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財政制度分科会(令和5年10月27日開催)記者会見の模様

〔幹事〕時間になりましたので、御説明をお願いいたします。

〔増田分科会長代理〕本日9時より財政制度等審議会財政制度分科会が開催されました。本日は、防衛、外交・デジタル・地方創生、そして国家公務員等の旅費制度の改正、この三つについて議論を行いました。初めに事務方から説明があった後、各委員からの御発言となりますが、主なものについて、個人名を伏せて以下順次御紹介をさせていただきます。

まず、防衛についてです。定められた金額を有効に活用していく必要がある。後年度負担についてもしっかりと見える化していくべき。

また、装備品の価格が高騰しているというそうした説明もありましたので、そこの部分については、プロジェクト管理を十分に機能させるため、原価監査の徹底やコストデータバンクの整備によって原価の適正性の確保・低減を徹底すべき。また、財政当局や会計検査院、国会の関与により、ガバナンスを確保する必要がある。

それから、装備品等の価格が上がってきているので、更に「不断の見直し」が重要になる。防衛装備庁に調達価格を抑える努力をしっかりしてもらうとともに、国民への十分な説明が必要になる。

続きまして装備品の調達の関係ですが、防衛産業の基盤と競争力をどう強化するか。サプライヤー企業の撤退が増加しているが、再編と集約をどう進めていくか、政府として将来の産業構造まで展望してプランニングをすべき。

それから、国と民間の役割分担が重要。例えば装備移転において、レーダーなど民間で協調が進むものもあるが、政府の役割がやはり重要である。同志国との共同開発を積極的に行っていくなど政府が積極的に関与すべきである。

また、こうした意見もありました。調達改革も必要だが、過剰に買いたたくと産業の維持に関わるため、そちらもよく見た形で取り組んでいただきたいというものです。

それから、財源についてですが、防衛財源について、財政余力がやはり必要なものである。また、国防費は経常的経費であって、安定財源が必要になる。防衛のための負担は国民で分かち合う必要があり、国民にしっかりと説明していく必要がある。そして、受益と負担はセットで議論していくべきである。

続いて、現下の安全保障環境に鑑みれば、一定の規模の予算は必要かもしれないが、効果的に使わなければ国民の理解は得られない。相手国も、日本の経済がもつのか、防衛財源がもつのかも見て対応してくる。増税の開始時期についてまだ議論が行われているところだが、これもしっかりと決めていく必要がある。

それから、歳出に係る議論が先行しているように思われるが、税収が増加傾向にある今だからこそ、恒常的な財源についてしっかりと検討していくべきという、こうした意見です。

続いて、外交についてです。質の高いODAを武器とするため、プライオリティーづけやスクラップを行っていくべき。支援額で勝負するのではなく、ニーズ把握や日本の技術力、特に中小やスタートアップの技術も活用すべき。戦略を踏まえた上でメリハリが重要。実効性と戦略性に重点を置いて進めていくべきである。

それから、日本は債務残高が高く、分不相応な量のODAは厳しく問われるべき。財政が厳しい中でODAを減額したというイギリスの事例などもよく見る必要がある。JICAの運営費交付金も、滞留分を踏まえた身の丈に合った額としていくべき。

また、ODAにおける民間資金活用を促進すべき。グローバルサウスのうち「仲間」となり得る国でODAがあると、ビジネス展開の呼び水となる。日本企業が得意とする医療・保健や気候変動、防災など、この分野が重要である。JICAの現地ネットワークや、国際開発金融機関、JBIC等によるリスク引き受けなど、民間投資を誘発する仕組みを設計していくべき。

それから、ODAはGNI比でOECDの求める水準に達していない。責任あるG7国として、戦略的・効果的活用を前提に予算を拡充していくべきという意見もありました。

次に、大使館や領事館等の政府の機構についてです。機構について、選択と集中は重要である。過去、そして諸外国でも廃止等はしており、実績も踏まえてしっかり見直しをしていくべし。また、デジタルを使った費用の節約も大切な視点であるということです。

続きまして、デジタル分野についての御意見です。情報システム予算の総額をコントロールする目標を設定すべきと、このような方針に賛同します。新規システムの費用は対象外という今の目標は、納税者にとって分かりづらい。また、新規システムの整備の際は、コスト削減効果を定量的に示すとともに、そのとおりの効果が出ているのか検証されるべき。

それから、デジタル化を通じたシステム以外の行政コスト削減も徹底していく必要がある。人手不足な中では、合理化を進めて他の業務にリソースを振り向けていく必要がある。国だけでなく、地方の合理化も必須である。政策決定の自治を確保しつつ、業務面の効率化をデジタルで進めていくべき。この関係で、デジタル行財政改革にも期待をしますということです。

また、ガバメントクラウドは、本来は業務の効率化とコスト削減、行政サービスの質的な向上を図ることが目的であるが、経費の増加を招くケースも現れており、移行を躊躇している自治体があると聞く。システム費の削減に加えて、業務フロー見直しによる経費削減なども含めて効果を示して、メリットを丁寧に説明するべき。移行に向けたロードマップの作成も重要である。

それから、サイバーセキュリティーについて、日本の対応が国際的に遅れたものにならないよう、しっかりと取り組んでいく必要がある。その際には人材育成や官民連携等が非常に重要になりますという御意見もありました。

続きまして、地方創生についてです。一律に国がサポートするのではなく、地域の市民や商工業者の「民の知見を引き出す」など、地域で成功している事例をサポートし、メリハリをつけて対応していくべき。また、好事例の横展開の際には、全ての自治体が横並びをとるのではなく、どういった地域に何を展開するのが効果的なのか、この点についてよく分析が必要である。

それから、各自治体の具体的な使途やそれがどういった効果があったのか、政策の見える化の徹底を行い、規律付けを行っていく必要がある。

最後に、旅費についてです。現行の国家公務員の旅費制度については、実態とかけ離れており、民間の状況も見つつ、職員の安全確保の観点も含め、迅速に法改正を行う必要がある。

見直しに当たっては、公務員の時間もコストであるという感覚を持つことや、公務員の働き方改革、クリエイティブな働き方ができるような業務環境の整備というような視点も踏まえ、職員の負担軽減や業務効率化を図ることが重要である。

それから、検討に当たり、国費の適正な支出を確保するため、不正が起きないような仕組みの構築が重要である。

今、主な点を御紹介しましたが、このような意見が各委員から出されたところです。私からは以上です。

〔幹事〕ありがとうございます。それでは、各社、質問お願いいたします。

〔質問〕防衛について、会長代理としての考えを伺いたいです。今、装備品の単価が上がっているというお話がありましたが、今回、防衛力整備計画は名目値になっているということで、今後物価高が続いたり、為替の影響があったりしても、その額は今その範囲内でやるとなっていると思います。そうした状況の中で、このまま円安や物価高が続くと、抜本的な強化につながらないというような問題意識を持っているのか、そこの部分についてお願いします。

〔増田分科会長代理〕今お話のあったように、円安とか為替の関係、それから、物価の上昇もありますが、今回43兆という上限の額、名目値ですが、やはり今の外的な状況が為替であるとか物価が上がっているからそれで収まらないのではないかといったようなことが本当に起こりますかというところを今の時点できちんと分析する必要がある。今回強調しているのは、そうしたことで装備品の全体の価格が上がっているのか、それ以外の要素もいろいろあるのではないかということで、そこをもっときちんと分けて、それで今後の対応を考えていくべきと。

私は、やはり昨年の暮れに3文書を決めて全体の額もセットしたということで、まだまだスタートしたばかりですし、今の時点では、本日の資料にもいろいろそこの分析が出ていますし、それから、どうしても初動費用で高くなっているところとか、各装備品の中でもそれぞれの上昇の要素も恐らく違うのだろうと思うので、その辺りをきちんときめ細かく分けてこれからやっていく。調達も、本日の各委員の中からも、あらかじめこのぐらいのボリュームでこうしたことでやるということではなくて、やはり非常に柔軟にそこのあたりも考えていくべきということがありました。ちょうどスタートしたばかりですが、そうした大枠はきちんと捉えた上でまずスタートが切られたわけで、一つ一つ、あとは細かく予算などの際に査定をしていただければと思います。

〔質問〕追加で質問です。為替、物価高、それ以外の要因の一つとしては、今回、原価計算方式の中では利益率の決め方の運用が変わっていると思うのですが、この変わったということに対しての考え方について、懸念点も含めて、もしあればお伺いします。

〔増田分科会長代理〕要は、企業側というか防衛の産業というか企業というか、そちら側の民間サイドでもやはり価格をできるだけ抑えるというインセンティブがうまく働くかどうかというところが大事である。やはり今の制度ですと、なかなかそのインセンティブが働かなくて、防衛装備庁でそれをきちんとコントロールできるかどうかということが問われるわけですが、やはり大きな防衛省の中の組織なので、なかなかそこが働きにくい。

したがって、もっとそれ以外のところが、財政当局とかそうしたところがやはり関与していくべきではないかと。アメリカの場合には議会が関与しているということもあるようです。ですから、利益率などについても、やはり大事なのは国民の大きな合意の下で、量もそうですし、装備の質の面も含めて、充実したもので安全保障環境も守られて、国民一人一人が安心・安全感を持つことが大事なので、やはり今の仕組みをより良いものにするように、それぞれでやはり努力していくべきではないかなと私は思いますし、そのために見直す必要があるところはどんどん見直していくべきではないかなと思います。

〔質問〕今回の制度変更が価格を抑えるインセンティブに仮につながらなかったとしたら、もう単純に単価をどちらかというと押し上げる要因にもなり得るのではないかと思いますが。

〔増田分科会長代理〕いろいろ聞き方が、そうした可能性もあるなと思いますので、そのあたりはこれからの様子というか推移をよく見ていく必要あると思います。

〔質問〕防衛の関連で、冒頭の各委員からの意見の御紹介のところで、防衛増税について、増税開始の時期について議論が行われているが、しっかりと決める必要があるといった意見が出たということを御紹介いただきましたが、このほか防衛増税に関連した議論や意見があればおっしゃってください。

〔増田分科会長代理〕全体とすると、やはり防衛ですので、ずっとこれから安全保障環境をきちんと維持していくために、恒久的にというか、ずっと恒常的に続いていく、そうした性格の分野であろうと。ですから、そのためにもやはり財源の安定性というのか、それから、恒常的で安定的な財源を必ず確保しておかなければいけない。やはりどうしても5年間の43兆円とか、出ていくほうの議論がまず当然のことながら先行しているわけですが、それを裏打ちする安定財源ですね。

委員の皆様方からも、防衛の安定財源と、あとは財政余力を持つことが、やはり国民全体の、もちろん防衛だけではないのですが、突発的なことから国を守ることにつながるので、やはりそうした点でも財政としてしっかりとした安定財源が必要であるという意見がありました。その意味で、項目は決まっているわけですので、これは財審ではなくて税調なり何なりで、それから、最終的には国民がお決めになるということであると思いますが、財源を確保するというのはやはり国民のしっかりした議論の上に良い姿を見せるべしと、そんなことが委員の皆様方の発言からもうかがい知れたような気がいたしました。

〔質問〕ありがとうございます。

〔幹事〕ほかいかがですか。では、これで終わりにしたいと思います。

〔増田分科会長代理〕どうもありがとうございました。