何ていうのでしょう、人道主義的な観点から流されちゃいがちと思うのですけれども、そこを何とか財審なり、財務省として、今後、ピン留めしていくみたいな議論というのはどういうふうにすれば可能なのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 やはり今の問題意識というのは、財政を預かる身とすると、かなりきちんと持っておかなくちゃいかんと思うのですよね。その委員が、わざわざ宮城県沖地震の話をしたというのは、ブロック塀の老朽化とか、崩壊が危ないというのはわかっていたという理由からなので。

 ただ、私も、政府の弁護をするつもりはないのですが、やはり災害が現実に起きて、あれだけ各地域で緊急点検したらまだありましたのでね。ですから、そういうものが現実にあるとすると、それをいざ改修したり、取り外したりとかいろいろしようとすると、やはりお金がかかるので、それについては緊急に手当をしないと、明日、地震があったときに、また子供さんが亡くなられたら大変なことになりますので、それはそれでやるのですが、ほかの部分でもあったけれども、そういうことで必要なものは全部、補正予算で手当てする。しかし、当初予算のほうはもう決まった補助金だとか、何か規定の予算だからということで使われると、やはり全体としては、限られた予算の中の使い方として効率的ではないのではないかという話は必ず出てくる。それが先ほどあった、当初予算の手当をもっと手厚く災害の部分にしたらどうかという点につながると思うのです。

 私は、現実的には、補正予算で対応するという答えしか今はないとは思うのですが、例えば建議の中でそういう問題意識なんかを書くということもあるかもしれませんし、本日の議論の中ではその点については意見の表明で、まだその先をどうするかというところまでは議論できる時間もありませんでしたけれども、やはり委員の中にはそういう問題意識が確実に存在していることは間違いないと思います。

〔質問〕 地方行政にもお詳しい会長代理にちょっと重ねてお聞きしたいのですけれども、一方で地方自治体なんかを見ると基金がたまっていたりとかして、地方債の残高なんかを見ると、ネットで見ればかなり改善してきていると。そういう状況において、災害が起きれば場当たり的にそういうことをやっていくというのは、今後、持続可能なのかなと思うのですけれども、そういう意味では何か制度としてちゃんとビルトインしていくようなことが必要だと思うのですが、これまでの御経験を踏まえてどういうふうにお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 行政の優先順位をどうするかということにもかかわってくるかなと思います。地方自治の予算だから、どうしても、やはり選挙で選ばれたそれぞれの首長の考え方があって、それを住民が一応、議会を通して審議したりなんかしているわけですので。ただ、確かにおっしゃるとおり、基金が積み上がっている自治体もある。他方で、そういう基金も財調の基金であったり、特定目的であったり、やはりいろいろな種類があって、あまり懐を少なくしちゃうと、いざというときに対応できなかったりという懸念もある。

 それから、もう一つ言っておきたいのは、臨時財政対策債みたいな、隠れ債務みたいなものが存在するので、どうしても急に何かがあったときのことも含め、怖さみたいなものを首長は持っていると思うのです。ですから、ある程度余裕を持っておきたいというのはあるので、私はこういう災害なんかの、平常じゃなくて、今回のようにリスクがぐっと顕在化したときにどれだけ機敏に対応するとか、そういうものに機敏に対応できるだけの財政の余裕を持っていることこそが、首長の腕前として一番問われるということかなと思います。非常事態については、かなり皆いろいろなことを考えて対応しているのですが、いざ、そういうときに、住民ももう頼るところが自治体の行政しかないというときに、きちんと対応できるかということが腕前として一番問われているので、そういうことを考えて懐具合に多少の余裕を持ちつつ、こういうときに執行していく。

 だから、先ほど委員がこの中で指摘していたように、やはりブロック塀の問題なんかはもっと早く考えて、日本のような地震の多発国で、宮城のときもやはり亡くなられたわけですよね。今回、またそれが再現しているわけだから、そういったことを考えると、モラルハザードじゃないかと言われると首長にとっては相当痛い批判なのですが、確かにそういう面はあるなと。そういうことがないような対応を、自治体の首長というのは常に考えておかなくちゃいけない。だから、優先度は、私はもっと災害対策に対して上げていって、それに対して備えをしていくことが必要であると思っています。国のほうも補正予算という、そのとき、そのときのスポット的な対応だと予見可能性が自治体にもないので、もう少し当初予算で手当をするほうが自治体はやりやすいなと思います。

 でも、私、財審の委員をやっていて、なかなかそこは悩ましいと思っているところです。総額は増やしたくないので、やはり災害対応を当初予算でより厚く手当てするのであれば、その他の個別の既定予算は、もっと削らないといけないと思うのです。両者ともモラルハザードにならないように、財政規律を守るというところの一線の枠はとにかく崩さずにやっていく必要がある。

 個別補助金が紐付きで、全然融通がきかなくてだめだというので、もっと柔軟にということで一括交付金にしてきたが、今度は、一括交付金でもやはり少し綻びが目立つので、段階的に個別補助金にだんだん移していったらどうかということなのです。しかし、補助金でしばらくやっていくと、多分、また、紐付きとか、運用のまずさとか、それから災害に対しての対応の難しさなどが出てくるのであろう。やはり何かあるたびに少しずつ前に進めて、柔軟さと、それから、きちんとした対応ができるように考えていくことが重要じゃないかと思います。

 いずれにしても、住民とか国民、県民、市民とかの監視が厳しければ厳しいほど、そこはもっともっと考えるようになっていくのではないかと思います。

〔質問〕 農林水産の関係で、飼料用米のことで、委員から基本法と大きくかけ離れているというような指摘もありましたけれども、今回、いろいろ提言している内容ですね、来年度予算で反映したいのか、それとも、もっとその先の基本計画の見直しで反映させたいのか、そこら辺の議論というのはあったのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 本日の委員の間の議論の雰囲気を見ていると、やはり来年度予算についても考えていくべきということもあるのではないですかね。飼料用米の多収品種については価格差の11万7,000円ぐらいを公費で埋めていたような感じになっていたと思うのですよ。だから、ああいうのを見ると、やはり市場原理から全く外れているのではないかという意見もありましたし、是正は早くすべきという意見でした。ただし、政策当局でどうするかというのは、それはそれでまたきちんと考えると思うので、財審の建議のところでそのあたりをどう扱うか、また今後、委員とよく相談して、どういう内容の建議にするか考えていきたいと思います。

〔質問〕 全然別件なのですけれども、昨日の臨時閣僚会議で、総理から各閣僚に対して増税対策について指示が出されたのですけれども、これまでも、今年2月の諮問会議に始まり、ずっとそういう指示自体は出ているのですが、現状の増税のメニューなんかも、ポイントとか挙がっているのですけれども、委員としてはどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 本日の中での議論とはちょっと別に、新しいパッケージとか決めて、消費増税の分の使途を少し変えて、例えば幼児教育の無償化とか、別のほうに振り替えたわけです。これは政策判断なので、これはこれで私は、決められたことが変わるのはあり得ることだと思います。私も幼児教育の無償化の範囲を決めるような座長などやっていましたのですが、そういった大きな枠組みを政治が決めた中で、きちんと一番効率が上がるようにしていくことが大事であって、私は、毎回毎回いろいろな場で言っておりますが、やはり今回、消費税率は、8%から10%には必ず上げなければいけない。それによって、社会保障の安定財源の確保に充てる部分と、それから使途をきちんと決めて拡大する部分と、それぞれ一番良い使い道になるようにしていく必要がやはりあると思うのですね。

 全体として見ると、やはり次世代に対してどれだけ安心感を持ってもらえるような使い方にしていくのか。消費税率を8%から10%に引き上げて、一方で財政の持続可能性に資するようなこともしつつ、他方で予算を通じて人々が将来に対して安心感を持てるような形にしていくようにするという観点でやっていく必要があると思います。昨日、ああいう表明というか、閣議でのご発言があり、消費税率が10%に上がるということの確実性がより増しましたので、その準備に、いろいろなお店、商店の人たちも、中小企業もきちんと取り組んでいただくと同時に、あと引上げの前後にわたってのいろいろな対策については別途また政府で考えるでしょうから、そのあたりは一番良い使い方でやっていただきたいなというふうに思っています。

〔質問〕 すみません、社会資本整備のところなのですけれども、先ほどの防災とは全く別件で、高速道路のインフラのところですね。有料、無料が混在しているところを有料化するとか、空港のところでも一応、新たな提案が出ていますが、もし何か委員から御意見が出ていれば御紹介いただければ。

〔主計官〕 高速道路の料金の問題について、特段何か意見をいただいたという認識はありません。これ、余談ですけれども、高速道路だけじゃなくて一般道でも考えられるのではないかということをおっしゃられた委員はございます。

〔増田分科会長代理〕 それはありました。一般道から取るという考え方もあるのではないかとか言っておられ、例としてロンドンでやっているという話をしていました。

〔質問〕 空港のほうは。

〔主計官〕 空港のほうは、特段、議論はなかったと思います。

〔質問〕 ありがとうございます。

〔幹事〕 よろしいでしょうか。では、あとは個別にお願いします。

〔増田分科会長代理〕 はい、ありがとうございました。

(以上)