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財政制度分科会(令和6年4月4日開催)記者会見の模様

〔増田分科会長代理〕まず、海外調査をおこなった委員から報告がございまして、その後、事務局から財政総論、令和4年度国の財務書類について説明の後、委員からの意見、こうした形で会議を進めました。

以下、主な御発言を紹介いたします。個人名は伏せた形で御紹介しますので、後日出ます議事録等を御参照いただければと思います。

まず、財政総論についてです。

2025年度のPB黒字化の目標を堅持することが重要だが、その上でPB黒字を長期に維持することが重要である。現状の低金利と成長率との差に依存せず、金利のある世界で債務残高対GDP比を長期に安定的に引き下げていくためには、PB黒字の継続的な維持、財政収支赤字の継続的な縮減などに取り組むことが重要であるという意見がございました。

それから、次の意見です。利払費の増加が財政収支の悪化につながり、それが民間の資金調達に影響を与える可能性があり、財政が経済の足を引っ張ることを避ける必要がある。

また、更なる歳出の平時化に取り組むことが必要である。補正予算をコロナ禍以前に戻して、歳出改革の取組を行うことが重要である。PB黒字化が視野に入っても、歳出改革努力を行って、規律ある目安を定めて継続し、PB黒字幅を継続して確保することが必要であるという意見です。

それから、次です。歳出の見直しにおいては、EBPMを活用するなどによって中長期の成長に資する歳出の質的な改革も必要である。単純に財政破綻しなければよいということではなく、強い経済の中でも持続可能な財政を維持することが重要であり、強靱な財政を構築することが重要である。

続きまして、有事が起こった際の財政余力の確保が重要であり、我が国は債務残高対GDP比が高い状況の中、有事の際に市場の信認を確保し十分な財政支出ができるようにするためにも、フロー・ストック両面で取組を進めて、財政の強靱化を図る、そのようなリスクマネジメントを行う必要があるという意見です。

それから、次です。社会保障など中長期的な視点での財政健全化の必要性についても、継続的に発言、発信し続ける必要がある。

また、国債の格下げや金利の上昇、有事への備えは、それぞれに対して対応を考えるだけではなく、三つそれぞれが複合的に起こる可能性があることに留意する必要がある。

それから、次です。財政状況を分かりやすく伝えるなど、透明化に向けた取組が重要である。若い人にとっては、財政健全化が自分たちのためであるにもかかわらず、伝わっていないことに難しさを感じる。SNSなどあらゆる手段を使って伝えていく必要がある。また、国の財務書類なども有益な資料であり、しっかりと国民に伝えていく必要がある。

それから、フューチャーデザインの取組について、ポータルサイトの作成など進展が見られて大変良い。今後もこうした取組を進めていくべきである。財政総論についてはこのようなことでございます。

続きまして、海外調査の報告についてコメントがございました。

報告を聞いて、欧米においては、財政規律やコロナ禍からの平時化において、財政規律の枠組みの見直しや、コロナ対策実施時の事前の期限設定、独立財政機関による客観的な分析などが効果を発揮していた。

それから次です。英国、ドイツ、EUですが、欧州では、金利上昇等による利払費拡大で財政がひっ迫する中、財政規律にのっとった財政運営の取組が進められている点や、例えばドイツにおいて、平時に財政の健全化をいち早く取り戻し、財政バッファーを再構築する取組がある点などは、我が国にとっても参考になるのではないか。

それから、次のコメントです。米国では、コロナ対策が決められた期限どおりに終わることが前提となっている点が歳出構造の平時化において機能していたが、このような期限の設定と遵守は政策実施において大変重要なことである。

海外調査へのコメントは以上です。

私から、今日の議論の内容は以上でございます。

〔幹事〕質問のある方は、挙手の上で質問してください。

〔質問〕3点質問がございます。

まず1点目です。冒頭御案内いただきました、2025年度のPB黒字化目標を堅持することが重要という御発言があったということですが、このような類似の御発言はほかの委員からも出たのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕ほかの方もそのような趣旨のことをおっしゃっておりました。PBの黒字化と、それを長期に維持することが重要であるという御発言だったと思います。

〔質問〕ありがとうございます。次に1点、今日の委員の御発言の中で、25年度以降の歳出の目安について、あり方など含めて何か御意見はありましたでしょうか。

〔増田分科会長代理〕今日、先ほどその点についてもいろいろ発言したところが全体で、当然のことながら、今後分科会の中でいろいろ議論をして取りまとめをしていきます。今日は各委員が今思っていることをいろいろと御発言いただいたということで、これから建議に向けて、どのように2026年度以降の目標を定めるか、それは今後の議論に委ねられていると受け止めています。

〔質問〕最後になります。建議の取りまとめをされるのは、5月をめどということでよろしいでしょうか。

〔増田分科会長代理〕時期はまだ、全体のスケジュールを最後のあたりはまだきちんと決めていないので、例年ですと5月下旬ぐらいかと思っていますが、もう少し事務局等からも情報を取って、例えば骨太が大体どのぐらいで考えられているのか等を見ながらこちらもスケジュールを決めて、会長と御相談していきたいと思います。

〔質問〕今回の財政総論の中で、1%上振れした場合の機械的な算出の利払費の増加額が示されていたと思うのですが、これをどう見たらいいのか、どう見た上で財政運営をすべきなのかということの言及があったかどうかと、この部分についての会長代理としての見方をまず伺います。

〔増田分科会長代理〕利払費について、1%増加した場合の予算の中に占める比重が重くなっているのですが、そこまでの議論は今日の段階ではまだしていません。ただ、恐らくこれは最終的には日銀が、金利の話ですから、マーケットと対話しながら決めていくので、あまり我々が言うわけにもいかない部分ではありつつ、全体とすると、金利がこれから上昇局面になっていくのであろうということであります。そうした中で、利払費の増加が財政の悪化につながるという、そうした認識は皆様方はもう全部共有されていますので、それが今後の財政収支の悪化につながらないように、今後の金利の状況を見ながら運営していく。そこはこれから中でよく議論して、どういうふうに、例えば我々のスタンスとして決めていくかは、これからまたよく議論しながら考えていきたいと思っています。

〔質問〕今お話があった財政収支というのが、PBというのは金利の利払費というのは含まれていない中で、この財政収支を財政健全化の目標として具体的に入れたほうがよいかどうかというところについてはどのように考えているのでしょうか。

〔増田分科会長代理〕財政収支はいずれにしてもできるだけ赤字幅を縮小していくという方向感は大事であると思います。それをどのようにこれから扱うかは、まさにこれから中でよく議論したいと。今日はキックオフのような感じですから。ただ、先ほどの話にもありましたように、金利がこれからあって、それは昔の正常化した姿であると思うのですが、金利がある世界を前提として債務残高の対GDP比も引き下げていかなければいけませんし、健全化に向けての方策とスピード感、どういうものを目標として掲げるかというのがこれから非常に重要になってくるので、このあたりは分科会の中でよく議論していきたいと思います。

〔質問〕最後に、ここしばらく低金利がずっと、今も含めて続いている状況であると思うのですが、改めて今後、金利がある世界が到来したということになった場合に、どういう財政運営の切替えなどが必要になってきていると考えているのでしょうか。直前では、補正予算ではコロナ禍で規模も大きくなるというような現状がありますが、全体的な見方を伺えたらと思います。

〔増田分科会長代理〕前回の秋の建議の中でも、できるだけ早く平時に戻そうと。これはコロナ禍で非常に歳出が膨れ上がって、それが、コロナがだんだん5類になって様子が変わってきたので平時に戻そうということだったのですが、それプラス、今回日銀のマイナス金利を解除して、それから、YCCも当然のことながらやめるといったような金融政策についてはあまり我々言うつもりもないのですが、やはり環境変化はそのようになってきていますので、これからきちんと規律ある財政とか財政の持続可能性を考えていく上ではそうした前提条件がいくつか付け加わっているわけです。

ですから、これまで平時に戻そうと言った際の平時というのは、どちらかというと膨れ上がった歳出の話でしたし、それから、今回はその平時の中には、随分昔の、きちんと金利がある世界から、ここ10年大分異次元緩和を日本だけ最後まで続けてきたわけですが、それがまた金利がある世界に戻ってきたという、そうしたことを財政の中でどのように反映させていくのか。実際には財務省で予算編成を通じて反映させていくのでしょうが、我々はそのときの大きな方向感を出していく、そうした立場にあるので、日銀のそのあたりの決定や変更を受けて、まだ4月になった段階なので、もう少し様子を見ながら、今回の5月に向けての、何回か建議に向けての取りまとめもありますし、皆さまの考え方も多少ニュアンスが違う部分、いずれにしても成長とどう両立させるかなどいろいろニュアンスがあると思うので、そのあたりをよく議論したい。これが昨年までの春の建議の状況と今回は大分違っているなと私は思っています。

〔幹事〕ほかに質問はありますか。いかがでしょうか。

ないようですので、記者会見はこれで終わります。ありがとうございました。

〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございます。