〔増田分科会長代理〕本日の9時から、財政制度等審議会財政制度分科会が開催されました。本日は令和7年度予算編成に向けて、現在の経済財政状況等のいわゆる「財政総論」について、委員の皆様から御意見を頂きました。
初めに、横山副大臣から、マスコミ入りのオープンの形で挨拶を頂き、その後、事務方から資料を説明し、それから質疑を行いました。
質疑の内容ですが、主な御意見につきまして、通例どおり委員の個人名は伏せて、御紹介をさせていただきます。詳細は後日の議事録を御参照いただければと思います。項目別に順次申し上げます。
まず、全体の経済情勢についてです。初めに賃上げ、設備投資の拡大、それから企業収益の増加など、我が国の経済が新たなステージへ移行しつつあることは明確になっている。デフレからの脱却を確実なものとするため、生産性の向上と投資の加速を通じて、持続的な賃金上昇につなげる成長型の経済を実現することが重要、との意見がございました。
それから、次の意見ですが、企業の生産性向上については国の政策だけでなく、中小企業自身のデジタル化などの努力が必要であって、適切な価格転嫁が確保されていることが重要である。
また、人口減少が進んで物価や金利の上昇が見られる中で、長期的な視点を持った財政運営が必要である。人口減少については、少子化対策と並行してインフラや社会保障制度などの社会経済構造を大きく変える構造を検討する時期にあるのではないかとの意見がございました。
続いて、財政運営についての意見です。物価高や金利の上昇などで、これまでと構造的に異なる経済財政構造の動きが見られる中で、物価や金利の動向を意識した、今までとは異なる経済財政運営が必要であるとの意見がございました。
また、日本銀行の国債の保有割合の減少は、これまで国内で国債が安定的に消化されてきたという事実を踏まえる必要がある。短期国債を中心に、海外の国債保有割合が増加していることも踏まえて、国債の環境の変化が財政にどのような影響を与えるか注視をしていく必要があるとの意見がございました。
日本国債の格付がかなり低い状況にあるため、格付を引き上げるために財政として何ができるかを議論する必要があり、財政規律を重視することが格付の引上げにつながるのではないかという意見もございました。
また、近年、数年おきに自然災害や新型コロナなどの有事が発生しており、その都度、公債等残高対GDP比が大きく増加をしてきていることを踏まえ、今後も国内では南海トラフなどの自然災害、国外では中東や極東などの安全保障上の有事の発生が想定される中で、有事の際に必要な財政措置を講ずることができるよう、財政余力を確保していくことが極めて重要であるという意見がございました。
それから、2025年度のプライマリーバランス黒字化目標の実現に向けて、物価高や金利の上昇などによる影響を踏まえて、改革に取り組むべきである。秋の経済対策は必要性を十分に精査の上、有効な施策を積み上げていくことが重要であるという意見がございました。
また、財政と経済成長を両立させていく中で、まずは2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指していくべき。さらに、日本の財政規律は諸外国と比べて必ずしも厳格とは言えず、歳出ルールなど、今後に向けて適切な財政健全化策を検討すべきとの意見がございました。
それから、予算の中身の重点化や施策の優先順位付けなどによる予算、政策の質の向上が必要である。財源をどうするかという視点を意識しつつ、EBPMなどに基づく、ワイズスペンディングの取組を進めていくことが重要であるという意見がございました。
国民的議論については、財政に対する国民の理解を醸成していくことが極めて重要である。財政のために何ができるか、財政が国民にどのような影響を与えているか、具体的なメッセージを分かりやすい形で国民に伝えられていないのではないか。財政が国民にどのような影響を与えているか、今まで具体的なメッセージを分かりやすい形で国民に伝え切れていないのではないか。それから、全世代型社会保障を確実に進めていくべきである。こども・子育てや医療など社会保障全体に関する議論を若年世代の負担を考えつつ、本格的に進めていかないといけないという意見がございました。
主だった意見は以上です。
〔幹事〕ありがとうございます。幹事社から1問お願いします。
これでキックオフ本日だったわけですが、昨日、石破総理が13兆円という規模感を持って経済対策を打ち出されたことについて、必要なものに限って有効な政策を積み上げていく必要があるという御発言の紹介がありましたが、ほかに何かこうした、昨日の総理発言についての議論、意見はあったのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕昨日の石破総理の発言は私も承知していますが、委員の皆様からは、経済対策、補正予算に係るものはきちんとした積み上げで、内容が決められていくべきということと、また、PBの黒字化はいずれにしてもきちんと目指していくべきという話がございました。
〔幹事〕分かりました。ありがとうございます。それでは、ほかに質問どうぞ。
〔質問〕少し今の質問にも絡むのですが、骨太の方針では、歳出は平時に戻していきましょうという旨の内容が記載されているかと思うのですが、この点について、昨日の補正の規模の発言をめぐって、骨太を意識するような御意見というのはあったのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕骨太に戻ってという御発言は、特に委員の方からはございませんでした。先ほど言いましたように、これまでも財審では、今回骨太で決められた話につながるような建議をまとめてきましたし、やはりPBの黒字化が見えてきたところなので、健全化についてもきちんと達成してほしいという思いがございますが、本日、今言ったような御趣旨での発言はなかったと思います。
〔質問〕本日から議論がスタートしたということで、これから各論がスタートする中で恐縮なのですが、そもそも基本的なお考えとして、経済政策と財政の再建をどのような考えで進めていくことが重要かというのを伺いたいです。特に来年度予算について、その二つをどのように進めていくことが重要とお考えか、お聞かせください。
〔増田分科会長代理〕考えるべきはやはり経済成長と財政健全化を両立させながら進んでいくこと。そうしたことが予算編成の中でも表れるということが大事であると思います。
また、政権が変わったばかりであり、経済成長と財政健全化の両立にどのように取り組まれるかはこれから議論される部分もあるかと思いますが、経済成長のためにどういうところを財政が担えばよいのか。これまでの半導体等様々なものへの補助金や、スタートアップへの支援などは、成長につながる部分であると思います。
あとは、これまで取り組んできた社会保障改革を今後、さらに進めていく工程表もつくってございますので、そうしたものは、ある部分では成長につながると思います。
一方で、両立のうち財政健全化については、政権を超えて方針が受け継がれていくことになるのだろうと思いますが、これまで岸田政権のときに言われていた問題に対して、今度、新しい政権の中で答えを出していく部分があると思います。そうした引き継いでいくものと、今後の政権の、特に経済成長に向けての取組の方向性ということです。
具体論は今申し上げるところではありませんが、いずれにしても、これまで建議で言われていたことを政府の中で取組としてどう実現していくか、審議会の中でもよく今後注視していきたいと思います。
〔質問〕先ほどの御意見の紹介の中で、物価や金利の動向を意識した今までと異なる経済財政運営という御発言があったとありましたが、具体的にどういうイメージなのか。例えば利払費が増えることとかを指しているのでしょうか。
〔増田分科会長代理〕どのような金融政策をとるかというのは日銀の御判断があると思いますが、いずれにしても金利がある世界に戻ってきたわけですので、財政の関係でいうと、やはり利払費をどう抑えながら、予算を組んでいくのかというのは大きな関心がございます。したがって、デフレが完全に脱却されたかどうかにはいろいろ見方ありますが、ほぼ脱却されつつあるような時期の中で、物価がどういうふうに金利に影響を与えて、それを踏まえて財政の中でどう予算を組んでいくのか、そのあたりをこうした大きな経済環境の変化の中で、考えていただきたいと考えています。
諸外国も、いろいろ財政健全化のためのルールを立てており、今回の資料にも入っていますが、アメリカでは超党派で委員会などを作って、財政健全化の取組が始まっています。議会の構成も今度変わるようですし、アメリカも選挙がありますが、いずれにしてもそうした取組が始まっています。今ここで金利の状況なども変わってくる中で、我が国としても周辺の状況もよく見て、これから取り組んでいくべきかと思っております。本日の委員の意見も、そうした大きな環境の変化などを踏まえた御意見だったかと思います。
〔質問〕ありがとうございます。もう1点、経済対策のところなのですが、例えばこれまでの電気・ガス、ガソリンの補助金とか、いわゆるバラマキのようなものもありましたが、本日、委員の御意見としては、きちんとした積み上げをという御指摘だったということですが、どういった経済対策がきちんとした積み上げになるのか、そのあたり本日御意見が出ていましたらよろしくお願いします。
〔増田分科会長代理〕これから、財審の各論の中で議論していきますので、そのときには、具体的な対策に対する意見が出てくると思います。資料もそうした作り方になると思うので、そうした意見が出てくる。本日は、電気料金であるとかについての個々の意見というのはなくて、一般論として、やはりきちんとした積算根拠を積み上げて編成していくべきと、そうした総論的な意見がありました。
〔質問〕今、各論はこれからのテーマで、というお話があった後で恐縮なのですが、今回の石破政権では、地方創生がやはり政権の肝になっていると思います。これまで、石破総理御自身、また森山幹事長からも交付金の上積みという発言が出ていると思うのですが、この辺りについて本日委員の先生方から、これまでの交付金の在り方を踏まえた見直しであるとか、言及があったものがあれば、御紹介いただけないでしょうか。
〔増田分科会長代理〕本日は各委員の中から、地方創生や交付金についての言及はございませんでした。
〔幹事〕ないようなので、こちらで記者会見を終了します。ありがとうございました。
〔増田分科会長代理〕よろしくどうぞお願いします。