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財政制度分科会(令和7年5月27日開催)記者会見の模様

〔幹事それでは、増田会長代理から冒頭、お願いします。

〔増田分科会長代理9時半から財政制度等審議会財政制度分科会を開催いたしました。そして、春の財審で深めてきた議論を「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」という題で建議として取りまとめを行いました。

建議の内容につきましては、金利が上昇する局面になり利払費の増加が見込まれることを真剣に受け止め、今後起き得る有事に対し十分な対応が可能となるよう、財政余力の確保が急務である。そのためには、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させることが必要であり、2025年度から2026年度にかけて可能な限り早期のプライマリーバランス黒字化を目指すとともに、一定のプライマリーバランスの黒字幅を確保しつつ、まずは2030年度までに債務残高対GDP比をコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げることを目指すべき。社会保障の持続性を確保するため、全世代型社会保障の構築に向けた改革工程に基づき、給付と負担のバランスの適正化を通じて、現役世代の保険料負担を最大限抑制することが重要である。こうした内容をこの建議に盛り込んだところでございます。

政府におかれては本日の建議の提言を念頭に置きながら、歳出・歳入両面からの改革に取り組むなど、財政健全化を着実に進めていくことが必要であると考えております。この建議につきましては、先ほど東政務官にお渡しをいたしました。今後の財政運営に生かしていただくよう、私どもからお願いしました。

私からは以上でございます。

〔幹事ありがとうございます。債務残高対GDP比について、2030年度までに、と年限を入れたのは踏み込まれたと思うのですが、ここに込められた意図を教えてください。

〔増田分科会長代理PB黒字化につきましては、これまで2025年度までのPB黒字化ということを申し上げてまいりましたが、昨今の情勢を鑑み、2025年度から2026年度にかけて可能な限り早い時期にPB黒字化を達成するようにといたしました。一方で、それだけでは十分ではないと思っており、1年後退したと受け止められては困ります。黒字化を達成するのは通過点であり、一定のプライマリーバランスの黒字幅をきちんと確保することが大事です。どの程度の黒字幅を確保すべきかについては、今後財審で議論したいと思います。まず2030年度までの5年間と期限を区切って、債務残高対GDP比についてもコロナ禍前の水準に向けて安定的に引き下げる。一定のプライマリーバランスの黒字幅を確保する、債務残高対GDP比をいつまでに引き下げる、これは今回財審で初めてまとめたものでございました。

政府におかれては、このことを十分に踏まえて骨太などにこの内容を反映させて、今後、歳出改革にも取り組んで、しっかりとした財政運営をしていただきたい。このような思いを込めて、こうした記述にさせていただきました。

〔幹事ありがとうございます。もう1問、政治の側から財政の拡大に対する要望がかなり大きく上がっていると思いますが、財審に関しては、中長期的な財政の信認のほうがむしろ重要であるというような指摘をされていると思います。ここの意図を教えてください。

〔増田分科会長代理御承知のとおり、今年は7月に参議院選挙が予想されるというのは厳然たる事実でございまして、各政党としてもどうしても財政出動を伴う内容を盛り込みがちになるという状況もございます。

一方で、直近の各新聞社の世論調査を見ておりますと、国民の皆様は財政出動、財政拡大に単に賛同されているというよりは、その財源にも大変関心をお持ちになって、むしろバランスよく御覧になっているように思えます。やはり財審としては、財政を安定的に持続可能なものにしていくこと。そして国債償還の中で、マーケットから財政がどう見られているのかということ。財政の信認を確保することができないと、国債の償還すらできないという懸念もございますので、愚直に我が国の財政の現状や抱えている課題に財審として見解を述べるということが必要だろうと思っております。今回の建議の内容もそうした思いでとりまとめましたが、単に書物にまとめただけでなく、今後のそうした発信についても、財審として工夫していく必要があると受け止めております。

〔質問御説明ありがとうございます。先ほどの増田会長代理の御説明の中でPBの黒字幅については、今後財審でも議論をしていきたいという趣旨の御発言がありましたが、もしいつ頃のタイミングになるかという目途などがありましたら教えてください。

〔増田分科会長代理そこまでは本日までの春の財審の中では議論ございませんでした。秋の財審の中で、委員の皆様方からも意見が出てくるのではないかと思います。

秋の財審では、来年度の当初予算について各論を議論しますが、そのときの大枠がどうなっているかは、選挙が終わった後に見ないと分かりません。経済対策等の話もちらほら聞こえてきていますが、秋の段階で財政の状況がどうなっているのかによって、いつ頃の時期にPB黒字化になるのかというのが見えてくると思っています。そのことを踏まえた上で、その先の議論ということになろうかと思いますので、今のところは、まだ白紙です。これからの問題意識としては年限も含み書かせていただきましたが、その議論は秋以降、深めていきたいと思います。

〔幹事ほかにございますか。

〔質問増田会長代理の最初のお答えの中で、PB黒字化達成の目標時期について、昨今の情勢を考えるに2025年度から2026年度にかけての早い時期にとおっしゃったと思うのですが、昨今の情勢というのは、どういったことを想定されているのでしょうか。

〔増田分科会長代理実は、昨年は税収も好調で2025年度にPBの黒字化が達成するという見込みが示されたこともありましたが、ただ、秋の総選挙後に編成された補正予算の規模感が大きかったといったこともございました。

2025年度は国政選挙を抱えておりますし、また補正予算の編成等においては、基本的には緊急の、必要欠くべからざるものです。非常に生活が厳しい方々に対してのいろいろな歳出は、理由があれば当然しかるべきですし、予算というのは適宜考えていくべきものです。ただし、全体の枠組みを大きく逸脱するほどになってはならず、全体のバランスを広く見て考えていくことが極めて大事であると思います。今年度これからどういうことが起きるのかは分かりませんので、具体的なことはなかなか言い難いですが、財政出動の話も随分聞こえてくるのは事実でございますので、政府としてはきちんとした姿勢で臨んでいただきたいと思っています。

〔質問ありがとうございました。建議の基本認識の部分、2ページに我が国でも格差が拡大しているとの指摘がありますが、この「格差」というのは具体的にどういうものを念頭に置いているのか、あるいは本日どういう議論がこの部分についてあったのかをお聞きしたいです。

〔増田分科会長代理ここについては、本日の議論はございませんでしたが、事前に関係者の皆様に見てもらっているという状況でございます。格差というと、一般的にジニ係数などの指標で判断する必要があると思っておりますが、生活必需品などにも物価上昇の影響が出てきており、社会的・経済的にも厳しい立場に置かれている方々に常に注意を払っていく必要があると考えております。

委員全員がそうしたことを仰っていたというわけではありませんが、非正規雇用の多い就職氷河期世代等の方々が生産年齢人口の中心になってきていて、生活苦につながる方々のボリュームも大きくなってきているので、そうしたことを指摘される委員はいらっしゃいました。財審としては、そうした声にもきちんと耳を傾けるということが必要だろうと思います。ここは、そうした指摘があるという受け身の形で、記載しております。

〔質問社会保障の関係についてお伺いしたいです。今回、基本的に高齢者の増加分のみに収めるという歳出の目安は基本的に維持するという答申になっていると思います。また、記載の中でも例えば、「経済・物価動向に合わせて診療報酬を伸ばすよう求める声もあるが、不断に制度改革を積み上げていく必要がある」という記載もわざわざございまして、抑制的に進めていくべきというのが基本方針かと思います。しかし、前日の経済財政諮問会議などでは、公定価格を医療・介護従事者の方の賃上げにつながるようにすべきという御指摘もありまして、歳出の目安を抑えることと賃上げを含めた物価動向への対応のバランスについて、どういうお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理これから物価の動向等が進んでいくにつれて、社会保障も来年度予算への反映については、秋が主戦場のような形になると思っております。その中でやはり日本の経済を回していく上では、賃金と物価の好循環で動かしていくことが本流だろうという認識があります。これは社会保障というよりも全体としてです。

成長と分配の好循環で、物価上昇を上回る持続的な賃上げを実現・定着させるという基本認識は、建議全体のベースのトーンになっております。その中で、社会保障の分野というのは非常にボリュームが大きいですから、どう取り扱っていくのかというのは秋の中でも一番重要な部分になると思います。ボリュームが大きいだけに、少しでもいじるとなると財政や予算全体に与える影響が非常に大きいので、報酬改定についても、毎年様々な議論がありますが、やはり一定の枠を設ける、または合理化すべきところは合理化することが必要だと思います。医療従事者だけではなく、自治体も含め地域医療構想をしっかりと進め、医療供給体制も見直していく。社会保障、特に医療の分野はありとあらゆる分野において改革を進めなければいけないと思っていますので、この段階でまだ申し上げる材料はございませんが、そうした一定の枠の中で、多少痛みを伴いつつも持続可能性を模索していくことに専念しなければいけないと思います。

本日も、非常に多くの課題があるという認識は共有されたかと思います。

〔質問PB黒字化について伺いたいです。内閣府の中長期試算では2025年度は赤字という予想が示されています。一方、今回の建議では2025年度から2026年度と幅を持たす形になっており、財政健全化の旗を下ろさない、市場からの信認が大事であるという意味合いも込められていますが、やはり中長期試算との関係性では少し整合的ではないと思っています。どのような理屈で2025年度も残しているのか。税収増といっても、トランプ関税で世界経済の悪化も懸念されますし、そのあたりの整合性はどのように整理されているのか伺えますでしょうか。

〔増田分科会長代理これまでずっと25年度、25年度と言ってまいりました。あのような試算も出ているのは重々承知しておりますが、ただ、単純に2026年度ということで数字を後退させれば我が国の財政に対する各国からの信認を失うことになるのではないかという懸念がございました。旗は下ろさず、PB黒字化を見据えて黒字幅を議論し、ストックに関しては2030年度までに債務残高対GDP比をコロナ禍前の水準に戻すということによって、今まで以上に財政健全化を進め、有事のときの財政出動に向けた財政余力を確保する。これをきちんと海外のマーケットの人たちも含めて見ていただきたいというのが、こうした表現に落ち着かせた理由でございます。

〔質問先ほどの社会保障の部分について、これから主戦場は秋になるということでした。確かに前日の経済財政諮問会議で示された骨太骨子案にも、公定価格の物賃対応が盛り込まれていると同時に、特に団体からは、次の診療報酬改定を待たずに期中の改定にも対応してほしいという声が出ている状況にあります。次の改定を待たないような対応に関して、財審としてはどのようにお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理最後は、それが本当に緊急的なものなのかにかかってくると思いますが、社会保障で一番大事なのは制度の持続可能性をどう実現していくのかということであります。年限を区切った高額療養費の問題や年金についていろいろな議論がありますのも、全て社会保障分野が共助の精神の下で非常に厳しい人たちをどのようにみんなでサポートしていくのかということが問われる問題だからです。確かに物価上昇等があるなかで多くの国民の皆様にどれだけ理解が得られるかにかかっているのではないかと私は思います。

春の財審の中では、そうした公定価格の改定の問題や各論については議論しておらず、それを議論するタイミングもまだ定かではありませんが、いずれにしても財審としては、やはり制度の持続可能性をどう実現するかを最優先しながら、議論していかなければいけないと考えています。

〔幹事〕それでは、これで終わります。ありがとうございました。

〔増田分科会長代理どうもありがとうございました。