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財政制度分科会(令和6年11月13日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理本日9時から財政制度等審議会の財政制度分科会が開催されました。本日は議題が社会保障であり、その議論を行いました。初めに事務方から資料説明があって、その後意見交換がございました。

委員からの質問、意見につきましては、個人名を伏せてこれから御紹介いたします。

まず、社会保障の総論から、順次意見を紹介していきます。

最初の意見です。現役世代の負担増を抑制することも意識しながら改革を進めていく必要がある。ようやく動きはじめた成長と分配の好循環に水を差すことになってはいけない。医療・介護や改革に取り組み、現役世代の負担軽減を図っていくことが重要である。

次の意見です。改革工程には重要な項目が網羅されており、着実に実施していくべきである。その上で、社会保障の給付全体をコントロールする仕組みを強化する必要がある。

次の意見です。年齢ではなく能力に応じた負担の実現は、全世代型社会保障の重要な論点である。応能負担をさらに徹底すべき。一律に高齢者といっても、収入のある方、資産のある方など、実像は様々であり、保有金融資産の反映など、丁寧かつ早めに議論を進めるべきである。そのほか、保険給付の範囲や受益者負担の考え方の徹底などについても検討を深めるべき。

次に、医療機関の経営実態が国民に見えにくいことは問題であり、医療機関が享受している恩恵を含め、「見える化」をさらに進めていくべきであるとの意見がございました。

少子化についての委員の御意見をご紹介いたします。少子化対策について、EBPMの強化が必要であり、徹底してほしい。まずは「こども未来戦略」の加速化プランを着実に実施していただきたいが、足もとの少子化の更なる加速を踏まえれば、その要因や費用対効果、KPI設定など、様々な角度から分析した上で、更なる取組も検討していくべきである。

次は、主に医療の関係についてです。我が国の創薬力について、ポテンシャルがあるにもかかわらず低下してしまっているのは課題である。薬価改定によるメリハリづけとセットで、保険外で創薬支援を強化することも重要である。創薬エコシステムの構築に向け、それぞれの事業フェーズに応じて、解像度を上げて対策を打つ必要がある。その際には、縦割りが指摘されるAMEDへの補助金も含め、創薬力強化のために投入される資金が効果的に使われているのかチェックが必要である。

後発医薬品については、安定供給を阻む産業構造の改革を進めることが肝要であり、薬価上での対応も含めた総合的な対応を図っていくべきである。

次の意見です。現役世代を含めた国民負担の軽減、ひいては国民皆保険制度の持続性確保の観点から、来年の薬価改定も確実に実施するべきである。その上で、過去2回の奇数年での改定では適用されなかったルールがあったり、改定対象品目が限定されたりしたことは問題であって、今回の薬価改定は適用ルールや対象品目の拡大も必要になる。

次の意見です。医師偏在は、自由開業制・自由標榜制を前提とした対策しかとれなかった中で深刻化した問題であり、医療の財源の大宗は税・保険料であることも踏まえ、全体最適の観点から改革を断行していくべきである。医師多数区域での規制強化、経済的なディスインセンティブ措置等、あらゆる政策を総動員して、実効性のある政策を行うべき。また、保険医の要件として、一定水準以上の保険診療に従事した経験などを求めていくべきである。

次です。医療保険における費用対効果評価制度の活用を進めるべきであり、そのための体制強化を早急に図るべき。また、保険外併用療養制度や民間保険の活用も着実に進めていくべき。エビデンスとともに適切な患者負担を求めるといったことも検討すべきである。

次です。リフィル処方の利用率が非常に低いのは問題であり、KPIの設定とともに、患者の利便性向上につながるという面を国民に周知徹底することで国民の行動変容を促すことや、「出来高払い」となっている診療報酬の在り方を見直すということも含めて、リフィル処方が当たり前になるよう、具体的な政策を早急に実施すべきである。

次です。改革工程に掲げられた見直しを着実に実施すべきであり、特に実効給付率が増加傾向にあることも踏まえ、高額療養費の見直しはスピード感を持って取り組むべき。さらには、能力に応じた負担を徹底する観点から、高齢者医療制度の自己負担割合の見直しにも着手すべきである。

次は、主に介護についてです。改革工程に掲げられたケアマネジメントへの利用者負担の導入などの項目についてまで先送りされてきており、次回の制度改正で確実に実現してほしい。くわえて、要介護認定事務やケアプラン作成等のDXや公的保険外の民間介護保険サービスの普及促進も進めていくべきである。

次の意見です。人材紹介会社について、短期間での離職率が高い事業者の「見える化」など、有効な対策を取るべきである。

続いて、主に年金についてです。

まず、被用者保険の適用拡大について、働き方に中立的な制度を構築する観点から、企業規模要件の撤廃や非適用業種の解消を着実に進めるべきである。

次の意見です。在職老齢年金制度について、給付増となる形で見直しを行うのであれば、低中所得者への影響を踏まえた対応、具体的には税制における対応として、公的年金等控除の上限引下げや標準報酬月額の引上げと併せて行うべきである。

次です。マクロ経済スライドの調整期間の一致については、個々人の年金の充実に加え、所得再分配にも寄与するため実施すべきと考えるが多額な財源が必要になる。その際、財源確保の方針については法律に明記するなど、コンセンサスを得ることが前提となる。

次です。いわゆる「年収の壁」の問題については、就労抑制的な制度とすることは人手不足の中で望ましくない。また、見直しに当たっては税制との関係や、給付と負担との関係を丁寧に示しながら、公平な制度設計を行うべきである。また、第3号被保険者制度の将来的な廃止についても検討していくべきではないかということです。

次に、障害福祉に関係する部分です。まず、障害福祉計画について、医療費適正化計画等と同様に、適正化に関する事項を盛り込むべきである。

次です。営利法人の参入が増加するなど、残念ながら「うま味のある産業」として見られている可能性がある。データに基づく「見える化」を進めて、公正な改定ができる環境整備を進めていくべきである。

次に、生活保護についてです。医療扶助の適正化のため、頻回受診の多い医療機関への働きかけとして、規制強化だけでなく、金銭的なディスインセンティブの導入も検討していくべきである。また、都道府県によるガバナンス強化も推進すべきである。

最後に、雇用についてです。雇用保険二事業による失業等給付の積立金からの借入については、雇用保険財政の適正化の観点から着実に返済すべきである。

以上のようなご意見がございました。詳細は、後日公表される議事録を御参照いただきたいと思います。私からの発表は以上でございます。

〔幹事ありがとうございました。では、各社さんありますでしょうか。

〔質問中間年改定について伺います。

国民民主党の玉木代表が12日の会見で、医薬品の供給問題などを原因に中間年改定を上げて、2025年度も含め、中間年改定の廃止を早くやるべきというふうに述べていました。また、同日行われた自民・公明・国民民主の経済対策の政策協議の場でも、国民民主党から中間年改定の廃止を求めたとのことです。こうした薬価の中間年改定の廃止に向けた動きについて、財審はどのように見ているのか、お考えを教えてください。

〔増田分科会長代理薬価の改定は、先ほど御紹介いたしましたが、過去2回の奇数年での改定では適用されなかったルールがあったり、改定対象品目が限定されたりしているので、今回の薬価改定では適用ルールや対象品目の拡大が是非必要であるという意見が委員から出ております。そうしたことも踏まえて、最後建議の中で取りまとめをしていくということになろうかと思います。

〔質問同じく薬価の改定についてです。そもそも奇数年で行われる中間年改定も含めて、薬価の改定の意義や薬価の改定で重要な考え方を、増田会長代理はどのようにお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理本日の議論で言うと、薬価改定はメリハリづけがすごく重要であるということ、どのように創薬支援を強化するのかについて、日本の各企業の創薬力が落ちているのではないかという指摘もあることも踏まえて、考えていく必要があると思います。創薬力がどの程度強まっていくのかというのは、非常に様々な要因が関係していると思いますので、必ずしも薬価の問題だけではなくて、製薬業界という産業の構造の問題など全体を含めて、日本の創薬力を強化していく必要があると思います。

日本は世界に冠たる国民皆保険という大変優れた制度があって、それを支えていく上では、医療も診療報酬もそうですし、薬価もきちんと社会実態に合った形で、適切に見直しをしていくということが重要です。そのため、診療報酬改定そして薬価改定などもきちんと行っていく必要があると思いますが、以前は御承知のとおり、2年に一度となっていたのが、薬価の場合は、毎年きちんと見直しをした上で、全体の保険制度を支える形に適切にしていこうと。

ただ一方で、医薬品の不足がよく国民の間で話題になります。社会現象的な問題は複合的な要因があるので、薬をつくるイノベーション力に薬価改定がどう影響を与えるのかについては、そうした複合的な要因も一方で見ながら、きちんと考えていく必要があると思います。

薬価改定については、先ほど紹介したように、適用ルールや対象品目の拡大もしっかりと行っていくということが必要だと思いますし、その中で出てきている社会現象などにどう対応するのか。それは薬の価格とは別のことを含め、またいろいろ考えていかなければいけないだろうなと思います。

医薬品の不足は、企業による不祥事などが影響している部分もあると思います。こうした問題に対しては、医療も介護もそうですし、それから薬価もそうですが、価格を適切に見直していくことが、国民に極めて高いサービスを提供している皆保険という制度を支えていることにつながっているということをきちんと踏まえて、やっていく必要があると思います。

〔質問「年収の壁」の問題について、公平な制度設計を行うべきという御意見があったということですが、昨今の議論を見ていますと、どちらかというと公平というよりも、負担が増える中小企業、あるいはパートタイムで働いている方の声がすごく上がっていて、本当に公平というのは何だろうと思っているところです。本日の会議の中で、公平な制度設計について、より詳細な言及があったのかどうかと、増田会長代理が昨今の「年収の壁」の問題の議論をどのように御覧になっているか、伺えますでしょうか。

〔増田分科会長代理本日の議論では、就労抑制的な制度になっては、今の人手不足の状況に逆行するような形になるので、就労抑制的にならないようにしていくということが必要であるということは、多くの委員が言っておりました。肝はやはりそこの部分ではないかなと。

数字で何らかのことを決めると、どうしてもその数字が非常に大きな意味も持つことになります。この「年収の壁」の議論というのは、いろいろな数字で議論されていますが、これは財政の問題だけでなくて税とも非常に深く関わりますから、少なくとも両面から、そして社会的に就労がどう促進されるのかということも含めて考えていく必要があると思います。特に今は政治の場で議論がなされていると思いますが、そうした壁について私の意見をあえて言えば、これからはやはり財源をどのようにしていくのかも踏まえて、議論を進めていただきたいと思います。税制的な観点もあると思いますし、ほかの制度との関係もあると思いますが、社会的にどのように就労者を増やして、様々な問題、企業、セクターの要請に応えていくのかを、政治においてトータルでいろいろ考えていかれることになると思います。ただ、その中では、財政面にどういう影響を与えるかということも十分に検討した上で、一定の結論を出していただきたいと思います。

〔質問医師の偏在是正についてお聞きしたいです。財務省が適切なアウトカム指標の導入とセットで、医療の「特定過剰サービス」に対する減算措置を導入すべきと提言されていますが、増田会長代理は偏在対策についてどのようにお考えでしょうか。

〔増田分科会長代理本日の資料において、まず、医療資源が日本国内でどう展開をされているのか、ドイツやフランスの例も紹介されていましたが、やはり現実をどう分析するのかにあたってはデータが非常に重要になると思いますし、その点ではドイツの例は非常に参考になるのではないかと思います。

そして、そのデータなどを踏まえた上で、医療資源が地域によって適切に行き渡っているということは、非常に重要なことになります。医師偏在対策については手ぬるかったのではないかということをおっしゃる委員の方もいましたが、私も経済的なディスインセンティブも含めて、この偏在対策の解決に乗り出していくべきではないかと思います。もちろん、自由開業がこれまでもあったわけですが、時代が大きく変わってきましたので、方針を見直すということも、当然検討の対象にしていくべきであると思います。そうしたことを含めて、広くこの問題をより実効性が上がるように考えていくべきであると思います。

したがって、冒頭に申し上げたように、今、医師の偏在と言われていますが、まずは客観的な評価、つまり偏在の状況をきちんと把握をすることが重要だと思います。その対策を考える上では、今までは経済的なインセンティブを中心に、お医者さんがそれを見ながら判断するという形になっていましたが、そうした形ですと偏在対策の効果がなかなか発現しないということがありますので、診療報酬を減算するなども当然検討して、必要であれば実施すべきであると思いますし、さらに過剰サービスの総額が基準を超えるようなことになれば、そうしたサービスに要した保険償還分を精算するといったことも必要になってくるかもしれません。要は、規制的な手法や経済的なディスインセンティブも含めて、きちんと議論を進めていく必要があるのではないか。本日、医療は全国の様々な地域の生活や社会、まちづくりなどに影響を与えるものなので、そのまちを存続させていくという広い観点からも、問題をきちんと考えていくべきであるという意見がありました。私もなぜそうした規制的なことをしなければいけないかということを、そのためのデータもいろいろ見せながら国民の皆様によく理解してもらい、この問題の解決に取り組むべきではないかなと思います。

今までの取組では、なかなか実効性が上がってきませんでしたので、そこはもう一段強いことをきちんと考えていくべきではないかと思います。

〔幹事終わります。ありがとうございました。