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財政制度分科会(平成30年4月17日開催)記者会見

平成30年4月17日
財政制度等審議会 財政制度分科会

 
〔田近分科会長代理〕 本日15時より、財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたしました。

 議題は2つありました。1つは、日本経済団体連合会の井上隆常務理事、岩村有広経済政策本部長に来ていただいて、資料1の「わが国財政の健全化に向けた基本的考え方」についてお話をいただきました。続いて、文教・科学技術について、事務局から御説明をいただいて、質疑を行いました。

 いつものとおり、私からは、どのような議論をしたのかお伝えしたいと思います。

 まず、「わが国財政の健全化に向けた基本的考え方」は、経団連としてこれからの財政健全化の取組へのスタンスを取りまとめたものですが、これに基づいて、経済界の立場から、これまでの財政健全化に向けた取組を評価して、この夏に策定する新しい財政健全化計画の枠組みについて考えをいただきました。

 具体的には、経済成長に配慮しながら歳出改革を徹底して行い、2020年代半ばにおけるプライマリーバランス黒字化を目標とすべきとしています。

 その前に、経済・財政の見通しはベースラインケースを念頭におくべきであるということも書かれています。

 それから、8ページ目に書かれているとおり、プライマリーバランスの黒字化を目指しながら、中間評価年までの期間を対象に歳出改革の目安を設定し、進捗状況の評価、追加措置の検討を行うこととしています。社会保障制度の在り方について、私が印象的だったのは、より長期的、かつ制度横断的な全体像を踏まえた検討が必要であるとの指摘です。また、団塊世代が後期高齢者になる2025年以降を見据えた負担と給付のあるべき姿を示すことが重要である、また、そういった方向性を持ちながら、広く国民で負担を担うということで、税率10%超への消費増税も有力な選択肢だというようなお話をいただきました。

 これについて、財政健全化全体を踏まえて交わされた意見を御紹介します。

 経団連は、やはり2020年代半ばでPB黒字化を実現するという考えを示しているわけですが、PB目標はこれまでも同じような形でやってきたが、達成できなかったではないか、だから財政健全化に向けてもう一段厳しい踏み込みが必要なのではないか、という御意見がありました。

 他の方も同じような意見で、PB目標については小泉政権下での目標も先送りされて、今回も先送りされた。しかし、先送りされた今の段階では、団塊世代が後期高齢者になるともう後がないという状況ですので、国民的な議論を巻き起こし、有権者の理解を得ないと達成は難しいというような意見がありました。

 基本的には、経団連からの御意見に対して、御意見はごもっともだが、それをどう実効あるものにしていくのかという御意見がありました。経団連の方は、今回の彼らの提言に沿ってやっていくべきということをおっしゃっていました。

 次に、文教・科学技術ですが、文教・科学技術予算というのは全体でおよそ5.3兆円です。消費税は、増税が先送りされただけではなく、使途の変更が行われる予定です。具体的には、0.3兆円の子ども・子育て拠出金の増額を含めた2兆円程度が新しい使途に使われて、その中に幼児教育、あるいは大学教育の無償化が含まれている。そうすると、今までの5.3兆円の文教・科学技術予算に対して、かなりのボリューム感として文教関連の予算が入る。そういった中で、量に重点を置くだけではなくて、幼児教育から義務教育、高等教育、それから科学技術に至るまで、質をどう高めるかが重要だというのが本日の議題だったということです。

 そのようなコンテクストで議論したということを念頭に置いていただいて、いつものとおり、様々な委員の方の御意見がありましたが、学生に対する評価を統一的に厳しくすべきだとの声がありました。これはイメージとしては大学です。資料の中に大学生が一日に何時間勉強したかという点もあったと思います。

 それから、大学生に対する評価を厳しくし、大学の評価も強化して、大学自身が新陳代謝していくようにしなければいけないのではないか。科学技術についても、歳出を単に増やせばいいわけではなくて、メリハリをつけるべきだという御意見がありました。

 本日は、教育無償化が一つのテーマで、各委員、様々な方が御発言されましたが、授業料後払いの制度、いわゆるHECSに関しては問題があるという御指摘もされていました。

 次の議論は、資料との関係で補足させていただきたいのですが、今回のそうした質の重視、特に高等教育の質に関する言及があったわけですけれども、この委員は、大学改革の重要な点は、評価と資源配分であり、これまでの大学の評価はきちんとできていたのですかということをおっしゃっていました。

 国立大学に関してですが、お手元の資料の44ページが国立大学の大学間予算配分に用いる「重点支援評価」の例です。もしよろしければ御覧になっていただきたいと思います。A教育大学があります。これは評価についての話ですが、目標として学生が受験するTOEICのスコアは500点を設定している。その500点という設定自身、決して高いわけではないですが、実態を見ると、A教育大学の評価を見ると目標の500点に対し、実績値が四百四十何点で実現できていなかった。しかし、結果評価は、資料に書いてあるとおり自己評価等々がA、あるいはBプラスとなっている。その次のページ、B大学は、評価手法としてアンケート調査結果に基づく入試方法改善を行っている。しかし、これはアウトカムではないわけです。目標値はアンケート調査の実施回数で、そうすると評価が全部Aだった。これは、いかがなものかという議論です。

 それから、資料の47ページは国立大学の大学内配分における「学長裁量経費」の現状です。国立大学法人では運営費交付金をもらいます。基幹経費のうち、学長裁量経費を区分して、学長のリーダーシップによる改革に使う。国立大学法人にしたわけですから、学長がリーダーシップを発揮してくださいというわけです。そこで、その学長裁量経費をどのように使ったのかというと、つまりPDCAのDに該当する箇所ですが、学長のビジョンに沿って様々な形で執行されたわけですけれども、それが武道場の屋根の改修やトイレの改修工事などに使われているという実態があります。それぞれは確かに各大学で重要ですが、それが学長のビジョンに沿った仕事なのかというような指摘がありました。つまり、この方の御意見は、先程言ったように科学技術に関して全ての分野で質を高めなければいけないと。大学の質を高めるための評価が機能していないのではないかという御意見でした。

 それから、科学技術も重要だと思いますが、官民の役割がマッチしていない、つまり、本来は民間がやるべきことに官が予算をつけるべきではないと。官民役割分担の在り方のことを指摘されていました。

 次の方も、今回の議論を通じて、量から質にシフトすべきだということには賛成だとおっしゃっていました。

 次の方については、2兆円程度の政策パッケージについてはどのような政策を講じるのか、その中身をきちんと検証する必要があるということをおっしゃっていました。

 次の方は、やや視点が違いますが、待機児童の解消が必要ですと。まず、そのためには、幼保連携型の認定こども園への移行が重要ですということをおっしゃっていました。

 次の方は、教育の負担軽減、特に高等教育の授業料の負担軽減について取り上げ、誰でも対象にするのではなく、授業料を減免する際には学生の成績や能力に応じた支援とすべきだと。それから、日本の大学の課題はグローバル化なのだと。

 次の方は、科学技術関係予算の対GDP比に関しては、日本はアメリカ、ドイツと同程度の水準であり、まずは無駄を省いて有効な使い方をしてくださいとの御意見でした。

 次の方は、やはり教育無償化について御意見をおっしゃっていました。要点は、例えば預かり保育ですが、認定の要件がバラバラになっているためにサービスが過剰になったり、財政負担が大きくなったりしないように、要件をしっかりと定めてほしいと。その方の最もおっしゃりたかったことは、結局、制度の要件がしっかり定まっていないために、制度の目的や趣旨を超えた需要が膨らんでしまっている。この方のお言葉では、モラルハザードが起きているのではないかということをおっしゃっていました。HECSに関しては反対ということで、親に資金があるならば、子供の授業料を払って、将来、子供は親に報いるべきだというのがこの方の御意見でした。

 そして、これは重要だと思いますが、大学、専門学校の負担軽減については徹底的な情報公開が必要だと。今回の資料にも情報公開の重要性が書かれていました。

 以上のような御意見がありました。全体的な議論の雰囲気は、先程言ったように、ややもすれば増大しがちな文教・科学技術予算に対して、これからどう質を担保するか。それは、幼児教育から大学、科学技術に至るまで、全ての分野で徹底すべきだという議論が交わされたと思います。

 以上です。

〔幹事〕 2点質問があります。1点目は経団連の方で、消費税率10%超の引上げという意見があったのですが、具体的に何%だとか、いつにどれぐらいだとか、そういった議論はありましたか。

〔田近分科会長代理〕 その議論はありませんでしたが、彼らは前からこういったことを主張していると言っていました。今回、急に言い出したわけではなくて、財政健全化に向けては10%超もタブーではないということです。

〔幹事〕 もう一つ、文教の方ですが、委員の話を聞くだけでも、かなりまだ問題点が山積しているような印象を受けました。一方で2兆円パッケージもタイムスケジュールがもう決まっているわけです。来年、消費税を上げるとともにそのパッケージをスタートするということで、大分時間がないような気もしますが、財審としてはどういうようにこの問題を重点的にやっていくのか、今後、どういうように構えていくのかお聞かせください。

〔田近分科会長代理〕 まだ制度設計が固まっているわけでもなく、財審としてはこうした御意見を踏まえて、やはり質が担保される、それから利用される方に対して制度がモラルハザードを起こすことがないように提言していくと。そういう形で、良い議論ができたかなと私は思いました。

〔質問〕 HECSについて質問ですが、問題だとの反対の意見が出たという御説明があったのですが、具体的にどういうところが問題だという指摘があったのか伺えますか。

〔主計官〕 まず、お一人は、HECSは格差是正に必ずしもつながらないだろうと。高等教育の質が十分ではないので、要するに、知識や技術が身につけられるような大学教育になっていないので、格差是正につながらないのではないかという話。もう一人の方は、教育は親が負担し、その子供は年金や社会保障の世界で親を支えるという役割分担になっているのではないか、それを全て子供に負わせることになるので、そこはバランスがとれないのではないかというような御趣旨でございました。

〔田近分科会長代理〕 やはり本日のコンテクストだと、教育の質がどれだけ担保されるのかということが重要であり、そのためHECSの仕組みについても、質がどう担保できるかという点がずっと委員の方の関心としてありました。

〔質問〕 財政上の懸念といいますか、新たに導入することによって、財政上どういうように作用するかというような観点からの意見はあったのでしょうか。

〔主計官〕 明示的にはなかったと思いますが、それは当然のこととしての受け止めだったと思います。

〔質問〕 HECSについて、前向きな理解を示される人はいらっしゃらなかったのですか。

〔田近分科会長代理〕 いませんでした。少なくとも、お二人が反対の立場から御意見を言って、それに対して私はこういった考えだというような議論の展開はなかった。

〔質問〕 あと、本日の議題とは直接関係ないですが、森友学園問題や、次官のセクハラについて、質問あるいは財務省からの説明というのは特になかったですか。

〔田近分科会長代理〕 ありませんでした。司会をしていた身としても、財審としても建議をどうとりまとめるかということに集中していました。この問題についてのやりとりは、本日はなかったということです。

〔質問〕 追加で質問ですが、今、建議をどうまとめるかという話をされましたが、もうそうした段階に来ているということでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 色々と各論をやってきましたが、各論を踏まえてもう一度最初に戻って財政健全化のフレームワークをどう考えるかという意味で、本日は、経団連のお話も聞いたということです。海外出張の報告もそういった意図です。

〔質問〕 財審の議論に直接関係ない質問で恐縮ですが、先程少し話題に出ました森友ですとか、次官のセクハラ問題などがあることで、財政当局に対する信頼がちょっと損なわれているとすると、今後の財政再建論議への影響も懸念されるという指摘もあるのですが、その辺について分科会長代理の何か御所見がありましたら、お願いします。

〔田近分科会長代理〕 そういった政治状況は分かっていますけれども、私としては、この仕事を引き受けているだけに、我々も襟を正して、我々の今まで調べてきたことや、各論での議論を踏まえて、財政健全化のフレームワークをきちんと国民に示したいと思います。

〔質問〕 資料54ページ目の私学助成に関して、本日、何か意見は出ましたでしょうか。定員割れや、赤字経営の大学への助成停止を含めた点について何かございましたか。

〔主計官〕 先程田近分科会長代理からありましたように、大学の評価をきちんとして新陳代謝をしていく必要性があるのではないかといった御意見はございました。

〔質問〕 それに関して、今回、何か方向性がまとまるという認識でよろしいでしょうか。

〔田近分科会長代理〕 新陳代謝するように私学の評価もしっかりと行い、退出すべき学校は退出してもらうということは長らく財審でも議論しており、我々の意見としては持っているものの、具体的なことまではこの段階で議論しておらず、財審としてそれをどこまで建議に書き込むかということに関して私はまだ把握していません。

〔質問〕 経団連のヒアリングに関してですが、財審委員の方から、経団連に対しても賃上げなどのプロジェクトを求めるといった意見はなかったですか。

〔田近分科会長代理〕 そうした議論は本日はありませんでした。

(以上)