〔増田分科会長代理〕本日、財政制度等審議会の財政制度分科会が開催されました。
新体制の初回ということになりますので、まず、財政制度分科会の会長の互選を行いまして、十倉会長が選任をされました。そして、会長代理につきましては、十倉会長より私、増田が指名をされたところでございます。これまでに引き続きということになりますが、改めましてどうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、このたび分科会長に御就任をされました十倉会長から御発言がございます。お願いします。
〔十倉分科会長〕本日の財政制度等審議会及び財政制度分科会において、委員の皆様から会長に選任いただきました。新体制におきましても引き続き、各界の第一線で御活躍されている有識者の方々にお集まりいただいております。引き続き、委員の皆様と共に日本経済・財政が抱える構造的な課題にしっかりと向き合い、今後のあるべき姿、道しるべを示すという使命を果たしてまいりたいと思います。私自身もしっかりと取り組んでまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。
それでは続きまして、本日の分科会の会議の内容を御紹介したいと思います。本日は、財政総論、それから令和5年度国の財務書類、こちらにつきまして、まず事務方から資料の説明をし、委員からの発言を紹介するという形で進めてまいりました。
各委員からの御質問、御意見については、いつもどおり委員の個人名は伏せたままで御紹介をさせていただきます。なお、議事の詳細につきましては、後日公表される議事録を御参照いただければと思います。
それでは早速、内容について御紹介申し上げます。
初めに、我が国は未曽有の人口減少に今直面をしている。特に地域社会においては、インフラの維持は困難になっていくが、少子高齢化も進み働き手も減少する中、国においては必要な支援と財政の持続可能性のバランスを重視すべきである。
次の意見です。女性の働く環境整備がまだ不十分であり、地域社会においては、女性が地元に残らないことにより、都市と地方の格差が拡大している。人口減少と地方創生は密接につながっており、重要課題として認識をすべきである。
次の意見です。世界的に財政規律を緩める動きがあり、トランプ政権による相互関税の発動などを受けて、我が国でも財政の歳出拡大、減税圧力が高まっている状況である。先行きが見通せない中で今は正念場であるが、現下の日本の厳しい財政状況を踏まえても、中長期的な財政の持続可能性を確保していくべきである。
次の意見です。トランプ政権の相互関税の発動に伴うショックへの対応については、リーマンショックやコロナ禍における対策を検証した上で、真に必要な対応に努めるべきである。
次です。有事とそうでない場合の財政規律に関する考え方は明確に区別をしていくべき。有事の際には必要な財政出動をすべきだが、平時には有事に向けて財政の健全性を確保すべきである。そうしたメリハリがある財政の議論をしていくべきである。
次です。財政余力があることは、有事対応にも重要なことである。有事対応による財政状況の悪化にも対応できるよう、必要となる債務残高、プライマリーバランスの水準や独立財政機関などの履行確保メカニズムについても、海外の事例、民間試算のシミュレーションを参考に検討をしていくべきである。
次です。プライマリーバランス黒字化という財政健全化目標はあくまで財政健全化に向けた一里塚であって、本年1月の試算では、今後黒字に近づく試算が示されたところである。大きく環境が変化している中で、なおさら財政規律を緩めるべきではなく、プライマリーバランス黒字化という財政健全化目標は今年度も維持すべきである。
次です。財政の健全性の必要性が国内で認識されていない。財務省前のデモなど国内の不安も高まっている状況であり、議論が偏っている面もあるが、一方で聞くべき声はきちんと聞いていく必要がある。特に若い世代に向けた情報発信が不十分である中、YouTubeやSNSの活用など財政健全化に向けた適切な情報発信が求められる。
次です。デジタル化などを通じて財政状況の見える化を徹底し、EBPMの取組を通じて国民への適切な情報発信に努めるべきである。
次です。これが最後の意見の紹介になります。国の財務書類については、予算だけでは捉えられない国の財政状況について、ダッシュボードの活用など豊富な情報を分かりやすく整理をしている。こうした国民目線に立った分かりやすいツールは、積極的に周知すべきである。
議論での内容は以上でございました。私からは以上でございます。
〔幹事〕2点伺いたいです。まず1点目。少し漠然とした質問で恐縮なのですが、今後、提言に向けて議論を重ねていかれると思うのですが、どういったことを重視されて議論して、どんなことを提言されていきたいのか、まだ始まったばかりだと思うのですが、お聞かせください。
〔増田分科会長代理〕それでは、私から少し申し上げたいと思います。今の財政状況は、債務残高も積み重なっておりますし、今のままでは財政への信認が非常に薄れる可能性がある。一方で、これまでも建議で提言してまいりましたが、定期的に自然災害やパンデミック等いろいろなことが突発的に起きてくるのに際して、やはり財政余力をきちんと持っておくということが極めて重要であると思っております。
今、金利のある世界で利払費が今後増大していくことは避けられない中で、どうやって財政を健全化し、いざというときに対応し、そして国民あるいは世界的な信認を確保するか。総論的にはこのあたりを念頭に置いて、本日は特に人口減少下でのこれからの対応をどうするかということでしたが、人口減少はもう日本においては免れないので、次回からですが、各論をきちんと議論し、春の建議につなげていきたいと思います。
〔幹事〕もう1点伺いたいです。春の建議では骨太の方針に向けた議論で建議という形になると思います。今回の骨太の方針では、プライマリーバランスの在り方などの財政健全化の目標の扱いが一つの焦点となっていると思うのですが、財政健全化の目標についてこの審議会で具体的に何か提言をされていくというお考えはあるのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕我々は建議を出しますが、政府でも是非骨太の方針に向けて考えていただければと思っています。やはり今年度はプライマリーバランス黒字には少し届かなかったのですが、赤字幅は縮小するという、そうした局面に来ています。その次の財政健全化目標をどうするかという議論はまさにこれからですが、今そこまで来ているので、PB黒字化をまず達成させるということをしっかりと確実に政府で履行していってもらいたい。
財政健全化の目標をどうしていくかについては、まさにこれから財審の中でいろいろな意見が出てくると思います。本日の資料の中でも後半に、民間試算がいくつか出ていましたよね。ああいったこともこれから大いに参考にしていかなければいけないと思います。審議会としてどうするかという議論はこれからということになりますが、まずはPB黒字化を達成させるためのしっかりとした取組をしていただくということがスタートかと思います。
〔幹事〕ありがとうございます。
〔十倉分科会長〕私からも少し補足します。私は経済財政諮問会議のメンバーにもなっておりますが、今、増田会長代理が言われたとおり、プライマリーバランス黒字化は狼少年のようになっております。狼少年になっていると重要ではないと思われかねませんので、まずはプライマリーバランス黒字化をしっかり確保すべきであると思います。
また、経済財政諮問会議等で話しているのは、やはり中長期的に見て、プライマリーバランスを黒字化していくというのは大事だということです。時々によって必要な支出はあるのでしょうが、やはり中長期的に見てプライマリーバランスを黒字で維持していくという視点が大事だということはずっと申し上げていますし、そうした議論になると思います。
〔幹事〕ありがとうございました。
〔質問〕足もとでは、与野党で夏の参院選を見据えて物価高対策を打ち出すような動きがあって、要は、歳出拡大論が強まっているように見受けられるのですが、その点についての御意見があったかと、お二人のその点の考えをお聞かせください。
〔十倉分科会長〕有事だからすぐ財政支出というのはあまりにも乱暴な議論であると思います。それと、もしやむを得ず必要な場合は、やはり真に必要なものに限って届くようにすべきであると思います。やはり財政というのは短期的な視点と中長期的な視点が必要で、中長期的には少子高齢化の中にありまして日本の財政基盤は今、非常に脆弱になっています。これから恐らく日本の成長というのは、昔のように金利を下げて需要を喚起するのではなくて、投資でやっていくことになると思います。金利のある世界になってくることも考慮すれば、やはり財政基盤をしっかり確立するというのがまず大事だと考えております。これが先ほど述べた中長期的な視点です。
短期的には、トランプ関税も含めていろいろな問題がありますが、そうしたものへの対応は真に必要なものに限るべきであると思います。過去のリーマンショックやコロナショックへの対応もよく検証して行うべきであると考えます。
〔質問〕御説明ありがとうございます。財審の在り方についてもう一度改めてお聞かせください。これまで財審は、例えばコロナ禍で膨らんだ補正を平時に戻す、また有事に備えて財政余力を保つように訴えてきましたが、去年の補正でも前年度を上回るような補正を組み、足もとでも歳出拡大を求める野党の求めに応じざるを得ないような少数与党の状況ですが、改めまして財審として今後も財政規律をめぐってどのようなことを訴えていきたいのか、また、財審の存在の意義についてお聞かせください。
〔十倉分科会長〕繰り返しになりますが、やはり短期的な問題と中長期的な問題をよく見極めて、やはり財政基盤というのは中長期に健全なものにしていかなければいけません。その姿勢は崩してはいけない。少数与党の中での運営やトランプ関税のようなショックが起きると、歳出拡大を求める声が高まり、政治的には非常に難しい局面に入ってきたというのはよく分かるのですが、やはり国民の皆様にしっかりと財政再建の重要性はよく分かっていただく必要もあろうかと思いますので、それも含めてかじ取りを是非政府にはお願いしたいと思います。
国民、特に若い人たちに日本の財政の状況について理解を深めてもらうべきというのは、本日は何人かの方から、先ほど増田会長代理からも紹介がありましたが、意見がありました。やはり国民の皆様によく分かっていただくというのがまず大事であると思います。
〔増田分科会長代理〕少し私からも付け加えさせていただきます。今まさに会長がおっしゃったとおり、国民の皆様に、しかも多世代にわたってきちんと理解していただくということが大事です。本日の議論の中でも、SNSやYouTubeなどを活用すべき、専門的で難しい議論だが、それを理解している人が分かるのみでは駄目なので、財審としてもっと分かりやすく発信するようにという強い意見がありました。こうした時期だからこそ、なおさら財審としてしっかり発信を行って、その上で政府あるいは政治の皆様方にも考え方を伝えるべきである。それは国民のベースを踏まえた上でしっかりやるように、こうした御意見が各委員からございました。
〔質問〕ありがとうございました。
〔質問〕御紹介いただいた議論の中にも、財務省デモのことが上がってきたということで、誤解に基づいたところも非常に大きいと思う一方、もう少し聞くべきところもあるのではないかというような御意見があったという御紹介ありましたが、何が表れたものであるとお感じになっているか、議論の少し詳しいところなども含めて教えていただけますか。
〔増田分科会長代理〕私は、デモにはいろいろな要因があるのだろうと思います。わざわざ足を運んで来ていらっしゃる方々には、いろいろなお考えや動機があるのではないかなと。必ずしも財政についていろいろ問題意識を持っているということだけでもなくて、もっと幅広い、社会全体的に少し弱い者に対して見捨てられているのではないかなど、いろいろな思いをお持ちの方が集まっているのだろうと思います。
これは財審のメンバーというよりは個人的な意見かもしれませんが、デモをして政府の前で大きな声を上げるというのは、民主主義の健全性の一つの表れであると思います。それすらできない国はやはりあるわけです。そのため、そうしたことが表現の自由の中でやれるというのは、それはそれで大事にしなければいけないですし、そこで言われている声はしっかりと受け止めるということ、そこにきちんと耳を傾けることは、本日の委員からの意見もありましたが、すごく大事であると思います。
その上で、もし財政健全化と相入れない部分が、将来のあるいは中長期的な視点と会長がおっしゃっていた見地からいって国民の幸せにつながるのであればそれはそれでよいですが、必ずしもそうでない部分もあるとすれば、それはそうした中でもやはり言っていくべき必要がある。ですので、どういう声でも取り入れる、聞く耳を持つというのは大事です。財務省に対するデモを的外れと切り捨てることなく、やはり表現の自由の一つの形態であると受け止めることが日本にとって必要ではないかなと思います。これはかなり個人的な意見です。
〔十倉分科会長〕本日の財審の中でも、ある委員の先生がよいことをおっしゃっていました。SNSというのはいろいろ長短言われて、特に選挙などの場面では、短期的な観点、欠点の方が強調される面は確かにあると思いますが、ただ、他国ではコンセンサスがしっかり取れている事例もある。例えば財政基盤の重要性に対してコンセンサスがしっかり取れているのであれば、あまり関係ない、そうしたものはちゃんと受け入れてもらえるということをおっしゃっている方もいらっしゃいました。
今、増田会長代理のおっしゃったとおりであると思います。我々としては、財政基盤が大事であるということをしっかり言っていくこと、それと、有事というのは必ず、何十年に一回起こるのではありません。もう数年に1回起こっています。そうした国際情勢ないしは生態系の崩壊も含めて自然災害、そうした中で財政の健全化がいかに大事かということを訴えていくということであると思います。我々の努力も必要であると思います。
〔質問〕本日の資料の中にも先ほどの発言の中にもありましたが、これまで低金利で成長を促していたが、これからは投資が重要になってくるということがございました。資料の中に、企業の内部留保が蓄積しているという指摘もあったかと思いますが、識者の中には、これまで民間に、市場にお金を流しても、それが企業の内部留保でたまる形になって、国の借金が増えるばかりであったと言われる方もおります。この内部留保の活用や投資の重要性、今後の成長戦略についてお考えを伺えますでしょうか。
〔増田分科会長代理〕本日はその関係について深く議論があったわけではないのですが、ただ、大事なことは、これから金利のある世界になってくる。したがって、投資効率がより重要視されることになります。別に低金利だから投資について甘くやっていたということではないと思いますが、やはり成長していくために、そうした金利のあるお金の投資効率を高めていくことによって新たなイノベーションにつなげていくということになると思います。
賃金の上昇など景気の好循環に向けて、せっかくよい動き、モメンタムが出てきたわけですから、私はこうした環境の大きな変化をしっかりと受け止めて、内部留保を増やすだけではなくて、企業全体としてしっかりと見定めて成長分野に投資をしていくという、そうした金利のあることを通じて変化にうまくつなげていくことが必要ではないかと思います。
〔十倉分科会長〕これは財審の会長ではなくて経団連としての意見です。常々難解奇怪と言っているのですが、やはりここ二、三十年デフレの時代は三つの過剰、借金の過剰、それから設備の過剰、人の過剰があって、企業はどうしたかといったら、やはり海外に出て行きました。海外に出ていって、設備投資を行ってきたのです。それは国内投資ではないので、ここへは入ってきていません。200兆円以上の海外投資を企業は行ってきました。
では、これが続くかといったらそうではなくて、例えばGX経済移行債のようなこれからのGXに対応した投資は、国内投資になります。研究開発であれ、設備投資であれ、国内で達成しなければ意味がありませんから。いわゆるイエレン元米国財務長官の言うモダン・サプライサイド・エコノミクスですが、そうしたものに今変わってきつつありますから、これからは投資が増えてくると思います。そうした意味でも、金利のある世界の中での投資になってきますので、今、増田会長代理が言われたように、財政基盤というのはそうした意味でも余計大事になってくると思います。
〔質問〕十倉会長にお伺いしたいのですが、昨年6月の諮問会議で、PB目標について単年度で考えるのではなくて、複数年度で安定的に黒字基調となるような水準を目指すべきであるとおっしゃっていました。先ほども中期的な視点も必要というお話がありましたが、一方で本日の財審の資料では、債務残高対GDP比を減らすためにはPB2%が必要という試算がありましたが、この試算についてのお考えはありますか。
〔十倉分科会長〕方向性は一緒であると思います。ただこれからは、例えばさっき言ったGXに向けての投資や半導体などへ投資が出てきます。そうしたものは別に単年度で行っているわけではなくて、中長期の視点で行っているのです。また、有事も起こります。ですので、財政支出が要るときは要るのです。しかし、単年度ごとにそれをやっていると、要るときは要る、余ったら補正で使うというようなことになってしまうので、やはり中長期的にしっかり目標を定めて、そこはPB黒字を維持していく。何%維持するかというのはこれからの議論になるかと思いますが、そうした中でやるべきであるということで、単年度主義に陥らないということです。
〔幹事〕質問はよろしいでしょうか。
こちらで終わらせていただきます。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。