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財政制度分科会(令和6年4月9日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕本日9時より財政制度等審議会財政制度分科会が開催されまして、議題は成長、人口・地域等です。初めに、事務局から説明があって、その後、委員の皆様と意見交換をいたしました。以降、個人名を伏せて内容を紹介させていただきます。

まず、大くくりで分野ごとに少し分けてお話をさせていただきます。初めに、日本の現状と財政の在り方です。

成長戦略においては、政府の役割をEBPMなども活用してよく検討し、必要性や質の低い財政出動を避けるとともに、民間主導による企業投資を通じた成長を実現する環境整備の推進が必要であるという意見です。

それから、次です。行政事業レビューシートの改善が進んだことは評価できるが、成果が上っていない事業の廃止等、予算編成への反映を担保するための実効性を確保していくことが重要である。個々の事業の評価にとどめず、同様の政策目的を持つ施策間で優先順位を比較して、効果の高い事業に集中していくことも必要ではないか。その際、第三者による評価の仕組みを活用することも重要ではないかという意見でした。

それから、次の意見です。基金の見直しについて大きく進んだことは評価。ただし、政府文書において既に方針が決定されている基金事業についても、金科玉条にせず、見直し余地がないか精査が必要である。十分な成果があがっていない基金は廃止をすべきである。

それから次は、労働の分野です。大きく成長というくくりの中での労働についてですが、リ・スキリングや労働移動の円滑化の施策が成長分野の人材の育成や実際の就労に結びつく取組を引き続き進めるべきである。

それから、労働生産性の向上の観点から、三位一体の労働市場改革によるリ・スキリング、職務給の導入、そして、労働移動の円滑化や就労促進策などを進めていくべきである。

それから、産業政策についてですが、半導体支援等の産業政策については取捨選択が重要であり、民間資金や人材を呼び込めるような安定的な支援を講じるため、財源確保の議論が必要であるという意見もございました。

また、支援手法として、補助金ばかりに頼るべきではなく、出融資等を活用し、成功やリスクを分かち合う仕組みが必要である。官民の役割分担・リスク分担の在り方を見直し、民間の自律的な投資を促進していくべきである。それから、ODAはその効果測定をしっかりしつつ、民間資金と連携して、日本のソフトパワーにつながるよう、戦略的に実施していくべきである。

それから、もう一つの大きなテーマである人口・地域についての意見です。

個別の業界では、人が必要だから待遇の改善が必要という主張がなされるが、全体としての人手不足の中では、待遇改善による解決には限界があることを直視する必要があり、生産性の向上やコンパクトシティ化等、人口減少下における必要な対応の議論を深めていくことが必要である。

それから、社会資本整備についてです。人口減少が進む中で、将来世代も意識しながら持続可能な社会をつくっていくことが必要であり、コンパクトシティを前提としながら、国土のグランドデザインを描いていくべきだという意見がございました。

それから、災害が頻発化・激甚化する中で、事前防災の観点から、危険性の高いエリアに国民が住まないように規制していくことも重要である。防災のハード整備だけではなくて、こうした規制や自治体のデータ連携などソフト施策も含めて進めていく必要がある。

それから、能登半島地震からの復旧・復興に当たっては、地域の意向を踏まえつつ、集約的なまちづくりやインフラ整備が必要。事前防災にあたっては、地震が起こる可能性を自分事として、コンパクトシティを進めることが必要である。

続きまして、デジタル化についてです。システムの投資対効果を可視化して投資のメリハリ付けを行う旨の文書をデジタル庁と取り交わされたことを高く評価する。単純にシステム予算を増やせばよいというものではなく、投資対効果を明確化した上で、一元的に広く共有していくことを検討するべきであるという意見です。

次ですが、自治体DXはそれぞれの自治体に任せきりにせず、従来の地方行政をそのままデジタル化するのではなく、人口減少を踏まえて、行政のあり方も検討しながら、自治体間のデータ連携を含めて取り組んでいくべきである。

それから、文教についてですが、教員の処遇改善をおこなう場合は、地方負担分を含め相当の予算が必要であることを踏まえて、「安定財源の確保」と、「負担に応じたメリハリある給与体系」を徹底していくべきであるという意見です。

また、教員の数ではなく質の議論をすべきである。授業については、例えば質の高い教員が端末を活用して進度に応じた授業を行うほうが、保護者やこどもにとっても望ましいのではないか。また、人手不足の中、教員の数を増やすのは困難なので、民間やICTを活用し、教員は授業などこどもの相手に専念をしていくべきであるという意見がございました。

最後に、地方財政の分野です。まず初めは、人口減少に伴い、行政サービス需要総量の減少や自治体職員の確保の困難化が認められるため、業務の在り方の見直しや施設の再編・長寿命化等も含め、自治体業務を効率化していくことが重要である。

最後に、東京都の豊かな財政力を背景にした手厚い行政サービスは、自治体間の行政サービス格差拡大を招いており、更なる一極集中を是正するためにも、偏在性が少ない地方税体系を構築することが重要である。

以上が、本日の分科会の中での意見の概要です。私からは以上です。

〔幹事〕どなたか質問のある方、よろしくお願いします。

〔質問〕社会資本整備に関してです。今回、委員の中で、今御紹介いただいた能登半島の地震を踏まえて、やはり今回のこの地震の実際の被害状況やインフラの被害状況を含め、ある程度の今住んでいる方の過疎地域の方の居住の見直しなどが必要であるとか、そのような意見はどのような形で出されたか、もう少し詳細にお聞かせください。

〔増田分科会長代理〕今後のまちづくりを考えていくと、人口減少下でもありますので、やはり集約化・コンパクト化が必要ではないかという議論を財審でこれまで議論してきまして、能登半島において今回の悲惨な地震でありました、人口減少が一挙に顕在化をしたということがあって、やはり能登半島の今回の地域においてもコンパクト化や集約化ということも考えていくべきではないかと。そのときには、住民の意向をどのように踏まえるのかということが大変重要であって、委員の中でも御発言がございましたが、そこがなされないと単に押しつけになってしまうということになりますので、住民の意向を十分踏まえた上で、なおかつ未来志向のまちづくりにつなげていくべきではないかと、こんな意見を述べられた方がいらっしゃったと思います。

〔質問〕それは今回の能登地震の復旧復興に当たってそのようなことをより強く考えていくべきであると。

〔増田分科会長代理〕今回の能登についても、今申し上げたようなコンパクト化・集約化の方向性というのは、住民の意向も踏まえながらやっていくべきではないかと、こうした話であると思います。

〔質問〕今のテーマで、実際に会議でのどういう意見があったかという部分であると思うのですが、今回資料の中で、能登半島の関連の中で、東日本大震災で土地区画整理事業の中で今使われているのが7割ほどに利用がとどまっていると。この状況を増田分科会長代理としてはどのように見ているかというのをまず伺えますでしょうか。

〔増田分科会長代理〕東日本で私が思いましたのは、やはり一言で復旧あるいは復興というのは基本的に原形復旧であると思われ、特に復興、創造的復興というかけ声で東日本は行われてきました、その現実の難しさが大変大きいと思いました。それは当然のことながら、地域の皆様方は、被災をして、自治体の担当職員もそうですが、極めて精神的に動揺している中で今後のまちづくりの在り方を決めていかなければいけない。しかも、基本、資産の関係もありますが、昔住んでいらっしゃったところにしか財産を持ってない方が全員のわけですから、そのときにそれを違うところに移動するというのは、例えば当然のことながら、財産補償があるにせよ、大きく生活を変えることになるので、そんなに短時間に決められる話ではない。それから、移った先のコミュニティーが従来と全く変わる可能性があります。それを動揺している中で決めるというのは、誰がどう決めるか合意形成が大変難しい。

ただ、そこにあまりにも時間をかけると、逆にもう仮移転をしていた先での生活がどんどんでき上がって、そこで新しい雇用関係が生まれるので、もう戻りづらくなるということがあって、本日の財審の中でも、今申し上げた東日本のことを議論したわけではないのですが、なかなかこの能登についても答えがないということをおっしゃった委員の方がいらっしゃいました。望ましい方向は、先ほど申し上げたように、将来に向けての人口規模で地域をつくっていくということであると思うのですが、東日本の実情を見る限り、方向性はそのとおりであると私も思う一方、それを現実にどうやっていくのかというのは非常にハードルが高い、困難なものであって、誰がどうそれを行うのかということをよく各地域で考えないといけないと思います。

それから、最後に付け加えると、そうした将来の人口減少も含めたまちづくりを、震災があるなしにかかわらず事前にいろいろやっていた自治体と、それから、災害が起きて急にそうした議論をしなければいけないという、そうした状況に立たされた自治体とではだいぶ違うのではないかと。ある程度事前にやっていた自治体は、まとまりがそれなりに早く進むのではないかということなので、今回の財審の中でも、能登とは別に、一般論としても、災害危険区域にはもうあまり住まないように規制もそこにかけてやっていくとか、将来の人口減少に備えたまちづくりの考え方も入れていますが、やはりそれを、いつ地震が起こるか分からない、当分起きないだろうということではなくて、やはり自分事として地域でまちづくりの議論をしていくことが必要かなと、そんなふうに私も改めて思っております。

〔質問〕その上で、今の、東日本大震災ですと、時間をかけ過ぎると、仮のところで拠点ができてしまう。でも、あまり早いとコミュニティーに不安があるという、精神的な動揺もあるとありました。今回、能登半島から3か月たっている状況ですが、この集約化に向けた議論・検討というのはどういうところから、もう進めていったほうがよいのか、今というタイミングをどう見ているか。

〔増田分科会長代理〕地域によっても相当違うのではないでしょうか。能登は、特に半島の先は集落ごとに小さく分かれています。全くまだ瓦礫の撤去や家の片づけも進んでない地域に、将来のまちづくりについての議論をしようと言ってもなかなか大変であると思います。やはりまずそうしたものを片づけるとか整備するとか、それから、そもそも水道も通っていない地域がまだ先のほうで随分残っています。ですから、そこは相当地域差があって、自治体など一番住民に近いところが判断しながら、徐々に程度に応じて進めていくしかないのではないかなと思います。

〔質問〕今のテーマのところで一つ伺いたいのですが、委員の方から本日、住民の方々の意向も踏まえつつ、集約的なまちづくりやインフラ整備の在り方を今後検討していくべきという意見が出たということで、これは目的と申しますか、メリハリのある予算執行が目的なのか、あるいは防災・減災に向けてこうしたことが必要なのかという、何か目的について委員の方から御発言はありましたでしょうか。また、増田分科会長代理のもし御意見がありましたらお聞かせください。

〔増田分科会長代理〕命を守るということを最優先にしていくべきではないかと、これからのまちづくりなどについてもそうした御意見をおっしゃった委員の方がいらっしゃって、私もそれはすごく大事な視点であると。やはりまず、災害が多発する日本ですので、よく住民の生命・身体・財産の確保というようなことが言われますが、やはり命を優先にするというまちづくりを最低限していかなければいけない。その上で初めて、コミュニティーの集まり、そこによって人間的なお互いの交わりの深さのようなものが出てくるので、それにしても、まず目的とすると、そうした災害による、命を失うことにつながっていくという危険性を最優先してやっていかなければいけない。

そうしますと、本日の資料の中でも規制の図があったと思いますが、これまで一応制度としてはできているのですが、災害危険区域などには基本、住宅をできるだけ建てないようにして、それで居住誘導区域に誘導していくとか、やはりそうした既にある仕組みなども最大限活用して将来のまちづくりをしていくべきではないかと思います。

〔質問〕今のところに少し関連するのですが、今後危険性が高い地域に住まないような規制をしていく必要や、そうしたことが重要ではないかという話がありましたが、具体的にこうしたふうにしたら住まなくなるのではないかとか、何か新しい提案のような、具体的なところがあれば教えてください。

〔増田分科会長代理〕本日の委員の中では、規制的手法をもっと強くしないと駄目ではないかとおしゃった方が恐らく一人いらっしゃったかと思いますが、具体的にどういうことをしていくかということをそれ以外の方はおっしゃらなかったと思います。

今の点については、実は日本の場合にはやはり居住の自由というのがこれまでも非常に広く認められてきて、それも本日の資料の中に入っていると思いますが、いわゆる急傾斜地崩壊対策事業のような、崖地の下にあるところは、そこの居住を禁止するようなことができるのですが、極めて限られています。ですから、あくまでも先ほど申し上げた居住誘導という手法で、それと多少税を絡ませるようなことぐらいであると思うので、災害規制区域などでも、まったく家が建てられないとか厳しい規制にはなかなかたどり着いていなくて、災害があっても、結局、以前のところにどうしても家が建ちがちです。

ただし、以前といいますか、だいぶ昔と社会情勢が変わっているというのは、やはり人口減少で随分安全なところの空き地なども増えてきています。30年、40年前、まだ人口がずっと増え続けていたときはもう市街地に家がびっしりあって、どこか安全なところに移ろうと思ってもそれすら選択できなかったところが、今はかなり状況も変わってきたので、まだ手法としては、本日も議論はそこまで立ち入った具体的な議論はなかったうえ、なかなかこれまでのまちづくりの中では難しかった部分ではあるのですが、空き地・空き家等も相当増えてきたことも踏まえると、これからはそのあたりの状況は少し変わってくるのではないか、手法ももう少し議論をする余地は出てくるのではないかなとは思います。

〔質問〕もう一つ、能登半島地震の復旧復興の方向性としてコンパクトシティという言葉もありましたが、復旧するに当たって令和6年1月1日時点の状況に将来的に戻していくのがよいのか、あるいは人口減も踏まえて、今後の10年先を見据えたまちづくり、それは委員の中で、やはり方向性は将来を見据えたというところで統一されているというような感覚ですか。

〔増田分科会長代理〕必ずしも厳格に議論したわけでもないのですが、だから、それだけやっていくと、強弱は大分あるのではないかと思います。

私も、あの能登半島地域を一律に全部未来型でやるべきであるとはなかなか思わなくて、やはりまちづくりは、そこに住んでいらっしゃる方の状況によって、地域ごとに大きく変わってきますので、やはりコミュニティーがきちんとそこで生き延びて再生されることはすごく重要で、都市的な機能が備わっていればよいというわけではなくて、やはりそこにいろいろな、祭りの担い手であるとかそれまでそうしたもののつながりがあった地域と、なかなかもう既にそれが途絶えた地域とか、いろいろ人間関係の強弱があるので、そうしたことを見ながら、非常に地域に根差した特色あるまちづくりをやっていくということが基本になると思います。

東日本の経験などがやはり私などは多いのですが、地域によってもそこは変えていくべきだし、それから、基本的な、能登の場合には幹線道路で奥に通ずるのは一本であると思いますが、そうしたところはとにかくできるだけ速やかに原形復旧しないといけないのではないか。あそこは幹線道路の交通量が従来よりも劇的に増えるとはあまり思えないので、そうすると、そうしたところは基本的には原形復旧になると思うのですが、とにかく早く原形復旧をして、基本的なベースのインフラだけは早く戻す。

私はもう水道なども、人口減はこれから考えられるかもしれませんが、上下水道は本当に生活につながる基本的なインフラだから、それはやはりあそこのところは一刻も早く元どおり戻すべきではないか。その上で、まちづくりの味つけはこれからやはり地域の住民の意向を考えながら、それぞれ特色あるまちにしていくべきではないかなと思います。

〔幹事〕その他ございますか。

〔質問〕話題は変わるのですが、半導体産業に対する支援のところで、本日の資料ですと、例えば財源の裏づけがないとか、あとは、補正でその都度積まれているとか、助成率もアメリカなどと比べると高いということであると思うのですが、まずそこについて、こうした半導体産業に対する支援の件で、先ほど御紹介いただいたこと以外に委員の方から何か御意見あれば教えていただきたいのと、あとは、増田さんはこの支援の現状についてどのようにお考えになられているかというのを、この2点伺えればと思います。

〔増田分科会長代理〕本日の全体のトーンでいうと、やはり相当国策として半導体を育てようということで、大変巨額の、7,000億円といった巨額の財政出動をしたわけですが、やはりずっと継続、持続可能なものでもない。ずっとそれをやり続けるということは財政的にはもたないですから、やはり本日は、安定財源とか、それから、民主導にしていく上での予見可能性のようなことをきちんと整えていくという、そちらの意見が多かったと思います。

ただ一方では、別に、やはり半導体は日本がこれからとにかく伸ばすべき重要な分野なのであって、それについてやはり国が相当コミットしてやっていくべきではないかとか、そちらで意見を言われる方も当然いらっしゃって、やはりここをさらに強くしていくべきであるという話もありましたので、必ずしもそれについて何か見解が全部同じ方向で一致したというわけではないと思います。

半導体は、ちょうど熊本で始まったばかりですので、地域にとっての経済効果とか、日本の産業全体にとっての経済効果とか、いろいろこれから見ていくことになると思いますが、やはり巨額の財政をあの分野にしたことによる財政的出動の効果は、厳密に検証していかなければいけない。これは委員全員の共通理解であると思いますが、そこの政策的な判断、必要だったのかどうかについては、その検証の中でいろいろ判断されるべき話なのではないかと私も思いますし、あまりにも突出した国の支援を抑えようだけの話では必ずしもなくて、やはりそのところは両方の意見もあったと思います。ただ、やはり持続していくためには、民間の予見可能性のようなものを高めるべきというのは、繰り返しになりますが、そこは皆様一致していたと思います。

〔幹事〕他ございますか。大丈夫でしょうか。では、ありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕ありがとうございました。