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財政制度分科会(令和6年5月21日開催)記者会見の模様

〔幹事〕では、時間になりましたので、御説明お願いいたします。

〔増田分科会長代理〕本日10時より財政制度等審議会財政制度分科会を開催し、春の財審で深めてきた議論を、「我が国の財政運営の進むべき方向」として取りまとめをしたところでございます。

建議の中におきましては、次のような基本的な考え方を盛り込んであるところでございます。3点ございます。まず、「金利のある世界」が既に現実のものとなっており、自然災害や安全保障環境の変化などに備え、財政余力を確保する必要性も高まっている。これが第1点。そして2点目として、経済が活力を取り戻し、物価・賃金が上昇し、金利が上昇基調にある今、財政構造をいち早く平時化させ、持続可能な財政構造の構築に取り組む必要がある。そして3点目として、社会保障の持続性を確保し、全世代型社会保障を構築する観点から、改革工程に基づき、医療・介護制度改革に取り組み、公費と保険料負担の抑制に努めることが重要である。この3点を盛り込んであるところです。

建議でも提言しているとおり、現行の財政健全化に向けた取組は一歩も後退させてはならず、政府は高い緊張感を持って財政運営に臨むべきであると考えております。

この建議につきましては、先ほど鈴木財務大臣に十倉会長からお渡しいたしました。今後の財政運営に生かしていただきますようにお願いをしたところでございます。

私からは以上です。

〔幹事〕ありがとうございます。各社さん、質問がありましたらお願いいたします。

〔質問〕財政総論のところで、今回では「歳出構造の平時化」という文言がありまして、これはこれまでの建議でも出ていたと思うのですが、改めて今の財政状況の現在地といいますか、平時化に向けてどう評価しているのか。建議の中では、他国よりも時間がかかりやすいという指摘もありましたが、現時点をどう評価しているのかというのを1点お伺いできたら。

〔増田分科会長代理〕今、御質問いただきました最後で触れていただきましたとおり、今年の春、アメリカ、ヨーロッパに調査団を財審としても派遣して、欧米の状況なども調査をしてきました。そこで見られますことは、我が国の場合、やはり平時に戻るスピード感が欧米に比べて時間がかなりかかっているということがよく分かっております。次にいざ、また緊急的な災害がある可能性、能登のようなこともございますし、そうしたリスクあるいは感染症等々のリスク等もございますし、やはりきちんとした国民の福祉を向上させていくためにも、常に財政余力を蓄えておくということが大変重要であると思っております。これが財審の委員のやはり共通認識であると思います。ですから、平時に早く戻すべきということは従来も言っておりましたが、特に金利の上昇局面にあるというこの時期こそ、一層財政当局には緊張感を持ってそのことに取り組んでいただきたいと、これが財審の今の我々の立場かと思います。

〔質問〕去年などと比べると平時化に向けて進んでいるが、まだ時間がかかっていると。

〔増田分科会長代理〕当然のことながら進んでいる部分もあると思いますし、PBの黒字化も今、目前のところまで来ているということは一方でありますが、この建議の中でも書いてございますが、やはり「金利のある世界」が目前に見えてきているということになりますと、利払費、そうしたことで随分巨額に上る可能性もある。ですから、今こそきちんとした平時化に向けての取組を緊張感を持って緩めることなく進んでいただきたいと、こうした立場でございます。

〔質問〕あともう1点、インフレが続くとなると、一つの政策経費がかかる面もあると思うのですが、今後安定的にインフレが推移していくということになった場合に、今後、政策の取捨選択の在り方とか財政運営の在り方をこれまでのデフレ下とどう変えていく必要があるのかというところを。

〔増田分科会長代理〕個々の各省のいろいろな政策にも関わってくる部分もあると思うのですが、財政の観点から考えればやはり、長いデフレを脱却して、必要な賃上げも行って、それで経済の基調全体を変える、これはもう国家としても大変重要なことだろうと思うのですが、そのことによってまた過度にインフレが進んでいかないようにという、様々なことが財政だけではなくいろいろな形で行われると。我々は金利については、これは日銀でいろいろお考えいただくので、そのことについては立ち入りませんが、やはり経済の基調を強くしていくという上で、財政を伴った政策も変わっていくでしょうし、そうしたことに機敏に対応できるようにしていくという上で、今こそやはり財政余力をきちんと蓄えて、その中で政策判断の幅を広げていくということが極めて大事であると思っています。

そうした意味で、先ほど金利が上昇局面にあると言っていましたが、その背景にあるのは、やはり経済の全体の成長分野への投資というか、重点を移していくということ、これはまさに経済を正常化させていけば必ず通っていかなければいけない道ですので、そのことに対応できる財政を今しっかりと構築していくのが財政当局の非常に重要な役割かと思います。

〔幹事〕ほかに御質問はありますでしょうか。

〔質問〕財政の強靱化とか平時化というのはすごく強調されている一方で、やはり歳出改革というところも恐らくあると思っています。これから利払費が例えば膨らめば、その分歳出を抑えないといけない部分が出てくるわけで、その辺のところは、やはり社会保障とか医療の分野とかでの負担増を求めていくというような意見は、かなり委員の中でもあったり、あるいは建議の中でも強調されたりしたのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕歳出が非常に膨らんでいるものを正常化させていく。これはやはりボリューム的には社会保障分野が非常に大きいわけで、その中でも、年金は御承知のとおり、財政検証が今年あるので、そこでの議論ということになると思いますが、やはり医療・介護、こうしたところの改革が必要であるので、その一つの側面とすれば、やはり給付と負担をきちんと見直しをして、それできちんとした理由のあるものについては負担をどうしてもお願いしていく。これは人口減少であり、また、いわゆる背景にあるのは人口ピラミッドが非常に逆ピラミッド型になっていますので、基本的な、現役世代が医療・介護の一番必要になってくる高齢化世代を支えるというストーリーがなかなか難しくなってきて、今、たとえ高齢世代であっても負担能力のある方々には負担をお願いするという形で、制度をきちんと持続可能に維持していくためにも、そこの給付と負担の考え方を修正してきているわけです。

この中でも例えば介護の2割負担などについても言及していますが、給付と負担の見直しをして、やはり必要な場合にあっては、負担増もきちんと御説明した上で理解を求めて、していただくということはこれからもやっていかなければいけない。そんなことで、各論は全世代型のあちらの会議に委ねられていますが、我々の中でも給付と負担をもう一度見直すという考え方はこの中に取り入れております。

〔質問〕もう1点だけ。年齢ではなく能力に応じた負担という部分で、金融所得の勘案とか金融資産の取扱いについても言及がありましたが、これは委員の中で何らかの一致した意見のようなもの、やはりやるべきであるとか、そうしたものはあるのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕特に金融所得とかいうのは春の財審の中で特に議論はなかったと思います。この間も少し新聞などにも書いてあったのですが、ああいったものについては全世代型のほうの閣議決定の文書の中にも記載がございましたので、特にそれをなぞったような形になっているところです。財審の中では特に踏み込んではおりません。

〔幹事〕ほかに御質問はいかがでしょうか。どうぞ。

〔質問〕健全化目標を語る上では税収を増やすというアプローチもあるかと思いますが、取りまとめの議論を含めたその中で、増税の議論などそうしたものはどのようなものがあったのかというのを、覚えている限りで構いませんので教えていただければと思います。

〔増田分科会長代理〕私が見ている限りは、増税についての議論は、一応税調ではいろいろそうしたことがまさに行われると思うのですが、財審の中では安定財源の確保というところを強調しております。その安定財源の中身については、もちろん歳出削減もあれば、増税という選択肢もいろいろその中にはあると思いますが、安定財源の確保から先のそこのところをどうしていくかについては、特に増税については財審の中では従来から踏み込まないような、まさにそこは国民的議論であり、税調などで議論されるテーマであると思っていますので、少なくとも今回の春の財審の中でそうしたことについては議論していなかったかと思います。

〔質問〕ありがとうございます。

〔幹事〕ほかに質問はないでしょうか。

では、これで終了したいと思います。

〔増田分科会長代理〕どうもお世話になりました。春の財審は本日までです。また秋にいろいろお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。