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財政制度分科会(令和元年10月3日開催)記者会見の模様

令和元年10月3日
財政制度等審議会 財政制度分科会


〔増田分科会長代理〕 財政制度分科会の会長代理の増田でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本日、10時から、財政制度分科会を開催いたしました。本日は、いわゆる秋の陣のキックオフということであります。前半で「我が国財政をめぐる現状等」について事務局から説明をしてもらって、今回は令和2年度予算編成、令和になってから最初の予算編成ということを踏まえて、財政健全化をさらに進めていく時代にするべく、議論を、皆さん方のほうから質疑をしていただく中で確認したところであります。後半は、麻生大臣が出席をされまして、こちらはフリーディスカッションという形で行いました。

 審議の内容について、特に質疑について、通例どおり委員の個人名を伏せて内容をご紹介したいと思います。

 まず、前半です。「我が国財政をめぐる現状等」について、最初の委員から、消費税率が引き上げられて本日で3日目になりますが、政府には、今後もこの引き上げ後の状況をよく注視して、何かあれば機動的な対応をお願いしたい、これが1点。それから、この委員からもう一つ、全世代型社会保障検討会議について、給付と負担のバランスがポイントになる、大きな方向づけをした上で、実効性のある具体的な実行案を提示していただきたい、こういう意見が出されております。

 次の委員です。この方は、財政規律について、具体策の提示をこの秋の財審の重要な問題としたい、こういう話でございました。そして、一つの例でありますが、例えば社会保障関係費の目安を4,000億円程度として、頭を抑えるといったやり方の復活の検討だとか、補正予算が抜け穴とならないように具体的な規律を定めるといったことが重要と、この方からはこういうご指摘がございました。

 それから、この方からも全世代型社会保障検討会議についての意見がございました。先般の会議の内容を見ても高齢者の就業率などに視点が当てられている部分があるのですが、これも有効な施策ですけれども、増大する社会保障支出に対応するにはそれだけではやはり十分ではなく、社保制度改革の本丸として給付と負担の見直し、やはりこれがぜひ必要だという意見表明がありました。また、地域医療構想の推進と、そういった具体策をきちんと盛り込めるような議論を全世代型社会保障検討会議で進めていただきたいという話がございました。

 次の委員です。この方は、消費税収の使い道の変更に注目をし、半分は社保の充実に与えられ、そのことによって受益感を感じられるものに今回の消費税率引上げはなったのではないか、使い道について納得感が得られないということはよくないので、そうした点は本年度予算においても、もし、そういうことがあるのであれば直していってもらいたい、こんな意見がございました。

 次の委員です。今の世界経済の情勢、民間経済が不確実性を増す中で、安全資産の金利が成長率よりも低くなるということはあり得る上に、事実、今、そういったことが起きている。そういう中で、金利が低い状況が仮に長く続いたとしても、こういった財政規律が必要であるというような論の立て方も、これから必要になってくるのではないか。もう少し具体的に言うと、金利が成長率より低くてもプライマリーバランスの黒字化は重要といった立論が可能ではないか。それから、安全資産の金利は成長率より低くても、従来は安全資産、国債もその中に入っていたわけですが、国債が安全資産であるかは実はわからないといった状況もあり得る、国債が安全資産であるという信認を維持することがこれから重要になるといった立論も有効だ、と考えているという意見がありました。

 前半の部分は、こちらの方で最後です。この委員は、消費税率が上がって3日目になるけれども、これまでどういう状況か、そして導入はスムーズだったのかについて、事務局に対して、様子、見解を教えてほしいということでした。これについて、事務局のほうから、今のところ承知している限りでは、非常に大きな問題が出ていないものの、油断はできない。したがって、政府全体として常に気をつけて、何かあればいつでも対応できるようにと心がけて、もし何かあれば対応しようと思っているということで、今、状況を、目を光らせているところです、とういうような意見がございました。

 前半は、以上のやりとりでございます。

 続いて、麻生大臣が、1040分ぐらいに来られて、そこから11時半ちょっと過ぎぐらいまでディスカッションということになりました。

 冒頭は、カメラ入りで、皆さん方いる中でご挨拶があって、それから意見交換の最初のところで、また少し大臣のほうから追加で話がありました。今の経済の情勢を見ますと、企業に新しい設備投資をなかなかしてもらえないのだ、企業が新しい設備投資をしない、そしてR&Dも今はしない。かわりに自己資本比率をどんどん増やしている。結果として、企業の内部留保が増えていっている。それは、やはり経営者としておかしいのではないかと私は思っていますというお話が、冒頭ありました。やはり日本経済全体のGDPを伸ばしていく上で、企業の内部留保、それから、個人の金融資産をできるだけ使ってもらうほうにいろいろ考えていかなければいけない。そういう中で、いろいろやるべきことやってGDPが増えてきた、とも追加でお話がございました。

 その後、各委員とのディスカッションということでございました。

初めに、委員の方から、全世代型社会保障検討会議で、受益と負担のバランスを議論してほしい、それから世代間の格差の是正という観点からぜひ改革に取り組んでほしいと大臣にお話がございました。

 大臣からは、昔は高齢者1に対して支え手のほうがずっと人数が多かったわけですが、今はどんどん底が近づいてきて、やがて、あと何十年かたつと、もう高齢者と支え手が1対1になるぐらいということで、やはり社会保障を持続可能にすることには、もっと大胆な改革をやるということが、今、必要であって、そのために有識者を集めて、それから政府のほうの閣僚も入った全体会議が必要だというのが、全世代型社会保障検討会議を立ち上げた背景にあります、こういう話がございました。したがって、大胆な発想のもとに改革をやっていくんだという話がございました。

 それから、次の委員ですけれども、障害をお持ちになっている方も、新しい技術が発達した結果、さまざまな活躍ができるようになってきた。情報通信や英語などの分野で、現実に障害を持っている人が活躍している例の紹介があって、福祉も、税を支える側の概念も大きく転換して、国家としても、こういうビジネス以外にも大きな取り組みをぜひしていただきたい。要は、概念も思い切り変えて、障害者が支えられるということではなく、支えるということもどんどん、進めるという意味で、大きく概念を転換して取り組んでいただきたいという話がありました。

 それから、もう一人の方は、年金について具体例として在職老齢年金を出して、こういう仕組みを見直していかないといけないのではないか、働いていても年金が受給できる制度であるべきであって、この点についてどう考えるかということで、大臣のほうにお話がありました。

 この2人の委員について大臣のほうから、まず前半の障害をお持ちになっている方の関係ですが、AI等が発達してきて、重度の方、よほどの方を除けば、かなりの皆さん方も、今、稼げるように変わってきたということで、やはり大きく考え方を変えていかなければいけないという話がございました。

 それから、後の在職老齢年金の関係の話ですね。時代が大きく変わってきているということで、そういう中で全く発想を変えていかないといけない。直接、在職老齢年金をどうするかということは、大臣はおっしゃっておりませんでしたけれども、発想をいろいろ変えていかなければいけないので、今後もいろいろと意見を聞かせていただきたい、こういう形で大臣は答えておりました。

 大臣のほうも、かなり委員の皆さん方の意見に耳を傾けて聞いておられて、それでまとめて答えをされるということであったのですが、大体、主立った論点はそんなところだったと思っております。
 私のほうからの発表は以上でございます。

〔幹事〕 ありがとうございます。

 本日、麻生大臣のご挨拶でも、全世代型社会保障について触れながら、経済の再生や財政の健全化の両立をきちんと図っていかなければいけないというお話があったと思いますけれども、年末に向けて、どのように議論を展開していくというお考えなどがありましたら、お聞かせいただけますか。

〔増田分科会長代理〕 財審としての議論ということですね。

 この秋の建議に向けての議論ですけれども、1つは、令和になって初めての予算編成に向けて意見を言う、建議だということ。それから、消費税率が10%に引き上がった後、事実を踏まえた上で出していく建議ということになるわけで、この点はよく踏まえておきたいと思っております。その中で、全世代型社会保障の会議もございました。会議自身は違っていますが、向こうは向こうでいろいろ議論を進めていかれるということになるわけですけれども、こちらの財審として言いますと、2025年に向けてのPBの黒字化と、債務残高の対GDP比をより引き下げていくということに向けて、必要な歳出改革に取り組んでいただく必要があろうかと思うので、社会保障について言いますと、やはり社会保障を持続可能なものにするということ、あとは財政の健全化ということで、両方を踏まえた社会保障制度にしていかなければいけません。会議それぞれ、秋の建議に向けた財審と、それから向こうの全世代型社会保障検討会議とちょうど、似たような時期でスタートしているので、社会保障の持続可能性と、それから財政の健全化をどう考えるかということで、こちらの財審のほうも社会保障の分野についてはそれを意識しながら議論していくということになると思います。

〔幹事〕 ありがとうございます。

〔質問〕 本日のフリーディスカッションとか、あるいは前半の委員の意見というのは、今年度の予算に向けてというよりは、より中期の財政の問題とかに対するご意見が出たと、そういうイメージでよろしいですか。

〔増田分科会長代理〕 最初だったので、やはりおっしゃるとおり、本日は秋の議論に向けてということでのご意見もございましたけれども、どちらかというと、もう少し長い視野で全体をどう、心構えでやっていくべきかと、こういう議論でございました。財審としての秋の議論に向けての建議は、次回の分科会から各論を取り上げる予定にしておりますので、そこからが秋の、来年度予算に向けての秋の建議の実質的な中身ということになると思います。

〔質問〕例えば今の世界情勢を踏まえた、外需の変化などを踏まえた、例えば予算編成でどう注意していくべきとか、そういう話は特に、事務方の説明なり、意見なりからは何もなかったのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 各省を含めた、概算要求がどうなっていますということの数字だけの説明はありましたけれども、本日の議論の中ではそこのところは出ておりません。

〔質問〕 ありがとうございます。

〔質問〕 皆さんから出ていた給付と負担の見直しのところですけれども、財審というより、全世代型社会保障検討会議にも入っていらっしゃるので、増田分科会長代理個人のご意見でもいいのですが、特に社会保障の負担というときに、税だけではなくて保険料というものもあると思うのですけれども、今までどちらかというと、ばらばらに議論されてきているような気もするんですが、そこら辺はむしろ、全世代型の会議ができたら、もうちょっと全体で議論するみたいなことができるのかどうか、そのあたりのご意見は何か。

〔増田分科会長代理〕 私なりの理解になってしまいますけれども、本日、財審のほうの立場で出ているので、ちょっとそれとは離れて、向こうとも兼ねているので私なりの理解かもしれませんけれども、全世代型社会保障の会議は5つの会議体の代表者をピックアップしたような格好で出ていまして、やはりもう少し大きな枠組みの中で、それぞれの会議体で議論されていたものよりも、もう少し大きな枠組みでまとめて議論しようということで、あの会議ができ上がったのではないかというふうに思います。その中で重要なテーマでは、やはり給付と負担を見直すと。

 これについて、私も直接聞いていませんが、おととい総理が都内で講演されたとき、総理も、後で新聞報道を見ましたら、給付と負担の見直しも当然、議論されるというようなことを、全世代型社会保障についておっしゃっていた旨の新聞報道がございました。全世代型社会保障の会議に出たときも、給付と負担の見直しも大きな論点になりますということを申し上げていますので、そのときの給付の見直しや、負担の議論の中には、いろいろな負担のあり方というのは当然、入るわけですから、今おっしゃったように、個別の会議体等で議論するというよりは、もっと全体を見て支え手をどう増やしていくか。それから、それも含めて給付と負担をどういうふうなバランスをさせていったらいいのかということを、全世代型社会保障検討会議の中で議論していくべきではないかなと、向こうのほうの委員として私は思っています。ほかの委員の皆さん方がどう考えられるかは、これから多分、向こうの会議の中でいろいろ意見のご披露があるのではないかなと思います。

〔質問〕 全世代型社会保障の検討会議もそうですし、あと消費増税関係の経済対策もそうだと思うのですけれども、いわゆる通常の各省の要求を向けて財務省で査定をしてというのとは別に、同時並行で検討していきますというものが大どころの政策テーマで多いですが、その点、財審の議論がよりダイレクトに響きにくくなってしまうのかなという気もするんですが、そのあたり、どう思われていて、また、発信力をどう高めていくかという考えがあれば教えてください。

〔増田分科会長代理〕 社会保障については、やはり全体の大きな議論が必要なので、それで今回の会議体があって、むしろそこで大きな給付と負担の議論、先ほどからそれを随分言っていますが、やはりそこでの大きなバランスの議論をしていくことが、それぞれの個別の議論を進めていく上でも、やはり全体感とか、そのあたりが見られていいのではないかということだと思うので、大きなものはやはり社会保障だと思います。

 各論のところは、そういった議論も見ながら財審でも、各省の、財務省が査定するときの議論に、こういう点を注意しろということで反映させていくということで、私自身は財審の議論がそのことによって薄れていくとか、しづらくなるとは思っておらず、むしろこれからの運営の仕方として、やはり秋のさまざまな各省の予算を、財務省が来年度予算を一緒になってつくり上げていく上で、大きな議論がむしろプラスに反映できるように実際の作業をこれからしていく、そういう方向に使っていくべきではないかなと思います。

 私自身は、全世代型社会保障については、財審の立場ではなくて、社会保障制度改革推進会議と社会保障審議会、両方とも会長代理をやっているので、そちらの立場で入っているので、個別の会議の趣旨を踏まえて、いろいろ意見を言っていきたいと思いますが、いずれにしても、この間の第1回目に出たときに、給付と負担の見直しというのは、ほかの委員の方もそこが論点になるという話になっていましたので、そういう議論は私自身もよく見ておきたいなというふうに思っています。要は、言いたいことは、そういう大きな官邸での会議というのが、今回、立ち上がったわけですけれども、個別で行われるよりも、むしろそういうところで行われることが、より来年の予算編成をうまく導いていく上でプラスになるような仕組みになっていくと、そういう捉え方をしていくべきではないかなと思っています。

 その上で、あと財審として見ると、やはり審議の内容について、より積極的に国民、世論にわかりやすく訴えていくということが、やはり同時並行的には必要になると思っています。

〔質問〕 今、おっしゃられたように、財審の立場、代表としての立場で向こう側に参加しているわけではないですけれども、増田分科会長代理として、こちらの議論を向こう側で言っていこうというようなお考えというのは。

〔増田分科会長代理〕 財審を代表して何か言っていくというよりは、個人の人格とすればやはり一人なので、その全体感を持ってやっていきたいと思うのですが、仕組み上は、一応、財審を代表してあそこで言うということではなくて、そこは、会議体もそれぞれ分かれていますので、社会保障の大きな議論を向こうでやるということにして、そこは私もきちんと意識はしておきたいと思います。

〔質問〕 臨時・特別の措置について考えをお伺いしたいのですけれども、以前、諮問会議のほうでは、海外発の下方リスクが顕在化すれば、日本経済の回復が腰折れしかねないので、そういった臨時・特別の措置も検討すべきというような話をされていらっしゃったと思うのですけれども、最近になって、そういった兆しがあった場合にも検討すべきだという考えに、少しずつ臨時・特別の措置への考え方が、政府として前のめりになってきているのかなという気もするんですけれども、それについて、下振れを抑えるために措置を講じることは仕方がないというふうに考えるのか。それとも、もう少し規律、財政規律を踏まえて考えていく必要があるというふうに考えているのか。

〔増田分科会長代理〕 財政規律は、今の臨時・特別措置との関係で言うと、具体的にはやはり補正予算をどうするかに、最後、落ちつくのではないかなと思うのですが、今、経済対策について具体的に想定しているものではないと私は思っていますけれども、もし、補正予算という話になれば、これはもう従来どおり、本予算と補正予算はやはり一体として捉えていくべきで、あわせてプライマリーバランスの改善を考えていくべきというふうに思っています。これは、財審としてもそういうふうな形で取り扱うべきものということで、政府に対してもこれまでも言っておりますので、そこは同じように考えていくべき。補正予算も含めて、SNAベースでやはりこれは考えていくべきですので、そこはもう従来通りのことを、これからも政府のほうには注文をつけていきたいと思います。

〔質問〕 もう一点は、先ほど委員の発言の中で、金利が低くてもプライマリーバランスの黒字化は重要だという論理立てをしていく必要があるというお話でしたけれども、金利が低いと財政再建しようというインセンティブが働かないと思うのですけれども、もう一度、その論理は、どういう論理立てにするのかということと、今後、財審として議論していく可能性があるのかどうかについて。

〔増田分科会長代理〕 一応、委員の方は、税制のみならず金融政策にお詳しい方でありましたので、やはりそういう論理立てを持って、財政規律をきちんと立てていくという必要があると思いますと。現実に今、金利は非常に水準が低いわけですから、というご自身の意見の披露がございましたが、それをどうやって理屈づけるかについては、その方は本日おっしゃいませんでしたので、結論のところだけ、そういう立論がこれからも必要になるのではないですかということで、多分、ご自身もいろいろなお考えを持っていると思いますが、財審の中でそういったご披露がこれからあるかもしれません。そのこと自身をテーマにする機会が、次、出てくるかどうかというと、分野別に社会保障分野だとか、それから社会資本整備だとか、文教予算だとか、そういう形で議論していくので、真っ正面から議論する場が最後のほうであるかどうかになりますけれども、一応、すぐに想定されているものではないと。全体に、本日、大きな考え方をそれぞれ、手を挙げられた方はおっしゃっていました。その中で、ご自身の考え方の結論をおっしゃったのだというふうに私は理解しています。

〔質問〕 最後に、もう一点。財務大臣から、内部留保や個人金融資産を使っていってもらう方策を考えていかなければならないという発言があったと思いますが、先日、自民党の税制調査会長も同じようなことをおっしゃっていて、税制の面からも考えていく必要があるとおっしゃっていましたけれども、予算の面から内部留保とか、個人金融資産を使ってもらうような方策というのは、どういったものが考えられるのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕 本日、大臣は、財務大臣として税も取り扱っており、多分、大臣として総論的にお話になったと思います。本日の審議の中で、具体的にということは大臣もおっしゃらなかったし、議論にもなっていなかったのですが、私個人として言えば、財審の議論と少し離れるけれども、予算というよりは、やはり税でどうインセンティブを高めていくかのほうが考えやすいのではないかなとは思います。

〔幹事〕 よろしいでしょうか。なければ、これで終わります。

〔増田分科会長代理〕 はい。それでは、また今年もよろしくお願いします。


(以上)