〔増田分科会長代理〕本日、財政制度等審議会財政制度分科会が開催されました。本日は、財政各論Ⅰということで、活力ある経済社会の実現と安心で豊かな地域社会の確立、この二つについて議論を行いました。まず、事務方から資料を説明し、その後、委員からの御発言に移りました。
以降、通例どおり、個人名を伏せて、主な発言を御紹介させていただきます。よろしくお願いします。順次申し上げていきます。
最初の意見でございます。昨日公表の人口推計で、昨年の日本人人口は過去最大の減少幅となりました。人口減少下での社会の在り方を考える際に、人口密度という視点が不足していると感じられる。減少数あるいは率ばかりで、人口密度という視点が不足しているのではないか。限られた資源・財源の中における生産性向上の検討に当たっては、人口のボリュームだけでなくて人口密度も考慮すべきである。
次です。デフレから脱しつつある現状において、本来あるべきは需要喚起ではなく供給力の強化であって、供給力強化に向けた生産性の向上が必要である。
次です。人口減少やインフラの老朽化などは従前から言われている課題であり、これらはスピード感を持って対応すべきである。各論点に対する具体的な手法について、もう一段階踏み込んで議論していくべきである。
それから、今後日銀が国債の買入れを減らして金利のある世界に移行する中で、あらゆる歳出にはコストがあり、コストに見合った効果があるのかという点についてもう少し着目をして考えていくべきである。
次です。労働生産性の向上の観点から、三位一体の労働市場改革を進めていくべきであり、特に非正規雇用労働者へのリスキリングの強化、正規雇用労働者との格差是正などを進めていくべきである。
次です。リスキリングについては、新たな職務やステップアップにつなげることが重要であって、個人への支援を充実するとともに、必要なスキルの明確化、能力評価の仕組みの構築を進めるべきである。
次でございます。労働参加を促す観点から、誰もが働きやすい環境の整備が必要であって、業務の効率化・合理化を進めるとともに、多様な働き方を労働者が選択しやすくすべきである。
次です。デジタル化を進めることにより、地方行政も含め公共セクターにおける労働シフトを進めることが重要である。
次です。現在の大学の認証評価制度は問題であり、学生への付加価値等のアウトカム指標を設定した上で客観的な評価を強化し、予算配分にも反映していくべきである。
次です。国際的な日本のプレゼンスを維持するためにも、教育の質の引上げが必要である。学生に選ばれなかった大学を税金で支えるのは理解し難い。支援の対象の重点化等によって規模の適正化を進めていくべきである。
次です。大学について、撤退戦略が重要である。大学をつくる場合には様々な手続があるが、撤退の場合には手続はない。学生へのセーフティネットを含め、撤退しやすい環境整備が必要である。
次です。奨学金返還が困難な者がいるからといって安直に支援をするということではなく、なぜ返還できないのかに着目をして、しっかり稼げる職業に就ける教育ができていないということ、そこを問題視すべきではないか。教員数も含めダウンサイジングできていないこと、それから教育の質が担保されていないことが、日本経済低迷の一因ではないかということです。
次、企業支援についてです。コロナ禍で急増した中小企業支援は、早期にコロナ前の水準に平時化するとともに、今後は一律の資金援助によるのではなく、将来の成長へのインセンティブづけに重点を置いた支援、そして賃上げにとって重要な価格転嫁対策、下請保護などに移行していくべきである。
次です。大企業を含む特定産業の支援について、妥当性を客観的・透明性を持って判断をし、国民の理解を得ながら行っていく必要がある。その手法として設備投資への直接的な支援が真に有効な成果を上げているか検証をしつつ、金融市場整備や政府によるリスクマネー供給の強化等により、まだ余剰のある国内の民間資金による発展が主軸となるべきであるということです。
それから、地域社会の関係でいくつか申し上げます。まず、人口減少を前提として、経済成長実現、社会機能維持をさせる方策の検討が急務である。時間軸を意識しつつ、人口密度の維持・向上、都道府県域を超えた自治体間連携や最適な資源配分を図る必要。また、DX等を通じた地方行政の効率化も必要となってくる。
次です。若年女性の地方からの流出は、雇用創出のみならず、性別分業意識の改革や環境創出も課題となってくる。年齢・性別別などの細やかなデータ分析、政策立案が必要となる。
次です。社会資本整備は、人口動態やインフラの老朽化などを踏まえると、災害リスクなどを踏まえたコンパクトなまちづくりや、都道府県域を超えた広域化等について、時間軸を考慮しつつ、実効性の高い計画の立案とともに実行していくことが必要であり、優良事例の横展開などのみならず、法規制・誘導的施策の強化や、効果的なインセンティブ・ディスインセンティブの活用等を通じ、施策の実効性を高めていくことが重要である。
それから次、地方財政についてです。インターネットバンキングなどの急速なデジタル化に伴い、あるべき地方税収の帰属との乖離が生じており、早急な対応が必要である。
次の意見です。地方税収の東京一極集中が行政サービスの地域間格差をもたらしており、偏在性が小さい地方税体系を構築していく必要がある。
次です。ここからは米・水田政策についてです。米の安定供給は重要な課題であるが、国が米の売買に関与する際には大きな財政負担が生じないよう留意する必要がある。それから、米の安定供給のため、外国産米の柔軟な活用も検討していくべきではないか。
次です。今回の米の問題や状況変化をきっかけに、これまでの米・水田政策を、飼料用米への支援の在り方も含め虚心坦懐に見直していくべきである。
最後に、地方創生、観光の関係です。地方創生において観光は重要であり、アニメ・漫画などの日本のコンテンツ産業を生かした地方資源の活用など、地域でのコンテンツ造成が効果的である。また、経済効果測定などを行いつつ、観光人口、交流人口で地域経済が潤うような観光モデルを構築すべき。
次です。税の偏在についてと同じような偏在の問題は、観光にも言えるのではないか。地域が観光を頑張っても、フランチャイズの飲食店などにリターンが吸い取られると、地域の振興につながっていかないのではないか。地域振興と税はセットで考えるべきではないか。
それから、オーバーツーリズム対策という観点からも、文化財の入場料引上げ、二重価格導入の検討が必要である。個別には対応しづらい面もあることから、考え方の整理を政府として行っていくべきである。
今回は成長関係と地方関係、範囲が広かったので、多様な意見が出ました。主立った意見は以上です。
〔幹事〕ありがとうございます。幹事社からいくつかお伺いします。
今回の各論の資料で輸入米の活用についても触れられていると思うのですが、この点について、特にMA枠のうちSBS米の枠拡充という点もありましたが、議論の詳細など、会長代理の御意見を。
〔増田分科会長代理〕米については、これまで飼料用米について財審でもいろいろ問題になっていましたが、こうした輸入米などについての議論は、私の記憶では最近では今回が一番大きかったのではないかなと思います。昨今、備蓄米を放出していますが、米の価格がどうもまだ下がってないということもあって、トータルすると委員の皆様は、過去の検証と柔軟な運用の仕組みを用意しておくということをおっしゃっていました。資料にもございましたとおり、皆様も、こうしたものも一つあるなという雰囲気だったと思いますが、今おっしゃったMA米について、例の主食用米、SBS枠について10万トンと決まっていると資料に出ていますが、その枠を柔軟に考えて、できれば国内需給の調整弁として使うということも一つあるねという感じだったと思います。
一つ、難しいというか、なかなか予測できないのは、今年の気候がどうなるかによって今年の生産量が左右される点です。生産量の増減は、気候変動の関係で毎年考えなければいけないので、そうした意味では国内需給の調整弁としていくつか手法を持っておくというのは有力だなと、このように思いました。
〔幹事〕ありがとうございます。
〔質問〕米について同じく伺いたいですが、委員の方の中から、SBSの枠を増やすという中で、何か農家への配慮などを求めるような声などはあったのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕本日の意見の中ではそうした立場での意見は直接的にはなかったと思いますが、もちろん生産者がしっかりしていての米の供給ということになります。農業の分野でいうと、法人化・法人経営、株式会社の積極的な参入のようなことがありますので、そうした企業形態をきちんと強化するということについては特に異論はなかったと思います。そうした形で企業体が強くなれば、生産についても気候が大きく変わるなどしても柔軟な対応が出来ていくのではないかなと思います。
〔質問〕私も米に関してお伺いします。先ほど御意見の御紹介で、飼料用米への支援の在り方も含め虚心坦懐に見直していくべきという御意見がありました。これまでも飼料用米は御議論があったと承知しておりますが、本日の議論の中では、この飼料用米の支援について、もう少し具体的にどういう御意見があったか、虚心坦懐というのはどういうことを意味しているのか教えてください。
〔増田分科会長代理〕本日の資料に、国内で飼料として仕向けられる穀物の割合は10%にすぎないと書いています。10%にすぎないのだが、毎年度約2,000億円のお金が投じられている、それだけの巨額な財政負担があるということが前提になっています。飼料用米への支援については、秋の財審などでも、その妥当性はいつも議論の対象になっていました。今の米の値上がりに対して、この財政的な効果のようなことをきちんと冷静に検討する必要があるのではないか。虚心坦懐にというのは、時間の関係で詳しく言われたわけではありませんでしたが、飼料用米は本当に財政支援に見合っているのかという思いが恐らくそこに込められていると思います。
〔幹事〕ほかはよろしいでしょうか。
〔質問〕大学支援のところで、地域等によっては、環境的に満足に勉強できず大学までというケースがあり得るかなと思うのですが、そうしたなかなか恵まれなかった学習環境を経て大学に行かれたという学生への対応策や大学支援に関する慎重意見はなかったのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕大学についてというと、私はそうした学生たちも念頭にということだと思います。当然、奨学金をお借りするわけですね。一番の問題は恐らく奨学金を返済する際の負担などだと思うのですが、ここで、先ほど紹介した意見でもありましたが、そうした人たちであっても、きちんとした就業先に就職できれば十分返せるはずです。
そのため、将来のことをいろいろ考えますと、私個人の意見としては、本日もそういう議論があったわけですが、やはり就職氷河期世代の人たちが現実にいて、その人たちが非正規でずっと働かざるを得ない状況が今の日本社会全体に大きな影を落としていると思います。そうしたものを繰り返すのは決してよくないので、本日の意見で先ほど紹介しましたが、きちんとした職業に学生たちが学んだことを生かして就くということが大事だと思います。
また、本日の資料全体に通じるのは、非正規をとにかくなくして正規の処遇に切り替えていくこと。それは中小企業も含めてですそのためにはいろいろな選択肢が必要であり、今20%も使われていないようですが、短時間正社員制度をうまく活用し雇用保険等もきちんと適用されるようにしておく。そちらが主眼にトータルで見て、なかなか厳しい経済環境の中で学んでいる学生が大きな社会の枠組みの中できっちりと受け入れ、その人たちの抱えている問題を解決していこうということであったと思います。
資料の中で様々な問題が提起されていますけれども、経済的な環境が厳しい人たちについてどうするかという問題に直接触れる意見はございませんでした。しかし、何もそれが駄目だとなどということでは決してなくて、社会全体の中で、大学から出ていった人を安定雇用、正規雇用につなげていくということを実現していくためにどうするかということだったと思います。
〔幹事〕それでは、会見終了となります。