〔幹事〕それでは、会見を始めます。よろしくお願いいたします。
〔増田分科会長代理〕本日14時から財政制度等審議会財政制度分科会が開催されました。本日は、社会資本整備と農林水産、この二つの議題について議論を行いました。通常どおり、事務方から説明がございまして、その後、委員からの発言ということになります。主な発言を以下紹介いたします。通常どおり、委員の個人名は伏せておりますので、御理解いただきたいと思います。
まず、社会資本整備から順次意見を申し上げていきます。人口減少が今後進んでいく中、インフラ投資が費用対効果を出しているのかをよく見ていく必要がある。B/Cの分析に当たっては、人口減少が進むことなどをよく考慮していく必要がある。
次の意見です。インフラ整備により将来の維持・メンテナンス費用がかかることも念頭に置きながら、その必要性を検討する必要がある。
次、国土強靱化対策については、ハードばかりでなくソフトも組み合わせていくことが大事。これらの組合せで大雨の被害も相当程度減るなど成果が出てきたことも踏まえながら、今後の対応を考えていく必要がある。
それから、人口減少や災害対応の観点から、コンパクトシティ化を進めることが大事。都市計画をしっかり考えるとともに、縦割りを超えて国の在り方全体を見据えた国土形成の観点が必要である。また、地域、自治体の境界線を越えて社会資本整備の在り方を考えることも必要である。
続きまして、人口密度が低ければ生産性が低い傾向があるので、人口減少が進む中で、都市部の人口密度をどう維持していくのかの観点が必要である。
次、コンパクト化を進めつつ、東京一極集中のリスクも回避しながら、住民の快適性・利便性を高めるようなまちづくりを進めていくべきではないか。
それから次ですが、災害リスクエリアになるべく新規に人が住まないようにすることが必要である。また、災害リスクエリアにおける居住を促さないような立地規制の強化、さらには補助金のインセンティブの見直しや要件の厳格化など、さらに踏み込んだ対応も考えていく必要がある。
続きまして、建設業の人手不足が進み、2024年問題も迫る中で、問題は深刻な状況。したがって、人材育成を進めつつも、公共事業は優先順位をつけて、必要不可欠なものに限定していく必要があるのではないか。また、こうした中で公共投資を増やすことは、民間投資を抑制する可能性もあることも考慮する必要がある。こうした点を踏まえながら、公共投資の規模を検討していくべきである。
それから、地域公共交通については、人口減少の中で次世代に公共交通をどう維持していくかを、規制の改革なども含め、地域自身が主体性を持ってよく考えていく必要がある。
それから、土地利用規制と組み合わせた治水対策などを優先的に進めることにより、より効率的で効果の高い対策を進めることも重要である。社会資本整備についての主立った意見はこのようなところでございます。
続いて、農林水産の関係です。まず農業政策全般についてですが、今般の食料・農業・農村基本法の見直しを機に、農業のグランドデザインをしっかり議論する必要があるのではないか。
それから、食料安全保障の議論は、従来の課題解決のチャンスではあるが、経済合理性を無視した従来の補助金に依存した政策に拍車をかけることがあってはならない。
また、国際情勢や人口減少などを踏まえ、サプライチェーン全体や輸入・備蓄とのバランスなどを考慮しながら、日本が将来目指すべきグランドデザインを描くべきである。その際には、市場メカニズムをどのように発揮させていくのかといった議論も必要となる。
続いて、若者の新規参入や国際競争力の強化のため、産業として魅力ある分野にすることをしっかり考えていく必要がある。
それから、農業の担い手についての主立った意見です。農業の生産性向上は必須であり、法人形態の増加、スマート農業の活用などによって、その規模拡大を支援していくことが重要。支援に当たっては、農業ベンチャーの活用も考えてはどうか。また、農業法人への就職を促す観点から、他業種並みの労働条件の整備を進めていく必要がある。
また、水活交付金についてですが、こちらについては、昨年の水活交付金の見直しはよい取組であるが、小麦・大豆の生産が水田に偏重していることから全体として生産性が低いという問題に対して、水田の畑地化に踏み切ったところに支援を重点化するなどの見直しが必要ではないかという意見がございました。
それから、セーフティネット施策についてです。収入保険と農業共済、他の価格補填制度に重複が見られること、また、現状では制度が選択制にもかかわらず、収入保険創設以降、財政負担が急激に増加していることから、収入保険への一本化を検討するとともに、各種制度の検証、特に農業者の積立ての3倍を今、国が保険金として負担する収入保険の特約補填金方式の見直しを早期に検討する必要があるのではないか。
次の意見は、国民への説明を果たすためにもデータを検証することが必要。保険方式の一般化などを進めていただきたい。
それから、生産基盤の強化についてですが、こちらは株式会社の農業参入はもとより、農地の集積・集約をより一層を進めていくべき。農業関係の主立った意見は以上でございます。
私からの説明は以上でございます。
〔幹事〕ありがとうございます。幹事社から先に2問ほど教えていただきたいのですが、一つ目が社会資本整備のほうで、ライドシェアに関するような意見はございましたでしょうか。
〔増田分科会長代理〕先ほど御紹介した中で、地域公共交通について申し上げましたように、人口減少の中で、次の世代、少し先に向けて公共交通をどう維持していくか、規制の改革なども含め、まず地域自身が主体性を持ってよく考えていくべき、地域でやはりこれは主体的にまず答えを可能な限り見いだすべきと、そこに重点を置いていました。そうした意見がありましたので、具体的にはまたいろいろあるのでしょうが、恐らくそうした中に含まれている可能性があると思います。
〔幹事〕ありがとうございました。もう1点、先ほど御指摘があった、災害リスクエリアに新規に住まないようにするというところの立地規制や補助金の厳格化のようなお話があったのですが、もう少し具体的な発言はございましたでしょうか。
〔増田分科会長代理〕前提として、以前はどんどん人口が増えていくので、河川の沿川部分であるとか結構山際の地域とかにも住宅地を広げていかなければいけなかったのですが、恐らく、私の意識としては、今は人口も大分減ってきたので、むしろ本当に居住をある地域に誘導していくという、立地適正化計画とかいろいろな居住誘導といった制度が出てきたと思います。
一方で、どうしても自治体によっては、それまでやっている住宅開発などの関係などがあると思いますが、そうした一方の動きに水を差すような、災害リスク地域であるにもかかわらず、例えばそこに新規に道路が出来て、その沿道のところに住宅が建ってしまうとか、やはり自治体も、私もいたことがあるのですが、縦割りになっているので、どうしても全体を見て適正なほうに誘導していくところに少し欠けるところがある。したがって、そこは国が例えば、大体いろいろな場合に補助金が入っていくのですが、そうした補助金の要件をもっと厳格化して、災害リスク地域が入っていたらもうそこに補助金が行かないような仕組みにすると、恐らくそうしたことをここで委員の方は述べられたのであると思います。
〔幹事〕ありがとうございます。
〔質問〕地域公共交通のところで、国の制度として、国土交通省の制度であると思いますが、赤字のバス路線に対して赤字の額の半額を補填するという補助金の制度がありますが、これについての見直しなどについて何か委員の中から御意見はありましたでしょうか。
〔増田分科会長代理〕本日はそこまで具体的に名指しでというか示したものはなかったと思いますが、ただ、総じてやはり地域公共交通であっても、事業者がまず基本的にそれを維持する責任を負うのであると。資料自体がそうしたつくりになっていて、この考え方自身はやはりそのとおりではないかということを何人かの方がおっしゃっていました。まず、事業者がきちんとやる。いきなり国にいろいろな支援を求めるのではなくて、その次が自治体という、こうした順番であるということになっています。
今もう既にいろいろな理由でそうした補填するというのは出来ているわけですが、ただ、これから人口減少が進むと、またその中でもそうした路線がどんどん増えてきます。限られたパイの中でいろいろ工夫していかなければいけないので、今後はやはりそうしたところも問題になってくるのだろうと。
御承知のとおり、公共交通を守るために、あれは令和2年だったか、独禁法の見直しか何かがあって、地銀とバス会社が路線維持のためにいろいろな、以前だったらカルテルなんて言われたのでしょうが、事業者同士が話し合って、回数券ではないがバスのいろいろな利便性を高めたり、時刻を調整したりとか、全部可能になった。だから、やれることをいっぱい可能な限り取り組むという、それを事業者でまずやってもらうというのが大前提であると思います。それを超えて、補助もそれはそれなりの理由はあると思うのですが、ただ、やはりむやみやたらにそれに頼るというわけにもいかないと思います。どうせパイは限られていますから、だから、今後は見直し等も当然考えていかなければいけないのだろうと思います。
〔質問〕1点伺いたいのですが、人口減少が今後進むというのがもう確実に見えている中でのいわゆる公共事業、社会資本整備の在り方について、増田会長代理御自身がどう考えていらっしゃるのかというのを教えていただけたらと思います。
〔増田分科会長代理〕実は二つあると思っています。やはり本日の資料にも入っていましたが、社会資本整備の蓄積はかなり進んでいます。だから、もうそうした状況になっていく中でこれからやるというと、かなり的を絞って、今、国土強靱化とか頻発する災害に対してピンポイントでいろいろやっていく。そこはやはりハードだけではなくてソフトも含めて。それから、あれはよく政府でやられたなと思うのですが、例えばダムの事前放流も、事前の天候の予測が非常に精度が高くなって可能になり、あれで相当実は助かるところもあるので、最新のテクノロジーであるとかいわゆるソフト対策をうんと使って、以前だったら社会資本のがちがちのハードでなければ考えられないと思われていたようなものを、うんと財政的な負担も少なくして効果を出していくということを一方でやっていく。
それから、二つと言ったうちのもう一つは、そもそも今、本日の資料にも入っていましたが、建設労働者が著しく枯渇してきていて、結構今年とか来年とか当面身近なところですが、建設事業者の方も大分工事も抱えていますから、何かをぱっとやろうとしても、なかなか入札不調とかでそもそもだんだんできない時代になってきて、来年以降さらにそれが極まる。そんな客観情勢、もちろん資材も上がっているから、そのことを考えれば、さらに厳選して、本当にやるべきところをピンポイントで的を絞ってやっていくということが一層求められるのではないかと。だから、本日の資料の中でも、B/Cをよく考えてという。それも単なるB/Cというよりも、今まさに御質問のあった、将来の人口減少のことも加味して整備効果を考えるべしといって、私も維持コストのことを考えると、やはりそれだけ従来よりもさらに慎重に選んでいくということが必要ではないかなと思います。
〔質問〕幹事社の質問に戻るのですが、災害のリスクが高いところでも住宅支援の補助の対象になっているということに対しての、会長代理としての、補助金をそうしたところにも対象にすることの問題意識を伺いたいです。また、まちづくりをしていく中で、実は都市部の中には、コンパクトなまちづくりをするための都市部も結構、浸水区域の対象になっているようなエリアも地域によってはあると思うのですが、そこを両立していくための重要であると考えているポイントについて、伺えたらと思います。
〔増田分科会長代理〕立地適正化計画とか居住誘導区域とかそうした概念は比較的最近出てきた概念で、それはやはり以前と違って、かなり空き地であるとか、それから、土地の利用の中で、居住を変えるような可能性、御当人にとっては大変ですが、居住地域を変えるようなことも視野にだんだんやはり入ってきています。そうであれば、せっかくのお住まいを、一生に本当に何度住み替えるか分からない本当に限られた貴重な資産を、災害の危険性の少ないところに建てていただくということは大変重要なことであると思います。
そうすると、そうした大きな政策と個別のときの補助金の支出、交付にちぐはぐ感があってはいけないと思いますので、これは国もやはり全体観を持って、それから、直接の担当、多くは国土交通省でしょうが、そこも全体観を持ってやる必要があるのですが、実際に実行する場合の各自治体が地域に精通していますので、部局間でよく情報を共有して、それで一方で、災害エリアに人が住むようなことに結果としてなるところに税金を使って補助金が入ることは避けるということを是非やるべきであると私も思いますし、そこがこれから非常にまちづくりに問われてくる話だと思います。以前は住まいをとにかく提供すればいいという、そちらをやはりどうしても優先していました。そこが大きくやはり変わってきていると。
それから、浸水エリアに確かに人が住んでいる。これは都市部などでもあるのですが、これは実際に私も大変難しいと思うのは、既に住んでいらっしゃる方がもう長い間、実際には浸水の危険性があるところにどうしてもいらっしゃる。しかもかなり都市部ですから多く住んでいらっしゃって、現実的にその方がリスクの少ないところに移るというのは非常に難しい。
だから、やはり先ほど言ったようなことも、新規に新たに住まいを定める方から順次始めていくということが必要である。既存の方はどうすればいいかというのは、基本は当面はソフト対策で考えていくということであろうと思うのですが、もちろん代替わりのときとかいろいろなチャンスがありますので、そうしたときに浸水の可能性の低いところにどんどん誘導していくといったことをやっていく。やはりかなり長い時間をかけて、その辺りを行政としても一貫性を持ってやっていく必要があるのではないかなと。東京の例えば江東5区なんかもかなり危険性が高いのですが、そこで居住どうのこうのというのは現実にやはり難しいです。だから、そこはソフト対策を充実するのと、もちろん河川のいろいろな、流量を調整したり、上流でいろいろまた対策を講じたりする必要もあると思います。
ですから、現実にお一人お一人が生活の拠点を構えて住んでいらっしゃるということは相当やはり重みがある話なので、そこは丁寧に時間をかけて、しかも災害リスクをまずきちんと御理解いただく。地域の本当に少しの違いで、浸水深が5メートルの地域とか3メートル地域とかいろいろ変わってくるので、そうしたことを丁寧にお話しして、それでみんなでどうしようかということをよく考えることが必要ではないかと思います。
〔質問〕追加でよろしいでしょうか。頭の体操のような質問になってしまうのですが、補助金を出さないようにするといった議論になっていくと、結果的に地価が下がってしまって、安い土地だから結局人がそこに移り住むといったことにならないのかなという点と、既存住民の地価が下がってしまうことにならないのかなという、恐らく実際に議論し出したらそうした点が懸念されてくるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
〔増田分科会長代理〕地価の問題ですが、本日実はそのこともあって、地価は市場でいろいろな鑑定評価などを参考に、いろいろな取引事例とかそうしたことで決まっていって、実際に災害エリア地域であると、地価はいろいろな意味で下がる可能性があります。ただ、固定資産税は実は市町村が決めるのですが、例えばそうした地域の市町村が固定資産税を高くするとか、あるいは評価替えを毎年やっていますが、そうしたことで、きちんとそうした地域にあまり人が住まないようにすべきではないかということをおっしゃったような委員が、すみません、先ほどはそこまで細かいことは言いませんでしたが、一人の方がそんなお話をしておられました。
ですから、やはり地価が安いということだけでやるというよりは、この地域全体はそうした災害の危険性があるということを常に、不動産屋も通じて地域の住民の方あるいは新しく入ってくる方によく知らしめておくというのはやはり今、自治体の役割になっているのではないか。それから、もし可能であれば、そうした地域の固定資産税は、地価の連動よりは、やはりそうしたことも加味して決めていくという、評価替えのときに加味していくということも一つのやり方ではないかなと思います。
〔幹事〕ほかよろしいでしょうか。ありがとうございました。