〔幹事〕それでは、よろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕それでは、私から発表いたします。本日9時から財政制度等審議会の財政制度分科会が開催されました。本日は、一つは国内投資・中小企業等、もう一つが外交・デジタル、この二つについて議論を行いました。初めに事務方から資料説明をしていただいて、それで委員からの御発言がございました。通例どおり、個人名を伏して出てきました意見について御紹介申し上げます。
まず、国内投資の関係ですが、順次読み上げます。
産業政策は一時の勢いで推し進めるのではなく、長期的な戦略に基づき実施することが求められる。半導体支援もこれまでの補正予算による場当たり的な対応を改め、民間事業者の予見可能性を高めるためにも、必要な財源を確保しながら複数年度の支援の枠組みを示すことが極めて重要である。
次の意見です。半導体業界は変化が激しい業界であり、過去の民間及び政府による投資が必ずしも成功しなかった反省も踏まえるべきである。投資には成果が求められるので、政府支援の効果について早期の定量的な検証、第三者によるチェックを経た上での事業計画等の見直し、これらを可能とする枠組みが不可欠である。
次の意見です。民間においても、勝ち筋となる企業や産業が見通せない中で、政府も特定企業を補助金一辺倒で支援すべきではない。政府出資等によるリスクマネー供給を通じ、官民の適切なリスク分担を図るべき。出融資の活用拡大は、配当などの形で国庫にリターンが得られる。政府支援がそのまま国民負担とはならない。受益者負担の観点からもこうしたことが重要である。
次の意見です。一時のはやりで半導体以外の産業分野にもいたずらに同じような支援が拡大しないよう、市場の失敗に政府が介入すべき場合をしっかりと整理すべきということです。
次は、中小企業についてです。中小企業の成長には、自主的な経営改善の取組が重要である。これを後押しする支援に軸足を置くべき。個別の中小企業だけでなく、日本経済にとってどのような効果があったかという観点も含め、補助金の有効性をしっかりと検証していく必要がある。
次の御意見として、中小企業の持続的な賃上げのため、価格転嫁の徹底が重要である。発注者側にとっても、発注先と適切に向き合うことがサプライチェーンの強化にもつながる。こうした視点も必要になってくるということです。
次の意見です。一口に中小企業と言っても様々である。生産性向上に向けて意欲的に取り組む中小企業にこそ支援を行うなど、それぞれの実態に応じた対応や、生産性が高い中小企業の取組を横展開するなどの視点が必要になってくる。また、手厚い支援がかえって中堅企業へのステップアップを阻害しているということも考えられる。
次です。グローバル・サウスへの支援については、大企業も対象に入っている中、補助金を設立した目的に照らし、真に成果が上がっているか検証する必要がある。外交、安全保障環境の変化に対応する上で、厳しい財政事情の中で効果的な予算の活用が重要になってくる。
中小企業は以上で、次に、外交関係についての意見です。
まず、初めに、外交力の強化は、防衛力の強化とのバランスを踏まえながら進めていくべきである。
次に、厳しい国際情勢を踏まえ、情報セキュリティーやインテリジェンスの強化を省庁横断的に進めていくべきである。
次に、途上国への開発支援においては、ODAの戦略的・効率的な活用や官民の連携強化が必要である。
次に、ODAの規模については、一定の水準を保ちながらも、世界経済における日本の経済力の状況を踏まえるとともに、国の財政が国民生活のために使われていくことを優先すべきであって、国民の理解を得るための努力も必要である。
次に、無償資金協力の支払前資金の滞留については、膨張しないようにしっかり執行管理するとともに、法改正などによる有効活用も必要である。
次に、ODAの質を向上させるため、個別プロジェクトのアウトカムを適切に設定しながら、費用対効果を高めるとともに、必要に応じてスクラップ・アンド・ビルドをしていくべきである。
次に、国際機関等への任意拠出金に対する外務省の評価においては、第三者のような目線を強化することも必要。また、拠出金に充てられる経費も限られてきている中で、日本のプレゼンスを確保していくため、国際機関の重要なポストで活躍できる人材の育成と配置を戦略的に進めていくことが重要であるとの意見がございました。
次に、デジタルについての意見を紹介します。
情報システム予算は増加傾向となっているが、あわせて行政経費は減ったのか、または利用する国民の利便性は上がったのか、より明確に示していくべき。情報システム予算の総額をコントロールする目標を定めるべき。行政事業レビューの活用を進め、システム導入後の利用状況のチェックも迅速に行い、システムの見直しの判断をしていくべきであるとの意見がございました。
次の意見です。デジタルガバメントの意義として、人的リソースの捻出にもつなげた上、行政内外の生産性の高い事務へと再配置、リスキリングをする必要がある。システムの費用対効果の明確化の際には、人的リソースの状況も明らかにするべきである。
次の意見です。マイナンバーカードの利活用には粘り強く取り組むべき。デジタル化はコスト削減につながる一方、デジタルに強くない高齢者や中小企業への配慮も併せて必要になってくる。
次の意見です。デジタル庁には官民混成組織の課題がまだある可能性もあるが、デジタル行財政改革に引き続き取り組むことが重要である。技術の変化が早い中、デジタル庁の人事政策としては、官民の人材が効果的に生かされる形の対応をしていただきたい。また、ガバメントクラウドは外資系ベンダーが提供するものを利用しているが、国産ベンダーの活用をしていくべき。自治体によるクラウド利用はまだ十分に進められていないところ、国内IT産業育成に取り組むことが重要であるとの意見がございました。
出ました御意見は以上でございます。詳細は、後日公表される議事録を御参照いただければと思います。
私から以上です。
〔幹事〕では、各社さん、どうぞ。
〔質問〕半導体支援について伺いたいです。これまでも財審で半導体支援について予見可能性を高めていくべきなど、いろいろな提言の中でも触れられていると思うのですが、分科会長代理として、支援の在り方について今後どういった観点が重要であると思われるか、改めてお考えをお聞かせください。
〔増田分科会長代理〕日本が取り組むべき産業としては、半導体が非常に重要な分野だろうと思います。財審として個別のプロジェクトの是非について踏み込むことは差し控えます。ただ一方で、重要であるとは思いつつ、非常にリスクが高い分野でもあるということも事実であって、これまでもそれまで非常に好調だった企業のランクが急に下がったり、最近ではエヌビディアのランクが急に上がってきたりするなど、非常に浮き沈みが激しい。
また国全体として取り組む際には、どうしても金額が巨額になるという特徴もあります。本日事務局から説明があり、各委員はおおむね賛同していたと私は理解していますが、どうしても複数年度にわたる支援になりますので、中期的な計画の下に支援を行っていくことも必要ですし、基本原則をきちんとつくってやっていく必要もある。今まで熊本で行われているものなどの反省に鑑みると、基本原則をつくって支援の対象の優先順位をはっきりつけるべきであると考えております。
また、第三者のチェックということも今回の資料に入っていましたが、当事者あるいは関係者だけではなくて、第三者チェックをしっかりと行って、その都度支援の在り方を検討し直していくということが必要ではないかと思います。
本日議論していた中では、支援の在り方も補助金一辺倒ではなく、やはりステージごとに応じて多様化していくべきであるということを、皆様おっしゃっておりました。私も補助金だけではなくて、政府保証や出資などの形で、リターンをきちんと得るということも考慮しながら、ステージごとに支援の在り方も検討していくべきであると思います。このようにこれまでこの分野が苦労してきたことから教訓を得て、これから北海道で行われる事業についても考えていくべきではないかと思います。
〔質問〕御説明ありがとうございました。同じく半導体についてお伺いできればと思います。複数年度にわたる支援で予見可能性を高めるべきというところについて、ちなみにGXですと官民の支援は10年などと期間を決めてやられているわけですが、支援の在り方として、複数年度の期間とはどれぐらいが適切なのでしょうか。また、規模も大きくなるというお話でしたが、規模感について委員の方から御意見があったかどうかお聞かせいただけますか。
〔増田分科会長代理〕GXのやり方が一つ参考になるということはあったと思いますが、期間や規模感で具体的な意見は本日委員の中からは出てこなかったかと思います。そのあたりは、半導体産業といっても中でいろいろ分かれていますので、それぞれにおいて期間は決まってくると思います。本日、予見可能性を高めてできるだけ民間資金を呼び込むという意見がございましたので、これから関係する企業やリスクマネーを供給する側の意見をよく聞いて、政府でそのあたりを組み立てていただきたいなと思います。
〔質問〕グローバル・サウスについてお伺いします。今回こうした課題が提示された中で、例えばこれは去年の補正予算で措置されており、今後の補正予算にも盛り込まれるかもしれませんが、そのあたりについて委員から、こうした事業はどうあるべき、あるいは補正でこれだけつけたのが正しかったのかどうかなどについて、意見は何かありましたか。
〔増田分科会長代理〕本日の資料にも入っていましたが、大企業が中心になっているので、考えていたことと成果がきちんと結びついているかといった趣旨の意見は本日出ておりました。なので、おっしゃるとおり、補正で緊急性があるということでやられたのではあろうと思いますが、もしやるにしても内容はよく練っていただく必要があります。
グローバル・サウスは今まで産業政策のメインの部分ではなかったところもあるので、私も初めて内容を見た感じもありますから、本日こうした形で光が当たったことによって、むしろそのあたりについての意義ややり方、規模感も含めていろいろ議論が俎上に上がってくることはよいことではないかなと思います。私も個別企業の取組を初めて見させていただきましたので、俎上に上がってよかったのではないかなと思います。
〔質問〕半導体について、複数年度で巨額の支援になるということなのですが、仮に失敗した場合、失敗をどう定義するかはあるのですが、政府はどのように責任を取るべきかについて何か意見があったのか、もしなければ分科会長代理としての御見解も踏まえて教えていただければと思います。
〔増田分科会長代理〕政府がこの分野にコミットすればするほど、それは本来は企業の失敗なのですが、今おっしゃったように政府の失敗にも跳ね返ってきます。だからこそ先ほど申し上げたように、しっかりとした基本原則を定め、途中で第三者によるチェックなどを行ったり、マイルストーンを設定したりということをしっかりとやって、できるだけいろいろな修正をすることで、とにかく失敗に陥らないような道筋をつくる必要があるという意見は、本日、委員の中からも出ていたと思います。
今お話のあったように、失敗をどう定義するかは難しい側面がございます。途中であまりうまくいかなかったということを次にどうつなげていくかの程度にもよると思うのですが、この分野が難しいのは、ほかの国でも決してよい成果が出ているわけではない点です。どこの国も巨額の支援を行いながら、よい成果が出ているものばかりとは限りません。
ただし、私が申し上げたいのは、だからといって失敗が許されるものでもないと思います。成功もあれば失敗もある分野であるということではなくて、やはり税金を使う以上は、とにかく何が何でも成功させていくため、そしてそれを中心に経済をもっと成長させていく上での一つのトリガーにならなければいけないと思います。本日意見があったような仕組みをしっかりと入れて、できるだけ民間資金を呼び込んで、政府のコミットをできるだけフェードアウトしていくことが必要であると思います。また、政府が支援するとしても、今までは補正で巨額の補助金を注入していましたが、政府保証や出資を活用して、ある段階に来たらきちんとリターンを確保できるような仕組みをつくるべきではないかなと思います。
〔質問〕御説明ありがとうございました。半導体支援のことで恐縮ですが、委員の方の声の御紹介の中で、これまでの産業政策の反省も踏まえるべきであるといったような声を御紹介いただいたと思います。委員の間では、これ以上国が支援することそのものに対して慎重な意見がまだ結構あるのか、それとも、支援をすること自体はある程度よくて、その上でやり方を議論すべきであるというトーンなのか、教えてください。
〔増田分科会長代理〕多少委員ごとにニュアンスの違いはあったかもしれませんが、やはり半導体を日本の産業の中で強めていくということは、皆様御理解をされていたと私は思っています。ただし、先ほど言いましたように、やはり額が巨額になるうえ、1年で終わらせずずっとこれを続けていくことが重要です。やり続けなければほかとの競争力が落ちてしまうという非常にリスクが高い分野であるがゆえに、そのリスクをどのように低減させるかを考える必要があります。また、こうした分野の個々の企業へと政府の距離感が問われているがゆえに、本日事務方から示された資料や、それに基づいて、先ほど紹介した意見が出てきたのではないかと思います。繰り返して言えば、半導体支援を適切に今後やっていって、企業としての成長につなげていく上での様々な意見が出されたと理解しています。
〔質問〕今のお話に関連して、半導体について伺います。財政投融資を使った場合、今、理財局や国交省で議論が出ていると思うのですが、政府の出資が大きくなると、民間の主体性が失われて、結果的に事業としてうまく回っていかなくなる、持続可能性がなくなってしまうというケースも過去にあったように思います。そのあたりの支援の在り方で、民間の主体性を確保する上でどういったことが必要かについて、御意見があったようでしたら教えてください。
〔増田分科会長代理〕ありました。政府出資が入っていたがゆえに民間企業の経営判断が損なわれたということになってはならないので、そこは極めて柔軟な仕方を考えるべきということをおっしゃった委員がおられました。
〔幹事〕それでは、どうもありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。